画像評価方法および画像評価装置
【課題】画像形成装置により形成された画像の周波数特性に基づき的確に画像評価を実現する技術を提供する。
【解決手段】単一の濃淡画素値を有するテストパターンデータを画像記録媒体にテストパターン画像として形成し、前記テストパターン画像を被評価画像データとして取得する。前記被評価画像データを2次元周波数解析し周波数強度を算出し、前記周波数強度のうち特定の角度方向の周波数強度に基づく評価データを表示する。
【解決手段】単一の濃淡画素値を有するテストパターンデータを画像記録媒体にテストパターン画像として形成し、前記テストパターン画像を被評価画像データとして取得する。前記被評価画像データを2次元周波数解析し周波数強度を算出し、前記周波数強度のうち特定の角度方向の周波数強度に基づく評価データを表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置により画像記録媒体に形成される画像の評価技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機等の画像記録装置では、搬送ムラやインクの吐出ムラ等に起因して、形成される画像にスジやムラ等の欠陥が生じることが知られている。そのため、操作者がテストプリントを行い、目視により画像の欠陥の有無を判定することが行われている。
【0003】
また、自動的に画像の品質を評価するための様々な方法も検討されている。例えば、縞模様のテスト原稿を読み取り、その読み取った画像の濃度変化を検出し、その検出結果から周波数スペクトルを算出し、周波数スペクトルのピーク値に対応する周波数と複写機の各構成要素の固有振動数を比較し、ピーク値に対応する固有振動数を持つ構成要素を特定する方法がある(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の技術では、読み取った縞模様のテスト原稿を周波数解析することにより、特徴が顕著な周波数を特定し、その周波数と同一の固有振動数を持つ構成部品を特定することができる。これにより、画像のムラ等を生じさせている構成部品を特定することができるものである。
【0005】
【特許文献1】特開平4−335363号公報(段落番号0004−0006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
操作者が目視で欠陥の有無を判定する場合には、操作者間で評価のばらつきが生じるため、安定した品質を保つことが困難であり、また、操作者への負担も大きい。また、特許文献1の技術では、読み取ったテスト原稿を周波数解析することにより、画像に欠陥を生じさせる原因となっている構成部品を特定することができるものではあるが、解析結果には様々な要因の周波数特性が混在しており、画像の品質を低下させる要因を正確に特定することは困難である。また、テスト原稿は縞模様であるため、主走査方向もしくは副走査方向の周波数特性しか解析することができない。
【0007】
このような問題点に鑑み、本発明の課題は、画像形成装置により形成された画像の周波数特性に基づき的確に画像評価を実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像評価方法は、単一の濃淡画素値を有するテストパターンデータを画像記録媒体にテストパターン画像として形成する画像形成ステップと、前記テストパターン画像を被評価画像データとして取得する画像取得ステップと、前記被評価画像データを2次元周波数解析し周波数強度を算出する周波数解析ステップと、前記周波数強度のうち特定の角度方向の周波数強度に基づく評価データを表示するステップと、を備えている。
【0009】
このような構成により、被評価画像を周波数解析した結果である周波数強度のうち、周波数特性が顕著に表れる角度方向の周波数強度のみに基づく評価データを表示することができる。これにより、評価者は、表示された評価データが所定の条件を充足している場合には、形成された画像に問題はないと評価でき、条件を充足していない場合には、的確に原因となる周波数特性を把握することができる。
【0010】
通常、画像記録媒体に形成されるテストパターン画像におけるムラは、主走査方向もしくは副走査方向に表れる。そのようなテストパターン画像から取得された被評価画像データの周波数分析結果では、周波数空間におけるx軸もしくはy軸上に特徴が顕著に現れる。そのため、周波数空間におけるx軸もしくはy軸上の周波数強度のみに着目することで、画像のムラの特性を知ることができる。しかしながら、画像記録媒体をフラットベッドスキャナ等に傾いて載置したことにより、周波数空間において特徴が顕著に表れる角度方向がx軸又はy軸から若干傾く場合がある。
【0011】
そのため、本発明の画像評価方法の好適な実施形態の一つでは、前記特定の角度方向は周波数空間における一の周波数成分を0とした角度方向であり、前記表示ステップは、前記周波数空間において前記特定の角度方向に直交する方向に所定幅を持つ領域に含まれる周波数強度に基づく評価データを表示する。この構成では、特定の角度方向だけでなく、特定の角度方向と直交する方向に所定幅を持つ領域に含まれる周波数強度に基づく評価データが表示されるため、付加的な演算をすることなく、傾きの影響を吸収することができる。
【0012】
また、テストパターン画像が形成された画像記録媒体をフラットベッドスキャナ等の画像読み取り装置に傾いて載置した場合等には、周波数特性が最も顕著に表れる角度方向は、周波数空間の軸方向とは一致しない。このような場合には、周波数特性が最も顕著に表れる角度方向を求めることが必要である。
【0013】
そのため、本発明の画像評価方法の好適な実施形態の一つでは、前記周波数強度を角度毎に積算することにより角度方向分布を算出し、当該角度方向分布が極大となる角度を前記特定の角度方向として決定する角度決定ステップを備えている。この構成により、角度方向分布から周波数特性が顕著に表れる角度方向を決定することができる。
【0014】
また、画像記録媒体に形成されたテストパターン画像には、様々な要因による周波数特性が含まれていることがある。しかしながら、画像評価には全ての周波数特性は必要ではない。特に、上述の角度方向分布を算出する際に、全ての周波数の周波数特性に基づき算出した場合には、予期せぬ周波数の周波数特性のために精度が低下する恐れがある。
【0015】
そのため、本発明の画像評価方法の好適な実施形態の一つでは、前記周波数強度を動径距離毎に積算することにより動径方向分布を算出し、当該動径方向分布に基づき動径距離閾値を決定する動径距離閾値決定ステップを備え、前記角度決定ステップは、決定された前記動径距離閾値に応じた周波数強度を用いて前記角度方向分布を算出する。この構成により、動径方向分布に基づき動径距離閾値が決定され、決定された動径距離閾値を満たす周波数の周波数強度から角度方向分布が決定される。これにより、不要な周波数の周波数特性が角度方向分布に混入することを回避でき、精度の高い角度方向分布を算出することができる。
【0016】
また、本発明の画像評価装置は、単一の濃淡画素値を有するテストパターンデータを画像記録媒体にテストパターン画像として形成する画像形成部と、前記テストパターン画像を被評価画像データとして取得する画像取得部と、前記被評価画像データを2次元周波数解析し周波数強度を算出する周波数解析部と、前記周波数強度のうち特定の角度方向の周波数強度に基づく評価データを表示する表示部と、を備えている。当然ながら、このような画像評価装置も、上述した画像評価方法と同様の作用効果を得ることができ、上述した付加的構成を備えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の画像評価方法および画像評価装置の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示す写真プリント装置(画像評価装置の一例)は、暗箱構造の筐体10を有し、この筐体10の内部には画像記録媒体Pに画像を形成する画像形成部Exと、画像が形成された画像記録媒体Pを筐体10の端部の排出部11から排出し、搬送ベルト12で受け止めて水平方向に搬送し、複数のトレイ13Aの何れかにオーダ単位で回収可能なソータ13を備えている。
【0019】
また、筐体10の外部には、オペレータが画像データの取得と、プリント処理に必要な操作とを行う操作端末として機能するオペレート部Aが設置されている。オペレート部Aには、操作テーブル20に設置された汎用コンピュータで成る画像処理装置21と、画像処理装置21の上面に設置されたディスプレイ22と、現像処理後の写真フィルムFのコマ画像から画像データを取得するフィルムスキャナ23と、2つのキーボード24と1つのマウス25と、画像記録媒体Pから画像データを取得するためのフラットベッドスキャナ27と、を備えている。画像処理装置21の前面には各種の半導体型の記憶媒体(不図示)、あるいは、CD−ROM、DVD、MO等の磁気式や光学式の記憶媒体(不図示)等から画像データを取得する複数のメディアドライブ26を備えている。
【0020】
なお、画像形成部Exとして、インクジェット方式、レーザ露光方式等、様々な方式を用いることができる。
【0021】
図2に示すように、画像処理装置21には本発明の画像評価装置に係る各機能要素として、フラットベッドスキャナ27を機能させてテストパターン画像を被評価画像データとして取得する画像取得部31、取得した被評価画像データにテストパターン以外のパターンが存在するか否かを判定し、存在すると判定した際にはそのテストパターン以外のパターンを除去するはみ出し処理部32、被評価画像データを周波数解析し、周波数強度を算出する周波数解析部33、周波数解析部33により算出された周波数強度のうち特定角度方向の周波数強度を可視化して表示する表示部36が備えられている。
【0022】
画像取得部31は、画像記録媒体Pに形成されたテストパターン画像をフラットベッドスキャナ27によりデジタル化し、被評価画像データとして取得する。取得した被評価画像データはメモリ40に記憶させる。
【0023】
はみ出し処理部32は、テストパターン画像データが他の画像データの一部として構成されている場合に、取得した被評価画像データに他の画像データが存在するか否かを判定し、他の画像データが存在する際には、後述する方法により、その他の画像データの除去を行う。
【0024】
周波数解析部33は、被評価画像データに対して2次元周波数解析を行い、周波数強度を算出する。本実施形態では、2次元周波数解析として2次元フーリエ変換を用いるが、他の周波数解析手法を用いても構わない。
【0025】
表示部36は、周波数解析部33により算出された周波数強度のうち特定角度の周波数強度をグラフ化して表示する。
【0026】
次に、図3のフローチャートに基づき本発明に係る画像評価の詳細な処理の流れを説明する。なお、以下の処理に先立ち、メモリ40上に記憶されているテストパターン画像データは、画像形成部Exにより画像記録媒体P上にテストパターン画像として形成されているものとする。また、本発明におけるテストパターン画像データは、単一の濃淡画素値を持つ画素から構成されているが、テストパターン画像データのみで一の画像データを構成していてもよいし、テストパターン画像データが他の画像の一部として構成されていても構わない。後者の場合には、一のテストプリントにおいて種々のテストパターン画像を形成でき、種々のテストを効率的に行うことができるため、好適である。また、後者の場合には、後述する画像の読み取り時に、本発明に用いるテストパターン画像の範囲を指定して被評価画像データを取得する、読み取った画像から、本発明に用いるテストパターン画像の範囲を指定する等の構成とすると、付加的な処理が不要となる。
【0027】
まず、ユーザは上述のテストパターン画像が形成された画像記録媒体Pをフラットベッドスキャナ27に載置した後、画像処理装置21を操作し、画像評価処理の実行を指示する。フラットベッドスキャナ27は、画像をデジタル化した被評価画像データを画像処理装置21に送る。
【0028】
画像取得部31は、フラットベッドスキャナ27から被評価画像データを取得し、メモリ40に記憶させる(#01)。このとき、取得した被評価画像データうち、精度の低い周辺画素を除外しておくと、画像評価精度の向上が期待でき好適である。例えば、取得した被評価画像データの大きさが幅W、高さHであるとすると、周辺10%を除去した(0.1W,0.1H)−(0.9W,0.9H)により規定される矩形領域を被評価画像データとする。また、フラットベッドスキャナ27によりカラー画像データとしてデジタル化された場合には、公知の方法によりカラー画像データの輝度成分に基づき、カラー画像データを濃淡画像データに変換しておく。以下、被評価画像データとは、濃淡画像データに変換されたものを指す。
【0029】
画像記録媒体Pをフラットベッドスキャナ27に傾いて載置する等により、被評価画像データに不要な画素(以下、はみ出し部分と称する)が含まれている場合がある。そのため、はみ出し処理部32は、メモリ40から被評価画像データを取得し、はみ出し処理を行う。具体的には、まず、被評価画像データの全画素値が所定の濃淡値範囲にあるかが判定される(#02)。この所定の濃淡値範囲は、テストパターン画像データの画素値に基づき決定されている。上述の条件を充足しない場合(#03のNo分岐)には、以下の処理によりはみ出し部分の画素値を後述する所定の濃淡値に置換することによる変更が行われ(#04)、条件を充足した場合(#03のYes分岐)には、はみ出し部分の画素値の変更処理はスキップされる。
【0030】
まず、被評価画像データから濃淡ヒストグラムH[ ]を作成し、濃淡ヒストグラムH[ ]のピーク値を与える濃淡値dを求める。濃淡値dの算出は、単に濃淡ヒストグラムHの最大値を与える濃淡値を求めるのではなく、濃淡値i−1、i、i+1に対する濃淡ヒストグラムHの和すなわちH[i−1]+H[i]+H[i+1]が最大となる濃淡値iをピーク値を与える濃淡値dとする。このように、濃淡値dを求めることにより、例えば白画素を持つはみ出し部分が存在した場合にも、正しい濃淡値dを求めることができる。
【0031】
次に、濃淡値dを中心とする所定の濃淡値範囲に対する濃淡ヒストグラムH[ ]の積算値を求める。すなわち、所定の濃淡値範囲を[d−r,d+r]とすると積算値sは式(1)で得られる。そして、積算値sの被評価画像データの画素数に対する割合が所定の閾値と比較され、所定の閾値以上であれば、所定の濃淡値範囲[d−r,d+r]外の画素値を持つ画素をはみ出し部分を構成する画素と判定する。本実施形態では、式(2)により得られる所定の濃度値範囲における平均濃淡値d’によりはみ出し部分の画素値を置換する。
【数1】
【数2】
【0032】
一方、上述の割合が所定の閾値以下であれば、はみ出し部分が多く、十分な評価ができないため、再度画像取得する旨を操作者に通知する。
【0033】
図4(a)は、はみ出し部分Xを有する被評価画像Tの例であり、この被評価画像Tの周波数強度を画像化すると図5(a)のようになる。図から明らかなように、周波数特性には、はみ出し部分Xの周波数特性が表れている。一方、上述の処理によりはみ出し部分Xの画素値を変更すると図4(b)に示す被評価画像Tとなり、この被評価画像Tの周波数強度を画像化すると図5(b)となり、はみ出し部分Xの周波数特性が低減されているのが分かる。
【0034】
このように、はみ出し部分の画素値を変更することにより、はみ出し部分の周波数特性を低減し、以降の処理において、的確に被評価画像データの周波数特性を解析することができる。
【0035】
次に、周波数解析部33は、メモリ40から被評価画像データを取得し、2次元フーリエ変換により周波数強度を算出する(#05)。本発明は、画像データに対してフーリエ変換(FT:Fourier Transformation)を行うものであり、画像データは離散データであるため2次元離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transformation)が用いられる。また、実際の演算には高速に演算が可能な離散高速フーリエ変換(DFFT:Discrete Fast Fourier Transformation)アルゴリズムが用いられる。
【0036】
表示部36は、周波数解析部33により算出された周波数強度の特定角度方向の周波数強度を可視化し、評価データとしてディスプレイ22に表示する(#10)。
【0037】
通常、画像に生じる印刷ムラは、搬送ムラやインクの吐出ムラ、画像形成装置の構成部品の固有振動数等に起因している。このようなムラを有する被評価画像データを周波数解析すると、周波数空間におけるx軸またはy軸方向において強い周波数強度を有している。そのため、本実施形態では、特定の角度方向として、一方の周波数を0とした角度方向を用いている。例えば、図6の被評価画像データでは副走査方向(被評価画像データにおけるy軸方向)にムラを生じており、この被評価画像データの周波数強度を画像化すると図7となる。この場合には、特定の角度はx軸方向の周波数が0となる角度方向となる。すなわち、x軸方向の周波数をf1、y軸方向の周波数をf2、x軸方向の周波数f1およびy軸方向の周波数f2の周波数強度をS(f1,f2)とすると、S(0、f2)となる周波数強度が可視化される。一方、主走査方向(被評価画像データにおけるx軸方向)にムラが生じている場合には、y軸方向の周波数が0となる角度方向の周波数強度、すなわちS(f1,0)となる周波数強度が可視化される。
【0038】
なお、テストパターン画像が形成された画像記録媒体Pをフラットベッドスキャナ27に載置する際に若干傾く恐れがある。この場合には、算出された周波数強度は、図9に示すように図7の周波数強度を回転させたものとなっており、このように傾いた周波数強度に対して上述の可視化を行っても正しい結果は得られない。このような場合には、一方の周波数を0とした線上の周波数強度だけでなく、その両側に所定の幅を持つ領域内の周波数強度を可視化する。例えば、副走査方向にムラが生じている場合には、各々の副操作方向の周波数f2に対して、式(3)によりS(f2)を算出し、このS(f2)を可視化する。このように可視化すると、傾きの影響を低減できるため好適である。
【数3】
【0039】
可視化の方法は種々考えられるが、例えば図8に示すように、横軸を動径距離、縦軸を周波数強度としたグラフを用いることができる。操作者は、このグラフに基づきムラの周波数特性を把握することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、周波数強度のうち特定の角度方向のみの周波数強度が用いられるため、周波数強度の特徴を顕著に表すことができ、操作者は的確に被評価画像データの周波数特性を把握することができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
以下に図面を用いて、本発明の画像評価方法および画像評価装置の第2実施形態を説明する。図10は、本実施形態における各機能部を表す機能ブロック図であり、第1実施形態と同様の機能部には同一の符号を付している。本実施形態は、周波数強度の角度毎の周波数強度を積算することにより角度方向分布を算出し、角度方向分布が極大となる角度を決定する角度決定部35を備えている点において第1実施形態と異なっている。
【0042】
角度決定部35は、周波数解析部33により算出された周波数強度を角度毎に積算することにより角度方向分布を算出し、算出した角度方向分布に基づき角度を決定する。なお、角度とは、tan-1(f2/f1)で表される値である。
【0043】
次に、図11のフローチャートに基づき本実施形態の処理の流れを説明する。なお、第1実施形態と同様の処理には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0044】
角度決定部35は、周波数解析部33により算出された周波数強度を取得し、角度毎に積算することにより角度方向分布を算出する(#08)。角度方向分布算出の具体的な処理は以下の通りである。まず、角度決定部35は、メモリ40上に角度方向分布を表す1次元配列D1[ ]を確保し、0で初期化する。次に、角度決定部35は、周波数強度の一の値S(f1,f2)を取得し、角度θ=tan-1(f2/f1)を計算する。本実施形態では、θはラジアンから度に変換した後、整数に丸め、θをD1の配列番号として用いるが、小数値θから所定の演算によりD1の配列番号を算出する構成としても構わない。次に、D1[θ]+=S(f1,f2)として、D1を更新する。この処理を全ての周波数強度に対して行う。
【0045】
次に、角度決定部35は、上述の処理により算出した角度方向分布に基づき、特定の角度を決定する(#09)。具体的には、角度方向分布から極大となる角度を抽出し、特定の角度として決定する。なお、通常、2次元周波数解析における周波数強度は、双方の周波数が0となる点を中心とした点対称となるため、特定の角度は2つであり、それらの角度差は180°である。そのため、3以上の極大点が存在する場合には、D1[θ]+ D1[θ+180]が最大となる角度θおよびθ+180を特定の角度として決定する。
【0046】
図6の被評価画像データから算出された周波数強度を用いて、上述の処理により算出された角度方向分布をグラフ化した例を図12に示す。図から明らかなように、y軸方向にムラを有する被評価画像データの周波数強度は、y軸方向、すなわち、角度方向が90°および270°に強い周波数強度が分布している。
【0047】
表示部36は、周波数解析部33により算出された周波数強度のうち、角度特定部35により決定された特定の角度方向の周波数強度を可視化し、ディスプレイ22に表示する(#10)。
【0048】
このように、本実施形態によれば、被評価画像データから算出された周波数強度から、角度方向分布が算出され、角度方向分布に基づき特定の角度を決定することができるため、テストパターン画像が形成された画像記録媒体Pがフラットベッドスキャナ27に傾いて載置される等、被評価画像データに傾きが含まれている場合にも、的確に観察すべき角度方向を特定することができる。
【0049】
〔第3実施形態〕
以下に図面を用いて、本発明の画像評価方法および画像評価装置の第3実施形態を説明する。図13は、本実施形態における各機能部を表す機能ブロック図であり、第2実施形態と同様の機能部には同一の符号を付している。本実施形態は、周波数強度の動径距離毎の周波数強度を積算することにより動径方向分布を算出し、動径方向分布に基づき動径距離閾値を決定する動径距離閾値決定部34を備え、前記角度決定部35は動径距離閾値決定部34により決定された動径距離閾値範囲内の動径距離を持つ周波数強度に基づき角度を決定する点において第2実施形態と異なっている。
【0050】
動径距離閾値決定部34は、周波数解析部33により算出された周波数強度を動径距離毎に積算することにより動径方向分布を算出し、算出した動径方向分布に基づき動径距離閾値を決定する。なお、動径距離とは、(f12+f22)1/2で表される値である。
【0051】
次に、図14のフローチャートに基づき本実施形態の処理の流れを説明する。なお、第2実施形態と同様の処理には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0052】
動径距離閾値決定部34は、周波数解析部33により算出された周波数強度を取得し、動径距離毎に積算することにより動径方向分布を算出する(#06)。動径方向分布算出の具体的な処理は以下の通りである。まず、動径距離閾値決定部34は、メモリ40上に動径方向分布を表す1次元配列D2[ ]を確保し、0で初期化する。次に、動径距離閾値決定部34は、周波数強度の一の値S(f1,f2)を取得し、動径距離L=(f12+f22)1/2を計算する。本実施形態では、Lは整数に丸め、LをD2の配列番号として用いるが、小数値Lから所定の演算によりD2の配列番号を算出する構成としても構わない。次に、D2[L]+=S(f1,f2)として、D2を更新する。この処理を全ての周波数強度に対して行う。
【0053】
次に、動径距離閾値決定部34は、上述の処理により算出した動径方向分布に基づき、動径距離閾値を決定する(#07)。具体的には、動径方向分布を距離の短い方から積算し、その積算値の全体の積算値に対する割合が所定の割合となる動径距離を動径距離閾値として決定する。
【0054】
次に、角度決定部35は、動径距離閾値決定部34により決定された動径距離閾値に基づき特定の角度を決定する。具体的には、角度決定部35は、角度方向分布を算出する際に、(f12+f22)1/2≦動径距離閾値となる周波数強度S(f1,f2)のみを用いる。
【0055】
なお、動径距離閾値の決定方法は上述の方法に限定されるものではなく、他の方法を用いても構わない。また、上述の方法では、動径距離閾値決定部34は、一の動径距離閾値を決定したが、2つの動径距離閾値L1およびL2を決定し、角度決定部35は、L1≦(f12+f22)1/2≦L2となる周波数強度S(f1,f2)のみを用いて、角度方向分布を算出する構成としても構わない。
【0056】
このように、本実施形態によれば、被評価画像データから算出された周波数強度から、動径方向分布が算出され、動径方向分布に基づき動径距離閾値が決定され、さらに動径距離閾値に基づき角度方向分布が決定されるため、不要な周波数を除外した周波数特性のみを表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態における写真プリント装置の概観図
【図2】本発明の第1実施形態における写真プリント装置のコントローラ内に構築される機能要素を示す機能ブロック図
【図3】本発明の第1実施形態における処理の流れを表すフローチャート
【図4】被評価画像の例
【図5】被評価画像の周波数強度を画像化した例
【図6】本発明の実施形態における被評価画像データの例
【図7】図6の被評価画像データの周波数強度を画像化した例
【図8】本発明の実施形態における周波数強度を可視化した例
【図9】傾いて取得された被評価画像データの周波数強度を画像化した例
【図10】本発明の第2実施形態における写真プリント装置のコントローラ内に構築される機能要素を示す機能ブロック図
【図11】本発明の第2実施形態における処理の流れを表すフローチャート
【図12】周波数強度の角度方向分布をグラフ化した例
【図13】本発明の第3実施形態における写真プリント装置のコントローラ内に構築される機能要素を示す機能ブロック図
【図14】本発明の第3実施形態における処理の流れを表すフローチャート
【符号の説明】
【0058】
21:画像処理装置
22:ディスプレイ
27:フラットベッドスキャナ
31:画像取得部
32:はみ出し処理部
33:周波数解析部
34:動径距離閾値決定部
35:特定角度決定部
36:表示部
40:メモリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置により画像記録媒体に形成される画像の評価技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機等の画像記録装置では、搬送ムラやインクの吐出ムラ等に起因して、形成される画像にスジやムラ等の欠陥が生じることが知られている。そのため、操作者がテストプリントを行い、目視により画像の欠陥の有無を判定することが行われている。
【0003】
また、自動的に画像の品質を評価するための様々な方法も検討されている。例えば、縞模様のテスト原稿を読み取り、その読み取った画像の濃度変化を検出し、その検出結果から周波数スペクトルを算出し、周波数スペクトルのピーク値に対応する周波数と複写機の各構成要素の固有振動数を比較し、ピーク値に対応する固有振動数を持つ構成要素を特定する方法がある(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の技術では、読み取った縞模様のテスト原稿を周波数解析することにより、特徴が顕著な周波数を特定し、その周波数と同一の固有振動数を持つ構成部品を特定することができる。これにより、画像のムラ等を生じさせている構成部品を特定することができるものである。
【0005】
【特許文献1】特開平4−335363号公報(段落番号0004−0006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
操作者が目視で欠陥の有無を判定する場合には、操作者間で評価のばらつきが生じるため、安定した品質を保つことが困難であり、また、操作者への負担も大きい。また、特許文献1の技術では、読み取ったテスト原稿を周波数解析することにより、画像に欠陥を生じさせる原因となっている構成部品を特定することができるものではあるが、解析結果には様々な要因の周波数特性が混在しており、画像の品質を低下させる要因を正確に特定することは困難である。また、テスト原稿は縞模様であるため、主走査方向もしくは副走査方向の周波数特性しか解析することができない。
【0007】
このような問題点に鑑み、本発明の課題は、画像形成装置により形成された画像の周波数特性に基づき的確に画像評価を実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像評価方法は、単一の濃淡画素値を有するテストパターンデータを画像記録媒体にテストパターン画像として形成する画像形成ステップと、前記テストパターン画像を被評価画像データとして取得する画像取得ステップと、前記被評価画像データを2次元周波数解析し周波数強度を算出する周波数解析ステップと、前記周波数強度のうち特定の角度方向の周波数強度に基づく評価データを表示するステップと、を備えている。
【0009】
このような構成により、被評価画像を周波数解析した結果である周波数強度のうち、周波数特性が顕著に表れる角度方向の周波数強度のみに基づく評価データを表示することができる。これにより、評価者は、表示された評価データが所定の条件を充足している場合には、形成された画像に問題はないと評価でき、条件を充足していない場合には、的確に原因となる周波数特性を把握することができる。
【0010】
通常、画像記録媒体に形成されるテストパターン画像におけるムラは、主走査方向もしくは副走査方向に表れる。そのようなテストパターン画像から取得された被評価画像データの周波数分析結果では、周波数空間におけるx軸もしくはy軸上に特徴が顕著に現れる。そのため、周波数空間におけるx軸もしくはy軸上の周波数強度のみに着目することで、画像のムラの特性を知ることができる。しかしながら、画像記録媒体をフラットベッドスキャナ等に傾いて載置したことにより、周波数空間において特徴が顕著に表れる角度方向がx軸又はy軸から若干傾く場合がある。
【0011】
そのため、本発明の画像評価方法の好適な実施形態の一つでは、前記特定の角度方向は周波数空間における一の周波数成分を0とした角度方向であり、前記表示ステップは、前記周波数空間において前記特定の角度方向に直交する方向に所定幅を持つ領域に含まれる周波数強度に基づく評価データを表示する。この構成では、特定の角度方向だけでなく、特定の角度方向と直交する方向に所定幅を持つ領域に含まれる周波数強度に基づく評価データが表示されるため、付加的な演算をすることなく、傾きの影響を吸収することができる。
【0012】
また、テストパターン画像が形成された画像記録媒体をフラットベッドスキャナ等の画像読み取り装置に傾いて載置した場合等には、周波数特性が最も顕著に表れる角度方向は、周波数空間の軸方向とは一致しない。このような場合には、周波数特性が最も顕著に表れる角度方向を求めることが必要である。
【0013】
そのため、本発明の画像評価方法の好適な実施形態の一つでは、前記周波数強度を角度毎に積算することにより角度方向分布を算出し、当該角度方向分布が極大となる角度を前記特定の角度方向として決定する角度決定ステップを備えている。この構成により、角度方向分布から周波数特性が顕著に表れる角度方向を決定することができる。
【0014】
また、画像記録媒体に形成されたテストパターン画像には、様々な要因による周波数特性が含まれていることがある。しかしながら、画像評価には全ての周波数特性は必要ではない。特に、上述の角度方向分布を算出する際に、全ての周波数の周波数特性に基づき算出した場合には、予期せぬ周波数の周波数特性のために精度が低下する恐れがある。
【0015】
そのため、本発明の画像評価方法の好適な実施形態の一つでは、前記周波数強度を動径距離毎に積算することにより動径方向分布を算出し、当該動径方向分布に基づき動径距離閾値を決定する動径距離閾値決定ステップを備え、前記角度決定ステップは、決定された前記動径距離閾値に応じた周波数強度を用いて前記角度方向分布を算出する。この構成により、動径方向分布に基づき動径距離閾値が決定され、決定された動径距離閾値を満たす周波数の周波数強度から角度方向分布が決定される。これにより、不要な周波数の周波数特性が角度方向分布に混入することを回避でき、精度の高い角度方向分布を算出することができる。
【0016】
また、本発明の画像評価装置は、単一の濃淡画素値を有するテストパターンデータを画像記録媒体にテストパターン画像として形成する画像形成部と、前記テストパターン画像を被評価画像データとして取得する画像取得部と、前記被評価画像データを2次元周波数解析し周波数強度を算出する周波数解析部と、前記周波数強度のうち特定の角度方向の周波数強度に基づく評価データを表示する表示部と、を備えている。当然ながら、このような画像評価装置も、上述した画像評価方法と同様の作用効果を得ることができ、上述した付加的構成を備えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の画像評価方法および画像評価装置の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示す写真プリント装置(画像評価装置の一例)は、暗箱構造の筐体10を有し、この筐体10の内部には画像記録媒体Pに画像を形成する画像形成部Exと、画像が形成された画像記録媒体Pを筐体10の端部の排出部11から排出し、搬送ベルト12で受け止めて水平方向に搬送し、複数のトレイ13Aの何れかにオーダ単位で回収可能なソータ13を備えている。
【0019】
また、筐体10の外部には、オペレータが画像データの取得と、プリント処理に必要な操作とを行う操作端末として機能するオペレート部Aが設置されている。オペレート部Aには、操作テーブル20に設置された汎用コンピュータで成る画像処理装置21と、画像処理装置21の上面に設置されたディスプレイ22と、現像処理後の写真フィルムFのコマ画像から画像データを取得するフィルムスキャナ23と、2つのキーボード24と1つのマウス25と、画像記録媒体Pから画像データを取得するためのフラットベッドスキャナ27と、を備えている。画像処理装置21の前面には各種の半導体型の記憶媒体(不図示)、あるいは、CD−ROM、DVD、MO等の磁気式や光学式の記憶媒体(不図示)等から画像データを取得する複数のメディアドライブ26を備えている。
【0020】
なお、画像形成部Exとして、インクジェット方式、レーザ露光方式等、様々な方式を用いることができる。
【0021】
図2に示すように、画像処理装置21には本発明の画像評価装置に係る各機能要素として、フラットベッドスキャナ27を機能させてテストパターン画像を被評価画像データとして取得する画像取得部31、取得した被評価画像データにテストパターン以外のパターンが存在するか否かを判定し、存在すると判定した際にはそのテストパターン以外のパターンを除去するはみ出し処理部32、被評価画像データを周波数解析し、周波数強度を算出する周波数解析部33、周波数解析部33により算出された周波数強度のうち特定角度方向の周波数強度を可視化して表示する表示部36が備えられている。
【0022】
画像取得部31は、画像記録媒体Pに形成されたテストパターン画像をフラットベッドスキャナ27によりデジタル化し、被評価画像データとして取得する。取得した被評価画像データはメモリ40に記憶させる。
【0023】
はみ出し処理部32は、テストパターン画像データが他の画像データの一部として構成されている場合に、取得した被評価画像データに他の画像データが存在するか否かを判定し、他の画像データが存在する際には、後述する方法により、その他の画像データの除去を行う。
【0024】
周波数解析部33は、被評価画像データに対して2次元周波数解析を行い、周波数強度を算出する。本実施形態では、2次元周波数解析として2次元フーリエ変換を用いるが、他の周波数解析手法を用いても構わない。
【0025】
表示部36は、周波数解析部33により算出された周波数強度のうち特定角度の周波数強度をグラフ化して表示する。
【0026】
次に、図3のフローチャートに基づき本発明に係る画像評価の詳細な処理の流れを説明する。なお、以下の処理に先立ち、メモリ40上に記憶されているテストパターン画像データは、画像形成部Exにより画像記録媒体P上にテストパターン画像として形成されているものとする。また、本発明におけるテストパターン画像データは、単一の濃淡画素値を持つ画素から構成されているが、テストパターン画像データのみで一の画像データを構成していてもよいし、テストパターン画像データが他の画像の一部として構成されていても構わない。後者の場合には、一のテストプリントにおいて種々のテストパターン画像を形成でき、種々のテストを効率的に行うことができるため、好適である。また、後者の場合には、後述する画像の読み取り時に、本発明に用いるテストパターン画像の範囲を指定して被評価画像データを取得する、読み取った画像から、本発明に用いるテストパターン画像の範囲を指定する等の構成とすると、付加的な処理が不要となる。
【0027】
まず、ユーザは上述のテストパターン画像が形成された画像記録媒体Pをフラットベッドスキャナ27に載置した後、画像処理装置21を操作し、画像評価処理の実行を指示する。フラットベッドスキャナ27は、画像をデジタル化した被評価画像データを画像処理装置21に送る。
【0028】
画像取得部31は、フラットベッドスキャナ27から被評価画像データを取得し、メモリ40に記憶させる(#01)。このとき、取得した被評価画像データうち、精度の低い周辺画素を除外しておくと、画像評価精度の向上が期待でき好適である。例えば、取得した被評価画像データの大きさが幅W、高さHであるとすると、周辺10%を除去した(0.1W,0.1H)−(0.9W,0.9H)により規定される矩形領域を被評価画像データとする。また、フラットベッドスキャナ27によりカラー画像データとしてデジタル化された場合には、公知の方法によりカラー画像データの輝度成分に基づき、カラー画像データを濃淡画像データに変換しておく。以下、被評価画像データとは、濃淡画像データに変換されたものを指す。
【0029】
画像記録媒体Pをフラットベッドスキャナ27に傾いて載置する等により、被評価画像データに不要な画素(以下、はみ出し部分と称する)が含まれている場合がある。そのため、はみ出し処理部32は、メモリ40から被評価画像データを取得し、はみ出し処理を行う。具体的には、まず、被評価画像データの全画素値が所定の濃淡値範囲にあるかが判定される(#02)。この所定の濃淡値範囲は、テストパターン画像データの画素値に基づき決定されている。上述の条件を充足しない場合(#03のNo分岐)には、以下の処理によりはみ出し部分の画素値を後述する所定の濃淡値に置換することによる変更が行われ(#04)、条件を充足した場合(#03のYes分岐)には、はみ出し部分の画素値の変更処理はスキップされる。
【0030】
まず、被評価画像データから濃淡ヒストグラムH[ ]を作成し、濃淡ヒストグラムH[ ]のピーク値を与える濃淡値dを求める。濃淡値dの算出は、単に濃淡ヒストグラムHの最大値を与える濃淡値を求めるのではなく、濃淡値i−1、i、i+1に対する濃淡ヒストグラムHの和すなわちH[i−1]+H[i]+H[i+1]が最大となる濃淡値iをピーク値を与える濃淡値dとする。このように、濃淡値dを求めることにより、例えば白画素を持つはみ出し部分が存在した場合にも、正しい濃淡値dを求めることができる。
【0031】
次に、濃淡値dを中心とする所定の濃淡値範囲に対する濃淡ヒストグラムH[ ]の積算値を求める。すなわち、所定の濃淡値範囲を[d−r,d+r]とすると積算値sは式(1)で得られる。そして、積算値sの被評価画像データの画素数に対する割合が所定の閾値と比較され、所定の閾値以上であれば、所定の濃淡値範囲[d−r,d+r]外の画素値を持つ画素をはみ出し部分を構成する画素と判定する。本実施形態では、式(2)により得られる所定の濃度値範囲における平均濃淡値d’によりはみ出し部分の画素値を置換する。
【数1】
【数2】
【0032】
一方、上述の割合が所定の閾値以下であれば、はみ出し部分が多く、十分な評価ができないため、再度画像取得する旨を操作者に通知する。
【0033】
図4(a)は、はみ出し部分Xを有する被評価画像Tの例であり、この被評価画像Tの周波数強度を画像化すると図5(a)のようになる。図から明らかなように、周波数特性には、はみ出し部分Xの周波数特性が表れている。一方、上述の処理によりはみ出し部分Xの画素値を変更すると図4(b)に示す被評価画像Tとなり、この被評価画像Tの周波数強度を画像化すると図5(b)となり、はみ出し部分Xの周波数特性が低減されているのが分かる。
【0034】
このように、はみ出し部分の画素値を変更することにより、はみ出し部分の周波数特性を低減し、以降の処理において、的確に被評価画像データの周波数特性を解析することができる。
【0035】
次に、周波数解析部33は、メモリ40から被評価画像データを取得し、2次元フーリエ変換により周波数強度を算出する(#05)。本発明は、画像データに対してフーリエ変換(FT:Fourier Transformation)を行うものであり、画像データは離散データであるため2次元離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transformation)が用いられる。また、実際の演算には高速に演算が可能な離散高速フーリエ変換(DFFT:Discrete Fast Fourier Transformation)アルゴリズムが用いられる。
【0036】
表示部36は、周波数解析部33により算出された周波数強度の特定角度方向の周波数強度を可視化し、評価データとしてディスプレイ22に表示する(#10)。
【0037】
通常、画像に生じる印刷ムラは、搬送ムラやインクの吐出ムラ、画像形成装置の構成部品の固有振動数等に起因している。このようなムラを有する被評価画像データを周波数解析すると、周波数空間におけるx軸またはy軸方向において強い周波数強度を有している。そのため、本実施形態では、特定の角度方向として、一方の周波数を0とした角度方向を用いている。例えば、図6の被評価画像データでは副走査方向(被評価画像データにおけるy軸方向)にムラを生じており、この被評価画像データの周波数強度を画像化すると図7となる。この場合には、特定の角度はx軸方向の周波数が0となる角度方向となる。すなわち、x軸方向の周波数をf1、y軸方向の周波数をf2、x軸方向の周波数f1およびy軸方向の周波数f2の周波数強度をS(f1,f2)とすると、S(0、f2)となる周波数強度が可視化される。一方、主走査方向(被評価画像データにおけるx軸方向)にムラが生じている場合には、y軸方向の周波数が0となる角度方向の周波数強度、すなわちS(f1,0)となる周波数強度が可視化される。
【0038】
なお、テストパターン画像が形成された画像記録媒体Pをフラットベッドスキャナ27に載置する際に若干傾く恐れがある。この場合には、算出された周波数強度は、図9に示すように図7の周波数強度を回転させたものとなっており、このように傾いた周波数強度に対して上述の可視化を行っても正しい結果は得られない。このような場合には、一方の周波数を0とした線上の周波数強度だけでなく、その両側に所定の幅を持つ領域内の周波数強度を可視化する。例えば、副走査方向にムラが生じている場合には、各々の副操作方向の周波数f2に対して、式(3)によりS(f2)を算出し、このS(f2)を可視化する。このように可視化すると、傾きの影響を低減できるため好適である。
【数3】
【0039】
可視化の方法は種々考えられるが、例えば図8に示すように、横軸を動径距離、縦軸を周波数強度としたグラフを用いることができる。操作者は、このグラフに基づきムラの周波数特性を把握することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、周波数強度のうち特定の角度方向のみの周波数強度が用いられるため、周波数強度の特徴を顕著に表すことができ、操作者は的確に被評価画像データの周波数特性を把握することができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
以下に図面を用いて、本発明の画像評価方法および画像評価装置の第2実施形態を説明する。図10は、本実施形態における各機能部を表す機能ブロック図であり、第1実施形態と同様の機能部には同一の符号を付している。本実施形態は、周波数強度の角度毎の周波数強度を積算することにより角度方向分布を算出し、角度方向分布が極大となる角度を決定する角度決定部35を備えている点において第1実施形態と異なっている。
【0042】
角度決定部35は、周波数解析部33により算出された周波数強度を角度毎に積算することにより角度方向分布を算出し、算出した角度方向分布に基づき角度を決定する。なお、角度とは、tan-1(f2/f1)で表される値である。
【0043】
次に、図11のフローチャートに基づき本実施形態の処理の流れを説明する。なお、第1実施形態と同様の処理には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0044】
角度決定部35は、周波数解析部33により算出された周波数強度を取得し、角度毎に積算することにより角度方向分布を算出する(#08)。角度方向分布算出の具体的な処理は以下の通りである。まず、角度決定部35は、メモリ40上に角度方向分布を表す1次元配列D1[ ]を確保し、0で初期化する。次に、角度決定部35は、周波数強度の一の値S(f1,f2)を取得し、角度θ=tan-1(f2/f1)を計算する。本実施形態では、θはラジアンから度に変換した後、整数に丸め、θをD1の配列番号として用いるが、小数値θから所定の演算によりD1の配列番号を算出する構成としても構わない。次に、D1[θ]+=S(f1,f2)として、D1を更新する。この処理を全ての周波数強度に対して行う。
【0045】
次に、角度決定部35は、上述の処理により算出した角度方向分布に基づき、特定の角度を決定する(#09)。具体的には、角度方向分布から極大となる角度を抽出し、特定の角度として決定する。なお、通常、2次元周波数解析における周波数強度は、双方の周波数が0となる点を中心とした点対称となるため、特定の角度は2つであり、それらの角度差は180°である。そのため、3以上の極大点が存在する場合には、D1[θ]+ D1[θ+180]が最大となる角度θおよびθ+180を特定の角度として決定する。
【0046】
図6の被評価画像データから算出された周波数強度を用いて、上述の処理により算出された角度方向分布をグラフ化した例を図12に示す。図から明らかなように、y軸方向にムラを有する被評価画像データの周波数強度は、y軸方向、すなわち、角度方向が90°および270°に強い周波数強度が分布している。
【0047】
表示部36は、周波数解析部33により算出された周波数強度のうち、角度特定部35により決定された特定の角度方向の周波数強度を可視化し、ディスプレイ22に表示する(#10)。
【0048】
このように、本実施形態によれば、被評価画像データから算出された周波数強度から、角度方向分布が算出され、角度方向分布に基づき特定の角度を決定することができるため、テストパターン画像が形成された画像記録媒体Pがフラットベッドスキャナ27に傾いて載置される等、被評価画像データに傾きが含まれている場合にも、的確に観察すべき角度方向を特定することができる。
【0049】
〔第3実施形態〕
以下に図面を用いて、本発明の画像評価方法および画像評価装置の第3実施形態を説明する。図13は、本実施形態における各機能部を表す機能ブロック図であり、第2実施形態と同様の機能部には同一の符号を付している。本実施形態は、周波数強度の動径距離毎の周波数強度を積算することにより動径方向分布を算出し、動径方向分布に基づき動径距離閾値を決定する動径距離閾値決定部34を備え、前記角度決定部35は動径距離閾値決定部34により決定された動径距離閾値範囲内の動径距離を持つ周波数強度に基づき角度を決定する点において第2実施形態と異なっている。
【0050】
動径距離閾値決定部34は、周波数解析部33により算出された周波数強度を動径距離毎に積算することにより動径方向分布を算出し、算出した動径方向分布に基づき動径距離閾値を決定する。なお、動径距離とは、(f12+f22)1/2で表される値である。
【0051】
次に、図14のフローチャートに基づき本実施形態の処理の流れを説明する。なお、第2実施形態と同様の処理には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0052】
動径距離閾値決定部34は、周波数解析部33により算出された周波数強度を取得し、動径距離毎に積算することにより動径方向分布を算出する(#06)。動径方向分布算出の具体的な処理は以下の通りである。まず、動径距離閾値決定部34は、メモリ40上に動径方向分布を表す1次元配列D2[ ]を確保し、0で初期化する。次に、動径距離閾値決定部34は、周波数強度の一の値S(f1,f2)を取得し、動径距離L=(f12+f22)1/2を計算する。本実施形態では、Lは整数に丸め、LをD2の配列番号として用いるが、小数値Lから所定の演算によりD2の配列番号を算出する構成としても構わない。次に、D2[L]+=S(f1,f2)として、D2を更新する。この処理を全ての周波数強度に対して行う。
【0053】
次に、動径距離閾値決定部34は、上述の処理により算出した動径方向分布に基づき、動径距離閾値を決定する(#07)。具体的には、動径方向分布を距離の短い方から積算し、その積算値の全体の積算値に対する割合が所定の割合となる動径距離を動径距離閾値として決定する。
【0054】
次に、角度決定部35は、動径距離閾値決定部34により決定された動径距離閾値に基づき特定の角度を決定する。具体的には、角度決定部35は、角度方向分布を算出する際に、(f12+f22)1/2≦動径距離閾値となる周波数強度S(f1,f2)のみを用いる。
【0055】
なお、動径距離閾値の決定方法は上述の方法に限定されるものではなく、他の方法を用いても構わない。また、上述の方法では、動径距離閾値決定部34は、一の動径距離閾値を決定したが、2つの動径距離閾値L1およびL2を決定し、角度決定部35は、L1≦(f12+f22)1/2≦L2となる周波数強度S(f1,f2)のみを用いて、角度方向分布を算出する構成としても構わない。
【0056】
このように、本実施形態によれば、被評価画像データから算出された周波数強度から、動径方向分布が算出され、動径方向分布に基づき動径距離閾値が決定され、さらに動径距離閾値に基づき角度方向分布が決定されるため、不要な周波数を除外した周波数特性のみを表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態における写真プリント装置の概観図
【図2】本発明の第1実施形態における写真プリント装置のコントローラ内に構築される機能要素を示す機能ブロック図
【図3】本発明の第1実施形態における処理の流れを表すフローチャート
【図4】被評価画像の例
【図5】被評価画像の周波数強度を画像化した例
【図6】本発明の実施形態における被評価画像データの例
【図7】図6の被評価画像データの周波数強度を画像化した例
【図8】本発明の実施形態における周波数強度を可視化した例
【図9】傾いて取得された被評価画像データの周波数強度を画像化した例
【図10】本発明の第2実施形態における写真プリント装置のコントローラ内に構築される機能要素を示す機能ブロック図
【図11】本発明の第2実施形態における処理の流れを表すフローチャート
【図12】周波数強度の角度方向分布をグラフ化した例
【図13】本発明の第3実施形態における写真プリント装置のコントローラ内に構築される機能要素を示す機能ブロック図
【図14】本発明の第3実施形態における処理の流れを表すフローチャート
【符号の説明】
【0058】
21:画像処理装置
22:ディスプレイ
27:フラットベッドスキャナ
31:画像取得部
32:はみ出し処理部
33:周波数解析部
34:動径距離閾値決定部
35:特定角度決定部
36:表示部
40:メモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の濃淡画素値を有するテストパターンデータを画像記録媒体にテストパターン画像として形成する画像形成ステップと、
前記テストパターン画像を被評価画像データとして取得する画像取得ステップと、
前記被評価画像データを2次元周波数解析し周波数強度を算出する周波数解析ステップと、
前記周波数強度のうち特定の角度方向の周波数強度に基づく評価データを表示するステップと、を備えたことを特徴とする画像評価方法。
【請求項2】
前記特定の角度方向は周波数空間における一の周波数成分を0とした角度方向であり、
前記表示ステップは、前記周波数空間において前記特定の角度方向に直交する方向に所定幅を持つ領域に含まれる周波数強度に基づく評価データを表示することを特徴とする請求項1記載の画像評価方法。
【請求項3】
前記周波数強度を角度毎に積算することにより角度方向分布を算出し、当該角度方向分布が極大となる角度を前記特定の角度方向として決定する角度決定ステップを備えたことを特徴とする請求項1記載の画像評価方法。
【請求項4】
前記周波数強度を動径距離毎に積算することにより動径方向分布を算出し、当該動径方向分布に基づき動径距離閾値を決定する動径距離閾値決定ステップを備え、
前記角度決定ステップは、決定された前記動径距離閾値に応じた周波数強度を用いて前記角度方向分布を算出することを特徴とする請求項3記載の画像評価方法。
【請求項5】
単一の濃淡画素値を有するテストパターンデータを画像記録媒体にテストパターン画像として形成する画像形成部と、
前記テストパターン画像を被評価画像データとして取得する画像取得部と、
前記被評価画像データを2次元周波数解析し周波数強度を算出する周波数解析部と、
前記周波数強度のうち特定の角度方向の周波数強度に基づく評価データを表示する表示部と、を備えたことを特徴とする画像評価装置。
【請求項1】
単一の濃淡画素値を有するテストパターンデータを画像記録媒体にテストパターン画像として形成する画像形成ステップと、
前記テストパターン画像を被評価画像データとして取得する画像取得ステップと、
前記被評価画像データを2次元周波数解析し周波数強度を算出する周波数解析ステップと、
前記周波数強度のうち特定の角度方向の周波数強度に基づく評価データを表示するステップと、を備えたことを特徴とする画像評価方法。
【請求項2】
前記特定の角度方向は周波数空間における一の周波数成分を0とした角度方向であり、
前記表示ステップは、前記周波数空間において前記特定の角度方向に直交する方向に所定幅を持つ領域に含まれる周波数強度に基づく評価データを表示することを特徴とする請求項1記載の画像評価方法。
【請求項3】
前記周波数強度を角度毎に積算することにより角度方向分布を算出し、当該角度方向分布が極大となる角度を前記特定の角度方向として決定する角度決定ステップを備えたことを特徴とする請求項1記載の画像評価方法。
【請求項4】
前記周波数強度を動径距離毎に積算することにより動径方向分布を算出し、当該動径方向分布に基づき動径距離閾値を決定する動径距離閾値決定ステップを備え、
前記角度決定ステップは、決定された前記動径距離閾値に応じた周波数強度を用いて前記角度方向分布を算出することを特徴とする請求項3記載の画像評価方法。
【請求項5】
単一の濃淡画素値を有するテストパターンデータを画像記録媒体にテストパターン画像として形成する画像形成部と、
前記テストパターン画像を被評価画像データとして取得する画像取得部と、
前記被評価画像データを2次元周波数解析し周波数強度を算出する周波数解析部と、
前記周波数強度のうち特定の角度方向の周波数強度に基づく評価データを表示する表示部と、を備えたことを特徴とする画像評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−290471(P2009−290471A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139846(P2008−139846)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】
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