説明

画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置

【課題】ゴミ等の異物がコンタクトガラスに付着しないような構造、あるいは低表面エネルギーの防汚層を設けることにより、防汚性付与に有効な画像読み取り装置を提供する。
【解決手段】画像読み取り部と原稿の間に透光性部材を介し、原稿を搬送しながら画像読み取りを行なう画像読み取り装置において、前記透光性部材の前記原稿と相対する面に防汚層を設けた画像読み取り装置であって、該防汚層が少なくともパーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物を含有し、該防汚層のパーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物が少なくともケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物であることを特徴とする画像読み取り装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ、スキャナー複写機および複合機等に適用される画像読み取り装置及び画像読み取り装置付き記録装置(複写機)に関するものである。
特に画像読み取り装置で問題となるコピー上の汚れ対策や紙詰り対策に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、画像読み取り装置を、シートスルー方式と称して、原稿を副走査方向に移送させ、次に原稿を固定し、読み取り部を副走査させ、読取後の原稿を読取位置から排出させる方式の、原稿を固定位置に置かれた読取部により読み取る方式のものがある。
この方式によると、原稿は読み取りの際、コンタクトガラスに接触しながら通過するので原稿の画像面側に付いた粉塵、粘着剤、接着剤、油性インク、修正液等のコンタクトガラス上への付着が避けられない。この付着物がコンタクトガラスの読み取り位置に付着すると、読み取った画像信号にその影響が現れ、画像を劣化させる。
コンタクトガラス上への粉塵等の付着物は、原稿固定の画像読み取り装置では、黒点として発生するだけであるのに対し、シートスルー方式の読み取り装置の場合、副走査方向に繋がる、いわゆる黒スジの発生となってしまい、その影響は遥かに大きい。
これら付着防止としては、パーフルオロ・アルキルポリエーテルと側鎖がモノアミノアルキル基またはジアミノアルキル基を含むアミノ基で変性されたポリジメチルシロキサンを板ガラスに塗布していたり(特許文献1、2参照)、ガラス表面に光触媒のような汚れ分解機能を有する材料をコーティングしていたりするが(特許文献3、4参照)、防汚性は充分であるが持続性がない、汚染物質分解には効果はあるが粘着剤付着等の防汚性に劣るなど、画像を低下させるのを防止する読み取り装置としては充分なものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−226145号公報
【特許文献2】特開2001−238044号公報
【特許文献3】特開2000−39680号公報
【特許文献4】特開平09−179197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異物の種類を大別すると浮遊系と粘着系のものがある。浮遊系の異物はホコリ、紙粉、
トナーなどで、粘着系の異物は、原稿についた粘着性異物がコンタクトガラスに付着し、原稿を通紙することによって、コンタクトガラスに付着した粘着性異物に原稿に乗っているトナーが堆積してできると考えられる。このようにコンタクトガラスに浮遊系の異物が溜まってしまい、画像劣化に繋がる可能性が高い。
特許文献に記載されている技術では粘着系及び浮遊系の異物をコンタクトガラスに付着させないように防汚性を付与し、画像読み取りを行なうようにしているが、経時で防汚性付与層の摩滅などにより、防汚性が低下してしまい粘着系及び浮遊系の異物がコンタクトガラスに付着してしまい、画像を劣化させてしまう。
【0005】
そこで本発明の目的は、上述した実情を考慮して、粘着系と浮遊系ゴミの双方への防汚性付与に有効な画像読み取り装置を提供することにある。
具体的には、このようなゴミ等の異物が、コンタクトガラスに付着しないような構造あるいは低表面エネルギーの防汚層を設ける、仮にこのようなゴミ等の異物がコンタクトガラスの画像読み取り部に存在しても、簡単に除去できるような構造及び耐摩耗性あるいは潤滑性を付与する防汚層構造を提案するものである。
さらに、このようなゴミ等の異物が付着しにくい画像読み取り装置を有することにより、常時高画質記録が維持できる記録装置(複写機)を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の問題点を解決するために鋭意検討した結果、画像読み取り部と原稿の間に透光性部材を介し、原稿を搬送しながら画像読み取りを行なう画像読み取り装置において、前記透光性部材の前記原稿と相対する面に防汚層を設けた画像読み取り装置であって、該防汚層が少なくともパーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物を含有することにより、防汚性、耐摩耗性付与及び潤滑性付与し、ゴミ等の異物付着を防止し、経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、画質劣化の問題の解消が図られた画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、上記課題は、本発明の(1)「画像読み取り部と原稿の間に透光性部材を介し、原稿を搬送しながら画像読み取りを行なう画像読み取り装置において、前記透光性部材の前記原稿と相対する面に防汚層を設けた画像読み取り装置であって、該防汚層が少なくともパーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物を含有し、該防汚層のパーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物が少なくともケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物であることを特徴とする画像読み取り装置」、(2)「前記防汚層が少なくとも透光性部材と反応していない加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物を含有することを特徴とする前記第(1)項に記載の画像読み取り装置」、(3)「前記防汚層が少なくともケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物及びフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物を含有することを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の画像読み取り装置」、(4)「該化合物が少なくともフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の画像読み取り装置」、(5)「該化合物のフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基のモル比が0.1〜10であることを特徴とする前記第(4)項に記載の画像読み取り装置」、(6)「前記防汚層が少なくともケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物を溶解するパ−フルオロ系溶剤を含有する塗工液を塗工することにより得られたものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の画像読み取り装置」、(7)「前記防汚層のケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物の分子量が1000〜20000であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の画像読み取り装置」、(8)「前記防汚層の膜厚が0.001〜0.1μmであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載の画像読み取り装置」、(9)「前記透光性部材表面に微細な凹凸が設けられたことを特徴とする前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載の画像読み取り装置」、(10)「前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載の画像読み取り装置と、該画像読み取り装置により読み取られた画像情報に基いて可視画像を形成する可視画像形成手段とを有することを特徴とする画像読み取り装置付き記録装置」により達成される。
また、上記課題は、本発明の(11)「前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載の画像読み取り装置又は前記第(10)項に記載の画像読み取り装置付き記録装置を製造する方法であって、前記透光性部材表面を前処理したのち該防汚層を設ける段階を含み、該前処理が表面改質及び表面洗浄処理であり、該表面改質及び表面洗浄処理がアルカリ処理及び/またはプラズマ処理及び/または溶剤洗浄処理及び/またはエッチング処理であることを特徴とする画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置の製造方法」、(12)「前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載の画像読み取り装置又は前記第(10)項に記載の画像読み取り装置付き記録装置を製造する方法であって、前記防汚層の形成方法が、ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物を含有するパーフルオロ系溶液を減圧下、加熱して基材上に蒸着、薄膜を形成する段階を含み、上記化合物の加熱温度が蒸発開始温度から分解温度までの範囲であることを特徴とする画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置の製造方法」により達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像読み取り部と原稿の間に透光性部材を介し、原稿を搬送しながら画像読み取りを行なう画像読み取り装置において、前記透光性部材の前記原稿と相対する面に防汚層を設けた画像読み取り装置であって、該防汚層が少なくともパーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物を含有させることにより、パーフルオロポリエーテル分子構造由来の低表面エネルギー及び分子鎖のフレキシビリティ・可撓性・潤滑性等により、防汚層に防汚性、耐摩耗性付与及び潤滑性付与し、ゴミ等の異物付着を防止し、経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。
特に、画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置において、該防汚層のパーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物が少なくともケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物であることにより、ケイ素含有パーフルオロポリエーテル分子構造由来の低表面エネルギー及び分子鎖のフレキシビリティ・可撓性・潤滑性や透光部材など基材と強固に接合するなどの特性により、防汚層に防汚性、特に耐摩耗性及び潤滑性を付与し、ゴミ等の異物付着を防止し、経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。
また、該防汚層が少なくとも透光部材と反応していない加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物を含有することにより、加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル分子構造由来の低表面エネルギー及び分子鎖のフレキシビリティ・潤滑性などが、防汚層に特に潤滑性を付与し、潤滑性が増すことで経時での防汚層の摩滅を抑制し、耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。詳細は不明だが、防汚層中に未反応の加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物が存在することで、潤滑性付与だけではなく、経時で防汚層が摩滅する際に大気中の水分と触れることにより、加水分解が順次起り、透光部材と反応し、新たに強固な接合を持つ防汚層を形成することも考えられる。
また、前記画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置において、前記防汚層が少なくともケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物及びフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物を含有することすることにより、ケイ素含有パーフルオロポリエーテル分子構造由来の低表面エネルギー及び分子鎖のフレキシビリティ・可撓性・潤滑性や透光部材など基材と強固に接合するなどの特性とフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物は該ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物と相溶性が良く、均一に膜形成ができ、分子構造由来の撥水撥油性が高く、透光部材などの基材と強固に接合するなどの特性との相乗効果が発揮され、防汚層に特に防汚性を付与し、耐摩耗性付与及び潤滑性付与し、ゴミ等の異物付着を防止し、経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。
また、前記画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置において、該化合物が少なくともフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物であることにより、パーフルオロポリエーテル基の分子構造由来の低表面エネルギー及び分子鎖のフレキシビリティ・可撓性・潤滑性や透光部材など基材と強固に接合するなどの特性とフッ素置換アルキル基の分子構造由来の撥水撥油性が高い、離型性が良好などの特性を併せ持ち、相分離を引き起こすことがなく、均一に透明な塗膜を形成でき、有機ケイ素構造を持つことで透光部材などの基材と強固に接合するなどの特性との相乗効果が発揮され、防汚層に特に防汚性を付与し、耐摩耗性付与及び潤滑性付与し、ゴミ等の異物付着を防止し、経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。
また、前記画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置において、該化合物のフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基のモル比が0.1〜10であることにより、撥水撥油性(離型性)と可撓性(耐摩耗性、潤滑性)の両特性のバランスに優れ、該化合物により防汚層に防汚性を付与し、耐摩耗性付与及び潤滑性付与し、ゴミ等の異物付着を防止し、経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、特に耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。
また、前記画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置において、該防汚層が少なくともケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物を溶解するパ−フルオロ系溶剤を含有することにより、パーフルオロ系溶剤はケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物の特性を損なうことなく、相溶・溶解し、均一な膜形成に寄与し、相溶性が高く、形成した防汚層に馴染み、膜中に存在することで、膜の可撓性や撥水撥油性に寄与し、防汚性、耐摩耗性付与及び特に潤滑性付与に効果があり、耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。
また、前記画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置において、該防汚層のケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物の分子量が1000〜20000であることにより、各防汚層構成材料の均一で良好な膜形成に寄与し、更に各防汚層構成材料の分子鎖のフレキシビリティ・可撓性・潤滑性などの効果を充分に発揮させることができ、防汚性、特に耐摩耗性付与及び潤滑性付与し、ゴミ等の異物付着を防止し、防汚層が良好に形成され、更に経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。
また、前記画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置において、該防汚層の膜厚が0.001〜0.1μmであることにより、防汚性、耐摩耗性及び潤滑性等の付与、経時での防汚層の摩滅を防止などにより画質劣化の問題の解消となり、機能的かつ経済性の面から実用的な耐久性に優れた画像読み取り装置を実現することが可能となる。
また、前記画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置において、前記透光性部材表面に微細な凹凸を設けることにより、形状効果で原稿との接触面積が小さくなり、原稿の汚れ、特に粘着剤等の粘着性の汚れが付着し難くなり、防汚性付与に効果がある。また、凹部に潤滑性及び防汚性材料が塗布され、原稿が表面を擦ってもこれら材料を大幅に減ずることはなく、経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。
また、前記画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置において、前記透光性部材表面を前処理したのち該防汚層を設けた画像読取装置であって、前処理が表面改質及び表面洗浄処理であり、該処理がアルカリ処理及び/またはプラズマ処理及び/または溶剤洗浄処理及び/またはエッチング処理であることにより、透光性部材表面の官能基改質、清浄化、表面粗さ制御などにより、透光性部材表面と防汚層との接着性が向上し、耐摩耗性、特に経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。
また、前記画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置において、該防汚層の形成方法が、ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物を含有するパーフルオロ系溶液を減圧下、加熱して基材上に蒸着、薄膜を形成する透光部材の製造方法において、上記化合物の加熱温度が蒸発開始温度から分解温度までの範囲であることにより、透光部材上に均一均質で強固な防汚層を得ることができ、特に耐摩耗性の付与に効果があり、更に経時での防汚層の摩滅を防止し、耐久性に優れ、画質劣化の問題の解消を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について具体的に詳しく説明する。
本発明の画像読み取り部と原稿の間に透光性部材を介し、原稿を搬送しながら画像読み取りを行なう画像読み取り装置において、前記透光性部材の前記原稿と相対する面に防汚層を設けた画像読み取り装置における該防汚層は少なくとも前記パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物を含有する材料から構成されており、該防汚層には各必要に応じて、ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物や加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物やフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物やフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物やパーフルオロ系溶剤などを種々含有して構成しても良い。
つまり、本発明においては前記パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物の他に溶剤、加水分解性基の加水分解・縮合用触媒を含むことができる。溶剤としては、本明細書記載の溶剤を使用でき、触媒としてはブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、イソホロンジアミン、イミダゾール、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートのごとき塩基性化合物;テトラプロピルチタネート、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート等含金属化合物;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸、リン酸、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのリン酸エステル、モノアルキル亜リン酸、ジアルキル亜リン酸等酸性化合物などが挙げられ、特にジブチル錫ジアセテートジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート等の錫化合物が好ましい。残留溶剤の量は通常、極微量(かろうじて存在が検出可能な量)であり、触媒の使用量は組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の範囲である。
【0010】
本発明で形成される防汚層に含有される前記パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物は、一般に下記式(I)で表わされる構造を持つ化合物のうちの特定なものである。
【0011】
【化1】


(式中のRはパーフルオロアルキレン基を表わす)
特に、本発明で好適に使用される構造は式中のパーフルオロアルキレン基の炭素数が1〜3の前記定義のものである。
【0012】
これらの構造を有する化合物で、防汚層構成材料に含有され、良好な防汚性を示す化合物の分子量は1000〜20000である。更に好適には、良好な薄膜を形成するという観点から2000〜10000であることが好ましい。分子量が1000未満のものは防汚性、耐摩耗性に劣り、好ましくなく、20000を越えるものは塗膜形成が不良となるので好ましくない。また、20000を越えるものは加水分解性基を持つ場合、特に組成物中に沈殿物/不純物が生じたり、そのものがゲル化したりして、防汚性能を発揮できない。
【0013】
パーフルオロアルキレン基としては、例えば具体的には、CF、CFCF、CFCFCF、CF(CF)CFなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
次に本発明で形成される防汚層に含有されるケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物は少なくとも一般に下記式(II)あるいは(III)で表わされる構造を持つ化合物であることが好ましい。このケイ素含有基は加水分解性可能な基を持っていることで、特に透光性部材と強固に接合するに有効な働きをするものである。
【0015】
【化2】


(式中、Rfは炭素数1〜100の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素または炭素数1〜5の低級アルキル基、Rは加水分解可能な基、mは1〜100の整数、nは0〜2の整数、lは1〜10の整数)
上記Rで示される加水分解可能な基としてはアミノ基、アルコキシ基、塩素原子等が挙げられ、アルコキシ基の場合は、そのアルキル部分が炭素数1または2のものが好ましい。
【0016】
【化3】


(式中、Rfは炭素数1〜100の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素または炭素数1〜5の低級アルキル基、Rは加水分解可能な基、rは1〜100の整数、sは0〜2の整数、tは1〜10の整数)
上記Rで示される加水分解可能な基としてはアミノ基、アルコキシ基、塩素原子等が挙げられ、アルコキシ基の場合は、そのアルキル部分が炭素数1または2のものが好ましい。
【0017】
これらの構造を有する化合物で、防汚層構成材料に含有され、良好な防汚性を示す化合物の分子量は1000〜20000である。更に好適には、良好な薄膜を形成するという観点から2000〜10000であることが好ましい。分子量が1000未満のものは防汚性、耐摩耗性に劣り、あまり好ましくなく、20000を越えるものは塗膜形成が不良となることが多いのであまり好ましくない。また、20000を越えるものは加水分解性基を持つ場合、特に組成物中に沈殿物/不純物が生じたり、そのものがゲル化したりして、防汚性能を発揮できないことが多い。
なお、これら材料は通常の製造方法によれば混合物として得られることが知られており、例えば、本発明とは分野や使用目的が異なるが眼鏡ガラスやレンズの曇り防止のため、或いは水に対する濡れ防止のため用いることが提案され、また一部は市販品として入手可能な(例えばオプツールDSX)ものもあるが、本発明における該化合物は、通常市販されているパーフルオロポリエーテルを原料として用い、末端に、例えば、ヨウ素を導入した後、これに、シラン化合物を反応させること等により得ることができる。
つまり、試薬として例えば、ヒドラス化学:12275-4(HFPO oligomer),12341-4(Hexafluropropene oxide telomere,metyl esters),15343-7(2H-Perfluoro-5,8,11,14-pentamethyl-3,6,9,12,15,18-hexaoxaheneicosane)、アズマックス:F05992NA(Perfluoro-3,6-dioxadecanoic acid methyl ester),F05992NH(Perfluoro-3,6-dioxaheptanoic acid methyl ester),等が挙げられ、また例えば、下記のような合成方法で類似化合物を得ることができる。
【0018】
[合成例1]
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた2.0L4つ口フラスコ中に2617g(10.3モル)のヨウ素、213.2g(1.54モル)の炭酸カリウム、および9000gのヘキサクロロ−1,3−ブタジエンを仕込み、系の温度を160℃に維持しながら窒素気流下に、化学式F−(CFCFCFO)n−CFCFCOFで表わされるω−フルオロポリパーフルオロオキセタンアシルフルオライド(平均分子量3900)4000g(1.03モル)を10mL/minの速度で滴下した。
滴下終了後、反応温度を185℃に上昇させ、20時間反応させた。反応終了後、系を冷却したのちカリウム塩を濾別し、2層に分離した液相から分液ロートを用いて下層を分取した。これをアセトンを用いて数回洗浄したのち、1Lのパーフルオロヘキサンに溶解し、ガラスフイルターによって微細な不溶物を濾別した。得られた溶液から減圧下揮発分を完全に留去することによって3890g(収率95%)の化学式F−(CFCFCFO)n−CFCFIで表わされるω−フルオロポリパーフルオロオキセタンヨウ素化物を得た。赤外吸収スペクトルより、1890cm−1の−C(=O)Fの吸収が完全に消失し、910cm−1に新たに−CFIの吸収が生じた。
【0019】
[合成例2]
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた200mL4つ口フラスコ中に合成例1にて合成した化学式F−(CFCFCFO)n−CFCFIで表わされるω−フルオロポリパーフルオロオキセタンヨウ素化物40gをヘキサフルオロテトラクロロブタン〔ダイフロンソルベントS−316(ダイキン工業社製)〕80gに溶解したもの、及び、ジt−ブチルパーオキシド1.5g(1×10−2モル)を仕込み、充分に系内を窒素置換したのち、窒素気流下滴下ロートよりビニルトリクロロシラン16.1g(0.10モル)を滴下した。滴下終了後系内の温度を120℃に昇温させ、4時間反応させた。反応終了後減圧下揮発分を完全に留去することによって末端にヨウ素を有するケイ素含有有機含フッ素ポリマー(A)38.7g(収率90%)を得た。
【0020】
[合成例3]
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた200mL4つ口フラスコ中に合成例2にて合成したケイ素含有有機含フッ素ポリマー(A)34.4g(8×10−3モル)をパーフルオロヘキサン50gに溶解したものを仕込み、亜鉛2.1g(3.2×10−2モル)を強攪拌分散させた。氷水浴で系を冷却し、窒素気流下無水メタノール10gを滴下した。滴下終了後氷水浴を取り除き、加熱還流下2時間反応させた。反応終了後不溶物を濾別し、2層に分離した液相から分液ロートを用いて下層を分取した。得られた溶液を無水メタノールを用いて3回洗浄したのち、減圧下揮発分を完全に留去することによって、末端が水素化されたケイ素含有有機含フッ素ポリマー(パーフルオロ基とパーフルオロエーテル基とを構造中に含有)(B)31.6g(収率92%)を得た。
【0021】
次に本発明で形成される防汚層において、透光性部材と反応せず防汚層に含まれる加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物は少なくとも下記式(II)、下記式(III)で表わされる構造を持つ化合物が好ましい。防汚層形成時に加水分解反応が未反応な成分として、防汚層中に存在する場合が多いが、防汚層形成後に再度、塗布、蒸着等の手段にて防汚層に存在させても良い。
【0022】
【化4】


(式中、Rfは炭素数1〜100の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素または炭素数1〜5の低級アルキル基、Rは加水分解可能な基、mは1〜100の整数、nは0〜2の整数、lは1〜10の整数)
上記Rで示される加水分解可能な基としてはアミノ基、アルコキシ基、塩素原子等が挙げられ、アルコキシ基の場合は、そのアルキル部分が炭素数1または2のものが好ましい。
【0023】
【化5】


(式中、Rfは炭素数1〜100の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素または炭素数1〜5の低級アルキル基、Rは加水分解可能な基、rは1〜100の整数、sは0〜2の整数、tは1〜10の整数)
上記Rで示される加水分解可能な基としてはアミノ基、アルコキシ基、塩素原子等が挙げられ、アルコキシ基の場合は、そのアルキル部分が炭素数1または2のものが好ましい。
【0024】
これら化合物は基材に強固には接合していないため、潤滑剤としての効果が大きく働くと考えられる。また、未反応が故に防汚層が順次摩滅していくに従い、防汚層形成前の透光性部材表面が露出することで、大気中の水分とその表面官能基と未反応加水分解性基が反応し、新たな強固な接合をし、防汚層を形成することも考えられる。
これらの構造を有する化合物で、防汚層構成材料に含有され、良好な防汚性を示す化合物の分子量は1000〜20000である。更に好適には、良好な薄膜を形成するという観点から2000〜10000であることが好ましい。分子量が1000未満のものは防汚性、耐摩耗性に劣り、好ましくなく、20000を越えるものは塗膜形成が不良となるので好ましくない。また、20000を越えるものは加水分解性基を持つ場合、特に組成物中に沈殿物/不純物が生じたり、そのものがゲル化したりして、防汚性能を発揮できない。なお、これら材料は通常の製造方法によれば混合物として得られることが知られている。
【0025】
次に本発明で形成される防汚層において含有されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物は少なくとも一般に下記式(IV)あるいは(V)で表わされる構造を持つ化合物であることが好ましい。
【0026】
【化6】


(ただし、pは1以上の整数である)
【0027】
【化7】


(ただし、qは1以上の整数、Rはアルキル基を表わす)
【0028】
例えば、式(IV)のパーフロオロシラザン化合物を具体的に例示すると、n−CFCHCHSi(NH、n−CCHCHSi(NH、n−CCHCHSi(NH、n−C13CHCHSi(NH、n−C17CHCHSi(NH等を挙げることができる。
例えば、式(V)のパーフロオロシランカップリング剤を具体的に例示すると、n−CFCHCHSi(OCH、n−C17CHCHSi(OCH等を挙げることができる。
これらの構造を有する化合物で、防汚層構成材料に含有され、良好な防汚性を示す化合物の分子量は、良好な薄膜を形成するという観点から300〜700であることが好ましい。
【0029】
次に本発明で形成される防汚層において、フッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基と有する有機ケイ素構造を持つ化合物は少なくとも下記式(VI)、下記式(VII)で表わされる構造を持つ化合物が好ましい。
【0030】
【化8】

(式中、Rfは炭素数1〜100の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素または炭素数1〜5の低級アルキル基またはハロゲン、Rは加水分解可能な基、Rは低級アルキル基、aは1〜100の整数、bは1〜3の整数、cは0〜2の整数b+c=3)
上記Rで示される加水分解可能な基としてはアミノ基、アルコキシ基、塩素原子等が挙げられ、アルコキシ基の場合は、そのアルキル部分が炭素数1または2のものが好ましい。
また、フッ素置換アルキル基:Rfとパーフルオロポリエーテル基:(OCFCFCF)のモル比(Rf/(OCFCFCF))は0.1〜10が好ましい。0.1未満の場合、防汚層の撥水撥油性が低下し、離型性が低下する。また10を越える場合、静電的に紙粉やゴミを付着し易くなり、また防汚層の可撓性の低下や潤滑性低下などが引き起こされ、耐久性が低下することとなるので好ましくない。
【0031】
【化9】

(式中、Rfは炭素数1〜100の直鎖状のパーフルオロアルキル基、Xは水素または炭素数1〜5の低級アルキル基またはハロゲン、Rは加水分解可能な基、Rは低級アルキル基、eは1〜100の整数、fは1〜3の整数、gは0〜2の整数f+g=3)
上記Rで示される加水分解可能な基としてはアミノ基、アルコキシ基、塩素原子等が挙げられ、アルコキシ基の場合は、そのアルキル部分が炭素数1または2のものが好ましい。
また、フッ素置換アルキル基:Rfとパーフルオロポリエーテル基:(OCFCF)のモル比(Rf/(OCFCF))は0.1〜10が好ましい。0.1未満の場合、防汚層の撥水撥油性が低下し、離型性が低下する。また10を越える場合、静電的に紙粉やゴミを付着し易くなり、また防汚層の可撓性の低下や潤滑性低下などが引き起こされ、耐久性が低下することとなるので好ましくない。
【0032】
次に、本発明で形成される防汚層において含有されるパーフルオロ系溶剤はパーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物を溶解するものであれば良く、特に限定はされない。例えば、m−キシレンヘキサフロライド、パーフルオロヘキサン、ハイドロフロロエーテル、オクタフロロブチルエーテル、メチルノナフロロブチルエーテル、メチルデカフロロブチルエーテルなどのハイドロフロロエーテル、ウンデカフルオロー4−(トリフルオロメチル)ペンタン、パーフルオロトリブチルアミンなどが挙げられる。
【0033】
また、防汚膜中に含有されるパーフルオロ系溶媒の濃度は、上記パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物を溶解する際の濃度以下であり、塗布後乾燥や加熱・真空蒸着や種々手段により形成する膜が良好な膜を形成する濃度であれば良く、問題はない。これらパーフルオロ系溶媒は溶解する塗膜成分との相溶性が高く、成膜後も保持されやすく、膜の可撓性、潤滑性や撥水撥油性などを与えると考えられる。
【0034】
なお、本発明の防汚層形成は、上記パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基と有する有機ケイ素構造を持つ化合物を溶解させた溶液を通常のコーティング作業で用いられる方法で、例えば、スピンコート、浸漬塗装、ロールコート、グラビアコート、カーテンフロー塗装等で塗布し、室温あるいは加熱乾燥、室温あるいは加熱硬化などにより防汚層形成、または、蒸着法(加熱、真空)により防汚層形成をすることができる。
【0035】
次に、これら防汚層の膜厚は0.001〜0.1μmであることにより、機能的かつ経済性の面から実用的な耐久性にとって好適である。防汚層の膜厚は、厚すぎると傷が目立ち易い、経済的ではない等の問題がある。0.001μm以上の厚さとすれば充分な防汚効果が得られることがわかった。また、厚さの上限については、これら材料が高価であり、経済性、生産性、さらには、コンタクトガラスとしての実用性を考慮して、0.1μm程度(下限の100倍程度)にとどめるのが有効であり、これ以上厚みを増しても防汚性向上及び耐摩耗性向上への寄与は薄いと考えられる。
更に本発明で形成する透光性部材は表面に微細な凹凸を設けることにより、形状効果で原稿との接触面積が小さくなり、原稿の汚れ、特に粘着剤等の粘着性の汚れが付着し難くなり、防汚性付与に効果がある。また、凹部に潤滑性及び防汚性材料が塗布され、原稿が表面を擦ってもこれら材料を大幅に減ずることはなく、経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、耐久性に優れると考えられる。
【0036】
また、透光性部材、特にガラスやSiO処理した基材表面の凹凸の形成にはサンドブラスト法と化学的薬液処理法(エッチング処理)が用いられる。他に表面にSiO粉を吹き付け、焼き付ける方法も可能である。なお、薬液による表面処理は、例えば、フッ化水素、フッ化アンモニウム、純水と処理剤(酢酸、燐酸、塩酸、硫酸又はギ酸)を混合した薬液を用いてガラス表面に凹凸を形成する方法(具体的には、薬液をガラス基材等に浸漬し、静置で処理する方法)である。
【0037】
特に、凹は表面粗さを0.5S以下とするのが好ましい。表面粗さが0.5Sを超えるものでは、汚れが凹部に入り込んでしまうと除去できないという問題があり、汚れ物質の例として紙のてん料粒子や表面改質粒子などが挙げられるがこれらの粒子は、0.5〜10μmの大きさである。従って、表面粗さが0.5Sより大である場合には、その凹凸の凹部にこれらの粒子(その大きさの下限値である0.5μm程度の粒子)が入り込み、容易には取れなくなる。実際に、表面粗さを変えたガラスを準備し、炭酸カルシウム(CaCO)微粒子を散布しその後それをブロワーで吹き飛ばした場合の炭酸カルシウム(CaCO)微粒子の残留状況を調べてみたところ、表面粗さが0.5S〜0.1Sのものでは、炭酸カルシウム(CaCO)微粒子の残留は認められなかったのに対して、表面粗さが0.5Sを超える1Sのものでは、ブロワーで吹き飛ばしても十分に除去することができなかった。次に、表面粗さが0.5Sより大である場合、目視で鏡面状態が確認できず、表面にくもりが見られ、透光性に支障をきたし、コンタクトガラスとして使用する場合、画像読み取り性能に悪影響を及ぼすと考えられる。一方、0.5Sあるいはそれ以下であれば、少なくとも目視においてはほぼ鏡面状態が得られ、光学素子として充分な光の透過率が得られている。
【0038】
次に本発明で形成する透光性部材表面は前処理したのち該防汚層を設けるとしており、該前処理が表面改質及び表面洗浄処理であり、該前処理がアルカリ処理及び/またはプラズマ処理及び/または溶剤洗浄処理及び/またはエッチング処理であることにより、透光性部材表面の官能基改質、清浄化、表面粗さ制御をし、透光性部材表面と防汚層との接着性が向上し、耐摩耗性、特に経時での防汚性付与層の摩滅を防止し、耐久性に優れると考えられる。
【0039】
前処理を具体的に例示すると、例えばアルカリ処理は、ガラス基板をアルカリ性溶液中に浸漬し、必要に応じて超音波を照射しながらアルカリ洗浄を行ない、ガラス基板に固着している不純物、残留異物をエッチング除去するものである。防汚層との接合強度を向上させることができる。また、具体的には水素イオン濃度pHが10以上のアルカリ性水溶液:水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、又はテトラメチル水酸化物等の溶液を含むアルカリ水溶液を使用してアルカリ洗浄を行なうものである。
なお、前述の薬液処理/エッチング処理(酸処理:酸性水溶液処理)を終了した後、アルカリ処理を行なうことが好ましい。アルカリ性水溶液でアルカリ洗浄を行なうことにより、酸洗浄処理で形成された変質層がエッチング除去され、表層面も硬化されることとなる。
【0040】
なお、酸洗浄処理を行なわずにアルカリ洗浄処理のみを行った場合はアルカリ性水溶液はエッチング力が弱いため、僅かなエッチング処理しか行なうことができない。このため、表面に変質層が生じるのを回避すると共に異物がガラス基板に付着するのを防止するためには、上述の如く酸洗浄処理を行なった後、アルカリ洗浄処理を行なう方がなお好ましい。
【0041】
また、プラズマ処理は、酸素、ヘリウム、アルゴン等によるプラズマ処理であり、特に酸素プラズマ処理は透光性部材の有機物除去に効果があり、更に親水性を高めることができるため、防汚層の部材接合強度向上に好適である。なお、ヘリウムは比較的低分子量であるため、光性部材へのダメージが少なく、アルゴンは比較的高分子量であるため有機物以外も除去することができ、洗浄及び処理効率を高めることができる。
【0042】
プラズマ処理においては、チャンバー内に透光性部材をセットして、Oガスを導入した後、透光性部材を載置した下部電極とそれに対向して配置される上部電極との間に高周波電界を印加することによりOガスが励起され、透光性部材上の異物である有機物が除去されることとなる。なお、プラズマ処理の条件は、表面処理、表面改質の効率や透光性部材の材質等の関係によって種々選択することが可能である。
【0043】
更に溶剤洗浄処理は溶剤の溶解力を利用するものであり、溶解力の大きい溶剤例えばCFCなどのフロン化合物、1,1,1−トリクロロエタン、塩化メチレンなどのハロゲン化物などが使用される。しかしながら、環境保全優先のため、フロン系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系の使用は禁止され、溶剤転換が迫られており、その他の溶剤使用についても、環境規制法令管理下にあるため、溶剤の使用については制限が発生する。
特に本発明の溶剤処理は多量に使用するため、浸透性、水和性、環境性が重要となってくる。具体的には浸透性、水和性のバランスのために炭素数6以下のアルコール、ケトン、エーテル、エステル、含窒素化合物が最適であり、環境性のために脂肪族および脂環族化合物が好適である。
【0044】
溶剤の水和性は、極性が強いほど大きく、逆に浸透性は無極性となるほど大きい。極性が強い多価アルコール、脂肪酸、アルデヒドは、水和性が大きいが浸透性が弱い。一方、極性が弱い炭化水素、ハロゲン化炭化水素は、浸透性が強いが水和性が小さい。これらの中からバランスの良好なものを選ぶと良い。水和性、浸透性がバランス良好であるのは、アルコール類、ケトン類、含窒素化合物類、エーテル類、エステル類である。また、炭素数が小さい溶剤は無機性が大きいので水和性が大きい。一方、炭素数が大きいほど無機性から有機性に向かい浸透性が増す傾向と、構造が大きくなることによる浸透性の減少の傾向がある。この傾向の中で水和性と浸透性を両立させるものを選択するのが好ましい。
【0045】
例えば、メタノール、エタノール、プロパルギルアルコール、アリルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、nブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルエーテル、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ビニールメチルエーテル等のエーテル類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル、ジメチルアミン、アセトアミド、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、アリルアミン、キノリン等の含窒素化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0046】
なお、溶剤洗浄処理において紫外線照射を併用して使用することもでき、溶剤の分子浸透が光化学反応変化をさらに増大する効果を利用し、有機物質の光分解と有機物構造の変化を促進させ、透光性部材表面の処理をより効果的に実施することができる。
【0047】
本発明の該防汚層の形成方法としては、先に記載した如く、ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基と有する有機ケイ素構造を持つ化合物を溶解させた溶液を通常のコーティング作業で用いられる方法で、例えば、スピンコート、浸漬塗装、ロールコート、グラビアコート、カーテンフロー塗装等で塗布し、室温あるいは加熱乾燥、室温あるいは加熱硬化などにより防汚層形成をすることができるが、特に下記に示す蒸着法で防汚層を形成することにより、均一で良好な防汚層を透光性部材上に形成することができる。ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基と有する有機ケイ素構造を持つ化合物含有パーフルオロ系溶液を減圧下、加熱して基材上に蒸着、薄膜を形成する透光部材の製造方法を選択するのが好ましく、特に上記化合物の加熱温度が蒸発開始温度から分解温度までの範囲であることが好ましく、透光部材上に均一均質で強固な防汚層を得ることができ、特に耐摩耗性の付与に効果があり、更に経時での防汚層の摩滅を防止し、耐久性に優れたものとなる。
【0048】
本発明の防汚層を形成する薄膜の膜厚はケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基と有する有機ケイ素構造を持つ化合物の蒸発量に依存する。従って、膜厚を制御する際には、パーフルオロ系溶媒で希釈した溶液を用いることで制御が容易となり、好ましい。溶媒としては、m−キシレンヘキサフロライド、パーフルオロヘキサン、ハイドロフロロエーテル等が挙げられる。
なお、前記パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物のうち、ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基と有する有機ケイ素構造を持つ化合物含有パーフルオロ溶液の濃度は蒸着が有効に実施されば良く、特に制限はない。
【0049】
また、該溶液はそのまま容器に入れて加熱しても良いが、均一した蒸着膜を得る観点から、多孔性材料に含浸させることがより好ましく、多孔性材料としては銅やステンレス等熱伝導性の高い金属粉末を焼結した焼結フィルターを用いることが好ましい。なお、適度な蒸着速度を得るには多孔性材料のメッシュを40〜200μm、好ましくは、80〜120μmとすることが好適である。
【0050】
また、減圧下、加熱して蒸着することが好ましく、真空蒸着の際の真空度としては、特に限定されないが、均質・均一の防汚層を得るには、1.33×10−1Pa〜1.33×10−6Pa(10−3〜10−8Torr)の範囲が好ましく、特に6.66×10−1Pa〜8.00×10−4Pa(5.0×10−3〜6.0×10−6Torr)の範囲であることが好適である。なお、加熱する際の温度は種類、蒸着する真空条件により異なるが蒸着開始温度以上から分解温度を超えない範囲で行なうことが好ましい。ここで蒸着開始温度とは含有溶液の蒸気圧が真空度と等しくなったときの温度であり、分解温度とは1分間の間に該化合物の50%が分解する温度をさす。
【0051】
更に、蒸着開始温度が異なる防汚層を構成する材料を併用しても、蒸発開始温度の高い原料の蒸発開始温度から分解温度の低い原料の分解温度の範囲で蒸着温度を適宜選択することで、蒸着し、均一な膜を得ることができる。
なお、蒸着方法としては電子ビ−ムを照射する方法が好ましく挙げられる。電子ビ−ムを発生する方法は、従来、蒸着装置で用いられている電子銃を用いることができる。電子銃を用いれば、均一なエネルギー照射をすることができ、均質な防汚層を形成しやすくなる。
電子銃のパワーは、使用物質、蒸着装置、真空度、照射面積によって異なるが、好ましい条件は、加速電圧が6kV前後で、印加電流5〜80mA程度である。
【0052】
更に本発明において、原稿読み取り部と原稿の間の部材を便宜上コンタクトガラスと記して説明しているが、本発明はガラスのみに適用されるものではなく、より厳密な表現をすれば、原稿読み取り部と原稿の間の部材は、光を透過する部材、すなわち透光性部材である。つまり、ガラスも含めアクリル樹脂等のプラスチック材料等、光を透過する部材、すなわち透光性部材全般を、便宜上コンタクトガラスと表現する。
【0053】
ガラス以外の透光部材としては、例えば、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどの透光性部材が挙げられる。
更に、ケイ素含有ハードコード層を有するもの、例えば、有機ケイ素化合物、アクリル化合物等を含んだ硬化膜なども挙げることができる。
【0054】
なお、本発明においては、原稿はコンタクトガラス面に接触しながら搬送される。その際原稿から紙の成分であるセルロース繊維やタルク、クレー、炭酸カルシウム、二酸化チタンなどの粒子サイズが0.5〜10μmのてん料粒子さらには紙表面に塗工したカオリン(Al・2SiO・2HO)、炭酸カルシウム(CaCO)、サチンホワイト(3CaO・Al・3CaSO・31〜32HO)などの粒子サイズが0.5〜10μmの表面改質粒子などが、紙粉として脱落し、このコンタクトガラス面に付着する。あるいは原稿面に付着しているトナー微粉や糊などの粘着質の物質もこの面に付着する。さらには、空気中に浮遊する塵埃等の異物が付着したり、不用意に手を触れて、汗、脂等が指紋状に付着することも多々ある。そして上記トナー微粉、糊、汗、脂等は、他の粘着性がない異物をコンタクトガラス面に付着させるというさらに悪い影響を及ぼすものであり、本発明の防汚層形成はこれらの悪影響防止に有効に働くこととなる。通常、複写機等で原稿を固定とし、画像読み取り部を移動させて原稿読み取りを行なう場合、コンタクトガラス面の汚染が最終画像品質に与える影響は、その汚染部分のみ黒いスポット状の画像劣化となる。しかしながら本発明のように、画像読み取り部を固定とし、原稿を移動させて原稿読み取りを行なう場合は、コンタクトガラス面に存在する1個のスポット状の汚染であっても、副走査方向に繋がる、いわゆる黒スジの発生となってしまい、単なる黒いスポット状の画像劣化ではなく、その影響ははるかに大きい。これら不具合を解消するために、本発明では、このコンタクトガラスの原稿と相対する面に防汚層の形成を図ったのである。
【0055】
次に、図面により本発明の装置形態を詳細に説明するが、これに限定されるものではない。図1は本発明による基本的な原稿読み取り搬送装置(ADF)及び読み取り装置を説明する概略図である。
図1において、給紙/分離部(F)は原稿テーブル(2)に積み重ねられた原稿(P)を最上位から一枚ずつ順番に搬送する。底板(4)は原稿テーブル(2)上の原稿給紙側を支持して呼び出しコロ(5)に接する位置まで上昇させる。給紙部材(6)は給紙方向に回転して呼び出しコロ(5)によって呼び出された原稿(P)を取り込み、分離部材(7)は給紙方向と逆方向に回転し、給紙された原稿(P)の最上位の一枚のみを分離する。搬送部(9)は、搬送ローラ対(8)、(8a)、中間搬送ローラ(11)、(11a)等から構成されており、給紙/分離部(F)から搬送された原稿(P)をコンタクトガラス(3)上の読み取り位置まで搬送する。搬送ローラ対(8)、(8a)により狭持されてきた原稿(P)はコンタクトガラス(3)上を移動して装置本体(20)の本体側ガイド(20c)に掬い取られた後、原稿(P)が搬送ローラ対(8)、(8a)および中間搬送ローラ(11)、(11a)に狭持されている間は原稿(P)が張った状態で、コンタクトガラス(3)と非接触となり、かつ読み取りガイド部材(原稿押さえ部材)(21)との接触面が小さい状態を維持する。原稿(P)の画像面を読み取る読み取り装置(1)はコンタクトガラス(3)の下方の装置本体(20)に設けられ、画像読み取りの際にコンタクトガラス(3)の下方で図の左右方向に移動、または読み取り位置下方で停止可能になっている。排紙部は読み取り後の原稿(P)を排紙トレイ(15)に排出する。
本実施の形態におけるADF(10)は図示していないヒンジ等の連絡部材によって装置本体(20)に連結され、装置本体(20)の操作部におけるスタートボタンの押し下げによりADF側にスタート信号が送られることによって、最上位から順番に一枚ずつ給紙されるように構成されている。コンタクトガラス(3)面を所定の速度で原稿(P)搬送し、画像の読み取りを行なう読み取り装置でコンタクトガラス(3)の原稿通紙面より所定量高いガイド面がコンタクトガラス(3)の原稿搬送面の原稿読み取りライン位置より上流位置に形成されている。本体側ガイド(突起状部材)(20c)がコンタクトガラス(3)の下流端にコンタクトガラス(3)の原稿通紙面より原稿(P)掬い上げる傾斜面を有すると共に、コンタクトガラス(3)の上面には、原稿(1)の上方へのバタつきを抑える原稿押さえ部材(21)を配置している。
【0056】
本実施の形態では、ADF(10)により原稿を一枚ずつ搬送し、読み取り装置(1)のコンタクトガラス(3)の上を通過する間に画像を読み取る。画像の読み取りは、読み取り装置(1)で行なう。
原稿(P)上の画像は読み取り装置(1)のミラー(31)、(32)、(33)、レンズ(34)を通って、CCD(35)によって取り込まれた画像データは画像処理を施された後、プリンタ部へ送られ出力される。このように原稿(P)がコンタクトガラス(3)表面を繰り返し通過する毎に、通常の防汚層は大きく削られ、原稿(P)によって運ばれ、コンタクトガラス(3)表面からなくなっていくため、防汚効果を持続させることが困難である。本発明によると潤滑性、耐摩耗性を付与することができ、経時の防汚性を保持することが可能となる。また本発明の微細な凹凸形状を設け、本発明の防汚層を形成することで、原稿(P)とコンタクトガラス(3)との接触面積が小さくなり、原稿Pの汚れ(粘着性汚れや紙粉等)が付着し難くなり、画像劣化を防止することができるようになる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本発明の防汚層を設けた画像読み取り装置の評価、コンタクトガラス(3)の防汚性、耐久性などの評価は下記に示したように実施した。
コンタクトガラス(3)面に、以下実施例の如く表面改質を施したサンプルを用い、紙粉を散布しその後それをブロワーで吹き飛ばした場合の紙粉の残留状況(防汚効果)、トナーを散布しその後それをブロワーで吹き飛ばした場合のトナーの残留状況(防汚効果)、指紋をつけた場合の汚れの付着状況(防汚効果)を評価した。
更に各サンプルを実際の電子写真デジタル複写機読み取り部のコンタクトガラス(3)として使用し、アクリル系粘着両面テープ貼り付けた原稿を多数枚通紙後、ハーフトーン原稿を多数枚通紙し、黒スジ発生や紙詰まりの有無等の画像劣化を評価(防汚効果)及び100K通紙後に同様の評価(防汚効果、経時防汚効果)を実施し、黒スジ発生の有無等の画像劣化を生じさせるかどうか(実用性評価)を評価した。結果を表1に示した。
【0058】
<評価基準>
◎:防汚効果大、実用的
○:防汚効果が認められる、実用上問題なし
△:防汚効果は認められるが、実用的には問題が生じる場合もある
×:防汚効果ほとんどなし、実用性に難あり
−:光透過性悪く評価せず
【0059】
【表1】

*総合評価結果は3項目の評価を踏まえ、実用に供するかを示しており、◎:優秀、○:
秀、△:良、×:不良の順で実用面への良好度を示している。
【0060】
実施例1(サンプル1)
下記式で示されるパーフロオロポリエーテル構造を有する化合物(分子量:約5000)をパーフルオロヘキサンで希釈して0.1重量%の溶液とした。
【0061】
【化10】

コンタクトガラス(3)をこの溶液に浸漬し、15cm/分の速度で引き上げて塗布した。塗布後は室温条件下で一昼夜放置して溶剤を揮散させ、防汚層が付与されたコンタクトガラス(3)(膜厚:0.03μm)を得た。
【0062】
実施例2(サンプル2)
下記式で示されるケイ素含有パーフロオロポリエーテル構造を有する化合物(分子量:約2500)をパーフルオロヘキサンで希釈して0.1重量%の溶液とし、実施例1と同様に防汚層を付与したコンタクトガラス(3)(膜厚:0.03μm)を得た。
【0063】
【化11】

【0064】
実施例3(サンプル3)
加水分解性ケイ素含有パーフロオロポリエーテル構造を有する化合物:オプツールDSX(オプツールDSXが担持するようなSiに結合しているアルコキシ基(-OR)は空気中の水分、表面に吸着した水分あるいは水そのものにより加水分解され、シラノ-ル基(-SiOH)を生成し、これが無機質/ガラス等に対する結合性をもたらしてると考えられ、無機質表面との化学結合、物理吸着、ガラスのシラノ-ル基との水素結合等々と考えられる。ダイキン工業(株)製)をパーフルオロヘキサンで希釈して0.2重量%の溶液とし、実施例1と同様に未反応な加水分解性ケイ素含有パーフロオロポリエーテル構造を有する化合物が微量含有された防汚層を付与したコンタクトガラス(3)(膜厚:0.04μm)を得た。
【0065】
実施例4(サンプル4)
下記式で示されるケイ素含有パーフロオロポリエーテル構造を有する化合物(分子量:約4000)及び下記式で示されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物をパーフルオロヘキサンで希釈して0.1重量%の溶液とし、実施例1と同様に防汚層を付与したコンタクトガラス(3)(膜厚:0.03μm)を得た。
【0066】
【化12】

【0067】
【化13】

【0068】
実施例5(サンプル5)
下記式フッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基と有する有機ケイ素構造を持つ化合物をパーフルオロヘキサンで希釈して0.1重量%の溶液とし、実施例1と同様に防汚層を付与したコンタクトガラス(3)(膜厚:0.03μm)を得た。
【0069】
【化14】

【0070】
実施例6(サンプル6)
下記式パーフロオロポリエーテル構造を有する化合物をパーフルオロヘキサンで希釈して1重量%の溶液とし、実施例1と同様の方法で、室温で1時間乾燥し、パーフルオロ溶剤含有が微量含有された防汚層を付与したコンタクトガラス(3)(膜厚:0.01μm)を得た。
【0071】
【化15】

【0072】
実施例7(サンプル7)
フッ化水素、フッ化アンモニウム、純水、親水性カルボン酸を混合し、ガラス表面処理液とし、(組成は、フッ化水素:25重量%、フッ化アンモニウム:25重量%、純水:25重量%、親水性カルボン酸/プロピオン酸:25重量%)この処理液中にフロートガラス(日本板硝子株式会社製 化学強化ガラス FL3.2)を静置浸漬した。浸漬後、純水にて洗浄し、更にpHが10の水酸化カリウム水溶液で処理後、再度純水にて洗浄し、微細凹凸(表面粗さ:0.5S)のガラスを得、そのガラス表面に防汚層を形成(オプツールDSX(ダイキン工業(株)製)をパーフルオロヘキサンで希釈して0.1重量%の溶液とし、実施例1と同様に防汚層を付与)し、防汚層形成したコンタクトガラス(3)(膜厚:0.003μm)を得た。
【0073】
実施例8(サンプル8)
フロートガラス(日本板硝子株式会社製 化学強化ガラス FL3.2)に酸素流量を50sccm、圧力20Pa、マイクロ波出力200Wとして10分間プラズマ処理を行ない、そのガラス表面に防汚層を形成(オプツールDSX(ダイキン工業(株)製)をパーフルオロヘキサンで希釈して0.1重量%の溶液とし、実施例1と同様に防汚層を付与)し、防汚層を形成したコンタクトガラス(3)(膜厚:0.03μm)を得た。
【0074】
実施例9(サンプル9)
オプツールDSX(ダイキン工業(株)製)をパーフルオロヘキサンで希釈して0.1重量%の溶液とし、その溶液を0.15mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルター(細孔径80〜100μm、直径18mmφ、厚さ3mm)を真空蒸着装置内にセットし、以下の条件で電子銃を用いて該焼結フィルター全体を加熱して、防汚層を形成したコンタクトガラス(3)(膜厚:0.02μm)を得た。
真空度:3.1×10−4〜8.0×10−4Pa(2.3×10−6〜6.0×10−6Torr)、加速電圧:6kV、印加電流:40mA、照射面積:3.5×3.5cm、蒸着時間:5秒
【0075】
実施例10(サンプル10)
実施例1の溶液を0.15mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルター(細孔径80〜100μm、直径18mmφ、厚さ3mm)を真空蒸着装置内にセットし、実施例6の防汚層形成前の処理ガラス上に、以下の条件で電子銃を用いて該焼結フィルター全体を加熱して、防汚層を形成し、コンタクトガラス(3)(膜厚:0.02μm)を得た。
真空度:3.1×10−4〜8.0×10−4Pa(2.3×10−6〜6.0×10−6Torr)、加速電圧:6kV、印加電流:40mA、照射面積:3.5×3.5cm、蒸着時間:5秒
【0076】
実施例11(サンプル11)
実施例4の溶液を0.15mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルター(細孔径80〜100μm、直径18mmφ、厚さ3mm)を真空蒸着装置内にセットし、実施例7の防汚層形成前の処理ガラス上に、以下の条件で電子銃を用いて該焼結フィルター全体を加熱して、防汚層を形成し、コンタクトガラス(3)(膜厚:0.02μm)を得た。
真空度:3.1×10−4〜8.0×10−4Pa(2.3×10−6〜6.0×10−6Torr)、加速電圧:6kV、印加電流:40mA、照射面積:3.5×3.5cm、蒸着時間:5秒
【0077】
実施例12(サンプル12)
実施例5の溶液を0.15mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルター(細孔径80〜100μm、直径18mmφ、厚さ3mm)を真空蒸着装置内にセットし、実施例6の防汚層形成前の処理ガラス上に、以下の条件で電子銃を用いて該焼結フィルター全体を加熱して、防汚層を形成し、コンタクトガラス(3)(膜厚:0.02μm)を得た。
真空度:3.1×10−4〜8.0×10−4Pa(2.3×10−6〜6.0×10−6Torr)、加速電圧:6kV、印加電流:40mA、照射面積:3.5×3.5cm、蒸着時間:5秒
【0078】
比較例1
FG−5010(株式会社フロロテクノロジー製フッ素コート材、フッ素樹脂を不燃性のフッ素溶剤や有機溶剤に溶解した溶液で、コーティング後室温で乾燥し、塗膜を形成)を約0.5μmスプレーコートし、防汚層を形成したコンタクトガラスを得た。
【0079】
比較例2
FG−7000(株式会社フロロテクノロジー製フッ素コート材、FG−5010とほぼ同じ構造と推定され、塗膜形成も同様。低摩擦用途に使用され、高密着・高硬度の性質を持つ)を約0.5μmスピンコートし、防汚層を形成したコンタクトガラスを得た。
【0080】
比較例3
KBM7803(:含フッ素シランカップリング剤(信越化学社製)C17CHCHSi(OCH3、溶剤は含まず、有効成分100%溶液、無色透明液体、粘度4cSt、比重1.53、屈折率1.3300)を実施例1と同様の方法で約0.01μmコートし、防汚層を形成したコンタクトガラスを得た。
【0081】
比較例4
含フッ素シラザン系材料:信越化学製KP-801M(樹脂/オリゴマー系)で、溶剤はm−キシレンヘキサフロライド<C(CF>、有効成分3%、溶液外観:無色透明、粘度0.6cSt、比重1.4)を実施例1と同様の方法で約0.01μmコートし、防汚層を形成したコンタクトガラスを得た。
【0082】
比較例5
シリコーンスプレーKF96SP(信越化学工業株式会社製シリコーンコート材、ジメチルシリコーンオイルでスプレーコート用材料)を約0.1μmスプレーコートし、防汚層を形成したコンタクトガラスを得た。
【0083】
比較例6
未処理コンタクトガラスをそのまま使用した。
【0084】
以上の結果より、これら材料の防汚層形成が特に防汚効果が高いことがわかり、実用性が高いことがわかった。さらにまた真空蒸着により形成したものが、より防汚効果が高く、より経時での防汚効果が持続されることもわかった。
本発明では原稿がコンタクトガラスに接触するため、紙粉やトナー等が原稿表面から離脱するが、離脱した紙粉やトナー等、あるいは空気中に浮遊する異物等も、上記検討した防汚層形成の効果によって、コンタクトガラスに付着したり残ったりせず、原稿の移動とともに一緒に運ばれてしまう。よって、これらの異物が原稿読み取り装置によって異物画像情報として読み取られることがなく、ファクシミリの記録品質、あるいは複写機および複合機等の画像形成品質を劣化させることがなく、高品質な画質が維持され、またこのような異物付着によって発生する紙詰まりなども抑制される効果を持つコンタクトガラス3を持つ、画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置を得ることができた。本発明の効果により、コンタクトガラス部品の交換の回数を大幅に減少でき、コストダウンにも寄与することができた。
なお、このような好ましい結果を得ることができたのは、防汚層がパーフルオロポリエーテル構造を持ちは、フッ素原子を多く含むため化学的に不活性になり、エーテル部分の分子のフレキシビリティなどにより潤滑性付与などより防汚性及び耐摩耗性に富み、耐久性にも効果があったものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明による基本的な原稿読み取り搬送装置(ADF)および読み取り装置を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0086】
1 読み取り装置
2 原稿テーブル
3 コンタクトガラス
4 底板
5 呼び出しコロ
6 給紙部材
7 分離部材
8、8a 搬送ローラ対
9 搬送部
10 ADF
11、11a 中間搬送ローラ
15 排紙トレイ
20 装置本体
20c 本体側ガイド(突起状部材)
21 読み取りガイド部材
31 ミラー
32 ミラー
33 ミラー
34 レンズ
35 CCD
F 給紙/分離部
P 原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読み取り部と原稿の間に透光性部材を介し、原稿を搬送しながら画像読み取りを行なう画像読み取り装置において、前記透光性部材の前記原稿と相対する面に防汚層を設けた画像読み取り装置であって、該防汚層が少なくともパーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物を含有し、該防汚層のパーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物が少なくともケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物であることを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項2】
前記防汚層が少なくとも透光性部材と反応していない加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の画像読み取り装置。
【請求項3】
前記防汚層が少なくともケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物及びフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読み取り装置。
【請求項4】
該化合物が少なくともフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像読み取り装置。
【請求項5】
該化合物のフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基のモル比が0.1〜10であることを特徴とする請求項4に記載の画像読み取り装置。
【請求項6】
前記防汚層が少なくともケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物を溶解するパ−フルオロ系溶剤を含有する塗工液を塗工することにより得られたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像読み取り装置。
【請求項7】
前記防汚層のケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物の分子量が1000〜20000であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像読み取り装置。
【請求項8】
前記防汚層の膜厚が0.001〜0.1μmであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像読み取り装置。
【請求項9】
前記透光性部材表面に微細な凹凸が設けられたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の画像読み取り装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の画像読み取り装置と、該画像読み取り装置により読み取られた画像情報に基いて可視画像を形成する可視画像形成手段とを有することを特徴とする画像読み取り装置付き記録装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の画像読み取り装置又は請求項10に記載の画像読み取り装置付き記録装置を製造する方法であって、前記透光性部材表面を前処理したのち該防汚層を設ける段階を含み、該前処理が表面改質及び表面洗浄処理であり、該表面改質及び表面洗浄処理がアルカリ処理及び/またはプラズマ処理及び/または溶剤洗浄処理及び/またはエッチング処理であることを特徴とする画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11乃至9のいずれかに記載の画像読み取り装置又は請求項10に記載の画像読み取り装置付き記録装置を製造する方法であって、前記防汚層の形成方法が、ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を持つ化合物または加水分解性ケイ素含有パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素構造を有する化合物またはフッ素置換アルキル基とパーフルオロポリエーテル基とを有する有機ケイ素構造を持つ化合物を含有するパーフルオロ系溶液を減圧下、加熱して基材上に蒸着、薄膜を形成する段階を含み、上記化合物の加熱温度が蒸発開始温度から分解温度までの範囲であることを特徴とする画像読み取り装置および画像読み取り装置付き記録装置の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−53715(P2007−53715A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283494(P2005−283494)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】