説明

異相プロピレンコポリマーを製造するための気相法

直列に接続されている2以上の気相反応器内において、ハロゲン化マグネシウム上に担持されているチタン化合物をベースとする触媒成分を含む重合触媒の存在下で異相プロピレンコポリマーを製造するための重合方法であって、該触媒成分を、有機アルミニウム化合物と、5℃〜30℃の温度において、0〜2.0の範囲のプロピレン/触媒成分の重量比で接触させ;(A)からの触媒を、場合によっては不活性炭化水素溶媒の存在下においてプロピレンを用いて予備重合し;プロピレンを、場合によっては15重量%より低い量の他のオレフィンコモノマーと共に重合して半結晶質ポリマー成分を製造し;引き続いて、2種類以上のC〜C10−α−オレフィンコモノマーを共重合して、15重量%より高いキシレン中の溶解度を有する1種類以上のオレフィンコポリマーを製造する;工程を含み、工程(C)の半結晶質成分の嵩密度を0.40g/cmより低い値に調節することを特徴とする上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレンを気相重合するための方法及び装置、特に異相プロピレンコポリマーを製造するための気相重合法に関する。得られるプロピレンコポリマーは、衝撃強さ、透明度、光沢、剛性、収縮性等のような広範囲の有用な特性を有する物品を製造するのに特に好適である。
【背景技術】
【0002】
結晶質プロピレンポリマーは劣った耐衝撃性(弾性)及び可撓性を有することを特徴とすることが知られている。しかしながら、これらの特性は、アモルファスエチレン/プロピレンコポリマーを結晶質プロピレンホモポリマーとブレンドして「異相プロピレンコポリマー」と命名されているポリオレフィンブレンドを得ることによって大きく改良することができる。
【0003】
かかるポリオレフィンブレンドを製造する方法は、押出機又は混練機内での溶融押出を用いて個々のポリマー成分を密に混合することを含む。この方法によれば、ブレンドの個々のポリマー成分が別々に得られ、重合反応器からポリマー粉末として排出される。次に、固体のポリマー顆粒を押出機又は混練機に供給し、ここで加熱及び溶融にかけて、押出機又は混練機の内部においてそれらの物理的ブレンドを促進する。勿論、所望のポリマーブレンドが得られるように第1のポリマー成分を第2の成分内に互いに分散させるためには激しく強力な混合作用が必要である。この方法の欠点は、ブレンドする個々のポリマー成分の溶融粘度が一般に大きく異なり、したがって2つの成分を均一なように混合することが著しく困難であることによる。更に、混合相において一般に必要な高い温度によって、ポリマー成分の1つが熱分解する可能性がある。
【0004】
異相プロピレンコポリマーを製造するための他の方法は、「ポリマーのその場ブレンド」と称されており、物理的ブレンドに関係する欠点を回避することができる。この方法によれば、第1の重合反応器内において半結晶質成分(プロピレンホモポリマー)を製造し、次に得られたポリマー顆粒を逐次重合反応器に移して、ここでエラストマー成分(例えばプロピレン/エチレンコポリマー)を形成し、このようにして直列に配置されている2以上の反応器内での逐次重合によってポリマーブレンドを製造する。その結果、重合段階中のポリマー顆粒内において、異なるモル質量分布及び/又は化学組成のポリマー成分の混合が起こる。また、この多段階重合プロセスは、それぞれの重合反応器内に異なる触媒系を供給することによっても行うことができる。
【0005】
直列に接続されている一連の重合反応器内でのプロセス条件を調節することによって、広範囲の異相プロピレンコポリマー、並びに異なる濃度の半結晶質成分及びアモルファス成分を製造することができる。実際、それぞれの反応器を、触媒、圧力、温度、1種類又は複数のコモノマー及び分子量調整剤の量に関して異なる重合条件で運転することができる。
【0006】
EP−541760の開示は、ハロゲン化Mg上に担持されているチタン化合物を含む高活性触媒の存在下においてオレフィンを気相重合する方法に関する。チーグラー・ナッタ触媒成分の予備接触工程は、また、固体触媒成分1gあたり3g以下の量のオレフィンモノマーの存在下においても行うことができる。触媒は、予備重合処理の後に一連の1以上の気相反応器に供給し、ガスの全量に対して20〜90%のモル濃度のC〜Cアルカンの存在下で重合を行う。ここで、好ましいアルカンとしてプロパンを用いる。触媒成分の予備接触、予備重合処理、及び上記に示すモル濃度の気相のアルカンを存在させることにより、気相重合プロセスを厳密に制御し、エチレン及びプロピレンのポリマーを流動性の高い球状粒子の形態で製造し、更に気相反応器の内部に大きな凝集物(大塊)が形成されることを妨げることが可能になる。
【0007】
EP−640649においては、
(A)5%より低い割合で周囲温度においてキシレン中に可溶のプロピレンホモポリマー又はコポリマー30〜60%;
(B)60〜99%の範囲の割合で周囲温度においてキシレン中に可溶のプロピレンとエチレンとのコポリマーから構成されるフラクション14〜30%;
(C)10〜50%の範囲の割合で周囲温度においてキシレン中に可溶の、エチレンと10%〜30%の範囲の量のC〜C−α−オレフィンとのコポリマー10〜25%;
(D)0.1〜5.0μmの平均径を有する粒子形態の無機充填剤5〜45%;
を含む、曲げ弾性率と衝撃強さの良好なバランスを有するポリオレフィン組成物を製造する方法が開示されている。実施例によれば、チーグラー・ナッタ触媒成分、トリエチルアルミニウム(TEAL)活性化剤、及びジシクロペンチルジメトキシシラン電子ドナーを、0℃において数分間予備接触させる。次に、液体プロピレンを含む反応器内で触媒を予備重合し、次に得られたプレポリマーを第1の重合反応器中に導入する。重合は、それぞれが上記記載のポリマー成分(A)、(B)、及び(C)を製造するためのものである一連の3つの気相反応器内で、前段から得られるポリマー及び触媒の存在下において連続的に行う。無機充填剤(D)は、ブレンドによって連続的に加える。
【0008】
WO−00/26295は、(重量%で)
(A)5〜15の多分散指数及び80〜200g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する幅広い分子量分布のプロピレンポリマー40〜60%;
(B)少なくとも65重量%のエチレンを含む部分的にキシレン可溶のオレフィンポリマーラバー40〜60%;
を含む、満足できる機械特性及び光学特性、例えば低い値の光沢度を有するポリオレフィン組成物に関する。
【0009】
成分(A)は、結晶質のプロピレンホモポリマー、又は0.5〜1.5重量%のエチレン含量を有するエチレン/プロピレンコポリマーである。トリエチルアルミニウム(TEAL)活性化剤及びジシクロペンチルジメトキシシラン電子ドナーとの予備接触の後、液体プロピレンを含む反応器内で触媒を予備重合する。次に、プレポリマーを第1の気相反応器中に導入して低いMFRを有するプロピレンホモポリマーを製造し、一方、第2の気相反応器内で高いMFRを有するホモポリマーを製造する。最後に、第3の反応器内でエチレンをプロピレンと共重合して成分(B)を製造する。
【0010】
適切量のラバー相を有する異相コポリマーを製造することを目的とする気相重合において、重要な物理パラメーターは、一般に「マトリクス」という用語で示され、第1の気相反応器内で製造される半結晶質成分の多孔度である。実際、マトリクスの多孔度がより大きいと、第1の重合工程において形成されるポリマー粒子内部に含ませることのできるエラストマー成分の量がより多くなる。他方、マトリクスの多孔度が低いと、粒子表面上に過剰量のラバーフラクションが存在するために、ポリマー粒子の粘着性が大きく増大し、必然的にラバーフラクションの製造中に接触粒子間の凝集現象が起こる。また、ポリマーが重合装置の壁に付着するか又は排出ラインを閉塞して、重合プロセスを中断しなければならなくなる可能性もある。
【0011】
ポリマーの多孔度の重要な巨視的な測定値は、ポリマーの嵩密度によって与えられる。嵩密度又はみかけ密度は、対象の物質中の固有の気孔を含む物質の容積単位あたりの質量であり、低い値の嵩密度はポリマー粉末の高い多孔度を示す。
【0012】
上記に示した従来技術の特許の開示及び実施例では、第1の重合工程において製造される半結晶質マトリクスの嵩密度を最小にするのに有用な操作条件は教示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
第1の重合工程の重合条件を大きく変化させることなく半結晶質マトリクスの嵩密度を調整することができることが非常に望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願人は、驚くべきことに、触媒成分の予備接触及び予備重合の工程における操作条件を適切に選択することによって、第1の反応器内で製造される半結晶質マトリクスの嵩密度に直接影響を与えて、該マトリクスの多孔度を目標とする値に好適に調節することができることを見出した。
【0015】
したがって、本発明の第1の対象は、直列に接続されている2以上の気相反応器内において、ハロゲン化マグネシウム上に担持されているチタン化合物をベースとする触媒成分を含む重合触媒の存在下で異相プロピレンコポリマーを製造するための重合方法であって、
(A)該触媒成分を、有機Al化合物、外部ドナー化合物と、場合によってはプロピレンの存在下、5℃〜30℃の温度において、0〜2.0の範囲のプロピレン/触媒成分の重量比で接触させ;
(B)(A)からの触媒を、場合によっては不活性炭化水素溶媒の存在下においてプロピレンを用いて予備重合し;
(C)プロピレンを、場合によっては15重量%より低い量の他のα−オレフィンコモノマーと共に重合して半結晶質ポリマー成分を製造し;
(D)引き続いて、2種類以上のC〜C10−α−オレフィンコモノマーを共重合して、15重量%より高いキシレン中の溶解度を有する1種類以上のオレフィンコポリマーを製造する;
工程を含み、工程(C)の半結晶質成分の嵩密度を0.40g/cmより低い値に調節することを特徴とする上記方法である。
【0016】
本発明方法により、工程(C)からポリプロピレンをベースとする半結晶質のホモポリマー又はランダムコポリマーが得られ、一方、1種類以上のアモルファスラバーコポリマーが工程(D)において製造される。特に、一連の重合反応器から得られる最終ブレンドは、重合工程(C)において製造される半結晶質マトリクス中に密に混合及び分散されている工程(D)において製造される1種類以上のラバーフラクションを含む。
【0017】
本発明の主たる有利性は、重合工程(C)における操作条件を変更することなく、重合工程(C)において得られる半結晶質成分の嵩密度を、0.40g/cmより低く、好ましくは0.25g/cm〜0.35g/cmの範囲の目標値に調節することができることである。上記に説明したように、半結晶質マトリクスの嵩密度がより低いと、マトリクスのポリマー顆粒の内部に含ませることのできるラバー相の量がより多くなるので、本発明方法によってラバーフラクションの異なる含量及び広範囲の最終特性を有する異相コポリマーを得ることができる。
【0018】
本出願人によって行った徹底的な研究の結果により、以下の指針にしたがって、工程(C)において製造されるマトリクスの嵩密度を調整することができることが示された。
【0019】
(1)予備接触工程(A)における温度を上昇させることによって、半結晶質マトリクスの嵩密度を低下させることができる。
【0020】
(2)予備接触工程(A)におけるプロピレン/触媒成分の重量比を減少させることによって、半結晶質マトリクスの嵩密度を低下させることができる。
【0021】
更に、アルカンのような不活性炭化水素溶媒の存在下で触媒の予備重合を行うと、工程(B)におけるプロピレン/アルカンの比もマトリクス(C)の嵩密度に対して無視できない影響を及ぼし、工程(B)におけるアルカン/プロピレンの比を減少させることによって嵩密度を低下させることができることが観察された。
【0022】
本発明の重合方法は、チーグラー・ナッタ触媒系の存在下で行う。このタイプの重合触媒は、ハロゲン化マグネシウム上に担持されているチタン化合物をベースとする固体触媒成分を含む。
【0023】
好ましいチタン化合物は、式:Ti(OR)y−n(式中、nは0〜yの範囲であり;yはチタンの価数であり;Xはハロゲンであり;Rは、1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基又はCOR基である)のものである。これらの中で、四ハロゲン化チタン又はハロゲンアルコラートのような少なくとも1つのTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物が特に好ましい。好ましい特定のチタン化合物は、TiCl、TiCl、Ti(OBu)、Ti(OBu)Cl、Ti(OBu)Cl、Ti(OBu)Clである。
【0024】
異相プロピレンコポリマーを製造するために特に好ましいチーグラー・ナッタ触媒は、チタン化合物が内部電子ドナー化合物と一緒にMgCl上に担持されているものである。内部電子ドナー化合物の中では、エステル、エーテル、アミン、及びケトンから選択されるものが好ましい。内部電子ドナーの特に好ましい例は、ポリカルボン酸のアルキルエステル、シクロアルキル、及びアリール、例えばフタル酸エステル及びコハク酸エステル、並びにエーテル、例えばEP−A−45977に記載されているものである。好ましい電子ドナーとしては、置換基が線状又は分岐のC〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、又はアリール基である単置換又は二置換フタレート、例えばフタル酸ジイソブチル、ジ−n−ブチル、及びジ−n−オクチルが挙げられる。
【0025】
望ましい嵩密度を有する工程(C)の半結晶質成分を製造するためには、EP−395083に開示されているタイプのZN触媒を用いることが好ましいことが見出された。特定の形態特性を有するこれらの触媒成分は、1モルのMgClあたり一般に3モルのアルコールを含む塩化マグネシウムとアルコールとの付加体から、溶融状態の付加体を、溶融付加体と非混和性の不活性炭化水素液体中で乳化し、次に付加体を球状粒子の形態で固化させるためにエマルジョンを非常に速やかに冷却することによって製造される。次に、得られた粒子を、50℃から130℃に上昇する温度の加熱サイクルを用いて、アルコール含量が1モルのMgClあたり3から約0.5〜1.5モルに減少するまで部分的脱アルコール化にかける。
【0026】
かくして得られた付加体を、次に、80℃〜135℃の温度においてTiClと1回以上反応させ、その少なくとも1回は上記に記載の内部電子ドナー化合物の存在下で行う。次に、得られた固体をヘプタン又はヘキサンで洗浄した後、乾燥する。この方法によって得られる触媒成分は、一般に、以下の特性を有する。
【0027】
−球状又はほぼ球状の形態;
−100m/g以下の表面積;
−0.2〜0.4cm/gの範囲の多孔度(窒素);
−マクロ孔(>10000Åの直径を有する孔)を除いて0.5〜1cm/gの範囲の多孔度(Hg)。
【0028】
予備接触−工程(A):
本発明によれば、上記の固体触媒成分を、共触媒として有機アルミニウム化合物、及び外部ドナー化合物と、4〜30分間予備接触させる。
【0029】
温度は5〜30℃、好ましくは10〜25℃の範囲であってよく、プロピレン/触媒成分の比は0〜2.0、好ましくは0.5〜1.3の範囲である。
【0030】
好ましい有機Al化合物はアルミニウムアルキル化合物である。アルキル−Al化合物は、好ましくは、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物の中から選択される。また、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水素化物、又はアルキルアルミニウムセスキクロリド、例えばAlEtCl及びAlEtClを、場合によってはかかるトリアルキルアルミニウム化合物と混合して用いることもできる。
【0031】
重合工程(C)からアイソタクチックプロピレン(コ)ポリマーを得るためには、固体触媒成分中に存在する電子ドナーに加えて、工程(A)においてアルミニウムアルキル共触媒に加えて外部電子ドナー(ED)を用いることが望ましい。これらの外部電子ドナーは、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシラン、及びエーテルの中から選択することができる。
【0032】
上記の触媒系は、高い重合活性に加えて、それらを本発明の気相重合方法において用いるのに特に好適にする良好な形態特性も示す。
【0033】
予備重合−工程(B):
予備重合処理は、一般に、どのようなタイプの反応器内であっても液体媒体中で行う。したがって、オレフィンモノマーを重合触媒系と接触させるために、連続撹拌タンク反応器(CSTR)並びにループ反応器を用いることができる。しかしながら、予備重合は、好ましくは、ループ反応器内又は一連の2つのループ反応器内で行う。
【0034】
工程(B)の液体媒体は、液体プロピレンを場合によっては不活性炭化水素溶媒と共に含み、炭化水素溶媒/プロピレンの重量比は0〜7.0、好ましくは0.4〜2.5の範囲であってよい。かかる炭化水素溶媒は、トルエンのような芳香族、或いはプロパン、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、シクロヘキサン、及び2,2,4−トリメチルペンタンのような脂肪族のいずれであってもよい。炭化水素溶媒としてアルカンを用いることが好ましく、工程(C)のマトリクスの嵩密度に対して影響を及ぼす更なるプロセスパラメーター(アルカン/プロピレン比)を与えると有利である。
【0035】
予備重合工程(b)は、好ましくは、水素のような分子量調整剤の不存在下で行う。また、幾つかの場合においては、予備重合反応器に水素を供給して、これによって工程(b)から得られるプレポリマーの固有粘度を0.2〜6.0dL/gの範囲に調節することができる。
【0036】
本発明の工程(b)における平均滞留時間は、予備重合反応器の容積と、かかる反応器から排出されるポリマースラリーの容積速度との間の比である。このパラメーターは、概して20〜150分、好ましくは30〜80分の範囲である。
【0037】
工程(b)における操作温度は、概して10〜40℃の範囲であり、好ましい範囲は20〜30℃の範囲である。予備重合触媒系の重合度は、概して固体触媒成分1gあたり50〜400g、好ましくは固体触媒成分1gあたり100〜300gの範囲である。予備重合触媒系を含むポリマースラリーを予備重合反応器から排出し、重合工程(C)に連続的に供給する。
【0038】
重合工程(C):
本発明の重合工程(C)及び(D)は、気相反応器内、好ましくは一連の2以上の流動床反応器内で行う。
【0039】
工程(C)の流動床反応器内において、プロピレンを重合して半結晶質マトリクスを与える。プロピレン、場合によってはコモノマー、分子量調整剤として水素、及び不活性ガスを含む気体混合物を気相反応器に供給する。また、得られる半結晶質ポリプロピレン成分が10重量%より低く、好ましくは6%より低い周囲温度におけるキシレン中の溶解度を有し、半結晶質マトリクス内に含まれるコモノマーの全量が10重量%未満、好ましくは5重量未満であるという条件の下に、限定量のオレフィンコモノマーを工程(C)に供給することもできる。好ましいコモノマーは、エチレン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0040】
操作温度は50〜120℃の間、好ましくは60〜85℃の間で選択され、一方、操作圧力は1.0〜3.0MPaの間、好ましくは1.4〜2.5MPaの間である。
【0041】
水素/プロピレンのモル比は、概して0.0002〜0.7の範囲であり、プロピレンモノマーは、反応器内に存在する気体の全容積を基準として10容積%〜100容積%、好ましくは30〜70容積%の範囲である。供給混合物の残りの部分は、不活性ガス、及び存在する場合には1種類以上のα−オレフィンコモノマーを含む。重合反応によって生成する熱を放散させるのに有用な不活性ガスは、好都合には、窒素又は好ましくは飽和軽質炭化水素から選択され、最も好ましいものはプロパンである。
【0042】
また、不活性ガスは、全重合プロセスにおいて、即ち工程(C)及び(D)の一連の直列に接続された気相反応器内において生成スプリット(production split)を調節するためにも用いる。実際、工程(C)及び(D)において用いる不活性ガスのそれぞれの量は、これらの重合工程において達成される生成スプリットに大きな影響を与える。工程(C)からの半結晶質マトリクスは、全プロセスにおいて製造される異相コポリマーの15〜90重量%、より通常的には20〜60重量%に相当する。
【0043】
重合工程(D):
重合工程(C)から排出される半結晶質マトリクス及び同伴ガスを、重合工程(D)に移す。ポリマー粉末は、一般に、第1の反応器によって排出される気体混合物が工程(D)の気相反応器に侵入することを防ぐために、固体/気体分離工程に通す。気体混合物が分離され、これを第1の重合反応器に再循環し、一方、ポリマー粒子は重合工程(D)に供給する。
【0044】
工程(D)は、1以上の気相反応器、好ましくは流動床反応器内で行い、15重量%より高く、好ましくは40〜95重量%の割合で周囲温度においてキシレン中に部分的に可溶の1種類以上のオレフィンコポリマーを製造する。かかるプラストマー又はエラストマーコポリマーは、
−エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセンのコポリマー;
−プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセンのコポリマー;
−エチレン、プロピレン、及びC〜C12−α−オレフィンのターポリマー;
から選択することができる。
【0045】
好ましくは、本発明の工程(D)において、エチレンとプロピレン及び/又は1−ブテンとのコポリマーを製造する。
【0046】
本発明の第1の好ましい態様によれば、重合工程(D)は単一の流動床反応器から構成され、この中で10〜80重量%のエチレンを含むエチレンとプロピレン及び/又は1−ブテンとのコポリマーを製造する。
【0047】
本発明の他の好ましい態様によれば、重合工程(D)は一連の2つの流動床反応器を含んでいるので、異なるエチレン/コモノマーの組成を有する2種類の別個のエチレンコポリマーを製造することができる。
【0048】
重合工程(D)から排出される最終の異相コポリマーは、工程(C)及び工程(D)の反応器内での逐次重合から得られるポリマーである。工程(D)の重合反応器において異なるエチレン濃度を定めた場合、本発明方法によって、よりアモルファスのエラストマー成分とよりアモルファスでないエラストマー成分とを結合させ、同時にかかる2種類のエラストマー成分を第1の重合工程(C)で製造された結晶質マトリクス中に有効に分散させることができる。
【0049】
特許請求した方法の高い汎用性のために、上記に規定した(A)〜(D)の工程において選択される操作条件に応じて、本発明によって得られる異相プロピレンコポリマーを広範囲の用途において用いることができる。主な有利性は以下の分野において達成される。
【0050】
−流動性、柔軟性、溶接性の最適のバランスの見地からルーフィング/ジオメンブレン/ビチューメン;
−剛性、耐衝撃性、収縮性、流動性の最適のバランスの見地から自動車分野;
−流動性、耐衝撃性、剛性、透明性の最適のバランスの見地から射出成形分野。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一態様にかかる方法を実施するための装置の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
ここで、図1を参照して本発明を詳細に説明する。これは、本発明の例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0053】
図1に示す態様によれば、予備接触工程(A)は連続撹拌タンク内で行い、一方、触媒系の予備重合(工程b)は液相ループ反応器内で行う。重合工程(C)及び(D)は、一連の3つの直列に接続された気相反応器内で行う。
【0054】
固体触媒成分1、共触媒及び外部ドナー化合物を含む流れ2を、場合によってはプロピレンの存在下でプロパンのような希釈剤と一緒に予備接触容器3に供給する。これらの成分を、工程(A)に関して上記に記載した操作条件にしたがって容器3内で接触させる。
【0055】
得られた触媒系を、ライン4を通してループ予備重合反応器に連続的に供給し、同時に、液体プロピレンを、場合によってはプロパンのようなアルカンと一緒に、ライン6を通してループ反応器5に供給する。
【0056】
ループ反応器5から排出される予備重合触媒系は、ライン7を通して第1の流動床反応器8に供給し、ここで本発明方法にしたがって半結晶質ポリマー成分を製造する。
【0057】
図1の流動床反応器8は、成長ポリマー粒子の流動床9、流動化プレート10、及び速度減少区域11を含む。速度減少区域11は、一般に、反応器の流動床部分の直径と比較して増加した直径のものである。速度減少区域11の頂部から排出される気体流は、再循環ライン12を通して圧縮器13、次に熱交換器14に送る。再循環ライン12には、プロピレン、水素、不活性ガス、及び場合によってはコモノマーを供給するためのライン15が備えられている。気体流は、熱交換器14を通して冷却し、次に流動床反応器8の底部に供給する。このようにして、上向きに流れるガスによってポリマー粒子の床が流動状態に連続的に保持される。
【0058】
工程(C)において得られるポリマーは、流動床9の下部から排出され、第1の重合反応器からの気体混合物が工程(D)の反応器に侵入することを防ぐために、ライン16を通して固体/気体分離器17に供給する。かかる気体混合物は、ライン18を通して再循環ライン12に戻し、一方、分離されたポリマーはライン19を通して工程(D)の第1の流動床反応器20に供給する。
【0059】
図1に与えられている態様によれば、重合工程(D)は、異なるエチレン含量を有する2つの別個のラバーフラクションを製造するために用いることができる一連の流動床反応器20及び21内で行う。反応器20及び21は、第1の流動床反応器8に関して既に説明したものと同じ構造配置を有する。したがって、本発明方法によって得られる異相プロピレンコポリマーは、排出ライン22を通して最後の流動床反応器21から排出される。
【0060】
以下の実施例によって、本発明の範囲を限定することなく本発明を更に説明する。
【実施例】
【0061】
特性:
注ぎ入れ嵩密度(poured bulk density)(PBD)(g/cm):DIN−53194にしたがって測定した。
【0062】
メルトインデックスL(MIL)(dg/分):ISO−1133にしたがって測定した。
【0063】
曲げ弾性率(MEF)(MPa):ISO−178にしたがって測定した。
【0064】
23℃におけるアイゾット(kJ/m):ISO−180にしたがって測定した。
【0065】
ショアD硬度(°):ISO−2039にしたがって測定した。
【0066】
60°における光沢度(‰):ATSM−D523にしたがって測定した。
【0067】
溶解度指数(XS)(重量%):
以下の方法を用いて、25℃においてオルトキシレン中に可溶のポリプロピレンのホモポリマー又はコポリマーの割合を測定した。
【0068】
秤量量の試料を135℃においてオルトキシレン中に溶解し、溶液を制御された条件下で冷却し、25℃に保持して、不溶の物質を沈殿させた。次に、沈殿物を濾過し、濾過の後、濾過された溶液のアリコートを蒸発させ、秤量した(全可溶分)。
【0069】
キシレン可溶フラクションの固有粘度(IVXS)(dL/g):
固有粘度は、溶液中のポリマーの流体力学的容積の関数であり、公知の構造の線状ポリマーに関しては分子量に関係している。135℃においてテトラヒドロナフタレン中に溶解した秤量量のポリマー試料に関して試験を行った。135℃に保持した好適な粘度計内でこの希釈溶液の流動時間を測定した。
【0070】
実施例1〜3:
一般的な重合条件:
−触媒成分の予備接触のための1.5Lの容器;
−80Lの容積を有するループ予備重合反応器;
−それぞれが1.5mの容積を有する一連の2つの直列に接続された流動床反応器;
を含むプロセス装置を用いて重合を連続的に行った。
【0071】
実施例1:
予備接触−工程(A):
−ジイソブチルフタレートを内部ドナー化合物として用いるEP−395083の実施例3に記載されている手順を用いて調製したチタン固体触媒成分:この成分のHg多孔度は0.66cm/gであった。;
−共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL);
−外部ドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS);
を含むチーグラー・ナッタ触媒系を重合触媒として用いた。
【0072】
上記の固体触媒成分(以下、「固体触媒」と称する)を予備接触容器に供給した。TEAL/固体触媒の重量比は5であり、TEAL/DCPMSの重量比は5であった。
【0073】
また、1.0のプロピレン/固体触媒の重量比でプロピレンも予備接触容器中に導入した。上記の成分を25℃の温度において10分間予備接触させた。
【0074】
予備重合−工程(B):
予備接触容器から排出された触媒系を、プロピレン及びプロパンの液体流と一緒に、予備重合ループ反応器に連続的に供給した。ループ反応器内での予備重合は、1.28のC/Cの比を用い、20℃の温度及び30分の滞留時間で操作した。予備重合の収量は、固体触媒成分1gあたり約200gであった。
【0075】
ポリプロピレンのスラリーをループ反応器から連続的に排出し、第1の流動床反応器に供給して本発明の重合工程(C)を行った。
【0076】
本発明において与える教示にしたがって重合工程(C)において製造される半結晶質マトリクスの注ぎ入れ嵩密度(PBD)を調節することのできる予備接触及び予備重合工程における操作パラメーターを、表1に示す。
【0077】
重合−工程(C):
第1の気相反応器内において、分子量調整剤としてHを用い、不活性希釈剤としてプロパンの存在下においてプロピレンを重合した。この反応器にはコモノマーは供給しなかった。補給プロパン、プロピレン、及び分子量調整剤として水素をこの反応器に供給した。80℃の温度及び2.0MPaの圧力において重合を行った。
【0078】
流動床反応器内の気相の組成、並びに第1の反応器の生成スプリット(重量%)及び得られた半結晶質マトリクスの幾つかの特性を表1に示す。表1から、ポリプロピレン樹脂は0.322g/cmの注ぎ入れ嵩密度及び2.3重量%のキシレン中に可溶のフラクションを有していたことが分かる。第1の重合反応器のスプリットは60重量%であった。
【0079】
得られた半結晶質物質を第1の反応器から連続的に排出し、気体/固体分離器を用いてプロピレン及びプロパンから分離し、次に第2の流動床反応器中に導入した。
【0080】
重合−工程(D):
表2に示す操作条件にしたがって第2の流動床反応器内においてエチレン/プロピレンコポリマーを製造した。工程(D)で得られたラバー状コポリマーは、68重量%のキシレン中の溶解度を有していることを特徴としていた。
【0081】
上記の逐次重合から生成した異相プロピレンコポリマーを第2の気相反応器から連続的に排出した。
【0082】
この異相コポリマーの幾つかの構造特性(MIL、XS、IVXS、C含量)及び幾つかの機械特性(アイゾット、曲げ弾性率)を表3に示す。機械特性の最適のバランスにより、この異相コポリマーは自動車分野の物品を製造するために用いるのに好適なものである。
【0083】
実施例2:
予備接触−工程(A):
重合触媒として、実施例1と同じチーグラー・ナッタ触媒系を用いた。触媒成分を、1.0のプロピレン/固体触媒の重量比でプロピレンと一緒に予備接触容器中に導入した。上記の成分を、15℃の温度において10分間予備接触させた。
【0084】
予備重合−工程(B):
予備接触容器から排出された触媒系を、プロピレン及びプロパンの液体流と一緒に、予備重合ループ反応器に連続的に供給した。表1に示すように、予備重合は実施例1と同じ操作条件(C/Cの比、温度、滞留時間)を用いて行った。
【0085】
ポリプロピレンのスラリーをループ反応器から連続的に排出し、第1の流動床反応器に供給して本発明の重合工程(C)を行った。
【0086】
重合−工程(C):
第1の気相反応器内において、分子量調整剤としてHを用い、不活性希釈剤としてプロパンの存在下においてプロピレンを重合した。この反応器にはコモノマーは供給しなかった。補給プロパン、プロピレン、及び分子量調整剤として水素を、この反応器に供給した。80℃の温度及び2.0MPaの圧力において重合を行った。
【0087】
流動床反応器内の気相の組成、並びに生成スプリット(重量%)及び得られた半結晶質マトリクスの幾つかの特性を表1に示す。表1から、ポリプロピレン樹脂は0.340g/cmの注ぎ入れ嵩密度及び2.0重量%のキシレン中に可溶のフラクションを有していたことが分かる。第1の重合反応器のスプリットは70重量%であった。
【0088】
実施例1と比較することによって示されるように、工程(A)及び(B)において他の条件が同一であるならば、工程(A)における温度を低下させると、工程(C)において製造される半結晶質マトリクスの注ぎ入れ嵩密度の増加がもたらされる。
【0089】
得られた半結晶質マトリクスを第1の反応器から連続的に排出し、気体/固体分離器を用いてプロピレン及びプロパンから分離し、次に第2の流動床反応器中に導入した。
【0090】
重合−工程(D):
表2に示す操作条件にしたがって第2の流動床反応器内においてエチレン/プロピレンコポリマーを製造した。工程(D)で製造されたラバー状コポリマーは、80重量%のキシレン中の溶解度を有していることを特徴としていた。
【0091】
上記の逐次重合から生成した異相プロピレンコポリマーを第2の気相反応器から連続的に排出した。
【0092】
この異相コポリマーの幾つかの構造特性(MIL、XS、IVXS、C含量)及び幾つかの物理特性(アイゾット、曲げ弾性率、収縮)を表3に示す。最適値の収縮、及びアイゾット/曲げ弾性率のバランスにより、この異相コポリマーは自動車分野のバンパーを製造するために用いるのに好適なものである。
【0093】
実施例3:
予備接触−工程(A):
重合触媒として、実施例1と同じチーグラー・ナッタ触媒系を用いた。触媒成分を、0.5のプロピレン/固体触媒の重量比でプロピレンと一緒に予備接触容器中に導入した。上記の成分を、25℃の温度において10分間予備接触させた。
【0094】
予備重合−工程(B):
予備接触容器から排出された触媒系を、プロピレン及びプロパンの液体流と一緒に、予備重合ループ反応器に連続的に供給した。予備重合は実施例1と同じ操作条件(C/Cの比、温度、滞留時間)を用いて行った。
【0095】
ポリプロピレンのスラリーをループ反応器から連続的に排出し、第1の流動床反応器に供給して本発明の重合工程(C)を行った。
【0096】
重合−工程(C):
第1の気相反応器内において、分子量調整剤としてHを用い、不活性希釈剤としてプロパンの存在下においてプロピレンを重合した。この反応器にはコモノマーは供給しなかった。補給プロパン、プロピレン、及び分子量調整剤として水素をこの反応器に供給した。80℃の温度及び2.0MPaの圧力において重合を行った。
【0097】
流動床反応器内の気相の組成、並びに第1の反応器の生成スプリット(重量%)及び得られた半結晶質マトリクスの幾つかの特性を表1に示す。表1から、ポリプロピレン樹脂は0.312g/cmの注ぎ入れ嵩密度及び2.0重量%のキシレン中に可溶のフラクションを有していたことが分かる。第1の重合反応器のスプリットは50重量%であった。
【0098】
実施例1と比較することによって示されるように、工程(A)及び(B)において他の条件が同一であるならば、工程(A)におけるC/固体触媒の比を減少させると、工程(C)において製造される半結晶質マトリクスの注ぎ入れ嵩密度の低下がもたらされる。
【0099】
得られた半結晶質物質を第1の反応器から連続的に排出し、気体/固体分離器を用いてプロピレン及びプロパンから分離し、次に第2の流動床反応器中に導入した。
【0100】
重合−工程(D):
表2に示す操作条件にしたがって第2の流動床反応器内においてエチレン/プロピレンコポリマーを製造した。工程(D)で製造されたラバー状コポリマーは、78重量%のキシレン中の溶解度を有していることを特徴としていた。
【0101】
上記の逐次重合から生成した異相プロピレンコポリマーを第2の気相反応器から連続的に排出した。
【0102】
この異相コポリマーの幾つかの構造特性(MIL、XS、IVXS、C含量)及び幾つかの物理特性(アイゾット、曲げ弾性率、収縮)を表3に示す。最適値の収縮、及びアイゾット/曲げ弾性率のバランスにより、この異相コポリマーは自動車分野のバンパーを製造するために用いるのに好適なものである。
【0103】
実施例4〜6:
一般的な重合条件:
−触媒成分の予備接触のための1.5Lの容器;
−80Lの容積を有するループ予備重合反応器;
−それぞれが1.5mの容積を有する一連の3つの直列に接続された流動床反応器;
を含む図1に示すプロセス装置内で重合を連続的に行った。
【0104】
実施例4:
予備接触−工程(A):
重合触媒として、実施例1と同じチタン固体触媒成分を用いた。
【0105】
上記の固体触媒成分(以下、「固体触媒」と称する)を予備接触容器に供給した。TEAL/固体触媒の重量比は5であり、TEAL/DCPMSの重量比は5であった。
【0106】
また、1.0のプロピレン/固体触媒の重量比でプロピレンも予備接触容器中に導入した。上記の成分を20℃の温度において10分間予備接触させた。
【0107】
予備重合−工程(B):
予備接触容器から排出された触媒系を、プロピレン及びプロパンの液体流と一緒に、予備重合ループ反応器に連続的に供給した。ループ反応器内での予備重合は、1.28のC/Cの比を用い、20℃の温度及び30分の滞留時間で操作した。予備重合の収量は、固体触媒成分1gあたり約180gであった。
【0108】
ポリプロピレンのスラリーをループ反応器から連続的に排出し、第1の流動床反応器に供給して本発明の重合工程(C)を行った。
【0109】
重合−工程(C):
第1の気相反応器内において、分子量調整剤としてHを用い、不活性希釈剤としてプロパンの存在下においてプロピレンを重合した。コモノマーとしてエチレンをこの反応器に供給した。補給プロパン、プロピレン、及び分子量調整剤として水素をこの反応器に供給した。80℃の温度及び2.0MPaの圧力において重合を行った。
【0110】
流動床反応器内の気相の組成、並びに生成スプリット(重量%)及び得られた半結晶質マトリクスの幾つかの特性を表1に示す。表1から、ポリプロピレン樹脂は0.325g/cmの注ぎ入れ嵩密度及び9.8重量%のキシレン中に可溶のフラクションを有していたことが分かる。第1の重合反応器のスプリットは28重量%であった。
【0111】
重合−工程(D):
この重合工程においては、図1に示すような一連の2つの流動床反応器内において2種類の異なるエチレン/プロピレンコポリマーを製造した。
【0112】
表2に示すような異なるモノマー濃度、特にエチレン/プロピレンの比を用いてこれらの反応器を操作することによって、第2及び第3の気相反応器における操作条件を相違させた。
【0113】
第2の反応器において得られるラバー状のコポリマーは90重量%のキシレン中の溶解度を有することを特徴としており、一方、第3の反応器において得られるラバー状のコポリマーは60重量%のキシレン中の溶解度を有することを特徴としていた。
【0114】
上記の逐次重合から生成した異相プロピレンコポリマーを第2の気相反応器から連続的に排出した。
【0115】
この異相コポリマーの幾つかの構造特性(MIL、XS、IVXS、C含量)及び幾つかの特定の特性(硬度、光沢)を表3に示す。製造されたコポリマーは、フローリングの用途において用いるのに好適である。
【0116】
実施例5:
予備接触−工程(A):
重合触媒として、実施例4と同じチーグラー・ナッタ触媒系を用いた。触媒成分を、1.0のプロピレン/固体触媒の重量比でプロピレンと一緒に予備接触容器中に導入した。上記の成分を、20℃の温度において10分間予備接触させた。
【0117】
予備重合−工程(B):
予備接触容器から排出された触媒系を、プロピレン及びプロパンの液体流と一緒に、予備重合ループ反応器に連続的に供給した。表1に示すように、予備重合は実施例4と同じ温度において、しかしながらC/Cの比を1.86の値に変更して行った。
【0118】
ポリプロピレンのスラリーをループ反応器から連続的に排出し、第1の流動床反応器に供給して本発明の重合工程(C)を行った。
【0119】
重合−工程(C):
第1の気相反応器内において、分子量調整剤としてHを用い、不活性希釈剤としてプロパンの存在下においてプロピレンを重合した。コモノマーとしてエチレンをこの反応器に供給した。補給プロパン、プロピレン、及び分子量調整剤として水素をこの反応器に供給した。80℃の温度及び2.0MPaの圧力において重合を行った。
【0120】
流動床反応器内の気相の組成、並びに生成スプリット(重量%)及び得られた半結晶質マトリクスの幾つかの特性を表1に示す。表1から、ポリプロピレン樹脂は0.331g/cmの注ぎ入れ嵩密度及び9.3重量%のキシレン中に可溶のフラクションを有していたことが分かる。第1の重合反応器のスプリットは30重量%であった。
【0121】
実施例4と比較することによって示されるように、工程(A)及び(B)において他の条件が同一であるならば、工程(B)においてC/Cの比を増加させると、工程(C)において製造される半結晶質マトリクスの注ぎ入れ嵩密度の増加がもたらされる。
【0122】
得られた半結晶質物質を第1の反応器から連続的に排出し、気体/固体分離器を用いてプロピレン及びプロパンから分離し、次に第2の流動床反応器中に導入した。
【0123】
重合−工程(D):
この重合工程においては、図1に示すような一連の2つの流動床反応器内において2種類の異なるエチレン/プロピレンコポリマーを製造した。
【0124】
表2に示すような異なるモノマー濃度、特にエチレン/プロピレンの比を用いてこれらの反応器を操作することによって、第2及び第3の気相反応器における操作条件を相違させた。
【0125】
第2の反応器において得られるラバー状のコポリマーは87重量%のキシレン中の溶解度を有することを特徴としており、一方、第3の反応器において得られるラバー状のコポリマーは67重量%のキシレン中の溶解度を有することを特徴としていた。
【0126】
上記の逐次重合から生成した異相プロピレンコポリマーを第2の気相反応器から連続的に排出した。
【0127】
この異相コポリマーの幾つかの構造特性(MIL、XS、IVXS、C含量)及び幾つかの特定の特性(硬度、光沢)を表3に示す。製造されたコポリマーは、フローリングの用途において用いるのに好適である。
【0128】
実施例6:
予備接触−工程(A):
重合触媒として、実施例4と同じチーグラー・ナッタ触媒系を用い、相違点はTEAL/DCPMSの重量比が10であったことであった。
【0129】
触媒成分を、0.7のプロピレン/固体触媒の重量比でプロピレンと一緒に予備接触容器中に導入した。
【0130】
上記の成分を、20℃の温度において10分間予備接触させた。
【0131】
予備重合−工程(B):
予備接触容器から排出された触媒系を、プロピレン及びプロパンの液体流と一緒に、予備重合ループ反応器に連続的に供給した。表1に示すように、予備重合は実施例4と同じ温度及びC/Cの比において行った。
【0132】
ポリプロピレンのスラリーをループ反応器から連続的に排出し、第1の流動床反応器に供給して本発明の重合工程(C)を行った。
【0133】
重合−工程(C):
第1の気相反応器内において、分子量調整剤としてHを用い、不活性希釈剤としてプロパンの存在下においてプロピレンを重合した。補給プロパン、プロピレン、及び分子量調整剤として水素をこの反応器に供給した。80℃の温度及び2.0MPaの圧力において重合を行った。
【0134】
流動床反応器内の気相の組成、並びに生成スプリット(重量%)及び得られた半結晶質マトリクスの幾つかの特性を表1に示す。表1から、ポリプロピレン樹脂は0.319g/cmの注ぎ入れ嵩密度及び2.5重量%のキシレン中に可溶のフラクションを有していたことが分かる。第1の重合反応器のスプリットは30重量%であった。
【0135】
実施例4と比較することによって示されるように、工程(A)及び(B)において他の条件が同一であるならば、工程(A)においてC/固体触媒を減少させると、工程(C)において製造される半結晶質マトリクスの注ぎ入れ嵩密度の減少がもたらされる。
【0136】
得られた半結晶質物質を第1の反応器から連続的に排出し、気体/固体分離器を用いてプロピレン及びプロパンから分離し、次に第2の流動床反応器中に導入した。
【0137】
重合−工程(D):
この重合工程においては、図1に示すような一連の2つの流動床反応器内において2種類の異なるエチレン/プロピレンコポリマーを製造した。
【0138】
表2に示すような異なるモノマー濃度、特にエチレン/プロピレンの比を用いてこれらの反応器を操作することによって、第2及び第3の気相反応器における操作条件を相違させた。
【0139】
第2の反応器において得られるラバー状のコポリマーは90重量%のキシレン中の溶解度を有することを特徴としており、一方、第3の反応器において得られるラバー状のコポリマーは64重量%のキシレン中の溶解度を有することを特徴としていた。
【0140】
上記の逐次重合から生成した異相プロピレンコポリマーを第2の気相反応器から連続的に排出した。
【0141】
この異相コポリマーの幾つかの構造特性(MIL、XS、IVXS、C含量)及び幾つかの機械特性(−50℃におけるアイゾット、曲げ弾性率)を表3に示す。製造されたコポリマーは、自動車分野における衝撃改質剤として用いるのに好適である。
【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続されている2以上の気相反応器内において、ハロゲン化マグネシウム上に担持されているチタン化合物をベースとする触媒成分を含む重合触媒の存在下で異相プロピレンコポリマーを製造するための重合方法であって、
(A)該触媒成分を、有機アルミニウム化合物、場合によっては外部ドナー化合物と、場合によってはプロピレンの存在下、5℃〜30℃の温度において、0〜2.0の範囲のプロピレン/触媒成分の重量比で接触させ;
(B)(A)からの触媒を、場合によっては不活性炭化水素溶媒の存在下においてプロピレンを用いて予備重合し;
(C)プロピレンを、場合によっては15重量%より低い量の他のα−オレフィンコモノマーと共に重合して半結晶質ポリマー成分を製造し;
(D)引き続いて、2種類以上のC〜C10−α−オレフィンコモノマーを共重合して、15重量%より高いキシレン中の溶解度を有する1種類以上のオレフィンコポリマーを製造する;
工程を含み、工程(C)の半結晶質成分の嵩密度を0.40g/cmより低い値に調節することを特徴とする上記方法。
【請求項2】
該半結晶質成分の嵩密度を0.25g/cm〜0.35g/cmの範囲に調節する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(A)において温度を上昇させることによって該半結晶質マトリクスの嵩密度を低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(A)においてプロピレン/触媒成分の重量比を減少させることによって該半結晶質マトリクスの嵩密度を低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(B)における炭化水素溶媒/プロピレンの重量比が0〜7.0の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(B)において炭化水素溶媒/プロピレンの比を減少させることによって該半結晶質マトリクスの嵩密度を低下させる、請求項1及び5に記載の方法。
【請求項7】
工程(A)における温度が10〜25℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(A)におけるプロピレン/触媒成分の比が0.5〜1.3の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(A)において、外部電子ドナーが、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシラン、及びエーテルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(B)をループ反応器内又は一連の2つのループ反応器内で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(B)の不活性炭化水素溶媒がプロパンである、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程(B)における温度が10〜40℃の範囲である、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
工程(C)及び(D)を一連の2つ以上の流動床反応器内で行う、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
工程(C)の半結晶質ポリプロピレン成分が周囲温度において10重量%より低いキシレン中の溶解度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程(D)において、15重量%より高いキシレン中の溶解度を有するオレフィンコポリマーが、
エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセンのコポリマー;
プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセンのコポリマー;
エチレン、プロピレン、及びC〜C12−α−オレフィンのターポリマー;
から選択される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−545659(P2009−545659A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523235(P2009−523235)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057539
【国際公開番号】WO2008/015113
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】