説明

異方性導電接着フィルム

【課題】厳しい熱環境下でも高い接続信頼性を有する異方性導電接着フィルムを提供する。
【解決手段】導電粒子が絶縁性接着剤の表面層に単層として配置されて導電層を形成し、該導電層の少なくとも片側に、絶縁性接着剤からなる絶縁層を有してなる、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方性導電接着フィルムにおいて、(1)導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下、かつ、導電粒子の平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下であり、その変動係数が、0.025以上0.5以下であり、(2)絶縁性接着剤中に絶縁性繊維を、絶縁性接着剤を100体積%としたときに50体積%以下の範囲で含有し、(3)該絶縁性繊維を含有する絶縁性接着剤を硬化させた後の、25℃における内部応力が10MPa以下であり、(4)導電粒子の平均粒径が1μm以上6μm未満であることを特徴とする異方性導電接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンの電気的接続において、接続不良を起こしたり、絶縁不良を起こしたり、電極間がショートしたりすることなく、厳しい熱環境下でも高い接続信頼性を有する異方性導電接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電接着フィルムは、接着剤中に導電性粒子を分散させたフィルムであり、液晶ディスプレイとTCP又はFPCとTCPとの接続、FPCとプリント配線板との接続を簡便に行うために使用される接続部材で、例えば、テレビや携帯電話の液晶画面と制御ICとの接続用として、広範に用いられている(特許文献1、2、3)。
この分野では近年、接続される配線パターンや電極パターンの寸法が益々微細化されている。接続される電極パターンの寸法が小さくなると、導電粒子がランダムに分散配置されている異方性導電接着フィルムでは、導電粒子の分布に偏差が生じて、接続すべきパターンが導電粒子の存在しない位置に配置されてしまい、電気的に接続されない場合が、確率論として避けられない。
【0003】
この問題点を解決するためには、より小さな導電粒子を高密度でフィルム内に分散させることが有効であるが、導電粒子の寸法を小さくすると、表面積が急激に大きくなって2次凝集し易くなり、隣接電極間の絶縁を保持できなくなり、逆に、絶縁を保持するために導電粒子の密度を下げると、今度は、接続されない配線パターンや電極パターンが発生してしまうため、接続信頼性を保ったまま微細化に対応することは困難とされていた(特許文献4)。
さらに、絶縁性接着剤にエポキシ樹脂を用いる場合には、エポキシ樹脂が硬化時に内部に抱き込む硬化応力によるクラックが問題となる場合がある。すなわち、硬化収縮に伴い樹脂が内部応力を抱き込んだままで、接続部が熱衝撃などを受けると、そこからクラックが発生、さらには、侵入した水分が結露したり、腐食の原因となったり、イオンマイグレーションを起こしたり、クラックの発生により応力集中が移動して新たなクラックの原因となったり、さまざまな不具合を起こしてしまう。そのため、それに対する対応策が求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開平03−107888号公報
【特許文献2】特開平04−366630号公報
【特許文献3】特開昭61−195179号公報
【特許文献4】特開平09−312176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微細パターンの電気的接続において、接続不良を起こしたり、絶縁不良を起こしたり、電極間がショートしたりすることなく、厳しい熱環境下でも高い接続信頼性を有する異方性導電接着フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、まず、接続信頼性を保ったまま微細化に対応する課題に対しては、粒子間距離が特定の平均値と特定の標準偏差を有する様に、導電粒子を絶縁性接着剤の表面層に単層として配置する事で、上記目的に適合しうることを見出し、本発明の骨格をなした。
さらに、絶縁性接着剤に絶縁性繊維状物を混合することで、内部応力を吸収し、高い接続信頼性を維持できることが判り、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
1.導電粒子が絶縁性接着剤の表面層に単層として配置されて導電層を形成し、該導電層の少なくとも片側に、絶縁性接着剤からなる絶縁層を有してなる、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方性導電接着フィルムにおいて、
(1)導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下、かつ、導電粒子の平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下であり、その変動係数が、0.025以上0.5以下であり、
(2)絶縁性接着剤中に絶縁性繊維を、絶縁性接着剤を100体積%としたときに50体積%以下の範囲で含有し、
(3)該絶縁性繊維を含有する絶縁性接着剤を硬化させた後の、25℃における内部応力が10Pa以下であり、
(4)導電粒子径の平均粒径が1μm以上6μm未満であることを特徴とする異方性導電接着フィルムに係わる。
2.該異方性導電接着フィルムの膜厚が、5μm以上50μm以下である上記1記載の異方性導電接着フィルムに係わる。
3.該導電層が、絶縁性粒子を含み、絶縁性粒子の平均粒径が導電粒子の平均粒径よりも小さいことを特徴とする上記1あるいは2に記載の異方性導電接着フィルムに係わる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の異方性導電接着フィルムは、微細パターンの電気的接続において、高アスペクト比電極であっても、電極の接着性に優れ、接続不良を起こしたり、絶縁不良を起こしたり、電極間がショートしたりすることなく、高い接続信頼性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明は、導電粒子が絶縁性接着剤に分散し、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方性導電接着フィルムに関する。
本発明の異方性導電接着フィルムは、絶縁性接着剤の表面層に導電粒子が単層として配置されて導電層が形成されている。
ここで表面層に配置するとは、導電粒子の一部または全体が絶縁性接着剤の表面に埋め込まれている状態を意味し、全体が埋め込まれている状態が、電極への接着性が高く好ましい。導電粒子の一部が埋め込まれている場合、導電粒子はその平均粒径に対して1/3以上が絶縁性接着剤に埋め込まれていることで絶縁性接着剤からの脱離が起こりにくくなり好ましい。更に好ましくは1/2以上埋め込まれていることであり、更に好ましくは2/3以上埋め込まれていることであり、更に好ましくは4/5以上埋め込まれていることであり、更に好ましくは9/10以上埋め込まれていることである。一方、導電粒子が絶縁性接着剤層に完全に埋め込まれている場合、導電粒子と絶縁性接着剤の表面との間の絶縁性接着剤の厚みは、導電性を得るための加圧の際に導電粒子の移動を抑えるために、導電粒子の平均粒径に対して1.0倍未満が好ましい。更に好ましくは0.8倍未満、更に好ましくは0.5倍未満、更に好ましくは0.3倍未満、更に好ましくは0.1倍未満である。
【0010】
本発明では、厚み方向の導電性と面方向の絶縁性(以下しばしば異方性導電性と称す)を高レベルで確保するために、絶縁性接着剤層に導電粒子は単層で配置される。ここで単層で配置されるとは、導電粒子の存在する接着剤層の厚みが導電粒子の平均粒径に対して2倍未満であることを意味する。好ましくは1倍以上1.8倍未満、更に好ましくは1倍以上1.5倍未満、更に好ましくは1倍以上1.3倍未満である。本発明では、導電粒子が絶縁性接着剤の表面層に単層として存在することにより、特に、半導体チップと液晶パネルの接続の様に、接続する電極高さが高いものとほぼ平らなものとの接続において、配列した導電粒子が接続時に大きく移動してしまう事を抑制することが可能となっている。
【0011】
本発明の異方性導電接着フィルムは、導電粒子が特定の中心間距離で、更にその中心間距離が特定の変動係数を有して配列されることによって、高い異方性導電性を有している。即ち、本発明の異方性導電接着フィルムは、その導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下であり、かつ、導電粒子の平均粒径の1.5倍以上5倍以下である。2μm以上の中心間距離でかつ導電粒子の平均粒径の1.5倍以上にすることで、面方向の絶縁性、即ち、隣接する電極間の絶縁性を高レベルで維持できる。一方、中心間距離を20μm以下でかつ導電粒子の平均粒径の5倍以下にすることで、厚さ方向の導電性、即ち接続電極間の電気的接続性を維持できる導電粒子密度を得ることができ、異方性導電接着フィルムとして高い性能を発揮する。導電粒子の中心間距離の平均は、好ましくは2.5μm以上18μm以下、更に好ましくは3μm以上16μm以下、更に好ましくは3.5μm以上15μm以下であり、更に好ましくは4μm以上13μm以下であり、導電粒子の平均粒径に対して、好ましくは1.55倍以上4.5倍以下、更に好ましくは1.6倍以上4倍以下、更に好ましくは1.65倍以上3.5倍以下である。導電粒子の中心間距離の変動係数は、導電粒子の中心間距離の標準偏差をその平均値で割った値であり、本発明においては、0.025以上0.5以下である。好ましくは0.05以上0.45以下、更に好ましくは0.07以上0.4以下、更に好ましくは0.08以上0.35以下、更に好ましくは0.1以上0.3以下である。0.025以上にすることで、異なる電極パターンの半導体チップであっても安定した接続が可能であり、一方、0.5以下とすることで、接続電極間に補足される導電粒子数が安定し、電極ごとの接続抵抗のバラツキが小さく、安定した接続が得られる。
【0012】
本発明の異方性導電接着剤において、導電粒子を絶縁性接着剤の表面層に単層として配列させるには、例えば下記の様な方法がある。
即ち、まず延伸可能なフィルム上に粘着剤を塗布し、その上に導電粒子を密に充填する。次に、粘着剤層に届かず、他の導電粒子の上に乗った導電粒子を排除する事で、密に充填された単層の導電粒子層が得られる。ここで得られた導電粒子層の乗ったフィルムを、所望の延伸倍率で延伸することで、個々の導電粒子が、本発明に必要な標準偏差をもって、所望の中心間距離となる様に配置される。次に、延伸したフィルムの導電粒子が配置された側に、絶縁性接着剤層を重ね、絶縁性接着剤層に導電粒子を埋め込むことで、本発明の異方性導電接着フィルムが得られる。一般に異方性導電接着フィルムは、所望の幅にスリットされ、リール状に巻き取られる。
延伸可能なフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、PEN等のポリエステル、ナイロン、塩化ビニール、ポリビニルアルコール等のフィルムが例示される。粘着剤としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル、クロロプレン等が例示される。好ましいフィルム用の樹脂としては、ポリプロピレン、PETが挙げられ、好ましい粘着剤としては、アクリル樹脂系粘着剤が挙げられる。
【0013】
延伸は縦方向延伸と横方向延伸の両方が行われる、所謂、2軸延伸であり、公知の方法で実施することができる。例えば、クリップ等でフィルムの2辺または4辺を挟んで引っ張る方法や、2以上のロールで挟んでロールの回転速度を変えることで延伸する方法等が挙げられる。延伸は縦方向と横方向を同時に延伸する同時二軸延伸でもしても良いし、一方向を延伸した後、他方を延伸する逐次ニ軸延伸でも良い。延伸時の導電粒子の配列乱れを起こし難いので同時ニ軸延伸が好ましい。延伸を精度良く行うために、延伸可能なフィルムを軟化させて行うのが好ましく、使用する延伸可能なフィルムによるが、例えば、70℃以上250℃以下で延伸を行うのが好ましい。
延伸したフィルムの導電粒子が配置された側に、絶縁性接着剤層を重ね、絶縁性接着剤層に導電粒子を埋め込む方法としては、例えば、絶縁性接着剤と溶剤を含む塗工液を、延伸したフィルムの導電粒子が配置された側に、所望の膜厚になる様に塗工し、溶剤を飛散させて乾燥する方法や、セパレーター上に形成されたフィルム状の絶縁性接着剤を、延伸したフィルムの導電粒子が配置された側に、ラミネーター等を用いてラミネートし、ローラー等を用いたて絶縁性接着剤層に導電粒子を埋め込む方法等が挙げられる。必要に応じ延伸したフィルムを剥離した後、本発明の異方性導電接着フィルムはスリットされる。
【0014】
本発明の重要な要件の一つは、絶縁性接着剤が絶縁性繊維を含有することである。該絶縁性繊維は、該接着剤の強度を増すことで、基板との熱膨張率の差に由来する応力や剥離を防止する効果が期待できて好ましく、不織布でも織布でも、絶縁性を有するならば使用することができ、例えば、ガラス、セラミック、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素などの無機物の繊維状物、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ケブラー、シリコーンカーバイドなどの有機物の繊維状物などが例示される。これらの繊維は、そのうちの一種類用いても良いし、また、複数種類用いても良い。
【0015】
該絶縁性繊維の長さは、電極間距離よりも平均繊維長が長い繊維が好ましく、太さは、単繊維の直径が上記導電層の層厚みよりも小さいものが好ましい。
該絶縁性繊維は、一本一本が絶縁性接着剤中に分散している状態でも好ましいし、繊維同士がネットワーク状に絡み合っている状態も好ましい。
このような繊維が分散している状態、あるいはネットワーク状に絡まった状態で存在する絶縁性接着剤の製造方法に関しては、樹脂組成物の一般的な製造方法に拠ればよく、該絶縁性接着剤に絶縁性繊維を混合して押出し機などで混練してもよいし、適切なミキサーを用いて充分に攪拌してもよいし、該絶縁性接着剤を適当な溶剤に溶かしたうえで絶縁性繊維を攪拌混合してもよいし、該絶縁繊維が絡み合った状態のものを型枠などに入れておき、そこに融点以上に加熱したり溶剤などを用いたりして流動化させた絶縁性接着剤を流し込む方法でも製造することができる。
【0016】
該絶縁繊維の含有量は、絶縁性接着剤を100体積%としたときに、上限は50体積%以下であることが好ましく、さらに好ましくは45体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下であり、下限は、一般的には0.01体積%以上である場合が多い。内部応力を緩和する効果が最も効果的に現れる含有率は、用いる絶縁繊維によって異なるが、およそ30体積%である場合が多い。50体積%を上回る割合で絶縁繊維を含有すると、内部応力を緩和する効果が期待できない場合があり好ましくない。
このように絶縁性繊維を含有することで低下させた内部応力の値としては、10Mpa以下であることが好ましく、更に好ましくは8MPa以下、更に好ましくは6MPa以下で、この値は低いほど良い。10MPaを上回る内部応力を抱き込んだ絶縁性接着剤は、熱履歴を受け易い使用や長期間の使用に際して、微小なクラックが入り易く、そこから、湿度やほこりなどが侵入し、絶縁不良や同通不良、絶縁破壊などの不具合を生じさせるため好ましくない。
【0017】
内部応力は、実施例の項で説明するように、JIS−K−7162記載の方法に従って、絶縁性接着剤を所定の条件で硬化させた後の、引張弾性率、線膨張係数、ガラス転移点温度と測定温度との温度差の積として導出される。
内部応力を低下あるいは緩和する方法は、既に示したように繊維状補強剤を用いる方法のほかにも、従来知られている方法を用いることができ、これらの方法は、本発明の効果をさらに高める目的で、繊維状補強剤と併用することも好ましい。
例えば、内部応力は硬化時の収縮が原因で起こるため、硬化時に膨張する樹脂を混合することは有効であり、そのための樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をγ−ブチロラクトンと反応させたスピロオルトエステル化ビスフェノールA型樹脂のようなスピロ構造を持つ樹脂などが例示される。
【0018】
本発明では、異方性導電接着フィルムは絶縁性接着剤の中に導電粒子を含有するものであり、そのために絶縁性接着剤の内部応力の測定が難しくなったり、測定値がばらついて再現性が得られなかったりする場合が懸念される。そのため、本発明では、該接着フィルムと同じ組成で、導電粒子を除いた、接続時と同じ条件で硬化させたときの該フィルムの内部応力を以って、該接着フィルムの内部応力の値とする。
本発明に用いられる導電粒子としては、金属粒子、炭素からなる粒子や高分子核材に金属薄膜を被覆した粒子等を用いる事ができる。
金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、半田、インジウム、パラジウム等の単体や、2種以上のこれらの金属が層状あるいは傾斜状に組み合わされている粒子が例示される。好ましい金属粒子としては、ニッケル粒子、銀/銅傾斜粒子などが挙げられる。
【0019】
高分子核材に金属薄膜を被覆した粒子としては、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン架橋体、NBR、SBR等のポリマーの中から1種あるいは2種以上組み合わせた高分子核材に、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、半田、インジウム、パラジウム等の中から1種あるいは2種以上組み合わせてメッキ等により金属被覆した粒子が例示される。金属薄膜の厚さは0.005μm以上1μm以下の範囲が、接続安定性と粒子の凝集性の観点から好ましい。金属薄膜は均一に被覆されていることが接続安定性上好ましい。これら導電粒子の表面を更に絶縁被覆した粒子も使用することができる。所定の粒子径のポリスチレン樹脂に金やニッケルを被覆した粒子などが好ましく例示される。
導電粒子の平均粒子径は、上限は10μm未満、好ましくは8μm未満、更に好ましくは6μm未満、更に好ましくは5μm未満であり、下限は0.5μm以上、好ましくは0.7μm以上、更に好ましくは1μm以上、更に好ましくは1.5μm以上である。導電粒子の粒子径分布の標準偏差は平均粒子径の50%以下が好ましい。
【0020】
本発明に用いられる絶縁性接着剤は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から選ばれた1種類以上の樹脂を含有する。これらの樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、SBR、SBS、NBR、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルオキシド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、スチレンブタジエン樹脂、カルボキシル変性ニトリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等又はそれらの変性樹脂が挙げられる。特に基板との接着性を必要とする場合には、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
ここで用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エーテル型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環族エポキサイド等があり、これらエポキシ樹脂はハロゲン化や水素添加されていても良く、また、ウレタン変性、ゴム変性、シリコーン変性等の変性されたエポキシ樹脂でも良い。
【0021】
本発明の異方性導電接着フィルムは、上記導電層の少なくとも片側に絶縁層を有することが特徴である。
絶縁層は、絶縁性接着剤からなり、該絶縁性接着剤は、上記に示した導電層の絶縁性接着剤の中から適宜選ばれる。
該絶縁層の製作方法としては、上記導電層の少なくとも片側にラミネート等の方法により接着させても良いし、上記導電層は、導電粒子が絶縁性接着剤の表面層に単層で配置されているため、該絶縁性接着剤の表面層より内側の部分は絶縁層になっており、これを以って絶縁層としても良い。
さらに、該導電層と該絶縁層の繰り返しを何層かに渡って積層しても良いし、導電層と絶縁層の中間に、例えば、熱可塑性樹脂などからなる中間層を有していても良い。
該絶縁層には、絶縁性粒子、無機微粒子などを適宜含有することができる。絶縁性粒子は隣接電極間の絶縁性向上や接続電極のギャップ調整の効果が期待できて好ましく、例えば無機系材料ならば、マイカ粉末、シリカまたは石英粉末、炭酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、ガラス粉末等が例示され、有機系材料であるならば、パルプ粉末、ナイロン粉末、テトロン粉末、あるいは、ベンゾグアナミン粒子などが例示される。絶縁性粒子は、平均粒径が導電粒子よりも小さく、また、硬度が導電粒子よりも固い粒子が好ましい。
【0022】
無機微粒子も、該絶縁層の強度を増すことで、基板との熱膨張率の差に由来する応力や剥離を防止する効果が期待できて好ましく、例えば、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、砂、タルク、金属粉末、エロジール等の微粒子が挙げられる。
本発明で開示する異方性導電接着フィルムは保護フィルムを有する場合がほとんどで、該保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、PEN等のポリエステル、ナイロン、塩化ビニール、ポリビニルアルコール等のフィルムが例示される。好ましい保護フィルム用の樹脂としては、ポリプロピレン、PETが挙げられる。
該絶縁性接着剤は、接続に際して加熱されたり、それと基板等の熱伝導率の差により、応力がかかったり、剥離が生じたりする場合があるため、具備しておくことが好ましい物性がいくつか例示される。代表的な物性としては、例えば、該絶縁性接着剤が明瞭な融点を持つ場合には、その融点は一般的に25℃以上250℃以下が好ましく、JIS−K−6887記載の方法で測定した引張り強さは一般的に0.3kgf/mm以上10kgf/mm以下が好ましく、伸びは一般的に0%以上300%以下であることが好ましい。
【0023】
前記エポキシ樹脂の硬化剤としては、潜在性硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤としては、ホウ素化合物、ヒドラジド、3級アミン、イミダゾール、ジシアンジアミド、無機酸、カルボン酸無水物、チオール、イソシアネート、ホウ素錯塩及びそれらの誘導体等の硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤の中でも、マイクロカプセル型の硬化剤が好ましい。マイクロカプセル型硬化剤は、前記硬化剤の表面を樹脂皮膜等で安定化したもので、接続作業時の温度や圧力で樹脂皮膜が破壊され、硬化剤がマイクロカプセル外に拡散し、エポキシ樹脂と反応する。マイクロカプセル型潜在性硬化剤の中でも、アミンアダクト、イミダゾールアダクト等のアダクト型硬化剤をマイクロカプセル化した潜在性硬化剤が安定性と硬化性のバランスに優れ好ましい。これらエポキシ樹脂の硬化剤は一般に、エポキシ樹脂100質量部に対して、2〜100質量部の量で用いられる。
本発明に用いられる絶縁性接着剤は、フィルム形成性、接着性、硬化時の応力緩和製等を付与する目的で、フェノキ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルゴム、SBR、NBR、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、尿素樹脂、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、カルボキシル基、ヒドロシキシル基、ビニル基、アミノ基などの官能基を含有するゴム、エラストマー類等の高分子成分を含有することが好ましい。これら高分子成分は分子量が10000〜10,000,000のものが好ましい。高分子成分の含有量は、絶縁性接着剤に対して2〜80質量%が好ましい。
【0024】
絶縁性接着剤には、さらに、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を含有することもできる。充填剤を含有する場合、充填剤の最大径は導電粒子平均粒径未満である事が好ましい。カップリング剤としてはケチミン基、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有シランカップリング剤が、接着性の向上の点から好ましい。
絶縁性接着剤の各成分を混合する場合、必要に応じ、溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられる。
絶縁性接着剤は単一組成であっても構わないし、異なる組成の接着剤が2層以上積層されていても構わない。単一組成のほうが、内部応力の蓄積がなく好ましい。
絶縁性接着剤の製造は、例えば、各成分を溶剤中で混合、塗工液を作成し、基材上にアプリケーター塗装等により塗工、オーブン中で溶剤を揮散させる事で製造できる。
【0025】
本発明の異方性導電接着フィルムの厚みは、5μm以上50μm以下が好ましく、更に好ましくは6μm以上35μm以下、更に好ましくは7μm以上25μm以下、更に好ましくは8μm以上20μm以下である。
異方性導電接着フィルムは保護フィルムを有していてもよい。該保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、PEN等のポリエステル、ナイロン、塩化ビニール、ポリビニルアルコール等のフィルムが例示される。好ましい保護フィルム用の樹脂としては、ポリプロピレン、PETが挙げられる。該保護フィルムはフッ素処理、Si処理、アルキド処理等の表面処理を行っていることが好ましい。
このようにして製造された本発明の異方性導電接着フィルムは、線幅10μクラスのファインピッチ接続用に好適に用いることができ、液晶ディスプレイとTCP、TCPとFPC、FPCとプリント配線基板との接続、あるいは、半導体シリコンチップを直接基板に実装するフリップチップ実装に好適に用いることができる。
【実施例】
【0026】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
<内部応力の測定>
引張弾性率は、全自動プラスチック引張曲げ試験機(島津製作所(株)製 AGS−J)を用いて、引張速度5mm/min、標線間距離50.8mmで、ASTM−D638に準拠して測定した。
線膨張率は、ASTM−D696に準拠して、幅5mm、長さ50mm、厚み3mmの試験片で、石英管式膨張計を用いて測定した。
ガラス転移点温度は、示差熱分析計(島津製作所(株) DTA−50)を用いて行った。
内部応力の計算は、下記式にて計算した。
P = ε × E
ε = Δt × α
Δt = Tg − t
P : 内部応力 (MPa)
Tg : ガラス転移点温度 (℃)
t : 測定温度 (℃)
α : 線膨張率 (m/m・℃)
E : 引張弾性率 (MPa)
【0027】
<熱衝撃試験>
−55℃〜125℃、1000サイクルの熱衝撃試験(JIS−C−0025準拠)を行い評価した。
<PCT試験>
121℃、2atm、200時間のPCT試験(JIS−C−0096準拠)を行い評価した。
<ハンダ耐熱試験>
260℃ハンダ浴、10秒浸漬の試験(JIS−C−7021準拠)を行い評価した。
【0028】
[実施例1]
フェノキシ樹脂(E1256;ジャパンエポキシレジン社製)100質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:AER2603)50質量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3941HP)50質量部、酢酸エチル200質量部を混合し、この混合物100体積%に対して、さらにガラス繊維(平均繊維長100μm、直径 2μm)1体積%を混合して接着剤ワニスを得た。この接着剤ワニスを離型処理した厚さ50μmのPETフィルム製セパレーター上にブレードコーターを用いて塗布、溶剤を乾燥除去して、平均膜厚20μmのフィルム状の絶縁性接着剤Aを得た。
該絶縁性接着剤Aを190℃、1分の条件で硬化させた試験片の内部応力は6MPaであった。
【0029】
厚さ250μm無延伸ポリプロピレンフィルム上に、アクリル系の粘着剤を塗布、乾燥し、2μmの粘着剤層を有するフィルムを得た。このフィルム上に、平均粒径5μmのNi導電粒子を密に配置した後、エアーブローにより粘着剤層に到達していない導電粒子を排除した。次にこの導電粒子が付着したフィルムを、試験ニ軸延伸装置を用いて、150℃で、縦横共に3%/秒の比率で2倍延伸し、導電粒子が配列したフィルムを得た。この導電粒子が配列したフィルムの導電粒子側にセパレーターに付着した絶縁性接着剤Aをラミネートした後、ローラーを用いて、導電粒子を絶縁性接着剤の表面層に埋め込み固定させて異方性導電接着フィルムaを得た。
得られた異方性導電接着フィルムaをマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:VHX−100、以下同じ)で観察した結果、絶縁性接着剤Aの表面に導電粒子が単層で配置され、絶縁性接着剤Aからはみ出している導電粒子部分は0.2μm以下であった。またマイクロスコープで得られた画像から、画像処理ソフト(旭化成株式会社製、商品名:A像くん、以下同じ)を用いて、導電粒子の中心間距離の平均値およびその標準偏差を求めた結果、平均値が9.9μm、標準偏差が2.1μmであった。尚、導電粒子の中心間距離は、各粒子の中心点を用いたデローニ三角分割でできる三角形の辺の長さを使用し、0.06mm内の粒子について測定した。
【0030】
次に、20μm×100μmの金バンプがピッチ30μmで並んだベアチップ1、15μm×130μmの金バンプがピッチ30μmで並んだベアチップ2、16μm×125μmの金バンプがピッチ25μmで並んだベアチップ3、および、13μm×150μmの金バンプがピッチ25μmで並んだベアチップ4とそれぞれのベアチップに対応した接続ピッチを有するITOガラス基板を準備し、異方性導電接着フィルムaを延伸したポリプロピレンフィルムから剥がし、4種類のITOガラス基板に80℃、5kg/cm、3秒間の条件で仮圧着し、セパレーターを剥がした後、それぞれのITOガラス基板に対応するベアチップをフリップチップボンダー(東レエンジニアリング株式会社製FC2000、以下同じ)を用いて位置合わせして、200℃、30kg/cm、20秒間加熱加圧し、ベアチップをITOガラス基板に本圧着して接続した。それぞれのベアチップとITOガラス基板からは、64箇所の接合部を有するデイジーチェーン回路と20対の櫛を有する櫛形電極が形成され、接続抵抗測定と絶縁抵抗測定を行った。4種類のベアチップとITOガラス電極よりなる回路のすべてにおいて、デイジーチェーン回路は導通がとれすべての接続が行われていた。
この接続品を、熱衝撃試験、PCT試験、ハンダ耐熱試験に供したが、導通、絶縁ともに良好であった。
さらに、電極の剥離、チップの基板からの浮きや基板からの剥離もなかった。
【0031】
[実施例2]
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:AER2603)50質量部の代わりに、スピロオルトエステル化ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂25質量部を用いた以外は、実施例1と同様に製造した。
上記接着剤ワニスより得られたフィルム状接着剤を200℃、20秒の条件で硬化させた試験片の内部応力は約2MPaであった。
この接続品を、熱衝撃試験、PCT試験、ハンダ耐熱試験に供したが、導通、絶縁ともに良好であった。
さらに、電極の剥離、チップの基板からの浮きや基板からの剥離もなかった。
[比較例1]
繊維添加量を70体積%とした以外は、実施例1と同様に異方性導電接着フィルムを作成し、実施例1と同様に評価した。
絶縁性は良好であったが、接続できていない個所があった。
ハンダ耐熱試験後には、チップと基板の剥離が見られ、チップの足の部分には微小なクラックも見られた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の異方性導電接着フィルムは、厳しい熱環境下でも、接続不良を起こしたり、絶縁不良を起こしたり、電極間がショートしたりすることなく、高い接続信頼性を有するものであり、微細パターンの電気的接続用途において好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粒子が絶縁性接着剤の表面層に単層として配置されて導電層を形成し、該導電層の少なくとも片側に、絶縁性接着剤からなる絶縁層を有してなる、厚さ方向に加圧することで導電性を有する異方性導電接着フィルムにおいて、
(1)導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下、かつ、導電粒子の平均粒径に対して1.5倍以上5倍以下であり、その変動係数が、0.025以上0.5以下であり、
(2)絶縁性接着剤中に絶縁性繊維を、絶縁性接着剤を100体積%としたときに50体積%以下の範囲で含有し、
(3)該絶縁性繊維を含有する絶縁性接着剤を硬化させた後の、25℃における内部応力が10MPa以下であり、
(4)導電粒子の平均粒径が1μm以上6μm未満であることを特徴とする異方性導電接着フィルム。
【請求項2】
該異方性導電フィルムの膜厚が、5μm以上50μm以下である請求項1記載の異方性導電接着フィルム。
【請求項3】
該絶縁層が、絶縁性粒子を含み、絶縁性粒子の平均粒径が導電粒子の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の異方性導電接着フィルム。

【公開番号】特開2006−233201(P2006−233201A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20505(P2006−20505)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】