説明

異方性ナノコンポジット希土類永久磁石とそれらの製造方法

異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石を製造する方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノコンポジット磁石に関し、さらに詳細には、優れた磁気性能を示す異方性ナノコンポジット希土類永久磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石材料は、自動車システム、航空機システム、および宇宙船システム等の種々の用途において、たとえばモーター、発電機、およびセンサーなどに広く使用されている。有望な高性能永久磁石の1つのタイプがナノコンポジットNd2Fe14B/α-Fe磁石であり、この磁石は、磁気的にハードなNd2Fe14B相より高い飽和磁化を有する磁気的にソフトなα-Fe相を含有する。このような磁石は16kGより大きな飽和磁化を有し、したがって高性能の希土類永久磁石に開発される可能性を有している。
【0003】
しかしながら、このような磁石を作製する場合、良好な粒子整列(grain alignment)を得るのが困難であり、このため磁気特性が低下する。現在に至るまで、ナノコンポジット磁石において、部分的な粒子整列が達成されているにすぎない。したがって、ナノコンポジット希土類磁石における粒子整列を改良する必要がある。
【0004】
希土類含量(たとえば、Nd-Fe-B磁石中のNd含量)は、適切な磁気特性を得る能力に影響を及ぼす。図1に示すように、磁石合金中のNd含量により、化学平衡状態におけるNd-Fe-B磁石のタイプが決まる。タイプIの磁石は、主要なNd2Fe14B相と副次的なNd高含量相を有し、11.76原子百分率(at%)より多い有効Nd含量を有する。“有効Nd(または希土類)含量”とは、全Nd(または希土類)含量のうちの金属部分を意味しており、Nd(または希土類)酸化物(たとえばNd2O3)は除く。タイプIIの磁石はNd2Fe14B相だけを有し、化学量論量の11.76at%に等しい有効Nd含量を有する。タイプIIIの磁石は、Nd2Fe14B相と磁気的にソフトなα-Fe相を有する。粒子サイズ(grain size)がナノメートルの範囲である場合、タイプIとタイプIIの磁石は通常、ナノ結晶性磁石と呼ばれ、タイプIIIの磁石はナノコンポジット磁石と呼ばれる。
【0005】
Nd2Fe14B/α-Fe磁石の重要な特徴は、化学平衡状態においてNd高含量相を全く含有しないという点である。しかしながらNd高含量相は、Nd-Fe-Bタイプの磁石を作製するときに重要である。なぜなら、Nd高含量相が存在すると、従来の焼結、熱間圧縮、および熱間変形によるNd-Fe-B磁石を作製する際に、十分な密度に確実に達することができるからである。Nd高含量相はさらに、このような磁石において高い保持力をもたらし、亀裂を生じることなく熱間変形を確実に起こさせ、そして高性能の異方性磁石が作製できるよう、熱間変形による所望の結晶構造の形成を容易にする。
【0006】
米国特許出願20040025974(該特許出願を参照により本明細書に含める)に記載の方法を使用することにより、Nd2Fe14B/α-Fe磁石等のナノコンポジット磁石において十分な密度、比較的高い保持力、および順調な熱間変形を達成することができるけれども、このような磁石においては部分的な結晶構造だけを達成できるにすぎない。
【0007】
したがって当業界では、良好な粒子整列、十分な密度値、および高い磁気性能を有するナノコンポジット希土類永久磁石を製造する改良された方法が求められている。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、改良された粒子整列と磁気特性を示し、圧縮熱間変形によって合成することができるナノコンポジット希土類永久磁石を提供することによって上記の要求を満たす。“ナノコンポジット磁石”とは、磁気的にハードな相と磁気的にソフトな相を含んだ磁石を意味しており、このときこれらの相の少なくとも一方がナノ粒子構造を有していて、粒子サイズが1マイクロメートルより小さい。
【0009】
本発明のナノコンポジット希土類永久磁石は、少なくとも1種の磁気的にハードな相と少なくとも1種の磁気的にソフトな相を含み、前記少なくとも1種の磁気的にハードな相が、少なくとも1種の希土類遷移金属化合物を含み、原子百分率にて規定される磁気的にハードな相の組成がRxT100-x-yMy(式中、Rは、希土類、イットリウム、スカンジウム、またはこれらの組み合わせ物から選択され;Tは1種以上の遷移金属から選択され;Mは、第IIIA族元素、第IVA族元素、第VA族元素、またはこれらの組み合わせ物から選択され;xは、対応する希土類遷移金属化合物におけるRの化学量論量より大きく、yは0〜約25である)であり、少なくとも1種の磁気的にソフトな相が、Fe、Co、またはNiを含有する少なくとも1種の軟磁性材料を含む。
【0010】
本発明の他の態様は、ナノコンポジット希土類永久磁石を製造する方法である。1つの方法は、
対応する希土類遷移金属化合物における化学量論量より多い量の有効希土類含量を有する少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末を供給すること;
対応する希土類遷移金属化合物における化学量論量より少ない量の有効希土類含量を有する希土類遷移金属合金;軟磁性材料;またはこれらの組み合わせ物;から選択される少なくとも1種の粉末材料を供給すること;
少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末と少なくとも1種の粉末材料をブレンドすること;および
ブレンドされた少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末と少なくとも1種の粉末材料を圧縮して、等方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石を形成させること;あるいは等方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石、またはブレンドされた少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末と少なくとも1種の粉末材料を熱間変形して、異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石を形成させること;から選択される少なくとも1つの操作を行うこと;
を含む。
【0011】
別の方法は、
対応する希土類遷移金属化合物における化学量論量より少ない量の有効希土類含量を有する少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末を供給すること;
少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末を少なくとも1種の軟磁性材料で被覆すること;および
被覆された少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末を圧縮すること;あるいは圧縮・被覆された少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末、または被覆された少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末を熱間変形すること;から選択される少なくとも1つの操作を行うこと;
を含む。
【0012】
本発明は、優れた粒子整列と高い磁気性能を示す異方性ナノコンポジット希土類永久磁石に関する。“ナノコンポジット磁石”とは、少なくとも1種の磁気的にハードな相と少なくとも1種の磁気的にソフトな相を含んだ磁石を意味しており、このときこれら相の少なくとも一方がナノ粒子構造を有していて、粒子サイズが1マイクロメートルより小さい。
【0013】
本発明のナノコンポジット希土類永久磁石は、少なくとも1種の磁気的にハードな相と少なくとも1種の磁気的にソフトな相を含み、前記少なくとも1種の磁気的にハードな相が、少なくとも1種の希土類遷移金属化合物を含み、原子百分率にて規定される磁気的にハードな相の組成がRxT100-x-yMy(式中、Rは、希土類、イットリウム、スカンジウム、またはこれらの組み合わせ物から選択され;Tは1種以上の遷移金属から選択され;Mは、第IIIA族元素、第IVA族元素、第VA族元素、またはこれらの組み合わせ物から選択され;xは、対応する希土類遷移金属化合物におけるRの化学量論量より大きく;yは0〜約25である)である。xは有効希土類含量である。本発明のナノコンポジット希土類永久磁石は化学非平衡の状態であってもよく、したがって希土類高含量相と磁気的にソフトな相を同時に含有してよい。希土類遷移金属化合物とは、希土類、イットリウム、スカンジウム、およびこれらの組み合わせ物と結合した遷移金属を含有する化合物を意味している。
【0014】
希土類遷移金属化合物は、1:5、1:7、2:17、2:14:1、または1:12から選択されるR:TまたはR:T:Mの原子比を有することができる。本発明のナノコンポジット希土類磁石においては、原子百分率にて規定される磁気的にハードな相中の有効希土類含量は、磁気的にハードな相が、ThMn12タイプの正方結晶構造を有するRT12タイプの化合物をベースにしている場合は少なくとも7.7%である。原子百分率にて規定される磁気的にハードな相中の有効希土類含量は、磁気的にハードな相が、Th2Zn17タイプの菱面体結晶構造またはTh2Ni17タイプの六方結晶構造を有するR2T17タイプの化合物をベースにしている場合は少なくとも11.0%である。原子百分率にて規定される有効希土類含量は、磁気的にハードな相が、Nd2Fe14Bタイプの正方結晶構造を有するR2T14Mタイプの化合物をベースにしている場合は少なくとも12.0%である。原子百分率にて規定される有効希土類含量は、磁気的にハードな相が、TbCu7タイプの六方結晶構造を有するRT7タイプの化合物をベースにしている場合は少なくとも13.0%である。原子百分率にて規定される有効希土類含量は、磁気的にハードな相が、CaCo5タイプの六方結晶構造を有するRT5タイプの化合物をベースにしている場合は少なくとも17.0%である。
【0015】
希土類遷移金属化合物は、Nd2Fe14B、Pr2Fe14B、PrCo5、SmCo5、SmCo7、およびSm2Co17から選択するのが好ましい。本発明の全ての希土類遷移金属合金中の希土類元素は、他の希土類元素、ミッシュメタル、イットリウム、スカンジウム、またはこれらの組み合わせ物で置き換えることができる。本発明の遷移金属元素は、他の遷移金属またはこれらの組み合わせ物で置き換えることができ;第IIIA族元素、第IVA族元素、および第VA族元素(たとえば、B、Al、Ga、Si、Ge、およびSb等)を加えることができる。
【0016】
ナノコンポジット磁石中の磁気的にソフトな相は、α-Fe、Fe-Co、Fe-B、またはFe、Co、もしくはNiを含有する他の軟磁性材料から選択するのが好ましい。
化学平衡状態にあるコンポジット希土類磁石(たとえばNd2Fe14B/α-Fe)においては、有効希土類含量は化学量論組成より低くなければならず(たとえば、化学量論量のNd2Fe14B中11.76at% のNd)、したがって磁気的にソフトな相が存在してよい。しかしながら、本発明の幾つかの方法を使用して合成したナノコンポジット希土類磁石は化学非平衡状態になっていてもよい。このような状態では、磁気的にソフトな相(たとえば、α-FeやFe-Co)と共に、少量の希土類高含量相(たとえばNd高含量相)が共存してよい。こうした状態下においては、全体の有効希土類含量はもはや、磁石がコンポジット磁石であるかどうかを決定する上での判断基準とはならない。むしろ、本発明の幾つかの方法を使用して合成したナノコンポジット磁石中の全有効希土類含量は、対応する化学量論化合物におけるそれより少なくても、等しくても、あるいは多くてもよい。たとえば、ナノコンポジットNd2Fe14B/α-Fe磁石においては、有効Nd含量は、11.76at%より少なくても、11.76at%に等しくても、あるいは11.76at%より多くてもよく、少量のNd高含量相と磁気的にソフトなα-Fe相が、磁石中に同時に存在してよい。
【0017】
磁気的にソフトな相(たとえば、α-FeやFe-Co)の存在は、ソフトな相が十分な量にて存在すれば、走査型電子顕微鏡法とエネルギー分散分光分析法(SEM/EDS)を使用して確認することができる。磁気的にソフトな相が、ナノコンポジット磁石中にわずか0.5容量%しか存在しない場合でも、容易に確認することができる。しかしながら、磁気的にソフトな相が極めて少量である場合は、透過電子顕微鏡法と制限視野回折法(TEMとSAED)を使用しなければならない。さらに、磁気的にソフトな相の量が十分であるときは、X線回折(XRD)を使用してα-Fe相やFe-Co相を確認することもできる。しかしながら、異方性バルクNd2Fe14B/α-Fe磁石(またはNd2Fe14B/Fe-Co磁石)の場合、磁石のイージー・アクシス(easy axis)に対して垂直な表面にX線ビームを当てると、α-Fe(またはFe-Co)ピークが、主要なNd2Fe14B相の強められた(006)ピークと重なる。α-Fe(またはFe-Co)相を確認するためには、異方性バルクNd2Fe14B/α-Fe磁石または異方性バルクNd2Fe14B/Fe-Co磁石を粉砕し、非配向の粉末試験片に対してXRDを実施しなければならない。
【0018】
したがって、本発明の異方性バルクナノコンポジット磁石の粉砕された非整列の粉末のXRDパターンは、図12に示すように、希土類遷移金属化合物(たとえば、Nd2Fe14Bに対する正方結晶構造、SmCo5に対するCaCu5タイプの六方結晶構造、SmCo7に対するTbCu7タイプの六方結晶構造、およびSm2Co17に対するTh2Ni17タイプの六方結晶構造もしくはTh2Zn17タイプの菱面体結晶構造)の典型的なパターンと、磁気的にソフトな相(たとえば、α-Fe、Fe-Co、Fe-B、またはFe、Co、Ni、もしくはこれらの組み合わせ物を含有する合金)のパターンとが組み合わさって構成されている。
【0019】
異方性バルク磁石試験片または整列・樹脂硬化された粉末試験片のイージー方向(easy direction)に垂直な表面に対してXRD分析を行うと、XRDパターンは、対応する化合物の単結晶のXRDパターンに類似し、幾つかの強められた回折ピークが観察される。たとえば、異方性バルクNd2Fe14B/α-Fe磁石の場合、図23に示すように、(004)、(006)、および(008)の強められた回折ピーク、ならびに(006)/(105)の増大した強度比が観察される。
【0020】
希土類高含量相に関しては、量が少ないことから、XRDまたはSEMを使用して確認することは簡単ではない。
本発明の方法は、従来の焼結、ホットプレス、および熱間変形された磁石より優れた磁気性能、優れた耐食性、および優れた破壊抵抗を有する異方性ナノコンポジット磁石をもたらす。これらの磁石はさらに、製造コストがより低い。Nd-Fe-B/α-Feナノコンポジット磁石とNd-Fe-B/Fe3Bナノコンポジット磁石の場合、図58に示すように、Nd含量は、約2at%〜約14at%の広い範囲であってよい。
【0021】
方法1
本発明の1つの実施態様においては、本発明の方法は、少なくとも2種の希土類遷移金属合金粉末をブレンドすることを含み、このとき少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末が、対応する希土類遷移金属化合物の化学量論量より多い量の有効希土類含量を有し、少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末が、対応する希土類遷移金属化合物の化学量論量より少ない量の有効希土類含量を有する。したがって、少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末が少量の希土類高含量相を含有し、少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末が磁気的にソフトな相を含有する。熱間変形時に、少量の希土類高含量相を含有する希土類遷移金属合金粉末を使用すると、より良好な粒子整列を達成することができる、ということが見出された。比較として、化学量論組成より少ない有効希土類含量を有する単一の希土類遷移金属合金粉末を熱間圧縮および熱間変形することによって製造されるナノコンポジット磁石は一般に、図2と図3に示すように、希土類高含量相が無いために劣った磁気特性を示す。
【0022】
希土類遷移金属合金は、1:5、1:7、2:17、2:14:1、もしくは1:12から選択されるR:TまたはR:T:Mの原子比を有する少なくとも1種の化合物を含むのが好ましい。希土類遷移金属化合物は、Nd2Fe14B、Pr2Fe14B、PrCo5、SmCo5、SmCo7、およびSm2Co17から選択するのが好ましい。希土類遷移金属合金粉末は、約1マイクロメートル〜約1000マイクロメートル(典型的には、約10マイクロメートル〜約500マイクロメートル)の粒径を有するのが好ましい。希土類遷移金属合金粉末は、急速凝固法(溶融紡糸、放電加工、プラズマ溶射、および微粒化を含むが、これらに限定されない)を使用することによって、あるいは機械的合金化もしくは機械的粉砕を使用することによって製造することができる。粉末粒子は、非晶質もしくは部分結晶化の状態であるか、あるいは結晶質ナノ粒子状態である。部分結晶化状態もしくは結晶質状態となっている場合、各粉末粒子は、ナノメートルサイズ範囲(たとえば、約10ナノメートル〜約200ナノメートル)を有する多くの微細粒子を含有する。
【0023】
次いで、ブレンドした粉末を室温(約20℃)〜約800℃の範囲の温度で圧縮して、異方性バルクナノコンポジット磁石を形成させるのが好ましい。圧縮工程は、圧縮しようとする粉末をダイ中に装入すること、およびパンチを介して1つ又は2つ方向から圧力を加えることを含む。この圧縮は、真空中でも、不活性雰囲気中でも、あるいは空気中でも行うことができる。この工程を図64に示す。圧縮しようとする粉末が非晶質状態もしくは部分結晶化状態である場合は、熱間圧縮は、圧密とバルク材料形成のプロセスであるだけでなく、結晶化とナノ粒子構造形成のプロセスとなる。
【0024】
“バルク磁石”とは、粉末、リボン、またはフレークの形態では存在しない磁石を意味している。バルク磁石は、一般には少なくとも約2〜3mmの寸法を有する。後述の本発明の実施例においては、ナノコンポジット磁石は約12〜25mmの直径を有する。
【0025】
圧縮が高温にて行われる場合、室温から熱間圧縮温度まで加熱すること、熱間圧縮を行うこと、および約150℃に冷却することを含めたトータルの熱間圧縮時間は約2分〜約10分であるのが好ましく、典型的には約2分〜約3分である。熱間圧縮温度にて保持される時間であると定義される熱間圧縮時間は0〜約5分であり、典型的には0〜約1分である。
【0026】
圧縮された等方性ナノコンポジット磁石を、さらに約700℃〜約1000℃の温度にて熱間変形処理して、異方性ナノコンポジット磁石を形成させるのが好ましい。熱間変形工程は、図65〜67に示すように、ダイ・アップセッティング(die upsetting)、熱間圧延、または熱間押出等のプロセスを使用して行うことができる。ダイ・アップセッティングの場合、先ず、試験片の直径より大きい直径を有するダイ中に試験片を装入し(図65(a))、次いで、塑性変形が起こって最終的にはキャビティが充填されるよう、圧力を加える(図65(b))。熱間変形は、真空中でも、不活性雰囲気中でも、あるいは空気中でも行うことができる。熱間圧縮と熱間変形との違いは、熱間変形プロセスが材料の塑性流動を含むが、熱間圧縮プロセスは、基本的には、材料の塑性流動をほとんど含まない圧密のプロセスである、という事実にある。
【0027】
室温から熱間変形温度まで加熱すること、熱間変形を行うこと、および約150℃に冷却することを含めたトータルの熱間変形時間は約10分〜約30分であるのが好ましく、典型的には約6分〜約10分である。熱間変形温度にて保持される時間であると定義される熱間変形時間は約1分〜約10分であり、典型的には約2分〜約6分である。
【0028】
熱間圧縮と熱間変形はいずれも、真空中でも、不活性ガス中でも、還元性ガス(reduction gas)中でも、あるいは空気中でも行うことができる。
この方法の特殊なケースとして、ブレンドした粉末混合物を、圧縮せずに直接熱間変形することもできる。これを実施する場合は、熱間変形を行う前に、金属製容器中に粉末を封入する。
【0029】
この方法を使用して、異方性バルクナノコンポジットNd2Fe14B/α-Fe磁石または異方性バルクナノコンポジットNd2Fe14B/Fe-Co磁石を製造すると、典型的な磁気特性は以下のようになる:残留磁気、Br = 11〜14kG、固有保磁力、MHc = 8〜12kOe、および最大エネルギー積、(BH)max= 25〜45MGOe。
【0030】
この方法のフローチャートを図4に示す。この方法を使用して合成したナノコンポジット磁石の例が、実施例3〜5および図5〜7において記載されている。
この方法を使用して合成したナノコンポジット磁石の典型的な微細構造は、図68Aに示すように2つのゾーンを含む。第1のゾーンは、化学量論組成より多い量の有効希土類含量を有する希土類遷移金属合金粉末で形成されている。図68Bに示すように、熱間変形時に、このゾーンにおいて良好な粒子整列をつくり出すことができる。これとは対照的に、第2のゾーンは、化学量論組成より少ない量の有効希土類含量を有する希土類遷移金属合金粉末で形成されている。このゾーンには希土類高含量相が存在しないので、図68Cに示すように、熱間変形時に粒子整列をつくり出すことは本質的にできない。したがって、この方法を使用して製造したナノコンポジット磁石は、実際には、異方性部分と等方性部分との混合物である。
【0031】
この方法を使用した場合、磁気的にソフトな相の分率(fraction)は、約0.5容量%から最大約20容量%であってよい。ごく少量のソフト相の存在(たとえば、ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石中において0.5〜1容量%のα-Fe)が、残留磁気と最大エネルギー積に若干の向上をもたらすことがある。
【0032】
方法2
図5、6、および7からわかるように、Nd低含量合金粉末中のNd含量を11at%から6at%に、そしてさらに4at%に減少させることによって、より高い(BH)maxを達成することができる。熱間変形時に、Nd高含量合金粉末中に良好な粒子整列をつくり出すことができるが、Nd低含量合金粉末を熱間圧縮してから熱間変形を行うと、基本的には等方性の磁石が得られる。Nd低含量合金粉末中のNd含量を減少させることによって、特定のナノコンポジット磁石を作製するのに使用すべきNd低含量合金粉末の量が少なくなり、したがって、コンポジット磁石中に劣った粒子整列を有する部分が少なくなる。
【0033】
Nd低含量合金粉末中のNd含量を4at%からゼロにさらに減少させると、第2の合金粉末は、純粋なα-Fe合金粉末またはFe-B合金粉末になる。この場合、特定のナノコンポジット磁石を作製するのに必要な第2の合金粉末の量が最小限に減少し、加えたα-Fe合金粉末またはFe-Co合金粉末が、熱間変形時に結晶構造の形成を悪化させない、という条件下にて最良の磁気性能が得られる。
【0034】
上記の実施態様において、希土類低含量合金粉末中の希土類含量をゼロにすることで、本発明の第2の実施態様がもたらされる。
本実施態様においては、本発明の方法は、対応する希土類遷移金属化合物の化学量論量より多い有効希土類含量を有する少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末と、少なくとも1種の軟磁性粉末材料とをブレンドすることを含む。本実施態様においては、希土類遷移金属合金粉末は、約1マイクロメートル〜約1000マイクロメートル(典型的には、約10マイクロメートル〜約500マイクロメートル)の粒径(particle size)を有するのが好ましく、また軟磁性粉末材料は、約10ナノメートル〜約80マイクロメートルの粒径を有するのが好ましい。
【0035】
希土類遷移金属合金粉末は、急速凝固法(溶融紡糸、放電加工、プラズマ溶射、および微粒化を含むが、これらに限定されない)を使用することによって、あるいは機械的合金化もしくは機械的粉砕を使用することによって製造することができる。粉末粒子は、非晶質もしくは部分結晶化の状態であっても、あるいは結晶質ナノ粒子の状態であってもよい。
【0036】
希土類遷移金属合金は、1:5、1:7、2:17、2:14:1、もしくは1:12から選択されるR:TまたはR:T:Mの原子比を有する少なくとも1種の化合物を含むのが好ましい。希土類遷移金属化合物は、Nd2Fe14B、Pr2Fe14B、PrCo5、SmCo5、SmCo7、およびSm2Co17から選択するのが好ましい。
【0037】
軟磁性粉末材料は、α-Fe、Fe-Co、Fe-B、またはFe、Co、もしくはNiを含有する他の合金から選択するのが好ましい。軟磁性粉末材料は、非晶質状態であっても、あるいは結晶質状態であってもよい。結晶質状態となっている場合、その粒子サイズ(grain size)は1マイクロメートル未満であるのが好ましい。このケースでは、磁気的にソフトな1つの材料が多くの微細ナノ粒子を含有する。
【0038】
ナノコンポジット磁石を作製するためには、ブレンドした粉末を室温(約20℃)〜約800℃の範囲の温度で圧縮するのが好ましい。室温から熱間圧縮温度まで加熱すること、熱間圧縮を行うこと、および約150℃に冷却することを含めたトータルの熱間圧縮時間は約2分〜約10分であるのが好ましく、典型的には約2分〜約3分である。熱間圧縮温度にて保持される時間であると定義される熱間圧縮時間は0〜約5分であり、典型的には0〜約1分である。
【0039】
圧縮された等方性ナノコンポジット磁石を、さらに約700℃〜約1000℃の温度にて熱間変形処理して、異方性ナノコンポジット磁石を形成させるのが好ましい。室温から熱間変形温度まで加熱すること、熱間変形を行うこと、および約150℃に冷却することを含めたトータルの熱間変形時間は約10分〜約30分であるのが好ましく、典型的には約6分〜約10分である。熱間変形温度にて保持される時間であると定義される熱間変形時間は約1分〜約10分であり、典型的には約2分〜約6分である。
【0040】
熱間圧縮と熱間変形はいずれも、真空中でも、不活性ガス中でも、還元性ガス中でも、あるいは空気中でも行うことができる。
図8は、ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石またはナノコンポジットNd-Fe-B/Fe-Co磁石を例として使用する第2の方法を示したフローチャートである。この方法を使用して合成したナノコンポジット磁石の例が、実施例6〜14および図9〜36に記載されている。
【0041】
希土類遷移金属合金粉末は希土類高含量相を有するので、熱間変形プロセス時に良好な粒子整列を形成することができる。磁気的にソフトな粉末材料を加えても、ハード相中の構造組織形成(texture formation)を悪化させない、という結果が確立されている。
【0042】
この方法を使用して製造したナノコンポジット磁石中の磁気的にハードな相は、相としてマイクロメートルのサイズであってよいが、粒子サイズはナノメートルの範囲である。同様に、この方法を使用して製造したナノコンポジット磁石中の磁気的にソフトな相は、相としてマイクロメートルのサイズであってよいが、粒子サイズはナノメートルの範囲である。
【0043】
この方法の特殊なケースとして、ブレンドした粉末混合物を、圧縮しないで直接熱間変形することもできる。これを行うためには、熱間変形を行う前に、粉末を金属製容器中に封入する。
【0044】
この方法を使用して、異方性バルクナノコンポジットNd2Fe14B/α-Fe磁石または異方性バルクナノコンポジットNd2Fe14B/Fe-Co磁石を製造すると、典型的な磁気特性は以下のようになる:残留磁気、Br = 12〜15kG、固有保磁力、MHc = 8〜16kOe、および最大エネルギー積、(BH)max= 30〜55MGOe。
【0045】
この方法を使用して製造したナノコンポジット磁石中の磁気的にソフトな相のサイズは、図16、30、および31に示すようにかなり大きい(たとえば最大で50マイクロメートル)。場合によっては、図17に示すように、磁気的にソフトな相を磁気的にハードなマトリックス相中に層として分散させることもできる。この方法を使用した場合、磁気的にソフトな相の分率は、約0.5容量%から最大で約50容量%であってよい。ごく少量のソフト相を加えても(たとえば、ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石中に0.5〜1容量%のα-Fe)、残留磁気と最大エネルギー積が幾らか向上することがある。
【0046】
方法3
ソフト相のサイズは、ミクロン範囲という大きなサイズであってもよいが、ソフト相のサイズが大きいことは、ナノコンポジット磁石において必ずしも良いこととは言えない。特定の理論に拘束されるつもりはないが、永久磁石における粒子サイズ(あるいは、ハード/ソフトコンポジット磁石における磁気的にハードな相)を、従来のミクロンサイズからナノメートル範囲に減少させると、ナノ粒子中に多くの磁区を形成させることは、もはやエネルギー的に好ましくない、と考えられる。したがって、ナノ粒子磁石における(あるいは、コンポジット磁石中のナノ粒子ハード相における)磁化逆転は、逆向き磁区(reversed domains)の核形成と成長、または磁区壁の運動(domain wall motion)によって行われるのではなく、磁化の回転によって行われる。磁気的にソフトな相が2つのハード粒子間に存在し、ソフト相の粒子サイズがナノメートルの範囲である場合、磁化の回転はソフト相の中央から始まる。ソフト/ハード界面におけるハード粒子とソフト粒子との間の交換カップリング相互作用により、ソフト粒子の磁気モーメントの方向がハード粒子のそれと同じ方向に制限されやすく、したがってハード相とソフト相における磁化の回転がインコヒーレントになる。
【0047】
図37は、コンポジット磁石における磁化逆転、およびハード/ソフト界面の交換カップリングを示している。図37(b)に示すように反磁場を加えると、最初にソフト粒子の中央における磁化が回転する。なぜなら中央は、ハード/ソフト界面から最も長い距離を有し、したがって最も弱い減磁抵抗を有するからである。ソフト粒子のサイズを小さくすると、ハード/ソフト界面からソフト粒子の中央までの距離が小さくなり、これにより減磁に対する抵抗が増大し、したがって固有保磁力が高まり、減磁曲線の直角度(squareness)が向上する。
【0048】
図38は、ハード/ソフトコンポジット磁石の減磁に及ぼすソフト相のサイズの影響を示した概略図である。
図39は、コンポジット磁石(たとえば、Nd2Fe14B/α-FeやSm2Co17/Co)の減磁に及ぼすハード粒子とソフト相のサイズの影響を示している。
【0049】
コンポジット磁石を製造するのに使用されるα-Fe粉末やFe-Co粉末の粒径を大幅に小さくすることができれば、そしてより十分な分散を果たすことができれば、ナノコンポジット磁石の磁気性能を大幅に向上させることができる。
【0050】
飽和磁化〔したがって、ナノコンポジット磁石のポテンシャルBrと(BH)max〕は、コンポジット磁石におけるソフト相の体積分率に依存する。より多くのソフト相を加えると、飽和磁化はより高くなるが、保磁力は低下する。
【0051】
しかしながら、ソフト相のサイズを減少させ、ソフト相の分散を向上させることによって、保磁力の低下を最小限に抑えることができる。この考え方は、下記の式にて示すことができる。
【0052】
【数1】

【0053】
上記式において、ρ=(S/V)soft(ソフト相の分散ファクターと定義される)は、コンポジット磁石中におけるソフト相の分散を表わしており、このときSはソフト相の全表面積であり、Vはソフト相の全体積である。ρの値が大きいということは、ソフト相がより十分に分散されているということを示しており、したがってハード相とソフト相との間の界面の交換カップリングがより効果的になる。他方、ソフト相の分散がより十分であると、より多くのソフト相をナノコンポジット磁石中に加えることができ、したがって磁気性能がより高くなる。
【0054】
上記の考察は、Nd高含量のNd-Fe-B粉末粒子を薄いα-Fe層もしくはFe-Co層で被覆しなければならないという別の方法をもたらし、これにより第3の実施態様が生じる。
この実施態様においては、本発明の方法は、対応する希土類遷移金属化合物の化学量論より多い量の有効希土類含量を有する少なくとも1種の希土類遷移金属合金の粉末粒子を、軟磁性材料の合金層で被覆することを含む。
【0055】
希土類遷移金属合金は、1:5、1:7、2:17、2:14:1、もしくは1:12から選択されるR:TまたはR:T:Mの原子比を有する少なくとも1種の化合物を含むのが好ましい。希土類遷移金属化合物は、Nd2Fe14B、Pr2Fe14B、PrCo5、SmCo5、SmCo7、またはSm2Co17から選択するのが好ましい。軟磁性材料は、α-Fe、Fe-Co、Fe-B、またはFe、Co、もしくはNiを含有する他の合金から選択するのが好ましい。
【0056】
希土類遷移金属合金粉末は、急速凝固法(溶融紡糸、放電加工、プラズマ溶射、および微粒化を含むが、これらに限定されない)を使用することによって、あるいは機械的合金化もしくは機械的粉砕を使用することによって製造することができる。粉末粒子は、非晶質もしくは部分結晶化の状態であるか、あるいは結晶質ナノ粒子状態である。
【0057】
本実施態様においては、希土類遷移金属合金粉末は一般に、約1マイクロメートル〜約1000マイクロメートル、典型的には約10〜約500マイクロメートルの粒径を有し、軟磁性金属合金層は、約10ナノメートル〜約10マイクロメートルの厚さを有するのが好ましい。
【0058】
希土類遷移金属合金粉末粒子は、化学コーティング(無電解めっき)法、電気コーティング法、化学的気相堆積法、ゾル-ゲル法、または物理的気相堆積法〔たとえば、スパッタリング法、パルスレーザー堆積法、熱堆積法(thermal evaporation deposition)、またはe-ビーム堆積法〕(これらに限定されない)を含めた方法によって軟磁性材料で被覆するのが好ましい。
【0059】
次いで、被覆された粉末を室温(約20℃)〜約800℃の範囲の温度で圧縮して、異方性バルクナノコンポジット磁石を作製するのが好ましい。室温から熱間圧縮温度まで加熱すること、熱間圧縮を行うこと、および約150℃に冷却することを含めたトータルの熱間圧縮時間は約2分〜約10分であるのが好ましく、典型的には約2分〜約3分である。熱間圧縮温度にて保持される時間であると定義される熱間圧縮時間は0〜約5分であり、典型的には0〜約1分である。
【0060】
圧縮された等方性ナノコンポジット磁石をさらに、約700℃〜約1000℃の温度で熱間変形処理に付して、異方性バルクナノコンポジット磁石を作製するのが好ましい。室温から熱間変形温度まで加熱すること、熱間変形を行うこと、および約150℃に冷却することを含めたトータルの熱間変形時間は約10分〜約30分であるのが好ましく、典型的には約6分〜約10分である。熱間変形温度にて保持される時間であると定義される熱間変形時間は約1分〜約10分であり、典型的には約2分〜約6分である。
【0061】
熱間圧縮と熱間変形はいずれも、真空中でも、不活性ガス中でも、還元性ガス中でも、あるいは空気中でも行うことができる。
この方法を使用してNd-Fe-B/α-Feナノコンポジット磁石またはNd-Fe-B/Fe-Coナノコンポジット磁石を製造すると、被覆された薄いα-Fe層もしくはFe-Co層が、ハード相中の粒子整列を向上させる役割を実際に果たす、ということが実験データからわかった。
【0062】
【表1】

【0063】
図40は、コンポジットNd-Fe-B/α-FeまたはコンポジットNd-Fe-B/Fe-Coを例として使用する、本発明の第3の実施態様を示したフローチャートである。図41は、α-Fe層またはFe-Co層で被覆された多くのナノメートルサイズ粒子を含有するマイクロメートルサイズ粒子の概略図である。この方法を使用して、Nd-Fe-B粒子を薄い層で被覆することができ、この結果、ソフト相の分散がより良好になり、したがって得られるナノコンポジット磁石の磁気性能がより良好になる。
【0064】
この方法の特殊なケースとして、ブレンドした粉末混合物を、圧縮せずに直接熱間変形することもできる。これを行うためには、熱間変形の前に粉末を金属製容器中に封入する。
【0065】
この方法を使用して、異方性バルクナノコンポジットNd2Fe14B/α-Fe磁石または異方性バルクナノコンポジットNd2Fe14B/Fe-Co磁石を製造すると、典型的な磁気特性は以下のようになる:残留磁気、Br = 13〜16kG、固有保磁力、MHc = 10〜18kOe、および最大エネルギー積、(BH)max = 40〜60MGOe。改良するためのさらなる処理を施せば、60〜70MGOeを超える(BH)maxに達することも可能である。
【0066】
この方法を使用して合成したナノコンポジット磁石の例が、実施例15〜19と図42〜57に記載されている。
この方法を使用して製造したナノコンポジット磁石は、磁気的にソフトな相が、磁気的にハードなマトリックス相中に層として分散されていることを示している(図57)。この方法を使用するとき、磁気的にソフトな相の分率は約0.5容量%〜約50容量%であってよい。ソフト相の極めて薄いコーティング層(たとえば、ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石中0.5〜1容量%のα-Fe)でも、残留磁気と最大エネルギー積に幾らかの向上もたらすことがある。
【0067】
言うまでもないことであるが、上記3つの方法を使用して合成したナノコンポジット希土類磁石中の全希土類含量は、化学量論量より少なくても、化学量論量に等しくても、あるいは化学量論量より多くてもよい。たとえば、ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石においては、Nd含量は、11.76at%より少なくても、11.76at%に等しくても、あるいは11.76at%より多くてもよい。主要なNd2Fe14B相のほかに、少量のNd高含量相とα-Fe相が、磁石中に同時に存在してよい。したがって、上記の方法を使用して合成したナノコンポジット磁石は化学非平衡の状態であってよい。
【0068】
図58は、理論(BH)max対Nd含量の関係、および化学非平衡(準安定)状態のナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石中のNd範囲を示している。
高温でのプロセシング時(たとえば熱間圧縮や熱間変形、特に熱間変形)においては、希土類高含量相と磁気的にソフトな相との間に拡散が起こることがある。Nd-Fe-B/α-Feの場合、拡散により、NdFe2相またはNd2Fe14B相(余分のBが利用可能ならば)が形成される。Nd2Fe14B相の形成は理想的である。なぜならNd2Fe14Bは、NdFe2よりはるかに優れたハード磁気特性を有するからである。希土類遷移金属合金粉末がごく少量の希土類高含量相を含有する場合、熱間変形後の最終的なナノコンポジット磁石においては、希土類高含量相を全く含まない磁気的にソフトな相だけが存在することがある。
【0069】
方法4
被覆しようとする希土類遷移金属合金粉末の粒径を小さくすると、ナノコンポジット磁石において、磁気的にソフトな相のより十分な分散がもたらされ、したがって磁気性能が向上する。被覆しようとする希土類遷移金属合金粉末の粒径をナノメートル範囲に減少させると、磁気的にソフトなシェル構造で被覆された磁気的にハードなコアナノ粒子を使用することができ、したがって、ソフト相の寸法を大幅に増大させることなく、ソフト相の体積分率を効果的に増大させることができる。ナノコンポジット磁石を製造する第4の方法のフローチャートを図59に示す。図60は、ソフトなシェル相の体積分率vs.シェル厚さとコア直径との比の関係を示している。図61は、ソフトシェル/ハードコア粒子で構成されるナノコンポジット磁石を合成するプロセスを概略的に示している。図62は、ソフトシェル/ハードコアのナノコンポジット構造を有するナノコンポジットNd2Fe14B/α-Fe磁石とナノコンポジットNd2Fe14B/Fe-Co磁石における理論(BH)maxを示している。
【0070】
したがって、本発明の第4の実施態様においては、本発明の方法は、化学量論組成に近いか又は等しい組成を有する少なくとも1種の希土類遷移金属化合物のナノ結晶質粒子を軟磁性金属合金層で被覆することを含む。
【0071】
希土類遷移金属ナノ粒子の粒径は、数ナノメートル〜数百ナノメートルであるが、軟磁性金属合金被覆層は、ナノ粒子の直径の約5%〜約30%の厚さを有するのが好ましい。
希土類遷移金属ナノ粒子は、1:5、1:7、2:17、2:14:1、または1:12から選択されるR:TまたはR:T:Mの原子比を有することができる。希土類遷移金属ナノ粒子は、Nd2Fe14B、Pr2Fe14B、PrCo5、SmCo5、SmCo7、またはSm2Co17から選択するのが好ましい。磁気的にソフトな金属合金層材料は、α-Fe、Fe-Co、Fe-B、またはFe、Co、もしくはNiを含有する他の合金から選択するのが好ましい。
【0072】
希土類遷移金属ナノ粒子は、化学コーティング(無電解めっき)法、電気コーティング法、化学的気相堆積法、ゾル-ゲル法、または物理的気相堆積法〔たとえば、スパッタリング法、パルスレーザー堆積法、熱堆積法、またはe-ビーム堆積法〕(これらに限定されない)を含めた方法を使用することによって、磁気的にソフトな材料で被覆するのが好ましい。
【0073】
各ナノ結晶粒子は単結晶であるので、被覆されたナノ粒子粉末を、圧縮前または圧縮中に、強力なDC磁場またはパルス磁場において磁気的に整列させることができる。引き続き約500℃〜約900℃の温度にて急速熱間圧縮を行うことにより、圧縮密度を十分な密度にさらに増大させることができ、このようにして異方性バルクナノコンポジット磁石(たとえば、Nd2Fe14B/α-FeやNd2Fe14B/Fe-Co)が得られる。熱間圧縮後に、必要に応じて、約700℃〜約1000℃の温度で熱間変形を行って、粒子整列をさらに向上させることもできる。
【0074】
方法3を使用して製造したナノコンポジット磁石は、方法2を使用して製造した磁石より大きなρ=(S/V)soft値を有する。このρ値は、方法4を使用して製造したナノコンポジット磁石において最大値に達することがある。図60に示すように、ソフトシェルの厚さがハードコアの直径の13%であるとき、ソフト相の分率は50%となる。この条件下において、α-FeとNd2Fe14Bをハード相およびソフト相として使用すると、飽和磁化は18.75kGとなり、達成可能な(BH)maxは80MGOeとなることがある。Fe-Coをソフト相として使用すると、飽和磁化は20.25kGとなり、達成可能な(BH)maxは90MGOeとなることがある。
【0075】
この方法を使用して製造したナノコンポジット磁石では、ナノメートルサイズの磁気的にハードな粒子が、磁気的にソフトなマトリックス相中に埋め込まれていることがわかる(図70に概略的に示す)。この方法を使用すると、磁気的にソフトな相の分率は、約10容量%(被覆層の厚さがナノ粒子の直径の2%であるとき)〜約80容量%(被覆層の厚さがナノ粒子の直径の36%であるとき)となる。
【0076】
異方性バルクナノコンポジット磁石を合成する4つの方法は、密接に関連している。図63は、これらの間の関係を記している。図71は、4つの方法を使用して製造した異方性磁石に対する構造上の特徴を示している。
【0077】
前述したように、ナノコンポジット磁石における磁気的にソフトな相のサイズと分散が、固有保磁力と減磁曲線の直角度(squareness)に対して強く影響を及ぼす。しかしながら、従来の技術によっては、磁気的にソフトな相のサイズと分散を直接制御することは不可能である。この点に関して、間接的な手法(たとえば、溶融紡糸時にホイールの速度を調整すること、機械的合金化時に粉砕時間を変えること、あるいはNd-Fe-B磁石において、Feの代わりに他の遷移金属を使用すること)を使用しても、極めて限られた効果しか得られない。これは、従来の全てのナノコンポジット希土類磁石材料だけでなく、前述した本発明の第1の方法を使用して製造したナノコンポジット磁石においても、冶金学的プロセスにおいて、たとえば液相の結晶化、非晶質相の結晶化、またはマトリックス相からの析出によって磁気的にソフトな相が形成されるからである。これら全てのプロセスにおいて、磁気的にソフトな相のサイズと分散を直接制御する上で利用できる方法はない。
【0078】
これとは対照的に、本発明の第2、第3、および第4の方法を使用すると、制御可能なプロセスによって(たとえば、磁気的にソフトな金属もしくは合金の粉末粒子をブレンドすることによって、あるいは磁気的にソフトな金属もしくは合金の層で被覆することによって)、磁気的にハードな相中に磁気的にソフトな相が加えられる。これらの制御可能なプロセスを使用することで、磁気的にソフトな相のサイズと分散を直接制御することが可能となるだけでなく、ハード/ソフト界面を直接制御することも可能となる。
【0079】
言うまでもないことであるが、上記の実施態様に記載の全ての希土類遷移金属合金中の希土類元素は、他の希土類元素、ミッシュメタル、イットリウム、スカンジウム、またはこれらの組み合わせ物で置き換えることができる。遷移金属元素は、他の遷移金属またはこれらの組み合わせ物で置き換えることができ、第IIIA族元素、第IVA族元素、および第VA族元素(たとえば、B、Al、Ga、Si、Ge、およびSb)も加えることができる。
【0080】
異方性粉末とボンド磁石
言うまでもないことであるが、本発明にしたがって製造した異方性バルクナノコンポジット希土類磁石は、粉砕して異方性ナノコンポジット磁石粉末にすることができる。この粉末をさらに結合剤とブレンドして、異方性ナノコンポジット希土類ボンド磁石を製造することができる。このような異方性ボンド磁石は、水素化・不均化・脱着法・再結合(HDDR)法を使用して作製した異方性粉末を使用することによって製造した異方性ボンド磁石と比較して、良好な熱安定性を示す。
【0081】
本発明をより容易に理解できるよう、以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、これらの実施例は本発明の実施態様を例示するためのものであって、本発明がこれらの実施態様によって限定されることはない。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
単一合金粉末を使用してNd10.8Pr0.6Dy0.2Fe76.1Co6.3Ga0.2Al0.2B5.6磁石を合成し、630℃にて25kpsiで、トータル約2分間にわたって熱間圧縮し、そして920℃にて10kpsiで、28分間にわたって熱間変形(高さが60%減少)した。図2は、熱間変形磁石の減磁曲線を示している。図からわかるように、磁石の磁気性能は、粒子整列が良くないので劣っている。
【0083】
(実施例2)
単一合金粉末を使用してNd5Pr5Dy1Fe73Co6B10磁石を合成し、680℃にて25kpsiで、トータル約2分間にわたって熱間圧縮し、そして880℃にて10kpsiで、40分間にわたって熱間変形(高さが60%減少)した。図3は、熱間変形磁石の減磁曲線を示している。図からわかるように、磁石の磁気性能は、粒子整列が良くないので劣っている。
【0084】
(実施例3)
13.5at%の希土類含量を有する第1の合金粉末と11at%の希土類含量を有する第2の合金粉末を使用して、Nd10.8Pr0.6Dy0.2Fe76.1Co6.3Ga0.2Al0.2B5.6磁石を合成した。ブレンドした粉末を650℃にて25kpsiで熱間圧縮し、そして880℃にて10kpsiで6分間にわたって熱間変形(高さが63%減少)した。図5は、熱間圧縮・熱間変形した磁石の減磁曲線を示している。
【0085】
(実施例4)
13.5at%の希土類含量を有する第1の合金粉末と6at%の希土類含量を有する第2の合金粉末を使用して、Nd10.8Pr0.6Dy0.2Fe76.1Co6.3Ga0.2Al0.2B5.6磁石を合成した。ブレンドした粉末を620℃にて25kpsiで熱間圧縮し、そして940℃にて10kpsiで2.5分間にわたって熱間変形(高さが67%減少)した。図6は、熱間圧縮・熱間変形した磁石の減磁曲線を示している。
【0086】
(実施例5)
13.5at%の希土類含量を有する第1の合金粉末と4at%の希土類含量を有する第2の合金粉末を使用して、Nd10.8Pr0.6Dy0.2Fe76.1Co6.3Ga0.2Al0.2B5.6磁石を合成した。ブレンドした粉末を620℃にて25kpsiで熱間圧縮し、そして910℃にて4kpsiで2.5分間にわたって熱間変形(高さが67%減少)した。図7は、熱間圧縮・熱間変形した磁石の減磁曲線を示している。図5、6、および7から、11.76at%より多いNd含量を有する粉末と、11.76at%より少ないNd含量を有する粉末とをブレンドすると、高い磁気性能が得られるということがわかる。
【0087】
(実施例6)
図9は、本発明のナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石を製造する際に使用されるα-Fe粉末粒子のSEM写真を示している。α-Fe粉末の平均粒径は約3〜4ミクロンである。このα-Fe粉末は、0.2重量%という比較的高い酸素含量を有する。比較として挙げると、使用されるNd-Fe-B粉末は、わずか0.04〜0.06重量%というかなり低い酸素含量を有する。
【0088】
図10は、本発明のナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石を製造する際に使用されるα-Fe粉末の断面を示しているSEM写真である。α-Fe粉末粒子の断面から、ナノメートル範囲の小さな粒子と、1ミクロンに近い大きな粒子を観察することができる。さらに、炭化物相(薄い灰色)も観察することができる。
【0089】
図11は、本発明のナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石を製造する際に使用されるα-Fe粉末のSEM/EDS分析の結果を示している。言うまでもないが、この粉末は基本的には、少量の不純物(たとえば、C、O、およびAl)を含んだ高純度Feである。
【0090】
図12は、8.3重量%のα-Fe粉末をブレンドしたNd13.5Fe80Ga0.5B6を使用して合成した熱間圧縮・熱間変形磁石を粉砕して得られる非整列粉末のX線回折パターンを示している。この磁石は、Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[91.7重量%/8.3重量%]として示される。α-Fe相のピークは、XRDパターンから確認することができる。
【0091】
図13は、熱間圧縮したNd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[91.7重量%/8.3重量%]磁石のSEM写真であり、Nd-Fe-Bリボンとα-Fe相を示している。この磁石は、8.3重量%のα-Fe粉末をブレンドしたNd=13.5at%の合金粉末を使用して合成した。熱間圧縮は、620℃にて25kpsiで2分間行った。
【0092】
図14は、図13に示したのと同じ磁石のSEM写真であるが、倍率がより大きい。10〜30マイクロメートルの大きなα-Fe相を観察することができる。
図15は、屈曲した第2のクアドラント減磁曲線(a kinked 2ndquadrant demagnetization curve)を示している熱間圧縮Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[92重量%/8重量%]磁石の減磁曲線を示しており、ハード相とソフト相との間に効果的な界面交換カップリングが存在しないことを示している。熱間圧縮は、620℃にて25kpsiで2分間行った。
【0093】
(実施例7)
Nd高含量のNd-Fe-B合金粉末とα-Fe粉末をブレンドすることによって製造した熱間圧縮等方性ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石を熱間変形することにより、α-Fe相のサイズ減少と分散向上がもたらされる。
【0094】
図16は、熱間変形Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[91.7重量%/8.3重量%]磁石のSEM後方散乱電子像を示している。黒っぽい相がα-Feである。熱間変形は940℃で4分行った(67%の高さ減少)。α-Fe相のサイズは、熱間変形後にやや減少した。
【0095】
図17は、熱間変形Nd14Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe[92重量%/8重量%]磁石の第2のSEM電子像を示している。熱間変形は、900℃にて5分間行った(70%の高さ減少)。α-Fe相の分散は、熱間変形後に、層状のα-Fe相を形成することによって向上する。
【0096】
(実施例8)
図18は、2重量%のα-Fe粉末をブレンドした、13.5at%のNd含量を有するNd-Fe-Ga-B合金粉末を使用して合成した熱間圧縮・熱間変形Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[98重量%/2重量%]磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は600℃にて2分間行い、熱間変形は880℃にて4分間行った(68%の高さ減少)。図18に示されている減磁曲線が滑らかであることは、ハード/ソフト界面の交換カップリングが効果的であることを示している。
【0097】
(実施例9)
図19は、8.3重量%のα-Fe粉末をブレンドした、13.5at%のNd含量を有するNd-Fe-Ga-B合金粉末を使用して合成した熱間圧縮・熱間変形Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[91.7重量%/8.3重量%]磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は640℃で2分間行い、熱間変形は940℃で5分間行った(71%の高さ減少)。
【0098】
この磁石の全Nd含量は、11.76at%の化学量論値に極めて近い。しかしながら、図12に示すように、この磁石のランダム粉末試験片のX線回折パターンによれば、2:14:1の正方結晶構造と強いα-Feピークとが結びついており、比較的多い分率のα-Fe相が存在していることを示している。α-Fe相の存在はさらに、図16に示すようなSEM画像から直接観察することもできる。
【0099】
熱間圧縮と熱間変形の時間は短いので、拡散が完全なものとなって、化学平衡状態に達するだけの十分な時間はない。したがって熱間圧縮・熱間変形された異方性磁石は、たとえ全希土類含量が化学量論量より少ないとしても、希土類高含量相と磁気的にソフトな相を同時に有することができる。全希土類含量が化学量論量より多い場合でも、磁石は、磁気的にソフトな相を含有することができる。したがって、このタイプのNd-Fe-B/α-Feナノコンポジット磁石のNd含量は、図58に示すように、約2at%〜約14at%の範囲であってよい。したがって当然のことながら、上記のような方法で作製されるナノコンポジット希土類永久磁石は、化学非平衡の状態であってもよい。ナノコンポジット磁石(たとえば、Nd2Fe14B/α-Fe、Nd2Fe14B/Fe-Co、Pr2Fe14B/α-Fe、Pr2Fe14B/Fe-Co、PrCo5/Co、SmCo5/Fe-Co、SmCo7/Fe-Co、SmCo17/Fe-Co)中の希土類含量は、化学量論量より少なくても、化学量論量に等しくても、あるいは化学量論量より多くてもよい。
【0100】
(実施例10)
図20は、熱間圧縮・熱間変形Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[92.1重量%/7.9重量%]磁石の破断面のSEM写真であり、細長い整列した粒子を示している。熱間圧縮は640℃にて2分間行い、熱間変形は940℃にて2分間行った(71%の高さ減少)。
【0101】
図21は、熱間圧縮・熱間変形Nd14Fe79.0Ga0.5B6/α-Fe[95重量%/5重量%]磁石のTEM写真であり、細長い整列した粒子を示している。熱間圧縮は550℃にて2分間行い、熱間変形は900℃にて2分間行った(70%の高さ減少)。本磁石は(BH)max=48MGOeを有する。
【0102】
図22は、図21に示したのと同じナノコンポジット磁石のTEM写真であり、大きなα-Fe粒子と大きなNd2Fe14B粒子を特徴とするハード/ソフト界面を示している。上方の右隅は、細長くて整列した2:14:1の粒子を示している。この図は、ハード/ソフト界面の交換カップリングが、従来考えられているよりはるかに強いことを示している。
【0103】
(実施例11)
図23は、(1)全希土類含量が13.5at%の合金粉末と全希土類含量が6at%の合金粉末を使用して合成した熱間変形ナノコンポジットNd10.8Pr0.6Dy0.2Fe76.1Co6.3Ga0.2Al0.2B5.6磁石;(2)8.3重量%のα-Fe粉末をブレンドした、Nd=13.5at%の合金粉末を使用して合成した熱間変形Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[91.7重量%/8.3重量%]磁石;および(3)市販の焼結Nd-Fe-B磁石;の異方性バルク磁石のXRDパターンの比較を示している。
【0104】
図23からわかるように、第2の磁石は、第1の磁石より良好な粒子整列を示しており、焼結Nd-Fe-B磁石の粒子整列に類似している。
【0105】
(実施例12)
図24は、ナノコンポジットNd14Fe79.0Ga0.5B6/α-Fe磁石のBrMHcに及ぼすα-Fe含量(重量%)の影響を示している。
【0106】
図25は、ナノコンポジットNd14Fe79.0Ga0.5B6/α-Fe磁石の(BH)maxに及ぼすα-Fe含量(重量%)の影響を示している。
【0107】
(実施例13)
図26は、12.9重量%のα-Fe粉末をブレンドしたNd12.5Dy1.5Fe79.5Ga0.5B6合金粉末を使用して合成したNd12.5Dy1.5Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe[87.1重量%/12.9重量%]磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は640℃にて2分間行い、熱間変形は930℃にて3分間行った(71%の高さ減少)。
【0108】
図27は、ナノコンポジットNd12.5Dy1.5Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe[87.1重量%/12.9重量%]磁石のBrMHcに及ぼすα-Fe含量(重量%)の影響を示している。
図28は、ナノコンポジットNd12.5Dy1.5Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe[87.1重量%/12.9重量%]磁石の(BH)maxに及ぼすα-Fe含量(重量%)の影響を示している。
【0109】
(実施例14)
α-Fe粉末のほかに、Fe-Co合金粉末も、ナノコンポジットNd-Fe-B/Fe-Co磁石を製造する際にNd-Fe-B粉末とブレンドすることができる。
【0110】
図29は、本発明のナノコンポジットNd-Fe-B/Fe-Co磁石を製造する際に使用されるFe-Co粉末のSEM写真である。粉末粒子のサイズは≦50マイクロメートルである。
図69は、Fe-Co粒子の破断面のSEM写真であり、ナノ粒子が示されている。
【0111】
図30は、(BH)max=48MGOeのNd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石のSEM後方散乱電子像である。この磁石は、5重量%のFe-Co粉末をブレンドしたNd13.5Fe80Ga0.5B6合金粉末を使用して合成した。ダークグレーの相がFe-Coである。熱間圧縮は630℃にて2分間行い、熱間変形は930℃にて3分間行った(71%の高さ減少)。熱間変形は、ソフトなFe-Co相の分散を向上させる上で小さな役割を果たしているにすぎないようである。
【0112】
図31は、Nd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石のSEM写真である。熱間変形の後に、Fe-Co相が最初の球形状のまま残存しているということがはっきりわかる。
図32は、磁石中の異なったゾーンを示している、Nd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石のSEM後方散乱電子像である。ゾーン1は純粋なFe-Coであり;ゾーン2は拡散エリアであり;ゾーン3はNd-Fe-Bマトリックス相であり;ゾーン4のホワイトスポットはNdと酸素の含量が高い。
【0113】
図33は、Nd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石に対する異なったゾーンのSEM/EDS分析の結果を示している。
図34は、異方性Nd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co[97重量%/3重量%]磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は600℃にて2分間行い、熱間変形は920℃にて2.5分間行った(71%の高さ減少)。減磁曲線が滑らかであるということは、ハード/ソフト界面の交換カップリングが効果的であることを示している。図29〜32に示されているように、Fe-Co粉末の粒径がかなり大きい(≦50ミクロン)ことを考慮すると、ハードなNd14Fe79.5Ga0.5B6相とソフトなFe-Co相との間の界面交換カップリングは、従来考えられているよりもはるかに強力である。従来の界面交換カップリングモデルによれば、磁気的にソフトな相の上限は約20〜30ナノメートルである。しかしながら、本発明において合成したNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co[97重量%/3重量%]磁石においては、Fe-Co相は、最大で50ミクロンという大きさであってよく、従来モデルのサイズのほぼ2000倍である。
【0114】
図35は、ナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co磁石のBrMHcに及ぼすFe-Co含量(重量%)の影響を示している。
図36は、ナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co磁石の(BH)maxに及ぼすFe-Co含量(重量%)の影響を示している。
【0115】
(実施例15)
図42は、Fe-Co-Vターゲットを使用してRFスパッタリングを8時間行った後の、Nd13.5Fe80Ga0.5B6粉末のSEM写真とSEM/EDS分析の結果を示している。本発明において使用したFe-Co-V合金の組成は、Feが49重量%、Coが49重量%、そしてVが2重量%である。
【0116】
図43は、RFスパッタリングを3時間行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は580℃にて2分間行い、熱間変形は920℃にて2分間行った(77%の高さ減少)。
【0117】
図44は、DCスパッタリングを8時間行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は600℃にて2分間行い、熱間変形は930℃にて2分間行った(71%の高さ減少)。
【0118】
図45は、DCスパッタリングを21時間行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は630℃にて2分間行い、熱間変形は940℃にて5分間行った(71%の高さ減少)。
【0119】
図46は、DCスパッタリングを21時間行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は630℃にて2分間行い、熱間変形は930℃にて6分間行った(71%の高さ減少)。
【0120】
(実施例16)
図47は、パルスレーザー堆積を6時間行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は630℃にて2分間行い、熱間変形は930℃にて5.5分間行った(68%の高さ減少)。
【0121】
(実施例17)
図48は、FeSO4-CoSO4-NaH2PO2-Na3C6H5O7溶液中にて室温で1時間化学コーティングを行った後の、Nd14Fe79.5Ga0.5B6粉末粒子のSEM写真とSEM/EDS分析結果を示している。
【0122】
図49は、FeSO4-CoSO4-NaH2PO2-Na3C6H5O7溶液中にて15分化学コーティングを行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は620℃にて2分間行い、熱間変形は950℃にて3分間行った(71%の高さ減少)。
【0123】
図50は、FeSO4-CoSO4-NaH2PO2-Na3C6H5O7溶液中にて1時間化学コーティングを行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は620℃にて2分間行い、熱間変形は950℃にて5分間行った(71%の高さ減少)。
【0124】
図51は、FeCl2-CoCl2-NaH2PO2-Na3C6H5O7溶液中にて50℃で2時間化学コーティングを行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は620℃にて2分間行い、熱間変形は960℃にて5分間行った(71%の高さ減少)。
【0125】
(実施例18)
図52は、FeCl2-CoCl2-NaH2PO2-Na3C6H5O7溶液中にて1時間化学コーティングを行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は620℃にて2分間行い、熱間変形は960℃にて4分間行った(71%の高さ減少)。
【0126】
(実施例19)
電気コーティングを使用することによって粉末コーティングを行うことができる。
図53は、電気コーティングに対して使用される装置の概略図である。電気コーティングに対しては、α-FeまたはFe-Co-V合金をアノードとして使用した。
【0127】
図54は、FeCl2-CoCl2-MnCl2-H3BO3溶液中にて室温で0.5時間電気コーティングを行った後のNd14Fe79.5Ga0.5B6粉末のSEM写真である。
図55は、FeCl2-CoCl2-MnCl2-H3BO3溶液中にて室温で0.5時間、2ボルト-1アンペアで電気コーティングを行った後に製造したNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は620℃にて2分間行い、熱間変形は960℃にて6分間行った(71%の高さ減少)。
【0128】
図56は、非水性のLiClO4-NaCl-FeCl2溶液中にて室温で1.5時間、60ボルト-0.4アンペアで電気コーティングを行った後に製造したNd14Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe磁石の減磁曲線を示している。熱間圧縮は600℃にて2分間行い、熱間変形は940℃にて2.5分間行った(71%の高さ減少)。
【0129】
図57は、FeCl2-CoCl2-MnCl2-H3BO3溶液中にて室温で0.5時間、3ボルト-2アンペアで電気コーティングを行った後に製造したNd14Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe磁石のSEM写真である。熱間圧縮は620℃にて2分間行い、熱間変形は960℃にて7分間行った(71%の高さ減少)。
【0130】
本発明を好ましい実施態様に関して詳細に説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形や改良形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】理論(BH)max対Nd含量の関係、および3種のタイプのNd-Fe-B磁石を示しているグラフである。
【図2】Nd10.8Pr0.6Dy0.2Fe76.3Co6.3Ga0.2B5.6の単一合金粉末を使用して製造した熱間圧縮ナノコンポジット磁石と熱間変形ナノコンポジット磁石の減磁曲線を示しているグラフである。
【図3】Nd5Pr5Dy1Fe73Co6B10の単一合金粉末を使用して製造した熱間圧縮ナノコンポジット磁石と熱間変形ナノコンポジット磁石の減磁曲線を示しているグラフである。
【図4】本発明のコンポジット磁石を作製する方法の1つの実施態様を示しているフローチャートである。
【図5】13.5at%の希土類含量を有する合金粉末と11at%の希土類含量を有する合金粉末を使用して製造した熱間圧縮ナノコンポジット磁石と熱間変形ナノコンポジット磁石の減磁曲線を示しているグラフである。
【図6】13.5at%の希土類含量を有する合金粉末と6at%の希土類金属含量を有する合金粉末を使用して製造した熱間圧縮ナノコンポジット磁石と熱間変形ナノコンポジット磁石の減磁曲線を示しているグラフである。
【図7】13.5at%の希土類含量を有する合金粉末と4at%の希土類含量を有する合金粉末を使用して製造した熱間圧縮ナノコンポジット磁石と熱間変形ナノコンポジット磁石の減磁曲線を示しているグラフである。
【図8】本発明のコンポジット磁石を作製する方法の第2の実施態様を示しているフローチャートである。
【図9】ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石を製造する際に使用されるα-Fe粉末粒子のSEM写真である。
【図10】ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石を製造する際に使用されるα-Fe粉末粒子の断面を示しているSEM写真である。
【図11】ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石を製造する際に使用されるα-Fe粉末粒子のSEM/EDS分析の結果を示している。
【図12】8.3重量%のα-Fe粉末をブレンドしたNd13.5Fe80Ga0.5B6を使用して合成されたホットプレス・熱間変形磁石を粉砕して得たランダム粉末のX線回折パターンを示している。
【図13】ホットプレスNd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[91.7重量%/8.3重量%]磁石のSEM写真であり、Nd-Fe-Bリボンとそれらの間のα-Fe相を示している。
【図14】図13に示したのと同じ磁石のSEM写真であるが、倍率がより大きい。
【図15】ホットプレスNd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[92重量%/8重量%]磁石の減磁曲線である。
【図16】熱間変形Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[91.7重量%/8.3重量%]磁石のSEM後方散乱電子像である。
【図17】熱間変形Nd14Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe[92重量%/8重量%]磁石の別のSEM電子像であり、層状のα-Fe相を示している。
【図18】ホットプレス・熱間変形Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[98重量%/2重量%]磁石の減磁曲線である。
【図19】ホットプレス・熱間変形Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[91.7重量%/8.3重量%]磁石の減磁曲線である。
【図20】ホットプレス・熱間変形Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[92.1重量%/7.9重量%]磁石の破断面のSEM写真であり、細長い整列した粒子を示している。
【図21】ホットプレス・熱間変形Nd14Fe79.0Ga0.5B6/α-Fe[95重量%/5重量%]磁石のTEM写真である。
【図22】図21に示したのと同じコンポジット磁石のTEM写真である。
【図23A】(1)TRE=13.5at%の合金粉末とTRE=6at%の合金粉末を使用して合成した熱間変形ナノコンポジットNd10.8Pr0.6Dy0.2Fe76.1Co6.3Ga0.2Al0.2B5.6磁石XRDパターンを示している。
【図23B】8.3重量%のα-Fe粉末をブレンドした、Nd=13.5at%の合金粉末を使用して合成した熱間変形Nd13.5Fe80Ga0.5B6/α-Fe[91.7重量%/8.3重量%]磁石のXRDパターンを示している。
【図23C】市販の焼結Nd-Fe-B磁石;の異方性バルク磁石のXRDパターンを示している。
【図24】ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石のBrおよびMHcに及ぼすα-Fe含量の影響を示している。
【図25】ナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石の(BH)maxに及ぼすα-Fe含量の影響を示している。
【図26】Nd12.5Dy1.5Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe[87.1重量%/12.9重量%]磁石の減磁曲線である。
【図27】コンポジットNd12.5Dy1.5Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe[87.1重量%/12.9重量%]磁石のBrMHcに及ぼすα-Fe含量の影響を示している。
【図28】コンポジットNd12.5Dy1.5Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe[87.1重量%/12.9重量%]磁石の(BH)maxに及ぼすα-Fe含量の影響を示している。
【図29】コンポジットNd-Fe-B/Fe-Co磁石を製造する際に使用されるFe-Co粉末のSEM写真である。
【図30】(BH)max=48MGOeのNd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石のSEM後方散乱電子像である。
【図31】Nd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石のSEM写真である。
【図32】Fe-Co相を示している、Nd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石のSEM後方散乱電子像である。
【図33A】Nd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石に対する異なったゾーンのSEM/EDS分析の結果を示している。
【図33B】Nd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石に対する異なったゾーンのSEM/EDS分析の結果を示している。
【図33C】Nd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石に対する異なったゾーンのSEM/EDS分析の結果を示している。
【図33D】Nd13.5Fe80Ga0.5B6/Fe-Co[95重量%/5重量%]磁石に対する異なったゾーンのSEM/EDS分析の結果を示している。
【図34】異方性Nd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co[97重量%/3重量%]磁石の減磁曲線である。
【図35】コンポジットNd-Fe-B/Fe-Co磁石のBrMHcに及ぼすFe-Co含量の影響を示している。
【図36】ナノコンポジットNd-Fe-B/Fe-Co磁石の(BH)maxに及ぼすFe-Co含量の影響を示している。
【図37A】コンポジット磁石における磁化の逆転とハード/ソフト界面の交換カップリングを示している。
【図37B】コンポジット磁石における磁化の逆転とハード/ソフト界面の交換カップリングを示している。
【図37C】コンポジット磁石における磁化の逆転とハード/ソフト界面の交換カップリングを示している。
【図37D】コンポジット磁石における磁化の逆転とハード/ソフト界面の交換カップリングを示している。
【図38】ハード/ソフトコンポジット磁石の減磁に及ぼすソフト相のサイズの影響を概略的に示した図である。
【図39A】コンポジット磁石の減磁に及ぼすハード粒子とソフト相のサイズの影響を示すグラフである。
【図39B】コンポジット磁石の減磁に及ぼすハード粒子とソフト相のサイズの影響を示すグラフである。
【図39C】コンポジット磁石の減磁に及ぼすハード粒子とソフト相のサイズの影響を示すグラフである。
【図39D】コンポジット磁石の減磁に及ぼすハード粒子とソフト相のサイズの影響を示すグラフである。
【図40】本発明の第3の方法のプロセシングフローチャートである。
【図41】α-Fe層またはFe-Co層で被覆された、多くのナノ粒子(nanograins)を含有する粒子(a particle)の概略図である。
【図42】Fe-Co-Vターゲットを使用してRFスパッタリングを8時間行った後の、Nd13.5Fe80Ga0.5B6粒子のSEM写真とSEM/EDS分析の結果を示している。
【図43】RFスパッタリングを3時間行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線である。
【図44】DCスパッタリングを8時間行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線である。
【図45】DCスパッタリングを21時間行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線である。
【図46】DCスパッタリングを21時間行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線である。
【図47】パルスレーザー堆積を6時間行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線である。
【図48】FeSO4-CoSO4-NaH2PO2-Na3C6H5O7溶液中にて室温で1時間化学コーティングを行った後の、Nd14Fe79.5Ga0.5B6のSEM写真とSEM/EDS分析結果を示している。
【図49】FeSO4-CoSO4-NaH2PO2-Na3C6H5O7溶液中にて15分化学コーティングを行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co磁石の減磁曲線である。
【図50】FeSO4-CoSO4-NaH2PO2-Na3C6H5O7溶液中にて1時間化学コーティングを行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co磁石の減磁曲線である。
【図51】FeCl2-CoCl2-NaH2PO2-Na3C6H5O7溶液中にて50℃で2時間化学コーティングを行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co磁石の減磁曲線である。
【図52】FeCl2-CoCl2-NaH2PO2-Na3C6H5O7溶液中にて1時間化学コーティングを行った後に製造したナノコンポジットNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co磁石の減磁曲線である。
【図53】電気コーティングに対して使用することができる装置の概略図である。
【図54】FeCl2-CoCl2-MnCl2-H3BO3溶液中にて室温で0.5時間電気コーティングを行った後のNd14Fe79.5Ga0.5B6のSEM写真である。
【図55】FeCl2-CoCl2-MnCl2-H3BO3溶液中にて室温で0.5時間、2ボルト-1アンペアで電気コーティングを行った後に製造したNd14Fe79.5Ga0.5B6/Fe-Co-V磁石の減磁曲線である。
【図56】非水性のLiClO4-NaCl-FeCl2溶液中にて室温で1.5時間、60ボルト-0.4アンペアで電気コーティングを行った後に製造したNd14Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe磁石の減磁曲線である。
【図57】FeCl2-CoCl2-MnCl2-H3BO3溶液中にて室温で0.5時間、3ボルト-2アンペアで電気コーティングを行った後に製造したNd14Fe79.5Ga0.5B6/α-Fe磁石のSEM写真である。
【図58】理論(BH)max対Nd含量の関係、および非平衡(準安定)状態下におけるコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石中のNd範囲を示している。
【図59】本発明の第4の方法のプロセシングフローチャートを示している。
【図60】第4の方法を使用して製造したナノコンポジット磁石中のソフト相の容量%を示している。
【図61】第4の方法を使用してナノコンポジット磁石を合成するためのプロセスの概略図である。
【図62】第4の方法を使用して製造したナノコンポジットNd2Fe14B/α-De磁石とナノコンポジットNd2Fe14B/Fe-Co磁石の理論(BH)max対t/D比の関係を示している。
【図63】異方性磁石を合成する第4の方法の間の関係を示している。
【図64】圧縮工程の概略図である。
【図65】ダイ・アップセッティングの概略図である。
【図66】熱間圧延の概略図である。
【図67】熱間押出の概略図である。
【図68】第1の方法を使用して製造したナノコンポジットNd-Fe-B/α-Fe磁石の微細構造を示している。
【図69】Fe-Co粒子の破断面のSEM写真であり、ナノ粒子が示されている。
【図70】第4の方法を使用して合成したナノコンポジット磁石に対する微細構造の概略図である。
【図71】本発明の第4の方法を使用して合成した異方性ナノコンポジット磁石の構造特性の関係を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の磁気的にハードな相と少なくとも1種の磁気的にソフトな相を含み、前記少なくとも1種の磁気的にハードな相が、少なくとも1種の希土類遷移金属化合物を含み、原子百分率にて規定される磁気的にハードな相の組成がRxT100-x-yMy(式中、Rは、希土類、イットリウム、スカンジウム、またはこれらの組み合わせ物から選択され;Tは1種以上の遷移金属から選択され;Mは、第IIIA族元素、第IVA族元素、第VA族元素、またはこれらの組み合わせ物から選択され;xは、対応する希土類遷移金属化合物におけるRの化学量論量より大きく;yは0〜約25である)であり、少なくとも1種の磁気的にソフトな相が、Fe、Co、またはNiを含有する少なくとも1種の軟磁性材料を含む、異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項2】
少なくとも1種の希土類遷移金属化合物が、1:5、1:7、2:17、2:14:1、もしくは1:12から選択されるR:TまたはR:T:Mの原子比を有する、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項3】
希土類が、Nd、Sm、Pr、Dy、La、Ce、Gd、Tb、Ho、Er、Eu、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタル、またはこれらの組み合わせ物から選択される、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項4】
希土類遷移金属化合物が、Nd2Fe14B、Pr2Fe14B、PrCo5、SmCo5、SmCo7、またはSm2Co17から選択される、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項5】
Tが、Fe、Co、Ni、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Cu、Zn、Cd、またはこれらの組み合わせ物から選択される、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項6】
Mが、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、またはこれらの組み合わせ物から選択される、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項7】
少なくとも1種の軟磁性材料が、α-Fe;Fe-Co;Fe-B;Fe、Co、もしくはNiを含有する合金;またはこれらの組み合わせ物;から選択される、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項8】
磁気的にソフトな相が磁気的にハードな相のマトリックス中に分散されている、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項9】
異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石中の磁気的にソフトな相の分率が約0.5容量%〜約80容量%である、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項10】
少なくとも1種の磁気的にソフトな相が約2ナノメートル〜約100ナノメートルの寸法を有する、請求項8に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項11】
磁気的にソフトな相が、磁気的にハードな相のマトリックス中に層として分散されている、請求項8に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項12】
層の厚さが約2ナノメートル〜約20マイクロメートルである、請求項9に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項13】
磁気的にハードな粒子が磁気的にソフトな相のマトリックス中に分散されている、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項14】
異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石が約1nm〜約1000nmの範囲の平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項15】
異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石が化学的に非平衡の状態をとっている、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項16】
異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石が希土類高含量相と磁気的にソフトな相を含有する、請求項15に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項17】
固有保磁力が約5kOeより大きい、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項18】
残留磁気が約10kGより大きい、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項19】
最大エネルギー積が約15MGOeより大きい、請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項20】
請求項1に記載の異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石を粉砕することによって製造される異方性ナノコンポジット希土類永久磁石粉末。
【請求項21】
請求項20に記載の異方性ナノコンポジット希土類永久磁石粉末に結合剤を加え、異方性ナノコンポジット希土類永久磁石粉末と結合剤を磁場中にて圧縮することによって製造される、結合された異方性ナノコンポジット希土類永久磁石。
【請求項22】
少なくとも1種の磁気的にハードな相と少なくとも1種の磁気的にソフトな相を含み、前記少なくとも1種の磁気的にハードな相が、少なくとも1種の希土類遷移金属化合物を含み、原子百分率にて規定される磁気的にハードな相の組成がRxT100-x-yMy(式中、Rは、希土類、イットリウム、スカンジウム、またはこれらの組み合わせ物から選択され;Tは1種以上の遷移金属から選択され;Mは、第IIIA族元素、第IVA族元素、第VA族元素、またはこれらの組み合わせ物から選択され;xは、対応する希土類遷移金属化合物におけるRの化学量論量より大きく;yは0〜約25である)であり、少なくとも1種の磁気的にソフトな相が、Fe、Co、またはNiを含有する少なくとも1種の軟磁性材料を含んだ異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石の製造方法であって、
対応する希土類遷移金属化合物における化学量論量より多い量の有効希土類含量を有する少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末を供給すること;
対応する希土類遷移金属化合物における化学量論量より少ない量の有効希土類含量を有する希土類遷移金属合金;軟磁性材料;またはこれらの組み合わせ物;から選択される少なくとも1種の粉末材料を供給すること;
少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末と少なくとも1種の粉末材料をブレンドすること;および
ブレンドされた少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末と少なくとも1種の粉末材料を圧縮して、等方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石を形成させること;あるいは等方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石、またはブレンドされた少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末と少なくとも1種の粉末材料を熱間変形して、異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石を形成させること;から選択される少なくとも1つの操作を行うこと;
を含む前記製造方法。
【請求項23】
希土類遷移金属合金粉末が、急速凝固法、機械的合金化法、または機械的微粉砕法から選択される方法を使用して製造される、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
希土類遷移金属合金粉末の粒径が約1マイクロメートル〜約1000マイクロメートルである、請求項22に記載の製造方法。
【請求項25】
少なくとも1種の粉末材料が少なくとも1種の軟磁性材料である、請求項22に記載の製造方法。
【請求項26】
軟磁性材料が、α-Fe;Fe-Co;Fe-B;Fe、Co、もしくはNiを含有する合金;またはこれらの組み合わせ物;から選択される、請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
軟磁性材料の粒径が約10ナノメートル〜約100マイクロメートルであり、粒子サイズが約1000ナノメートル未満である、請求項25に記載の製造方法。
【請求項28】
少なくとも1種の磁気的にハードな相と少なくとも1種の磁気的にソフトな相を含み、前記少なくとも1種の磁気的にハードな相が、少なくとも1種の希土類遷移金属化合物を含み、原子百分率にて規定される磁気的にハードな相の組成がRxT100-x-yMy(式中、Rは、希土類、イットリウム、スカンジウム、またはこれらの組み合わせ物から選択され;Tは1種以上の遷移金属から選択され;Mは、第IIIA族元素、第IVA族元素、第VA族元素、またはこれらの組み合わせ物から選択され;xは、対応する希土類遷移金属化合物におけるRの化学量論量より大きく;yは0〜約25である)であり、少なくとも1種の磁気的にソフトな相が、Fe、Co、またはNiを含有する少なくとも1種の軟磁性材料を含んだ異方性バルクナノコンポジット希土類永久磁石の製造方法であって、
対応する希土類遷移金属化合物における化学量論量より少ない量の有効希土類含量を有する少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末を供給すること;
少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末を少なくとも1種の軟磁性材料で被覆すること;および
被覆された少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末を圧縮すること;あるいは圧縮・被覆された少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末、または被覆された少なくとも1種の希土類遷移金属合金粉末を熱間変形すること;から選択される少なくとも1つの操作を行うこと;
を含む前記製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32】
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【図33A】
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【図33B】
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【図33C】
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【図33D】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37A】
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【図37B】
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【図37C】
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【図37D】
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【図38】
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【図39A】
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【図39B】
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【図39C】
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【図39D】
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【図40】
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【図41】
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【図42A】
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【図42B】
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【図42C】
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【図42D】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48A】
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【図48B】
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【図48C】
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【図48D】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54A】
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【図54B】
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【図54C】
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【図54D】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68A】
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【図68B】
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【図68C】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【公表番号】特表2008−505500(P2008−505500A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519474(P2007−519474)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/023489
【国際公開番号】WO2006/004998
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(591042768)ユニバーシティ・オブ・デイトン (11)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF DAYTON
【Fターム(参考)】