説明

疾患治療組成物

本発明は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤とメトトレキサートとを含む医薬組成物及びキット、並びにそれを用いる治療方法及び医学的使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リウマチ性疾患の治療に関する。本発明は、ヒト化モノクローナル抗体等のCD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤と、薬剤メトトレキサートとを含む非常に有効な医薬組成物に関する。本発明の組成物及びキットは、関節リウマチの治療に特に有効である。本発明は、前記剤とメトトレキサートとを含む医薬組成物又はキットに加えて、前記組成物及びキットを用いる使用及び治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リウマチ性疾患は、結合組織、特に関節及びそれに関連する構造を冒す疾患群であり、炎症、変性、又は代謝異常を特徴とする。リウマチ性疾患の例は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、及び強直性脊椎炎である。
【0003】
関節リウマチ(Rheumatoid arthritis,RA)は、関節及び周囲組織の慢性炎症を引き起こす自己免疫疾患であり、他の組織及び身体器官を冒す場合もある。前記疾患は、通常は、自己組織に対して寛容であるT細胞が、「自己」分子、即ちホストの細胞により生成される分子を認識し反応するときに生じる。抗原提示細胞(APC)により行われる自己抗原の提示による「自己反応性」T細胞の活性化は、前記T細胞のクローン増殖、及び特定組織への遊走を導き、炎症及び組織破壊を誘導する。
【0004】
広範な関節リウマチの治療法が現在利用可能であり、例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に分類される、疼痛及び炎症を制御するための第一選択薬が挙げられる。関節リウマチの二次治療としては、体内のコルチゾンホルモンの合成物であるコルチコステロイド(例えば、プレドニゾン及びデキサメタゾン)、遅効性抗リウマチ薬(SAARD)、又は疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、例えば、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキサート、ペニシリンアミン、シクロホスファミド、金塩、アザチオプリン、レフルノミド等が挙げられる。
【0005】
新たにRAであると診断された患者の多くは、メトトレキサート(MTX)等のDMARDを最初に処方される。MTX(4−アミノ−N10−メチルプテロイルグルタミン酸)は、葉酸の類似体であり、例えば、皮膚、血液、胃腸組織、及び免疫系に関与する組織で見出される細胞等の、活発に増殖している細胞にとって重要な形態の葉酸の生成を妨害することが知られている。MTXがRAの重篤度を低下させる機序は、完全には明らかになっていないが、抗炎症性作用において何らかの役割を果たしていると考えられ、プリン合成の阻害、アデノシン放出の促進、炎症促進性サイトカインの生成阻害、炎症の調節等の前記作用についての薬理学的機序が多数提唱されている(非特許文献1)。MTXは、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)と呼ばれる酵素の活性を阻害することも知られており、また幾つかの他の酵素にも干渉する。
【0006】
RAの治療薬の別の群は、生物学的応答調節剤(BRM)と呼ばれ、例えば、モノクローナル抗体が挙げられる。これらの例は、アダリムマブ、インフリキシマブ、及びエタネルセプト等の腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)に対する拮抗剤であり、前記拮抗剤は、TNF−α受容体に結合するか、又はTNF−αタンパク質自体に直接結合することにより機能する。関節リウマチの治療用として、幾つかのTNF−α阻害剤がFDAにより承認されており、例えば、アダリムマブ(Humira(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、及びエタネルセプト(Enbrel(登録商標))等である。TNF−αは、関節リウマチにおける重要なメディエータの代表的なものであり、RA患者の滑膜内の活性化マクロファージにより主に生成される。炎症促進性サイトカインとして作用するので、TNF−αは、RA患者の滑膜組織に大量に存在する。TNF−αは、血液から炎症組織に白血球を誘引するケモカインの生成及び放出を誘導する(非特許文献2)。滑膜の炎症の媒介に加えて、TNF−αは、関節破壊及び軟骨分解にも関与している。更に、CD4CD25制御性T細胞の抑制活性を阻害することもできる(非特許文献3)。
【0007】
場合によっては、RA患者は、上記薬剤の組み合わせを用いて治療される。具体的には、DMARDは、第一治療として用いられることが多い。しかし、疾患管理が成されていない患者では、例えば、TNF−α拮抗剤等の生物学的薬剤等の最近承認された治療と前記第一治療とを併用することが望ましい場合もある。MTXと幾つかのモノクローナル抗体(エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、及びアナキンラ)との組み合わせは、MTX治療単独と比べて高い治療効果を導くことが報告されている(非特許文献1)。しかし、MTXは、様々な薬理学的作用を及ぼすので、その臨床効果は、複数の標的に起因する可能性がある(非特許文献4)。したがって、MTXが、如何にして単剤として有効である薬剤の治療活性、延いては有効性に影響を及ぼしているのかを予測するのは容易ではない。
【0008】
多数の薬剤が現在利用可能であるにもかかわらず、全ての患者が上記治療に対して良好に応答する訳ではなく、また多数の副作用が存在する。例えば、TNF−α治療は、免疫系をダウンレギュレートするので、治療された患者が感染症及び疾患に罹患しやすくなる。したがって、代替療法を開発することが依然として必要とされている。
【0009】
CD4T細胞が、自己免疫の開始及び維持において主要な役割を果たしていることは、一般的に認められている。したがって、関節リウマチ等の疾患の治療において免疫抑制剤として、CD4T細胞の表面分子に対するmAb、具体的には抗CD4mAbを用いることが提唱されている。
【0010】
更なる研究の一例は、様々な自己免疫疾患で試験されている抗CD4 B−F5抗体(マウスIgG1抗ヒトCD4)である。関節リウマチ患者において、1日量のB−F5を用いたプラセボ対照試験で見られた結果は、有意な改善を示さなかった(非特許文献5)。しかし、特許文献1では、親マウスB−F5に類似のCD4結合性を有するヒト化B−F5(以後hB−F5又はBT061と称する)抗体が開発された。非ステロイド性抗炎症薬ジクロフェナクも併せて投与されている患者におけるマウスB−F5抗体のヒト化物の効果の予備試験では、有効な免疫抑制の徴候が見られ、これは、10日間の治療で用いたとき患者において有効な臨床効果が得られることを示す。
【0011】
前記研究は、非特許文献6にも記載されている。非特許文献6は、150mgのジクロフェナクと同時に、5mgのhB−F5を1日おきに5回静脈内注入することによる、11人の関節リウマチ患者の治療について記載している。
【0012】
特許文献1では、前記抗体が、CD4T細胞の特定のサブセット、即ちCD4CD25制御性T細胞(Treg)を活性化可能であると記載されている。これら細胞は、末梢CD4T細胞の5%〜10%を占め、一旦刺激されると、CD4T細胞及びCD8T細胞の応答を抑制する能力に加えて、B細胞の活性化及びクローン増殖を阻害する能力も有する。したがって、これら細胞は、免疫系の制御において重要な地位を占める。特に、CD4CD25Treg細胞は、末梢における免疫ホメオスタシスの維持、並びに自己免疫及び病原性免疫応答の制御に関与している。
【0013】
CD4CD25制御性T細胞を活性化させる機序を介した関節リウマチの治療は、研究の重要な道筋を示すものであり、関節リウマチに罹患している患者に対する第II相臨床試験におけるhB−F5の使用が、特許文献2〜4で論じられている。
【0014】
しかし、いずれの新規治療法も、現在の治療法と組み合わせて有益な治療効果を得ることに成功し得るかどうかを予測するのは容易ではない。上述のように、これはMTXを用いる場合に特に当てはまる。
【0015】
幾つかの研究が、MTXは、制御性T細胞に対して負の効果を有するので、CD4CD25制御性T細胞の活性化に依存する治療機序を有する剤との併用療法において、MTXが用いられるのを妨げる可能性が高いことを示唆する知見を報告している。非特許文献7及び8は、MTXが利用可能なTリンパ球の数を減少させ得ることを示唆する知見を報告している。Wascherらは、高用量のMTXを12週間静脈内投与したところ、抹消血リンパ球の総数が有意に(P<0.01)減少し、Bリンパ球(P<0.005)及びTリンパ球(P<0.05)に対して好ましい減少効果を有するリンパ球サブセットが著しく再分配されたことを報告している。非特許文献8は、低用量(7.5mg)によるRA患者の治療を反映する濃度において、MTXが、インビトロでTリンパ球のアポトーシスを誘導する効果を有することを報告している。
【0016】
更に、非特許文献9により実施されたインビトロ実験は、制御性T細胞の生存性に対するMTXの影響について報告している。50nM(分析したうち最も高い濃度)のインビトロ濃度では、Treg細胞の抑制活性は、94%から88%に有意に減少した(P<0.05)。これは、MTXの存在が、Treg抑制を阻害する可能性があることを示唆する。
【0017】
更に、非特許文献10は、天然のTreg細胞が、大量の葉酸受容体4(FR4)を恒常的に発現していることを報告している。MTXは、葉酸類似体であるので、MTXもTreg細胞に取り込まれる可能性があることが示唆されている。かかる取り込みが、この細胞集団内の代謝に干渉する可能性がある。
【0018】
更に、多くの抗体の治療活性が、Fc受容体発現細胞上のFc受容体により影響を受けることが知られている。幾つかの抗体では、活性状態になるためには、Fc受容体発現細胞上のFc受容体に結合しなければならない場合さえもある。しかし、MTX療法は、インビボにおいて、単球におけるFcガンマR1の発現を低下させることが知られている(非特許文献11及び12)。単球におけるFc受容体発現を低下させるMTXの作用は、MTXと、治療用抗TNF−α抗体インフリキシマブとを用いて治療された患者でも示されている(非特許文献13)。結果として、MTXは、Fc受容体結合抗体の活性に負の影響を与えると一般的に考えられる。したがって、MTXは、抗体のTreg活性化能に負の影響を与えると予測される。
【0019】
上記を鑑みて、MTXは、hB−F5等の、CD4CD25制御性T細胞の活性化を介して機能する剤の治療能に対して負の影響を有すると予測される。したがって、併用療法アプローチの結果を予測することはできないということが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2004/083247号パンフレット
【特許文献2】国際出願第PCT/EP2009/052809号
【特許文献3】国際出願第PCT/EP2009/052811号
【特許文献4】国際出願第PCT/EP2009/052810号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Swierkot et al.,2006
【非特許文献2】Tracey et al.,2008
【非特許文献3】Andersson et al.,2008
【非特許文献4】Wessels et al.,2008
【非特許文献5】Wendling et al.J Rheumato1;25(8):1457−61,1998
【非特許文献6】Wijdenes et al.,Abstract and poster,EULAR conference,June 2005
【非特許文献7】Wascher et al.,(1994)
【非特許文献8】Herman et al.,(2005)
【非特許文献9】Porter et al.,2006
【非特許文献10】Yamaguchi et al.,2007
【非特許文献11】Wijngaarden et al.,2004
【非特許文献12】Wijngaarden et al.,2005
【非特許文献13】Wijngaarden et al.,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記先行技術を考慮し、本発明の目的は、関節リウマチを治療するための更なる且つ改善された医薬組成物を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
したがって、本発明は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤と、メトトレキサートとを含む医薬組成物を提供する。更に、本発明は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤と、メトトレキサートとを別々に含むキットを提供する。
【0024】
本発明者らは、予想外なことに、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤と、メトトレキサートとの組み合わせが治療効果を有し、驚くべきことに、抗体に関連する副作用の数を減少させることに関して有利であることを見出した。また、前記組み合わせは、驚くべきことに、高水準の治療効果に達する速度に関しても有利である。
【0025】
したがって、本発明は、また、(a)CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を投与する工程と、(b)メトトレキサートを投与する工程とを含み、工程(a)及び工程(b)を同時に、別々に、又は連続的に実施してもよく、且ついずれの順序で実施してもよい、患者のリウマチ性疾患の治療方法を提供する。
【0026】
更に、本発明は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を投与する工程を含む、メトトレキサートを用いた治療を受けている患者のリウマチ性疾患の治療方法を提供する。或いは、本発明は、メトトレキサートを投与する工程を含む、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を用いた治療を受けている患者のリウマチ性疾患の治療方法を提供する。
【0027】
更に、本発明は、(a)CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を投与する工程と、(b)メトトレキサートを投与する工程とを含み、工程(a)及び工程(b)を同時に、別々に、又は連続的に実施してもよく、且ついずれの順序で実施してもよい、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を用いた治療に対して応答しない患者の関節リウマチの治療方法を提供する。
【0028】
更に、本発明は、医療において同時に、別々に、又は連続的に使用するための複合製剤として、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤及びメトトレキサートを提供する。1つの態様では、本発明は、リウマチ性疾患の治療において同時に、別々に、又は連続的に使用するための複合製剤として、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤及びメトトレキサートを提供する。別の態様では、本発明は、メトトレキサートを用いた治療を受けている患者のリウマチ性疾患の治療において使用するための、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を提供する。更に別の態様では、本発明は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を用いた治療を受けている患者のリウマチ性疾患の治療において使用するための、メトトレキサートを含む組成物を提供する。
【0029】
更なる態様では、本発明は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を用いた治療に対して応答しない患者のリウマチ性疾患の治療において同時に、別々に、又は連続的に用いるための複合製剤として、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤及びメトトレキサートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の図面を参照して、ほんの一例として本発明を例証する。
【図1】図1は、実施例1における2人のドナー(対象1及び対象2)から採取したCD4CD25制御性T細胞を用いて実施したインビトロ増殖アッセイの結果である。
【図2A】図2Aは、Keystone et al.,(2004)及びKeystone et al.,(2009)により公開された第III相臨床試験において報告された最も有効な用量群の患者と比べたときの、実施例2に記載される臨床試験の過程において少なくともACR20スコアに達した患者の割合(%)を示すグラフである。
【図2B】図2Bは、Keystone et al.,(2004)及びKeystone et al.,(2009)により公開された第III相臨床試験において報告された最も有効な用量群の患者と比べたときの、実施例2に記載される臨床試験の過程において少なくともACR20スコアに達した患者の割合(%)を示すグラフである。図2Bは、プラセボで補正されている。
【図3A】図3Aは、Keystone et al.,(2004)及びKeystone et al.,(2009)により公開された第III相臨床試験において報告された最も有効な用量群の患者と比べたときの、実施例2に記載される臨床試験の過程において少なくともACR50スコアに達した患者の割合(%)を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、Keystone et al.,(2004)及びKeystone et al.,(2009)により公開された第III相臨床試験において報告された最も有効な用量群の患者と比べたときの、実施例2に記載される臨床試験の過程において少なくともACR50スコアに達した患者の割合(%)を示すグラフである。図3Bは、プラセボで補正されている。
【図4A】図4Aは、Keystone et al.,(2004)及びKeystone et al.,(2009)により公開された第III相臨床試験において報告された最も有効な用量群の患者と比べたときの、実施例2に記載される臨床試験の過程において少なくともACR70スコアに達した患者の割合(%)を示すグラフである。
【図4B】図4Bは、Keystone et al.,(2004)及びKeystone et al.,(2009)により公開された第III相臨床試験において報告された最も有効な用量群の患者と比べたときの、実施例2に記載される臨床試験の過程において少なくともACR70スコアに達した患者の割合(%)を示すグラフである。図4Bは、プラセボで補正されている。
【図5】図5は、ヒト化B−F5のV領域をコードするプラスミドの断片のヌクレオチド配列(配列番号3)である。V領域をコードする配列には下線を引き、対応するポリペプチド配列(配列番号15)をヌクレオチド配列の下に示す。
【図6】図6は、ヒト化B−F5のV領域をコードするプラスミドの断片のヌクレオチド配列(配列番号4)である。V領域をコードする配列には下線を引き、対応するポリペプチド配列(配列番号2)をヌクレオチド配列の下に示す。
【図7】図7は、B−F5のヒト化型(即ち、BT061)の設計に用いる、マウスB−F5V(配列番号6)、FK−001(配列番号7、8、9、及び10)、L4L(配列番号16)、及びL4M(配列番号2)のポリペプチド配列のアラインメントである。
【図8】図8は、B−F5のヒト化型の設計に用いる、マウスB−F5V(配列番号5)、M26(配列番号11、12、13、及び14)、H37L(配列番号1)、及びH37V(配列番号15)のポリペプチド配列のアラインメントである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上記のように、本発明は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤と、メトトレキサートとを含む医薬組成物を提供する。更に、本発明は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤と、メトトレキサートとを別々に含むキットを提供する。
【0032】
CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤と、メトトレキサートとは、単一剤形中に存在してもよく、別個の剤形中に存在してもよい。前記剤形は、前記剤及びメトトレキサートの少なくともいずれかからなってもよい。或いは、前記剤形は、前記剤及びメトトレキサートの少なくともいずれかを含んでもよく、更に担体又は賦形剤等の薬剤的に許容可能な成分を更に含んでもよい。
【0033】
本発明の1つの態様では、前記剤及びメトトレキサートの少なくともいずれかは、非経口投与、好ましくは、筋肉内投与、静脈内投与、又は皮下投与に適応している。前記剤及びメトトレキサートの少なくともいずれかは、皮下投与に適していることが最も好ましい。
【0034】
本発明のこの態様の1つの実施形態では、前記剤及びメトトレキサートの少なくともいずれかは、静脈内投与に適応し、0.5mL〜500mLの投与体積で提供されるか、又は0.5mL〜500mLの投与体積に希釈するための形態で提供される。別の実施形態では、前記組成物は、皮下投与又は筋肉内投与に適しており、0.1mL〜3mLの投与体積で提供される。或いは、前記剤及びメトトレキサートの少なくともいずれかは、0.5mL〜1.5mL、又は15mL〜25mLの投与体積を提供するのに適している。
【0035】
別の態様では、メトトレキサートは、経口投与に適応しており、錠剤形態であってもよい。
【0036】
本発明の更なる態様では、前記組成物又はキットは、単回用量として使用するのに適していてもよく、又は複数回用量の一部として使用するのに適していてもよく、具体的には、複数回用量の場合、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、6週間に1回、又は8週間に1回、前記用量の一部が投与される。
【0037】
この態様の1つの実施形態では、本発明のキットは、前記剤及びメトトレキサートの用量を別々に複数個含む。更なる実施形態では、別々に包装されている医薬組成物の用量を複数個含む用量パックが提供される。
【0038】
1つの特定の実施形態では、任意的にメトトレキサートを含んでいてもよい前記剤は、皮下投与に適しており、非医療従事者でも容易に投与できるように、希釈する必要のない、直ぐに投与できる形態で提供される。
【0039】
本発明で使用するのに好適な剤は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤である。前記剤は、ポリペプチド、タンパク質、又は抗体であり得る。前記剤が抗体である場合、前記剤は、モノクローナル抗体であり得る。前記剤は、モノクローナル抗CD4抗体であることが好ましい。また、前記抗体は、IgG1抗体であることが好ましい場合もあり、非修飾抗原であってもよい。
【0040】
本発明で使用するのに最も好適な抗体は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能なヒト化抗CD4抗体、前記抗体の断片、又は前記抗体の誘導体である。CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な抗体の例は、Becker et al.,(European Journal of Immunology(2007),Vol.37:pages1217−1223)で論じられており、また国際公開第2004/083247号パンフレットに記載されている。
【0041】
一般的に、本発明で使用される抗体は、CD4に結合可能な1以上の可変ドメインを含む。前記抗体は、ヒト定常領域(Fc)を含んでいてもよい。この定常領域は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプに由来する定常ドメインから選択することができる。好ましい定常領域は、IgG、特にIgG1の定常ドメインから選択される。
【0042】
また、本発明は、抗体の任意の断片を含む。前記断片は、前記抗体の抗原結合領域又はV領域を含むことが好ましく、特にFab断片、Fab’断片、F(ab)’断片、Fv断片、及びscFv断片である。
【0043】
本発明の特に好ましい態様では、前記抗体は、マウスモノクローナル抗CD4抗体B−F5に由来するヒト化抗CD4抗体、前記抗体の断片、又は前記抗体の誘導体である。前記抗体は、マウスモノクローナル抗体B−F5の相補性決定領域(CDR)を含む配列を含むヒト化抗CD4抗体であってもよく、前記抗体は、抗体の特異性及び抗体の親和性の少なくともいずれかに実質的に影響を与えない変異を配列中に任意的に含んでいてもよい。
【0044】
抗体の例は、国際公開第2004/083247号パンフレットに提供されており、前記文献には、マウスB−F5抗体の数種のヒト化物の作製について開示されている。具体的には、国際公開第2004/083247号パンフレットは、以下のポリペプチド配列により定義されるVドメインを有するヒト化抗体BT061(hB−F5)の作製について開示している:
−H鎖Vドメイン:EEQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFSFSDCRMYWLRQAPGKGLEWIGVISVKSENYGANYAESVRGRFTISRDDSKNTVYLQMNSLKTEDTAVYYCSAS YYRYDVGAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号1)、
−L鎖Vドメイン:DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCRASKSVSTSGYSYIYWYQQKPGQPPKLLIYLASILESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQHSRELPWTFG QGTKVEIK(配列番号2)。
【0045】
前記抗体の誘導体も本発明で使用するのに適している。前記誘導体としては、配列番号1又は配列番号2と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列により定義されるVドメインを有する誘導体が挙げられる。
【0046】
特に好ましい抗体は、マウスB−F5mAbの相補性決定領域(CDR)を含み、且つCD4CD25制御性T細胞を活性化させるhB−F5の能力を保持している抗体である。Vドメイン及びVドメイン内のCDRの位置を図7及び8に示す。かかる抗体は、結合特異性及び結合親和性の少なくともいずれかに実質的に影響を与えない変異をCDR配列中に任意的に有していてもよい。
【0047】
一般的に、本発明で用いられる抗体は、ヒト定常領域(Fc)を更に含む。この定常領域は、上記定常ドメインから選択することができる。
【0048】
また、本発明は、V領域を含むhB−F5抗体又はその誘導体の任意の断片を含む。これは、特に、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’断片、Fv断片、及びscFv断片を含む。
【0049】
hB−F5抗体を調製するために、BT061抗体のH鎖又はL鎖のVドメインをコードするポリヌクレオチドを、ヒトH鎖又はL鎖の定常領域をコードするポリヌクレオチドと融合させてもよい。この方法で得られる完全なH鎖及びL鎖を発現させるために、タンパク質を分泌させるシグナルペプチドをコードする配列を付加してもよい。
【0050】
上記ポリヌクレオチドは、発現ベクター内で、選択されたホスト細胞における転写及び翻訳を制御できる適切な制御配列に連結されている。これら組換えDNAコンストラクトは、周知の組換えDNA技術及び遺伝子工学技術により得ることができ、且つホスト細胞に導入することができる。
【0051】
有用なホスト細胞は、原核細胞又は真核細胞であり得る。好適な真核細胞の中でも、一例として、植物細胞、サッカロミセス属等の酵母細胞、ショウジョウバエ属やスポドプテラ属等の昆虫細胞、及びHeLa、CHO、3T3、C127、BHK、COS等の哺乳類細胞が挙げられる。
【0052】
本発明で用いられるBT061(hB−F5)抗体は、前記抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含むホスト細胞を、前記抗体の発現に好適な条件下で培養し、前記ホスト細胞培養物から前記抗体を回収することにより得ることができる。
【0053】
本発明の更なる態様は、前記剤及びメトトレキサートを含むキット又は医薬組成物を調製することを含む方法である。
【0054】
上記のように、本発明は、リウマチ性疾患に罹患している又は罹患しやすい患者を治療するための医学的使用及び方法を更に提供する。具体的には、1つの態様では、(a)CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を投与する工程と、(b)メトトレキサートを投与する工程とを含み、工程(a)及び工程(b)を同時に、別々に、又は連続的に実施してもよく、且ついずれの順序で実施してもよい、患者のリウマチ性疾患の治療方法を提供する。この態様の1つの実施形態では、工程(a)及び工程(b)は、同日に実施される。この態様の別の実施形態では、工程(a)及び工程(b)は、1週間以内に実施される。
【0055】
別の態様では、本発明は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を投与する工程を含む、メトトレキサートを用いた治療を受けている患者のリウマチ性疾患の治療方法と、メトトレキサートを投与する工程を含む、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を用いた治療を受けている患者のリウマチ性疾患の治療方法とを提供する。
【0056】
リウマチ性疾患は、結合組織、特に関節及び関連構造を冒す疾患として定義され、特に、炎症、変性、又は代謝障害を特徴とする。本発明の好ましい態様では、リウマチ性疾患は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、又は強直性脊椎炎である。
【0057】
関節リウマチの治療が好ましい。関節リウマチの場合、ACRスコア付けを用いて治療の臨床的有効性を評価することができる。
【0058】
ACRスコア付けは、米国リウマチ学会(ACR)により設定された、治療を受けた患者が示す関節リウマチの症候を評価する方法であり、パラメータのコアセット(Felson et al.,Arthritis&Rheumatism,1995,38(6),727−735)を測定することにより行われる。このシステムでは、圧痛関節数及び腫脹関節数が少なくとも20%改善され、且つACRコアセットの残り5項目、即ち、患者及び医師による全般評価、疼痛、運動機能障害、及びC反応性タンパク質(CPR)又は赤血球沈降速度(ESR)等の急性期反応物質のうちの3項目が少なくとも20%改善されることをACR20の値と定義する。同様に、ACR50及びACR70スコアは、それぞれ、少なくとも50%及び少なくとも70%の改善と定義される。
【0059】
本発明の更なる態様では、前記治療は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を用いた治療に応答しない患者に行われてもよい。応答しない患者とは、DMARDを用いた治療に対して不十分な応答を示す患者である。特に、患者が、長期間臨床的に活性状態にある関節リウマチに罹患している場合、例えば、薬剤を投与しても患者においてACR20が達成されない場合、薬剤を投与しても関節の構造的損傷の進行を阻害できない場合、又は薬剤に対する初期応答が治療中経時的に失われる場合、患者は不十分な応答を示す。
【0060】
DMARDの例は、例えば、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキサート、ペニシリンアミン、シクロホスファミド、金塩、アザチオプリン、レフルノミド等である。
【0061】
上記のように、前記剤及びメトトレキサートは、任意の好適な方法で患者に投与することができる。具体的には、前記剤及びメトトレキサートは、例えば、静脈内注入、筋肉内注入、又は皮下注入により、非経口的に投与してもよい。前記剤の投与については、静脈内投与又は皮下投与が特に好ましい。更に、メトトレキサートは、経口投与してもよい。
【0062】
前記剤及びメトトレキサートの少なくともいずれかの投与体積は、投与方法によって変化する。用量が静脈内注入により投与される場合、投与体積は、0.1mL又は0.5mLから最高500mLであり得、好ましくは15mL〜25mLであり、典型的には約20mLである。用量が皮下注入又は筋肉内注入により投与される場合、投与体積は、0.1mL〜3mLであり得、好ましくは0.5mL〜1.5mL、典型的には約1mLである。
【0063】
投与頻度は、治療の有効性に干渉しない限り、特に限定されない。前記治療は、単回用量又は複数回用量を含み得る。複数回用量は、少なくとも以下の基準に基づいて投与されることが好ましい:1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、6週間に1回、12週間に1回、24週間に1回、1暦月に1回、6暦月に1回、又は1年に1回。したがって、前記用量は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも1年間間隔で投与される(即ち、前記用量は、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、6ヶ月に1回、又は1年に1回服用される)。前記用量は、少なくとも2週間〜3週間に1回投与されることが特に好ましい。
【0064】
治療の長さは、特に限定されないが、治療が無期限に続けられるか、又は患者にとって管理可能な水準に症状が軽減されるまで治療が続けられることが、自己免疫疾患の治療において典型的である。一般的に、治療は、少なくとも1ヶ月間対象に対して行われる。
【0065】
前記剤及びメトトレキサートは、治療有効量、即ち、リウマチ性疾患の寛解、予防、又は治療に有効な量で投与される。
【0066】
具体的には、疾患が関節リウマチである場合、前記剤及びメトトレキサートは、好ましくはACR50応答、より好ましくはACR70応答をもたらすのに有効な量で投与される。
【0067】
本発明の1つの態様では、前記剤は、0.2mg〜10mg、より好ましくは0.2〜6.25mg、最も好ましくは0.2mg〜3mgの用量で対象に投与される。これら用量は、用量を静脈内投与する場合に特に好ましい。
【0068】
前記剤がヒト化抗体BT061である場合、本発明者らは、驚くべきことに、以下の表1に示されるように、静脈内注入の終了3時間後、健常ボランティアの血漿中を循環している抗体の有効Cmax値が、予測よりも遥かに低いことを見出した。これは、標的の介在するクリアランスが予測よりも速いことを反映していると考えられる。
【0069】
【表1】

【0070】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、0.2mg〜10mgの剤を静脈内投与すると、投与3時間後の患者の血漿中の剤の最高濃度は、2.5μg/mL未満になる。0.2mg〜5mgの剤を静脈内投与すると、投与3時間後の患者の血漿中の剤の最高濃度は、0.3μg/mL未満になることが好ましい。0.5mg〜3mgの剤を静脈内投与すると、投与3時間後の患者の血漿中の剤の最高濃度は、0.1μg/mL未満になることが更により好ましい。これら値は、剤の任意の回数の投与後と、剤の1回目の投与後及び/又は2回目の投与後との少なくともいずれかに得られる。
【0071】
また、用量は、対象の体表面積(BSA)に基づいて算出することもできる。体表面積(BSA)は、任意の既知の方法に従って算出することができる。BSA算出法の例は、Mostellerの式:(BSA(m)=([身長(cm)×体重(kg)]/3600)1/2(Mosteller RD.,N Engl J Med 1987 Oct 22;317(17):1098);DuBois及びDuBoisの式:BSA(m)=0.20247×身長(m)0.725×体重(kg)0.425(DuBois D;DuBois EF.,Arch Int Med 1916 17:863−71);Haycockの式:BSA(m)=0.024265×身長(cm)0.3964×体重(kg)0.5378(Haycock G.B.,et al.,The Journal of Pediatrics 1978 93:1:62−66);Gehan及びGeorgeの式:BSA(m)=0.0235×身長(cm)0.42246×体重(kg)0.51456(Gehan EA,and George SL,Cancer Chemother Rep 1970 54:225−35);及びBoydの式BSA(m)=0.0003207×身長(cm)0.3×体重(グラム)(0.7285−(0.0188×LOG(グラム))である。
【0072】
したがって、前記剤は、0.1mg/m(患者の体表面積)〜5mg/m、好ましくは0.1mg/m〜2.5mg/m、最も好ましくは0.25mg/m〜1.5mg/mの用量で対象に投与することができる。或いは、本発明の更なる態様において、前記剤が、2μg/kg〜150μg/kg、好ましくは2μg/kg〜75μg/kg、最も好ましくは5μg/kg〜45μg/kgの用量で対象に投与されるように、対象の体重に基づいて用量を算出してもよい。上記のように、これら投与量は、前記剤が静脈内投与される場合に特に好ましい。
【0073】
上記のように、本発明の1つの態様では、前記剤及びメトトレキサートの少なくともいずれかは、皮下投与される。一般的に、当該技術分野において既知であるように、皮下投与量は、同等の治療効果を得るためには、静脈内投与量よりも多くなければならない。本発明者らは、抗体BT061を用いた関節リウマチ患者の単剤療法試験において、2mgを静脈内投与した後に得られる治療効果が、50mgを皮下投与した後に得られる治療効果と略同等であることを示した。これらの結果を以下の表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
したがって、本発明の更に好ましい態様では、前記剤は、20mg〜80mg、より好ましくは30mg〜70mgの用量で、患者に皮下投与又は筋肉内投与される。或いは、前記剤は、8mg/m〜50mg/m、又は0.2mg/kg〜1.5mg/kgの投与量で投与することができる。本発明のこの態様では、投与は、最高約2週間に1回であることが特に好ましい。この段落に記載される本発明の態様は、本出願に記載される本発明の他の態様及び好ましい特徴と組み合わせてもよいことに留意する。
【0076】
本発明によれば、前記医薬組成物又はキットは、メトトレキサート(MTX)を更に含む。RAのMTX治療は、当該技術分野において周知であり、本発明において、MTXは、既に記載された投与量で投与されることが予想される。具体的には、本発明では、MTXは、通常5mg〜30mg、好ましくは7.5mg〜30mg、最も好ましくは10mg〜25mgの用量で投与される。場合によっては、前記用量は、MTXを用いた患者の前処理又はこの薬剤に対する寛容性に依存する。
【0077】
別の態様では、本発明の方法は、リウマチ性疾患の治療に好適な更なる治療剤を投与する工程を更に含む。更なる治療剤は、以下の剤のうちの1以上を含む:非ステロイド性抗炎症薬、抗炎症性ステロイド、金化合物、抗マラリア薬、葉酸、シクロスポリン、レフルノミド、アザチオプリン、スルファサラジン、d−ペニシリンアミン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸塩、ミノサイクリン、及びクロラムブシル。これら更なる治療剤は、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤及びMTXと別々に、同時に、又は連続的に投与してもよい。
【0078】
上述のように、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の医薬組成物及びキットが、リウマチ性疾患を治療可能であることを示した。具体的には、以下の実施例2に示すように、関節リウマチの治療により前記疾患は著しく改善される。したがって、前記疾患が関節リウマチである本発明の更なる態様では、前記治療は、米国リウマチ学会のスコア付けシステムに従って、少なくともACR20、好ましくは少なくともACR50、より好ましくは少なくともACR70、患者の疾患を改善する。換言すれば、患者の米国リウマチ学会(ACR)スコアに従って、疾患パラメータを少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%改善する。
【0079】
最も好ましくは、前記治療は、治療の開始後6週間から8週間の間に、患者に少なくともACR70応答をもたらす。
【0080】
実施例2及び関連図面からも分かるように、本発明の治療は、多数の患者において関節リウマチを改善する能力を有する。したがって、本発明の治療方法は、患者の少なくとも20%に対して、少なくともACR20の疾患状態改善をもたらすことにより、関節リウマチを治療可能である。更に、本発明の治療方法は、患者の少なくとも10%に対して、少なくともACR50、より好ましくはACR70の疾患状態改善をもたらすことにより、関節リウマチを治療可能である。
【実施例】
【0081】
次に以下の実施例を用いて本発明を更に説明する。
【0082】
(実施例1:新たに単離されたCD4CD25制御性T細胞を用いる抗体BT061のインビトロ増殖アッセイ)
<方法>
<<ヒトCD4CD25制御性T細胞の単離>>
健常対照ドナーから50mLのEDTA血液試料を採取した。既に記載されている通り、末梢血サンプルから末梢血単核細胞(PBMC)、制御性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞、及びキラーT細胞(Tresp)を単離した(Haas et al.,2007)。
【0083】
<<インビトロ増殖アッセイ>>
新たに単離したTregを、1μg/mLのプレートに結合している抗体(BT061)、1μg/mLの可溶性BT061、又は培地と共に48時間プレインキュベートした。
【0084】
2人のドナー(対象1及び対象2)から得られた新たに単離したTreg(2.5×10個、ドナーA)を、1μg/mLの可溶性BT061又はプレートに結合しているBT061のいずれかと共に48時間プレインキュベートした。次いで、アロ刺激を行うために、T細胞が枯渇し且つ放射線照射された(30グレイ)2×10個のPBMC(ドナーA)の存在下で、第2のドナー(ドナーB)に由来するキラー細胞(Tresp)としての1×10個のT細胞に、2.5×10個のプレインキュベートしたTregを移した。4日間刺激した後、1ウェル当たり1μCiの[H]チミジンを添加し、更に16時間後、増殖を測定した。
【0085】
<結果>
Tresp増殖のTreg媒介性阻害の割合を、Tregの欠如下でPBMCと共にインキュベートされたTrespの増殖を抑制する割合として図1に示す。2人のドナー(対象1及び対象2)から得られたTregについての結果を示す。斜線入り棒グラフは、可溶性抗体と共にプレインキュベートされたTreg細胞から得られた結果を表し、黒色棒グラフは、プレートに結合している抗体と共にプレインキュベートされたTreg細胞から得られた結果を表す。対照として、培地で処理したTreg(白色の棒グラフ)の抑制活性を示す。棒グラフ上の数字は、Tresp増殖の阻害割合を表す。
【0086】
図1が示すように、プレートに結合している抗体又は可溶性抗体と共にプレインキュベートしたTregは、培地のみと共にインキュベートしたTregとは対照的に、アロ刺激されたTrespの平均的な増殖応答を低下させることができた。更に、プレートに結合している抗体による抑制は、可溶性抗体による抑制に比べて強かった。
【0087】
インビボにおける生理学的条件下で、IgG1抗体としてのBT061は、Fc受容体発現細胞のFc受容体に結合すると予測される。この相互作用により、均一に分布しているBT061(CD4に結合している)は、標的細胞及びFc受容体発現細胞の局所相互作用部位に動員されるので、BT061、延いてはCD4の架橋が導かれる。BT061とFc受容体発現細胞との相互作用は、プレートに結合している抗体で観察したときTreg標的細胞に、細胞表面上の極めて接近している位置に幾つかの標的分子(CD4)を補充する両方の機序と類似のシグナルを付与する。
【0088】
(実施例2:関節リウマチ患者における臨床試験)
本発明の医薬組成物及びキットがRAを有効に治療する能力を、RAに罹患している患者において示した。
【0089】
MTXと併用したBT061について研究した複合試験は、中程度〜重篤なRA患者で実施された無作為プラセボ対照二重盲験第II相試験を含んでいた。試験の開始前に少なくとも3ヶ月間、全ての患者に一定用量のMTXを投与し、試験過程中1週間当たり15mg〜20mgを全ての患者に経口投与又は筋肉内投与し続けた。
【0090】
患者を3群に分けた。群Iの患者(14人の患者)には、0.5mgのBT061及び15mg〜20mgのMTXを静脈内投与した。群IIの患者(42人の患者)には、2.0mgのBT061及び15mg〜20mgのMTXを静脈内投与した。群IIIの患者(14人の患者)には、15mg〜20mgのMTXを投与した。患者に対する投与は、8週間に亘って1週間に1回実施した。
【0091】
静脈内投与では、医学的に認められている手順に従って前記剤を前腕静脈に注入する。
【0092】
ACRパラメータ(米国リウマチ学会ACRのホームページ)を評価することにより、特に圧痛関節数及び腫脹関節数と、以下のC反応性タンパク質(CPR)及び赤血球沈降速度(ESR)レベルとを調べることにより、投与期間中1週間に1回、及び投与後何週間にも亘って治療の有効性を評価した。また、これらパラメータは、0日目の「ベースライン」値を得るために試験前にも評価した。
【0093】
Keystoneら(2004−トライアルDE019)による抗TNF−α抗体Humira(アダリムマブ)及びKeystoneら(2009−前向き試験(Go−Forward trial))によるSimponi(ゴリムマブ)を含む2つの公開されている第III相試験で得られた最も有効な用量群の結果と、2mgのBT061+MTXを投与した用量群IIの患者から得られたデータとを比較した試験結果を図2〜4に示す。全ての試験について最も有効な用量群を示す。
比較目的のために含まれる先行技術の結果は、医薬組成物の用量が最適化された第III相試験の結果であることに留意すべきである。
【0094】
具体的には、図2A及びBは、ACR20スコアに達した2mg用量群患者の割合を示し、一方、図3A及びB並びに図4A及びBは、それぞれACR50並びにACR70に達した2mg用量群患者の割合を示す。
【0095】
図2〜4から分かるように、治療用抗TNF−α抗体を用いた臨床試験では、ACRスコアの改善により測定したとき、最高治療活性に達するには通常数ヶ月必要である。一般的に、3ヶ月後にACR20応答を示す患者の割合は最高になり、平坦域に達する。ACR50では、4ヶ月後に平坦域に達し、ACR70では、6ヶ月後に平坦域に達する。
【0096】
しかし、本発明の複合療法の結果は、多数の相違点を示す。具体的には、プラセボ補正された結果を示す図(図2B、3B、及び図4B)では、治療効果の発生が遅れ、ACR20スコアに達する患者の割合が8週目まで5%を超えないことが分かる。しかし、発生後治療効果は急速に上昇し、その結果、9週目にACR50に達している患者の割合は、TNF−α抗体、Humira、及びSimponiを用いた第III相試験でACR50に達した患者の割合に匹敵する。ACR20、ACR50、及びACR70に達した患者の割合は、7週目から9週目にかけて急速に上昇し、その結果、9週目までにACR20、ACR50、及びACR70に達した患者の割合は、それぞれ25%、18%、及び17%になった。Humira及びSimponiを用いた試験では、治療開始後24週目〜26週目まで、このACR70患者の割合には達しないことに留意すべきである。
【0097】
更に、本発明者らは、BT061とMTXとの併用療法で見られる副作用数が、BT061のみを用いて実施された試験で見られる副作用数よりも少ないため、MTXは、CD4CD25制御性T細胞を活性化させる治療抗体の副作用を低減する能力を有することを認めた。
【0098】
これら結果は、リウマチ性疾患の治療における本発明のCD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤とMTXとの組み合わせの有効性及び驚くべき利点を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤と、メトトレキサートとを含む医薬組成物。
【請求項2】
CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤と、メトトレキサートとを別々に含むキット。
【請求項3】
剤が、非経口投与に適した請求項1及び2のいずれかに記載の医薬組成物又はキット。
【請求項4】
剤が、筋肉内投与、静脈内投与、又は皮下投与に適した請求項3に記載の医薬組成物又はキット。
【請求項5】
メトトレキサートが、経口投与、筋肉内投与、静脈内投与、又は皮下投与に適した請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物又はキット。
【請求項6】
CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤が、抗体、前記抗体の断片、又は前記抗体の誘導体である請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物又はキット。
【請求項7】
抗体が、ヒト化モノクローナル抗体である請求項6に記載の医薬組成物又はキット。
【請求項8】
剤が、抗CD4抗体、前記抗体の断片、又は前記抗体の誘導体である請求項6及び7のいずれかに記載の医薬組成物又はキット。
【請求項9】
剤が、マウスモノクローナル抗体B−F5の相補性決定領域(CDR)を含む配列を含むヒト化抗CD4抗体であって、前記抗体の抗体特異性及び抗体親和性の少なくともいずれかに実質的に影響を与えない変異を配列中に任意に有してもよい請求項8に記載の医薬組成物又はキット。
【請求項10】
剤が、以下のポリペプチド配列により定義されるVドメイン、又は配列番号1及び配列番号2の配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むVドメインを有するヒト化抗CD4抗体である請求項8に記載の医薬組成物又はキット:
−H鎖Vドメイン:
EEQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFSFSDCRMYWLRQAPGKGLEWIGVISVKSENYGANYAESVRGRFTISRDDSKNTVYLQMNSLKTEDTAVYYCSASYYRYDVGAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号1)
−L鎖Vドメイン:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCRASKSVSTSGYSYIYWYQQKPGQPPKLLIYLASILESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQHSRELPWTFGQGTKVEIK(配列番号2)。
【請求項11】
CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤が、0.2mg〜10mgの用量で対象に投与される請求項1から10のいずれかに記載の医薬組成物又はキット。
【請求項12】
CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤が、0.2mg〜5mgの用量で対象に投与される請求項11に記載の医薬組成物又はキット。
【請求項13】
CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤が、0.5mg〜3mgの用量で対象に投与される請求項12に記載の医薬組成物又はキット。
【請求項14】
医薬組成物又は剤が、静脈内投与用であり、且つ0.5mL〜500mLの投与体積で提供されるか、又は0.5mL〜500mLの投与体積に希釈するための形態で提供される請求項1から13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬組成物又は剤が、0.5mL〜1.5mLの投与体積を提供するか、又は前記投与体積で提供されるのに適した請求項1から13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬組成物又は剤が、15mL〜25mLの投与体積を提供するか、又は前記投与体積で提供されるのに適した請求項1〜13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬組成物が、皮下投与又は筋肉内投与に適し、且つ0.1mL〜3mLの投与体積で提供される請求項1から13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
医薬組成物又は剤が、単回用量として使用するのに適した請求項1から17のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
医薬組成物又は剤が、複数回用量の一部として使用するのに適した請求項1から17のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
複数回用量のうちの各用量が1週間に1回投与される請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項21】
(a)CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を投与する工程と、(b)メトトレキサートを投与する工程とを含み、前記工程(a)及び工程(b)を、同時に、別々に、又は連続的に実施してもよく、且ついずれの順序で実施してもよい、患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項22】
CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を投与する工程を含む、メトトレキサートを用いた治療を受けている患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項23】
メトトレキサートを投与する工程を含む、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を用いた治療を受けている患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項24】
リウマチ性疾患が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、及び強直性脊椎炎から選択される請求項21から23のいずれかに記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項25】
リウマチ性疾患が、関節リウマチである請求項24に記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項26】
(a)CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を投与する工程と、(b)メトトレキサートを投与する工程とを含み、前記工程(a)及び工程(b)を、同時に、別々に、又は連続的に実施してもよく、且ついずれの順序で実施してもよい、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を用いた治療に対して応答しない患者の関節リウマチの治療方法。
【請求項27】
DMARDが、メトトレキサートである請求項26に記載の患者の関節リウマチの治療方法。
【請求項28】
剤が、非経口投与される請求項21〜27のいずれかに記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項29】
剤が、筋肉内投与、静脈内投与、又は皮下投与される請求項28に記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項30】
メトトレキサートが、経口投与、筋肉内投与、静脈内投与、又は皮下投与される請求項21から29のいずれかに記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項31】
剤が、0.2mg〜10mgの量で患者に投与される請求項21から30のいずれかに記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項32】
剤が、0.2mg〜5mgの量で患者に投与される請求項31に記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項33】
剤が、0.5mg〜3mgの量で患者に投与される請求項32に記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項34】
剤が、静脈内投与され、且つ投与終了から3時間後の患者の血漿中における前記剤の最高濃度が2.5μg/mL未満である請求項31に記載の治療方法。
【請求項35】
剤が、静脈内投与され、且つ投与終了の3時間後の患者の血漿中における前記剤の最高濃度が0.3μg/mL未満である請求項32に記載の治療方法。
【請求項36】
剤が、静脈内投与され、且つ投与終了の3時間後の患者の血漿中における前記剤の最高濃度が0.1μg/mL未満である請求項33に記載の治療方法。
【請求項37】
剤が、1週間に1回静脈内投与され、且つ2回目の投与終了の3時間後の患者の血漿中における前記剤の最高濃度が2.5μg/mL未満である請求項31に記載の治療方法。
【請求項38】
剤が、1週間に1回静脈内投与され、且つ2回目の投与終了の3時間後の患者の血漿中における前記剤の最高濃度が0.3μg/mL未満である請求項32に記載の治療方法。
【請求項39】
剤が、1週間に1回静脈内投与され、且つ2回目の投与終了の3時間後の患者の血漿中における前記剤の最高濃度が0.1μg/mL未満である請求項33に記載の治療方法。
【請求項40】
剤が、1週間に1回静脈内投与され、且つ任意の回数の投与終了の3時間後の患者の血漿中における前記剤の最高濃度が2.5μg/mL未満である請求項31に記載の治療方法。
【請求項41】
剤が、1週間に1回静脈内投与され、且つ任意の回数の投与終了の3時間後の患者の血漿中における前記剤の最高濃度が0.3μg/mL未満である請求項32に記載の治療方法。
【請求項42】
剤が、1週間に1回静脈内投与され、且つ任意の回数の投与終了の3時間後の患者の血漿中における前記剤の最高濃度が0.1μg/mL未満である請求項33に記載の治療方法。
【請求項43】
剤が、2μg/kg〜150μg/kgの量で患者に投与される請求項21〜30のいずれかに記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項44】
剤が、2μg/kg〜75μg/kgの量で患者に投与される請求項43に記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項45】
剤が、5μg/kg〜45μg/kgの量で患者に投与される請求項44に記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項46】
剤が、0.1mg/m(患者の体表面積)〜5mg/m(患者の体表面積)の量で患者に投与される請求項21〜30のいずれかに記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項47】
剤が、0.1mg/m(患者の体表面積)〜2.5mg/m(患者の体表面積)の量で患者に投与される請求項46に記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項48】
剤が、0.25mg/m(患者の体表面積)〜1.5mg/m(患者の体表面積)の量で患者に投与される請求項47に記載の患者のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項49】
単回用量の剤が患者に投与される請求項21〜48のいずれかに記載のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項50】
複数回用量の剤が患者に投与される請求項21〜48のいずれかに記載のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項51】
剤及びメトトレキサートの少なくともいずれかが、最高1週間に1回投与される請求項50に記載のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項52】
剤及びメトトレキサートの少なくともいずれかが、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回投与される請求項51に記載のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項53】
非ステロイド性抗炎症薬、抗炎症性ステロイド、金化合物、抗マラリア薬、葉酸、シクロスポリン、レフルノミド、アザチオプリン、スルファサラジン、d−ペニシリンアミン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸塩、ミノサイクリン、及びクロラムブシルから選択される、疾患の治療に好適な更なる治療剤を投与する工程を更に含む請求項21から52のいずれかに記載のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項54】
リウマチ性疾患が関節リウマチであり、且つ治療が米国リウマチ学会(ACR)スコア付けシステムに従って、患者の疾患を少なくともACR50改善する請求項21から53のいずれかに記載のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項55】
治療が米国リウマチ学会(ACR)スコア付けシステムに従って、患者の疾患を少なくともACR70改善する請求項54に記載のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項56】
治療が、治療開始後6週目から8週目の間に少なくともACR70応答を患者にもたらす請求項55に記載のリウマチ性疾患の治療方法。
【請求項57】
医療において同時に、別々に、又は連続的に使用するための複合製剤としてのCD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤及びメトトレキサート。
【請求項58】
リウマチ性疾患の治療における、請求項57に記載の同時に、別々に、又は連続的に使用するための複合製剤としてのCD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤及びメトトレキサート。
【請求項59】
患者のリウマチ性疾患の治療における、同時に、別々に、又は連続的に使用するための複合製剤を製造するためのCD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤及びメトトレキサートの使用。
【請求項60】
メトトレキサートを用いた治療を受けている患者のリウマチ性疾患の治療において使用するための、CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤。
【請求項61】
CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤を用いた治療を受けている患者のリウマチ性疾患の治療において使用するための、メトトレキサートを含む組成物。
【請求項62】
リウマチ性疾患が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、及び強直性脊椎炎から選択される請求項58〜61のいずれかに記載の使用。
【請求項63】
リウマチ性疾患が、関節リウマチである請求項62に記載の使用。
【請求項64】
疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を用いた治療に対して応答しない患者のリウマチ性疾患の治療において、請求項57に記載の同時に、別々に、又は連続的に使用するための複合製剤としてのCD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤及びメトトレキサート。
【請求項65】
DMARDが、メトトレキサートである請求項65に記載の剤。
【請求項66】
剤が、非経口投与に適した請求項57から65のいずれかに記載の使用。
【請求項67】
剤が、筋肉内投与、静脈内投与、又は皮下投与に適した請求項66に記載の使用。
【請求項68】
メトトレキサートが、経口投与、筋肉内投与、静脈内投与、又は皮下投与に適した請求項57から67のいずれかに記載の使用。
【請求項69】
剤が、0.2mg〜10mgの量で患者に投与される請求項57から68のいずれかに記載の使用。
【請求項70】
剤が、静脈内投与に適し、且つ投与から3時間後の患者の血漿中の最高濃度を2.5μg/mL未満とすることができる請求項69に記載の使用。
【請求項71】
剤が、2μg/kg〜150μg/kgの量で患者に投与される請求項57から68のいずれかに記載の使用。
【請求項72】
剤が、0.1mg/m〜5mg/m(患者の体表面積)の量で患者に投与される請求項57から68のいずれかに記載の使用。
【請求項73】
剤が、単回用量として投与するのに適した請求項57から72のいずれかに記載の使用。
【請求項74】
剤が、複数回用量の一部として投与するのに適した請求項57から72のいずれかに記載の使用。
【請求項75】
剤が、最高1週間に1回投与するのに適した請求項74に記載の使用。
【請求項76】
複合製剤が、非ステロイド性抗炎症薬、抗炎症性ステロイド、金化合物、抗マラリア薬、葉酸、シクロスポリン、レフルノミド、アザチオプリン、スルファサラジン、d−ペニシリンアミン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸塩、ミノサイクリン、及びクロラムブシルから選択される、疾患の治療に好適な更なる治療剤を更に含む請求項57から72のいずれかに記載の使用。
【請求項77】
リウマチ性疾患が関節リウマチであり、且つ複合製剤が米国リウマチ学会(ACR)スコア付けシステムに従って、患者の疾患を少なくともACR50改善可能である請求項58から76のいずれかに記載の使用。
【請求項78】
CD4CD25制御性T細胞を活性化可能な剤が、抗体、前記抗体の断片、又は前記抗体の誘導体である請求項21から77のいずれかに記載の方法又は使用。
【請求項79】
抗体が、ヒト化モノクローナル抗体である請求項78に記載の方法又は使用。
【請求項80】
剤が、抗CD4抗体、前記抗体の断片、又は前記抗体の誘導体である請求項78及び79のいずれかに記載の方法又は使用。
【請求項81】
剤が、マウスモノクローナル抗体B−F5の相補性決定領域(CDR)を含む配列を含むヒト化抗CD4抗体であって、前記抗体の抗体特異性及び抗体親和性の少なくともいずれかに実質的に影響を与えない変異を配列中に任意的に有していてもよい請求項80に記載の方法又は使用。
【請求項82】
剤が、以下のポリペプチド配列により定義されるVドメイン、又は配列番号1及び配列番号2の配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むVドメインを有するヒト化抗CD4抗体である請求項80に記載の方法又は使用:
−H鎖Vドメイン:
EEQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFSFSDCRMYWLRQAPGKGLEWIGVISVKSENYGANYAESVRGRFTISRDDSKNTVYLQMNSLKTEDTAVYYCSASYYRYDVGAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号1)
−L鎖Vドメイン:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCRASKSVSTSGYSYIYWYQQKPGQPPKLLIYLASILESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQHSRELPWTFGQGTKVEIK(配列番号2)。
【請求項83】
請求項1から20のいずれかに記載の剤及びメトトレキサートを含む医薬組成物又はキットを調製することを含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−504110(P2012−504110A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528278(P2011−528278)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061210
【国際公開番号】WO2010/034590
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(390035378)バイオテスト・アクチエンゲゼルシヤフト (13)
【Fターム(参考)】