説明

異常検出装置

【課題】建築物内の異常検出対象に生じた異常を、比較的簡易な構成で自動的に検出し、通知することを可能とする。
【解決手段】異常検出装置1は、建築物5を構成する建築部材に埋め込まれているICタグ101に書き込まれているICタグ情報を、異常検出対象100が携帯しているICタグリーダ102から取得する。異常検出装置1は、ICタグ情報に基づいて、異常検出対象100がいる位置を特定して、時刻と対応付けて蓄積し、蓄積された位置と時刻との対応情報に基づいて、異常検出対象100に異常が生じたかを判断し、異常検出対象100に異常が生じた場合は、ユーザ装置4に対して異常の内容を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物内で生じた異常を検出する異常検出技術に関し、特に、建築物内における、高齢者やペット等の異常検出対象に生じた異常をICタグを用いて検出し、検出した異常を通知する異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICタグが、様々な分野におけるデータ収集に活用されている。ICタグを用いた技術として、例えば、ICタグをビル、病院などの建築内装用やマンションを含む住宅内装用の部材、部品等の中間材料に対して、取付け又は組み込み、数年〜数十年たっても書込まれた設計面、材料名、製造面、在庫管理面、流通面、材料の検査や認証面、建築現場への搬入時、建築過程、進捗管理面、引渡し月日、リフォーム時、そして解体リサイクルに関した情報等が非接触状態で解読できるようにする技術が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−37902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記特許文献1に記載された技術は、ICタグを用いて建築物の設計や施工を管理することを目的とするものであって、建築物内にいる人や物の位置を特定する技術ではない。また、このため、建築物内の高齢者やペット等に生じた異常(例えば、事故や病気)を検出することは、想定されていない。
【0004】
即ち、従来技術によっては、建築物内にいる人や物の位置を特定することができない。また、このため、例えば、家族から離れた場所において生活している一人暮らしの高齢者が階段から落ちたり風呂で倒れたりしたことを検出し、家族に通知することはできない。また、従来技術によっては、例えば、建築物の居住者の留守中に、飼っているペットが病気で動けなくなったりしたことを検出し、居住者に通知することはできない。
【0005】
ここで、建築物内の高齢者やペット等の異常検出対象に生じた異常を検出するために、例えば、建築物内に監視カメラを設置して、建築物内の高齢者やペット等の生活行動を監視して、高齢者やペット等に生じた異常を検出することが考えられる。しかし、監視カメラを用いて異常検出対象に生じた異常を検出するシステムでは、システム全体の構成が大きくなる。また、例えば、高齢者等に心理的な圧迫を与えることとなるという問題が生じ得る。
【0006】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決し、建築物内の異常検出対象に生じた異常を、比較的簡易な構成で自動的に検出し、通知する異常検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、以下のような構成を採る。
【0008】
本発明の異常検出装置は、建築物内の異常検出対象に生じた異常を検出する異常検出装置であって、前記異常検出対象により携帯され、前記建築物を構成する建築部材に取り付けられたICタグに書き込まれたICタグ情報を読み取るICタグ情報読み取り手段と、前記ICタグ情報読み取り手段により読み取られたICタグ情報を取得するICタグ情報取得手段と、前記取得されたICタグ情報に基づいて、前記異常検出対象がいる位置を特定する位置特定手段と、前記特定された異常検出対象がいる位置と時刻との対応情報を蓄積する位置情報蓄積手段と、前記蓄積された、前記異常検出対象がいる位置と時刻との対応情報に基づいて、前記異常検出対象に異常が生じたかを判断する異常判断手段と、前記異常判断手段によって前記異常検出対象に異常が生じたと判断された場合、当該生じた異常の内容を通知する異常通知手段とを備える。
【0009】
また、好ましくは、本発明の異常検出装置は、前記異常検出装置において、更に、前記位置特定手段によって特定された前記異常検出対象がいる位置に応じて前記異常判断手段により呼び出され、前記異常検出対象に生じる異常を検出する1又は複数の異常検出手段を備える。
【0010】
また、好ましくは、本発明の異常検出装置は、前記異常検出装置において、前記異常検出手段は、前記位置情報蓄積手段内に蓄積された、異常検出対象がいる位置と時刻との対応情報を監視して、前記異常検出対象がいる位置が変化しない時間が、予め決められた閾値以上の場合、前記異常検出対象に異常が生じたと判断する。
【0011】
また、好ましくは、本発明の異常検出装置は、前記異常検出装置において、前記異常検出手段は、前記位置情報蓄積手段内に蓄積された、異常検出対象がいる位置と時刻との対応情報を監視して、前記異常検出対象がいる位置が予め定めた大きさだけ変化するまでの時間が、予め決められた閾値以下の場合、前記異常検出対象に異常が生じたと判断する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の異常検出装置は、異常検出対象により携帯されるICタグ情報読み取り手段により建築部材に取り付けられたICタグのICタグ情報を読み取り、これに基づいて異常検出対象がいる位置を特定し、当該位置と時刻との対応情報を蓄積し、この対応情報に基づいて異常検出対象に異常が生じたか否かを判断し、異常が生じたと判断した場合に当該生じた異常の内容を通知する。従って、本発明によれば、建築物内の異常検出対象に生じた異常を、比較的簡易な構成で正確かつ自動的に検出し、例えば当該建築物の外にいる家族の携帯する携帯電話等に通知することができる。
【0013】
また、本発明の異常検出装置は、特定された異常検出対象がいる位置に応じて呼び出されて異常を検出する異常検出手段を備える。従って、本発明によれば、異常検出対象がいる位置に応じて、当該位置に特有の異常を適切に検出することができる。例えば、本発明によれば、異常検出対象がトイレにいる場合には、トイレに対応した異常検出処理をすることができる。また、異常検出対象が階段にいる場合には、階段に対応した異常検出処理をすることができる。
【0014】
また、本発明の異常検出装置は、異常検出対象がいる位置が変化しない時間が予め決められた閾値以上の場合、異常検出対象に異常が生じたと判断する。従って、本発明によれば、例えば、居間でくつろいでいる時間や寝室で眠っている時間を除いて、異常検出対象が建築物内において倒れて長時間動かない等の異常が生じたことを正確に検出することができる。
【0015】
また、本発明の異常検出装置は、異常検出対象がいる位置が予め定めた大きさだけ変化するまでの時間が予め決められた閾値以下の場合、異常検出対象に異常が生じたと判断する。従って、本発明によれば、例えば、異常検出対象が階段から落ちる等の異常が生じたことを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、異常検出システム構成図であり、本発明の異常検出装置を備える異常検出システムの構成の一例を示す図である。
【0017】
異常検出装置1は、建築物5内の異常検出対象100に生じた異常を検出するコンピュータであり、異常検出対象100が居住する住宅等の建築物5の内部に設けられる。なお、異常検出装置1は、後述するICタグ情報取得部11以外は、建築物5の外部に設けられるようにしても良い。
【0018】
異常検出装置1は、異常検出対象100が携帯しているICタグリーダ102からICタグ情報を取得し、取得したICタグ情報に基づいて、異常検出対象100に生じた異常を検出する。そして、異常検出装置1は、検出した異常の内容を、例えばインターネット等のネットワーク2を介して中継ホスト3に通知する。
【0019】
中継ホスト3は、異常検出装置1から通知された異常の内容をユーザ装置4に通知するコンピュータであり、例えば当該異常検出サービスを提供する企業等に設けられる。具体的には、建築物5を構成する建築部材に後述するICタグ101を取り付ける必要があるので、当該建築部材を製造、販売等する企業に設けられる。本発明の実施の形態では、建築部材へのICタグ101の取り付けは、例えば、建築部材にICタグ101を埋め込んだり、建築部材にICタグ101を貼り付けたりすること等を含む。以下の説明では、建築部材にICタグ101を埋め込む場合の例について記述する。
【0020】
中継ホスト3は、例えばインターネットサービスプロバイダ(ISP)等に設けられるようにしても良い。
【0021】
ユーザ装置4は、中継ホスト3から異常の内容を受信して表示するコンピュータであり、例えば当該異常検出サービスの契約者であるユーザが備えるコンピュータであり、具体的には例えば当該ユーザが携帯する携帯電話からなる。中継ホスト3からユーザ装置4への異常の内容の通知は、例えば、中継ホスト3から、生じた異常の内容を示す電子メールを送信したり、生じた異常の内容を電話で通信したりすることによるが、様々な通知形式を採ることができる。従って、ユーザ装置4は、例えば、インターネット接続機能、電話通信機能、電子メールの送受信機能等を備えれば良い。
【0022】
建築物5は、例えば図1に示す階段踏み板51、ドア52、床材53という建築部材から構成される。建築物5は、階段踏み板51、ドア52、床材53以外の様々な建築部材によって構成することができる。
【0023】
建築物5を構成する建築部材(例えば、階段踏み板51、ドア52、床材53)には、ICタグ情報が書き込まれたICタグ101が埋め込まれている。ICタグ101としては、例えば、UHF帯無線ICタグを用いる。
【0024】
ICタグ101に書き込まれるICタグ情報は、例えば、図2(A)に示すように、建築部材のアドレス情報を示す「アドレス」からなるデータ構成を有する。又は、ICタグ情報は、例えば、図2(B)に示すように、建築物の名称を示す「建築物名」、異常検出対象100の名称を示す「異常検出対象名」、建築部材のアドレス情報を示す「アドレス」からなるデータ構成を有する。
【0025】
アドレス情報は、建築部材に埋め込まれているICタグ101を一意に特定し、ICタグ101の位置が特定できるようにする情報を意味している。図2(A)及び図2(B)に示すICタグ情報の例では、後述する異常検出対象100がいる位置を示す位置情報と区別するために、アドレスという表現を用いている。
【0026】
従って、例えば、ICタグ情報は、図2(C)に示すように、ICタグを一意に特定する識別子を示すICタグIDからなるデータ構成を採るようにしても良い。
【0027】
異常検出対象100は、異常検出の対象となる人間や物であり、例えば、高齢者やペット、また、建築物5内で運動している人物等が該当する。異常検出対象100は、建築部材に埋め込まれているICタグ101のICタグ情報を読み取り可能なデバイスであるICタグリーダ102を携帯している。例えば、ICタグリーダ102は、異常検出対象100により腕時計のようにその腕に取り付けられて携帯され、異常検出対象100がいる位置の周辺に存在する建築部材に埋め込まれているICタグ101のICタグ情報を読み取る。そして、ICタグリーダ102は、読み取ったICタグ情報を、周知の無線通信技術を用いて、異常検出装置1に対して無線で送信する。
【0028】
まず、建築部材へのICタグ101の埋め込みから建築物5の施工までの流れを説明する。
<建築部材の製造段階でICタグ内にICタグ情報を書き込む場合>
(1)建築部材の製造業者は、建築物5の注文を受けると、建築物5の、リビング、階段、トイレ、浴室、寝室といった様々な場所を含むCAD図を作成する。例えば、図5は建築物の全体のCAD図の概略(寸法等を省略して外形のみを描いている)を示し、図3(A)は、作成された、リビングの床のCAD図の一例を示している。CAD図は、一般に、CAD(Computer Aided Design )システムを用いて設計した図面であり、建築物5内の建築部材のアドレス情報や詳細寸法等が設定された図である。
【0029】
CAD図の作成の際に、建築物5の各場所を構成する建築部材のアドレス情報を設定する。例えば、図3(A)のCAD図に示すように、リビングの床を構成する床材53には、リビングにおける第i番目の床材53であることを示す「L−i」(この例では、001≦i≦018)といったアドレスが設定される。
(2)図3(B)に示すように、建築部材の製造工場において、例えば図3(A)に示すCAD図のCADデータを、任意のコンピュータ200を用いて読み込む。
(3)図3(C)に示すように、工場ラインにおいて、読み込まれたCADデータ中に含まれるアドレス情報をICタグ情報としてICタグ101に書き込む。例えば、図2(A)に示すようなアドレス情報がICタグ情報としてICタグ101に書き込まれる。
【0030】
また、工場ラインにおいて、アドレス情報が書き込まれたICタグ101を建築部材の基材に埋め込む。
【0031】
また、建築部材のアドレス情報は、建築部材にラベルとして貼り付けられる。例えば、図3(D)の点線部に示すように、床材53には、「L−001」、「L−002」、「L−003」といったアドレスを示すラベルが貼り付けられる。
(4)図3(E)に示すように、建築部材が施工業者に対して出荷される。建築部材の製造業者は、建築物5のCAD図のCADデータを施工業者に渡す。
(5)図3(F)に示すように、施工業者によって建築物5が施工される。例えば、図3(A)に示すCAD図のCADデータに含まれるアドレス情報と、建築部材にラベルとして貼り付けられているアドレス情報とを参照して建築物5の施工が行われる。
【0032】
<建築物の施工段階でICタグ内にICタグ情報を書き込む場合>
(1)建築部材の製造業者は、建築物5の注文を受けると、建築物5の、リビング、階段、トイレ、浴室、寝室といった様々な場所についてのCAD図を作成する。例えば、図3(A)に示すような、リビングの床のCAD図を作成する。
【0033】
前述したように、CAD図の作成の際には、建築物5の各場所を構成する建築部材のアドレス情報が設定される。
(2)建築部材の製造業者は、図4(A)に示すように、製造工場の工場ラインにおいて、建築部材の基材にICタグ101を埋め込み、図4(B)に示すような、ICタグ101が埋め込まれた建築部材を製造する。建築部材に埋め込まれたICタグ101には、ICタグ情報は書き込まれていない。
(3)図4(C)に示すように、ICタグ101が埋め込まれた建築部材が施工業者に出荷される。建築部材の製造業者は、建築物5のCAD図のCADデータ(例えば、図3(A)に示すリビングの床のCAD図のCADデータ)を施工業者に渡す。
(4)図4(D)に示すように、施工業者は、例えば、ICタグ情報をICタグ101に書き込むことができるデバイスであるICタグライタ(又はICタグリーダライタ)201を用いて、建築部材に埋め込まれているICタグ101に対してICタグ情報を書き込む。施工業者は、建築部材に埋め込まれているICタグ101に対して、例えば、CAD図の作成の際に設定されたアドレス情報と、建築物名、異常検出対象100の名称からなるICタグ情報を書き込む。例えば、図2(B)に示すようなICタグ情報がICタグ101に書き込まれる。
(5)図4(E)に示すように、施工業者によって建築物5が施工される。例えば、図3(A)に示すCAD図のCADデータに含まれるアドレス情報と、建築部材にラベルとして貼り付けられているアドレス情報とを参照して建築物5の施工が行われる。
【0034】
なお、本発明の実施の形態においては、建築部材に埋め込まれているICタグ101に、例えば、前述した図2(C)に示すICタグIDをICタグ情報として書き込んでもよい。
【0035】
図5は、施工された建築物の見取り図の一例を示す図である。建築物5は、例えば、玄関、リビング、キッチン、階段、寝室、トイレ、脱衣室、浴室といった様々な場所に区切られている。各場所を構成する建築部材には、ICタグ101が埋め込まれている。
【0036】
図6(A)は、図5中に示す階段を横から見た図の例である。階段を構成する階段踏み板51には、アドレス情報が書き込まれたICタグ101が埋め込まれている。例えば、第1段目の階段踏み板51には、「S−001」というアドレスが書き込まれている。
【0037】
図6(B)は、図5中に示すリビングを上から見た図の例である。リビングを構成する床材53には、アドレス情報が書き込まれたICタグ101が埋め込まれている。なお、本発明の実施の形態においては、リビングを構成する床材53のうち、途中で分断された半端な長さの床材53(例えば、図6(B)における、アドレス「L−005」が書き込まれている床材53等)には、アドレス情報を書き込まないようにしても良い。これにより、ICタグ101及びその埋め込み等の手間を省くことができ、一方、端部であるので異常検出対象100の位置の検出に支障を生じることを回避することができる。
【0038】
なお、図5中に示す寝室、キッチン、玄関、脱衣室についても、リビングと同様に、寝室、キッチン、玄関、脱衣室を構成する床材53に、アドレス情報が書き込まれたICタグ101が埋め込まれている。
【0039】
図6(C)は、図5中に示す浴室を横から見た図の例である。浴室のドア52の取っ手54に、アドレス情報(図6では、「B−001」)が書き込まれたICタグ101が埋め込まれている。なお、トイレについては、図示を省略するが、浴室と同様に、トイレのドア52の取っ手54には、アドレス情報(例えば、「T−001」等)が書き込まれたICタグ101が埋め込まれている。
【0040】
次に、本発明の実施の形態における異常検出処理の概要について説明する。
【0041】
建築物5内の異常検出対象100が携帯しているICタグリーダ102は、異常検出対象100がいる位置の周辺に存在する建築部材に埋め込まれたICタグ101に書き込まれているICタグ情報を、継続的に読み取っている。異常検出対象100が建築物5内を移動すると、ICタグリーダ102によって読み取られるICタグ情報に含まれるアドレス情報が変化する。
【0042】
ICタグリーダ102は、現在読み取っているICタグ情報を異常検出装置1に対して無線で送信する。異常検出装置1は、受信したICタグ情報に含まれるアドレス情報に基づいて、現在異常検出対象100がいる位置を特定する。
【0043】
異常検出装置1は、決定した異常検出対象100がいる位置と時刻との対応情報を生成してこれを蓄積すると共に、当該蓄積した対応情報に基づいて、異常検出対象100に異常(事故や病気)が生じているかを判断する。
【0044】
異常検出装置1は、異常検出対象100に異常が生じていると判断した場合には、発生した異常の内容(例えば、建築物名、日時、異常検出対象100の名称、異常検出対象100がいる位置等)を、ネットワーク2を介して中継ホスト3に送信する。
【0045】
中継ホスト3は、発生した異常の内容をユーザ装置4に対してメール送信、又は電話通信する。なお、本発明の実施の形態においては、異常検出装置1が、発生した異常の内容を、中継ホスト3を介さずに、直接にユーザ装置4に送信するようにしても良い。発生した異常の内容を受信したユーザは、例えば、建築物5内の異常検出対象100に対して電話連絡したり、建築物5に向かう等の対処をすることができる。
【0046】
図7は、異常検出装置1の構成の一例を示す図である。異常検出装置1は、ICタグ情報取得部11、位置特定部12、位置情報蓄積部13、異常判断部14、異常通知部15、アドレステーブル16、階段モジュール141、浴室モジュール142、トイレモジュール143、寝室モジュール144、リビングモジュール145を備える。ICタグ情報取得部11、位置特定部12、位置情報蓄積部13、異常判断部14、異常通知部15、アドレステーブル16、階段モジュール141、浴室モジュール142、トイレモジュール143、寝室モジュール144、リビングモジュール145の機能は、異常検出装置1内のCPUとメモリ及びソフトウェアプログラムによって実現される。
【0047】
なお、本発明の異常検出装置1は、建築物5内における、各ICタグ101が埋め込まれている位置の座標情報(例えば、リビングの入り口を中心とした座標(x,y))を予め蓄積している図示しない記憶手段を備えるようにしても良い。
【0048】
ICタグ情報取得部11は、異常検出対象100が携帯しているICタグリーダ102が読み取った1又は複数のICタグ情報を取得する。位置特定部12は、ICタグ情報に含まれているアドレス情報に基づいて、異常検出対象100がいる位置を特定する。異常検出対象100がいる位置の特定には、例えば、アドレス情報と異常検出対象100がいる位置との対応情報が少なくとも格納されているアドレステーブル16を用いる。
【0049】
例えば、位置特定部12は、後述するように、取得した1又は複数のICタグ情報に含まれている全てのアドレスから、中心のアドレスを決定し、決定した中心のアドレスでアドレステーブル16を検索して、中心のアドレスが対応する位置を異常検出対象100がいる位置として特定する。
【0050】
また、本発明の実施の形態においては、例えば、位置特定部12が、取得された1又は複数のICタグ情報に含まれている各アドレスに対応する位置を、アドレステーブル16から抽出し、抽出された各位置の中心の位置を、異常検出対象100がいる位置として特定するようにしても良い。
【0051】
また、例えば、本発明の異常検出装置1が、建築物5内における、各ICタグ101が埋め込まれている位置の座標情報を予め蓄積している記憶手段を備える構成を採る場合、以下のようにして、異常検出対象100がいる位置を特定することができる。
【0052】
すなわち、位置特定部12は、例えば、取得された1又は複数のICタグ情報に含まれている各アドレスに対応するICタグが埋め込まれている位置の座標(例えば、リビングの入り口を中心とした座標(x,y))を、前記記憶手段から抽出する。そして、位置特定部12は、抽出された各座標の重心の座標を算出し、算出した重心の座標を異常検出対象100がいる位置として特定する。
【0053】
また、例えば、位置特定部12は、算出した重心の座標に最も近い位置にあるICタグに書き込まれているアドレスでアドレステーブル16を検索し、該当する位置を異常検出対象100がいる位置として特定するようにしても良い。
【0054】
特定される位置情報は、例えば、異常検出対象100が第4段目の階段にいることを示す「階段4段」、異常検出対象100が浴室にいることを示す「浴室」、異常検出対象100がリビングの入り口から縦5m、横6mの座標にいることを示す「リビング入り口縦5m,横6m」といった情報である。
【0055】
また、位置決定部12は、特定した、異常検出対象100がいる位置を、時刻と対応付けて位置情報蓄積部13に蓄積する。なお、位置特定部12は、ICタグ情報中の例えば建築物名、異常検出対象100の名称の情報を、異常検出装置1内の図示しないバッファ中に格納する。
【0056】
異常判断部14は、位置情報蓄積部13内の、異常検出対象100がいる位置と時刻との対応情報に基づいて、異常検出対象100に異常が生じたかを判断する。異常判断部14は、位置決定部12によって決定された異常検出対象100の位置に応じた、後述する異常検出モジュール(プログラム又はサブルーチン)を呼び出して、異常の検出処理を行わせ、異常検出モジュールから異常を検出したことを示す通知を受けると、異常検出対象100に異常が生じたと判断する。
【0057】
異常通知部15は、異常判断部14によって異常が生じたと判断された場合、発生した異常の内容をユーザ装置4に対して通知する。例えば、異常が生じた日付、異常が生じた時刻、建築物名、異常検出対象100の名称、異常検出対象100がいる位置をユーザ装置4に対して通知する。
【0058】
階段モジュール141、浴室モジュール142、トイレモジュール143、寝室モジュール144、リビングモジュール145は、異常判断部14によって呼び出されて、建築物5内の各位置に応じた異常検出処理を行う異常検出モジュールである。
【0059】
階段モジュール141は、階段における異常検出処理を行うモジュールである。浴室モジュール142は、浴室における異常検出処理を行うモジュールである。トイレモジュール143は、トイレにおける異常検出処理を行うモジュールである。寝室モジュール144は、寝室における異常検出処理を行うモジュールである。リビングモジュール145は、リビングにおける異常検出処理を行うモジュールである。
【0060】
異常検出モジュールは、図7中に示す階段モジュール141、浴室モジュール142、トイレモジュール143、寝室モジュール144、リビングモジュール145に限られない。異常検出装置1は、位置特定部12によって特定される位置に応じた他の様々な異常検出モジュールを備える構成を採ることができる。
【0061】
図8は、アドレステーブルの一例を示す図である。アドレステーブル16には、例えば、各アドレスに対応する、建築物5内の場所と、位置情報とが格納されている。アドレステーブル16内に設定された位置情報は、異常検出対象100がいる位置を意味する。
【0062】
例えば、アドレス「S−001」には、「階段」という場所の「階段1段」という位置が対応する。ここで、位置情報「階段1段」は、第1段目の階段を示す。
【0063】
また、例えば、アドレス「B−001」には、「浴室」という場所の「浴室」という位置が対応し、アドレス「T−001」には、「トイレ」という場所の「トイレ」という位置が対応する。
【0064】
また、例えば、アドレス「L−001」には、「リビング」という場所の「リビング入り口縦1m,横2m」という位置が対応する。ここで、位置情報「リビング入り口縦1m,横2m」は、例えば、図9に示すリビング中において、リビングの入り口を点Oとした場合、点Oを中心としたx軸方向1m、y軸方向2mの点P(1,2)の座標を示している。従って、x軸方向を縦方向、y軸方向を横方向とすると、位置情報「リビング入り口縦1m,横2m」は、リビングの入り口から縦1m,横2mの座標を示している。
【0065】
また、例えば、アドレス「D−001」には、「寝室」という場所の「寝室入り口縦1m,横2m」という位置が対応する。位置情報「寝室入り口縦1m,横2m」は、例えば、寝室の入り口から縦1m、横2mの座標を示している。
【0066】
図10は、位置情報蓄積部に蓄積される情報の一例を示す図である。位置情報蓄積部13には、位置特定部12によって特定された、異常検出対象100がいる位置が、時刻と対応付けて蓄積されている。なお、図10に示す例では、時刻と位置とが1対1に対応しているが、本発明においては、例えば、位置情報蓄積部13は、位置特定部12によって特定された位置が複数の場合は、ある時刻に対応付けられた複数の位置を蓄積するようにしても良い。
【0067】
図11は、異常判断モジュールの構成例を示す図である。階段モジュール141は、閾値146と閾値147とを備える。異常判断部14は、位置特定部12によって特定された位置が階段(例えば、「階段1段」、「階段2段」等)である場合、階段モジュール141を呼び出す。異常判断部14から呼び出された階段モジュール141は、位置情報蓄積部13に蓄積されている時刻と位置との対応情報と、閾値146とを用いて、階段にいる異常検出対象100に異常が生じたかを判断する。
【0068】
例えば、階段モジュール141は、位置情報蓄積部13内の、時刻と位置との対応情報を調べて、位置の変化が階段5段分となるまでの時間が閾値146(例えば3秒)以下である場合には、異常検出対象100が階段から落ちる等の事故が生じたと判断する。
【0069】
また、例えば、階段モジュール141は、位置情報蓄積部13内の、時刻と位置との対応情報を調べて、閾値147(例えば5分)以上位置が変化しない場合には、異常検出対象100が階段において倒れて動かない等の事故が生じたと判断する。
【0070】
浴室モジュール142は、ヒストグラム148を備える。異常判断部14は、位置特定部12によって特定された位置が浴室である場合、浴室モジュール142を呼び出す。
【0071】
異常判断部14から呼び出された浴室モジュール142は、位置情報蓄積部13に蓄積されている時刻と位置との対応情報と、ヒストグラム148とを用いて、浴室にいる異常検出対象100に異常が生じたかを判断する。
【0072】
例えば、浴室モジュール142は、位置情報蓄積部13内の、時刻情報と位置情報との対応情報を調べて、図12に示すようなヒストグラム148を作成する。図12に示すヒストグラムおいて、横軸は、異常検出対象100が浴室にいる間の時間(分)又は時間帯を示しており、縦軸は、異常検出対象100が浴室にいる各時間帯(例えば、20分〜25分、25分〜30分といった、各5分間の時間帯)のカウント数である。
【0073】
浴室モジュール142は、例えば、ヒストグラム148に基づいて、異常検出対象100が浴室にいる時間の中心値(例えば32分間)を算出する。中心値は、例えば当該ヒストグラムにおいて最もカウント数の多い時間(時間帯)を用いる。又は、中心値は、例えば種々の分散や平均等の演算によって算出するようにしても良い。
【0074】
そして、浴室モジュール142は、現在、異常検出対象100が浴室にいる時間が、算出された前記中心値より更に予め決められた時間(例えば、5分間)だけ長い場合には、異常検出対象100に異常が生じたと判断する。
【0075】
トイレモジュール143は、ヒストグラム149を備える。異常判断部14は、位置特定部12によって特定された位置がトイレである場合、トイレモジュール143を呼び出す。異常判断部14から呼び出されたトイレモジュール143は、位置情報蓄積部13に蓄積されている時刻情報と位置情報との対応情報と、ヒストグラム149とを用いて、浴室にいる異常検出対象100に異常が生じたかを判断する。
【0076】
例えば、トイレモジュール143は、位置情報蓄積部13内の、時刻と位置との対応情報を調べて、例えば、横軸に異常検出対象100がトイレにいる間の時間(分)、縦軸に異常検出対象100がトイレにいる各時間帯(例えば、15分〜20分、20分〜25分といった、各5分間の時間帯)のカウント数をとった、ヒストグラム149(図示を省略)を作成する。
【0077】
そして、トイレモジュール143は、現在、異常検出対象100がトイレにいる時間が、作成したヒストグラム149に基づいて算出した、例えば、異常検出対象100がトイレにいる時間の中心値(例えば20分間)より更に予め決められた時間(例えば、5分間)だけ長い場合には、異常検出対象100に異常が生じたと判断する。
【0078】
寝室モジュール144は、閾値150を備える。異常判断部14は、位置特定部12によって特定された位置が寝室である場合、寝室モジュール144を呼び出す。異常判断部14から呼び出された寝室モジュール144は、位置情報蓄積部13に蓄積されている時刻と位置との対応情報と、閾値150とを用いて、寝室にいる異常検出対象100に異常が生じたかを判断する。
【0079】
例えば、階段モジュール141は、位置情報蓄積部13内の、時刻と位置との対応情報を調べて、閾値150(例えば12時間)以上位置が変化しない場合には、異常検出対象100に異常が生じたと判断する。
【0080】
リビングモジュール145は、閾値151を備える。異常判断部14は、位置特定部12によって特定された位置がリビングである場合、リビングモジュール145を呼び出す。異常判断部14から呼び出されたリビングモジュール145は、位置情報蓄積部13に蓄積されている時刻と位置との対応情報と、閾値151とを用いて、リビングにいる異常検出対象100に異常が生じたかを判断する。
【0081】
例えば、リビングモジュール145は、位置情報蓄積部13内の、時刻と位置との対応情報を調べて、閾値151(例えば8時間)以上位置が変化しない場合には、異常検出対象100に異常が生じたと判断する。
【0082】
なお、異常判断部14が備える閾値146、147、150、151、及び、異常判断部14が作成するヒストグラム148、149は、各々、図示しないメモリの所定の格納領域に格納されている。
【0083】
図13は、異常検出処理フローの一例を示す図である。以下に、図中のステップ番号S1〜S6に従って、処理の流れを説明する。
(S1) ICタグ情報取得部11が、異常検出対象100が携帯しているICタグリーダ102が読み取ったICタグ情報を取得する。
(S2) 位置特定部12が、ICタグ情報に含まれるアドレス情報に基づいて、異常検出対象100がいる位置を特定する。
(S3) 位置特定部12が、特定した位置を時刻と対応付けて位置情報蓄積部13に蓄積する。これにより、前記対応情報が生成され蓄積される。この新たに蓄積された対応情報に基づいて、異常検出モジュール142及び143が、各々、当該ヒストグラム148及び149を生成する。なお、位置特定部12がヒストグラム148及び149を生成するようにしても良い。
(S4) 異常判断部14が、前記S2において特定された位置に応じた異常検出モジュールを呼び出す。呼び出された異常検出モジュールによって、異常検出対象100に異常が生じたか否かが検出され、その異常検出結果が異常判断部14に返される。
(S5) 異常判断部14が、受信した異常検出結果に基づいて、異常検出対象100に異常が生じたかを判断する。
(S6) 異常検出対象100に異常が生じた場合には、異常通知部15が、ユーザ装置4に異常の内容を通知する。例えば、異常の内容が電子メールでユーザ装置4に送信されることにより、ユーザ装置4上に図14に示すような画面表示がされる。例えば、図14に示す画面表示を見たユーザは、「住宅太郎」という名の異常検出対象100が、13時10分から13時15分までの5分間、第4段目の階段において動かないことを知ることができる。異常検出対象100に異常が生じていない場合には、前記S1の処理に戻る。
【0084】
図15は、図13のS2における、異常検出対象100がいる位置の特定処理を説明する原理図である。図15では、一列に並んだ床材53の上を異常検出対象100が移動している場合を想定している。図15(A)に示すように、床材53には、「1」〜「10」までのアドレス情報が書き込まれたICタグ101が埋め込まれている。
【0085】
ICタグリーダ102を携帯している異常検出対象100が、アドレス情報「5」が書き込まれているICタグが埋め込まれている床材53の上に立つと、ICタグリーダ102は、アドレス情報「3」が書き込まれたICタグ101〜アドレス情報「7」が書き込まれたICタグ101のそれぞれから、ICタグ情報を同時に読み取る。
【0086】
異常検出装置1は、ICタグリーダ102が読み取った5個のICタグ情報を取得し、アドレス情報「3」〜アドレス情報「7」の中心のアドレス情報「5」を決定する。そして、異常検出装置1は、アドレステーブル16を検索して、アドレス情報「5」に対応する位置を、異常検出対象100がいる位置として特定する。
【0087】
図15(B)に示すように、異常検出対象100が移動すると、ICタグリーダ102は、アドレス情報「4」が書き込まれたICタグ101〜アドレス情報「9」が書き込まれたICタグ101のそれぞれから、ICタグ情報を同時に読み取る。
【0088】
異常検出装置1は、ICタグリーダ102が読み取った6個のICタグ情報を取得し、アドレス情報「4」〜アドレス情報「9」の中心のアドレス情報「6」と「7」を決定する。そして、異常検出装置1は、アドレステーブル16を検索して、アドレス情報「6」に対応する位置と、アドレス情報「7」に対応する位置を、異常検出対象100がいる位置として特定する。
【0089】
図16(A)は、階段における異常検出対象の位置の特定処理の一例を示す図である。図16(A)に示すように、異常検出対象100が、アドレス情報「S−005」が書き込まれたICタグ101が埋め込まれた階段踏み板51の上にいるとする。ICタグリーダ102は、アドレス情報「S−003」が書き込まれたICタグ101〜アドレス情報「S−007」が書き込まれたICタグ101のそれぞれから、ICタグ情報を同時に読み取る。
【0090】
異常検出装置1は、ICタグリーダ102が読み取った5個のICタグ情報を取得する。そして、異常検出装置1は、取得したICタグ情報に含まれているアドレス情報「S−003」〜アドレス情報「S−007」の中心のアドレス情報である「S−005」を決定する。
【0091】
そして、異常検出装置1は、例えば図8に示すアドレステーブル16を検索して、アドレス情報「S−005」に対応する位置である「階段5段」を、異常検出対象100がいる位置として特定する。
【0092】
図16(B)は、リビングにおける異常検出対象の位置の特定処理の一例を示す図である。なお、例えば、本発明の異常検出装置1は、予め、建築物5内における各ICタグ101の座標情報を図示しない記憶手段内に蓄積している構成を採るものとする。
【0093】
異常検出対象100が、図16(B)に示すように、リビングの中央付近にいると、ICタグリーダ102は、アドレス情報「L−002」、「L−006」、「L−007」、「L−011」、「L−015」、「L−016」、「L−020」、「L−024」、「L−025」、「L−029」が書き込まれたICタグ101のそれぞれから、ICタグ情報を同時に読み取る。
【0094】
異常検出装置1は、例えば、ICタグリーダ102が読み取ったICタグ情報を取得し、読み取ったICタグ情報に含まれている各アドレスに対応するICタグが埋め込まれている位置の座標(例えば、リビングの入り口を中心とした座標(x,y))を、上述した図示しない記憶手段から抽出する。
【0095】
そして、異常検出装置1は、抽出された各座標の重心の座標を算出し、算出した重心の座標に最も近い位置にあるICタグに書き込まれているアドレス「L−016」で、図8に示すアドレステーブル16を検索し、該当する位置「入り口縦5m,横6m」を異常検出対象100がいる位置として特定する。
【0096】
なお、寝室における異常検出対象100の位置の特定処理は、前記、リビングにおける異常検出対象100の位置の特定処理と同様であるので、説明を省略する。
【0097】
図16(C)は、浴室における異常検出対象の位置の特定処理の一例を示す図である。異常検出対象100が、図16(C)に示すように、浴室内にいると、ICタグリーダ102は、ドア52の取っ手54内に埋め込まれたICタグ101に書き込まれているICタグ情報を読み取る。
【0098】
異常検出装置1は、ICタグリーダ102が読み取ったICタグ情報を取得し、取得したICタグ情報に含まれているアドレス情報「B−001」で図8に示すアドレステーブル16を検索し、該当する位置「浴室」を異常検出対象100がいる位置として特定する。
【0099】
なお、トイレにおける異常検出対象100の位置の特定処理は、前記、浴室における異常検出対象100の位置の特定処理と同様であるので、説明を省略する。
【0100】
図17は、リビングモジュールの処理フローの一例を示す図である。以下に、図中のステップ番号S11〜S15に従って、処理の流れを説明する。
(S11) リビングモジュール145が、位置情報蓄積部13内の位置情報を監視する。
(S12) リビングモジュール145が、現時刻において異常検出対象100のいる位置が変化したかを判断する。異常検出対象100のいる位置が変化した場合には、S11に戻る。
(S13) 異常検出対象100のいる位置が変化していない場合、リビングモジュール145は、位置が変化していない時間を算出する。例えば、現時刻は、16時15分00秒であるとする。図10に示す位置情報蓄積部13内の位置情報を見ると、「リビング入り口縦5m,横6m」という位置が変化していないのは、16時05分00秒から16時15分00秒なので、算出される位置が変化していない時間は、10分である。
(S14) リビングモジュール145が、算出された時間が閾値151以上であるかを判断する。例えば、閾値151が8時間に設定されている場合、算出された時間が8時間以上であるかを判断する。
(S15) 前記S14において、算出された時間が閾値151以上である場合には、リビングモジュール145は、異常を検出したことを異常判断部14に通知する。算出された時間が閾値151より小さい場合は、S11に戻る。
【0101】
前記リビングモジュール145の処理によって、リビングにいる異常検出対象100に異常が生じたことを検出することができる。例えば、高齢者がリビングにおいて倒れ、長時間動かない等の異常の発生を検出することができる。即ち、リビングに例えば8時間いる場合を除いて、異常検出対象100の異常を正しく検出することができる。また、閾値151の値を適切に設定することにより、リビングモジュール145の処理を個々の異常検出対象100に応じて最適化(又はカスタマイズ、以下同じ)することができる。
【0102】
寝室モジュール144の処理フローは、図17に示すリビングモジュール145の処理フローと同様であるので、説明を省略する。但し、寝室モジュール144が異常の検出に用いる閾値150(12時間)は、リビングモジュール145が異常の検出に用いる閾値151(8時間)とは異なる。
【0103】
これにより、寝室に例えば12時間いる場合を除いて、異常検出対象100の異常を正しく検出することができる。また、閾値151とは異なる閾値150を別個に設定することにより、寝室での異常処理を適切なものとすることができる。また、閾値150の値を適切に設定することにより、寝室モジュール145の処理を個々の異常検出対象100に応じて最適化することができる。
【0104】
図18は、浴室モジュールの処理フローの一例を示す図である。以下に、図中のステップ番号S21〜S27に従って、処理の流れを説明する。
(S21) 浴室モジュール142が、位置情報蓄積部13内の位置情報を監視する。
(S22) 浴室モジュール142が、現時刻において異常検出対象100のいる位置が変化したかを判断する。
(S23) 異常検出対象100のいる位置が変化していない場合、浴室モジュール142が、位置が変化していない時間を算出する。例えば、現時刻が17時37分10秒であるとする。図10に示す位置情報蓄積部13内の位置情報を見ると、浴室にいる時間は、17時02分10秒から17時37分10秒なので、算出される位置が変化していない時間は、35分である。
(S24) 浴室モジュール142が、ヒストグラム148に基づいて、閾値を算出する。浴室モジュール142は、例えば、図12に示すヒストグラム148における、異常検出対象100が浴室にいる時間の中心値(例えば32分間)に予め決められた時間(例えば、5分間)を加えた値を閾値として算出する。
(S25) 浴室モジュール142が、S23において算出された、位置が変化していない時間が、S24において算出された閾値以上であるかを判断する。
(S26) 前記S25において、位置が変化していない時間が閾値以上である場合には、浴室モジュール142は、異常を検出したことを異常判断部14に通知する。位置が変化していない時間が閾値より小さい場合には、S21に戻る。
(S27) 前記S22において、異常検出対象100のいる位置が変化した場合には、浴室モジュール142は、異常検出対象100が浴室にいた時間に基づいて、ヒストグラム148を更新する。すなわち、浴室モジュール142は、例えば、異常検出対象100が浴室にいた時間が含まれる時間帯のカウント数を1つ増やして、ヒストグラム148を更新する。
【0105】
前記浴室モジュール142の処理によって、浴室にいる異常検出対象100に異常が生じたことを検出することができる。例えば、高齢者が浴室において意識を失い、長時間動かない等の異常の発生を検出することができる。また、使用の都度更新されるヒストグラム148を用いることにより、個々の異常検出対象100の浴室にいる時間を学習することができ、これにより、浴室モジュール142の処理を個々の異常検出対象100に応じて最適化することができる。
【0106】
なお、トイレモジュール143の処理フローは、図18に示す浴室モジュール142の処理フローと同様であるので、説明を省略する。但し、トイレモジュール143が異常の検出に用いるヒストグラム149は、浴室モジュール142が異常の検出に用いるヒストグラム148とは異なる。
【0107】
これにより、トイレに通常時間いる場合を除いて、異常検出対象100の異常を正しく検出することができる。また、ヒストグラム148とは異なるヒストグラム149を別個に設定することにより、トイレでの異常処理を適切なものとすることができる。また、個々の異常検出対象100のトイレにいる時間を学習することにより、トイレモジュール143の処理を個々の異常検出対象100に応じて最適化することができる。
【0108】
図19は、階段モジュールの処理フローの一例を示す図である。以下に、図中のステップ番号S31〜S38に従って、処理の流れを説明する。
(S31) 階段モジュール141が、位置情報蓄積部13内の位置情報を監視する。
(S32) 階段モジュール141が、現時刻において異常検出対象100のいる位置が変化したかを判断する。例えば、現時刻が例えば15時03分03秒であるとすると、図10に示す位置情報蓄積部13内の位置情報を見ると、現時刻において、異常検出対象100は「階段5段」の位置に移動したことがわかる。
(S33) 前記S32において、異常検出対象100のいる位置が変化した場合には、階段モジュール141が、異常検出対象100の位置が、予め決められた階段数分変化したかを判断する。予め決められた階段数は、例えば5段とする。例えば、図10に示す位置情報蓄積部13内の位置情報を見ると、「階段10段」から「階段5段」までの5段分位置が変化したことがわかる。
【0109】
異常検出対象100の位置が、予め決められた階段数分変化していない場合には、前記S31に戻る。
(S34) 前記S33において、異常検出対象100のいる位置が、予め決められた階段数分変化した場合には、階段モジュール141は、予め決められた階段数分変化するまでの時間を算出する。例えば、図10に示す位置情報蓄積部13内の位置情報を見ると、「階段10段」から「階段5段」までの5段分位置が変化するまでの時間は、3秒である。
(S35) 階段モジュール141は、S34において算出された、予め決められた階段数分変化するまでの時間が閾値146(例えば、5秒)以下かを判断する。
(S36) 前記S35において、予め決められた階段数分変化するまでの時間が、閾値146(例えば、5秒)以下である場合には、階段モジュール141は、異常を検出したことを異常判断部14に通知する。予め決められた階段数分変化するまでの時間が閾値146より大きい場合には、S31に戻る。
(S37) 前記S32において、異常検出対象100のいる位置が変化していない場合、階段モジュール141が、位置が変化していない時間を算出する。
(S38) 階段モジュール141が、S37において算出された、位置が変化していない時間が、閾値147以上であるかを判断する。例えば、閾値147が5分であるとすると、位置が変化していない時間が5分以上であるかを判断する。位置が変化していない時間が閾値147以上である場合には、S36の処理に移行し、階段モジュール141は、異常を検出したことを異常判断部14に通知する。位置が変化していない時間が閾値147より小さい場合には、S31に戻る。
【0110】
前記階段モジュール141の処理によって、階段にいる異常検出対象100に異常が生じたことを検出することができる。例えば、階段モジュール141の処理によれば、高齢者が階段において倒れ、長時間動かない等の異常の発生を検出することができる。また、例えば、高齢者が階段から落ちる等の異常の発生を検出することができる。即ち、閾値147の値を適切に設定することにより、階段モジュール141の処理を個々の異常検出対象100に応じて最適化することができる。また、階段の閾値147を別個に設定することにより、階段での異常処理を適切なものとすることができる。また、閾値147の値を適切に設定することにより、階段モジュール141の処理を個々の異常検出対象100階段を昇る速度に応じて最適化することができる。
【0111】
なお、本発明は、コンピュータにより読み取られ実行されるプログラムとして実施することもできる。本発明を実現するプログラムは、コンピュータが読み取り可能な、可搬媒体メモリ、半導体メモリ、ハードディスクなどの適当な記録媒体に格納することができ、これらの記録媒体に記録して提供され、又は、通信インタフェースを介してネットワークを利用した送受信により提供されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明のシステム構成例の概要を示す図である。
【図2】ICタグ情報のデータ構成例を示す図である。
【図3】建築部材へのICタグの埋め込みから建築物の施工までの流れを説明する図である。
【図4】建築部材へのICタグの埋め込みから建築物の施工までの流れを説明する図である。
【図5】施工された建築物の見取り図の一例を示す図である。
【図6】階段を横から見た図の例、リビングを上から見た図の例、浴室を横から見た図の例である。
【図7】異常検出装置の構成の一例を示す図である。
【図8】アドレステーブルの一例を示す図である。
【図9】リビング中の座標を示す図である。
【図10】位置情報蓄積部に蓄積される情報の一例を示す図である。
【図11】異常判断モジュールの構成例を示す図である。
【図12】ヒストグラムの一例を示す図である。
【図13】異常検出処理フローの一例を示す図である。
【図14】ユーザ装置上に画面表示される異常の内容の例を示す図である。
【図15】異常検出対象がいる位置の特定処理を説明する原理図である。
【図16】階段における異常検出対象の位置の特定処理の一例を示す図、リビングにおける異常検出対象の位置の特定処理の一例を示す図、浴室における異常検出対象の位置の特定処理の一例を示す図である。
【図17】リビングモジュールの処理フローの一例を示す図である。
【図18】浴室モジュールの処理フローの一例を示す図である。
【図19】階段モジュールの処理フローの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0113】
1 異常検出装置
2 ネットワーク
3 中継ホスト
4 ユーザ装置
5 建築物
11 ICタグ情報取得部
12 位置特定部
13 位置情報蓄積部
14 異常判断部
15 異常通知部
16 アドレステーブル
100 異常検出対象
101 ICタグ
102 ICタグリーダ
141 階段モジュール
142 浴室モジュール
143 トイレモジュール
144 寝室モジュール
145 リビングモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物内の異常検出対象に生じた異常を検出する異常検出装置であって、
前記異常検出対象により携帯され、前記建築物を構成する建築部材に取り付けられたICタグに書き込まれたICタグ情報を読み取るICタグ情報読み取り手段と、
前記ICタグ情報読み取り手段により読み取られたICタグ情報を取得するICタグ情報取得手段と、
前記取得されたICタグ情報に基づいて、前記異常検出対象がいる位置を特定する位置特定手段と、
前記特定された異常検出対象がいる位置と時刻との対応情報を蓄積する位置情報蓄積手段と、
前記蓄積された、前記異常検出対象がいる位置と時刻との対応情報に基づいて、前記異常検出対象に異常が生じたかを判断する異常判断手段と、
前記異常判断手段によって前記異常検出対象に異常が生じたと判断された場合、当該生じた異常の内容を通知する異常通知手段とを備える
ことを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検出装置において、更に、
前記位置特定手段によって特定された前記異常検出対象がいる位置に応じて前記異常判断手段により呼び出され、前記異常検出対象に生じる異常を検出する1又は複数の異常検出手段を備える
ことを特徴とする異常検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異常検出装置において、
前記異常検出手段は、前記位置情報蓄積手段内に蓄積された、異常検出対象がいる位置と時刻との対応情報を監視して、前記異常検出対象がいる位置が変化しない時間が、予め決められた閾値以上の場合、前記異常検出対象に異常が生じたと判断する
ことを特徴とする異常検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の異常検出装置において、
前記異常検出手段は、前記位置情報蓄積手段内に蓄積された、異常検出対象がいる位置と時刻との対応情報を監視して、前記異常検出対象がいる位置が予め定めた大きさだけ変化するまでの時間が、予め決められた閾値以下の場合、前記異常検出対象に異常が生じたと判断する
ことを特徴とする異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−179136(P2007−179136A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374113(P2005−374113)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000145437)株式会社ウッドワン (70)
【Fターム(参考)】