説明

異常発生時のエレベータかご情報通信システム

【課題】エレベータ異常発生時にエレベータかご内に閉じ込められた乗客が情報センタと迅速かつ容易に通信できる異常発生時のエレベータかご情報通信システムを提供する。
【解決手段】エレベータかご10内の乗客の有無を検出するかご乗客検出手段3と、エレベータ29の異常発生を検知する異常発生検知手段4と、情報センタ7に関する情報が書き込まれた2次元コード20を表示する2次元コード表示部5と、異常発生検知手段4が異常発生を検知してかご乗客検出手段3が乗客を検出した場合に2次元コード表示部5に2次元コードをかご内の乗客16の携帯電話14に対して読み取り可能に表示させる2次元コード表示制御部6と、情報センタ7の電子メールアドレスを読み取りその電子メールアドレスに空メールを発信した乗客の携帯電話14に対しエレベータ29の異常発生に関する情報を提供する情報センタ7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常発生時のエレベータかご情報通信システムに係り、特に、地震発生などによるエレベータの異常発生時に、エレベータかご内の乗客がエレベータかご外部へ発信し、エレベータかごに関する情報を通信するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物のエレベータには、エレベータの乗客に対する安全性、エレベータの運行の正常性などを常に確保するため、遠隔の情報センタ(中央監視センタ)からの遠隔監視サービスが行われている。エレベータに異常が発生した場合には、この遠隔監視サービスによりエレベータかごの乗客は情報センタの監視員と電話により通信することができる。
【0003】
図6に、従来のエレベータの異常発生時におけるエレベータかご内の乗客と情報センタとの通信手段を示す。建物のエレベータ29には、エレベータ29の運行を制御するエレベータ制御盤13、エレベータ29の運行を監視するエレベータ監視装置19、及び情報センタ7と通信する受発信装置24が備えられている。また、エレベータかご10内に設けられたかご操作盤11には、エレベータ29の乗客の安全を確保するために非常呼釦12及びスピーカ34が設置される。乗客はこの非常呼釦12を押すことで、受発信装置24を介して情報センタ7の監視員とスピーカ34による通話が可能となる。そして、エレベータ29の故障や異常等が検出された場合には、情報センタ7は、受発信装置24を介してその建物のエレベータ監視装置19にエレベータ29の動作に関する指令を発信し、エレベータ監視装置19はその指令に基づきエレベータ制御盤13を通じてエレベータ29を動作させてエレベータ29の故障や異常等に対処する。また、この情報センタ7とエレベータかご10内に設けられた非常呼釦12とは、公衆電話網25を介して接続されている。そして、この公衆電話網25は、電機通信事業者が提供するサービスを利用している。
【0004】
エレベータの異常発生時、例えば、地震など災害が発生した場合には、エレベータは、乗客の安全を確保するためその運行が制御される。つまり、エレベータに損傷を与えるおそれのないような軽微な揺れの場合には、一定時間が経過した後に通常の運転に自動的に復帰するという運用がなされる。また、強い揺れ(震度4以上程度)を感じて運転を休止した場合には、エレベータに損傷がない場合であっても技術者による点検を受けるまで復旧しないという運用がなされる。しかし、地震によりエレベータに何らかの損傷が発生し、エレベータの乗客が一時的にエレベータかご内に閉じ込められるという事態が発生し得る。
【0005】
また、地震などの災害が発生した場合以外に、エレベータの故障や制御システムの異常が発生した場合には、エレベータかごを最寄りの停止階まで移動させて乗客を降車させ、技術者による点検修理が行われる。このときにも、エレベータの乗客は一時的にエレベータかご内に閉じ込められるという事態が発生し得る。
【0006】
上述したように、エレベータの乗客はエレベータかご内に閉じ込められた場合に、エレベータかご内に設けられた非常呼釦を押すことで、情報センタの監視員と通話しエレベータの異常発生に関する情報を得ることが可能である。つまり、情報センタの監視員にエレベータかご内に閉じ込められた乗客の状態を報知し、また、監視員からエレベータの復旧作業等の状況を知ることができる。
【0007】
また、エレベータかご内には、ディスプレイ画面が設けられている場合がある。このディスプレイ画面には、通常時には各種の一般情報が乗客に対して表示される。
【0008】
一方、特許文献1には、エレベータ監視システムおよびエレベータ監視装置が開示されている。ここでは、エレベータの保守点検作業の開始時に、携帯電話により乗りかご内に貼付されるシールに二次元コードを入力して得たエレベータに関する情報をセンタ装置に送信することが示されている。また、特許文献2には、エレベータの非常連絡装置が開示されている。ここでは、乗りかご内に、監視センタと連絡を取るためのWebサイトのアドレスを表示する表示シール、或いはインターネットのアドレスとしてE−mailアドレスを表示した表示文を付したものを設置し、非常時に言語・聴覚が不自由な身体障害者が連絡先の表示プレート等を見て携帯電話などを介してWebサイトのアドレス等にアクセスして監視センタの管理者に連絡をとることが示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2007−112540号公報
【特許文献2】特開2002−68622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば、地震などの災害によりエレベータに異常が発生した場合には、多くの建物のエレベータが同時に停止し、それぞれのエレベータの乗客がエレベータかごに閉じ込められる場合がある。そのときに、各エレベータかごにおいて一斉に非常呼釦が押され、情報センタを呼び出すことになる。しかし、情報センタの監視員は、個々のエレベータかごごとに順次通話を行うため、災害による異常発生時においては、平常時を越える呼び出しに即応できない場合がある。また、各エレベータかごからの呼び出しにより電話回線がパンクし、常に通話中であるか、或いは通話不能となる虞もある。このため、乗客は情報センタの監視員と通話し、エレベータかごの状況を情報センタに報知することができない状況が発生する虞がある。また、エレベータかご内に閉じ込められた乗客は、エレベータかごに関する復旧作業についての情報を得ることもできず不安な状況に陥る虞がある。
【0011】
また、地震などの災害の発生以外の原因でエレベータに異常が発生し、情報センタとエレベータかご内の非常呼釦とを接続するケーブルの断線等により電話回線が遮断される場合がある。この場合には、情報センタからのエレベータの動作に関する指令がエレベータ監視装置に伝達されず、エレベータかご内の乗客は、エレベータかご内に閉じ込められることになる。そして、エレベータかごに設けられた非常呼釦による通話も不通となり、乗客は、エレベータかごの状況を情報センタに報知することができず、また情報センタからエレベータかごに関する復旧作業についての情報を得ることができない状況が発生する虞がある。
【0012】
本願の目的は、かかる課題を解決し、エレベータ異常発生時において、エレベータかご内に閉じ込められた乗客が情報センタと迅速かつ容易に通信できる異常発生時のエレベータかご情報通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、エレベータかご内の乗客の有無を検出するかご乗客検出手段と、予め設定された所定時間内においてエレベータ扉の開閉動作がない場合にエレベータの異常発生を検知する異常発生検知手段と、エレベータかご内部に設置され、かご内の乗客に対し、情報センタの電子メールアドレスが書き込まれた2次元コードを表示する2次元コード表示部と、異常発生検知手段がエレベータの異常発生を検知し、かご乗客検出手段がエレベータかご内に乗客を検出した場合に、かご内の乗客の携帯電話が読み取り可能な2次元コードを2次元コード表示部に表示させる2次元コード表示制御部と、2次元コードに書き込まれた情報センタの電子メールアドレスを読み取り、その電子メールアドレスに空メールを発信した乗客の携帯電話に対し、エレベータの異常発生に関する情報を提供する情報センタと、を備える。
【0014】
また、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、2次元コード表示部が、エレベータかご内部のかご操作盤に設けられた非常呼釦であり、2次元コードはその非常呼釦の蓋の内部に設置され、2次元コード表示制御部が、通常時には、非常呼釦の内部に設けられた照明を消灯させ、異常発生検知手段がエレベータの異常を検知し、かご乗客検出手段がエレベータかご内の乗客を検出した場合には、非常呼釦の内部に設けられた照明を点灯させて乗客の携帯電話による2次元コードの読み取りを可能とすることが好ましい。
【0015】
また、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、2次元コード表示制御部が、エレベータかご内の乗客により非常呼釦が押された場合には、非常呼釦の内部に設けられた照明を点灯させて乗客の携帯電話による2次元コードの読み取りを可能とすることが好ましい。
【0016】
また、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、2次元コード表示部が、エレベータかごの内部に設けられたディスプレイ画面であり、2次元コード表示制御部は、異常発生検知手段がエレベータの異常を検知し、かご乗客検出手段がエレベータかご内の乗客を検出した場合には、ディスプレイ画面に2次元コードを表示させ、乗客の携帯電話による2次元コードの読み取りを可能とすることが好ましい。
【0017】
また、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、更に、エレベータかご内部の天井に設置され、エレベータかご内部を撮影するかご内撮影手段を備え、異常発生検知手段が、かご内撮影手段が撮影した画像からエレベータかご内の乗客の有無を検出することが好ましい。
【0018】
また、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、2次元コード表示部に表示された2次元コードには、そのエレベータを特定する識別情報が書き込まれ、乗客の携帯電話から発信された空メールにより、そのエレベータを特定する識別情報が情報センタに伝達されることが好ましい。
【0019】
また、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、乗客の携帯電話から発信された空メールを受信した情報センタが、その携帯電話に対して情報センタのホームページのURLを添付した返信メールを送信し、エレベータかごの乗客は、携帯電話により読み込まれた情報センタのホームページにより情報センタと通信することが好ましい。
【0020】
また、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、乗客の携帯電話から発信された空メールを受信した情報センタが、そのエレベータを特定する識別情報に基づき、そのエレベータの保守員又はそのエレベータの設けられているビルの管理者にエレベータ内の乗客に関する情報を報知することが好ましい。
【0021】
また、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、更に、通常時2次元コードと異常発生時2次元コードとを記憶する2次元コード記憶部を備え、2次元コード表示制御部が、通常時にはディスプレイ画面に通常時2次元コードを表示させ、異常発生検知手段がエレベータの異常を検知し、かご乗客検出手段がエレベータかご内の乗客を検出した場合には、ディスプレイ画面を異常発生時2次元コードに切り換えさせることが好ましい。
【0022】
また、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、ディスプレイ画面に表示される異常発生時2次元コードには、エレベータの異常発生に対するかご乗客へのガイダンスが書き込まれ、エレベータかごの乗客が、携帯電話により読み取られたガイダンスに従って情報センタと通信することが好ましい。
【0023】
さらに、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、ディスプレイ画面に表示される通常時2次元コードには、エレベータの異常発生時におけるかご内の乗客へのガイダンスが書き込まれ、エレベータかごの乗客が、携帯電話により読み取られたガイダンスによりエレベータの異常発生時の対応について認識することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
上記構成により、異常発生時のエレベータかご情報通信システムは、エレベータの異常発生時において、エレベータかご内に表示された2次元コードを携帯電話により読み取ることで情報センタと通信することができる。すなわち、乗客は、2次元コード表示部に表示された2次元コードに書き込まれた情報センタの電子メールアドレスを携帯電話により読み取り、その電子メールアドレスに空メールを発信する。これにより、エレベータかご内の乗客が非常呼釦を押しても情報センタと通話できない場合であっても、電話以外の手段により情報センタとの通信が可能となる。また、情報センタの監視員を介さずにリアルタイムのエレベータの異常を情報センタに報知することが可能となる。そして乗客の携帯電話からの空メールを受信した情報センタは、エレベータの異常発生に関する情報をその携帯電話に送信し、情報センタとエレベータかご内の乗客は携帯電話により情報交換をすることが可能となる。
【0025】
また、2次元コード表示制御部は、エレベータの異常発生時に2次元コードをかご内の乗客の携帯電話に対して読み取り可能に表示させる。これにより、通常時には乗客による2次元コードの読み取りを防止し、異常発生時にのみ乗客に2次元コードを読み取らせることができる。
【0026】
以上のように、本発明に係る異常発生時のエレベータかご情報通信システムによれば、エレベータ異常発生時において、エレベータかご内に閉じ込められた乗客が情報センタと迅速かつ容易に通信可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、図面を用いて本発明に係る異常発生時のエレベータかご情報通信システムの実施の形態につき、詳細に説明する。
【0028】
図1に、異常発生時のエレベータかご情報通信システムの1つの実施形態の概略構成を示す。異常発生時のエレベータかご情報通信システム1は、かご内撮影手段(監視カメラ)2、かご乗客検出手段3、異常発生検知手段4、2次元コード表示部5、2次元コード表示制御部6、情報センタ7、及び2次元コード記憶部8から構成される。また、エレベータ昇降路9内のエレベータかご10の内部にはかご操作盤11が設けられる。エレベータかご10の乗客16はその乗客16の携帯電話14によりかご操作盤11に設けられた2次元コード20を読み取り公衆通信回線28を介して情報センタ7と通信する。
【0029】
かご内撮影手段である監視カメラ2は、エレベータかご10の内部の天井に設置され、エレベータかご10の内部を撮影する。かご乗客検出手段3は、監視カメラ2が撮影した画像からかご内での人の動きを判定し、エレベータかご10の内部の乗客16の有無を検出する。すなわち、かご乗客検出手段3は、監視カメラ2が撮影した画像のうち撮影時刻が所定の時間だけ異なる2枚の画像を抽出してかご内の乗客16の動きを判定する。撮影時刻が所定の時間だけ異なる2枚の画像は、例えば、ビデオカメラを用いてNTSC方式で撮影した場合、撮影は1/30秒ごとに行なわれる。この場合、所定の時間だけ異なる2枚の画像としては、連続した2枚の画像とすることもできるが、途中の画像を間引いたり、撮影間隔を変えたりすることで、1/10秒ごとにしたり、1秒ごとにしたりすることも可能である。かご乗客検出手段3は、上記2枚の画像の比較により、エレベータかご10の内部に乗客16の動きを検出できない場合には、エレベータかご10の内部は無人であるものとみなす。
【0030】
エレベータかご10の内部の乗客16の有無を検出する他の手段として、エレベータかご10の重量から乗客16の有無を検出しても良い。すなわち、一般的にエレベータ29には、荷重検出装置17が設けられ、エレベータかご10の乗客数が定員をオーバした場合には警告のブザーを鳴らす。従って、かご乗客検出手段3は、この荷重検出装置17が計量したエレベータかご10の重量の計測結果からエレベータかご10内部の乗客16の有無を検出することが可能である。
【0031】
異常発生検知手段4は、予め設定された所定時間内においてエレベータ扉18の開閉動作がない場合にエレベータ29の異常発生を検知する。一般的にエレベータ扉18の開閉は、エレベータ制御盤13により検知される。従って、異常発生検知手段4は、エレベータ制御盤13からエレベータかご10に関するエレベータ扉18の開閉の信号を一定時間内に受信しない場合には、エレベータ29に異常が発生したことを検知する。
【0032】
図2に、エレベータかご10の内部に設置されるかご操作盤11の1つの例を示す。図2に示すように、かご操作盤11には、非常呼釦12、かご呼び釦30、方向灯31、扉開釦32、扉閉釦33、及びスピーカ34が設けられる。一般的に、エレベータかご10内の乗客16は、エレベータ29の異常発生時に非常呼釦12を押して情報センタ7の監視員を呼び出す。しかし、上述したように、地震などの災害によりエレベータ29に異常が発生した場合には、各エレベータかご10からの呼び出しにより電話回線がパンクし、常に通話中であるか、或いは通話不能となる場合がある。このため、乗客16は情報センタ7の監視員と通話をすることができない場合がある。その場合に、エレベータかご10内に閉じ込められた乗客16は、本発明による異常発生時のエレベータかご情報通信システム1により、情報センタ7と監視員を介さずにリアルタイムに通信することが可能となる。
【0033】
図3に、かご操作盤11に設けられた非常呼釦12の拡大図を示す。図3(a)は通常時の非常呼釦12を示し、図3(b)は非常時(異常発生時)の非常呼釦12を示し、図3(c)は、図3(a)のA−A断面図を示す。ここで、2次元コード表示部5は非常呼釦12自体であり、エレベータかご10の乗客16に対して情報センタ7に関する情報が書き込まれた2次元コード20を乗客16に表示する。すなわち、2次元コード20が非常呼釦12の蓋35の内部に設けられる。さらに、図3(c)に示すように、非常呼釦12の蓋35の内部には2次元コード20を照らす照明36が設けられる。2次元コード表示制御部6は、図3(a)に示すように、通常時には、非常呼釦12の内部に設けられた照明36を消灯させて2次元コード20が乗客16の携帯電話14による読み取りを不可とする。そして、異常発生検知手段4がエレベータ29の異常を検知し、かご乗客検出手段3がエレベータかご10の内部の乗客16を検出した場合には、図3(b)に示すように、非常呼釦12の内部に設けられた照明36を点灯させ、2次元コード20を浮かび上がらせて乗客16の携帯電話14による2次元コード20の読み取りを可能とする。ここで、非常呼釦12の蓋35は透明な素材であってもよいが、通常時において携帯電話14による2次元コード20の読み取りが不能となるように半透明の素材であっても良い。また、この照明36は、本実施形態では、LED36であるが、他の照明であっても良い。
【0034】
また、2次元コード表示制御部6は、エレベータかご10内の乗客16により非常呼釦12が押された場合に、非常呼釦12の内部の照明35を点灯させ、乗客16の携帯電話14による2次元コード20の読み取りを可能としても良い。これは、通常はエレベータ29に異常が発生すると異常発生検知手段4により検知されるが、異常発生検知手段4による検知が例えば故障等により動作しない場合、或いは、エレベータかご10の乗客16が、異常発生検知手段4が検知しない状況で異常と判断した場合にも本エレベータかご情報通信システム1を機能させるためである。この場合には、乗客16が非常呼釦12を押すと、情報センタ7への通話が発信されると同時に、非常呼釦12に2次元コード20が照明に浮かび、携帯電話14による読み取りが可能となる。これにより、乗客16は情報センタ7への通話が不能である場合に、容易に携帯電話14による通信に切り替えることができる。
【0035】
エレベータ29の異常発生時において照明36を点灯させて2次元コード20を携帯電話14に読み取らせるのは、乗客16がエレベータ29の異常発生時以外に2次元コード20から情報センタ7に関する情報を読み取り、電子メール等を送信する悪戯を防止するためである。これは、エレベータ29のかご操作盤11に設けられている非常呼釦12は、異常発生時でないときに、子供、泥酔者などによる間違い電話や悪戯電話が後を絶たず、情報センタ7の負担が増加するだけではなく情報センタ7の本来の遠隔監視サービスを妨げていることによる。従って、乗客16が異常発生時以外に2次元コード20から情報センタ7に関する情報を読み取ることができない構成であれば、上述した照明36以外の方法であっても良い。例えば、非常呼釦12の蓋35の一部を液晶表示とし、エレベータ29の異常発生時に液晶により2次元コード20を表示させても良い。
【0036】
上述したように、2次元コード表示部5をかご操作盤11に設けられた非常呼釦12とすることで、エレベータかご10の異常発生時において、エレベータかご10内部の乗客16は、まず非常呼釦12を探して押すと同時に、情報センタ7に関する情報が書き込まれた2次元コード20を認識することができる。これにより、上述したように、エレベータかご10内の乗客16が非常呼釦12を押しても情報センタ7と通話できない場合であっても、表示された2次元コード20を携帯電話14により読み取り、情報センタ7と通信することが可能となる。このシステムを乗客16に分かりやすくするために、図3(b)に示すように、かご操作盤11の非常呼釦12の近傍に、例えば、「非常時には、このコードから情報センタのアドレスを読取り、空メールを送信してください。」といったメッセージを掲示しても良い。
【0037】
図4に、エレベータかご10内の2次元コード表示部5の他の実施例を示す。この実施例では、2次元コード表示部5が、かご操作盤11内に、或いはかご操作盤11の近傍に設けられたディスプレイ画面15である場合である。すなわち、異常発生検知手段4がエレベータ29の異常を検知し、かご乗客検出手段3がエレベータかご10内の乗客16を検出した場合には、ディスプレイ画面15に2次元コード20を表示させる。そして、エレベータかご10の乗客16に対して情報センタ7に関する情報が書き込まれた2次元コード20を乗客16に読み取らせる。このシステムを乗客16に分かりやすくするために、図4に示すように、ディスプレイ画面15に、例えば、「非常時には、このコードから情報センタのアドレスを読取り、空メールを送信してください。」といったメッセージを表示しても良い。
【0038】
また、ディスプレイ画面15を2次元コード表示部5に用いる場合には、異常発生時のエレベータかご情報通信システム1は、2次元コード記憶部8を備えても良い。この2次元コード記憶部8は、通常時2次元コード21と異常発生時2次元コード22とを記憶する。そして、2次元コード表示制御部6は、通常時には、ディスプレイ画面15に通常時2次元コード21を表示させ、異常発生検知手段4がエレベータ29の異常を検知し、かご乗客検出手段3がエレベータかご10内の乗客16を検出した場合には、ディスプレイ画面15に異常発生時2次元コード22を表示させ、乗客16の携帯電話14による異常発生時2次元コード22の読み取りを可能とする。
【0039】
この通常時2次元コード21には、エレベータ29の異常発生時におけるエレベータかご10内の乗客16へのガイダンス38が書き込まれていても良い。これにより、乗客16は通常時でも携帯電話14により通常時2次元コード21を読み込んでエレベータ29の異常発生時の対処の仕方を知ることができる。また、通常時2次元コード21には、エレベータかご10内の乗客16への一般情報が書き込まれ、エレベータかご10内の乗客16は携帯電話14により通常時2次元コード21を読み込んで一般情報を取得することができる。この一般情報には、例えば、建物内の案内、建物内の企業に関する情報などが含まれる。
【0040】
図5に、異常発生時のエレベータかご情報通信システム1による動作を示す。図5(a)は、乗客16から情報センタ7へのアクセスを示し、図5(b)は、情報センタ7から乗客16へのアクセスを示す。エレベータ29の異常発生時において、エレベータかご10の乗客16は、2次元コード表示部5に表示された2次元コード20から情報センタ7の電子メールアドレス37及びエレベータ識別情報39を読み取る。そして、読み取った情報センタ7の電子メールアドレス37に、公衆通信回線28を介して空メール40を送信する。この空メール40にはエレベータ識別情報39が含まれる。この2次元コード20には、エレベータかご10の異常発生に対する乗客16へのガイダンス38が書き込まれ、エレベータかご10の乗客16は、携帯電話14に表示されたガイダンス38に従って情報センタ7と通信しても良い。さらに、この2次元コード20には、情報センタ7のホームページのURL42が書き込まれ、エレベータかご10の乗客16は、携帯電話14により読み込まれた情報センタ7のホームページを介して情報センタ7と通信しても良い。
【0041】
エレベータかご10内の乗客16の携帯電話14から発信された空メール40を受信した情報センタ7は、エレベータ識別情報39により特定されるエレベータ29について、予め登録されたそのオフィスビルのビル管理者26及び保守員27のそれぞれの携帯電話23に、エレベータかご10の異常発生を報知する。そして、そのエレベータ29のビル管理者26及び保守員27は、エレベータ29の異常事態に対処する。このように、エレベータかご10内の乗客16は、携帯電話網により異常発生したエレベータかご10の乗客16の情報を、関係者に容易にかつ迅速に連絡することができる。そして、地震等の災害時において、携帯電話14,23を用いた電子メールにより関係者間で迅速に通信することが可能となる。
【0042】
図5(b)に示すように、情報センタ7は、エレベータかご10内に閉じ込められた乗客16に対して、返信メール41を送信する。この返信メール41には、情報センタ7のホームページのURL42が添付される。この返信メール41を受信した乗客16は、情報センタ7のホームページをダウンロードすることで、例えば、地震等の災害の状況やエレベータ29の復旧に関する情報などを知ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る異常発生時のエレベータかご情報通信システムの1つの実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】エレベータかご内の2次元コード表示部の1つの実施例を示す説明図である。
【図3】かご操作盤に設けられた非常呼釦を拡大した平面図及び断面図である。
【図4】エレベータかご内の2次元コード表示部の他の実施例を示す説明図である。
【図5】異常発生時のエレベータかご情報通信システムによる動作を示す説明図である。
【図6】従来の異常発生時における情報センタとの通信手段を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 異常発生時のエレベータかご情報通信システム、2 かご内撮影手段(監視カメラ)、3 かご乗客検出手段、4 異常発生検知手段、5 2次元コード表示部、6 2次元コード表示制御部、7 情報センタ、8 2次元コード記憶部、9 エレベータ昇降路、10 エレベータかご、11 かご操作盤、12 非常呼釦、13 エレベータ制御盤、14,23 携帯電話、15 ディスプレイ画面、16 乗客、17 荷重検出装置、18 エレベータ扉、19 エレベータ監視装置、20 2次元コード、21 通常時2次元コード、22 異常発生時2次元コード、24 受発信装置、25 公衆電話網、26 ビル管理者、27 保守員、28 公衆通信回線、29 エレベータ、30 かご呼び釦、31 方向灯、32 扉開釦、33 扉閉釦、34 スピーカ、35 蓋、36 照明(LED)、37 情報センタの電子メールアドレス、38 ガイダンス、39 エレベータ識別情報、40 空メール、41 返信メール、42 情報センタのホームページのURL。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかご内の乗客の有無を検出するかご乗客検出手段と、
予め設定された所定時間内においてエレベータ扉の開閉動作がない場合にエレベータの異常発生を検知する異常発生検知手段と、
エレベータかご内部に設置され、かご内の乗客に対し、情報センタの電子メールアドレスが書き込まれた2次元コードを表示する2次元コード表示部と、
異常発生検知手段がエレベータの異常発生を検知し、かご乗客検出手段がエレベータかご内に乗客を検出した場合に、かご内の乗客の携帯電話が読み取り可能な2次元コードを2次元コード表示部に表示させる2次元コード表示制御部と、
2次元コードに書き込まれた情報センタの電子メールアドレスを読み取り、その電子メールアドレスに空メールを発信した乗客の携帯電話に対し、エレベータの異常発生に関する情報を提供する情報センタと、
を備えることを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異常発生時のエレベータかご情報通信システムにおいて、2次元コード表示部は、エレベータかご内部のかご操作盤に設けられた非常呼釦であり、2次元コードはその非常呼釦の蓋の内部に設置され、2次元コード表示制御部は、通常時には、非常呼釦の内部に設けられた照明を消灯させ、異常発生検知手段がエレベータの異常を検知し、かご乗客検出手段がエレベータかご内の乗客を検出した場合には、非常呼釦の内部に設けられた照明を点灯させて乗客の携帯電話による2次元コードの読み取りを可能とすることを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の異常発生時のエレベータかご情報通信システムにおいて、2次元コード表示制御部は、エレベータかご内の乗客により非常呼釦が押された場合には、非常呼釦の内部に設けられた照明を点灯させて乗客の携帯電話による2次元コードの読み取りを可能とすることを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の異常発生時のエレベータかご情報通信システムにおいて、2次元コード表示部は、エレベータかごの内部に設けられたディスプレイ画面であり、2次元コード表示制御部は、異常発生検知手段がエレベータの異常を検知し、かご乗客検出手段がエレベータかご内の乗客を検出した場合には、ディスプレイ画面に2次元コードを表示させ、乗客の携帯電話による2次元コードの読み取りを可能とすることを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の異常発生時のエレベータかご情報通信システムにおいて、更に、エレベータかご内部の天井に設置され、エレベータかご内部を撮影するかご内撮影手段を備え、異常発生検知手段は、かご内撮影手段が撮影した画像からエレベータかご内の乗客の有無を検出することを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の異常発生時のエレベータかご情報通信システムにおいて、2次元コード表示部に表示された2次元コードには、そのエレベータを特定する識別情報が書き込まれ、乗客の携帯電話から発信された空メールにより、そのエレベータを特定する識別情報が情報センタに伝達されることを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1に記載の異常発生時のエレベータかご情報通信システムにおいて、乗客の携帯電話から発信された空メールを受信した情報センタは、その携帯電話に対して情報センタのホームページのURLを添付した返信メールを送信し、エレベータかごの乗客は、携帯電話により読み込まれた情報センタのホームページにより情報センタと通信することを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1に記載の異常発生時のエレベータかご情報通信システムにおいて、乗客の携帯電話から発信された空メールを受信した情報センタは、そのエレベータを特定する識別情報に基づき、そのエレベータの保守員又はそのエレベータの設けられているビルの管理者にエレベータ内の乗客に関する情報を報知することを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。
【請求項9】
請求項4乃至8のいずれか1に記載の異常発生時のエレベータかご情報通信システムにおいて、更に、通常時2次元コードと異常発生時2次元コードとを記憶する2次元コード記憶部を備え、2次元コード表示制御部は、通常時にはディスプレイ画面に通常時2次元コードを表示させ、異常発生検知手段がエレベータの異常を検知し、かご乗客検出手段がエレベータかご内の乗客を検出した場合には、ディスプレイ画面を異常発生時2次元コードに切り換えさせることを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。
【請求項10】
請求項9に記載の異常発生時のエレベータかご情報通信システムにおいて、ディスプレイ画面に表示される異常発生時2次元コードには、エレベータの異常発生に対するかご乗客へのガイダンスが書き込まれ、エレベータかごの乗客は、携帯電話により読み取られたガイダンスに従って情報センタと通信することを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の異常発生時のエレベータかご情報通信システムにおいて、ディスプレイ画面に表示される通常時2次元コードには、エレベータの異常発生時におけるかご内の乗客へのガイダンスが書き込まれ、エレベータかごの乗客は、携帯電話により読み取られたガイダンスによりエレベータの異常発生時の対応について認識することを特徴とする異常発生時のエレベータかご情報通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−46291(P2009−46291A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216570(P2007−216570)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】