説明

疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマー、該ポリマーの製造法及び歩留向上剤としての該ポリマーの使用

(a)ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーと(b)式R−A−(EO,PO,BuO)−X(I)[式中、R=C〜C26−アルキル又はC〜C26−アルケニル、A=O、NH、COO、EO=エチレンオキシド単位、PO=プロピレンオキシド単位、BuO=ブチレンオキシド単位、n=1〜250、X=OH−基と共有結合可能な官能基]の化合物との反応によって得ることができることを特徴とする、疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマー、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーと、式Iの疎水化剤少なくとも1種とを反応させることによる、疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーの製造法、並びに、紙を製造する際の紙料への添加物としての、そのようにして得ることができるポリマーの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマー、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーと疎水化剤との反応による該ポリマーの製造法、及び、歩留向上剤としての疎水化されたポリマーの使用に関する。
【0002】
ビニルアミン単位を含有するポリマーは公知である。前記ポリマーは、例えば、非環式N−ビニルカルボン酸アミド、例えばN−ビニルホルムアミドを重合させ、引き続き、酸又は塩基の作用によりポリマーを加水分解させることにより製造され、これに関しては、US−A−4421602号、US−A−3597314号、US−A−4578515号及びUS−A−4255548号を参照のこと。ビニルアミン単位90〜10%を含有する部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミドは、US−A−4421602号の教示によれば、製紙の際に、歩留向上剤、凝集剤及び脱水剤として使用される。
【0003】
EP−B−0216387号の記載から、ビニルアミン単位を含有するポリマーを、紙のための乾燥補強剤として使用することは公知である。コポリマーは、N−ビニルホルムアミドとコモノマー、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン及び/又はアクリル酸又はメタクリル酸のエステル、ニトリル又はアミドとから成るコポリマーの加水分解により製造される。
【0004】
EP−B−0251182号の記載から、N−ビニルホルムアミド単位、ビニルアミン単位及びアクリロニトリル単位、並びに、場合により少ない割合のアクリルアミド単位及びアクリル酸単位を含有するコポリマーが公知である。
【0005】
変性されたポリビニルアミンも公知である。例えば、Macromol. Chem. Phys., Band 195/ 679 (1994)には、ポリビニルアミンと脂肪族カルボン酸クロリドとの反応が記載されている。US−B−6184310号の記載から、ポリエチレンイミン単位又はビニルアミン単位を含有するポリマーとハロゲンギ酸エステルとの反応により製造される、カルバメート単位を含有するポリマーは公知である。ハロゲンギ酸エステルは、長鎖のアルキル基又はアルキルフェニル基を有してよい。
【0006】
US−A−5324787号の記載から、疎水変性されたポリビニルアミン、及び、疎水変性されたビニルアミン単位を含有するコポリマーは公知である。前記コポリマーは、ビニルアミン単位のアミノ基とC〜C18−アルキルグリシジルエーテルとの反応により得ることができ、製紙の際に微細な物質のための歩留向上剤として使用される。
【0007】
他の、疎水変性された、ビニルアミン単位を含有するポリマーは、EP−B−0897395号の記載から公知である。この場合、前記ポリマーは、β−ヒドロキシアルキルビニルアミン−単位を含有するポリマーであり、前記ポリマーは、ビニルアミン単位を有するポリマーと長鎖エポキシドとの反応により得ることができる。そのようにして得ることができる反応生成物は、例えば、製紙の際に、歩留向上剤、脱水剤及び凝集剤として、並びに定着剤として使用される。
【0008】
更に、WO−A−98/50630号の記載から、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーと、紙のための反応性サイジング剤、例えば、長鎖アルキルケテン二量体、長鎖アルキル無水コハク酸もしくは長鎖アルケニル無水コハク酸、脂肪酸アルコールのクロロギ酸エステル又はC12〜C36−アルキルイソシアネートとの反応により得ることが出来る定着剤は公知である。
【0009】
WO−A−94/12560号には、カルボン酸又はその誘導体を用いてポリアルキレンポリアミンを部分的にアミド化し、引き続き、部分的にアミド化されたポリアルキレンアミンを、少なくとも二官能性の架橋剤を用いて架橋することにより得ることができる縮合生成物が記載されており、その際、部分的にアミド化されたポリアルキレンポリアミン1質量部当たり0.001〜10質量部の架橋剤が使用される。縮合生成物は、製紙の際に、脱水剤、凝集剤及び歩留向上剤として、並びに定着剤として使用される。
【0010】
WO−A−01/40578号の記載から、疎水化されたコポリマーを、製紙の際に脱水剤として使用することは公知である。ポリマーは、疎水性モノマーと別の1種以上のエチレン性不飽和モノマーとの共重合により得られる。
【0011】
本発明は、新規の物質を提供するという課題に基づく。
【0012】
前記課題は、本発明によれば、
(a)ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーと
(b)式
R−A−(EO,PO,BuO)−X (I)
[式中、置換基は以下の意味を有する:
R=C〜C26−アルキル、C〜C26−アルケニル、C〜C26−ヒドロキシアルキル、又は、C〜C26−アルキルカルボキシ、
A=−O−、−NH−、−COO−、
EO=エチレンオキシド単位、
PO=プロピレンオキシド単位、
BuO=ブチレンオキシド単位、
n=1〜250、
X=OH−基と共有結合可能な官能基]
の化合物との反応によって得ることができる、疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーにより解決される。
【0013】
式Iの化合物は、例えば、まず、飽和又はエチレン性不飽和の一価のC〜C26−アルコールを、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドを用いてアルコキシル化し、その際、アルコール1モル当たり、1〜250モル、有利に10〜100モルの、アルキレンオキシド、有利にエチレンオキシドを、単独で、又は順にエチレンオキシド及びプロピレンオキシドないしプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを使用することにより得ることができる。
【0014】
第二の処理工程において、アルコキシル化生成物への官能基Xの付加は、アルコキシル化されたアルコールと、二官能性化合物、例えばエピハロヒドリン、有利にエピクロロヒドリン、2−ハロゲン酸ハロゲニド、有利に2−クロロアセチルクロリド、ジイソシアネート、例えば、2,4−トルイレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びトリメチルヘキサンジイソシアネート、又は環式無水カルボン酸、例えば無水マレイン酸、無水コハク酸又は無水フタル酸との反応により行われる。例えば、エピクロロヒドリンを酸性反応条件下で使用する場合、下記
【0015】
【化1】

[式中、
置換基は式Iに記載された意味を有し、Halはハロゲンを表す]
の化合物が主生成物として得られる。
【0016】
アルカリ性反応媒体中では、(i)アルコキシル化されたアルコールと(ii)エピハロゲンヒドリンとから、例えば以下の構造:
【0017】
【化2】

が生じる。
【0018】
モル比1:1の、(i)アルコキシル化されたアルコールと(ii)2−ハロゲンカルボン酸ハロゲニドとの反応の場合、以下の構造式:
【0019】
【化3】

を有する化合物Iが生じる。
【0020】
モル比1:1の、(i)アルコキシル化されたアルコールと(ii)環式無水カルボン酸との反応により、以下の構造式:
【0021】
【化4】

【0022】
(i)アルコキシル化されたアルコールと(i)種々の反応性を有するジイソシアネートとの反応により、以下
【0023】
【化5】

の化合物が生じる。
【0024】
そのようにして得ることができる式Iの化合物は、その後、群(a)の少なくとも1種のポリマーと反応され、その際、その後、本発明による疎水化されたポリマーが得られる。群(a)のポリマーは、群(b)の疎水化剤と反応することもできるし、2種以上のそのような疎水化剤と同時に又は順々に反応することもできる。
【0025】
本発明の課題は、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーと疎水化剤とを反応させ、疎水化剤として、式
R−A−(EO,PO,BuO)−X (I)
[式中、置換基は以下の意味を有する:
R=C〜C26−アルキル、C〜C26−アルケニル、C〜C26−ヒドロキシアルキル又はC〜C26−アルキルカルボキシ、
A=−O−、−NH−、−COO−、
EO=エチレンオキシド単位、
PO=プロピレンオキシド単位、
BuO=ブチレンオキシド単位、
n=1〜250、
X=OH−基と共有結合可能な官能基]
の化合物少なくとも1種を使用する場合の、疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーの製造法によっても解決される。
【0026】
カチオン性ポリマーの疎水変性は、例えば、
(a)ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーと
(b)(i):(ii)のモル比が0.2:1.0〜1.0:1.0である、
(i)アルコキシル化された一価のC〜C26−アルコール、アルコキシル化されたC〜C26−アルキルアミン、又はアルコキシル化されたC〜C26−カルボン酸と、
(ii)エピハロヒドリン、2−ハロゲンカルボン酸ハロゲニド、混合されたジハロゲンアルキレン、ジイソシアネート、又は環式酸無水物との反応生成物
とを反応させることにより可能である。
【0027】
成分(b)として、有利に、(i)一価のC14〜C22−アルコールと(ii)エピクロロヒドリン、クロロアセチルクロリド、2,4−トルイレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、無水コハク酸、又は無水マレイン酸との反応生成物が該当する。成分(b)の殊に有利な疎水化剤は、(i)パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、獣脂アルコール、又はアルコールの混合物と(ii)エピクロロヒドリンとの反応生成物である。成分(b)の疎水化剤を製造する際に、モル比(i):(ii)は、有利に1.0:1.0〜1.0:2.5である。ポリマー(a)中のビニルアミン単位及び/又はエチレンイミン単位に対する疎水化度は、有利に0.1〜150質量%であり、有利に0.5〜30質量%の範囲内である。成分(a)及び(b)は、大抵の場合、ポリマー(a)中のビニルアミン単位及び/又はエチレンイミン単位に対する疎水化度が1〜20質量%となるような割合で使用される。
【0028】
本発明の対象は更に、紙を製造する際の紙料(Papierstoff)への添加物としての、本発明による、疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーの使用である。疎水化された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーは、この場合、例えば、歩留向上剤及び凝集剤として作用する。しかしながら前記ポリマーは、付加的に、又は単独で、紙繊維への妨害物質の固定を引き起こす。前記ポリマーは、乾燥紙料に対して例えば0.003〜1.0質量%、有利に0.03〜0.5質量%の量で紙料に添加される。
【0029】
ビニルアミン単位を含有するポリマーは公知であり、これに関しては、US−A−4,421,602号、US−A−5,334,287号、EP−A−0216387号、US−A−5,981,689号、WO−A−00/63295号及びUS−A−6,121,409号を参照のこと。前記ポリマーは、開鎖N−ビニルカルボン酸アミド単位を含有するポリマーの加水分解により製造される。前記ポリマーは、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド又はN−ビニルプロピオンアミドの重合により得ることができる。前記モノマーは、単独で重合されてもよいし、別のモノマーと一緒に重合されてもよい。
【0030】
N−ビニル−カルボン酸アミドと共重合されるモノエチレン性不飽和モノマーとして、N−ビニル−カルボン酸アミドと共重合可能な全ての化合物が該当する。このための例は、1〜6個の炭素原子を有する飽和カルボン酸のビニルエステル、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、ビニルプロピオネート及びビニルブチレート及びビニルエーテル、例えばC〜C−アルキルビニルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル又はエチルビニルエーテルである。他の適当なコモノマーは、エチレン性不飽和C〜C−カルボン酸のエステル、アミド及びニトリル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミド、並びにアクリロニトリル及びメタクリロニトリルである。
【0031】
他の適当なカルボン酸エステルは、グリコール又はポリアルキレングリコールに由来し、その際、その都度OH−基が1個だけエステル化されており、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、並びに、分子量500〜10000のポリアルキレングリコールのアククリル酸モノエステルである。他の適当なコノモノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸とアミノアルコールとのエステル、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノブチルアクリレート及びジエチルアミノブチルアクリレートである。塩基性アクリレートは、遊離塩基、鉱酸、例えば塩酸、硫酸又は硝酸との塩、有機酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸又はスルホン酸との塩の形、又は、4級化された形で使用することができる。適当な4級化剤は、例えば、ジメチルスルフェート、ジエチルスルフェート、塩化メチル、塩化エチル又は塩化ベンジルである。
【0032】
他の適当なコモノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸のアミド、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、1〜6個のC−原子のアルキル基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸のN−アルキルモノアミド及びN−アルキルジアミド、例えば、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド及びtert.−ブチルアクリルアミド、並びに、塩基性(メタ)アクリルアミド、例えば、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジエチルアミノエチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド及びジエチルアミノプロピルメタクリルアミドである。
【0033】
更に、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N−ビニルイミダゾール、並びに、置換されたN−ビニルイミダゾール、例えば、N−ビニル−2−メチル−イミダゾール、N−ビニル−4−メチルイミダゾール、N−ビニル−5−メチルイミダゾール、N−ビニル−2−エチルイミダゾール及びN−ビニルイミダゾリン、例えば、N−ビニルイミダゾリン、N−ビニル−2−メチルイミダゾリン及びN−ビニル−2−エチルイミダゾリンは、コモノマーとして適当である。N−ビニルイミダゾール及びN−ビニルイミダゾリンは、遊離塩基の形に加え、鉱酸又は有機酸で中和された形か、又は4級化された形で使用されてもよく、その際、4級化は、有利に、ジメチルスルフェート、ジエチルスルフェート、塩化メチル又は塩化ベンジルを用いて行われる。ジアリルジアルキルアンモニウムハロゲン化物、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドも該当する。
【0034】
コポリマーは、例えば、以下
−少なくとも1種のN−ビニルカルボン酸アミド 99〜1モル%、有利に90〜10モル%、及び
−別の、それと共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー 1〜99モル%、有利に10〜90モル%
を、重合導入された形で含有する。コモノマーは、有利に酸基を含まない。
【0035】
ビニルアミン単位を含有するポリマーを製造するために、有利に、N−ビニルホルムアミドのホモポリマーから出発するか、又は
−N−ビニルホルムアミド

−ギ酸ビニル、酢酸ビニル、ビニルプロピオネート、アクリロニトリル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル尿素、N−ビニルピロリドン又はC〜C−アルキルビニルエーテル
とを共重合し、引き続き、重合導入されたN−ビニルホルムアミド単位からのビニルアミン単位の形成下に、ホモポリマー又はコポリマーを加水分解することにより得ることができるコポリマーから出発し、その際、加水分解度は、例えば0.1〜100モル%、有利に10〜50モル%である。上記のポリマーの加水分解は、公知の方法により、例えば、酸、塩基又は酵素の作用により行われる。酸を加水分解剤として使用する場合、ポリマーのビニルアミン単位はアンモニウム塩として存在し、その一方で、塩基を用いた加水分解の場合には遊離アミノ基が生じる。
【0036】
N−ビニルカルボン酸アミドのホモポリマー及びそのコポリマーは、例えば、0.1〜100モル%、有利に10〜50モル%加水分解されていてよい。大抵の場合には、ホモポリマー及びコポリマーの加水分解度は、15〜40モル%である。ホモポリマーの加水分解度は、ポリマー中のビニルアミン単位の含分と同じ意味を有する。重合導入によりビニルエステルを含有するコポリマーの場合、N−ビニルホルムアミド単位の加水分解に加え、ビニルアルコール単位の形成下にエステル基の加水分解が生じる。これは特に、コポリマーの加水分解を苛性ソーダ液の存在で実施する場合に該当する。重合導入されたアクリロニトリルは、同様に、加水分解の際に化学的に変化される。この場合、例えば、アミド基又はカルボキシル基が生じる。ビニルアミン単位を含有するホモポリマー及びコポリマーは、場合により、アミジン単位を20モル%まで含有してよく、これは、例えば、ギ酸と2つの隣接するアミノ基との反応により、又は、アミノ基と例えば重合導入されたN−ビニルホルムアミドの1つの隣接するアミド基との分子内反応により生じる。ビニルアミン単位を含有するポリマーの分子量は、例えば500〜10000000、有利に1000〜5000000である(光散乱により測定)。前記分子量範囲は、例えば、5〜300、有利に10〜250のK−値に相当する(H. Fikentscherにより5%食塩水溶液中で25℃でポリマー濃度0.5質量%で測定)。
【0037】
ビニルアミン単位を含有するポリマーは、塩不含の形で使用することもできる。ビニルアミン単位を含有するポリマーの塩不含の水溶液は、例えば、上記の塩含有ポリマー溶液から、適当な膜上での限外濾過により、有利に1000〜500000ダルトン、有利に10000〜300000ダルトンの分離限界で製造することができる。下記の、アミノ基及び/又はアンモニウム基を含有する別のポリマーの水溶液も、限外濾過により、塩不含の形で取得することができる。
【0038】
ビニルアミン単位を含有するポリマーの誘導体も、本発明により疎水化することができる。例えば、ビニルアミン単位を含有するポリマーから、アミド化、アルキル基、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドを用いたアルコキシル化、スルホンアミド形成、尿素形成、チオ尿素形成、カルバメート形成、アシル化、カルボキシメチル化、ホスホノメチル化、又は、ポリマーのアミノ基のマイケル付加により、多数の適当な誘導体を製造することができる。この場合、ビニルアミン単位を含有するポリマー、有利にポリビニルアミンと、シアナミド(RN−CN、ここで、R、R=H、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、フェニル、ベンジル、アルキル置換されたフェニル又はナフチルを意味する)との反応により得ることができる未架橋のポリビニルグアニジンは殊に重要であり、これに関しては、US−A−6,087,448号、第3欄、第64行〜第5欄、第14行を参照のこと。ビニルアミン単位を含有するポリマーの誘導体化は部分的にのみ行われ、例えば、NH−基の80%までのみが変換され、従って、残存するアミノ基を本発明により疎水化することができる。
【0039】
ビニルアミン単位を含有するポリマーには、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルムアミド、多糖類、例えばデンプン、オリゴ糖類又は単糖類へのN−ビニルホルムアミドの疎水化されたグラフトポリマーが属する。例えば、N−ビニルホルムアミドを、水性媒体中で少なくとも1種の上記のグラフト基体の存在で、場合により、共重合可能な他のモノマーと一緒にラジカル重合させ、グラフトされたビニルホルムアミド単位を引き続き公知の方法で加水分解してビニルアミン単位に変換することにより、グラフトポリマーを得ることができる。
【0040】
ビニルアミン単位を含有するポリマーは、場合により架橋されていてもよい。架橋されたポリマーは、2つの異なる方法により得ることができる。例えば、N−ビニルカルボン酸アミドを架橋剤の存在で重合させることができる。架橋剤として、この場合、少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を含有するモノマー、例えば、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニル尿素、ジビニルジオキサン、例えば分子量100〜10000、有利に200〜500のポリエチレングリコールのジアクリレート又はジメタクリレート、ペンタエリトリットトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアクリレート、及び、3〜90モル、有利に6〜60モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドでアルコキシル化されている、アルコキシル化されたトリメチロールプロパンのトリアクリレート又はトリメタクリレートが該当する。
【0041】
しかしながら、ビニルアミン単位を含有するポリマーは、該ポリマーを、少なくとも二官能性の化合物、例えばジエポキシド、エピハロゲンヒドリン、ジハロゲンアルカン及び/又はジカルボン酸と反応させることにより架橋されてもよい。そのような架橋剤のための例は、分子量100〜500のポリエチレングリコールのビスクロロヒドリンエーテル又はビスエポキシド、グルタルジアルデヒド、コハク酸又は1,2−ジクロロエタンである。
【0042】
エチレンイミン単位を含有するポリマーとは、ポリエチレンイミン、並びに、エチレンイミンでグラフトされている全てのポリマーであると解釈される。ポリエチレンイミンは、例えばエチレンイミンを、水溶液中で、触媒としての酸分解性化合物、酸又はルイス酸の存在で重合させることにより製造することができる。ポリエチレンイミンは、例えば2500000まで、有利に800〜2100000の分子量を有する。特に好ましくは、800〜1750000の分子量を有するポリエチレンイミンが使用される。ポリエチレンイミンは、場合によっては変性されてもよく、例えばアルコキシル化、アルキル化、又はアミド化されてもよい。更に、このポリエチレンイミンは、マイケル付加又はステッカー(Stecker)合成させることができる。この場合に得ることができるポリエチレンイミンの誘導体は、同様に塩基性ポリマーとして吸水性の塩基性ポリマーの製造に適している。
【0043】
更に、例えばジカルボン酸をポリアミンと縮合し、引き続きエチレンイミンをグラフトすることによって得ることができる、エチレンイミンでグラフトされたポリアミドアミンが該当する。適当なポリアミドアミンは、例えば4〜10個の炭素原子を有するジカルボン酸を、3〜10個の塩基性窒素原子を分子中に含有するポリアルキレンポリアミンと反応させることによって得ることができる。ジカルボン酸の例は、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、コルク酸、セバシン酸又はテレフタル酸である。ポリアミドアミンを製造する場合には、ジカルボン酸の混合物を使用することもでき、同様に多数のポリアルキレンポリアミンからなる混合物を使用することもできる。適当なポリアルキレンポリアミンは、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ジヘキサメチレントリアミン、アミノプロピルエチレンジアミン及びビス−アミノプロピルエチレンジアミンである。ジカルボン酸及びポリアルキレンポリアミンは、ポリアミドアミンの製造のために、より高い温度、例えば120〜220℃、有利に130〜180℃の範囲内の温度に加熱される。縮合の際に生成される水は、系から除去される。縮合の場合には、場合によっては4〜8個のC原子を有するカルボン酸のラクトン又はラクタムを使用することもできる。ジカルボン酸1モル当たり、例えばポリアルキレンポリアミン0.8〜1.4モルが使用される。このポリアミドアミンは、エチレンイミンでグラフトされる。グラフト反応は、例えば酸又はルイス酸、例えば硫酸又は三フッ化ホウ素エーテラートの存在で、例えば80〜100℃の温度で実施される。この種の化合物は、例えばDE−B−2434816号に記載されている。
【0044】
場合によりなお付加的に架橋前にエチレンイミンでグラフトされている、場合により架橋されたポリアミドアミンも、本発明により疎水変性されてよい。エチレンイミンでグラフトされた、架橋されたポリアミドアミンは、水溶性であり、例えば3000〜2百万ダルトンの平均分子量を有する。通常の架橋剤は、例えばエピクロロヒドリン又はアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールのビスクロロヒドリンエーテルである。
【0045】
ポリマーのK−値を、H. Fikentscher, Cellulose-Chemie, 第13巻、58−64及び71−74(1932)に従い、5%食塩水溶液中で、pH7、温度25℃、ポリマー濃度0.5質量%で測定した。
【0046】
文脈から明らかでない限り、実施例中の百分率の記載は質量百分率を表す。
【実施例】
【0047】
実施例1
a)エトキシル化された長鎖アルコールとエピクロロヒドリンとの反応
ステアリルアルコール1モルへのエチレンオキシド25モルの付加生成物102gに、BF−ジエチルエーテラート1.92gを添加した。混合物を110℃に加熱した。この温度に達した後すぐに、20分以内で、エピクロロヒドリン12.9mlを添加し、引き続き、反応混合物を110℃で3時間、及び25℃で12時間撹拌した。得られた反応生成物は疎水化剤1a)である。
【0048】
b)カチオン性ポリマー1の疎水化
カチオン性ポリマー1(エチレンイミンと1:1の質量比でグラフトされ、引き続きポリエチレンオキシドビスクロロヒドリン架橋剤(エチレンオキシド単位34個、約55質量%)で架橋されており、かつ2000000の全分子量を有する、グラフト基体としての、ジエチレントリアミンとアジピン酸とからの質量比40:60の縮合生成物)の23%水溶液34.3gを60℃に加熱した。前記温度に達した後、この混合物に、疎水化剤1a)の溶融物0.5gを添加した。引き続き、反応混合物を温度60℃で2時間撹拌した。23%の固体含分を有する粘性のポリマー水溶液が得られた。
【0049】
実施例2
a)エトキシル化された不飽和脂肪アルコールとエピクロロヒドリンとの反応
オレイルアルコールとパルミチルアルコールとからの混合物(質量比60:40)1モルへのエチレンオキシド22モルの付加生成物216gに、BF−ジエチルエーテラート2.6gを75℃で添加した。混合物を110℃に加熱した。前記温度に達した後すぐに、20分以内にエピクロロヒドリン17.3mlを添加し、その後、反応混合物を更に110℃で10時間撹拌した。得られた反応生成物を、以下で疎水化剤2a)と呼称する。
【0050】
b)疎水化剤2a)を用いたカチオン性ポリマー1の疎水化
実施例1に記載されたカチオン性ポリマー1 43gを80℃に加熱した。この混合物に、疎水化剤2a)の溶融物1.4gを添加し、引き続き反応混合物を90℃で5時間撹拌した。約24%の固体含分を有する粘性のポリマー水溶液が得られた。
【0051】
実施例3
a)エトキシル化された脂肪アルコールとエピクロロヒドリンとの反応
ステアリルアルコール1モルへのエチレンオキシド80モルの付加生成物284gに、BF−ジエチルエーテラート0.96gを添加した。混合物を110℃に加熱し、この温度で25分以内でエピクロロヒドリン6.5mlと混合した。引き続き、混合物を110℃で5時間撹拌した。得られた反応生成物を、以下で疎水化剤3a)と呼称する。
【0052】
b)カチオン性ポリマー2と疎水化剤3a)との反応
カチオン性ポリマー2の7.9%水溶液(K−値87を有していた、20モル%だけ疎水化されたポリビニルホルムアミドの7.92%水溶液、即ち、ポリマーは、ビニルホルムアミド単位80モル%及びビニルアミン単位20モル%を含有していた)79.2gを60℃に加熱した。ポリマー溶液が前記温度に達した後、この混合物に疎水化剤3a)の溶融物0.25gを添加し、引き続き、反応混合物を更に60℃で2時間撹拌した。粘性のポリマー水溶液が得られた。
【0053】
カチオン性ポリマー1及び2、並びに、疎水化されたカチオン性ポリマー1b)〜3b)を、紙を製造する際の歩留向上剤としてのその有効性に関して試験した。このために、以下の材料モデルを使用した:
カバ材硫酸塩パルプ 70%
マツ材硫酸塩パルプ 30%
約6.4g/l
濾水度:〜30゜ショッパー−リーグラー(Schopper-Riegler)
充填剤:炭酸カルシウム(Hydrocarb OG, OMYA Inc.)
約1.6g/l
試料準備:
2%の固体割合を有する全てのポリマー試料を、Ultra-Turrax T50 (IKA Labortechnik)を用いて1分間均質化した。歩留向上性試験に使用するために、固体含分が0.2%となるように材料試料を希釈した。
【0054】
歩留向上性測定:
紙料500mlをBritt Jar試験容器(Tappi Standard T-261)中で1000r.p.m.で短時間撹拌した。その後、試験すべきポリマー溶液を添加した。その都度添加したポリマーの量を第1〜3表に示す。30秒の作用時間の後に、少量の濾液を採取して廃棄し、その後、濾液100gを採取した。風袋を量ったフィルター(Schleicher & Schuell, Sorte 589, Weissband)上で吸引濾過し、乾燥させることにより、全歩留向上性(FPR)を測定した。引き続き、乾燥させたフィルターを灼熱し、灰分歩留向上性(FPAR)を測定した。その都度得られた結果を第1〜3表に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーにおいて、前記ポリマーが、
(a)ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーと
(b)式
R−A−(EO,PO,BuO)−X (I)
[式中、
R=C〜C26−アルキル又はC〜C26−アルケニル、
A=−O−、−NH−、−COO−、
EO=エチレンオキシド単位、
PO=プロピレンオキシド単位、
BuO=ブチレンオキシド単位、
n=1〜250、
X=OH−基と共有結合可能な官能基]
の化合物との反応によって得ることができることを特徴とする、疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマー。
【請求項2】
ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーと疎水化剤とを反応させることによる、疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーの製造法において、疎水化剤として、式
R−A−(EO,PO,BuO)−X (I)
[式中、置換基は以下の意味を有する:
R=C〜C26−アルキル、C〜C26−アルケニル、C〜C26−ヒドロキシアルキル又はC〜C26−アルキル−カルボキシ、
A=−O−、−NH−、−COO−、
EO=エチレンオキシド単位、
PO=プロピレンオキシド単位、
BuO=ブチレンオキシド単位、
n=1〜250、
X=OH−基と共有結合可能な官能基]
の化合物少なくとも1種を使用することを特徴とする、疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーの製造法。
【請求項3】
(a)ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーと
(b)(i):(ii)のモル比が0.2:1.0〜1.0:1.0である、
(i)アルコキシル化された一価のC〜C26−アルコール、アルコキシル化されたC〜C26−アルキルアミン、又はアルコキシル化されたC〜C26−カルボン酸と、
(ii)エピハロヒドリン、2−ハロゲンカルボン酸ハロゲニド、混合されたジハロゲンアルキレン、ジイソシアネート、又は環式酸無水物との反応生成物
とを反応させる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
成分(b)として、
(i)一価のC14〜C22−アルコールと
(ii)エピクロロヒドリン、クロロアセチルクロリド、2,4−トルイレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、無水コハク酸、又は無水マレイン酸との反応生成物
を使用する、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
成分(b)として、
(i)パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、獣脂アルコール、又はアルコールの混合物と
(ii)エピクロロヒドリンとの反応生成物
を使用する、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ポリマー(a)中のビニルアミン単位及び/又はエチレンイミン単位に対する疎水化度が、0.1〜150質量%、有利に0.5〜30質量%である、請求項2から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ポリマー(a)中のビニルアミン単位及び/又はエチレンイミン単位に対する疎水化度が、1〜20質量%である、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
紙を製造する際の紙料への添加物としての、請求項1記載の、疎水変性された、ビニルアミン単位又はエチレンイミン単位を含有するポリマーの使用。

【公表番号】特表2006−501319(P2006−501319A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−508134(P2004−508134)
【出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2003/005233
【国際公開番号】WO2003/099880
【国際公開日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】