説明

画像読取装置および画像形成装置

【課題】原稿を搬送しながら該原稿上の画像を読み取る場合に、読み取られた画像上に、ゴミ、汚れなどに起因する画像スジが発生することを未然に防止することができる画像読取装置を提供する。
【解決手段】画像読取装置Aは、ADF40を備え、ADF40には、スキャナユニット59が組み込まれている。スキャナユニット59は、シリンダ60から構成され、シリンダ60の外周面には、有機半導体から構成される複数の読取画素61がマトリクス状に配置されている。原稿Dの読取時、スキャナユニット59は、その周速度が原稿Dの搬送速度と略同一となるように、原稿Dの搬送方向へ回転駆動される。そして、スキャナユニット59により、画像読取位置P1を通過する原稿Dに対して、その画像情報の読み取りが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される原稿上の画像を読み取る画像読取装置およびそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機などには、画像読取装置が設けられている。この画像読取装置として、自動原稿給送装置から給紙された原稿を副走査方向へ搬送しながら、所定位置に停止されているスキャナユニットにより読み取りを行うことが可能なものがある(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
この種の画像読取装置を搭載する画像形成装置ついて図17を参照しながら説明する。図17は従来の画像読取装置を備える画像形成装置の構成を示す縦断面図である。
【0004】
画像形成装置は、図17に示すように、原稿上の画像情報を読み取るための画像読取装置Aおよび画像読取装置Aにより読み取られた画像情報を用紙上へ形成するプリンタ装置Bを備える。
【0005】
画像読取装置Aは、自動原稿給送装置(Auto Document Feeder、以下ADFという)2と、スキャナ装置1とから構成される。ADF2は、原稿トレイ12、ピックアップローラ43、分離ローラ対44a,44b、複数の搬送ローラ46,48、排出ローラ49、および排出トレイ50を有する。原稿トレイ12には原稿Dが積載される。原稿トレイ12に積載された原稿Dは、ピックアップローラ43および分離ローラ対44a,44bにより1枚ずつ分離されて装置内に引き込まれる。そして、原稿Dは、搬送ローラ46により装置内を搬送され、スキャナ装置1により当該原稿D上の画像が読み取れる。画像が読み取られた原稿は、搬送ローラ48および排出ローラ49により、排出トレイ50上へ排紙される。
【0006】
スキャナ装置1は、ガイドレール24に案内されながら図中の矢印Fが示す方向(副走査方向)へ移動可能なスキャナユニット21を有する。スキャナユニット21は、原稿を照明するための複数のランプ21cと、ラインCCD(Charge Coupled Device)21gと、各ランプ21により照明された原稿からの反射光をラインCCD21gへ導くための光学系21fとを搭載する。
【0007】
画像読取装置Aにおいては、原稿流し読みと固定原稿読みの2つの原稿読み取り方式で原稿の読み取りを行うことが可能である。
【0008】
原稿流し読みは、ADF2から給紙された原稿を副走査方向へ搬送しながらスキャナユニット21により読み取る方式である。具体的には、ADF2から原稿Dが給紙され、この原稿Dは、副走査方向へ搬送される。この際、スキャナユニット21は、流し読みガラス102の流し読み位置101に停止されている。そして、副走査方向へ搬送されている原稿Dが上記流し読み位置101を通過する際に、スキャナユニット21により原稿の主走査方向の読み取りが行われる。これにより、原稿の全体が読み取られることになる。
【0009】
これに対し、固定原稿読みの場合、プラテンガラス22上の所定位置に原稿Dが載置され、載置された原稿Dに対して、スキャナユニット21が副走査方向へ移動される。すなわち、プラテンガラス22上の原稿Dに対してスキャナユニット21が原稿Dの主走査方向の読み取りを行いながら、副走査方向へ移動されることによって、原稿の全体が読み取られることになる。
【0010】
プリンタ装置Bは、レーザユニット3を有する。レーザユニット3は、画像読取装置Aにより読み取られた画像情報(ビデオ信号)に基づいてレーザ光を変調し、このレーザ光を感光ドラム10に照射する。これにより、感光ドラム10上には、静電潜像が形成される。感光ドラム10上に形成された静電潜像は、現像器11から供給されたトナーよりトナー像として可視像化される。このトナー像は、転写器6により、給紙カセット4からレジストローラ5を経て給紙された用紙P上に転写される。トナー像が転写された用紙Pは、定着器7に送られ、定着器7は、用紙Pを熱圧することによって、トナー像を用紙P上に定着させる。トナー像が定着された用紙Pは、排出ローラ8を介して、排出トレイ9上に排出される。
【特許文献1】特開2003−8836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、原稿流し読みにおいて、流し読みガラス102に汚れが付着している場合、その汚れが読み取られた画像情報において副走査方向の画像スジとなって出現することがある。例えば、原稿にはボールペンなどのインク、修正液、のりなどが付着している場合があり、これが原稿の読み取り過程において流し読みガラス102に付着すると、以降の読み取られた画像情報には、画像スジが発生することになる。よって、流し読みガラス102上の汚れが取り除かれない限り、この画像スジの発生を無くすことはできず、品位の高い画像を得ることはできない。
【0012】
本発明の目的は、原稿を搬送しながら該原稿上の画像を読み取る場合に、読み取られた画像上に、ゴミ、汚れなどに起因する画像スジが発生することを未然に防止することができる画像読取装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、原稿を搬送する原稿搬送手段と、複数の光センサが配置されている無端状の基材から構成される画像読取手段と、前記画像読取手段を回転させる駆動手段とを備え、画像読取位置における前記原稿搬送手段により搬送される原稿の移動方向と前記画像読取手段の回転方向が同じになるように、前記駆動手段により前記画像読取手段を回転させながら、該画像読取手段により前記原稿搬送手段によって搬送される原稿上の画像を読み取ることを特徴とする画像読取装置を提供する。
【0014】
本発明は、上記目的を達成するため、上記画像読取装置を備えることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原稿を搬送しながら該原稿上の画像を読み取る場合に、読み取られた画像上に、ゴミ、汚れなどに起因する画像スジが発生することを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像読取装置を備える画像形成装置の構成を示す縦断面図である。
【0018】
画像形成装置は、図1に示すように、原稿上の画像情報を読み取るための画像読取装置Aおよび画像読取装置Aにより読み取られた画像情報を用紙上へ形成するプリンタ装置Bを備える。
【0019】
画像読取装置Aは、ADF40と、スキャナ装置20とから構成される。ADF40は、原稿Dが積載される原稿トレイ12および原稿トレイ12上の原稿Dの有無を検知するための原稿検知センサ45を有する。原稿トレイ12に積載された原稿Dは、ピックアップローラ43および分離ローラ対44a,44bにより、1枚ずつ分離されて装置内に引き込まれる。そして、引き込まれた原稿Dは、搬送ローラ46により、原稿D上の画像情報を読み取るための読取部30へ向けて予め決められた一定の搬送速度で搬送される。ここで、搬送速度はユーザにより設定される読取モードや読取解像度などに応じて可変である。搬送ローラ46の近傍位置には、原稿Dの端部を検出する原稿エッジセンサ47が配置されている。この原稿エッジセンサ47の検知信号は、例えば原稿詰まりなどの検出に用いられる。
【0020】
読取部30は、シリンダ形状に構成されているスキャナユニット59と、スキャナユニット59の外周面に当接される加圧部材23とから構成される。スキャナユニット59は、駆動モータ(図示せず)により、原稿搬送速度と略同一の周速度で、スキャナユニット59の画像読取位置において、原稿Dの搬送方向と同じ方向にスキャナユニット59の外周面が移動するように回転駆動され、回転しながら原稿D上の画像情報を読み取る。加圧部材23には、シェーディング補正用データ(シェーディングデータ)を得るための基準部材42が組み込まれている。加圧部材23は、基準部材42がスキャナユニット59と対向するように配置されている。このスキャナユニット59および加圧部材23の詳細については、後述する。
【0021】
読取部30を通過した原稿Dは、搬送ローラ48により、搬送路40aに沿って搬送され、排出ローラ51により、排出トレイ50上へ排出される。
【0022】
また、ADF40は、スキャナ装置20に対して開閉可能に構成されており、ADF40を開くことによって、後述するスキャナ装置20のプラテンガラス22上に原稿を載置することが可能である。ADF40は、白地板52を有し、白地板52は、ADF40が閉じられたときに、プラテンガラス22と対向するように配置されている。この白地板52により、プラテンガラス22上に載置された原稿は、プラテンガラス22に密着される。
【0023】
スキャナ装置20は、プラテンガラス22と、プラテンガラス22の下方に配置されているスキャナユニット21とを有する。スキャナユニット21は、ガイドレール24に案内されながら副走査方向へ移動可能に構成されている。スキャナユニット21には、原稿を照明するための複数のランプ21cと、ラインCCD21gと、各ランプ21cにより照明された原稿からの反射光をラインCCD21gへ導くための光学系21fとが搭載される。光学系21fには、複数の反射ミラーおよび結像レンズが含まれる。
【0024】
画像読取装置Aは、ADF40を用いたADF読取モードとスキャナユニット21を用いた固定原稿読取モードの2つのモードを有し、それぞれのモードで原稿の読み取りを行うことが可能である。
【0025】
ADF読取モードの場合、ADF40により原稿トレイ12に積載された原稿が給紙される。この際、スキャナユニット59は、周速度が原稿Dの搬送速度と略同一になるように原稿の搬送方向へ回転される。そして、原稿Dは、スキャナユニット59と加圧部材23との間に送り込まれ、スキャナユニット59は、回転しながら、搬送される原稿D上の画像情報を読み取る。このADF読取モードの詳細については、後述する。
【0026】
これに対し、固定原稿読取モードの場合、ADF40が開放され、プラテンガラス22上の所定位置に原稿Dが載置され、この載置された原稿Dに対して、スキャナユニット21が副走査方向へ移動される。すなわち、プラテンガラス22上の原稿Dに対してスキャナユニット21が原稿の主走査方向の読み取りを行いながら、副走査方向へ移動されることによって、原稿の全体が読み取られることになる。
【0027】
プリンタ装置Bは、図17に示すプリンタ装置Bと同じ構成を有するものであり、この構成についての説明は、省略する。
【0028】
次に、スキャナユニット59について図2〜図4を参照しながら詳細に説明する。図2(a)は図1のスキャナユニット59の周囲の構成を模式的に示す縦断面図、図2(b)は図1のスキャナユニット59のシリンダ表面の一部を長手方向に沿って切断した際の縦断面図である。図3(a)は図1のスキャナユニットの主要部構成を示す斜視図、図3(b)は図2のスキャナユニットの縦断面図である。図4(a)は有機半導体からなる複数の読取画素がマトリクス状に配置された状態を示す展開図、図4(b)は読取画素の回路構成を示す図である。
【0029】
スキャナユニット59は、図2(a)に示すように、原稿Dの搬送方向と直交する方向(主走査方向)へ伸びるシリンダ60を有し、シリンダ60は、光透過性を有する基材(透明な基材を含む)から構成される。シリンダ60内には、シリンダ60の軸と同軸上に伸びる細長いランプ41が組み込まれている。シリンダ60は、図3(b)に示すように、両端に開口し、シリンダ60の各開口端部には、それぞれ、支持部材41aが取り付けられている。各支持部材41aは、ランプ41を支持する。また、各支持部材41aは、ADF40本体に支持され、一方の支持部材41aには、駆動モータ(図示せず)からの駆動力が伝達される。
【0030】
スキャナユニット59は、図2(a)に示すように、上記駆動モータにより、原稿Dの搬送方向へ回転駆動され、その際の周速度は、原稿Dの搬送速度と略同一である。スキャナユニット59に対向する加圧部材23は、ばね部材23aにより、基準部材42が所定の押圧力でスキャナユニット59の外周面に当接されるように、付勢されている。原稿Dは、スキャナユニット59と基準部材42との間を通過し、画像読取位置P1で、スキャナユニット59により、原稿D上の画像情報が読み取られる。
【0031】
シリンダ60の外周面には、後述するように、複数の読取画素61がマトリクス状に配置されている。ここで、複数の読取画素61のうち、シリンダ60の軸方向へ一列に並ぶ各読取画素61は、マトリクスの列を規定する読取画素列68となる。また、各読取画素列68は、シリンダ60の円周方向に沿って配列され、マトリクスの行を規定する。
【0032】
詳細には、図3(a)に示すように、シリンダ60の外周面には、複数の読取画素列68が、互いに所定の間隔をおいてシリンダ60の円周方向に沿って配列されている。各読取画素列68は、図2(b)に示すように、それぞれ、複数の読取画素61を含み、各読取画素61は、シリンダ60の軸方向へ所定の間隔をおいて配置されている。各読取画素61の裏面側には、ランプ41からの光が各読取画素61に対して直接入射することを防ぐための遮光膜62が設けられている。シリンダ60の外周面には、各読取画素61を保護するための保護層80が形成されている。
【0033】
シリンダ60の外周面における読取画素61の配列を展開して表すと、当該配列は、図4(a)に示すようなマトリクス状の配列となる。ここで、マトリクスの列方向に並ぶ一列の読取画素61(1つの読取画素列68を構成する各読取画素61)は、それぞれ、ワードライン63と接続され、ワードライン63はワードラインセレクタ70を介して列デコードライン67と接続されている。また、マトリクスの行方向に並ぶ一列の読取画素61は、それぞれ、ビットライン64と接続され、ビットライン64はビットラインセレクタ71を介して行デコードライン69と接続されている。ワードラインセレクタ70は、ワードラインセレクタ制御ライン92からの信号により制御される。また、ビットラインセレクタ71は、ビットラインセレクタ制御ライン91からの信号により制御される。そして、ワードラインセレクタ70およびビットセレクタ71の制御により、列デコードライン67と行デコードライン69のアドレス指定が行われる。これにより、所定の読取画素61の電流値を読み出すことが可能である。
【0034】
各読取画素61は、図4(b)に示すように、光を受光すると、その受光量に応じた電流値を発生する有機フォトダイオード61aと、有機トランジスタ61bと有する。そして、有機トランジスタ61bをスイッチング動作させることによって、有機フォトダイオード61aに生じた電流値が読み出される。ここで、有機フォトダイオード61aおよび有機トランジスタ61bは、有機半導体である。
【0035】
このように、各読取画素61を有機半導体から構成されているので、例えば精密印刷技術等を用いることにより、シリンダ60の外周面上に複数の読取画素61および周辺回路を形成することが可能である。
【0036】
スキャナユニット59の一方の端部には、図3(a)に示すように、複数の無端状の端子83a,83b,83c,65が設けられている。端子83aは上記行デコードライン69に、端子65は上記列デコードライン67に、端子83bは上記ビットラインセレクタ制御ライン91に、端子83cは上記ワードラインセレクタ制御ライン92にそれぞれ接続されている。
【0037】
各端子83a,83b,83c,65には、それぞれ、対応する接続端子84a,84b,84c,66が摺動可能に接触する。各接続端子84a,84b,84c,66は、バネ接点を構成する端子である。各接続端子84a,84b,84c,66は、画像像処理手段58と電気的に接続される。各接続端子84a,84b,84c,66は、スキャナユニット59の回転時においても、それぞれ対応する端子83a,83b,83c,65と摺動しながら接触する。これにより、スキャナユニット59の回転時においても、行デコードライン69、列デコードライン67、ビットラインセレクタ制御ライン91、ワードラインセレクタ制御ライン92と画像処理部58との接続が保たれる。
【0038】
画像処理部58は、スキャナユニット59の各読取画素61からの電気信号(画像情報)の読み出しを制御する。そして、画像処理部58は、各読取画素61から読み出された電気信号に対して所定の処理を施し、プリンタ装置Bが処理可能な画像データを生成する。この生成された画像データは、プリンタ装置Bへ送出される。
【0039】
この画像処理部58について図5を参照しながら詳細に説明する。図5は図3(a)の画像処理部58の構成を示すブロック図である。
【0040】
画像処理部58は、図5に示すように、アナログ信号処理部72を有する。アナログ信号処理部72は、スキャナユニット59から読み出された電気信号に対して感度補正などの各種補正を施す。アナログ信号処理部72により補正された信号は、A/D変換部73により、デジタル画像信号に変換される。そして、このデジタル画像信号に対しては、ゲインコントロール部74、シェーディング補正部75、トーンコントロール部76により、各種補正が施される。そして、補正後のデジタル画像信号は、画像データとして一旦データバッファ77に保持された後、プリンタ装置Bへ送出される。ここで、上記シェーディング補正部75による、各読取画素61の画像データに対するシェーディング補正は、同一の読取画素により読み取られた基準部材42から得られるシェーディングデータに基づいて行われる。
【0041】
また、画像処理部58は、スキャナユニット59の各読取画素61からの電気信号の読み出しを制御するための信号をスキャナユニット59に対して出力するが、この機能ブロックは、省略されている。
【0042】
次に、画像読取装置AのADF読取モードについて説明する。
【0043】
操作部などの操作によってADF読取モードによる原稿読み取り命令が発行されると、まずシェーディングデータを取得するために、スキャナユニット59が、駆動モータにより、周速度が原稿Dの搬送速度と略同一になるように原稿の搬送方向へ回転される。そして、スキャナユニット59により、基準部材42の読み取りが行われる。
【0044】
この基準部材42の読み取りにおいては、画像読取位置P1に到達した読取画素列68が基準部材42からの反射光を受光し、その受光量に応じた電流値を発生する。そして、読取画素列68の各読取画素61の有機トランジスタ61bが順次スイッチングされ、各読取画素61の有機フォトダイオード61aに発生される電流値が、電気信号として、ワードライン63を介して、読み出される。この読み出された電気信号は、画像処理部58においてシェーディング補正に用いられるシェーディングデータに変換される。このシェーディングデータは、対応する読取画素61のアドレスデータとともに、メモリ(図示せず)に格納される。
【0045】
このようにして、各読取画素列68が画像読取位置P1に到達する毎に、その読取画素61に対するシェーディングデータが取得され、当該シェーディングデータは、アドレス情報とともにメモリに格納される。スキャナユニット59が1回転されると、スキャナユニット59の全ての読取画素61に対するシェーディングデータが取得されることになる。
【0046】
全ての読取画素61に対するシェーディングデータの取得の完了に伴い、ADF40は、原稿トレイ12上の原稿Dの給紙を開始する。給紙された原稿Dは、スキャナユニット59と加圧部材23の間に送り込まれる。この際、スキャナユニット59は、周速度が原稿Dの搬送速度と略同一になるように原稿の搬送方向へ回転されている。そして、スキャナユニット59により、画像読取位置P1を通過する原稿Dに対して、その画像情報の読み取りが行われる。
【0047】
この原稿Dの読み取りにおいては、画像読取位置P1に到達した読取画素列68が、原稿Dからの反射光を受光し、その受光量に応じた電流値を発生する。すなわち、原稿D上の画像情報に応じた電流値が発生される。この読取画素列68の各読取画素61に発生する電流値は、各読取画素61を順次スイッチングすることにより、各読取画素61からワードライン63を介して電気信号として読み出される。
【0048】
読み出された電気信号は、画像処理部58に入力される。画像処理部58は、入力された電気信号に対してシェーディング補正などを含む各種処理を施し、画像データを生成する。この生成された画像データは、プリンタ装置Bへ送出される。
【0049】
上記ADF読取モードにおいて、スキャナユニット59は、その周速度が原稿Dの搬送速度と略同一となるように回転駆動されている。このため、搬送されている原稿Dに対して、読取画素61は副走査方向に相対的にほとんど移動しない。従って、原稿D、スキャナユニット59または加圧部材23(基準部材42)の表面にゴミまたは汚れなどが付着している場合においても、読み取られたゴミまたは汚れの画像が副走査方向に引き伸ばされることはなくなる。そのため、従来のように、ゴミまたは汚れによるスジ状の画像が出現することはない。その結果、優れた品位の画像を得ることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の実施の形態について図6および図7を参照しながら説明する。図6は本発明の第2の実施の形態に係る画像読取装置のスキャナユニットの主要部構成を模式的に示す縦断面図である。図7は図6のスキャナユニットにおける読取画素の配列を示す展開図である。
【0051】
上記第1の実施の形態においては、全ての読取画素61のシェーディングデータの取得が行われた後に、原稿の読み取りが行われる。これに対し、本実施の形態は、シェーディングデータの取得と原稿の読み取りを並行して行う点で、上記第1の実施の形態とは異なる。
【0052】
本実施の形態においては、図6に示すように、基準部材42が加圧部材23に組み込まれておらず、他の位置に設けられている。そして、基準部材42は、スキャナユニット59の外周面に対して所定の押圧力で押し付けられている。ここで、スキャナユニット59が原稿Dを読み取る位置を画像読取位置P1とし、基準部材42を読み取る位置を基準部材読取位置P2とする。
【0053】
この場合、図7に示すように、スキャナユニット59における上記画像読取位置P1に到達している読取画素列68から上記基準部材読取位置P2までの円周方向に沿う距離をL1とすると、この距離L1は、次式の関係を満足するように設定される。
【0054】
L1=(m+1/2)L2
mは、正の整数である。
【0055】
L2は、互いに隣り合う読取画素列68間の円周方向に沿う距離である。
【0056】
このように、距離L1は、隣り合う読取画素列68間の円周方向に沿う距離L2の整数倍にならないように設定される。これにより、ある読取画素列68が画像読取位置P1に到達したときに、基準部材読取位置P2には、他の読取画素列68が到達していない。すなわち、ある読取画素列68が画像読取位置P1に到達するタイミングと、他のいずれかの読取画素列68が基準部材読取位置P2に到達するタイミングとは時間的に異なるので、原稿Dの読み取りと基準部材42の読み取りを交互に行うことが可能となる。その結果、読取画素列68毎に、基準部材42の読み取り、原稿Dの読み取りを順に行うことが可能である。これにより、全ての読取画素61のシェーディングデータの取得後に、原稿Dの読み取りを行う上記第1の実施の形態と比して、原稿Dの読み取りに掛かる時間を短縮することが可能である。
【0057】
また、本実施の形態においては、同一の読取画素列68に関して、それから得られた画像情報に対するシェーディング補正が終了した時点で、メモリに格納されている同一の画像読取列68のシェーディングデータを消去することが可能である。従って、基準部材読取位置P2から画像読取位置P1までの間に存在する読取画素列68のシェーディングデータ、および、シェーディング補正に掛かる処理時間の間に取得されるシェーディングデータを記憶するメモリ容量があればよい。その結果、シェーディングデータの格納に必要なメモリ容量を少なくすることができる。
【0058】
さらに、画像読み取り中に、ランプ41の照明光量が変動し、また有機フォトダイオード61aの感度が変動する場合がある。このような場合でも、読取画素列68が画像読取位置P1に到達する前にシェーディングデータが更新されるので、上記変動に応じたシェーディングデータが得られ、原稿上の画像情報により忠実な画像データを得ることができる。
【0059】
さらに、基準部材読取位置P2における基準部材42とランプ41との間の距離と、画像読取位置P1における原稿Dとランプ41との間の距離とが略等しくなるように構成することが好ましい。これにより、基準部材42に対する照明光量と原稿Dに対する照明光量が略等しくなるので、より正確なシェーディング補正を行うことができる。
【0060】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について図8および図9を参照しながら説明する。図8は本発明の第3の実施の形態に係る画像読取装置のスキャナユニットにおける読取画素の配列を示す展開図である。図9は本発明の第3の実施の形態に係る画像読取装置のスキャナユニットの主要部構成を示す斜視図である。
【0061】
上記第2の実施形態においては、スキャナユニット59が距離L2の1/2分だけ回転する間に、原稿Dの読み取りまたは基準部材42の読み取りを完了する必要がある。そのため、スキャナユニット59の回転速度は、有機トランジスタ61bのスイッチングの応答性に応じて決定されるので、原稿の読取速度を上げるのには、限界がある。
【0062】
これに対し、本実施の形態においては、各読取画素61が接続されているワードラインに対して複数の行デコードラインが設けられ、原稿Dの読み取りと基準部材42の読み取りとが並行して行われる点で、上記第2の実施の形態と異なる。これ以外、本実施の形態は、基本的には、上記第2の実施の形態と同じ構成を有する。
【0063】
具体的には、図8に示すように、ある読取画素列68aにはワードライン63aが接続され、このワードライン63aは、第1列デコードライン67aに接続されている。この読取画素列68aのスキャナユニット59の回転方向下流側に隣接する読取画素列68bには、ワードライン63bが接続され、このワードライン63bには、第2列デコードライン67bに接続されている。読取画素列68bのスキャナユニット59の回転方向下流側に隣接する読取画素列68cには、ワードライン63cが接続され、このワードライン63cは第1列デコードライン67aに接続されている。さらに、読取画素列68cのスキャナユニット59の回転方向下流側に隣接する読取画素列68dには、ワードライン63dが接続され、ワードライン63dには、第2列デコードライン67bに接続されている。
【0064】
以下同様に、読取画素列68のそれぞれのワードライン63は、交互に、第1列デコードライン67aと第2列デコードライン67bに接続されている。
【0065】
スキャナユニット59の一方の端部には、図9に示すように、無端状の端子65a,65b,83a,83b,83cが設けられている。端子65aは、列デコードライン67aに、端子65bは、列デコードライン67bにそれぞれ接続されている。端子83aは、行デコードライン69に、端子83bは、ビットラインセレクタ制御ライン91に、端子83cは、ワードラインセレクタ制御ライン92にそれぞれ接続されている。各端子65a,65b,83a,83b,83cには、それぞれ対応する端子66a,66b,84a,84b,84cが摺動可能に接触する。各端子66a,66b,84a,84b,84cは、バネ接点を構成する端子である。各端子66a,66b,84a,84b,84cは、画像処理部58と接続される。この構成により、スキャナユニット59の回転時においても、行デコードライン69、列デコードライン67a,67b、ビットラインセレクタ制御ライン91、ワードラインセレクタ制御ライン92と画像処理部58との接続が保たれる。
【0066】
本実施の形態においては、図8に示すように、スキャナユニット59における上記画像読取位置P1に到達している読取画素列68aから基準部材読取位置P2までの円周方向に沿う距離をL1とすると、この距離L1は、次式の関係を満足するように設定される。
【0067】
L1=mL2
mは、3以上の奇数である。
【0068】
L2は、互いに隣り合う読取画素列68間の円周方向に沿う距離である。
【0069】
このように、距離L1は、隣り合う読取画素列68間の円周方向に沿う距離L2の奇数倍になるように設定され、基準部材42は、画像読取位置P1に対して上記距離L1を満足する基準部材読取位置P2に対応する位置に設けられている。
【0070】
これにより、ある読取画素列68aが画像読取位置P1に到達したときには、基準部材読取位置P2には、他の読取画素列68mが到達することになる。すなわち、読取画素列68aが画像読取位置P1に到達するタイミングと、読取画素列68mが基準部材読取位置P2に到達するタイミングとは時間的に同じである。
【0071】
画像読取位置P1にある読取画素列68aは、ワードラインセレクタ70aにより、第1列デコードライン67aに接続され、画像情報の読み取りが行われる。これと同時に、基準部材読取位置P2にある読取画素列68mは、ワードラインセレクタ70bにより、第2列デコードライン67bに接続され、基準部材42(シェーディングデータ)の読み取りが行われる。
【0072】
従って、読取画素列68aによる画像情報の読み取りは、次の読取画素列68bが画像読取位置P1に到達する前に終了すればよいことになる。換言すれば、本実施の形態は、上記第2の実施の形態における画像情報の読み取りに用いられる時間の、倍の時間を用いて、画像情報の読み取りを行うことが可能となる。同様に、基準部材42の読み取りは、次の読取画素列68nが画像読取位置P2に到達する前に終了すればよく、基準部材42の読み取りに用いられる時間は、上記第2の実施の形態における基準部材42の読み取りに用いられる時間の倍になる。その結果、有機トランジスタ61bの応答性による原稿の読取速度の制限が緩和され、より原稿の読取速度を上げることができる。
【0073】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について図10〜図15を参照しながら説明する。図10は本発明の第4の実施の形態に係る画像読取装置を備える画像形成装置の構成を示す縦断面図である。図11(a)は図10のスキャナユニット200の周囲の構成を模式的に示す縦断面図、図11(b)は図10のスキャナユニット200のベルトの一部を長手方向に沿って切断した際の縦断面図である。図12(a)は図10のスキャナユニット200の主要部構成を示す斜視図、図12(b)は図11のスキャナユニット200のローラの縦断面図である。図13は図12(a)のベルトの一方の端部と他方の端部との接合部を部分的に破断して示す平面図である。図14は図12(a)のベルトの一方の端部と他方の端部との接合部を示す縦断面図である。図15は図12(a)のベルトの一方の端部と他方の端部との接合部の他の構成例を示す縦断面図である。
【0074】
本実施の形態は、シリンダ形状のスキャナユニット59を用いる上記第1〜第3の実施の形態に対して、読取画素がマトリクス状に配列されている無端状のベルトを有するスキャナユニットを用いる点で異なる。
【0075】
具体的には、本実施の形態の画像形成装置は、図10に示すように、スキャナユニット200を有する画像読取装置Aと、画像読取装置Aにより読み取られた画像情報を用紙上へ形成するプリンタ装置Bとを備える。画像読取装置Aのスキャナユニット200は、ADF40に組み込まれている。ここで、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態と同一の部材には、同一の符号を付し、その説明は簡略化しまたは省略する。
【0076】
上記スキャナユニット200は、図11(a)に示すように、無端状のベルト201と、ベルト201が掛け渡されている1対のプーリ202,203とを有する。ベルト201は、可撓性を有するシート基材からなる。ベルト201上には、図11(b)に示すように、複数の読取画素61が設けられている。各読取画素61は、図4に示すマトリクス状の配列パターンと同じ配列パターンに従って、ベルト201上に配列されている。また、各読取画素61を接続するための配線構造も同じである。各読取画素61の裏面側には、遮光膜62が設けられている。また、ベルト201の表面には、各読取画素61を保護するための保護層80が形成されている。各読取画素61およびその周辺回路は、例えば精密印刷技術などにより、ベルト201の外周面上に形成される。
【0077】
ベルト201上には、図12(a)に示すように、当該ベルト201の一方の縁部に沿って伸びる複数の無端状の端子83a,83b,83c,65が設けられている。端子83aは行デコードライン69に、端子65は列デコードライン67に、端子83bはビットラインセレクタ制御ライン91に、端子83cはワードラインセレクタ制御ライン92にそれぞれ接続されている(詳細には図4を参照)。各端子83a,83b,83c,65には、それぞれ、対応する接続端子84a,84b,84c,66が摺動可能に接触されている。各接続端子84a,84b,84c,66は、画像像処理手段58と電気的に接続される。各接続端子84a,84b,84c,66は、ベルト201の回転時においても、それぞれ対応する端子83a,83b,83c,65と摺動しながら接触する。これにより、ベルト201の回転時においても、行デコードライン69、列デコードライン67、ビットラインセレクタ制御ライン91、ワードラインセレクタ制御ライン92と画像処理部58との接続が保たれる。
【0078】
プーリ202は、図11(a)に示すように、光透過性を有する中空円筒部材から構成される。プーリ202内には、プーリ202の軸と同軸上に伸びる細長いランプ41が組み込まれている。プーリ202は、図12(b)に示すように、両端に開口し、各開口端部には、それぞれ、支持部材41aが取り付けられている。各支持部材41aは、ランプ41を支持する。また、各支持部材41aは、ADF40本体に回転可能に支持される。
【0079】
また、プーリ203は、ADF40本体に支持され、駆動モータ(図示せず)により、回転駆動される。これにより、ベルト201は、図中の矢印方向へ駆動される。この際、ベルト201は、その周速度が原稿Dの搬送速度と略同一になるように駆動される。プーリ202に対向する位置には、加圧部材23が配置され、加圧部材23は、ばね部材23aにより、基準部材42が所定の押圧力でベルト201の表面に当接されるように、付勢されている。
【0080】
本実施の形態においては、上記第1の実施の形態と同様に、画像読取位置P1において基準部材42の読み取りが完了した後に、ADF40から給紙された原稿Dの読み取りが行われる。すなわち、基準部材42の読み取りおよび原稿Dの読み取りは、同じ読取位置(画像読取位置P1)で行われる。そして、それぞれの読み取り動作に関しては、基本的には、上記第1の実施の形態と同じである。
【0081】
次に、ベルト201の一方の端部と他方の端部とが接合されている接合部について図13および図14を参照しながら説明する。
【0082】
ベルト201は、図13に示すように、表面に複数の読取画素61がマトリクス状に配置されているシート基材210の一方の端部210aと他方の端部210bとが重ね合わされて接合されることにより、形成されている。このベルト201の接合部201aには、読取画素列68がない部分(以下、欠落部)201bが存在する。この欠落部201bは、読取画素列68bと読取画素列68aとの間の領域であるとする。
【0083】
ここで、上記欠落部201bのベルト201の長手方向に沿う長さが、他の読取画素列68間の間隔より長いので、原稿の読み取り時に欠落部201bの画像情報が欠落することになる。よって、欠落部201bを挟む読取画素列68aと読取画素68bのそれぞれにより読み取られた画像情報に基づいて、欠落部201bにおける画像情報を生成するための補間処理が行われる。この補間処理は、画像処理部58により行われる。この補間処理により、欠落部201bにおける画像情報の欠落に起因する画像の乱れは、最小限に抑制することが可能であり、実用上支障がない画像読取を行うことが可能となる。
【0084】
より詳細には、ベルト201を構成するシート基材210の一方の端部210aには、行デコードライン69、ビットラインセレクタ制御ライン91およびビットラインセレクタ71が形成されている。このため、一方の端部210aと他方の端部210bとは、読取画素68a,68b間に、行デコードライン69、ビットラインセレクタ制御ライン91およびビットラインセレクタ71が挟まれるように重ね合わされて接合されている。また、一方の端部210aは、他方の端部210bの下側になるように他方の端部210bと重ね合わされている。このように構成することにより、接合部201aにおける欠落部201bの長さを短くすることができる。その結果、画像情報の補間が必要な領域を小さくすることができ、この補間により得られた画像を実際の画像に近づけることができる。
【0085】
ここで、図14に示すように、ベルト201の接合部201aにおける欠落部201bを挟む読取画素列68a,68b間の間隔をL3とする。この間隔L3を、他の隣り合う読取画素列68間の間隔L2の整数倍になるように設定することが好ましい。これにより、接合部201aにおける画像情報を他の画像情報に基づいて補間した場合に、この補間された接合部201aの画像情報は伸縮しない。
【0086】
本実施の形態においては、ADF読取モード時には、スキャナユニット200のベルト201がプーリ202,203により回転駆動され、原稿Dがベルト201と加圧部材23との間を通過する際に、ベルト201の読取画素列68により原稿Dの主走査方向の読み取りが行われる。そして、上記読み取られた画像情報は、画像処理部58に入力される。画像処理部58は、入力された画像情報に対してシェーディング補正などの補正を施し、プリンタ装置Bが処理可能な画像データを生成する。
【0087】
ここで、ベルト201は、その周速度が原稿Dの搬送速度と略同一となるように回転駆動されているので、上記第1の実施の形態のスキャナユニット59と同様に、読取画素列68(読取画素61)は原稿に対して副走査方向に相対的にほとんど移動しない。従って、上記第1の実施の形態と同様に、原稿Dまたはベルト201の表面にゴミまたは汚れなどが付着した場合においても、ゴミまたは汚れによるスジ状の画像が出現することはない。
【0088】
本実施の形態においては、ランプ41からベルト201の接合部201a(読取画素列68a,68b間の部分)を経て原稿Dに照射される光量は、他の部分に比して小さくなる。すなわち、読取画素列68a,68bのうち、特に読取画素列68bにより原稿Dを読み取る際の原稿Dに対する照明光量は、僅からながら、他の読取画素列68に対する照明光量より小さくことになる。これは、端部210bの読取画素列68bがある部分には、端部210aが重ね合されているからである。
【0089】
ここで、ベルト201上の読取画素列68の全てに対して、原稿Dを読み取る際の原稿Dの照明光量を均一にするためには、例えば図15に示すような、接合形態を採用することも可能である。この場合、接合部201aに対応する部分には、読取画素列68が設けられない。これにより、全ての読取画素列68に対して、原稿Dの照明光量を略同じにすることができる。
【0090】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について図16を参照しながら説明する。図16は本発明の第5の実施の形態に係る画像読取装置におけるベルトの接合部を示す縦断面図である。
【0091】
本実施の形態においては、図16に示すように、無端状のベルト201が形成される際に、シート基材210の一方の端部210aと他方の端部210bとがそれぞれ折り曲げられる。折り曲げられた端部210aと端部201bとは、互いに対向するように重ね合わされて接合される。これにより、無端状のベルト201が形成される。
【0092】
ここで、シート基材210の表面には、複数の読取画素61がマトリクス状に配列され、シート基材210の長手方向に沿って複数の読取画素列68が形成されている。また、各端部210aには、行デコードライン69、ビットラインセレクタ制御ライン91およびビットラインセレクタ71が形成されているものとする。
【0093】
このような接合形態により、上記第4の実施の形態で述べたような読取画素列68がない欠落部を形成することなく、ベルト201を形成することができる。詳細には、折り曲げられた端部210aと端部201bとが接合されている接合部201cを挟む読取画素列68a,68b間の間隔をL3とする。また、他の隣り合う読取画素列68間の間隔をL2とする。ここで、読取画素61を形成することができない領域を含む端部201a,201bに対して、その折り曲げ長さを調整すれば、上記間隔L3を上記間隔L2と同じにすることができる。これにより、読取画素列68がない欠落部が形成されることはなく、上記第4の実施の形態のように、画像情報の補間を行う必要はない。
【0094】
また、ランプ41からベルト201の接合部201c(読取画素列68a,68b間の部分)を経て原稿Dに照射される光量は、他の部分に比して、非常に僅かではあるが、小さくなる。しかしながら、この接合部201cによる原稿Dに対する照明光量の低下は、無視可能な程度のものである。換言すれば、全ての読取画素列68に対して、原稿Dの照明光量を略同じにすることができる。なお、接合部201cは、プーリ202,203と干渉しない程度の長さになるように構成すればよく、また、第4の実施の形態の図14や15のように端部210に重ね合されるようにしてもよい。
【0095】
上記第4および第5の実施の形態においては、基準部材の読み取りと原稿Dの読み取りとが同じ位置(画像読取位置P1)で行われる。これに代えて、上記第2の実施の形態にように、シェーディングデータの取得(基準部材42の読み取り)と原稿Dの読み取りを並行して行うようにすることも可能である。この場合、上記第4および第5の実施の形態において、原稿Dの読み取りを行う画像読取位置P1と異なる位置で基準部材42の読み取りを行うために、基準部材42が加圧部材23の位置と異なる他の位置に設けられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像読取装置を備える画像形成装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】(a)は図1のスキャナユニット59の周囲の構成を模式的に示す縦断面図、(b)は図1のスキャナユニット59のシリンダ表面の一部を長手方向に沿って切断した際の縦断面図である。
【図3】(a)は図1のスキャナユニットの主要部構成を示す斜視図、(b)は図2のスキャナユニットの縦断面図である。
【図4】(a)は有機半導体からなる複数の読取画素がマトリクス状に配置された状態を示す展開図、(b)は読取画素の回路構成を示す図である。
【図5】図3(a)の画像処理部58の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る画像読取装置のスキャナユニットの主要部構成を模式的に示す縦断面図である。
【図7】図6のスキャナユニットにおける読取画素の配列を示す展開図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る画像読取装置のスキャナユニットにおける読取画素の配列を示す展開図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る画像読取装置のスキャナユニットの主要部構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る画像読取装置を備える画像形成装置の構成を示す縦断面図である。
【図11】(a)は図10のスキャナユニット200の周囲の構成を模式的に示す縦断面図、(b)は図10のスキャナユニット200のベルトの一部を長手方向に沿って切断した際の縦断面図である。
【図12】(a)は図10のスキャナユニット200の主要部構成を示す斜視図、(b)は図11のスキャナユニット200のローラの縦断面図である。
【図13】図12(a)のベルトの一方の端部と他方の端部との接合部を部分的に破断して示す平面図である。
【図14】図12(a)のベルトの一方の端部と他方の端部との接合部を示す縦断面図である。
【図15】図12(a)のベルトの一方の端部と他方の端部との接合部の他の構成例を示す縦断面図である。
【図16】本発明の第5の実施の形態に係る画像読取装置におけるベルトの接合部を示す縦断面図である。
【図17】従来の画像読取装置を備える画像形成装置の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0097】
A 画像読取装置
B プリンタ装置
D 原稿
20 スキャン装置
23 加圧部材
40 ADF
41 ランプ
42 基準部材
58 画像処理部
59,200 スキャナユニット(画像読取手段)
60 シリンダ(基材)
61 読取画素
61a 有機フォトダイオード
61b 有機トランジスタ
63 ワードライン
67 列デコードライン
68 読取画素列
201 ベルト
201a,201c 接合部
202,203 プーリ
210 シート基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送する原稿搬送手段と、
複数の光センサが配置されている無端状の基材から構成される画像読取手段と、
前記画像読取手段を回転させる駆動手段とを備え、
画像読取位置における前記原稿搬送手段により搬送される原稿の移動方向と前記画像読取手段の回転方向が同じになるように、前記駆動手段により前記画像読取手段を回転させながら、該画像読取手段により前記原稿搬送手段によって搬送される原稿上の画像を読み取ることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記画像読取手段の基材は、複数の光センサがマトリクス状に配列されていることを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記画像読取手段は、前記原稿搬送手段によって搬送される原稿と接しながら前記原稿上の画像を読み取り、
前記駆動手段は、前記画像読取手段の周速度が前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の搬送速度と略同一になるように、該画像読取手段を回転させることを特徴とする請求項1または2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記画像読取手段の前記複数の光センサの配列パターンは、該画像読取手段の回転軸方向へ配列されている主走査方向の所定数の光センサ列が前記主走査方向と直交する副走査方向へ所定の間隔をおいて配列されているパターンであることを特徴とする請求項2記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記画像読取位置に設けられ、シェーディング補正用データを得るための基準部材を備え、
前記画像読取手段の回転に伴い前記主走査方向の各光センサ列は、それぞれ、前記画像読取位置に到達したときに前記基準部材を読み取り、
前記主走査方向の光センサ列の全てが前記基準部材の読み取りを完了した後に、原稿上の画像を読み取ることを特徴とする請求項4記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記画像読取手段が原稿上の画像を読み取る画像読取位置とは異なる基準部材読取位置に設けられ、シェーディング補正用データを得るための基準部材を備え、
前記画像読取手段の回転に伴い前記主走査方向の各光センサ列は、それぞれ、前記基準部材読取位置に到達したときに前記基準部材を読み取り、前記画像読取位置に到達したときに原稿上の画像を読み取ることを特徴とする請求項4記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記画像読取手段は、円柱状に形成されている基材から構成され、該基材の外周面に前記複数の光センサが配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記円筒状に形成されている基材は、光透過性部材からなり、該基材内には、原稿を照明する照明手段が配置されていることを特徴とする請求項7記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記画像読取手段は、無端ベルト状に形成されている基材から構成され、該基材の表面に前記複数の光センサが配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記無端ベルト状に形成されている基材は、光透過性シート部材からなり、
前記基材は、複数のプーリに掛け渡されており、
前記複数のプーリの1つは、原稿を照明する照明手段が内蔵され、光透過性を有することを特徴とする請求項9記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記複数のプーリのうち、少なくとも1つは、前記駆動手段により回転駆動されることを特徴とする請求項10記載の画像読取装置。
【請求項12】
前記無端ベルト状に形成されている基材は、一方の端部と他方の端部とが上下に重ね合わされて接合されている光透過性シート部材から構成され、
前記各光センサ列のうち、前記光透過性シート部材の一方の端部と他方の端部とが上下に重ね合わされて接合されている接合部を挟むように配置されている光センサ列間の間隔は、他の隣り合う光センサ間の間隔の整数倍に設定され、
前記接合部に対応する画像情報は、前記接合部を挟むように配置されている一方の光センサ列から得られる画像情報と他方の光センサ列から得られる画像情報に基づいて補間されることを特徴する請求項9ないし11のいずれか1つに記載の画像読取装置。
【請求項13】
前記無端ベルト状に形成されている基材は、一方の端部と他方の端部とがそれぞれ折り曲げられ、互いに対向するように接合されている光透過性シート部材から構成され、
前記各光センサ列のうち、前記光透過性シート部材の一方の端部と他方の端部とがそれぞれ折り曲げられ、互いに対向するように接合されている接合部を挟むように配置されている光センサ列間の間隔は、他の隣り合う光センサ間の間隔と同じであることを特徴する請求項9ないしのいずれか1つに記載の画像読取装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1つに記載の画像読取装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−180842(P2007−180842A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376411(P2005−376411)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】