説明

画像読取装置

【課題】白基準板の読取を利用することによって、簡易な方法で光学系の汚れを検出し報知する画像読取装置を提供する。
【解決手段】撮像素子45を備え、読取データの補正用に白基準板42を有した画像読取装置であって、白基準板42の読取を複数回数行い、撮像素子45に対する出力が、主走査方向の同じ位置に黒画素が所定回数連続して検出された場合に光学系の汚れと判別する汚れ検出手段1と、汚れを判別したときに警告を報知する報知手段11とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトガラスやミラー等の光学系の汚れを自動検知する画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動原稿送り機構(ADF)を備えた画像読取装置では、コンタクトガラスに汚れがある状態で原稿を読み取ると、その汚れは、読み取った画像データ中に副走査方向に伸びる黒線となって表れる。フラットベットスキャナで原稿読取する場合も、ミラーに埃などの付着による汚れがあると、上記コンタクトガラスの汚れの場合と同様の問題がある。
【0003】
近年、このコンタクトガラス上の汚れを自動検知する画像読取装置が提案されている。例えば、次の特許文献には、コンタクトガラスを移動させながら白基準板を読み取って、前回画像データと比較して連続していれば汚れと判断して報知する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2001−272829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この種の汚れ検知方法では、前回データとの比較だけにより汚れを判断しているため、汚れの誤検出が頻繁に発生する可能性がある。汚れのレベルを検出基準として設定しておけば誤検出を少なくするように調整できるが、微調整が必要であるため、きわめて煩わしい。また、コンタクトガラス上のほとんど使用しない位置の汚れまでも検出してしまうので、過度の報知が繰り返される場合もある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべく提案されたもので、その目的は、白基準板の読取を利用することによって、簡易な方法で光学系の汚れを検出し報知する画像読取装置を提供することにある。また、過度の汚れ検出・報知が行われないようにすることも、主たる目的に含まれる。
【0006】
ここで、光学系には、コンタクトガラス、ミラー、光源などが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の画像読取装置は、撮像素子を備え、読取データの補正用に白基準板を有した画像読取装置であって、白基準板の読取を複数回数行い、撮像素子に対する出力が、主走査方向の同じ位置に黒画素が所定回数連続して検出された場合に光学系の汚れと判別する汚れ検出手段と、汚れを判別したときに警告を報知する報知手段とを備えている。
【0008】
請求項2では、請求項1において、報知手段は警告を報知する際に汚れの位置を表示部に表示させるようにしている。
【0009】
請求項3では、請求項1または2において、読取時に原稿サイズを検知する原稿サイズ検知手段をさらに備えており、汚れ検出手段は、原稿サイズ検知手段が検知した原稿幅の複数回集計により汚れ検出範囲を特定し、その範囲内のみを汚れ検出の対象とすることを特徴とする。
【0010】
請求項4では、請求項1または2において、画像読取装置は音声再生部をさらに備えており、汚れ検出手段は汚れ有りを判別した回数を主走査方向の位置ごとにカウントし、報知手段は同一位置に対する汚れ有り回数が一定回数を超えたときに、音声再生部より音声で通知する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜4では、白基準板を複数回読み取らせ、撮像素子に対する出力が主走査方向の同じ位置に黒画素が所定回数連続して検出された場合に光学系の汚れと判断するようにしているので、簡単にコンタクトガラス等の汚れを検出することができる。特に、補正を行うために読み取るべき白基準板を複数回読み取るだけなので、汚れ検出のために部品等を使う必要がなく、低コストで装置を構成することができる。
【0012】
特に、読み取った画像データの黒画素の連続性のみをチェックしているので、簡易なソフトウェアで汚れを検出することができる。また、白基準板の読取回数や汚れ判断のための連続回数を適宜調整すれば、ノイズ信号など他の要因による黒画素データの連続を誤って汚れと判断することを防止することができる。
【0013】
また、汚れ検出を、電源投入時、一定時間ごと、所定操作時などの適当なタイミングで行うようにすれば、そのタイミングのつど汚れがあれば報知されるので、使用する前にあらかじめ清掃しておくことができる。例えば、最初に出勤した人が電源を投入したときに検出するようにすれば、1日の最初に汚れを取り除いておくことができる。
【0014】
請求項2では、汚れを清掃すべき警告とともに、汚れの位置を表示部に表示するようにしているので、利用者はコンタクトガラス等の汚れがある場所を判別でき、すみやかに掃除することができる。
【0015】
請求項3では、原稿サイズ検知手段により検知された原稿幅を集計しておくことにより汚れ検出範囲を特定しているので、範囲外の汚れは対象とならず、過度の汚れ検出報知がなされない。
【0016】
請求項4では、汚れを判別したときには音声で警告しているので、利用者は迅速に汚れに対して対応することができる。また、同一位置に対する、汚れ有りと判別した回数が一定回数を超えたときのみ音声警報を出力しているので、過度の音声警報が出力されず、耳障りになることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面とともに説明する。
【0018】
以下の実施例では画像読取装置として複合機を示しているが、これに限定されることはなく、ファクシミリ装置、複写装置などでもよい。また、以下の実施例では、ADFのコンタクトガラス、フラットベッドスキャナのミラーの汚れを検出するものを示しているが、これには限定されず、光学系全般の汚れ検出にも適用可能である。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の画像読取装置の基本構成を示すブロック図である。
【0020】
この画像読取装置(複合機)Fは、MPU等で構成された制御手段1と、NCU2と、モデム3と、読取部4と、ROM5と、RAM6と、画像メモリ7と、CODEC8と、プリンタ9と、操作部10と、表示部11と、音声再生部12とを備えている。
【0021】
この複合機Fは、読取部4で読み取った画像データを順次符号化したのち、いったん画像メモリ11に蓄積し、モデム3、NCU2を介して、相手先のファクシミリ装置(不図示)に対して送信する一方、画像データを受信したときには、受信した画像データを画像メモリ7に蓄積し、順次読み出し復号して、プリンタ9によって印字出力するファクシミリ送受信基本機能と、読取部4で読み取った画像データをプリンタ9により記録紙に出力する複写機能とを備えている。
【0022】
制御手段1は、上記各機能を実行するほか、後述するコンタクトガラス上の汚れを検出するための汚れ検出手段として動作する。
【0023】
図2(a)は、読取部4の要部構成を示した模式図である。この読取部4は、自動原稿送り機構41、白基準板42、コンタクトガラス43、光源44、撮像素子45(CCD)、画像処理部46を少なくとも備え、またその他の光学系の各種部材も含んでいる。また、自動原稿送り機構41は、原稿幅を検知するセンサで構成された原稿サイズ検知手段41aを備えている。
【0024】
ここで、自動原稿送り機構(ADF)41は原稿Pの画像を走査するために原稿Pを1枚ずつ自動的に供給する機構であって、この自動原稿送り機構41によって原稿がコンタクトガラス43上に供給され、一定速度で搬送されつつ画像が読み取られる。また、光源44は、撮像素子45で画像を読み取るために、搬送される原稿Pに対して光を照射する装置である。
【0025】
図2(b)は、コンタクトガラス43に対する、走査方向と原稿搬送方向の関係を示す図であり、D1が主走査方向、D2は搬送方向(副走査方向)を示している。
【0026】
撮像素子45は、原稿の表面画像を読み取り、電気信号からなる画像データに変換して出力する素子である。画像処理部46は、撮像素子45から出力された画像データをアナログ信号からデジタル信号に変換する処理、白基準データおよび黒基準データによるシェーディング補正を行う処理、画像データを2値化する処理などを実行する。
【0027】
ここで、補正処理で使用する白基準データは、原稿を読み取る前に白基準板42をあらかじめ読み取って生成されるものである。
【0028】
本実施例では、この白基準板42の読取を、所定のタイミングで、そのタイミングのつど複数回実行し、撮像素子45に対して出力された複数回の読取結果からコンタクトガラス43上の汚れを検出するようにしている。ここで、所定のタイミングには、例えば電源投入時、一定時間ごと、所定操作時などのタイミングが含まれる。
【0029】
図3、図4は、本発明の汚れ検出手段を説明するための図であり、図3には汚れ検出動作を示すフローチャートを、図4には複数回出力された画素を模式的に表わした図を示している。なお、この例では、白基準板42を32回読み取るようにしているが、これには限定されない。
【0030】
また、汚れ検出は、汚れ検出範囲を特定して行うようにしている。すなわち、コンタクトガラス43上に汚れがあっても、その汚れが検出範囲を超える位置にあれば、それを汚れとは判断しないようにしている。
【0031】
具体的には、原稿サイズ検知手段41aによって検知された原稿サイズを集計しておき、その集計値により汚れ検出範囲が特定される。例えば、ジョブごとあるいは読取ページごとに、読取原稿サイズを原稿幅センサ41aで検知し、これをサイズごとにRAM6上のテーブルに直近100回分集計する。図5には、テーブル内容の3例を示している。(a)の場合は、直近100回中にA4、B4、A3すべての読取実績があるので、もっとも大きいサイズのA3の原稿幅を汚れ検出範囲として特定する。同様に(b)の場合はA3の読取実績がないのでB4幅、(c)の場合は読取実績がA4のみなのでA4幅、が汚れ検出範囲として特定される。
【0032】
以下、図3のフローチャートにしたがい汚れ検出動作を説明する。
【0033】
汚れ検出動作が開始されると、まず汚れ検出手段1は、白基準板42を32回繰り返して読み取らせる。次に、これら読み取った32回分のデータを参照して、同一画素について黒データが20回以上連続しているかどうかを判断する(以上、101、102)。例えば、図4では、主走査方向の位置A、位置Bではともに20回以上連続して黒画素が検出されていることを示している。
【0034】
次に、20回以上連続して黒画素を検出した位置があれば、上記の黒画素検出位置が汚れ検出範囲内かどうかを判別し、範囲内であれば表示部11に対して、コンタクトガラスを清掃すべきメッセージを報知表示する。音声報知が必要であれば、音声再生部12から音声でも報知する(以上、103〜106)。
【0035】
黒画素が20回以上連続して検出された位置があっても、汚れ検出範囲内でなければ、表示や音声による報知は行わない(103のN)。図4中の位置Aは20回以上の黒画素データが連続するが、このときの汚れ検出範囲がB4までであれば、位置Aは汚れ有りと判別されない。
【0036】
このように、白基準板42を所定のタイミングで複数回読み取らせ、読み取った画像データの黒画素の連続性のみをチェックしているので、簡単にコンタクトガラス43の汚れを検出することができる。また、白基準板42の読取回数や汚れ判断のための連続回数を適宜調整すれば、ノイズ信号など他の要因による黒画素データの連続を誤って汚れと判断することを防止することができる。
【0037】
特に、汚れ検出範囲を特定しておき、その範囲を超えて検出された汚れは無視するようにしているので、必要以上の汚れ検出報知がなされない。
【0038】
また、汚れ検出を、電源投入時、一定時間ごと、所定操作時などの適当なタイミングで行うようにすれば、そのタイミングのつど汚れ検出が報知されるので、報知されたタイミングであらかじめ清掃しておくことができる。例えば、最初に出勤した人が電源を投入したときに汚れ検出動作を実行するようにすれば、1日の最初に汚れを取り除いておくことができる。
【0039】
なお、コピー操作時やファクシミリ送信操作時に汚れ検出を行わせる場合は、汚れ検出動作によって汚れを判別したときに汚れた画像を出力させないために、原稿読取動作を実行する前に汚れの報知をして、原稿読取動作を開始させないことが望ましい。
【0040】
音声報知は例えば、連続して警報出力されないように制御してもよいし、制御スイッチで出力禁止にできるようにしてもよい。また、過度の音声報知を避けるために、主操作方向の位置ごとに汚れ有りと判別した回数をカウントし、同一位置に対する汚れ有り回数が一定数以上になったときのみ音声を出力するようにしてもよい。また、汚れ有り回数が一定以上になったあとに汚れ検出動作ごとに音声報知がなされると煩わしいので、1度音声報知を行ったあと、指定回数汚れ有りが検出されるまで音声報知を行わないようにすることもできる。
【0041】
図6は、表示部11に対する報知表示の一例を示す図である。表示部11には、清掃を促すメッセージとともに、検出した汚れの位置が視覚的にわかりやすく表示される。このような表示により、汚れの位置をわかりやすく判別できるので、報知があったときにすみやかにコンタクトガラスを掃除することができる。
【0042】
本実施例では、電源投入時などのタイミングに汚れ検出を行っているが、原稿読取が行われる際、自動原稿送りが開始されて原稿幅センサ41aが原稿幅を検知したのちに実行してもよい。その場合は、上記のような原稿幅の統計によらず、そのとき原稿幅センサ41aが検知した範囲を汚れ検出範囲とすればよい。このように原稿読取のつど汚れ検出を行えば、そのときの報知により確実に汚れを認識でき、汚れを取り除くことができ、むだのないプリント出力を行うことができる。
【0043】
上記の実施例では、ADF方式におけるコンタクトガラスの汚れ検出手段を示したが、フラットベッドスキャナ(FBS)方式の読取にも適用可能である。FBS方式の場合は、光学系の例えばミラーの汚れを検出する。ミラーのあらゆる位置で反射した光は撮像素子に入射するが、最終的には原稿幅によっては利用されない部分があり、上記のADF方式のコンタクトガラスの汚れ検出と同様に汚れ検出範囲を特定しておけば、ミラーの利用されない位置での汚れの検出報知を禁止することができる。なお、FBSの場合の原稿サイズ検知手段(原稿幅センサ)は装置本体側に設置され、原稿押さえカバーを閉じる直前に、FBSに載置した原稿幅を検出するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の画像読取装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は読取部の要部構成を示した模式図、(b)はコンタクトガラスに対する走査方向と原稿搬送方向の関係を示す図である。
【図3】汚れ検出の基本動作を示すフローチャートである。
【図4】撮像素子に出力された画素を模式的に表わした図である。
【図5】汚れ検出範囲の特定を説明するための図である。
【図6】汚れ検出報知表示の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 制御手段(汚れ検出手段)
4 読取部
41 自動原稿送り機構
41a 原稿サイズ検知手段
42 白基準板
43 コンタクトガラス
44 光源
45 撮像素子
46 画像処理部
11 表示部(報知手段)
12 音声再生部(報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を備え、読取データの補正用に白基準板を有した画像読取装置であって、
上記白基準板の読取を複数回数行い、上記撮像素子に対する出力が、主走査方向の同じ位置に黒画素が所定回数連続して検出された場合に光学系の汚れと判別する汚れ検出手段と、汚れを判別したときに警告を報知する報知手段とを備えている画像読取装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記報知手段は、警告を報知する際に、汚れの位置を表示部に表示させるようにしている画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
読取時に原稿サイズを検知する原稿サイズ検知手段をさらに備えており、
上記汚れ検出手段は、上記原稿サイズ検知手段が検知した原稿幅の複数回集計により汚れ検出範囲を特定し、その範囲内のみを汚れ検出の対象とすることを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
画像読取装置は、音声再生部をさらに備えており、
上記汚れ検出手段は、汚れ有りを判別した回数を、主走査方向の位置ごとにカウントしており、
上記報知手段は、同一位置に対する上記汚れ有り回数が一定回数を超えたときに、上記音声再生部より音声で通知することを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−67153(P2006−67153A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246195(P2004−246195)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】