説明

異常検出装置

【課題】泥棒や賊が、ガラス窓のガラス板を破って侵入しようとした場合に、そのことを確実に検出して警報動作をし、あるいはまた警備会社に連絡できるようにする。
【解決手段】窓ガラス15のガラス板17の表面に、導電性薄膜によって所定の形状の導電性パターン20を形成するとともに、この導電性パターン20の切断部位に検出器21を接続しておき、ガラス板17が破られて導電性パターン20が断線した場合に、検出器21が検出動作を行なうとともに、無線で中継器44に異常検出信号を送信し、この中継器44からさらに集中監視ユニット54に異常検出信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異常検出装置に係り、とくにガラス板の破損を伴う異常を検出するようにした異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
治安の悪化に伴って、家屋や事務所、その他の建造物の安全性の確保が重要な課題になっている。とくに生活の場である家屋の扉や窓から泥棒や賊が侵入すると、平穏な生活を害され、場合によっては財産を奪われたり、身体や生命の安全を脅かされる。
【0003】
そこで従来より、とくに扉や窓の部分に盗難防止装置を設け、外部から泥棒等が侵入しようとした場合には、そのことを検出し、警報を発したり、あるいは警備会社に通報したりすることによって、泥棒や賊の侵入を防止するようにしている。
【0004】
一般的な盗難防止装置は、扉あるいはガラス窓の開閉時に移動する可動部分にマグネットを取付けるとともに、扉枠あるいは窓枠に非接触の近接スイッチを設けておき、扉あるいは窓をこじ開けた場合には上記マグネットが離間して近接スイッチが検出動作を行なうようにしている。この検出動作に応答して、検出回路が検出動作を行ない、警報器を作動させたり、警備会社に対して異常信号を送信するようにしている。
【0005】
このような従来の盗難防止装置の欠点は、主要部がガラス板から構成されるガラス窓やガラス戸のガラス板を損壊させたり切断させたりして所定の大きさの開口部を形成し、このような開口部を通して賊が侵入しても、上記の非接触の検出スイッチが作動しないことである。従ってこの場合には警報器が作動せず、あるいはまた警備会社に対する通報も行なわれない。よって従来のこのような盗難防止装置は、ガラス板を破って侵入しようとする盗難に対して、無防備である。
【特許文献1】特開2004−166763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の課題は、ガラス窓やガラス戸等のガラス板が破られたり、切断された場合に、そのことを確実に検出して異常を報知できるようにした異常検出装置を提供することである。
【0007】
本願発明の別の課題は、ガラス窓やガラス戸等のガラス板を切断した場合に、ガラス板に設けられている導電性パターンの断線によって異常を検出するようにした異常検出装置を提供することである。
【0008】
本願発明のさらに別の課題は、取付けが簡単であって、特別の工事を必要としないようにした異常検出装置を提供することである。
【0009】
本願発明のさらに別の課題は、ガラス窓に適用した場合において、開閉動作を妨げず、開閉動作によって誤動作をしないようにした異常検出装置を提供することである。
【0010】
本願発明のさらに別の課題は、電池交換を必要とせず、さらには外部からの電源の供給を必要としないようにした異常検出装置を提供することである。
【0011】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、およびその実施の形態によって明らかにされよう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の主要な発明は、ガラス板の表面に沿って形成される透明または半透明の導電性パターンと、前記導電性パターンと接続される電極を有し、前記ガラス板の破損に伴う前記導電性パターンの断線を検出する検出器と、を有する異常検出装置に関するものである。ここで、前記導電性パターンが前記ガラス板の表面に直接形成されていてよい。あるいはまた前記導電性パターンが前記ガラス板と接合されるフィルムの表面に形成されるとともに、前記ガラス板の表面に接するようにしてよい。また前記導電性パターンが透明導電膜であってよい。
【0013】
また前記検出器がガラス板の表面に取付けられるとともに、該検出器のガラス板の厚さ方向の寸法がこのガラス板を取付けた枠体のガラス板の表面からの突出量よりも小さくすることが好ましい。また前記検出器が無線送信手段を有し、前記導電性パターンの断線が検出された場合に、異常検出信号を無線で送信するようにしてよい。また前記検出器からの無線による異常検出信号を受信する無線受信手段を備える中継器または警報器を有し、前記中継器または警報器は異常検出信号を他のコントロールユニットに送信するかまたは警報動作を行なってよい。また前記検出器の駆動源が太陽電池から構成され、前記ガラス板を通して入射する光で発電するようにしてよい。
【0014】
本願の別の主要な発明は、ガラス板の表面に沿って形成される所定の形状の導電性パターンと、前記導電性パターンと接続される電極を有し、前記ガラス板の破損に伴う前記導電性パターンの断線を検出する検出器と、を有する異常検出装置に関するものである。
【0015】
ここで、前記導電性パターンが不透明であって、前記ガラス板を保持する枠体によって隠れるように、前記ガラス板のエッジの部分に配置されてよい。また前記導電性パターンが不透明であって、金属膜、導電性粉末を含む導電膜、金属箔、またはカーボングラファイトシートであってよい。また前記導電性パターンが発熱手段を兼用し、通電によるジュール熱で前記ガラス板を加温するようにしてよい。
【発明の効果】
【0016】
本願の主要な発明は、ガラス板の表面に沿って形成される透明または半透明の導電性パターンと、導電性パターンと接続される電極を有し、ガラス板の破損に伴う導電性パターンの断線を検出する検出器と、を有する異常検出装置に関するものである。
【0017】
従ってこのような異常検出装置によると、何らかの原因によってガラス板が破損した場合には、その表面に沿って形成される導電性パターンが断線する。従ってこの導電性パターンの断線を検出器によって検出し、異常検出信号を発生することが可能になる。
【0018】
ここで導電性パターンがガラス板の表面に直接形成されるようにした構成によれば、ガラス板が破損したり切断されたりして導電性パターンが断線すると、この導電性パターンの断線を検出器によって検出することが可能になる。
【0019】
導電性パターンがガラス板と接合されるフィルムの表面に形成されるとともに、ガラス板の表面に接するようにした構成によると、ガラス板の破損に伴って、このガラス板と接合されるフィルムの表面の導電性パターンが断線し、検出器が異常検出の動作を行なう。しかもガラス板は上記フィルムによって補強され、破損した場合においてもその破片の飛散が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1は本実施の形態に係る異常検出装置を備える建造物の窓の部分を示すものであって、建造物の壁面10には、その所定の位置に横長の矩形の開口11が形成される。この開口11の周囲には、例えばサッシから成る枠体12が取付けられる。
【0021】
上記枠体12を取付けた開口11の部分には、ガラス窓15が取付けられる。ここでは2枚のガラス窓15を互いに引違い式に取付けるようにしている。それぞれの窓15は窓枠16を備え、この窓枠16が枠体12内においてレールで摺動可能に支持される。しかも窓枠16内にはガラス板17が取付けられるようになっている。しかも引違い式のガラス窓15はそれらの交差位置においてロック装置18によってロックされ、これによって施錠が行なわれるようになっている。
【0022】
このような窓ガラス15の特徴は、ガラス窓15を構成するガラス板17の表面に沿って形成されている導電性パターン20である。導電性パターン20は上記窓枠16の内側に沿って連続して形成されるとともに、上辺のほぼ中央部において分断されている。そして分断された両側の導電性パターン20を跨ぐように、異常検出のための検出器21が取付けられるようになっており、この検出器21によって、導電性パターン20の断線に伴う異常の検出を行なうようにしている。
【0023】
次に上記ガラス窓15のガラス板17に導電性パターン20を形成する動作について説明する。図2に示すように、ほぼ矩形状であって上記ガラス板17よりも一回り小さなベースフィルム23を用意する。ベースフィルム23は例えばポリエステル等の合成樹脂フィルムから構成されてよい。このようなベースフィルム23の表面には、導電性薄膜24を形成する。導電性薄膜24としては、酸化インジウム(In、ITO)、酸化スズ(SnO)も酸化亜鉛(ZnO)等の透明金属薄膜24を形成する。金属薄膜24の形成方法は、一般的には蒸着によってなされるが、その他プラズマCVD、スパッタ等のいわゆる薄膜形成のための従来公知の方法を任意に選択できる。またベースフィルム23の全面に導電性薄膜24を形成してもよいが、その場合には導電性薄膜形成材料の消費量が増加するために、形成しようとする導電性パターン20と対応する位置において、その巾よりもやや広めに局部的に形成することが好適である。
【0024】
このような導電性薄膜24を形成した後に、図3に示すように、その表面に離型性溶剤25を導電性パターン20が形成される部分を除いて塗布する。離型性溶剤としては、ガラス板17に付着しない離型性インク、シリコン液、スクリーン印刷用インク等が用いられる。そしてここで、導電性パターン20に対応する部分を残して、印刷等の方法によって導電性薄膜24の表面に上記離型性溶剤25を付着させる。そしてこの後に離型性溶剤25を乾燥固化する。
【0025】
この後に図4に示すように、ベースフィルム23をガラス板17の表面に接合する。このときに上記導電性薄膜24および離型性溶剤25を塗布した表面がガラス板17に接するようにする。なおこのときに予めベースフィルム23の接合面側の表面に、ポリエチレン系、ホットメルト系、ナイロン系、ポリエステル系等の比較的金属と接着し易い合成樹脂のエマルジョンを塗布しておき、これによって上記導電性薄膜24の転写の際の接合性を高めることが好ましい。
【0026】
ベースフィルム23をガラス板17の上に接合したならば、この状態でベースフィルム23に対して加熱ロール26を押当て、50〜300℃の範囲の適当な温度でベースフィルム23を加熱しながらガラス板17に対して加圧する。するとこのベースフィルム23の表面に塗布された上記の合成樹脂のエマルジョンによって、離型性溶剤25が塗布されていない領域の上記導電性薄膜24がガラス板17の表面に転写される。従って図5に示すように、ガラス板17の表面から上記ベースフィルム23を静かに剥離する。するとこのベースフィルム23の表面からは、上記離型性溶剤25が塗布されていない部分の導電性薄膜24がガラス板17に剥離転写され、これによって表面に所定の形状の導電性パターン20が形成されたガラス板17が得られる。すなわち加熱転写法によって、ベースフィルム23の表面に予め形成した導電性薄膜24を選択的にガラス板17上に転写して透明導電性パターン20を形成することが可能になる。なおガラス板17上への導電性パターン20の形成方法は、必ずしも上述の剥離転写法によることなく、他の各種の薄膜形成法の内の任意の1つを用いて形成してもよい。
【0027】
次にこのような導電性パターン20が形成されたガラス板17上に検出器21を取付ける動作について説明する。検出器21は図6〜図8に示すように、偏平な直方体状をなすケーシング内に収納されており、その背面側であってガラス板17との接合面側にはやや突出した取付け座30が形成されており、この取付け座30の部分で、両面接着テープ31によってガラス板17の表面に接着して固定するようになっている。またこの検出器21の背面側には、一対の開口32が形成され、それぞれの開口32にはU字状に屈曲されたばね接点33が取付けられており、電極を構成している。そしてこれらのばね接点33を導電性パターン21に接続するようにしている。
【0028】
検出器21を上記ガラス板17の導電性パターン20の上縁の部分であって、その中央の分断された部分を跨ぐように検出器21が取付けられる。このときに上記検出器21の開口32に臨むように設けられているばね接点33が導電性パターン20にそれぞれ図8に示すように接触するようになる。従って内部に設けられている検出回路は、一対のばね接点33を介して導電性パターン20の分断された端部と接続されるようになる。
【0029】
ここでガラス板17の表面に検出器21を取付けた場合に、図8に示すように、この検出器21のガラス板17の厚み方向の突出量Aは、窓枠16の同方向の突出量Bよりも小さくなっている。すなわちA<Bの関係になっている。この関係は、ガラス窓15の窓枠16の全周にわたって維持される。従って検出器21を取付けても、引違い式のガラス窓15が検出器21によって開閉動作を妨げられることがなく、開閉式のガラス窓15に何等の支障なく適用できる。
【0030】
検出器21の回路構成は図9Aに示される。すなわち検出器21は、乾電池37を駆動源とし、この乾電池37によって電源回路38が駆動されるようになっている。また検出器21は検出回路39と送信回路40とを備えている。ここで検出回路39が上記導電性パターン20の断線を検出するようになっており、その一対の入力端子が導電性パターン20の分断された端部にそれぞれ接続される。これに対して送信回路40は、検出回路39が検出動作を行なった場合に、これに応じて異常検出信号を送信するようになっており、アンテナ41によって無線で送信するようになっている。
【0031】
検出回路39の具体的な構成例を図9Bに示す。この検出回路は、pnpトランジスタ42とプルダウン抵抗43とによって構成したものであって、電源端子とトランジスタ42のベースとの間に上記導電性パターン20が接続されるとともに、トランジスタ42のベースはプルダウン抵抗43を介して接地される。すなわちトランジスタ42のベースは、導電性パターン20とプルダウン抵抗43との直列回路の接続点に接続されることになる。
【0032】
ここで導電性パターン20の抵抗が非常に小さい場合や無視できる場合には、導電性パターン20が断線していない場合には、このトランジスタ42のベースには、電源電圧V 0とほぼ等しい電圧が印加されるために、トランジスタ42の エミッタ・コレクタ間は遮断状態になって送信回路40は作動しない。これに対して導電性パターン20が断線すると、プルダウン抵抗43によってトランジスタ42のベースが0電位になる。従ってトランジスタ42が導通し、送信回路40が駆動される。従ってこれにより送信回路40が異常検出信号をアンテナ41を介して送信する。
【0033】
図10は、このようなガラス窓15のガラス板17に検出器21を取付けた異常検出装置による防犯システムの構成例を示しており、ここではビルの各フロアのガラス窓15のガラス板17にそれぞれ検出器21を取付けるとともに、各フロアの天井の部分に中継器44を取付けるようにしている。中継器44は上記各ガラス窓15のガラス板17に取付けられている検出器21からの異常検出信号を無線で受信するようになっており、しかもこの異常検出信号を例えば1階の管理室に設けられている集中管理ユニット54に送信するようにしている。なおこの例では、中継器44から集中監視ユニット54への異常検出信号の送信は、ワイヤケーブルを用いているが、ワイヤケーブルに代えてここでも無線を用いてもよい。
【0034】
検出器21がこのようにワイヤレスで中継器44に異常検出信号を送信して異常を報せるようにしているために、ガラス板17に取付けられる検出器21に対して何等の配線を行なう必要がない。従ってガラス板17の表面であってとくに導電性パターン20の切断部位に両面接着テープ31によって検出器21を取付けるだけで、取付け動作が完了し、取付け動作が極めて簡略化され、付帯工事を必要としない利点がある。
【0035】
図11は上記中継器44と集中管理ユニット54の回路構成を示している。中継器44は電源回路47を備えている。電源回路47は例えば商用電源で駆動されるようになっている。またこの中継器44はアンテナ48を接続した受信回路49を備え、この受信回路49によって、上記検出器21からの異常検出信号を無線で受信する。そして上記受信回路49には警報駆動回路50が接続されるとともに、さらに警報駆動回路50に警報器51が接続される。また上記受信回路49は、1階の管理室に設けられている集中監視ユニット54に信号ケーブルによって接続される。この集中監視ユニット54はさらに送信器55を備えるとともに、この送信器55がアンテナ56によって外部に異常検出信号を送信するようになっている。
【0036】
従って何れかの階のガラス窓15のガラス板17が何等かの理由によって破損し、これによって導電性パターン20が断線した場合には、そのことを図9に示す検出器21の検出回路39が検出動作を行なう。そしてこの検出動作に連動して検出回路39は、送信回路40に異常検出信号を送信する。従って送信回路40がアンテナ41を介して中継器44に向けて無線で異常検出信号を送信する。すると中継器44の受信回路49は、アンテナ48を介して、上記の異常検出信号を受信し、これに連動して警報駆動回路50を介して警報器51を作動させる。これによって警報動作が行なわれる。
【0037】
また上記中継器44の受信回路49は、警報駆動回路50に異常検出信号を送信すると同時に、1階の管理室の集中監視ユニット54に異常検出信号を送信する。従ってこの集中監視ユニット54によって、管理者が異常の検出を知ることができる。さらにこの集中監視ユニット54は、送信器55およびアンテナ56を介して外部の警備会社等に異常検出信号を送信することが可能になる。なおここでは送信器55によって無線で異常検出信号を外部の機関に送信できるようにしているが、集中監視ユニット54から外部の機関への信号の伝達は、専用の信号ケーブルや、電話回線、あるいはインターネット通信網等を通して行なうようにしてもよい。とくに携帯電話機、あるいはPHSのメール機能を利用して送信器55によって異常検出信号の送信を行なうと、送信のためのシステムの低コスト化が図られることになる。
【0038】
次に別の実施の形態を図13および図14によって説明する。上記実施の形態は、ガラス窓15のガラス板17の表面に直接導電性パターン20を形成しているが、このような構成に代えて、図12に示すように、補強フィルム60に導電性パターン20を予め形成し、このような補強フィルム60をガラス板17の表面に接合してよい。補強フィルム60としては、透明な高分子フィルムを用いることが好ましく、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂等の材料が任意に選択される。なお透明度が低くてよい場合には、ポリエステル樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を用いるようにしてもよい。またこのような補強フィルムの厚さは、50〜300μmの範囲内のものを用いることが好適である。そしてこのような補強フィルム60の表面に、上述の剥離転写法、蒸着、プラズマCVD、スパッタ等の各種の薄膜形成方法の内の任意の方法を利用して形成されてよい。
【0039】
このような補強フィルム60をガラス板17に接合するときに、上記補強フィルム60の表面に形成された導電性パターン20がガラス板17の表面に接するように接合する。またこの補強フィルム60の上縁側であってとくに導電性パターン20の分断位置の上側に、図13に示すように切欠き61を形成しておき、この切欠き61に、上記導電性パターン20の端部と接続されるように銅箔62を補強フィルム60とガラス板17との間に接合する。
【0040】
なお補強フィルム60の上縁に切欠き61を形成する代わりに、図14に示すように、検出器21の取付け位置に横長の開口63を形成するとともに、この開口63に端部が露出するように補強フィルム60とガラス板17との間に銅箔62を接合してもよい。ここでも銅箔62は上記導電性パターン20の分断された端部に接続する。従ってその上に検出器21を取付けると、この検出器21のばね接点33が上記開口63によって露出する銅箔62に図15に示すように接触することになる。
【0041】
このような構成によると、ガラス板17それ自身が補強フィルム60によって補強される。またガラス板17が破損した場合には、このガラス板17が飛散することを補強フィルム60によって防止することができる。しかもガラス板17が破損すると、補強フィルム60上の導電性パターン20が異常な力を受けて破断するために、検出器21が検出動作を行ない、異常検出信号を発生することになる。
【0042】
次にさらに別の実施の形態を図16によって説明する。上記実施の形態は、図9に示すように、検出器21の電源回路38を、例えば乾電池37によって駆動するようにしている。ところがこの実施の形態は、乾電池37に代えて、太陽電池66によってこの検出器21の駆動を行なうようにしている。すなわち取付け座30の下側には、横長に矩形の太陽電池66を露出して配し、この太陽電池66の発電によって電源回路38を駆動するようにしている。
【0043】
検出器21を両面接着テープ31によってガラス板17の内表面に取付けると、このガラス板17を通して外光が入射され、この外光によって太陽電池66が駆動される。従って乾電池37を用いた場合のように、放電した場合に電池交換を行なう必要がなく、半永久的にそのままの状態での使用が可能になる。
【0044】
次にさらに別の実施の形態を図17によって説明する。図17は、ガラス板17上に形成される導電性パターン20の形状を、図1に示すようなほぼ矩形の形状に代えて、ガラス板17の中央部付近に延びるようにし、しかも全面に沿って屈曲した形状とし、これによってガラス板17のどの部位に破損を生じても、導電性パターン20の断線が確実に発生するようにしたものである。
【0045】
一般にガラス板17に対してハンマ等で打撃を加え、これによってガラス板17を破損させる場合には、少なくとも1か所のひび割れがガラス板17の周縁部に達するために、図1に示す形状によって異常検出を行なうことができる。ところがガラス板17をガラス切り等によって切断する場合には、周縁部にひび割れを生じずにガラス板17のほぼ中央部に開口を形成することができる。しかもこのような開口が導電性パターン20にかからないと、ガラス切りによって開口を形成したことが検出できない可能性がある。このような場合に、図17に示すようにパターン20の形状をガラス板17の全面に沿って屈曲した形状とすることにより、中央部にガラス切りによって開口を形成して侵入しようとしても、そのことが導電性パターン20の断線によって検出されるために、異常検出が可能になる。なお図17に示すパターン形状は例示にすぎず、その他各種のパターン形状を任意に採用することができる。
【0046】
次にさらに別の実施の形態を図18および図19によって説明する。この実施の形態は、ガラス板17の周縁部であってエッジの部分に導電性パターン20を形成したものである。しかもこの導電性パターン20は、導電性を有していればよく、必ずしも透明または不透明である必要はない。すなわちここでは、不透明な金属膜、導電性粉末を含む導電膜、アルミニウム箔、銅箔等の導電性のパターンであってよい。あるいはまたカーボングラファイトをシート状にしてリボン状にトリミングしたカーボングラファイトシートから構成してもよい。
【0047】
このようなガラス板17のエッジの部分に形成される不透明な導電性パターンは、枠体16とガラス板17との間に介装される緩衝ゴムによって絶縁される(図19参照)。従ってこのような導電性パターン20の上辺の切断端の部分を検出器21に接続することによって、検出動作が可能になる。このような構成によると、透明あるいは半透明の導電性パターンをガラス板17の表面に形成することなく、周縁部に導電性の不透明なパターン20を形成しておくだけで、異常検出を行なうことが可能になる。このために安価に導電性パターンを形成することが可能になる。
【0048】
次にさらに別の実施の形態を図20によって説明する。この実施の形態は、枠体16によって保持されるガラス板17の表面に、所定のパターン形状のカーボングラファイトシート75を貼付けるようにし、このカーボングラファイトシート75の上辺の切断された両端を検出/駆動ユニット76と接続したものである。ここでカーボングラファイトシート75は、異常検出のための導電性パターンを形成するとともに、このガラス板17を加温するための発熱手段をも兼用している。
【0049】
通常の異常検出の動作は、カーボングラファイトシート75から成るパターンの一部が破断した場合に、そのことを検出/駆動ユニット76の検出回路の部分で検出する。またガラス板17の結露防止や曇り防止を行なうときには、カーボングラファイトシート75に対してコンセント77および検出/駆動ユニット76を介して商用電源で通電し、これによってガラス板17をジュール熱で加温する。従ってこのような加温動作により、上記の結露防止や曇り防止が達成される。さらにこのようなカーボングラファイトシート75の発熱あるいは加温効果を利用して、室内の煖房効果や、遠赤外線の発生による、内部にいる人の健康状態の増進を図ることが可能になる。なおカーボングラファイトシート75は一般に黒色であるが、その表面に印刷を施すことができるために、所定の印刷を行なうことによって、窓ガラス17に対して意匠性を付与し、あるいはファッション性のある窓ガラスとすることが可能になる。
【0050】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願に含まれる発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態は、建造物の窓の部分に取付けられるガラス窓15のガラス板17の破損に伴う異常検出を行なう異常検出装置としているが、本願発明は、例えばガラス製のドア、透明なガラス製のショウウインドウ、自動車の窓ガラス等に利用することができる。またガラス板17に形成される導電性パターン20の形状についても、各種の形状に任意に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本願発明は、盗難防止装置に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】異常検出装置を備えるガラス窓の正面図である。
【図2】導電性パターンを形成するためのベースフィルムの平面図である。
【図3】離型性溶剤を塗布したベースフィルムの平面図である。
【図4】加熱ロールによる転写の動作を示す要部拡大断面図である。
【図5】導電性薄膜の剥離転写の動作を示す要部斜視図である。
【図6】ガラス板に対する検出器の取付けを示す要部斜視図である。
【図7】検出器の背面側の斜視図である。
【図8】ガラス板に対する検出器の取付けを示す横断面図である。
【図9】検出器の回路構成を示すブロック図および回路図である。
【図10】ビルにおける異常検出装置を用いたセキュリティシステムのブロック図である。
【図11】中継器および集中監視ユニットの回路構成を示すブロック図である。
【図12】補強フィルム側に導電性パターンを形成した異常検出装置の要部斜視図である。
【図13】同補強フィルムを貼付けたガラス板の正面図である。
【図14】ガラス板上の検出器と導電性パターンの接続とのための構成を示す要部拡大正面図である。
【図15】検出器を取付けてばね接点を銅箔に接続した状態の縦断面図である。
【図16】太陽電池を駆動源とする検出器の要部斜視図である。
【図17】屈曲したパターン形状の導電性パターンを有するガラス窓の平面図である。
【図18】ガラス板のエッジの部分に不透明な導電性パターンを形成したガラス窓の正面図である。
【図19】同要部斜視図である。
【図20】結露および曇り防止の機能を兼用する異常検出装置の正面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 壁面
11 開口
12 枠体
15 ガラス窓
16 窓枠
17 ガラス板
18 ロック装置
20 導電性パターン
21 検出器
23 ベースフィルム
24 導電性薄膜
25 離型性溶剤
26 加熱ロール
30 取付け座
31 両面接着テープ
32 開口
33 ばね接点
37 乾電池
38 電源回路
39 検出回路
40 送信回路
41 アンテナ
42 トランジスタ
43 プルダウン抵抗
44 中継器
47 電源回路
48 アンテナ
49 受信回路
50 警報駆動回路
51 警報器
54 集中監視ユニット
55 送信器
56 アンテナ
60 補強フィルム
61 切欠き
62 銅箔
63 開口
66 太陽電池
71 緩衝ゴム
75 カーボングラファイトシート
76 検出/駆動ユニット
77 コンセント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の表面に沿って形成される透明または半透明の導電性パターンと、
前記導電性パターンと接続される電極を有し、前記ガラス板の破損に伴う前記導電性パターンの断線を検出する検出器と、
を有する異常検出装置。
【請求項2】
前記導電性パターンが前記ガラス板の表面に直接形成されることを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記導電性パターンが前記ガラス板と接合されるフィルムの表面に形成されるとともに、前記ガラス板の表面に接することを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記導電性パターンが透明導電膜であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記検出器がガラス板の表面に取付けられるとともに、該検出器のガラス板の厚さ方向の寸法がこのガラス板を取付けた枠体のガラス板の表面からの突出量よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記検出器が無線送信手段を有し、前記導電性パターンの断線が検出された場合に、異常検出信号を無線で送信することを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記検出器からの無線による異常検出信号を受信する無線受信手段を備える中継器または警報器を有し、前記中継器または警報器は異常検出信号を他のコントロールユニットに送信するかまたは警報動作を行なうことを特徴とする請求項6に記載の異常検出装置。
【請求項8】
前記検出器の駆動源が太陽電池から構成され、前記ガラス板を通して入射する光で発電することを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項9】
ガラス板の表面に沿って形成される所定の形状の導電性パターンと、
前記導電性パターンと接続される電極を有し、前記ガラス板の破損に伴う前記導電性パターンの断線を検出する検出器と、
を有する異常検出装置。
【請求項10】
前記導電性パターンが不透明であって、前記ガラス板を保持する枠体によって隠れるように、前記ガラス板のエッジの部分に配置されることを特徴とする請求項9に記載の異常検出装置。
【請求項11】
前記導電性パターンが不透明であって、金属膜、導電性粉末を含む導電膜、金属箔、またはカーボングラファイトシートであることを特徴とする請求項9に記載の異常検出装置。
【請求項12】
前記導電性パターンが発熱手段を兼用し、通電によるジュール熱で前記ガラス板を加温することを特徴とする請求項9に記載の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−35009(P2007−35009A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322947(P2005−322947)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000206174)大成ラミネーター株式会社 (32)
【Fターム(参考)】