説明

留め具

【課題】コストアップを招くことなく、シール体が梱包時に変形し、あるいは使用状態で塑性変形するのを防止してシール機能を適正に保持する。
【解決手段】剛性の高い素材によって一体に成形されている留め具本体(ベルトクランプ10)が、基板16と係止脚24とを有し、シール性の高い柔軟な素材によって成形されているシール体30が、係止脚24の周囲を囲むように基板16と一体化され、パネルの取付け孔に係止脚24を差し込むことにより、取付け孔の周辺においてシール体30をパネルに密着させた状態で留め具本体がパネルに取り付けられる留め具であって、基板16と一体に設けられている補強部(補強リブ18)は、基板16に対して弾性によって撓むことが可能で、かつ、シール体30の周面を外側から支えた状態に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のボデーパネルに開けられた取付け孔に対してシール性を保持した状態で取り付ける留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の留め具は、剛性の高いポリプロピレン(PP)などで成形された留め具本体と、柔軟なエラストマーなどによって成形されたシール体とを備えている。留め具本体は、パネルの取付け孔に差し込まれる係止脚を有する。シール体は、留め具本体に対して係止脚の周囲を囲むように一体化されている。そこで、留め具本体の係止脚をパネルの取付け孔に差し込むことにより、取付け孔の周辺においてシール体をパネルに密着させた状態で留め具本体がパネルに取り付けられる。なお、この種の留め具に関する一般的な技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平7−274357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シール機能をもたせるために柔軟な素材で成形されたシール体は、搬送のための梱包によって変形し、あるいは留め具の使用状態においてパネルに押し付けられた状態で塑性変形をおこす場合があり、シール体のシール機能が低下する。なお、シール体の肉厚を大きくすることにより、塑性変形を起こしにくくすることも考えられるが、例えばエラストマーは比較的高価な材料であることから留め具のコストアップを招く。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、コストアップを招くことなく、シール体が梱包時に変形し、あるいは使用状態で塑性変形するのを防止してシール機能を適正に保持することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、剛性の高い素材によって一体に成形されている留め具本体が、基板と、この基板の片側面から突出した係止脚とを有し、シール性の高い柔軟な素材によって成形されているシール体が、留め具本体の係止脚の周囲を囲むように基板と一体化され、相手側部材であるパネルの取付け孔に係止脚を差し込むことにより、取付け孔の周辺においてシール体をパネルに密着させた状態で留め具本体がパネルに取り付けられる形式の留め具であって、留め具本体の基板と一体に補強部が設けられている。この補強部は基板に対して弾性によって撓むことが可能で、かつ、シール体の周面を外側から支えた状態に位置している。
【0006】
このようにシール体に対する補強部を設けたことにより、留め具本体とパネルの取付け孔との間のシール性を確保するためのシール体が、梱包時に変形し、あるいは使用状態で塑性変形することが防止される。このため、シール機能を適正に保つことができるとともに、留め具のコストアップを抑えることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載された留め具であって、補強部がシール体の外周方向に連続して設けられているとともに、この補強部の先端部がシール体によって包み込まれている。
これにより、シール性を損なうことなく、シール体の変形を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明における実施の形態1を図1〜3によって説明する。
図1は留め具の一例として示したベルトクランプの斜視図である。図2はベルトクランプの一部を拡大して表した斜視図である。図3はベルトクランプの一部を拡大して表した断面図である。これらの図面で示すベルトクランプ10は、車両のボデーにワイヤハーネスを所定の配線経路に沿って装着するために使用される。
【0009】
ベルトクランプ10本体(留め具本体)は、ポリプロピレン(PP)などの剛性の高い樹脂材による一体成形品であり、その構成はバックル12、ベルト20および係止脚24に大別される。バックル12、その片面側(図2,3の下面側)にベルト20の基端部が結合され、他面側(図2,3の上面側)は所定の厚みをもつ基板16となっている。この基板16のほぼ中央部に、この基板16から突出した状態で係止脚24が位置している。
【0010】
バックル12は、ベルト20をその先端側から挿通させるためのベルト挿入部13を備えている。このベルト挿入部13の内部には、基板16側の内壁から突出した格好の係合爪14が位置している(図3)。この係合爪14は、樹脂の弾性(撓み)によって図3の上下方向へ微少な範囲で変位できる。また係合爪14は、ベルト20の係合歯列22と係合可能な複数個(2個)の係合突起15を備えている。
【0011】
ベルト20の係合歯列22は、ベルト20の片側面において長さ方向へ一定のピッチで並んでいる。ベルト20をバックル12のベルト挿入部13に対して図3の左側から挿通させることにより、係合爪14の両係合突起15に係合歯列22の一部(二つ)が選択的に係合する。
【0012】
係止脚24は、その両側に位置する一対の係止アーム25を備えている。これらの係止アーム25は、係止脚24の外方へそれぞれ張り出しているとともに、樹脂の弾性(撓み)によって図3の左右方向へ変位できる。係止脚24が図3で示すパネル40の取付け孔42に差し込まれたとき、両係止アーム25が撓みながら取付け孔42を通過し、パネル40の反対面において両係止アーム25の肩部を取付け孔42の縁に係止させることができる。
【0013】
基板16には、係止脚24の周囲を囲むような皿形をしたシール体30が設けられている。このシール体30は、エラストマーなどのシールに適した柔軟性を有する素材によって基板16と一体に成形されている。すなわちベルトクランプ10とシール体30とは多色成形によって一体化されており、PP樹脂などによって成形されたベルトクランプ10の基板16を成形型の一部としてシール体30がエラストマーなどで成形される。
【0014】
シール体30は、内外二重のリップ部32,33を備えており、外側のリップ部32はシール体30の周面を構成している。一方、基板16は、シール体30の外周に沿って一定の間隔で配置された複数個の補強リブ18を備えている。これらの補強リブ18は、樹脂の弾性(撓み)により、基板16に対してシール体30の内外方向へ撓むことが可能である。そして、各補強リブ18はシール体30の周面、つまり外側のリップ部32を外側から支えた状態に位置している。
【0015】
このように各補強リブ18によってシール体30のリップ部32を外側から支えたことにより、ベルトクランプ10を梱包したときにシール体30が異様な状態に変形することが防止される。また、つぎに説明するベルトクランプ10の使用状態において、シール体30がパネル40の表面に密着した状態で塑性変形をおこすことも防止される。なお、各補強リブ18は本発明の「補強部」に相当する。
【0016】
ベルトクランプ10の使用に際しては、ワイヤハーネスなどの外周にベルト20を巻き付けながら、このベルト20をその先端側からバックル12のベルト挿入部13に挿通させる。周知のように、ベルト20によってワイヤハーネスなどの外周を引き締めるとき、そのベルト20の係合歯列22はベルト挿入部13内の係合爪14を撓ませながら両係合突起15に係合することなく移動する。そして、ベルト20の引き締めを止めると、両係合突起15に係合歯列22の一部(二つ)が係合し、ベルト20が緩まないように保持される。
【0017】
つづいて、図3で示すパネル40の取付け孔42にベルトクランプ10の係止脚24を差し込む。これにより、係止脚24の両係止アーム25が撓みながら取付け孔42を通過し、パネル40の反対側において両係止アーム25の肩が取付け孔42の縁に係止し、ベルトクランプ10がワイヤハーネスなどと共にパネル40に取り付けられる。
【0018】
この状態において、シール体30における内外のリップ部32,33はパネル40の表面に干渉することで柔軟に変形する。このとき、外側のリップ部32は各補強リブ18を撓ませながら変形することとなる。この結果、シール体30のリップ部32,33は取付け孔42の周囲においてパネル40の表面に密着し、係止脚24と取付け孔42との間のシール機能を果たす。なお、このシール体30はパネル40に対するベルトクランプ10の取付け状態を安定させるスタビライザとしての機能も果たす。
【0019】
(実施の形態2)
つぎに、本発明における実施の形態2を図4〜6によって説明する。
図4は実施の形態2におけるベルトクランプの一部を表した斜視図である。図5は図4の一部を表した拡大断面図である。これらの図面で示すように本実施の形態におけるベルトクランプ10の基板16は、シール体30の外周に沿って連続する皿形状の補強壁118(補強部)を備えている。この補強壁118についても、シール体30の周面、つまり外側のリップ部32を外側から支えた状態に位置しているとともに、樹脂がもつ弾性(撓み)により、基板16に対してシール体30の内外方向へ撓むことが可能である。これによって実施の形態1と同様の機能が得られる。
【0020】
図6は実施の形態2における変更例を図5と対応して表した断面図である。この図面で示す例では、シール体30における外側のリップ部32によって補強壁118の先端部を包み込んでいる。これにより、シール体30のシール性を適正に維持したまま、実施の形態1と同様にシール体30の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】留め具の一例として示したベルトクランプの斜視図
【図2】ベルトクランプの一部を拡大して表した斜視図
【図3】ベルトクランプの一部を拡大して表した断面図
【図4】実施の形態2におけるベルトクランプの一部を表した斜視図
【図5】図4の一部を表した拡大断面図
【図6】実施の形態2における変更例を図5と対応して表した断面図
【符号の説明】
【0022】
10 ベルトクランプ
16 基板
18 補強リブ(補強部)
24 係止脚
30 シール体
40 パネル
42 取付け孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性の高い素材によって一体に成形されている留め具本体が、基板と、この基板の片側面から突出した係止脚とを有し、シール性の高い柔軟な素材によって成形されているシール体が、留め具本体の係止脚の周囲を囲むように基板と一体化され、相手側部材であるパネルの取付け孔に係止脚を差し込むことにより、取付け孔の周辺においてシール体をパネルに密着させた状態で留め具本体がパネルに取り付けられる形式の留め具であって、留め具本体の基板と一体に補強部が設けられ、この補強部は基板に対して弾性によって撓むことが可能で、かつ、シール体の周面を外側から支えた状態に位置している留め具。
【請求項2】
請求項1に記載された留め具であって、補強部がシール体の外周方向に連続して設けられているとともに、この補強部の先端部がシール体によって包み込まれている留め具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−120529(P2007−120529A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309741(P2005−309741)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】