説明

異物検出方法、異物検出プログラム及び異物検出装置

【課題】
缶詰の被検査物に混入した異物を確実に検出できる異物検出方法、異物検出プログラム及び異物検出装置を提供する。
【解決手段】
缶詰の被検査物を透過したX線画像を処理して前記被検査物内の混入異物の有無検出を行う異物検出方法において、前記X線画像から周縁部及び周縁部に隣接した異物を示す周縁部異物画像と周縁部から孤立した異物を示す孤立異物画像からなる異物候補画像を生成する異物候補画像生成段階(S3)と、前記異物候補画像から前記孤立した異物を抽出する第1の異物抽出段階(S4)と、前記異物候補画像から前記周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出することにより前記周縁部に隣接した異物を抽出する第2の異物抽出段階(S5)と、抽出された前記孤立した異物と前記周縁部に隣接した異物を合成して出力する異物合成出力段階(S6)とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、被検査物のX線画像を処理して混入異物の有無検出を行う、異物検出方法、異物検出プログラム及び異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や各種工業製品の製造ラインでは、混入異物の排除を行うために、X線画像を用いた異物検出が従来から行なわれている。例えば、特許文献1および特許文献2には従来の技術が詳細に説明されている。このような技術が被検査物の周縁部でX線吸収率が高い缶詰等の被検査物に対して適用されるとき、缶詰の周縁部は異物検出対象外としてマスキング処理される場合が多い。例えば、特許文献3には周縁部のマスキング処理技術が詳細に説明されている。
【0003】

図2は缶詰の被検査物に対する従来の典型的な異物検出方法を説明するためのフローチャートである。ステップS100で入力されたX線画像に対し、ステップS101で被検査物の周縁部を異物検出対象外としてマスキング処理し、ステップS102で異物を強調した画像を生成し、この画像をステップS103で閾値処理して混入異物の有無検出を行っている。
【0004】

異物の強調画像生成には各種の画像フィルタが適用可能であるが、周縁部を異物以上に強調してしまう画像フィルタを適用するためには、周縁部を効果的にマスキング処理しなければならない。マスキング処理により異物検出対象外となる領域は、この領域を対象に第2の異物検出が行われてはいるが感度を落とすため、必要最小限であることが望ましい。
【0005】
特許文献3には異物検出対象外となる領域を小さく抑える方法が説明されているが、設定マスク画素数に縦横比を持たせているものの被検査物の外周からの寸法設定でマスキング処理していることに変わりは無く、実際の周縁部の形状とは一致しない。とくに、図4のX線画像例のように被検査物が無間隔で並んだ状態では、接合部分のマスキング処理に問題がある。
【0006】

このような問題を無くすマスキング処理の方法として、図5に示すように周縁部を異物とともに検出した後、その検出画像から図6に示すような被検査物の背景に接するブロブ(一つのかたまり)とそれ以外のブロブとに区別して抽出し、背景に接するブロブをマスクパタンとして用いる方法が考えられるが、周縁部部分に隣接した異物が、背景に接するブロブに含まれてマスクパタン化されてしまうという問題がある。
【0007】
【特許文献1】W098/11456号公報
【特許文献2】特開2001−307069号公報
【特許文献3】特開2001−281173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
缶詰の被検査物に対する従来の異物検出方法は、周縁部のマスキング処理の方法に問題があり、混入異物の検出確度が不十分である。本発明の課題は、缶詰の被検査物に混入した異物を確実に検出できる異物検出方法、異物検出プログラム及び異物検出装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】

前述の課題を解決するために、請求項1に記載の異物検出方法は、缶詰の被検査物を透過したX線画像を処理して前記被検査物内の混入異物の有無検出を行う異物検出方法において、前記X線画像から周縁部及び周縁部に隣接した異物を示す周縁部異物画像と周縁部から孤立した異物を示す孤立異物画像からなる異物候補画像を生成する異物候補画像生成段階S3と、前記異物候補画像から前記孤立した異物を抽出する第1の異物抽出段階S4と、前記異物候補画像から前記周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出することにより前記周縁部に隣接した異物を抽出する第2の異物抽出段階S5と、抽出された前記孤立した異物と前記周縁部に隣接した異物を合成して出力する異物合成出力段階S6とから構成されており、被検査物内の混入異物の有無検出を行うものである。
【0010】
さらに、請求項2に記載の異物検出方法は、請求項1に記載の異物検出方法において、前記異物候補画像生成段階は、前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも高濃度側の第1の閾値により前記X線画像上の被検査物の周縁部と異物の候補を示す第1の2値化画像を生成し、前記第1の異物抽出段階は、前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも低濃度側の第2の閾値により2値化した画像を前記第1の2値化画像の周縁部における外周とオーバーラップするまで膨張させて前記X線画像上の被検査物の背景を示す第2の2値化画像を生成する第2の2値化画像生成段階S41を含み、前記第1の2値化画像から前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像を前記周縁部異物画像とし、前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像以外を孤立異物画像として区別して抽出する第1のラベリング処理S42を行い、前記第2の異物抽出段階は、前記第1のラベリング処理で抽出した前記周縁部異物画像と前記第2の2値化画像から第3の2値化画像を合成する段階S51と、前記第3の2値化画像に対し、メジアンフィルタを用いた自己平滑化差分により、前記周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出するための処理であるメジアンフィルタ差分を行う段階S52と、前記メジアンフィルタ差分の検出結果に対し、前記周縁部異物画像の内周の形状ノイズに起因する検出分をキャンセルするための第2のラベリング処理を行う段階S53とを有している。
【0011】
そして、請求項3に記載の異物検出プログラムは、缶詰の被検査物を透過したX線画像を処理して前記被検査物内の混入異物の有無検出を行わせる異物検出プログラムにおいて、前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも高濃度側の第1の閾値により前記X線画像上の被検査物の周縁部と異物の候補を示す第1の2値化画像を生成させ、前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも低濃度側の第2の閾値により2値化した画像を前記第1の2値化画像の周縁部における外周とオーバーラップするまで膨張させて前記X線画像上の被検査物の背景を示す第2の2値化画像を生成させ、前記第1の2値化画像から前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像を周縁部及び周縁部に隣接する異物を示す周縁部異物画像として抽出し、前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像以外を画像周縁部から孤立した異物を示す孤立異物画像として抽出する第1のラベリング処理を行わさせ、
前記第1のラベリング処理で抽出した前記周縁部異物画像と前記第2の2値化画像から第3の2値化画像を合成させ、前記第3の2値化画像に対し、メジアンフィルタを用いた自己平滑化差分により、前記周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出するための処理であるメジアンフィルタ差分を行わさせ、
前記メジアンフィルタ差分の検出結果に対し、前記周縁部異物画像の内周の形状ノイズに起因する検出分をキャンセルするための第2のラベリング処理を行わさせ、前記第1のラベリング処理で抽出した前記孤立異物画像と前記第2のラベリング処理の結果を合成して出力させる処理をコンピュータに行なわせる。
【0012】

また、請求項4に記載の異物検出装置は、缶詰の被検査物3にX線を照射するX線照射手段2と、前記被検査物を透過したX線を検出するX線検出器4と、該X線検出器から出力されるX線透過データから生成されるX線画像を画像処理して被検査物に混入している異物の有無を検出する画像処理手段6とを有する異物検出装置において、前記画像処理手段は、前記X線画像から周縁部及び周縁部に隣接する異物を示す周縁部異物画像と周縁部から孤立した異物を示す孤立異物画像からなる異物候補画像を生成する異物候補画像生成手段61と、前記異物候補画像から前記孤立した異物を抽出する第1の異物抽出手段62と、前記異物候補画像から前記周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出することにより前記周縁部に隣接した異物を抽出する第2の異物抽出手段63と、前記第1の異物抽出手段で抽出された異物と前記第2の異物抽出手段で抽出された異物を合成して出力する異物合成出力手段64とから構成されている。
【0013】

また、請求項5に記載の異物検出装置は、請求項4に記載の異物検出装置において、前記異物候補画像生成手段は、前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも高濃度側の第1の閾値により前記X線画像上の被検査物の周縁部と異物の候補を示す第1の2値化画像を前記異物候補画像として生成する第1の2値化画像生成手段611を有し、さらに前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも低濃度側の第2の閾値により2値化した画像を前記第1の2値化画像の周縁部の外周とオーバーラップするまで膨張させて前記X線画像上の被検査物の背景を示す第2の2値化画像を生成する第2の2値化画像生成手段612とを有しており、前記第1の異物抽出手段は、前記異物候補画像をラベリング処理することによって、前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像とオーバーラップしないブロブ画像とに区別し、オーバーラップしないブロブ画像を前記孤立した異物として抽出する第1のラベリング処理手段621を有し、前記第2の異物抽出手段は、前記第1のラベリング処理手段で区別された前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像と前記第2の2値化画像を第3の2値化画像として合成する2値化画像合成手段631と、前記第3の2値化画像に対し、メジアンフィルタを用いた自己平滑化差分により、メジアンフィルタ差分を行うメジアンフィルタ差分手段632と、前記メジアンフィルタ差分の検出結果に対し、前記周縁部異物画像の内周の形状ノイズに起因する検出分をキャンセルするためのラベリング処理を行い、予め設定された大きさ以下の微小ブロブを除いたブロブを前記周縁部に隣接した異物として抽出する第2のラベリング処理手段633とを有している。
【発明の効果】
【0014】

本発明によれば、被検査物の周縁部を設定画素数でマスキング処理する従来方法に比べて、缶詰の被検査物に混入した異物の検出確度が格段に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の異物検出方法を説明するためのフローチャートである。ステップS1で入力されたX線画像に対し、ステップS2で、濃度ヒストグラムを生成し主分布を求める。その後、ステップS2で求めた濃度ヒストグラムの主分布よりも高濃度側に設定する第1の閾値により前記X線画像上の被検査物の周縁部と異物の候補を示す第1の2値化画像をステップS3で生成し、ステップS2で求めた濃度ヒストグラムの主分布よりも低濃度側に設定する第2の閾値により2値化した画像を前記第1の2値化画像の周縁部における外周とオーバーラップするまで膨張させて前記X線画像上の被検査物の背景を示す第2の2値化画像をステップS41で生成し、前記第1の2値化画像から前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像を周縁部及び周縁部に隣接する異物を示す周縁部異物画像として抽出して前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像以外を画像周縁部から孤立した異物を示す孤立異物画像として抽出する第1のラベリング処理をステップS42で行い、前記第1のラベリング処理で抽出した前記周縁部異物画像と前記第2の2値化画像から第3の2値化画像をステップS51で合成し、前記第3の2値化画像に対し、メジアンフィルタを用いた自己平滑化差分により、前記周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出するための処理であるメジアンフィルタ差分をステップS52で行い、前記メジアンフィルタ差分の検出結果に対し、前記周縁部異物画像の内周の形状ノイズに起因する検出分をキャンセルするための第2のラベリング処理をステップS53で行い、前記第1のラベリング処理で抽出した前記孤立異物画像と前記第2のラベリング処理の結果をステップS6で合成して出力する。
【0017】
例えば図4のX線画像例がステップS1で入力された場合、第1の2値化画像は図5、第2の2値化画像は図6、第1のラベリング処理の結果は図7、第3の2値化画像は図8、第2のラベリング処理の結果は図9、抽出された異物の合成出力は図10のようになるが、この実施例について以下に説明する。
【0018】
以下の説明では、N×N画素のカーネルを用いた最大値,メジアンフィルタをそれぞれMax(N),Median(N)と表記し、メジアンフィルタ差分(メジアンフィルタ画像とメジアンフィルタ実行前の画像との差分画像)をMedianS(N)と表記し、閾値Cによる2値化をBIN(C)と表記し、画像の濃度反転をINV(画像)と表記し、2画像の論理和をOR(画像1,画像2)と表記し、”画像→処理1→処理2→...”によって一連の画像処理を示す。
【0019】
図1のステップS2ではX線画像の濃度ヒストグラムを濃度[0,255]の範囲で生成し、高濃度部分[B,
255]を対象に濃度ヒストグラムの頻度がピークの1/(A+2)より多い範囲を主分布として求める。ここで、予め設定しておくべきパラメータA,Bの設定ステップは図1に示されていないが、予め被検査物の品種に合わせて見積もっておいた設定値を用いる。例えば図4の品種に対してはA=10,B=20を用いる。
【0020】
図1のステップS3ではステップS2で求めた主分布の高濃度側の位置を第1の閾値として設定し、X線画像→BIN(第1の閾値)によって第1の2値化画像を生成する。
【0021】
図1のステップS41では濃度B+dを第2の閾値として設定してINV(X線画像→BIN(第2の閾値))→Max(D)によって第2の2値化画像を生成する。ここでMax(D)の、カーネルサイズDは第2の2値化画像と第1の2値化画像が周縁部における外周で1画素ほどオーバーラップするに足るサイズに設定し、カーネル形状は円形とする。ここで、予め設定しておくべきパラメータdの設定とカーネルサイズDの設定ステップは図1に示されていないが、予め被検査物の品種に合わせて見積もっておいた設定値を用いる。例えば図4の品種に対してはd=0,D=7を用いる。
【0022】
図1のステップS42では第1の2値化画像から周縁部及び周縁部に隣接した異物を示す周縁部異物画像と周縁部から孤立した異物を示す孤立異物画像を区別して抽出する第1のラベリング処理を行う。このラベリング処理では、画像ノイズによる微小ブロブを消去後、第2の2値化画像とオーバーラップするブロブを周縁部及び周縁部に隣接した異物を示す周縁部異物画像とし、そうでないブロブを孤立異物画像とすることにより、周縁部異物画像(図7の灰色ブロブ)と孤立異物画像(図7の黒色ブロブ)を抽出する。ここで、微小ブロブの消去するためのブロブの面積に対する閾値F1の設定ステップは図1に示されていないが、予め被検査物の品種に合わせて見積もっておいた設定値を用いる。例えば図4の品種に対してはF1=5を用いる。
【0023】
図1のステップS51ではOR(第2の2値化画像,周縁部異物画像)によって第3の2値化画像を合成する。
【0024】
図1のステップS52では第3の2値化画像→MedianS(E)によってメジアンフィルタ差分を行う。ここで、カーネルサイズEの設定ステップは図1に示されていないが、予め被検査物の品種に合わせて見積もっておいた設定値を用いる。例えば図4の品種に対してはE=17を用いる。
【0025】
図1のステップS53ではメジアンフィルタ差分の検出結果に対し、周縁部異物画像の内周の形状ノイズに起因する検出分をキャンセルするための処理である、第2のラベリング処理を行う。ここで、形状ノイズに起因する微小ブロブを消去するためのブロブの面積に対する閾値F2の設定ステップは図1に示されていないが、予め被検査物の品種に合わせて見積もっておいた設定値を用いる。例えば図4の品種に対してはF2=3を用いる。
【0026】
図1のステップS6では第1のラベリング処理の結果(図7)と前記第2のラベリング処理の結果(図9の黒色ブロブ)を合成して出力する(図10)。
【0027】
以上説明したように、本発明による異物検出方法では、被検査物の周縁部を設定画素数でマスキング処理する従来方法に比べて、周縁部自体をブロブとして抽出したマスクパタンを用いるとともに混入異物に起因するマスクパタンの形状歪も検出するため、缶詰の被検査物に混入した異物の検出確度が格段に向上する。
【0028】
(第2の実施の形態)

図3は、本発明の異物検出装置の実施の形態であるX線を用いた異物検出装置を説明するためのブロック図である。即ち、缶詰の被測定物3(被検査物)を搬送する搬送手段1と、缶詰の被測定物3にX線を照射するX線源2(X線照射手段)と、缶詰の被測定物3のX線透過像を検出するX線検出器4と、X線検出器から出力されるX線透過画像(X線透過データ)を対数変換してX線画像として取り込む画像入力手段5と、このX線画像を処理して混入異物の有無を判定する画像処理手段6とを備えた異物検出装置である。必要に応じて画像表示手段7を付加しても良い。
【0029】

搬送手段1は、例えばX線を良く透過するベルトコンベアで実現され、対向配置されたX線源2とX線検出器4の間を通して被測定物3を搬送する。X線源2から照射されたX線は、被測定物3による吸収とベルトコンベアによる僅かな吸収を受けてこれらを透過した後、X線検出器4に到達する。
【0030】

X線検出器4は、例えばX線ラインセンサで実現され、被検査物3のX線透過像をデジタル画像化する。このデジタル画像は、X線ラインセンサによる1ライン上のサンプリングピッチと略等しいサンプリングピッチで搬送方向にサンプリングされ、X線透過画像としてメモリー上に取り込まれる。
【0031】

物質のX線吸収率をα、物質の厚さをLとすると、強度SのX線が当該物質を透過した後の強度S’は、理論上、S’= S・exp(−α・L)と書ける。両辺の対数をとって変形すれば、α・L=log(S)−log(S’)とも書ける。前記X線透過画像はS’の2次元分布に相当し、前述のように対数をとって変形すれば、物質による吸収量α・Lの2次元分布を示すX線吸収画像に変換できる。X線透過画像とX線吸収画像のどちらにも物質による吸収量α・Lという被検査物の物性情報が含まれているが、濃度値が物質による吸収量をストレートに示すX線吸収画像の方がX線吸収率の高い異物の強調や検出には有利である。この場合、例えば被検査物のX線吸収画像において、局所的に高濃度を示す部分や急峻なエッジ部分を異物候補点として扱うことによって異物らしさを評価することができる。
【0032】

画像入力手段5は、前記X線透過画像をX線吸収画像に対数変換してX線画像とし、画像処理手段6に出力する。この対数変換には、被検査物の物性とX線波長に依存する補正を加えてもよい。
【0033】

画像処理手段6はパラメータ設定機能を備えたCPU等で構成され、画像入力手段5から出力されたX線画像の入力を受け、予め設定されたパラメータに基づいて、図1を用いて説明した本発明の異物検出方法からなる画像処理を実行することにより混入異物の有無検出を行うようになっており、画像処理の機能として異物候補画像生成手段61、第1の異物抽出手段62、第2の異物抽出手段63、異物合成出力手段64を実現するものである。
【0034】
異物候補画像生成手段61は、第1の2値化画像生成手段611と第2の2値化画像生成手段612から構成され、画像入力手段5が出力したX線画像から周縁部及び周縁部に隣接する異物を示す周縁部異物画像と周縁部から孤立した異物を示す孤立異物画像からなる異物候補画像を生成する。第1の2値化画像生成手段611は、X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも高濃度側の第1の閾値によりX線画像上の被検査物の周縁部と異物の候補を示す第1の2値化画像を異物候補画像として生成し、第2の2値化画像生成手段612は、X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも低濃度側の第2の閾値により2値化した画像を第1の2値化画像の周縁部における外周とオーバーラップするまで膨張させてX線画像上の被検査物の背景を示す第2の2値化画像を生成する。
【0035】
第1の異物抽出手段62は、異物候補画像生成手段61で生成した異物候補画像をラベリング処理することによって、第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像とオーバーラップしないブロブ画像とに区別し、オーバーラップしないブロブ画像を孤立した異物として抽出する。
なお、孤立した異物を抽出するのに、膨張させた被検査物の背景を示す2値化画像とのオーバーラップで区別したが、微分やラプラシアン等のエッジを検出するフィルタで被検査物の外周を求め、この外周とのオーバーラップで区別してもよい。
【0036】
第2の異物抽出手段63は、2値化画像合成手段631、メジアンフィルタ差分手段632および第2のラベリング処理手段633から構成され、周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出することにより前記周縁部に隣接した異物を抽出する。
2値化画像合成手段631は、第1のラベリング処理手段で区別された第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像と第2の2値化画像を第3の2値化画像として合成し、メジアンフィルタ差分手段632は、前記第3の2値化画像に対し、メジアンフィルタを用いた自己平滑化差分によりメジアンフィルタ差分を行い、第2のラベリング処理手段633は、メジアンフィルタ差分の検出結果に対し、周縁部異物画像の内周の形状ノイズに起因する検出分をキャンセルするためのラベリング処理を行い、予め設定された大きさ以下の微小ブロブを除いたブロブを前記周縁部に隣接した異物として抽出する。
【0037】
異物合成出力手段64は、第1のラベリング処理621で抽出した孤立異物画像と第2のラベリング処理633の結果を合成して出力する。
【0038】

画像表示手段7は、画像処理手段6の異物合成出力手段64からの抽出された異物の合成出力とX線画像をOR演算してCRT等に表示する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明は、被検査物のX線画像から周縁部及び周縁部に隣接した異物を示すブロブと周縁部異物画像と周縁部から孤立した異物を示すブロブを抽出し、さらに周縁部及び周縁部に隣接した異物を示すブロブから、内周の突出した凸部を検出することにより前記周縁部に隣接した異物を抽出するため、被検査物の縁のX線透過量と異物のX線透過量が同等レベルで被検査物の縁に隣接した異物の有無を検査するX線異物検査装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の異物検出方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】従来の異物検出方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の異物検出装置の実施の形態を説明するための図である。
【図4】X線画像例である。
【図5】第1の2値化画像例である。
【図6】第2の2値化画像例である。
【図7】第1のラベリング処理例である。
【図8】第3の2値化画像例である。
【図9】第2のラベリング処理例である。
【図10】抽出された異物の合成出力例である。
【符号の説明】
【0041】
1…搬送手段、2…X線源(X線発生手段)、3…被測定物(被検査物)、
4…X線検出器、5…画像入力手段、6…画像処理手段、7…画像表示手段、61…異物候補画像生成手段、 62…第1の異物抽出手段、
63…第2の異物抽出手段、64…異物合成出力手段、
611…第1の2値化画像生成手段、 612…第2の2値化画像生成手段、 621…第1のラベリング処理手段、 631…第3の2値化画像合成手段、
632…メジアンフィルタ差分手段、 633…第2のラベリング処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶詰の被検査物を透過したX線画像を処理して前記被検査物内の混入異物の有無検出を行う異物検出方法において、
前記X線画像から周縁部及び周縁部に隣接した異物を示す周縁部異物画像と周縁部から孤立した異物を示す孤立異物画像からなる異物候補画像を生成する異物候補画像生成段階(S3)と、
前記異物候補画像から前記孤立した異物を抽出する第1の異物抽出段階(S4)と、
前記異物候補画像から前記周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出することにより前記周縁部に隣接した異物を抽出する第2の異物抽出段階(S5)と、
抽出された前記孤立した異物と前記周縁部に隣接した異物を合成して出力する異物合成出力段階(S6)とから構成されていることを特徴とする異物検出方法。
【請求項2】
前記異物候補画像生成段階は、前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも高濃度側の第1の閾値により前記X線画像上の被検査物の周縁部と異物の候補を示す第1の2値化画像を生成し、
前記第1の異物抽出段階は、前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも低濃度側の第2の閾値により2値化した画像を前記第1の2値化画像の周縁部における外周とオーバーラップするまで膨張させて前記X線画像上の被検査物の背景を示す第2の2値化画像を生成する第2の2値化画像生成段階(S41)を含み、前記第1の2値化画像から前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像を前記周縁部異物画像とし、前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像以外を孤立異物画像として区別して抽出する第1のラベリング処理(S42)を行い、
前記第2の異物抽出段階は、前記第1のラベリング処理で抽出した前記周縁部異物画像と前記第2の2値化画像から第3の2値化画像を合成する段階(S51)と、前記第3の2値化画像に対し、メジアンフィルタを用いた自己平滑化差分により、前記周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出するための処理であるメジアンフィルタ差分を行う段階(S52)と、前記メジアンフィルタ差分の検出結果に対し、前記周縁部異物画像の内周の形状ノイズに起因する検出分をキャンセルするための第2のラベリング処理を行う段階(S53)とを有することを特徴とする請求項1に記載の異物検出方法。
【請求項3】
コンピュータに、缶詰の被検査物を透過したX線画像を処理して前記被検査物内の混入異物の有無検出を行わせる異物検出プログラムにおいて、
前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも高濃度側の第1の閾値により前記X線画像上の被検査物の周縁部と異物の候補を示す第1の2値化画像を生成させ、
前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも低濃度側の第2の閾値により2値化した画像を前記第1の2値化画像の周縁部における外周とオーバーラップするまで膨張させて前記X線画像上の被検査物の背景を示す第2の2値化画像を生成させ、
前記第1の2値化画像から前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像を周縁部及び周縁部に隣接する異物を示す周縁部異物画像として抽出し、前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像以外を画像周縁部から孤立した異物を示す孤立異物画像として抽出する第1のラベリング処理を行わさせ、
前記第1のラベリング処理で抽出した前記周縁部異物画像と前記第2の2値化画像から第3の2値化画像を合成させ、
前記第3の2値化画像に対し、メジアンフィルタを用いた自己平滑化差分により、前記周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出するための処理であるメジアンフィルタ差分を行わさせ、
前記メジアンフィルタ差分の検出結果に対し、前記周縁部異物画像の内周の形状ノイズに起因する検出分をキャンセルするための第2のラベリング処理を行わさせ、
前記第1のラベリング処理で抽出した前記孤立異物画像と前記第2のラベリング処理の結果を合成して出力させることを特徴とする異物検出プログラム。
【請求項4】
缶詰の被検査物(3)にX線を照射するX線照射手段(2)と、前記被検査物を透過したX線を検出するX線検出器(4)と、該X線検出器から出力されるX線透過データから生成されるX線画像を画像処理して被検査物に混入している異物の有無を検出する画像処理手段(6)とを有する異物検出装置において、
前記画像処理手段は、前記X線画像から周縁部及び周縁部に隣接する異物を示す周縁部異物画像と周縁部から孤立した異物を示す孤立異物画像からなる異物候補画像を生成する異物候補画像生成手段(61)と、
前記異物候補画像から前記孤立した異物を抽出する第1の異物抽出手段(62)と、
前記異物候補画像から前記周縁部異物画像の内周における突出した凸部を検出することにより前記周縁部に隣接した異物を抽出する第2の異物抽出手段(63)と、
前記第1の異物抽出手段で抽出された異物と前記第2の異物抽出手段で抽出された異物を合成して出力する異物合成出力手段(64)とから構成されていることを特徴とする異物検出装置。
【請求項5】
前記異物候補画像生成手段は、前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも高濃度側の第1の閾値により前記X線画像上の被検査物の周縁部と異物の候補を示す第1の2値化画像を前記異物候補画像として生成する第1の2値化画像生成手段(611)を有し、さらに前記X線画像の濃度ヒストグラムの主分布よりも低濃度側の第2の閾値により2値化した画像を前記第1の2値化画像の周縁部の外周とオーバーラップするまで膨張させて前記X線画像上の被検査物の背景を示す第2の2値化画像を生成する第2の2値化画像生成手段(612)とを有しており、
前記第1の異物抽出手段は、前記異物候補画像をラベリング処理することによって、前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像とオーバーラップしないブロブ画像とに区別し、オーバーラップしないブロブ画像を前記孤立した異物として抽出する第1のラベリング処理手段(621)を有し、
前記第2の異物抽出手段は、前記第1のラベリング処理手段で区別された前記第2の2値化画像とオーバーラップするブロブ画像と前記第2の2値化画像を第3の2値化画像として合成する2値化画像合成手段(631)と、前記第3の2値化画像に対し、メジアンフィルタを用いた自己平滑化差分により、メジアンフィルタ差分を行うメジアンフィルタ差分手段(632)と、前記メジアンフィルタ差分の検出結果に対し、前記周縁部異物画像の内周の形状ノイズに起因する検出分をキャンセルするためのラベリング処理を行い、予め設定された大きさ以下の微小ブロブを除いたブロブを前記周縁部に隣接した異物として抽出する第2のラベリング処理手段(633)とを有することを特徴とする請求項4に記載の異物検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−64662(P2006−64662A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250653(P2004−250653)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】