画像読取装置、重送判定方法および重送判定プログラム
【課題】MF(マルチフィード)検出精度を高めることができる画像読取装置、重送判定方法及び重送判定プログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】本実施形態によれば、“紙なし時”、“重なりなし時”、“重なりあり時”のそれぞれのUSセンサの多値出力をモニタし、モニタした値を元に用紙の厚さに最適なMF判定スライス値を設定し、設定したMF判定スライス値でMF判定を行う。具体的には、(1)USセンサから採取した出力を、“紙なし時”、“重なりなし時”、“重なりあり時”のいずれかに分別し、(2)“紙なし時”に分別された出力と“重なりなし時”に分別された出力に基づいて、予め設定したMF判定スライス値を用紙の厚さに最適なものに変更し、(3)“重なりあり時”に分別された出力がある場合には、当該出力と変更後の用紙の厚さに最適なMF判定スライス値とを比較してMF判定を行う。
【解決手段】本実施形態によれば、“紙なし時”、“重なりなし時”、“重なりあり時”のそれぞれのUSセンサの多値出力をモニタし、モニタした値を元に用紙の厚さに最適なMF判定スライス値を設定し、設定したMF判定スライス値でMF判定を行う。具体的には、(1)USセンサから採取した出力を、“紙なし時”、“重なりなし時”、“重なりあり時”のいずれかに分別し、(2)“紙なし時”に分別された出力と“重なりなし時”に分別された出力に基づいて、予め設定したMF判定スライス値を用紙の厚さに最適なものに変更し、(3)“重なりあり時”に分別された出力がある場合には、当該出力と変更後の用紙の厚さに最適なMF判定スライス値とを比較してMF判定を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波(US)センサを利用した重送(マルチフィード(MF))検知機能を備えた画像読取装置(例えばスキャナ、コピー機、ファクシミリなど)、重送判定方法および重送判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の技術では、USセンサを利用したMF検出機能におけるMF判定の閾値(MF判定スライス)として、USセンサ出力が小さくなる厚紙を考慮した固定値を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−40030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術によれば、MF判定スライスとして、USセンサ出力が小さくなる厚紙を考慮した固定値を設定しているので、薄紙では、MF判定スライスが低く、故にMF検出精度が十分ではなかった、という問題点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、MF検出精度を高めることができる画像読取装置、重送判定方法および重送判定プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像読取装置は、超音波センサと制御部とを備え、前記制御部は、紙なし時、重なりなし時、重なりあり時のそれぞれの前記超音波センサの多値出力値をモニタし、モニタした紙なし時と重なりなし時の値に基づいて用紙の厚さに最適な重送判定の閾値を設定し、設定した閾値と重なりあり時の値で重送判定を行うこと、を特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る画像読取装置は、前記に記載の画像読取装置において、前記制御部は、採取した前記超音波センサの多値出力値が当該採取の前後の値に比べて大きく変化している場合、当該採取した値を当該前後の値の平均値で置換すること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る画像読取装置は、超音波センサと制御部とを備え、前記制御部は、前記超音波センサの出力を採取する採取手段と、前記採取手段で採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別手段と、前記分別手段で前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更手段と、前記分別手段で前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更手段で変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定手段と、を備えたこと、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る画像読取装置は、前記に記載の画像読取装置において、前記採取手段は、今回採取した出力と前回採取した出力との差が所定値以上である場合は、当該今回の出力を置換候補として設定し、当該前回の出力が置換候補として設定されていた場合であって、当該今回の出力が当該前回の出力よりも、前々回採取した出力に近づいていたときには、置換候補の当該前回の出力を当該今回の出力と当該前々回の出力との平均値で置換すること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明は重送判定方法に関するものであり、本発明に係る重送判定方法は、超音波センサと制御部とを備えた画像読取装置の前記制御部で実行される、前記超音波センサの出力を採取する採取ステップと、前記採取ステップで採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別ステップと、前記分別ステップで前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更ステップと、前記分別ステップで前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更ステップで変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0011】
また、本発明は重送判定プログラムに関するものであり、本発明に係る重送判定プログラムは、超音波センサと制御部とを備えた画像読取装置の前記制御部に実行させるための、前記超音波センサの出力を採取する採取ステップと、前記採取ステップで採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別ステップと、前記分別ステップで前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更ステップと、前記分別ステップで前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更ステップで変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0012】
また、本発明は記録媒体に関するものであり、本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、前記に記載の本発明に係る重送判定プログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紙なし時、重なりなし時、重なりあり時のそれぞれのUSセンサの多値出力値(透過率)をモニタし、モニタした紙なし時と重なりなし時の値に基づいて用紙の厚さに最適なMF判定スライス値を設定し、設定したMF判定スライス値と重なりあり時の値でMF判定を行う。具体的には、(1)USセンサから採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別し、(2)用紙がない時のものに分別された出力と用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定したMF判定スライス値を用紙の厚さに最適なものに変更し、(3)用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と変更した後の用紙の厚さに最適なMF判定スライス値とを比較してMF判定を行う。これにより、MF検出精度を高めることができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明によれば、採取したUSセンサの多値出力値が当該採取の前後の値に比べて大きく変化している場合、当該採取した値を当該前後の値の平均値で置換する。具体的には、(1)今回採取した出力と前回採取した出力との差が所定値以上である場合は、当該今回の出力を置換候補として設定し、(2)当該前回の出力が置換候補として設定されていた場合であって、当該今回の出力が当該前回の出力よりも、前々回採取した出力に近づいていたときには、置換候補の当該前回の出力を当該今回の出力と当該前々回の出力との平均値で置換する。ここで、特に薄紙ではUSセンサ出力の一時的な変動が見られるが、従来ではUSセンサ多値出力値をそのまま利用していたので、重なり部分を正確に検出することができない場合があった。そこで、本発明では、採取したUSセンサの多値出力値が当該採取の前後の値に比べて大きく変化している場合、当該採取した値を当該前後の値の平均値で置換する。これにより、USセンサ出力の一時的な変動を無視して(特に、MF判定スライス前後のUSセンサ出力の不安定要素(ノイズ成分)を取り除いて)、重なり部分を正確且つ安定に検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施形態の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施形態の概要を示す図である。
【図3】図3は、重なり無しの場合におけるUSセンサ出力値とMFスライス値との関係の一例を示す図である。
【図4】図4は、重なり有りの場合におけるUSセンサ出力値とMFスライス値との関係の一例を示す図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る画像読取装置の構成の一例を示す図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る画像読取装置の具体例であるスキャナの構成を示す図である。
【図7】図7は、図6に示すスキャナに含まれる重送検知ユニットの構成の一例を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態のUSセンサMF検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本実施形態の紙なしモニタ処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本実施形態の紙ありモニタ処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本実施形態のノイズ成分排除処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る画像読取装置、重送判定方法及び重送判定プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
[1.本実施形態の概要]
ここでは、本実施形態の概要について、図1から図4を参照して説明する。図1および図2は、本実施形態の概要を示す図である。図3は、重なり無しの場合におけるUSセンサ出力値とMFスライス値との関係の一例を示す図である。図4は、重なり有りの場合におけるUSセンサ出力値とMFスライス値との関係の一例を示す図である。
【0018】
通常、超音波(US)センサを用いた重送(マルチフィード(MF))検知機構を備えた画像読取装置(例えばスキャナ、コピー機、ファクシミリなど)では、USセンサの出力(受信値(A/Dレベル))と予め設定した閾値(MF判定スライス値)とを比較して、MFの有無を判定する。
【0019】
ところが、予め設定したMF判定スライス値は、図1の(A)に示すように、USセンサの出力が小さくなる厚紙を考慮した固定値である。そのため、薄紙では当該MF判定スライス値が低く、MF検出精度が十分ではなかった。
【0020】
そこで、本実施形態では、図1の(B)に示すように、“紙なし時”、“重なりなし時”および“重なりあり時”のそれぞれのUSセンサの多値出力(透過率)をモニタ(採取)し、モニタした“紙なし時”と“重なりなし時”の値に基づいて、搬送された用紙の厚さに最適なMF判定スライス値を設定し、設定したMF判定スライス値と“重なりあり時”の値でMF判定を行う。これにより、あらゆる厚さの用紙に対してMF検出精度を高めることができる。
【0021】
また、従来、特に薄紙ではUSセンサ出力の一時的な変動が見られるが、USセンサ多値出力値をそのまま利用していたので、重なり部分を正確に求められない場合があった。
【0022】
そこで、本実施形態では、図2に示すように、採取したUSセンサの多値出力値が当該採取の前後の値に比べて大きく変化している場合、当該採取した値を当該前後の値の平均値で置換する。具体的には、採取した現在の出力値と当該採取の直前の出力値との差が所定値以上であり、そして当該採取の直後の出力値が当該現在の出力値より当該直前の出力値に近づいた(戻った)場合、当該現在の出力値を当該直前の出力値と当該直後の出力値の平均値で置換する。これにより、USセンサ出力の一時的な変動を無視して(特に、MF判定スライス前後のUSセンサ出力の不安定要素(ノイズ成分)を取り除いて)、重なり部分を正確且つ安定に検出することができる。
【0023】
以上、本実施形態によれば、図3の(A)から(C)に示す重なりなしのケースでは、MF判定スライス値が変更されることなく厚紙を考慮した従来の値でMF判定が行われるので、厚紙(例えばタイプ紙180K)は勿論、配達伝票や薄紙(例えばタイプ紙22K)も、“MFなし”と判定される。
【0024】
そして、本実施形態によれば、図4の(A)に示す重なりありのケースでは、MF判定スライス値は従来のままで変更されないが、MF判定スライス値付近の不安定要素を取り除いてMF判定が行われるので、これまで“MFあり”と判定されていた本ケースで、期待通り“MFなし”と判定される。また、図4の(B)に示す重なりありのケースでは、MF判定スライス値が配達伝票の厚さを考慮して最適化され、一時的な変動による貼り付け識別の影響も排除してMF判定が行われるので、期待通り“MFあり”と判定される。また、本実施形態によれば、図4の(C)に示す重なりありのケースでは、MF判定スライス値が薄紙(例えばタイプ紙22K)の厚さを考慮して最適化されてMF判定が行われるので、期待通り“MFあり”と判定される。
【0025】
[2.本実施形態の構成]
ここでは、本実施形態に係る画像読取装置100の構成について、図5から図7を参照して詳細に説明する。
【0026】
[2−1.構成の概要]
まず、本実施形態に係る画像読取装置100の構成の概要について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る画像読取装置の構成の一例を示す図である。
【0027】
画像読取装置100は、機能概念的に、重送検知ユニット(機構)102と画像読取ユニット(機構)114とを備えており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0028】
重送検知ユニット102は、搬送された用紙のMFを検知するための機構であり、図示の如く機能概念的に、画像処理装置100(特に重送検知ユニット102)を制御するCPU等の制御部104と、搬送された用紙の先端を検出する検出センサ108と、用紙の重なりを超音波で検知するUSセンサ110と、を少なくとも含む。検出センサ108は、用紙の搬送路に沿って設置され、USセンサ110の設置位置よりも上流に設置される。なお、重送検知ユニット102の構成の具体例については、後述する[2−2.構成の具体例]にて詳細に説明する。画像読取ユニット114は、搬送された用紙を読み取って、当該用紙の画像を生成するための機構である。
【0029】
制御部104は、OS等の制御プログラムと各種の処理手順等を規定したプログラムと所要データとを格納するための内部メモリを備え、これらプログラムに基づいて種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部104は、機能概念的に、本発明の採取手段に相当する採取部104aと、本発明の分別手段に含まれる紙なし時US出力モニタ(紙なしモニタ)部104bと、本発明の分別手段に含まれる紙あり時US出力モニタ(紙ありモニタ)部104cと、本発明の判定手段に相当する重送判定部104dと、保持部106と、を備える。
【0030】
保持部106は、演算や実行状態の保持などに用いるためのものであり、以下のレジスタおよびフラグを含む。保持部106は、後述する採取部104aで採取したUSセンサ多値出力値を保存する。
・用紙がない時にモニタ(採取)したUSセンサ多値出力の平均値を保持するための“紙なし時USセンサ多値出力モニタ値レジスタ(紙なしモニタ値レジスタ)”
・用紙の重なりがない時にモニタしたUSセンサ多値出力の平均値を保持するための“重なりなし時USセンサ多値出力モニタ値レジスタ(重なりなしモニタ値レジスタ)”
・用紙の重なりがない時にモニタしたUSセンサ多値出力の変動幅(最大値と最小値との差)を保持するための“重なりなし時USセンサ多値出力モニタ値変動幅レジスタ(重なりなし変動幅レジスタ)”
・用紙の重なりがある時にモニタしたUSセンサ多値出力の平均値を保持するための“重なりあり時USセンサ多値出力モニタ値レジスタ(重なりありモニタ値レジスタ)”
・用紙先端のUSセンサ110への到達状態(到達済又は未到達)を管理するための“用紙先端USセンサ到達済フラグ(先端到達済フラグ)”
・MF判定スライス値の変更可能状態(変更可又は変更不可)を管理するための“MF判定スライス値変更可能フラグ(スライス変更フラグ)”
【0031】
採取部104aは、USセンサ110から、USセンサ出力の現在値を採取する。
【0032】
採取部104aは、置換候補(注目値)として設定したUSセンサ出力が保持部106にある場合であって、採取したUSセンサ出力の現在値が、当該置換候補のUSセンサ出力の値より、当該置換候補の直前のUSセンサ出力の値に近かった(戻った)ときには、保持部106に保存されている置換候補のUSセンサ出力の値を、ノイズ成分として見做し、現在値と当該置換候補の直前のUSセンサ出力の値との平均値で置換する。採取部104aは、採取したUSセンサ出力の現在値と、当該現在値の直前の値である、保持部106に保存されているUSセンサ出力の値との差が、所定値(例えば当該直前の値の10%)以上であるときには、当該現在値を置換候補として設定する。
【0033】
紙なしモニタ部104bは、用紙の先端がUSセンサ110に到達していない場合には、採取部104aで採取した出力の現在値を、“紙なしモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する。紙なしモニタ部104bは、用紙の先端がUSセンサ110に到達した場合には、“紙なしモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を紙なしモニタ値レジスタにセットし、先端到達済フラグをセットする。
【0034】
紙なしモニタ部104bは、紙なしモニタ値レジスタにセットした平均値が所定値(例えば、理論最大値の95%)以上である場合には、USセンサ出力に異常なしと認識し、MF判定スライス値を変更可能とするためにスライス変更フラグをセットする。
【0035】
紙ありモニタ部104cは、採取部104aで採取した出力の現在値が、MF判定スライス値以下のときには、当該現在値を“重なりありモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する。紙ありモニタ部104cは、重なりなし変動幅レジスタで保持している変動幅が所定値より大きいときには、採取部104aで採取した出力の現在値を“重なりありモニタ値”として採取する。
【0036】
紙ありモニタ部104cは、重なりなしモニタ値レジスタに平均値がセット済みでないときには、採取部104aで採取した出力の現在値を“重なりなしモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する。紙ありモニタ部104cは、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存しているUSセンサ出力の変動幅(最大値と最小値との差)を、重なりなし変動幅レジスタに設定する。
【0037】
紙ありモニタ部104cは、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存しているUSセンサ出力の個数が所定個数(例えば50個)以上であるときには、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を重なりなしモニタ値レジスタにセットする。紙ありモニタ部104cは、MF判定スライス値が変更可能であるときには、重なりなしモニタ値レジスタにセットした平均値を元に、予め設定したMF判定スライス値を用紙の厚さに最適なものに設定(変更)する。
【0038】
重送判定部104dは、“重なりありモニタ値”としてのUSセンサ出力が保持部106に保存されていないときには、「MFなし」と判定し、用紙の搬送を停止させずに画像読取ユニット114に読み取りを継続させる。重送判定部104dは、“重なりありモニタ値”としてのUSセンサ出力が保持部106に保存されているときには、“重なりありモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を重なりありモニタ値レジスタにセットする。
【0039】
重送判定部104dは、重なりありモニタ値レジスタにセットした平均値とMF判定スライス値との大小を比較し、セットした平均値がMF判定スライス値より大きければ、「MFなし」と判定し、用紙の搬送を停止させずに画像読取ユニット114に読み取りを継続させ、セットした平均値がMF判定スライス値以下であれば、「MFあり」と判定し、用紙の搬送を停止させる等のMF発生処理を実行する。
【0040】
[2−2.構成の具体例]
つぎに、上述した構成の画像読取装置100の構成の具体例について、図6および図7を参照して詳細に説明する。なお、ここでは、画像読取装置がスキャナである場合の具体的構成について説明するが、画像読取装置としてはスキャナに限らずコピー機、ファクシミリ等に適用することができる。
【0041】
図6は、画像読取装置100としてのスキャナ(以下、スキャナ100と記す場合がある。)の断面の概略を示す図であり、上述した重送検知ユニット102および画像読取ユニット114の適用されるスキャナの構成の概略を示す。
【0042】
スキャナ100は、図6に示すように、用紙載置台(シュータ)31、ピックローラ32、ピックアーム33、分離パッド34、フィードローラ35、36、排出ローラ37、38を備え、また、重送検知ユニット102に含まれる後述する超音波検知器の送信側超音波センサ17および受信側超音波センサ18(上述したUSセンサ110に対応)、用紙先端検出センサ19(上述した検出センサ108に対応)を備える。図6において、2点鎖線は用紙Aの搬送路を示し、矢印Rは用紙Aの読取位置を示す。
【0043】
用紙載置台(シュータ)31上に載置された用紙Aは、ピックアーム33により適切な押圧力を付与された状態で、ピックローラ32によりピックされる。この時、用紙Aは、ピックローラ32及び分離パッド34により、下側から順に1枚づつに分離される。ピックされた用紙Aは、更に、ピックローラ32によりフィードローラ35、36へ搬送され、フィードローラ35、36により読取位置Rに搬送され、当該読取位置Rで画像読取ユニット114により読み取られ、排出ローラ37、38により排出される。用紙Aを前記搬送路に沿って搬送する過程で、分離パッド34によっても1枚に分離されなかった複数枚(通常は2枚)の即ちマルチフィードされた用紙Aが、送信側超音波センサ17、受信側超音波センサ18で検出される。このために、送信側超音波センサ17、受信側超音波センサ18は、図6に示すように、画像読取ユニット114が用紙を読み取る際の読取位置Rよりも搬送路において上流に設けられる。特に、フィードローラ35、36の下流又は上流に設けられる。また、用紙先端検出センサ19は、送信側超音波センサ17、受信側超音波センサ18の設置位置よりも、搬送路のさらに上流に設置される。
【0044】
図7は、重送検知ユニット102の具体的構成の一例を示す図である。図7において、重送検知ユニット102に対応する超音波検知器は、超音波を用いて複数の用紙Aの搬送を検知する。超音波検知器は、送信側超音波センサ17と、その駆動回路(送信側回路、以下同じ)41と、受信側超音波センサ18と、を備える。
【0045】
送信側超音波センサ17は超音波を出力する。駆動回路41は、送信側超音波センサ17に対してこれを駆動する駆動信号を供給する。駆動回路41は、送信側超音波センサ17の共振周波数近傍の周波数で発振する回路(ON/OFF制御可能)で構成される。受信側超音波センサ18は、送信側超音波センサ17と用紙搬送路を挟んで対向して設けられ、超音波を受ける。
【0046】
超音波検知器は、更に、(1段目の)増幅回路21、BPF(Band Pass Filter)22、(2段目の)増幅回路23、サンプルホールド(S&H)回路24、ADコンバータ25、CPU26(上述した制御部104を含む)、モータドライバ27、モータ28、ROM29、RAM30を備える。これらは、受信側回路を構成する。即ち、受信側超音波センサ18が送信側超音波センサ17から受信した超音波に応じた電気信号を出力し、これを増幅回路21で増幅した後にBPFでノイズを除去し、この後、更に、ノイズ除去後の信号を増幅回路23で増幅する。そして、サンプルホールド回路24が当該信号のピーク値をサンプルアンドホールド(SH)した後、当該値(アナログ信号)をADコンバータ25でデジタル値(デジタル信号)に変換する。このデジタル信号(入力信号)をCPU26に入力して解析する。CPU26(具体的には上述した重送判定部104d)は、例えばマルチフィード検出(「MFあり」)の場合、モータドライバ27に駆動信号を送信し、モータ28を駆動させ、(複数の)用紙Aの搬送を停止させる。
【0047】
超音波検知器は、送信側回路(駆動回路)41を備える。送信側回路41は、駆動IC、抵抗周波数調整発振器(OSC)、可変抵抗器から構成される。駆動ICは、送信側超音波センサ17に対してこれを駆動する駆動信号を供給する駆動回路である。これにより、送信側超音波センサ17が超音波を出力する。この超音波を受信側超音波センサ18が受信して、当該受信した超音波の強度に応じて検出信号を出力する。例えば、用紙Aが送信側超音波センサ17と受信側超音波センサ18との間に存在しない場合、受信側超音波センサ18は、あるレベル(通常レベル)の信号を検出し、用紙Aが1枚存在する場合、通常レベルより小さく初期設定された閾値よりは大きいレベル(正常レベル)の信号を検出し、用紙Aが2枚(以上)存在する場合、通常レベル及び前記閾値よりも小さいレベル(異常レベル)の信号を検出する。例えば、用紙Aの搬送に先立って、受信側超音波センサ18が通常レベルの信号(実際には、通常レベルと等しいか又はより大きい信号)を検出するように、駆動ICの制御が行なわれる。即ち、受信側超音波センサ18が受信した超音波に基づき、可変抵抗器を用いることなく、駆動信号の駆動周波数が送信側超音波センサ17の共振周波数に合うように、駆動ICを制御する。
【0048】
[3.本実施形態の処理]
ここでは、上述した構成の画像読取装置100で実行されるUSセンサMF検出処理等の一例について、図8から図11を参照して説明する。図8は、本実施形態のUSセンサMF検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
まず、制御部104は、搬送された用紙の先端がUSセンサ110から所定長さ(例えば検出センサ108とUSセンサ110との間隔の80%の長さ)手前に到達した時(ステップSA1:Yes)、保持部106内の紙なしモニタ値レジスタ、重なりなしモニタ値レジスタ、重なりなし変動幅レジスタ、重なりありモニタ値レジスタ、先端到達済フラグおよびスライス変更フラグを初期化すると共に、今回の本処理でのMF判定スライス値を従来のMF判定スライス値(例えば、厚紙を考慮した従来のMF判定スライス値)に初期設定する(ステップSA2:USセンサMF検出開始処理)。なお、制御部104は、用紙の先端が検出センサ108から所定長さ(例えば検出センサ108とUSセンサ110との間隔の20%の長さ)先に到達した時、上述の初期化および初期設定を実行してもよい。
【0050】
つぎに、採取部104aは、搬送モータのパルスに同期して、USセンサ110から、USセンサ出力の現在値(透過率)を採取する(ステップSA3)。なお、採取部104aは、ステップSA3において、後述するノイズ成分排除処理を実行してもよい。
【0051】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、以下の紙なしモニタ処理を実行する(ステップSA4)。
【0052】
ここで、紙なしモニタ処理の一例について図9を参照して説明する。図9は、本実施形態の紙なしモニタ処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
まず、紙なしモニタ部104bは、搬送された用紙の先端がUSセンサ110に到達済みであるか否かを、先端到達済フラグで保持している値で確認する。
【0054】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、用紙の先端が到達済みでないことを確認した場合(ステップSB1:No)には、用紙の先端が現時点でUSセンサ110に到達したか否かを、検出センサ108で用紙先端を検出してからのモータパルス数等で確認する。なお、ステップSA3で採取した出力の現在値で確認してもよい。
【0055】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、用紙の先端が到達していないことを確認した場合(ステップSB2:No)には、ステップSA3で採取した出力の現在値を、“紙なしモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する(ステップSB3)。
【0056】
また、紙なしモニタ部104bは、用紙の先端が到達したことを確認した場合(ステップSB2:Yes)には、“紙なしモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を紙なしモニタ値レジスタにセットする(ステップSB4)。
【0057】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、先端到達済フラグをセットする(ステップSB5)。
【0058】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、ステップSB4で紙なしモニタ値レジスタにセットした平均値が所定値(例えば、理論最大値の95%)以上であるか否かを、確認する。
【0059】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、所定値以上であることを確認した場合(ステップSB6:Yes)には、USセンサ出力に異常なしと認識し、今回の本処理でMF判定スライス値を変更可能とするためにスライス変更フラグをセットする(ステップSB7)。
【0060】
これにて、紙なしモニタ処理の説明を終了する。
【0061】
図8に戻り、紙ありモニタ部104cは、以下の紙ありモニタ処理を実行する(ステップSA5)。
【0062】
ここで、紙ありモニタ処理の一例について図10を参照して説明する。図10は、本実施形態の紙ありモニタ処理の一例を示すフローチャートである。
【0063】
まず、紙ありモニタ部104cは、搬送された用紙の先端がUSセンサ110に到達済みであるか否かを、先端到達済フラグで保持している値で確認する。
【0064】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、用紙の上端が到達済みであることを確認した場合(ステップSC1:Yes)には、ステップSA3で採取した出力の現在値が、MF判定スライス値より大きいか否かを確認する。
【0065】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、出力の現在値がMF判定スライス値より大きくないことを確認した場合(ステップSC2:No)には、ステップSA3で採取した出力の現在値を、“重なりありモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する(ステップSC3)。
【0066】
また、紙ありモニタ部104cは、出力の現在値がMF判定スライス値より大きいことを確認した場合(ステップSC2:Yes)には、重なりなし変動幅レジスタで保持している値が所定値(例えば、紙あり時(用紙の先端がUSセンサ110に到達以降)に採取したUSセンサ出力の最大値の15%)以下であるか否かを確認する。
【0067】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、所定値以下でないことを確認した場合(ステップSC4:No)には、ステップSA3で採取した出力の現在値を、“重なりありモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する(ステップSC3)。
【0068】
また、紙ありモニタ部104cは、所定値以下であることを確認した場合(ステップSC4:Yes)には、重なりなしモニタ値レジスタに平均値がセット済みであるか否かを確認する。
【0069】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、セット済みでないことを確認した場合(ステップSC5:No)には、ステップSA3で採取した出力の現在値を、“重なりなしモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する(ステップSC6)。
【0070】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存しているUSセンサ出力の変動幅(最大値と最小値との差)を、重なりなし変動幅レジスタに設定する(ステップSC7)。
【0071】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存しているUSセンサ出力の個数が所定個数(例えば50個)以上であるか否かを確認する。
【0072】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、所定個数以上であると確認した場合(ステップSC8:Yes)には、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を重なりなしモニタ値レジスタにセットする(ステップSC9)。
【0073】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、MF判定スライス値が変更可能であるか否かを、スライス変更フラグで保持している値で確認する。
【0074】
そして、紙ありモニタ部104cは、変更可能であることを確認した場合(ステップSC10:Yes)には、ステップSC9で重なりなしモニタ値レジスタにセットした平均値に基づいて、MF判定スライス値を用紙の厚さに最適なものに変更(更新)する(ステップSC11)。ここで、重なりなしモニタ値レジスタの平均値と紙なしモニタ値レジスタの平均値との差分は、用紙の厚さに相当するので、MFスライス値“Vslice”を、例えば、紙なし時の送信側センサを発振しない時の予め求めておいた出力値“Vbase”(最小の出力値(オフセット出力値))と重なりなしモニタ値レジスタの平均値“Va”(用紙搬送時の最大出力値)との差の中間の値“(Va−Vbase)/2”に、発振しない時の出力値“Vbase”を加えた値“Vbase+(Va−Vbase)/2”に変更してもよい。また、MF判定スライス値を、例えば、重なりなしモニタ値レジスタの平均値より小さく(低く)且つ重なりなしモニタ値レジスタの平均値と当該差分との差より大きい(高い)値に変更してもよい。また、様々な厚さの用紙のUSセンサ出力とその用紙に最適なMF判定スライス値との関係式を予め設定しておき、MF判定スライス値を、重なりなしモニタ値レジスタの平均値を当該関係式に代入して得られた値に変更してもよい。
【0075】
これにて、紙ありモニタ処理の説明を終了する。
【0076】
図8に戻り、制御部104は、搬送された用紙の後端がUSセンサ110に到達していない場合(ステップSA6:No)には、各処理部にステップSA3〜ステップSA5までの処理を実行させる。
【0077】
つぎに、重送判定部104dは、搬送された用紙の後端がUSセンサ110に到達した場合(ステップSA6:Yes)には、“重なりありモニタ値”としてのUSセンサ出力が保持部106に保存されているか否かを確認する(ステップSA7:USセンサMF検出終了処理)。
【0078】
つぎに、重送判定部104dは、保存されていないことを確認した場合(ステップSA8:No)には、「MFなし」と判定し、用紙の搬送を停止させずに画像読取ユニット114に読み取りを継続させる(ステップSA9)。
【0079】
また、重送判定部104dは、保存されていることを確認した場合(ステップSA8:Yes)には、“重なりありモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を重なりありモニタ値レジスタにセットする(ステップSA10)。
【0080】
つぎに、重送判定部104dは、ステップSA10で重なりありモニタ値レジスタにセットした平均値とMF判定スライス値(上述したステップSC11で変更された場合は、変更後のMF判定スライス値、変更されなかった場合は、初期設定した従来のMF判定スライス値)との大小を比較する。
【0081】
つぎに、重送判定部104dは、セットした平均値がMF判定スライス値より大きければ(ステップSA11:「MFなし」)、「MFなし」と判定し、用紙の搬送を停止させずに画像読取ユニット114に読み取りを継続させる(ステップSA9)。
【0082】
また、重送判定部104dは、セットした平均値がMF判定スライス値以下であれば(ステップSA11:「MFあり」)、「MFあり」と判定し、用紙の搬送を停止させる等のMF発生処理を実行する(ステップSA12)。
【0083】
以上、USセンサMF検出処理の説明を終了する。
【0084】
ここで、USセンサ出力のモニタ(採取)時(具体的には、上述したステップSA3実行時)に、採取したUSセンサ出力の現在値と当該現在値を採取した直前に採取したUSセンサ出力の値との差が所定値(例えば当該直前の値の10%)以上で、当該現在値を採取した直後に採取したUSセンサ出力の値が当該現在値よりも当該直前の値側(付近)に戻った時には、当該現在値を、当該直前の値と当該直後の値の平均値に置き換えてもよい(ノイズ成分排除処理)。
【0085】
ここで、ノイズ成分排除処理の一例について図11を参照して説明する。図11は、本実施形態のノイズ成分排除処理の一例を示すフローチャートである。
【0086】
まず、採取部104aは、保持部106に、置換候補(注目値)として設定したUSセンサ出力があることを確認した場合(ステップSD1:Yes)には、採取したUSセンサ出力の現在値が、当該置換候補のUSセンサ出力の値より、当該置換候補の直前のUSセンサ出力の値に近い(戻った)か否かを確認する(ステップSD2)。
【0087】
つぎに、採取部104aは、近いことを確認した場合(ステップSD3:Yes)には、保持部106に保存されている置換候補のUSセンサ出力の値を、ノイズ成分として見做し、現在値と当該置換候補の直前のUSセンサ出力の値との平均値で置換する(ステップSD4)。
【0088】
つぎに、採取部104aは、置換候補の設定をクリアする(ステップSD5)。
【0089】
つぎに、採取部104aは、ステップSA3で採取したUSセンサ出力の現在値と、当該現在値の直前の値である、保持部106に保存されているUSセンサ出力の値(ステップSD4で置換された場合は、置換後の値)との差が、所定値(例えば当該直前の値の10%)以上であるか否かを確認する(ステップSD6)。
【0090】
つぎに、採取部104aは、所定値以上であることを確認した場合(ステップSD7:Yes)には、現在値を置換候補として設定する(ステップSD8)。
【0091】
これにて、ノイズ成分排除処理の説明を終了する。
【0092】
[4.本実施形態のまとめ、及び他の実施形態]
以上、本実施形態によれば、“紙なし時”、“重なりなし時”、“重なりあり時”のそれぞれのUSセンサ出力の値(透過率)をモニタし、モニタした“紙なし時”と“重なりなし時”の値に基づいて用紙の厚さに最適なMF判定スライス値を設定し、設定したMF判定スライス値と“重なりあり時”の値でMF判定を行う。具体的には、USセンサ110から採取した出力を、“紙なし時”、“重なりなし時”、“重なりあり時”のいずれかに分別し、“紙なし時”に分別された出力と“重なりなし時”に分別された出力に基づいて、予め設定したMF判定スライス値を用紙の厚さに最適なものに変更(更新)し、“重なりあり時”に分別された出力がある場合には、当該出力と変更後のMF判定スライス値(最適化済みのMF判定スライス値)とを比較してMF判定を行う。これにより、あらゆる厚さの用紙に対してMF検出精度を高めることができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、採取したUSセンサの出力が当該採取の前後の出力に比べて大きく変化している場合、当該採取した出力を当該前後の出力の平均値で置換する。具体的には、今回採取した出力の現在値と前回採取した出力との差が所定値以上である場合は、当該今回の出力の現在値を置換候補として設定し、当該前回の出力が置換候補として設定されていた場合であって当該今回の出力の現在値が当該前回の出力よりも、前々回採取した出力に近づいていたときには、置換候補の当該前回の出力を当該今回の出力の現在値と当該前々回の出力との平均値で置換する。これにより、USセンサ出力の一時的な変動を無視して(特に、MF判定スライス前後のUSセンサ出力の不安定要素(ノイズ成分)を取り除いて)、重なり部分を正確且つ安定に検出することができる。
【0094】
さらに、本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。例えば、本実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。また、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて又は機能負荷に応じて任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して、構成することができる。また、本明細書や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、画面例などについては、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0095】
また、画像読取装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、画像読取装置100が備える処理機能、特に制御部104にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。なお、プログラムは、後述する記録媒体に記録されており、必要に応じて画像読取装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDなどには、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0096】
本発明に係る画像読取装置は、本発明に係る重送判定方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現可能である。また、本発明に係る重送判定プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することができる。ここで、「記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、MO、DVD等の任意の「可搬用の物理媒体」、あるいは、LAN、WAN、インターネットに代表されるネットワークを介してプログラムを送信する場合の通信回線や搬送波のように、短期にプログラムを保持する「通信媒体」を含むものとする。また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明に係る画像読取装置、重送判定方法及び重送判定プログラムは、産業上の多くの分野、特に、USセンサを用いた重送検知機能を持つスキャナを扱う情報処理分野や画像処理分野において実施することができ、極めて有用である。
【符号の説明】
【0098】
100 画像読取装置
102 重送検知ユニット
104 制御部
104a 採取部
104b 紙なし時US出力モニタ部
104c 紙あり時US出力モニタ部
104d 重送判定部
106 保持部
114 画像読取ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波(US)センサを利用した重送(マルチフィード(MF))検知機能を備えた画像読取装置(例えばスキャナ、コピー機、ファクシミリなど)、重送判定方法および重送判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の技術では、USセンサを利用したMF検出機能におけるMF判定の閾値(MF判定スライス)として、USセンサ出力が小さくなる厚紙を考慮した固定値を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−40030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術によれば、MF判定スライスとして、USセンサ出力が小さくなる厚紙を考慮した固定値を設定しているので、薄紙では、MF判定スライスが低く、故にMF検出精度が十分ではなかった、という問題点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、MF検出精度を高めることができる画像読取装置、重送判定方法および重送判定プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像読取装置は、超音波センサと制御部とを備え、前記制御部は、紙なし時、重なりなし時、重なりあり時のそれぞれの前記超音波センサの多値出力値をモニタし、モニタした紙なし時と重なりなし時の値に基づいて用紙の厚さに最適な重送判定の閾値を設定し、設定した閾値と重なりあり時の値で重送判定を行うこと、を特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る画像読取装置は、前記に記載の画像読取装置において、前記制御部は、採取した前記超音波センサの多値出力値が当該採取の前後の値に比べて大きく変化している場合、当該採取した値を当該前後の値の平均値で置換すること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る画像読取装置は、超音波センサと制御部とを備え、前記制御部は、前記超音波センサの出力を採取する採取手段と、前記採取手段で採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別手段と、前記分別手段で前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更手段と、前記分別手段で前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更手段で変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定手段と、を備えたこと、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る画像読取装置は、前記に記載の画像読取装置において、前記採取手段は、今回採取した出力と前回採取した出力との差が所定値以上である場合は、当該今回の出力を置換候補として設定し、当該前回の出力が置換候補として設定されていた場合であって、当該今回の出力が当該前回の出力よりも、前々回採取した出力に近づいていたときには、置換候補の当該前回の出力を当該今回の出力と当該前々回の出力との平均値で置換すること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明は重送判定方法に関するものであり、本発明に係る重送判定方法は、超音波センサと制御部とを備えた画像読取装置の前記制御部で実行される、前記超音波センサの出力を採取する採取ステップと、前記採取ステップで採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別ステップと、前記分別ステップで前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更ステップと、前記分別ステップで前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更ステップで変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0011】
また、本発明は重送判定プログラムに関するものであり、本発明に係る重送判定プログラムは、超音波センサと制御部とを備えた画像読取装置の前記制御部に実行させるための、前記超音波センサの出力を採取する採取ステップと、前記採取ステップで採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別ステップと、前記分別ステップで前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更ステップと、前記分別ステップで前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更ステップで変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0012】
また、本発明は記録媒体に関するものであり、本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、前記に記載の本発明に係る重送判定プログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紙なし時、重なりなし時、重なりあり時のそれぞれのUSセンサの多値出力値(透過率)をモニタし、モニタした紙なし時と重なりなし時の値に基づいて用紙の厚さに最適なMF判定スライス値を設定し、設定したMF判定スライス値と重なりあり時の値でMF判定を行う。具体的には、(1)USセンサから採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別し、(2)用紙がない時のものに分別された出力と用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定したMF判定スライス値を用紙の厚さに最適なものに変更し、(3)用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と変更した後の用紙の厚さに最適なMF判定スライス値とを比較してMF判定を行う。これにより、MF検出精度を高めることができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明によれば、採取したUSセンサの多値出力値が当該採取の前後の値に比べて大きく変化している場合、当該採取した値を当該前後の値の平均値で置換する。具体的には、(1)今回採取した出力と前回採取した出力との差が所定値以上である場合は、当該今回の出力を置換候補として設定し、(2)当該前回の出力が置換候補として設定されていた場合であって、当該今回の出力が当該前回の出力よりも、前々回採取した出力に近づいていたときには、置換候補の当該前回の出力を当該今回の出力と当該前々回の出力との平均値で置換する。ここで、特に薄紙ではUSセンサ出力の一時的な変動が見られるが、従来ではUSセンサ多値出力値をそのまま利用していたので、重なり部分を正確に検出することができない場合があった。そこで、本発明では、採取したUSセンサの多値出力値が当該採取の前後の値に比べて大きく変化している場合、当該採取した値を当該前後の値の平均値で置換する。これにより、USセンサ出力の一時的な変動を無視して(特に、MF判定スライス前後のUSセンサ出力の不安定要素(ノイズ成分)を取り除いて)、重なり部分を正確且つ安定に検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施形態の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施形態の概要を示す図である。
【図3】図3は、重なり無しの場合におけるUSセンサ出力値とMFスライス値との関係の一例を示す図である。
【図4】図4は、重なり有りの場合におけるUSセンサ出力値とMFスライス値との関係の一例を示す図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る画像読取装置の構成の一例を示す図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る画像読取装置の具体例であるスキャナの構成を示す図である。
【図7】図7は、図6に示すスキャナに含まれる重送検知ユニットの構成の一例を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態のUSセンサMF検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本実施形態の紙なしモニタ処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本実施形態の紙ありモニタ処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本実施形態のノイズ成分排除処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る画像読取装置、重送判定方法及び重送判定プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
[1.本実施形態の概要]
ここでは、本実施形態の概要について、図1から図4を参照して説明する。図1および図2は、本実施形態の概要を示す図である。図3は、重なり無しの場合におけるUSセンサ出力値とMFスライス値との関係の一例を示す図である。図4は、重なり有りの場合におけるUSセンサ出力値とMFスライス値との関係の一例を示す図である。
【0018】
通常、超音波(US)センサを用いた重送(マルチフィード(MF))検知機構を備えた画像読取装置(例えばスキャナ、コピー機、ファクシミリなど)では、USセンサの出力(受信値(A/Dレベル))と予め設定した閾値(MF判定スライス値)とを比較して、MFの有無を判定する。
【0019】
ところが、予め設定したMF判定スライス値は、図1の(A)に示すように、USセンサの出力が小さくなる厚紙を考慮した固定値である。そのため、薄紙では当該MF判定スライス値が低く、MF検出精度が十分ではなかった。
【0020】
そこで、本実施形態では、図1の(B)に示すように、“紙なし時”、“重なりなし時”および“重なりあり時”のそれぞれのUSセンサの多値出力(透過率)をモニタ(採取)し、モニタした“紙なし時”と“重なりなし時”の値に基づいて、搬送された用紙の厚さに最適なMF判定スライス値を設定し、設定したMF判定スライス値と“重なりあり時”の値でMF判定を行う。これにより、あらゆる厚さの用紙に対してMF検出精度を高めることができる。
【0021】
また、従来、特に薄紙ではUSセンサ出力の一時的な変動が見られるが、USセンサ多値出力値をそのまま利用していたので、重なり部分を正確に求められない場合があった。
【0022】
そこで、本実施形態では、図2に示すように、採取したUSセンサの多値出力値が当該採取の前後の値に比べて大きく変化している場合、当該採取した値を当該前後の値の平均値で置換する。具体的には、採取した現在の出力値と当該採取の直前の出力値との差が所定値以上であり、そして当該採取の直後の出力値が当該現在の出力値より当該直前の出力値に近づいた(戻った)場合、当該現在の出力値を当該直前の出力値と当該直後の出力値の平均値で置換する。これにより、USセンサ出力の一時的な変動を無視して(特に、MF判定スライス前後のUSセンサ出力の不安定要素(ノイズ成分)を取り除いて)、重なり部分を正確且つ安定に検出することができる。
【0023】
以上、本実施形態によれば、図3の(A)から(C)に示す重なりなしのケースでは、MF判定スライス値が変更されることなく厚紙を考慮した従来の値でMF判定が行われるので、厚紙(例えばタイプ紙180K)は勿論、配達伝票や薄紙(例えばタイプ紙22K)も、“MFなし”と判定される。
【0024】
そして、本実施形態によれば、図4の(A)に示す重なりありのケースでは、MF判定スライス値は従来のままで変更されないが、MF判定スライス値付近の不安定要素を取り除いてMF判定が行われるので、これまで“MFあり”と判定されていた本ケースで、期待通り“MFなし”と判定される。また、図4の(B)に示す重なりありのケースでは、MF判定スライス値が配達伝票の厚さを考慮して最適化され、一時的な変動による貼り付け識別の影響も排除してMF判定が行われるので、期待通り“MFあり”と判定される。また、本実施形態によれば、図4の(C)に示す重なりありのケースでは、MF判定スライス値が薄紙(例えばタイプ紙22K)の厚さを考慮して最適化されてMF判定が行われるので、期待通り“MFあり”と判定される。
【0025】
[2.本実施形態の構成]
ここでは、本実施形態に係る画像読取装置100の構成について、図5から図7を参照して詳細に説明する。
【0026】
[2−1.構成の概要]
まず、本実施形態に係る画像読取装置100の構成の概要について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る画像読取装置の構成の一例を示す図である。
【0027】
画像読取装置100は、機能概念的に、重送検知ユニット(機構)102と画像読取ユニット(機構)114とを備えており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0028】
重送検知ユニット102は、搬送された用紙のMFを検知するための機構であり、図示の如く機能概念的に、画像処理装置100(特に重送検知ユニット102)を制御するCPU等の制御部104と、搬送された用紙の先端を検出する検出センサ108と、用紙の重なりを超音波で検知するUSセンサ110と、を少なくとも含む。検出センサ108は、用紙の搬送路に沿って設置され、USセンサ110の設置位置よりも上流に設置される。なお、重送検知ユニット102の構成の具体例については、後述する[2−2.構成の具体例]にて詳細に説明する。画像読取ユニット114は、搬送された用紙を読み取って、当該用紙の画像を生成するための機構である。
【0029】
制御部104は、OS等の制御プログラムと各種の処理手順等を規定したプログラムと所要データとを格納するための内部メモリを備え、これらプログラムに基づいて種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部104は、機能概念的に、本発明の採取手段に相当する採取部104aと、本発明の分別手段に含まれる紙なし時US出力モニタ(紙なしモニタ)部104bと、本発明の分別手段に含まれる紙あり時US出力モニタ(紙ありモニタ)部104cと、本発明の判定手段に相当する重送判定部104dと、保持部106と、を備える。
【0030】
保持部106は、演算や実行状態の保持などに用いるためのものであり、以下のレジスタおよびフラグを含む。保持部106は、後述する採取部104aで採取したUSセンサ多値出力値を保存する。
・用紙がない時にモニタ(採取)したUSセンサ多値出力の平均値を保持するための“紙なし時USセンサ多値出力モニタ値レジスタ(紙なしモニタ値レジスタ)”
・用紙の重なりがない時にモニタしたUSセンサ多値出力の平均値を保持するための“重なりなし時USセンサ多値出力モニタ値レジスタ(重なりなしモニタ値レジスタ)”
・用紙の重なりがない時にモニタしたUSセンサ多値出力の変動幅(最大値と最小値との差)を保持するための“重なりなし時USセンサ多値出力モニタ値変動幅レジスタ(重なりなし変動幅レジスタ)”
・用紙の重なりがある時にモニタしたUSセンサ多値出力の平均値を保持するための“重なりあり時USセンサ多値出力モニタ値レジスタ(重なりありモニタ値レジスタ)”
・用紙先端のUSセンサ110への到達状態(到達済又は未到達)を管理するための“用紙先端USセンサ到達済フラグ(先端到達済フラグ)”
・MF判定スライス値の変更可能状態(変更可又は変更不可)を管理するための“MF判定スライス値変更可能フラグ(スライス変更フラグ)”
【0031】
採取部104aは、USセンサ110から、USセンサ出力の現在値を採取する。
【0032】
採取部104aは、置換候補(注目値)として設定したUSセンサ出力が保持部106にある場合であって、採取したUSセンサ出力の現在値が、当該置換候補のUSセンサ出力の値より、当該置換候補の直前のUSセンサ出力の値に近かった(戻った)ときには、保持部106に保存されている置換候補のUSセンサ出力の値を、ノイズ成分として見做し、現在値と当該置換候補の直前のUSセンサ出力の値との平均値で置換する。採取部104aは、採取したUSセンサ出力の現在値と、当該現在値の直前の値である、保持部106に保存されているUSセンサ出力の値との差が、所定値(例えば当該直前の値の10%)以上であるときには、当該現在値を置換候補として設定する。
【0033】
紙なしモニタ部104bは、用紙の先端がUSセンサ110に到達していない場合には、採取部104aで採取した出力の現在値を、“紙なしモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する。紙なしモニタ部104bは、用紙の先端がUSセンサ110に到達した場合には、“紙なしモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を紙なしモニタ値レジスタにセットし、先端到達済フラグをセットする。
【0034】
紙なしモニタ部104bは、紙なしモニタ値レジスタにセットした平均値が所定値(例えば、理論最大値の95%)以上である場合には、USセンサ出力に異常なしと認識し、MF判定スライス値を変更可能とするためにスライス変更フラグをセットする。
【0035】
紙ありモニタ部104cは、採取部104aで採取した出力の現在値が、MF判定スライス値以下のときには、当該現在値を“重なりありモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する。紙ありモニタ部104cは、重なりなし変動幅レジスタで保持している変動幅が所定値より大きいときには、採取部104aで採取した出力の現在値を“重なりありモニタ値”として採取する。
【0036】
紙ありモニタ部104cは、重なりなしモニタ値レジスタに平均値がセット済みでないときには、採取部104aで採取した出力の現在値を“重なりなしモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する。紙ありモニタ部104cは、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存しているUSセンサ出力の変動幅(最大値と最小値との差)を、重なりなし変動幅レジスタに設定する。
【0037】
紙ありモニタ部104cは、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存しているUSセンサ出力の個数が所定個数(例えば50個)以上であるときには、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を重なりなしモニタ値レジスタにセットする。紙ありモニタ部104cは、MF判定スライス値が変更可能であるときには、重なりなしモニタ値レジスタにセットした平均値を元に、予め設定したMF判定スライス値を用紙の厚さに最適なものに設定(変更)する。
【0038】
重送判定部104dは、“重なりありモニタ値”としてのUSセンサ出力が保持部106に保存されていないときには、「MFなし」と判定し、用紙の搬送を停止させずに画像読取ユニット114に読み取りを継続させる。重送判定部104dは、“重なりありモニタ値”としてのUSセンサ出力が保持部106に保存されているときには、“重なりありモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を重なりありモニタ値レジスタにセットする。
【0039】
重送判定部104dは、重なりありモニタ値レジスタにセットした平均値とMF判定スライス値との大小を比較し、セットした平均値がMF判定スライス値より大きければ、「MFなし」と判定し、用紙の搬送を停止させずに画像読取ユニット114に読み取りを継続させ、セットした平均値がMF判定スライス値以下であれば、「MFあり」と判定し、用紙の搬送を停止させる等のMF発生処理を実行する。
【0040】
[2−2.構成の具体例]
つぎに、上述した構成の画像読取装置100の構成の具体例について、図6および図7を参照して詳細に説明する。なお、ここでは、画像読取装置がスキャナである場合の具体的構成について説明するが、画像読取装置としてはスキャナに限らずコピー機、ファクシミリ等に適用することができる。
【0041】
図6は、画像読取装置100としてのスキャナ(以下、スキャナ100と記す場合がある。)の断面の概略を示す図であり、上述した重送検知ユニット102および画像読取ユニット114の適用されるスキャナの構成の概略を示す。
【0042】
スキャナ100は、図6に示すように、用紙載置台(シュータ)31、ピックローラ32、ピックアーム33、分離パッド34、フィードローラ35、36、排出ローラ37、38を備え、また、重送検知ユニット102に含まれる後述する超音波検知器の送信側超音波センサ17および受信側超音波センサ18(上述したUSセンサ110に対応)、用紙先端検出センサ19(上述した検出センサ108に対応)を備える。図6において、2点鎖線は用紙Aの搬送路を示し、矢印Rは用紙Aの読取位置を示す。
【0043】
用紙載置台(シュータ)31上に載置された用紙Aは、ピックアーム33により適切な押圧力を付与された状態で、ピックローラ32によりピックされる。この時、用紙Aは、ピックローラ32及び分離パッド34により、下側から順に1枚づつに分離される。ピックされた用紙Aは、更に、ピックローラ32によりフィードローラ35、36へ搬送され、フィードローラ35、36により読取位置Rに搬送され、当該読取位置Rで画像読取ユニット114により読み取られ、排出ローラ37、38により排出される。用紙Aを前記搬送路に沿って搬送する過程で、分離パッド34によっても1枚に分離されなかった複数枚(通常は2枚)の即ちマルチフィードされた用紙Aが、送信側超音波センサ17、受信側超音波センサ18で検出される。このために、送信側超音波センサ17、受信側超音波センサ18は、図6に示すように、画像読取ユニット114が用紙を読み取る際の読取位置Rよりも搬送路において上流に設けられる。特に、フィードローラ35、36の下流又は上流に設けられる。また、用紙先端検出センサ19は、送信側超音波センサ17、受信側超音波センサ18の設置位置よりも、搬送路のさらに上流に設置される。
【0044】
図7は、重送検知ユニット102の具体的構成の一例を示す図である。図7において、重送検知ユニット102に対応する超音波検知器は、超音波を用いて複数の用紙Aの搬送を検知する。超音波検知器は、送信側超音波センサ17と、その駆動回路(送信側回路、以下同じ)41と、受信側超音波センサ18と、を備える。
【0045】
送信側超音波センサ17は超音波を出力する。駆動回路41は、送信側超音波センサ17に対してこれを駆動する駆動信号を供給する。駆動回路41は、送信側超音波センサ17の共振周波数近傍の周波数で発振する回路(ON/OFF制御可能)で構成される。受信側超音波センサ18は、送信側超音波センサ17と用紙搬送路を挟んで対向して設けられ、超音波を受ける。
【0046】
超音波検知器は、更に、(1段目の)増幅回路21、BPF(Band Pass Filter)22、(2段目の)増幅回路23、サンプルホールド(S&H)回路24、ADコンバータ25、CPU26(上述した制御部104を含む)、モータドライバ27、モータ28、ROM29、RAM30を備える。これらは、受信側回路を構成する。即ち、受信側超音波センサ18が送信側超音波センサ17から受信した超音波に応じた電気信号を出力し、これを増幅回路21で増幅した後にBPFでノイズを除去し、この後、更に、ノイズ除去後の信号を増幅回路23で増幅する。そして、サンプルホールド回路24が当該信号のピーク値をサンプルアンドホールド(SH)した後、当該値(アナログ信号)をADコンバータ25でデジタル値(デジタル信号)に変換する。このデジタル信号(入力信号)をCPU26に入力して解析する。CPU26(具体的には上述した重送判定部104d)は、例えばマルチフィード検出(「MFあり」)の場合、モータドライバ27に駆動信号を送信し、モータ28を駆動させ、(複数の)用紙Aの搬送を停止させる。
【0047】
超音波検知器は、送信側回路(駆動回路)41を備える。送信側回路41は、駆動IC、抵抗周波数調整発振器(OSC)、可変抵抗器から構成される。駆動ICは、送信側超音波センサ17に対してこれを駆動する駆動信号を供給する駆動回路である。これにより、送信側超音波センサ17が超音波を出力する。この超音波を受信側超音波センサ18が受信して、当該受信した超音波の強度に応じて検出信号を出力する。例えば、用紙Aが送信側超音波センサ17と受信側超音波センサ18との間に存在しない場合、受信側超音波センサ18は、あるレベル(通常レベル)の信号を検出し、用紙Aが1枚存在する場合、通常レベルより小さく初期設定された閾値よりは大きいレベル(正常レベル)の信号を検出し、用紙Aが2枚(以上)存在する場合、通常レベル及び前記閾値よりも小さいレベル(異常レベル)の信号を検出する。例えば、用紙Aの搬送に先立って、受信側超音波センサ18が通常レベルの信号(実際には、通常レベルと等しいか又はより大きい信号)を検出するように、駆動ICの制御が行なわれる。即ち、受信側超音波センサ18が受信した超音波に基づき、可変抵抗器を用いることなく、駆動信号の駆動周波数が送信側超音波センサ17の共振周波数に合うように、駆動ICを制御する。
【0048】
[3.本実施形態の処理]
ここでは、上述した構成の画像読取装置100で実行されるUSセンサMF検出処理等の一例について、図8から図11を参照して説明する。図8は、本実施形態のUSセンサMF検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
まず、制御部104は、搬送された用紙の先端がUSセンサ110から所定長さ(例えば検出センサ108とUSセンサ110との間隔の80%の長さ)手前に到達した時(ステップSA1:Yes)、保持部106内の紙なしモニタ値レジスタ、重なりなしモニタ値レジスタ、重なりなし変動幅レジスタ、重なりありモニタ値レジスタ、先端到達済フラグおよびスライス変更フラグを初期化すると共に、今回の本処理でのMF判定スライス値を従来のMF判定スライス値(例えば、厚紙を考慮した従来のMF判定スライス値)に初期設定する(ステップSA2:USセンサMF検出開始処理)。なお、制御部104は、用紙の先端が検出センサ108から所定長さ(例えば検出センサ108とUSセンサ110との間隔の20%の長さ)先に到達した時、上述の初期化および初期設定を実行してもよい。
【0050】
つぎに、採取部104aは、搬送モータのパルスに同期して、USセンサ110から、USセンサ出力の現在値(透過率)を採取する(ステップSA3)。なお、採取部104aは、ステップSA3において、後述するノイズ成分排除処理を実行してもよい。
【0051】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、以下の紙なしモニタ処理を実行する(ステップSA4)。
【0052】
ここで、紙なしモニタ処理の一例について図9を参照して説明する。図9は、本実施形態の紙なしモニタ処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
まず、紙なしモニタ部104bは、搬送された用紙の先端がUSセンサ110に到達済みであるか否かを、先端到達済フラグで保持している値で確認する。
【0054】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、用紙の先端が到達済みでないことを確認した場合(ステップSB1:No)には、用紙の先端が現時点でUSセンサ110に到達したか否かを、検出センサ108で用紙先端を検出してからのモータパルス数等で確認する。なお、ステップSA3で採取した出力の現在値で確認してもよい。
【0055】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、用紙の先端が到達していないことを確認した場合(ステップSB2:No)には、ステップSA3で採取した出力の現在値を、“紙なしモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する(ステップSB3)。
【0056】
また、紙なしモニタ部104bは、用紙の先端が到達したことを確認した場合(ステップSB2:Yes)には、“紙なしモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を紙なしモニタ値レジスタにセットする(ステップSB4)。
【0057】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、先端到達済フラグをセットする(ステップSB5)。
【0058】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、ステップSB4で紙なしモニタ値レジスタにセットした平均値が所定値(例えば、理論最大値の95%)以上であるか否かを、確認する。
【0059】
つぎに、紙なしモニタ部104bは、所定値以上であることを確認した場合(ステップSB6:Yes)には、USセンサ出力に異常なしと認識し、今回の本処理でMF判定スライス値を変更可能とするためにスライス変更フラグをセットする(ステップSB7)。
【0060】
これにて、紙なしモニタ処理の説明を終了する。
【0061】
図8に戻り、紙ありモニタ部104cは、以下の紙ありモニタ処理を実行する(ステップSA5)。
【0062】
ここで、紙ありモニタ処理の一例について図10を参照して説明する。図10は、本実施形態の紙ありモニタ処理の一例を示すフローチャートである。
【0063】
まず、紙ありモニタ部104cは、搬送された用紙の先端がUSセンサ110に到達済みであるか否かを、先端到達済フラグで保持している値で確認する。
【0064】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、用紙の上端が到達済みであることを確認した場合(ステップSC1:Yes)には、ステップSA3で採取した出力の現在値が、MF判定スライス値より大きいか否かを確認する。
【0065】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、出力の現在値がMF判定スライス値より大きくないことを確認した場合(ステップSC2:No)には、ステップSA3で採取した出力の現在値を、“重なりありモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する(ステップSC3)。
【0066】
また、紙ありモニタ部104cは、出力の現在値がMF判定スライス値より大きいことを確認した場合(ステップSC2:Yes)には、重なりなし変動幅レジスタで保持している値が所定値(例えば、紙あり時(用紙の先端がUSセンサ110に到達以降)に採取したUSセンサ出力の最大値の15%)以下であるか否かを確認する。
【0067】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、所定値以下でないことを確認した場合(ステップSC4:No)には、ステップSA3で採取した出力の現在値を、“重なりありモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する(ステップSC3)。
【0068】
また、紙ありモニタ部104cは、所定値以下であることを確認した場合(ステップSC4:Yes)には、重なりなしモニタ値レジスタに平均値がセット済みであるか否かを確認する。
【0069】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、セット済みでないことを確認した場合(ステップSC5:No)には、ステップSA3で採取した出力の現在値を、“重なりなしモニタ値”として採取(具体的には保持部106に時系列で保存)する(ステップSC6)。
【0070】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存しているUSセンサ出力の変動幅(最大値と最小値との差)を、重なりなし変動幅レジスタに設定する(ステップSC7)。
【0071】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存しているUSセンサ出力の個数が所定個数(例えば50個)以上であるか否かを確認する。
【0072】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、所定個数以上であると確認した場合(ステップSC8:Yes)には、“重なりなしモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を重なりなしモニタ値レジスタにセットする(ステップSC9)。
【0073】
つぎに、紙ありモニタ部104cは、MF判定スライス値が変更可能であるか否かを、スライス変更フラグで保持している値で確認する。
【0074】
そして、紙ありモニタ部104cは、変更可能であることを確認した場合(ステップSC10:Yes)には、ステップSC9で重なりなしモニタ値レジスタにセットした平均値に基づいて、MF判定スライス値を用紙の厚さに最適なものに変更(更新)する(ステップSC11)。ここで、重なりなしモニタ値レジスタの平均値と紙なしモニタ値レジスタの平均値との差分は、用紙の厚さに相当するので、MFスライス値“Vslice”を、例えば、紙なし時の送信側センサを発振しない時の予め求めておいた出力値“Vbase”(最小の出力値(オフセット出力値))と重なりなしモニタ値レジスタの平均値“Va”(用紙搬送時の最大出力値)との差の中間の値“(Va−Vbase)/2”に、発振しない時の出力値“Vbase”を加えた値“Vbase+(Va−Vbase)/2”に変更してもよい。また、MF判定スライス値を、例えば、重なりなしモニタ値レジスタの平均値より小さく(低く)且つ重なりなしモニタ値レジスタの平均値と当該差分との差より大きい(高い)値に変更してもよい。また、様々な厚さの用紙のUSセンサ出力とその用紙に最適なMF判定スライス値との関係式を予め設定しておき、MF判定スライス値を、重なりなしモニタ値レジスタの平均値を当該関係式に代入して得られた値に変更してもよい。
【0075】
これにて、紙ありモニタ処理の説明を終了する。
【0076】
図8に戻り、制御部104は、搬送された用紙の後端がUSセンサ110に到達していない場合(ステップSA6:No)には、各処理部にステップSA3〜ステップSA5までの処理を実行させる。
【0077】
つぎに、重送判定部104dは、搬送された用紙の後端がUSセンサ110に到達した場合(ステップSA6:Yes)には、“重なりありモニタ値”としてのUSセンサ出力が保持部106に保存されているか否かを確認する(ステップSA7:USセンサMF検出終了処理)。
【0078】
つぎに、重送判定部104dは、保存されていないことを確認した場合(ステップSA8:No)には、「MFなし」と判定し、用紙の搬送を停止させずに画像読取ユニット114に読み取りを継続させる(ステップSA9)。
【0079】
また、重送判定部104dは、保存されていることを確認した場合(ステップSA8:Yes)には、“重なりありモニタ値”として保持部106に保存されているUSセンサ出力の平均値を算出し、算出した平均値を重なりありモニタ値レジスタにセットする(ステップSA10)。
【0080】
つぎに、重送判定部104dは、ステップSA10で重なりありモニタ値レジスタにセットした平均値とMF判定スライス値(上述したステップSC11で変更された場合は、変更後のMF判定スライス値、変更されなかった場合は、初期設定した従来のMF判定スライス値)との大小を比較する。
【0081】
つぎに、重送判定部104dは、セットした平均値がMF判定スライス値より大きければ(ステップSA11:「MFなし」)、「MFなし」と判定し、用紙の搬送を停止させずに画像読取ユニット114に読み取りを継続させる(ステップSA9)。
【0082】
また、重送判定部104dは、セットした平均値がMF判定スライス値以下であれば(ステップSA11:「MFあり」)、「MFあり」と判定し、用紙の搬送を停止させる等のMF発生処理を実行する(ステップSA12)。
【0083】
以上、USセンサMF検出処理の説明を終了する。
【0084】
ここで、USセンサ出力のモニタ(採取)時(具体的には、上述したステップSA3実行時)に、採取したUSセンサ出力の現在値と当該現在値を採取した直前に採取したUSセンサ出力の値との差が所定値(例えば当該直前の値の10%)以上で、当該現在値を採取した直後に採取したUSセンサ出力の値が当該現在値よりも当該直前の値側(付近)に戻った時には、当該現在値を、当該直前の値と当該直後の値の平均値に置き換えてもよい(ノイズ成分排除処理)。
【0085】
ここで、ノイズ成分排除処理の一例について図11を参照して説明する。図11は、本実施形態のノイズ成分排除処理の一例を示すフローチャートである。
【0086】
まず、採取部104aは、保持部106に、置換候補(注目値)として設定したUSセンサ出力があることを確認した場合(ステップSD1:Yes)には、採取したUSセンサ出力の現在値が、当該置換候補のUSセンサ出力の値より、当該置換候補の直前のUSセンサ出力の値に近い(戻った)か否かを確認する(ステップSD2)。
【0087】
つぎに、採取部104aは、近いことを確認した場合(ステップSD3:Yes)には、保持部106に保存されている置換候補のUSセンサ出力の値を、ノイズ成分として見做し、現在値と当該置換候補の直前のUSセンサ出力の値との平均値で置換する(ステップSD4)。
【0088】
つぎに、採取部104aは、置換候補の設定をクリアする(ステップSD5)。
【0089】
つぎに、採取部104aは、ステップSA3で採取したUSセンサ出力の現在値と、当該現在値の直前の値である、保持部106に保存されているUSセンサ出力の値(ステップSD4で置換された場合は、置換後の値)との差が、所定値(例えば当該直前の値の10%)以上であるか否かを確認する(ステップSD6)。
【0090】
つぎに、採取部104aは、所定値以上であることを確認した場合(ステップSD7:Yes)には、現在値を置換候補として設定する(ステップSD8)。
【0091】
これにて、ノイズ成分排除処理の説明を終了する。
【0092】
[4.本実施形態のまとめ、及び他の実施形態]
以上、本実施形態によれば、“紙なし時”、“重なりなし時”、“重なりあり時”のそれぞれのUSセンサ出力の値(透過率)をモニタし、モニタした“紙なし時”と“重なりなし時”の値に基づいて用紙の厚さに最適なMF判定スライス値を設定し、設定したMF判定スライス値と“重なりあり時”の値でMF判定を行う。具体的には、USセンサ110から採取した出力を、“紙なし時”、“重なりなし時”、“重なりあり時”のいずれかに分別し、“紙なし時”に分別された出力と“重なりなし時”に分別された出力に基づいて、予め設定したMF判定スライス値を用紙の厚さに最適なものに変更(更新)し、“重なりあり時”に分別された出力がある場合には、当該出力と変更後のMF判定スライス値(最適化済みのMF判定スライス値)とを比較してMF判定を行う。これにより、あらゆる厚さの用紙に対してMF検出精度を高めることができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、採取したUSセンサの出力が当該採取の前後の出力に比べて大きく変化している場合、当該採取した出力を当該前後の出力の平均値で置換する。具体的には、今回採取した出力の現在値と前回採取した出力との差が所定値以上である場合は、当該今回の出力の現在値を置換候補として設定し、当該前回の出力が置換候補として設定されていた場合であって当該今回の出力の現在値が当該前回の出力よりも、前々回採取した出力に近づいていたときには、置換候補の当該前回の出力を当該今回の出力の現在値と当該前々回の出力との平均値で置換する。これにより、USセンサ出力の一時的な変動を無視して(特に、MF判定スライス前後のUSセンサ出力の不安定要素(ノイズ成分)を取り除いて)、重なり部分を正確且つ安定に検出することができる。
【0094】
さらに、本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。例えば、本実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。また、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて又は機能負荷に応じて任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して、構成することができる。また、本明細書や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、画面例などについては、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0095】
また、画像読取装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、画像読取装置100が備える処理機能、特に制御部104にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。なお、プログラムは、後述する記録媒体に記録されており、必要に応じて画像読取装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDなどには、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0096】
本発明に係る画像読取装置は、本発明に係る重送判定方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現可能である。また、本発明に係る重送判定プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することができる。ここで、「記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、MO、DVD等の任意の「可搬用の物理媒体」、あるいは、LAN、WAN、インターネットに代表されるネットワークを介してプログラムを送信する場合の通信回線や搬送波のように、短期にプログラムを保持する「通信媒体」を含むものとする。また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明に係る画像読取装置、重送判定方法及び重送判定プログラムは、産業上の多くの分野、特に、USセンサを用いた重送検知機能を持つスキャナを扱う情報処理分野や画像処理分野において実施することができ、極めて有用である。
【符号の説明】
【0098】
100 画像読取装置
102 重送検知ユニット
104 制御部
104a 採取部
104b 紙なし時US出力モニタ部
104c 紙あり時US出力モニタ部
104d 重送判定部
106 保持部
114 画像読取ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサと制御部とを備え、
前記制御部は、紙なし時、重なりなし時、重なりあり時のそれぞれの前記超音波センサの多値出力値をモニタし、モニタした紙なし時と重なりなし時の値に基づいて用紙の厚さに最適な重送判定の閾値を設定し、設定した閾値と重なりあり時の値で重送判定を行うこと、
を特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、採取した前記超音波センサの多値出力値が当該採取の前後の値に比べて大きく変化している場合、当該採取した値を当該前後の値の平均値で置換すること、
を特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
超音波センサと制御部とを備え、
前記制御部は、
前記超音波センサの出力を採取する採取手段と、
前記採取手段で採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別手段と、
前記分別手段で前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更手段と、
前記分別手段で前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更手段で変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定手段と、
を備えたこと、
を特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
前記採取手段は、今回採取した出力と前回採取した出力との差が所定値以上である場合は、当該今回の出力を置換候補として設定し、
当該前回の出力が置換候補として設定されていた場合であって、当該今回の出力が当該前回の出力よりも、前々回採取した出力に近づいていたときには、置換候補の当該前回の出力を当該今回の出力と当該前々回の出力との平均値で置換すること、
を特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
超音波センサと制御部とを備えた画像読取装置の前記制御部で実行される、
前記超音波センサの出力を採取する採取ステップと、
前記採取ステップで採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別ステップと、
前記分別ステップで前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更ステップと、
前記分別ステップで前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更ステップで変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定ステップと、
を含むこと、
を特徴とする重送判定方法。
【請求項6】
超音波センサと制御部とを備えた画像読取装置の前記制御部に実行させるための、
前記超音波センサの出力を採取する採取ステップと、
前記採取ステップで採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別ステップと、
前記分別ステップで前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更ステップと、
前記分別ステップで前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更ステップで変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定ステップと、
を含むこと、
を特徴とする重送判定プログラム。
【請求項1】
超音波センサと制御部とを備え、
前記制御部は、紙なし時、重なりなし時、重なりあり時のそれぞれの前記超音波センサの多値出力値をモニタし、モニタした紙なし時と重なりなし時の値に基づいて用紙の厚さに最適な重送判定の閾値を設定し、設定した閾値と重なりあり時の値で重送判定を行うこと、
を特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、採取した前記超音波センサの多値出力値が当該採取の前後の値に比べて大きく変化している場合、当該採取した値を当該前後の値の平均値で置換すること、
を特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
超音波センサと制御部とを備え、
前記制御部は、
前記超音波センサの出力を採取する採取手段と、
前記採取手段で採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別手段と、
前記分別手段で前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更手段と、
前記分別手段で前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更手段で変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定手段と、
を備えたこと、
を特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
前記採取手段は、今回採取した出力と前回採取した出力との差が所定値以上である場合は、当該今回の出力を置換候補として設定し、
当該前回の出力が置換候補として設定されていた場合であって、当該今回の出力が当該前回の出力よりも、前々回採取した出力に近づいていたときには、置換候補の当該前回の出力を当該今回の出力と当該前々回の出力との平均値で置換すること、
を特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
超音波センサと制御部とを備えた画像読取装置の前記制御部で実行される、
前記超音波センサの出力を採取する採取ステップと、
前記採取ステップで採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別ステップと、
前記分別ステップで前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更ステップと、
前記分別ステップで前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更ステップで変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定ステップと、
を含むこと、
を特徴とする重送判定方法。
【請求項6】
超音波センサと制御部とを備えた画像読取装置の前記制御部に実行させるための、
前記超音波センサの出力を採取する採取ステップと、
前記採取ステップで採取した出力を、用紙がない時のもの、用紙に重なりがない時のもの、用紙に重なりがある時のもののいずれかに分別する分別ステップと、
前記分別ステップで前記用紙がない時のものに分別された出力と前記用紙に重なりがない時のものに分別された出力に基づいて、予め設定した重送判定の閾値を用紙の厚さに最適なものに変更する変更ステップと、
前記分別ステップで前記用紙に重なりがある時のものに分別された出力がある場合には、当該出力と前記変更ステップで変更した後の閾値とを比較して、重送判定を行う判定ステップと、
を含むこと、
を特徴とする重送判定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−244091(P2011−244091A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112446(P2010−112446)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000136136)株式会社PFU (354)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000136136)株式会社PFU (354)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]