説明

疑似スペクトル発生装置

【課題】出力効率の高い疑似スペクトル発生装置を提供する。
【解決手段】
キセノンランプあるいは、キセノン水銀ランプ等の光源及びその光源を前方に出射する反射鏡により光を集光させ、この光をアパーチャで40%〜50%に絞った後、回折格子に入射させて波長情報を位置情報に変換させ、変換した光を空間光変調器を用いて強度変調し、基準スペクトルとほぼ同一の波長応答特性を実現し、これを均一照射光学系を通して、出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定した光強度を持つスペクトルを発生させることが可能な疑似スペクトル発生装置に関し、特に、任意の太陽光モデル(地球上の位置によって異なる。)に対応した疑似スペクトルを発生させることができるソーラシミュレータに最適な疑似スペクトル発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光は本来、黒体輻射に基づく波長分布を有するエネルギーであるが、地表に到達するに伴い、気象の影響、電離層の影響、空気等の影響により、その波長分布には各種の吸収が加えられ、黒体輻射とは幾分異なるものとなる。また、地域によってもその波長分布が異なるため、正確な変換効率の評価のためのソーラシミュレータの設定が困難な状況にあった。このため、これらの課題に対応するソーラシミュレータの開発が望まれていた。
【0003】
従来のソーラシミュレータは、図7に示すような構成となっている。すなわち、キセノンランプ30を光源とし、これに反射鏡31を用いて反射させ、ミラー32、36を用いて光の方向を定め、集光レンズ33で光を集光し、シャッター34で照射時間を制御し、フィルタ35で波長応答特性を制御し、フライアイレンズ37で光の均一性を確保して試料に照射するものであった。
【0004】
図8は、シリコン単結晶二次基準セルに対して、実際の太陽光を照射したときと、従来のソーラシミュレータの疑似光を照射したときの分光放射照度の違いを示した図である。
図からわかるように、波長のスパンが100nmの範囲で、ソーラシミュレータを用いた場合の分光放射照度と太陽光を用いた場合の分光放射照度とを平均的に合わせ込むことはできているが、個々の波長での特性を見ると明らかに違っていることがわかる。特に800nm付近での特性の違いが大きく、ここでの感度が強い太陽電池にはキセノンランプの影響が大きく働くため、正しい評価ができているかが疑問となる。特に、反射防止膜の特性をこの特性に合わせると有意な結果が得られることとなる。
これは、キセノンランプの波長応答特性と太陽光の波長応答特性が元々異なっていることに起因しており、その解決策がなければ問題は解消しない。
上述のような光学フィルタを用いて所要の波長の光を減衰させることにより基準太陽光の放射光を模倣することが提案されているが(例えば特許文献1参照)、かかる方式では、特定の波長だけを通過させる訳ではなく、本来通過させたい波長までも減衰させてしまうという問題があり、大雑把な特性の補正はできても正確な補正をすることが困難であった。
【0005】
一方、かかるフィルタによる補正方式の問題点を解決するため、光源からの光を回折格子やプリズム等の分光分散部で空間的に分光し、分光した単色光の光強度を個別に制御し、所望の強度に変調された単色光を混合して疑似光として出力する疑似光発生装置が提案されている(特許文献2参照)。この光強度の制御は、一次元的に配列された絞り(ウェッジ)によって行われている。
しかしながら、この方法では、光源からの光を分光分散部によって精度よく単色光に分光することが必須となるが、有限のサイズをもつ光源からの光を精度よく単色光に分光するためには、光源のアパーチャ(絞り)を十分小さくする必要がある。しかし、アパーチャを小さくすると光源のパワーの大半がアパーチャでカットされてしまうため出力の効率が極端に劣化するという問題がある。この小径アパーチャによる出力効率の劣化は太陽発電評価の用途における高出力の要求と背反する結果となる。すなわち、ソーラシミュレータにおいては、単色光への分光精度を上げることと、出力効率を上げることとは二律背反の関係にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−165376
【特許文献2】特開2002−267949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、出力効率を上げるためには、アパーチャの径を従来よりも大きくする必要があるが、そうすると単色光への分光精度が落ちる、すなわち複数の波長のスペクトルが重なりあった「ボケた」単色光となる。本発明の発明者らは、この「ボケた」状態の光信号に含まれる各波長のスペクトルを取り出して、所望の光強度に変調すれば、出力効率を落とさずに基準スペクトルと極めて近似したスペクトル特性を実現できることに想到した。
本発明は、上述のような事情に鑑み為されたものであり、基準スペクトルと極めて近似したスペクトル特性を実現した疑似スペクトルを発生するとともに、出力効率の向上をも実現した、ソーラシミュレータに最適な、疑似スペクトル発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光源と、該光源から出射された光の量を制限する光量制限手段と、前記光量制限手段を通過した光を入射して、スペクトルに分解して波長情報を位置情報に変換する分光手段と、前記分解された各スペクトルの光強度が、予め設定した基準スペクトルの光強度の値になるように光強度変調を行う光強度制御手段と、前記光強度変調された後の各スペクトルを混合して疑似光として出力する光混合手段とを備えた疑似スペクトル光源に関し、本発明の上記目的は、前記光強度制御手段が、前記光源に含まれる波長λにおける光のスペクトル分布関数X(λ)と、前記光量制限手段で設定した制限量に基づいて決定される前記光強度制御手段の位置sにおける前記スペクトルの広がりを表す関数g(λ,s)とから求められる前記光強度制御手段の位置sにおける前記光のスペクトル分布関数X(λ)・g(λ,s)に、前記位置sにおける所定の光強度変調率L(s)を乗じた変調後のスペクトル分布関数X(λ)・g(λ,s)・L(s)を前記位置sに関して積分して得られる出力光のスペクトル∫X(λ)・g(λ,s)・L(s)dsと、前記波長λにおける基準スペクトルS(λ)との差が最小となるように設定された前記光強度変調率L(s)によって前記波長λのスペクトルの光強度を制御することによって達成される。
【0009】
また、本発明の上記目的は、前記光強度制御手段から出力された前記光強度変調された光のスペクトルの光強度を検出する検出器をさらに備え、前記光強度制御手段が、前記検出された光のスペクトルの光強度が前記基準スペクトルの光強度の値と一致するように前記光強度変調率L(s)を補正して光強度変調を行うことを特徴とする前記疑似スペクトル発生装置によって効果的に達成される。
【0010】
さらに、本発明の上記目的は、前記光量制限手段がアパーチャであり、その開口部からの出力が入力の15%以上になるような開口径に設定することにより、好ましくは、前記アパーチャの前記開口部からの出力が入力の40乃至50%になるような開口径に設定することにより、さらに効果的に達成される。
【0011】
またさらに、本発明の上記目的は、前記基準スペクトルS(λ)をプログラマブルに設定可能にすることにより、或いは、前記スペクトルの広がりを表す関数g(λ,s)の半値幅を20nm以上300nm以下とすることにより効果的に達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る疑似スペクトル発生装置によれば、光量制限手段において任意に光量が制限でき、制限された光量に基づいて決められたスペクトルの広がりの関数によって、光強度制御対象のスペクトル分布関数が特定されるので、光量制限手段によって光量を絞ることによって必ずしも精度の高い単色光に分光する必要がなくなる。このことによって従来よりも出力効率の向上を図ることができる。
本発明に係る疑似スペクトル発生装置によれば、基準スペクトルを任意に設定できるので、これを地域によって異なる太陽光モデルに設定すれば、高精度、高効率のソーラシミュレータが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における疑似スペクトル発生装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る疑似スペクトル発生装置に使用する光源としてのキセノンランプの波長特性を示す図である。
【図3】キセノンランプの放射角特性を示す図である。
【図4】本発明における光強度制御手段(空間光変調器)へ照射されるスペクトルの状態と、各ピクセルにおける光強度の分布状態を示す図である。 (A) ピクセル位置と各波長のスペクトルの関係を示す図である。 (B) 同一ピクセルに照射される各波長のスペクトル光強度特性を示す図である(その1)。 (C) 同一ピクセルに照射される各波長のスペクトル光強度特性を示す図である(その2)。
【図5】光源がキセノンランプの場合の各波長における光強度変調率を示す図である。
【図6】本発明に係る疑似スペクトル発生装置の出力特性と、太陽光のスペクトル特性との一致度を示した図である。
【図7】従来の一般的なソーラシミュレータの実施例を示す図である。
【図8】シリコン単結晶二次基準セルに対して、実際の太陽光を照射したときと、従来のソーラシミュレータの疑似光を照射したときの分光放射照度の違いを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る疑似スペクトル発生装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明における疑似スペクトル発生装置の構成例を示す図であり、キセノンランプあるいは、キセノン・水銀ランプ等の300−1500nmの波長領域で光を発生する光源1、その光源を前方に出射する反射鏡2により、光を集光させ、その光を光量制限手段であるアパーチャ3で絞った後、放物面鏡4で光路を変えて分光手段(回折格子)5に入射させて波長情報を位置情報に変換させ、変換した光を光強度制御手段7(例えば、空間光変調器:Spatial Light Modulator、以下、「SLM」という。)を用いて強度変調し、基準となるスペクトル(例えば太陽光モデル)とほぼ同一の波長応答特性に変調し、これを光混合手段9(例えばロッドレンズ)で混合し、均一照射光学系10(例えばフライアイレンズ)を通して対象物に照射する(11は照射面である。)。PCはSLM7を所定のプログラムに基づいて制御するコンピュータである。なお、検出器8は、SLM7から出力された光強度変調後の光のスペクトルの光強度を検出するものであり、検出された光強度と基準スペクトルの光強度との差をゼロに近づけるように、PCがSLM7を制御して光強度変調の補正を行う。
回折格子は、種々の波長が混ざった光(白色光)を波長ごとのスペクトルにわける(分散)光学素子である。すなわち、波長情報を位置情報に変換するものである。
【0015】
図2は光源1に用いたキセノンランプの波長特性を示したもので、その特徴は、多くの基線を有していることであり、特に810nmと870nmの基線はその強度が高く、この基線を減衰フィルタ等で適当に減衰させる必要がある。
また、キセノンランプ1の放射角特性を図3に示す。反射鏡2がうまく設計されているため、放射角は、ほぼ、ガウス分布している。これにより、放射特性はほぼガウス分布として扱うことが出来る。
【0016】
本発明に係る疑似スペクトル発生装置は、出力効率の向上させるため、アパーチャにおける光量制限を従来よりも緩和し(つまり、精度の高い単色光にはしない。)、回折格子において分光された光は、複数の波長のスペクトルが重畳された、いわゆる「ボケた」光になるのが特徴である。すなわち、このボケた光をSLM7において、各波長のスペクトルごとに強度変調を行って基準のスペクトルの強度に近づけるように制御する方法に特徴を有する。SLMとしては市販されている反射型液晶マイクロディスプレイ(以下、「LCOS」という。)を利用することができる。
【0017】
上記のようなボケた光を放物面鏡4を介して回折格子5に当てると、アパーチャ3で制限された放射角を許容しているため、1つの波長に対し、位置分布を持って出力されることになる。この出力が放物面鏡6を介してLCOS7に照射されるわけであるが、その様子を図4によって説明する。図4(A)はLCOSのピクセル位置と各波長における光強度の関係を示すものである。波長λの光はあるガウス分布をしており、λ+1(離散化したときのλの隣の波長)の光は少し位置を変えて入射することになる。このため、図4(B)に示すように1つのピクセル(Bのピクセル)に光強度の異なる複数の波長の光が照射されることになる。図4(C)はピクセルCにおける各スペクトルの光強度を表している。波長λのスペクトルに着目すれば、ピクセルBで検出される強度が一番大きいが、その隣のピクセルにおいても検出されるので、これらをLCOS上の各ピクセルについて足し合わせたものを強度変調すれば、出力効率を損なうことなく、正確な強度変調が可能となる。ここでの説明では、わかりやすいように離散的に説明したが、実際にはこれが、連続で発生していることになる。
【0018】
このような入射光の光強度をLCOSで制御する。次にその制御方法を説明する。
キセノンランプのスペクトル分布を表す関数をX(λ)とし、目標となる太陽光スペクトル分布を表す関数をS(λ)とする。
アパーチャからの光の広がりはガウス分布で仮定できる。この分布のLCOS上における広がりの関数をg(λ,s)とする。ただしsはLCOS上の位置をあらわす変数で波長λと同じ単位を持つものとする。なお、ここでは、広がりの関数をg(λ,s)は、アパーチャから出た光を完全に平行な光にして回折格子に照射したと仮定し、スペクトルの広がりを表す関数をg(λ−s)として説明する。一般には、反射鏡などの構成によってはアパーチャから出た光は完全に平行な光にはならないので、スペクトルの広がりを表す関数をg(λ,s)としている。このスペクトルの広がりを表す関数g(λ,s)の半値幅は20nm以上300nm以下であることが好ましい。g(λ,s)の半値幅が300nmを超えるようになると、出力光のスペクトルを細かく制御することが困難になってくるからである。
【0019】
LCOS上の位置sにおけるの光のスペクトル分布関数は次の数1となる。
【数1】

それぞれの位置sにおけるLCOSの光強度変調率(反射型LCOSの場合は反射率となる。)をL(s)とすると、出力光のスペクトルは次の数2となる。
【数2】

以上より、本発明における制御は、次の数3で示す二乗残差を最小化するLを求める問題に帰着される。
【数3】

上式を離散化し、マトリックス表示すると次の数4となる。
【数4】

ここで

はX{λ}を対角項とする対角行列、

はその(i,j)成分がg(λi−sj)である行列である。

の各成分はLCOSの各ピクセルの反射率であるので、物理的には0<Li<1でなければならない。従って、この問題は制約付最小二乗問題となる。制約付最小二乗問題の解は凸2次計画法やペナルティ関数法などの各種の最適化手法で解くことができる。
ペナルティ関数法は、制約付き最適化問題を無制約最適化問題に変換して解く方法である。この方法では制約を満たさないことに対するペナルティ項を目的関数に加えて定義されるペナルティ関数を無制約最適化することを、ペナルティ項の重みを増やしながら繰り返すものである。[G]の条件が悪い場合には適宜適切化を施して数値計算を実施する。
このようにして求められたLを用いて、数2により、各波長における強度変調されたスペクトルが求められる。
【0020】
図5は上述のようにして求めた各波長におけるLCOSの制御値Lを表したものである。また、図6は本発明に係る疑似スペクトル発生装置の出力特性(放射照度)と、太陽光のスペクトル特性とがよく一致していることを示す図である。
【0021】
本発明では、あらかじめ行列XおよびGを求めておく必要があるが、出力光のスペクトルをモニターするために検出器8(例えば分光計)を備えれば装置ごとで起動時にXおよびGをモニターすることができる。すなわちLCOSのそれぞれのピクセルをすべてON状態にすると出力光スペクトルがX(λ)となるのでXを知ることができる。LCOSのそれぞれのピクセルをひとつだけON状態に、それ以外をOFF状態にすると、出力光のスペクトルは行列XGのひとつの行ベクトルと一致するので、これをそれぞれのLCOSのピクセルに対して順次行えば、行列XGの情報を構築することができる。
【実施例1】
【0022】
図1に示す構成で実現している。本発明に利用している光源のキセノンランプはパーキングエルマ製のもので、光源1と反射鏡2が一体となっている。キセノンランプは、波長特性がフラットであるため、容易に太陽光の波長特性が実現できるためである。この光源の出力をアパーチャ3で絞り(光源からの出力パワーの15%以上、好ましくは40〜50%が出力されるようなアパーチャ径に設定する。)、放射角を制限した上で、放物面鏡4を介して回折格子5に入射し、その出力を放物面鏡6を介してSLM7に当て、光強度を変調した後、その出力をロッドレンズ9を介して均一照射光学系10に入れると照射面11に所望の放射照度特性が得られることになる。SLMとしては市販されているLCOSを使用した。用いたLCOSは4096×2400ピクセルのもので、1ピクセルの大きさが6.8ミクロン、ピッチ間が0.3ミクロンのものである。したがって、このLCOSへ照射したときのロスは、10%であるため、90%の効率で光を利用することができる。
LCOSの諧調度は1%の分解能で、これにより十分、強度変調が可能である。また、1ピクセルあたりの平均分解能は1nmに設定できたため、波長分解能も十分である。
光の放射強度分布の制御(強度変調)はLCOS7とロッドレンズ9の間に設けられた検出器8によって補正を行っている。すなわち、LCOSから出力された光のスペクトルを検出器8で検出し、それを基準となる太陽光のスペクトルの強度と比較し、コンピュータがLCOSを制御することによって、太陽光スペクトル強度により近づけるように制御を行う。もちろん、この検出器8は照射面11に設定しても問題はない。
【0023】
上記のような構成により、ほぼ、図6に示す波長特性を実現することができ、放射照度も100mW/cmが実現でき、照射面積も10cmが実現できた。
【0024】
ただし、上記の操作をした場合、種々の位置で、損失が発生する。アパーチャ3で放射角を制限することによる損失、放物面鏡による損失、回折格子による高次の項による損失、LCOSの反射率、ピクセル間での損失、ロッドレンズに結合させるときの損失等である。太陽電池の要求される放射照度として100mW/cmが規定されているため、照射面積が大きくなると、これらの面積は無視できなくなる。たとえば、50×50mmの場合、必要な光量は2.5W以上、100×100mmの場合は10W以上、150×150mmの場合は22.5W以上となる。したがって、これらに対応するには上記で説明したLCOSを含む光学ユニットを複数用い、ロッドレンズに入射させ、合波する必要がある。
【0025】
ただし、このような構成を採っているため、基準波長特性への対応性は良く、各国で設定されている基準波長特性に対しては、S(λ)のプログラムを変更するだけで、容易に変更することができる。私企業等で特殊な規定をしていてもそれに対応することは容易である。
【0026】
LCOSの波長制御範囲は380nmから1200nmの範囲に設定されている。短波長領域の制約は、LCOSに用いている液晶の材料特性の制約を受けている。波長が短くなると光子のエネルギーが高くなり、現在使用している液晶の電気親和力より高いエネルギーが与えられ、この結果、液晶の結合が切断されるために特性の劣化が起こることによる。このエネルギーとして、350nm付近から影響が出始めるため、安全として380nmを設定している。
もちろん、耐力のある液晶が開発されれば、この波長を短波長側に伸ばすことは可能である。長い波長側の制約はなく、これは、JISの規格に基づいて設定しているものである。
【0027】
次に、350−380nmの領域に対する対応を説明する。この波長間はLCOSの劣化のために対応できなかった領域である。もともと、キセノンランプの波長特性は200nm付近から始まっているため、最初にハイパスフィルタで200−350nmの光を落とすことになる。次に350−380nm付近は、バンドパス反射フィルタで光路を変更し、さらに、減衰フィルタで出力を調整し、最後に合波することにより対応することになる。減衰フィルタの減衰量は、380−1200nmの領域での制御に必要な光量から算出して設定する。
【0028】
次にこの装置での解析機能について説明する。この装置はLCOSを用いて光強度変調しているので、基準波長特性に合わせるだけでなく、ある特定の波長の光強度を設定し、それを重畳することは容易に行える。さらに、この操作を掃引することも容易である。したがって、単一波長を掃引させると太陽電池における欠陥やトラップレベルの異常等を容易に解析することが出来る。これらは、太陽電池の解析手法として応用することが出来る。
また、任意の波長に対する追随性がよいので、プログラムの変更により任意の波長特性を実現することが出来、これらを用いて、各種の解析を行うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、正確な疑似スペクトルを発生させることが可能であり、また、基準となる太陽光のスペクトルの波長特性データも登録しておけば、選択により容易に利用可能なソーラシミュレータを実現することができる。この特徴は、これまで変換効率の標準化が行えなかったこの分野において、評価装置として基準になる装置を提供するものである。
さらに、任意の波長特性をプログラムで組むことが出来るため、太陽電池の解析を容易に行うことができる。
本発明に係る疑似スペクトル発生装置は、太陽電池の光変換効率を評価するためのソーラシミュレータとしての利用だけでなく、農業分野における人工日照装置としての利用も考えられる。
【符号の説明】
【0030】
1 光源(キセノンランプ)
2 反射鏡
3 光量制限手段(アパーチャ)
4 放物面鏡
5 分光手段(回折格子)
6 放物面鏡
7 空間光変調器(LCOS)
8 検出器
9 光混合手段(ロッドレンズ)
10 均一照射光学系(フライアイレンズ)
11 照射面
30 光源(キセノンランプ)
31 反射鏡
32 ミラー
33 集光レンズ
34 シャッター
35 フィルタ
36 ミラー
37 フライアイレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
該光源から出射された光の量を制限する光量制限手段と、
前記光量制限手段を通過した光を入射して、スペクトルに分解して波長情報を位置情報に変換する分光手段と、
前記分解された各スペクトルの光強度が、予め設定した基準スペクトルの光強度の値になるように光強度変調を行う光強度制御手段と、
前記光強度変調された後の各スペクトルを混合して疑似光として出力する光混合手段と、
を備えた疑似スペクトル光源において、
前記光強度制御手段は、
前記光源に含まれる波長λにおける光のスペクトル分布関数(X(λ))と、前記光量制限手段で設定した制限量に基づいて決定される前記光強度制御手段の位置sにおける前記スペクトルの広がりを表す関数(g(λ,s))とから求められる前記光強度制御手段の位置sにおける前記光のスペクトル分布関数{X(λ)・g(λ,s)}に、前記位置sにおける所定の光強度変調率(L(s))を乗じた変調後のスペクトル分布関数{X(λ)・g(λ,s)・L(s)}を前記位置sに関して積分して得られる出力光のスペクトル{∫X(λ)・g(λ,s)・L(s)ds}と、前記波長λにおける基準スペクトル(S(λ))との差が最小となるように設定された前記光強度変調率(L(s))によって前記波長λのスペクトルの光強度を制御することを特徴とする、疑似スペクトル発生装置。
【請求項2】
前記光強度制御手段から出力された前記光強度変調された光のスペクトルの光強度を検出する検出器をさらに備え、
前記光強度制御手段が、
前記検出された光のスペクトルの光強度が前記基準スペクトルの光強度の値と一致するように前記光強度変調率(L(s))を補正して光強度変調を行うことを特徴とする請求項1に記載の疑似スペクトル発生装置。
【請求項3】
前記光量制限手段がアパーチャであり、その開口部からの出力が入力の15%以上になるような開口径に設定されている請求項1又は2に記載の疑似スペクトル光源。
【請求項4】
前記アパーチャの前記開口部からの出力が入力の40乃至50%になるような開口径に設定されている請求項3に記載の疑似スペクトル発生装置。
【請求項5】
前記光強度制御手段が空間光変調器である請求項1乃至4のいずれかに記載の疑似スペクトル発生装置。
【請求項6】
前記空間光変調器が、透過型または反射型液晶マイクロディスプレイで構成されていることを特徴とする請求項5に記載の疑似スペクトル発生装置。
【請求項7】
前記基準スペクトルS(λ)がプログラマブルに設定可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の疑似スペクトル発生装置。
【請求項8】
前記分光手段が回折格子である請求項1乃至7のいずれかに記載の疑似スペクトル発生装置。
【請求項9】
前記光混合手段がロッドレンズである請求項1乃至8のいずれかに記載の疑似スペクトル発生装置。
【請求項10】
前記光源がキセノンランプまたは水銀・キセノンランプである請求項1乃至9のいずれかに記載の疑似スペクトル発生装置。
【請求項11】
前記スペクトルの広がりを表す関数(g(λ,s))の半値幅が20nm以上300nm以下である請求項1乃至10のいずれかに記載の疑似スペクトル発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−81274(P2011−81274A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234706(P2009−234706)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(501470603)プレサイスゲージ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】