説明

異種環境での透過的なサービス適合

ネットワーク接続されたユーザ装置に送信されるデータストリームを適合させる方法が開示される。この方法では、各装置に関連する環境情報がそれらの装置に配置されるエージェントに記憶される。この方法は、複数の装置(HAA、228)の構成を検出すること、上記複数の装置(HAA、228)のそれぞれについての構成情報を記憶すること、及び、上記複数の装置のそれぞれについての上記構成情報を、基幹網内のゲートウェイにある環境ミラーエージェント(LNAA、229)に送信することを含む。この環境情報を参照することにより、サービスプロバイダは、マルチメディアストリーム等のデータストリームの送信を、装置及び関連するネットワークの性能に基づくサービスに適合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ここで参照により本明細書に援用される、2004年8月12日に出願された米国仮特許出願第60/600,977号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
モバイルネットワークの進化は、ますます複雑で付加価値のあるネットワークサービスを開発するようにサービスプロバイダを駆り立ててきた。次世代のモバイルユーザは、多様なアクセス網(たとえば、802.11、符号分割多元接続(CDMA)、Global System for Mobile Communications(GSM)、ケーブル、デジタル加入者回線(DSL)等)を介して様々な装置(たとえば、携帯電話、ノート型パソコン、個人情報端末(PDA)等)を通してこれらのネットワークサービスに接続できるようになる。このようなアクセス網を介してのサービスへのアクセスに、このような様々な装置が利用されることが増えるにつれて、これらの装置及びネットワークが協働できるようにすることが重要になる。たとえば、アクティブな通信セッションをある装置から別の装置に、及び/又は、ある種類のアクセス網から別の種類のネットワークに転送(ハンドオフ)することがますます望ましくなる。様々な装置及びネットワークによってサポートされるプロトコルやメッセージ処理性能がますます多様になると、このような転送は新たな問題を生じさせる恐れがある。たとえば、装置によっては(たとえば、携帯電話、PDA)、処理性能のより高い装置(たとえば、ノートパソコン)と同じデータ速度に対応できない。したがって、様々な装置/ネットワークの性能に適合するように、進行中のアプリケーションセッション、たとえばサービスプロバイダと装置との間のアクティブな通信セッションを適合させる(調整する)ことがますます重要になる。
【0003】
ユーザ装置の機能は、単一の装置に限定される必要はない。たとえば、多くのタスクを単一の装置で実行することが可能であるが、他の装置が利用可能であれば、ユーザに提供されるサービスを向上させることができる。したがって、よく知られているように、ローカルネットワーク接続された多数の装置を協働的に利用してユーザセッションをサポート可能なパーソナルアクセスネットワーク(PAN)が開発されている。たとえば、自動車のディスプレイ装置は、広帯域無線インターネット接続を有する携帯電話を有するPANの一部となることができる。インターネット接続を介して受け取られる情報を自動車のディスプレイ装置に表示することができる。このようなパーソナルエリアネットワークがますます普及するにつれて、単一の装置からのアプリケーションセッションを転送して、同じアプリケーションセッションをローカルネットワーク内のいくつかの装置に分散させる機能が重要になる。
【0004】
既存のハンドオフ方法は、データ通信セッションを装置及び/又はネットワークの間で転送するために用いられている。たとえば、既知のセルラハンドオフ技術及びモバイルIP手法は、装置がネットワークを変更したり、新しいIPアドレスを取得するときに、通信セッションを維持するように機能する。したがって、端末がアクセス網を変更する際に、データが損失せず、通信は透過的に維持される。しかし、これらの技法ではネットワークを変更することができるが、装置間のハンドオフをサポートしない。別の従来技術による試みでは、既知のセッションイニシエーションプロトコル(SIP)等、Voice over IP(VoIP)プロトコルを使用するネットワークで、ユーザはリアルタイム通信セッション中に端末及びネットワークを変更することができる。しかしながら、これらのVoIPプロトコルは通常、ある装置/端末から別の装置/端末への呼を、端末のIPアドレスに基づいて、単純に転送又はリダイレクトするだけである。これらのプロト
コルには、装置の性能及び構成を考慮に入れて、特定の装置に適合するように通信セッションコンテンツを変更することへの備えがある。しかし、SIPは通常、リアルタイムアプリケーションのみを対象としている。さらに、SIPはアプリケーションを複数の装置へ分散することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[発明の概要]
あるネットワークや装置から別のネットワークや装置へのハンドオフを実現する従来の方法は、多くの面で有利であるが、特定の諸点で制約がある。特に上述したように、これらのハンドオフは、装置の構成を考慮に入れて通信セッションを装置の性能に適合させることはせず、単一のアプリケーションセッションを複数の装置に分散する能力をサポートしない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は実質的にこの制約を解消する。例示的な一実施形態では、装置に配置されたエージェントが、その装置の環境情報を記憶する。この環境情報は、装置のハードウェア性能、インタフェース性能及びアプリケーション性能に関連する情報を含むことができる。別の実施形態では、この環境情報は、ローカルネットワークゲートウェイにあるエージェントに送信されて記憶され、単一のアプリケーションセッションを複数の装置へ分散することをサポートする。別の実施形態では、環境情報は、サービスプロバイダの基幹網に配置されるミラーエージェントに記憶される。この環境情報を参照することにより、サービスプロバイダは、装置や関連するネットワークの性能に基づいて、マルチメディアストリーム等のデータストリームの送信を装置に適合させることができる。
【0007】
一実施形態では、本明細書においてホームアダプテーションエージェント(Home Adaptation Agent)と呼ばれるエージェントがユーザ装置に配置され、その装置の構成情報を収集する。この情報は例示的に、装置のハードウェア構成、ネットワーク性能及びアプリケーション性能に関連する情報を含むことができる。別の実施形態では、装置がローカルネットワークに入ると、ホームアダプテーションエージェントにより収集された情報が、ローカルネットワークゲートウェイに配置された別のエージェント(本明細書ではローカルネットワークアダプテーションエージェント(Local Network Adaptation Agent)と呼ぶ)に転送される。ローカルネットワークアダプテーションエージェントは、たとえば、その装置についての構成情報の他にもローカルネットワーク内の他の装置についての構成情報も収集する。さらに別の実施形態では、ホームアダプテーションエージェント又はローカルネットワークアダプテーションエージェントにより収集された情報は、サービスプロバイダの基幹網内のゲートウェイに配置されるさらに別のエージェント(本明細書では環境ミラーエージェント(Environmental Mirror Agent)と呼ぶ)にコピーされる。そして、サービスプロバイダネットワークは、この情報を使用して、ネットワークと各装置との間のデータ通信セッションを適合させることができる。
【0008】
本発明のこれらの利点及び他の利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することで当業者に明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[発明の詳細な説明]
図1は、サービスプロバイダの基幹網に接続されたユーザ装置を有する従来技術による簡易化されたネットワークを示す。この図を参照すると、ユーザ装置101(ここではノートパソコン)がゲートウェイ103を介してアクセス網102に接続される。本明細書において使用するゲートウェイという語は、それを介してネットワークへのアクセスが提
供されるハードウェア及び/又はソフトウェア機能を指す。アクセス網102はたとえば、ケーブルベースのインターネットアクセス網であってもよく、ゲートウェイ103はたとえば、ケーブルモデムであってもよい。アクセス網102は、サービスプロバイダネットワーク104(たとえば既知のvoice over internet protocol(VoIP)ネットワーク)へのインタフェースを、ゲートウェイ105(たとえばVoIPネットワーク中の境界要素)を介して提供する。当該技術分野において既知のように、ノートパソコン101や他のユーザ装置は、このようなネットワークアーキテクチャを利用して、サービスプロバイダネットワーク104に接続してサービスを取得することができる。図1のアーキテクチャは単に例示的な性質のものであり、ユーザ装置がアクセス網を介してサービスプロバイダネットワークに接続する任意のネットワークアーキテクチャを記載するように意図されていることが、当業者であれば理解できるだろう。
【0010】
図2は、本発明を実施することができる拡張されたネットワークアーキテクチャであって、これによって異なるサブネットワーク内の様々なユーザ装置がサービスプロバイダネットワークにアクセスできる拡張されたネットワークアーキテクチャを示す。たとえば、図2を参照すると、ローカルエリアネットワーク215、222及び224内のユーザ装置は、それぞれ異なるアクセス網202、203及び204を介してサービスプロバイダネットワーク201にそれぞれ接続する。たとえば具体的には、ノートパソコン219、携帯電話217及びディスプレイ218は、たとえば車内ネットワークであるネットワーク215内の装置である。ディスプレイ218は、たとえば例示的に、全地球測位システム(GPS)等の既知の測位システムからの入力を用いるナビゲーション情報等の、様々な種類の情報を表示するために使用される車内のディスプレイである。携帯電話217は、例示的に、信号中継塔214や基地局208を介して携帯アクセス網202に接続される。そしてアクセス網202は、コネクション213を介して、本明細書では情報ゲートウェイ(IGW)と呼ばれるゲートウェイ205に接続されて、サービスプロバイダネットワーク201上のサービス及び情報にアクセスする。ここでたとえば、サービスプロバイダネットワーク201は、IP電話サービス(VoIP電話サービス等)及びデータサービスの両方を提供するネットワークである。
【0011】
図2は、たとえばユーザの家庭内のデータネットワークであるネットワーク222も示す。このネットワークはたとえば、ケーブルアクセス網203にゲートウェイ209(ここではケーブルモデム)を介して接続されるコンピュータ220を有する。ノートパソコン219は、たとえば車内ネットワーク215からホームネットワーク222に移動した場合、ネットワーク222中のネットワーク要素である。前述したように、アクセス網203はIGW206を介してサービスプロバイダネットワーク201と接続して、コンピュータ220やノートパソコン219にネットワークサービスを提供する。最後に、ネットワーク224はオフィスネットワークであり、オフィスコンピュータ225、個人情報端末(PDA)226を有し、前と同様にノートパソコン219がネットワーク215からネットワーク224を有するオフィスに移動した場合にはノートパソコン219を有する。オフィスネットワーク224は、アクセス網204(たとえば高速データネットワーク)にゲートウェイ210(ここではネットワークスイッチ/ルータ)を介して接続される。アクセス網204はここでも、コネクション211及びIGW207を介してサービスプロバイダネットワーク201に接続されて、サービス及びアプリケーションをオフィスネットワーク224内の装置に提供する。ネットワーク222及び224の両方において、マルチメディアストリーム等の様々なデータストリームのハンドオフが可能であり、データストリームの一方のエンドポイントを第1の装置から第2の装置に移行することができる。
【0012】
ネットワーク215、222及び224内のいずれかにある装置は、同じローカルネットワーク中の他の装置と協働して相互作用することができる。このような相互作用の例示
的な一例では、ディスプレイ218を有するナビゲーションシステムを、既知のブルートゥースネットワーキングプロトコルや他の適当なプロトコルを使用してノートパソコン219及び携帯電話217とネットワーク化することができる。したがって、たとえばナビゲーション動作中、車内のナビゲーションシステムは携帯電話217とネットワーク202及び201との間のデータ接続を介して更新された交通状況情報を検索することができる。そして、この交通情報を、ナビゲーション情報と共にディスプレイ218に表示することができる。またたとえば、ディスプレイ218に関連付けられたナビゲーションシステムが、この交通情報を、ある地点から別の地点への移動ルートを計画するために用いることができる。ノートパソコン219、電話217及びディスプレイ218の間でのその他の装置相互作用も可能である。たとえば、これらの装置は、上記と同様に例示的にブルートゥースプロトコルを使用してローカルネットワーク接続されるため、ある装置の通信セッションを別の装置に「ハンドオフ」することが可能である。このようなハンドオフの一例は、ある装置を宛先としたマルチメディアストリームが別の装置で終端するようにハンドオフされるときに発生し得る。たとえば、ノートパソコン219のユーザが、携帯電話とネットワーク202との間の接続を介して映画等のマルチメディアストリームを受信することができる。しかし、ストリームをディスプレイ218に表示させて、映画を車内の他の乗客に対して表示することが望ましい場合がある。ノートパソコン219はディスプレイ218にネットワーク接続されているので、このような転送は既知の方法を使用して車内ネットワークを介して実現することができ、映像をディスプレイ218に表示することができる。
【0013】
図2のネットワークアーキテクチャが単に例示的な性質のものにすぎないことは当業者であれば理解できるだろう。多くの異なるアーキテクチャによって、ネットワーク215、222及び224内の装置をサービスプロバイダネットワーク201へ接続することが可能である。たとえば、IGW205、206及び207は同じゲートウェイであってもよい。しかしながら、厳密な実施態様がどのようなものであっても、結果として、各種ネットワーク内の1つ又は複数の装置は、IGWを介してサービスプロバイダネットワークに接続してサービスプロバイダからサービスを受信するとともに、マルチメディアストリーム等のデータストリームのハンドオフをそれらの装置間で行うことができる。
【0014】
本発明者は、上述したハンドオフのような従来技術によるネットワーク接続ハンドオフの試みの欠点は、このようなハンドオフが異なる装置やローカルネットワークの構成又は性能を考慮しないことであることに気付いた。本発明は実質的にこの欠点を解消する。特に、本発明の原理によれば、ネットワークを介して提供されるサービスの適合を容易にするために、ネットワーク内の装置又は装置群に関する環境情報が、ネットワークの各種レベルに収集及び保持される。より具体的には、エージェントが各ユーザ装置に配置され、この情報を収集する。2つ以上の装置がローカルネットワーク内の特定の装置を介してアクセス網に接続する場合は、たとえば、その特定の装置がエージェントを用いてローカルネットワーク中のすべての装置についての情報を保持することができる。そして、この情報は、サービスプロバイダの基幹網内のゲートウェイにある対応するミラーエージェントに転送され、そこで保持されるとともに、サービス及びメディアストリームをネットワーク内の個々の装置に適合させるために基幹網のゲートウェイによって用いられる。より具体的には、環境情報は、装置から又は装置への情報の送信が、装置の構成、ネットワーク性能及び/又は装置のアプリケーション性能に応じて行われるように使用することができる。
【0015】
本明細書において、エージェントは、ハードウェア、インタフェース、アクティブな通信セッション及び1つまたは複数の特定の装置の性能に関連する情報を、収集、保持、更新及び送信するように構成されたハードウェア及び/又はソフトウェアを指す。この情報は本明細書では環境情報と呼ばれる。このようなエージェントで使用されるハードウェア
が、たとえば携帯電話のプロセッサのような例示的なプロセッサ、及び携帯電話に配置されているコンピュータ読み取り可能メモリ等の記憶媒体を有し得ることを当業者は理解するだろう。このメモリがランダムアクセスメモリや他の適当なメモリであってもよいことを当業者であれば分かるだろう。ソフトウェアが、上記プロセッサによって実行されるように構成されたソフトウェアであり、たとえば、上記情報を記憶し保持するデータベースソフトウェアを含み得ることも当業者であれば分かるだろう。最後に、このような実施態様は単に例示的な性質のものにすぎず、各種ハードウェア及びソフトウェア構成要素を本発明の原理に従ってコンピュータで等しく有利に使用するように適合可能なことを当業者は分かるだろう。
【0016】
再び図2のネットワーク215を参照すると、ノートパソコン219、携帯電話217及びディスプレイ218は、本明細書ではホームアダプテーションエージェント(HAA)と呼ばれる関連するエージェント227、228及び235をそれぞれ有する。同様に、ネットワーク222内の装置220はHAA230を有し、ネットワーク224内の装置225及び226はHAA233及び234をそれぞれ有する。上述したように、これらのエージェントは、ネットワーク内の各装置に配置されるハードウェアエージェント及びソフトウェアエージェントである。これらのHAAは環境情報を保持し、その情報に関する変更を検出する。たとえば、装置が電源投入されたり他の方法で初期化されたりすると、その特定の装置のHAAは装置に問い合わせてその装置に関連する環境情報を求め、そしてその情報を上記データベースに記憶する。そして、各装置のHAAは、装置を監視し、その装置の環境情報が変更されたときに環境情報を更新する。
【0017】
いくつかのローカルネットワークでは、1つの装置をローカルネットワークゲートウェイ(LNG)装置として選択することができる。たとえば、図2のネットワーク215では、携帯電話217がこのようなLNGとして使用される。ネットワーク215内の各装置がアクセス網との接続をサポートするインタフェースを有しても良いが、所望であれば、アクセス網202等のアクセス網への外部接続性を、LNGを使用して、ローカルネットワーク215等のローカルネットワーク内のすべての装置に対して提供する。このようなLNGが使用される場合、本明細書においてローカルネットワークアダプテーションエージェント(LNAA)と呼ばれるさらなるエージェントを使用して、ネットワーク内の装置の各HAAにより保持される構成情報を収集することができる。ローカルエリアネットワーク内には、各装置のHAAのエージェント機能を引き継ぐことができるLNAAが例示的に1つのみある。たとえば、ネットワーク215及び224には、装置217及び225はそれぞれこれらのネットワークのLNGとして働き、したがってLNAA228及び232をそれぞれ有する。装置がネットワーク215又は224のうちの1つに参加すると、LNAAは参加した装置のHAAに問い合わせ、HAAにより保持されている情報を収集する。同様に、装置がアクティブな通信セッション中である場合、その装置の現在のセッション情報を反映するようにLNAA内の環境情報が更新される。このようにして、累積された装置の環境情報が、装置及びその装置を外部アクセス網に接続するLNGの両方に保持される。ネットワーク215及び224においてLNAAが使用されるのとは対照的に、ネットワーク222はLNAAを使用せず、したがって各装置のHAAは独立して環境情報を保持することになる。
【0018】
本発明の原理によれば、ネットワーク内の装置の環境情報を収集し保持するためにLNAAが使用されるか又はHAAのみが使用されるかに拘わらず、これらのエージェントによって収集された情報は、サービスプロバイダネットワークのIGWにあるさらなるエージェント(本明細書において環境ミラーエージェント(EMA)と呼ぶ)に転送されてミラーリングされる。EMAはIGWと同じ場所に配置され、IGWに、環境変化に対応してIGWとネットワーク215、222及び224内の装置との間の通信を適合させるために必要な情報を提供する。例示的な一実施形態では、装置が、たとえばネットワーク2
15に入るか又はネットワーク215から出るとき、上述したように、LNG装置217にあるLNAAが更新される。このような更新は、装置についての環境情報が変化したときにも随時行われる。LNAAは、更新されると、その情報をアクセス網202を介してIGW205のEMAに送信する。同様に、ネットワーク224内のLNAA232も、そのネットワーク内の装置についての環境情報を、ネットワーク201内のIGW207に配置されたEMAに送信する。しかし、ネットワーク222内の装置は、LNAAを使用せず装置220及び219についての情報を統合しないため、HAA230及び231は装置固有の環境情報を保持し、その情報をIGW206にあるEMAに別々に転送する。したがって、最終結果として、環境情報が各装置において収集され、ローカルネットワーク及び基幹網全体に共有される。
【0019】
図3は、ネットワーク内の各種エージェント間の一般的なデータフローを示すブロック図である。具体的には、上述したように、装置が電源投入されたり他の方法で初期化されたりすると、その装置のHAA301はインタフェース情報及び通信セッションが現在アクティブであるか否かを含む他の装置情報を収集する。この情報が変化する場合は、その情報はHAA301において更新される。次いで、この情報は、LNAAが利用可能な場合には、パス304を介して対応するLNAAに送信される。LNAAが利用可能ではない場合は、HAA301はデータをパス306を介してEMA303に直接送信する。LNAA302等のLNAAが使用される場合、そのLNAAはデータをHAA301及び対応するネットワーク内のすべてのHAAから収集し、次いでそのデータをパス305を介してEMA303に送信する。
【0020】
上記エージェントを使用して、ネットワーク内の装置又は装置群に関する環境情報を収集して保持することにより、たとえば、ハンドオフが装置間で行われるときや装置があるネットワークから別のネットワークに移動するときに、送信中のデータをこれらの装置に適合させることが可能である。たとえば、図4を参照すると、ここでもノートパソコン219が最初に、上述したように例示的な車内ネットワークであるネットワーク215に存在する。ノートパソコン219が電源投入されると、ハードウェア、ソフトウェア及びネットワークインタフェース情報を含む環境情報が、ノートパソコン219に対応するHAA227に収集され、次いで上述したように、装置217にあるLNAA229に送信される。そして、この情報は、これもまた上述したようにIGW205にあるEMA237に送信される。そして、環境情報は、装置219に提供されるサービスを適合させるために用いられる。たとえば、ネットワーク201によって提供されるサービスが、音声と映像を組み合わせたストリーム等のストリーミングマルチメディア情報を必要とする場合、IGW205はノートパソコン219の性能を知り、したがって、適切なフォーマットのメディアをノートパソコン219に送信することができる。たとえば、ノートパソコン219が携帯電話217及びアクセス網202を介してネットワーク201に接続されるものと再び仮定し、さらに、アクセス網202がCDMAセルラネットワークであるものと仮定する。ノートパソコン219の処理性能及びそのノートパソコンのユーザのアプリケーション嗜好は、IGW205のEMAにおいて既知である。したがって、マルチメディアストリームをノートパソコン219に送信する準備の際に、IGW205はストリームをその装置の性能及び嗜好に適合させることができる。たとえば、アクセス網は比較的低い帯域幅のCDMAネットワークであるため、IGWは、たとえば音声ストリームチャネル数が2つのMPEG−1映像ストリームのような比較的低いデータ速度のMPEG符号化ストリームを送信することができる。MPEG−1は、音声ストリーム及び映像ストリームを含むマルチメディアデータストリームの既知の符号化規格であり、本明細書においてこれ以上説明しない。各種のMPEG符号化ストリームはより高い又はより低いデータ速度を有し得るため、帯域幅要件が異なり得ることを当業者なら分かるだろう。たとえば、MPEG−2符号化データストリームの圧縮率は低いため、たとえばMPEG−1符号化ストリームやMPEG−4符号化ストリームよりも高い帯域幅が必要である。
【0021】
ここで、上述したように、図4において矢印401で例示的に示すようなディスプレイ装置218へのハンドオフによって、マルチメディアストリームを車内の他の乗客にディスプレイ装置218を介して表示したいものと仮定する。また、そのディスプレイ装置は、ネットワーク215内の、6つの別個の音声チャネルを再生可能なサウンドシステムに接続されるものと仮定する。その結果として、ノートパソコン219のユーザがハンドオフを望むことを指示すると、IGW205はその指示を受信し、それに応答して、IGW205に関連するEMAを参照してディスプレイ装置218及び関連する音声システムの性能を求める。ユーザが明示的な要求を送信することによってハンドオフを望むことを指示してもよく、又はオプションとして、特定の装置が起動したときは常にハンドオフを自動的に開始するように選択してもよいことは、当業者であれば理解できるだろう。したがって、このようにして、ユーザはマルチメディアストリームをディスプレイ装置218に転送することを明示的に要求してもよく、又は別の方法として、ディスプレイ装置218が電源投入されたときにマルチメディアストリームをそのディスプレイ装置に転送するという所定の嗜好をIGW205に関連するEMAに記憶させておいてもよい。
【0022】
ハンドオフを望むという指示に応答して、EMA237は例示的に、CDMAネットワーク202により提供される帯域幅は比較的低いので依然としてMPEG−1映像ストリームを送信するが、ノートパソコン219に送信されていた2チャネル音声ストリームに代えて6チャネル音声ストリームを使用する。このようにして、マルチメディアストリームは使用される特定の装置(複数可)に適合される。
【0023】
本発明の原理による別の例では、矢印402で例示的に示すように、ノートパソコン219がネットワーク215を去り、ネットワーク222に移動するものと仮定する。ネットワーク222は、ここでも例示的にホームネットワークである。この移動はたとえば、ノートパソコン219が自動車から家庭に移るときに発生し得る。このとき、ネットワーク215のLNAA及びIGW205のEMA237は、ノートパソコン219に関連する環境情報を削除する。ノートパソコン219がネットワーク222に入った場合は、ネットワーク222にはLNAAがないため、ノートパソコン219内のHAA227が、アクセス網203を介してネットワーク201内のIGW206にあるEMA238に環境情報を直接送信する。IGW206はIGW205と同じIGWであってもよいことを当業者は理解できるだろう。このような場合、環境情報は、新しいネットワークの性能及び/又はノートパソコン219がネットワーク222に配置されたときにサービスに適用すべきユーザ嗜好を反映するように更新される。たとえば、ネットワーク203は、ケーブルインターネットアクセス網等の比較的広帯域幅のデータネットワークであるものと再び仮定する。したがって、サービス要求がIGW206において受信されると、たとえば、アクセス網202を介して送信可能なデータ速度よりも高いデータ速度のメディアストリームをノートパソコン219に送信することができる。したがって、たとえば、IGW206は、マルチメディアストリームを要求するサービス要求を受信すると、高品位なMPEG−2映像符号化フォーマットを使用してストリームを提供することを選択することができる。
【0024】
このようなハンドオフをどのように行うことができるかについての最後の例では、ノートパソコン219は、矢印403で例示的に示すようにオフィスネットワーク224に移動し得る。ここでも、IGW206のEMA238は、ノートパソコン219がもはやネットワーク222内にないことを反映するように更新される。また、IGW207のEMA239は、関連するアクセス網204に関する情報を含む、ノートパソコン219のHAA227からの環境情報で更新される。ここでも、マルチメディアセッションがサービスプロバイダネットワーク201とネットワーク224内のノートパソコン219との間で開始されるものと仮定する。また、アクセス網204が、たとえば、ネットワークを介
してデータを高速で送出可能なT3回線を使用する既知の広帯域幅アクセス網であるものと仮定する。その結果として、マルチメディアセッションが開始されると、IGW207は、上記MPEG−2映像ストリーム等の高品位広帯域幅要件のマルチメディアストリームを選択する。ここでたとえば、ノートパソコン219からPDA226へのハンドオフ要求をIGW207において受信するものと仮定する。当業者が認めるように、PDA226は通常、ノートパソコン219等のノートパソコンが有するようなロバストなハードウェア構成(たとえば、プロセッサ、メモリ等)を有さない。したがって、矢印404で例示的に示すように、その装置へのハンドオフが要求されると、IGW207は、IGW207に対応するEMA239に記憶されているPDA226に関する環境情報を参照し、必要であれば帯域幅のより低い映像及び音声ストリームを送信する。したがってたとえば、IGWは映像ストリームを既知のウィンドウズ(登録商標)メディア(Windows(登録商標) Media)符号化映像ストリームに変更する。このように、各装置、ローカルゲートウェイ及び基幹網内のゲートウェイについての装置情報を監視し更新することにより、マルチメディアデータセッション及び他のデータセッションを装置及びネットワークの性能に最もよく合うように適合させることができる。
【0025】
図5は、上記ハンドオフを実行することができる本発明の原理によるフローチャートを示す。ステップ501において、図4のノートパソコン219等の装置が、図4のネットワーク215等のネットワーク内で初期化/電源投入される。次いでステップ502において、その装置に関連する環境情報が、上述したように検出され、その装置のHAAに記憶される。ステップ503において、ローカルネットワークゲートウェイすなわちLNGがネットワークに存在するか否かが判断される。存在する場合、ステップ504において、装置情報がLNGに関連するLNAAに記憶される。次いでステップ505において、環境情報がサービスプロバイダのネットワーク内のIGWのEMAに送信され、ステップ506において、たとえば、アクティブなデータストリームがその装置にハンドオフされるときに、装置に送信されるデータストリームを適合させるためにその環境情報が利用される。
【0026】
上記詳細な説明は、あらゆる点で、限定するものではなく説明的及び例示的であるものと理解されるべきであり、本明細書に開示する本発明の範囲は詳細な説明から確定されるべきではなく、特許法により許される全範囲に従って解釈される特許請求の範囲から確定されるべきである。本明細書において図示し説明した実施形態は本発明の原理の例示にすぎず、各種変更が当業者により本発明の範囲及び精神から逸脱することなく実施可能なことを理解されたい。当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく他の様々な特徴の組み合わせを実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】アクセス網を介してサービスプロバイダのネットワークに接続されたユーザ装置を示す。
【図2】複数のネットワークが異なるアクセス網を介してサービスプロバイダのネットワークに接続される、本発明の原理を実施することができるネットワークを示す。
【図3】図2のネットワークの各レベルにあるエージェントが相互作用してエージェント間でデータを転送する方法を示す。
【図4】異なるネットワーク及び装置の間でのハンドオフを示すネットワーク図である。
【図5】本発明の原理による1つのプロセスを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセス網に接続されたローカルネットワーク内で使用されるユーザ装置であって、前記アクセス網は基幹網内のゲートウェイを介して該基幹網に接続され、
前記ローカルネットワーク内の複数の装置に関連する構成情報を保持するように構成されたローカルネットワークアダプテーションエージェントと、
前記複数の装置に関連する前記構成情報を、前記ゲートウェイにある環境ミラーエージェントに転送するネットワークインタフェースと、
を備えるユーザ装置。
【請求項2】
前記構成情報は、ハードウェア構成情報、ネットワークインタフェース情報およびアプリケーション設定情報の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のユーザ装置。
【請求項3】
前記情報の変更が検知されると、前記複数の装置の各装置についての前記構成情報を更新する手段、をさらに有する請求項1に記載のユーザ装置。
【請求項4】
前記ローカルネットワークは車内ネットワークである請求項1に記載のユーザ装置。
【請求項5】
装置の動作方法であって、
ローカルネットワーク内の複数の装置の構成を検出し、
前記複数の装置の各装置についての構成情報を記憶し、
前記複数の装置の各装置についての前記構成情報を、基幹網内のゲートウェイにある環境ミラーエージェントに転送する、装置の動作方法。
【請求項6】
さらに、
前記複数の装置のうちの少なくとも1つの装置の構成の変化を検出し、
前記構成情報を更新し、
更新された構成情報を前記ゲートウェイへ転送する、請求項5に記載の装置の動作方法。
【請求項7】
前記構成情報は、ハードウェア構成情報、ネットワークインタフェース情報およびアプリケーション設定情報の少なくとも1つを含む、請求項5に記載の装置の動作方法。
【請求項8】
さらに、前記ゲートウェイからの前記複数の装置のうちの第1の装置宛の送信を受信し、
前記送信は、前記第1の装置についての前記構成情報に依存する、請求項5に記載の装置の動作方法。
【請求項9】
前記パラメータは前記送信のデータ速度を含む、請求項8に記載の装置の動作方法。
【請求項10】
第1の装置とのアクティブな通信セッションを第2の装置へ転送する方法であって、
前記第1の装置および前記第2の装置の構成情報が基幹網内のゲートウェイに記憶されており、
前記アクティブな通信セッションの前記第1の装置から前記第2の装置への転送が要求されているか判断し、
前記第2の装置についての前記格納されている構成情報に応じて、前記通信セッションを前記第2の装置へ転送する、通信セッションの転送方法。
【請求項11】
前記第1の装置の前記構成情報および前記第2の装置の前記構成情報は、装置プロファイル、インターフェースプロファイルおよびアプリケーションプロファイルを含む、請求
項10に記載の通信セッションの転送方法。
【請求項12】
前記通信セッションの第1のパラメータを、前記第2の装置についての前記構成情報に応じて変更するステップをさらに備える、請求項10に記載の通信セッションの転送方法。
【請求項13】
前記第1のパラメータは前記通信セッションのデータ速度を含む、請求項12に記載の通信セッションの転送方法。
【請求項14】
アクセス網を基幹網に接続するゲートウェイであって、
前記アクセス網に接続されたローカルネットワーク内の複数の装置に関連する構成情報を保持するように構成された環境ミラーエージェントと、
前記第1のゲートウェイにあるローカルネットワークエージェントから、前記複数の装置に関連する前記構成情報を受信するネットワークインタフェースと、を備えるゲートウェイ。
【請求項15】
前記構成情報は、ハードウェア構成情報、ネットワークインタフェース情報およびアプリケーション設定情報の少なくとも1つを含む請求項14に記載のゲートウェイ。
【請求項16】
第1の装置とのアクティブな通信セッションを第2の装置へ転送する装置であって、
前記第1の装置についての構成情報を記憶する第1の記憶装置と、
前記第2の装置についての構成情報を記憶する第2の記憶装置と、
前記アクティブな通信セッションの前記第1の装置から前記第2の装置への転送が要求されているか判断する手段と、
前記第2の装置についての前記記憶されている構成情報に応じて、前記通信セッションを前記第2の装置へ転送する手段と、を備える装置。
【請求項17】
前記第1の装置の前記構成情報および前記第2の装置の前記構成情報は、装置プロファイル、インターフェースプロファイルおよびアプリケーションプロファイルを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記転送する手段は、前記第1の装置についての前記構成情報および前記第2の装置についての構成情報を第2のゲートウェイに転送する手段を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記変更する手段は、前記通信セッションの第1のパラメータを、前記第2の装置についての前記構成情報に応じて変更する、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記第1のパラメータは前記通信セッションのデータ速度を含む、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記第1の記憶装置と前記第2の記憶装置は同じ記憶装置から成る、請求項16に記載の装置。
【請求項22】
前記同じ記憶装置はコンピュータメモリに格納されたデータベースから成る、請求項21に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−510369(P2008−510369A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525604(P2007−525604)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/017902
【国際公開番号】WO2006/022936
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(399047921)テルコーディア テクノロジーズ インコーポレイテッド (61)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【Fターム(参考)】