説明

異方性導電接着剤およびそれを用いた電子機器

【課題】 異方性導電接着剤を用いた半導体装置の実装構造において、外部雰囲気の水分が異方性導電接着剤中に浸入しても、ショートや断線が発生しにくいようにする。
【解決手段】 異方性導電接着剤21は、絶縁性接着剤22中に導電性粒子23および吸水性粒子24を分散させたものからなっている。したがって、異方性導電接着剤21中に浸入した水分は吸水性粒子24に吸収され、この水分に起因する回路基板11の配線12のショートや断線が発生しにくいようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は異方性導電接着剤およびそれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LSI等からなる半導体装置の実装構造には、半導体装置を回路基板上に異方性導電接着剤を介して実装したものがある(例えば、特許文献1参照)。この場合、異方性導電接着剤は、エポキシ系樹脂等からなる絶縁性接着剤中に導電性粒子を分散させたものであり、このうちの絶縁性接着剤により、半導体装置の下面が回路基板の上面に接着され、導電性粒子により、半導体装置の下面に設けられた接続電極が回路基板の上面に設けられた配線(接続端子)に電気的に接続される。
【0003】
【特許文献1】特開平9−191026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、異方性導電接着剤のエポキシ系樹脂等からなる絶縁性接着剤は、耐湿性(非透湿性、非吸湿性)が完全ではないため、外部雰囲気の水分が回路基板の配線の部分に浸入すると、回路基板の配線に付着しているイオン性不純物が浸入した水分により加水分解されて回路基板の配線間でショートが発生したり、回路基板の配線が腐食して断線が発生したりすることがあるという問題があった。
【0005】
そこで、この発明は、外部雰囲気の水分が浸入しても、ショートや断線が発生しにくいようにすることができる異方性導電接着剤、および、信頼性の高い電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するため、異方性導電接着剤を、絶縁性接着剤中に吸水性材料を分散させたものとしたことを特徴とするものである。
また、この発明は、上記目的を達成するため、電子機器において、絶縁性接着剤中に吸水性材料が分散されている異方性導電接着剤を用いて、電子部品間の電気的な接続が成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、異方性導電接着剤を、絶縁性接着剤中に吸水性材料を分散させたものとしているので、外部雰囲気の水分が異方性導電接着剤中に浸入しても、この浸入した水分を吸水性材料によって吸収することができる、したがってこの水分に起因するショートや断線が発生しにくいようにすることができる。
また、この発明によれば、絶縁性接着剤中に吸水性材料が分散されている異方性導電接着剤を用いて、電子部品間の電気的な接続が成されているので、信頼性の高い電子機器を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1はこの発明の一実施形態としての異方性導電接着剤を用いた半導体装置の実装構造の一例の要部の断面図を示す。この半導体装置の実装構造では、LSI等からなる半導体装置1を回路基板11上に異方性導電接着剤21を介して実装した構造となっている。このうち、半導体装置1は、半導体本体2の下面周辺部に複数の接続電極3が設けられた構造となっている。回路基板11の上面の所定の複数箇所には配線(接続端子)12が設けられている。
【0009】
異方性導電接着剤21は、絶縁性接着剤22中に導電性粒子23および吸水性粒子24を分散させたものからなっている。このうち、絶縁性接着剤22は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、合成ゴム等からなり、特に、耐熱性が要求される場合には、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。導電性粒子23は、ニッケル粒子、ニッケル核の表面を金メッキ膜で覆ったもの、樹脂核の表面をニッケルメッキ膜や金メッキ膜で覆ったもの等からなっている。
【0010】
吸水性粒子24は、自重の数百倍から千倍もの水を吸収し、且つ、水の吸収により膨潤して形成されたゲルが多少の圧力によっても離水しないという保水性を有する高吸水性ポリマーからなり、構造的には、イオン性基を有する電解質吸水性ポリマー、あるいは多くの水酸基を有する親水性ポリマーをわずかに架橋したものである。従来の異方性導電接着剤にはこの吸水性粒子24は含まれていなかった。
【0011】
吸水性粒子24の具体的な材料としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマーをわずかに架橋したものが挙げられる。特に、吸水性能(膨潤倍率)、工業生産の容易性、価格の点から、イオン性基としてカルボン酸ナトリウム基(−COO−Na+)を有するポリアクリル酸ナトリウム系のものが好ましい。
【0012】
この場合の吸水の原理は次のように説明される。吸水前の状態はポリマーの長い分子鎖が絡み合い、部分的に分子同士が架橋した3次元網目構造となっている。この分子鎖は親水性であり、また、水中でプラスイオンとマイナスイオンに電離しやすいカルボン酸ナトリウム基を持っているため、水分があると水に溶けようとして網目構造が広がる。網目構造の中に水が入ってくると、カルボン酸ナトリウム基の中のナトリウムイオン(Na+)が解離し、分子鎖にはその残基であるカルボニル基(−COO−)が残る。このカルボニル基はマイナスイオンであるため互いに電気的に反発、網目構造をさらに広げる。そして、広がった網目構造の中にさらに水分が吸収され保持される。
【0013】
そして、半導体装置1は、その下面が回路基板11の上面に異方性導電接着剤21の絶縁性接着剤22を介して接着され、且つ、その接続電極3が回路基板11の配線12に異方性導電接着剤21の導電性粒子23を介して電気的に接続された状態で、回路基板11上に実装されている。
【0014】
このように、この半導体装置の実装構造では、異方性導電接着剤21として絶縁性接着剤22中に導電性粒子23および吸水性粒子24を分散させてなるものを用いているので、外部雰囲気の水分が異方性導電接着剤21中に浸入しても、この浸入した水分を吸水性粒子24によって吸収することができる、したがってこの水分に起因する回路基板11の配線12のショートや断線が発生しにくいようにすることができる。
【0015】
また、図2は、このような異方性導電接着剤21として絶縁性接着剤22中に導電性粒子23および吸水性粒子24を分散させてなるものを用いて部品間を接続した電子機器(液晶表示装置のドライバー接続部の断面図)の一例を示すものである。
【0016】
液晶表示装置40は液晶パネル部401(ここでは簡単のために単純マトリクスパネル)等からなり、液晶パネル部401は下基板402と上基板403とシール材404で囲まれる空間に液晶405が注入されており、下基板402と上基板403の外側にはそれぞれ下側偏光板406と上側偏光板407が貼られて構成されている。
【0017】
液晶パネル401の下基板402にはITO配線12aがパターニングされており、これに上記、絶縁性接着剤22中に導電性粒子23および吸水性粒子24を分散させてなる異方性導電接着剤21を用いて、ドライバーIC2aが搭載されたTAB1aの銀配線部3aを接続したものである。(同様に上基板403にもITO配線12b、12c、・・・がパターニングされており、図示しない紙面に垂直方向で、図示しないTABと接続される。)
【0018】
ここでは、TABを用いた液晶表示装置の例を示したが、TABでなく、COG接続技術を用いた液晶表示装置、さらには表示装置に限らず一般的な電子機器の接続に用いることができることは言うまでもない。
【0019】
このように、異方性導電接着剤21として絶縁性接着剤22中に導電性粒子23および吸水性粒子24を分散させてなるものを用いて、電子部品間の電気的な接続が成されていることを特徴とする電子機器においては、外部雰囲気の水分が異方性導電接着剤21中に浸入しても、この浸入した水分を吸水性粒子24によって吸収することができるので、信頼成の高いものを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態としての異方性導電接着剤を用いた半導体装置の実装構造の一例の要部の断面図。
【図2】この発明の一実施形態としての異方性導電接着剤を用いた電子機器(液晶表示装置のドライバー接続部)の断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 半導体装置
1a TAB
2 半導体本体
2a ドライバーIC
3 接続電極
3a 銀配線部
11 回路基板
12 配線(接続端子)
12a、12b、12c ITO配線
21 異方性導電接着剤
22 絶縁性接着剤
23 導電性粒子
24 吸水性粒子
40 液晶表示装置
401 液晶パネル部
402 下基板
403 上基板
404 シール材
405 液晶
406 下側偏光板
407 上側偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性接着剤中に吸水性材料を分散させてなることを特徴とする異方性導電接着剤。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、前記吸水性材料は吸水性ポリマーからなることを特徴とする異方性導電接着剤。
【請求項3】
請求項1に記載の発明において、前記異方性導電接着剤はフィルム状であることを特徴とする異方性導電接着剤。
【請求項4】
請求項1に記載の発明において、前記異方性導電接着剤はペースト状であることを特徴とする異方性導電接着剤。
【請求項5】
絶縁性接着剤中に吸水性材料が分散されている異方性導電接着剤を用いて、電子部品間の電気的な接続が成されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−39519(P2007−39519A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223822(P2005−223822)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】