画像表示装置
【課題】インパルス駆動の問題点を解消しながら動画性能を向上させる。
【解決手段】1フレーム期間の輝度を2つのサブフレーム期間に分配する時分割階調駆動を行う液晶表示装置を、液晶表示素子の輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなるように構成する。これにより、輝度のピークをサブフレーム期間の終端あるいは後半に集中させて、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減する。サブフレーム期間に黒信号などを挿入する液晶表示装置も同様に構成できる。
【解決手段】1フレーム期間の輝度を2つのサブフレーム期間に分配する時分割階調駆動を行う液晶表示装置を、液晶表示素子の輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなるように構成する。これにより、輝度のピークをサブフレーム期間の終端あるいは後半に集中させて、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減する。サブフレーム期間に黒信号などを挿入する液晶表示装置も同様に構成できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などの画像表示装置に関し、特に、インパルス駆動を行う画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、動画を表示したときに画像がぼやけて見えることがある。この動画ぼやけには、主な原因が2つある。第1の原因は、液晶の応答速度が遅いことである。第2の原因は、ホールド駆動を行う液晶表示装置における視線追従効果である。従来の液晶表示装置では、液晶の応答速度が遅いことによる動画ぼやけが問題とされていた。近年では、液晶の応答速度が速くなった(例えば、映像信号のフレーム周波数が60Hzのときに1/60s以下で応答可能)ために、視線追従による動画ぼやけが注目されている。
【0003】
視線追従による動画ぼやけを軽減するために、従来から様々な方法が提案されている。それらの方法は、インパルス駆動とフレーム補間駆動に大別される。インパルス駆動は、光学波形が擬似的にブラウン管と同様のインパルス状になるように駆動する方法である。図27は、3種類の表示装置について画素の輝度の時間的変化を示す図である。ブラウン管(図27(a))では、輝度はインパルス状に変化するのに対して、ホールド駆動を行う液晶表示装置(図27(b))では、輝度は1フレーム期間に亘って保持される。インパルス駆動を行う液晶表示装置(図27(c))では、ブラウン管を模倣して、輝度は1フレーム期間内で一旦ゼロになる(あるいは、ゼロに近づく)。
【0004】
視線追従による動画ぼやけをインパルス駆動で軽減できる理由は、以下のとおりである。例えば、図28(a)に示すように、暗い背景の中に明るい領域(以下、縦バーという)を含む表示画面内で縦バーが右方向に移動する場合、観測者の視線は縦バーに追従して右方向に移動する。この場合、表示画面の1ライン分(図28(a)の破線部)を視線追従方向に時間積分することにより、動画ぼやけ幅を求めることができる。ホールド駆動を行う液晶表示装置(図28(b))では、輝度は1フレーム期間に亘って保持されるので、輝度の積分値が中間的な値となる範囲は広く、動画ぼやけ幅W1は広くなる。これに対して、インパルス駆動を行う液晶表示装置(図28(c))では、輝度は1フレーム期間内で一旦ゼロになる(あるいは、ゼロに近づく)ので、輝度の積分値が中間的な値となる範囲は狭く、動画ぼやけ幅W2は狭くなる。このようにインパルス駆動によれば、輝度を時間的に集中させて動画ぼやけを軽減することができる。
【0005】
光学波形の点から見ると、インパルス駆動には、黒を挿入する方法、グレーなどの中間調を挿入する方法、時分割方式などが含まれる。また、駆動の実現方法の点から見ると、インパルス駆動には、バックライトを点滅させる方法、映像信号に黒信号などの固定の映像信号を挿入する方法などが含まれる。
【0006】
フレーム補間駆動は、映像フレーム間で補間演算を行い、得られた補間フレームを元の映像フレーム間に挿入して、フレーム周波数を上げる駆動方法である。図29は、フレーム補間駆動の処理の例を示す図である。図29に示す例では、補間フレームP1は、フレームF1とF2に基づき補間演算によって生成される。同様に、補間フレームP2はフレームF2とF3に基づき生成され、補間フレームP3はフレームF3とF4に基づき生成される。フレーム補間駆動によれば、フレーム周波数を上げて映像の動きを滑らかにし、動画性能を向上させることができる。
【0007】
本願発明に関連する先行技術文献としては、以下のようなものがある。特許文献1には、垂直走査信号に同期して複数の直下型バックライトを順次点滅させることが開示されている。特許文献2には、液晶表示素子に書き込み信号印加用のスイッチング素子の他に、黒信号印加用のスイッチング素子を設けることが開示されている。特許文献3には、時分割方式に関し、後のサブフレームの輝度を入力画像の輝度よりも所定割合で減衰させることが開示されている。特許文献4には、時分割方式に関し、1フレーム期間の時間的中心またはこれに近いサブフレームから順に大きな階調レベルを与えることが開示されている。特許文献5には、非映像信号期間が1フレーム期間内で占める割合を調整することが開示されている。特許文献6には、前後の画像信号から動き適応的に内挿画像信号を形成し、内挿画像信号を元の画像信号とともに順次に使用して画像を表示すること、および、表示セルを継続発光させる時間または実効的発光期間を各フィールドまたはフレーム間で所定範囲に制限することが開示されている。
【0008】
図30は、特許文献4に開示された駆動方法(以下、時分割階調駆動という)における階調変換の例を示す図である。図30に示す例では、1フレーム期間の輝度を前半と後半の2つのサブフレーム期間に分配するための階調変換が行われる。この際、輝度は後半サブフレーム期間に優先的に分配される。例えば、変換前の階調が87.7%のとき、この階調に対応した輝度は75.0%となる。後半サブフレームを優先して輝度を2つのサブフレーム期間に分配すると、前半サブフレーム期間の輝度は50.0%、後半サブフレーム期間の輝度は100%となる。これら2つの輝度に対応した階調を求めると、前半サブフレーム期間の変換後の階調は73.0%、後半サブフレーム期間の変換後の階調は100%となる。他の階調についても、同様の方法で変換後の階調を求めることができる。なお、この例では、階調Kと輝度Yを0以上1以下の数で表したとき、両者の間にK=Y(1/γ) (ただし、γ=2.2)が成り立つ。
【0009】
時分割階調駆動には、(1)高階調時には黒挿入率が低く、最大輝度を維持できる、(2)低階調時には黒挿入率が高くなるが、このときは輝度自体が低いのでフリッカは少ない、(3)低階調時の動画性能が高い、などの利点がある。
【特許文献1】特開2000−321551号公報
【特許文献2】特開平9−127917号公報
【特許文献3】特開2002−23707号公報
【特許文献4】特開2005−173573号公報
【特許文献5】特開2003−295156号公報
【特許文献6】特許第3295437号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のインパルス駆動とフレーム補間駆動には、以下のような問題がある。インパルス駆動のうち黒を挿入する方法には、(1)黒を挿入する分だけ輝度が低下する、(2)輝度の低下を抑えるためにバックライトを明るくするとフリッカが目立つ、という問題がある。グレーを挿入する方法や時分割方式によれば、黒挿入率を下げて輝度の低下を抑えることにより、フリッカをある程度防止することができる。しかし、これらの方法には、黒を挿入する方法よりも動画性能が劣るという問題がある。また、時分割方式には、色ずれや擬似輪郭が発生するという問題がある。
【0011】
時分割階調駆動には、(1)高階調時の動画性能が低い、(2)高階調時には色ずれや擬似輪郭が発生することがある、(3)大画面のときや最大輝度が高いときにはフリッカが発生することがある、などの改善すべき点がある。
【0012】
フレーム補間駆動には、(1)フレーム間の相関が低い場合や動きベクトルを正確に検出できない場合などに、誤差を含む補間フレームが生成され画質が劣化する、(2)動きベクトル探索や補間演算や補間フレームの記憶などを行うために、回路規模が増大し、回路を高速で動作させる必要が生じる、(3)ぼやけ時間の理論限界はフレーム周波数によって定まるが、液晶の応答時間や液晶容量の充電時間などによって、ぼやけ時間が長くなりさらに擬似輪郭などが発生し動画性能が悪くなる、などの問題がある。
【0013】
それ故に、本発明は、インパルス駆動の問題点を解消しながら動画性能を向上させた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、インパルス駆動を行う画像表示装置であって、
複数の表示素子と、
フレーム単位で入力された映像信号に基づき、インパルス駆動用のサブフレーム単位の映像信号を求める映像変換回路と、
前記映像変換回路で求めた映像信号を用いて、前記表示素子を駆動する駆動回路とを備え、
前記表示素子の輝度の立上り時間がサブフレーム期間の長さに近づくように構成されており、所定範囲内の階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号と固定の映像信号とをサブフレーム単位で切り替えて出力するインパルス化処理回路とを含む。
【0016】
第3の発明は、第1の発明において、
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対してフレーム補間処理を行うフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号と固定の映像信号とをサブフレーム単位で切り替えて出力するインパルス化処理回路とを含む。
【0017】
第4の発明は、第1の発明において、
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む。
【0018】
第5の発明は、第1の発明において、
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対してフレーム補間処理を行うフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む。
【0019】
第6の発明は、第1の発明において、
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対して2倍速以上のフレーム補間処理を行い、サブフレーム単位の映像信号を出力するフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む。
【0020】
第7の発明は、第2〜第5のいずれかの発明において、
任意の階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする。
【0021】
第8の発明は、第4〜第6のいずれかの発明において、
前記時分割階調処理回路は、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行い、
最小階調と最大階調のちょうど中間よりも低い階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする。
【0022】
第9の発明は、第1の発明において、
前記表示素子に対する最大印加電圧は、前記表示素子の輝度の立上り時間の最大値がサブフレーム期間の長さにほぼ等しくなるように決定されていることを特徴とする。
【0023】
第10の発明は、第4〜第6のいずれかの発明において、
前記所定範囲内の階調については、前記時分割階調処理回路による階調変換後の階調値の組合せとして、前記表示素子の輝度の立上り時間がサブフレーム期間の長さに等しく、立下り時間がゼロであるという条件に最も合致する階調値の組合せが選択されていることを特徴とする。
【0024】
第11の発明は、第6の発明において、
前記時分割階調処理回路は、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行い、
最小階調と最大階調のちょうど中間よりも高い階調については、前記時分割階調処理回路による階調変換後の階調値の組合せとして、前記表示素子の輝度の立下り時間がゼロであるという条件に最も合致する階調値の組合せが選択されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記第1の発明によれば、インパルス駆動を行って所定範囲内の階調を表示するときに、輝度のピークをサブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させることができる。これにより、応答波形(輝度の時間変化)のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させることができる。
【0026】
上記第2の発明によれば、固定の映像信号を挿入するインパルス駆動を行って所定範囲内の階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。
【0027】
上記第3の発明によれば、高速の表示素子を用いて固定の映像信号を挿入するインパルス駆動を行って所定範囲内の階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。また、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを感じにくくなる。
【0028】
上記第4の発明によれば、時分割階調駆動を行って所定範囲内の階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。
【0029】
上記第5の発明によれば、高速の表示素子を用いて時分割階調駆動を行って所定範囲内の階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。また、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを感じにくくなる。
【0030】
上記第6の発明によれば、所定範囲内の階調を表示するときには、時分割階調駆動の効果により応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減すると共に、当該範囲外の階調を表示するときには、フレーム補間駆動の効果により動画性能を向上させることができる。また、フレーム補間駆動を行うことにより、表示画面に発生する色ずれを防止することができる。また、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを感じにくくなる。
【0031】
上記第7の発明によれば、インパルス駆動を行って任意の階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。
【0032】
上記第8の発明によれば、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配する時分割階調駆動を行って、最小階調と最大階調のちょうど中間よりも低い階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。
【0033】
上記第9の発明によれば、表示素子に対する最大印加電圧を好適に決定することにより、輝度の立上り時間の最大値をサブフレーム期間の長さにほぼ等しくし、所定範囲内の階調を表示するときに輝度のピークをサブフレーム期間の終端に集中させることができる。
【0034】
上記第10の発明によれば、階調変換後の階調値の組合せを好適に決定することにより、所定範囲内の階調を表示するときに輝度のピークをサブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させることができる。
【0035】
上記第11の発明によれば、階調変換後の階調値の組合せを好適に決定することにより、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配する時分割階調駆動を行って、最小階調と最大階調のちょうど中間よりも高い階調を表示するときに、フレーム補間駆動の効果により動画性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図1に示す液晶表示装置1は、タイミング制御回路10、駆動回路20、画素アレイ30、2倍速化処理回路40、および、インパルス化処理回路50を備えている。液晶表示装置1は、映像信号X1に対して2倍速化処理とインパルス化処理を行い、得られた映像信号X2を用いてインパルス駆動を行う。本実施形態では、2倍速化処理回路40とインパルス化処理回路50が、フレーム単位で入力された映像信号X1に基づき、インパルス駆動用のサブフレーム単位の映像信号X2を求める映像変換回路に該当する。以下、映像信号X1のフレーム周波数は60Hzであるとする。
【0037】
液晶表示装置1に供給される入力信号Xには、画像データを表す映像信号X1と表示タイミングを定める同期信号T1とが含まれている。映像信号X1は2倍速化処理回路40に入力され、同期信号T1はタイミング制御回路10に入力される。タイミング制御回路10は、同期信号T1に基づき、2倍速化処理回路40およびインパルス化処理回路50に対する制御信号C1と、駆動回路20に対する同期信号T2とを出力する。画素アレイ30は、2次元状に配置された複数の液晶表示素子31を含んでいる。駆動回路20は、同期信号T2とインパルス化処理回路50から出力された映像信号X2と用いて、液晶表示素子31を駆動する。これにより、液晶表示装置1は画面を表示する。
【0038】
液晶表示装置1では、1フレーム期間(1/60s)は、前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に2等分される。タイミング制御回路10から出力される制御信号C1には、前半サブフレーム期間か後半サブフレーム期間かを示す信号が含まれる。液晶表示装置1では、サブフレーム期間の長さ(以下、STと表す)は1/120sである。
【0039】
2倍速化処理回路40は、処理部41およびフレームメモリ42を含み、映像信号X1をフレーム単位で2倍の速度で2回繰り返して出力する。より詳細には、フレームメモリ42は少なくとも1フレーム分の映像信号に対応した容量を有し、2倍速化処理回路40に入力された映像信号X1はフレームメモリ42に書き込まれる。処理部41は、フレームメモリ42に書き込まれた映像信号をフレーム単位で書き込み時の2倍の速度で2回繰り返して読み出して出力する。この際、処理部41は、制御信号C1に従い、前半サブフレーム期間でフレームを1枚出力し、後半サブフレーム期間で同じフレームを再び出力する。これにより、2倍速化処理回路40から出力される映像信号のフレーム周波数は、映像信号X1のフレーム周波数の2倍(120Hz)になる。
【0040】
インパルス化処理回路50は、切替スイッチ51および黒レベル発生器52を含み、2倍速化処理回路40から出力された映像信号と固定の映像信号をサブフレーム単位で切り替えて出力する。より詳細には、黒レベル発生器52は、黒信号(黒を表示するための映像信号)を固定的に出力する。切替スイッチ51は、制御信号C1に従い、前半サブフレーム期間では黒レベル発生器52から出力された黒信号を出力し、後半サブフレーム期間では2倍速化処理回路40から出力された映像信号を出力する。インパルス化処理回路50から出力された映像信号X2は、駆動回路20に供給され、液晶表示素子31の駆動に用いられる。
【0041】
図2は、液晶表示装置1におけるフレーム単位での処理の流れを示す図である。2倍速化処理回路40には1/60sごとに、フレームF1、F2、…が入力される。フレームF1は、2倍速化処理回路40で2倍速化され、同じ内容の2枚のサブフレームからなる新たなフレームNF1となる。フレームNF1に含まれる2枚のサブフレームのうち、前半サブフレームはインパルス化処理回路50で黒フレーム(全面が黒のフレーム)に置換され、後半サブフレームはインパルス化処理回路50からそのまま出力される。以降のフレームに対しても、同様の処理が行われる。したがって、映像信号X1としてフレームF1、F2、…が入力されたとき、映像信号X2として黒フレームとフレームF1、F2、…とが交互に出力される。
【0042】
駆動回路20は映像信号X2に応じた電圧を液晶表示素子31に印加し、液晶表示素子31の輝度は印加電圧に応じて変化する。以下、液晶表示素子31の輝度の時間変化を「応答波形」といい、輝度が高くなるときの所要時間を「立上り時間」、輝度が低くなるときの所要時間を「立下り時間」という。なお、一般に、立上り時間や立下り時間を正確に測定することは困難であるので、輝度が変化量の10%から90%まで変化するときの所要時間を0.8で割った値などを立上り時間や立下り時間として使用することもある。
【0043】
図3は、液晶表示装置1における、液晶表示素子31への印加電圧と応答波形を示す図である。図3に示すように、印加電圧は、前半サブフレーム期間では黒レベルに対応した電圧Vl、後半サブフレーム期間では映像信号X2に対応した電圧Vxとなる。これに応じて輝度は、前半サブフレーム期間では黒レベルY0、後半サブフレーム期間ではレベルYx(ただし、Yx>Y0)となる。
【0044】
液晶表示装置1では、輝度がY0からYxに変化するときの所要時間が立上り時間Tr、輝度がYxからY0に変化するときの所要時間が立下り時間Tfとなる。液晶表示装置1は、任意の階調を表示するときに、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなる(Tr>TfかつTr>ST/2となる)ように構成される。なお、Tr>STのときには、輝度は後半サブフレーム期間内にレベルYxに到達しない。
【0045】
図3の上段に示す応答波形では、立上り時間Trはサブフレーム期間の長さSTに一致している(Tr=ST)。この場合、輝度は後半サブフレーム期間の終端でレベルYxに到達し、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端に集中する。中段の応答波形では、立上り時間Trはサブフレーム期間の長さSTを超えている(Tr>ST)。この場合、輝度は後半サブフレーム期間の終端で最大値(Yxよりも低いレベル)に到達し、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端に集中する。下段の応答波形では、立上り時間Trはサブフレーム期間の長さST未満で、その半分よりも長い(ST/2<Tr<ST)。この場合、輝度は後半サブフレーム期間の後半でレベルYxに到達し、輝度のピークは後半サブフレーム期間の後方に集中する。液晶表示装置1では、Tr=STかつTf≒0となることが最も好ましい。
【0046】
図4を参照して、液晶表示装置1の効果を説明する。図4には、Tr=Tf=0の場合、Tr>Tfの場合、および、Tr<Tfの場合の応答波形が記載されている。このうち、Tr>Tfの場合の応答波形(中段の応答波形)が液晶表示装置1の応答波形であり、他の2つは比較のために記載されている。輝度がピークでない部分(斜線を付した部分)は、インパルス化処理回路50によって黒が挿入された部分である。以下、輝度のピークを全体として、黒を挿入した部分の割合を「黒挿入率」という。
【0047】
図4に示すように、黒挿入率は、Tr=Tf=0の場合には50%となり、Tr>Tfの場合には50%を超え、Tr<Tfの場合には50%未満となる。液晶表示装置1では、Tr>Tfとなるので、黒挿入率は50%を超える。また、Tr>ST/2となるので、輝度のピークはサブフレーム期間の半分より短い期間に集中する。インパルス駆動を行う表示装置では、黒挿入率が大きいほど、インパルス度が高くなり動画性能が向上する。したがって、図3に示す応答波形が得られる液晶表示装置1によれば、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画性能を向上させることができる。
【0048】
以下、図3に示す応答波形が得られる液晶表示装置1の構成方法を説明する。一般にノーマリーブラック型の液晶には、(1)最小輝度から変化するときの立上り時間は、最小輝度へ変化するときの立下り時間よりも長い、(2)最小輝度から変化するときの立上り時間は、印加電圧が高いときほど短い、という性質がある。図5は、ノーマリーブラック型の液晶の応答時間の一例を示すテーブルである。図5に示す例では、階調が0から255へ変化するときの立上り時間(5.47ms)は、階調が255から0へ変化するときの立下り時間(3.13ms)よりも長く、階調が0から128へ変化するときの立上り時間(7.97ms)よりも短い。
【0049】
図6は、ノーマリーブラック型の液晶の特性を示す図である。図6には、印加電圧と透過率の関係が実線で、印加電圧と最小輝度からの立上り時間(以下、立上り時間TRという)との関係が太破線で記載されている。ノーマリーブラック型の液晶では、印加電圧が高くなると透過率は高くなる。透過率は、印加電圧が低い間はあまり変化しないが、印加電圧があるレベルを超えると急激に増大し、印加電圧が別のあるレベルを超えると再びあまり変化しなくなる。
【0050】
以下、透過率が変化する範囲に対応した印加電圧の範囲を「範囲R」という。一般に液晶表示装置では、範囲R内で、最小階調に対応した印加電圧(以下、最小印加電圧Vlという)と、最大階調に対応した印加電圧(以下、最大印加電圧Vhという)とを決定する必要がある。従来の液晶表示装置では、最小印加電圧Vlと最大印加電圧Vhは、主に輝度やコントラストが最大になるように決定される。また、これらの電圧を決定するときに、視野角特性などを考慮することもある。
【0051】
範囲R内で印加電圧を変化させたときの立上り時間TRとサブフレーム期間の長さSTとの大小関係によって、液晶は、常にTR>STとなる液晶(低速の液晶;以下、A型という)と、常にTR<STとなる液晶(高速の液晶;以下、C型という)と、印加電圧に応じてTRとSTの大小関係が切り替わる液晶(中速の液晶;以下、B型という)とに分類される。図6には、これら3種類の液晶について、印加電圧と立上り時間TRの関係が記載されている。本実施形態に係る液晶表示装置1では、B型またはC型の液晶が用いられる。
【0052】
液晶表示装置1では、最小印加電圧Vlは、範囲R内で任意の方法で決定される。例えば、従来と同様の方法で最小印加電圧Vlを決定してもよく、範囲Rの下側の境界値やそれよりも少し大きい値を最小印加電圧Vlとしてもよい。一方、最大印加電圧Vhは、液晶の応答速度を考慮して、以下の方法で決定される(図7を参照)。
【0053】
まず参考のために説明すると、A型(低速)の液晶の場合には、最大印加電圧Vhは、最小印加電圧Vlと同様に範囲R内で任意の方法で決定される。例えば、範囲Rの上側の境界値やそれよりも少し小さい値を最大印加電圧Vhとしてもよい(図7(a)を参照)。A型の液晶では、範囲R内において常にTR>STとなるので、図3に示す電圧を印加したときの立上り時間Trは、後半サブフレーム期間の印加電圧Vxにかかわらず、サブフレーム期間の長さSTよりも長くなる(Tr>ST)。このため、図3の中段に示す応答波形が得られ、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端に集中する。したがって、A型の液晶を用いれば、任意の階調についてインパルス度の高い応答波形を得ることができる。
【0054】
しかし、A型の液晶を液晶表示装置1に用いれば、特段の工夫を行わなくても、任意の階調についてインパルス度の高い応答波形が得られる。そこで、A型の液晶を用いた液晶表示装置1は本発明の対象外とし、本実施形態に係る液晶表示装置1ではB型またはC型の液晶を用いる。B型またはC型の液晶を用いた液晶表示装置1は、以下に示すように、液晶の応答速度に応じて最大印加電圧Vhを決定することにより、立上り時間Trがサブフレーム期間の長さに近づくように構成される。
【0055】
B型(中速)の液晶の場合には、立上り時間TRがサブフレーム期間の長さSTにほぼ等しくなる電圧(TR≒STとなる電圧)を最大印加電圧Vhとする(図7(b)を参照)。上述したように、ノーマリーブラック型の液晶では、最小輝度から変化するときの立上り時間は、印加電圧が高いときほど短い(性質2)。したがって、TR≒STとなる電圧を最大印加電圧VhとしてB型の液晶を使用した場合、図3に示す電圧を印加したときの立上り時間Trは、最大階調(白階調)のときに最小値STとなり、それ以外のときにはSTよりも長くなる。このため、図3の上段あるいは中段に示す応答波形が得られ、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端に集中する。したがって、B型の液晶を用いた場合にも、任意の階調についてインパルス度の高い応答波形を得ることができる。
【0056】
C型(高速)の液晶の場合には、TRm>ST/2を満たす立上り時間の最小値TRmを決定し、立上り時間TRが最小値TRmにほぼ等しくなる電圧(TR≒TRmとなる電圧)を最大印加電圧Vhとする(図7(c)を参照)。TRm≒STとなる電圧を最大印加電圧VhとしてC型の液晶を使用した場合、図3に示す電圧を印加したときの立上り時間Trは、最大階調(白階調)のときに最小値TRm、それ以外のときにはTRmよりも長くなり、いずれにしてもST/2よりも長くなる。このため、図3の上段、中段あるいは下段に示す応答波形が得られ、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端または後方に集中する。したがって、C型の液晶を用いた場合にも、任意の階調についてインパルス度の高い応答波形を得ることができる。なお、B型の液晶について、C型の液晶と同じ方法で最大印加電圧Vhを決定してもよい。
【0057】
以上の方法で決定された最小印加電圧Vlと最大印加電圧Vhは、液晶表示素子31を駆動するときの基準電圧として用いられる。図8は、液晶表示装置1の階調電圧生成回路の構成を示すブロック図である。図8に示すように、駆動回路20の外部には階調電圧設定回路80が設けられ、階調電圧設定回路80は駆動回路20に対して複数の階調電圧Vl、Vs1〜Vs8、Vhを出力する。駆動回路20は、直列接続された16個の抵抗を含む抵抗分割回路R1、R9と、直列接続された32個の抵抗を含む抵抗分割回路R2〜R8とを含んでいる。階調電圧設定回路80から出力された2個の階調電圧に基づき、抵抗分割回路R1、R9は16個の階調電圧を出力し、抵抗分割回路R2〜R8は32個の階調電圧を出力する。抵抗分割回路R1〜R9で得られた256個の階調電圧は、液晶表示素子31の駆動に用いられる。
【0058】
以上に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置1は、映像変換回路として2倍速化処理回路40とインパルス化処理回路50を備え、任意の階調を表示するときに、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなるように構成される。したがって、液晶表示装置1によれば、固定の映像信号を挿入するインパルス駆動を行うときに、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させることができる。特に、輝度の立上り時間Trの最大値がサブフレーム期間の長さSTにほぼ等しくなるように最大印加電圧Vhを決定することにより、輝度のピークをサブフレーム期間の終端に集中させることができる。
【0059】
なお、液晶表示装置1において、切替スイッチ51は、前半サブフレーム期間では2倍速化処理回路40から出力された映像信号を出力し、後半サブフレーム期間では黒レベル発生器52から出力された黒信号を出力してもよい。また、インパルス化処理回路50は、黒レベル発生器52に代えて、グレー信号(グレーを表示するための映像信号)などを固定的に出力する中間調レベル発生器を含んでいてもよい。これら変形例に係る液晶表示装置も、同様の効果を奏する。
【0060】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図9に示す液晶表示装置2は、第1の実施形態に係る液晶表示装置1(図1)に、フレーム補間処理回路60を追加したものである。液晶表示装置2は、映像信号X1に対してフレーム補間処理、2倍速化処理およびインパルス化処理を行い、得られた映像信号X2を用いてインパルス駆動を行う。本実施形態では、2倍速化処理回路40、インパルス化処理回路50およびフレーム補間処理回路60が映像変換回路に該当する。以下、各実施形態の構成要素のうち既に述べた実施形態と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0061】
フレーム補間処理回路60は、処理部61およびフレームメモリ62を含み、映像信号X1に対して5/4倍速フレーム補間処理を行う。より詳細には、フレームメモリ62は少なくとも1フレーム分の映像信号に対応した容量を有し、フレーム補間処理回路60に入力された映像信号X1はフレームメモリ62に書き込まれる。処理部61は、映像信号X1を現フレーム、フレームメモリ62に記憶された映像信号を前フレームとして、2枚のフレームから動画部分を検出する。次に処理部61は、前フレームと現フレームの間の時刻における動画部分の位置を求め、求めた位置に動画部分を移動させたフレーム(動き補償されたフレーム)を補間フレームとして前フレームと後フレームの間に挿入する。処理部61は、4枚のフレームが入力されるたびに、5枚のフレームを出力する。これにより、フレーム補間処理回路60から出力される映像信号のフレーム周波数は、映像信号X1のフレーム周波数の5/4倍(75Hz)になる。
【0062】
なお、フレーム補間処理回路60は、例えば、前フレームと現フレームに基づき動きベクトルを求め、求めた動きベクトルを用いて補間フレームを作成してもよく、これ以外の任意の方法で補間フレームを作成してもよい。
【0063】
フレーム補間処理回路60から出力された映像信号には、第1の実施形態と同様に、2倍速化処理とインパルス化処理が行われる。インパルス化処理回路50から出力された映像信号X2は、駆動回路20に供給され、液晶表示素子31の駆動に用いられる。
【0064】
液晶表示装置2では、フレーム補間処理回路60から出力される映像信号の1フレーム期間(1/75s)が、前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に2等分され、サブフレーム期間の長さ(以下、ST’と表す)は1/150sとなる。
【0065】
図10は、液晶表示装置2におけるフレーム単位での処理の流れを示す図である。フレーム補間処理回路60には1/60sごとに、フレームF1、F2、…が入力される。フレーム補間処理回路60では、フレームF1とF2に基づき補間処理により補間フレームP1が生成される。同様に、フレームF2とF3に基づき補間フレームP2が生成され、フレームF3とF4に基づき補間フレームP3が生成され、フレームF4とF5に基づき補間フレームP4が生成される。フレーム補間処理回路60からは1/75sごとに、映像信号X1に含まれていたフレームと補間フレームとが1対4の割合で出力される。以降の処理は第1の実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0066】
液晶表示装置2は、任意の階調を表示するときに、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さST’の半分よりも長くなる(Tr>TfかつTr>ST’/2となる)ように構成される。液晶表示装置2では、Tr=ST’かつTf≒0となることが最も好ましい。
【0067】
以下、液晶表示装置2にフレーム補間処理回路60を設ける理由を説明する。図11は、図6と同様に、ノーマリーブラック型の液晶の特性を示す図である。図11において、サブフレーム期間の長さをSTとすると、特性1はA型(低速)、特性2はB型(中速)、特性3はC型(高速)と判断される。ここで、サブフレーム期間の長さをST’(ただし、ST’<ST)に短くすると、特性1と特性2はA型、特性3はB型と判断される。このようにサブフレーム期間の長さを短くすれば、B型の液晶をA型の液晶として使用することや、C型の液晶をA型あるいはB型の液晶として使用することが可能となる。
【0068】
例えば、C型の液晶をB型の液晶として使用するときには、液晶表示装置2にフレーム補間処理回路60を設けてサブフレーム期間の長さをST’に短くし、立上り時間TRがST’にほぼ等しくなる電圧(TR≒ST’となる電圧)を最大印加電圧Vhとすればよい。これにより、図3に示す電圧を印加したときの立上り時間Trは、最大階調(白階調)のときに最小値ST’となり、それ以外のときにはST’よりも長くなる。
【0069】
図12は、フレーム補間処理回路60を設けた場合と設けない場合の印加電圧と応答波形を示す図である。フレーム補間処理回路60を設けない場合には、液晶の特性によっては、輝度のピークが集中する程度が低くなることがある(図12(a))。このような場合には、フレーム補間処理回路60を設けてサブフレーム期間の長さをST’に短くすることにより、輝度のピークが集中する程度を高くすることができる(図12(b))。図12(b)に示す例では、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端に集中している。このようにフレーム補間処理回路60を設けることにより、C型の液晶を用いる場合でもインパルス度の高い応答波形を得ることができる。
【0070】
また、液晶表示装置2では、映像信号X2のフレーム周波数が高くなるので、インパルス駆動を行ってもフリッカを感じにくくなる。観測者が画面を直視してもフリッカを認識しないようにするためには、映像信号X2のフレーム周波数を150Hz以上にすればよい。
【0071】
なお、サブフレーム期間の長さがSTのときにA型と判断される液晶を液晶表示装置2に用いれば、特段の工夫を行わなくても、任意の階調についてインパルス度の高い応答波形が得られる。そこで、サブフレーム期間の長さがSTのときにA型と判断される液晶を用いた液晶表示装置2は本発明の対象外とし、本実施形態に係る液晶表示装置2ではサブフレーム期間の長さがSTのときにB型あるいはC型と判断される液晶を用いる。そのような液晶を用いた液晶表示装置2は、上述したように、サブフレーム期間の長さST’と液晶の応答速度に応じて最大印加電圧Vhを決定することにより、立上り時間Trがサブフレーム期間の長さに近づくように構成される。
【0072】
また、印加電圧の範囲を広くする(最大印加電圧Vhを高くする)ためには、サブフレーム期間の長さST’は短いことが好ましいが、回路設計の点からはサブフレーム期間の長さST’は長いことが好ましい。液晶表示装置2の設計時には、これらの点を考慮してサブフレーム期間の長さST’を決定する必要がある。
【0073】
以上に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置2は、映像変換回路として2倍速化処理回路40、インパルス化処理回路50およびフレーム補間処理回路60を備え、任意の階調を表示するときに、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、フレーム補間後の映像信号のサブフレーム期間の長さST’の半分よりも長くなるように構成される。したがって、液晶表示装置2によれば、高速の液晶を用いて固定の映像信号を挿入するインパルス駆動を行うときに、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させることができる。また、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを減らすこともできる。
【0074】
液晶表示装置2においても第1の実施形態と同様に、切替スイッチ51は前半サブフレーム期間では映像信号を出力し、後半サブフレーム期間では黒信号を出力してもよく、インパルス化処理回路50は中間調レベル発生器を含んでいてもよい。また、液晶表示装置2は、2倍速化処理回路40に代えて、映像信号X1をフレーム単位でm倍(mは3以上の整数)の速度でm回繰り返して出力するm倍速化処理回路を備えていてもよい。この場合、インパルス化処理回路50は、m倍速化処理されたフレームのうちの任意枚を黒フレームに置換してもよく、黒フレームに置換する枚数を適宜切り替えてもよい。この場合でも、サブフレーム期間の長さST’を考慮して最大印加電圧Vhを決定することにより、黒挿入率とインパルス度を高め、動画性能を向上させることができる。
【0075】
(第3の実施形態)
図13は、本発明の第3の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図13に示す液晶表示装置3は、第1の実施形態に係る液晶表示装置1(図1)において、インパルス化処理回路50を時分割階調処理回路70に置換したものである。液晶表示装置3は、映像信号X1に対して2倍速化処理と時分割階調処理を行い、得られた映像信号X2を用いてインパルス駆動を行う。本実施形態では、2倍速化処理回路40と時分割階調処理回路70が映像変換回路に該当する。
【0076】
液晶表示装置3では、第1の実施形態と同様に、1フレーム期間(1/60s)は前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に2等分され、サブフレーム期間の長さ(以下、STと表す)は1/120sとなる。
【0077】
時分割階調処理回路70は、処理部71およびルックアップテーブル(Look Up Table :以下、LUTと略称する)72を含み、2倍速化処理回路40から出力された映像信号に対して時分割階調処理を行う。時分割階調処理回路70は、1フレーム期間の輝度を前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に分配するための階調変換を行う。この際、前半サブフレーム期間よりも後半サブフレーム期間に、より多くの輝度が分配される。
【0078】
LUT72は、映像信号X1の各階調について、前半サブフレーム期間用と後半サブフレーム期間用の変換後の階調を記憶している。処理部71は、LUT72を参照して、2倍速化処理回路40から出力された映像信号に対して階調変換を行う。この際、処理部71は、制御信号C1に従いLUT72から、前半サブフレーム期間では前半サブフレーム期間用の変換後の階調を読み出し、後半サブフレーム期間では後半サブフレーム期間用の変換後の階調を読み出す。時分割階調処理回路70から出力された映像信号X2は、駆動回路20に供給され、液晶表示素子31の駆動に用いられる。
【0079】
図14は、液晶表示装置3におけるフレーム単位での処理の流れを示す図である。2倍速化処理回路40には1/60sごとに、フレームF1、F2、…が入力される。フレームF1は、2倍速化処理回路40で2倍速化され、同じ内容の2枚のサブフレームからなる新たなフレームNF1となる。フレームNF1に含まれる2枚のサブフレームは、時分割階調処理回路70で階調変換され、前半サブフレームS1Aと後半サブフレームS1Bになる。以降のフレームに対しても、同様の処理が行われる。したがって、映像信号X1としてフレームF1、F2、…が入力されたとき、映像信号X2としてサブフレームS1A、S1B、S2A、S2B、…が順に出力される。
【0080】
以下、最小階調と最大階調のちょうど中間の階調を「中間階調」といい、中間階調よりも低い階調を「低階調」、中間階調よりも高い階調を「高階調」という。また、輝度の最小値をY0、輝度の最大値をYmと表す。図15は、液晶表示装置3における応答波形の例を示す図である。図15には、最大階調時、高階調時、中間階調時、低階調時の応答波形が記載されている。
【0081】
図15に示すように、時分割階調処理回路70の作用により、後半サブフレーム期間の輝度は前半サブフレーム期間の輝度よりも高くなる。例えば、低階調時の輝度は、前半サブフレーム期間では最小値Y0、後半サブフレーム期間では映像信号X1に応じたレベルとなる。中間階調時の輝度は、前半サブフレーム期間では最小値Y0、後半サブフレーム期間では最大値Ymとなる。高階調時の輝度は、前半サブフレーム期間では映像信号X1に応じたレベル、後半サブフレーム期間では最大値Ymとなる。
【0082】
液晶表示装置3は、第1の実施形態と同様に、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなる(Tr>TfかつTr>ST/2となる)ように構成される。ただし、液晶表示装置3は、少なくとも低階調時に上記の条件を満たせばよく、高階調時には上記の条件を満たすことが好ましいが、必ずしもその必要はない。液晶表示装置3では、低階調時でも高階調時でもTr=STかつTf≒0となることが最も好ましい。
【0083】
なお、図15に示す応答波形は、Tr=STの場合のものである。この応答波形は上記の条件を満たす応答波形の一例であり、これ以外にも上記の条件を満たす応答波形は多数ある(図16を参照)。図16では、上段の応答波形(Tr=STの場合)だけでなく、中段の応答波形(Tr>STの場合)も下段の応答波形(ST/2<Tr<STの場合)も上記の条件を満たす。
【0084】
図15と図16を参照して、液晶表示装置3の効果を説明する。液晶表示装置3では、少なくとも低階調時にTr>TfかつTr>ST/2となるので、少なくとも低階調時に黒挿入率は50%を超え、輝度のピークはサブフレーム期間の半分より短い期間に集中する。インパルス駆動を行う表示装置では、黒挿入率が大きいほど、インパルス度が高くなり動画性能が向上する。したがって、図15や図16に示す応答波形が得られる液晶表示装置3によれば、少なくとも低階調を表示するときには、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画性能を向上させることができる。
【0085】
また、中間階調よりも高い階調(全部でも一部でもよい)について、Tr>TfかつTr>ST/2を満たすことができれば、同様の理由により、表示画面内の当該階調の画素については、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画性能を向上させることができる。
【0086】
また、液晶表示装置3による時分割階調駆動では、黒を固定的に挿入するインパルス駆動よりも、高階調時に黒挿入率は低く、輝度は高くなる。したがって、黒を固定的に挿入するインパルス駆動よりも、バックライトの明るさを抑え、フリッカを抑制することができる。このように液晶表示装置3によれば、フリッカを抑制しながら、動画性能を向上させることができる。
【0087】
以下、図15や図16に示す応答波形が得られる液晶表示装置3の構成方法を説明する。低階調時にTr>TfかつTr>ST/2となる応答波形を得るためには、第1の実施形態で説明したように、液晶の特性に応じて最大印加電圧Vhを決定すればよい。具体的には、B型またはC型の液晶を用い、B型(中速)の液晶を用いる場合には、TR≒STとなる電圧を最大印加電圧Vhとする。C型(高速)の液晶を用いる場合には、TRm>ST/2を満たす立上り時間の最小値TRmを決定し、立上り時間TRが最小値TRmにほぼ等しくなる電圧(TR≒TRmとなる電圧)を最大印加電圧Vhとする。これにより、低階調時の応答波形についてインパルス度を高くすることができる。なお、液晶表示装置3では、決定した最大印加電圧Vhに応じて、時分割階調処理回路70のLUT72の内容を決定する必要がある。
【0088】
ノーマリーブラック型の液晶の中には、上記性質1および2に加えて、(3)最大輝度へ変化するときの立上り時間は、最大輝度から変化するときの立下り時間よりも短い、という性質を有するものがある。例えば、図5に示す例では、階調が128から255へ変化するときの立上り時間(2.13ms)は、階調が255から128へ変化するときの立下り時間(4.01ms)よりも短い。
【0089】
この場合、最大印加電圧Vhを調整しただけでは、図17に示す応答波形が得られる。図17に示す高階調時の応答波形では、Tr<Tfとなり、黒挿入率は50%未満となる。このように、高階調時の応答波形ではインパルス度が低くなることがある。
【0090】
このような高階調時の応答波形を好ましい応答波形に変えるには、例えば、応答波形のインパルス度が高くなるよう輝度の分配を工夫すればよい。従来の時分割階調駆動(図30)では、前半サブフレーム期間に輝度が分配されるのは、後半サブフレーム期間に最大の輝度が分配されるときに限られ、低階調時の前半サブフレーム期間の輝度は0、高階調時の後半サブフレーム期間の輝度は最大値となる。
【0091】
これに対して、時分割階調処理回路70は、応答波形のインパルス度が高くなるように、輝度を前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に分配する。一般に、輝度を2つに分配するときに、輝度の組合せは複数とおりある。例えば、図18に示すように、分配前の輝度(フレーム輝度)が52.5%のときには、この輝度を(5%、100%)、(15%、90%)あるいは(25%、80%)などに分配することができる。分配後の輝度をγ=2.2のγ特性に従って階調に逆変換すると、各サブフレーム期間の階調は(26%、100%)、(42%、95%)、(53%、90%)となる。
【0092】
これら輝度の組合せの中から、応答波形のインパルス度が最も高くなる組合せを選択する。図18に示す例では、52.5%の輝度を25%と80%に分配したときに、応答波形のインパルス度が最大になるとする。この場合、時分割階調処理回路70のLUT72には、フレーム輝度52.5%に対応した階調に対応して、各サブフレーム期間の階調として(53%、90%)が記憶される。
【0093】
複数の輝度の組合せの中から1個の組合せを選択するときには、例えば以下の手順を実行すればよい。すなわち、まずTr≧Tfを第1の条件とし、この条件を満たす組合せを残す。複数の組合せが残った場合には、Tr≒STを第2の条件とし、この条件を満たす組合せを残す。それでも複数の組合せが残った場合には、Tf≒0を第3の条件として、同様の処理を行う。残った組合せの中から、任意の方法で1個の組合せを選択する。
【0094】
なお、計算で求めた応答波形と実際の応答波形には差異があるので、実際の応答波形を観測しながら輝度の組合せを選択することが好ましい。また、ここまで、応答波形のインパルス度を高くする方法として、最大印加電圧Vhを調整する方法と、輝度の分配を工夫する方法とを説明したが、液晶表示装置3にこのうち一方を適用してもよい。輝度の分配を工夫するだけで、低階調時の応答波形についてTr>TfかつTr>ST/2にできる場合には、最大印加電圧Vhを調整する必要はない。
【0095】
このように、ある範囲の階調について、Tr>TfかつTr>TS/2となる応答波形を得るためには、当該範囲の階調について、時分割階調処理回路70による階調変換後の階調値の組合せとして、Tr=ST、Tf≒0という条件に最も合致する階調値の組合せを選択すればよい。
【0096】
以上に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置3は、映像変換回路として2倍速化処理回路40と時分割階調処理回路70を備え、少なくとも低階調時に、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなるように構成される。このような液晶表示装置3によれば、時分割階調駆動を行って低階調を表示するときに、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させることができる。また、高階調時にもTr>TfかつTr>ST/2となる液晶表示装置3によれば、時分割階調駆動を行って任意の階調を表示するときに、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させることができる。
【0097】
(第4の実施形態)
図19は、本発明の第4の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図19に示す液晶表示装置4は、第3の実施形態に係る液晶表示装置3(図13)に、フレーム補間処理回路60を追加したものである。液晶表示装置4は、映像信号X1に対してフレーム補間処理、2倍速化処理および時分割階調処理を行い、得られた映像信号X2を用いてインパルス駆動を行う。本実施形態では、2倍速化処理回路40、フレーム補間処理回路60および時分割階調処理回路70が映像変換回路に該当する。
【0098】
液晶表示装置4では、第2の実施形態と同様に、フレーム補間処理回路60から出力される映像信号の1フレーム期間(1/75s)が、前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に2等分され、サブフレーム期間の長さ(以下、ST’と表す)は1/150sとなる。
【0099】
図20は、液晶表示装置4におけるフレーム単位での処理の流れを示す図である。フレーム補間処理回路60には1/60sごとに、フレームF1、F2、…が入力される。フレーム補間処理回路60では、第2の実施形態と同様に、補間フレームP1、P2、…が生成され、フレーム補間処理回路60からは1/75sごとに、映像信号X1に含まれていたフレームと補間フレームとが1対4の割合で出力される。以降の処理は第3の実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0100】
液晶表示装置4にフレーム補間処理回路60を設ける理由は、第2の実施形態で述べた理由と同じである。例えば、C型(高速)の液晶をB型(中速)の液晶として使用するときには、液晶表示装置4にフレーム補間処理回路60を設けて、サブフレーム期間の長さをST’に短くし、立上り時間TRがST’にほぼ等しくなる電圧(TR≒ST’となる電圧)を最大印加電圧Vhとすればよい。
【0101】
以上に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置4は、映像変換回路として2倍速化処理回路40、フレーム補間処理回路60および時分割階調処理回路70を備え、少なくとも低階調時に、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなるように構成される。したがって、液晶表示装置4によれば、高速の液晶を用いた場合でも、第3の実施形態と同様に、動画性能を向上させることができる。また、第2の実施形態と同様に、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを感じにくくなる。
【0102】
(第5の実施形態)
図21は、本発明の第5の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図21に示す液晶表示装置5は、第4の実施形態に係る液晶表示装置4(図19)において、フレーム補間処理回路60と2倍速化処理回路40をフレーム補間処理回路65に置換したものである。液晶表示装置5は、映像信号X1に対してフレーム補間処理と時分割階調処理を行い、得られた映像信号X2を用いてインパルス駆動を行う。本実施形態では、フレーム補間処理回路65と時分割階調処理回路70が映像変換回路に該当する。
【0103】
フレーム補間処理回路65は、処理部66およびフレームメモリ67を含み、映像信号X1に対して、N倍速フレーム補間処理(ただし、Nは2以上の数)を行う。フレーム補間処理回路65の構成は、第2の実施形態に係るフレーム補間処理回路60と同様である。ただし、処理部66は、1枚の入力フレームに対応して、2枚以上のフレームを出力する。また、液晶表示装置5では、フレーム補間処理回路65から出力される映像信号の1フレーム期間が、そのまま、時分割階調処理回路70における前半サブフレーム期間または後半サブフレーム期間となる。
【0104】
フレーム補間処理回路65から出力された映像信号には、第3の実施形態と同様に、時分割階調処理が行われる。時分割階調処理回路70から出力された映像信号X2は、駆動回路20に供給され、液晶表示素子31の駆動に用いられる。
【0105】
以下、例として、N=2の場合とN=2.5の場合について説明する。N=2の場合には、フレーム補間処理回路65から出力される映像信号のフレーム周波数は、映像信号X1のフレーム周波数の2倍(120Hz)になり、サブフレーム期間の長さ(以下、STと表す)は1/120sとなる。
【0106】
図22は、N=2の場合のフレーム単位での処理の流れを示す図である。フレーム補間処理回路65には1/60sごとに、フレームF1、F2、…が入力される。フレーム補間処理回路65では、フレームF1とF2に基づき補間フレームP1が生成され、フレームF2とF3に基づき補間フレームP2が生成され、フレームF3とF4に基づき補間フレームP3が生成される。フレーム補間処理回路65からは1/120ごとに、フレームF1、F2、…と補間フレームP1、P2、…とが交互に出力される。フレームF1、F2、…は前半サブフレーム期間で出力され、補間フレームP1、P2、…は後半サブフレーム期間で出力される。
【0107】
時分割階調処理回路70では、フレームF1、F2、…は前半サブフレームS1A、S2A、…に変換され、補間フレームP1、P2、…は後半サブフレームS1B、S2B、…に変換される。したがって、映像信号X1としてフレームF1、F2、…が入力されたとき、映像信号X2としてサブフレームS1A、S1B、S2A、S2B、…が順に出力される。
【0108】
N=2.5の場合には、フレーム補間処理回路65から出力される映像信号のフレーム周波数は、映像信号X1のフレーム周波数の2.5倍(150Hz)になり、サブフレーム期間の長さSTは1/150sとなる。
【0109】
図23は、N=2.5の場合のフレーム単位での処理の流れを示す図である。フレーム補間処理回路65では、フレームF1とF2に基づき補間フレームP1A、P1Bが生成され、フレームF2とF3に基づき補間フレームP2A、P2Bが生成される。フレーム補間処理回路65からは1/150sごとに、映像信号X1に含まれていたフレームと補間フレームとが1対4の割合で出力される。フレームF1、補間フレームP1B、P2B、…は前半サブフレーム期間で出力され、補間フレームP1A、P2A、フレームF3、…は後半サブフレーム期間で出力される。
【0110】
時分割階調処理回路70では、フレームF1、補間フレームP1B、P2B、…は前半サブフレームS1A、S2A、S3A、…に変換され、補間フレームP1A、P2A、フレームF3、…は後半サブフレームS1B、S2B、S3B、…に変換される。したがって、映像信号X1としてフレームF1、F2、…が入力されたとき、映像信号X2としてサブフレームS1A、S1B、S2A、S2B、…が順に出力される。
【0111】
液晶表示装置5は、第3の実施形態と同様に、低階調時に輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなる(Tr>TfかつTr>ST/2となる)ように構成される。ただし、液晶表示装置5では、第3の実施形態とは異なり、高階調時には立下り時間Tfがほぼゼロとなる(Tf≒0となる)ことが好ましいとされる。液晶表示装置5では、低階調時にはTr=STかつTf≒0で、高階調時にはTf≒0となることが最も好ましい。
【0112】
液晶表示装置5によれば、以下に示すように、時分割階調駆動の課題である色ずれを防止することができる。一般に、時分割階調駆動によりカラー表示を行う場合には、2個のサブフレーム期間に輝度を分配したときに、色成分ごとに輝度の分配結果が大きく異なることがある。例えば、表示画面にある色を表示するときに、図24(a)に示すように、前半サブフレーム期間ではG画素とB画素には最小印加電圧Vlが与えられ、R画素にはそれよりも高い電圧Vd(Vd>Vl)が与えられることがある。
【0113】
表示画面内でこの色の縦バーが右方向に移動する場合、表示画面の1ライン分を観測者の視線追従方向に時間積分すると、図24(b)に示す結果が得られる。図24(b)では、cの部分は本来の色に見えるが、a、b、dおよびeの部分には動画ぼやけと擬似輪郭が発生する。特にaとeの部分では、前半サブフレーム期間の輝度と後半サブフレーム期間の輝度がほとんど混ざらないので、本来の色とは全く異なる色に見える。この結果、表示画面に色ずれが発生する。
【0114】
液晶表示装置5は、フレーム補間処理回路65を備え、映像信号X1に対してフレーム補間処理を行う。フレーム補間処理を行う場合に、表示画面の1ライン分を観測者の視線追従方向に時間積分すると、図24(c)に示す結果が得られる。図24(c)ではcの部分は本来の色に見えるが、fとgの部分は本来の色に見えず、動画ぼやけが発生する。しかし、fとgの部分でも、前半サブフレーム期間の輝度と後半サブフレーム期間の輝度はある程度混ざるので、この部分に発生する擬似輪郭や色ずれは目立たない。したがって、フレーム補間処理を行う液晶表示装置5によれば、時分割階調駆動の課題である色ずれを防止することができる。
【0115】
以下、液晶表示装置5では低階調時と高階調時で好ましい応答波形の特徴が異なる理由を説明する。液晶表示装置5は、フレーム補間駆動と時分割階調駆動を合わせた駆動を行う。第3の実施形態で述べたように、低階調時にTr>TfかつTr>ST/2となる応答波形を用いて時分割階調駆動を行うと、低階調時の動画性能を向上させることができる。この効果は、液晶の応答時間がゼロでない場合に得られる。
【0116】
一方、液晶の応答時間がゼロでないことは、図24(c)ではサブフレーム期間が時間軸方向(縦方向)に長くなることに相当する。このため、液晶の応答時間が長いと、フレーム補間駆動を行っても動画性能は向上しなくなる。また、例えばVA(Vertical Alignment)モードの液晶では、低階調時の応答時間が長く、フレーム補間駆動を行っても低階調時の動画性能はあまり向上しない。一方、従来の時分割階調駆動を行うと、高階調時に黒挿入率が低下し、インパルス度が低下する。
【0117】
このようにフレーム補間駆動では低階調時の動画性能が低く、液晶の応答時間がゼロであることが好ましいのに対して、Tr>TfかつTr>ST/2となる応答波形を用いた時分割階調駆動では高階調時の動画性能が低く、液晶の応答時間がゼロでないことが好ましい。そこで、液晶表示装置5は、時分割階調駆動とフレーム補間駆動を合わせた駆動を行うときに、両者の弱点を互いに補完するように、好ましい応答波形の特徴を切り替える。これにより、いずれか一方の駆動を行うときよりも、動画性能を向上させることができる。
【0118】
このような液晶表示装置5を構成するには、最大印加電圧Vhを調整する方法と、輝度の分配を工夫する方法を併用すればよい。具体的には、B型またはC型の液晶を用い、B型(中速)の液晶を用いる場合には、TR≒STとなる電圧を最大印加電圧Vhとする。C型(高速)の液晶を用いる場合には、TRm>ST/2を満たす立上り時間の最小値TRmを決定し、立上り時間TRが最小値TRmにほぼ等しくなる電圧(TR≒TRmとなる電圧)を最大印加電圧Vhとする。これにより、低階調時の応答波形において輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させ、低階調時にインパルス度の高い応答波形を得ることができる。
【0119】
その上で、低階調時の応答波形と高階調時の応答波形を好ましい応答波形にするために、輝度の分配を工夫する方法を適用する。低階調の輝度を分配するときに輝度の組合せが複数とおりある場合には、Tr=STかつTf≒0という条件に最も合致する組合せを選択する。また、高階調の輝度を分配するときに輝度の組合せが複数とおりある場合には、Tf≒0という条件に最も合致する組合せを選択する。このように、時分割階調駆動によって動画性能が向上する階調と、フレーム補間駆動によって動画性能が向上する階調とで、輝度の組合せを選択するときの条件を切り替えることにより、低階調時の応答波形と高階調時の応答波形をいずれも好ましい応答波形にすることができる。
【0120】
複数の輝度の組合せの中から1個の組合せを選択するときには、例えば以下の手順を実行すればよい。低階調については、第3の実施形態と同様に、第1の条件をTr≧Tf、第2の条件をTr≒ST、第3の条件をTf≒0として、これらの条件を順に適用して組合せの候補を順に絞り込めばよい。また、高階調については、Tf≒0を理想の条件として、輝度の組合せを1個選択すればよい。
【0121】
以上に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置5は、映像変換回路としてフレーム補間処理回路65と時分割階調処理回路70を備え、少なくとも低階調時に、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなるように構成される。したがって、液晶表示装置5によれば、低階調時には時分割階調駆動の効果により、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させると共に、高階調時にはフレーム補間駆動の効果により動画性能を向上させることができる。また、フレーム補間駆動を行うことにより、表示画面に発生する色ずれを防止することができる。また、第2の実施形態と同様に、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを感じにくくなる。
【0122】
なお、以上に述べた各実施形態に係る液晶表示装置では、液晶の応答時間は環境温度によって変化し、応答波形のインパルス度も環境温度によって変化する。そこで、環境温度にかかわらず常に好ましい応答波形を得るために、環境温度に応じて応答波形を切り替える機能を液晶表示装置に設けてもよい。
【0123】
例えば、図25に示すように、温度センサ86、LUT87およびD/A変換器88を含む階調電圧設定回路85を液晶表示装置に設けてもよい。図25において、LUT87は、温度に対応づけて階調電圧設定値を記憶しており、温度センサ86で検知された環境温度に応じた階調電圧設定値を出力する。LUT87から出力された階調電圧設定値は、D/A変換器88でアナログ信号に変換される。これにより得られた階調電圧Vl、V1〜V8、Vhは、駆動回路20に供給される。
【0124】
あるいは、図26に示すように、温度センサ76を含む時分割階調処理回路75を液晶表示装置に設けてもよい。図26において、LUT77は、温度に対応づけて変換後の階調を記憶しており、温度センサ76で検知された環境温度に応じた変換後の階調を処理部71に出力する。
【0125】
以上に示すように、本発明の第1〜第5の実施形態およびそれらの変形例に係る液晶表示装置によれば、インパルス駆動の問題点(輝度の低下やフリッカなど)を解消しながら動画性能を向上させることができる。なお、ここまで液晶表示装置の動画性能を向上させる方法について説明してきたが、この方法を用いて、インパルス型駆動を行う他の画像表示装置の動画性能を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す液晶表示装置における処理の流れを示す図である。
【図3】図1に示す液晶表示装置における印加電圧と応答波形を示す図である。
【図4】図1に示す液晶表示装置と従来の液晶表示装置における印加電圧と応答波形を示す図である。
【図5】ノーマリーブラック型の液晶の応答時間の一例を示すテーブルである。
【図6】ノーマリーブラック型の液晶の特性を示す図である。
【図7】図1に示す液晶表示装置における最大印加電圧の決定方法を示す図である。
【図8】図1に示す液晶表示装置の階調電圧生成回路の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す液晶表示装置における処理の流れを示す図である。
【図11】ノーマリーブラック型の液晶の特性を示す図である。
【図12】フレーム補間処理回路を設けた場合と設けない場合の印加電圧と応答波形を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示す液晶表示装置における処理の流れを示す図である。
【図15】図13に示す液晶表示装置における応答波形の例を示す図である。
【図16】図13に示す液晶表示装置における応答波形の他の例を示す図である。
【図17】図13に示す液晶表示装置において、最大印加電圧を調整したときの応答波形の例を示す図である。
【図18】図13に示す液晶表示装置について、輝度の分配を工夫する方法を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図20】図19に示す液晶表示装置における処理の流れを示す図である。
【図21】本発明の第5の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図22】図21に示す液晶表示装置において、2倍速フレーム補間処理を行う場合の処理の流れを示す図である。
【図23】図21に示す液晶表示装置において、2.5倍速フレーム補間処理を行う場合の処理の流れを示す図である。
【図24】フレーム補間駆動によって色ずれを防止できる理由を説明するための図である。
【図25】本発明の第1〜第5の実施形態の変形例に係る液晶表示装置の階調電圧設定回路の詳細を示すブロック図である。
【図26】本発明の第3〜第5の実施形態の変形例に係る液晶表示装置の時分割階調処理回路の詳細を示すブロック図である。
【図27】各種の表示装置について画素の輝度の時間的変化を示す図である。
【図28】インパルス駆動によって動画ぼやけを軽減できる理由を説明するための図である。
【図29】フレーム補間駆動の処理の例を示す図である。
【図30】従来の時分割階調駆動における階調変換の例を示す図である。
【符号の説明】
【0127】
1、2、3、4、5…液晶表示装置
10…タイミング制御回路
20…駆動回路
21…階調電圧設定回路
30…画素アレイ
31…液晶表示素子
40…2倍速化処理回路
41、61、66、71…処理部
42、62、67…フレームメモリ
50…インパルス化処理回路
51…切替スイッチ
52…黒レベル発生器
60、65…フレーム補間処理回路
70、75…時分割階調処理回路
72、77、87…LUT
76、86…温度センサ
80、85…階調電圧設定回路
88…D/A変換器
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などの画像表示装置に関し、特に、インパルス駆動を行う画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、動画を表示したときに画像がぼやけて見えることがある。この動画ぼやけには、主な原因が2つある。第1の原因は、液晶の応答速度が遅いことである。第2の原因は、ホールド駆動を行う液晶表示装置における視線追従効果である。従来の液晶表示装置では、液晶の応答速度が遅いことによる動画ぼやけが問題とされていた。近年では、液晶の応答速度が速くなった(例えば、映像信号のフレーム周波数が60Hzのときに1/60s以下で応答可能)ために、視線追従による動画ぼやけが注目されている。
【0003】
視線追従による動画ぼやけを軽減するために、従来から様々な方法が提案されている。それらの方法は、インパルス駆動とフレーム補間駆動に大別される。インパルス駆動は、光学波形が擬似的にブラウン管と同様のインパルス状になるように駆動する方法である。図27は、3種類の表示装置について画素の輝度の時間的変化を示す図である。ブラウン管(図27(a))では、輝度はインパルス状に変化するのに対して、ホールド駆動を行う液晶表示装置(図27(b))では、輝度は1フレーム期間に亘って保持される。インパルス駆動を行う液晶表示装置(図27(c))では、ブラウン管を模倣して、輝度は1フレーム期間内で一旦ゼロになる(あるいは、ゼロに近づく)。
【0004】
視線追従による動画ぼやけをインパルス駆動で軽減できる理由は、以下のとおりである。例えば、図28(a)に示すように、暗い背景の中に明るい領域(以下、縦バーという)を含む表示画面内で縦バーが右方向に移動する場合、観測者の視線は縦バーに追従して右方向に移動する。この場合、表示画面の1ライン分(図28(a)の破線部)を視線追従方向に時間積分することにより、動画ぼやけ幅を求めることができる。ホールド駆動を行う液晶表示装置(図28(b))では、輝度は1フレーム期間に亘って保持されるので、輝度の積分値が中間的な値となる範囲は広く、動画ぼやけ幅W1は広くなる。これに対して、インパルス駆動を行う液晶表示装置(図28(c))では、輝度は1フレーム期間内で一旦ゼロになる(あるいは、ゼロに近づく)ので、輝度の積分値が中間的な値となる範囲は狭く、動画ぼやけ幅W2は狭くなる。このようにインパルス駆動によれば、輝度を時間的に集中させて動画ぼやけを軽減することができる。
【0005】
光学波形の点から見ると、インパルス駆動には、黒を挿入する方法、グレーなどの中間調を挿入する方法、時分割方式などが含まれる。また、駆動の実現方法の点から見ると、インパルス駆動には、バックライトを点滅させる方法、映像信号に黒信号などの固定の映像信号を挿入する方法などが含まれる。
【0006】
フレーム補間駆動は、映像フレーム間で補間演算を行い、得られた補間フレームを元の映像フレーム間に挿入して、フレーム周波数を上げる駆動方法である。図29は、フレーム補間駆動の処理の例を示す図である。図29に示す例では、補間フレームP1は、フレームF1とF2に基づき補間演算によって生成される。同様に、補間フレームP2はフレームF2とF3に基づき生成され、補間フレームP3はフレームF3とF4に基づき生成される。フレーム補間駆動によれば、フレーム周波数を上げて映像の動きを滑らかにし、動画性能を向上させることができる。
【0007】
本願発明に関連する先行技術文献としては、以下のようなものがある。特許文献1には、垂直走査信号に同期して複数の直下型バックライトを順次点滅させることが開示されている。特許文献2には、液晶表示素子に書き込み信号印加用のスイッチング素子の他に、黒信号印加用のスイッチング素子を設けることが開示されている。特許文献3には、時分割方式に関し、後のサブフレームの輝度を入力画像の輝度よりも所定割合で減衰させることが開示されている。特許文献4には、時分割方式に関し、1フレーム期間の時間的中心またはこれに近いサブフレームから順に大きな階調レベルを与えることが開示されている。特許文献5には、非映像信号期間が1フレーム期間内で占める割合を調整することが開示されている。特許文献6には、前後の画像信号から動き適応的に内挿画像信号を形成し、内挿画像信号を元の画像信号とともに順次に使用して画像を表示すること、および、表示セルを継続発光させる時間または実効的発光期間を各フィールドまたはフレーム間で所定範囲に制限することが開示されている。
【0008】
図30は、特許文献4に開示された駆動方法(以下、時分割階調駆動という)における階調変換の例を示す図である。図30に示す例では、1フレーム期間の輝度を前半と後半の2つのサブフレーム期間に分配するための階調変換が行われる。この際、輝度は後半サブフレーム期間に優先的に分配される。例えば、変換前の階調が87.7%のとき、この階調に対応した輝度は75.0%となる。後半サブフレームを優先して輝度を2つのサブフレーム期間に分配すると、前半サブフレーム期間の輝度は50.0%、後半サブフレーム期間の輝度は100%となる。これら2つの輝度に対応した階調を求めると、前半サブフレーム期間の変換後の階調は73.0%、後半サブフレーム期間の変換後の階調は100%となる。他の階調についても、同様の方法で変換後の階調を求めることができる。なお、この例では、階調Kと輝度Yを0以上1以下の数で表したとき、両者の間にK=Y(1/γ) (ただし、γ=2.2)が成り立つ。
【0009】
時分割階調駆動には、(1)高階調時には黒挿入率が低く、最大輝度を維持できる、(2)低階調時には黒挿入率が高くなるが、このときは輝度自体が低いのでフリッカは少ない、(3)低階調時の動画性能が高い、などの利点がある。
【特許文献1】特開2000−321551号公報
【特許文献2】特開平9−127917号公報
【特許文献3】特開2002−23707号公報
【特許文献4】特開2005−173573号公報
【特許文献5】特開2003−295156号公報
【特許文献6】特許第3295437号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のインパルス駆動とフレーム補間駆動には、以下のような問題がある。インパルス駆動のうち黒を挿入する方法には、(1)黒を挿入する分だけ輝度が低下する、(2)輝度の低下を抑えるためにバックライトを明るくするとフリッカが目立つ、という問題がある。グレーを挿入する方法や時分割方式によれば、黒挿入率を下げて輝度の低下を抑えることにより、フリッカをある程度防止することができる。しかし、これらの方法には、黒を挿入する方法よりも動画性能が劣るという問題がある。また、時分割方式には、色ずれや擬似輪郭が発生するという問題がある。
【0011】
時分割階調駆動には、(1)高階調時の動画性能が低い、(2)高階調時には色ずれや擬似輪郭が発生することがある、(3)大画面のときや最大輝度が高いときにはフリッカが発生することがある、などの改善すべき点がある。
【0012】
フレーム補間駆動には、(1)フレーム間の相関が低い場合や動きベクトルを正確に検出できない場合などに、誤差を含む補間フレームが生成され画質が劣化する、(2)動きベクトル探索や補間演算や補間フレームの記憶などを行うために、回路規模が増大し、回路を高速で動作させる必要が生じる、(3)ぼやけ時間の理論限界はフレーム周波数によって定まるが、液晶の応答時間や液晶容量の充電時間などによって、ぼやけ時間が長くなりさらに擬似輪郭などが発生し動画性能が悪くなる、などの問題がある。
【0013】
それ故に、本発明は、インパルス駆動の問題点を解消しながら動画性能を向上させた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、インパルス駆動を行う画像表示装置であって、
複数の表示素子と、
フレーム単位で入力された映像信号に基づき、インパルス駆動用のサブフレーム単位の映像信号を求める映像変換回路と、
前記映像変換回路で求めた映像信号を用いて、前記表示素子を駆動する駆動回路とを備え、
前記表示素子の輝度の立上り時間がサブフレーム期間の長さに近づくように構成されており、所定範囲内の階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号と固定の映像信号とをサブフレーム単位で切り替えて出力するインパルス化処理回路とを含む。
【0016】
第3の発明は、第1の発明において、
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対してフレーム補間処理を行うフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号と固定の映像信号とをサブフレーム単位で切り替えて出力するインパルス化処理回路とを含む。
【0017】
第4の発明は、第1の発明において、
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む。
【0018】
第5の発明は、第1の発明において、
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対してフレーム補間処理を行うフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む。
【0019】
第6の発明は、第1の発明において、
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対して2倍速以上のフレーム補間処理を行い、サブフレーム単位の映像信号を出力するフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む。
【0020】
第7の発明は、第2〜第5のいずれかの発明において、
任意の階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする。
【0021】
第8の発明は、第4〜第6のいずれかの発明において、
前記時分割階調処理回路は、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行い、
最小階調と最大階調のちょうど中間よりも低い階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする。
【0022】
第9の発明は、第1の発明において、
前記表示素子に対する最大印加電圧は、前記表示素子の輝度の立上り時間の最大値がサブフレーム期間の長さにほぼ等しくなるように決定されていることを特徴とする。
【0023】
第10の発明は、第4〜第6のいずれかの発明において、
前記所定範囲内の階調については、前記時分割階調処理回路による階調変換後の階調値の組合せとして、前記表示素子の輝度の立上り時間がサブフレーム期間の長さに等しく、立下り時間がゼロであるという条件に最も合致する階調値の組合せが選択されていることを特徴とする。
【0024】
第11の発明は、第6の発明において、
前記時分割階調処理回路は、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行い、
最小階調と最大階調のちょうど中間よりも高い階調については、前記時分割階調処理回路による階調変換後の階調値の組合せとして、前記表示素子の輝度の立下り時間がゼロであるという条件に最も合致する階調値の組合せが選択されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記第1の発明によれば、インパルス駆動を行って所定範囲内の階調を表示するときに、輝度のピークをサブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させることができる。これにより、応答波形(輝度の時間変化)のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させることができる。
【0026】
上記第2の発明によれば、固定の映像信号を挿入するインパルス駆動を行って所定範囲内の階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。
【0027】
上記第3の発明によれば、高速の表示素子を用いて固定の映像信号を挿入するインパルス駆動を行って所定範囲内の階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。また、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを感じにくくなる。
【0028】
上記第4の発明によれば、時分割階調駆動を行って所定範囲内の階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。
【0029】
上記第5の発明によれば、高速の表示素子を用いて時分割階調駆動を行って所定範囲内の階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。また、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを感じにくくなる。
【0030】
上記第6の発明によれば、所定範囲内の階調を表示するときには、時分割階調駆動の効果により応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減すると共に、当該範囲外の階調を表示するときには、フレーム補間駆動の効果により動画性能を向上させることができる。また、フレーム補間駆動を行うことにより、表示画面に発生する色ずれを防止することができる。また、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを感じにくくなる。
【0031】
上記第7の発明によれば、インパルス駆動を行って任意の階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。
【0032】
上記第8の発明によれば、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配する時分割階調駆動を行って、最小階調と最大階調のちょうど中間よりも低い階調を表示するときに、応答波形のインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減することができる。
【0033】
上記第9の発明によれば、表示素子に対する最大印加電圧を好適に決定することにより、輝度の立上り時間の最大値をサブフレーム期間の長さにほぼ等しくし、所定範囲内の階調を表示するときに輝度のピークをサブフレーム期間の終端に集中させることができる。
【0034】
上記第10の発明によれば、階調変換後の階調値の組合せを好適に決定することにより、所定範囲内の階調を表示するときに輝度のピークをサブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させることができる。
【0035】
上記第11の発明によれば、階調変換後の階調値の組合せを好適に決定することにより、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配する時分割階調駆動を行って、最小階調と最大階調のちょうど中間よりも高い階調を表示するときに、フレーム補間駆動の効果により動画性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図1に示す液晶表示装置1は、タイミング制御回路10、駆動回路20、画素アレイ30、2倍速化処理回路40、および、インパルス化処理回路50を備えている。液晶表示装置1は、映像信号X1に対して2倍速化処理とインパルス化処理を行い、得られた映像信号X2を用いてインパルス駆動を行う。本実施形態では、2倍速化処理回路40とインパルス化処理回路50が、フレーム単位で入力された映像信号X1に基づき、インパルス駆動用のサブフレーム単位の映像信号X2を求める映像変換回路に該当する。以下、映像信号X1のフレーム周波数は60Hzであるとする。
【0037】
液晶表示装置1に供給される入力信号Xには、画像データを表す映像信号X1と表示タイミングを定める同期信号T1とが含まれている。映像信号X1は2倍速化処理回路40に入力され、同期信号T1はタイミング制御回路10に入力される。タイミング制御回路10は、同期信号T1に基づき、2倍速化処理回路40およびインパルス化処理回路50に対する制御信号C1と、駆動回路20に対する同期信号T2とを出力する。画素アレイ30は、2次元状に配置された複数の液晶表示素子31を含んでいる。駆動回路20は、同期信号T2とインパルス化処理回路50から出力された映像信号X2と用いて、液晶表示素子31を駆動する。これにより、液晶表示装置1は画面を表示する。
【0038】
液晶表示装置1では、1フレーム期間(1/60s)は、前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に2等分される。タイミング制御回路10から出力される制御信号C1には、前半サブフレーム期間か後半サブフレーム期間かを示す信号が含まれる。液晶表示装置1では、サブフレーム期間の長さ(以下、STと表す)は1/120sである。
【0039】
2倍速化処理回路40は、処理部41およびフレームメモリ42を含み、映像信号X1をフレーム単位で2倍の速度で2回繰り返して出力する。より詳細には、フレームメモリ42は少なくとも1フレーム分の映像信号に対応した容量を有し、2倍速化処理回路40に入力された映像信号X1はフレームメモリ42に書き込まれる。処理部41は、フレームメモリ42に書き込まれた映像信号をフレーム単位で書き込み時の2倍の速度で2回繰り返して読み出して出力する。この際、処理部41は、制御信号C1に従い、前半サブフレーム期間でフレームを1枚出力し、後半サブフレーム期間で同じフレームを再び出力する。これにより、2倍速化処理回路40から出力される映像信号のフレーム周波数は、映像信号X1のフレーム周波数の2倍(120Hz)になる。
【0040】
インパルス化処理回路50は、切替スイッチ51および黒レベル発生器52を含み、2倍速化処理回路40から出力された映像信号と固定の映像信号をサブフレーム単位で切り替えて出力する。より詳細には、黒レベル発生器52は、黒信号(黒を表示するための映像信号)を固定的に出力する。切替スイッチ51は、制御信号C1に従い、前半サブフレーム期間では黒レベル発生器52から出力された黒信号を出力し、後半サブフレーム期間では2倍速化処理回路40から出力された映像信号を出力する。インパルス化処理回路50から出力された映像信号X2は、駆動回路20に供給され、液晶表示素子31の駆動に用いられる。
【0041】
図2は、液晶表示装置1におけるフレーム単位での処理の流れを示す図である。2倍速化処理回路40には1/60sごとに、フレームF1、F2、…が入力される。フレームF1は、2倍速化処理回路40で2倍速化され、同じ内容の2枚のサブフレームからなる新たなフレームNF1となる。フレームNF1に含まれる2枚のサブフレームのうち、前半サブフレームはインパルス化処理回路50で黒フレーム(全面が黒のフレーム)に置換され、後半サブフレームはインパルス化処理回路50からそのまま出力される。以降のフレームに対しても、同様の処理が行われる。したがって、映像信号X1としてフレームF1、F2、…が入力されたとき、映像信号X2として黒フレームとフレームF1、F2、…とが交互に出力される。
【0042】
駆動回路20は映像信号X2に応じた電圧を液晶表示素子31に印加し、液晶表示素子31の輝度は印加電圧に応じて変化する。以下、液晶表示素子31の輝度の時間変化を「応答波形」といい、輝度が高くなるときの所要時間を「立上り時間」、輝度が低くなるときの所要時間を「立下り時間」という。なお、一般に、立上り時間や立下り時間を正確に測定することは困難であるので、輝度が変化量の10%から90%まで変化するときの所要時間を0.8で割った値などを立上り時間や立下り時間として使用することもある。
【0043】
図3は、液晶表示装置1における、液晶表示素子31への印加電圧と応答波形を示す図である。図3に示すように、印加電圧は、前半サブフレーム期間では黒レベルに対応した電圧Vl、後半サブフレーム期間では映像信号X2に対応した電圧Vxとなる。これに応じて輝度は、前半サブフレーム期間では黒レベルY0、後半サブフレーム期間ではレベルYx(ただし、Yx>Y0)となる。
【0044】
液晶表示装置1では、輝度がY0からYxに変化するときの所要時間が立上り時間Tr、輝度がYxからY0に変化するときの所要時間が立下り時間Tfとなる。液晶表示装置1は、任意の階調を表示するときに、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなる(Tr>TfかつTr>ST/2となる)ように構成される。なお、Tr>STのときには、輝度は後半サブフレーム期間内にレベルYxに到達しない。
【0045】
図3の上段に示す応答波形では、立上り時間Trはサブフレーム期間の長さSTに一致している(Tr=ST)。この場合、輝度は後半サブフレーム期間の終端でレベルYxに到達し、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端に集中する。中段の応答波形では、立上り時間Trはサブフレーム期間の長さSTを超えている(Tr>ST)。この場合、輝度は後半サブフレーム期間の終端で最大値(Yxよりも低いレベル)に到達し、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端に集中する。下段の応答波形では、立上り時間Trはサブフレーム期間の長さST未満で、その半分よりも長い(ST/2<Tr<ST)。この場合、輝度は後半サブフレーム期間の後半でレベルYxに到達し、輝度のピークは後半サブフレーム期間の後方に集中する。液晶表示装置1では、Tr=STかつTf≒0となることが最も好ましい。
【0046】
図4を参照して、液晶表示装置1の効果を説明する。図4には、Tr=Tf=0の場合、Tr>Tfの場合、および、Tr<Tfの場合の応答波形が記載されている。このうち、Tr>Tfの場合の応答波形(中段の応答波形)が液晶表示装置1の応答波形であり、他の2つは比較のために記載されている。輝度がピークでない部分(斜線を付した部分)は、インパルス化処理回路50によって黒が挿入された部分である。以下、輝度のピークを全体として、黒を挿入した部分の割合を「黒挿入率」という。
【0047】
図4に示すように、黒挿入率は、Tr=Tf=0の場合には50%となり、Tr>Tfの場合には50%を超え、Tr<Tfの場合には50%未満となる。液晶表示装置1では、Tr>Tfとなるので、黒挿入率は50%を超える。また、Tr>ST/2となるので、輝度のピークはサブフレーム期間の半分より短い期間に集中する。インパルス駆動を行う表示装置では、黒挿入率が大きいほど、インパルス度が高くなり動画性能が向上する。したがって、図3に示す応答波形が得られる液晶表示装置1によれば、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画性能を向上させることができる。
【0048】
以下、図3に示す応答波形が得られる液晶表示装置1の構成方法を説明する。一般にノーマリーブラック型の液晶には、(1)最小輝度から変化するときの立上り時間は、最小輝度へ変化するときの立下り時間よりも長い、(2)最小輝度から変化するときの立上り時間は、印加電圧が高いときほど短い、という性質がある。図5は、ノーマリーブラック型の液晶の応答時間の一例を示すテーブルである。図5に示す例では、階調が0から255へ変化するときの立上り時間(5.47ms)は、階調が255から0へ変化するときの立下り時間(3.13ms)よりも長く、階調が0から128へ変化するときの立上り時間(7.97ms)よりも短い。
【0049】
図6は、ノーマリーブラック型の液晶の特性を示す図である。図6には、印加電圧と透過率の関係が実線で、印加電圧と最小輝度からの立上り時間(以下、立上り時間TRという)との関係が太破線で記載されている。ノーマリーブラック型の液晶では、印加電圧が高くなると透過率は高くなる。透過率は、印加電圧が低い間はあまり変化しないが、印加電圧があるレベルを超えると急激に増大し、印加電圧が別のあるレベルを超えると再びあまり変化しなくなる。
【0050】
以下、透過率が変化する範囲に対応した印加電圧の範囲を「範囲R」という。一般に液晶表示装置では、範囲R内で、最小階調に対応した印加電圧(以下、最小印加電圧Vlという)と、最大階調に対応した印加電圧(以下、最大印加電圧Vhという)とを決定する必要がある。従来の液晶表示装置では、最小印加電圧Vlと最大印加電圧Vhは、主に輝度やコントラストが最大になるように決定される。また、これらの電圧を決定するときに、視野角特性などを考慮することもある。
【0051】
範囲R内で印加電圧を変化させたときの立上り時間TRとサブフレーム期間の長さSTとの大小関係によって、液晶は、常にTR>STとなる液晶(低速の液晶;以下、A型という)と、常にTR<STとなる液晶(高速の液晶;以下、C型という)と、印加電圧に応じてTRとSTの大小関係が切り替わる液晶(中速の液晶;以下、B型という)とに分類される。図6には、これら3種類の液晶について、印加電圧と立上り時間TRの関係が記載されている。本実施形態に係る液晶表示装置1では、B型またはC型の液晶が用いられる。
【0052】
液晶表示装置1では、最小印加電圧Vlは、範囲R内で任意の方法で決定される。例えば、従来と同様の方法で最小印加電圧Vlを決定してもよく、範囲Rの下側の境界値やそれよりも少し大きい値を最小印加電圧Vlとしてもよい。一方、最大印加電圧Vhは、液晶の応答速度を考慮して、以下の方法で決定される(図7を参照)。
【0053】
まず参考のために説明すると、A型(低速)の液晶の場合には、最大印加電圧Vhは、最小印加電圧Vlと同様に範囲R内で任意の方法で決定される。例えば、範囲Rの上側の境界値やそれよりも少し小さい値を最大印加電圧Vhとしてもよい(図7(a)を参照)。A型の液晶では、範囲R内において常にTR>STとなるので、図3に示す電圧を印加したときの立上り時間Trは、後半サブフレーム期間の印加電圧Vxにかかわらず、サブフレーム期間の長さSTよりも長くなる(Tr>ST)。このため、図3の中段に示す応答波形が得られ、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端に集中する。したがって、A型の液晶を用いれば、任意の階調についてインパルス度の高い応答波形を得ることができる。
【0054】
しかし、A型の液晶を液晶表示装置1に用いれば、特段の工夫を行わなくても、任意の階調についてインパルス度の高い応答波形が得られる。そこで、A型の液晶を用いた液晶表示装置1は本発明の対象外とし、本実施形態に係る液晶表示装置1ではB型またはC型の液晶を用いる。B型またはC型の液晶を用いた液晶表示装置1は、以下に示すように、液晶の応答速度に応じて最大印加電圧Vhを決定することにより、立上り時間Trがサブフレーム期間の長さに近づくように構成される。
【0055】
B型(中速)の液晶の場合には、立上り時間TRがサブフレーム期間の長さSTにほぼ等しくなる電圧(TR≒STとなる電圧)を最大印加電圧Vhとする(図7(b)を参照)。上述したように、ノーマリーブラック型の液晶では、最小輝度から変化するときの立上り時間は、印加電圧が高いときほど短い(性質2)。したがって、TR≒STとなる電圧を最大印加電圧VhとしてB型の液晶を使用した場合、図3に示す電圧を印加したときの立上り時間Trは、最大階調(白階調)のときに最小値STとなり、それ以外のときにはSTよりも長くなる。このため、図3の上段あるいは中段に示す応答波形が得られ、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端に集中する。したがって、B型の液晶を用いた場合にも、任意の階調についてインパルス度の高い応答波形を得ることができる。
【0056】
C型(高速)の液晶の場合には、TRm>ST/2を満たす立上り時間の最小値TRmを決定し、立上り時間TRが最小値TRmにほぼ等しくなる電圧(TR≒TRmとなる電圧)を最大印加電圧Vhとする(図7(c)を参照)。TRm≒STとなる電圧を最大印加電圧VhとしてC型の液晶を使用した場合、図3に示す電圧を印加したときの立上り時間Trは、最大階調(白階調)のときに最小値TRm、それ以外のときにはTRmよりも長くなり、いずれにしてもST/2よりも長くなる。このため、図3の上段、中段あるいは下段に示す応答波形が得られ、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端または後方に集中する。したがって、C型の液晶を用いた場合にも、任意の階調についてインパルス度の高い応答波形を得ることができる。なお、B型の液晶について、C型の液晶と同じ方法で最大印加電圧Vhを決定してもよい。
【0057】
以上の方法で決定された最小印加電圧Vlと最大印加電圧Vhは、液晶表示素子31を駆動するときの基準電圧として用いられる。図8は、液晶表示装置1の階調電圧生成回路の構成を示すブロック図である。図8に示すように、駆動回路20の外部には階調電圧設定回路80が設けられ、階調電圧設定回路80は駆動回路20に対して複数の階調電圧Vl、Vs1〜Vs8、Vhを出力する。駆動回路20は、直列接続された16個の抵抗を含む抵抗分割回路R1、R9と、直列接続された32個の抵抗を含む抵抗分割回路R2〜R8とを含んでいる。階調電圧設定回路80から出力された2個の階調電圧に基づき、抵抗分割回路R1、R9は16個の階調電圧を出力し、抵抗分割回路R2〜R8は32個の階調電圧を出力する。抵抗分割回路R1〜R9で得られた256個の階調電圧は、液晶表示素子31の駆動に用いられる。
【0058】
以上に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置1は、映像変換回路として2倍速化処理回路40とインパルス化処理回路50を備え、任意の階調を表示するときに、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなるように構成される。したがって、液晶表示装置1によれば、固定の映像信号を挿入するインパルス駆動を行うときに、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させることができる。特に、輝度の立上り時間Trの最大値がサブフレーム期間の長さSTにほぼ等しくなるように最大印加電圧Vhを決定することにより、輝度のピークをサブフレーム期間の終端に集中させることができる。
【0059】
なお、液晶表示装置1において、切替スイッチ51は、前半サブフレーム期間では2倍速化処理回路40から出力された映像信号を出力し、後半サブフレーム期間では黒レベル発生器52から出力された黒信号を出力してもよい。また、インパルス化処理回路50は、黒レベル発生器52に代えて、グレー信号(グレーを表示するための映像信号)などを固定的に出力する中間調レベル発生器を含んでいてもよい。これら変形例に係る液晶表示装置も、同様の効果を奏する。
【0060】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図9に示す液晶表示装置2は、第1の実施形態に係る液晶表示装置1(図1)に、フレーム補間処理回路60を追加したものである。液晶表示装置2は、映像信号X1に対してフレーム補間処理、2倍速化処理およびインパルス化処理を行い、得られた映像信号X2を用いてインパルス駆動を行う。本実施形態では、2倍速化処理回路40、インパルス化処理回路50およびフレーム補間処理回路60が映像変換回路に該当する。以下、各実施形態の構成要素のうち既に述べた実施形態と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0061】
フレーム補間処理回路60は、処理部61およびフレームメモリ62を含み、映像信号X1に対して5/4倍速フレーム補間処理を行う。より詳細には、フレームメモリ62は少なくとも1フレーム分の映像信号に対応した容量を有し、フレーム補間処理回路60に入力された映像信号X1はフレームメモリ62に書き込まれる。処理部61は、映像信号X1を現フレーム、フレームメモリ62に記憶された映像信号を前フレームとして、2枚のフレームから動画部分を検出する。次に処理部61は、前フレームと現フレームの間の時刻における動画部分の位置を求め、求めた位置に動画部分を移動させたフレーム(動き補償されたフレーム)を補間フレームとして前フレームと後フレームの間に挿入する。処理部61は、4枚のフレームが入力されるたびに、5枚のフレームを出力する。これにより、フレーム補間処理回路60から出力される映像信号のフレーム周波数は、映像信号X1のフレーム周波数の5/4倍(75Hz)になる。
【0062】
なお、フレーム補間処理回路60は、例えば、前フレームと現フレームに基づき動きベクトルを求め、求めた動きベクトルを用いて補間フレームを作成してもよく、これ以外の任意の方法で補間フレームを作成してもよい。
【0063】
フレーム補間処理回路60から出力された映像信号には、第1の実施形態と同様に、2倍速化処理とインパルス化処理が行われる。インパルス化処理回路50から出力された映像信号X2は、駆動回路20に供給され、液晶表示素子31の駆動に用いられる。
【0064】
液晶表示装置2では、フレーム補間処理回路60から出力される映像信号の1フレーム期間(1/75s)が、前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に2等分され、サブフレーム期間の長さ(以下、ST’と表す)は1/150sとなる。
【0065】
図10は、液晶表示装置2におけるフレーム単位での処理の流れを示す図である。フレーム補間処理回路60には1/60sごとに、フレームF1、F2、…が入力される。フレーム補間処理回路60では、フレームF1とF2に基づき補間処理により補間フレームP1が生成される。同様に、フレームF2とF3に基づき補間フレームP2が生成され、フレームF3とF4に基づき補間フレームP3が生成され、フレームF4とF5に基づき補間フレームP4が生成される。フレーム補間処理回路60からは1/75sごとに、映像信号X1に含まれていたフレームと補間フレームとが1対4の割合で出力される。以降の処理は第1の実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0066】
液晶表示装置2は、任意の階調を表示するときに、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さST’の半分よりも長くなる(Tr>TfかつTr>ST’/2となる)ように構成される。液晶表示装置2では、Tr=ST’かつTf≒0となることが最も好ましい。
【0067】
以下、液晶表示装置2にフレーム補間処理回路60を設ける理由を説明する。図11は、図6と同様に、ノーマリーブラック型の液晶の特性を示す図である。図11において、サブフレーム期間の長さをSTとすると、特性1はA型(低速)、特性2はB型(中速)、特性3はC型(高速)と判断される。ここで、サブフレーム期間の長さをST’(ただし、ST’<ST)に短くすると、特性1と特性2はA型、特性3はB型と判断される。このようにサブフレーム期間の長さを短くすれば、B型の液晶をA型の液晶として使用することや、C型の液晶をA型あるいはB型の液晶として使用することが可能となる。
【0068】
例えば、C型の液晶をB型の液晶として使用するときには、液晶表示装置2にフレーム補間処理回路60を設けてサブフレーム期間の長さをST’に短くし、立上り時間TRがST’にほぼ等しくなる電圧(TR≒ST’となる電圧)を最大印加電圧Vhとすればよい。これにより、図3に示す電圧を印加したときの立上り時間Trは、最大階調(白階調)のときに最小値ST’となり、それ以外のときにはST’よりも長くなる。
【0069】
図12は、フレーム補間処理回路60を設けた場合と設けない場合の印加電圧と応答波形を示す図である。フレーム補間処理回路60を設けない場合には、液晶の特性によっては、輝度のピークが集中する程度が低くなることがある(図12(a))。このような場合には、フレーム補間処理回路60を設けてサブフレーム期間の長さをST’に短くすることにより、輝度のピークが集中する程度を高くすることができる(図12(b))。図12(b)に示す例では、輝度のピークは後半サブフレーム期間の終端に集中している。このようにフレーム補間処理回路60を設けることにより、C型の液晶を用いる場合でもインパルス度の高い応答波形を得ることができる。
【0070】
また、液晶表示装置2では、映像信号X2のフレーム周波数が高くなるので、インパルス駆動を行ってもフリッカを感じにくくなる。観測者が画面を直視してもフリッカを認識しないようにするためには、映像信号X2のフレーム周波数を150Hz以上にすればよい。
【0071】
なお、サブフレーム期間の長さがSTのときにA型と判断される液晶を液晶表示装置2に用いれば、特段の工夫を行わなくても、任意の階調についてインパルス度の高い応答波形が得られる。そこで、サブフレーム期間の長さがSTのときにA型と判断される液晶を用いた液晶表示装置2は本発明の対象外とし、本実施形態に係る液晶表示装置2ではサブフレーム期間の長さがSTのときにB型あるいはC型と判断される液晶を用いる。そのような液晶を用いた液晶表示装置2は、上述したように、サブフレーム期間の長さST’と液晶の応答速度に応じて最大印加電圧Vhを決定することにより、立上り時間Trがサブフレーム期間の長さに近づくように構成される。
【0072】
また、印加電圧の範囲を広くする(最大印加電圧Vhを高くする)ためには、サブフレーム期間の長さST’は短いことが好ましいが、回路設計の点からはサブフレーム期間の長さST’は長いことが好ましい。液晶表示装置2の設計時には、これらの点を考慮してサブフレーム期間の長さST’を決定する必要がある。
【0073】
以上に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置2は、映像変換回路として2倍速化処理回路40、インパルス化処理回路50およびフレーム補間処理回路60を備え、任意の階調を表示するときに、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、フレーム補間後の映像信号のサブフレーム期間の長さST’の半分よりも長くなるように構成される。したがって、液晶表示装置2によれば、高速の液晶を用いて固定の映像信号を挿入するインパルス駆動を行うときに、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させることができる。また、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを減らすこともできる。
【0074】
液晶表示装置2においても第1の実施形態と同様に、切替スイッチ51は前半サブフレーム期間では映像信号を出力し、後半サブフレーム期間では黒信号を出力してもよく、インパルス化処理回路50は中間調レベル発生器を含んでいてもよい。また、液晶表示装置2は、2倍速化処理回路40に代えて、映像信号X1をフレーム単位でm倍(mは3以上の整数)の速度でm回繰り返して出力するm倍速化処理回路を備えていてもよい。この場合、インパルス化処理回路50は、m倍速化処理されたフレームのうちの任意枚を黒フレームに置換してもよく、黒フレームに置換する枚数を適宜切り替えてもよい。この場合でも、サブフレーム期間の長さST’を考慮して最大印加電圧Vhを決定することにより、黒挿入率とインパルス度を高め、動画性能を向上させることができる。
【0075】
(第3の実施形態)
図13は、本発明の第3の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図13に示す液晶表示装置3は、第1の実施形態に係る液晶表示装置1(図1)において、インパルス化処理回路50を時分割階調処理回路70に置換したものである。液晶表示装置3は、映像信号X1に対して2倍速化処理と時分割階調処理を行い、得られた映像信号X2を用いてインパルス駆動を行う。本実施形態では、2倍速化処理回路40と時分割階調処理回路70が映像変換回路に該当する。
【0076】
液晶表示装置3では、第1の実施形態と同様に、1フレーム期間(1/60s)は前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に2等分され、サブフレーム期間の長さ(以下、STと表す)は1/120sとなる。
【0077】
時分割階調処理回路70は、処理部71およびルックアップテーブル(Look Up Table :以下、LUTと略称する)72を含み、2倍速化処理回路40から出力された映像信号に対して時分割階調処理を行う。時分割階調処理回路70は、1フレーム期間の輝度を前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に分配するための階調変換を行う。この際、前半サブフレーム期間よりも後半サブフレーム期間に、より多くの輝度が分配される。
【0078】
LUT72は、映像信号X1の各階調について、前半サブフレーム期間用と後半サブフレーム期間用の変換後の階調を記憶している。処理部71は、LUT72を参照して、2倍速化処理回路40から出力された映像信号に対して階調変換を行う。この際、処理部71は、制御信号C1に従いLUT72から、前半サブフレーム期間では前半サブフレーム期間用の変換後の階調を読み出し、後半サブフレーム期間では後半サブフレーム期間用の変換後の階調を読み出す。時分割階調処理回路70から出力された映像信号X2は、駆動回路20に供給され、液晶表示素子31の駆動に用いられる。
【0079】
図14は、液晶表示装置3におけるフレーム単位での処理の流れを示す図である。2倍速化処理回路40には1/60sごとに、フレームF1、F2、…が入力される。フレームF1は、2倍速化処理回路40で2倍速化され、同じ内容の2枚のサブフレームからなる新たなフレームNF1となる。フレームNF1に含まれる2枚のサブフレームは、時分割階調処理回路70で階調変換され、前半サブフレームS1Aと後半サブフレームS1Bになる。以降のフレームに対しても、同様の処理が行われる。したがって、映像信号X1としてフレームF1、F2、…が入力されたとき、映像信号X2としてサブフレームS1A、S1B、S2A、S2B、…が順に出力される。
【0080】
以下、最小階調と最大階調のちょうど中間の階調を「中間階調」といい、中間階調よりも低い階調を「低階調」、中間階調よりも高い階調を「高階調」という。また、輝度の最小値をY0、輝度の最大値をYmと表す。図15は、液晶表示装置3における応答波形の例を示す図である。図15には、最大階調時、高階調時、中間階調時、低階調時の応答波形が記載されている。
【0081】
図15に示すように、時分割階調処理回路70の作用により、後半サブフレーム期間の輝度は前半サブフレーム期間の輝度よりも高くなる。例えば、低階調時の輝度は、前半サブフレーム期間では最小値Y0、後半サブフレーム期間では映像信号X1に応じたレベルとなる。中間階調時の輝度は、前半サブフレーム期間では最小値Y0、後半サブフレーム期間では最大値Ymとなる。高階調時の輝度は、前半サブフレーム期間では映像信号X1に応じたレベル、後半サブフレーム期間では最大値Ymとなる。
【0082】
液晶表示装置3は、第1の実施形態と同様に、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなる(Tr>TfかつTr>ST/2となる)ように構成される。ただし、液晶表示装置3は、少なくとも低階調時に上記の条件を満たせばよく、高階調時には上記の条件を満たすことが好ましいが、必ずしもその必要はない。液晶表示装置3では、低階調時でも高階調時でもTr=STかつTf≒0となることが最も好ましい。
【0083】
なお、図15に示す応答波形は、Tr=STの場合のものである。この応答波形は上記の条件を満たす応答波形の一例であり、これ以外にも上記の条件を満たす応答波形は多数ある(図16を参照)。図16では、上段の応答波形(Tr=STの場合)だけでなく、中段の応答波形(Tr>STの場合)も下段の応答波形(ST/2<Tr<STの場合)も上記の条件を満たす。
【0084】
図15と図16を参照して、液晶表示装置3の効果を説明する。液晶表示装置3では、少なくとも低階調時にTr>TfかつTr>ST/2となるので、少なくとも低階調時に黒挿入率は50%を超え、輝度のピークはサブフレーム期間の半分より短い期間に集中する。インパルス駆動を行う表示装置では、黒挿入率が大きいほど、インパルス度が高くなり動画性能が向上する。したがって、図15や図16に示す応答波形が得られる液晶表示装置3によれば、少なくとも低階調を表示するときには、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画性能を向上させることができる。
【0085】
また、中間階調よりも高い階調(全部でも一部でもよい)について、Tr>TfかつTr>ST/2を満たすことができれば、同様の理由により、表示画面内の当該階調の画素については、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画性能を向上させることができる。
【0086】
また、液晶表示装置3による時分割階調駆動では、黒を固定的に挿入するインパルス駆動よりも、高階調時に黒挿入率は低く、輝度は高くなる。したがって、黒を固定的に挿入するインパルス駆動よりも、バックライトの明るさを抑え、フリッカを抑制することができる。このように液晶表示装置3によれば、フリッカを抑制しながら、動画性能を向上させることができる。
【0087】
以下、図15や図16に示す応答波形が得られる液晶表示装置3の構成方法を説明する。低階調時にTr>TfかつTr>ST/2となる応答波形を得るためには、第1の実施形態で説明したように、液晶の特性に応じて最大印加電圧Vhを決定すればよい。具体的には、B型またはC型の液晶を用い、B型(中速)の液晶を用いる場合には、TR≒STとなる電圧を最大印加電圧Vhとする。C型(高速)の液晶を用いる場合には、TRm>ST/2を満たす立上り時間の最小値TRmを決定し、立上り時間TRが最小値TRmにほぼ等しくなる電圧(TR≒TRmとなる電圧)を最大印加電圧Vhとする。これにより、低階調時の応答波形についてインパルス度を高くすることができる。なお、液晶表示装置3では、決定した最大印加電圧Vhに応じて、時分割階調処理回路70のLUT72の内容を決定する必要がある。
【0088】
ノーマリーブラック型の液晶の中には、上記性質1および2に加えて、(3)最大輝度へ変化するときの立上り時間は、最大輝度から変化するときの立下り時間よりも短い、という性質を有するものがある。例えば、図5に示す例では、階調が128から255へ変化するときの立上り時間(2.13ms)は、階調が255から128へ変化するときの立下り時間(4.01ms)よりも短い。
【0089】
この場合、最大印加電圧Vhを調整しただけでは、図17に示す応答波形が得られる。図17に示す高階調時の応答波形では、Tr<Tfとなり、黒挿入率は50%未満となる。このように、高階調時の応答波形ではインパルス度が低くなることがある。
【0090】
このような高階調時の応答波形を好ましい応答波形に変えるには、例えば、応答波形のインパルス度が高くなるよう輝度の分配を工夫すればよい。従来の時分割階調駆動(図30)では、前半サブフレーム期間に輝度が分配されるのは、後半サブフレーム期間に最大の輝度が分配されるときに限られ、低階調時の前半サブフレーム期間の輝度は0、高階調時の後半サブフレーム期間の輝度は最大値となる。
【0091】
これに対して、時分割階調処理回路70は、応答波形のインパルス度が高くなるように、輝度を前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に分配する。一般に、輝度を2つに分配するときに、輝度の組合せは複数とおりある。例えば、図18に示すように、分配前の輝度(フレーム輝度)が52.5%のときには、この輝度を(5%、100%)、(15%、90%)あるいは(25%、80%)などに分配することができる。分配後の輝度をγ=2.2のγ特性に従って階調に逆変換すると、各サブフレーム期間の階調は(26%、100%)、(42%、95%)、(53%、90%)となる。
【0092】
これら輝度の組合せの中から、応答波形のインパルス度が最も高くなる組合せを選択する。図18に示す例では、52.5%の輝度を25%と80%に分配したときに、応答波形のインパルス度が最大になるとする。この場合、時分割階調処理回路70のLUT72には、フレーム輝度52.5%に対応した階調に対応して、各サブフレーム期間の階調として(53%、90%)が記憶される。
【0093】
複数の輝度の組合せの中から1個の組合せを選択するときには、例えば以下の手順を実行すればよい。すなわち、まずTr≧Tfを第1の条件とし、この条件を満たす組合せを残す。複数の組合せが残った場合には、Tr≒STを第2の条件とし、この条件を満たす組合せを残す。それでも複数の組合せが残った場合には、Tf≒0を第3の条件として、同様の処理を行う。残った組合せの中から、任意の方法で1個の組合せを選択する。
【0094】
なお、計算で求めた応答波形と実際の応答波形には差異があるので、実際の応答波形を観測しながら輝度の組合せを選択することが好ましい。また、ここまで、応答波形のインパルス度を高くする方法として、最大印加電圧Vhを調整する方法と、輝度の分配を工夫する方法とを説明したが、液晶表示装置3にこのうち一方を適用してもよい。輝度の分配を工夫するだけで、低階調時の応答波形についてTr>TfかつTr>ST/2にできる場合には、最大印加電圧Vhを調整する必要はない。
【0095】
このように、ある範囲の階調について、Tr>TfかつTr>TS/2となる応答波形を得るためには、当該範囲の階調について、時分割階調処理回路70による階調変換後の階調値の組合せとして、Tr=ST、Tf≒0という条件に最も合致する階調値の組合せを選択すればよい。
【0096】
以上に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置3は、映像変換回路として2倍速化処理回路40と時分割階調処理回路70を備え、少なくとも低階調時に、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなるように構成される。このような液晶表示装置3によれば、時分割階調駆動を行って低階調を表示するときに、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させることができる。また、高階調時にもTr>TfかつTr>ST/2となる液晶表示装置3によれば、時分割階調駆動を行って任意の階調を表示するときに、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させることができる。
【0097】
(第4の実施形態)
図19は、本発明の第4の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図19に示す液晶表示装置4は、第3の実施形態に係る液晶表示装置3(図13)に、フレーム補間処理回路60を追加したものである。液晶表示装置4は、映像信号X1に対してフレーム補間処理、2倍速化処理および時分割階調処理を行い、得られた映像信号X2を用いてインパルス駆動を行う。本実施形態では、2倍速化処理回路40、フレーム補間処理回路60および時分割階調処理回路70が映像変換回路に該当する。
【0098】
液晶表示装置4では、第2の実施形態と同様に、フレーム補間処理回路60から出力される映像信号の1フレーム期間(1/75s)が、前半サブフレーム期間と後半サブフレーム期間に2等分され、サブフレーム期間の長さ(以下、ST’と表す)は1/150sとなる。
【0099】
図20は、液晶表示装置4におけるフレーム単位での処理の流れを示す図である。フレーム補間処理回路60には1/60sごとに、フレームF1、F2、…が入力される。フレーム補間処理回路60では、第2の実施形態と同様に、補間フレームP1、P2、…が生成され、フレーム補間処理回路60からは1/75sごとに、映像信号X1に含まれていたフレームと補間フレームとが1対4の割合で出力される。以降の処理は第3の実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0100】
液晶表示装置4にフレーム補間処理回路60を設ける理由は、第2の実施形態で述べた理由と同じである。例えば、C型(高速)の液晶をB型(中速)の液晶として使用するときには、液晶表示装置4にフレーム補間処理回路60を設けて、サブフレーム期間の長さをST’に短くし、立上り時間TRがST’にほぼ等しくなる電圧(TR≒ST’となる電圧)を最大印加電圧Vhとすればよい。
【0101】
以上に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置4は、映像変換回路として2倍速化処理回路40、フレーム補間処理回路60および時分割階調処理回路70を備え、少なくとも低階調時に、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなるように構成される。したがって、液晶表示装置4によれば、高速の液晶を用いた場合でも、第3の実施形態と同様に、動画性能を向上させることができる。また、第2の実施形態と同様に、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを感じにくくなる。
【0102】
(第5の実施形態)
図21は、本発明の第5の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。図21に示す液晶表示装置5は、第4の実施形態に係る液晶表示装置4(図19)において、フレーム補間処理回路60と2倍速化処理回路40をフレーム補間処理回路65に置換したものである。液晶表示装置5は、映像信号X1に対してフレーム補間処理と時分割階調処理を行い、得られた映像信号X2を用いてインパルス駆動を行う。本実施形態では、フレーム補間処理回路65と時分割階調処理回路70が映像変換回路に該当する。
【0103】
フレーム補間処理回路65は、処理部66およびフレームメモリ67を含み、映像信号X1に対して、N倍速フレーム補間処理(ただし、Nは2以上の数)を行う。フレーム補間処理回路65の構成は、第2の実施形態に係るフレーム補間処理回路60と同様である。ただし、処理部66は、1枚の入力フレームに対応して、2枚以上のフレームを出力する。また、液晶表示装置5では、フレーム補間処理回路65から出力される映像信号の1フレーム期間が、そのまま、時分割階調処理回路70における前半サブフレーム期間または後半サブフレーム期間となる。
【0104】
フレーム補間処理回路65から出力された映像信号には、第3の実施形態と同様に、時分割階調処理が行われる。時分割階調処理回路70から出力された映像信号X2は、駆動回路20に供給され、液晶表示素子31の駆動に用いられる。
【0105】
以下、例として、N=2の場合とN=2.5の場合について説明する。N=2の場合には、フレーム補間処理回路65から出力される映像信号のフレーム周波数は、映像信号X1のフレーム周波数の2倍(120Hz)になり、サブフレーム期間の長さ(以下、STと表す)は1/120sとなる。
【0106】
図22は、N=2の場合のフレーム単位での処理の流れを示す図である。フレーム補間処理回路65には1/60sごとに、フレームF1、F2、…が入力される。フレーム補間処理回路65では、フレームF1とF2に基づき補間フレームP1が生成され、フレームF2とF3に基づき補間フレームP2が生成され、フレームF3とF4に基づき補間フレームP3が生成される。フレーム補間処理回路65からは1/120ごとに、フレームF1、F2、…と補間フレームP1、P2、…とが交互に出力される。フレームF1、F2、…は前半サブフレーム期間で出力され、補間フレームP1、P2、…は後半サブフレーム期間で出力される。
【0107】
時分割階調処理回路70では、フレームF1、F2、…は前半サブフレームS1A、S2A、…に変換され、補間フレームP1、P2、…は後半サブフレームS1B、S2B、…に変換される。したがって、映像信号X1としてフレームF1、F2、…が入力されたとき、映像信号X2としてサブフレームS1A、S1B、S2A、S2B、…が順に出力される。
【0108】
N=2.5の場合には、フレーム補間処理回路65から出力される映像信号のフレーム周波数は、映像信号X1のフレーム周波数の2.5倍(150Hz)になり、サブフレーム期間の長さSTは1/150sとなる。
【0109】
図23は、N=2.5の場合のフレーム単位での処理の流れを示す図である。フレーム補間処理回路65では、フレームF1とF2に基づき補間フレームP1A、P1Bが生成され、フレームF2とF3に基づき補間フレームP2A、P2Bが生成される。フレーム補間処理回路65からは1/150sごとに、映像信号X1に含まれていたフレームと補間フレームとが1対4の割合で出力される。フレームF1、補間フレームP1B、P2B、…は前半サブフレーム期間で出力され、補間フレームP1A、P2A、フレームF3、…は後半サブフレーム期間で出力される。
【0110】
時分割階調処理回路70では、フレームF1、補間フレームP1B、P2B、…は前半サブフレームS1A、S2A、S3A、…に変換され、補間フレームP1A、P2A、フレームF3、…は後半サブフレームS1B、S2B、S3B、…に変換される。したがって、映像信号X1としてフレームF1、F2、…が入力されたとき、映像信号X2としてサブフレームS1A、S1B、S2A、S2B、…が順に出力される。
【0111】
液晶表示装置5は、第3の実施形態と同様に、低階調時に輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなる(Tr>TfかつTr>ST/2となる)ように構成される。ただし、液晶表示装置5では、第3の実施形態とは異なり、高階調時には立下り時間Tfがほぼゼロとなる(Tf≒0となる)ことが好ましいとされる。液晶表示装置5では、低階調時にはTr=STかつTf≒0で、高階調時にはTf≒0となることが最も好ましい。
【0112】
液晶表示装置5によれば、以下に示すように、時分割階調駆動の課題である色ずれを防止することができる。一般に、時分割階調駆動によりカラー表示を行う場合には、2個のサブフレーム期間に輝度を分配したときに、色成分ごとに輝度の分配結果が大きく異なることがある。例えば、表示画面にある色を表示するときに、図24(a)に示すように、前半サブフレーム期間ではG画素とB画素には最小印加電圧Vlが与えられ、R画素にはそれよりも高い電圧Vd(Vd>Vl)が与えられることがある。
【0113】
表示画面内でこの色の縦バーが右方向に移動する場合、表示画面の1ライン分を観測者の視線追従方向に時間積分すると、図24(b)に示す結果が得られる。図24(b)では、cの部分は本来の色に見えるが、a、b、dおよびeの部分には動画ぼやけと擬似輪郭が発生する。特にaとeの部分では、前半サブフレーム期間の輝度と後半サブフレーム期間の輝度がほとんど混ざらないので、本来の色とは全く異なる色に見える。この結果、表示画面に色ずれが発生する。
【0114】
液晶表示装置5は、フレーム補間処理回路65を備え、映像信号X1に対してフレーム補間処理を行う。フレーム補間処理を行う場合に、表示画面の1ライン分を観測者の視線追従方向に時間積分すると、図24(c)に示す結果が得られる。図24(c)ではcの部分は本来の色に見えるが、fとgの部分は本来の色に見えず、動画ぼやけが発生する。しかし、fとgの部分でも、前半サブフレーム期間の輝度と後半サブフレーム期間の輝度はある程度混ざるので、この部分に発生する擬似輪郭や色ずれは目立たない。したがって、フレーム補間処理を行う液晶表示装置5によれば、時分割階調駆動の課題である色ずれを防止することができる。
【0115】
以下、液晶表示装置5では低階調時と高階調時で好ましい応答波形の特徴が異なる理由を説明する。液晶表示装置5は、フレーム補間駆動と時分割階調駆動を合わせた駆動を行う。第3の実施形態で述べたように、低階調時にTr>TfかつTr>ST/2となる応答波形を用いて時分割階調駆動を行うと、低階調時の動画性能を向上させることができる。この効果は、液晶の応答時間がゼロでない場合に得られる。
【0116】
一方、液晶の応答時間がゼロでないことは、図24(c)ではサブフレーム期間が時間軸方向(縦方向)に長くなることに相当する。このため、液晶の応答時間が長いと、フレーム補間駆動を行っても動画性能は向上しなくなる。また、例えばVA(Vertical Alignment)モードの液晶では、低階調時の応答時間が長く、フレーム補間駆動を行っても低階調時の動画性能はあまり向上しない。一方、従来の時分割階調駆動を行うと、高階調時に黒挿入率が低下し、インパルス度が低下する。
【0117】
このようにフレーム補間駆動では低階調時の動画性能が低く、液晶の応答時間がゼロであることが好ましいのに対して、Tr>TfかつTr>ST/2となる応答波形を用いた時分割階調駆動では高階調時の動画性能が低く、液晶の応答時間がゼロでないことが好ましい。そこで、液晶表示装置5は、時分割階調駆動とフレーム補間駆動を合わせた駆動を行うときに、両者の弱点を互いに補完するように、好ましい応答波形の特徴を切り替える。これにより、いずれか一方の駆動を行うときよりも、動画性能を向上させることができる。
【0118】
このような液晶表示装置5を構成するには、最大印加電圧Vhを調整する方法と、輝度の分配を工夫する方法を併用すればよい。具体的には、B型またはC型の液晶を用い、B型(中速)の液晶を用いる場合には、TR≒STとなる電圧を最大印加電圧Vhとする。C型(高速)の液晶を用いる場合には、TRm>ST/2を満たす立上り時間の最小値TRmを決定し、立上り時間TRが最小値TRmにほぼ等しくなる電圧(TR≒TRmとなる電圧)を最大印加電圧Vhとする。これにより、低階調時の応答波形において輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させ、低階調時にインパルス度の高い応答波形を得ることができる。
【0119】
その上で、低階調時の応答波形と高階調時の応答波形を好ましい応答波形にするために、輝度の分配を工夫する方法を適用する。低階調の輝度を分配するときに輝度の組合せが複数とおりある場合には、Tr=STかつTf≒0という条件に最も合致する組合せを選択する。また、高階調の輝度を分配するときに輝度の組合せが複数とおりある場合には、Tf≒0という条件に最も合致する組合せを選択する。このように、時分割階調駆動によって動画性能が向上する階調と、フレーム補間駆動によって動画性能が向上する階調とで、輝度の組合せを選択するときの条件を切り替えることにより、低階調時の応答波形と高階調時の応答波形をいずれも好ましい応答波形にすることができる。
【0120】
複数の輝度の組合せの中から1個の組合せを選択するときには、例えば以下の手順を実行すればよい。低階調については、第3の実施形態と同様に、第1の条件をTr≧Tf、第2の条件をTr≒ST、第3の条件をTf≒0として、これらの条件を順に適用して組合せの候補を順に絞り込めばよい。また、高階調については、Tf≒0を理想の条件として、輝度の組合せを1個選択すればよい。
【0121】
以上に示すように、本実施形態に係る液晶表示装置5は、映像変換回路としてフレーム補間処理回路65と時分割階調処理回路70を備え、少なくとも低階調時に、輝度の立上り時間Trが立下り時間Tfよりも長く、サブフレーム期間の長さSTの半分よりも長くなるように構成される。したがって、液晶表示装置5によれば、低階調時には時分割階調駆動の効果により、輝度のピークを後半サブフレーム期間の終端あるいは後方に集中させて黒挿入率とインパルス度を高め、動画ぼやけを軽減して、動画性能を向上させると共に、高階調時にはフレーム補間駆動の効果により動画性能を向上させることができる。また、フレーム補間駆動を行うことにより、表示画面に発生する色ずれを防止することができる。また、第2の実施形態と同様に、映像信号のフレーム周波数が高くなるので、フリッカを感じにくくなる。
【0122】
なお、以上に述べた各実施形態に係る液晶表示装置では、液晶の応答時間は環境温度によって変化し、応答波形のインパルス度も環境温度によって変化する。そこで、環境温度にかかわらず常に好ましい応答波形を得るために、環境温度に応じて応答波形を切り替える機能を液晶表示装置に設けてもよい。
【0123】
例えば、図25に示すように、温度センサ86、LUT87およびD/A変換器88を含む階調電圧設定回路85を液晶表示装置に設けてもよい。図25において、LUT87は、温度に対応づけて階調電圧設定値を記憶しており、温度センサ86で検知された環境温度に応じた階調電圧設定値を出力する。LUT87から出力された階調電圧設定値は、D/A変換器88でアナログ信号に変換される。これにより得られた階調電圧Vl、V1〜V8、Vhは、駆動回路20に供給される。
【0124】
あるいは、図26に示すように、温度センサ76を含む時分割階調処理回路75を液晶表示装置に設けてもよい。図26において、LUT77は、温度に対応づけて変換後の階調を記憶しており、温度センサ76で検知された環境温度に応じた変換後の階調を処理部71に出力する。
【0125】
以上に示すように、本発明の第1〜第5の実施形態およびそれらの変形例に係る液晶表示装置によれば、インパルス駆動の問題点(輝度の低下やフリッカなど)を解消しながら動画性能を向上させることができる。なお、ここまで液晶表示装置の動画性能を向上させる方法について説明してきたが、この方法を用いて、インパルス型駆動を行う他の画像表示装置の動画性能を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す液晶表示装置における処理の流れを示す図である。
【図3】図1に示す液晶表示装置における印加電圧と応答波形を示す図である。
【図4】図1に示す液晶表示装置と従来の液晶表示装置における印加電圧と応答波形を示す図である。
【図5】ノーマリーブラック型の液晶の応答時間の一例を示すテーブルである。
【図6】ノーマリーブラック型の液晶の特性を示す図である。
【図7】図1に示す液晶表示装置における最大印加電圧の決定方法を示す図である。
【図8】図1に示す液晶表示装置の階調電圧生成回路の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す液晶表示装置における処理の流れを示す図である。
【図11】ノーマリーブラック型の液晶の特性を示す図である。
【図12】フレーム補間処理回路を設けた場合と設けない場合の印加電圧と応答波形を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示す液晶表示装置における処理の流れを示す図である。
【図15】図13に示す液晶表示装置における応答波形の例を示す図である。
【図16】図13に示す液晶表示装置における応答波形の他の例を示す図である。
【図17】図13に示す液晶表示装置において、最大印加電圧を調整したときの応答波形の例を示す図である。
【図18】図13に示す液晶表示装置について、輝度の分配を工夫する方法を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図20】図19に示す液晶表示装置における処理の流れを示す図である。
【図21】本発明の第5の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図22】図21に示す液晶表示装置において、2倍速フレーム補間処理を行う場合の処理の流れを示す図である。
【図23】図21に示す液晶表示装置において、2.5倍速フレーム補間処理を行う場合の処理の流れを示す図である。
【図24】フレーム補間駆動によって色ずれを防止できる理由を説明するための図である。
【図25】本発明の第1〜第5の実施形態の変形例に係る液晶表示装置の階調電圧設定回路の詳細を示すブロック図である。
【図26】本発明の第3〜第5の実施形態の変形例に係る液晶表示装置の時分割階調処理回路の詳細を示すブロック図である。
【図27】各種の表示装置について画素の輝度の時間的変化を示す図である。
【図28】インパルス駆動によって動画ぼやけを軽減できる理由を説明するための図である。
【図29】フレーム補間駆動の処理の例を示す図である。
【図30】従来の時分割階調駆動における階調変換の例を示す図である。
【符号の説明】
【0127】
1、2、3、4、5…液晶表示装置
10…タイミング制御回路
20…駆動回路
21…階調電圧設定回路
30…画素アレイ
31…液晶表示素子
40…2倍速化処理回路
41、61、66、71…処理部
42、62、67…フレームメモリ
50…インパルス化処理回路
51…切替スイッチ
52…黒レベル発生器
60、65…フレーム補間処理回路
70、75…時分割階調処理回路
72、77、87…LUT
76、86…温度センサ
80、85…階調電圧設定回路
88…D/A変換器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インパルス駆動を行う画像表示装置であって、
複数の表示素子と、
フレーム単位で入力された映像信号に基づき、インパルス駆動用のサブフレーム単位の映像信号を求める映像変換回路と、
前記映像変換回路で求めた映像信号を用いて、前記表示素子を駆動する駆動回路とを備え、
前記表示素子の輝度の立上り時間がサブフレーム期間の長さに近づくように構成されており、所定範囲内の階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする、画像表示装置。
【請求項2】
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号と固定の映像信号とをサブフレーム単位で切り替えて出力するインパルス化処理回路とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対してフレーム補間処理を行うフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号と固定の映像信号とをサブフレーム単位で切り替えて出力するインパルス化処理回路とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対してフレーム補間処理を行うフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対して2倍速以上のフレーム補間処理を行い、サブフレーム単位の映像信号を出力するフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項7】
任意の階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記時分割階調処理回路は、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行い、
最小階調と最大階調のちょうど中間よりも低い階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記表示素子に対する最大印加電圧は、前記表示素子の輝度の立上り時間の最大値がサブフレーム期間の長さにほぼ等しくなるように決定されていることを特徴とする、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記所定範囲内の階調については、前記時分割階調処理回路による階調変換後の階調値の組合せとして、前記表示素子の輝度の立上り時間がサブフレーム期間の長さに等しく、立下り時間がゼロであるという条件に最も合致する階調値の組合せが選択されていることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記時分割階調処理回路は、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行い、
最小階調と最大階調のちょうど中間よりも高い階調については、前記時分割階調処理回路による階調変換後の階調値の組合せとして、前記表示素子の輝度の立下り時間がゼロであるという条件に最も合致する階調値の組合せが選択されていることを特徴とする、請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項1】
インパルス駆動を行う画像表示装置であって、
複数の表示素子と、
フレーム単位で入力された映像信号に基づき、インパルス駆動用のサブフレーム単位の映像信号を求める映像変換回路と、
前記映像変換回路で求めた映像信号を用いて、前記表示素子を駆動する駆動回路とを備え、
前記表示素子の輝度の立上り時間がサブフレーム期間の長さに近づくように構成されており、所定範囲内の階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする、画像表示装置。
【請求項2】
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号と固定の映像信号とをサブフレーム単位で切り替えて出力するインパルス化処理回路とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対してフレーム補間処理を行うフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号と固定の映像信号とをサブフレーム単位で切り替えて出力するインパルス化処理回路とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対してフレーム補間処理を行うフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号を定倍速化し、サブフレーム単位の映像信号を出力する定倍速化処理回路と、
定倍速化後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記映像変換回路は、
前記入力映像信号に対して2倍速以上のフレーム補間処理を行い、サブフレーム単位の映像信号を出力するフレーム補間処理回路と、
フレーム補間後の映像信号に対して、1フレーム期間の輝度を複数のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行う時分割階調処理回路とを含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項7】
任意の階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記時分割階調処理回路は、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行い、
最小階調と最大階調のちょうど中間よりも低い階調を表示するときに、前記表示素子の輝度の立上り時間が立下り時間よりも長く、サブフレーム期間の長さの半分よりも長いことを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記表示素子に対する最大印加電圧は、前記表示素子の輝度の立上り時間の最大値がサブフレーム期間の長さにほぼ等しくなるように決定されていることを特徴とする、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記所定範囲内の階調については、前記時分割階調処理回路による階調変換後の階調値の組合せとして、前記表示素子の輝度の立上り時間がサブフレーム期間の長さに等しく、立下り時間がゼロであるという条件に最も合致する階調値の組合せが選択されていることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記時分割階調処理回路は、1フレーム期間の輝度を2個のサブフレーム期間に分配するための階調変換を行い、
最小階調と最大階調のちょうど中間よりも高い階調については、前記時分割階調処理回路による階調変換後の階調値の組合せとして、前記表示素子の輝度の立下り時間がゼロであるという条件に最も合致する階調値の組合せが選択されていることを特徴とする、請求項6に記載の画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
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【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2008−268286(P2008−268286A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107463(P2007−107463)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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