疼痛を管理するための麻酔薬の徐放性剤形
短期にわたりブピバカインのような麻酔薬を放出する薬剤送達系およびキットが提供される。そのような系を投与し、そして調製する方法も提供される。薬剤送達系は、短期ゲル賦形剤およびゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬を含む。ゲル賦形剤は低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および水非混和性溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてポリマーとゲルを形成するために有効な量で含んでなる。場合により成分溶媒が水非混和性溶媒と一緒に使用されることがある。送達系の効力を測定する1つの方法である効力比は、例えばゲル賦形剤の構造に基づき制御され、所望の放出プロファイルを達成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、引用により本明細書に編入する2002年6月25日に出願された特許文献1の利益を主張する、引用により本明細書に編入する2003年6月25日に出願された特許文献2の一部継続出願である。
発明の分野
本発明は、所望の場所に適用することができる麻酔薬を含んでなる徐放性剤形およびキットに関する。また本発明は剤形の調製法および投与法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
疼痛、例えば手術後の疼痛の管理は、患者にとって回復への道の重要な段階である。どの疼痛軽減療法が各患者に最適であるか、多くの要因が影響するが、容易に投与できる治療が強く望まれている。
【0003】
手術後の疼痛の管理のための1つの治療は、局所麻酔薬、例えばブピバカインを使用することである。ブピバカインは末梢神経ブロックおよび仙骨および腰部硬膜外ブロックのために局所浸潤により投与される長期に作用する局所麻酔薬である。当該技術分野で広く理解されているように、ブピバカイン塩酸塩は、例えば非経口溶液単独、デキストロース注射での溶液、およびエピネフリンとの組み合わせとして手術後の疼痛の処置に利用することができる。
【0004】
大手術(例えば開胸、大動脈修復および腸切除)、中手術(例えば帝王切開、子宮摘出および虫垂切除)および小手術(例えばヘルニア縫縮、腹腔鏡検査、関節鏡検査、胸部生検)のようなすべての種類の手順を伴う手術後の疼痛は消耗性となる可能性があり、そして手術後3〜5日間、疼痛処置が必要となるかもしれない。しかしエピネフリンを含む0.5%のブピバカイン塩酸塩のような局所麻酔薬溶液は、わずか約4〜9時間の局所麻酔しか提供しない。結果として、ブピバカインのような麻酔薬を使用した標準的な術後治療には、頻繁な注射または一定の静脈注入のいずれかが必要である。
【0005】
短期間にわたり徐放性を提供できる麻酔薬を含んでなる薬剤送達系の必要性が大いに存在する。また数日間にわたり徐放性を提供する単回投与用の麻酔薬送達系についての必要性も存在する。
参考文献
【特許文献1】米国特許仮出願第60/391,867号明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/606,969号明細書
【発明の開示】
【0006】
発明の要約
本発明により、ブピバカインのような麻酔薬を短期間にわたり放出する薬剤送達系およびキットが提供される。そのような系を投与および調製する方法も提供される。本発明による薬剤送達系、例えば徐放性剤形には、短期ゲル賦形剤(gel vehicle)およびゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬を含む。ゲル賦形剤は低分子量の生体侵食性(bioerodible)、生体適合性ポリマー、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてポリマーと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなる。場合により成分溶媒(component solvent)が水に非混和性溶媒と一緒に使用される。
【0007】
本発明の剤形は、静脈内溶液の頻繁な注射または一定の注入のいずれかを要する可能性がある従来の全身性の疼痛処置に利点を表す。手術後の鎮痛治療に関して、例えばブピバカインのような固定量の麻酔薬を長期間にわたり、手術の部位に放出することができる本発明の薬剤送達系は、頻繁な注射または一定の静脈内注入の標準的な全身的な術後の鎮痛治療よりも有利である。また利点は、本出願の剤形がただ1回投与される場合に達成される。一方、本発明の剤形は反復投薬用量で投与することもできる。
【0008】
本発明の目的は、疼痛、例えば手術後の疼痛の管理のために個体に適用することができる例えばブピバカインのような麻酔薬の短期徐放性剤形を開発することである。送達系の効力を測定する1つの方法である効力比(efficacy ratio)は、剤形を投与してから短時間後に達成される有益物質(benefical agent)、例えば麻酔薬の最大達成濃度(Cmax)と、最大濃度が生じた後の所定の期間、例えば投与後2日から9日の間の期間にわたり測定される有益物質の平均濃度(Caverage)との間の比率である。効力比は、例えば所望する放出プロファイルを達成するためにゲル賦形剤の構造に基づき制御することができる。ゲル賦形剤中のポリマーと溶媒の比率は、水非混和性溶媒または溶媒混合物、成分溶媒の選択、および/または賦形剤の選択ができるように、効力比に影響を及ぼすことができる。さらにポリマーの分子量および/または有益物質の平均粒子サイズも、効力比に影響を及ぼし得る。効力比は個体の必要性ならびに投与される有益物質に基づき作り変えることができ、そして約1〜約200の範囲であることができる。幾つかの場合では、効力比は約5から約100の間であることができる。
【0009】
手術後の疼痛管理に関しては通常、ほとんど即座に疼痛を制御し、次いで特定の期間にわたり麻酔薬の持続するレベルを維持するために麻酔薬の十分に高いCmaxを達成する薬剤を送達することが望ましい。この場合、より高い効力比が望ましいかもしれない。しかし別の状況では、薬剤の高い投薬用量からの潜在的副作用を下げるために、全身的循環または局所組織での分布のいずれかにおいて厳しく制御された活性物質のレベルを維持することが有用となり得る。この種の状況については、より低い効力比が望ましいかもしれない。そのように、患者および治療の必要性は変動するので、薬剤送達剤形の効力比を制御することが望ましい。
【0010】
本発明により具現されるポリマーと溶媒との間の比に関して、約5:95から約90:10の間、約20:80から約80:20の間、および/または約30:70から約75:25の間の比が意図される。
【0011】
短期徐放性剤形、例えば引用により本明細書に編入する同時係属中の米国特許出願第10/606,969号明細書により検討されるような注射可能な貯蔵ゲル(depot gel)組成物は、短期間にわたり個体に有益物質の全身的または局所的送達の両方を提供することができる。特に短期間の徐放性剤形は、有益物質、例えばブピバカインのような麻酔薬を、投与から約2週間以下の期間にわたり処置している患者に放出することができる。本発明の別の態様は、約7日間以下の期間にわたり放出を制御する。さらに別の態様は、約24時間から7日間の間の期間、有益物質の放出を制御することができる。
【0012】
本発明の使用に適する麻酔薬を限定するわけではないが、引用により本明細書に編入する米国特許第6,432,986号明細書は、本発明の1つの観点に幾つかの例を提供し、麻酔薬はブピバカイン、レボ−ブピバカイン、ロピバカイン、レボ−ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−メピバカインおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の観点では、麻酔薬はブピバカインを含んでなる。
【0013】
本発明のさらなる観点では、ゲル賦形剤の溶媒は25℃で約7重量%以下の水中混和性
を有する。また剤形が25℃で7重量%より高い水中混和性を有する溶媒を含まないものも本発明の態様である。本発明には多くの溶媒が適当であるが、本発明の1つの観点では、溶媒は芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルエステル、アリール酸の低級アラルキルエステル、アリールケトン、アラルキルケトン、低級アルキルケトン、クエン酸の低級アルキルエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明に使用する有用な溶媒には、限定するわけではないが、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、安息香酸エチル、トリアセチンおよびそれらの混合物を含む。
【0014】
本発明のさらなる観点には、トリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリエチルグリセリド、リン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、鉱物油、ポリブテン、シリコーン油、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、オクタノール、乳酸エチル、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマール、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分溶媒をさらに含んでなる上で検討したような徐放性剤形を含む。
【0015】
本発明の別の態様では、ゲル賦形剤は乳酸基材ポリマーまたは乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)を含んでなる。別の態様はカプロラクトンに基づくポリマーを使用する。またポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリ(カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖、キチン、キトサン、ヒアルロン酸およびそれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物からなる群から選択される。本発明で使用するポリマーはエステル末端基またはカルボン酸末端基を含んでなることができる。さらにポリマーは約1,000から約10,000の間、約3,000から約10,000の間、約3,000から約8,000の間、約4,000から約6,000の間および/または5,000重量平均分子量を有することができる。
【0016】
本発明の剤形は、約0.1%〜約50重量%の麻酔薬、約0.5%〜約40重量%の麻酔薬、および/または約1%〜約30重量%の麻酔薬を含んでなる。
【0017】
本発明の別の観点には、約250μm未満、約5μmから250μmの間、約20μmから125μmの間および/または約38μmから63μmの間の平均粒子サイズを有する麻酔薬粒子を含む。
【0018】
本発明によるさらに別の観点には、以下の:ステアリン酸のような補形剤(excipient)、乳化剤、孔形成剤(pore former)、麻酔薬用の溶解性モジュレーターおよび浸透性剤の少なくとも1つを含んでなる上で検討した徐放性剤形を含む。
【0019】
本発明の別の観点には、低分子量の乳酸基剤ポリマーおよび水に非混和性の溶媒を、ポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなる短期ゲル賦形剤;麻酔薬がゲル賦形剤に溶解または分散されたブピバカインを含んでなる麻酔薬;および徐放性プロファイルを達成するための制御可能な効力比を含んでなり、乳酸基剤ポリマーの重量平均分子量が約3,000から約10,000の間である麻酔薬
の徐放性剤形を含む。
【0020】
本発明のさらなる態様には、乳酸およびグリコール酸の低分子量コポリマー(PLGA)、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなる短期ゲル賦形剤;麻酔薬がゲル賦形剤に溶解または分散されたブピバカインを含んでなる麻酔薬;および徐放性プロファイルを達成するための制御可能な効力比を含んでなり、コポリマーの重量平均分子量が約3,000から約10,000の間である麻酔薬の徐放性剤形を含む。
【0021】
また本発明は、徐放性剤形を使用して個体の局所疼痛を処置する方法を含み、この方法は低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなるゲル賦形剤;およびゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬を含んでなる短期徐放性剤形を投与することを含んでなる。
【0022】
他の方法には徐放性剤形を使用して個体の手術後の疼痛を処置することを含み、この方法は低分子量の生体侵食性、生体適合性乳酸基剤ポリマーまたは乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなるゲル賦形剤;ゲル賦形剤に溶解または分散されたブピバカインを含んでなる麻酔薬;および放出プロファイルを達成するための制御可能な効力比を含んでなる短期徐放性剤形を1回投与することを含んでなる。
【0023】
本発明の剤形は、1回投与されるか、または繰り返し投与されることができる。剤形は局所疼痛に局所的に適用することができる。本発明の別の観点では、剤形は局所疼痛付近の場所に注射される。麻酔薬は全身に、または局所に送達され得る。麻酔薬の送達は多くの部位、例えば局所疼痛の周囲の多くの場所であることができる。
【0024】
本発明の別の観点には徐放性剤形の調製法を含み、この方法は低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成してポリマー/溶媒溶液またはゲルを作成するために有効な量で含んでなる短期ゲル賦形剤を調製し;ポリマー/溶媒溶液またはゲルを透明な均一溶液またはゲルになるまで、例えば室温から65℃の範囲の温度で平衡化し;麻酔薬をポリマー/溶媒溶液またはゲルに溶解または分散させ;麻酔薬およびポリマー/溶媒溶液またはゲルをブレンドして徐放性剤形を形成し;そして放出プロファイルを達成するための効力比を制御することを含んでなる。
【0025】
また本発明に従い、個体の局所疼痛に対する麻酔薬の持続型送達の投与用キットを提供し、このキットは低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および水に非混和性の溶媒を、ポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなる短期ゲル賦形剤;ゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬;および場合により以下のステアリン酸のような補形剤、乳化剤、孔形成剤、場合により麻酔薬と会合している麻酔薬用の溶解性モジュレーターおよび浸透性剤の1もしくは複数を含んでなり、少なくとも場合により溶解性モジュレーターと会合している麻酔薬は個体に麻酔薬を投与する時期まで溶媒から分かれて維持されている。
【0026】
これらのおよび他の態様は、本明細書に開示する観点においてこれらの、または当業者により容易に想起されるだろう。
詳細な説明
本発明は、短期間にわたりブピバカインのような麻酔薬を放出する薬剤送達系およびキ
ットを対象とする。そのような系を投与し、そして調製する方法も提供される。本発明による薬剤送達系は、短期ゲル賦形剤およびゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬を含む。ゲル賦形剤は低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてポリマーと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなる。場合により、成分溶媒は水非混和性溶媒と一緒に使用される。送達系の効力を測定する1つの方法である効力比は、例えば所望する放出プロファイルを達成するためにゲル賦形剤の構造に基づき制御され得る。ゲル賦形剤中のポリマーと溶媒の比率は、水非混和性溶媒または溶媒混合物、成分溶媒の選択および/または賦形剤の選択ができるように、効力比に影響を及ぼすことができる。さらにポリマーの分子量および/または有益物質の平均粒子サイズも、効力比に影響を及ぼし得る。効力比は個体の必要性ならびに投与される有益物質に基づき作り変えることができ、そして約1〜約200の範囲であることができる。幾つかの場合では、効力比は約5から約100の間であることができる。
【0027】
手術後の疼痛管理に関しては通常、ほとんど即座に疼痛を制御し、次いで特定の期間にわたり麻酔薬の持続レベルを維持するために麻酔薬の十分に高いCmaxを達成する薬剤を送達することが望ましい。この場合、より高い効力比が望ましいかもしれない。しかし別の状況では、薬剤の高い投薬用量からの潜在的副作用を下げるために、全身的循環または局所組織での分布のいずれかにおいて厳しく制御された活性物質のレベルを維持することが有用となり得る。この種の状況については、より低い効力比が望ましいかもしれない。そのように患者および治療の必要性が変動するので、薬剤送達剤形の効力比を制御することが望ましい。
【0028】
一般に本発明の組成物はゲル様であり、そしてたとえ組成物が硬化しても移植および薬剤送達でインプラント全体に実質的に均一で非孔質の構造を形成する。さらにポリマーゲルインプラントが水性環境に供された時にゆっくり硬化する間、硬化したインプラントは37℃未満のガラス転移温度Tgを有するゴム状の(非硬質)組成物を維持することができる。
【0029】
組成物が注射による移植を意図される場合、針を通してゲル組成物が通過できるための十分に低い粘性を有するゲル組成物を得るために、場合により粘性は乳化剤および/またはチキソトロピー剤により修飾することができる。また孔形成剤および有益物質の溶解性モジュレーターを、本発明の有利な観点を変化させない典型的な製薬学的補形剤および他の添加剤と一緒にインプラント系に加えて、インプラント系から所望する放出プロファイルを提供することができる。インプラント系への溶解性モジュレーターの添加は、特定の状況下で最小のバースト(burst)および持続型送達を有するインプラント系において、7%以上の溶解性を有する溶媒の使用を可能とすることができる。しかし現在、インプラント系は溶媒が単独で存在するか、または溶媒混合物の一部として存在しても、水中で7重量%未満の溶解性を有する少なくとも1つの溶媒を利用することが好ましい。また水中で7重量%以下の溶解性を有する溶媒および1もしくは複数の混和性溶媒(場合により、より大きな溶解性を有する)を含む溶媒混合物を使用する場合、インプラント系は限定された水の取り込み、および最小のバーストおよび持続型の送達特性を現すことも分かった。
定義
本発明を説明し、そして特許請求するにあたり、以下の用語を以下に説明する定義に従い使用する。
【0030】
単数形“a”、“an”および“the”は、内容が外を明確に指示しない限り、複数を示すことを含む。すなわち例えば「溶媒」については1つの溶媒ならびに2以上の異なる溶媒の混合物を含み、「麻酔薬」については1つの麻酔薬ならびに2以上の異なる麻酔薬の組み合わせ等を含む。
【0031】
用語「効力比」とはCmax/Caverageと定義する。Cmaxは剤形の投与から短い間に達成される有益物質、例えば麻酔薬の最大達成濃度である。Caverageは剤形の放出期間に基づき、最大濃度が所定の時間生じた後に測定される有益物質の平均濃度である。例えば7日間の放出を有する剤形について、Cmaxは1時間で測定され、そしてCaverageは1から7日間にわたり測定される。
【0032】
「溶解される」または「分散される」という句はすべて、ゲル組成物中に有益物質の存在を確立することを意味し、そして溶解、分散、懸濁等を含む。
【0033】
用語「全身的」とは、有益物質の個体への送達または投与に関して、有益物質が個体の血漿中で生体学的に有意なレベルで検出可能であることを意味する。
【0034】
用語「局所的」とは、有益物質の個体への送達または投与に関して、有益物質が個体の局所部位に送達されるが、個体の血漿では生体学的に有意なレベルで検出できないことを意味する。
【0035】
用語「短期」または「短時間」は互換的に使用され、そして発明の貯蔵ゲル組成物から有益物質の放出が起こる期間を指し、これは一般に2週間以下、好ましくは約24時間から約2週間、好ましくは約10日以下、好ましくは約7日以下、より好ましくは約3日から約7日である。
【0036】
用語「ゲル賦形剤」は、有益物質の不存在下でポリマーおよび溶媒の混合物により形成される組成物を意味する。
【0037】
有益物質に関連して用語「溶解性モジュレーター」は、ポリマー溶媒または水に対してモジュレーターの不存在下で有益物質の溶解性から、有益物質の溶解性を改変させる作用物質を意味する。モジュレーターは溶媒または水中の有益物質の溶解性を強化するか、または遅らせることができる。しかし高度に水溶性である有益物質の場合、溶解性モジュレーターは一般に水中の有益物質の溶解性を遅らせる作用物質である。有益物質の溶解性モジュレーターの効果は、溶媒との、または複合体の形成によるような有益物質自体と溶解性モジュレーターとの相互作用、またはその両方から生じ得る。本発明の目的に関して、溶解性モジュレーターが有益物質と「会合している(associated)」場合、起こり得るすべてのそのような相互作用または形成を意図する。溶解性モジュレーターは粘稠なゲルと組み合わせる前に、有益物質と混合することができ、あるいは適当ならば有益物質の添加前に粘稠なゲルに加えることができる。
【0038】
本発明の組成物の投与に関連して用語「個体」および「患者」とは、動物またはヒトを意味する。
【0039】
すべての溶媒は、少なくとも分子レベルで、ある大変限定された程度で水に可溶性(すなわち水と混和性)であるので、本明細書で使用する用語「非混和性」は、7重量%以下、好ましくは5%以下の溶媒が水に溶解性であるか、または混和性であることを意味する。本開示の目的について、水中の溶媒の溶解性の値は、25℃で定められると考えられる。一般に報告されるような溶解性の値は、常に同じ条件で行われるとは考えられないので、範囲の一部または上限として水と混和性または溶解性の重量パーセントで本明細書で引用する溶解性の限界は絶対ではない。例えば水中での溶媒の溶解性の上限が本明細書で「7重量%」と引用され、そして溶媒についてさらなる限定がない場合、100mlの水中での溶解性が7.17グラムと報告された溶媒「トリアセチン」は、7%の限界内に含まれると考えられる。本明細書で使用する水中で7重量%未満の水溶性の限界は、溶媒であるトリアセチンまたは水中でトリアセチン以上の溶解性を有する溶媒は含まない。
【0040】
用語「生体侵食性」とは、その場所で次第に分解し、溶解し、加水分解し、かつ/または侵食する材料を指す。一般に本明細書の「生体侵食性」とは、加水分解可能な、そして主に加水分解を介してその場所で生体侵食されるポリマーである。
【0041】
用語「低分子量(LMW)ポリマー」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した時、約1,000〜約10,000、好ましくは約3,000〜約10,000、より好ましくは約3,000〜約8,000、より好ましくは約4,000〜約8,000の範囲の重量平均分子量範囲を有する生体侵食性ポリマーを指し、そしてさらに好ましくは低分子量ポリマーは約7,000、約6,000、約5,000、約4,000そして約3,000の分子量を有する。
【0042】
本発明のポリマー、溶媒および他の作用物質は「生体適合性」でなければならない。すなわちそれらは壊死を生じてはならず、そして使用環境で許容し得る刺激または炎症を有する。使用環境は流体環境であり、そしてヒトまたは動物の皮下、筋肉内、血管内(高/低流)、心筋内、外膜、腫瘍内、または大脳内部分、創傷部位、堅い関節空間または体腔を含んでなることができる。
【0043】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル等、ならびにシクロペンチル、シクロヘキシル等を初めとするシクロアルキル基のような典型的には、しかし必須ではないが1〜約30個の炭素原子を含有する飽和の炭化水素基を指す。一般にここでも必須ではないが、本明細書のアルキル基は1〜約12個の炭素原子を含む。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子のアルキル基を意図する。「置換アルキル」は、1もしくは複数の置換基で置換されたアルキルを指し、そして用語「ヘテロ原子を含むアルキル」および「ヘテロアルキル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換されたアルキルを指す。他に示さない場合、用語「アルキル」および「低級アルキル」は、直鎖、分枝鎖、環式、非置換、置換および/またはヘテロ原子を含有するアルキルまたは低級アルキルを含む。
【0044】
本明細書で使用し、そして他に特定しない限り、用語「アリール」は1つの芳香族環または、一緒に縮合し、共有結合し、またはメチレンもしくはエチレン部分のような通常の基に連結された多数の芳香族環を含有する芳香族置換基を指す。好適なアリール基は、1つの芳香族環または2つの縮合もしくは連結した芳香族環、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノン等を含み、そして最も好適なアリール基は単環式である。「置換アリール」は1もしくは複数の置換基で置換されたアリール部分を指し、そして用語「ヘテロ原子を含有するアリール」および「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換されたアルキルを指す。他に示さない場合、用語「アリール」にはヘテロアリール、置換アリールおよび置換ヘテロアリール基を含む。
【0045】
用語「アラルキル」は、アルキルおよびアリールが上記定義の通りであるアリールで置換されたアルキル基を指す。用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基を指す。特に示さない限り、用語「アラルキル」にはヘテロアラルキルおよび置換アラルキル基、ならびに非置換アラルキル基を含む。一般に本明細書の用語「アラルキル」は、アリールで置換された低級アルキル基、好ましくはベンジル、フェネチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル等のようなフェニルで置換されたアルキル基を指す。
I.注射可能な貯蔵組成物
すでに記載したように、短期間にわたり有益物質を送達するための注射可能な貯蔵組成物は、個体への貯蔵物の注射前に粘稠なゲルとして形成され得る。粘稠なゲルは分散された有益物質が適切な送達プロフィールを提供することを支持し、これには有益物質が経時的に貯蔵物から放出される時、有益物質の制御された初期バーストを有するものを含む。
【0046】
本発明のポリマー、溶媒および他の作用物質は、生体適合性でなければならない;すなわちそれらは使用環境で刺激または壊死を生じてはならない。使用環境は流体環境であり、そしてヒトまたは動物の皮下、筋肉内、血管内(高/低流)、心筋内、外膜、腫瘍内、または大脳内部分、創傷部位、堅い関節空間または体腔を含んでなることができる。特定の態様では、有益物質は副作用を避け、または最小にするために局所的に投与され得る。有益物質を含有する本発明のゲルは、所望する場所、例えばヒトまたは動物の皮下、筋肉内、血管内、心筋内、外膜、腫瘍内、または大脳内部分、創傷部位、堅い関節空間または体腔へ直接注射/移植されるか、またはコーティングとして適用することができる。
【0047】
典型的には粘稠なゲルは、貯蔵物として有益物質の粘稠なゲル組成物を前充填した標準的な皮下注射器、カテーテルまたはトロカールから注射される。注射をヒトまたは動物の皮下、筋肉内、血管内(高/低流)、心筋内、外膜、腫瘍内、または大脳内部分、創傷部位、堅い関節空間または体腔にする場合、注射は最小サイズの針(すなわち最小直径)またはカテーテルを使用して行われ、個体に対する不快を減らすことがしばしば好適である。ゲルは16ゲイジ以上、好ましくは20ゲイジ以上、より好ましくは22ゲイジ以上、さらに好ましくは24ゲイジ以上の針またはカテーテルを通して注射することが望ましい。より高い粘性のゲルでは、すなわち約100ポイズ以上の粘度を有するゲルは、20〜30ゲイジ範囲の針を有するシリンジからゲルを分配するための注射力が大変高いので、手動で行う時には注射を難しく、または正当に不可能とするかもしれない。同時に、高粘度のゲルは注射後および分配期間中の貯蔵物の一体性(integrity)を維持し、そしてまたゲル中の有益物質の所望する懸濁特性を促進することが望ましい。
【0048】
ポリマー溶媒およびポリマーにより形成される粘稠なゲルにチキソトロピー特性を与える作用物質を場合により含む、ポリマーおよびポリマー溶媒の組成物は、特定の利点を提供する。チキソトロピーゲルは剪断力にかけられた時、低減した粘性を現す。この低減の程度は一部、剪断力にかけられた時のゲルの剪断速度の関数である。剪断力を解除すると、チキソトロピーゲルの粘性は、剪断力にかけられる前に示した粘性付近に回復する。したがってチキソトロピーゲルは、シリンジまたはカテーテルから注射される時、剪断力にかけることができ、これが注射工程中に一時的にその粘性を下げる。注射工程が完了した時、剪断力は解除され、そしてゲルはその前の状態に大変近い状態に戻る。
【0049】
注射可能な組成物の有意な剪断減粘性は、針またはカテーテルを介した有益物質の身体の外部および/または内部表面上の様々な部位への最も少ない侵襲性送達を可能とする。さらに針または注射カテーテルを介する注射は、所望する量の組成物を所望する部位に正確に投与し、送達部位での貯蔵ゲル組成物の有意な滞留を可能にすると同時に、投与部位から有益物質の徐放性送達を提供する。特定の態様では、注射カテーテルには計量デバイスまたは組成物の正確な送達を援助するさらなるデバイスを含むことができる。
生体侵食性、生体適合性ポリマー:
本発明の方法および組成物と関連して有用なポリマーは生体侵食性ポリマーであり、すなわちそれらは例えば酵素的に次第に分解し、または加水分解し、溶解し、物理的に侵食し、またはそうではない患者の身体の水性流体内で崩壊する。一般にポリマーは加水分解または物理的侵食の結果として生体侵食されるが、主要な生体侵食プロセスは典型的には加水分解的または酵素的分解である。
【0050】
そのようなポリマーには限定するわけではないが、ポリラクチド、ポリグリコライド、
ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、ヒアルロン酸およびそれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物を含む。
【0051】
現在好適なポリマーはポリラクチドであり、これは乳酸のみに基づくことができる乳酸に基づくポリマーであり、または本発明に従い達成され得る有利な結果に実質的な影響を及ぼさない少量の他のコモノマーを含んでもよい乳酸とグリコール酸に基づくコポリマーであることができる。本明細書で使用する用語「乳酸」は、異性体であるL−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸およびラクチドを含むが、用語「グリコール酸」はグリコライドを含む。最も好適であるのは、通常PLGAと呼ばれるポリ(ラクチド−コ−グリコライド)コポリマーである。ポリマーは約100:0〜約15:85、好ましくは約60:40〜約75:25の乳酸/グリコール酸のモノマー比を有することができ、そして特に有用なコポリマーは約50:50の乳酸/グリコール酸のモノマー比を有する。
【0052】
前記の米国特許第5,242,910号明細書に示したように、ポリマーは米国特許第4,443,340号明細書の教示に従い調製することができる。あるいは乳酸に基づくポリマーは乳酸から直接、または乳酸とグリコール酸との混合物(さらなるコモノマーを含むか、または含まない)から、米国特許第5,310,865号明細書に説明される教示に従い調製することができる。これら特許のすべての内容は、引用により本明細書に編入する。適当な乳酸に基づくポリマーは市販されている。
【0053】
ポリマーの例には限定するわけではないが、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG502、コード0000366、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG502H、PLGA−502H、コード番号260187、ポリD,L−ラクチド(Resomer(商標)202、Resomer(商標)203);ポリジオキサノン(Resomer(商標)X210)(ベーリンガー インゲルハイム ケミカル(Boehringer Ingelheim Chemicals)社、ピーターズバーグ、バージニア州)がある。
【0054】
さらなる例には限定するわけではないが、DL−ラクチド/グリコライド100:0(MEDISORB(商標)ポリマー100DL High、MEDISORB(商標)ポリマー100DL Low);DL−ラクチド/グリコライド85:15(MEDISORB(商標)ポリマー8515DL High、MEDISORB(商標)ポリマー8515DL Low);DL−ラクチド/グリコライド75:25(MEDISORB(商標)ポリマー7525DL High、MEDISORB(商標)ポリマー7525DL Low);DL−ラクチド/グリコライド65:35(MEDISORB(商標)ポリマー6535DL High、MEDISORB(商標)ポリマー6535DL Low);DL−ラクチド/グリコライド54/46(MEDISORB(商標)ポリマー5050DL High、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL Low);およびDL−ラクチド/グリコライド54/46(MEDISORB(商標)ポリマー5050DL 2A(3)、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL 3A(3)、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL 4A(3))(メディソーブ テクノロジーズ インターナショナル(Medisorb Technologies International)L.P.、シンシナティ、オハイオ州);およびポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド50:50;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド65:35;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド75:25;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド85:15;ポリDL−ラクチド;ポリL−ラクチド;ポリグリコライド;ポリε−カプロラクトン;ポリDL−ラクチド−コ−カプロラクトン25:75;およびポリDL−ラクチド−コ−カプロラクトン75:25(バーミンガムポリマー(Birmingham Polymers)社、バーミンガム、アラバマ州)がある。
【0055】
驚くべきことには、低分子量ポリマーを含んでなる本発明の注射可能な貯蔵ゲル製剤が有益物質の制御された徐放性を2週間以内の短期にわたり提供することが見いだされた。放出速度プロファイルは、低分子量ポリマー、水非混和性溶媒、ポリマー/溶媒比、乳化剤、チキソトロピー剤、孔形成剤、有益物質の溶解性モディファイヤー、浸透性剤等の適切な選択により制御することができる。
【0056】
生体適合性ポリマーは、ゲル組成物中に粘稠ゲルの約5〜約90重量%、好ましくは約10〜約85重量%、好ましくは約15〜約80重量%、好ましくは約20〜約75重量%、好ましくは約30〜約70重量%、そして多くは約35〜約65%、そしてしばしば約40〜約60重量%の量で存在し、粘稠ゲルは生体適合性ポリマーおよび溶媒の合わせた量を含んでなる。溶媒はポリマーに以下に記載する量で加えられて、注射可能な貯蔵ゲル組成物を提供する。
溶媒および作用物質:
本発明の注射可能な貯蔵組成物は、生体侵食性ポリーおよび有益物質に加えて水に非混和性の溶媒を含む。好適な態様では、本明細書に記載する組成物は25℃で約7重量%より高い水中混和性を有する溶媒を含まない。
【0057】
溶媒は生体適合性でなければならず、ポリマーと共に粘稠なゲルを形成し、そしてインプラントへの水の取り込みを制限すべきである。溶媒は単一溶媒または前記特性を現す溶媒の混合物でよい。用語「溶媒」は特に示さない限り、単一溶媒または溶媒の混合物を意味する。適当な溶媒はインプラントによる水の取り込みを実質的に制限し、そして水中で非混和性であることを特徴とし、すなわち水中で7重量%未満の溶解性を有する。好ましくは溶媒は5重量パーセント以下の水溶性であり、より好ましくは3重量パーセント以下の水溶性であり、そして一層好ましくは1重量パーセント以下の水溶性である。最も好ましくは水中での溶媒の溶解性は、0.5重量パーセント以下である。
【0058】
水混和性は、以下のように実験的に測定することができる:水(1−5g)を風袋を引いた透明な容器に制御された温度、約20℃で入れ、そして重量を計り、そして候補溶媒を滴下する。溶液を撹拌(swirled)して、相の分離を観察する。相の分離を観察することにより測定されるように飽和点に達したと思われる時、溶液を一晩静置し、そして翌日に再検査する。相の分離を観察することにより定められるように、溶液が未だ飽和であるならば、加えた溶媒の(重量/重量)パーセントを決定する。そうでなければさらに溶媒を加えて、この工程を繰り返す。溶解性または混和性は、加えた溶媒の総重量を溶媒/水混合物の最終重量で除算することにより決定される。溶媒混合物、例えば20%トリアセチンおよび80%安息香酸ベンジルを使用する場合、それらを水に加える前にプレミックスする。
【0059】
本発明に有用な溶媒は、上記のように一般に7重量%未満の水溶性である。上記の溶解性パラメーターを有する溶媒は、芳香族アルコール、安息香酸、フタル酸、サリチル酸のようなアリール酸の低級アルキルおよびアラルキルエステル、クエン酸トリエチルおよびクエン酸トリブチル等のようなクエン酸の低級アルキルエステル、およびアリール、アラルキルおよび低級アルキルケトンから選択することができる。
【0060】
本発明に有用な多くの溶媒は市販されているか(アルドリッチ ケミカルズ(Aldrich Chemicals)、シグマケミカルズ(Sigma Chemicals)
)、あるいは引用により本明細書に編入する米国特許第5,556,905号明細書に記載されているように酸ハライドおよび場合によりエステル化触媒を使用して個々のアリールアルカン酸の通常のエステル化により、そしてケトンの場合はそれらの個々の2級アルコール前駆体の酸化により調製することができる。
【0061】
好適な溶媒は上記の芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルおよびアラルキルエステルを含む。代表的な酸は安息香酸およびフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸のようなフタル酸である。より好適な溶媒は、ベンジルアルコールおよび安息香酸の誘導体であり、そして限定するわけではないが安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミルおよび安息香酸ベンジルを含み、安息香酸ベンジルが最も特に好適である。
【0062】
組成物は水非混和性溶媒(1もしくは複数)に加えて、1もしくは複数のさらなる混和性溶媒(「成分溶媒」)を含むことができるが、ただしそのようなさらなる溶媒は低級アルカノール以外である。主要な溶媒(1もしくは複数)および混和性の適合性がある成分溶媒は、水とのより高い混和性を有することができ、そして生じた混合物は未だ、インプラントへの水の取り込みの有意な制限を現すことができる。そのような混合物は「成分溶媒混合物」と呼ぶ。有用な成分溶媒混合物は主要な溶媒自体よりも高い水溶性を現すことができ、本発明のインプラントにより現される水の取り込みの制限に悪い影響を及ぼすことなく、典型的には0.1重量パーセントから最高50重量パーセントまでの間、好ましく30重量パーセントまで、そして最も好ましくは10重量パーセントを含むまでの水溶性を現す。
【0063】
成分溶媒混合物に有用な溶媒成分は、主要な溶媒または溶媒混合物と混和性であるものであり、そして限定するわけではないがトリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリエチルグリセリド、リン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、鉱物油、ポリブテン、シリコーン油、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、オクタノール、乳酸エチル、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマール、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オンおよびそれらの混合物である。
【0064】
溶媒または溶媒混合物はポリマーを溶解して、有益物質の粒子が溶解または分散され、そして放出前の使用環境から隔離された粒子を維持することができる粘稠なゲルを形成することができる。本発明の組成物は、有益物質の全身的または局所的投与の両方に有用なインプラントを提供し、このインプラントは低いバースト指数を有する。水の取り込みはポリマーを溶解し、または可塑性を与える溶媒または成分溶媒混合物の使用により制御されるが、実質的にインプラントへの水の取り込みを制限する。さらに好適な組成物は37℃未満のガラス転移温度を有する粘稠なゲルを提供することができるので、ゲルは移植後24時間以降も非硬質なままである。
【0065】
有益物質の局所送達用を意図する組成物は、全身的使用を意図するものと同じ様式で形成される。しかし有益物質の個体への局所送達は、有益物質の検出可能な血漿レベルを生じないので、そのような系は本明細書で定義するバースト指数というよりはむしろ予め定めた初期期間に放出される有益物質の割合により特徴付けられなければならない。最も多くは、その期間は移植後、最初の24時間であり、そしてパーセントはその期間(例えば
24時間)に放出された有益物質の重量による量を、送達期間中に送達されることを意図する有益物質の重量により除算し;100の数を掛けた値に等しい。本発明の組成物はほとんどの応用において、40%以下、好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下の初期バーストを有する。
【0066】
多くの場合で、副作用を防ぐため局所投与中の有益物質の初期バーストを減らすことが望ましいかもしれない。例えば、化学療法剤を含有する本発明のインプラントは、腫瘍に直接注射するために適している。しかし多くの化学療法剤が全身的に投与した時、毒性効果を現す可能性がある。その結果、腫瘍への局所投与が選択される処置法となり得る。しかしそのような作用物質を副作用が現れ得る血管もしくはリンパ系に入れることが可能な場合、大きなバーストの化学療法剤の投与を避けることが必要である。したがってそのような場合は、本明細書に記載するような限定的なバーストを有する本発明の移植可能な系が有利である。
【0067】
手術後の疼痛管理のための効力比の意味では通常、ほとんど直ぐに疼痛を制御し、そして次いで特定期間にわたり麻酔薬の持続レベルを維持するするために、有益物質、例えば麻酔薬の十分に高いCmaxを達成する薬剤を送達することが望ましい。この場合、より高い効力比が望ましくなり得る。しかし別の状況では、高用量の薬剤に由来する潜在的な副作用を減らすために、全身的循環または局所組織中での分布のいずれかにおいて、厳しく制御される活性物質のレベルを維持することが有用となり得る。この種の状況では、より低い効力比が望ましくなり得る。そのように患者および治療のニーズは変動するので、薬剤送達剤形の効力比を制御することが望ましい。
有益物質
本発明では有益物質として使用するために適する麻酔薬を限定しないが、引用により本明細書に編入する米国特許第6,432,986号明細書は幾つかの例を提供し、本発明の1つの観点では、麻酔薬はブピバカイン、レボ−ブピバカイン、ロピバカイン、レボ−ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−メピバカインおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の観点では、麻酔薬はブピバカインを含んでなる。
【0068】
有益物質は好ましくはポリマーおよび溶媒から形成された粘稠ゲルに、典型的には約5〜約250ミクロン、好ましくは約20〜約125ミクロン、そしてしばしば38〜63ミクロンの平均粒子サイズを有する粒子の状態で包含される。
【0069】
ポリマーおよび溶媒から形成される粘稠ゲル中に有益物質の粒子の懸濁物または分散物を形成するために、Ross二重遊星形ミキサーのような任意の通例の低剪断デバイスを周囲環境で使用することができる。この様式では、有益物質の有効な分布が、有益物質を実質的に分解することなく達成できる。
【0070】
典型的には有益物質は組成物に、ポリマー、溶媒および有益物質を合わせた量の0.1%〜約50重量%の量で、好ましくは約0.5%〜約40重量%の量で、より好ましくは約1%〜約30重量%の量で、そしてしばしば2〜20重量%の量で溶解または分散される。組成物中に存在する有益物質の量に依存して、種々の放出プロファイルおよびバースト指数を得ることができる。さらに具体的には、所定のポリマーおよび溶媒について、これらの成分量および有益物質の量を調整することにより、組成物からの有益物質の分散よりもポリマーの分解に依存する放出プロファイル、またはその逆のプロファイルを得ることができる。これに関連して、より低い有益物質の装填では一般に放出速度が経時的に上昇するポリマーの分解を反映する放出プロファイルを得る。より高い装填では、一般に放出速度が経時的に低下する有益物質の拡散により引き起こされる放出プロファイルを得る。中程度の装填率では、組合わさった放出プロファイルが得られるので、所望により実質的に一定の放出速度を達成することができる。バーストを最小とするためには、ゲルの総重量、すなわちポリマー、溶媒および有益物質の30%以下の次元で有益物質を装填することが好ましく、そして20%以下の装填がより好ましい。
【0071】
有益物質の放出速度および装填は、意図する徐放性送達期間にわたり有益物質の治療に有効な送達を提供するために調整される。好ましくは有益物質はポリマーゲル中に水中での有益物質の飽和濃度を上回る濃度で存在して、有益物質が分配される薬剤リザーバーを提供する。有益物質の放出速度は、投与される有益物質のような特定の情況に依存するが、約3日から約2週間にわたり約0.1〜約100マイクログラム/日、好ましくは約1〜約10マイクログラム/日の次元の放出速度を得ることができる。送達が短期間に起こるならば、より多くの量が送達され得る。一般に、より高いバーストが耐容され得るならば、より高い放出速度が可能である。ゲル組成物が外科的に移植される場合、または疾患状態または別の状態を処置するために手術が同時に行われる時の「置き去り(leave behind)」貯蔵物として使用される場合、インプラントが注射されるならば通常に投与される、より高用量を提供することが可能である。さらに有益物質の用量は、移植されるゲルまたは注射される注射可能なゲルの容量を調整することにより制御することができる。
II.用途および投与:
貯蔵ゲル組成物の投与手段は注射に限定されないが、その送達様式がしばしば好適である。貯蔵ゲル組成物が置き去り物として投与される場合、手術の完了後の体腔に合うように形成することができ、またはゲルを残る組織または骨にブラシで塗るか、またはパレッティングすることにより流動性ゲルとして適用することができる。そのような応用は、典型的には注射可能な組成物で存在する濃度より高く、ゲル中に有益物質を装填することを可能とする。
【0072】
有益物質を含まない本発明の組成物は、創傷治癒、骨修復および他の構造的支持目的に有用である。
【0073】
本発明の様々な観点をさらに理解するために、これまでに記載した形態で説明した結果を以下の実施例に従い得た。
【実施例】
【0074】
以下は本発明を行うための具体的態様の幾つかの実施例である。実施例は具体的説明のみを目的として提供し、そして本発明の範囲をどのようにも限定することを意図していない。
実施例1
貯蔵ゲル組成物
組成物の注射用貯蔵物に使用するためのゲル賦形剤は、以下のように調製した。ガラス容器はMettler PJ3000トップローダーバランサーで風袋を差し引いた。ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)(PLGA)(0.15の固有粘度を有する50:50のDL−PLGとして販売されている(PLGA−BPI、バーミンガムポリマー社、バーミンガム、アラバマ州))および50:50 Resomer(商標)RG502(PLGA RG502)を、ガラス容器中で重量測定した。ポリマーを含有するガラス容器は風袋を差し引き、そして対応する溶媒を加えた。種々のポリマー/溶媒の組み合わせに関して百分率で表す量を以下の表1に説明する。ポリマー/溶媒混合物は、250±50rpmで約5〜10分間撹拌し(IKA電気撹拌機、IKH−ベルケ株式会社(Werke GmbH and Co.)、スタンフェン、ドイツ)、ポリマー粒子を含有する粘着性のペースト様物質を得た。ポリマー/溶媒混合物を含有する容器を密閉し、そして37℃に平衡化した温度制御インキュベーターに、溶媒およびポリマーの種類ならびに溶媒およびポリマーの比率に依存して1〜4日間、断続的に撹拌しながら置いた。ポリマー/溶媒混合物は、透明な琥珀色の均一溶液になった時、インキュベーターから取り出した。その後、混合物をオーブン(65℃)に30分間置いた。オーブンから取り出すると、混合物中にPLGAが溶解したことが示された。
【0075】
以下の溶媒または溶媒混合物を用いてさらなる貯蔵ゲル賦形剤を調製した:安息香酸ベンジル(“BB”)、ベンジルアルコール(“BA”)、安息香酸エチル(“EB”)、BB/BA、BB/エタノール、BB/EBおよび以下のポリマー:ポリ(D,L−ラクチド)Resomer(商標)L104、PLA−L104、コード番号33007、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG502、コード0000366、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG502H、PLGA−502H、コード番号260187、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG503、PLGA−503、コ−ド番号0080765、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG755、PLGA−755、コ−ド番号95037、ポリL−ラクチドMW2,000(Resomer(商標)L206、Resomer(商標)L207、Resomer(商標)L209、Resomer(商標)L214);ポリD,L−ラクチド(Resomer(商標)R104、Resomer(商標)R202、Resomer(商標)203、Resomer(商標)R206、Resomer(商標)207、Resomer(商標)208);ポリ−L−ラクチド−コ−D,L−ラクチド90:10(Resomer(商標)LR209);ポリD−L−ラクチド−コ−グリコライド75:25(Resomer(商標)RG752、Resomer(商標)RG756);ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド85:15(Resomer(商標)RG858);ポリL−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート70:30(Resomer(商標)LT706);ポリジオキサノン(Resomer(商標)X210)(ベーリンガー インゲルハイム ケミカルズ社、ピーターズバーグ、バージニア州);DL−ラクチド/グリコライド100:0(MEDISORB(商標)ポリマー100DL High、MEDISORB(商標)ポリマー100DL Low);DL−ラクチド/グリコライド85/15(MEDISORB(商標)ポリマー8515DL High、MEDISORB(商標)ポリマー85150DL Low);DL−ラクチド/グリコライド75/25(MEDISORB(商標)ポリマー7525DL High、MEDISORB(商標)ポリマー7525DL Low);DL−ラクチド/グリコライド65:35(MEDISORB(商標)ポリマー6535DL High、MEDISORB(商標)ポリマー6535DL Low);DL−ラクチド/グリコライド54/46(MEDISORB(商標)ポリマー5050DL High、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL Low);およびDL−ラクチド/グリコライド54/46(MEDISORB(商標)ポリマー5050DL2(A)3)、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL3A(3)、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL 4A(3))(メディソーブ テクノロジーズ インターナショナルL.P.、シンシナティ、オハイオ州);およびポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド50:50;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド65:35;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド75:25;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド85:15;ポリDL−ラクチド;ポリL−ラクチド;ポリグリコライド;ポリε−カプロラクトン;ポリDL−ラクチド−コ−カプロラクトン25:75;およびポリDL−ラクチド−コ−カプロラクトン75:25(バーミンガムポリマー社、バーミンガム、アラバマ州)。
実施例2
ブピバカイン塩基の調製
ブピバカイン塩酸塩(シグマ−アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)を、脱イオン(DI)水に40mg/ml(飽和)濃度で溶解した。計算した量の水酸化ナトリウ
ム(1N溶液)を溶液に加え、そして最終混合物のpHを10に調整してBP塩基を沈殿させた。沈殿した生成物を濾過し、そしてさらにDI水で少なくとも3回洗浄した。沈殿した生成物を真空中、約40℃で24時間乾燥させた。
実施例3
ブピバカイン粒子の調製
ブピバカイン塩酸塩(シグマ−アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)または実施例4に従い調製したブピバカイン塩基および塩酸塩を使用したブピバカイン薬粒子を、以下のように調製した。ブピバカインを挽き、次いで3”のステンレス鋼のふるいを使用して固定範囲にふるい分けた。典型的な範囲には25μm〜38μm、38μm〜63μm、および63μm〜125μmを含む。
実施例4
ブピバカイン−ステアリン酸粒子の調製
ブピバカイン粒子は以下のように調製した:ブピバカイン塩酸塩(100g、シグマ−アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)を挽き、そして63〜125ミクロンのふるいに通してふるい分けた。ブピバカイン粒子およびステアリン酸(100g、95%純度、シグマ−アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)をブレンドし、そして挽いた。挽いた材料は5,000ポンドの力で13mmの丸型ダイ中で5分間圧縮した。圧縮した錠剤を挽き、そして120メッシュのスクリーンに通してふるい分け、次いで230メッシュのスクリーンでふるい分けして63〜125ミクロンのサイズ範囲を有する粒子を得た。
実施例5
薬剤装填
上記のように調製したステアリン酸を含むか、または含まない有益物質を含んでなる粒子を、ゲル賦形剤に10〜30重量%の量で加え、そして乾燥粉末が完全に湿潤化するまで手でブレンドした。次いで乳状の明黄色粒子/ゲル混合物は、四角いチップの金属スパチュラを備えたCaframo機械撹拌機を使用して通常の混合により徹底的にブレンドした。得られた製剤を以下の表1−3で具体的に説明する。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
移植可能な貯蔵ゲル組成物の代表数を前述の手順に従い調製し、そして時間の関数として有益物質のインビトロ放出について試験し、そしてまたラットを対象としたインビボ実験で試験して、時間の関数として有益物質の血漿濃度により測定される有益物質の放出を測定した。
【0080】
移植可能な貯蔵ゲル組成物の代表数も前述の手順に従い調製し、そしてラットを対象としたインビボ実験で試験して、時間の関数として局所組織サンプリングにより測定される有益物質の局所放出を測定する。
実施例6A
ブピバカインのインビボ実験
ラットを対象としたインビボ実験(群あたり4または5匹)は以下のオープンプロトコールに従い行って、本発明のインプラント系を介したブピバカインの全身投与でブピバカインの血漿レべルを測定した。貯蔵ゲルブピバカイン製剤は、カスタマイズされた0.5ccの使い捨てシリンジに装填した。使い捨ての18ゲイジ針をシリンジに付け、そして循環浴を使用して37℃に加熱した。貯蔵ゲルブピバカイン製剤をラットに注射し、そして血液を特定の時間間隔(1時間、4時間および1、2、5、7、9、14、21および28日)で採血し、そしてLC/MSを使用してブピバカインについて分析した。
実施例6B
ブピバカインの局所投与実験
ラットを対象としたインビボ実験(群あたり4または5匹)は以下のオープンプロトコールに従い行って、本発明のインプラント系を介したブピバカインの局所投与でブピバカインの血漿レべルを測定した。貯蔵ゲルブピバカイン製剤は、カスタマイズされた0.5ccの使い捨てシリンジに装填した。使い捨ての18ゲイジ針をシリンジに付け、そして循環浴を使用して37℃に加熱した。貯蔵ゲルブピバカイン製剤をラットに注射し、そして局所組織を特定の時間間隔(1時間、4時間および1、2、5、7、9、14、21および28日)に摘出し、そして均一化した。局所組織中のブピバカインを抽出し、そしてLC/MSを使用して分析した。
実施例7
短期間のブピバカイン放出
図1、2および3は、本発明のものを含め、種々の貯蔵製剤からラットで得られたブピバカイン塩酸塩およびブピバカイン塩基の代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。低分子量PLGA(図1、2および3の製剤2および4)を含む貯蔵製剤のインビボ放出プロファイルは、約7日間の短期放出を現し、これは対照製剤(より高分子量のPLGAを含む)に匹敵した。すなわち低分子量のポリマーを含んでなる本発明の注射用の貯蔵製剤は、2週間以下の短期にわたり有益物質の制御された徐放性を提供する。
【0081】
表2および3および図1〜12で具体的に説明するように、種々の貯蔵製剤は、安息香酸ベンジル(BB)、ベンジルアルコール(BA)、安息香酸エチル(EB)、BB/エタノール、BB/BA、BB/EB等のような種々の溶媒を使用して、ポリマー/溶媒比、薬剤装填および剤形を変動させながら、エステル末端基またはカルボキシル基のいずれかを用いて低分子量のPLGAから作成することができる。薬剤粒子はステアリン酸(SA)を持つ疎水性補形剤を用いて、または用いずに作成することができる。
実施例8
溶媒がブピバカイン放出に及ぼす効果
図4は、BBまたはBAのいずれ中に低分子量PLGAを用いて作成した貯蔵製剤(製剤5および6)からラットで得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。図11および12は、BAまたはBBを含むBAの混合物(BA/BB、50/50)のいずれか中に低分子量PLGAを用いて作成した貯蔵製剤(製剤12および13)からラットで得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。そのような短期貯蔵物からのブピバカインの放出速度プロファイルは、製剤に使用する溶媒により改変および制御することができる。表4にまとめるように、Cmax、Caverageおよび効力比(Cmax/Caverage)は、貯蔵製剤に使用する溶媒により影響を受け得る。
【0082】
【表4】
【0083】
実施例9
ポリマー/溶媒比がブピバカイン放出に及ぼす効果
図5は、種々のポリマー/溶媒比を用いてBA中にエステル末端基を有する低分子量PLGAで作成した貯蔵製剤(製剤6および7)からラットで得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。図9および10は、種々のポリマー/溶媒比を用いてBA中にカルボキシル末端基を有する低分子量PLGAで作成した貯蔵製剤(製剤10および12)からラットで得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。そのような短期貯蔵物からのブピバカインの放出速度プロファイルは、製剤中のポリマー/溶媒比により改変および制御することができる。表5にまとめるように、Cmax、Caverageおよび効力比(Cmax/Caverage)は、貯蔵製剤のポリマー/溶媒比により影響を受け得る。
【0084】
【表5】
【0085】
実施例10
ブピバカイン放出に及ぼす薬剤補形剤の効果
図7は、SAを用いて、または用いずに配合された薬剤粒子を含む、BAで低分子量PLGAから作成した貯蔵製剤(製剤8および9)からラットで得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。そのような短期貯蔵物からブピバカインの放出速度プロファイルは、製剤に使用する薬剤補形剤により改変および制御することができる。表6にまとめるように、Cmax、Caverageおよび効力比(Cmax/Caverage)は、貯蔵製剤に使用するステアリン酸のような薬剤補形剤により影響を受け得る。
【0086】
【表6】
【0087】
実施例11
PLGAポリマーに関する示差走査熱量測定機(DSC)による測定
本発明で使用した種々の低分子量PLGAポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量測定機(DSC)(パーキン エルマー(Perkin Elmer) Pyris1、
シェルトン、コネチカット州)を使用して測定した。DSCサンプルパンは、Mettler PJ3000トップローダーバランスで風袋を差し引いた。少なくとも20mgのポリマーサンプルをパンに置いた。サンプルの重量を記録した。DSCパンカバーをパンの上に置き、そしてプレッサーを使用してパンを密閉した。温度は10℃の増分で−50℃から90℃で走査した。
【0088】
図13および14は、エステル基またはカルボキシル末端基のいずれかでエンドキャップした本発明で提示する製剤に使用する低分子量PLGAのDSC図における差異を具体的に説明する。図13はエステル末端基を持つ低分子量PLGA(L/G比50/50、MW=8,000)のDSC図を示す。図14はカルボキシル末端基を持つ低分子量PLGA(L/G比50/50、MW=10,000)のDSC図を示す。これらのデータは、本発明で使用する低分子量PLGAポリマーが30℃より高いガラス転移温度(“Tg”)を有することを示す。
実施例12
PLGAポリマーのインビトロ分解
本発明で使用する低分子量PLGAポリマーの分解プロファイルを、37℃でPBSバッファー中にてインビトロで行って、時間の関数としてPLGAポリマーの質量損失速度を測定した。各ポリマーは1つのサンプル組を含んでなった。約25ディスク(各100±5mg)は、13mmのステンレス鋼ダイを使用して圧縮した。サンプルはCarverプレスを使用して10トンの力で約10分間、圧縮した。ディスクは分解浴中で使用するまで、真空オーブン中のガラスバイアル中で、周囲温度および25mmHgに維持した。この手順を試験する各ポリマーについて繰り返した。アジ化ナトリウム(0.1N)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(50mM、pH7.4)を調製した。1つのサンプルディスクの重量を、風袋を引いたバイアル中で計り、そして初期重量(Minitial)として記録した。PBS(10mL)を各バイアルにピペットで入れた。バイアルにきっちりと蓋をし、そして37℃の振盪水浴に置いた。バッファーを1週間に2回交換し、その前に溶液のpHを記録した。前以て示した時点で、サンプルをバッファー浴から回収し、脱イオン化Milli−Q水ですすぎ、表面を乾燥させ、そして重量を計った。サンプル重量は湿潤重量(Mwet)として記録した。サンプルを10mLの凍結乾燥バイアルに入れ、そして冷凍庫(−20℃)においた後、凍結乾燥させた。凍結乾燥後、サンプルの重量を再度計り、そして乾燥重量(Mlyophilized)として記録した。質量損失のパーセントは、{(Mlyophilized−Minitial)/Minitial}×100%と定めた。
【0089】
図15は上記の製剤で使用した3種のPLGAの質量損失プロファイルを具体的に説明する。これから、使用した3種の各ポリマーが有意に異なる分解速度を有することが分かる。エステル末端基またはカルボキシル末端基のいずれかを持つ低分子量PLGAは、より高分子量のものよりも有意に速い分解速度を有する。これは出来る限り早く活性物質を貯蔵物から放出するポリマーが好ましい短期貯蔵物に好適である。本発明の様々な観点に従い、1もしくは複数の重要な利点を得ることができる。さらに特別には、単純な処理工程を使用して、手術を行わずに標準針を介して低い分配力を使用して、動物中の場所に注射することができる貯蔵ゲル組成物を得ることができる。いったん場所に収まれば、組成物はそのもとの粘性に素早く戻り、そしてバースト効果を実質的に回避するように迅速な硬化を現し、そして所望する有益物質の放出プロファイルを提供することができる。さらにいったん有益物質が完全に投与されれば、組成物は完全に生分解性なので取り除く必要はない。さらなる利点として、本発明は微粒子またはマイクロカプセル化技術の使用を回避し、これらの技術はペプチドおよび核酸に基づく薬剤のような特定の有益物質を分解する恐れがあり、そして微粒子およびマイクロカプセルは使用環境から除去することが困難であるかもしれない。粘稠ゲルは水、極端な温度または他の溶媒を必要とすることなく形成され、有益物質の懸濁した粒子は乾燥およびそれらの元の形状のままであり、これはそ
れらの安定性に貢献する。さらに塊が形成されるので、注射可能なゲル貯蔵組成物は所望により使用環境から回収することができる。
実施例13
ブピバカイン放出に及ぼす重量平均分子量の効果
図6は、BA中でエステル末端基を持つ低分子量(8,000)PLGAで作られた(製剤7)、およびBA中でカルボキシル末端基を持つ低分子量(10,000)PLGAで作られた(製剤8)貯蔵製剤から、ラットを対象として得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。そのような短期貯蔵物からのブピバカインの放出速度プロファイルは、製剤に使用したポリマーおよび/またはPLGA中の末端基により改変および制御することができる。
実施例14
ブピバカイン放出に及ぼす有益物質の平均粒子サイズの効果
図8は、BA中でカルボキシル末端基を持つ低分子量(10,000)PLGAで作られた、63〜125μm(製剤10)および38〜63μm(製剤11)のブピバカイン塩酸塩の平均粒子サイズを有する貯蔵製剤から、ラットを対象として得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。そのような短期貯蔵物からのブピバカインの放出速度プロファイルは、活性物質の平均サイズにより改変および制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカイン塩酸塩のインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤1〜2)。
【図2】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカイン塩基のインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤3〜4)。
【図3】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカイン塩基のインビボ放出プロファイルの初期部分(7日まで)を具体的に説明するグラフである(製剤3〜4)。
【図4】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤5〜6)。
【図5】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤6〜7)。
【図6】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤7〜8)。
【図7】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤8〜9)。
【図8】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤10〜11)。
【図9】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤10、12)。
【図10】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルの初期部分(4日まで)を具体的に説明するグラフである(製剤10、12)。
【図11】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤12、13)。
【図12】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルの初期部分(4日まで)を具体的に説明するグラフである(製剤12、13)。
【図13】本発明の種々の製剤を作成するために使用したエステル末端基を持つ低分子量PLGAのDSC図である(製剤2、4、5、6および7)。
【図14】本発明の種々の製剤を作成するために使用したカルボキシル末端基を持つ低分子量PLGAのDSC図である(製剤8および13)。
【図15】異なる末端基を持つ変動する分子量のPLGAポリマーのインビトロ分解プロファイルを具体的に説明するグラフである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、引用により本明細書に編入する2002年6月25日に出願された特許文献1の利益を主張する、引用により本明細書に編入する2003年6月25日に出願された特許文献2の一部継続出願である。
発明の分野
本発明は、所望の場所に適用することができる麻酔薬を含んでなる徐放性剤形およびキットに関する。また本発明は剤形の調製法および投与法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
疼痛、例えば手術後の疼痛の管理は、患者にとって回復への道の重要な段階である。どの疼痛軽減療法が各患者に最適であるか、多くの要因が影響するが、容易に投与できる治療が強く望まれている。
【0003】
手術後の疼痛の管理のための1つの治療は、局所麻酔薬、例えばブピバカインを使用することである。ブピバカインは末梢神経ブロックおよび仙骨および腰部硬膜外ブロックのために局所浸潤により投与される長期に作用する局所麻酔薬である。当該技術分野で広く理解されているように、ブピバカイン塩酸塩は、例えば非経口溶液単独、デキストロース注射での溶液、およびエピネフリンとの組み合わせとして手術後の疼痛の処置に利用することができる。
【0004】
大手術(例えば開胸、大動脈修復および腸切除)、中手術(例えば帝王切開、子宮摘出および虫垂切除)および小手術(例えばヘルニア縫縮、腹腔鏡検査、関節鏡検査、胸部生検)のようなすべての種類の手順を伴う手術後の疼痛は消耗性となる可能性があり、そして手術後3〜5日間、疼痛処置が必要となるかもしれない。しかしエピネフリンを含む0.5%のブピバカイン塩酸塩のような局所麻酔薬溶液は、わずか約4〜9時間の局所麻酔しか提供しない。結果として、ブピバカインのような麻酔薬を使用した標準的な術後治療には、頻繁な注射または一定の静脈注入のいずれかが必要である。
【0005】
短期間にわたり徐放性を提供できる麻酔薬を含んでなる薬剤送達系の必要性が大いに存在する。また数日間にわたり徐放性を提供する単回投与用の麻酔薬送達系についての必要性も存在する。
参考文献
【特許文献1】米国特許仮出願第60/391,867号明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/606,969号明細書
【発明の開示】
【0006】
発明の要約
本発明により、ブピバカインのような麻酔薬を短期間にわたり放出する薬剤送達系およびキットが提供される。そのような系を投与および調製する方法も提供される。本発明による薬剤送達系、例えば徐放性剤形には、短期ゲル賦形剤(gel vehicle)およびゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬を含む。ゲル賦形剤は低分子量の生体侵食性(bioerodible)、生体適合性ポリマー、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてポリマーと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなる。場合により成分溶媒(component solvent)が水に非混和性溶媒と一緒に使用される。
【0007】
本発明の剤形は、静脈内溶液の頻繁な注射または一定の注入のいずれかを要する可能性がある従来の全身性の疼痛処置に利点を表す。手術後の鎮痛治療に関して、例えばブピバカインのような固定量の麻酔薬を長期間にわたり、手術の部位に放出することができる本発明の薬剤送達系は、頻繁な注射または一定の静脈内注入の標準的な全身的な術後の鎮痛治療よりも有利である。また利点は、本出願の剤形がただ1回投与される場合に達成される。一方、本発明の剤形は反復投薬用量で投与することもできる。
【0008】
本発明の目的は、疼痛、例えば手術後の疼痛の管理のために個体に適用することができる例えばブピバカインのような麻酔薬の短期徐放性剤形を開発することである。送達系の効力を測定する1つの方法である効力比(efficacy ratio)は、剤形を投与してから短時間後に達成される有益物質(benefical agent)、例えば麻酔薬の最大達成濃度(Cmax)と、最大濃度が生じた後の所定の期間、例えば投与後2日から9日の間の期間にわたり測定される有益物質の平均濃度(Caverage)との間の比率である。効力比は、例えば所望する放出プロファイルを達成するためにゲル賦形剤の構造に基づき制御することができる。ゲル賦形剤中のポリマーと溶媒の比率は、水非混和性溶媒または溶媒混合物、成分溶媒の選択、および/または賦形剤の選択ができるように、効力比に影響を及ぼすことができる。さらにポリマーの分子量および/または有益物質の平均粒子サイズも、効力比に影響を及ぼし得る。効力比は個体の必要性ならびに投与される有益物質に基づき作り変えることができ、そして約1〜約200の範囲であることができる。幾つかの場合では、効力比は約5から約100の間であることができる。
【0009】
手術後の疼痛管理に関しては通常、ほとんど即座に疼痛を制御し、次いで特定の期間にわたり麻酔薬の持続するレベルを維持するために麻酔薬の十分に高いCmaxを達成する薬剤を送達することが望ましい。この場合、より高い効力比が望ましいかもしれない。しかし別の状況では、薬剤の高い投薬用量からの潜在的副作用を下げるために、全身的循環または局所組織での分布のいずれかにおいて厳しく制御された活性物質のレベルを維持することが有用となり得る。この種の状況については、より低い効力比が望ましいかもしれない。そのように、患者および治療の必要性は変動するので、薬剤送達剤形の効力比を制御することが望ましい。
【0010】
本発明により具現されるポリマーと溶媒との間の比に関して、約5:95から約90:10の間、約20:80から約80:20の間、および/または約30:70から約75:25の間の比が意図される。
【0011】
短期徐放性剤形、例えば引用により本明細書に編入する同時係属中の米国特許出願第10/606,969号明細書により検討されるような注射可能な貯蔵ゲル(depot gel)組成物は、短期間にわたり個体に有益物質の全身的または局所的送達の両方を提供することができる。特に短期間の徐放性剤形は、有益物質、例えばブピバカインのような麻酔薬を、投与から約2週間以下の期間にわたり処置している患者に放出することができる。本発明の別の態様は、約7日間以下の期間にわたり放出を制御する。さらに別の態様は、約24時間から7日間の間の期間、有益物質の放出を制御することができる。
【0012】
本発明の使用に適する麻酔薬を限定するわけではないが、引用により本明細書に編入する米国特許第6,432,986号明細書は、本発明の1つの観点に幾つかの例を提供し、麻酔薬はブピバカイン、レボ−ブピバカイン、ロピバカイン、レボ−ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−メピバカインおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の観点では、麻酔薬はブピバカインを含んでなる。
【0013】
本発明のさらなる観点では、ゲル賦形剤の溶媒は25℃で約7重量%以下の水中混和性
を有する。また剤形が25℃で7重量%より高い水中混和性を有する溶媒を含まないものも本発明の態様である。本発明には多くの溶媒が適当であるが、本発明の1つの観点では、溶媒は芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルエステル、アリール酸の低級アラルキルエステル、アリールケトン、アラルキルケトン、低級アルキルケトン、クエン酸の低級アルキルエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明に使用する有用な溶媒には、限定するわけではないが、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、安息香酸エチル、トリアセチンおよびそれらの混合物を含む。
【0014】
本発明のさらなる観点には、トリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリエチルグリセリド、リン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、鉱物油、ポリブテン、シリコーン油、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、オクタノール、乳酸エチル、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマール、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分溶媒をさらに含んでなる上で検討したような徐放性剤形を含む。
【0015】
本発明の別の態様では、ゲル賦形剤は乳酸基材ポリマーまたは乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)を含んでなる。別の態様はカプロラクトンに基づくポリマーを使用する。またポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリ(カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖、キチン、キトサン、ヒアルロン酸およびそれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物からなる群から選択される。本発明で使用するポリマーはエステル末端基またはカルボン酸末端基を含んでなることができる。さらにポリマーは約1,000から約10,000の間、約3,000から約10,000の間、約3,000から約8,000の間、約4,000から約6,000の間および/または5,000重量平均分子量を有することができる。
【0016】
本発明の剤形は、約0.1%〜約50重量%の麻酔薬、約0.5%〜約40重量%の麻酔薬、および/または約1%〜約30重量%の麻酔薬を含んでなる。
【0017】
本発明の別の観点には、約250μm未満、約5μmから250μmの間、約20μmから125μmの間および/または約38μmから63μmの間の平均粒子サイズを有する麻酔薬粒子を含む。
【0018】
本発明によるさらに別の観点には、以下の:ステアリン酸のような補形剤(excipient)、乳化剤、孔形成剤(pore former)、麻酔薬用の溶解性モジュレーターおよび浸透性剤の少なくとも1つを含んでなる上で検討した徐放性剤形を含む。
【0019】
本発明の別の観点には、低分子量の乳酸基剤ポリマーおよび水に非混和性の溶媒を、ポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなる短期ゲル賦形剤;麻酔薬がゲル賦形剤に溶解または分散されたブピバカインを含んでなる麻酔薬;および徐放性プロファイルを達成するための制御可能な効力比を含んでなり、乳酸基剤ポリマーの重量平均分子量が約3,000から約10,000の間である麻酔薬
の徐放性剤形を含む。
【0020】
本発明のさらなる態様には、乳酸およびグリコール酸の低分子量コポリマー(PLGA)、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなる短期ゲル賦形剤;麻酔薬がゲル賦形剤に溶解または分散されたブピバカインを含んでなる麻酔薬;および徐放性プロファイルを達成するための制御可能な効力比を含んでなり、コポリマーの重量平均分子量が約3,000から約10,000の間である麻酔薬の徐放性剤形を含む。
【0021】
また本発明は、徐放性剤形を使用して個体の局所疼痛を処置する方法を含み、この方法は低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなるゲル賦形剤;およびゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬を含んでなる短期徐放性剤形を投与することを含んでなる。
【0022】
他の方法には徐放性剤形を使用して個体の手術後の疼痛を処置することを含み、この方法は低分子量の生体侵食性、生体適合性乳酸基剤ポリマーまたは乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなるゲル賦形剤;ゲル賦形剤に溶解または分散されたブピバカインを含んでなる麻酔薬;および放出プロファイルを達成するための制御可能な効力比を含んでなる短期徐放性剤形を1回投与することを含んでなる。
【0023】
本発明の剤形は、1回投与されるか、または繰り返し投与されることができる。剤形は局所疼痛に局所的に適用することができる。本発明の別の観点では、剤形は局所疼痛付近の場所に注射される。麻酔薬は全身に、または局所に送達され得る。麻酔薬の送達は多くの部位、例えば局所疼痛の周囲の多くの場所であることができる。
【0024】
本発明の別の観点には徐放性剤形の調製法を含み、この方法は低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成してポリマー/溶媒溶液またはゲルを作成するために有効な量で含んでなる短期ゲル賦形剤を調製し;ポリマー/溶媒溶液またはゲルを透明な均一溶液またはゲルになるまで、例えば室温から65℃の範囲の温度で平衡化し;麻酔薬をポリマー/溶媒溶液またはゲルに溶解または分散させ;麻酔薬およびポリマー/溶媒溶液またはゲルをブレンドして徐放性剤形を形成し;そして放出プロファイルを達成するための効力比を制御することを含んでなる。
【0025】
また本発明に従い、個体の局所疼痛に対する麻酔薬の持続型送達の投与用キットを提供し、このキットは低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および水に非混和性の溶媒を、ポリマーに可塑性を与え、そしてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなる短期ゲル賦形剤;ゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬;および場合により以下のステアリン酸のような補形剤、乳化剤、孔形成剤、場合により麻酔薬と会合している麻酔薬用の溶解性モジュレーターおよび浸透性剤の1もしくは複数を含んでなり、少なくとも場合により溶解性モジュレーターと会合している麻酔薬は個体に麻酔薬を投与する時期まで溶媒から分かれて維持されている。
【0026】
これらのおよび他の態様は、本明細書に開示する観点においてこれらの、または当業者により容易に想起されるだろう。
詳細な説明
本発明は、短期間にわたりブピバカインのような麻酔薬を放出する薬剤送達系およびキ
ットを対象とする。そのような系を投与し、そして調製する方法も提供される。本発明による薬剤送達系は、短期ゲル賦形剤およびゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬を含む。ゲル賦形剤は低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および水に非混和性の溶媒をポリマーに可塑性を与え、そしてポリマーと一緒にゲルを形成するために有効な量で含んでなる。場合により、成分溶媒は水非混和性溶媒と一緒に使用される。送達系の効力を測定する1つの方法である効力比は、例えば所望する放出プロファイルを達成するためにゲル賦形剤の構造に基づき制御され得る。ゲル賦形剤中のポリマーと溶媒の比率は、水非混和性溶媒または溶媒混合物、成分溶媒の選択および/または賦形剤の選択ができるように、効力比に影響を及ぼすことができる。さらにポリマーの分子量および/または有益物質の平均粒子サイズも、効力比に影響を及ぼし得る。効力比は個体の必要性ならびに投与される有益物質に基づき作り変えることができ、そして約1〜約200の範囲であることができる。幾つかの場合では、効力比は約5から約100の間であることができる。
【0027】
手術後の疼痛管理に関しては通常、ほとんど即座に疼痛を制御し、次いで特定の期間にわたり麻酔薬の持続レベルを維持するために麻酔薬の十分に高いCmaxを達成する薬剤を送達することが望ましい。この場合、より高い効力比が望ましいかもしれない。しかし別の状況では、薬剤の高い投薬用量からの潜在的副作用を下げるために、全身的循環または局所組織での分布のいずれかにおいて厳しく制御された活性物質のレベルを維持することが有用となり得る。この種の状況については、より低い効力比が望ましいかもしれない。そのように患者および治療の必要性が変動するので、薬剤送達剤形の効力比を制御することが望ましい。
【0028】
一般に本発明の組成物はゲル様であり、そしてたとえ組成物が硬化しても移植および薬剤送達でインプラント全体に実質的に均一で非孔質の構造を形成する。さらにポリマーゲルインプラントが水性環境に供された時にゆっくり硬化する間、硬化したインプラントは37℃未満のガラス転移温度Tgを有するゴム状の(非硬質)組成物を維持することができる。
【0029】
組成物が注射による移植を意図される場合、針を通してゲル組成物が通過できるための十分に低い粘性を有するゲル組成物を得るために、場合により粘性は乳化剤および/またはチキソトロピー剤により修飾することができる。また孔形成剤および有益物質の溶解性モジュレーターを、本発明の有利な観点を変化させない典型的な製薬学的補形剤および他の添加剤と一緒にインプラント系に加えて、インプラント系から所望する放出プロファイルを提供することができる。インプラント系への溶解性モジュレーターの添加は、特定の状況下で最小のバースト(burst)および持続型送達を有するインプラント系において、7%以上の溶解性を有する溶媒の使用を可能とすることができる。しかし現在、インプラント系は溶媒が単独で存在するか、または溶媒混合物の一部として存在しても、水中で7重量%未満の溶解性を有する少なくとも1つの溶媒を利用することが好ましい。また水中で7重量%以下の溶解性を有する溶媒および1もしくは複数の混和性溶媒(場合により、より大きな溶解性を有する)を含む溶媒混合物を使用する場合、インプラント系は限定された水の取り込み、および最小のバーストおよび持続型の送達特性を現すことも分かった。
定義
本発明を説明し、そして特許請求するにあたり、以下の用語を以下に説明する定義に従い使用する。
【0030】
単数形“a”、“an”および“the”は、内容が外を明確に指示しない限り、複数を示すことを含む。すなわち例えば「溶媒」については1つの溶媒ならびに2以上の異なる溶媒の混合物を含み、「麻酔薬」については1つの麻酔薬ならびに2以上の異なる麻酔薬の組み合わせ等を含む。
【0031】
用語「効力比」とはCmax/Caverageと定義する。Cmaxは剤形の投与から短い間に達成される有益物質、例えば麻酔薬の最大達成濃度である。Caverageは剤形の放出期間に基づき、最大濃度が所定の時間生じた後に測定される有益物質の平均濃度である。例えば7日間の放出を有する剤形について、Cmaxは1時間で測定され、そしてCaverageは1から7日間にわたり測定される。
【0032】
「溶解される」または「分散される」という句はすべて、ゲル組成物中に有益物質の存在を確立することを意味し、そして溶解、分散、懸濁等を含む。
【0033】
用語「全身的」とは、有益物質の個体への送達または投与に関して、有益物質が個体の血漿中で生体学的に有意なレベルで検出可能であることを意味する。
【0034】
用語「局所的」とは、有益物質の個体への送達または投与に関して、有益物質が個体の局所部位に送達されるが、個体の血漿では生体学的に有意なレベルで検出できないことを意味する。
【0035】
用語「短期」または「短時間」は互換的に使用され、そして発明の貯蔵ゲル組成物から有益物質の放出が起こる期間を指し、これは一般に2週間以下、好ましくは約24時間から約2週間、好ましくは約10日以下、好ましくは約7日以下、より好ましくは約3日から約7日である。
【0036】
用語「ゲル賦形剤」は、有益物質の不存在下でポリマーおよび溶媒の混合物により形成される組成物を意味する。
【0037】
有益物質に関連して用語「溶解性モジュレーター」は、ポリマー溶媒または水に対してモジュレーターの不存在下で有益物質の溶解性から、有益物質の溶解性を改変させる作用物質を意味する。モジュレーターは溶媒または水中の有益物質の溶解性を強化するか、または遅らせることができる。しかし高度に水溶性である有益物質の場合、溶解性モジュレーターは一般に水中の有益物質の溶解性を遅らせる作用物質である。有益物質の溶解性モジュレーターの効果は、溶媒との、または複合体の形成によるような有益物質自体と溶解性モジュレーターとの相互作用、またはその両方から生じ得る。本発明の目的に関して、溶解性モジュレーターが有益物質と「会合している(associated)」場合、起こり得るすべてのそのような相互作用または形成を意図する。溶解性モジュレーターは粘稠なゲルと組み合わせる前に、有益物質と混合することができ、あるいは適当ならば有益物質の添加前に粘稠なゲルに加えることができる。
【0038】
本発明の組成物の投与に関連して用語「個体」および「患者」とは、動物またはヒトを意味する。
【0039】
すべての溶媒は、少なくとも分子レベルで、ある大変限定された程度で水に可溶性(すなわち水と混和性)であるので、本明細書で使用する用語「非混和性」は、7重量%以下、好ましくは5%以下の溶媒が水に溶解性であるか、または混和性であることを意味する。本開示の目的について、水中の溶媒の溶解性の値は、25℃で定められると考えられる。一般に報告されるような溶解性の値は、常に同じ条件で行われるとは考えられないので、範囲の一部または上限として水と混和性または溶解性の重量パーセントで本明細書で引用する溶解性の限界は絶対ではない。例えば水中での溶媒の溶解性の上限が本明細書で「7重量%」と引用され、そして溶媒についてさらなる限定がない場合、100mlの水中での溶解性が7.17グラムと報告された溶媒「トリアセチン」は、7%の限界内に含まれると考えられる。本明細書で使用する水中で7重量%未満の水溶性の限界は、溶媒であるトリアセチンまたは水中でトリアセチン以上の溶解性を有する溶媒は含まない。
【0040】
用語「生体侵食性」とは、その場所で次第に分解し、溶解し、加水分解し、かつ/または侵食する材料を指す。一般に本明細書の「生体侵食性」とは、加水分解可能な、そして主に加水分解を介してその場所で生体侵食されるポリマーである。
【0041】
用語「低分子量(LMW)ポリマー」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した時、約1,000〜約10,000、好ましくは約3,000〜約10,000、より好ましくは約3,000〜約8,000、より好ましくは約4,000〜約8,000の範囲の重量平均分子量範囲を有する生体侵食性ポリマーを指し、そしてさらに好ましくは低分子量ポリマーは約7,000、約6,000、約5,000、約4,000そして約3,000の分子量を有する。
【0042】
本発明のポリマー、溶媒および他の作用物質は「生体適合性」でなければならない。すなわちそれらは壊死を生じてはならず、そして使用環境で許容し得る刺激または炎症を有する。使用環境は流体環境であり、そしてヒトまたは動物の皮下、筋肉内、血管内(高/低流)、心筋内、外膜、腫瘍内、または大脳内部分、創傷部位、堅い関節空間または体腔を含んでなることができる。
【0043】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル等、ならびにシクロペンチル、シクロヘキシル等を初めとするシクロアルキル基のような典型的には、しかし必須ではないが1〜約30個の炭素原子を含有する飽和の炭化水素基を指す。一般にここでも必須ではないが、本明細書のアルキル基は1〜約12個の炭素原子を含む。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子のアルキル基を意図する。「置換アルキル」は、1もしくは複数の置換基で置換されたアルキルを指し、そして用語「ヘテロ原子を含むアルキル」および「ヘテロアルキル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換されたアルキルを指す。他に示さない場合、用語「アルキル」および「低級アルキル」は、直鎖、分枝鎖、環式、非置換、置換および/またはヘテロ原子を含有するアルキルまたは低級アルキルを含む。
【0044】
本明細書で使用し、そして他に特定しない限り、用語「アリール」は1つの芳香族環または、一緒に縮合し、共有結合し、またはメチレンもしくはエチレン部分のような通常の基に連結された多数の芳香族環を含有する芳香族置換基を指す。好適なアリール基は、1つの芳香族環または2つの縮合もしくは連結した芳香族環、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノン等を含み、そして最も好適なアリール基は単環式である。「置換アリール」は1もしくは複数の置換基で置換されたアリール部分を指し、そして用語「ヘテロ原子を含有するアリール」および「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置換されたアルキルを指す。他に示さない場合、用語「アリール」にはヘテロアリール、置換アリールおよび置換ヘテロアリール基を含む。
【0045】
用語「アラルキル」は、アルキルおよびアリールが上記定義の通りであるアリールで置換されたアルキル基を指す。用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基を指す。特に示さない限り、用語「アラルキル」にはヘテロアラルキルおよび置換アラルキル基、ならびに非置換アラルキル基を含む。一般に本明細書の用語「アラルキル」は、アリールで置換された低級アルキル基、好ましくはベンジル、フェネチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル等のようなフェニルで置換されたアルキル基を指す。
I.注射可能な貯蔵組成物
すでに記載したように、短期間にわたり有益物質を送達するための注射可能な貯蔵組成物は、個体への貯蔵物の注射前に粘稠なゲルとして形成され得る。粘稠なゲルは分散された有益物質が適切な送達プロフィールを提供することを支持し、これには有益物質が経時的に貯蔵物から放出される時、有益物質の制御された初期バーストを有するものを含む。
【0046】
本発明のポリマー、溶媒および他の作用物質は、生体適合性でなければならない;すなわちそれらは使用環境で刺激または壊死を生じてはならない。使用環境は流体環境であり、そしてヒトまたは動物の皮下、筋肉内、血管内(高/低流)、心筋内、外膜、腫瘍内、または大脳内部分、創傷部位、堅い関節空間または体腔を含んでなることができる。特定の態様では、有益物質は副作用を避け、または最小にするために局所的に投与され得る。有益物質を含有する本発明のゲルは、所望する場所、例えばヒトまたは動物の皮下、筋肉内、血管内、心筋内、外膜、腫瘍内、または大脳内部分、創傷部位、堅い関節空間または体腔へ直接注射/移植されるか、またはコーティングとして適用することができる。
【0047】
典型的には粘稠なゲルは、貯蔵物として有益物質の粘稠なゲル組成物を前充填した標準的な皮下注射器、カテーテルまたはトロカールから注射される。注射をヒトまたは動物の皮下、筋肉内、血管内(高/低流)、心筋内、外膜、腫瘍内、または大脳内部分、創傷部位、堅い関節空間または体腔にする場合、注射は最小サイズの針(すなわち最小直径)またはカテーテルを使用して行われ、個体に対する不快を減らすことがしばしば好適である。ゲルは16ゲイジ以上、好ましくは20ゲイジ以上、より好ましくは22ゲイジ以上、さらに好ましくは24ゲイジ以上の針またはカテーテルを通して注射することが望ましい。より高い粘性のゲルでは、すなわち約100ポイズ以上の粘度を有するゲルは、20〜30ゲイジ範囲の針を有するシリンジからゲルを分配するための注射力が大変高いので、手動で行う時には注射を難しく、または正当に不可能とするかもしれない。同時に、高粘度のゲルは注射後および分配期間中の貯蔵物の一体性(integrity)を維持し、そしてまたゲル中の有益物質の所望する懸濁特性を促進することが望ましい。
【0048】
ポリマー溶媒およびポリマーにより形成される粘稠なゲルにチキソトロピー特性を与える作用物質を場合により含む、ポリマーおよびポリマー溶媒の組成物は、特定の利点を提供する。チキソトロピーゲルは剪断力にかけられた時、低減した粘性を現す。この低減の程度は一部、剪断力にかけられた時のゲルの剪断速度の関数である。剪断力を解除すると、チキソトロピーゲルの粘性は、剪断力にかけられる前に示した粘性付近に回復する。したがってチキソトロピーゲルは、シリンジまたはカテーテルから注射される時、剪断力にかけることができ、これが注射工程中に一時的にその粘性を下げる。注射工程が完了した時、剪断力は解除され、そしてゲルはその前の状態に大変近い状態に戻る。
【0049】
注射可能な組成物の有意な剪断減粘性は、針またはカテーテルを介した有益物質の身体の外部および/または内部表面上の様々な部位への最も少ない侵襲性送達を可能とする。さらに針または注射カテーテルを介する注射は、所望する量の組成物を所望する部位に正確に投与し、送達部位での貯蔵ゲル組成物の有意な滞留を可能にすると同時に、投与部位から有益物質の徐放性送達を提供する。特定の態様では、注射カテーテルには計量デバイスまたは組成物の正確な送達を援助するさらなるデバイスを含むことができる。
生体侵食性、生体適合性ポリマー:
本発明の方法および組成物と関連して有用なポリマーは生体侵食性ポリマーであり、すなわちそれらは例えば酵素的に次第に分解し、または加水分解し、溶解し、物理的に侵食し、またはそうではない患者の身体の水性流体内で崩壊する。一般にポリマーは加水分解または物理的侵食の結果として生体侵食されるが、主要な生体侵食プロセスは典型的には加水分解的または酵素的分解である。
【0050】
そのようなポリマーには限定するわけではないが、ポリラクチド、ポリグリコライド、
ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、ヒアルロン酸およびそれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物を含む。
【0051】
現在好適なポリマーはポリラクチドであり、これは乳酸のみに基づくことができる乳酸に基づくポリマーであり、または本発明に従い達成され得る有利な結果に実質的な影響を及ぼさない少量の他のコモノマーを含んでもよい乳酸とグリコール酸に基づくコポリマーであることができる。本明細書で使用する用語「乳酸」は、異性体であるL−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸およびラクチドを含むが、用語「グリコール酸」はグリコライドを含む。最も好適であるのは、通常PLGAと呼ばれるポリ(ラクチド−コ−グリコライド)コポリマーである。ポリマーは約100:0〜約15:85、好ましくは約60:40〜約75:25の乳酸/グリコール酸のモノマー比を有することができ、そして特に有用なコポリマーは約50:50の乳酸/グリコール酸のモノマー比を有する。
【0052】
前記の米国特許第5,242,910号明細書に示したように、ポリマーは米国特許第4,443,340号明細書の教示に従い調製することができる。あるいは乳酸に基づくポリマーは乳酸から直接、または乳酸とグリコール酸との混合物(さらなるコモノマーを含むか、または含まない)から、米国特許第5,310,865号明細書に説明される教示に従い調製することができる。これら特許のすべての内容は、引用により本明細書に編入する。適当な乳酸に基づくポリマーは市販されている。
【0053】
ポリマーの例には限定するわけではないが、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG502、コード0000366、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG502H、PLGA−502H、コード番号260187、ポリD,L−ラクチド(Resomer(商標)202、Resomer(商標)203);ポリジオキサノン(Resomer(商標)X210)(ベーリンガー インゲルハイム ケミカル(Boehringer Ingelheim Chemicals)社、ピーターズバーグ、バージニア州)がある。
【0054】
さらなる例には限定するわけではないが、DL−ラクチド/グリコライド100:0(MEDISORB(商標)ポリマー100DL High、MEDISORB(商標)ポリマー100DL Low);DL−ラクチド/グリコライド85:15(MEDISORB(商標)ポリマー8515DL High、MEDISORB(商標)ポリマー8515DL Low);DL−ラクチド/グリコライド75:25(MEDISORB(商標)ポリマー7525DL High、MEDISORB(商標)ポリマー7525DL Low);DL−ラクチド/グリコライド65:35(MEDISORB(商標)ポリマー6535DL High、MEDISORB(商標)ポリマー6535DL Low);DL−ラクチド/グリコライド54/46(MEDISORB(商標)ポリマー5050DL High、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL Low);およびDL−ラクチド/グリコライド54/46(MEDISORB(商標)ポリマー5050DL 2A(3)、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL 3A(3)、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL 4A(3))(メディソーブ テクノロジーズ インターナショナル(Medisorb Technologies International)L.P.、シンシナティ、オハイオ州);およびポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド50:50;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド65:35;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド75:25;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド85:15;ポリDL−ラクチド;ポリL−ラクチド;ポリグリコライド;ポリε−カプロラクトン;ポリDL−ラクチド−コ−カプロラクトン25:75;およびポリDL−ラクチド−コ−カプロラクトン75:25(バーミンガムポリマー(Birmingham Polymers)社、バーミンガム、アラバマ州)がある。
【0055】
驚くべきことには、低分子量ポリマーを含んでなる本発明の注射可能な貯蔵ゲル製剤が有益物質の制御された徐放性を2週間以内の短期にわたり提供することが見いだされた。放出速度プロファイルは、低分子量ポリマー、水非混和性溶媒、ポリマー/溶媒比、乳化剤、チキソトロピー剤、孔形成剤、有益物質の溶解性モディファイヤー、浸透性剤等の適切な選択により制御することができる。
【0056】
生体適合性ポリマーは、ゲル組成物中に粘稠ゲルの約5〜約90重量%、好ましくは約10〜約85重量%、好ましくは約15〜約80重量%、好ましくは約20〜約75重量%、好ましくは約30〜約70重量%、そして多くは約35〜約65%、そしてしばしば約40〜約60重量%の量で存在し、粘稠ゲルは生体適合性ポリマーおよび溶媒の合わせた量を含んでなる。溶媒はポリマーに以下に記載する量で加えられて、注射可能な貯蔵ゲル組成物を提供する。
溶媒および作用物質:
本発明の注射可能な貯蔵組成物は、生体侵食性ポリーおよび有益物質に加えて水に非混和性の溶媒を含む。好適な態様では、本明細書に記載する組成物は25℃で約7重量%より高い水中混和性を有する溶媒を含まない。
【0057】
溶媒は生体適合性でなければならず、ポリマーと共に粘稠なゲルを形成し、そしてインプラントへの水の取り込みを制限すべきである。溶媒は単一溶媒または前記特性を現す溶媒の混合物でよい。用語「溶媒」は特に示さない限り、単一溶媒または溶媒の混合物を意味する。適当な溶媒はインプラントによる水の取り込みを実質的に制限し、そして水中で非混和性であることを特徴とし、すなわち水中で7重量%未満の溶解性を有する。好ましくは溶媒は5重量パーセント以下の水溶性であり、より好ましくは3重量パーセント以下の水溶性であり、そして一層好ましくは1重量パーセント以下の水溶性である。最も好ましくは水中での溶媒の溶解性は、0.5重量パーセント以下である。
【0058】
水混和性は、以下のように実験的に測定することができる:水(1−5g)を風袋を引いた透明な容器に制御された温度、約20℃で入れ、そして重量を計り、そして候補溶媒を滴下する。溶液を撹拌(swirled)して、相の分離を観察する。相の分離を観察することにより測定されるように飽和点に達したと思われる時、溶液を一晩静置し、そして翌日に再検査する。相の分離を観察することにより定められるように、溶液が未だ飽和であるならば、加えた溶媒の(重量/重量)パーセントを決定する。そうでなければさらに溶媒を加えて、この工程を繰り返す。溶解性または混和性は、加えた溶媒の総重量を溶媒/水混合物の最終重量で除算することにより決定される。溶媒混合物、例えば20%トリアセチンおよび80%安息香酸ベンジルを使用する場合、それらを水に加える前にプレミックスする。
【0059】
本発明に有用な溶媒は、上記のように一般に7重量%未満の水溶性である。上記の溶解性パラメーターを有する溶媒は、芳香族アルコール、安息香酸、フタル酸、サリチル酸のようなアリール酸の低級アルキルおよびアラルキルエステル、クエン酸トリエチルおよびクエン酸トリブチル等のようなクエン酸の低級アルキルエステル、およびアリール、アラルキルおよび低級アルキルケトンから選択することができる。
【0060】
本発明に有用な多くの溶媒は市販されているか(アルドリッチ ケミカルズ(Aldrich Chemicals)、シグマケミカルズ(Sigma Chemicals)
)、あるいは引用により本明細書に編入する米国特許第5,556,905号明細書に記載されているように酸ハライドおよび場合によりエステル化触媒を使用して個々のアリールアルカン酸の通常のエステル化により、そしてケトンの場合はそれらの個々の2級アルコール前駆体の酸化により調製することができる。
【0061】
好適な溶媒は上記の芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルおよびアラルキルエステルを含む。代表的な酸は安息香酸およびフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸のようなフタル酸である。より好適な溶媒は、ベンジルアルコールおよび安息香酸の誘導体であり、そして限定するわけではないが安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミルおよび安息香酸ベンジルを含み、安息香酸ベンジルが最も特に好適である。
【0062】
組成物は水非混和性溶媒(1もしくは複数)に加えて、1もしくは複数のさらなる混和性溶媒(「成分溶媒」)を含むことができるが、ただしそのようなさらなる溶媒は低級アルカノール以外である。主要な溶媒(1もしくは複数)および混和性の適合性がある成分溶媒は、水とのより高い混和性を有することができ、そして生じた混合物は未だ、インプラントへの水の取り込みの有意な制限を現すことができる。そのような混合物は「成分溶媒混合物」と呼ぶ。有用な成分溶媒混合物は主要な溶媒自体よりも高い水溶性を現すことができ、本発明のインプラントにより現される水の取り込みの制限に悪い影響を及ぼすことなく、典型的には0.1重量パーセントから最高50重量パーセントまでの間、好ましく30重量パーセントまで、そして最も好ましくは10重量パーセントを含むまでの水溶性を現す。
【0063】
成分溶媒混合物に有用な溶媒成分は、主要な溶媒または溶媒混合物と混和性であるものであり、そして限定するわけではないがトリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリエチルグリセリド、リン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、鉱物油、ポリブテン、シリコーン油、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、オクタノール、乳酸エチル、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマール、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オンおよびそれらの混合物である。
【0064】
溶媒または溶媒混合物はポリマーを溶解して、有益物質の粒子が溶解または分散され、そして放出前の使用環境から隔離された粒子を維持することができる粘稠なゲルを形成することができる。本発明の組成物は、有益物質の全身的または局所的投与の両方に有用なインプラントを提供し、このインプラントは低いバースト指数を有する。水の取り込みはポリマーを溶解し、または可塑性を与える溶媒または成分溶媒混合物の使用により制御されるが、実質的にインプラントへの水の取り込みを制限する。さらに好適な組成物は37℃未満のガラス転移温度を有する粘稠なゲルを提供することができるので、ゲルは移植後24時間以降も非硬質なままである。
【0065】
有益物質の局所送達用を意図する組成物は、全身的使用を意図するものと同じ様式で形成される。しかし有益物質の個体への局所送達は、有益物質の検出可能な血漿レベルを生じないので、そのような系は本明細書で定義するバースト指数というよりはむしろ予め定めた初期期間に放出される有益物質の割合により特徴付けられなければならない。最も多くは、その期間は移植後、最初の24時間であり、そしてパーセントはその期間(例えば
24時間)に放出された有益物質の重量による量を、送達期間中に送達されることを意図する有益物質の重量により除算し;100の数を掛けた値に等しい。本発明の組成物はほとんどの応用において、40%以下、好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下の初期バーストを有する。
【0066】
多くの場合で、副作用を防ぐため局所投与中の有益物質の初期バーストを減らすことが望ましいかもしれない。例えば、化学療法剤を含有する本発明のインプラントは、腫瘍に直接注射するために適している。しかし多くの化学療法剤が全身的に投与した時、毒性効果を現す可能性がある。その結果、腫瘍への局所投与が選択される処置法となり得る。しかしそのような作用物質を副作用が現れ得る血管もしくはリンパ系に入れることが可能な場合、大きなバーストの化学療法剤の投与を避けることが必要である。したがってそのような場合は、本明細書に記載するような限定的なバーストを有する本発明の移植可能な系が有利である。
【0067】
手術後の疼痛管理のための効力比の意味では通常、ほとんど直ぐに疼痛を制御し、そして次いで特定期間にわたり麻酔薬の持続レベルを維持するするために、有益物質、例えば麻酔薬の十分に高いCmaxを達成する薬剤を送達することが望ましい。この場合、より高い効力比が望ましくなり得る。しかし別の状況では、高用量の薬剤に由来する潜在的な副作用を減らすために、全身的循環または局所組織中での分布のいずれかにおいて、厳しく制御される活性物質のレベルを維持することが有用となり得る。この種の状況では、より低い効力比が望ましくなり得る。そのように患者および治療のニーズは変動するので、薬剤送達剤形の効力比を制御することが望ましい。
有益物質
本発明では有益物質として使用するために適する麻酔薬を限定しないが、引用により本明細書に編入する米国特許第6,432,986号明細書は幾つかの例を提供し、本発明の1つの観点では、麻酔薬はブピバカイン、レボ−ブピバカイン、ロピバカイン、レボ−ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−メピバカインおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の観点では、麻酔薬はブピバカインを含んでなる。
【0068】
有益物質は好ましくはポリマーおよび溶媒から形成された粘稠ゲルに、典型的には約5〜約250ミクロン、好ましくは約20〜約125ミクロン、そしてしばしば38〜63ミクロンの平均粒子サイズを有する粒子の状態で包含される。
【0069】
ポリマーおよび溶媒から形成される粘稠ゲル中に有益物質の粒子の懸濁物または分散物を形成するために、Ross二重遊星形ミキサーのような任意の通例の低剪断デバイスを周囲環境で使用することができる。この様式では、有益物質の有効な分布が、有益物質を実質的に分解することなく達成できる。
【0070】
典型的には有益物質は組成物に、ポリマー、溶媒および有益物質を合わせた量の0.1%〜約50重量%の量で、好ましくは約0.5%〜約40重量%の量で、より好ましくは約1%〜約30重量%の量で、そしてしばしば2〜20重量%の量で溶解または分散される。組成物中に存在する有益物質の量に依存して、種々の放出プロファイルおよびバースト指数を得ることができる。さらに具体的には、所定のポリマーおよび溶媒について、これらの成分量および有益物質の量を調整することにより、組成物からの有益物質の分散よりもポリマーの分解に依存する放出プロファイル、またはその逆のプロファイルを得ることができる。これに関連して、より低い有益物質の装填では一般に放出速度が経時的に上昇するポリマーの分解を反映する放出プロファイルを得る。より高い装填では、一般に放出速度が経時的に低下する有益物質の拡散により引き起こされる放出プロファイルを得る。中程度の装填率では、組合わさった放出プロファイルが得られるので、所望により実質的に一定の放出速度を達成することができる。バーストを最小とするためには、ゲルの総重量、すなわちポリマー、溶媒および有益物質の30%以下の次元で有益物質を装填することが好ましく、そして20%以下の装填がより好ましい。
【0071】
有益物質の放出速度および装填は、意図する徐放性送達期間にわたり有益物質の治療に有効な送達を提供するために調整される。好ましくは有益物質はポリマーゲル中に水中での有益物質の飽和濃度を上回る濃度で存在して、有益物質が分配される薬剤リザーバーを提供する。有益物質の放出速度は、投与される有益物質のような特定の情況に依存するが、約3日から約2週間にわたり約0.1〜約100マイクログラム/日、好ましくは約1〜約10マイクログラム/日の次元の放出速度を得ることができる。送達が短期間に起こるならば、より多くの量が送達され得る。一般に、より高いバーストが耐容され得るならば、より高い放出速度が可能である。ゲル組成物が外科的に移植される場合、または疾患状態または別の状態を処置するために手術が同時に行われる時の「置き去り(leave behind)」貯蔵物として使用される場合、インプラントが注射されるならば通常に投与される、より高用量を提供することが可能である。さらに有益物質の用量は、移植されるゲルまたは注射される注射可能なゲルの容量を調整することにより制御することができる。
II.用途および投与:
貯蔵ゲル組成物の投与手段は注射に限定されないが、その送達様式がしばしば好適である。貯蔵ゲル組成物が置き去り物として投与される場合、手術の完了後の体腔に合うように形成することができ、またはゲルを残る組織または骨にブラシで塗るか、またはパレッティングすることにより流動性ゲルとして適用することができる。そのような応用は、典型的には注射可能な組成物で存在する濃度より高く、ゲル中に有益物質を装填することを可能とする。
【0072】
有益物質を含まない本発明の組成物は、創傷治癒、骨修復および他の構造的支持目的に有用である。
【0073】
本発明の様々な観点をさらに理解するために、これまでに記載した形態で説明した結果を以下の実施例に従い得た。
【実施例】
【0074】
以下は本発明を行うための具体的態様の幾つかの実施例である。実施例は具体的説明のみを目的として提供し、そして本発明の範囲をどのようにも限定することを意図していない。
実施例1
貯蔵ゲル組成物
組成物の注射用貯蔵物に使用するためのゲル賦形剤は、以下のように調製した。ガラス容器はMettler PJ3000トップローダーバランサーで風袋を差し引いた。ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)(PLGA)(0.15の固有粘度を有する50:50のDL−PLGとして販売されている(PLGA−BPI、バーミンガムポリマー社、バーミンガム、アラバマ州))および50:50 Resomer(商標)RG502(PLGA RG502)を、ガラス容器中で重量測定した。ポリマーを含有するガラス容器は風袋を差し引き、そして対応する溶媒を加えた。種々のポリマー/溶媒の組み合わせに関して百分率で表す量を以下の表1に説明する。ポリマー/溶媒混合物は、250±50rpmで約5〜10分間撹拌し(IKA電気撹拌機、IKH−ベルケ株式会社(Werke GmbH and Co.)、スタンフェン、ドイツ)、ポリマー粒子を含有する粘着性のペースト様物質を得た。ポリマー/溶媒混合物を含有する容器を密閉し、そして37℃に平衡化した温度制御インキュベーターに、溶媒およびポリマーの種類ならびに溶媒およびポリマーの比率に依存して1〜4日間、断続的に撹拌しながら置いた。ポリマー/溶媒混合物は、透明な琥珀色の均一溶液になった時、インキュベーターから取り出した。その後、混合物をオーブン(65℃)に30分間置いた。オーブンから取り出すると、混合物中にPLGAが溶解したことが示された。
【0075】
以下の溶媒または溶媒混合物を用いてさらなる貯蔵ゲル賦形剤を調製した:安息香酸ベンジル(“BB”)、ベンジルアルコール(“BA”)、安息香酸エチル(“EB”)、BB/BA、BB/エタノール、BB/EBおよび以下のポリマー:ポリ(D,L−ラクチド)Resomer(商標)L104、PLA−L104、コード番号33007、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG502、コード0000366、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG502H、PLGA−502H、コード番号260187、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG503、PLGA−503、コ−ド番号0080765、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)50:50 Resomer(商標)RG755、PLGA−755、コ−ド番号95037、ポリL−ラクチドMW2,000(Resomer(商標)L206、Resomer(商標)L207、Resomer(商標)L209、Resomer(商標)L214);ポリD,L−ラクチド(Resomer(商標)R104、Resomer(商標)R202、Resomer(商標)203、Resomer(商標)R206、Resomer(商標)207、Resomer(商標)208);ポリ−L−ラクチド−コ−D,L−ラクチド90:10(Resomer(商標)LR209);ポリD−L−ラクチド−コ−グリコライド75:25(Resomer(商標)RG752、Resomer(商標)RG756);ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド85:15(Resomer(商標)RG858);ポリL−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート70:30(Resomer(商標)LT706);ポリジオキサノン(Resomer(商標)X210)(ベーリンガー インゲルハイム ケミカルズ社、ピーターズバーグ、バージニア州);DL−ラクチド/グリコライド100:0(MEDISORB(商標)ポリマー100DL High、MEDISORB(商標)ポリマー100DL Low);DL−ラクチド/グリコライド85/15(MEDISORB(商標)ポリマー8515DL High、MEDISORB(商標)ポリマー85150DL Low);DL−ラクチド/グリコライド75/25(MEDISORB(商標)ポリマー7525DL High、MEDISORB(商標)ポリマー7525DL Low);DL−ラクチド/グリコライド65:35(MEDISORB(商標)ポリマー6535DL High、MEDISORB(商標)ポリマー6535DL Low);DL−ラクチド/グリコライド54/46(MEDISORB(商標)ポリマー5050DL High、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL Low);およびDL−ラクチド/グリコライド54/46(MEDISORB(商標)ポリマー5050DL2(A)3)、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL3A(3)、MEDISORB(商標)ポリマー5050DL 4A(3))(メディソーブ テクノロジーズ インターナショナルL.P.、シンシナティ、オハイオ州);およびポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド50:50;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド65:35;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド75:25;ポリD,L−ラクチド−コ−グリコライド85:15;ポリDL−ラクチド;ポリL−ラクチド;ポリグリコライド;ポリε−カプロラクトン;ポリDL−ラクチド−コ−カプロラクトン25:75;およびポリDL−ラクチド−コ−カプロラクトン75:25(バーミンガムポリマー社、バーミンガム、アラバマ州)。
実施例2
ブピバカイン塩基の調製
ブピバカイン塩酸塩(シグマ−アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)を、脱イオン(DI)水に40mg/ml(飽和)濃度で溶解した。計算した量の水酸化ナトリウ
ム(1N溶液)を溶液に加え、そして最終混合物のpHを10に調整してBP塩基を沈殿させた。沈殿した生成物を濾過し、そしてさらにDI水で少なくとも3回洗浄した。沈殿した生成物を真空中、約40℃で24時間乾燥させた。
実施例3
ブピバカイン粒子の調製
ブピバカイン塩酸塩(シグマ−アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)または実施例4に従い調製したブピバカイン塩基および塩酸塩を使用したブピバカイン薬粒子を、以下のように調製した。ブピバカインを挽き、次いで3”のステンレス鋼のふるいを使用して固定範囲にふるい分けた。典型的な範囲には25μm〜38μm、38μm〜63μm、および63μm〜125μmを含む。
実施例4
ブピバカイン−ステアリン酸粒子の調製
ブピバカイン粒子は以下のように調製した:ブピバカイン塩酸塩(100g、シグマ−アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)を挽き、そして63〜125ミクロンのふるいに通してふるい分けた。ブピバカイン粒子およびステアリン酸(100g、95%純度、シグマ−アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)をブレンドし、そして挽いた。挽いた材料は5,000ポンドの力で13mmの丸型ダイ中で5分間圧縮した。圧縮した錠剤を挽き、そして120メッシュのスクリーンに通してふるい分け、次いで230メッシュのスクリーンでふるい分けして63〜125ミクロンのサイズ範囲を有する粒子を得た。
実施例5
薬剤装填
上記のように調製したステアリン酸を含むか、または含まない有益物質を含んでなる粒子を、ゲル賦形剤に10〜30重量%の量で加え、そして乾燥粉末が完全に湿潤化するまで手でブレンドした。次いで乳状の明黄色粒子/ゲル混合物は、四角いチップの金属スパチュラを備えたCaframo機械撹拌機を使用して通常の混合により徹底的にブレンドした。得られた製剤を以下の表1−3で具体的に説明する。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
移植可能な貯蔵ゲル組成物の代表数を前述の手順に従い調製し、そして時間の関数として有益物質のインビトロ放出について試験し、そしてまたラットを対象としたインビボ実験で試験して、時間の関数として有益物質の血漿濃度により測定される有益物質の放出を測定した。
【0080】
移植可能な貯蔵ゲル組成物の代表数も前述の手順に従い調製し、そしてラットを対象としたインビボ実験で試験して、時間の関数として局所組織サンプリングにより測定される有益物質の局所放出を測定する。
実施例6A
ブピバカインのインビボ実験
ラットを対象としたインビボ実験(群あたり4または5匹)は以下のオープンプロトコールに従い行って、本発明のインプラント系を介したブピバカインの全身投与でブピバカインの血漿レべルを測定した。貯蔵ゲルブピバカイン製剤は、カスタマイズされた0.5ccの使い捨てシリンジに装填した。使い捨ての18ゲイジ針をシリンジに付け、そして循環浴を使用して37℃に加熱した。貯蔵ゲルブピバカイン製剤をラットに注射し、そして血液を特定の時間間隔(1時間、4時間および1、2、5、7、9、14、21および28日)で採血し、そしてLC/MSを使用してブピバカインについて分析した。
実施例6B
ブピバカインの局所投与実験
ラットを対象としたインビボ実験(群あたり4または5匹)は以下のオープンプロトコールに従い行って、本発明のインプラント系を介したブピバカインの局所投与でブピバカインの血漿レべルを測定した。貯蔵ゲルブピバカイン製剤は、カスタマイズされた0.5ccの使い捨てシリンジに装填した。使い捨ての18ゲイジ針をシリンジに付け、そして循環浴を使用して37℃に加熱した。貯蔵ゲルブピバカイン製剤をラットに注射し、そして局所組織を特定の時間間隔(1時間、4時間および1、2、5、7、9、14、21および28日)に摘出し、そして均一化した。局所組織中のブピバカインを抽出し、そしてLC/MSを使用して分析した。
実施例7
短期間のブピバカイン放出
図1、2および3は、本発明のものを含め、種々の貯蔵製剤からラットで得られたブピバカイン塩酸塩およびブピバカイン塩基の代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。低分子量PLGA(図1、2および3の製剤2および4)を含む貯蔵製剤のインビボ放出プロファイルは、約7日間の短期放出を現し、これは対照製剤(より高分子量のPLGAを含む)に匹敵した。すなわち低分子量のポリマーを含んでなる本発明の注射用の貯蔵製剤は、2週間以下の短期にわたり有益物質の制御された徐放性を提供する。
【0081】
表2および3および図1〜12で具体的に説明するように、種々の貯蔵製剤は、安息香酸ベンジル(BB)、ベンジルアルコール(BA)、安息香酸エチル(EB)、BB/エタノール、BB/BA、BB/EB等のような種々の溶媒を使用して、ポリマー/溶媒比、薬剤装填および剤形を変動させながら、エステル末端基またはカルボキシル基のいずれかを用いて低分子量のPLGAから作成することができる。薬剤粒子はステアリン酸(SA)を持つ疎水性補形剤を用いて、または用いずに作成することができる。
実施例8
溶媒がブピバカイン放出に及ぼす効果
図4は、BBまたはBAのいずれ中に低分子量PLGAを用いて作成した貯蔵製剤(製剤5および6)からラットで得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。図11および12は、BAまたはBBを含むBAの混合物(BA/BB、50/50)のいずれか中に低分子量PLGAを用いて作成した貯蔵製剤(製剤12および13)からラットで得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。そのような短期貯蔵物からのブピバカインの放出速度プロファイルは、製剤に使用する溶媒により改変および制御することができる。表4にまとめるように、Cmax、Caverageおよび効力比(Cmax/Caverage)は、貯蔵製剤に使用する溶媒により影響を受け得る。
【0082】
【表4】
【0083】
実施例9
ポリマー/溶媒比がブピバカイン放出に及ぼす効果
図5は、種々のポリマー/溶媒比を用いてBA中にエステル末端基を有する低分子量PLGAで作成した貯蔵製剤(製剤6および7)からラットで得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。図9および10は、種々のポリマー/溶媒比を用いてBA中にカルボキシル末端基を有する低分子量PLGAで作成した貯蔵製剤(製剤10および12)からラットで得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。そのような短期貯蔵物からのブピバカインの放出速度プロファイルは、製剤中のポリマー/溶媒比により改変および制御することができる。表5にまとめるように、Cmax、Caverageおよび効力比(Cmax/Caverage)は、貯蔵製剤のポリマー/溶媒比により影響を受け得る。
【0084】
【表5】
【0085】
実施例10
ブピバカイン放出に及ぼす薬剤補形剤の効果
図7は、SAを用いて、または用いずに配合された薬剤粒子を含む、BAで低分子量PLGAから作成した貯蔵製剤(製剤8および9)からラットで得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。そのような短期貯蔵物からブピバカインの放出速度プロファイルは、製剤に使用する薬剤補形剤により改変および制御することができる。表6にまとめるように、Cmax、Caverageおよび効力比(Cmax/Caverage)は、貯蔵製剤に使用するステアリン酸のような薬剤補形剤により影響を受け得る。
【0086】
【表6】
【0087】
実施例11
PLGAポリマーに関する示差走査熱量測定機(DSC)による測定
本発明で使用した種々の低分子量PLGAポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量測定機(DSC)(パーキン エルマー(Perkin Elmer) Pyris1、
シェルトン、コネチカット州)を使用して測定した。DSCサンプルパンは、Mettler PJ3000トップローダーバランスで風袋を差し引いた。少なくとも20mgのポリマーサンプルをパンに置いた。サンプルの重量を記録した。DSCパンカバーをパンの上に置き、そしてプレッサーを使用してパンを密閉した。温度は10℃の増分で−50℃から90℃で走査した。
【0088】
図13および14は、エステル基またはカルボキシル末端基のいずれかでエンドキャップした本発明で提示する製剤に使用する低分子量PLGAのDSC図における差異を具体的に説明する。図13はエステル末端基を持つ低分子量PLGA(L/G比50/50、MW=8,000)のDSC図を示す。図14はカルボキシル末端基を持つ低分子量PLGA(L/G比50/50、MW=10,000)のDSC図を示す。これらのデータは、本発明で使用する低分子量PLGAポリマーが30℃より高いガラス転移温度(“Tg”)を有することを示す。
実施例12
PLGAポリマーのインビトロ分解
本発明で使用する低分子量PLGAポリマーの分解プロファイルを、37℃でPBSバッファー中にてインビトロで行って、時間の関数としてPLGAポリマーの質量損失速度を測定した。各ポリマーは1つのサンプル組を含んでなった。約25ディスク(各100±5mg)は、13mmのステンレス鋼ダイを使用して圧縮した。サンプルはCarverプレスを使用して10トンの力で約10分間、圧縮した。ディスクは分解浴中で使用するまで、真空オーブン中のガラスバイアル中で、周囲温度および25mmHgに維持した。この手順を試験する各ポリマーについて繰り返した。アジ化ナトリウム(0.1N)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(50mM、pH7.4)を調製した。1つのサンプルディスクの重量を、風袋を引いたバイアル中で計り、そして初期重量(Minitial)として記録した。PBS(10mL)を各バイアルにピペットで入れた。バイアルにきっちりと蓋をし、そして37℃の振盪水浴に置いた。バッファーを1週間に2回交換し、その前に溶液のpHを記録した。前以て示した時点で、サンプルをバッファー浴から回収し、脱イオン化Milli−Q水ですすぎ、表面を乾燥させ、そして重量を計った。サンプル重量は湿潤重量(Mwet)として記録した。サンプルを10mLの凍結乾燥バイアルに入れ、そして冷凍庫(−20℃)においた後、凍結乾燥させた。凍結乾燥後、サンプルの重量を再度計り、そして乾燥重量(Mlyophilized)として記録した。質量損失のパーセントは、{(Mlyophilized−Minitial)/Minitial}×100%と定めた。
【0089】
図15は上記の製剤で使用した3種のPLGAの質量損失プロファイルを具体的に説明する。これから、使用した3種の各ポリマーが有意に異なる分解速度を有することが分かる。エステル末端基またはカルボキシル末端基のいずれかを持つ低分子量PLGAは、より高分子量のものよりも有意に速い分解速度を有する。これは出来る限り早く活性物質を貯蔵物から放出するポリマーが好ましい短期貯蔵物に好適である。本発明の様々な観点に従い、1もしくは複数の重要な利点を得ることができる。さらに特別には、単純な処理工程を使用して、手術を行わずに標準針を介して低い分配力を使用して、動物中の場所に注射することができる貯蔵ゲル組成物を得ることができる。いったん場所に収まれば、組成物はそのもとの粘性に素早く戻り、そしてバースト効果を実質的に回避するように迅速な硬化を現し、そして所望する有益物質の放出プロファイルを提供することができる。さらにいったん有益物質が完全に投与されれば、組成物は完全に生分解性なので取り除く必要はない。さらなる利点として、本発明は微粒子またはマイクロカプセル化技術の使用を回避し、これらの技術はペプチドおよび核酸に基づく薬剤のような特定の有益物質を分解する恐れがあり、そして微粒子およびマイクロカプセルは使用環境から除去することが困難であるかもしれない。粘稠ゲルは水、極端な温度または他の溶媒を必要とすることなく形成され、有益物質の懸濁した粒子は乾燥およびそれらの元の形状のままであり、これはそ
れらの安定性に貢献する。さらに塊が形成されるので、注射可能なゲル貯蔵組成物は所望により使用環境から回収することができる。
実施例13
ブピバカイン放出に及ぼす重量平均分子量の効果
図6は、BA中でエステル末端基を持つ低分子量(8,000)PLGAで作られた(製剤7)、およびBA中でカルボキシル末端基を持つ低分子量(10,000)PLGAで作られた(製剤8)貯蔵製剤から、ラットを対象として得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。そのような短期貯蔵物からのブピバカインの放出速度プロファイルは、製剤に使用したポリマーおよび/またはPLGA中の末端基により改変および制御することができる。
実施例14
ブピバカイン放出に及ぼす有益物質の平均粒子サイズの効果
図8は、BA中でカルボキシル末端基を持つ低分子量(10,000)PLGAで作られた、63〜125μm(製剤10)および38〜63μm(製剤11)のブピバカイン塩酸塩の平均粒子サイズを有する貯蔵製剤から、ラットを対象として得たブピバカインの代表的なインビボ放出プロファイルを具体的に説明する。そのような短期貯蔵物からのブピバカインの放出速度プロファイルは、活性物質の平均サイズにより改変および制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカイン塩酸塩のインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤1〜2)。
【図2】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカイン塩基のインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤3〜4)。
【図3】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカイン塩基のインビボ放出プロファイルの初期部分(7日まで)を具体的に説明するグラフである(製剤3〜4)。
【図4】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤5〜6)。
【図5】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤6〜7)。
【図6】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤7〜8)。
【図7】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤8〜9)。
【図8】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤10〜11)。
【図9】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤10、12)。
【図10】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルの初期部分(4日まで)を具体的に説明するグラフである(製剤10、12)。
【図11】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルを具体的に説明するグラフである(製剤12、13)。
【図12】本発明の貯蔵製剤から得たブピバカインのインビボ放出プロファイルの初期部分(4日まで)を具体的に説明するグラフである(製剤12、13)。
【図13】本発明の種々の製剤を作成するために使用したエステル末端基を持つ低分子量PLGAのDSC図である(製剤2、4、5、6および7)。
【図14】本発明の種々の製剤を作成するために使用したカルボキシル末端基を持つ低分子量PLGAのDSC図である(製剤8および13)。
【図15】異なる末端基を持つ変動する分子量のPLGAポリマーのインビトロ分解プロファイルを具体的に説明するグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量の水に非混和性の溶媒を含んでなる、短期ゲル賦形剤;
ゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬
を含んでなる麻酔薬の徐放性剤形。
【請求項2】
さらに放出プロファイルを達成するために制御可能な効力比を含んでなる、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項3】
効力比が約1から200の間である請求項2に記載の徐放性剤形。
【請求項4】
効力比が約5から100の間である請求項3に記載の徐放性剤形。
【請求項5】
徐放が約14日以下の期間で起こる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項6】
徐放が約7日以下の期間で起こる請求項5に記載の徐放性剤形。
【請求項7】
徐放が約24時間から約7日の期間続く請求項6に記載の徐放性剤形。
【請求項8】
麻酔薬がブピバカイン、レボ−ブピバカイン、ロピバカイン、レボ−ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−メピバカインおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項9】
麻酔薬がブピバカインを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項10】
溶媒が25℃で約7重量%以下の水中混和性を有する、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項11】
剤形が25℃で約7重量%より高い水中混和性を有する溶媒を含まない、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項12】
溶媒が芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルエステル、アリール酸の低級アラルキルエステル、アリールケトン、アラルキルケトン、低級アルキルケトン、クエン酸の低級アルキルエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項13】
溶媒がベンジルアルコールを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項14】
溶媒が安息香酸ベンジルを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項15】
溶媒が安息香酸エチルを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項16】
溶媒がトリアセチンを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項17】
溶媒がトリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリエチルグリセリド、リン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、鉱物油、ポリブテン、シリコーン油、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、オクタノール
、乳酸エチル、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマール、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分溶媒を含んでなる、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項18】
ポリマーが乳酸基剤ポリマーを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項19】
ポリマーが乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)を含んでなる請求項18に記載の徐放性剤形。
【請求項20】
コポリマーが約50:50の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する、請求項19に記載の徐放性剤形。
【請求項21】
ポリマーがカプロラクトン基剤ポリマーを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項22】
ポリマーがポリラクチド、ポリグリコライド、ポリ(カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖、キチン、キトサン、ヒアルロン酸およびそれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項23】
ポリマーがエステル末端基を含んでなる請求項19に記載の徐放性剤形。
【請求項24】
ポリマーがカルボン酸末端基を含んでなる請求項19に記載の徐放性剤形。
【請求項25】
ポリマーが約3,000から約10,000の間の重量平均分子量を有する請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項26】
ポリマーが約3,000から約8,000の間の重量平均分子量を有する請求項25に記載の徐放性剤形。
【請求項27】
ポリマーが約4,000から約6,000の間の重量平均分子量を有する請求項26に記載の徐放性剤形。
【請求項28】
ポリマーが約5,000の重量平均分子量を有する請求項27に記載の徐放性剤形。
【請求項29】
剤形が約0.1%〜約50重量%の麻酔薬を含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項30】
剤形が約0.5%〜約40重量%の麻酔薬を含んでなる請求項29に記載の徐放性剤形。
【請求項31】
剤形が約1%〜約30重量%の麻酔薬を含んでなる請求項30に記載の徐放性剤形。
【請求項32】
ポリマーと溶媒との間の比が約5:95〜約90:10の間である請求項1に記載の徐
放性剤形。
【請求項33】
ポリマーと溶媒との間の比が約20:80〜約80:20の間である請求項32に記載の徐放性剤形。
【請求項34】
ポリマーと溶媒との間の比が約30:70〜約75:25の間である請求項33に記載の徐放性剤形。
【請求項35】
さらに以下の少なくとも1つ:補形剤、乳化剤、孔形成剤、麻酔薬用の溶解性モジュレーターおよび浸透性剤を含んでなる、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項36】
麻酔薬が約250μm未満の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項37】
麻酔薬が約5μmから約250μmの間の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる、請求項36に記載の徐放性剤形。
【請求項38】
平均粒子サイズが約20μmから約125μmの間である請求項37に記載の徐放性剤形。
【請求項39】
平均粒子サイズが約38μmから約63μmの間である請求項38に記載の徐放性剤形。
【請求項40】
低分子量の乳酸基剤ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えて、それらと一緒にゲルを形成するために有効な量の水に非混和性の溶媒を含んでなる、短期ゲル賦形剤;
麻酔薬がゲル賦形剤に溶解または分散されている、ブピバカインを含んでなる麻酔薬;および
徐放性プロファイルを達成するための制御可能な効力比
を含んでなり、乳酸基剤ポリマーの重量平均分子量が約3,000から約10,000の間である麻酔薬の徐放性剤形。
【請求項41】
徐放が約40日以下の期間で起こる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項42】
徐放が約7日以下の期間で起こる請求項41に記載の徐放性剤形。
【請求項43】
徐放が約24時間から約7日の期間続く請求項42に記載の徐放性剤形。
【請求項44】
効力比が約1から約200の間である請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項45】
効力比が約5から約100の間である請求項44に記載の徐放性剤形。
【請求項46】
ポリマーが乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)を含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項47】
コポリマーが約50:50の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する請求項46に記載の徐放性剤形。
【請求項48】
コポリマーがポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)を含んでなる請求項46に記載の徐放性剤形。
【請求項49】
コポリマーがポリ(L−ラクチド−コ−グリコライド)を含んでなる請求項46に記載の徐放性剤形。
【請求項50】
溶媒が25℃で約7重量%以下の水中混和性を有する請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項51】
剤形が25℃で約7重量%より高い水中混和性を有する溶媒を含まない請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項52】
溶媒が芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルエステル、アリール酸の低級アラルキルエステル、アリールケトン、アラルキルケトン、低級アルキルケトン、クエン酸の低級アルキルエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項53】
溶媒がベンジルアルコールを含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項54】
溶媒が安息香酸ベンジルを含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項55】
溶媒が安息香酸エチルを含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項56】
溶媒がトリアセチンを含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項57】
ポリマーが約3,000から約8,000の間の重量平均分子量を有する請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項58】
ポリマーが約4,000から約6,000の間の重量平均分子量を有する請求項57に記載の徐放性剤形。
【請求項59】
ポリマーが約5,000の重量平均分子量を有する請求項58に記載の徐放性剤形。
【請求項60】
剤形が約0.1%〜約50重量%の麻酔薬を含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項61】
剤形が約0.5%〜約40重量%の麻酔薬を含んでなる請求項60に記載の徐放性剤形。
【請求項62】
剤形が約1%〜約30重量%の麻酔薬を含んでなる請求項61に記載の徐放性剤形。
【請求項63】
ポリマーと溶媒との間の比が約5:95〜約90:10の間である請求項62に記載の徐放性剤形。
【請求項64】
ポリマーと溶媒との間の比が約20:80〜約80:20の間である請求項63に記載の徐放性剤形。
【請求項65】
ポリマーと溶媒との間の比が約30:70〜約75:25の間である請求項64に記載の徐放性剤形。
【請求項66】
麻酔薬が約250μm未満の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項67】
麻酔薬が約5μmから約250μmの間の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる請
求項66に記載の徐放性剤形。
【請求項68】
平均粒子サイズが約20μmから約125μmの間である請求項67に記載の徐放性剤形。
【請求項69】
平均粒子サイズが約38μmから約63μmの間である請求項68に記載の徐放性剤形。
【請求項70】
PLGAがエステル末端基を含んでなる請求項46に記載の徐放性剤形。
【請求項71】
PLGAがカルボキシル末端基を含んでなる請求項46に記載の徐放性剤形。
【請求項72】
さらに以下の少なくとも1つ:補形剤、乳化剤、孔形成剤、麻酔薬用の溶解性モジュレーターおよび浸透性剤を含んでなる、請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項73】
徐放性剤形を使用して個体の局所疼痛を処置する方法であって:
低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量の、水に非混和性の溶媒を含んでなる、ゲル賦形剤;および
ゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬
を含んでなる短期徐放性剤形を投与することを含んでなる上記方法。
【請求項74】
徐放性剤形が放出プロファイルを達成するために制御可能な効力比をさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項75】
効力比が約1から200の間である請求項74に記載の方法。
【請求項76】
効力比が約5から100の間である請求項75に記載の方法。
【請求項77】
徐放が約14日以下の期間で起こる請求項73に記載の方法。
【請求項78】
徐放が約7日以下の期間で起こる請求項77に記載の方法。
【請求項79】
徐放が約24時間から約7日の期間続く請求項78に記載の方法。
【請求項80】
剤形を1回投与することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項81】
剤形を局所疼痛に局所的に適用することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項82】
剤形を局所疼痛付近の位置に注射することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項83】
麻酔薬を全身に送達することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項84】
麻酔薬を多くの部位に送達することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項85】
局所疼痛の周囲の多くの部位に剤形を送達注射することをさらに含んでなる請求項84に記載の方法。
【請求項86】
剤形を繰り返し投与することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項87】
麻酔薬がブピバカイン、レボ−ブピバカイン、ロピバカイン、レボ−ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−メピバカインおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項88】
麻酔薬がブピバカインを含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項89】
25℃で約7重量%以下の水中混和性を有する請求項73に記載の方法。
【請求項90】
ポリマーが約3,000から10,000の間の分子量を有する請求項73に記載の方法。
【請求項91】
ポリマーが約3,000から8,000の間の重量平均分子量を有する請求項90に記載の方法。
【請求項92】
ポリマーが約4,000から6,000の間の重量平均分子量を有する請求項91に記載の方法。
【請求項93】
ポリマーが約5,000の重量平均分子量を有する請求項92に記載の方法。
【請求項94】
剤形が約0.1%〜約50重量%の麻酔薬を含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項95】
ポリマーがポリラクチド、ポリグリコライド、ポリ(カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖、キチン、キトサン、ヒアルロン酸およびそれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物からなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項96】
徐放性製剤がポリマーと溶媒との間で約5:95〜約90:10の比を含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項97】
麻酔薬が約250μm未満の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項98】
徐放性剤形を使用して個体の手術後の局所疼痛を処置する方法であって:
低分子量の生体侵食性、生体適合性乳酸基剤ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量の、水に非混和性の溶媒を含んでなる、ゲル賦形剤;ゲル賦形剤に溶解または分散されたブピバカインを含んでなる麻酔薬;および放出プロファイルを達成するための制御可能な効力比を含んでなる短期徐放性剤形を1回投与することを含んでなる上記方法。
【請求項99】
ポリマーが乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)を含んでなる請求項98に記載の方法。
【請求項100】
コポリマーが約50:50の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
徐放性剤形の調製法であって:
低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えてそれらと一緒にゲルを形成してポリマー/溶媒溶液またはゲルを作成するために有効な量の、水に非混和性の溶媒を含んでなる、短期ゲル賦形剤を調製し;
ポリマー/溶媒混合物を透明な均一溶液またはゲルになるまで平衡化し;
麻酔薬をポリマー/溶媒溶液またはゲルに溶解または分散させ;
麻酔薬およびポリマー/溶媒溶液またはゲルをブレンドして徐放性剤形を形成し;そして
放出プロファイルを達成するための効力比を制御する、
ことを含んでなる上記方法。
【請求項102】
効力比が約1から200の間である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
ポリマー/溶媒溶液またはゲルが、室温と約65℃の間の温度で平衡化される請求項101に記載の方法。
【請求項104】
麻酔薬がブピバカインを含んでなる請求項101に記載の方法。
【請求項105】
麻酔薬がブピバカイン、レボ−ブピバカイン、ロピバカイン、レボ−ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−メピバカインおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項101に記載の方法。
【請求項106】
ポリマーが乳酸基剤ポリマーを含んでなる請求項101に記載の方法。
【請求項107】
ポリマーが乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)を含んでなる請求項106に記載の方法。
【請求項108】
コポリマーが約50:50の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する請求項107に記載の方法。
【請求項109】
ポリマーがポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)を含んでなる請求項107に記載の方法。
【請求項110】
ポリマーがポリ(L−ラクチド−コ−グリコライド)を含んでなる請求項107に記載の方法。
【請求項111】
剤形に剤形の約0.1%〜約50重量%の麻酔薬を装填することを含んでなる請求項101に記載の方法。
【請求項112】
剤形に剤形の約0.5%〜約40重量%の麻酔薬を装填することを含んでなる請求項111に記載の方法。
【請求項113】
剤形に剤形の約1%〜約30重量%の麻酔薬を装填することを含んでなる請求項112に記載の方法。
【請求項114】
ポリマーと溶媒との間に約5:95および約90:10の比を提供することを含んでなる請求項101に記載の方法。
【請求項115】
ポリマーと溶媒との間に約20:80および約80:20の比を提供することを含んでなる請求項114に記載の方法。
【請求項116】
ポリマーと溶媒との間に約30:70および約75:25の比を提供することを含んでなる請求項115に記載の方法。
【請求項117】
溶媒が芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルエステル、アリール酸の低級アラルキルエステル、アリールケトン、アラルキルケトン、低級アルキルケトン、クエン酸の低級アルキルエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項118】
PLGAがエステル末端基を含んでなる請求項107に記載の方法。
【請求項119】
PLGAがカルボキシル末端基を含んでなる請求項107に記載の方法。
【請求項120】
さらに以下の少なくとも1つ:補形剤、乳化剤、孔形成剤、麻酔薬用の溶解性モジュレーターおよび浸透性剤、を加えることを含んでなる、請求項101に記載の方法。
【請求項121】
麻酔薬が約250μm未満の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる請求項101に記載の方法。
【請求項122】
個体の局所疼痛に対する麻酔薬の持続型送達の投与用キットであって:
低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量の、水に非混和性の溶媒を含んでなる、短期ゲル賦形剤;
ゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬;および場合により以下の
補形剤;
乳化剤;
孔形成剤;
麻酔薬用の溶解性モジュレーター、場合により麻酔薬と会合している;および
浸透性剤
の1もしくは複数を含んでなり、少なくとも場合により溶解性モジュレーターと会合している麻酔薬が、個体に麻酔薬を投与する時期まで溶媒から分離されて維持されている、上記キット。
【請求項1】
低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量の水に非混和性の溶媒を含んでなる、短期ゲル賦形剤;
ゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬
を含んでなる麻酔薬の徐放性剤形。
【請求項2】
さらに放出プロファイルを達成するために制御可能な効力比を含んでなる、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項3】
効力比が約1から200の間である請求項2に記載の徐放性剤形。
【請求項4】
効力比が約5から100の間である請求項3に記載の徐放性剤形。
【請求項5】
徐放が約14日以下の期間で起こる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項6】
徐放が約7日以下の期間で起こる請求項5に記載の徐放性剤形。
【請求項7】
徐放が約24時間から約7日の期間続く請求項6に記載の徐放性剤形。
【請求項8】
麻酔薬がブピバカイン、レボ−ブピバカイン、ロピバカイン、レボ−ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−メピバカインおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項9】
麻酔薬がブピバカインを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項10】
溶媒が25℃で約7重量%以下の水中混和性を有する、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項11】
剤形が25℃で約7重量%より高い水中混和性を有する溶媒を含まない、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項12】
溶媒が芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルエステル、アリール酸の低級アラルキルエステル、アリールケトン、アラルキルケトン、低級アルキルケトン、クエン酸の低級アルキルエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項13】
溶媒がベンジルアルコールを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項14】
溶媒が安息香酸ベンジルを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項15】
溶媒が安息香酸エチルを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項16】
溶媒がトリアセチンを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項17】
溶媒がトリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリエチルグリセリド、リン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、鉱物油、ポリブテン、シリコーン油、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、オクタノール
、乳酸エチル、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマール、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分溶媒を含んでなる、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項18】
ポリマーが乳酸基剤ポリマーを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項19】
ポリマーが乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)を含んでなる請求項18に記載の徐放性剤形。
【請求項20】
コポリマーが約50:50の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する、請求項19に記載の徐放性剤形。
【請求項21】
ポリマーがカプロラクトン基剤ポリマーを含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項22】
ポリマーがポリラクチド、ポリグリコライド、ポリ(カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖、キチン、キトサン、ヒアルロン酸およびそれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項23】
ポリマーがエステル末端基を含んでなる請求項19に記載の徐放性剤形。
【請求項24】
ポリマーがカルボン酸末端基を含んでなる請求項19に記載の徐放性剤形。
【請求項25】
ポリマーが約3,000から約10,000の間の重量平均分子量を有する請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項26】
ポリマーが約3,000から約8,000の間の重量平均分子量を有する請求項25に記載の徐放性剤形。
【請求項27】
ポリマーが約4,000から約6,000の間の重量平均分子量を有する請求項26に記載の徐放性剤形。
【請求項28】
ポリマーが約5,000の重量平均分子量を有する請求項27に記載の徐放性剤形。
【請求項29】
剤形が約0.1%〜約50重量%の麻酔薬を含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項30】
剤形が約0.5%〜約40重量%の麻酔薬を含んでなる請求項29に記載の徐放性剤形。
【請求項31】
剤形が約1%〜約30重量%の麻酔薬を含んでなる請求項30に記載の徐放性剤形。
【請求項32】
ポリマーと溶媒との間の比が約5:95〜約90:10の間である請求項1に記載の徐
放性剤形。
【請求項33】
ポリマーと溶媒との間の比が約20:80〜約80:20の間である請求項32に記載の徐放性剤形。
【請求項34】
ポリマーと溶媒との間の比が約30:70〜約75:25の間である請求項33に記載の徐放性剤形。
【請求項35】
さらに以下の少なくとも1つ:補形剤、乳化剤、孔形成剤、麻酔薬用の溶解性モジュレーターおよび浸透性剤を含んでなる、請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項36】
麻酔薬が約250μm未満の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる請求項1に記載の徐放性剤形。
【請求項37】
麻酔薬が約5μmから約250μmの間の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる、請求項36に記載の徐放性剤形。
【請求項38】
平均粒子サイズが約20μmから約125μmの間である請求項37に記載の徐放性剤形。
【請求項39】
平均粒子サイズが約38μmから約63μmの間である請求項38に記載の徐放性剤形。
【請求項40】
低分子量の乳酸基剤ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えて、それらと一緒にゲルを形成するために有効な量の水に非混和性の溶媒を含んでなる、短期ゲル賦形剤;
麻酔薬がゲル賦形剤に溶解または分散されている、ブピバカインを含んでなる麻酔薬;および
徐放性プロファイルを達成するための制御可能な効力比
を含んでなり、乳酸基剤ポリマーの重量平均分子量が約3,000から約10,000の間である麻酔薬の徐放性剤形。
【請求項41】
徐放が約40日以下の期間で起こる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項42】
徐放が約7日以下の期間で起こる請求項41に記載の徐放性剤形。
【請求項43】
徐放が約24時間から約7日の期間続く請求項42に記載の徐放性剤形。
【請求項44】
効力比が約1から約200の間である請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項45】
効力比が約5から約100の間である請求項44に記載の徐放性剤形。
【請求項46】
ポリマーが乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)を含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項47】
コポリマーが約50:50の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する請求項46に記載の徐放性剤形。
【請求項48】
コポリマーがポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)を含んでなる請求項46に記載の徐放性剤形。
【請求項49】
コポリマーがポリ(L−ラクチド−コ−グリコライド)を含んでなる請求項46に記載の徐放性剤形。
【請求項50】
溶媒が25℃で約7重量%以下の水中混和性を有する請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項51】
剤形が25℃で約7重量%より高い水中混和性を有する溶媒を含まない請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項52】
溶媒が芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルエステル、アリール酸の低級アラルキルエステル、アリールケトン、アラルキルケトン、低級アルキルケトン、クエン酸の低級アルキルエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項53】
溶媒がベンジルアルコールを含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項54】
溶媒が安息香酸ベンジルを含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項55】
溶媒が安息香酸エチルを含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項56】
溶媒がトリアセチンを含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項57】
ポリマーが約3,000から約8,000の間の重量平均分子量を有する請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項58】
ポリマーが約4,000から約6,000の間の重量平均分子量を有する請求項57に記載の徐放性剤形。
【請求項59】
ポリマーが約5,000の重量平均分子量を有する請求項58に記載の徐放性剤形。
【請求項60】
剤形が約0.1%〜約50重量%の麻酔薬を含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項61】
剤形が約0.5%〜約40重量%の麻酔薬を含んでなる請求項60に記載の徐放性剤形。
【請求項62】
剤形が約1%〜約30重量%の麻酔薬を含んでなる請求項61に記載の徐放性剤形。
【請求項63】
ポリマーと溶媒との間の比が約5:95〜約90:10の間である請求項62に記載の徐放性剤形。
【請求項64】
ポリマーと溶媒との間の比が約20:80〜約80:20の間である請求項63に記載の徐放性剤形。
【請求項65】
ポリマーと溶媒との間の比が約30:70〜約75:25の間である請求項64に記載の徐放性剤形。
【請求項66】
麻酔薬が約250μm未満の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項67】
麻酔薬が約5μmから約250μmの間の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる請
求項66に記載の徐放性剤形。
【請求項68】
平均粒子サイズが約20μmから約125μmの間である請求項67に記載の徐放性剤形。
【請求項69】
平均粒子サイズが約38μmから約63μmの間である請求項68に記載の徐放性剤形。
【請求項70】
PLGAがエステル末端基を含んでなる請求項46に記載の徐放性剤形。
【請求項71】
PLGAがカルボキシル末端基を含んでなる請求項46に記載の徐放性剤形。
【請求項72】
さらに以下の少なくとも1つ:補形剤、乳化剤、孔形成剤、麻酔薬用の溶解性モジュレーターおよび浸透性剤を含んでなる、請求項40に記載の徐放性剤形。
【請求項73】
徐放性剤形を使用して個体の局所疼痛を処置する方法であって:
低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量の、水に非混和性の溶媒を含んでなる、ゲル賦形剤;および
ゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬
を含んでなる短期徐放性剤形を投与することを含んでなる上記方法。
【請求項74】
徐放性剤形が放出プロファイルを達成するために制御可能な効力比をさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項75】
効力比が約1から200の間である請求項74に記載の方法。
【請求項76】
効力比が約5から100の間である請求項75に記載の方法。
【請求項77】
徐放が約14日以下の期間で起こる請求項73に記載の方法。
【請求項78】
徐放が約7日以下の期間で起こる請求項77に記載の方法。
【請求項79】
徐放が約24時間から約7日の期間続く請求項78に記載の方法。
【請求項80】
剤形を1回投与することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項81】
剤形を局所疼痛に局所的に適用することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項82】
剤形を局所疼痛付近の位置に注射することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項83】
麻酔薬を全身に送達することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項84】
麻酔薬を多くの部位に送達することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項85】
局所疼痛の周囲の多くの部位に剤形を送達注射することをさらに含んでなる請求項84に記載の方法。
【請求項86】
剤形を繰り返し投与することをさらに含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項87】
麻酔薬がブピバカイン、レボ−ブピバカイン、ロピバカイン、レボ−ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−メピバカインおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項88】
麻酔薬がブピバカインを含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項89】
25℃で約7重量%以下の水中混和性を有する請求項73に記載の方法。
【請求項90】
ポリマーが約3,000から10,000の間の分子量を有する請求項73に記載の方法。
【請求項91】
ポリマーが約3,000から8,000の間の重量平均分子量を有する請求項90に記載の方法。
【請求項92】
ポリマーが約4,000から6,000の間の重量平均分子量を有する請求項91に記載の方法。
【請求項93】
ポリマーが約5,000の重量平均分子量を有する請求項92に記載の方法。
【請求項94】
剤形が約0.1%〜約50重量%の麻酔薬を含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項95】
ポリマーがポリラクチド、ポリグリコライド、ポリ(カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖、キチン、キトサン、ヒアルロン酸およびそれらのコポリマー、ターポリマーおよび混合物からなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項96】
徐放性製剤がポリマーと溶媒との間で約5:95〜約90:10の比を含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項97】
麻酔薬が約250μm未満の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる請求項73に記載の方法。
【請求項98】
徐放性剤形を使用して個体の手術後の局所疼痛を処置する方法であって:
低分子量の生体侵食性、生体適合性乳酸基剤ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量の、水に非混和性の溶媒を含んでなる、ゲル賦形剤;ゲル賦形剤に溶解または分散されたブピバカインを含んでなる麻酔薬;および放出プロファイルを達成するための制御可能な効力比を含んでなる短期徐放性剤形を1回投与することを含んでなる上記方法。
【請求項99】
ポリマーが乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)を含んでなる請求項98に記載の方法。
【請求項100】
コポリマーが約50:50の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
徐放性剤形の調製法であって:
低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えてそれらと一緒にゲルを形成してポリマー/溶媒溶液またはゲルを作成するために有効な量の、水に非混和性の溶媒を含んでなる、短期ゲル賦形剤を調製し;
ポリマー/溶媒混合物を透明な均一溶液またはゲルになるまで平衡化し;
麻酔薬をポリマー/溶媒溶液またはゲルに溶解または分散させ;
麻酔薬およびポリマー/溶媒溶液またはゲルをブレンドして徐放性剤形を形成し;そして
放出プロファイルを達成するための効力比を制御する、
ことを含んでなる上記方法。
【請求項102】
効力比が約1から200の間である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
ポリマー/溶媒溶液またはゲルが、室温と約65℃の間の温度で平衡化される請求項101に記載の方法。
【請求項104】
麻酔薬がブピバカインを含んでなる請求項101に記載の方法。
【請求項105】
麻酔薬がブピバカイン、レボ−ブピバカイン、ロピバカイン、レボ−ロピバカイン、テトラカイン、エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−エチドカイン、デキストロ−エチドカイン、レボ−メピバカインおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項101に記載の方法。
【請求項106】
ポリマーが乳酸基剤ポリマーを含んでなる請求項101に記載の方法。
【請求項107】
ポリマーが乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA)を含んでなる請求項106に記載の方法。
【請求項108】
コポリマーが約50:50の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する請求項107に記載の方法。
【請求項109】
ポリマーがポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)を含んでなる請求項107に記載の方法。
【請求項110】
ポリマーがポリ(L−ラクチド−コ−グリコライド)を含んでなる請求項107に記載の方法。
【請求項111】
剤形に剤形の約0.1%〜約50重量%の麻酔薬を装填することを含んでなる請求項101に記載の方法。
【請求項112】
剤形に剤形の約0.5%〜約40重量%の麻酔薬を装填することを含んでなる請求項111に記載の方法。
【請求項113】
剤形に剤形の約1%〜約30重量%の麻酔薬を装填することを含んでなる請求項112に記載の方法。
【請求項114】
ポリマーと溶媒との間に約5:95および約90:10の比を提供することを含んでなる請求項101に記載の方法。
【請求項115】
ポリマーと溶媒との間に約20:80および約80:20の比を提供することを含んでなる請求項114に記載の方法。
【請求項116】
ポリマーと溶媒との間に約30:70および約75:25の比を提供することを含んでなる請求項115に記載の方法。
【請求項117】
溶媒が芳香族アルコール、アリール酸の低級アルキルエステル、アリール酸の低級アラルキルエステル、アリールケトン、アラルキルケトン、低級アルキルケトン、クエン酸の低級アルキルエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項118】
PLGAがエステル末端基を含んでなる請求項107に記載の方法。
【請求項119】
PLGAがカルボキシル末端基を含んでなる請求項107に記載の方法。
【請求項120】
さらに以下の少なくとも1つ:補形剤、乳化剤、孔形成剤、麻酔薬用の溶解性モジュレーターおよび浸透性剤、を加えることを含んでなる、請求項101に記載の方法。
【請求項121】
麻酔薬が約250μm未満の平均粒子サイズを有する粒子を含んでなる請求項101に記載の方法。
【請求項122】
個体の局所疼痛に対する麻酔薬の持続型送達の投与用キットであって:
低分子量の生体侵食性、生体適合性ポリマー、および、ポリマーに可塑性を与えてそれらと一緒にゲルを形成するために有効な量の、水に非混和性の溶媒を含んでなる、短期ゲル賦形剤;
ゲル賦形剤に溶解または分散された麻酔薬;および場合により以下の
補形剤;
乳化剤;
孔形成剤;
麻酔薬用の溶解性モジュレーター、場合により麻酔薬と会合している;および
浸透性剤
の1もしくは複数を含んでなり、少なくとも場合により溶解性モジュレーターと会合している麻酔薬が、個体に麻酔薬を投与する時期まで溶媒から分離されて維持されている、上記キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2007−521225(P2007−521225A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504650(P2005−504650)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/034763
【国際公開番号】WO2005/009408
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/034763
【国際公開番号】WO2005/009408
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】
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