説明

画像記録装置

【課題】一つのセンサーで複数の検知対象の位置を検知することにより、装置のコストアップを防止し、且つ、装置内の配線の増加及び内部機構のレイアウトの複雑化を防止する。
【解決手段】搬送路31に、一対の搬送ローラ対35が設けられている。搬送ローラ対35は、押さえローラ35Bがローラホルダ74で回転可能に支持されている。ローラホルダ74は上下動可能に構成されており、その上下動を検知する第2検知機構99が設けられている。第2検知機構99は検出子95と光センサ93を有しており、ローラホルダ74が上下動したときに連動して、検出子95が光センサ93に進退する。プリンタ部15の背面にはカバー24が設けられており、カバー24の開閉に連動するセンサアーム94の遮蔽部94Dも光センサ93に進退する。、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方のローラに対して他方のローラが接離可能に構成された搬送ローラ対と、記録媒体の案内経路を開放するカバーとを備えた画像記録装置に関し、特に、ローラ及びカバーの姿勢を判定することが可能な画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙に画像を記録することが可能なインクジェット方式の画像記録装置においては、給紙カセットから記録部へ向けて記録用紙が搬送され、搬送された記録用紙に対して記録部が画像記録を行う。記録部よりも搬送方向上流側には記録用紙の搬送位置を検出するためのセンサが設けられている。記録用紙がセンサの検出位置に到達するまでに案内経路で詰まった場合は、記録用紙はセンサによって検出されず、この場合は、制限時間内に検出されなかったことを条件に、用紙詰まりを意味するエラーが出力される。画像記録装置には、案内経路を開放するためのカバーが設けられており、案内経路で記録用紙が詰まった場合は、ユーザは、カバーを開けることにより、案内経路内の記録用紙を除去することが可能である。
【0003】
ところで、ハガキや光沢紙のような厚みのある記録用紙(以下「厚紙」という)に画像記録する場合は、画像記録中に厚紙の後端が搬送ローラ対のニップ点を抜け出すときに、搬送ローラ対の圧接力が厚紙を送り方向へ押し出し、厚紙を過剰に搬送してしまう。このため、厚紙に記録された記録画像には、インクが乗っていない横一筋の白線が現れる。この白線の発生を防止する手段として、厚紙の後端が搬送ローラ対のニップ点を抜け出すときに搬送ローラ対の各ローラを離間させて圧接状態を解除する機構が公知である。
【0004】
また、従来より、記録用紙やハガキのみならず、CDやDVDなどのディスクメディアのラベル面にも画像記録が可能なインクジェットプリンタなどの画像記録装置が知られている(特許文献1参照)。この種の画像記録装置は、記録後の記録用紙を排出する排出口から記録部よりも排出方向上流側まで直線状に形成された案内経路(以下「直線経路」という。)を有している。ディスクメディアのラベル面に画像記録する場合は、ユーザによって排出口から直線経路にディスクトレイが挿入されて、ディスクトレイ上のディスクメディアが記録部よりも上流側にセットされる。この際、ディスクトレイを記録部の上流側へ挿入可能とするために、直線経路に設けられた搬送ローラ対の各ローラを離間させて、ディスクトレイが搬送ローラ対を通過可能な隙間が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−107179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の画像記録装置において、搬送ローラ対の各ローラを離間する機構が正常に動作しなかった場合は、ディスクトレイが装置内に押し込まれることによりディスクトレイと搬送ローラ対とが衝突して、ディスクトレイやディスクメディアが破損したり、その破片が細部に混入して画像記録装置が故障したりするおそれがある。また、実際に画像記録が行わなければ記録画像に横一筋の白線が生じているかどうかの判断ができなくなり、所望しない画像記録が行われることによってインクが無駄に消耗される。このような問題を解決するために、センサを設けて、搬送ローラ対が離間したかどうかを事前に検知することが考えられる。一方、カバーが開いた状態で記録用紙が給紙カセットから送り出されると、記録用紙が装置外に飛び出したり案内経路内で詰まったりする。そのため、カバーの開閉状態を事前に検知するためのセンサを設けることが考えられる。しかしながら、各ローラの離間状態及びカバーの開閉状態それぞれを検知するためのセンサをそれぞれ設けると、センサ2つ分の設置スペース及びリード線の引き回しスペースを確保する必要があり、装置のコンパクト化を阻害するだけでなく、部品費や組立費が嵩んでコストアップにもなり好ましくない。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、一つのセンサで各ローラの離間状態及びカバーの開閉状態それぞれを判定することが可能な画像記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の画像記録装置は、記録媒体を案内可能な案内経路と、記録部と、カバーと、搬送ローラ対と、支持部材と、移動機構と、センシング部を有するセンサと、第1検出子と、第2検出子と、制御部とを備える。記録部は、上記案内経路を第1送り方向へ搬送された記録媒体に対して画像記録を行う。カバーは、上記案内経路を形成する第1姿勢と上記案内経路を開放する第2姿勢との間で姿勢変化可能に構成されている。搬送ローラ対は、上記記録部よりも上記第1送り方向の上流側に設けられている。この搬送ローラ対は、上記案内経路を挟んで互いに接触可能な状態で対向配置された駆動ローラ及び従動ローラで構成されている。支持部材は、上記従動ローラを軸支するとともに上記従動ローラが上記駆動ローラに接触する第3姿勢と上記駆動ローラから離間する第4姿勢との間で移動可能に構成されている。移動機構は、駆動源からの駆動力を受けて上記支持部材を上記第3姿勢から上記第4姿勢へ移動させる。第1検出子は、上記支持部材の姿勢に応じて上記センシング部による検出可能位置に進退する。第2検出子は、上記カバーの姿勢に応じて上記検出可能位置に進退する。制御部は、上記センサからの出力信号に基づいて上記支持部材の姿勢及び上記カバーの姿勢を判定する。
【0009】
支持部材は第3姿勢と第4姿勢との間で移動可能であり、移動機構によって第3姿勢又は第4姿勢へ移動される。第1検出子は、支持部材の姿勢に応じて上記検出可能位置に進退する。第1検出子が検出可能位置に進入したときと検出可能位置から退避したときとでは、センサからの出力信号が異なる。つまり、検出可能位置への第1検出子の進退に応じてセンサからの出力信号が変化する。制御部は、この変化に基づいて支持部材の姿勢を判定する。第2検出子は、カバーの姿勢に応じて上記検出可能位置に進退する。第2検出子が検出可能位置に進入したときと検出可能位置から退避したときとでは、センサからの出力信号が異なる。つまり、検出可能位置への第2検出子の進退に応じてセンサからの出力信号が変化する。制御部は、この変化に基づいてカバーの姿勢を判定する。
【0010】
このように本発明が構成されているため、一つのセンサで支持部材の姿勢と、カバーの姿勢とを判定することができる。これにより、装置のコストアップを防止し、且つ、装置内の配線の増加及び内部機構のレイアウトの複雑化を防止できる。
【0011】
(2) 上記第1検出子は、上記センサによって検出される被検出部が上記検出可能位置を通過するように回動可能に設けられている。第1検出子は、上記支持部材が上記第3姿勢以外の第5姿勢にあるときに上記検出可能位置に進入し、上記第5姿勢以外の位置にあるときに上記検出可能位置から退避するよう構成されている。上記第2検出子は、上記検出可能位置と該検出可能位置よりも上方又は下方の退避位置との間で回動可能に設けられ、上記カバーが上記第1姿勢にあるときに上記退避位置を維持する。また、第2検出子は、上記カバーが上記第2姿勢にあり且つ上記第1検出子が上記検出可能位置から退避しているときに上記検出可能位置に進入可能なよう構成されている。
【0012】
(3) 上記支持部材は、上記従動ローラを上記駆動ローラの下方で支持するものである。上記移動機構は、上記支持部材に対して上下方向に連結され、上記駆動源からの回転力を伝達するカム軸と、上記支持部材を上方へ弾性的に付勢する付勢部材と、上記カム軸に固定されたカムと、上記カム軸の上側に設けられ、上記カムに当接して上記カム軸を下方へ押しつけるカム受け部とを有する。上記第1検出子は、上記カム軸に固定されている。
【0013】
(4) 上記制御部は、上記カム軸と共に回転する上記第1検出子が上記検出可能位置に進入したときの上記センサの出力信号の変化に基づいて上記支持部材の位置を判定し、上記第1検出子が上記検出可能位置を退避したときの上記センサ出力信号の変化に基づいて上記カバーの姿勢を判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一つのセンサで支持部材の姿勢とカバーの姿勢とを検知することができる。このため、二つの検知対象毎に二つのセンサを設ける必要がないため、装置のコストアップを防止し、且つ、装置内の配線の増加及び内部機構のレイアウトの複雑化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】複合機10の外観を示す斜視図である。
【図2】プリンタ部15の構成を模式的に示す模式断面図である。
【図3】搬送装置30の構成を示す斜視図である。
【図4】カム移動機構88の構成を示す斜視図である。
【図5】ケース69内の構成を示す斜視図である。
【図6】第1検知機構52の構成を示す斜視図である。
【図7】第2検知機構99の構成を示す斜視図である。
【図8】第2検知機構99の動作を説明するための断面図である。
【図9】制御部100の構成を示すブロック図である。
【図10】CPU101によって実行されるカム初期位置設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】CPU101によって実行される通常の画像記録処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】CPU101によって実行される厚紙に対する画像記録処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】CPU101によって実行されるレーベル画像記録処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照して本発明の一実施形態に係る複合機10について説明する。なお、以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として複合機10の上下方向7が定義され、操作パネル16が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9が定義されている。
【0017】
[複合機10の概要]
図1に示されるように、複合機10は、プリンタ筐体11と、このプリンタ筐体11の上側に設けられたスキャナ筐体12と、このスキャナ筐体12の上側に設けられた原稿カバー13と、LCD16Aを有する操作パネル16とを備える。原稿カバー13は、スキャナ筐体12に開閉可能に支持され、閉じられることでスキャナ筐体12と共に原稿を挟む。原稿の画像は、スキャナ筐体12に収容されたフラットベッドスキャナなどの不図示のスキャナにより走査されて取り込まれる。スキャナが収容されたスキャナ筐体12は、プリンタ筐体11に開閉可能に支持されている。
【0018】
プリンタ筐体11は、給紙カセット14が収容される収容空間18を下部に備える。収容空間18は、プリンタ筐体11の前面に形成された開口17から後方奥部に渡って設けられている。給紙カセット14は収容空間18において前後方向8へ挿抜可能に支持されている。給紙カセット14に複数の記録用紙が保持される。給紙カセット14は、所謂普通紙と呼ばれる記録用紙のみならず、ハガキや光沢紙などの厚みのある記録用紙(厚紙)も保持可能である。
【0019】
収容空間18の上方にトレイガイド45が設けられている。トレイガイド45の上面でディスクトレイ(不図示)が前後方向8へ挿抜可能に支持される。ディスクトレイは、例えばCDやDVDなどのディスクメディアを保持する厚さ3mm程度の平板状部材である。このディスクトレイにディスクメディアが保持された状態でトレイガイド45にディスクトレイが挿入されると、記録部20によって記録可能な位置にディスクメディアがセットされる。
【0020】
プリンタ部15や上述のスキャナの制御は後述の制御部100(図9参照)により行われる。制御部100は、図1の操作パネル16やパソコンなどの外部機器から入力された信号やデータに基づいてプリンタ部15を駆動させて、画像を記録媒体に記録させる。また、制御部100は、後述されるように、搬送中の記録用紙の有無や搬送位置を検知したり、後述のローラホルダ74の位置を検知したり、後述のカバー24の開閉状態を検知したりする処理も行う。
【0021】
[プリンタ部15]
プリンタ部15は、搬送される記録媒体に画像を記録するものであり、図2に示されるように、主として、記録用紙19を保持する給紙カセット14と、記録用紙19を搬送する搬送装置30と、記録用紙19に対して画像記録を行う記録部20(本発明の記録部の一例)と、プリンタ部15の背面側を開閉するためのカバー24(本発明のカバーの一例)と、を備える。
【0022】
[記録部20]
記録部20は、給紙カセット14の後部の上方に配置された記録ヘッド21と、記録ヘッド21を保持するキャリッジ23と、キャリッジ23とともに記録ヘッド21を左右方向9にスライド可能に支持するレール(不図示)と、キャリッジモータ111(図9参照)及びその駆動力をキャリッジ23に伝達する駆動伝達機構を含む駆動部と、を備える。
【0023】
[記録ヘッド21]
記録ヘッド21は、吐出口を有するノズルを備える。このノズルが圧電素子などにより変形されることで吐出口からインク滴を下方のプラテン22に向けて吐出する。また、記録ヘッド21はキャリッジモータ111(図9参照)の駆動力を受けて左右方向9へ往復動される。後述されるように、記録用紙19は、プラテン22上を前方に向かって搬送される過程において、左右方向9へ往復動する記録ヘッド21からインクが吐出されることにより、記録用紙19の表面のほぼ全面に画像を記録し得る。
【0024】
[搬送装置30]
図3に示されるように、搬送装置30は、給紙ローラ41(図2参照)と、搬送ローラ対35(本発明の搬送ローラ対の一例)と、搬送路31内の記録媒体の有無や位置を検知する第1検知機構52と、ローラホルダ74の位置やカバー24の開閉状態を検知するための第2検知機構99と、カム駆動機構88と、これらを支持するフレーム25と、を有する。なお、図3では、給紙ローラ41の図示が省略されている。
【0025】
[フレーム25]
プリンタ部15の後方側に、左右方向9へ所定間隔を隔てられた状態で互いに対向するように一対のフレーム25が設けられている。フレーム25は、金属板で形成されており、その下方に配置されたベースフレーム39に固定されている。詳細には、ベースフレーム39は、金属板で形成されており、フレーム25の後方側の下端がベースフレーム39に連結されている。
【0026】
[給紙ローラ41]
図2に示されるように、給紙ローラ41は、給紙カセット14に載置された記録用紙19を搬送路31に送り出すものである。給紙ローラ41は、給紙カセット14の後部の上方に配置され、支軸42を中心に回動するアーム43の先端で回転可能に支持されている。支軸42は、フレーム25などにその中心軸を中心に回転可能に支持されている。給紙用モータ112(本発明の駆動源の一例、図9参照)の駆動力が支軸42に伝達されると、支軸42から複数の伝達ギア44を介して伝達された駆動力によって給紙ローラ41が回転する。給紙ローラ41が記録用紙19に接触した状態で回転されることにより、記録用紙19が搬送路31へ送り出される。なお、給紙用モータ112の出力側には切換ギア114(図9参照)が設けられており、この切換ギア114の駆動伝達経路が切り換えられることによって、給紙用モータ112の駆動力が給紙ローラ41あるいはカム駆動機構88(図4参照)のいずれかに伝達される。
【0027】
[搬送路31]
図2に示されるように、プリンタ部15内に搬送路31(本発明の案内経路の一例)が形成されている。搬送路31は、一端が給紙カセット14の後端部の上に位置し他端が搬送ローラ対35の後方に位置する断面弧状の第1搬送路32と、搬送ローラ対35からプラテン22と記録ヘッド21との間を経て排出ローラ対36の前方に達する直線状の第2搬送路33と、で構成されている。第1搬送路32は、それぞれ弧状に形成され径方向に互いに対向する内側ガイド部材32Aと、後述のカバー24と一体に構成された外側ガイド部材32Bとで形成されている。給紙カセット14から送り出された記録用紙19は、第1搬送路32及び第2搬送路33によって案内されて記録部20へ到達し、その後、第2搬送路33を抜けて排紙部14Aに排出される。
【0028】
[第2搬送路33]
第2搬送路33は、記録ヘッド21と、記録ヘッド21に対向して配置されたプラテン22とによって形成された直線状の経路である。この第2搬送路33には、給紙カセット14からの記録用紙19のみならず、開口17から後方へ向けて挿入されたディスクトレイ(不図示)も通る。なお、本実施形態では、ディスクトレイが装置内に挿入されたときに、プラテン22と記録ヘッド20との間をディスクトレイが通過可能なように、プラテン22及び後述の押さえローラ35Bが、図2において実線で示す上方位置から波線で示す下方位置へ移動可能に構成されている。
【0029】
[カバー24]
プリンタ部15の背面にカバー24が設けられている。カバー24の下端に支軸24Aが設けられている。支軸24Aは、図示しないフレームに回転可能に支持されている。カバー24は支軸24Aを中心にして、プリンタ部15の背面を覆う第1姿勢(本発明の第1姿勢に相当、図2の実線で示す姿勢)と、プリンタ部15の背面から後方へ離れてプリンタ部15の内部を露出する第2姿勢(本発明の第2姿勢に相当、図2の波線で示す姿勢)との間で回動する。カバー24の内面に外側ガイド部材32Bが設けられている。外側ガイド部材32Bは、カバー24と一体に構成されている。したがって、カバー24が回動すると、外側ガイド部材32Bもカバー24の回動方向と同方向へ回動する。本実施形態では、カバー24が第1姿勢にあるときに、外側ガイド部材32Bが内側ガイド部材32Aに対向する位置に配置されて、外側ガイド部材32Bと内側ガイド部材32Aとによって第1搬送路32が形成される。一方、カバー24が第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化すると、外側ガイド部材32Bが内側ガイド部材32Aから離れて、第1搬送路32が開放される。
【0030】
カバー24の内面に押圧部材29がカバー24と一体に設けられている。押圧部材29は、第1搬送路32を通る記録用紙と干渉しないように、カバー24の右端部、つまり、プリンタ部15の右側奥部に設けられている。このため、カバー24が第1姿勢にあるときでも、押圧部材29が第1搬送路32の右端部の外側に配置される。押圧部材29は、カバー24が第2姿勢から第1姿勢に回動する過程で、後述のセンサアーム94の後方アーム部94Cを下方へ押し付け可能な傾斜面29Aを有している。
【0031】
[搬送ローラ対35]
図2に示されるように、第2搬送路33において、記録部20よりも後方側、言い換えると、記録時に記録用紙19を搬送する方向(本発明の第1送り方向に相当)の上流側には、搬送路31を挟むようにして一対の搬送ローラ対35が設けられている。図3に示されるように、搬送ローラ対35は、上側の搬送ローラ35A(本発明の駆動ローラの一例)と下側の押さえローラ35B(本発明の従動ローラの一例)とで構成されている。上側の搬送ローラ35Aは、フレーム25にその中心軸を中心に回転可能に支持されており、搬送用モータ113(図9参照)の駆動力を受けて回転される。下側の押さえローラ35Bは、後述のローラホルダ74にその中心軸を中心に回転可能に支持されている。
【0032】
[排出ローラ対36]
図2に示されるように、記録部20よりも前方には、第2搬送路33を挟むようにして一対の排出ローラ対36が設けられている。排出ローラ対36は、上側のピンチローラ36Aと下側の排出ローラ36Bとで構成されている。上側のピンチローラ36Aは、フレーム25などにその中心軸を中心に回転可能に支持されている。下側の排出ローラ36Bはプラテン22に回転可能に支持されている。
【0033】
[ローラホルダ74]
図3及び図4に示されるように、ローラホルダ74(本発明の支持部材の一例)は、搬送ローラ対35の少し後方に設けられている。ローラホルダ74は、プラテン22とは別部材として構成されている。ローラホルダ74は、4つのブロックが左右方向9に連結されることにより、左右方向9に長い形状となっている。各ブロックの前方上端部に押さえローラ35Bが回転可能に支持されている。本実施形態では、ローラホルダ74は、左右方向9に沿って一直線状に配置された8個の押さえローラ35Bを支持している。ローラホルダ74の後方上端部に複数の支軸76(図6参照)が設けられている。この支軸76が後述のサブフレーム26に設けられた軸受け溝26C(図7参照)に軸支されている。この構成により、ローラホルダ74は、支軸76を中心に回動可能である。具体的には、ローラホルダ74は、押さえローラ35Bが上側の搬送ローラ35Aに接触する第3姿勢(図2の実線で示す姿勢、本発明の第3姿勢に相当)と、押さえローラ35Bが搬送ローラ35Aから下方へ離間した第4姿勢(図2の波線で示す姿勢、本発明の第4姿勢に相当)との間で支軸76を中心に回動可能である。
【0034】
図4に示されるように、ローラホルダ74の下側には金属板で形成されたサブフレーム26が設けられている。サブフレーム26はその両端がフレーム25に固定されている。ローラホルダ74とサブフレーム26との間にコイルバネ78(本発明の付勢部材の一例)が設けられている。なお、図4では、搬送ローラ35Aの図示が省略されている。コイルバネ78は、押さえローラ35B寄りの位置に伸縮方向が上下方向7となるように設けられている。具体的には、コイルバネ78の上端は、ローラホルダ74の上壁の裏面(下面)に設けられたバネホルダ78Aに収容されており、コイルバネ78の下端はサブフレーム26に取り付けられている。コイルバネ78は、設定された付勢力を搬送ローラ35Aに付与するように、予め収縮された状態でローラホルダ74とサブフレーム26との間に設けられる。これにより、コイルバネ78が伸びようとする上向きの付勢力がローラホルダ74に付与されてローラホルダ74は第3姿勢を維持する。コイルバネ78の上向きの付勢力は、ローラホルダ74を介して押さえローラ35Bに作用し、押さえローラ35Bは搬送ローラ35Aに上記付勢力で圧接する。なお、後述のカム駆動機構88によって上記付勢力に抗してローラホルダ74の前端部が下方に下げられると、ローラホルダ74は第3姿勢から第4姿勢に移動し、押さえローラ35Bも搬送ローラ35Aから離れて下方へ移動する。
【0035】
[第1検知機構52]
第1検知機構52は、記録部20へ向けて搬送される記録用紙19の搬送路31における位置や、装置内に挿入されたディスクトレイの後端の位置を検知する機能を実現するためのものである。図3に示されるように、第1検知機構52は、搬送ローラ対35よりも後方(記録時の搬送方向の上流側)に設けられている。第1検知機構52は、ローラホルダ74の後部を覆うと共に第1検知機構52の各構成要素を収容するケース69と、ケース69の左端部の外側に設けられた光センサ68とを有する。ケース69は、左右方向9に長い形状であり、その前方端に設けられた複数の爪(不図示)がサブフレーム26と係合することによりケース69がサブフレーム26に固定されている。図5に示されるように、ケース69内には、左右方向9の中央付近から左端部の外側まで延出された回転軸57が回転可能に支持されている。回転軸57にアーム状の回転子67が固定されている。ケース69の左右方向9の中央部にスリット59が形成されており、回転子67は回転軸57から上方へ突出し、スリット59を通ってケース69の内部から外部へ露出している。回転軸57の左端に検出子54が設けられている。検出子54は、回転子67と同方向へ突出している。回転子67及び検出子54は、回転軸57に固定されている。したがって、回転子67に回転方向の力が加えられると、検出子54は回転子67に連動して同方向に回転する。
【0036】
[光センサ68]
光センサ68は、発光素子及び受光素子が対向配置された透過型のフォトインタラプタである。光センサ68は、発光素子から出射された光を受光素子が受光し、その受光量に応じた電気信号(センサ信号)を出力する。発光素子及び受光素子は、光センサ68の先端に配置されており、当該部分が光センサ68のセンシング部68A(図6参照)であり、発光素子から受光素子に至る光の通路(光路)がセンシング部68Aの検出可能位置である。光センサ68は、検出子54の回動範囲にセンシング部68Aの光路が配置されるようにフレーム25に取り付けられている。本実施形態では、記録用紙19やディスクトレイが搬送路31に存在しないときは、検出子54の先端部54Aがセンシング部68Aの光路に進入して光路を遮っている(図6参照)。このとき、光センサ68からLOWレベルのセンサ信号が出力される。制御部100は、センサ信号がLOWレベルのときに、先端部54Aがセンシング部68Aの光路に進入していると判定する。また、記録用紙19やディスクトレイが搬送路31を案内されて回転子67を押し倒すと、それに連動して検出子54が回動し、その先端部54Aがセンシング部68Aの光路から退避する。このとき、光センサ68からHIGHレベルのセンサ信号が出力される。制御部100は、センサ信号がLOWからHIGHに変化したときに、記録用紙19またはディスクトレイが回転子67を通過したと判定する。
【0037】
[回転規制機構80]
図5及び図6に示されるように、回転軸57の右端部には、回転規制機構80が取り付けられている。回転子67にはねじりコイルバネ58(以下「バネ58」と略す。)が取り付けられており、このバネ58は、回転子67が図6に示される姿勢から後方へ回動しようとする付勢力F1を回転子67に付与している。回転規制機構80は、バネ58の付勢力F1による回転子67の回動を規制するものである。回転規制機構80は、回転軸57の右端部に連結される継ぎ手83と、継ぎ手83に固定された規制部材81と、規制部材81に取り付けられたねじりコイルバネ82(以下「バネ82」と略す。)とを有する。継ぎ手83は、回転軸57と同軸回転可能なように回転軸57の右端部に連結されている。この継ぎ手83は、規制部材81に対して回転子67が図6に示される姿勢から前方へ回動しようとするのを許容し、後方へ回動しようとするのを規制するよう構成されている。
【0038】
図5に示されるように、規制部材81は、回転軸57に対して垂直方向に突出するストッパー85を有する。ストッパー85は、規制部材81から後方へ突出している。バネ82は、バネ58よりも大きい付勢力F2を規制部材81に付与している。この付勢力F2によって規制部材81はバネ58の付勢方向へ回動しようとする。つまり、付勢力F2は、付勢力F1の方向と逆の方向へ作用している。ストッパー85は、例えばケース69と係合することにより、回転子67がスリット59から上方へ垂直に突出した姿勢(図5及び図6参照)で保持するように、規制部材81の回動を規制するものである。このうように構成されているため、各部材に付与される力の均衡がとれて、回転子67は、図5及び図6に示される姿勢、つまり、回転軸57から上方へ突出して第2搬送路33を交差する姿勢を保持する。一方、回転子67が記録用紙19によって後方から前方へ押し付けられると、回転子67は、バネ58の付勢力F1に抗して前方へ倒れるように回動する。また、回転子67がディスクトレイによって前方から後方へ押し付けられると、回転子67はバネ82の付勢力F2に抗して後方へ倒れるように回動する。
【0039】
[カム駆動機構88]
カム駆動機構88は、給紙用モータ112(図7参照)からの駆動力を受けてローラホルダ74を上述の第3姿勢と第4姿勢との間で移動させる機構である。図4に示されるように、このカム駆動機構88は、主として、軸受け部89と、カム軸90(本発明のカム軸の一例)と、2つのカム91(本発明のカムの一例)と、シャフトガイド75と、リンク部材92とを有する。軸受け部89は、ローラホルダ74の前端部に一体に設けられている。軸受け部89は、カム軸90の外径よりも大きい輪が形成された環状部材である。シャフトガイド75は、ローラホルダ74の下側に設けられたサブフレーム26の両端それぞれに設けられており、サブフレーム26の上面から上方へ向けて立設している。各シャフトガイド75は、カム軸90を回転可能に支持すると共にカム軸90を上下方向7へ移動可能に支持するものであり、縦長のガイド溝75Aと、シャフトガイド75の上端から左側へ庇状に突出したカム受け部75B(本発明のカム受け部の一例)とを有する。カム軸90は、軸受け部89の輪に通された状態でその両端がサブフレーム26のシャフトガイド75のガイド溝75Aに挿通されている。これにより、カム軸90がガイド溝75Aに沿って上下方向7へ移動可能に支持される。カム軸90にカム91が固定されている。カム91は、シャフトガイド75のカム受け部75Bの下方に位置するようにカム軸90に固定されている。リンク部材92は、給紙用モータ112からの駆動力を受ける部分であり、カム軸90の右端部に固定されている。
【0040】
リンク部材92が図4に示される姿勢にあるときは、カム91はフリーの状態となっている。このとき、カム軸90は、軸受け部89の下部で支えられている。また、ローラホルダ74は、コイルバネ78による上方の付勢力によって押さえローラ35Bを搬送ローラ35Aへ圧接させる第3姿勢に保持されている。一方、リンク部材92に給紙用モータ112(図9参照)の駆動力が入力されて、カム軸90が回動すると、カム91も回動する。カム91の回動によってカム91の外縁部がカム受け部75Bに当接すると、カム軸90が下方へ押しつけられ、カム軸90が下方へ移動する。カム軸90が下方へ移動すると、カム軸90に引っ張られるようにして軸受け部89と共にローラホルダ74の前端部がバネ78の付勢力に抗して第3姿勢よりも下方の第4姿勢へ移動する。これにより、搬送ローラ35Aから押さえローラ35Bが離間する。なお、カム駆動機構88によって、本発明の移動機構が実現される。
【0041】
[第2検知機構99]
第2検知機構99は、上下方向7へ移動するローラホルダ74の位置を検知する機能と、カバー24の姿勢を検知する機能とを実現するためのものである。図7に示されるように、第2検知機構99は、サブフレーム26の右端部に設けられている。第2検知機構99は、ケース69内に収容された光センサ93(本発明のセンサの一例)と、検出子95(本発明の第1検出子の一例)と、センサアーム94(本発明の第2検出子の一例)とを有する。
【0042】
光センサ93は、上述の光センサ68と同じ構成を有するものであり、発光素子及び受光素子が対向配置された透過型のフォトインタラプタである。発光素子及び受光素子は、光センサ93の先端に配置されており、当該部分が光センサ93のセンシング部93Aであり、発光素子から受光素子に至る光の通路(光路)がセンシング部93Aの検出可能位置である。光センサ93は、図5に示されるようにケース69内に収容されている。具体的には、ケース69の右端部の内壁に固定されている。サブフレーム26の後端には垂直上方へ起立する垂直壁26Aが設けられている。垂直壁26Aの右端部には上方が開放された長方形状の切り欠き26Bが形成されている。図7にはケース69やローラホルダ74等が示されていないが、ローラホルダ74やケース69、サブフレーム26が組み立てられると、図7に示されるように、光センサ93のセンシング部93Aが切り欠き26Bから前方へ挿通される。本実施形態では、光センサ93は、センシング部93Aの光路がカム軸90と平行になるように、また、カム軸90の中心軸と光路とが同じ高さ位置になるように配置されている。
【0043】
検出子95は、カム軸90の右端部に固定されている。したがって、カム軸90が回転すると、検出子95もカム軸90の回転方向と同じ方向へ回動する。検出子95は、カム軸91から垂直に突出しており、側面から見た形状が概ね扇形の板部材である。検出子95は、カム軸90の回転に伴い検出子95が回動したときに、検出子95の先端部95A(本発明の被検出部に相当)が光センサ93のセンシング部93Aの光路を通過可能なように設けられている。上述したように、カム軸90が回転するとローラホルダ74が上下動する。したがって、検出子95は、カム駆動機構88によってローラホルダ74が上下方向7へ移動されると、その移動位置に応じて、先端部95Aがセンシング部93Aに進入し、又はセンシング部93Aから退避する。
【0044】
センサアーム94は、前後方向8に長いアーム状に形成されており、左右方向9に延びる支軸94Aと、支軸94Aから前方へ延出された前方アーム部94Bと、支軸94Aから後方へ延出された後方アーム部94Cと、前方アーム部94Bの先端(前方端)に設けられた遮蔽部94Dとを有する。支軸94Aが図示しないフレームに軸支されることにより、センサアーム94が支軸94Aを中心に回動可能となる。センサアーム94は、センサアーム94の回動したときに、遮蔽部94Dが光センサ93のセンシング部93Aの光路を通過可能な位置に設けられている。支軸94Aには、遮蔽部94Dを下方へ移動させる回転力を付与するねじりコイルバネ96(以下「バネ96」という。)が取り付けられている。上述したように、カバー24が第2姿勢から第1姿勢に回動すると、その回動過程で、後方アーム部94Cは押圧部材29(図2参照)によって下方へ押し付けられる。これにより、前方アーム部94Bはバネ96の付勢力に抗して上方へ移動する。そして、カバー24が第1姿勢となったときに遮蔽部94Dがセンシング部93Aの光路の上方に位置する退避位置(図7及び図8(A)に示される位置)に配置される。一方、カバー24が第1姿勢から回動されて第2姿勢になると、押圧部材29が後方アーム部94Cから離間し、後方アーム部94Cへの押し付けが解除される。これにより、バネ96の付勢力によって前方アーム部94Bは下方へ移動可能となり、遮蔽部94Dがセンシング部93Aの光路に進入可能となる。
【0045】
次に、図8を参照して、第2検知機構99の動作、詳細には、検出子95及びセンサアーム94それぞれの動作と位置関係について説明する。図8は、左側から第2検知機構99を見たときの断面図であり、図8の(A)には、検出子95がセンシング部93Aの光路に進入している状態が示されており、(B)には、(A)の状態からカム軸90が時計回転方向へ90°回転した状態が示されており、(C)には(A)の状態からカム軸90が時計回転方向へ180°回転した状態が示されており、(D)には(A)の状態からカム軸90が時計回転方向へ270°回転した状態が示されている。
【0046】
図8(A)に示されるように、検出子95がセンシング部93Aの光路に進入すると、検出子95の先端部95Aが光路を遮る。このとき、光センサ93からLOWレベルのセンサ信号が出力される。先端部95Aが光路に進入しているときは、仮にカバー24が開けられて第2姿勢になっていても、遮蔽部94Dが検出子95の先端部95Aと干渉し、遮蔽部94Dは光路に進入できない。なお、先端部95Aが光路に進入しているときは、ローラホルダ74は第3姿勢にあらず、それ以外の姿勢、例えば、押さえローラ35Bが搬送ローラ35Aから離間した第4姿勢となっている。このときの姿勢は本発明の第5姿勢に相当する。
【0047】
図8(A)に示される状態からカム軸90が時計回転方向へ90°回転すると、検出子95も同方向へ回動し、先端部95Aがセンシング部93Aの光路から退避する(図8(B)参照)。このとき、カバー24が閉じられて第1姿勢にあるときは、センサアーム94は、図8(B)の実線で示された姿勢を維持するため、遮蔽部94Dは光路に進入せずに退避位置を維持する。一方、カバー24が開けられて第2姿勢にあるときは、先端部95Aに干渉しないため、遮蔽部94Dが下方へ移動してセンシング部93Aの光路に進入する。カム91はカム受け部75Bに当接しない位置にある。そのため、カム軸90は、ガイド溝75A(図4参照)の上端に位置し、ローラホルダ74は第3姿勢を維持し、押さえローラ35Bは搬送ローラ35Aに圧接した状態を維持する。なお、遮蔽部94Dがセンシング部93Aの光路から退避している場合は、光センサ93からHIGHレベルのセンサ信号が出力され、遮蔽部94Dがセンシング部93Aの光路に進入している場合は、光センサ93からLOWレベルのセンサ信号が出力される。
【0048】
カム軸90が時計回転方向へ更に90°回転すると、カム91がカム受け部75Bに当接して、カム軸90を下方へ押し下げる。これにより、ローラホルダ74は、押さえローラ35Bとともに徐々に下方へ移動する。
【0049】
そして、カム軸90が時計回転方向へ更に90°回転すると、カム軸90がガイド溝75Bの下端まで下げられる。これにより、ローラホルダ74は第3姿勢から第4姿勢となり、押さえローラ35Bは下方へ移動して搬送ローラ35Aから離間する。
【0050】
そして、更にカム軸90が90°回転すると、図8(A)に示されるように、検出子95がセンシング部93Aの光路に進入する。このとき、遮蔽部94Dが光路に配置されていたとしても、検出子95によって上方の退避位置へ押し上げられて、光路から退避する。
【0051】
次に、図9を参照して、制御部100(本発明の制御部の一例)の構成について説明する。
【0052】
図9に示されるように、制御部100は、CPU101と、ROM102と、RAM103とを主に有している。CPU101、ROM102、及びRAM103は、バスラインを介して互いに接続されている。制御部100は、入出力ポート105を介して、操作パネル16、キャリッジモータ111,給紙用モータ112、搬送用モータ113、エンコーダ116、光センサ68、及び光センサ93に接続されている。
【0053】
CPU101は、ROM102やRAM103に記憶されているデータ値やプログラムに従って、複合機10が有する各機能の制御や、入出力ポート105に接続された各部を制御するものである。ROM102は、複合機10で実行される制御プログラムなどを格納した書換不能なメモリである。図10から図13のフローチャートに示す後述の各処理を実行するプログラムは、ROM102に格納されている。RAM103は、書換可能な揮発性のメモリであり、上記各処理の実行時に必要なデータを一時的に記憶したり、各処理に用いられる閾値などの情報を記憶する。
【0054】
以下、図10から図13を参照しながら、CPU101によって実行される処理の手順について説明する。
【0055】
まず、図10のフローチャートに基づいてカム初期位置設定処理について説明する。このカム初期位置設定処理は、例えば、複合機10の主電源が投入されたときや、複合機10がリセットがされたとき、あるいは画像記録処理が強制終了されたときなどに実行される。CPU101は、給紙用モータ112の駆動伝達の経路を給紙ローラ41に伝達する経路からカム駆動機構88に伝達する経路に切り換え、カム駆動機構88に駆動力を伝達する準備をする。その後、CPU101は、ステップS11において、光センサ93からの出力信号のレベルがHIGHかどうかを判断する。この判断により、光センサ93の光路が検出子95及びセンサアーム94のいずれにも遮蔽されていないかどうかが判定できる。ここで、信号レベルがHIGHの場合は、カバー24が第1姿勢にあるが、検出子95の位置が不確定な状態である。このため、信号レベルがHIGHの場合は、CPU101は、検出子95の位置を把握するために、給紙用モータ112を駆動制御して、信号レベルがLOWになるまでカム軸90を回転させる(S12,S13)。つまり、検出子95が光センサ93の光路に進入するまでカム軸90が回転される(図8(A)参照)。
【0056】
ステップS13において信号レベルがLOWである場合は、CPU101は更にカム軸90を90°回転させる(S14)。これにより、検出子95が光路から退避して、図8(B)に示される姿勢となり、信号レベルが再びHIGHになる。このとき、ローラホルダ74は、押さえローラ35Bを搬送ローラ35Aに圧接させる第3姿勢を維持する(図8(B)参照)。その後、ローラホルダ74が第3姿勢であることを示す情報がRAM103に記録される(S15)。
【0057】
一方、ステップS11において、光センサ93からの出力信号のレベルがLOWである場合は、CPU101は、カム軸90を90°回転させる(S16)。信号レベルがLOWの場合は、検出子95又はセンサアーム94のいずれかが光路に進入していることを意味する。この状態からカム軸90が90°回転すると、少なくとも検出子95は光路から退避する。次のステップS17では、CPU101は、再び、光センサ93からの出力信号のレベルがHIGHかどうかを判断する。ここで、信号レベルがHIGHである場合は、カバー24が第1姿勢にあり、検出子95が光センサ93の光路から退避していると判断されて、上述のステップS12以降の処理が行われる。
【0058】
ステップS17において光センサ93からの出力信号のレベルがLOWである場合は、カバー24が第2姿勢であること、つまり、第2搬送路32が開放されていることを意味する。この場合は、CPU101は、カバー24が開いていることを示すカバーエラー情報をLCD16Aに出力する(S18)。その後、500ms経過した後に(S19)、CPU101によって、上述のステップS17以降の処理が行われる。
【0059】
このように、カム初期位置設定処理が実行されることにより、カバー24が第1姿勢か第2姿勢かを判断することができ、しかも、ローラホルダ74の位置を把握してローラホルダ74を初期設定位置である第3姿勢に移動させることができる。
【0060】
次に、図11のフローチャートに基づいて記録用紙19に対して行われる通常の画像記録処理について説明する。
【0061】
まず、ステップS21では、CPU101は、光センサ93からの出力信号のレベルがHIGHかどうかを判断する。カム初期位置設定処理によってローラホルダ74が第3姿勢に設定されているので、当該判断によって、カバー24が第1姿勢にあるかどうかを判定できる。ここで、信号レベルがLOWの場合は、カバー24が第2姿勢であること、つまり、第2搬送路32が開放されていることを意味するため、CPU101は、カバー24が開いていることを示すカバーエラー情報をLCD16Aに出力する(S22)。その後、500ms経過した後に(S23)、再びステップS21の処理が行われる。
【0062】
ステップS21において光センサ93からの信号レベルがHIGHである場合は、CPU101は、RAM103に記憶されたローラホルダ74の情報を読み出して、ローラホルダ74が第3姿勢にあることを確認し(S24)、その後、割り込みコマンドを発行する(S26)。ステップS24でローラホルダ74が第3姿勢にあることを確認できなかった場合は、上述のカム初期位置設定処理が行われて(S25)、ローラホルダ74を第3姿勢に移動させてからステップS26以降の処理が実行される。なお、上記割り込みコマンドは、給紙カセット14から給送された記録用紙19の給送中にカバー24の状態を監視する後述の割込処理を開始させる指令である。割り込みコマンド発行後は、給紙カセット14から記録用紙19が給紙される(S27)。そして、記録用紙19が回転子67まで給送されたことにより、光センサ68からの信号レベルがLOWからHIGHに変わったことを受けて、CPU101は記録用紙19が搬送ローラ対35の手前まで搬送されたと判断し、給紙処理を終了する。その後、CPU101は、割り込み解除コマンドを発行する(S28)。
給送処理
【0063】
割込処理は、ステップS41から開始される。まず、ステップS41では、CPU101は、光センサ93からの出力信号のレベルがHIGHかどうかを判断する。このステップ41において信号レベルがHIGHの場合は、カバー24が第1姿勢にあることを意味する。この場合は、次のステップS42においてステップS28の割り込み解除コマンドが発行されたかどうかを判断し、割り込み解除コマンドが発行されるまでステップS41及びステップS42の処理が繰り返される。なお、割り込み解除コマンドが発行された場合は、割込処理が終了する。
【0064】
ステップ41において信号レベルがLOWである場合は、カバー24が第2姿勢にあることを意味する。この場合は、記録用紙19の用紙詰まりなどを防止するために、給紙処理を停止して(S43)、カバーエラー情報をLCD16Aに出力した後に(S44)、画像記録処理を強制終了させる(S45)。なお、画像記録処理が強制終了された場合は、上述のカム初期位置設定処理が再び実行される。
【0065】
割り込み処理が終了すると、ステップS29において、画像記録が実行され、その後、記録用紙19が排出される(S30)。
【0066】
次に、図12のフローチャートに基づいて、ハガキや光沢紙などの厚紙に対して行われる画像記録処理について説明する。なお、図11のフローチャートと実質的に同じ処理については、その説明を簡略する。
【0067】
まず、CPU101は、ステップS51からステップS58において、上述のステップS21からステップS28と同様の処理(ステップS41以降の割り込み処理を含む)を行う。割り込み処理の終了後、CPU101は、光センサ68の出力信号のレベルに基づいて、搬送路31における厚紙の先端位置を検知する処理を開始する。厚紙の搬送中に厚紙の先端が回転子67を押し倒すと、検出子54が回動して、光センサ68のセンシング部68Aから前方へ退避する。このとき、光センサ68の出力信号がLOWからHIGHに変わる。CPU101は、このときの変化に基づいて記録用紙19の先端が回転子67を通過したことを検知する。その後、厚紙の先端が画像記録開始位置に到達すると、記録部20によって画像記録が開始される(S59)。なお、画像記録中は、厚紙を所定量だけ搬送する処理と搬送を停止する処理とを繰り返す間欠搬送が行われ、厚紙の搬送停止中にキャリッジ23が往復動するとともに記録ヘッド21からインク滴が吐出されることにより、所定幅の画像(バンド画像)が厚紙に記録される。そして、このような所定幅の画像記録が繰り返されることにより、厚紙に画像が記録される。
【0068】
画像記録が開始されると、続いて、CPU101は、光センサ68の出力信号のレベルに基づいて、搬送路31における厚紙の後端位置を検知する処理を開始する。厚紙の搬送中に厚紙の後端が回転子67を通過すると、回転子67が元の位置に戻り、この動作に連動して検出子54が回動して、光センサ68のセンシング部68Aの光路に再び進入する。このとき、光センサ68の出力信号がHIGHからLOWに変わる。CPU101は、このときの変化に基づいて厚紙の後端が回転子67を通過したことを検知する。厚紙の後端が検知されると、続いて、CPU101は、厚紙の後端が搬送ローラ対35のニップ点に到達したかどうかを判定する(S60)。具体的には、後端が検知されてからの厚紙の搬送量を搬送ローラ35Aあるいは搬送用モータ113に取り付けられたエンコーダ116からの信号に基づいて算出し、その算出値と回転子67からニップ点までの距離とを比較し、上記算出値がニップ点までの距離と一致した場合に、厚紙の後端が搬送ローラ対35のニップ点に到達したと判定する。
【0069】
続いて、厚紙の後端位置が搬送ローラ対35のニップ点に到達したと判定されたことを条件に、CPU101は、厚紙の後端が搬送ローラ対35で挟持された状態で搬送停止している間に、給紙用モータ112の駆動伝達の経路を給紙ローラ41に伝達する経路からカム駆動機構88に伝達する経路に切り換え、その後、給紙用モータ112を所定回転量だけ駆動する(S61)。具体的は切換手法は、例えば、キャリッジ23やその他の可動部材を用いて、切換ギア114に設けられた切換レバーの位置を変更することにより行われる。これにより、給紙用モータ112の駆動力がカム駆動機構88を経てローラホルダ74に伝達し、ローラホルダ74が第3姿勢から第4姿勢へ移動する。これにより、搬送ローラ35Aから押さえローラ35Bが離間する。
【0070】
その後、画像記録が終了すると、厚紙が排紙される(S62)。続いて、ローラホルダ74を第4姿勢から第3姿勢へ移動させる(S63)。具体的には、図8(C)の状態からカム軸90を180°時計回転方向へ回転させる。このとき、検出子95は、光センサ93の光路を通過して、光センサ93の出力信号のレベルをHIGHからLOWに変化させ、再びHIGHに変化させる。CPU101は、このときの信号の変換に基づいて検出子95の位置を把握し、更には検出子95及びカム軸90と連動するローラホルダ74の姿勢を判定する。ローラホルダ74が第4姿勢から第3姿勢へ移動すると、搬送ローラ35Aと押さえローラ35Bとが再び圧接する。
【0071】
次に、図13のフローチャートに基づいて、ディスクメディアの記録面に画像を記録するレーベル記録処理について説明する。なお、図11及び図12のフローチャートと実質的に同じ処理については、その説明を簡略する。
【0072】
まず、CPU101は、ステップS71からステップS73において、上述のステップS21からステップS23と同様の処理を行う。その後、操作パネル16や外部接続されたパソコンなどからレーベル記録指示が入力されたことを条件に、ローラホルダ74を第3姿勢から第4姿勢へ移動する(S74)。
【0073】
続いて、割り込みコマンドが発行された後に(S75)、ディスクトレイを取り込む処理が行われる(S76)。詳細には、ユーザによって、ディスクトレイが開口17から第2搬送路33へ向けて挿入された後に、操作パネル16や外部接続されたパソコンなどから取り込み指示が入力されると、搬送用モータ113を制御して搬送ローラ35A及び排出ローラ36Bを逆回転させる。これにより、ディスクトレイが後方へ搬送される。
【0074】
ディスクトレイが後方へ搬送されて、載置されたディスクメディアが画像記録可能位置に到達すると、割り込み解除コマンドが発行されて、割り込み処理が終了する(S77)。
【0075】
その後、ディスクメディアのラベル面に対して画像記録が開始される(S78)。画像記録が終了すると、ディスクトレイが排出され(S79)、その後、ローラホルダ74が第4姿勢から第3姿勢へ移動される(S80)。これにより、搬送ローラ35Aと押さえローラ35Bとが再び圧接する。
【0076】
[本発明の効果]
上述のように、複合機10における各画像記録処理において、光センサ93からの出力信号のレベルの変化に基づいて、ローラホルダ74が第3姿勢なのか第4姿勢なのかを判定することができる。また、検出子95がセンシング部93Aの光路に進入していない場合は、割り込み処理においてカバー24が第1姿勢なのか第2姿勢なのかを判定することができる。このため、複数の検知対象毎に光センサを設ける必要がないため、新たなセンサを追加することにより生じるコストアップや部品点数の増加、装置の大型化を防止することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、センサの一例として光センサ93を使用した例が説明されたが、光センサ93に代えて反射型のセンサや、磁気センサや接触式のセンサなどを用いることも可能である。また、上述の実施形態では、ローラホルダ74の駆動源としてを給紙用モータ112を兼用した例が説明されたが、給紙用モータ112を兼用せずに、ソレノイドやモータなどの単独の駆動源を用いて、駆動伝達の切換をすることなく、ローラホルダ74を移動させる構成についても本発明は適用可能である。
【0078】
また、上述の実施形態では、センサアーム74が光センサ93に対して上方へ退避する構成となっているが、センサアーム74が光センサ93の下方へ退避するように構成されたものであってもかまわない。
【符号の説明】
【0079】
10・・・複合機(画像記録装置)
15・・・プリンタ部
19・・・記録用紙(記録媒体)
20・・・記録部
30・・・搬送装置
31・・・搬送路(案内経路)
35・・・搬送ローラ対
52・・・第1検知機構
54・・・検出子
58・・・ねじりコイルバネ
67・・・回転子
68・・・光センサ(センサ)
74・・・ローラホルダ(支持部材)
80・・・回転規制機構
81・・・規制部材
82・・・ねじりコイルバネ
88・・・カム駆動機構(移動機構)
94・・・センサアーム(第2検出子)
95・・・検出子(第1検出子)
99・・・第2検知機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を案内可能な案内経路と、
上記案内経路を第1送り方向へ搬送された記録媒体に対して画像記録を行う記録部と、
上記案内経路を形成する第1姿勢と上記案内経路を開放する第2姿勢との間で姿勢変化可能なカバーと、
上記記録部よりも上記第1送り方向の上流側に設けられ、上記案内経路を挟んで互いに接触可能な状態で対向配置された駆動ローラ及び従動ローラからなる搬送ローラ対と、
上記従動ローラを軸支するとともに上記従動ローラが上記駆動ローラに接触する第3姿勢と上記駆動ローラから離間する第4姿勢との間で移動可能な支持部材と、
駆動源からの駆動力を受けて上記支持部材を上記第3姿勢から上記第4姿勢へ移動させる移動機構と、
センシング部を有するセンサと、
上記支持部材の姿勢に応じて上記センシング部による検出可能位置に進退する第1検出子と、
上記カバーの姿勢に応じて上記検出可能位置に進退する第2検出子と、
上記センサからの出力信号に基づいて上記支持部材の姿勢及び上記カバーの姿勢を判定する制御部と、を具備する画像記録装置。
【請求項2】
上記第1検出子は、上記センサによって検出される被検出部が上記検出可能位置を通過するように回動可能に設けられ、上記支持部材が上記第3姿勢以外の第5姿勢にあるときに上記検出可能位置に進入し、上記第5姿勢以外の位置にあるときに上記検出可能位置から退避するよう構成され、
上記第2検出子は、上記検出可能位置と該検出可能位置よりも上方又は下方の退避位置との間で回動可能に設けられ、上記カバーが上記第1姿勢にあるときに上記退避位置を維持し、上記カバーが上記第2姿勢にあり且つ上記第1検出子が上記検出可能位置から退避しているときに上記検出可能位置に進入するよう構成されている請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記支持部材は、上記従動ローラを上記駆動ローラの下方で支持するものであり、
上記移動機構は、
上記支持部材に対して上下方向に連結され、上記駆動源からの回転力を伝達するカム軸と、
上記支持部材を上方へ弾性的に付勢する付勢部材と、
上記カム軸に固定されたカムと、
上記カム軸の上側に設けられ、上記カムに当接して上記カム軸を下方へ押しつけるカム受け部と、を有し、
上記第1検出子は、上記カム軸に固定されている請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記制御部は、
上記カム軸と共に回転する上記第1検出子が上記検出可能位置に進入したときの上記センサの出力信号の変化に基づいて上記支持部材の位置を判定し、
上記第1検出子が上記検出可能位置を退避した後の上記センサ出力信号の変化に基づいて上記カバーの姿勢を判定する請求項3に記載の画像記録装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−76248(P2012−76248A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220854(P2010−220854)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】