説明

画像表示装置用スペーサと画像表示装置

【課題】 寸法精度の高い画像表示装置用スペーサを提供する。
【解決手段】 下記A成分〜E成分を有し、ガラス転移点温度が550℃以上で、熱膨張係数が74〜94×10-7/℃で、且つ、屈服点とガラス転移点との温度差が50℃以上であるガラス基材をスペーサとする。A成分:30〜60wt%のSiO2、B成分:2〜20wt%のB23、C成分:0〜20wt%のMgO、0〜30wt%のCaO並びにそれぞれ0〜50wt%のSrO及びBaOから選択されるいずれか一種又は二種以上の合計量が20〜60wt%、D成分:それぞれ0〜10wt%のLi2O、Na2O、K2O及びCs2Oから選択されるいずれか一種又は二種以上の合計量が0.6〜15wt%、E成分:0〜15wt%のAl23、0〜15wt%のZnO、0〜10wt%のZrO2及び0〜30wt%のLn23(但し、LnはY、La、Gd、Ybを示す)から選択される一種又は二種以上。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密空間を保持するのに用いられるスペーサ、とりわけ、画像表示装置の気密容器内に配置されるスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置には、電子線励起ディスプレイやプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、ELディスプレイなど種々のディスプレイがあり、近年、その大画面化に向けて研究開発が進められている。これらの画像表示装置は、表示画面が大きくなればなるほど、画像表示装置の外囲器を構成する気密容器の強度を増さねばならないが、その一手段として、気密容器内に、気密容器内の気密空間を保持するためのスペーサが配置される。
【0003】
このようなスペーサの例として、特許文献1には、電子線励起ディスプレイの気密容器を構成する前面板及び背面板に通常用いられるソーダライムシリカガラス或いはディスプレイ基板用の高歪点ガラスと同等の線膨張係数を有し、しかも、無アルカリのガラスからなるスペーサが記載されている。より詳述すると、SiO2を10〜35wt%、RO(但し、Rはアルカリ土類金属を示す)を20〜60wt%、B23を9〜30wt%、及びAl23を0〜10wt%含み、実質的にアルカリ金属を含有しないガラス組成を有し、かつ、線膨張係数が76〜92×10-7/℃の無アルカリガラスで構成されるスペーサを電子線励起ディスプレイの上記スペーサとして用いることで、アルカリ成分に起因する電界破壊等の不具合を引き起こすことがなく、しかも、その線膨張係数が上記ソーダライムシリカガラス或いはディスプレイ基板用の高歪点ガラスの線膨張係数とほぼ同等であるため、熱膨張差に起因する破壊等の問題もないことが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−104839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記組成を有するガラスからスペーサを成形しようとすると、その加工精度はさほど上がらない問題があった。とりわけ、多数のスペーサが配置される表示面積の大きな画像表示装置にあっては、寸法精度の高いスペーサが要求されるが、上記のような組成を有するガラスではこの要求に十分応じきれない場合があった。
【0006】
本発明は、寸法精度のより高い、画像表示装置用スペーサとこれを備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
30〜60wt%のSiO2(A成分)と、
2〜20wt%のB23(B成分)と、
0〜20wt%のMgO、0〜30wt%のCaO並びにそれぞれ0〜50wt%のSrO及びBaOから選択される、20wt%以上のいずれか一種又は合計量が20〜60wt%の二種以上(C成分)と、
それぞれ0〜10wt%のLi2O、Na2O、K2O及びCs2Oから選択される、0.6wt%以上のいずれか一種又は合計量が0.6〜15wt%の二種以上(D成分)
と、
0〜15wt%のAl23、0〜15wt%のZnO、0〜10wt%のZrO2及び0〜30wt%のLn23(但し、LnはY、La、Gd、Ybを示す)から選択される一種又は二種以上(E成分)と
を含有する組成を有し、ガラス転移点温度が550℃以上であって、100〜300℃での熱膨張係数が74〜94×10-7/℃であり、且つ、屈服点温度とガラス転移点温度との差が50℃以上であるガラス基材を有することを特徴とする画像表示装置用スペーサを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、気密容器内に、画像表示部材と、前記気密容器内の気密空間を保持するスペーサとを備える画像表示装置であって、このスペーサが、上記スペーサであることを特徴とする画像表示装置を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、寸法精度の高い、画像表示装置用スペーサとこれを備えた画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明のスペーサ及びそれを用いた画像表示装置について説明する。
【0011】
本発明の画像表示装置用スペーサは、ガラス基材より成る絶縁性スペーサや、ガラス基材表面に抵抗体や抵抗膜を有する導電性スペーサを含む。
【0012】
本発明の画像表示装置用スペーサのガラス基材は、30〜60wt%のSiO2(A成分)と、2〜20wt%のB23(B成分)と、0〜20wt%のMgO、0〜30wt%のCaO並びにそれぞれ0〜50wt%のSrO及びBaOから選択される、20wt%以上のいずれか一種又は合計量が20〜60wt%となる二種以上(C成分)と、それぞれ0〜10wt%のLi2O、Na2O、K2O及びCs2Oから選択される、0.6wt%以上の一種又は合計量が0.6〜15wt%となる二種以上(D成分)と、0〜15wt%のAl23、0〜15wt%のZnO、0〜10wt%のZrO2及び0〜30wt%のLn23(但し、LnはY、La、Gd、Ybを示す)から選択される一種又は二種以上(E成分)とを含有する組成を有する。
【0013】
A成分であるSiO2の含有量は、30〜60wt%、好ましくは36〜50wt%である。SiO2が30wt%よりも少ないとガラスの温度に対する粘度変化が急激になり、延伸加工精度に悪影響を及ぼし、60wt%を超えると溶融温度が高くなり延伸加工作業が困難になる上、必要な膨張係数を維持できない。
【0014】
B成分であるB23の含有量は、2〜20wt%、好ましくは5〜15wt%である。B23は、ガラス溶融温度を低下させ、ガラスをより安定化させる成分であるが、2wt%よりも少ないとその効果を十分に得られず、また20wt%よりも多いと逆にガラスの安定性を低下させると共に、温度に対する粘度変化が急激になり、延伸加工精度に悪影響を及ぼす。
【0015】
C成分は、MgO、CaO、SrO及びBaOから選択される一種又は二種以上である。MgO、CaO、SrO及びBaOは、いずれもガラスの溶融温度を低下させ、よりガラス化しやすくさせる成分である。
【0016】
しかし、MgOは、20wt%を超えるとガラスの安定性を損なうことから、MgOを含有させる場合、20wt%以下、好ましくは15wt%以下の範囲である。CaOは、30wt%を超えるとガラスの安定性を損ない、安定した熱延伸加工ができなくなることから、CaOを含有させる場合、30wt%以下。好ましくは25wt%以下である。SrO及びBaOは、それぞれ50wt%を超えると膨張係数が大きくなりすぎる上、必要とされるガラス転移点の温度を維持できないため、熱延伸加工精度の悪影響を及ぼす。このため、SrO又はBaOを含有させる場合、それぞれ50wt%以下、好ましくは45wt%以下である。
【0017】
また、C成分として選択されるMgO、CaO、SrO及びBaOの一種の量又は二種以上の合計量が20wt%未満では、ガラス溶融温度が高くなり、ガラス作製が困難となる。また、二種以上の場合、合計量が60wt%を超えるとガラス化が困難になり、必要とする熱膨張係数を維持できない上に温度に対する粘度変化が急激になり、延伸加工精度に悪影響を及ぼす。このため、一種の場合の量は、上記の範囲の上限を限度として20wt%以上、好ましくは24wt%以上、二種以上の場合の合計量は、20〜60wt%、好ましくは24〜50wt%である。
【0018】
D成分は、Li2O、Na2O、K2O及びCs2Oから選択される一種又は二種以上である。Li2O、Na2O、K2O及びCs2Oは、いずれも必要とする延伸加工精度をもたらすものである。
【0019】
しかし、いずれも単独で10wt%を超えると膨張係数が大きくなりすぎる上、電圧印加時に著しい劣化を起こすことから、Li2O、Na2O、K2O及びCs2Oは、それぞれ10wt%以下、好ましくは6wt%以下である。
【0020】
また、D成分として選択されるLi2O、Na2O、K2O及びCs2Oの一種の量又は二種以上の合計量が0.6wt%未満では必要とする延伸加工精度が得られない。また、二種以上の場合、合計量が15wt%を超えると膨張係数が大きくなりすぎる上、電圧印加時に著しい劣化を起こす。このため、一種の場合の量は、上記の範囲の上限を限度として0.6wt%以上、二種以上の場合の合計量は、0.6〜15wt%、好ましくは0.6〜10wt%である。
【0021】
E成分におけるAl23の含有量は、0〜15wt%、好ましくは0〜10wt%である。Al23は、ガラス転移点を高くし、温度に対する粘度変化を緩やかにする上、耐環境性を良くする効果をもつ任意成分であるが、その含有量が15wt%%を超えると溶融温度が高くなり、結果的にガラス化が困難となる。
【0022】
E成分におけるZnOの含有量は、0〜15wt%、好ましくは0〜10wt%である。ZnOは、ガラスの溶融温度を低下させ、よりガラス化し易くさせる任意成分であるが、15wt%を超えると、熱膨張係数が小さくなりすぎる。
【0023】
E成分におけるZrO2の含有量は、0〜10wt%、好ましくは0〜7wt%である。ZrO2は、ガラスの耐環境性向上に寄与する任意成分であるが、10wt%を超えると溶融温度が高くなり、同時にガラスの安定性を損ねるためガラス化が困難になる。
【0024】
E成分におけるLn23(但し、LnはY、La、Gd、Ybを示す)の含有量は、0〜30wt%、好ましくは0〜20wt%である。Ln23は、ガラス転移温度を高める任意成分であるが、それぞれ30wt%を超えると溶融温度が高くなり、結果的にガラス化が困難となる。
【0025】
尚、上記以外の希土類酸化物(CeO2、Pr611、Nd23、Sm23、Eu23、Tb47、Dy23、Ho23、Er23、Tm23、Lu23等)は、ガラスに着色を起こしやすい成分であるが、特性に大きな影響を与えない範囲で、上記4種の希土類酸化物と同様に同程度の量が任意に使用可能である。
【0026】
以上の組成を有するガラス基材は、ガラスの安定性に優れ、機械的、化学的強度に優れたものとすることができる。
【0027】
以上の組成を有するガラス基材は、そのガラス転移点温度(Tg)を550℃以上とすることができ、スペーサとして搭載される画像表示装置の組立工程における加熱処理に十分な耐性を有する他、その熱膨張係数(α)は100℃〜300℃において74〜94×10-7/℃の範囲とすることができ、画像表示装置の後述する気密容器を構成する部材の熱膨張係数とのマッチングも良好である。
【0028】
更に、以上の組成を有するガラスは、ガラス屈服点温度(At)とガラス転移点温度(Tg)との差を50℃以上とすることができるので、かかるガラスから加熱成形されたガラス基材はその寸法精度に優れる。とりわけ、前記C成分の量が前述の好ましい範囲であると、上記ガラス屈服点温度(At)とガラス転移点温度(Tg)との差が55℃以上とすることができ、かかるガラスから加熱成形されたガラス基材はその寸法精度に一層優れる。
【0029】
本発明の画像表示装置用スペーサの製造方法には特に制限はなく、従来の種々の方法が適宜用いられ製造される。
【0030】
即ち、本発明に係る組成を有するガラスの母材から、所定の大きさのガラス基材が切出され、あるいは、本発明に係る組成を有するガラスの母材から所望の大きさに加熱成形される。とりわけ、加熱成形法の中でも、そのガラスが実質的に軟化変形する温度に加熱しつつ延伸し、この延伸されたガラス部材を所定の長さに切断することにより所望の形状のガラス基材が製造される、所謂加熱延伸法が、本発明に係る組成を有するガラスにとっては適しており、高精度なスペーサの製造を可能にする。
【0031】
本発明の画像表示装置用スペーサの形状も、板状、円柱状、球状など、特に制限は無く、適用される画像表示装置における要求に従って適宜選択される。
【0032】
また、本発明の画像表示装置用スペーサの大きさ、配置個数、配置ピッチなども、適用される画像表示装置における要求にしたがって、上記気密空間の充分な保持が達成し得る程度に適宜設定されるが、大きさは、好ましくは、厚さが0.05mm〜3mmの範囲、高さは1mm〜5mmの範囲である。
【0033】
図1は、本発明のスペーサが画像表示装置に適用された場合の、一部を切り欠いた模式的斜視図である。
【0034】
図1において、画像表示面側であるフェースプレート1の内面には、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイではカラーフィルターなどが配置され、電子線励起ディスプレイではアノード電極及び蛍光体などが配置される。また、リアプレート2上には、電子線励起ディスプレイでは電子源などが配置され、ELディスプレイではEL素子などが配置される。
【0035】
図1において、フェースプレート1とリアプレート2は、封着部材3によって封着されており、その内部は気密雰囲気とされている。また、この気密雰囲気は、電子線励起ディスプレイでは10-4Pa〜10-6Pa程度の減圧雰囲気とされ、プラズマディスプレイでは励起ガスが封入されており、液晶ディスプレイでは液晶化合物が封入されている。
【0036】
図1において、本発明に係るスペーサ4は、上述したガラス組成を有するガラス基材を有しており、フェースプレート1とリアプレート2を外枠9を介して封着部材3で接合して構成される気密容器内に、その気密空間を保持する目的で配置され、当該気密容器の内部から当該気密空間を保持する。
【0037】
図1に示された画像表示装置は、本発明のスペーサ4を備えており、よって、とりわけ表示画像の歪みやスペーサ4の座屈が無く、充分に保持された気密空間を有し、優れた表示画像を呈する。
【実施例】
【0038】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0039】
〔実施例1〜12、比較例1〜4〕
表1及び表2に示すような組成を有するガラス母材を用意した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
以上の組成を有する各ガラス母材を、表1、表2中の延伸温度で加熱しつつ延伸し、この延伸されたガラス部材を所定の長さに切断することによって、図2に示すような厚さtが0.2mm、高さhが1.6mm、長さlが850mmのガラス基材を上記各ガラス母材ごとに50枚ずつ作成した。
【0043】
(検証1)
以上で作成したガラス基材の全てに対して、寸法精度に関する検証を行った。この検証では、同一のガラス母材から得られた50枚のガラス基材の高さと厚さとを測定し、夫々の平均値を求めて、この平均値からの厚さの最大ずれ量tΔ(μm)及び高さの最大ずれ量hΔ(μm)を算出した。
【0044】
(検証2)
以上で作成したガラス基材の全てに対して、耐圧に関する検証を行った。この検証では、図3に示されるように、一対のガラス基板7、8と、これら一対のガラス基板7、8間に配置された外枠9とで構成された気密容器内に、同一のガラス母材から得られた50枚のガラス基材5を配置し、排気管10に接続された真空ポンプ(不図示)で気密容器内を10-4Pa程度まで減圧した後、ガラス基板7、8の夫々の気密容器内全面に形成しておいた電極(不図示)間に10kVの電位差を約30min印加する。その後、気密容器を解体して、それぞれのガラス基材5を取り出し、放電の有無について検証した。
【0045】
以上の結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表3の結果から明らかであるように、本実施例のガラス基材では、その寸法精度が極めて高く、一方、比較例1〜4のガラス基材は、本実施例に比べ、その寸法精度は低い。また、比較例のガラス基材では、比較例3を除く基材で明らかに放電痕と思われる変色部が確認されたが、本実施例のガラス基材では確認されなかった。
【0048】
(検証3)
また、表1及び表2に示された組成を有する各ガラス母材に、予め研削加工により、複数本のストライプ状の溝を形成した。この溝付きのガラス母材を、760℃に加熱しつつ溝の長さ方向に延伸し、この延伸されたガラス部材を所定の長さに切断することによって、図5に示すような厚さtが0.2mm、高さhが1.6mm、長さlが850mm、溝の深さdが8μm、溝の幅xが15μm、溝のピッチpが30μmのガラス基材を、上記各ガラス母材ごとに50枚ずつ作成した。これらのガラス基材の全てに対して、検証1と同様に、寸法精度に関する検証を行った。この検証では、同一のガラス母材から得られた50枚のガラス基材の溝の深さdと溝の幅xとを測定し、夫々の平均値を求めて、この平均値からの深さの最大ずれ量dΔ(μm)及び幅の最大ずれ量xΔ(μm)を算出した。
以上の結果を表4に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
表4の結果から明らかであるように、本実施例のガラス基材では、その寸法精度が極めて高く、一方、比較例のガラス基材は、本実施例に比べ、その寸法精度は低い。
【0051】
(検証4)
更に、以上で作成したガラス基材の全てに、その全面にW−Ge−Nの抵抗膜を膜厚200nm形成した。かかる抵抗膜は、WのターゲッタとGeのターゲットとを高周波電源で同時スパッタすることにより形成した。スパッタガスはAr:N2=1:2の混合ガスで、全圧力は1mTorrである。上記条件で成膜した抵抗膜のシート抵抗は1×1012Ω/□であった。
【0052】
以上の抵抗膜で被覆されたガラス基材の全てに対して、耐圧に関する検証を行った。この検証では、上記検証2と同様に、図3に示される気密容器内に、同一のガラス母材から得られた50枚の上記ガラス基材5を配置し、排気管10に接続された真空ポンプ(不図示)で気密容器内を10-4Pa程度まで減圧した後、ガラス基板7、8の夫々の気密容器内全面に形成しておいた電極(不図示)間に10kVの電位差を約30min印加する。その後、気密容器を解体して、それぞれのガラス基材を取り出し、放電の有無について検証した。
【0053】
以上の結果を表5に示す。
【0054】
【表5】

【0055】
表5の結果から明らかであるように、比較例のガラス基材では、比較例3を除く基材で明らかに放電痕と思われる変色部が確認されたが、本実施例のガラス基材では確認されなかった。また、特に比較例4(アルカリ金属量の多い比較例)では、抵抗膜の一部がガラス基材から剥離しているのが確認された。
【0056】
〔実施例12〕
以下で、実施例1〜11のガラス基材を用いたスペーサを備えた画像表示装置の例を挙げる。
【0057】
以上述べた実施例1〜11のガラス基材表面に、以下の方法により抵抗膜を被覆する。抵抗膜は、1010Ω/□〜1014Ω/□のシート抵抗とするのが好ましく、用いる材料は、所望のシート抵抗を得るのに適当な金属、半導体などの中から適宜選択される。
【0058】
上記各実施例のガラス基材の表面に、帯電防止用の抵抗膜として、WのターゲッタとGeのターゲットとを高周波電源で同時スパッタすることにより、W−Ge−Nの抵抗膜を膜厚200nm形成した。スパッタガスはAr:N2=1:2の混合ガスで、全圧力は1mTorrである。上記条件で成膜した抵抗膜のシート抵抗は1×1012Ω/□であった。
【0059】
更に、後述するフェースプレート側及びリアプレート側に当接される端面(図2のZに相当)に、前記抵抗膜よりも低抵抗の低抵抗膜を形成した。上記端面領域に、200μmの帯状に10nm厚のTi膜と200nm厚のPt膜をどちらもスパッタにより気相形成した。この際、Ti膜は、Pt膜の膜密着性を補強する下地層である。こうして低抵抗膜を更に備えたスペーサを得た。この時の低抵抗膜の膜厚は210nmであり、シート抵抗は10Ω/□であった。
【0060】
以上のように作成したスペーサを、図4に示すように、画像表示装置の外囲器である気密容器内に複数配置した。尚、図4は、その内部をわかり易くするために、分解斜視図とした。
【0061】
図4において、11はフェースプレートであり、その内面には、蛍光膜12及びメタルバック13が配置されている。
【0062】
また、図4において、14はリアプレートであり、その内面には、複数の電子放出素子15が複数の行方向配線16と複数の列方向配線17によりマトリクス配線された電子源が配置されている。尚、電子放出素子15、行方向配線16、列方向配線17は、図面の簡略化のため一部省略されている。
【0063】
また、図4において、18は外枠であり、フェースプレート11及びリアプレート14と共に、その内部が10-4Pa程度の減圧雰囲気を維持する気密容器を形成しており、この気密容器内に複数のスペーサ6が、フェースプレート11とリアプレート14との間隔を保持すべく配置されている。尚、スペーサ6は、図面の簡略化のため一部省略されている。
【0064】
上記電子源の製造方法に関しては、例えば特開2000−311594号公報、上記気密容器内へのスペーサの設置方法に関しては、特開2000−251648号公報、等に記載された公知の方法によって行われる。
【0065】
以上の実施例において製造された画像表示装置は、実施例1〜11のいずれのガラス基材を有するスペーサを用いても、表示画像の歪みやスペーサの座屈が無く、優れた表示画像を呈する表示装置であった。
【0066】
〔実施例13〕
本実施例では、図5に示されるようなストライプ状の溝が形成されたガラス基材を作製した。
【0067】
表1に示された組成を有する各ガラス母材に予め研削加工により、複数本のストライプ状の溝を形成した。このガラス母材を、760℃に加熱しつつストライプの伸びた方向に延伸し、この延伸されたガラス部材を所定の長さに切断することによって、図5に示すような厚さtが0.2mm、高さhが1.6mm、長さlが850mm、溝の深さが8μm、溝の幅xが15μm、溝のピッチpが30μmのガラス基材を、上記各ガラス母材ごとに複数枚ずつ作成した。
【0068】
以上のガラス基材に実施例12と同様にして、W−Ge−Nの抵抗膜を膜厚200nm形成した。
【0069】
以下、実施例12と同様にして画像表示装置を作成した。
【0070】
以上製造された画像表示装置もまた、表示画像の歪みやスペーサの座屈が無く、優れた表示画像を呈する表示装置であった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明のスペーサが画像表示装置に適用された場合の模式的一部切欠斜視図である。
【図2】ガラス基材の例を示す模式的斜視図である。
【図3】ガラス基材の耐圧の検証方法を説明するための斜視図である。
【図4】本発明のスペーサが画像表示装置に適用された場合の模式的分解斜視図である。
【図5】ストライプ状の溝が形成されたガラス基材の例を示す模式的斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
1、11 フェースプレート
2、14 リアプレート
3 封着部材
4、6 スペーサ
5 ガラス基材
7 ガラス基板
8 ガラス基板
9、18 外枠
10 排気管
12 蛍光膜
13 メタルバック
15 電子放出素子
16 行方向配線
17 列方向配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜60wt%のSiO2(A成分)と、
2〜20wt%のB23(B成分)と、
0〜20wt%のMgO、0〜30wt%のCaO並びにそれぞれ0〜50wt%のSrO及びBaOから選択される、20wt%以上のいずれか一種又は合計量が20〜60wt%の二種以上(C成分)と、
それぞれ0〜10wt%のLi2O、Na2O、K2O及びCs2Oから選択される、0.6wt%以上のいずれか一種又は合計量が0.6〜15wt%の二種以上(D成分)と、
0〜15wt%のAl23、0〜15wt%のZnO、0〜10wt%のZrO2及び0〜30wt%のLn23(但し、LnはY、La、Gd、Ybを示す)から選択される一種又は二種以上(E成分)と
を含有する組成を有し、ガラス転移点温度が550℃以上であって、100〜300℃での熱膨張係数が74〜94×10-7/℃であり、且つ、屈服点温度とガラス転移点温度との差が50℃以上であるガラス基材を有することを特徴とする画像表示装置用スペーサ。
【請求項2】
A成分であるSiO2が36〜50wt%、
B成分であるB23が5〜15wt%、
C成分が、0〜25wt%のCaO、それぞれ0〜45wt%のSrO及びBaOから選択される24wt%以上のいずれか一種又は0〜15wt%のMgO、0〜25wt%のCaO、それぞれ0〜45wt%のSrO及びBaOから選択される合計量が24〜50wt%の二種以上であり、
D成分が、それぞれ0〜6wt%のLi2O、Na2O、K2O、及びCs2Oから選択される、0.6wt%以上のいずれか一種又は合計量が0.6〜10wt%の二種以上であり、
E成分が、0〜10wt%のAl23、0〜10wt%のZnO、0〜7wt%のZrO2及び0〜20wt%のLn23から選択される一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置用スペーサ。
【請求項3】
前記ガラス基材は、その表面に凹凸を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置用スペーサ。
【請求項4】
更に、前記ガラス基材の表面に抵抗膜を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置用スペーサ。
【請求項5】
気密容器内に、画像表示部材と、前記気密容器内の気密空間を保持するスペーサとを備える画像表示装置であって、前記スペーサは、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスペーサであることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−1831(P2007−1831A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185904(P2005−185904)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(391009936)株式会社住田光学ガラス (59)
【Fターム(参考)】