説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】圧板等の原稿保持手段をコンタクトガラスから浮上させることなく、原稿保持手段の開口部内にセットされた原稿を容易に取り出す。
【解決手段】原稿を載置するコンタクトガラス73と、コンタクトガラス面に載置された原稿の画像を光学的に読み取る画像読取手段70と、コンタクトガラス面上の原稿を定置させる原稿保持手段76と、原稿保持手段によって定置された原稿を取り出す原稿取出手段13と、を備えた画像読取装置であって、原稿保持手段には、原稿を出し入れ自在に収容すると共に内底部にコンタクトガラス面を露出させた原稿装着用の開口部10が貫通形成されており、原稿取出手段を操作することにより、開口部内のコンタクトガラス面に載置された原稿をコンタクトガラス面から浮上させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IDカードや免許証、クレジットカード等の原稿画像を光学的に読み取るための開口部を備えた画像読取装置に関し、特に、この開口部内にセットされた原稿を容易に取り出すことのできる画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿を載置するコンタクトガラスと、原稿をコンタクトガラス面上に定置させる圧板等の原稿保持手段と、コンタクトガラス面に載置された原稿の画像を光学的に読み取る画像読取手段と、を備えた画像読取装置において、カード型の原稿をコンタクトガラス面上の定位置に載置するための開口部を原稿保持手段に備えた画像読取装置が知られている。
例えば、特許文献1には、定型原稿画像とは別の付加原稿読み取り専用の開口部を備えたオーバレイ装置(原稿保持手段)が記載されている。このオーバレイ装置は、コンタクトガラス上に載置される板状の装置であり、定型原稿画像が記載された原稿面と、原稿面の一部に形成されて定型原稿画像に付加する画像が記載された付加原稿をセットする開口部と、を備えている。原稿面を下向きにしてコンタクトガラス上にオーバレイ装置を載置し、オーバレイ装置の開口部内に付加原稿をセットして、画像読取手段により画像を読み取ることにより、定型原稿画像と付加原稿の内容とを一度に読み取ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1記載のオーバレイ装置は板状で厚みがある上、開口部内にセットされた付加原稿がコンタクトガラスに密着する。従って、開口部と付加原稿の大きさが略同じ場合、原稿を開口部上方から指でつまんで取り出すことは困難である。もちろん、オーバレイ装置をコンタクトガラスから浮上させれば付加原稿を容易に取り出すことはできるが、付加原稿を取り出すたびにオーバレイ装置を持ち上げなければならず、作業性が悪いという問題がある。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、圧板等の原稿保持手段をコンタクトガラスから浮上させることなく、原稿保持手段の開口部内にセットされた原稿を容易に取り出すことのできる画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、原稿を載置するコンタクトガラスと、該コンタクトガラス面に載置された前記原稿の画像を光学的に読み取る画像読取手段と、該コンタクトガラス面上の前記原稿を定置させる原稿保持手段と、該原稿保持手段によって定置された前記原稿を取り出す原稿取出手段と、を備えた画像読取装置であって、前記原稿保持手段には、前記原稿を出し入れ自在に収容すると共に内底部に前記コンタクトガラス面を露出させた原稿装着用の開口部が貫通形成されており、前記原稿取出手段を操作することにより、前記開口部内の前記コンタクトガラス面に載置された前記原稿を該コンタクトガラス面から浮上させるように構成されていることを特徴とする。
請求項1の発明では、原稿取出手段を操作して、原稿とコンタクトガラス面との間、及び原稿と開口部壁面との間に隙間を作る。
請求項2に記載の発明は、前記原稿取出手段は、前記原稿と先端部で接触することによって前記コンタクトガラス面から前記原稿を浮上させる浮上部材を備えていることを特徴とする。
請求項2の発明では、浮上部材の先端部が原稿の適所に接触しながら、原稿をコンタクトガラス面から浮上させる。
【0005】
請求項3に記載の発明は、前記浮上部材の先端部に、前記コンタクトガラス面を傷つけることがない緩衝部材を備えていることを特徴とする。
請求項3の発明では、緩衝部材がコンタクトガラス面と接触するようにして、コンタクトガラス面を傷つけないようにする。
請求項4に記載の発明は、前記緩衝部材は、少なくとも前記原稿の取り出し時において、前記コンタクトガラスに当接して弾性変形した状態で、該コンタクトガラス面と前記原稿との間に進入するように構成されていることを特徴とする。
請求項4の発明では、進入時における緩衝部材とコンタクトガラス面との角度を小さくすることができる。
請求項5に記載の発明は、前記緩衝部材の少なくとも下面が原稿読み取り時における白基準色であることを特徴とする。
請求項5の発明では、緩衝部材が原稿画像とともに読み取られても、読み取り画像に黒色の縁を出現させにくくすることができる。
【0006】
請求項6に記載の発明は、前記緩衝部材が透明であることを特徴とする。
請求項6の発明では、緩衝部材が原稿画像とともに読み取られても、原稿画像の情報が欠落しない。
請求項7に記載の発明は、前記浮上部材は前記原稿保持手段によって浮上方向へ回動自在に支持されており、浮上方向に回動したときに前記原稿を前記コンタクトガラス面から浮上させるように構成されていることを特徴とする。
請求項7の発明では、浮上部材の回動動作に合わせて原稿が移動し、コンタクトガラス面から浮上する。
請求項8に記載の発明は、前記浮上部材は、その先端部に前記コンタクトガラス面に対して傾斜する傾斜面を備えるとともに、前記先端部を前記コンタクトガラス面と前記原稿との隙間に出し入れ自在に構成されており、前記先端部が前記隙間内に進入したときに前記原稿が前記傾斜面に沿って浮上するように構成されていることを特徴とする。
請求項8の発明では、浮上部材の傾斜面によってコンタクトガラス面から浮上する。
【0007】
請求項9に記載の発明は、前記原稿取出手段は、前記浮上部材を前記原稿と前記コンタクトガラスとの間に進入しない退避位置に付勢する弾性付勢部材を備えていることを特徴とする。
請求項9の発明では、原稿取り出し後に浮上部材を退避位置に戻す必要がない。
請求項10に記載の発明は、自重により前記原稿と前記コンタクトガラスとの間に進入しない退避位置に戻るように構成されていることを特徴とする。
請求項10の発明では、原稿取り出し後に浮上部材を退避位置に戻す必要がない。
請求項11に記載の発明は、前記原稿保持手段は、前記コンタクトガラス面を開閉する圧板であることを特徴とする。
請求項11の発明では、開閉自在な圧板に形成された開口部内の原稿を取り出しやすくすい。
【0008】
請求項12に記載の発明は、前記原稿保持手段は、前記コンタクトガラス面上に固定配置された原稿押さえ部材であることを特徴とする。
請求項12の発明では、コンタクトガラス面上に固定配置された原稿押さえ部材に形成された開口部内の原稿を取り出しやすい。
請求項13に記載の発明は、請求項1乃至12の何れか一項記載の画像読取装置を備えた画像形成装置を特徴とする。
請求項13の画像形成装置は、請求項1乃至12の画像読取装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開口部内のコンタクトガラス面に載置された原稿を、原稿取出手段によりコンタクトガラス面から浮上させることができるので、原稿を容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】原稿載置用の開口部を圧板(原稿保持手段)に備えた画像読取装置の正面側断面図である。
【図2】第一の実施形態に係る原稿取出手段を備えた原稿読取装置を示した斜視図である。
【図3】第一の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した図2のX−X断面図である。
【図4】第一の実施形態に係る原稿取出手段(原稿取出位置)を示した図2のX−X断面図である。
【図5】第二の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した断面図である。
【図6】第三の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した断面図である。
【図7】第三の実施形態に係る原稿取出手段(原稿取出位置)を示した断面図である。
【図8】第四の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した断面図である。
【図9】開口部部分を拡大して示した断面図である。
【図10】図9の矢印F方向から開口部周辺を観察した図である。
【図11】第五の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した断面図である。
【図12】第六の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した断面図である。
【図13】デジタル複写機の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明に係る画像読取装置は、コンタクトガラス面に載置された原稿を所定の位置に定置させる原稿保持手段に、カード等の原稿を出し入れ自在に収容するとともにコンタクトガラス面を露出させる開口部を備え、この開口部内のコンタクトガラス面に載置された原稿をコンタクトガラス面から浮上させる原稿取出手段を備えた点に特徴がある。
まず、本発明が適用される画像読取装置の基本的な構成について図1に基づいて説明する。図1は、原稿載置用の開口部を圧板(原稿保持手段)に備えた画像読取装置の正面側断面図である。
画像読取装置Sは、原稿をスリットガラス72に向けて自動的に搬送する自動原稿搬送装置(以下、単に「ADF」という。)76と、ADF76の下方に配置されたスリットガラス72及びコンタクトガラス73と、スリットガラス72及びコンタクトガラス73の下方に配置されて原稿画像を光学的に読み取る画像読取手段70と、を備えている。
ADF76は、画像読取手段70の上部に配置され、図1の紙面に対して紙面と直交する方向奥側に、図中左右側に設けられたヒンジ(不図示)を介して画像読取手段70と一体的かつ回動自在に連結されており、紙面直交方向手前側から持ち上げることにより、スリットガラス72及びコンタクトガラス73に対して開閉自在に構成されている。
ADF76は、その上部に、複数の原稿からなる原稿束Oを載置する原稿載置台79を備えている。原稿束Oの搬送方向下流側には、原稿束Oに当接・離隔可能に構成され、原稿を搬送経路内に給紙する呼び出しコロ80を備えている。
呼び出しコロ80によって給紙された原稿は、さらに下流側に配置された分離ベルト81とこれに当接する分離阻止コロ82によって1枚ずつ分離され、給送される。
【0012】
分離ベルト81は、駆動コロ85と従動コロ86とによって掛け回されており、分離ベルト81は分離阻止コロ82に対して所定の角度及び加圧力にて当接している。従動コロ86は、スプリング90によって分離ベルト81を外周面側に押圧する方向に弾性付勢されており、スプリング90の付勢力によって分離ベルト81には一定の張力が付与されている。駆動コロ85とその軸85aとの間には、駆動コロ85の回転方向を図中時計回り方向に制限するワンウェイクラッチ91が内蔵されている。
分離阻止コロ82は分離ベルト81と当接しつつ、図中時計回り方向に回転する。そして、分離ベルト81と分離阻止コロ82との間に給紙された複数の原稿から最上位に位置する原稿のみが分離されて、さらに下流側へと搬送される。
分離ベルト81及び分離阻止コロ82によって分離された原稿は、第一搬送コロ93(駆動コロ)及び従動コロ94に挟持されつつ、原稿面が下になるように反転経路95に沿って反転・搬送される。原稿は、反転ガイド98を通過してスリットガラス72に搬送された後、反転排紙ガイド99によって排紙経路100にすくい上げられるようにして搬送される。また、スリットガラス72上には反射ガイド板101が設けられており、この反射ガイド板101は読取時の白基準を構成している。
そして、排紙経路100に搬送された原稿は、第二搬送コロ102(駆動コロ)及び従動コロ103に挟持されて搬送された後、排紙コロ104(駆動コロ)及び従動コロ105に挟持されて排紙経路100からADF76の外部である外装カバー107上に排紙される。
【0013】
ADF76の下面には、コンタクトガラス73上に載置された原稿をコンタクトガラス73に押圧する圧板77が配置されている。圧板77は、コンタクトガラス73の表面を覆っており、原稿読み取り時の白基準となる反射板としての役割も果たしている。
また、ADF76には、カード等の原稿を出し入れ自在に収容すると共に内底部においてコンタクトガラス73を露出させた原稿装着用の開口部10が貫通形成されている。開口部10は、図中右端部側、すなわち副走査方向終端部側のコンタクトガラス73の表面を露出させるように開口されている。
なお、圧板77は本発明における「原稿保持手段」を構成している。ここで原稿保持手段は、ADF76に装着された圧板77のみならず、ADFと一体化されていない圧板単体、ADF自体を含む概念である。また、原稿保持手段がコンタクトガラス面を開閉自在とするように構成されていてもよいし、コンタクトガラス面上に固定配置された原稿押さえ部材であってもよい。固定的とは、画像読取装置上部の筐体上に固定されていることである。また、画像読取装置がカード類専用の画像読取装置であってもよい。
【0014】
画像読取手段70は、露光ランプ74と第一ミラー75等を備えている。本発明に係る画像読取装置Sは、コンタクトガラス73に載置された原稿(通常原稿)を読み取る第一読取モードと、開口部10からコンタクトガラス73に載置されたカード類等の原稿読み取る第二読取モードと、ADF76に載置された原稿の画像を搬送の過程でスリットガラス72を介して読み取る第三読取モードと、3種類の原稿読み取りモードを備えている。
露光ランプ74と第一ミラー75は、第一読取モードの場合、図1中、Bの位置から右側(副走査方向)へ移動し、第二読取モードの場合はCの位置から右側へ、すなわち開口部10部分を副走査方向へ移動し、第三読取モードの場合はAの位置(スリットガラス72の直下)にて停止する。そして、露光ランプ74によって原稿画像を読み取った後、この反射光を公知のように第一ミラー75及び図示しないレンズを介してCCD等の結像素子に結像する。
【0015】
〔第一の実施形態〕
本発明の第一の実施形態に係る原稿取出手段について、図2乃至4に基づいて説明する。図2は、第一の実施形態に係る原稿取出手段を備えた原稿読取装置を示した斜視図である。図3は、原稿取出手段(退避位置)を示した図2のX−X断面図である。図4は、原稿取出手段(原稿取出位置)を示した図2のX−X断面図である。本実施形態に係る画像読取装置は、開口部からコンタクトガラス上に載置された原稿を、コンタクトガラス面から浮上させて取り出しやすくする原稿取出手段を備えた点に特徴がある。
開口部10は、ADF76の図中右側且つ前面側に配置されており、内部に載置されるカード等の原稿の大きさに合わせて開口されている。開口部10には、例えば免許証、健康保険証やIDカード等のカード状の原稿を載置することができる。
開口部10の一側面には、開口部10に連続して凹部11が形成されており、凹部11内には本実施形態に係るレバー13(原稿取出手段)が、配置されている。また、開口部10の他の側面には、開口部10に連続して原稿取出用凹部12が形成されている。
【0016】
レバー13は、先端部に原稿1を浮上させる爪状の浮上部材14と、後端部にレバー13を回動させるための押圧部15(操作部)と、を備えている。また、中間部に位置する回動軸16においてADF76に回動自在に軸支されている。そして、押圧部15を押圧していない状態においては、浮上部材14が自重により下方に下がるように構成されている。
浮上部材14は、原稿1がコンタクトガラス73に載置されている状態において、原稿1とコンタクトガラス73との間に進入していない位置(退避位置)にある(図3)。
【0017】
図4に示すように、押圧部15を図中矢印D方向(浮上方向)に押圧すると、浮上部材14の先端が原稿1の端部1aと接触する。浮上部材14は原稿1とコンタクトガラス73との間に進入し、原稿1をコンタクトガラス73から浮上させる(原稿取出位置)。なお、原稿1の端部は、浮上部材14と接触した後、浮上部材14の上面をすべりながら徐々に浮上する。
すると、原稿1の端部1aと開口部10の側面10aとの隙間Eが広がるので、操作者は、開口部10の上方、又は原稿取出用凹部12から原稿1の端部をつまみ上げて取り出すことができる。
また、押圧部15への押圧を解除することで、レバー13は、その自重により押圧時とは反対の方向(図中反時計回り方向)に回動して、退避位置に戻る。
以上のように、本実施形態によれば、開口部内のコンタクトガラス面に載置された原稿を、原稿取出手段によりコンタクトガラス面から浮上させることができるので、原稿を容易に取り出すことができる。
【0018】
〔第二の実施形態〕
本発明の第二の実施形態について、図5に基づいて説明する。図5は、第二の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した断面図である。本実施形態に係る原稿取出手段は、浮上部材を退避位置に弾性付勢する付勢部材を備えた点に特徴がある。以下、第一の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
図示するレバー17(原稿取出手段)の浮上部材14側には、バネ18(弾性付勢部材)の一端部側が固定され、バネ18の他端部側はADF76に固定されており、浮上部材14が退避位置方向に弾性付勢されている。このバネ18の付勢力に対抗する力にて押圧部15を矢印D方向に押圧することにより、第一の実施形態と同様に、原稿1を開口部10から取り出すことができる。また、押圧部15への押圧を解除した場合には、バネ18の付勢力により、浮上部材14が退避位置に戻る(図5)。
このような構成とすることで、原稿1を取り出した後、浮上部材14が確実に退避位置に戻るので、浮上部材14がコンタクトガラス73の上方に位置している状態で次の原稿が載置される虞がなくなる。
なお、バネ18の代わりに、他の弾性材料、例えば板バネやゴム等を用いてもよい。また、浮上部材を退避位置に付勢することができれば、回動軸16にねじりコイルバネを配置して付勢する等、他の付勢方法を用いてもよい。
【0019】
〔第三の実施形態〕
本発明の第三の実施形態について、図6及び図7に基づいて説明する。図6は、第三の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した断面図である。図7は、第三の実施形態に係る原稿取出手段(原稿取出位置)を示した断面図である。本実施形態に係る原稿取出手段は、浮上部材の先端部にコンタクトガラス面を傷つけないようにする緩衝部材を備えた点に特徴がある。以下、第一及び第二の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
レバー19(原稿取出手段)は、浮上部材14の先端部に薄板状のシート部材20(緩衝部材)を備えている。シート部材20は、退避位置にあるとき、及び原稿1を浮上させる際に、その先端部がコンタクトガラス73に当接する。従って、シート部材20を柔軟性や弾力性のある素材から構成したり、コンタクトガラス73と接触するシート部材20の角部を面取り加工してR形状としたりして、当接時にコンタクトガラス73を傷つけないように構成する。また、原稿1を浮上させるときに、シート部材20が下方に湾曲して原稿1を落下させない程度の材質(例えばマイラなど薄い樹脂)や硬度とする。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、浮上部材の先端部に緩衝部材を備えたので、コンタクトガラス面を傷つけることがない。また、シート部材が薄板状であるので、原稿取出時に原稿とコンタクトガラスとの間に容易に進入することができ、原稿を浮上させやすくなる。
なお、本実施形態に係るレバーに第二の実施形態の弾性付勢部材を備えた構成としてもよい。
【0021】
〔第四の実施形態〕
本発明の第四の実施形態について図8に基づいて説明する。図8は、第四の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した断面図である。本実施形態に係る原稿取出手段は、シート部材(緩衝部材)を弾力性のある素材から構成した点に特徴がある。以下、第一乃至第三の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
レバー21の先端部に取り付けられたシート部材22は弾力性を有しており、図示するように、退避位置にあるときに先端部がコンタクトガラス73と当接して弾性変形するように構成されている。このとき、シート部材22の先端部とコンタクトガラス73の間に形成される角度θ1と、シート部材22の後端部側とコンタクトガラス73の間に形成される角度θ2との間には、θ1<θ2の関係がある。
この状態から押圧部15を矢印D方向に押圧すると、シート部材22が変形前の形状に少しずつ戻りながらコンタクトガラス73の表面に沿って滑り、原稿1とコンタクトガラス73と間に進入する。このように、シート部材22が弾性変形した状態で原稿1とコンタクトガラス73との間に進入するので、第一乃至第三の実施形態に比べて、シート部材22の進入時に、その先端部とコンタクトガラス73との角度がより小さい状態となる。従って、原稿1を、より容易に浮上させることができる。
なお、本実施形態に係るレバーに第二の実施形態の弾性付勢部材を備えた構成としてもよい。
【0022】
〔開口部、原稿、及び原稿取出部材の関係について〕
ここで、開口部、原稿、及び原稿取出部材の関係について説明する。図9は、開口部部分を拡大して示した断面図である。図10は、図9の矢印F方向から開口部周辺を観察した図である。
図10に示すように、開口部10を介して読み取る原稿1の大きさとして設定された寸法(規格寸法等)をL1×L2、開口部10の大きさをL3×L4とすると、原稿1寸法のバラツキを吸収するため、開口部10には原稿1の大きさに対して所定の隙間La、Lb(余裕分)を設ける必要がある。また、図9に示すように、支点1bを中心として原稿1を回転させてコンタクトガラス73から浮上させることから、隙間Laについては、支点1bから最も離れた原稿1の端点1cの軌跡Fを考慮し、原稿1の回転時に端点1cが側面10aと当接しないように決定する。
【0023】
ここで、隙間La、Lbの部分は、コンタクトガラス73側から見ると、基本的に光を反射しない部分であるため、画像を読み取ったときに黒色として認識される。一方で、圧板77は白色であることから、原稿1を読み取った画像の周囲に黒い縁が現れることとなる。
そこで、黒い縁の出現を極力少なくするために、少なくともコンタクトガラス73と対抗する浮上部材14の下面を、圧板77と同色の白色、言い換えれば原稿読取時における白基準色とすることが望ましい。
【0024】
また、シート部材22についても同様に、少なくともコンタクトガラス73と対抗する下面を、圧板77と同色の白色、言い換えれば原稿読取時における白基準色とするか、又は、シート部材22自体を無色透明とすることが望ましい。シート部材22を白色とした場合には、圧板77と浮上部材14の色とも同色になることから、読み取り後の画像から原稿1の画像のみを切り分ける処理(画像処理等)が容易となる。また、シート部材22を無色透明とした場合には、露光ランプ74(図1参照)からの光がシート部材22を透過するため、シート部材22が読み取り画像に写り込みにくいという特徴を有する。仮に、原稿1の下部にシート部材22が進入したまま画像の読み取りが行われた場合であっても、原稿1の画像情報を欠落させることなく画像の読み取りを行うことができる。従って、余裕をもってシート部材22の長さL7を設定することができる。
さらに、シート部材22及び浮上部材14は、レバー21の動作に伴って回動する部材であるため、開口部10の長さL4と、シート部材22の長さL5(又は浮上部材14の長さL6)との間に、シート部材22及び浮上部材14の回動動作をスムーズにするための所定の隙間Lc(遊び)を設ける必要がある。しかしながら、隙間Lcを大きくすると読み取り画像に発生する黒色の縁が大きくなり、読み取り画像の質が低下するという問題がある。従って、隙間Lcについては、シート部材22及び浮上部材14の回動動作を妨げず、かつ黒色の縁が極力出現しないように決定する。
以上、第四の実施形態に係る各部材を基礎として説明したが、上記事項は、他の実施形態の開口部、浮上部材及びシート部材にも同様に当てはまる。
【0025】
〔第五の実施形態〕
本発明の第五の実施形態について図11に基づいて説明する。図11は、第五の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した断面図である。本実施形態に係る原稿取出手段は、浮上部材がコンタクトガラス面に沿ってスライド移動する点に特徴がある。以下、第一乃至第四の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
レバー23(原稿取出手段)は、先端部に原稿1と接触して原稿1を浮上させる浮上部材24と、後端部に浮上部材24を原稿1に対して出没自在に移動させる操作部25と、を備えている。
浮上部材24は、原稿1に向かって突出したときに、原稿1とコンタクトガラス73と間に進入してコンタクトガラス73から浮上させる楔状の部材であり、先端部から後部側に向かってコンタクトガラス73からの距離が増大するように構成された傾斜面24aを有している。また、浮上部材24の先端部には、シート部材22が固定されている。なお、シート部材22の代わりにシート部材20を備えてもよいし、シート部材自体を備えない構成としてもよい。シート部材22は、その先端部がコンタクトガラス73に接触して弾性変形しており、レバー23の出没に伴ってコンタクトガラス73表面に沿って摺動する。
操作部25を矢印G方向に移動させると、原稿1の端点1c(図9参照)とコンタクトガラス73との間に形成されたわずかな間隙内にシート部材22が進入し、さらに浮上部材24の先端が進入する。原稿1は、傾斜面24aに沿って滑り上がり、コンタクトガラス73から浮上する。従って、本実施形態においても操作者は容易に原稿の端部をつまみ上げて取り出すことができる。
なお、原稿を取り出した後は、レバー23を退避位置に戻すことで、次の原稿を載置することができる。
【0026】
〔第六の実施形態〕
本発明の第六の実施形態について図12に基づいて説明する。図12は、第六の実施形態に係る原稿取出手段(退避位置)を示した断面図である。本実施形態に係る原稿取出手段は、浮上部材を退避位置に弾性付勢する付勢部材を備えた点に特徴があり、第二の実施形態に類似する構成である。以下、第一乃至第五の実施形態と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係るレバー26の後端部側には、バネ27(弾性付勢部材)が配置されている。バネ27は、操作部25と外装カバー107との間のレバー26の軸部28に遊嵌されており、浮上部材24を退避位置方向に弾性付勢している。バネ27の付勢力に対抗する力にて操作部25を矢印G方向に押圧することで、原稿1をコンタクトガラス73から浮上させることができる。また、操作部25への押圧を解除した場合には、バネ27の付勢力により、浮上部材24が退避位置に戻る。もちろん、バネ27以外の弾性材料や、他の態様の付勢方法を用いてもよいことは言うまでもない。
以上のように、本実施形態によれば、第二の実施形態と同様に、原稿を取り出した後、浮上部材が確実に退避位置に戻るので、浮上部材がコンタクトガラスの上方に位置している状態で次の原稿が載置される虞がなくなる。
【0027】
〔画像形成装置〕
以上説明した本発明に係る画像読取装置は、複写機やFAX、或いはこれらの機能を複合的に備えた画像形成装置に適用可能である。以下、複写機について簡単に説明する。
図13は、デジタル複写機の概略構成図である。複写機110は、ADF76及び画像読取手段70を備えた画像読取装置Sと、画像読取装置Sによって読み取られた原稿画像を転写紙に画像形成する画像形成手段120とを備えている。画像読取装置Sは、本発明に係る原稿取出手段を備えている。
画像形成手段120は、転写紙を積載する第1トレイ208、第2トレイ209及び第3トレイ210と、夫々のトレイに積載された転写紙を給送する第1給紙ユニット211、第2給紙ユニット212、及び第3給紙ユニット213と、を備えている。各給紙ユニットよって給送された転写紙は、さらに縦搬送ユニット214によって感光体215に当接する位置まで搬送される。
画像読取手段70によって読み取られた原稿の画像データは、書き込みユニット257からのレーザによって感光体215に書き込まれ、現像ユニット227を通過することによってトナー像が形成される。そして、転写紙は感光体215の回転と等速で搬送ベルト216によって搬送されながら、感光体215上のトナー像が転写される。その後、定着ユニット217にて画像を定着させ、排紙ユニット218に搬送された後、排紙トレイ219に排紙される。
【符号の説明】
【0028】
1…原稿、1a…端縁、1b…支点、1c…端部、10…開口部、10a…側面、11…凹部、12…原稿取出用凹部、13…レバー、14…浮上部材、15…押圧部、16…回動軸、17…レバー、18…バネ、19…レバー、20…シート部材、21…レバー、22…シート部材、23…レバー、24…浮上部材、24a…傾斜面、25…操作部、26…レバー、27…バネ、28…軸部、70…画像読取手段、72…スリットガラス、73…コンタクトガラス、74…露光ランプ、75…第一ミラー、76…ADF、77…圧板、79…原稿載置台、80…コロ、81…分離ベルト、82…分離阻止コロ、85…駆動コロ、85a…軸、86…従動コロ、90…スプリング、91…ワンウェイクラッチ、93…第一搬送コロ、94…従動コロ、95…反転経路、98…反転ガイド、99…反転排紙ガイド、100…排紙経路、101…反射ガイド板、102…第二搬送コロ、103…従動コロ、104…排紙コロ、105…従動コロ、107…外装カバー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開平8−234622号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を載置するコンタクトガラスと、該コンタクトガラス面に載置された前記原稿の画像を光学的に読み取る画像読取手段と、該コンタクトガラス面上の前記原稿を定置させる原稿保持手段と、該原稿保持手段によって定置された前記原稿を取り出す原稿取出手段と、を備えた画像読取装置であって、
前記原稿保持手段には、前記原稿を出し入れ自在に収容すると共に内底部に前記コンタクトガラス面を露出させた原稿装着用の開口部が貫通形成されており、
前記原稿取出手段を操作することにより、前記開口部内の前記コンタクトガラス面に載置された前記原稿を該コンタクトガラス面から浮上させるように構成されていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記原稿取出手段は、前記原稿と先端部で接触することによって前記コンタクトガラス面から前記原稿を浮上させる浮上部材を備えていることを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記浮上部材の先端部に、前記コンタクトガラス面を傷つけることがない緩衝部材を備えていることを特徴とする請求項2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記緩衝部材は、少なくとも前記原稿の取り出し時において、前記コンタクトガラスに当接して弾性変形した状態で、該コンタクトガラス面と前記原稿との間に進入するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記緩衝部材の少なくとも下面が原稿読み取り時における白基準色であることを特徴とする請求項3又は4記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記緩衝部材が透明であることを特徴とする請求項3又は4記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記浮上部材は前記原稿保持手段によって浮上方向へ回動自在に支持されており、浮上方向に回動したときに前記原稿を前記コンタクトガラス面から浮上させるように構成されていることを特徴とする請求項2乃至6の何れか一項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記浮上部材は、その先端部に前記コンタクトガラス面に対して傾斜する傾斜面を備えるとともに、前記先端部を前記コンタクトガラス面と前記原稿との隙間に出し入れ自在に構成されており、前記先端部が前記隙間内に進入したときに前記原稿が前記傾斜面に沿って浮上するように構成されていることを特徴とする請求項2乃至6の何れか一項記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記原稿取出手段は、前記浮上部材を前記原稿と前記コンタクトガラスとの間に進入しない退避位置に付勢する弾性付勢部材を備えていることを特徴とする請求項2乃至8の何れか一項記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記浮上部材は、自重により前記原稿と前記コンタクトガラスとの間に進入しない退避位置に戻るように構成されていることを特徴とする請求項7記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記原稿保持手段は、前記コンタクトガラス面を開閉する圧板であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項記載の画像読取装置。
【請求項12】
前記原稿保持手段は、前記コンタクトガラス面上に固定配置された原稿押さえ部材であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項記載の画像読取装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項記載の画像読取装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−145769(P2012−145769A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4025(P2011−4025)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】