説明

画素回路および表示装置、並びに画素回路の製造方法

【課題】シェーディング、スジムラの発生を抑止することが可能な画素回路および表示装置、並びに画素回路の製造方法を提供する。
【解決手段】画素回路101は、制御端子への駆動信号を受けて導通状態が制御される少なくとも一つのトランジスタ(TFT)111と、発光素子113と、電源用配線PSLと、有し、電源用配線PSLと発光素子113の所定電極117との間にTFT111が接続され、電源用配線133は、他の層の配線と接続されて多層配線化され、多層配線化された電源用配線と他の配線層126とが離間して対向するように補間容量C112が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electroluminescence)等の発光素子を含む画素回路およびアクティブマトリクス型表示装置、並びに画素回路の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置、たとえば液晶ディスプレイなどでは、多数の画素をマトリクス状に並べ、表示すべき画像情報に応じて画素毎に光強度を制御することによって画像を表示する。
これは有機ELディスプレイなどにおいても同様であるが、有機ELディスプレイは各画素回路に発光素子を有する、いわゆる自発光型のディスプレイであり、液晶ディスプレイに比べて画像の視認性が高い、バックライトが不要、応答速度が速い、等の利点を有する。
また、各発光素子の輝度はそれに流れる電流値によって制御することによって発色の階調を得る、すなわち発光素子が電流制御型であるという点で液晶ディスプレイなどとは大きく異なる。
【0003】
有機ELディスプレイにおいては、液晶ディスプレイと同様、その駆動方式として単純マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とが可能であるが、前者は構造が単純であるものの、大型かつ高精細のディスプレイの実現が難しいなどの問題があるため、各画素回路内部の発光素子に流れる電流を、画素回路内部に設けた能動素子、一般にはTFT(Thin Film Transistor、薄膜トランジスタ)によって制御する、アクティブマトリクス方式の開発が盛んに行われている。
【0004】
図1は、一般的な有機EL表示装置の構成を示すブロック図である。
この表示装置1は、図1に示すように、画素回路(PXLC)2aがm×nのマトリクス状に配列された画素アレイ部2、水平セレクタ(HSEL)3、ライトスキャナ(WSCN)4、水平セレクタ3により選択され輝度情報に応じたデータ信号が供給される信号線(データ線)信号SGL1〜SGLn、およびライトスキャナ4により選択駆動される走査線WSL1〜WSLmを有する。
なお、水平セレクタ3、ライトスキャナ4に関しては、多結晶シリコン上に形成する場合や、MOSIC等で画素の周辺に形成することもある。
【0005】
図2は、図1の画素回路2aの一構成例を示す回路図である(たとえば特許文献1、2参照)。
図2の画素回路は、多数提案されている回路のうちで最も単純な回路構成であり、いわゆる2トランジスタ駆動方式の回路である。
【0006】
図2の画素回路2aは、pチャネル薄膜電界効果トランジスタ(以下、TFTという)11およびTFT12、キャパシタC11、発光素子である有機EL発光素子(OLED)13を有する。また、図2において、SGLは信号線を、WSLは走査線をそれぞれ示している。
有機EL発光素子は多くの場合整流性があるため、OLED(Organic Light Emitting Diode)と呼ばれることがあり、図2その他では発光素子としてダイオードの記号を用いているが、以下の説明においてOLEDには必ずしも整流性を要求するものではない。
図2ではTFT11のソースが電源電位VCCに接続され、発光素子13のカソード(陰極)は接地電位GNDに接続されている。図2の画素回路2aの動作は以下の通りである。
【0007】
ステップST1
走査線WSLを選択状態(ここでは低レベル)とし、信号線SGLに書き込み電位Vdataを印加すると、TFT12が導通してキャパシタC11が充電または放電され、TFT11のゲート電位はVdataとなる。
【0008】
ステップST2
走査線WSLを非選択状態(ここでは高レベル)とすると、信号線SGLとTFT11とは電気的に切り離されるが、TFT11のゲート電位はキャパシタC11によって安定に保持される。
【0009】
ステップST3
TFT11および発光素子13に流れる電流は、TFT11のゲート・ソース間電圧Vgsに応じた値となり、発光素子13はその電流値に応じた輝度で発光し続ける。
上記ステップST1のように、走査線WSLを選択してデータ線に与えられた輝度情報を画素内部に伝える操作を、以下「書き込み」と呼ぶ。
上述のように、図2の画素回路2aでは、一度Vdataの書き込みを行えば、次に書き換えられるまでの間、発光素子13は一定の輝度で発光を継続する。
【0010】
上述したように、画素回路2aでは、駆動(ドライブ)トランジスタであるTFT11のゲート印加電圧を変化させることで、EL発光素子13に流れる電流値を制御している。
このとき、pチャネルのドライブトランジスタのソースは電源電位VCCに接続されており、このTFT11は常に飽和領域で動作している。よって、下記の式1に示した値を持つ定電流源となっている。
【0011】
(数1)
Ids=1/2・μ(W/L)Cox(Vgs−|Vth|)2 …(1)
【0012】
ここで、μはキャリアの移動度を、Coxは単位面積当たりのゲ−ト容量を、Wはゲ−ト幅を、Lはゲ−ト長を、VgsはTFT11のゲート・ソース間電圧を、VthはTFT11のしきい値をそれぞれ示している。
【0013】
単純マトリクス型画像表示装置では、各発光素子は、選択された瞬間にのみ発光するのに対し、アクティブマトリクスでは、上述したように、書き込み終了後も発光素子が発光を継続するため、単純マトリクスに比べて発光素子のピーク輝度、ピーク電流を下げられるなどの点で、とりわけ大型・高精細のディスプレイでは有利となる。
【0014】
図3は、有機EL発光素子の電流−電圧(I−V)特性の経時変化を示す図である。図3において、実線で示す曲線が初期状態時の特性を示し、破線で示す曲線が経時変化後の特性を示している。
【0015】
一般的に、有機EL発光素子のI−V特性は、図3に示すように、時間が経過すると劣化してしまう。
しかしながら、図2の2トランジスタ駆動は定電流駆動のために有機EL発光素子には上述したように定電流が流れ続け、有機EL発光素子のI−V特性が劣化してもその発光輝度は経時劣化することはない。
【0016】
ところで、図2の画素回路2aは、pチャネルのTFTにより構成されているが、nチャネルのTFTにより構成することができれば、TFT作製において従来のアモルファスシリコン(a−Si)プロセスを用いることができるようになる。これにより、TFT基板の低コスト化が可能となる。
【0017】
次に、トランジスタをnチャネルTFTに置き換えた基本的な画素回路について説明する。
【0018】
図4は、図2の回路のpチャネルTFTをnチャネルTFTに置き換えた画素回路を示す回路図である。
【0019】
図4の画素回路2bは、nチャネルTFT21およびTFT22、キャパシタC21、発光素子である有機EL発光素子(OLED)23を有する。また、図4において、SGLはデータ線を、WSLは走査線をそれぞれ示している。
【0020】
この画素回路2bでは、ドライブトランジスタとしてTFT21のドレイン側が電源電位VCCに接続され、ソースはEL発光素子23のアノードに接続されており、ソースフォロワー回路を形成している。
【0021】
図5は、初期状態におけるドライブトランジスタとしてのTFT21とEL発光素子23の動作点を示す図である。図5において、横軸はTFT21のドレイン・ソース間電圧Vdsを、縦軸はドレイン・ソース間電流Idsをそれぞれ示している。
【0022】
図5に示すように、ソース電圧はドライブトランジスタであるTFT21とEL発光素子23との動作点で決まり、その電圧はゲート電圧によって異なる値を持つ。
このTFT21は飽和領域で駆動されるので、動作点のソース電圧に対したVgsに関して上記式1に示した方程式の電流値の電流Idsを流す。
【0023】
【特許文献1】USP5,684,365
【特許文献2】特開平8−234683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
上述した画素回路は、駆動(ドライブ)トランジスタとしてのTFT21とスイッチングトランジスタとしてのTFT22とOLED23とを有する最も単純な回路であるが、電源線に印加されるパワー信号として2つの信号で切り替え、信号線に供給される映像信号も2つの信号で切り替えてしきい値や移動度を補正する構成が採用される場合もある。
あるいは、OLEDと直列に接続されるドライブ(駆動)トランジスタやスイッチングトランジスタの他に、移動度やしきい値キャンセル用のTFT等が設けられる構成が採用される場合がある。
【0025】
これらスイッチングトランジスタとしてのTFT、あるいは別途設けられるしきい値や移動度用のTFTは、アクティブマトリクス型有機ELディスプレイパネルの両側あるいは片側に配置されているライトスキャナ等の垂直スキャナによってゲートパルスが生成され、このパルス信号が配線を通してマトリクス配列された画素回路の所望のTFTのゲートに印加される。
このパルス信号が印加されるTFTが2あるいはそれ以上存在する場合には、各パルス信号を印加するタイミングが重要となる。
【0026】
ところが、画素回路に接続される駆動配線や電源ラインの配線抵抗および配線容量の影響により、パルスの遅延、トランジェントの変化、電源ラインの電圧降下によって、シェーディングやスジムラが発生する。その結果、画像にはムラやザラツキとして発生する場合もある。
【0027】
これらの問題は、パネルの大型化、高精細化が進むほど、影響が大きい。
【0028】
本発明は、シェーディング、スジムラ等の発生を抑止することが可能で、高画質の画像を得ることが可能な画素回路および表示装置、並びに画素回路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の第1の観点の画素回路は、制御端子への信号レベルに応じて導通状態が制御される少なくとも一つのトランジスタと、発光素子と、電源用配線と、有し、上記電源用配線と上記発光素子の所定電極との間に上記トランジスタが接続され、上記電源用配線は、他の層の配線と接続されて多層配線化され、上記多層配線化された電源用配線と他の配線層とが離間して対向するように補間容量が形成されている。
【0030】
本発明の第2の観点の表示装置は、マトリクス状に配列され、制御端子への信号レベルに応じて導通状態が制御される駆動トランジスタと、上記駆動トランジスタの制御端子に信号線の信号を転送するスイッチングトランジスタと、を含む複数の画素回路と、上記画素回路を形成する上記駆動トランジスタの接続ラインに供給する所定電圧を出力する第1のスキャナと、上記画素回路を形成する上記スイッチングトランジスタのゲートへの駆動信号を出力する第2のスキャナと、上記画素回路に上記第1のスキャナによる所定電圧を供給するための少なくとも一つの電源用配線と、複数の画素回路の上記トランジスタの制御端子が共通に接続され、上記第2のスキャナによる駆動信号が伝搬される少なくとも一つの駆動配線と、を有し、上記電源用配線は、他の層の配線と接続されて多層配線化され、上記多層配線化された電源用配線と他の配線層とが離間して対向するように補間容量が形成されている。
【0031】
本発明の第3の観点は、発光素子と、制御端子への信号レベルに応じて導通状態が制御される少なくとも一つのトランジスタと、を含む画素回路の製造方法であって、上記トランジスタの制御電極を第1配線層で形成する第1工程と、絶縁膜を介して上記トランジスタのチャネル形成領域を挟むように第1電極および第2電極を形成する第2工程と、上記トランジスタ上に絶縁膜を形成する第3工程と、上記トランジスタの第1電極および第2電極に、絶縁膜に形成したコンタクトを介して接続されるように第1電極用第2配線層と第2電極用第2配線層を形成する第4工程と、第1電極用第2配線層と第2電極用第2配線層上に層間膜を形成する第5工程と、上記第1電極用第2配線層と第2電極用第2配線層に、上記層間膜に形成したコンタクトを介して接続されるように第1電極用第3配線層と第2電極用第3配線層を形成する第6工程と、上記第1電極用第3配線層と層の積層方向において下層の配線層とを絶縁膜を介して対向するようにして補間容量を形成する第7工程と、上記第2電極用第3配線層に、上記平坦化膜に形成したコンタクトを介して接続されるように上記発光素子の所定電極用第4配線層を形成する第8工程とを含む。
【0032】
本発明によれば、電源用配線が多層配線化されて低抵抗化されている。これにより、電源用配線における電圧降下が抑止される。
そして、多層配線化された電源用配線とたとえばトランジスタの第2電極の配線層との間に補間容量が接続され、十分な容量を確保される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、シェーディング、スジムラ等の発生を抑止することが可能で、高画質の画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0035】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る画素回路を採用した有機EL表示装置の構成を示すブロック図である。
図7は、本第1の実施形態に係る画素回路の具体的な構成を示す回路図である。
【0036】
この表示装置100は、図6および図7に示すように、画素回路101がm×nのマトリクス状に配列された画素アレイ部102、水平セレクタ(HSEL)103、第2のスキャナとしてのライトスキャナ(WSCN)104、第1のスキャナとしてのパワードライブスキャナ(PDSCN)105、水平セレクタ103により選択され輝度情報に応じたデータ信号Vsigやオフセット信号Vofsの入力信号SINが供給される信号線SGL101〜SGL10n、ライトスキャナ104によるゲートパルス(走査パルス)GPにより選択駆動される駆動配線としての走査線WSL101〜WSL10m、およびパワードライブスキャナ105により選択的VCC(たとえば電源電圧)またはVSS(たとえば負側電圧)に設定されるパワー信号PSGが印加され駆動される駆動配線としてのパワー駆動線PSL101〜PSL10mを有する。
【0037】
なお、画素アレイ部102において、画素回路101はm×nのマトリクス状に配列されるが、図6においては図面の簡単化のために2(=m)×3(=n)のマトリクス状に配列した例を示している。
また、図7においても、図面の簡単化のために一つの画素回路の具体的な構成を示している。
【0038】
本実施形態に係る画素回路101は、図7に示すように、駆動トランジスタとしてのnチャネルTFT111、スイッチングトランジスタとしてのnチャネルTFT112、キャパシタC111、補間容量C112、有機EL発光素子(OLED:電気光学素子)からなる発光素子113、第1のノードND111、および第2のND112を有する。
なお、図7においては、有機EL発光素子113の寄生容量PCIも記述している。
【0039】
画素回路101において、パワー駆動線(電源ライン)PSL(101〜10m)と所定の基準電位Vcat(たとえば接地電位)との間に駆動トランジスタとしてのTFT111、ノードND111、および発光素子(OLED)113が直列に接続されている。
具体的には、発光素子113のカソードが基準電位Vcatに接続され、アノードが第1のノードND111に接続され、TFT112のソース(たとえば第2電極)が第1のノードND111に接続され、TFT111のドレイン(たとえば第1電極)がパワー駆動線PSLに接続されている。
そして、TFT111のゲートが第2のノードND112に接続されている。
また、キャパシタC111の第1電極が第1のノードND111に接続され、キャパシタC111の第2電極が第2のノードND112に接続されている。
信号線SGLと第2のノードND112との間にTFT112のソース・ドレインがそれぞれ接続されている。そして、TFT112のゲートが走査線WSLに接続されている。
【0040】
さらに、本実施形態においては、TFT111のソースとパワー駆動線(電源ライン)PSLとの間に十分な補間容量C112(Csub)が形成されている。
この補間容量C112は、後で詳述するように、第2配線層と第3配線層とで多層配線化された電源ラインPSLの第3配線層とソースとの間に接続されるように形成されている。
【0041】
このように、本実施形態に係る画素回路101は、ドライブトランジスタとしてのTFT111のゲート・ソース間に画素容量としてのキャパシタC111が接続されている。
【0042】
図8(A)〜(C)は、図7の画素回路の基本的な動作を示すタイミングチャートである。
図8(A)は走査線WSLに印加されるゲートパルス(走査パルス)SPを、図8(B)はパワー駆動線PSLに印加されるパワー信号PSGを、図8(C)は信号線SGLに印加される入力信号SINを、それぞれ示している。
【0043】
画素回路101の発光素子113を発光させるには、非発光期間に、図8(A)〜(C)に示すように、パワー駆動線PSLにパワー信号VSS(たとえば負電圧)を印加し、信号線SGLにオフセット信号Vofsを伝搬させTFT112を通して第2のノードND112に入力し、その後、パワー駆動線PSLにパワー信号VCC(電源電圧相当)を印加して、TFT111のしきい値を補正する。
その後、信号線SGLに輝度情報に応じたデータ信号Vsigを印加し、TFT112を通して第2のノードND112に信号を書き込む。このとき、TFT111に電流を流しながら書き込みを行うことから、同時並列的に、移動度補正が行われる。
そして、TFT112を非導通状態として、輝度情報に応じて発光素子113を発光させる。
【0044】
ところで、移動度補正においては補間容量C112を配置することで移動度補正精度を向上させることができる。ところが、高精細画面になると画素サイズの制限により十分な補間容量が形成できない。
本実施形態では、多層配線プロセスを使用することにより十分な補間容量を形成し、良好な画質の表示装置を得ている。
【0045】
本実施形態においては、図7に示すように、駆動トランジスタとしてのTFT111のソースと電源ラインPSLとの間に補間容量C112が配置されている。
このように、補間容量C112が配置され、映像信号サンプリング電位をVin、キャパシタC111の保持容量をCs、EL容量PSIをCel、補間容量C112をCsubとした場合、駆動用N型トランジスタのゲート-ソース間にホールドされる電位はVin×(1-Cs/(Cs+Cel+Csub))で表される。
また、駆動ランジスタとしてのTFT111のドレイン電流をIds、移動度補正により補正された電圧をΔVとした場合、移動度補正時間は(Cel+Csub)×ΔV/Idsで表される。
よって、補間容量C112の設定により、ホールド電位と移動度補正時間を調整することができ、ホワイトバランスの調整に必要となる。
また、高精細になる程、画素回路と有機EL発光素子113の接続部の開口率は小さくなり、Celが小さくなる。すると補間容量C112が配置できない場合にホールド電位は映像信号サンプリング電位Vinから大きく損失した電位となるため、補間容量C112が更に必要となる。また、高精細画面では画素サイズが小さいために十分な補間容量をスペース上形成できない。
【0046】
以下、電源ラインの多層配線化について説明し、これに伴って第2配線層と第3配線層とで多層配線化された電源ラインPSLの第3配線層とソースとの間に補間容量C112が接続され、十分な容量を確保できるようにした構成について説明する。
【0047】
本実施形態の表示装置100においては、画素回路101への電源ラインの電圧降下等に伴いシェーディング等のムラが発生し、画像にはムラやザラツキとして発生することを改善、すなわち画質等を改善するために、以下の対策を施している。
【0048】
図9は、画質等を改善するための対策例を説明するための断面図である。
【0049】
本対策例においては、各画素回路101の駆動トランジスタであるTFT111の第1電極としてのドレインが接続される電源用配線である電源ラインPSLを、低抵抗な金属、たとえばアルミニウム(Al)等により形成し、かつ、多層配線化している。
これと並行して、TFT112の第2電極としてのソースが接続される配線層も、電源ラインPSLと同じ層で、かつ、同材料に配線層で多層配線化し、この多層配線されたソース電極を発光素子113のアノード電極に接続している。
【0050】
なお、本実施形態の各画素回路101のTFT111,TFT112はボトムゲート型であり、そのゲート電極(制御端子)は層の積層方向の下層側に第1配線層として形成される。
一般に、TFTのゲート電極は、高抵抗配線、たとえばモリブデン(Mo)、タンタル(Ta)などの金属または合金をスパッタリングなどの方法で成膜して形成される。
【0051】
具体的な構成を説明する。
たとえば、ボトムゲート構造のTFT111は、図9に示すように、透明絶縁基板(たとえばガラス基板)121上にゲート絶縁膜122で覆われた第1配線層としてのゲート電極123が形成されている。ゲート電極123は第2のノードND112と接続される。
前述したように、ゲート電極は、たとえばモリブデン(Mo)、タンタル(Ta)などの金属または合金をスパッタリングなどの方法で成膜して形成される。
TFT111は、ゲート絶縁膜122上に半導体膜(チャネル形成領域)124、並びに半導体膜124を挟んで一対のn拡散層125,126が形成されている。
そして、ゲート絶縁膜122、チャネル形成領域124、n拡散層125,126を覆うように、たとえばSiOにより形成される酸化膜等からなる絶縁膜127が形成されている。
なお、図示していないが、チャネル形成領域124と各n拡散層125,126との間にはそれぞれn-拡散層(LDD)が形成される。n拡散層125がTFT111のドレイン拡散層(第1電極に相当)を形成し、n拡散層126がTFT111のソース拡散層(第2電極に相当)を形成している。
【0052】
一方のn拡散層125には、絶縁膜127に形成されたコンタクトホール128aを介して第1電極用第2配線層としてのドレイン電極129が接続され、他方のn拡散層126には、絶縁膜127に形成されたコンタクトホール128bを介して第2電極用第2配線層としてのソース電極130が接続されている。
ドレイン電極129およびソース電極130は、たとえば低抵抗であるアルミニウム(Al)をパターニングしたものである。
ドレイン電極129、ドレイン電極130、および絶縁膜127を覆うように、平坦化膜としての層間膜131が形成されている。
層間膜131は、たとえば酸化膜、ポリイミド、アクリル系樹脂、あるいは感光性樹脂により形成される。
【0053】
ドレイン電極129には、層間膜131に形成されたコンタクトホール132aを介して電源ラインPSLとしての第3配線層(または第2配線層)133が接続され、ドレイン電極130には、層間膜131に形成されたコンタクトホール132bを介して第2電極用第3配線層(または第2配線層)134が接続されている。
これら第3配線層133,134は、たとえばアルミニウム(Al)をパターニングして形成することも可能であり、また、さらに上層のアノード電極層と同一の材料、たとえば銀(Ag)等により形成することも可能である。
第3配線層133,134、および層間膜131を覆うように、平坦化膜135が形成されている。
そして、第2電極用第3配線層134には、平坦化膜135に形成されたコンタクトホール136を介して発光素子113のアノード電極層137が接続されている。
【0054】
図10(A),(B)は、多層配線化された電源ラインとしての第3配線層と駆動トランジスタのソースとの間に補間容量が形成された構成を示す図であって、図10(A)は平面図、図10(B)は図9と異なる面における断面図である。
【0055】
図10(B)に示すように、多層配線化された第3配線層133と、多結晶シリコン(ポリシリコン)で形成されるソース126とが絶縁膜127と平坦化膜131を介在させて互いに対向し離間して重なり部分をもつように形成されて、十分な容量の補間容量C112が形成されている。
このように、本実施形態においては、多層配線により十分な補間容量を確保し、信号サンプリングと移動度補正を正常に動作させることができるため、良好な画質が得られる。
【0056】
なお、上記構成において、第2配線層129,130と第3配線層133,134の層間膜131に平坦化膜を使用した場合、第3配線層の成膜(スパッタリング)時のチャンバ汚染が懸念される。
そこで、第3配線層129,130にアノード電極層137と同材料、たとえばAgを用いることにより既存プロセスの流用が可能となる。
【0057】
また、電源ラインPSLとソース電極を多層配線化して低抵抗化を図ると製造プロセスの工程数が増加することがあるが、その工程数削減のために、たとえば層間膜131として感光性樹脂を用いて多層配線化することも可能である。
すなわち、感光性樹脂を用いて多層配線化する場合、第2配線層と第3配線層の層間膜131に感光性樹脂を用いることにより工程数を削減でき、短タクト、低コストで多層配線化が可能となる。層間膜131に酸化膜を使用した場合、成膜/フォトリソグラフィ/エッチング/レジスト剥離の4工程が最低限必要となるが、感光性樹脂の場合、フォトリソグラフィのみで可能となる。
【0058】
また、画素回路における配線を多層化し、層間膜131に感光性樹脂を使用する場合には上層配線のエッチング時に層間膜が削られてしまい、平坦化膜135の塗布性に影響がでる場合がある。
そこで、本実施形態では、第3配線層133,134の配線厚みを次のように設定することにより、層間膜131が削られても平坦化膜135の塗布性に影響が出ないようにしている。
平坦化膜の膜厚をtp、第3配線層の膜厚をtl、層間膜材料による定数をAとすると、次の関係を満足する。
【0059】
(数2)
tl=tp/(1+A)
【0060】
図11は、層間膜に感光性樹脂を使用した場合の多層配線構造を示す図である。
図12は、上層配線エッチング時に層間膜が膜減りした様子を示す図である。
【0061】
膜減りが生じると、平坦化膜135の塗布の際に実際の段差は配線膜厚以上となり、塗布性が悪化する。または平坦化膜135の材料を多量に使用するためコスト面での問題が生じる。
【0062】
平坦化膜厚:tp、配線膜厚:tl、膜減り量:txとした場合、
平坦化膜を正常に塗布させるためには、tp≧tlとする。
また、膜減り量は配線膜厚に比例する。tx=A×tl(Aは定数であり、層間膜材料による)よって、tl=tp/(1+A)に設定することにより膜減りが生じても、平坦化膜131の塗布性に影響を与えない。
【0063】
次に、このような構成を有する画素回路部分の製造方法について説明する。
ここでは、層間膜131に酸化膜を用いた場合と、感光性樹脂を用いた場合の2つの方法について説明する。
【0064】
まず、図13〜図15に関連付けて層間膜131に酸化膜を用いた場合の製造方法について説明する。
【0065】
図13(A)に示すように、透明絶縁基板(たとえばガラス基板)121上に第1配線層としてのゲート電極123を形成する。
前述したように、ゲート電極123は、たとえばモリブデン(Mo)、タンタル(Ta)などの金属または合金をスパッタリングなどの方法で成膜して形成される。
次に、図13(B)に示すように、SiOによりゲート絶縁膜122を形成後、アモルファスシリコンを成膜し、多結晶化してチャネル形成領域124、n拡散層125,126(ドレインおよびソース)を形成する。
次に、図13(C)に示すように、SiOにより層間絶縁膜127を形成する。
図13(D)に示すように、層間絶縁膜127に、ドレイン125、ソース126に達するコンタクトホール128a,128bを開口する。
そして、図13(E)に示すように、絶縁膜127に形成されたコンタクトホール128aを介してドレイン125に接続するように第1電極用第2配線層としてのドレイン電極129を形成し、絶縁膜127に形成されたコンタクトホール128bを介してソース126に接続するように第2電極用第2配線層としてのソース電極130を形成する。
ドレイン電極129およびソース電極130は、たとえば低抵抗であるアルミニウム(Al)をパターニングにより形成する。
【0066】
次に、図14(F)に示すように、SiOにより層間(絶縁)膜131を形成する。
図14(G)に示すように、層間膜131にドレイン電極129、ソース電極130に達するコンタクトホール132a,132bを開口する。
そして、図14(H)に示すように、層間膜131に形成されたコンタクトホール132aを介してドレイン電極129に接続するように電源ラインPSLとしての第3配線層(または第2配線層)133を形成し、層間膜131に形成されたコンタクトホール132bを介してソース電極130に接続するように第2電極用第3配線層(または第2配線層)134を形成する。
これら第3配線層133,134は、たとえばアルミニウム(Al)をパターニングして形成することも可能であり、また、さらに上層のアノード電極層と同一の材料、たとえば銀(Ag)等により形成することも可能である。
なお、このとき、図10(B)に示すように、多層配線化された第3配線層133と、多結晶シリコン(ポリシリコン)で形成されるソース126とが絶縁膜127と平坦化膜131を介在させて互いに対向し離間して重なり部分をもつように形成されて、十分な容量の補間容量C112が形成される。
【0067】
次に、図15(I)に示すように、第3配線層133,134、および層間膜131を覆うように、平坦化膜135を形成する。続いて、平坦化膜135に第3配線層134に達するコンタクトホール136を開口する。
そして、図15(J)に示すように、平坦化膜135に形成されたコンタクトホール136を介して第3配線層134に接続するように、発光素子113のアノード電極層137を形成する。
【0068】
次に、図16〜図18に関連付けて層間膜131に感光性樹脂を用いた場合の製造方法について説明する。
【0069】
図16(A)に示すように、透明絶縁基板(たとえばガラス基板)121上に第1配線層としてのゲート電極123を形成する。
前述したように、ゲート電極123は、たとえばモリブデン(Mo)、タンタル(Ta)などの金属または合金をスパッタリングなどの方法で成膜して形成される。
次に、図16(B)に示すように、SiOによりゲート絶縁膜122を形成後、アモルファスシリコンを成膜し、多結晶化してチャネル形成領域124、n拡散層125,126(ドレインおよびソース)を形成する。
次に、図16(C)に示すように、SiOにより層間絶縁膜127を形成する。
図16(D)に示すように、層間絶縁膜127に、ドレイン125、ソース126に達するコンタクトホール128a,128bを開口する。
そして、図16(E)に示すように、絶縁膜127に形成されたコンタクトホール128aを介してドレイン125に接続するように第1電極用第2配線層としてのドレイン電極129を形成し、絶縁膜127に形成されたコンタクトホール128bを介してソース126に接続するように第2電極用第2配線層としてのソース電極130を形成する。
ドレイン電極129およびソース電極130は、たとえば低抵抗であるアルミニウム(Al)をパターニングにより形成する。
【0070】
次に、図17(F)に示すように、感光性樹脂により層間(絶縁)膜131を形成するとともに、層間膜131にドレイン電極129、ソース電極130に達するコンタクトホール132a,132bを開口する。
このように、感光性樹脂を層間(絶縁)膜131に使用する場合、コンタクトホールの形成工程も含んで同時並列的に処理することができることから、前述した酸化膜を層間膜に使用する場合に比べて工程数を削減することが可能となっている。すなわち、図14(F)および(G)の2工程を1工程で済ませることができる。
そして、図17(G)に示すように、層間膜131に形成されたコンタクトホール132aを介してドレイン電極129に接続するように電源ラインPSLとしての第3配線層(または第2配線層)133を形成し、層間膜131に形成されたコンタクトホール132bを介してソース電極130に接続するように第2電極用第3配線層(または第2配線層)134を形成する。
これら第3配線層133,134は、たとえばアルミニウム(Al)をパターニングして形成することも可能であり、また、さらに上層のアノード電極層と同一の材料、たとえば銀(Ag)等により形成することも可能である。
なお、このとき、図10(B)に示すように、多層配線化された第3配線層133と、多結晶シリコン(ポリシリコン)で形成されるソース126とが絶縁膜127と平坦化膜131を介在させて互いに対向し離間して重なり部分をもつように形成されて、十分な容量の補間容量C112が形成される。
【0071】
次に、図18(H)に示すように、第3配線層133,134、および層間膜131を覆うように、平坦化膜135を形成する。続いて、平坦化膜135に第3配線層134に達するコンタクトホール136を開口する。
そして、図18(I)に示すように、平坦化膜135に形成されたコンタクトホール136を介して第3配線層134に接続するように、発光素子113のアノード電極層137を形成する。
【0072】
次に、上記構成のより具体的な動作を、画素回路の動作を中心に、図19(A)〜(E)、および図20〜図27に関連付けて説明する。
なお、図19(A)は走査線WSLに印加されるゲートパルス(走査パルス)GPを、図19(B)はパワー駆動線PSLに印加されるパワー信号PSGを、図19(C)は信号線SGLに印加される入力信号SINを、図19(D)は第2のノードND112の電位VND112を、図19(E)は第1のノードND111の電位VND111を、それぞれ示している。
【0073】
まず、EL発光素子113の発光状態時は、図19(B)および図20に示すように、パワー駆動線PSLは電源電圧VCCであり、TFT112がオフした状態である。
このとき、駆動トランジスタであるTFT111は飽和領域で動作するように設定されているため、EL発光素子113に流れる電流IdsはTFT111のゲート・ソース間電圧Vgsに応じて式1に示される値をとる。
【0074】
次に、非発光期間において、図19(B)および図21に示すように、電源ラインであるパワー駆動線PSLをVssとする。このとき、電圧VssがEL発光素子113のしきい値Vthelとカソード電圧Vcatの和よりも小さいとき、つまりVss<Vthel+VcatであればEL発光素子113は消光し、電源ラインであるパワー駆動線PSLが駆動トランジスタとしてのTFT111のソースとなる。このとき、EL発光素子113のアノード(ノードND111)は、図19(E)に示すように、Vssに充電される。
【0075】
さらに、図19(A),(C),(D),(E)、および図22に示すように、信号線SGLの電位がオフセット電圧Vofsとなったときに、ゲートパルスGPはハイレベルに設定してTFT112をオンし、TFT111のゲート電位をVofsとする。
このとき、TFT111のゲート・ソース間電圧は(Vofs−Vss)という値をとる。このTFT111のゲート・ソース間電圧(Vofs−Vss)がTFT111のしきい値電圧Vthよりも大きくない(低い)としきい値補正動作を行うことができないために、TFT111のゲート・ソース間電圧(Vofs−Vss)がTFT111のしきい値電圧Vthよりも大きく、すなわちVofs−Vss>Vthとする必要がある。
【0076】
そしてしきい値補正動作においてパワー駆動線PSLに印加するパワー信号PSGを再び電源電圧Vccとする。
パワー駆動線PSLを電源電圧VccとすることでEL発光素子113のアノード(ノードND111)がTFT111のソースとして機能し、図23に示すように電流が流れる。
EL発光素子113の等価回路は、図23に示すように、ダイオードと容量で表されるため、Vel≦Vcat+Vthel(EL発光素子113のリーク電流がTFT111に流れる電流よりもかなり小さい)の関係を満足する限り、TFT111の電流はキャパシタC111とCelを充電するために使われる。
このとき、容量Celの端子間の電圧Velは時間と共に、図24に示すように上昇してゆく。一定時間経過後、TFT111のゲート・ソース間電圧はVthという値をとる。このとき、Vel=Vofs−Vth≦Vcat+Vthelとなっている。
【0077】
しきい値キャンセル動作終了後、図19(A),(C)、および図25に示すように、TFT112をオンした状態で信号線SGLの電位をVsigとする。データ信号Vsigは階調に応じた電圧となっている。このとき、TFT111のゲート電位は、TFT112をオンしているために、図19(D)に示すようにVsigとなるが、電源ラインであるパワー駆動線PSLから電流Idsが流れるためソース電位は時間とともに上昇してゆく。
このとき、TFT111のソース電圧がEL発光素子113のしきい値電圧Vthelとカソード電圧Vcatの和を越えなければ(EL発光素子113のリーク電流がTFT111に流れる電流よりもかなり小さければ)、TFT111に流れる電流はキャパシタC111とCelを充電するのに使用される。
このとき、TFT111のしきい値補正動作は完了しているため、TFT111が流す電流は移動度μを反映したものとなる。
具体的にいうと、図26に示すように、移動度μが大きいものはこのときの電流量が大きく、ソース電圧の上昇も早い。逆に移動度μが小さいものは電流量が小さく、ソース電圧の上昇は遅くなる。これによって、TFT111のゲート・ソース間電圧は移動度μを反映して小さくなり、一定時間経過後に完全に移動度を補正するVgsとなる。
【0078】
最後に、図19(A)〜(C)、および図27に示すように、ゲートパルスGPをローレベルに切り替えてTFT112をオフして書き込みを終了させ、EL発光素子113を発光させる。
TFT111のゲート・ソース間電圧は一定であるので、TFT111は一定電流Ids'をEL発光素子113に流し、VelはEL発光素子113にIds'という電流が流れる電圧Vxまで上昇し、EL発光素子113は発光する。
本画素回路101においてもEL発光素子113は発光時間が長くなるとそのI-V特性は変化してしまう。そのため図中B点(ノードND111)の電位も変化する。しかしながら、TFT111のゲート・ソース間電圧は一定値に保たれているのでEL発光素子113に流れる電流は変化しない。よってEL発光素子113のI-V特性が劣化しても、一定電流Idsが常に流れ続け、EL発光素子113の輝度が変化することはない。
【0079】
このように駆動される画素回路においては、電源ラインを2段配線構造として、低抵抗化を図り、電圧降下に伴いシェーディング等のムラが発生し、画像にはムラやザラツキとして発生することを改善することが可能である。
【0080】
そして、本実施形態によれば、有機EL(Electro Luminescence)素子を含む表示装置において、トランジスタの閾値変動補正と移動度変動補正、有機EL発光素子の経時変動補正機能を備えており、高品位な画質を得ることができる。また、素子数が少ないため高精細化が可能であることに加えて、既存プロセスを用いて多層配線化することにより低抵抗配線を実現し、良好な画質の表示装置を得ることができる。
また、素子数が少ないため高精細化が可能であることに加えて、多層配線プロセスを用いることにより十分な補間容量を確保し、良好な画質を得ることができる。
また、素子数が少ないため高精細化が可能であることに加えて、感光性樹脂を用いて多層配線化することにより低抵抗配線を実現し、良好な画質の表示装置を得ることができる。
また、感光性樹脂を用いた場合に、平坦化膜の膜厚をtp、第3配線層の膜厚をtl、層間膜材料による定数をAとすると、tl=tp/(1+A)なる関係を満足するように構成することにより、層間膜が膜減りを起こしても平坦化膜の塗布性に影響を与えず、多層配線化を実現できる。
【0081】
以上、本実施形態においては、図7の回路、すなわち、2個のトランジスタと1個のキャパシタの2Tr+1C画素回路を有する表示装置100に対しての効果的な画質改善の対策例について説明した。
ただし、この対策例は、2Tr+1C画素回路を有する表示装置100に対して効果的であるが、これらの対策を、OLEDと直列に接続されるドライブ(駆動)トランジスタやスイッチングトランジスタの他に、移動度やしきい値キャンセル用のTFT等が別途設けられる構成の画素回路を有する表示装置にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】一般的な有機EL表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の画素回路の一構成例を示す回路図である。
【図3】有機EL発光素子の電流−電圧(I−V)特性の経時変化を示す図である。
【図4】図2の回路のpチャネルTFTをnチャネルTFTに置き換えた画素回路を示す回路図である。
【図5】初期状態におけるドライブトランジスタとしてのTFTとEL発光素子の動作点を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る画素回路を採用した有機EL表示装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本第実施形態に係る画素回路の具体的な構成を示す回路図である。
【図8】図7の画素回路の基本的な動作を示すタイミングチャートである。
【図9】画質等を改善するための対策例を説明するための断面図である。
【図10】多層配線化された電源ラインとしての第3配線層と駆動トランジスタのソースとの間に補間容量が形成された構成を示す図である。
【図11】層間膜に感光性樹脂を使用した場合の多層配線構造を示す図である。
【図12】上層配線エッチング時に層間膜が膜減りした様子を示す図である。
【図13】層間膜に酸化膜を用いた場合の製造方法について説明するための図である。
【図14】図13に続く、層間膜に酸化膜を用いた場合の製造方法について説明するための図である。
【図15】図14に続く、層間膜に酸化膜を用いた場合の製造方法について説明するための図である。
【図16】層間膜に感光性樹脂を用いた場合の製造方法について説明するための図である。
【図17】図16に続く、層間膜に感光性樹脂を用いた場合の製造方法について説明するための図である。
【図18】図17に続く、層間膜に感光性樹脂を用いた場合の製造方法について説明する。
【図19】図7の画素回路の具体的な動作を示すタイミングチャートである。
【図20】図7の画素回路の動作を説明するための図であって、発光期間の状態を示す図である。
【図21】図7の画素回路の動作を説明するための図であって、非発光期間において電圧をVssとした状態を示す図である。
【図22】図7の画素回路の動作を説明するための図であって、オフセット信号を入力した状態を示す図である。
【図23】図7の画素回路の動作を説明するための図であって、電圧をVccにした状態を示す図である。
【図24】図7の画素回路の動作を説明するための図であって、電圧をVccにしたときの駆動トランジスタのソース電圧の遷移を示す図である。
【図25】図7の画素回路の動作を説明するための図であって、データ信号Vsigを書き込むときの状態を示す図である。
【図26】図7の画素回路の動作を説明するための図であって、移動度の大小に応じた駆動トランジスタのソース電圧の遷移を示す図である。
【図27】図7の画素回路の動作を説明するための図であって、発光状態を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
100・・・表示装置、101・・・画素回路、102・・画素アレイ部、103・・水平セレクタ(HSEL)、104・・・ライトスキャナ(WSCN)、105・・・パワードライブスキャナ(PDSCN)、SGL・・・信号線、WSL・・・走査線、PSL・・・パワー駆動線、111・・・駆動(ドライブ)トランジスタとしてのnチャネルTFT、112・・・スイッチとしてのnチャネルTFT、C111・・・キャパシタ、C112・・・補間容量、ND111・・・第1のノード、ND112・・・第2のノード、121・・・透明絶縁基板、122・・・ゲート絶縁膜、123・・・ゲート電極、124・・・半導体膜(チャネル形成領域)、125・・・n拡散層(ドレイン)、126・・・n拡散層(ソース)、127・・・層間絶縁膜、128a,128b・・・コンタクトホール、129・・・ソース電極、130・・・ドレイン電極、131・・・層間(絶縁)膜、132a,132b・・・コンタクトホール、133・・・第1電極用第3配線層、134・・・第2電極用第3配線層、135・・・平坦化膜、136・・・コンタクトホール、137・・・アノード電極層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御端子への信号レベルに応じて導通状態が制御される少なくとも一つのトランジスタと、
発光素子と、
電源用配線と、を有し、
上記電源用配線と上記発光素子の所定電極との間に上記トランジスタが接続され、
上記電源用配線は、
他の層の配線と接続されて多層配線化され、
上記多層配線化された電源用配線と他の配線層とが離間して対向するように補間容量が形成されている
画素回路。
【請求項2】
上記トランジスタは、第1配線層で形成された制御電極と、当該第1配線層を覆うように形成された絶縁膜と、当該絶縁膜上に形成されたチャネル形成領域と、当該チャネル形成領域を挟むように形成された第1電極および第2電極と、を含み、
上記電源用配線は、
上記トランジスタの第1電極に絶縁膜に形成したコンタクトを介して接続されるように形成された第2配線層と、
層間膜に形成したコンタクトを介して上記第2配線層と接続されるように形成された第3配線層と、を含み、
上記第3配線層と上記トランジスタの第2電極層とが絶縁膜を介して対向するように補間容量が形成されている
請求項1記載の画素回路。
【請求項3】
上記トランジスタの第2電極は、上記トランジスタの第1電極に絶縁膜に形成したコンタクトを介して、第1電極用第2配線層と同層の第2電極用第2配線層に接続され、
上記第2電極用第2配線層は、層間膜に形成したコンタクトを介して、上記第1電極用第3配線層と同層の第2電極用第3配線層に接続され、
上記第2電極用第3配線層は、平坦化膜に形成したコンタクトを介して上記発光素子の所定電極用第4配線層に接続されている
請求項2記載の画素回路。
【請求項4】
上記画素回路は、
異なる電圧が印加可能な電源用配線と、
基準電位と、
駆動信号が伝搬される駆動配線と、
流れる電流によって輝度が変化する発光素子と、
駆動トランジスタと、
信号線と上記駆動トランジスタのゲートとの間に接続され、ゲートに印加される駆動信号により導通状態が制御されるスイッチングトランジスタと、
上記駆動トランジスタのゲートとソース間に接続されたキャパシタと、を有し、
上記電源用配線と上記基準電位間に上記駆動トランジスタと上記発光素子が直列に接続されている
請求項3記載の画素回路。
【請求項5】
マトリクス状に配列され、制御端子への信号レベルに応じて導通状態が制御される駆動トランジスタと、上記駆動トランジスタの制御端子に信号線の信号を転送するスイッチングトランジスタと、を含む複数の画素回路と、
上記画素回路を形成する上記駆動トランジスタの接続ラインに供給する所定電圧を出力する第1のスキャナと、
上記画素回路を形成する上記スイッチングトランジスタのゲートへの駆動信号を出力する第2のスキャナと、
上記画素回路に上記第1のスキャナによる所定電圧を供給するための少なくとも一つの電源用配線と、
複数の画素回路の上記トランジスタの制御端子が共通に接続され、上記第2のスキャナによる駆動信号が伝搬される少なくとも一つの駆動配線と、を有し、
上記電源用配線は、
他の層の配線と接続されて多層配線化され、
上記多層配線化された電源用配線と他の配線層とが離間して対向するように補間容量が形成されている
表示装置。
【請求項6】
上記トランジスタは、第1配線層で形成された制御電極と、当該第1配線層を覆うように形成された絶縁膜と、当該絶縁膜上に形成されたチャネル形成領域と、当該チャネル形成領域を挟むように形成された第1電極および第2電極と、を含み、
上記電源用配線は、
上記トランジスタの第1電極に絶縁膜に形成したコンタクトを介して接続されるように形成された第2配線層と、
層間膜に形成したコンタクトを介して上記第2配線層と接続されるように形成された第3配線層と、を含み、
上記第3配線層と上記トランジスタの第2電極層とが絶縁膜を介して対向するように補間容量が形成されている
請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
上記トランジスタの第2電極は、上記トランジスタの第1電極に絶縁膜に形成したコンタクトを介して、第1電極用第2配線層と同層の第2電極用第2配線層に接続され、
上記第2電極用第2配線層は、層間膜に形成したコンタクトを介して、上記第1電極用第3配線層と同層の第2電極用第3配線層に接続され、
上記第2電極用第3配線層は、平坦化膜に形成したコンタクトを介して上記発光素子の所定電極用第4配線層に接続されている
請求項6記載の表示装置。
【請求項8】
上記画素回路は、
異なる電圧が印加可能な電源用配線と、
基準電位と、
駆動信号が伝搬される駆動配線と、
流れる電流によって輝度が変化する発光素子と、
駆動トランジスタと、
信号線と上記駆動トランジスタのゲートとの間に接続され、ゲートに印加される駆動信号により導通状態が制御されるスイッチングトランジスタと、
上記駆動トランジスタのゲートとソース間に接続されたキャパシタと、を有し、
上記電源用配線と上記基準電位間に上記駆動トランジスタと上記発光素子が直列に接続されている
請求項7記載の表示装置。
【請求項9】
発光素子と、制御端子への信号レベルに応じて導通状態が制御される少なくとも一つのトランジスタと、を含む画素回路の製造方法であって、
上記トランジスタの制御電極を第1配線層で形成する第1工程と、
絶縁膜を介して上記トランジスタのチャネル形成領域を挟むように第1電極および第2電極を形成する第2工程と、
上記トランジスタ上に絶縁膜を形成する第3工程と、
上記トランジスタの第1電極および第2電極に、絶縁膜に形成したコンタクトを介して接続されるように第1電極用第2配線層と第2電極用第2配線層を形成する第4工程と、
第1電極用第2配線層と第2電極用第2配線層上に層間膜を形成する第5工程と、
上記第1電極用第2配線層と第2電極用第2配線層に、上記層間膜に形成したコンタクトを介して接続されるように第1電極用第3配線層と第2電極用第3配線層を形成する第6工程と、
上記第1電極用第3配線層と層の積層方向において下層の配線層とを絶縁膜を介して対向するようにして補間容量を形成する第7工程と、
上記第2電極用第3配線層に、上記平坦化膜に形成したコンタクトを介して接続されるように上記発光素子の所定電極用第4配線層を形成する第8工程と
を含む画素回路の製造方法。
【請求項10】
上記第7工程の下層の配線層は、上記第2電極である
請求項9記載の画素回路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2008−129155(P2008−129155A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311493(P2006−311493)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】