発作、神経系疾患、内分泌障害及びホルモン疾患の治療用薬剤の同定方法
本発明は、SV2タンパク質の特性及び機能を特性決定するための方法を記載する。また、本発明は、SV2タンパク質の活性を調節する化合物又は薬剤を同定する方法を含む。これらの方法には、SV2AをはじめとするSV2タンパク質に対するレベチラセタムの結合を調節する化合物又は薬剤の同定が含まれる。さらに本発明は、化学的ライブラリーをスクリーニングし、且つSV2タンパク質を特性決定するツールとしてのビオチン化リガンドを提供する。さらに本発明は、SV2等のタンパク質が関連する機能的活性膜を可溶化し、精製する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:Berkley LYNCH、Karl NOCKA、及びBruno FUKS
関連出願
本出願は、2003年9月30日出願の米国仮出願第60/506764号及び2002年12月3日出願の米国仮出願第60/430372号の利益を主張し、これらの全体を引用により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一般に、神経障害、内分泌障害及びホルモン疾患における創薬の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
神経障害は、その原因に関してはほとんど知られておらず、その診断が主観的になりがちで、多くの場合効果的な治療を欠くことから、相当数の人々が神経障害により悩んでおり、医療制度に対する経済的問題が大きくなっている。一般に、脳活動は、最終的にはシナプスで伝達するニューロンの能力によって決定される。特定の神経伝達化学物質は前シナプスにあるシナプス小胞に包含されており、シナプス小胞がシナプス前膜と融合して一定量の神経伝達化学物質を遊離する。これは、シナプス間隙を通過してシナプス後膜に存在する対応の受容体タイプを活性化する。これらの受容体タイプには、ニューロン性グルタミン酸受容体(GluR’s)、γ−アミノ酪酸受容体(GABAR’s)、ニコチン性アセチルコリン受容体、セロトニン受容体、ドーパミン受容体等がある。神経障害の多くは、様々な脳組織中のシナプスを介した電流の伝達が不適当な結果生じる。てんかんでは、異常電流(シナプスの機能が不適当であることと関係していると仮定されている)が種々のレベルの発作を引き起こす。同様に、いくつかの精神系疾患、運動障害及び神経変性疾患では、伝導電流が異常、混乱又は低下し、その結果、疾患症状が起こる。従って、シナプス小胞機能に欠陥があると、一般的には神経伝達に対し、具体的には神経伝達物質放出の調節に対し悪影響を及ぼす。
【0004】
発作(てんかん性発作を含む)は、皮質機能の限局性障害又は全身性障害によって生じるが、これは、例えば、脳浮腫、脳低酸素、脳外傷、中枢神経系(CNS)感染、先天性脳異常又は発達(developmental)性脳異常、拡張性脳障害、異常高熱、代謝障害、並びに痙攣薬又は有毒薬剤の使用を含む、様々な脳障害又は全身性障害による可能性がある。てんかんと診断されるのは、発作が散発的に、数年に亘って(又は無期限に)繰り返す場合だけである。
【0005】
てんかんは、3つの一般的なカテゴリー、すなわち、1)全身性強直性間代性発作、2)欠神又は小発作(absence petitimal)、及び3)複雑部分発作に分類される発作症状を持つ症候性てんかん又は特発性てんかんとして病因学的に分類されている。症候性分類は、考えられる原因が存在し、その原因を除去する治療の特定のコースを試みることができるが、特発性分類は、明白な原因を確認することができず、解明されていない遺伝因子と関係している可能性がある。発作カテゴリーのうち、ほとんどの人は1つのタイプしか発作を起こさないが、約30%の人は2つ以上のタイプの発作を起こす。
【0006】
てんかんを発症するリスクは、生まれてから20才までの年齢で1%、75才で3%である。一般に、特発性てんかんは2才から14才の間に始まる。通常、2才未満の発作は、発育障害、分娩外傷又は代謝性疾患によって起こる。25才以降の発症は脳外傷、腫瘍又は脳血管障害に付随するものであるが、50%は病因が未知のものである。
【0007】
神経系と内分泌系との間に存在する多くの相互関係によって、シナプス小胞機能の欠陥もまた内分泌機能に影響を与え得る。例えば、少なくとも2つの分泌腺は、適当な神経伝達物質放出に応答する場合にのみ、それらのホルモンを分泌する(副腎髄質及び脳下垂体後葉)。分泌されると、ホルモンは血液中を移動し、身体中の遠位にある標的組織で生理学的作用をもたらす。ホルモンの分泌過多又は分泌不全を含む内分泌障害は、病理学上の影響を有しているのは明らかである。このような影響の例は巨人症と小人症であり、それぞれ、成長ホルモンの分泌過多又は分泌不全に起因している。
【0008】
レベチラセタム
レベチラセタム(LEV;ucb L059;(S)−α−エチル−オキソ−ピロリジンアセトアミド)は、ピラセタムのエチル類似体の(S)−鏡像異性体であり、第二世代の向知性薬の同定を目的とした追跡化学プログラム中に合成された。in vivoの結果によると、聴覚感受性マウスにおける発作を抑制するというLEVの予期せぬ効果が証明された。一方ピラセタムではほんの微弱な活性であった。LEVは従来の抗てんかん薬とは関係のない分子であるが(Margineanuら、Antiepileptic Drugs:第5版、pp.419−427、Lippincott、Philadelphia(2002))、広範囲の臨床試験によれば、LEVを用いた補助療法は(KEPPRA、UCB、S.A.、Braine−l’Allend、Belgium)、成人の難治性部分発作を調節するのに有効であり、且つ良好な耐容性を示すことが立証されている。
【0009】
未精製ラット脳膜で実施したLEVを用いた結合アッセイでは、可逆的かつ飽和可能であって、立体選択的な特異的結合部位の存在が明らかになっている。ラット海馬膜で得られた結果からは、LEVが緩やかな親和性と高い結合能力で結合部位の1つのクラスを標識化することが示唆されている。この結合部位は、レベチラセタム結合部位(LBS)と特定されている。同様の結果が他の脳領域(皮質、小脳及び線条体)で得られている。レベチラセタムの(R)−鏡像異性体であるUcb L060は、これらの部位に対する親和性が約1000倍低いことが示されている。LEVの結合は、放射標識試験が心臓、腎臓、脾臓、膵臓、副腎、肺及び肝臓をはじめとする末梢組織における特異的結合を検出することができなかったことから、中枢神経系の膜に限定されているように思われる。しかしこれは、これらの組織におけるLBSが中枢神経系と比較して低密度であることによる可能性があり、実際、特異的結合が末梢由来の副腎細胞系であるPC12細胞で生じる。最も一般に使用されている抗てんかん薬のカルバマゼピン、フェニトイン、バルプロエート、フェルバメート、ガバペンチン、チアガビン、ビガバトリン、ゾニサミド、フェノバルビタール及びクロナゼパム、並びに痙攣剤のt−ブチルビシクロホスホロチオネート(TBPS)、ピクロトキシン及びビククリンは、LEV結合を置き換えない(Gillardら、Eor.J.Pharmacol.、478:1−9.(2003))。しかし、エトスクシミド、ペントバルビタール、ペンテトラゾール及びベメグリドは、in vivoで認められた活性薬剤濃度に匹敵するpKi値でLEVと競合した。ピラセタム及びアニラセタムをはじめとする構造的に関連性のある化合物もまたLEV結合を置き換えた。また、レベチラセタム類似体は、てんかんの聴原性マウスモデルで抗痙攣活性が試験された。親和性と抗痙攣性活性の間で非常に良好な相関関係(r2=0.84)が認められた(Noyerら、Euro.J.Pharmacol.286:137−146.(1995))。この高い相関関係は、LBS結合とこのクラスの化合物の抗痙攣活性の間の因果関係を強力にサポートしている。従って、レベチラセタム類似体のLBSへの結合によって、脳内のLBSのタンパク質成分の機能が修飾され、それによって抗痙攣活性の所望の治療結果がもたらされることが期待される。
【0010】
シナプス小胞タンパク質2ファミリー
シナプス小胞タンパク質のシナプス小胞タンパク質2(SV2)ファミリーは、最初に、海洋生物エイD.ommataの電気器官由来のコリン作動性小胞に対して調製されたモノクローナル抗体を用いて同定された(Buckleyら、J.Cell.Biol.、100:1284−1294.(1985))。この抗体によって標識化された個々のファミリーメンバーのクローニングにより、3種類の異なるアイソフォーム、SV2A(Bajjaliehら、Science、257:1271−1273.(1992))、SV2B(Feanyら、Cell、70(5):861−867.1992)、及びSV2C(Janz及びSudhof、Neuroscience、94(4):1279−1290.(1999))が同定された。なお、これらの全部が原抗体と反応する。3種類のラットアイソフォーム間の全体の相同性は約60%であり、SV2A及びSV2CはSV2Bに比べて互いに類似している(Janz及びSudhof、Neuroscience 94(4):1279−1290.(1999))。
【0011】
SV2タンパク質は内在性膜タンパク質であり、糖、クエン酸及び非生体異物を運搬する細菌性及び真菌性輸送タンパク質の12回膜貫通ファミリーに対して、有意ではあるが低レベルの相同性(20〜30%)を有している(Bajjaliehら、Science.257:1271−1273.(1992))。SV2タンパク質は、12回TMスーパーファミリーのメンバーと推定されるようないくつかの特有の特徴を示す。SV2タンパク質は比較的短い遊離のN末端とC末端、並びにTmの一部を連結する短いループを有している。しかし、2つの重要な例外、すなわち、膜貫通領域6と7の間の長い細胞質ループと、膜貫通領域7と8の間の小胞内ループ(これは3つのN−グリコシル化部位を含有している)がある。SVOPとして知られている遠縁のシナプス小胞タンパク質は、DrosophilaとC.elegansに相同体を有するが(Janzら、J.Neurosci.18(22):9269−9281.(1998))、酵母又は無脊椎動物では、SV2タンパク質の近縁の相同体は未だ発見されていない。
【0012】
ファミリーとしてSV2タンパク質は脳と内分泌細胞に広く分布している。3つのアイソフォームは、それらの分布において大幅にオーバーラップしており、同一ニューロンで、また同一シナプス小胞上でさえ共発現されることを確認することができる。SV2タンパク質の1つのアイソフォーム又は別のアイソフォームは、すべてのシナプス小胞上に存在していると考えられる。コリン作動性小胞はSV2を含有しない可能性があるとの研究が1つ報告されているが(Blumbergら、J.Neurochem.58(3):801−810(1992))、これらのアイソフォームは任意の特定の神経伝達物質を含有するニューロンに恐らく限定されないであろう。従って、SV2タンパク質はシナプス小胞の最も一般的なタンパク質の1つであり、シナプス小胞のカルシウム介在細胞外放出の調節に関与している。SV2タンパク質は内分泌細胞中で発現されることも報告されており、またさらなるシナプス小胞膜内タンパク質p38及びp65もともに内分泌腺高密度芯顆粒膜中に存在することも証明されている(Loweら、J.Cell.Biol.106(1):51−59(1988))。SV2Aは最も一般的なSV2アイソフォームであるが、それは脳全体の至る所で発現され、内分泌細胞の分泌顆粒中にも同様に存在する。SV2Bは脳中に広く分布しているが、海馬の歯状回、淡蒼球、脳幹網様体核及び黒質網様部をはじめとする、いくつかの脳構造においては検出されていない(Bajjaliehら、1994)。対照的に、SV2Cの分布は完全に限定されており、主として淡蒼球、黒質、中脳、脳幹及び嗅球等の系統発生的に古い領域で確認されている。SV2Cは大脳皮質と海馬では検出できず、小脳皮質では低レベルで確認されている(Janz及びSudhof、Neuroscience 94(4):1279−1290.(1999))。
【0013】
シナプスは、SV2タンパク質の他にシナプシン、シナプトタグミン及びCAPS等の他の特有の調節タンパク質を含有している。これらのタンパク質は、小胞融合又は出芽を媒介し得る。SV2AはSNARE複合体と呼ばれる前融合複合体の形成にとって必須のCa2+調節タンパク質である可能性があり(Xuら、Cell 99(7):713−722(1999))、これには、シナプス小胞関連のVAMP/シナプトブレビンと原形質膜タンパク質のシンタキシン及びSNAP−25が含まれている。シナプス中にCa2+が蓄積すると、シナプトタグミンのSV2Aに対する結合は阻害され、2つのシナプトタグミンCa2+結合ドメインの二量体化が刺激される(Bajjalieh、Curr.Opin.Neurobiol.9(3):321−328.(1999))。この二量体化はSNARE複合体を組織化し、小胞融合物を促進する役割を果たし得るが、Ca2+が低濃度である場合にはSV2Aはシナプトタグミンに結合したままであって、融合は生じない。
【0014】
シナプトタグミンに対するSV2Aの親和性は、SV2のアミノ末端のリン酸化によって制御されている(Pyleら、J.Biol.Chem.275(22):17195−17200.(2000))。Ca2+輸送又はシナプス小胞での制御においてSV2タンパク質が機能を果たす可能性については、SV2A及びSV2Bのノックアウト動物の試験によって指摘されている(Janzら、Neuron 24:1003−1016.(1999))。他の仮説は、SV2タンパク質は、輸送タンパク質から誘導されるが、ここでは構造上の機能、小胞融合物調節における機能、又は小胞内容物の再利用及びエキソサイトーシス放出を問わず、小胞での異なる機能に有用であるということである(Janz及びSudhof、Neuroscience 94(4):1279−1290.(1999))。
【0015】
SV2タンパク質ノックアウトマウスに関する2つの報告がある。1つは、SV2Aのみをノックアウトした試験であり(Crowderら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 96(26):15268−15273.(1999))、もう1つは、SV2Aノックアウト動物及びSV2Bノックアウト動物、並びにSV2A/SV2Bダブルノックアウト動物を調べたものである(Janzら、Neuron 24:1003−1016.(1999))。
【0016】
SV2A遺伝子破壊のホモ接合体型動物は誕生時には正常に見えるが、成長せず、重い発作が起こり、誕生後最初の数週間以内に死亡する。SV2Aホモ接合型ノックアウトマウスは、他のマウス系統に比べると、長期にわたって永続し、強く、より衰弱化させる発作がおきる(Janzら、Neuron 24:1003−1016.(1999))。生後の発作の発生にもかかわらず、すべてのSV2Aノックアウト動物は、完全に正常な総体的脳形態(正常レベルの試験シナプスタンパク質を含む)を有している。さらに、SV2Aノックアウトマウス及びSV2A/SV2Bダブルノックアウトマウス由来の海馬ニューロン培養物は超微細構造学的に正常であるシナプスを形成し、シナプス小胞の大きさ、数及び位置に変化はなかった(Janzら、Neuron 24:1003−1016.(1999);Crowderら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 96(26):15268−15273.(1999))。他の多くのタイプのノックアウトで容易に検出される構造異常及び発育異常によって起こる、一般的に確認されている発作とは異なり、SV2Aノックアウトマウスは、脳又はシナプスのマクロ又はミクロスケールの異常を伴わない強い発作表現型を示す。SV2A、SV2B及びSV2A/SV2Bノックアウトマウス由来の主要なニューロン培養物のシナプス伝達に関する研究は、脳機能の別のマーカーとして、sIPSCの大きさ及び頻度と自発性の刺激性シナプス後電流(sEPSC)の大きさと頻度は正常であることを指摘している。電気刺激は、すべての遺伝子型由来の培養ニューロンにおいて強いEPSC及びIPSCを誘発した。
【0017】
SV2Aとは対照的に、SV2Bノックアウトマウスでは目立った病理は明らかになっていない(Janzら、1999)。SV2Bが欠失した際にこのような傷害がない考えられる理由の1つとしては、SV2BがSV2Aによって機能的に置き換えられ得るということである。それは、SV2Aが、SV2Bが通常発現されるいずれの場所でも共発現されると考えられる。
【0018】
SV2A及び他のファミリーメンバーの機能は未知のままであるが、1つの仮説としては、このトランスポーター相同体が一部の一般的なシナプス小胞分子に関する機能的トランスポーターであるということである。より詳しくは、SV2Aとカルシウム介在の小胞細胞外放出の制御とを結びつける証拠があり、それによって、SV2AがCa2+トランスポーターである可能性があると考えられる。また、SV2A及び他のファミリーメンバーは、シナプス小胞の機能で役割を果たし得る。かかる役割としては、それらの形成、神経伝達物質の充填、原形質膜との融合、循環利用、並びに他のタンパク質及び細胞区画及び細胞器官との相互作用の点での調節を挙げることができる。例えば、SV2タンパク質は、シナプス小胞タンパク質シナプトタグミン及び細胞間マトリックスタンパク質ラミニン−1と相互作用し得ることが明らかになっている(Carlson、Perspect.Dev.Neurobiol.3(4):373−386(1996))。SV2タンパク質は、シナプス前末端での細胞質カルシウムレベル又はオルガネラカルシウムレベルの制御で重要な機能を果たし、また原形質膜上のN型カルシウムチャネルと、直接的又は間接的に相互作用し得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、SV2Aが抗発作剤LEV及びその類似体の結合部位であることを見出した。一連のレベチラセタム類似体の相対的結合親和力とある特定のてんかん動物モデルでの、それらの抗痙攣効力の間に高い相関関係があることは、これら類似体のSV2タンパク質に対する結合がそれらの機能を変化させて、抗痙攣作用を提供するという強力な証拠を提供するものである。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明は、シナプス小胞機能に関連する神経障害、内分泌障害又はホルモン疾患を治療する方法であって、SV2タンパク質の機能又は活性を調節する化合物又は薬剤を投与することを含む、前記方法を含む。
【0021】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤の間との相互作用を発見又はモデル化する方法を含む。本方法は、SV2タンパク質を化合物又は薬剤と接触させるステップと、SV2タンパク質と前記化合物又は薬剤との相互作用を測定及び分析するステップとを含む。
【0022】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質内のレベチラセタム結合部位を同定する方法を含む。本方法は、SV2タンパク質又はその断片と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体又は誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤化合物又は薬剤とを接触させるステップと、前記化合物又は薬剤の前記SV2タンパク質又はその断片との結合を測定するステップとを含む。
【0023】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質と第2のタンパク質の間の相互作用をアッセイする方法を含む。本方法は、細胞中でSV2タンパク質及び目的のタンパク質を発現させるステップを含む。さらに本方法は、レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露するステップと、SV2タンパク質と目的のタンパク質の間の相互作用を測定するステップとを含む。
【0024】
別の好ましい実施形態では、本発明は、シナプス機能に関連する神経障害、内分泌障害又はホルモン疾患を調節する化合物又は薬剤を同定する方法を含む。本方法は、SV2タンパク質を本化合物又は薬剤に曝露するステップと、前記化合物又は薬剤が前記SV2タンパク質の活性を調節するか否かを測定するステップとを含む。
【0025】
別の好ましい実施形態では、本発明は、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体又は誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤に対する細胞応答を同定する方法を含む。本方法は、SV2タンパク質を発現する細胞を前記化合物又は薬剤へ曝露するステップと、曝露細胞中の核酸又はタンパク質の発現の変化を分析するステップとを含む。核酸はRNAであってよく、RNAの発現は、ハイブリダイゼーション(マイクロアレイにおけるハイブリダイゼーション等)によって分析することができる。
【0026】
別の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号5の核酸配列又はその相補体を含む、単離された核酸分子を含む。
【0027】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質に対する結合パートナーを同定する方法を含む。この方法は、SV2タンパク質又は断片を潜在的な結合パートナーに曝露するステップと、前記タンパク質又は断片及び有望な結合パートナーを(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドと一緒にインキュベートするステップとを含む。さらにこの方法は、(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドの前記タンパク質への結合が、その潜在的な結合パートナーにより阻害されるか否かを測定し、それによって、前記タンパク質に関する結合パートナーを同定するステップとを含む。
【0028】
さらに好ましい別の実施形態では、本発明は、神経障害又は内分泌障害の治療に有用な薬剤を同定する方法を含む。この方法は、SV2タンパク質又は断片を、薬剤及びレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体に曝露することを含む。さらにこの方法は、レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体の前記タンパク質への結合が、前記薬剤によって調節されるか否かを測定し、それによって、神経障害又は内分泌障害の治療に有用な薬剤を同定するステップとを含む。
【0029】
また別の好ましい実施形態では、本発明は、神経障害又は内分泌障害の治療に有用な薬剤を同定する方法を含む。この方法は、SV2タンパク質又は断片を薬剤に曝露するステップと、当該タンパク質又は断片及び薬剤を(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドと一緒にインキュベートするステップとを含む。さらにこの方法は、(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドの前記タンパク質への結合が、前記薬剤によって阻害されるか否かを測定し、それによって、前記タンパク質に対する結合パートナーを同定するステップとを含む。
【0030】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質又はその断片若しくは誘導体と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤との間の相互作用を発見又はモデル化する方法を含む。この方法は、生化学的技術、生物物理学的技術、純粋なコンピュータ技術、又はこれらのいくつかの組合せによって、前記SV2タンパク質又はその断片の3次元モデルを作製するステップと、前記SV2タンパク質に結合する可能性のある有望なリガンドの1つ又は集合の3次元モデルを作製するステップとを含む。
【0031】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤の間の相互作用を発見又はモデル化する方法を含む。この方法は、遺伝学的に野生型の動物、又はかかる動物由来の分子、細胞若しくは組織において、潜在的なCNS活性分子の生化学的作用、薬理学的作用、生物的作用、細胞的作用、又は分子学的作用を測定するステップと、ノックアウトSV2タンパク質又はノックダウンSV2タンパク質を用いた系での同等の試験におけるその化合物の測定した作用を比較するステップとを含む。
【0032】
また本発明は、化学的ライブラリーをスクリーニングし、組織中のSV2タンパク質をローカライズし、精製SV2タンパク質を特性決定するツールとしてのビオチン化リガンドを提供する。本発明のSV2タンパク質としては、SV2A、SV2B及びSV2Cが挙げられる。SV2/LBS、特にSV2A/LBS、及びそれらの誘導体のリガンドは、天然の脳細胞膜、例えば動物、哺乳動物又はヒトの脳細胞膜等のスクリーニング、或いはSV2タンパク質を発現する細胞系のスクリーニングを目的としてビオチン化することができる。また本発明は、SV2/LBSの光活性化可能なビオチン化リガンドを提供する。これらのスクリーニングアッセイにより、SV2と相互作用する新規薬剤又は化合物の同定が可能である。
【0033】
さらに本発明は、膜関連タンパク質の精製方法であって、組織由来のタンパク質を可溶化して可溶化複合体を形成するステップと、可溶化複合体を機能的形態で単離するステップとを含む。可溶化タンパク質又は複合体は、タンパク質に結合する抗体を用いて精製されたアフィニティーであってよい。この方法によって精製され得る膜関連タンパク質の例としては、SV2A、SV2B及びSV2C等のSV2タンパク質のファミリーが挙げられる。この方法で使用可能な界面活性剤としては、n−ドデシル−β−マルトシド及びその類似体又は誘導体、例えばn−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル−β−D−マルトシド等が挙げられる。
【0034】
またビオチン化リガンドは、可溶化、免疫親和性精製及びクロマトグラフィー後に、SV2タンパク質の構造状態を評価するツールとして用いることができる。
【0035】
一実施形態では、SV2タンパク質は、少なくとも1つのSV2タンパク質又はその断片と融合パートナーとを含む融合タンパク質であってよい。融合パートナーは、ポリヒスチジンタグ又はグルタチオン−S−転移酵素タグ等の融合タグであってよい。融合パートナーは、SV2タンパク質のN末端又はC末端に結合され得る。
【0036】
別の実施形態では、SV2タンパク質等のタンパク質は、少なくとも1つのグリコシル化部位を欠失していてもよい。場合によっては、部位特異的変異形成を行なって、SV2タンパク質中の1つ又は複数のグリコシル化部位を除去することができる。SV2タンパク質又は断片は、哺乳動物膜(例えばラット脳膜)などの天然起源から精製することができる。或いは、SV2タンパク質又は断片は、形質転換した宿主細胞上で発現される。さらに、SV2タンパク質又は断片は固定化される。
【0037】
一態様では、リガンドは、直接的又は間接的に標識化され得る。標識は、3H等の放射標識、蛍光標識又は酵素であってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
I.シナプス小胞タンパク質2(SV2)ファミリーのタンパク質
LEV又はその誘導体若しくは類似体に結合するすべてのSV2タンパク質は、本明細書に記載のアッセイで用いることができる。
【0039】
本明細書では、SV2タンパク質には、単離タンパク質、そのタンパク質の対立遺伝子変異体、及びそのタンパク質の保存的アミノ酸置換が含まれる。本明細書では、「タンパク質」又は「ポリペプチド」は、一部で、配列番号1の核酸配列によってコードされているタンパク質、又は配列番号2で表されているヒトアミノ酸配列を有するタンパク質である、SV2A若しくはその断片;配列番号3の核酸配列によってコードされているヒトタンパク質を含む、SV2B又は配列番号4で表されているアミノ酸配列若しくはその断片;配列番号5の核酸配列によってコードされているヒトタンパク質を含む、SV2C、又は配列番号6で表されているアミノ酸配列若しくはその断片;及び配列番号7の核酸配列によってコードされているヒトタンパク質を含む、SVOP、又は配列番号8で表されているアミノ酸配列若しくはその断片を意味する。またこの用語は、上に具体的に列挙されているアミノ酸配列とはわずかに異なるアミノ酸配列を有する天然の対立形質変異体及びタンパク質も意味する。また対立遺伝子変異体は、上に具体的に列挙されているアミノ酸配列とはわずかに異なるアミノ酸配列を有しているが、これらのタンパク質に関連する同一の、又は類似の生物学的機能を有している。
【0040】
本明細書では、配列番号2、4、6又は8のヒトアミノ酸配列に関連するSV2タンパク質のファミリーは、一部において、ヒトに加え、生物(organism)から単離されたタンパク質を意味する。例えば、ラットのSV2A核酸(配列番号9)及びタンパク質(配列番号10)、SV2B核酸(配列番号11)及びタンパク質(配列番号12)、SV2C核酸(配列番号13)及びタンパク質(配列番号14)、並びにSVOP核酸(配列番号15)及びタンパク質(配列番号16)の相同体が同定されており、これらは本明細書に含まれる。これらのタンパク質に関連するタンパク質のファミリーの他のメンバーを同定及び単離するのに使用する方法を以下に記載する。
【0041】
本発明で用いられるSV2タンパク質は、形質転換宿主細胞で発現される、或いは一定の細胞又は組織タイプで自然に発現される、細胞又は小胞の膜断片の一部における分離形態であるのが好ましい。本明細書では、物理的方法、機械的方法又は化学的方法を用いて、通常そのタンパク質に付随する細胞成分からタンパク質を取り出した場合に、タンパク質が単離されるという。当業者は、単離タンパク質を得る標準の精製法を容易に用いることができる。
【0042】
さらに、本発明の方法で使用可能なSV2タンパク質には、配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16の挿入、欠失、保存的アミノ酸置換又はスプライスの変異体が含まれる。本明細書では、「保存的な」変異体とは、タンパク質の生物学的機能に悪影響を及ぼすことのないアミノ酸配列の改変を意味する。改変された配列がタンパク質に関連する生物学的機能を妨げる、或いは不活性化する場合、置換、挿入又は欠失がタンパク質に悪影響を及ぼすと言う。例えば、タンパク質全体の電荷、構造、又は疎水性/親水性は、生物活性に悪影響を及ぼすことなく改変することができる。従って、アミノ酸配列を改変して、例えば、タンパク質の生物活性に悪影響を及ぼすことなく、ペプチドの疎水性又は親水性を高めることができる。本明細書では、「欠失」とは、1個又は複数個のヌクレオチド又はアミノ酸残基がそれぞれ不在であるヌクレオチド又はアミノ酸配列の変化として定義され;「挿入」又は「添加」は、天然のSV2と比較した場合、1個又は複数個のヌクレオチド又はアミノ酸残基の付加が生じたヌクレオチド又はアミノ酸配列の変化であり、「置換」は、それぞれ異なるヌクレオチド又はアミノ酸によって、1個又は複数個のヌクレオチド又はアミノ酸の置き換え(replacement)が生じることである。
【0043】
さらに、本発明のSV2タンパク質は、SV2タンパク質又はその断片が、別のSV2タンパク質又はその断片(第1のSV2タンパク質若しくはその断片と同じでも、異なってもよい)及び/又は異種ペプチド融合パートナーにN末端又はC末端で結合している融合タンパク質を含む。異種ペプチドは、SV2タンパク質又はその断片の発現、精製、溶解、同定、抗原性、又は安定性の拡大に有用なポリペプチド配列であってよい。本発明に有用な異種融合パートナーは、これらに限定されるものではないが、グルタチオン−S−転移酵素(GST)、ポリヒスチジンタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、アルブミン、及び卵アルブミン又はその断片が挙げられる。
【0044】
通常、対立遺伝子変異体、保存的置換変異体、及びSV2タンパク質ファミリーのメンバーは、配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16に記載の完全長配列と少なくとも約35%、40%、50%、60%、65%、70%又は75%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約80%、よりさらに好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは、少なくとも約95%、97%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。かかる配列に関する同一性(Identity)又は相同性(homology)は、必要に応じて相同性の最大パーセントを達成するために、配列を並べて比較し、ギャップを導入した後の既知のペプチドと同一である候補配列のアミノ酸残基の割合として本明細書に定義する。ただし、いかなる保存的置換も配列同一性の一部としては考えない(関連パラメーターに関するB節を参照)。融合タンパク質、或いはペプチド配列へのN末端、C末端又は内部の伸長、欠失又は挿入は、相同性に影響するものとして解釈しないものとする。
【0045】
さらに検討された変異体には、例えば、相同組換え、部位特異的変異形成、又はPCR変異誘発による所定の突然変異、及び他の動物種(これに限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、非ヒト霊長類種を含む)の対応するタンパク質、及びそのタンパク質のファミリーの対立遺伝子変異体又は他の天然変異体;並びにタンパク質が、置換、化学的手段、酵素的手段、又は天然アミノ酸以外の成分(例えば、酵素又は放射性同位元素等の検出可能な成分)を用いた他の適当な手段によって共有結合を改変されている誘導体が含まれる。
【0046】
また、SV2タンパク質の断片も本発明の方法で用いることができる。特に、LEV結合部位を含む断片を用いることができる。かかる断片は、少なくとも約6個又は10個、15個又は20個、25個又は30個のアミノ酸残基、約35個又は40個のアミノ酸残基、約45個又は50個のアミノ酸残基、約55個又は60個、約65個又は70個のアミノ酸残基、或いは少なくとも約75個以上のアミノ酸残基を有し得る。
【0047】
また本発明の方法は、SV2タンパク質ファミリー、これらに限定されるものではないが、SV2A、SV2B、SV2Cとして知られているのラットタンパク質及びヒトタンパク質、並びに関連のシナプス小胞タンパク質SVOP、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16からなるもの、或いは配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16を含むもの、並びに本明細書に記載されている関連のタンパク質、好ましくは分離形態のタンパク質のメンバーをコードする核酸分子も利用することができる。ベクター、プラスミド及び形質転換宿主細胞もまたSV2タンパク質の産生に用いることができる。本明細書では、「核酸」とは、上に定義したタンパク質又はペプチドをコードするか、かかるペプチドをコードする核酸配列に相補的であるか、適当なストリンジェンシーな条件下で、かかる核酸にハイブリダイズし、それに対して結合を安定的に維持するか、或いは、配列番号2、4、6、8、又は10の完全長ペプチド配列と、少なくとも約35%、40%、50%、60%、65%、70%、若しくは75%の配列同一性、好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約85%、よりさらに好ましくは少なくとも約90%、95%、97%、又は99%以上の同一性を共有するポリペプチドをコードする、RNA又はDNA又は関連分子として定義される。さらに、本発明で有用な「核酸分子」には、配列番号1、3、5、7、又は9のヌクレオチド配列と、少なくとも約70%又は75%の配列同一性、好ましくは少なくとも約80%、よりさらに好ましくは少なくとも約85%、一層さらに好ましくは少なくとも約90%、及び最も好ましくは95%、97%、99%以上の同一性を共有する核酸分子が含まれる。また本発明の核酸には、異種タンパク質配列又は別のSV2タンパク質配列にN末端又はC末端で融合しているSV2タンパク質を含む融合タンパク質をコードするものも含まれている。
【0048】
ヌクレオチド又はアミノ酸配列レベルの相同性又は同一性は、配列類似性の探索に好適なblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastx(Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997);Karlinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268(1990))のプログラムを使用したアルゴリズムを用いて、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)分析により決定することができる。BLASTプログラムで利用される手法は、最初に、問題となる配列とデータベースの配列の間で、ギャップを含む場合とギャップを含まない場合で、類似セグメントを検討し、次いで、同定すべきすべてのマッチの統計的有意差を評価し、最後に、あらかじめ選択された重要な閾を満たすそれらのマッチ結果のみをまとめるというものである。配列データベースの類似性サーチにおける基本的事項に関する論文については、Altschulら(Nature Genetics 6、119−129(1994))を参照されたい。ヒストグラム、ディスクリプション、アライメント、エクスペクト(すなわちデータベース配列に対するマッチを報告するための統計的有意差閾)、カットオフ、マトリックス、及びフィルター(低複雑性)に関する探索パラメーターは、初期設定にある。blastp、blastx、tblastn及びtblastxで使用されるデフォルトスコアマトリックスは、BLOSUM62マトリックス(Henikoffら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919(1992))であり、長さ(ヌクレオチド塩基又はアミノ酸)が85を超える対象配列について推奨されている。
【0049】
blastnにおいて、スコアマトリックスは、N(すなわち、ミスマッチ残基のペナルティースコア)に対するM(すなわち、1ペアのマッチ残基のリウォードスコア)の比によって設定される。この場合、MとNの初期値はそれぞれ+5及び−4である。blastnの4つのパラメーターは以下のように調整した:Q=10(ギャップ生成ペナルティー);R=10(ギャップ伸長ペナルティー);wink=1(対象配列に沿って、すべてのwinkth位置でワードヒットを生成する);gapw=16(ギャップ化アライメントが生成されるウインド幅を設定する)。同等のBlastpパラメーターセッティングは、Q=9;R=2;wink=1;gapw=32であった。配列間のギャップ比較(Accelrys’Wisconsin Package version10.2として市販されている)は、DNAパラメーターGAP=50(ギャップ生成ペナルティー)及びLEN=3(ギャップ伸長ペナルティー)を用い、タンパク質比較における同等のセッティングは、GAP=8及びLEN=2である。
【0050】
「ストリンジェントな条件」には、(1)洗浄に低イオン強度と高温を用いる条件(例えば、50℃にて、0.015MのNaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDS)、又は(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる条件(例えば、50%(vol/vol)ホルムアミド、pH6.5の0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファー、750mMのNaCl、75mMのクエン酸ナトリウム、42℃)が含まれる。別の例は、42℃において、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ソーダ、5×デンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%硫酸デキストランでのハイブリダイゼーション、42℃にて0.2×SSC及び0.1%SDSの洗浄である。当業者は、クリアで検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得るストリンジェンシー条件を容易に決定し、適切に変更することができる。好ましい分子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13又は15の相補体に上記条件の下でハイブリダイズする分子であって、かつそれは機能タンパク質をコードするものである。より一層好ましいハイブリダイズ分子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13又は15のオープンリーディングフレームの相補体鎖に上記条件の下でハイブリダイズするものである。
【0051】
本明細書では、核酸分子は、核酸分子を他のポリペプチドをコードする混入核酸分子から実質的に単離した場合に「単離した」と言う。
【0052】
A.SV2A及びレベチラセタム結合部位(LBS)
本発明には、SV2Aタンパク質にあるLBSの特性決定及び使用が含まれる。
【0053】
上述のように、「SV2A」には、配列番号2に記載のヒトタンパク質、配列番号1によってコードされているヒトタンパク質、ヒトSV2Aの相同体種、本明細書に記載されている配列番号2の変異体、及びLBSを含むSV2Aの断片が含まれている。
【0054】
II.レベチラセタム及び類似体
本発明の方法には、新規の薬剤を同定するアッセイにおけるLEV及びそのLEV類似体又は誘導体の使用を含んでいる。好ましい実施形態では、本発明の方法は、SV2のLBSへの結合においてLEV及びそのLEV類似体又は誘導体と競合する化合物又は薬剤を同定する。本明細書では、「競合する」、「競合的結合」という用語は、LEV又はその類似体若しくは誘導体と同じLBSに対する結合部位を占有し;LBSへの結合の点で、LEV又はその類似体若しくは誘導体を置換し、或いはこれらによって置換され;LBSへの結合の点で、LEV又はその類似体若しくは誘導体を阻害し、或いは阻害される薬剤又は化合物を意味する。別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2Aの活性を調節する化合物又は薬剤の同定を含む。別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、LBSに対する親和性がLEVに比べて低いか、ほぼ同じか、高い化合物又は薬剤を同定する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、LBSに対する親和性がucb 30889に比べて低いか、ほぼ同じか、高い化合物又は薬剤を同定する。またさらに別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、LEVの有効量と比較した場合、SV2Aの活性をより長期間にわたって調節する有効量の化合物又は薬剤を同定する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、LEVの有効量と比較した場合、SV2Aの活性をより短期間にわたって調節する有効量の化合物又は薬剤を同定する。
【0055】
本明細書では、「レベチラセタム」(図15A;LEV)は、欧州特許第0162036B1号(この全体を引用により本明細書に援用するものとする)に記載されている、化合物(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドの国際一般名を意味する。LEVは左旋性化合物であり、中枢神経系の低酸素症及び虚血タイプの疾患の治療及び予防用の保護剤である。またこの化合物は、てんかんの治療にも効果がある。ラセミ化合物α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドとその類似体は、英国特許第1309692号により公知である。米国特許第3459738号には、2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドの誘導体の記載がある。
【0056】
本明細書では、「そのLEV類似体又は誘導体」という用語には、任意に置換されているN−アルキル化2−オキソ−ピロリジン誘導体が含まれている。これらの化合物は、ピロリドン環の4及び/又は5位上で置換されているアルキルアミド誘導体であるのが好ましい。任意に置換されているN−アルキル化−2−オキソ−ピロリジン誘導体の例としては、これらに限定されるものではないが、国際特許出願PCT/EP01/01992号に記載の化合物、例えば、(2S)−2−[(4S)−4−(2,2−ジフルオロビニル)−2−オキソピロリジニル]ブタンアミド、(2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−プロピルピロリジニル]ブタンアミド、(2S)−2−[(4S)−2−オキソ−4−プロピルピロリジニル]ブタンアミド、及び(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドが挙げられる。
【0057】
本明細書では、「そのLEV類似体又は誘導体」という用語には、さらに、任意に置換されているN−アルキル化2−オキソ−ピペリジニル誘導体が含まれている。これらの化合物は、2−オキソ−ピペリジニル環の4及び/又は5及び/又は6位上で置換されているアルキルアミド誘導体であるのが好ましい。任意に置換されているN−アルキル化2−オキソ−ピロリジン誘導体の例としては、これらに限定されるものではないが、国際特許出願PCT/EP02/05503号に記載の化合物、例えば、(2S)−2−[5−(ヨードメチル)−2−オキソ−1−ピペリジニル]ブタンアミド、(2S)−2−[5−(アジドメチル)−2−オキソ−1−ピペリジニル]ブタンアミド、2−(2−オキソ−5−フェニル−1−ピペリジニル]ブタンアミド、(2S)−2−[4−(ヨードメチル)−2−オキソ−1−ピペリジニル]ブタンアミド、及び(2S)−2−[4−(2−フルオロ−2−メチルプロピル)−2−オキソ−1−ピロリジニル]ブタンアミドが挙げられる。
【0058】
本明細書では、「そのLEV類似体又は誘導体」という用語には、式I:
【化1】
[式中、
Rは水素又はヒドロキシを表し、
R1及びR2は、独立して、水素又は炭素原子1〜4個のアルキル基を表し、
R3及びR4は、独立して、水素、炭素原子1〜4個のアルキル基、又は−(CH2)n−NR5R6(式中、nは1、2又は3であり、R5及びR6は、水素又は炭素原子1〜4個のアルキル基を表す)を表す]
で表される、ラセミ体若しくは異性体の形態におけるの任意のアセタム(acetam)化合物、又はその製薬上許容可能な塩が含まれる。
【0059】
かかるアセタム化合物の例としては、これらに限定されるものではないが、R、R1、R2、R3及びR4が水素である式Iの化合物が挙げられ、この化合物は、英国特許第1039113号及び1309692号に記載されている一般名ピラセタムとして知られている2−オキソ−ピロリジンアセトアミドである。
【0060】
また本明細書では、「そのLEV類似体又は誘導体」という用語には、任意に置換されているN−アルキル化2−オキソ−アゼパニル(azepanyl)誘導体が含まれる。これらの化合物は、2−オキソ−アゼパニル環の4及び/又は5及び/又は6及び/又は7位上で置換されているアルキルアミド誘導体であるのが好ましい。任意に置換されているN−アルキル化2−オキソ−アゼパニル誘導体の例としては、これに限定されるものではないが、国際特許出願PCT/EP02/05503号に記載の化合物、例えば、2−[5−(ヨードメチル)−2−オキソ−1−アゼパニル]ブタンアミドが挙げられる。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、LBSに結合するピラセタムの誘導体又は類似体である化合物又は薬剤を含む。またかかる化合物には、アニラセタム(aniracetam)及びネフィルアセタム(nefiracetam)等の分子が含まれる。好ましい実施形態では、ピラセタムの誘導体又は類似体は、SV2A又は他のSV2ファミリーメンバーの活性を調節するものである。
【0062】
III.アッセイ形式
本発明のアッセイには、神経障害(例えば、発作、てんかん、パーキンソン病、パーキンソン病ジスキネジー、片頭痛、アルツハイマー病、神経障害性疼痛、本態性震顫、認知障害、運動障害)内分泌障害、及び副腎髄質関連疾患(例えば低血糖及び循環ショック)の処置のために有用な薬剤又は化合物を同定する方法が含まれる。本発明のアッセイにはまた、例えば、認知の動物モデルにおいて(in animal models of cognition)測定され得るような、認知増強効果を有する薬剤又は化合物を同定する方法が含まれる。特に、本発明のアッセイには、SV2AのLBSへの結合の点でLEV又はその類似体若しくは誘導体と競合するか、LBSへの結合の点でLEV又はその類似体若しくは誘導体を置換し、又はそれらによって置換されるか;或いは、LBSへの結合の点でLEV又はその類似体若しくは誘導体を阻害し、又はそれらによって阻害される、薬剤又は化合物を同定する方法が含まれる。
【0063】
LEV、ucb 30889(図15B)及び上記に記載されるようなLEVの他の誘導体又は類似体は、SV2AのLBSに結合する新規な化合物又は薬剤をスクリーニングするためのアッセイにおける結合剤として、本発明の方法において有用である。このようなアッセイの実施形態において、LEV、ucb 30889及び誘導体又は類似体は、修飾なしで使用され得、又は種々の方法で;例えば、検出可能なシグナルを直接的に又は間接的に提供する部分を、例えば共有結合又は非共有結合で標識することによって修飾され得る。これらのアッセイのいずれかにおいて、材料は直接的又は間接的のいずれかで標識され得る。直接的標識に可能なものは、以下のような標識グループが含まれる:放射性標識([3H]、[14C]、[32P]、[35S]、又は[125I]を含むがこれらに限定されない)、酵素(例えばペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼなど)、及び蛍光標識(蛍光強度、波長シフト、又は蛍光偏光の変化をモニターすることができる、フルオレセイン又はローダミンを含むがこれらに限定されない)。さらに、FRET技術が、リガンドと、SV2AのLBSとの間の相互作用を分析するために使用され得る。間接的に標識するための可能なものとしては、1つの構成要素のビオチン化、その後の、上記の標識基の1つと結合したアビジンへの結合又は抗リガンド抗体の使用が含まれる。化合物はまた、その化合物が固体支持体に結合される場合、スペーサー又はリンカーを含み得る。
【0064】
SV2AのLBSへの結合に関し、LEV及びucb 30889及び誘導体と競合又は相互作用する薬剤又は化合物を同定するために、SV2Aを含有する、インタクトな細胞、細胞断片、又は膜断片又は完全なSV2Aタンパク質又はSV2Aタンパク質のLBSを含む断片が使用され得る。この薬剤又は化合物は、LEV又はその類似体若しくは誘導体とのインキュベーションの前に、それと同時に、又はその後で、細胞、膜、SV2タンパク質、又は断片とともにインキュベートされ得る。本発明のアッセイは、SV2タンパク質、シナプス小胞、神経伝達、及び/又は内分泌細胞機能、並びにCa2+を含む2価カチオンのシナプス前蓄積について知られている任意の特性又は機能を測定することができる。アッセイの終点として測定し得るSV2タンパク質の特性又は機能の例には以下が含まれるがこれらに限定されない:リン酸化状態、Ca2+を含む2価カチオンの結合;膜輸送;シナプス小胞への、及び/又はシナプス小胞からの2価カチオン(Ca2+を含む)の輸送;シナプス小胞への、及び/又はシナプス小胞からの神経伝達物質(アミン、アセチルコリン、興奮性神経伝達物質、GABA、セロトニン、及びグリシンを含むがこれらに限定されない)の輸送;他のタンパク質(ラミニン及びシナプトタグミンを含むがこれらに限定されない)との相互作用;タンパク質分解に対する感受性、又は生化学的若しくは生物物理学的特性の他の変化によって測定されるような、コンホメーション変化;2価カチオンチャンネル形成;タンパク質複合体の形成又は解離;シナプス小胞機能;融合;エクソサイトーシス;並びにシナプス小胞再循環。
【0065】
本発明のアッセイは、任意の利用可能な様式で改変又は準備することができ、これには、SV2A又はSV2Aタンパク質のLBSへの、LEVの結合又はその誘導体若しくは類似体の結合をモニターする高スループットアッセイが含まれる。化合物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所定の期間内に調査される化合物の数を最大化するために高スループットアッセイが所望される。このようなスクリーニングアッセイは、SV2Aを含むインタクトな細胞、細胞断片、又は膜断片、並びに無細胞系又は膜を含まない系(例えば、精製されたか、又は半精製されたタンパク質を用いて誘導され得る)を使用し得る。SV2Aを含む膜断片又は精製されたSV2Aタンパク質及びペプチドを用いるアッセイの利点は、試験化合物の細胞毒性及び/又は生物学的利用能の作用を一般的に無視できることにあり、それに替え、アッセイは、分子標的に対する薬物の効果に主として焦点が当てられるので、例えば、2つの分子間の結合の阻害を明白にすることができる。
【0066】
競合スクリーニングアッセイの1つの実施形態において、アッセイは、SV2A又はLBSを含むSV2Aの断片へのucb30889の結合、或いはSV2A又はLBSを含むSV2Aの断片へのLEV、又はその誘導体若しくは類似体の結合を阻害する試験薬剤又は化合物の能力を検出するように処方され得る。競合スクリーニングアッセイの別の実施形態において、アッセイは、SV2A又はLBSを含むSV2Aの断片への試験薬剤又は化合物の結合を阻害する、ucb30889の能力、又はLEV、若しくはその誘導体若しくは類似体の能力を検出するように処方され得る。複合体形成の阻害は種々の技術によって検出され得る。例えば、複合体の形成の調節は、例えば、検出可能に標識されたucb30889、LEV、又はLEVの誘導体若しくは類似体を使用して定量され得る。複合体形成の阻害は、SV2AのLBSへの競合的な結合についてアッセイされる薬剤又は化合物の検出可能に標識されたバージョンを使用することによって検出され得る。代替的には、SV2Aタンパク質とリガンドとの間の結合が、標識されたプローブの必要性なしで検出され得る。例えば、表面プラズモン共鳴、核磁気共鳴、又は質量分析法は、このような結合アッセイのために選択される手段である。別の方法は、リガンドの結合によって誘導されるプロテアーゼに対するSV2タンパク質の感受性の変化を測定することである。
【0067】
特定の例において、非複合体形態のものから複合体を容易に分離するため、並びにアッセイの自動化に対応するために、LBS(SV2A又はLBSを含むSV2Aの断片)又はリガンド(LEV、ucb 30889又は試験薬剤若しくは化合物)の一方を固定化することが望ましい。LBSへのリガンドの結合、例えばSV2Aへの候補薬剤又は化合物の結合は、LEV又はucb 30889の存在下又は非存在下において、反応物を含めるために適切な任意の容器中で達成され得る。例としては、マイクロタイタープレート、試験管、及び微量遠心管が挙げられる。1つの実施形態において、融合タンパク質が提供され得、これは、LBSがマトリックスに結合することを可能にするドメインを付加する。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,MO)又はグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着することができ、次いでこれらは、標識したLEV、ucb 30889、又はLEVの誘導体若しくは類似体、及び未標識の試験薬剤又は化合物と合わせられ;或いは代替的には、未標識のLEV、ucb 30889、又はLEVの誘導体若しくは類似体、及び標識した試験薬剤又は化合物と合わせられる。次いで、この混合物は、複合体形成に導く条件下でインキュベートされる。インキュベート後、ビーズを洗浄していかなる未結合反応物も除去し、マトリックスに固定化された標識を直接的に測定するか、又はその後LBS/リガンド複合体を解離した後で上清中で測定する。可能な場合には、複合体は、マトリックスから解離され、SDS−PAGEによって分離され、そのゲルから、標準的な電気泳動技術を使用して、ビーズ画分中に見い出されるリガンドのレベルを定量し得る。
【0068】
マトリックス上にタンパク質を固定化するための他の技術もまた、対象のアッセイにおける使用のために利用可能である。例えば、LBSはビオチン及びストレプトアビジンの結合体化を利用して固定化され得る。ビオチン化分子は当該分野において周知の方法(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals,Rockford,Ill.)を使用して、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシニミド)から調製され得、ストレプトアビジンコートした96ウェルプレート(Pierce Chemical)の壁に固定化され得る。代替的には、LBSと反応性であるがリガンド結合を妨害しない抗体をプレートの壁に誘導体化することができ、この抗体の結合によって壁においてLBSの結合がトラップされる。上記で、リガンド及び試験化合物の調製物は、プレートのタンパク質提示壁においてインキュベートされ、ウェル中にトラップされたタンパク質/リガンド複合体を定量することができる。このような複合体を検出するための例示的な方法としては、上記に記載したものに加えて、リガンドと反応性である抗体を使用する複合体の免疫検出、又は当該タンパク質と反応性であり、リガンドと結合について競合するものが挙げられる。
【0069】
本発明の別の実施形態において、競合的結合アッセイが、SV2結合パートナーを同定するためにLBSを含む細胞又は組織の細胞抽出物を使用して実行され得る。本明細書中で使用される場合、細胞抽出物とは溶解されたか又は破壊された細胞から作られる調製物又は画分をいう。細胞抽出物の好ましい供給源は、ヒト中枢神経組織又は内分泌組織由来の細胞である。特に、細胞抽出物は特定の領域から調製され得、これには海馬、小脳、大脳、大脳皮質、下垂体、髄質、及び副腎が含まれるがこれらに限定されない。さらに、細胞抽出物は、中枢神経系起源又は内分泌系の特定の一次細胞単離物から調製され得、これには神経細胞、星状細胞、及び髄質の内分泌細胞が含まれるがこれらに限定されない。代替的には、細胞抽出物は、利用可能な細胞系、特に神経学的起源又は内分泌起源の細胞系から調製され得る。本明細書中で意図される細胞系には、ラットPC12褐色細胞腫細胞、AtT−20、GH3、及びHIT細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0070】
種々の方法が細胞の抽出物を入手するために使用され得る。細胞は、物理的な破壊方法又は化学的な破壊方法のいずれかを使用して破壊され得る。物理的破壊方法の例としては、超音波処理及び機械的剪断が含まれるがこれらに限定されない。化学的破壊方法の例としては、界面活性剤溶解及び酵素溶解が含まれるがこれらに限定されない。当業者は、本発明の方法における使用のための抽出物を入手するために、細胞抽出物を調製するための方法を容易に適合し得る。
【0071】
一旦細胞の抽出物が調製されると、その抽出物はSV2タンパク質又は断片及び他のアッセイ構成成分と、タンパク質と結合パートナーの結合が起こり得る条件下で混合され、次いで、LEV又はその類似体若しくは誘導体が添加される。代替的には、LEV又はその類似体若しくは誘導体は、試験薬剤又は化合物の前に、又はそれと同時に細胞抽出物に添加することができる。種々の条件が使用され得、最も好ましいものは、ヒト細胞の細胞質において見い出される条件と近似する条件である。例えば、浸透圧、pH、温度、及び使用される細胞抽出物の濃度のような特徴が、結合パートナーとタンパク質の結合を最適化するために変化され得る。
【0072】
適切な条件下での混合後、結合複合体は混合物から分離される。種々の技術が混合物を分離するために利用され得る。例えば、SV2Aに特異的な抗体が結合パートナー複合体を免疫沈降させるために使用され得る。代替的には、標準的な化学的分離技術(例えばクロマトグラフィー及び密度/沈降遠心分離)が使用され得る。
【0073】
抽出物中に見い出される結合していない細胞成分の除去後、結合パートナーは従来の方法を使用して複合体から解離され得る。例えば、解離は、混合物中の塩濃度又はpHを変化させることによって達成され得る。
【0074】
上記に議論したように、混合抽出物からの結合した結合パートナー対の分離を補助するために、LBSを固体支持体に固定化することができる。例えば、LBSは、ニトロセルロースマトリックス又はアクリルビーズに付着することができる。固体支持体へのLBSの付着は、抽出物中で見い出される他の構成成分からペプチド/結合パートナー対を分離するのを補助する。同定された結合パートナーは、単一のタンパク質又は2つ若しくはそれ以上のタンパク質から作られる複合体のいずれかであり得る。代替的には、結合パートナーは、Takayamaら(Methods.Mol.Biol.69:171−184.(1997))の手順に従うFar−Westernアッセイを使用して同定され得るか、又はエピトープタグ化タンパク質若しくはポリ−His融合物若しくはGST融合タンパク質の使用を通して同定され得る。
【0075】
代替的には、生物発光又は蛍光エネルギー移動(それぞれ、BRET及びFRET)及び酵母ツーハイブリッド系を利用する、哺乳動物細胞に基づくタンパク質−タンパク質アッセイが、タンパク質−タンパク質相互作用の同定のためのツールであり得る。
【0076】
SV2タンパク質を介して作用する薬理学的に活性な化合物を同定するための別のアプローチは、野生型及びSV2ノックアウト細胞系、組織、及び動物に対するこのような化合物の効果を分析することによる。例えば、遺伝的と野生型の動物若しくは疾患の組織モデルにおいて試験することによって、又は機能的細胞アッセイに対するスクリーニングによって以前に同定されたかもしれない関心対象の化合物を、機能的SV2タンパク質が減少し若しくは低レベルであるか、又は完全に機能的SV2タンパク質を欠く、細胞、組織、又は動物における等価な又は有益なアッセイにおいて再試験することができる。このようなノックダウン又はノックアウトは、例えば、アンチセンス若しくはRNAi技術を使用することによって、又はゲノムのノックアウト動物を用いて実行することによって得ることができる。
【0077】
ある実施形態において、野生型動物のニューロンにおけるN型カルシウムチャネルを阻害する化合物が同定され、次いで、その化合物を、SV2 mRNA配列に対して標的化されたRNAi又はアンチセンスオリゴを使用してノックダウンしたそれらのSV2タンパク質を有するニューロン、又は代替的には、ゲノムSV2ノックアウト動物からのニューロンについて、同じ条件下で試験する。SV2ノックアウトニューロンにおける効果の欠如は、その化合物がSV2タンパク質を介してそれらの効果を有することの証拠である。
【0078】
別の実施形態において、抗痙攣薬特性を有する化合物が、カリウムが多くカルシウムが少ないてんかん誘発性培地中に浸漬した野生型ラット海馬スライスのCA3領域において記録されるてんかん様電場電位を阻害するそれらの能力を試験することによって同定される。抗痙攣薬特性を示す化合物は、SV2ノックアウト又はノックダウン海馬スライスを使用して同じアッセイにおいて試験され得る。効力の欠如がSV2タンパク質発現なしでスライス中で観察される場合、これはSV2タンパク質との相互作用によって媒介される効果を強力に支持する。
【0079】
別の実施形態において、LBSに結合する化合物又は薬剤のシナプス前2価カチオン貯蔵に関する効果は、ノックアウト又はノックダウンマウスにおいて研究され得る。特定の実施形態において、野生型及びSV2ノックアウト又はノックダウンマウスに、LBSに結合する一定量の化合物又は薬剤を投与する。動物を屠殺し、そして脳を直ちに取り出し、瞬間的に凍結させる。薄い凍結乾燥した凍結切片の元素画像化を実行し、シナプス前神経末端の基本組成を電子プローブx線微量分析及び特徴的なx線の元素画像化によって測定した。このような方法の例は、Andrewsら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84(6):1713−1717(1987))によって開示されている。
【0080】
IV.SV2のin vitro特徴付け
本発明は、SV2タンパク質のファミリーの機能的特徴付けを含む。1つの実施形態において、本発明は、ラット型及びヒト型の両方のSV2タンパク質、SV2A、SV2B、SV2C、及び関連するシナプス小胞タンパク質SVOPのクローニング及び発現を含む。別の実施形態において、本発明はさらに、LBSを含むドメインの同定を含む。さらなる実施形態において、本発明は、SV2タンパク質の可能な複数の機能の発見、並びにこれらの機能に対するレベチラセタム及び関連リガンドの効果の発見を含む。
【0081】
さらなる実施形態において、本発明は、機能の研究のための真核生物宿主細胞におけるSV2タンパク質の発現を含む。このタンパク質は、その天然の形態で、又は蛍光若しくは他のペプチドタグ(エピトープタグ及びアフィニティータグを含む)を伴う融合物として発現され得、このタンパク質の変異型又は断片が発現及び試験され得、このタンパク質及び相同タンパク質の融合物が発現及び研究され得る。異種発現されたSV2は、電気生理学、顕微鏡検査、又は他の技術を使用してin si−tuで試験され得;又は、これは、電気生理学又は他の技術を使用して真核生物からの機能型で発現及び精製され得る。
【0082】
1つの特定の実施形態において、上記のように天然の又は改変されたSV2タンパク質は、真核生物宿主において発現及び精製され得る。このタンパク質は、精製されかつ研究のために人工脂質ベシクル又は人工二重膜に組み込むことができる。SV2タンパク質の可能な輸送機能は、生化学的手段、例えば、ベシクル中への又はベシクルからの放射活性標識した基質の輸送を測定することによって試験することができる。別の可能なアプローチは、電気生理現象を使用して、合成ベシクル又は人工脂質膜に組み込まれた精製タンパク質についてこのような輸送を研究することである。
【0083】
別の特定の実施形態において、本発明は、原核生物宿主、例えばE.coli中でのSV2タンパク質の発現及び精製を含む。別の特定の実施形態において、本発明は、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisie又はPichia Pastoris)、COS−7、HEK293、及びPC12a細胞を含む、真核生物宿主中でのSV2タンパク質の組換え発現及び精製を含む。本発明に従って、SV2タンパク質、そのポリペプチドの断片、その融合タンパク質又は機能的等価物をコードするポリヌクレオチド配列は、適切な宿主細胞中でのSV2タンパク質の発現を指向する組換えDNA分子を生成するために使用され得る。遺伝コードの固有の縮重に起因して、実質的に同じか又は機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列がSV2をクローニング及び発現するために使用され得る。当業者によって理解されるように、天然に存在しないコドンを有するSV2をコードするヌクレオチド配列を産生することが有利であり得る。特定の原核生物又は真核生物の宿主によって好まれるコドン(Murrayら、Nuc.Acids.Res.17:477−508(1989))が、例えば、SV2発現の速度を増大するために、又は所望の特性(例えば、天然に存在する配列から産生された転写物よりも長い半減期など)を有する組換えRNA転写物を産生するために選択され得る。
【0084】
別の実施形態において、本発明のSV2タンパク質は、他のタンパク質とともに宿主細胞中で組換え的に(recombinantly)同時発現される。SV2は通常、シナプス小胞に結合する。好ましい実施形態において、SV2タンパク質はSNARE複合体タンパク質(ベシクル結合VAMP/シナプトブレビン、シンタキシン、及びSNAP−25を含む)と同時発現される。好ましい実施形態において、SV2Aは、組換え的に発現されるシナプトタグミンとともに、組換え的に宿主細胞中で同時発現される。
【0085】
別の実施形態において、SV2タンパク質の機能、安定性、及び相互作用におけるグリコシル化、リン酸化、及び他の天然の又は導入されたタンパク質修飾の役割が分析される。本発明のSV2タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、種々の理由で(これには以下が含まれるがこれらに限定されない:遺伝子産物のクローニング、プロセッシング、及び/又は発現を改変する変化;結合パートナーとのSV2タンパク質の相互作用を改変する変化;SV2タンパク質の可溶性及び/又は膜挿入の変化;並びにLBS及びそのリガンドとの結合に影響を与える変化)SV2タンパク質をコードする配列を変化させるために、当該分野において一般的に公知である方法を使用して遺伝子操作することができる。ランダム断片化並びに遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのPCR再アセンブリーによるDNAシャッフリングを使用して、ヌクレオチド配列を遺伝子操作することができる。例えば、部位特異的変異誘発を使用して、新規な制限部位を挿入し、グリコシル化パターンを変化し、コドン優先度を変化させ、スプライシング改変体を産生し、又は変異を導入する、などを行うことができる。
【0086】
シナプスにおけるエキソサイトーシスに際して、Ca2+レベルの増加に応答して、小胞がシナプス前原形質膜でクラスター化し、かつ融合する。シナプス内にCa2+が蓄積すると、SV2Aへのシナプトタグミンの結合は阻害され、2つのシナプトタグミンCa2+結合ドメイン(C2B)の二量体化が刺激され、これは、SNARE複合体を組織化すること、及び融合を促進することにおいて役割を果たし得る。低Ca2+においては、SV2Aがなおシナプトタグミン複合体に結合しているので、小胞の融合は阻害される。他のタンパク質(ATPアーゼVCP、SNAREタンパク質SNAP−25及びシンタキシンを含む)へのシナプトタグミンの結合はCa2+依存性である(Augustine、2001)。このエキソサイトーシス機構を明らかにするために、及び融合プロセスにおけるSV2Aの役割をより正確に規定するために、LBSの変化に応答するこれらの複合体中のタンパク質レベルの変化がアッセイされる。特定の実施形態において、SV2Aとシナプトタグミン−SNARE複合体との間の相互作用を調節するLBSリガンドの能力、並びに複合体アセンブリーのどの段階が、及びどのパートナーが、LEV、その類似体若しくは誘導体、又は、LBSへの結合に対してLEVと競合する化合物若しくは薬剤の、SV2Aへの結合によって調節されるのかを評価するその能力が調べられた。1つのこのような実施形態において、リガンド添加後の複合体中のタンパク質化学量論が、同定されたSV2Aパートナーに特異的な抗体、並びに免疫沈降及び組換えGST−融合タンパク質アフィニティークロマトグラフィーを使用して分析される。
【0087】
別のこのような実施形態において、質量分析法及び/又は表面プラズモン共鳴が使用されて、SV2Aとそのパートナー(例えば、シナプトタグミン)又は結合ドメイン由来の短いペプチドとの間の相互作用に対するLBSリガンドの効果を検出する。別の特定の実施形態において、生化学的アプローチが使用されて、LBSリガンドが二価イオン(例えば、Ca2+、Pb2+、Zn2+)と競合し、SV2A及び/又はシナプトタグミンとのそれらの相互作用を阻害するか否かを実証する。別の特定の実施形態において、シナプス小胞融合物におけるSV2タンパク質の役割及び再循環が、PC12a細胞系、初代神経細胞培養、クロム親和細胞、並びに、SV2タンパク質とGFPとの間の融合構築物を発現する他の細胞系又は初代単離物の作製によって分析される。1つのこのような実施形態において、これらの細胞系は、SV2複合体並びにシナプス小胞のエキソサイトーシス及び輸送の蛍光顕微鏡トラッキング、並びにこれらの事象に対するLBSリガンドを用いる処理の効果によって分析される。上記の細胞型はまた、小胞融合及びエキソサイトーシスを判定するために(小胞中にカプセル化された色素を使用して、又は標識した神経伝達物質の放出を測定して)、及びこれらの活性を調節するLBSリガンドの能力を判定するために使用され得る。
【0088】
SV2タンパク質及びその結合パートナーを特徴付けする他の実施形態において、全体の複数タンパク質複合体の富化が、GST−融合SV2又は抗SV2抗体を使用するアフィニティーに基づく方法によって達成される。特定の実施形態において、SV2Aは、GSTタグを伴って、PC12細胞中で過剰発現され、そして、その結合パートナーとともに、タグに対する抗体によって免疫沈降される。関連する実施形態において、SV2Aは、GST又はポリヒスチジンタグを使用して、アガロースビーズ上に固定化される。好ましい実施形態において、シナプスベシクル抽出物、細胞抽出物、又は脳抽出物はビーズとともにインキュベートされ、SV2Aが切断され、そして溶出したタンパク質が1D又は2Dゲルによって分離され、かつ分析される。さらなる実施形態において、これらのタンパク質の同定は、新規な推定の相互作用パートナーについてデータベースを検索するために使用される。別の実施形態において、酵母ツーハイブリッド(Y2H)系又は哺乳動物細胞に基づくタンパク質−タンパク質アッセイが、生きている生物体におけるタンパク質−タンパク質相互作用の同定のために使用されて、アフィニティーに基づく方法によって見い出されたSV2結合パートナーを確認し、及び公知のcDNAを使用する特異的タンパク質ドメイン相互作用を規定する。
【0089】
SV2タンパク質に特異的な抗体は、ポリペプチド又は抗原断片の適切な動物への接種によって産生され得る。LBSに特異的な抗体は、全長SV2タンパク質又はLBSを含む断片を用いる接種によって産生され得る。抗体は、それがそのポリペプチドのエピトープに対して産生され、かつその天然又は組換えタンパク質の少なくとも一部に結合するならば、特定のSV2に特異的である。SV2又はLBSに特異的なモノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体は、抗体産生のための当該分野において周知の多数の方法のいずれかによって産生され得、これは例えば、Harlow及びLane(Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York.(1988))によって教示されている。抗体誘導のためのSV2ペプチドは生物学的活性を必要としないが、ペプチドは免疫原性でなくてはならない。特異的抗体を誘導するために使用されるペプチドは、少なくとも5アミノ酸、好ましくは少なくとも10アミノ酸からなるアミノ酸配列を有し得る。これらは、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部を模倣するはずであり、小さな、天然に存在する分子の完全アミノ酸配列を含み得る。SV2アミノ酸の短鎖は別のタンパク質(例えばキーホールリンペットヘモシアニン及びキメラ分子に対して産生された抗体など)のものと融合され得る。抗体産生は、動物への注射による免疫応答の刺激のみならず、合成抗体又は他の特異的結合分子の製造における類似の工程(例えば、組換え免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(例えば、Orlandiら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:3833−3837.(1989);Huseら、Science 256:1275−1281.(1989))を参照のこと)又はリンパ球集団のin vitro刺激)もまた含む。現在の技術(Winter G.及びMilstein C.(1991)Nature 349:293−299)は、抗体形成の原理に基づく多数の高度に特異的な結合試薬を提供する。これらの技術は、SV2又はLBSに特異的に結合する分子を産生するために適用することができる。
【0090】
特定の実施形態において、本発明は、配列番号6のヒトSV2Cタンパク質及びそれをコードする核酸分子(配列番号5)、並びにその対立遺伝子改変体及び機能的等価物を含む。本発明はさらに、SV2Cタンパク質のin vivo分布の同定を含み、これには、中枢神経系、末梢神経系、並びに内分泌細胞及び組織が含まれるがこれらに限定されない。本発明はさらに、SV2Cタンパク質のリガンド及び/又は結合パートナーの同定を含む。本発明はさらに、SV2Cタンパク質の機能の解明を含む。
【0091】
V.疾患におけるSV2発現
本発明は、特定の神経学的疾患に関連するSV2タンパク質の発現を解明することを含む。特定の実施形態において、SV2Aに特異的な抗体が、対照動物、並びに、てんかん、てんかん発作、パーキンソン病及び認知欠損、他のCNS障害(上記を参照のこと)及び内分泌障害及び副腎髄質関連疾患を模倣する動物の、脳、脊髄、及び神経内分泌組織又は細胞(例えばクロム親和細胞)中で領域特異的な様式で脳組織をプローブするために使用される。別の実施形態において、本発明は、上記の病理に対するすべてのSV2タンパク質アイソフォームの関連性の解明を含み、これにはアイソフォームの変化又はスイッチングが含まれる。好ましい実施形態において、DNAマイクロアレイが、異なる神経学的疾患に関連する、SV2タンパク質コード配列の発現、及びその変化について調査される。特定の核酸配列の発現を決定するためにDNAマイクロアレイを使用する例は、米国特許第5,900,882号において見い出すことができる。別の好ましい実施形態において、シナプス小胞機能に付随する神経学的障害と関連する局所的又は全体的なSV2タンパク質発現の変化が定量的PCR(qPCR)によって確証される。
【0092】
別の実施形態において、ノックアウトマウスがLBSの存在について分析される。好ましい実施形態において、致死性SV2Aノックアウト表現型、SV2B又は二重KO SV2A/Bを有するマウスからの精製されたシナプス小胞が精製され、LBSの存在について並びに基質及び/又はイオンの取り込みについて、野生型マウスからのシナプス小胞と比較して分析される。
【0093】
特定の実施形態において、例えば、疾患関連タンパク質の検出のためのシナプス小胞のタンパク質マッピングのために、健常動物及び疾患(上記に記載された病理を含むがそれらに限定されない)を有する動物から精製されたシナプス小胞におけるタンパク質発現レベルの比較がなされる。特定の実施形態において、健常状態及び疾患状態に由来するシナプス小胞の1Dゲル及び/又は2Dゲルの比較が、疾患特異的様式でアップレギュレート又はダウンレギュレートされるタンパク質を同定するために使用される。別の実施形態において、標的は、野生型からのシナプス小胞のプロテオームと、SV2ノックアウトマウス又は二本鎖RNA誘導性干渉(RNAi;Krichevskyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(18):11926−11929.(2002))培養神経細胞のプロテオームの比較によって同定される。別の実施形態において、本発明は初代神経細胞培養、培養された神経細胞又はPC12細胞で、RNAi又はアンチセンスヌクレオチドを実行して、SV2発現を阻害又は除去することを含む。
【0094】
VI.SV2タンパク質LBSの位置の決定
多数の方法が、LBSの位置の決定において利用される。LBSはアミノ酸残基の連続するセグメントから構成されるか、又は、1つ又は複数の細胞外又は細胞内のループ又はドメイン上に存在するアミノ酸配列から構成される3次元構造であり得る。さらに、LBSは、SV2タンパク質のグリコシル化に依存するかもしれないし、又はSV2タンパク質のグリコシル化を必要としないかも知れない。
【0095】
特定の実施形態において、放射性リガンドを使用して、LBSを特異的に光親和性標識する。特定の実施形態において、放射性リガンドの共有結合の部位は、光親和性標識されたシナプス小胞からのタンパク質分解断片を、SV2A抗体アフィニティークロマトグラフィー又は免疫沈降及び質量分析法を用いて、精製及び配列決定することによって決定される。
【0096】
LBSリガンドとSV2Aタンパク質との間の相互作用に関与するタンパク質ドメインの同定のための特定の実施形態において、SV2タンパク質の断片、又はアミノ酸の欠損、付加、若しくは置換を有するSV2タンパク質が結合に対する効果について分析される。好ましい実施形態において、選択された残基はcDNAの部位特異的変異誘発によって改変される。別の実施形態において、ドメインはSV2アイソフォーム間で交換され、リガンド認識のために重要であるアイソフォームの構造的特徴が同定される。この実施形態の例において、SV2AのN末端ドメインをSV2Bのより短い等価な領域と置換して、LBSリガンド結合に関する効果を決定する。この実施形態の別の例において、SV2Aの領域とSVOPの領域の間で一連の交替をして、リガンド結合に対する効果を決定する。このような交替は各タンパク質の大きな領域を含み得、例えば、複数の膜貫通領域、並びにタンパク質の小さな領域(例えば個々の膜貫通領域を含む)を含む。
【0097】
別の実施形態において、SV2タンパク質(又は選択された結合ドメイン)の3次元構造が、NMRスペクトル分析又はx線結晶解析又は円二色性偏光又は赤外スペクトル分析を使用して、LBS部位の位相(トポロジー)を解明するために少なくとも維持された結合活性を有する純粋なSV2A、及びそのレセプターに適合するような新規な薬物の設計を利用して分析される。研究中の結合ドメインが疎水性環境を必要とするならば、そのタンパク質は、ドデシルマルトシド又は誘導体のような界面活性剤中で可溶化しなくてはならない(実施例を参照されたい)。精製されたタンパク質は、当該分野において公知の方法によって、例えば、A.McPherson「タンパク質血漿の調製及び分析(Preparation and analysis of Protein Crystals)」(John Wiley and Sons,New York,(1982))によって開示される方法によって結晶化され得る。代替的には、本発明のSV2タンパク質は、当該分野において使用される蒸気拡散及び蒸気拡散装置によって結晶化され得、本発明のプロセスにおいて容易に利用され得る。このような装置は、例えば、米国特許第4,886,646号;同第5,096,676号;同第5,130,105号;同第5,221,410号及び同第5,400,741号(これらの開示は本明細書において参照として援用される)において開示されている。SV2タンパク質構造のx線結晶解析による決定並びにリガンド及び/又は結合パートナーとのその結合は、例えば、米国特許第5,978,444号において開示されるような方法及び画像解析システムを使用して実行され得る。
【0098】
ある実施形態において、SV2タンパク質(アイソフォームSV2A、SV2B、及びSV2Cを含む)は宿主細胞系において組換え的に発現され、各アイソフォームについての結合アッセイにおいて、多様なセットの化合物又は薬剤をスクリーニングする。SV2Aアイソフォームと相互作用する化合物又は薬剤は、他のSV2アイソフォームとの相互作用について分析される。別の実施形態において、結合実験が、いくつかの参照薬物、AED、ステロイドを試験するために、及びネイティブなLBS、ヒト及びラットの組換えSV2Aの間の結合の反応動力学を比較するために実行される。
【0099】
VII.本発明の薬剤のための使用
本発明は、SV2タンパク質の調節のための本発明の方法によって同定される化合物又は薬剤の使用を含む。本発明の化合物又は薬剤は、シナプス小胞機能を調節するために;特にシナプス小胞機能に関連する障害、若しくはシナプス小胞機能のある面に影響を与えることによって改善され得る障害を調節するため、又は、シナプス小胞機能を調節して、シナプス前機能の障害、若しくはシナプス小胞機能の補償的変化によって修復され得る神経細胞シグナル伝達の障害を修正するためにもまた、使用され得る。本明細書中で使用される場合、化合物又は薬剤が、シナプス小胞機能を調節するとは、それがシナプス小胞又はシナプス前系(シナプス小胞がこれと相互作用する)の少なくとも1つの成分の少なくとも1つの機能をアップレギュレート又はダウンレギュレートすることができる場合を言うものとする。
【0100】
好ましい実施形態において、薬剤又は化合物はLEV又はその類似体若しくは誘導体である。別の好ましい実施形態において、化合物又は薬剤はSV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合する。さらに別の好ましい実施形態において、化合物又は薬剤は、レベチラセタム結合部位への結合について、レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する。なお別の好ましい実施形態において、神経学的障害の処置のための本発明の薬剤には、上記のようなN−アルキル化2−オキソ−ピロリドン誘導体、N−アルキル化2−オキソ−ピペリジニル誘導体、及びN−アルキル化2−オキソ−アゼパニル誘導体が含まれる。
【0101】
好ましい実施形態において、化合物又は薬剤は抗SV2抗体又はその断片であり、SV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合するものが含まれ、これは、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。関連する好ましい実施形態において、抗体断片はFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、又はscFv断片であり、一方モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0102】
好ましい実施形態において、本発明は、例えば、SV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露することによって、細胞中でSV2タンパク質の少なくとも1つの機能又は活性を調節することを含む。特定の実施形態において、細胞中でのSV2タンパク質の少なくとも1つの機能又は活性の調節は、in vitro、in vivo、in situ、及びex vivoでの化合物又は薬剤への細胞の曝露を含む。本明細書中で使用される場合、SV2の機能の調節は、シナプス小胞の膜を横切るイオン又は他の天然の物質の輸送の調節、SV2タンパク質の、その天然のリガンドへの結合の調節、SV2タンパク質の、上記のような結合パートナーへの結合の調節、及びシナプス小胞の形成、融合、制御、又は機能の再調節を含むがこれらに限定されない。
【0103】
好ましい実施形態において、細胞におけるSV2タンパク質の調節には、細胞中でのシナプス小胞機能の調節が含まれる。本明細書中で使用される場合、本発明の方法によって同定される化合物又は薬剤によって調節され得るシナプス小胞機能は、シナプス前神経細胞におけるシナプス小胞の形成、他のシナプス小胞又はシナプス膜とのシナプス小胞の融合、シナプス小胞の再循環又は回転、シナプス前グリッド(presynaptic grid)とのシナプス小胞の結合、及び神経伝達物質の放出、細胞外マトリックスからのタンパク質(例えば、ラミニン−1など)との結合、及びシナプス後密度(post−synaptic densities)を含むがこれらに限定されない。
【0104】
特定の実施形態において、細胞中でSV2タンパク質の少なくとも1つの機能又は活性を調節する本発明の化合物又は薬剤への細胞の曝露は、細胞の環境中の一価カチオン及び/又は2価カチオンの濃度が制御される条件下で実行される。好ましい実施形態において、2価カチオンは、Ca2+、Zn2+、Pb2+、Mg2+、Mn2+、Fe2+、及びCu2+の少なくとも1つである。好ましい実施形態において、一価カチオンはK+である。特定の実施形態において、レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露することは、低い一価カチオン及び/又は2価カチオンの濃度、すなわち、約1μM未満の条件下で実行される。別の特定の実施形態において、レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露することは、生理学的な一価カチオン及び/又は2価カチオンの濃度、すなわち、約1μM〜約1000μMの間の条件下で実行される。なお別の特定の実施形態において、レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露することは、高い一価カチオン及び/又は2価カチオンの濃度、すなわち、少なくとも約1000μMより上の条件下で実行される。
【0105】
VIII.神経学的障害の治療
本発明の方法によって同定される化合物又は薬剤を、シナプス小胞機能に関連する神経学的障害を処置するために有効な量で使用することができる。特定の実施形態において、化合物又は薬剤を用いる治療は、神経学的障害をする。好ましい実施形態において、神経学的障害は、痙攣障害である。別の好ましい実施形態において、神経学的障害は、パーキンソン病、パーキンソン運動障害、片頭痛、アルツハイマー病、神経障害性疼痛、本態性震顫、及び認知障害からなる群より選択される。高度に好ましい実施形態において、神経学的障害はてんかんである。別の高度に好ましい実施形態において、化合物又は薬剤を用いる治療は、認知機能を増強する。
【0106】
好ましい実施形態において、薬剤又は化合物はLEV又はその類似体若しくは誘導体である。別の好ましい実施形態において、化合物又は薬剤はSV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合する。さらに別の好ましい実施形態において、化合物又は薬剤は、レベチラセタム結合部位への結合について、レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する。なお別の好ましい実施形態において、神経学的障害を治療するための本発明の薬剤には、上記のように、N−アルキル化2−オキソ−ピロリドン誘導体、N−アルキル化2−オキソ−ピペリジニル誘導体、及びN−アルキル化2−オキソ−アゼパニル誘導体が含まれる。
【0107】
好ましい実施形態において、化合物又は薬剤は抗SV2抗体又はその断片であり、SV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合するものが含まれ、これらは、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。関連する好ましい実施形態において、抗体断片はFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、又はscFv断片であり、一方、モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0108】
本明細書中で使用される場合、哺乳動物が本発明の方法によって同定可能な化合物又は薬剤によって媒介されるSV2タンパク質の機能又は活性の調節の必要がある限り、対象は任意の哺乳動物であり得る。哺乳動物という用語は、哺乳綱に属する個体として定義される。本発明は、ヒト対象の処置において特に有用である。
【0109】
本明細書中で使用される場合、「有効な量」は、疾患、状態、又は他の投与された物質、化合物、若しくは薬剤の少なくとも1つの徴候又は効果を、in vivo、ex vivo、又はin vitroで、阻害、減少、緩和、調節、又は制御するのに有効な、物質、化合物、又は薬剤の量である。さらに本明細書中で使用される場合、「有効な量」は、in vivoで少なくとも1つの認知機能を増強するのに有効である物質、化合物、又は薬剤の量である。
【0110】
本明細書中で使用される場合、薬剤は、その薬剤が神経学的障害の少なくとも1つの徴候の程度又は重症度を減少させる場合に、神経学的障害を調節する(modulate)と言われる。例えば、てんかんにおける痙攣が予防され得る;本発明のSV2タンパク質の発現又は少なくとも1つの活性を、何らかの方法で、アップ若しくはダウンレギュレート又は調節する、化合物又は薬剤の投与によって、痙攣の振幅、大きさ、又は重症度が減少され得るか、又は痙攣の発生の頻度が減少され得る。
【0111】
本発明の方法によって同定される化合物又は薬剤は、単独で提供されるか、又は特定の病理学的プロセスを調節する他の化合物又は薬剤と組み合わせて提供され得る。例えば、本発明の化合物又は薬剤は、他の公知の薬物と組み合わせて投与され得る。本明細書中で使用される場合、2つの薬剤は、それらの薬剤が同時に作用するような様式で、同時に投与されるか、又は独立して投与される場合に、組み合わせて投与されると言われる。本発明の特定の実施形態において、本発明の方法によって同定される化合物又は薬剤は、脳においてGABA作動性経路を調節する化合物又は薬剤と組み合わせて提供され得る。別の実施形態において、本発明の化合物は、L−DOPAの組み合わせ治療及び遅発性ジスキネジーのためにアマンタジンと一緒に投与される。
【0112】
本発明の化合物又は薬剤は、非経口的、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、硬膜外、経皮的、局所的、又は経粘膜、又はこれらの組み合わせを介して投与され得る。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康状態、及び体重、もしあれば、同時処置の種類、処置の頻度、及び所望される効果の性質に依存する。薬物の溶解性及び吸収の部位は、治療剤の投与の経路を選択するときに考慮されるべき要因である。
【0113】
本発明はさらに、SV2タンパク質の発現又は少なくとも1つの活性を調節する、1種又は複数の本発明の化合物又は薬剤を含む組成物を含む。個々の必要性は変化するが、各成分の有効な量の最適範囲の決定は当業者の範囲内である。代表的な投薬量は、約0.1から約100mg/kg体重を含む。好ましい投薬量は約5から約80mg/kg体重を含む。より好ましい投薬量は約10から約60mg/kg体重を含む。最も好ましい投薬量は約20から約40mg/kg体重を含む。
【0114】
薬理学的に活性な薬剤に加えて、本発明の組成物は、適切な薬学的に許容される担体を含み得る。この担体は、賦形剤及び助剤を含み、これらは、作用の部位への送達のために薬学的に使用され得る調製物への活性化合物の加工を容易にする。
【0115】
化合物又は薬剤は、注射、例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために処方され得る。非経口投与のための適切な処方物には、水溶性型(例えば、水溶性塩)の活性化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液、必要に応じて、油性注射懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、脂肪油(例えばゴマ油)、又は合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリド)が含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質が含まれ得、これには、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランが含まれる。リポソームもまた、細胞への送達のために薬剤をカプセル化するために使用され得る。注射のための処方物は、単位用量形態で、例えば、保存剤を加えた、アンプル又は複数用量コンテナ中で提供され得る。本発明の組成物は、油性又は水性ビヒクル中での、懸濁液、溶液、又はエマルジョンのような形態を取り得、そして懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤のような処方剤を含み得る。代替的には、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、滅菌した、発熱物質を含まない水)との使用前の構成のための粉末形態であり得る。
【0116】
投与の粘膜経路には、経口、直腸、及び鼻の投与が含まれるがこれらに限定されない。粘膜投与のための調製物は、種々の処方において適切である。化合物又は薬剤が水溶性であるならば、これは適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水又は他の生理学的に適合可能な溶液、好ましくは生理食塩水)中で処方され得る。代替的には、得られる複合体が水性溶媒中で乏しい溶解性を有するならば、これは非イオン性界面活性剤(例えばTween)又はポリエチレングリコールとともに処方され得る。従って、化合物及びそれらの生理学的に許容される溶媒は、吸入若しくはガス注入による投与(口又は鼻のいずれかを通して)のために、又は経口、口腔、非経口、若しくは直腸投与のために、又は腫瘍の場合には、固形腫瘍への直接注射で処方され得る。吸入による投与のために、本発明に従う使用のための化合物が、エアロゾルスプレー提示物の形態で、加圧されたパック又は噴霧器から、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガス)の使用を伴って、便利に送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計測された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。化合物及び適切な粉末基剤(例えばラクトース又はデンプン)の粉末混合物を含む、吸入器又はガス注入器における使用のための、例えば、ゼラチンのカプセル及びカートリッジが処方され得る。
【0117】
経口投与のために、医薬製剤は、液体形態で、例えば、溶液、シロップ、若しくは懸濁液であり得、又は使用前に水若しくは適切なビヒクルで再構築するための薬物製品として提供され得る。このような液体調製物は、薬学的に許容される添加物(例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、又は水素化食用脂肪)、乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、又は分画植物油);及び保存料(例えば、メチル若しくはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸又はソルビン酸)とともに、従来的な手段によって調製され得る。医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤、例えば、結合剤(例えば、あらかじめゼラチン化したトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)とともに、従来的な手段によって調製した、例えば、錠剤又はカプセルの形態を取り得る。錠剤は、当該分野において周知の方法によってコートし得る。経口投与のための調製物は、活性化合物の制御された放出を与えるために適切に処方され得る。
【0118】
口腔投与のために、組成物は、従来的な様式で処方された錠剤又はロゼンジの形態を取り得る。
【0119】
化合物又は薬剤はまた、例えば、従来的な坐剤基剤(例えばココアバター又は他のグリセリド)を含む、坐剤又は保持浣腸剤のような直腸組成物中に処方され得る。
【0120】
以前に記載した処方物に加えて、化合物又は薬剤はまた、デポー調製物としても処方され得る。このように長時間作用する処方物は、移植によって(例えば、皮下又は筋肉内に)又は筋肉内注射によって投与され得る。従って、例えば、化合物は、適切なポリマー性若しくは疎水性材料(例えば、許容されるオイル中のエマルジョンとして)とともに、若しくはイオン交換樹脂とともに、又はやや溶解しにくい誘導体として(例えば、やや溶解しにくい塩として)処方され得る。リポソーム及びエマルジョンは、親水性薬物のための送達ビヒクル又は担体の周知の例である。
【0121】
本発明の方法を実施する際に、本発明の化合物又は薬剤は単独で又は組み合わせて使用され得、又は他の治療剤若しくは診断剤と組み合わせて使用され得る。特定の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、抗痙攣剤のような一般的に受容される医学的実施に従う、これらの条件のために代表的に処方される他の化合物又は薬剤と一緒に同時投与され得る。本発明の化合物は、in vivoで、通常、哺乳動物(例えば、ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット及びマウスなど)中で、又はin vitroで、利用され得る。
【0122】
IX.遺伝子治療
治療において使用されるSV2タンパク質は、対象で内因性に、しばしば「遺伝子治療」と呼ばれる治療様式において産生され得る。特定の実施形態において、SV2タンパク質又はその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は、遺伝子治療によって、有害なシナプス形成と関連する神経疾患又は障害を処置、阻害、又は予防するために投与される。遺伝子治療とは、対象への、発現される又は発現可能な核酸の投与によって実行される治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、治療的効果を媒介する、それらにコードされたSV2タンパク質を産生する。
【0123】
当該分野において利用可能である遺伝子治療のための方法のいずれかが、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は以下に記載される。
【0124】
遺伝子治療の方法の一般的な概説としては以下を参照のこと:Goldspielら、Clinical Pharmacy 12:488−505.(1993);Wu及びWu、Biotherapy 3:87−95.(1991);Tolstoshev、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596.(1993);Mulligan、Science 260:926−932.(1993);並びにMorgan及びAnderson、Ann.Rev.Biochem.62:191−217.(1993);TIBTECH11(5):155−215.(1993)。使用され得る組換えDNA技術の分野において一般的に公知の方法は、Ausubelら編、「分子生物学における最近のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley&Sons、NY(1993);及びKriegler、「遺伝子の移入及び発現(Gene Transfer and Expression)」、A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)において記載されている。
【0125】
好ましい局面において、化合物は、SV2タンパク質をコードする核酸配列を含み、この核酸配列は、適切な宿主中でSV2タンパク質又はその断片又はキメラタンパク質を発現する発現ベクターの一部となる。特に、このような核酸配列は、SV2タンパク質コード領域に作動可能に連結されたプロモーターを有し、このプロモーターは、誘導性又は構成的であり、任意に組織特異的である。別の特定の実施形態において、SV2タンパク質をコードする配列及び任意の他の配列が、ゲノム中の所望の部位において相同組換えを促進する領域によって隣接されている核酸分子が使用され、抗体核酸の染色体内発現を提供する(Kollerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935.(1989);Zijlstraら、Nature 342:435−438.(1989))。
【0126】
患者への核酸の送達は直接的であるか(この場合、患者は核酸又は核酸を運ぶベクターに直接的に曝露される)又は間接的であるか(この場合、最初に細胞が核酸でin vitroで形質転換され、次いで患者に移植される)のいずれかであり得る。これらの2つのアプローチは、それぞれ、in vivo又はex vivo遺伝子治療として公知である。
【0127】
特定の実施形態において、遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所的投与(米国特許第5,328,470号を参照のこと)又は定位的注射(例えば、Chenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3054−3057.(1994)を参照のこと)によって、対象にin vivoで送達され得る。遺伝子治療ベクターの医薬製剤は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含み得るか、又は遺伝子送達ビヒクルが組み込まれている徐放性マトリックスを含み得る。代替的には、完全な遺伝子送達ベクターが組換え細胞からインタクトで産生され得る場合(例えば、レトロウイルスベクター)、医薬製剤は遺伝子送達系を産生する1つ又は複数の細胞を含み得る。
【0128】
in vivoでのコードされたSV2タンパク質の発現のための核酸配列の直接的投与は、当該分野において公知である多数の方法のいずれかによって、例えば、適切な核酸発現ベクターの一部としてその配列を構築すること、及びその配列が細胞内になるようにその配列を投与することによって、例えば、欠損性若しくは弱毒化されたレトロウイルスベクター又は他のウイルスベクターを使用する感染(米国特許第4,980,286号を参照されたい)によって、或いは裸のDNAの直接的注入によって、或いは微粒子銃(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupont)の使用によって、或いは脂質又は細胞表面レセプター又はトランスフェクト剤でのコーティング、リポソーム、微粒子、又はマイクロカプセル中でのカプセル化、或いは核に入ることが知られているペプチドへの連結においてそれらを投与することによって、レセプター媒介エンドサイトーシス(例えば、Wuら、J.Biol.Chem.262:4429−4432.(1987)を参照のこと)に供されたリガンドへの連結においてそれを投与することによって(これはレセプターを特異的に発現する細胞型を標的化するために使用され得る)、などによって達成され得る。別の実施形態において、核酸−リガンド複合体が形成され得、ここで、リガンドは、エンドソームを破壊する融合誘導ウイルスペプチドを含み、核酸がリソソーム性分解を回避することを可能にする。なお別の実施形態において、核酸は、特異的レセプターを標的化することによって、細胞特異的な取り込み及び発現のためにin vivoで標的化され得る(例えば、以下のPCT公開を参照のこと:WO 92/06180、1992年4月16日(Wuら);WO 92/22635、1992年12月23日(Wilsonら);WO 92/20316、1992年11月26日;(Findeisら);WO 93/14188、1993年7月22日(Clarkeら);及びWO 93/20221、1993年10月14日(Young))。代替的には、核酸は細胞内に導入され得、そして発現のために相同組換えによって宿主細胞DNA中に組み込まれ得る(Kollerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935.(1989);Zijlstraら、Nature 342:435−438.(1989))。
【0129】
特定の実施形態において、本発明のSV2タンパク質をコードする核酸配列を含むウイルスベクターが使用される。例えば、レトロウイルスベクターが使用され得る(Millerら、Meth.Enzymol.217:581−599.(1993)を参照のこと)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージング及び宿主細胞DNAへの組み込みのために必要とされないレトロウイルス配列が除去されている。遺伝子治療において使用される抗体をコードする核酸配列は、その遺伝子の患者への送達を容易にする1種又は複数のベクターにクローニングされる。レトロウイルスベクターに関する詳細は、Boesenら(Biotherapy 6:291−302.(1994))において見い出され得、これは、幹細胞を化学療法に対してより抵抗性にするために造血幹細胞にmdr1遺伝子を送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載する。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を例証する他の参考文献は以下である:Clowesら、J.Clin.Invest.93:644−651.(1994);Kiemら、Blood 83:1467−1473.(1994);Salmonsら、Human Gene Therapy 4:129−141.(1993);及びGrossmanら、Curr.Opin.in Genetics and Devel.3:110−114.(1993)。
【0130】
アデノウイルスは、遺伝子治療において使用され得る他のウイルスベクターである。好ましい実施形態において、アデノウイルスベクターが使用される。アデノウイルスは分裂していない細胞に感染できるという利点を有する。Kozarskyら、Current Opinion in Genetics and Development 3:499−503.(1993)は、アデノウイルスに基づく遺伝子治療の概説を提供する。Boutら、Human Gene Therapy 5:3−10.(1994)は、アカゲザルの気道上皮に遺伝子を移入するためのアデノウイルスベクターの使用を実証する。遺伝子治療におけるアデノウイルスの他の例は、Rosenfeldら、Science 252:431−434.(1991);Rosenfeldら、Cell 68:143−155.(1992);Mastrangeliら、J.Clin.Invest.91:225−234.(1993);PCT公開WO 94/12649;及びWangら、Gene Therapy 2:775−783。(1995)において見い出され得る。
【0131】
アデノ関連ウイルス(AAV)もまた、遺伝子治療における使用のために提案されてきた(Walshら、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204:289−300.(1993)米国特許第5,436,146号)。
【0132】
遺伝子治療に対する別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、又はウイルス感染のような方法によって、組織培養における細胞に遺伝子を移入することを含む。通常、移入の方法は細胞への選択マーカーの移入を含む。次いで、移入された遺伝子を取り込みかつ発現している細胞を単離するために、細胞を選択下に配置する。次いで、これらの細胞を患者に送達する。
【0133】
この実施形態において、得られる組換え細胞のin vivoでの投与の前に、核酸を細胞に導入する。このような導入は、当該分野で公知の任意の方法(トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスベクター又はバクテリオファージベクターを用いる感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入、マイクロセル媒介遺伝子移入、スフェロプラスト融合などを含むがこれらに限定されない)によって実行され得る。外来性遺伝子の細胞への導入のための多数の技術が当該分野において公知であり(例えば、Loeffler及びBehr、Meth.Enzymol.217:599〜618.(1993);Cohenら、Meth.Enzymol.217:618〜644.(1993);Cline、Pharmac.Ther.29:69−92.(1985)を参照のこと)、レシピエント細胞の必要な発生的及び生理学的機能が破壊されないならば、これらは本発明に従って使用され得る。この技術は細胞への核酸の安定な移入を提供し、その結果、核酸が細胞によって発現可能であり、好ましくは、その細胞子孫によって遺伝されかつ発現可能である。
【0134】
得られる組換え細胞は、当該分野において公知の種々の方法によって患者に送達され得る。組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞又は前駆細胞)は好ましくは静脈内投与される。使用のために想定される細胞の量は所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者によって決定され得る。
【0135】
核酸が遺伝子治療の目的のために導入され得る細胞は、任意の所望の利用可能な細胞型を含み、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋肉細胞、内分泌細胞、肝細胞;血液細胞(例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球など);種々の幹細胞若しくは前駆細胞、特に造血幹細胞又は前駆細胞(例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるもの)が含まれるがこれらに限定されない。好ましい実施形態において、遺伝子治療のために使用される細胞は患者に対して自系である。
【0136】
組換え細胞が遺伝子治療において使用される実施形態において、抗体をコードする核酸配列が細胞に導入され、その結果、これらは細胞又はそれらの子孫によって発現可能であり、次いで組換え細胞がin vivoで治療効果のために投与される。特定の実施形態において、幹細胞又は前駆細胞が使用される。in vitroで単離及び維持され得る任意の幹細胞及び/又は前駆細胞が、本発明のこの実施形態に従って潜在的に使用され得る(例えば、PCT公開 WO94/08598、1994年4月28日;Stemple及びAnderson、Cell 71:973−985.(1992);Rheinwald、Meth.Cell Biol.21A:229.(1980);並びにPittelkow及びScott、Mayo Clinic Proc.61:771.(1986)を参照のこと)。
【0137】
特定の実施形態において、遺伝子治療の目的のために導入される核酸は、コード領域に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含み、その結果、核酸の発現が、転写の適切な誘導因子の存在又は非存在を制御することによって制御可能である。
【0138】
X.ビオチン化リガンドの使用
本発明は、ビオチンタグを含む、放射性標識されていないSV2A/LBSリガンドを提供する。このようなビオチン化リガンドは、放射活性廃棄物を伴わずにより高い処理能力を有するスクリーニングアッセイである点で有用である。
【0139】
例えば、SV2A/LBSリガンドのビオチン化誘導体は、より強力な構造の発見のために、天然の脳膜又は細胞系において発現されたSV2を用いるスクリーニングアッセイ(例えば、結合アッセイ)において使用され得る。SV2Aに結合したビオチンの量は、ストレプトアビジン−フルオレセイン又はアビジン誘導体を使用して定量され得る。
【0140】
ビオチン化リガンドはまた、可溶化、免疫アフィニティー精製、及びクロマトグラフィーの後で、SV2のコンホメーション状態を評価するために有用である。
【0141】
さらに、本発明は、生物学的試料中での標識及び検出のためのリガンドの光活性化可能なバージョンを提供する。光活性化可能なビオチン化リガンドはまた、組織、単離された細胞、亜細胞画分、及び膜からSV2を局在化及び精製するために使用され得る。光活性化可能なビオチン化リガンドはまた、SV2の架橋及びLBSリガンドの結合ドメインの同定のために使用され得る。
【0142】
XII.SV2の可溶化及びアフィニティー精製
本発明は、SV2/LBSタンパク質を可溶化するための方法を提供し、この方法は、界面活性剤で膜を処理する工程を包含する。本発明の方法によって可溶化された膜タンパク質は、結合アッセイ及びタンパク質−タンパク質相互作用アッセイによって評価されるように、活性のままである。
【0143】
手短に述べると、この方法は、膜、例えばラット脳膜を、界面活性剤n−ドデシル−β−D−マルトシドを含む可溶化緩衝液中で、約4℃で2時間インキュベートする工程を包含する。続いて、インキュベートした溶液を遠心分離して、上清から可溶性SV2タンパク質、特にSV2Aタンパク質を収集した。上清中での可溶性SV2Aタンパク質の存在は、抗SV2A抗体を使用するウェスタンブロット分析によって確認された。上清における可溶性SV2Aタンパク質の結合活性は、SV2Aに結合することが知られているリガンド(例えば、レベチラセタム及びucb 30889など)を用いる結合実験を通して測定された。
【0144】
n−ドデシル−β−D−マルトシドの類似体などの他の界面活性剤、例えば、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル−β−D−マルトシドもまた使用され得る。実際、予備データによって、これらの界面活性剤を用いて膜を可溶化して得られた可溶性タンパク質がその結合活性を保持していることが確認された。
【0145】
本発明はまた、可溶性SV2タンパク質のアフィニティー精製及び推定のSV2Aパートナーの同定の方法を提供する。手短に述べると、アフィニティー精製は、可溶化された膜からの上清を抗SV2A抗体とともに約4℃で一晩インキュベートする工程を包含する。次いで、混合物を、回転によって、緩衝液中のプロテインA−セファロースビーズとともに約4℃で約1時間インキュベートした。適切な緩衝液で樹脂を数回洗浄し、免疫精製されたSV2Aタンパク質を含む画分を収集した。
【0146】
アフィニティー精製後にSV2Aの結合パートナーの存在を検出するために、免疫精製画分のウェスタンブロット分析を実行して、シナプトタグミンの存在を検出した(図22)。
【0147】
本発明は、膜結合タンパク質を精製する方法であって、タンパク質を含む膜試料を界面活性剤で可溶化して可溶化複合体を形成させる工程、及び機能的形態にある可溶化した複合体を単離する工程を包含する方法を提供する。界面活性剤は、n−ドデシル−β−D−マルトシド又はその誘導体であり得る、次いで、タンパク質が免疫アフィニティー技術を使用して単離され得る。
【0148】
本発明の方法によって精製されたタンパク質は、タンパク質に対する構造研究(例えば、NMR、X線結晶解析、赤外吸収スペクトル、円二色性偏光、及び当該分野において周知である他の方法)を実行するために使用され得る。本発明はまた、SV2タンパク質相互作用研究を実行するため、並びにSV2と推定のパートナーとの間の相互作用を阻害又は促進するペプチド、分子、及び化合物を検出するための方法を提供する。本発明は、SV2結合パートナーを同定するために使用され得る。
【0149】
本発明は、構造研究のため、及び結合パートナーを同定するために、SV2A、SV2B、及びSV2C膜結合タンパク質を可溶化し、及びそれらをアフィニティー精製するために使用され得る。
【0150】
さらなる記載がなくとも、当業者は、前述の記載及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を製造及び利用し得、並びに特許請求された方法を実施し得ると考えられる。それゆえに、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘するものであり、いかなる場合においても、開示の残りの部分を制限するとは解釈されない。
【実施例1】
【0151】
結合試験のためのレベチラセタム類似体の開発
LEVは脳において優先的に在存する特異的結合部位に結合することが示されている(レベチラセタム結合部位、すなわちLBS:Noyerら、Euro.J.Pharmacol.286:137−146.(1995);Gillardら、2003)。しかし、[3H]LEVはこの部位に対してミリモル濃度のアフィニティーのみを示したので、深い特徴付けを行うことには不適切であった。本実施例は、レベチラセタムの類似体である[3H]ucb 30889、(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタナミドの結合特性を記載する。結合実験を、Noyerら(Euro.J.Pharmacol.286:137−146.(1995))に記載されるように、未精製ラット脳膜上で4℃で行った。平衡研究のためのインキュベーション時間は120分間であった。反応速度論的研究及び競合研究のために、[3H]ucb 30889(30Ci/mmol)を、2mM Mg2+を含むTris−HCl(pH7.4)緩衝液0.5ml中で、1.3nMの濃度で使用した。脳の下部構造におけるLBSの局在は、同様の条件下でインキュベートされた25μm厚スライス上でのオートラジオグラフィーによって評価した。次いで、スライドを、0.5%BSAを含む50mM Tris−HCl(pH7.4)中で、4℃で10分間、2回洗浄し、乾燥させ、そして−20℃で3週間、[3H]Hyperfilmに曝露した。非特異的結合(NSB)は、インキュベーション期間の間に1mM LEVを含めることによって決定した。
【0152】
図1は、[3H]ucb 30889がラット脳皮質においてLBSに可逆的に結合することを示す。結合の反応速度論は二相性であり:結合及び解離のための半減時間はそれぞれ、速い成分(部位の25から50%)については3±2分間及び4±1分間、並びに遅い成分については47±13分間及び61±15分間であった。25℃では反応速度論は劇的に増大し、1成分のみが残った。
【0153】
図2は[3H]ucb 30889の飽和結合曲線が結合部位の均一な集団の標識と適合することを示す。KD及びBmaxはそれぞれ、42±10nM及び5054±704fmol/mgタンパク質であった。Bmaxは、同様の膜調製物における放射性リガンドとして、[3H]レベチラセタムを使用して見積もった値と同様であった(4718±413fmol/mgタンパク質)。
【0154】
特異的結合は試験した末梢組織においては検出できなかった(図3)。実験条件下(150μgタンパク質/アッセイ及び1.3nM放射性リガンド)での検出の限界は、200fmol/mgタンパク質のBmaxであった。このことは、末梢と比較して、大脳皮質においては少なくとも25倍多い結合部位が存在することを示唆する。
【0155】
競合結合曲線は、ucb 30889が、LEVよりも約10倍高いアフィニティーでLBSに結合することを示した(図4)。ucb 30889のpKi(7.1±0.2)は、飽和結合曲線によって決定されるような(図2)[3H]ucb 30889のKDとよく一致した。種々のレベチラセタム類似体と、LBSと相互作用することが知られている他の化合物(例えば、ペンチレンテトラゾール又はベメグリドなど)(Noyerら、1995)のpIC50値は、[3H]ucb 30889で得られたか[3H]レベチラセタムで得られたかに関係なく同一であった(図5)。
【0156】
[3H]ucb 30889とインキュベートしたラット脳切片(図6)は、[3H]ucb 30889によって標識されたLBSが脳の全体にわたって分散して在存すること、及びこの結合をin vitro結合において観察されたものと等価な濃度でレベチラセタムによって阻害できることを示す(図4)。
【0157】
本実施例は、競合結合試験及び組織分布を通して、ucb 30889及びLEVが両方とも同じ部位、すなわち中枢神経系全体にわたって局在しているLBSを標識していることを実証する。LEVと比較して、ucb 30889は、10倍高いアフィニティーでLBSに結合し、非特異的結合は非常に低い。4℃における適切な結合反応速度に従うこれらの判断基準は、この放射性リガンドを、脳切片上のオートラジオグラフィー結合研究を実行するために使用すること(図6)、及びラット脳におけるLBSの解剖学的分布を示すために使用することを可能にした。
【実施例2】
【0158】
LBSの細胞分布及び亜細胞分布
in situでLBSを同定及び特徴付けするために、[3H]ucb 30889を使用して、脳内のLBSをマッピングし、その両方を研究した。ラット脳オートラジオグラフィーのために、25μmスライスを、1.3nM[3H]ucb 30889とともに、50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)中で、4℃で120分間インキュベートした。ラット脳膜及び種々の神経細胞系を用いる結合アッセイを、同様の条件下で実行した。非特異的結合は、アッセイに1mMレベチラセタムを含めることによって測定した。光標識化のために、膜を、40nM[3H]ucb 30889とともに、同じ緩衝液中で、4℃で120分間インキュベートし、次いて、30分間、UV光を用いる照射を行った(Fuksら、Eur.J.Pharmacol.478:11〜19(2003))。
【0159】
ラット脳オートラジオグラフィーのために、25μmスライスを、1.3nM[3H]ucb 30889とともに、50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)中で、4℃で120分間インキュベートした。図7は、ucb 30889結合部位がラット脳において不均一に分布していることを示す。白質には明白な結合が存在しないのに対して、歯状回、上丘、いくつかの視床核、及び小脳の分子層において高レベルの結合が存在した。結合は、大脳皮質、視床下部、及び線条体においてはあまり明白ではなかった。略号:cc、脳梁;Aca、前交連;ci、内包;Mtg、乳頭蓋束;Mt、乳頭視床束;ML、分子層;Hi、海馬;DG、歯状回;sc、上丘;CG、中心灰白質;Pu、尾状被殻;Pv、室傍核;MG、膝状体核;Po hy、後視床下部領域;Hb、小帯;Pi、梨状皮質。
【0160】
小脳顆粒ニューロン及びPC12細胞における[3H]ucb 30889結合は、高レベルの特異的結合を示した(表1)。Kdはラット大脳皮質において測定された値と同様であった(42nM;実施例1を参照のこと)。同じ特異的結合部位が、一次星状細胞及び一定の範囲のCNS関連細胞系及び非ニューロン細胞系においては検出することができなかった。略号:nd、検出せず。
【表1】
【0161】
ラット脳膜を示差的遠心分離(differential centrifugation)によって分離した(図8)。LBS(8A)、ムスカリン性レセプター(8B)、NMDAレセプター(8C)、及び末梢ベンゾジアゼピンレセプター(8D)への結合を、それぞれ、[3H]ucb 30889、[3H]NMS、[3H]MK801、又は[3H]PK11195を使用して測定した。この研究は、レベチラセタム結合部位が粗シナプトソーム(P2)、ミクロソーム膜(P3)に存在し、そしてシナプス小胞(LP2)において富化されていることを示す。対照的に、他の研究したレセプターは、P2又はP3と比較して、LP2があまり豊富ではない。P1は核及び大きな細片を含む低速ペレットである。
【0162】
スクロース勾配による分画を使用して、粗シナプトソームから細胞成分を単離した。LBSは精製されたシナプス膜中に見い出されたが、精製されたミトコンドリア画分を含む1.2Mスクロースペレット中には存在しなかった(図9)。亜細胞画分の精製のための対照として、ムスカリン性レセプター及び末梢ベンゾジアゼピンレセプターの分布もまた分析した。データは、全体の特異的結合のパーセンテージを表す。
【0163】
粗シナプトソーム(P2画分)を40nM[3H]ucb 30889とともにプレインキュベートし、次いでUV光を照射し、洗浄した。0分において1mM レベチラセタムを加え、指定した時間に一部を取り出して計数した(図10)。非特異的結合(白記号)を1mM レベチラセタムを使用して測定した。図10Bは、同じ実験であるがUV光照射の非存在で実行した実験を示す。これらの結果は、UV照射の間、放射性リガンドがLBSの結合ドメインに共有結合的に挿入されることを示す。
【0164】
光アフィニティー標識化を、1mM レベチラセタムの非存在下及び存在下で実行した。タンパク質をSDS−PAGEによって、7.5%(w/w)のアクリルアミド濃度を使用して分離し、放射能をゲルの各スライスにおいて評価した。主要な取り込みの部位は分子量93,000で存在した(図11)(Fuksら、2003)。
【0165】
本実施例において、ラット脳における[3H]ucb 30889結合部位が独特な分布のプロフィールを有し、一般的にてんかんと関連するいかなる特異的な神経伝達系とも相関しないようである。この新規な結合部位は、神経細胞型及びいくつかの脳の領域に制限される。この新規な放射性リガンドは、光アフィニティー標識として使用され得、かつシナプス小胞中に主として局在する高分子量膜タンパク質に共有結合的に結合する。
【実施例3】
【0166】
LBSはSV2A上に存在する
本実施例において、ラット脳におけるLBSの生化学的特徴付けが、クローニング及び結合の特徴付けのための潜在的な候補LBSタンパク質を同定する研究をもたらした。タンパク質の膜内在性の性質、脳特異的発現、見かけのサイズ、及びシナプス小胞局在に基づいてSV2タンパク質ファミリーを、LBSの局在の候補として分析した。従って、SV2タンパク質をクローニングし、LBSリガンドの結合についてアッセイした。
【0167】
材料:レベチラセタム及び誘導体はUCB Pharma(Braine−l’Alleud,Belgium)において合成された。[3H]ucb 30889、(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタナミド(32Ci/mmol)を、Amersham Biosciences(Roosendaal,The Netherlands)によってカスタム標識した。Buckley及びKelly(Buckleyら、J.Cell.Biol.,100,1284−94(1985))によって開発されたSV2タンパク質に対するモノクローナル抗体は、NICHDの後援の下で構築され、The University of Iowa,Department of Biological Sciences,Iowa City,IA 52242によって維持されているDevelopmental Studies Hybridoma Bankから入手した。この抗体は、3つすべてのSV2アイソフォーム、SV2A、SV2B、及びSV2Cに対して交差反応性である。
【0168】
野生型及びノックアウトマウスの結合実験
SV2Aノックアウトマウスは以前に報告されている(Crowderら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96,15268−73(1999))。SV2Bノックアウトの生成は別の場所で報告されるであろう。SV2Bノックアウトを、SV2A遺伝子破壊についてヘテロ接合性である動物を用いて繁殖させて、SV2A+/−SV2B−/−繁殖動物を作製した。これはSV2A/Bノックアウトを生成するために使用された。野生型C57−B16及びSV2 KOマウス脳膜を結合アッセイのために調製し、結合反応を、わずかに改変して以前に記載されたように実行した(Gillardら、Eur.J.Pharmacol.印刷中(2003))。凍結した全脳を、250mMのスクロースを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)(緩衝液A)中でホモジナイズした(10% w/v)。ホモジネートを30,000×gで15分間、4℃で遠心分離し、ペレットを同じ緩衝液中に再懸濁した。37℃で15分間のインキュベーション後、同じ遠心分離プロトコールを使用して、膜を2回洗浄した。最終ペレットを緩衝液A中に再懸濁し、液体窒素中に保存した。融解した脳膜タンパク質(0.1mg/アッセイ)を、2mM MgCl2及び[3H]ucb 30889(1.8nM)を含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)0.5ml中で4℃、120分間インキュベートした。インキュベーション時間の最後に、膜結合放射性リガンドを、0.1%ポリエチレンイミンにあらかじめ浸漬したGF/Cガラス繊維フィルターを通す迅速濾過によって回収した。膜を8mlの氷冷Tris緩衝液(pH7.4)で洗浄した。全体の濾過手順は試料あたり10秒を超えなかった。フィルターを乾燥させ、液体シンチレーションによって放射能を測定した。pIC50決定を、コンピュータを使用する非線形曲線フィッティング法(Graphpad Prism(登録商標)ソフトウェア、San Diego,CA)によって実行した。
【0169】
ウェスタンブロット実験のために、野生型及びノックアウト動物からの脳ホモジネートの一部を、室温で、BMEを含むSDS−PAGE試料緩衝液を用いて抽出した。各試料の等価な量を(約10μg全タンパク質)を4−12%Tris−グリシンNOVEX勾配ゲル(Invitrogen Life Sciences)上に載せて、分離した。ニトロセルロース膜への転写及びブロッキングの後、ブロットを、すべてのSV2タンパク質に対して交差反応性であるモノクローナル抗体を用いて探索し(Buckleyら、J.Cell.Biol.,100,1284−94(1985))、HRP−抗マウス二次抗体を使用して一次抗体を標識した。ブロットを、発光性西洋ワサビペルオキシダーゼ試薬を用いて発色させて写真撮影した。
【0170】
異種的に発現されたhSV2Aに対する[3H]ucb 30889を用いる結合実験
コンフルエントな、トランスフェクトした細胞への結合実験(図17)のために、24ウェルプレート中で細胞をゆっくりと4℃まで冷却し、冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1回すすいだ。PBSを吸い出し、結合試薬をPBS中に加えた。結合実験において、異なる量の未標識インヒビターの存在下又は非存在下で[3H]ucb 30889を1.8nMですべてのウェルに加えた。細胞を4℃で2時間インキュベートし、そして細胞を3回氷冷PBSですすぐことによってアッセイを終結させた。最終の吸引後、細胞を溶解するために200μlの0.1N NaOHを加え、試料をシンチレーション液中で、βカウンターで計数した。
【0171】
以前に凍結させたトランスフェクトしたCOS−7細胞に対する結合実験(図18)のために、2から3×104細胞を、[3H]ucb 30889(1.8nM)及び増加濃度の未標識競合薬物を含む25mM RPMI−HEPES溶液0.2ml中で、4℃、120分間インキュベートした。濾過によって結合反応を終結させ、放射活性計数を上記のように実行した。
【0172】
聴原性発作マウスモデル
LEV及び類似体の抗発作活性を、腹腔内前処理後に、マウスを90−db、10から20−kHzの聴覚刺激に30秒間、60分間さらすことによって、音感受性マウスにおいて評価した。報告されたED50値は、異なる用量を投与された4から8群(n=10)の試験から得られ、間代性痙攣を阻害するこの化合物の効力を反映する。
【0173】
ヒトSV2Aを、コード領域及び転写物からの有意な隣接領域を含む3609bp PCR産物としてヒト胎児脳のcDNAライブラリーからクローニングした。SV2Aコード領域及び有意な隣接DNAを含むベクターを供給源として使用して、コード領域を、隣接領域なしでPCR増幅した。この産物を、サブクローニングの容易さのためにGATEWAY(Invitrogen)ドナーベクターにクローニングした。クローニング部位のすぐ上流に強力な転写終結部位を有するクローニングベクターの使用のみがSV2A cDNAのみのコード領域の首尾よいクローニングを生じた。これは、このような産物が、たとえ少量であってもE coliに対して毒性であり得ることを示唆する。最終のpDONR GATEWAY SV2Aクローンの配列決定は、これが2つの変異(1つはサイレント、そして1つはLeuからProへの変異)を有することを示した。このサイレントでない変異は訂正され、正しいことを確認するため配列決定され、全長ヒトSV2Aコード配列がクローニングされた。
【0174】
ヒトSV2Aコード領域を、pDONR GATEWAYクローニングベクターからpDEST 12.2Gateway発現ベクターに移した。このベクターは導入された遺伝子を駆動するCMVプロモーター、及びSV40 oriを有し、これは、ラージT抗原を含むCOS−7細胞系において非常に高レベルの複製を可能にする。さらに、ヒトSV2Aコード領域は、pDEST 40 Gateway発現ベクターに移動された。このベクターは、上記の12.2ベクターに非常に類似しており、hSV2Aの発現を駆動するCMVプロモーター、及びSV40 ori、及びネオマイシン耐性遺伝子を有する。
【0175】
pDEST12.2ベクターを使用するSV2A発現の最初の試験は、COS−7細胞系において実行され、これは、既にSV2タンパク質の首尾よい発現が実証されている。COS−7細胞系は3H−30889結合について試験され、バックグラウンドより上の結合は観察されず、従って、有意な測定可能なレベチラセタム結合部位(LBS)の存在は観察されなかった。さらに、PC12細胞系サブクローンPC12a(これはLBSが少ない)が使用されて、安定な抗生物質選択下でhSV2Aを発現するPC12細胞のプールを確立した。
【0176】
Lipofectamine2000(Invitrogen)トランスフェクション試薬を使用して、DNAを90%コンフルエントCOS−7細胞にトランスフェクトした。また、同じ試薬を使用して、hSV2A含有ベクターをPC12a細胞系にトランスフェクトして、抗生物質耐性について選択した。抗SV2Aポリクローナル抗体(CalBiochem)を使用して、トランスフェクトされたCOS−7細胞、又はトランスフェクトされたPC12a細胞のいずれかにおける、SV2A産物の発現について試験した。COS−7細胞の溶解物をトランスフェクションの18時間後にSDS−PAGEゲル上で収集し、膜に転写し、そしてSV2Aに対するポリクローナル抗体を用いて探索し、粗ラット脳膜と比較した(図12A)。トランスフェクトしていないCOS−7細胞、トランスフェクトしていないPC12a細胞(低LBS)、PC12bs細胞(高LBS)、又はhSV2AでトランスフェクトしたPC12a細胞からの溶解物もまた示される(図12B)。標識されていないタンパク質バンドがトランスフェクトしていないCOS−7対照において観察されるのに対して、トランスフェクトしたCOS−7細胞は複数のバンドを示し、80から120kDの範囲で最も高密度であり、これはおそらく、発現されたタンパク質の複数のグリコシル化状態に起因する。さらに、SV2A免疫反応性はPC12bs及びPC12a/hSV2A試料において存在するが、低LBS PC12a細胞においては大部分非存在であった(図12B)。
【0177】
結合実験において、COS−7細胞への[3H]ucb 30889の特異的結合が測定された。この細胞は、SV2A−12.2、若しくは対照として、β−gal発現ベクターのいずれかでトランスフェクトされた細胞、又はトランスフェクトされていない細胞であった(図13)。1nM[3H]ucb 30889(「ホット」標識)、又は[3H]ucb 30889及び過剰量の冷レベチラセタム(50μM)(「ホット+コールド」標識)のいずれかを有する、24ウェルプレートの3連のウェルをインキュベートした。細胞を4℃で2時間インキュベートし、次いで氷冷PBSで迅速に洗浄した。細胞をプレート上で溶解し、シンチレーション液を有するシンチレーションバイアルに移し、そして3H崩壊発光を計数した。これらの結果は、SV2AでトランスフェクトされたCOS−7細胞が[3H]ucb 30889を特異的に結合する能力を獲得したことを示す。LBSを発現することが知られている、PC12bs細胞を使用する同一のインタクト細胞結合実験で、「ホット」試料と「ホット+コールド」試料との間で、本実験で見られる5倍の違いと比較すると、1.5から2倍のCPMの違いが見られる。
【0178】
さらなる研究は、COS−7細胞中で発現されたSV2Aへの[3H]ucb 30889の結合をより詳細に特徴付けた。COS−7細胞を24ウェルプレート中でトランスフェクトし、上記のように結合についてアッセイした。一連の濃度のレベチラセタム又は冷30889のいずれかを、COS−7細胞中で発現されたSV2Aに対するこれらの化合物についてIC50を生成するために加えた(図14)。これらの結果は、SV2Aが、ラット脳及びPC12サブクローンにおいて観察されたレベチラセタムについての結合部位と機能的に等価であることを示す。先の観察と総合すると、LBS結合アフィニティーと、レベチラセタム及びその類似体の抗痙攣特性との間の相関は、シナプス小胞タンパク質SV2Aが、抗てんかん化合物レベチラセタムのネイティブな結合部位であるということだけでなく、レベチラセタムによるシナプス小胞の機能及び調節とその抗痙攣特性の間の連関を示唆する。
【0179】
別々の実験において、異種発現実験が実行され、SV2A単独がLEVの脳結合の唯一の原因であることを確証した。ヒトSV2Aは、ウェスタン分析によって確認されるように(データ示さず)、COS−7細胞系において一過性に発現され、過剰のLEVによって置換される[3H]ucb 30889への結合が観察された(図17A)。同一の条件下で、トランスフェクトされていないCOS−7細胞、又はβ−ガラクトシダーゼをコードするベクターを用いてトランスフェクトされたCOS−7細胞のいずれかに対しては結合が見られなかった。COS−7細胞中で発現されたhSV2Aに対し[3H]ucb 30889を置き換える、未標識化合物の能力を試験する実験において、ucb 30889、LEV、及びLEVのエナンチオマー、ucb L060のアフィニティーは、ラット脳を用いる研究において以前に報告されたものに対して(Noyerら、Eur.J.Pharmacol.286,137−146(1995);Gillardら、2003)、同じ順位、及び類似の値を示す(図17B)。決定的に、ucb L060は、LEVよりも有意に低いアフィニティーでhSV2Aに結合し、これは脳における結合部位の鍵となる特徴である(Noyerら、Eur.J.Pharmacol.286,137−146(1995);Gillardら、2003)。さらに、一過性COS−7系において発現されるhSV2B及びhSV2Cの両方に対する[3H]ucb 30889の結合が試験された。結果は、バックグラウンドよりも上の結合を示さず(データ示さず)、これは、ノックアウトマウス結合研究からの結果と一致する。
【0180】
COS−7において発現されるhSV2AへのLEV及びいくつかの類似体の結合を試験することにより、pIC50が、マウス脳抽出物(図18A)及びラット脳抽出物(データ示さず)において得られた値と高度に相関することが明らかとされた(r2=0.98)。また、COS−7におけるhSV2Aについてのこれらの化合物のアフィニティーと、てんかんのマウス聴原性モデルにおけるそれらの抗痙攣保護の効力との間の明確な相関も認められた(r2=0.84)(図18B)。このデータは、ラット脳におけるLEV類似体の結合と、同じモデルにおける効力との間の相関の以前の報告と一致する(Noyerら、Eur.J.Pharmacol.286,137−146(1995))。他のAED(バルプロエート、カルバマゼピン、フェニトイン、エトスクシミド、フェルバメート、ギャバペンチン、チアガビン、ビガバトリン、及びゾニサミドを含む)の結合もまた調べられた。いずれのAEDも、100μMまでの濃度では、SV2Aへの結合について、[3H]ucb 30889と競合しなかった(データ示さず)。これは、ラット脳におけるLEV結合部位に対するAEDの以前の結合研究を確認する(Noyerら、Eur.J.Pharmacol.286,137〜146(1995);Gillardら、Eur.J.Pharmacol.2003)。
【実施例4】
【0181】
神経学的障害、内分泌障害、及びホルモン疾患を調節する化合物のアッセイ
シナプス機能及び内分泌学的障害と関連する神経学的障害を調節する化合物又は薬剤を同定するために、SV2タンパク質のLBSに対する結合についてLEV及びucb 30889と競合するさらなる化合物を同定するための研究が行われた。
【0182】
実施例3において開示されるようなSV2AトランスフェクトされたCOS−7細胞を潜在的な結合パートナー又は薬剤に曝露させる。対照細胞は、ビヒクルのみに曝露させるか、又は未標識のucb 30889又はLEVに曝露させる。この曝露後、次いで細胞を、実施例3と同様に[3H]ucb 30889とともにインキュベートし、細胞を4℃で2時間インキュベートし、次いで氷冷PBSで迅速に洗浄する。細胞を溶解し、シンチレーション液を有するシンチレーションバイアルに移し、そして3H崩壊発光を計数する。
【0183】
LBSに対する結合についてucb 30889と競合することが見い出されている化合物を、聴原性感受性マウスにおいて発作を調節する能力についてのさらなる研究に供する。聴原性感受性マウスに、有効な量のLEVと比較し得る量の化合物を投与する。対照として、同一の聴原性感受性マウスに有効な量のLEVを投与するか、又は発作を調節しない化合物(例えば、ピラセタム)を投与する。
【実施例5】
【0184】
化学ライブラリーをスクリーニングするため、及びSV2タンパク質を特徴付けするためのツールとしてのビオチン化リガンド
本発明は、化学ライブラリーをスクリーニングするため、及びSV2タンパク質を特徴付けするためのツールとして新規なビオチン化リガンドを使用する方法を開示する。本発明は、放射活性廃棄物を伴わずにより高い処理能力を有するスクリーニングのための、ビオチンタグを含む放射活性標識されていないSV2A/LBSリガンドを提供する。本発明はまた、生物学的試料中での標識化及びSV2A/LBS検出のための光活性化バージョンを提供する。
【0185】
本実施例において、SV2A/LBSへのucb−101282−1の結合がラット脳膜において特徴付けられた。この分子は、ucb 30889のビオチン化誘導体である(図19)。このリガンドは、ラット脳膜において6.3のpKiを有し(n=2)、これは、L059について報告されたアフィニティーと等価であった(図20)。このリガンドはまた、UV光照射すると、タンパク質と共有結合複合体を形成することができるアジドフェニルモチーフを用いて、ビオチンタグをLBS/SV2Aに架橋するように設計された。
【実施例6】
【0186】
SV2Aの可溶化及びアフィニティー精製のための方法
本発明は、SV2Aの可溶化及びアフィニティー精製の方法を開示する。この方法は、SV2A/LBSタンパク質を可溶化する工程を包含し、これは膜を界面活性剤で処理することを含む。この方法は、結合アッセイ及びタンパク質−タンパク質相互作用研究において評価されるような可溶化後に膜タンパク質の活性を維持している。
【0187】
可溶性SV2Aの調製及び結合アッセイによる定量
ラット脳膜を、15mM n−ドデシル−β−D−マルトシドを含む可溶化緩衝液(20mM Tris−HCl pH7.4、0.25Mスクロース、プロテアーゼインヒビターComplete Roche)中で希釈し、4℃で2時間インキュベートした。次いで、溶液を4℃で、100,000g、1時間、遠心分離した。可溶性SV2Aは、抗SV2A抗体を使用するウェスタンブロットによって検出され、上清に見い出された(図21A)。この上清を、記載されるように、[3H]ucb 30889とともにインキュベートした。結合実験は、特異的結合が可溶型のSV2Aに起因することを示した。SV2A結合の特異性を検出するために、レベチラセタム及びucb 30889が可溶性SV2Aに特異的に結合する能力を試験した。これらの分子のアフィニティーは、天然の膜に対してリガンドによって示されたものと等価であった(図21B)。スキャッチャード分析は、ネイティブな膜中のSV2Aに対する[3H]ucb 30889のKDは30nMであり、可溶性タンパク質に対しては82nMであることを示す(図21C)。従って、可溶性SV2Aの結合特性は膜結合天然型と同様であり、可溶性タンパク質がn−ドデシル−β−D−マルトシド中でその天然の構造的なコンホメーションを維持していることを示す。
【0188】
可溶性SV2Aのアフィニティー精製及び推定のSV2Aパートナーの同定
可溶化された膜からの上清を抗SV2A抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。混合物をプロテインA−セファロースビーズとともに、20mM Tris−HCl pH7.4、0.25Mスクロース、プロテアーゼインヒビターComplete(Roche)中で、4℃で1時間、回転させた。樹脂を数回洗浄し、収集した画分は免疫精製されたSV2Aタンパク質を含んでいた(図22)。上記に説明したように、SV2Aは、n−ドデシル−β−D−マルトシド中に可溶化後その本来の構造的コンホメーションが維持されている。従って、シナプトタグミンが周知のSV2Aのパートナーであるので、免疫精製された画分を、シナプトタグミンが精製手順後になおSV2Aに結合するか否かを決定するために試験した。免疫精製画分のウェスタン分析は、可溶性SV2Aに結合したシナプトタグミンの存在を確認したが、アイソフォームSV2Bは検出されなかった。従って、可溶化及び精製手順はSV2A−タンパク質相互作用研究を実行するために使用され得る。
【0189】
本発明は上記の実施例を参照して詳細に記載されてきたが、種々の改変が本発明の精神から逸脱することなくなされ得ることが理解される。従って、本発明は、上記の特許請求の範囲のみによって制限される。本願において言及されるすべての引用される特許、特許出願、及び刊行物は、その全体が参照として本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】ラット大脳皮質中のLBSに対するLEV類似体ucb 30889の可逆的結合を示す図である。
【図2】ucb 30889の飽和結合曲線を示す図である。
【図3】特異的結合が末梢組織では検出できないことを示す図である。
【図4】LEVに比べてucb 30889が約10倍高い親和性でLBSに対して結合することを表している競合結合曲線を示す図である。
【図5】ucb 30889対レベチラセタムに関するpIC50値を示す図である。
【図6】ラット脳のオートラジオグラフィーにおける[3H]ucb 30889結合の未標識レベチラセタムによる濃度依存性阻害を示す図である。
【図7】ラット脳の冠状断面に結合している[3H]ucb 30889のオートラジオグラフィーを示す図である。
【図8】ラット脳内で結合している[3H]ucb 30889の細胞内分布を示す図である。
【図9】ショ糖勾配の遠心分離によるシナプトソーム画分のサブ分別を示す図である。
【図10】[3H]ucb 30889によるLBSの光標識化と複合体の不可逆性を示す図である。
【図11】[3H]ucb 30889により標識化した膜タンパク質のゲル電気泳動法を示す図である。
【図12】A及びBは、SV2AでトランスフェクトしたCOS−7細胞の免疫染色溶解物、粗製ラット脳膜、及び異なる濃度のLBSを含む数種類の異なるPC12溶解物を示す図である。
【図13】SV2A−12.2でトランスフェクトしたCOS−7への[3H]ucb 30889の特異的結合、対照β−gal発現ベクターでトランスフェクトしたCOS−7への[3H]ucb 30889の特異的結合、又はトランスフェクトしていない細胞への[3H]ucb 30889の特異的結合を示す図である。
【図14】3H−30889の存在下でSV2Aに結合している3種類の異なるリガンドを比較するIC50プロットを示す図である。
【図15】(A)レベチラセタム及び(B)ucb 30889の構造を示す図である。
【図16】A及びBは、脳膜への[3H]ucb 30889の結合を示す図である。A.SV2A、SV2B及びSV2A/SV2Bノックアウトマウス由来の脳膜への[3H]ucb 30889の結合。[3H]ucb 30889単独は□であり、[3H]ucb 30889+1mMのLEVは■である。誤差棒は、5種類の野生型脳と4種類KO脳で実施した実験のSDである。各実験は三連で行なった。B.抗SV2モノクローナル抗体(すべてのアイソフォーム、SV2A、SV2B及びSV2Cに交差反応し得る)で探索した野生型及びホモ接合型ノックアウトマウス由来の脳膜のウェスタンブロット。レーン1:wt;レーン2:SV2Aノックアウト;レーン3:SV2Bノックアウト;レーン4:SV2A/Bダブルノックアウト。
【図17】A及びBは、hSV2A発現COS−7細胞への[3H]ucb 30889の結合を示す図である。A.COS−7細胞で一時的に発現されるhSV2Aへの[3H]ucb 30889の結合。[3H]ucb 30889は、非トランスフェクトCOS−7細胞、又は一時的に□−gal若しくはhSV2Aのいずれかを発現するCOS−7細胞への結合について試験する。[3H]ucb 30889単独(□)、[3H]ucb 30889+1mMのLEV(■)。B.[3H]ucb 30889の存在下、hSV2A一時的発現COS−7に対する、LEV、ucb L060、ucb 30889のIC50曲線。LEV(Δ)、ucb 30889(■)、ucb L060(●)。誤差棒はSEM、n=3である。
【図18】A及びBは、競合薬剤の存在下における[3H]ucb 30889の結合を示す図である。A.マウス脳に対する一連のLEV化合物の結合とhSV2Aに対する一連のLEV化合物の結合の相関関係。pIC50は[3H]ucb 30889に対して測定した。pIC50値は2つの独立した実験の平均値であり、この場合、各検出は平均値の0.2対数ユニット内に位置する。B.一時的なトランスフェクトCOS−7細胞でアッセイしたhSV2Aに対する一連のLEVファミリー化合物の結合(pIC50は[3H]ucb 30889に対して測定した)と、マウス聴原性モデルにおける抗発作効力の相関関係。
【図19】ucb−101282−1の構造を示す図である。このリガンドはucb 30889のビオチン化誘導体である。
【図20】ラット脳膜におけるucb−101282−1のpKiが6.3(n=2)である(LEVについて報告されている親和性に等しい)ことを示す図である。
【図21】A、B及びCは、可溶性SV2Aの調製と結合アッセイによる定量を示す図である。A.可溶化ラット脳膜の上清における可溶性SV2Aの抗SV2A抗体を用いたウェスタンブロットによる検出。B.可溶性SV2Aへの特異的結合に関するレベチラセタム及びucb 30889の能力の分析。C.スキャチャード解析は、本来のラット脳膜におけるSV2Aに対する[3H]ucb 30889の結合のKDは30nMであるが、可溶性タンパク質に対するKDは82nMであることを示す。
【図22a】SV2Aパートナーの同定を示す図である。ウェスタンブロット解析は、可溶化ラット脳膜由来上清の免疫精製画分中の可溶性SV2Aに関連するシナプトタグミンを示す。アイソフォームのSV2Bは未検出であった。
【図22b】SV2Aパートナーの同定を示す図である。ウェスタンブロット解析は、可溶化ラット脳膜由来上清の免疫精製画分中の可溶性SV2Aに関連するシナプトタグミンを示す。アイソフォームのSV2Bは未検出であった。
【技術分野】
【0001】
発明者:Berkley LYNCH、Karl NOCKA、及びBruno FUKS
関連出願
本出願は、2003年9月30日出願の米国仮出願第60/506764号及び2002年12月3日出願の米国仮出願第60/430372号の利益を主張し、これらの全体を引用により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一般に、神経障害、内分泌障害及びホルモン疾患における創薬の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
神経障害は、その原因に関してはほとんど知られておらず、その診断が主観的になりがちで、多くの場合効果的な治療を欠くことから、相当数の人々が神経障害により悩んでおり、医療制度に対する経済的問題が大きくなっている。一般に、脳活動は、最終的にはシナプスで伝達するニューロンの能力によって決定される。特定の神経伝達化学物質は前シナプスにあるシナプス小胞に包含されており、シナプス小胞がシナプス前膜と融合して一定量の神経伝達化学物質を遊離する。これは、シナプス間隙を通過してシナプス後膜に存在する対応の受容体タイプを活性化する。これらの受容体タイプには、ニューロン性グルタミン酸受容体(GluR’s)、γ−アミノ酪酸受容体(GABAR’s)、ニコチン性アセチルコリン受容体、セロトニン受容体、ドーパミン受容体等がある。神経障害の多くは、様々な脳組織中のシナプスを介した電流の伝達が不適当な結果生じる。てんかんでは、異常電流(シナプスの機能が不適当であることと関係していると仮定されている)が種々のレベルの発作を引き起こす。同様に、いくつかの精神系疾患、運動障害及び神経変性疾患では、伝導電流が異常、混乱又は低下し、その結果、疾患症状が起こる。従って、シナプス小胞機能に欠陥があると、一般的には神経伝達に対し、具体的には神経伝達物質放出の調節に対し悪影響を及ぼす。
【0004】
発作(てんかん性発作を含む)は、皮質機能の限局性障害又は全身性障害によって生じるが、これは、例えば、脳浮腫、脳低酸素、脳外傷、中枢神経系(CNS)感染、先天性脳異常又は発達(developmental)性脳異常、拡張性脳障害、異常高熱、代謝障害、並びに痙攣薬又は有毒薬剤の使用を含む、様々な脳障害又は全身性障害による可能性がある。てんかんと診断されるのは、発作が散発的に、数年に亘って(又は無期限に)繰り返す場合だけである。
【0005】
てんかんは、3つの一般的なカテゴリー、すなわち、1)全身性強直性間代性発作、2)欠神又は小発作(absence petitimal)、及び3)複雑部分発作に分類される発作症状を持つ症候性てんかん又は特発性てんかんとして病因学的に分類されている。症候性分類は、考えられる原因が存在し、その原因を除去する治療の特定のコースを試みることができるが、特発性分類は、明白な原因を確認することができず、解明されていない遺伝因子と関係している可能性がある。発作カテゴリーのうち、ほとんどの人は1つのタイプしか発作を起こさないが、約30%の人は2つ以上のタイプの発作を起こす。
【0006】
てんかんを発症するリスクは、生まれてから20才までの年齢で1%、75才で3%である。一般に、特発性てんかんは2才から14才の間に始まる。通常、2才未満の発作は、発育障害、分娩外傷又は代謝性疾患によって起こる。25才以降の発症は脳外傷、腫瘍又は脳血管障害に付随するものであるが、50%は病因が未知のものである。
【0007】
神経系と内分泌系との間に存在する多くの相互関係によって、シナプス小胞機能の欠陥もまた内分泌機能に影響を与え得る。例えば、少なくとも2つの分泌腺は、適当な神経伝達物質放出に応答する場合にのみ、それらのホルモンを分泌する(副腎髄質及び脳下垂体後葉)。分泌されると、ホルモンは血液中を移動し、身体中の遠位にある標的組織で生理学的作用をもたらす。ホルモンの分泌過多又は分泌不全を含む内分泌障害は、病理学上の影響を有しているのは明らかである。このような影響の例は巨人症と小人症であり、それぞれ、成長ホルモンの分泌過多又は分泌不全に起因している。
【0008】
レベチラセタム
レベチラセタム(LEV;ucb L059;(S)−α−エチル−オキソ−ピロリジンアセトアミド)は、ピラセタムのエチル類似体の(S)−鏡像異性体であり、第二世代の向知性薬の同定を目的とした追跡化学プログラム中に合成された。in vivoの結果によると、聴覚感受性マウスにおける発作を抑制するというLEVの予期せぬ効果が証明された。一方ピラセタムではほんの微弱な活性であった。LEVは従来の抗てんかん薬とは関係のない分子であるが(Margineanuら、Antiepileptic Drugs:第5版、pp.419−427、Lippincott、Philadelphia(2002))、広範囲の臨床試験によれば、LEVを用いた補助療法は(KEPPRA、UCB、S.A.、Braine−l’Allend、Belgium)、成人の難治性部分発作を調節するのに有効であり、且つ良好な耐容性を示すことが立証されている。
【0009】
未精製ラット脳膜で実施したLEVを用いた結合アッセイでは、可逆的かつ飽和可能であって、立体選択的な特異的結合部位の存在が明らかになっている。ラット海馬膜で得られた結果からは、LEVが緩やかな親和性と高い結合能力で結合部位の1つのクラスを標識化することが示唆されている。この結合部位は、レベチラセタム結合部位(LBS)と特定されている。同様の結果が他の脳領域(皮質、小脳及び線条体)で得られている。レベチラセタムの(R)−鏡像異性体であるUcb L060は、これらの部位に対する親和性が約1000倍低いことが示されている。LEVの結合は、放射標識試験が心臓、腎臓、脾臓、膵臓、副腎、肺及び肝臓をはじめとする末梢組織における特異的結合を検出することができなかったことから、中枢神経系の膜に限定されているように思われる。しかしこれは、これらの組織におけるLBSが中枢神経系と比較して低密度であることによる可能性があり、実際、特異的結合が末梢由来の副腎細胞系であるPC12細胞で生じる。最も一般に使用されている抗てんかん薬のカルバマゼピン、フェニトイン、バルプロエート、フェルバメート、ガバペンチン、チアガビン、ビガバトリン、ゾニサミド、フェノバルビタール及びクロナゼパム、並びに痙攣剤のt−ブチルビシクロホスホロチオネート(TBPS)、ピクロトキシン及びビククリンは、LEV結合を置き換えない(Gillardら、Eor.J.Pharmacol.、478:1−9.(2003))。しかし、エトスクシミド、ペントバルビタール、ペンテトラゾール及びベメグリドは、in vivoで認められた活性薬剤濃度に匹敵するpKi値でLEVと競合した。ピラセタム及びアニラセタムをはじめとする構造的に関連性のある化合物もまたLEV結合を置き換えた。また、レベチラセタム類似体は、てんかんの聴原性マウスモデルで抗痙攣活性が試験された。親和性と抗痙攣性活性の間で非常に良好な相関関係(r2=0.84)が認められた(Noyerら、Euro.J.Pharmacol.286:137−146.(1995))。この高い相関関係は、LBS結合とこのクラスの化合物の抗痙攣活性の間の因果関係を強力にサポートしている。従って、レベチラセタム類似体のLBSへの結合によって、脳内のLBSのタンパク質成分の機能が修飾され、それによって抗痙攣活性の所望の治療結果がもたらされることが期待される。
【0010】
シナプス小胞タンパク質2ファミリー
シナプス小胞タンパク質のシナプス小胞タンパク質2(SV2)ファミリーは、最初に、海洋生物エイD.ommataの電気器官由来のコリン作動性小胞に対して調製されたモノクローナル抗体を用いて同定された(Buckleyら、J.Cell.Biol.、100:1284−1294.(1985))。この抗体によって標識化された個々のファミリーメンバーのクローニングにより、3種類の異なるアイソフォーム、SV2A(Bajjaliehら、Science、257:1271−1273.(1992))、SV2B(Feanyら、Cell、70(5):861−867.1992)、及びSV2C(Janz及びSudhof、Neuroscience、94(4):1279−1290.(1999))が同定された。なお、これらの全部が原抗体と反応する。3種類のラットアイソフォーム間の全体の相同性は約60%であり、SV2A及びSV2CはSV2Bに比べて互いに類似している(Janz及びSudhof、Neuroscience 94(4):1279−1290.(1999))。
【0011】
SV2タンパク質は内在性膜タンパク質であり、糖、クエン酸及び非生体異物を運搬する細菌性及び真菌性輸送タンパク質の12回膜貫通ファミリーに対して、有意ではあるが低レベルの相同性(20〜30%)を有している(Bajjaliehら、Science.257:1271−1273.(1992))。SV2タンパク質は、12回TMスーパーファミリーのメンバーと推定されるようないくつかの特有の特徴を示す。SV2タンパク質は比較的短い遊離のN末端とC末端、並びにTmの一部を連結する短いループを有している。しかし、2つの重要な例外、すなわち、膜貫通領域6と7の間の長い細胞質ループと、膜貫通領域7と8の間の小胞内ループ(これは3つのN−グリコシル化部位を含有している)がある。SVOPとして知られている遠縁のシナプス小胞タンパク質は、DrosophilaとC.elegansに相同体を有するが(Janzら、J.Neurosci.18(22):9269−9281.(1998))、酵母又は無脊椎動物では、SV2タンパク質の近縁の相同体は未だ発見されていない。
【0012】
ファミリーとしてSV2タンパク質は脳と内分泌細胞に広く分布している。3つのアイソフォームは、それらの分布において大幅にオーバーラップしており、同一ニューロンで、また同一シナプス小胞上でさえ共発現されることを確認することができる。SV2タンパク質の1つのアイソフォーム又は別のアイソフォームは、すべてのシナプス小胞上に存在していると考えられる。コリン作動性小胞はSV2を含有しない可能性があるとの研究が1つ報告されているが(Blumbergら、J.Neurochem.58(3):801−810(1992))、これらのアイソフォームは任意の特定の神経伝達物質を含有するニューロンに恐らく限定されないであろう。従って、SV2タンパク質はシナプス小胞の最も一般的なタンパク質の1つであり、シナプス小胞のカルシウム介在細胞外放出の調節に関与している。SV2タンパク質は内分泌細胞中で発現されることも報告されており、またさらなるシナプス小胞膜内タンパク質p38及びp65もともに内分泌腺高密度芯顆粒膜中に存在することも証明されている(Loweら、J.Cell.Biol.106(1):51−59(1988))。SV2Aは最も一般的なSV2アイソフォームであるが、それは脳全体の至る所で発現され、内分泌細胞の分泌顆粒中にも同様に存在する。SV2Bは脳中に広く分布しているが、海馬の歯状回、淡蒼球、脳幹網様体核及び黒質網様部をはじめとする、いくつかの脳構造においては検出されていない(Bajjaliehら、1994)。対照的に、SV2Cの分布は完全に限定されており、主として淡蒼球、黒質、中脳、脳幹及び嗅球等の系統発生的に古い領域で確認されている。SV2Cは大脳皮質と海馬では検出できず、小脳皮質では低レベルで確認されている(Janz及びSudhof、Neuroscience 94(4):1279−1290.(1999))。
【0013】
シナプスは、SV2タンパク質の他にシナプシン、シナプトタグミン及びCAPS等の他の特有の調節タンパク質を含有している。これらのタンパク質は、小胞融合又は出芽を媒介し得る。SV2AはSNARE複合体と呼ばれる前融合複合体の形成にとって必須のCa2+調節タンパク質である可能性があり(Xuら、Cell 99(7):713−722(1999))、これには、シナプス小胞関連のVAMP/シナプトブレビンと原形質膜タンパク質のシンタキシン及びSNAP−25が含まれている。シナプス中にCa2+が蓄積すると、シナプトタグミンのSV2Aに対する結合は阻害され、2つのシナプトタグミンCa2+結合ドメインの二量体化が刺激される(Bajjalieh、Curr.Opin.Neurobiol.9(3):321−328.(1999))。この二量体化はSNARE複合体を組織化し、小胞融合物を促進する役割を果たし得るが、Ca2+が低濃度である場合にはSV2Aはシナプトタグミンに結合したままであって、融合は生じない。
【0014】
シナプトタグミンに対するSV2Aの親和性は、SV2のアミノ末端のリン酸化によって制御されている(Pyleら、J.Biol.Chem.275(22):17195−17200.(2000))。Ca2+輸送又はシナプス小胞での制御においてSV2タンパク質が機能を果たす可能性については、SV2A及びSV2Bのノックアウト動物の試験によって指摘されている(Janzら、Neuron 24:1003−1016.(1999))。他の仮説は、SV2タンパク質は、輸送タンパク質から誘導されるが、ここでは構造上の機能、小胞融合物調節における機能、又は小胞内容物の再利用及びエキソサイトーシス放出を問わず、小胞での異なる機能に有用であるということである(Janz及びSudhof、Neuroscience 94(4):1279−1290.(1999))。
【0015】
SV2タンパク質ノックアウトマウスに関する2つの報告がある。1つは、SV2Aのみをノックアウトした試験であり(Crowderら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 96(26):15268−15273.(1999))、もう1つは、SV2Aノックアウト動物及びSV2Bノックアウト動物、並びにSV2A/SV2Bダブルノックアウト動物を調べたものである(Janzら、Neuron 24:1003−1016.(1999))。
【0016】
SV2A遺伝子破壊のホモ接合体型動物は誕生時には正常に見えるが、成長せず、重い発作が起こり、誕生後最初の数週間以内に死亡する。SV2Aホモ接合型ノックアウトマウスは、他のマウス系統に比べると、長期にわたって永続し、強く、より衰弱化させる発作がおきる(Janzら、Neuron 24:1003−1016.(1999))。生後の発作の発生にもかかわらず、すべてのSV2Aノックアウト動物は、完全に正常な総体的脳形態(正常レベルの試験シナプスタンパク質を含む)を有している。さらに、SV2Aノックアウトマウス及びSV2A/SV2Bダブルノックアウトマウス由来の海馬ニューロン培養物は超微細構造学的に正常であるシナプスを形成し、シナプス小胞の大きさ、数及び位置に変化はなかった(Janzら、Neuron 24:1003−1016.(1999);Crowderら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 96(26):15268−15273.(1999))。他の多くのタイプのノックアウトで容易に検出される構造異常及び発育異常によって起こる、一般的に確認されている発作とは異なり、SV2Aノックアウトマウスは、脳又はシナプスのマクロ又はミクロスケールの異常を伴わない強い発作表現型を示す。SV2A、SV2B及びSV2A/SV2Bノックアウトマウス由来の主要なニューロン培養物のシナプス伝達に関する研究は、脳機能の別のマーカーとして、sIPSCの大きさ及び頻度と自発性の刺激性シナプス後電流(sEPSC)の大きさと頻度は正常であることを指摘している。電気刺激は、すべての遺伝子型由来の培養ニューロンにおいて強いEPSC及びIPSCを誘発した。
【0017】
SV2Aとは対照的に、SV2Bノックアウトマウスでは目立った病理は明らかになっていない(Janzら、1999)。SV2Bが欠失した際にこのような傷害がない考えられる理由の1つとしては、SV2BがSV2Aによって機能的に置き換えられ得るということである。それは、SV2Aが、SV2Bが通常発現されるいずれの場所でも共発現されると考えられる。
【0018】
SV2A及び他のファミリーメンバーの機能は未知のままであるが、1つの仮説としては、このトランスポーター相同体が一部の一般的なシナプス小胞分子に関する機能的トランスポーターであるということである。より詳しくは、SV2Aとカルシウム介在の小胞細胞外放出の制御とを結びつける証拠があり、それによって、SV2AがCa2+トランスポーターである可能性があると考えられる。また、SV2A及び他のファミリーメンバーは、シナプス小胞の機能で役割を果たし得る。かかる役割としては、それらの形成、神経伝達物質の充填、原形質膜との融合、循環利用、並びに他のタンパク質及び細胞区画及び細胞器官との相互作用の点での調節を挙げることができる。例えば、SV2タンパク質は、シナプス小胞タンパク質シナプトタグミン及び細胞間マトリックスタンパク質ラミニン−1と相互作用し得ることが明らかになっている(Carlson、Perspect.Dev.Neurobiol.3(4):373−386(1996))。SV2タンパク質は、シナプス前末端での細胞質カルシウムレベル又はオルガネラカルシウムレベルの制御で重要な機能を果たし、また原形質膜上のN型カルシウムチャネルと、直接的又は間接的に相互作用し得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、SV2Aが抗発作剤LEV及びその類似体の結合部位であることを見出した。一連のレベチラセタム類似体の相対的結合親和力とある特定のてんかん動物モデルでの、それらの抗痙攣効力の間に高い相関関係があることは、これら類似体のSV2タンパク質に対する結合がそれらの機能を変化させて、抗痙攣作用を提供するという強力な証拠を提供するものである。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明は、シナプス小胞機能に関連する神経障害、内分泌障害又はホルモン疾患を治療する方法であって、SV2タンパク質の機能又は活性を調節する化合物又は薬剤を投与することを含む、前記方法を含む。
【0021】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤の間との相互作用を発見又はモデル化する方法を含む。本方法は、SV2タンパク質を化合物又は薬剤と接触させるステップと、SV2タンパク質と前記化合物又は薬剤との相互作用を測定及び分析するステップとを含む。
【0022】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質内のレベチラセタム結合部位を同定する方法を含む。本方法は、SV2タンパク質又はその断片と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体又は誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤化合物又は薬剤とを接触させるステップと、前記化合物又は薬剤の前記SV2タンパク質又はその断片との結合を測定するステップとを含む。
【0023】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質と第2のタンパク質の間の相互作用をアッセイする方法を含む。本方法は、細胞中でSV2タンパク質及び目的のタンパク質を発現させるステップを含む。さらに本方法は、レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露するステップと、SV2タンパク質と目的のタンパク質の間の相互作用を測定するステップとを含む。
【0024】
別の好ましい実施形態では、本発明は、シナプス機能に関連する神経障害、内分泌障害又はホルモン疾患を調節する化合物又は薬剤を同定する方法を含む。本方法は、SV2タンパク質を本化合物又は薬剤に曝露するステップと、前記化合物又は薬剤が前記SV2タンパク質の活性を調節するか否かを測定するステップとを含む。
【0025】
別の好ましい実施形態では、本発明は、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体又は誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤に対する細胞応答を同定する方法を含む。本方法は、SV2タンパク質を発現する細胞を前記化合物又は薬剤へ曝露するステップと、曝露細胞中の核酸又はタンパク質の発現の変化を分析するステップとを含む。核酸はRNAであってよく、RNAの発現は、ハイブリダイゼーション(マイクロアレイにおけるハイブリダイゼーション等)によって分析することができる。
【0026】
別の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号5の核酸配列又はその相補体を含む、単離された核酸分子を含む。
【0027】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質に対する結合パートナーを同定する方法を含む。この方法は、SV2タンパク質又は断片を潜在的な結合パートナーに曝露するステップと、前記タンパク質又は断片及び有望な結合パートナーを(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドと一緒にインキュベートするステップとを含む。さらにこの方法は、(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドの前記タンパク質への結合が、その潜在的な結合パートナーにより阻害されるか否かを測定し、それによって、前記タンパク質に関する結合パートナーを同定するステップとを含む。
【0028】
さらに好ましい別の実施形態では、本発明は、神経障害又は内分泌障害の治療に有用な薬剤を同定する方法を含む。この方法は、SV2タンパク質又は断片を、薬剤及びレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体に曝露することを含む。さらにこの方法は、レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体の前記タンパク質への結合が、前記薬剤によって調節されるか否かを測定し、それによって、神経障害又は内分泌障害の治療に有用な薬剤を同定するステップとを含む。
【0029】
また別の好ましい実施形態では、本発明は、神経障害又は内分泌障害の治療に有用な薬剤を同定する方法を含む。この方法は、SV2タンパク質又は断片を薬剤に曝露するステップと、当該タンパク質又は断片及び薬剤を(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドと一緒にインキュベートするステップとを含む。さらにこの方法は、(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドの前記タンパク質への結合が、前記薬剤によって阻害されるか否かを測定し、それによって、前記タンパク質に対する結合パートナーを同定するステップとを含む。
【0030】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質又はその断片若しくは誘導体と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤との間の相互作用を発見又はモデル化する方法を含む。この方法は、生化学的技術、生物物理学的技術、純粋なコンピュータ技術、又はこれらのいくつかの組合せによって、前記SV2タンパク質又はその断片の3次元モデルを作製するステップと、前記SV2タンパク質に結合する可能性のある有望なリガンドの1つ又は集合の3次元モデルを作製するステップとを含む。
【0031】
別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2タンパク質と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤の間の相互作用を発見又はモデル化する方法を含む。この方法は、遺伝学的に野生型の動物、又はかかる動物由来の分子、細胞若しくは組織において、潜在的なCNS活性分子の生化学的作用、薬理学的作用、生物的作用、細胞的作用、又は分子学的作用を測定するステップと、ノックアウトSV2タンパク質又はノックダウンSV2タンパク質を用いた系での同等の試験におけるその化合物の測定した作用を比較するステップとを含む。
【0032】
また本発明は、化学的ライブラリーをスクリーニングし、組織中のSV2タンパク質をローカライズし、精製SV2タンパク質を特性決定するツールとしてのビオチン化リガンドを提供する。本発明のSV2タンパク質としては、SV2A、SV2B及びSV2Cが挙げられる。SV2/LBS、特にSV2A/LBS、及びそれらの誘導体のリガンドは、天然の脳細胞膜、例えば動物、哺乳動物又はヒトの脳細胞膜等のスクリーニング、或いはSV2タンパク質を発現する細胞系のスクリーニングを目的としてビオチン化することができる。また本発明は、SV2/LBSの光活性化可能なビオチン化リガンドを提供する。これらのスクリーニングアッセイにより、SV2と相互作用する新規薬剤又は化合物の同定が可能である。
【0033】
さらに本発明は、膜関連タンパク質の精製方法であって、組織由来のタンパク質を可溶化して可溶化複合体を形成するステップと、可溶化複合体を機能的形態で単離するステップとを含む。可溶化タンパク質又は複合体は、タンパク質に結合する抗体を用いて精製されたアフィニティーであってよい。この方法によって精製され得る膜関連タンパク質の例としては、SV2A、SV2B及びSV2C等のSV2タンパク質のファミリーが挙げられる。この方法で使用可能な界面活性剤としては、n−ドデシル−β−マルトシド及びその類似体又は誘導体、例えばn−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル−β−D−マルトシド等が挙げられる。
【0034】
またビオチン化リガンドは、可溶化、免疫親和性精製及びクロマトグラフィー後に、SV2タンパク質の構造状態を評価するツールとして用いることができる。
【0035】
一実施形態では、SV2タンパク質は、少なくとも1つのSV2タンパク質又はその断片と融合パートナーとを含む融合タンパク質であってよい。融合パートナーは、ポリヒスチジンタグ又はグルタチオン−S−転移酵素タグ等の融合タグであってよい。融合パートナーは、SV2タンパク質のN末端又はC末端に結合され得る。
【0036】
別の実施形態では、SV2タンパク質等のタンパク質は、少なくとも1つのグリコシル化部位を欠失していてもよい。場合によっては、部位特異的変異形成を行なって、SV2タンパク質中の1つ又は複数のグリコシル化部位を除去することができる。SV2タンパク質又は断片は、哺乳動物膜(例えばラット脳膜)などの天然起源から精製することができる。或いは、SV2タンパク質又は断片は、形質転換した宿主細胞上で発現される。さらに、SV2タンパク質又は断片は固定化される。
【0037】
一態様では、リガンドは、直接的又は間接的に標識化され得る。標識は、3H等の放射標識、蛍光標識又は酵素であってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
I.シナプス小胞タンパク質2(SV2)ファミリーのタンパク質
LEV又はその誘導体若しくは類似体に結合するすべてのSV2タンパク質は、本明細書に記載のアッセイで用いることができる。
【0039】
本明細書では、SV2タンパク質には、単離タンパク質、そのタンパク質の対立遺伝子変異体、及びそのタンパク質の保存的アミノ酸置換が含まれる。本明細書では、「タンパク質」又は「ポリペプチド」は、一部で、配列番号1の核酸配列によってコードされているタンパク質、又は配列番号2で表されているヒトアミノ酸配列を有するタンパク質である、SV2A若しくはその断片;配列番号3の核酸配列によってコードされているヒトタンパク質を含む、SV2B又は配列番号4で表されているアミノ酸配列若しくはその断片;配列番号5の核酸配列によってコードされているヒトタンパク質を含む、SV2C、又は配列番号6で表されているアミノ酸配列若しくはその断片;及び配列番号7の核酸配列によってコードされているヒトタンパク質を含む、SVOP、又は配列番号8で表されているアミノ酸配列若しくはその断片を意味する。またこの用語は、上に具体的に列挙されているアミノ酸配列とはわずかに異なるアミノ酸配列を有する天然の対立形質変異体及びタンパク質も意味する。また対立遺伝子変異体は、上に具体的に列挙されているアミノ酸配列とはわずかに異なるアミノ酸配列を有しているが、これらのタンパク質に関連する同一の、又は類似の生物学的機能を有している。
【0040】
本明細書では、配列番号2、4、6又は8のヒトアミノ酸配列に関連するSV2タンパク質のファミリーは、一部において、ヒトに加え、生物(organism)から単離されたタンパク質を意味する。例えば、ラットのSV2A核酸(配列番号9)及びタンパク質(配列番号10)、SV2B核酸(配列番号11)及びタンパク質(配列番号12)、SV2C核酸(配列番号13)及びタンパク質(配列番号14)、並びにSVOP核酸(配列番号15)及びタンパク質(配列番号16)の相同体が同定されており、これらは本明細書に含まれる。これらのタンパク質に関連するタンパク質のファミリーの他のメンバーを同定及び単離するのに使用する方法を以下に記載する。
【0041】
本発明で用いられるSV2タンパク質は、形質転換宿主細胞で発現される、或いは一定の細胞又は組織タイプで自然に発現される、細胞又は小胞の膜断片の一部における分離形態であるのが好ましい。本明細書では、物理的方法、機械的方法又は化学的方法を用いて、通常そのタンパク質に付随する細胞成分からタンパク質を取り出した場合に、タンパク質が単離されるという。当業者は、単離タンパク質を得る標準の精製法を容易に用いることができる。
【0042】
さらに、本発明の方法で使用可能なSV2タンパク質には、配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16の挿入、欠失、保存的アミノ酸置換又はスプライスの変異体が含まれる。本明細書では、「保存的な」変異体とは、タンパク質の生物学的機能に悪影響を及ぼすことのないアミノ酸配列の改変を意味する。改変された配列がタンパク質に関連する生物学的機能を妨げる、或いは不活性化する場合、置換、挿入又は欠失がタンパク質に悪影響を及ぼすと言う。例えば、タンパク質全体の電荷、構造、又は疎水性/親水性は、生物活性に悪影響を及ぼすことなく改変することができる。従って、アミノ酸配列を改変して、例えば、タンパク質の生物活性に悪影響を及ぼすことなく、ペプチドの疎水性又は親水性を高めることができる。本明細書では、「欠失」とは、1個又は複数個のヌクレオチド又はアミノ酸残基がそれぞれ不在であるヌクレオチド又はアミノ酸配列の変化として定義され;「挿入」又は「添加」は、天然のSV2と比較した場合、1個又は複数個のヌクレオチド又はアミノ酸残基の付加が生じたヌクレオチド又はアミノ酸配列の変化であり、「置換」は、それぞれ異なるヌクレオチド又はアミノ酸によって、1個又は複数個のヌクレオチド又はアミノ酸の置き換え(replacement)が生じることである。
【0043】
さらに、本発明のSV2タンパク質は、SV2タンパク質又はその断片が、別のSV2タンパク質又はその断片(第1のSV2タンパク質若しくはその断片と同じでも、異なってもよい)及び/又は異種ペプチド融合パートナーにN末端又はC末端で結合している融合タンパク質を含む。異種ペプチドは、SV2タンパク質又はその断片の発現、精製、溶解、同定、抗原性、又は安定性の拡大に有用なポリペプチド配列であってよい。本発明に有用な異種融合パートナーは、これらに限定されるものではないが、グルタチオン−S−転移酵素(GST)、ポリヒスチジンタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、アルブミン、及び卵アルブミン又はその断片が挙げられる。
【0044】
通常、対立遺伝子変異体、保存的置換変異体、及びSV2タンパク質ファミリーのメンバーは、配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16に記載の完全長配列と少なくとも約35%、40%、50%、60%、65%、70%又は75%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約80%、よりさらに好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは、少なくとも約95%、97%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。かかる配列に関する同一性(Identity)又は相同性(homology)は、必要に応じて相同性の最大パーセントを達成するために、配列を並べて比較し、ギャップを導入した後の既知のペプチドと同一である候補配列のアミノ酸残基の割合として本明細書に定義する。ただし、いかなる保存的置換も配列同一性の一部としては考えない(関連パラメーターに関するB節を参照)。融合タンパク質、或いはペプチド配列へのN末端、C末端又は内部の伸長、欠失又は挿入は、相同性に影響するものとして解釈しないものとする。
【0045】
さらに検討された変異体には、例えば、相同組換え、部位特異的変異形成、又はPCR変異誘発による所定の突然変異、及び他の動物種(これに限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、非ヒト霊長類種を含む)の対応するタンパク質、及びそのタンパク質のファミリーの対立遺伝子変異体又は他の天然変異体;並びにタンパク質が、置換、化学的手段、酵素的手段、又は天然アミノ酸以外の成分(例えば、酵素又は放射性同位元素等の検出可能な成分)を用いた他の適当な手段によって共有結合を改変されている誘導体が含まれる。
【0046】
また、SV2タンパク質の断片も本発明の方法で用いることができる。特に、LEV結合部位を含む断片を用いることができる。かかる断片は、少なくとも約6個又は10個、15個又は20個、25個又は30個のアミノ酸残基、約35個又は40個のアミノ酸残基、約45個又は50個のアミノ酸残基、約55個又は60個、約65個又は70個のアミノ酸残基、或いは少なくとも約75個以上のアミノ酸残基を有し得る。
【0047】
また本発明の方法は、SV2タンパク質ファミリー、これらに限定されるものではないが、SV2A、SV2B、SV2Cとして知られているのラットタンパク質及びヒトタンパク質、並びに関連のシナプス小胞タンパク質SVOP、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16からなるもの、或いは配列番号2、4、6、8、10、12、14又は16を含むもの、並びに本明細書に記載されている関連のタンパク質、好ましくは分離形態のタンパク質のメンバーをコードする核酸分子も利用することができる。ベクター、プラスミド及び形質転換宿主細胞もまたSV2タンパク質の産生に用いることができる。本明細書では、「核酸」とは、上に定義したタンパク質又はペプチドをコードするか、かかるペプチドをコードする核酸配列に相補的であるか、適当なストリンジェンシーな条件下で、かかる核酸にハイブリダイズし、それに対して結合を安定的に維持するか、或いは、配列番号2、4、6、8、又は10の完全長ペプチド配列と、少なくとも約35%、40%、50%、60%、65%、70%、若しくは75%の配列同一性、好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約85%、よりさらに好ましくは少なくとも約90%、95%、97%、又は99%以上の同一性を共有するポリペプチドをコードする、RNA又はDNA又は関連分子として定義される。さらに、本発明で有用な「核酸分子」には、配列番号1、3、5、7、又は9のヌクレオチド配列と、少なくとも約70%又は75%の配列同一性、好ましくは少なくとも約80%、よりさらに好ましくは少なくとも約85%、一層さらに好ましくは少なくとも約90%、及び最も好ましくは95%、97%、99%以上の同一性を共有する核酸分子が含まれる。また本発明の核酸には、異種タンパク質配列又は別のSV2タンパク質配列にN末端又はC末端で融合しているSV2タンパク質を含む融合タンパク質をコードするものも含まれている。
【0048】
ヌクレオチド又はアミノ酸配列レベルの相同性又は同一性は、配列類似性の探索に好適なblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastx(Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997);Karlinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268(1990))のプログラムを使用したアルゴリズムを用いて、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)分析により決定することができる。BLASTプログラムで利用される手法は、最初に、問題となる配列とデータベースの配列の間で、ギャップを含む場合とギャップを含まない場合で、類似セグメントを検討し、次いで、同定すべきすべてのマッチの統計的有意差を評価し、最後に、あらかじめ選択された重要な閾を満たすそれらのマッチ結果のみをまとめるというものである。配列データベースの類似性サーチにおける基本的事項に関する論文については、Altschulら(Nature Genetics 6、119−129(1994))を参照されたい。ヒストグラム、ディスクリプション、アライメント、エクスペクト(すなわちデータベース配列に対するマッチを報告するための統計的有意差閾)、カットオフ、マトリックス、及びフィルター(低複雑性)に関する探索パラメーターは、初期設定にある。blastp、blastx、tblastn及びtblastxで使用されるデフォルトスコアマトリックスは、BLOSUM62マトリックス(Henikoffら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919(1992))であり、長さ(ヌクレオチド塩基又はアミノ酸)が85を超える対象配列について推奨されている。
【0049】
blastnにおいて、スコアマトリックスは、N(すなわち、ミスマッチ残基のペナルティースコア)に対するM(すなわち、1ペアのマッチ残基のリウォードスコア)の比によって設定される。この場合、MとNの初期値はそれぞれ+5及び−4である。blastnの4つのパラメーターは以下のように調整した:Q=10(ギャップ生成ペナルティー);R=10(ギャップ伸長ペナルティー);wink=1(対象配列に沿って、すべてのwinkth位置でワードヒットを生成する);gapw=16(ギャップ化アライメントが生成されるウインド幅を設定する)。同等のBlastpパラメーターセッティングは、Q=9;R=2;wink=1;gapw=32であった。配列間のギャップ比較(Accelrys’Wisconsin Package version10.2として市販されている)は、DNAパラメーターGAP=50(ギャップ生成ペナルティー)及びLEN=3(ギャップ伸長ペナルティー)を用い、タンパク質比較における同等のセッティングは、GAP=8及びLEN=2である。
【0050】
「ストリンジェントな条件」には、(1)洗浄に低イオン強度と高温を用いる条件(例えば、50℃にて、0.015MのNaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDS)、又は(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる条件(例えば、50%(vol/vol)ホルムアミド、pH6.5の0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファー、750mMのNaCl、75mMのクエン酸ナトリウム、42℃)が含まれる。別の例は、42℃において、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ソーダ、5×デンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%硫酸デキストランでのハイブリダイゼーション、42℃にて0.2×SSC及び0.1%SDSの洗浄である。当業者は、クリアで検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得るストリンジェンシー条件を容易に決定し、適切に変更することができる。好ましい分子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13又は15の相補体に上記条件の下でハイブリダイズする分子であって、かつそれは機能タンパク質をコードするものである。より一層好ましいハイブリダイズ分子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13又は15のオープンリーディングフレームの相補体鎖に上記条件の下でハイブリダイズするものである。
【0051】
本明細書では、核酸分子は、核酸分子を他のポリペプチドをコードする混入核酸分子から実質的に単離した場合に「単離した」と言う。
【0052】
A.SV2A及びレベチラセタム結合部位(LBS)
本発明には、SV2Aタンパク質にあるLBSの特性決定及び使用が含まれる。
【0053】
上述のように、「SV2A」には、配列番号2に記載のヒトタンパク質、配列番号1によってコードされているヒトタンパク質、ヒトSV2Aの相同体種、本明細書に記載されている配列番号2の変異体、及びLBSを含むSV2Aの断片が含まれている。
【0054】
II.レベチラセタム及び類似体
本発明の方法には、新規の薬剤を同定するアッセイにおけるLEV及びそのLEV類似体又は誘導体の使用を含んでいる。好ましい実施形態では、本発明の方法は、SV2のLBSへの結合においてLEV及びそのLEV類似体又は誘導体と競合する化合物又は薬剤を同定する。本明細書では、「競合する」、「競合的結合」という用語は、LEV又はその類似体若しくは誘導体と同じLBSに対する結合部位を占有し;LBSへの結合の点で、LEV又はその類似体若しくは誘導体を置換し、或いはこれらによって置換され;LBSへの結合の点で、LEV又はその類似体若しくは誘導体を阻害し、或いは阻害される薬剤又は化合物を意味する。別の好ましい実施形態では、本発明は、SV2Aの活性を調節する化合物又は薬剤の同定を含む。別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、LBSに対する親和性がLEVに比べて低いか、ほぼ同じか、高い化合物又は薬剤を同定する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、LBSに対する親和性がucb 30889に比べて低いか、ほぼ同じか、高い化合物又は薬剤を同定する。またさらに別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、LEVの有効量と比較した場合、SV2Aの活性をより長期間にわたって調節する有効量の化合物又は薬剤を同定する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、LEVの有効量と比較した場合、SV2Aの活性をより短期間にわたって調節する有効量の化合物又は薬剤を同定する。
【0055】
本明細書では、「レベチラセタム」(図15A;LEV)は、欧州特許第0162036B1号(この全体を引用により本明細書に援用するものとする)に記載されている、化合物(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドの国際一般名を意味する。LEVは左旋性化合物であり、中枢神経系の低酸素症及び虚血タイプの疾患の治療及び予防用の保護剤である。またこの化合物は、てんかんの治療にも効果がある。ラセミ化合物α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドとその類似体は、英国特許第1309692号により公知である。米国特許第3459738号には、2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドの誘導体の記載がある。
【0056】
本明細書では、「そのLEV類似体又は誘導体」という用語には、任意に置換されているN−アルキル化2−オキソ−ピロリジン誘導体が含まれている。これらの化合物は、ピロリドン環の4及び/又は5位上で置換されているアルキルアミド誘導体であるのが好ましい。任意に置換されているN−アルキル化−2−オキソ−ピロリジン誘導体の例としては、これらに限定されるものではないが、国際特許出願PCT/EP01/01992号に記載の化合物、例えば、(2S)−2−[(4S)−4−(2,2−ジフルオロビニル)−2−オキソピロリジニル]ブタンアミド、(2S)−2−[(4R)−2−オキソ−4−プロピルピロリジニル]ブタンアミド、(2S)−2−[(4S)−2−オキソ−4−プロピルピロリジニル]ブタンアミド、及び(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドが挙げられる。
【0057】
本明細書では、「そのLEV類似体又は誘導体」という用語には、さらに、任意に置換されているN−アルキル化2−オキソ−ピペリジニル誘導体が含まれている。これらの化合物は、2−オキソ−ピペリジニル環の4及び/又は5及び/又は6位上で置換されているアルキルアミド誘導体であるのが好ましい。任意に置換されているN−アルキル化2−オキソ−ピロリジン誘導体の例としては、これらに限定されるものではないが、国際特許出願PCT/EP02/05503号に記載の化合物、例えば、(2S)−2−[5−(ヨードメチル)−2−オキソ−1−ピペリジニル]ブタンアミド、(2S)−2−[5−(アジドメチル)−2−オキソ−1−ピペリジニル]ブタンアミド、2−(2−オキソ−5−フェニル−1−ピペリジニル]ブタンアミド、(2S)−2−[4−(ヨードメチル)−2−オキソ−1−ピペリジニル]ブタンアミド、及び(2S)−2−[4−(2−フルオロ−2−メチルプロピル)−2−オキソ−1−ピロリジニル]ブタンアミドが挙げられる。
【0058】
本明細書では、「そのLEV類似体又は誘導体」という用語には、式I:
【化1】
[式中、
Rは水素又はヒドロキシを表し、
R1及びR2は、独立して、水素又は炭素原子1〜4個のアルキル基を表し、
R3及びR4は、独立して、水素、炭素原子1〜4個のアルキル基、又は−(CH2)n−NR5R6(式中、nは1、2又は3であり、R5及びR6は、水素又は炭素原子1〜4個のアルキル基を表す)を表す]
で表される、ラセミ体若しくは異性体の形態におけるの任意のアセタム(acetam)化合物、又はその製薬上許容可能な塩が含まれる。
【0059】
かかるアセタム化合物の例としては、これらに限定されるものではないが、R、R1、R2、R3及びR4が水素である式Iの化合物が挙げられ、この化合物は、英国特許第1039113号及び1309692号に記載されている一般名ピラセタムとして知られている2−オキソ−ピロリジンアセトアミドである。
【0060】
また本明細書では、「そのLEV類似体又は誘導体」という用語には、任意に置換されているN−アルキル化2−オキソ−アゼパニル(azepanyl)誘導体が含まれる。これらの化合物は、2−オキソ−アゼパニル環の4及び/又は5及び/又は6及び/又は7位上で置換されているアルキルアミド誘導体であるのが好ましい。任意に置換されているN−アルキル化2−オキソ−アゼパニル誘導体の例としては、これに限定されるものではないが、国際特許出願PCT/EP02/05503号に記載の化合物、例えば、2−[5−(ヨードメチル)−2−オキソ−1−アゼパニル]ブタンアミドが挙げられる。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、LBSに結合するピラセタムの誘導体又は類似体である化合物又は薬剤を含む。またかかる化合物には、アニラセタム(aniracetam)及びネフィルアセタム(nefiracetam)等の分子が含まれる。好ましい実施形態では、ピラセタムの誘導体又は類似体は、SV2A又は他のSV2ファミリーメンバーの活性を調節するものである。
【0062】
III.アッセイ形式
本発明のアッセイには、神経障害(例えば、発作、てんかん、パーキンソン病、パーキンソン病ジスキネジー、片頭痛、アルツハイマー病、神経障害性疼痛、本態性震顫、認知障害、運動障害)内分泌障害、及び副腎髄質関連疾患(例えば低血糖及び循環ショック)の処置のために有用な薬剤又は化合物を同定する方法が含まれる。本発明のアッセイにはまた、例えば、認知の動物モデルにおいて(in animal models of cognition)測定され得るような、認知増強効果を有する薬剤又は化合物を同定する方法が含まれる。特に、本発明のアッセイには、SV2AのLBSへの結合の点でLEV又はその類似体若しくは誘導体と競合するか、LBSへの結合の点でLEV又はその類似体若しくは誘導体を置換し、又はそれらによって置換されるか;或いは、LBSへの結合の点でLEV又はその類似体若しくは誘導体を阻害し、又はそれらによって阻害される、薬剤又は化合物を同定する方法が含まれる。
【0063】
LEV、ucb 30889(図15B)及び上記に記載されるようなLEVの他の誘導体又は類似体は、SV2AのLBSに結合する新規な化合物又は薬剤をスクリーニングするためのアッセイにおける結合剤として、本発明の方法において有用である。このようなアッセイの実施形態において、LEV、ucb 30889及び誘導体又は類似体は、修飾なしで使用され得、又は種々の方法で;例えば、検出可能なシグナルを直接的に又は間接的に提供する部分を、例えば共有結合又は非共有結合で標識することによって修飾され得る。これらのアッセイのいずれかにおいて、材料は直接的又は間接的のいずれかで標識され得る。直接的標識に可能なものは、以下のような標識グループが含まれる:放射性標識([3H]、[14C]、[32P]、[35S]、又は[125I]を含むがこれらに限定されない)、酵素(例えばペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼなど)、及び蛍光標識(蛍光強度、波長シフト、又は蛍光偏光の変化をモニターすることができる、フルオレセイン又はローダミンを含むがこれらに限定されない)。さらに、FRET技術が、リガンドと、SV2AのLBSとの間の相互作用を分析するために使用され得る。間接的に標識するための可能なものとしては、1つの構成要素のビオチン化、その後の、上記の標識基の1つと結合したアビジンへの結合又は抗リガンド抗体の使用が含まれる。化合物はまた、その化合物が固体支持体に結合される場合、スペーサー又はリンカーを含み得る。
【0064】
SV2AのLBSへの結合に関し、LEV及びucb 30889及び誘導体と競合又は相互作用する薬剤又は化合物を同定するために、SV2Aを含有する、インタクトな細胞、細胞断片、又は膜断片又は完全なSV2Aタンパク質又はSV2Aタンパク質のLBSを含む断片が使用され得る。この薬剤又は化合物は、LEV又はその類似体若しくは誘導体とのインキュベーションの前に、それと同時に、又はその後で、細胞、膜、SV2タンパク質、又は断片とともにインキュベートされ得る。本発明のアッセイは、SV2タンパク質、シナプス小胞、神経伝達、及び/又は内分泌細胞機能、並びにCa2+を含む2価カチオンのシナプス前蓄積について知られている任意の特性又は機能を測定することができる。アッセイの終点として測定し得るSV2タンパク質の特性又は機能の例には以下が含まれるがこれらに限定されない:リン酸化状態、Ca2+を含む2価カチオンの結合;膜輸送;シナプス小胞への、及び/又はシナプス小胞からの2価カチオン(Ca2+を含む)の輸送;シナプス小胞への、及び/又はシナプス小胞からの神経伝達物質(アミン、アセチルコリン、興奮性神経伝達物質、GABA、セロトニン、及びグリシンを含むがこれらに限定されない)の輸送;他のタンパク質(ラミニン及びシナプトタグミンを含むがこれらに限定されない)との相互作用;タンパク質分解に対する感受性、又は生化学的若しくは生物物理学的特性の他の変化によって測定されるような、コンホメーション変化;2価カチオンチャンネル形成;タンパク質複合体の形成又は解離;シナプス小胞機能;融合;エクソサイトーシス;並びにシナプス小胞再循環。
【0065】
本発明のアッセイは、任意の利用可能な様式で改変又は準備することができ、これには、SV2A又はSV2Aタンパク質のLBSへの、LEVの結合又はその誘導体若しくは類似体の結合をモニターする高スループットアッセイが含まれる。化合物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所定の期間内に調査される化合物の数を最大化するために高スループットアッセイが所望される。このようなスクリーニングアッセイは、SV2Aを含むインタクトな細胞、細胞断片、又は膜断片、並びに無細胞系又は膜を含まない系(例えば、精製されたか、又は半精製されたタンパク質を用いて誘導され得る)を使用し得る。SV2Aを含む膜断片又は精製されたSV2Aタンパク質及びペプチドを用いるアッセイの利点は、試験化合物の細胞毒性及び/又は生物学的利用能の作用を一般的に無視できることにあり、それに替え、アッセイは、分子標的に対する薬物の効果に主として焦点が当てられるので、例えば、2つの分子間の結合の阻害を明白にすることができる。
【0066】
競合スクリーニングアッセイの1つの実施形態において、アッセイは、SV2A又はLBSを含むSV2Aの断片へのucb30889の結合、或いはSV2A又はLBSを含むSV2Aの断片へのLEV、又はその誘導体若しくは類似体の結合を阻害する試験薬剤又は化合物の能力を検出するように処方され得る。競合スクリーニングアッセイの別の実施形態において、アッセイは、SV2A又はLBSを含むSV2Aの断片への試験薬剤又は化合物の結合を阻害する、ucb30889の能力、又はLEV、若しくはその誘導体若しくは類似体の能力を検出するように処方され得る。複合体形成の阻害は種々の技術によって検出され得る。例えば、複合体の形成の調節は、例えば、検出可能に標識されたucb30889、LEV、又はLEVの誘導体若しくは類似体を使用して定量され得る。複合体形成の阻害は、SV2AのLBSへの競合的な結合についてアッセイされる薬剤又は化合物の検出可能に標識されたバージョンを使用することによって検出され得る。代替的には、SV2Aタンパク質とリガンドとの間の結合が、標識されたプローブの必要性なしで検出され得る。例えば、表面プラズモン共鳴、核磁気共鳴、又は質量分析法は、このような結合アッセイのために選択される手段である。別の方法は、リガンドの結合によって誘導されるプロテアーゼに対するSV2タンパク質の感受性の変化を測定することである。
【0067】
特定の例において、非複合体形態のものから複合体を容易に分離するため、並びにアッセイの自動化に対応するために、LBS(SV2A又はLBSを含むSV2Aの断片)又はリガンド(LEV、ucb 30889又は試験薬剤若しくは化合物)の一方を固定化することが望ましい。LBSへのリガンドの結合、例えばSV2Aへの候補薬剤又は化合物の結合は、LEV又はucb 30889の存在下又は非存在下において、反応物を含めるために適切な任意の容器中で達成され得る。例としては、マイクロタイタープレート、試験管、及び微量遠心管が挙げられる。1つの実施形態において、融合タンパク質が提供され得、これは、LBSがマトリックスに結合することを可能にするドメインを付加する。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,MO)又はグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着することができ、次いでこれらは、標識したLEV、ucb 30889、又はLEVの誘導体若しくは類似体、及び未標識の試験薬剤又は化合物と合わせられ;或いは代替的には、未標識のLEV、ucb 30889、又はLEVの誘導体若しくは類似体、及び標識した試験薬剤又は化合物と合わせられる。次いで、この混合物は、複合体形成に導く条件下でインキュベートされる。インキュベート後、ビーズを洗浄していかなる未結合反応物も除去し、マトリックスに固定化された標識を直接的に測定するか、又はその後LBS/リガンド複合体を解離した後で上清中で測定する。可能な場合には、複合体は、マトリックスから解離され、SDS−PAGEによって分離され、そのゲルから、標準的な電気泳動技術を使用して、ビーズ画分中に見い出されるリガンドのレベルを定量し得る。
【0068】
マトリックス上にタンパク質を固定化するための他の技術もまた、対象のアッセイにおける使用のために利用可能である。例えば、LBSはビオチン及びストレプトアビジンの結合体化を利用して固定化され得る。ビオチン化分子は当該分野において周知の方法(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals,Rockford,Ill.)を使用して、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシニミド)から調製され得、ストレプトアビジンコートした96ウェルプレート(Pierce Chemical)の壁に固定化され得る。代替的には、LBSと反応性であるがリガンド結合を妨害しない抗体をプレートの壁に誘導体化することができ、この抗体の結合によって壁においてLBSの結合がトラップされる。上記で、リガンド及び試験化合物の調製物は、プレートのタンパク質提示壁においてインキュベートされ、ウェル中にトラップされたタンパク質/リガンド複合体を定量することができる。このような複合体を検出するための例示的な方法としては、上記に記載したものに加えて、リガンドと反応性である抗体を使用する複合体の免疫検出、又は当該タンパク質と反応性であり、リガンドと結合について競合するものが挙げられる。
【0069】
本発明の別の実施形態において、競合的結合アッセイが、SV2結合パートナーを同定するためにLBSを含む細胞又は組織の細胞抽出物を使用して実行され得る。本明細書中で使用される場合、細胞抽出物とは溶解されたか又は破壊された細胞から作られる調製物又は画分をいう。細胞抽出物の好ましい供給源は、ヒト中枢神経組織又は内分泌組織由来の細胞である。特に、細胞抽出物は特定の領域から調製され得、これには海馬、小脳、大脳、大脳皮質、下垂体、髄質、及び副腎が含まれるがこれらに限定されない。さらに、細胞抽出物は、中枢神経系起源又は内分泌系の特定の一次細胞単離物から調製され得、これには神経細胞、星状細胞、及び髄質の内分泌細胞が含まれるがこれらに限定されない。代替的には、細胞抽出物は、利用可能な細胞系、特に神経学的起源又は内分泌起源の細胞系から調製され得る。本明細書中で意図される細胞系には、ラットPC12褐色細胞腫細胞、AtT−20、GH3、及びHIT細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0070】
種々の方法が細胞の抽出物を入手するために使用され得る。細胞は、物理的な破壊方法又は化学的な破壊方法のいずれかを使用して破壊され得る。物理的破壊方法の例としては、超音波処理及び機械的剪断が含まれるがこれらに限定されない。化学的破壊方法の例としては、界面活性剤溶解及び酵素溶解が含まれるがこれらに限定されない。当業者は、本発明の方法における使用のための抽出物を入手するために、細胞抽出物を調製するための方法を容易に適合し得る。
【0071】
一旦細胞の抽出物が調製されると、その抽出物はSV2タンパク質又は断片及び他のアッセイ構成成分と、タンパク質と結合パートナーの結合が起こり得る条件下で混合され、次いで、LEV又はその類似体若しくは誘導体が添加される。代替的には、LEV又はその類似体若しくは誘導体は、試験薬剤又は化合物の前に、又はそれと同時に細胞抽出物に添加することができる。種々の条件が使用され得、最も好ましいものは、ヒト細胞の細胞質において見い出される条件と近似する条件である。例えば、浸透圧、pH、温度、及び使用される細胞抽出物の濃度のような特徴が、結合パートナーとタンパク質の結合を最適化するために変化され得る。
【0072】
適切な条件下での混合後、結合複合体は混合物から分離される。種々の技術が混合物を分離するために利用され得る。例えば、SV2Aに特異的な抗体が結合パートナー複合体を免疫沈降させるために使用され得る。代替的には、標準的な化学的分離技術(例えばクロマトグラフィー及び密度/沈降遠心分離)が使用され得る。
【0073】
抽出物中に見い出される結合していない細胞成分の除去後、結合パートナーは従来の方法を使用して複合体から解離され得る。例えば、解離は、混合物中の塩濃度又はpHを変化させることによって達成され得る。
【0074】
上記に議論したように、混合抽出物からの結合した結合パートナー対の分離を補助するために、LBSを固体支持体に固定化することができる。例えば、LBSは、ニトロセルロースマトリックス又はアクリルビーズに付着することができる。固体支持体へのLBSの付着は、抽出物中で見い出される他の構成成分からペプチド/結合パートナー対を分離するのを補助する。同定された結合パートナーは、単一のタンパク質又は2つ若しくはそれ以上のタンパク質から作られる複合体のいずれかであり得る。代替的には、結合パートナーは、Takayamaら(Methods.Mol.Biol.69:171−184.(1997))の手順に従うFar−Westernアッセイを使用して同定され得るか、又はエピトープタグ化タンパク質若しくはポリ−His融合物若しくはGST融合タンパク質の使用を通して同定され得る。
【0075】
代替的には、生物発光又は蛍光エネルギー移動(それぞれ、BRET及びFRET)及び酵母ツーハイブリッド系を利用する、哺乳動物細胞に基づくタンパク質−タンパク質アッセイが、タンパク質−タンパク質相互作用の同定のためのツールであり得る。
【0076】
SV2タンパク質を介して作用する薬理学的に活性な化合物を同定するための別のアプローチは、野生型及びSV2ノックアウト細胞系、組織、及び動物に対するこのような化合物の効果を分析することによる。例えば、遺伝的と野生型の動物若しくは疾患の組織モデルにおいて試験することによって、又は機能的細胞アッセイに対するスクリーニングによって以前に同定されたかもしれない関心対象の化合物を、機能的SV2タンパク質が減少し若しくは低レベルであるか、又は完全に機能的SV2タンパク質を欠く、細胞、組織、又は動物における等価な又は有益なアッセイにおいて再試験することができる。このようなノックダウン又はノックアウトは、例えば、アンチセンス若しくはRNAi技術を使用することによって、又はゲノムのノックアウト動物を用いて実行することによって得ることができる。
【0077】
ある実施形態において、野生型動物のニューロンにおけるN型カルシウムチャネルを阻害する化合物が同定され、次いで、その化合物を、SV2 mRNA配列に対して標的化されたRNAi又はアンチセンスオリゴを使用してノックダウンしたそれらのSV2タンパク質を有するニューロン、又は代替的には、ゲノムSV2ノックアウト動物からのニューロンについて、同じ条件下で試験する。SV2ノックアウトニューロンにおける効果の欠如は、その化合物がSV2タンパク質を介してそれらの効果を有することの証拠である。
【0078】
別の実施形態において、抗痙攣薬特性を有する化合物が、カリウムが多くカルシウムが少ないてんかん誘発性培地中に浸漬した野生型ラット海馬スライスのCA3領域において記録されるてんかん様電場電位を阻害するそれらの能力を試験することによって同定される。抗痙攣薬特性を示す化合物は、SV2ノックアウト又はノックダウン海馬スライスを使用して同じアッセイにおいて試験され得る。効力の欠如がSV2タンパク質発現なしでスライス中で観察される場合、これはSV2タンパク質との相互作用によって媒介される効果を強力に支持する。
【0079】
別の実施形態において、LBSに結合する化合物又は薬剤のシナプス前2価カチオン貯蔵に関する効果は、ノックアウト又はノックダウンマウスにおいて研究され得る。特定の実施形態において、野生型及びSV2ノックアウト又はノックダウンマウスに、LBSに結合する一定量の化合物又は薬剤を投与する。動物を屠殺し、そして脳を直ちに取り出し、瞬間的に凍結させる。薄い凍結乾燥した凍結切片の元素画像化を実行し、シナプス前神経末端の基本組成を電子プローブx線微量分析及び特徴的なx線の元素画像化によって測定した。このような方法の例は、Andrewsら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84(6):1713−1717(1987))によって開示されている。
【0080】
IV.SV2のin vitro特徴付け
本発明は、SV2タンパク質のファミリーの機能的特徴付けを含む。1つの実施形態において、本発明は、ラット型及びヒト型の両方のSV2タンパク質、SV2A、SV2B、SV2C、及び関連するシナプス小胞タンパク質SVOPのクローニング及び発現を含む。別の実施形態において、本発明はさらに、LBSを含むドメインの同定を含む。さらなる実施形態において、本発明は、SV2タンパク質の可能な複数の機能の発見、並びにこれらの機能に対するレベチラセタム及び関連リガンドの効果の発見を含む。
【0081】
さらなる実施形態において、本発明は、機能の研究のための真核生物宿主細胞におけるSV2タンパク質の発現を含む。このタンパク質は、その天然の形態で、又は蛍光若しくは他のペプチドタグ(エピトープタグ及びアフィニティータグを含む)を伴う融合物として発現され得、このタンパク質の変異型又は断片が発現及び試験され得、このタンパク質及び相同タンパク質の融合物が発現及び研究され得る。異種発現されたSV2は、電気生理学、顕微鏡検査、又は他の技術を使用してin si−tuで試験され得;又は、これは、電気生理学又は他の技術を使用して真核生物からの機能型で発現及び精製され得る。
【0082】
1つの特定の実施形態において、上記のように天然の又は改変されたSV2タンパク質は、真核生物宿主において発現及び精製され得る。このタンパク質は、精製されかつ研究のために人工脂質ベシクル又は人工二重膜に組み込むことができる。SV2タンパク質の可能な輸送機能は、生化学的手段、例えば、ベシクル中への又はベシクルからの放射活性標識した基質の輸送を測定することによって試験することができる。別の可能なアプローチは、電気生理現象を使用して、合成ベシクル又は人工脂質膜に組み込まれた精製タンパク質についてこのような輸送を研究することである。
【0083】
別の特定の実施形態において、本発明は、原核生物宿主、例えばE.coli中でのSV2タンパク質の発現及び精製を含む。別の特定の実施形態において、本発明は、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisie又はPichia Pastoris)、COS−7、HEK293、及びPC12a細胞を含む、真核生物宿主中でのSV2タンパク質の組換え発現及び精製を含む。本発明に従って、SV2タンパク質、そのポリペプチドの断片、その融合タンパク質又は機能的等価物をコードするポリヌクレオチド配列は、適切な宿主細胞中でのSV2タンパク質の発現を指向する組換えDNA分子を生成するために使用され得る。遺伝コードの固有の縮重に起因して、実質的に同じか又は機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列がSV2をクローニング及び発現するために使用され得る。当業者によって理解されるように、天然に存在しないコドンを有するSV2をコードするヌクレオチド配列を産生することが有利であり得る。特定の原核生物又は真核生物の宿主によって好まれるコドン(Murrayら、Nuc.Acids.Res.17:477−508(1989))が、例えば、SV2発現の速度を増大するために、又は所望の特性(例えば、天然に存在する配列から産生された転写物よりも長い半減期など)を有する組換えRNA転写物を産生するために選択され得る。
【0084】
別の実施形態において、本発明のSV2タンパク質は、他のタンパク質とともに宿主細胞中で組換え的に(recombinantly)同時発現される。SV2は通常、シナプス小胞に結合する。好ましい実施形態において、SV2タンパク質はSNARE複合体タンパク質(ベシクル結合VAMP/シナプトブレビン、シンタキシン、及びSNAP−25を含む)と同時発現される。好ましい実施形態において、SV2Aは、組換え的に発現されるシナプトタグミンとともに、組換え的に宿主細胞中で同時発現される。
【0085】
別の実施形態において、SV2タンパク質の機能、安定性、及び相互作用におけるグリコシル化、リン酸化、及び他の天然の又は導入されたタンパク質修飾の役割が分析される。本発明のSV2タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、種々の理由で(これには以下が含まれるがこれらに限定されない:遺伝子産物のクローニング、プロセッシング、及び/又は発現を改変する変化;結合パートナーとのSV2タンパク質の相互作用を改変する変化;SV2タンパク質の可溶性及び/又は膜挿入の変化;並びにLBS及びそのリガンドとの結合に影響を与える変化)SV2タンパク質をコードする配列を変化させるために、当該分野において一般的に公知である方法を使用して遺伝子操作することができる。ランダム断片化並びに遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのPCR再アセンブリーによるDNAシャッフリングを使用して、ヌクレオチド配列を遺伝子操作することができる。例えば、部位特異的変異誘発を使用して、新規な制限部位を挿入し、グリコシル化パターンを変化し、コドン優先度を変化させ、スプライシング改変体を産生し、又は変異を導入する、などを行うことができる。
【0086】
シナプスにおけるエキソサイトーシスに際して、Ca2+レベルの増加に応答して、小胞がシナプス前原形質膜でクラスター化し、かつ融合する。シナプス内にCa2+が蓄積すると、SV2Aへのシナプトタグミンの結合は阻害され、2つのシナプトタグミンCa2+結合ドメイン(C2B)の二量体化が刺激され、これは、SNARE複合体を組織化すること、及び融合を促進することにおいて役割を果たし得る。低Ca2+においては、SV2Aがなおシナプトタグミン複合体に結合しているので、小胞の融合は阻害される。他のタンパク質(ATPアーゼVCP、SNAREタンパク質SNAP−25及びシンタキシンを含む)へのシナプトタグミンの結合はCa2+依存性である(Augustine、2001)。このエキソサイトーシス機構を明らかにするために、及び融合プロセスにおけるSV2Aの役割をより正確に規定するために、LBSの変化に応答するこれらの複合体中のタンパク質レベルの変化がアッセイされる。特定の実施形態において、SV2Aとシナプトタグミン−SNARE複合体との間の相互作用を調節するLBSリガンドの能力、並びに複合体アセンブリーのどの段階が、及びどのパートナーが、LEV、その類似体若しくは誘導体、又は、LBSへの結合に対してLEVと競合する化合物若しくは薬剤の、SV2Aへの結合によって調節されるのかを評価するその能力が調べられた。1つのこのような実施形態において、リガンド添加後の複合体中のタンパク質化学量論が、同定されたSV2Aパートナーに特異的な抗体、並びに免疫沈降及び組換えGST−融合タンパク質アフィニティークロマトグラフィーを使用して分析される。
【0087】
別のこのような実施形態において、質量分析法及び/又は表面プラズモン共鳴が使用されて、SV2Aとそのパートナー(例えば、シナプトタグミン)又は結合ドメイン由来の短いペプチドとの間の相互作用に対するLBSリガンドの効果を検出する。別の特定の実施形態において、生化学的アプローチが使用されて、LBSリガンドが二価イオン(例えば、Ca2+、Pb2+、Zn2+)と競合し、SV2A及び/又はシナプトタグミンとのそれらの相互作用を阻害するか否かを実証する。別の特定の実施形態において、シナプス小胞融合物におけるSV2タンパク質の役割及び再循環が、PC12a細胞系、初代神経細胞培養、クロム親和細胞、並びに、SV2タンパク質とGFPとの間の融合構築物を発現する他の細胞系又は初代単離物の作製によって分析される。1つのこのような実施形態において、これらの細胞系は、SV2複合体並びにシナプス小胞のエキソサイトーシス及び輸送の蛍光顕微鏡トラッキング、並びにこれらの事象に対するLBSリガンドを用いる処理の効果によって分析される。上記の細胞型はまた、小胞融合及びエキソサイトーシスを判定するために(小胞中にカプセル化された色素を使用して、又は標識した神経伝達物質の放出を測定して)、及びこれらの活性を調節するLBSリガンドの能力を判定するために使用され得る。
【0088】
SV2タンパク質及びその結合パートナーを特徴付けする他の実施形態において、全体の複数タンパク質複合体の富化が、GST−融合SV2又は抗SV2抗体を使用するアフィニティーに基づく方法によって達成される。特定の実施形態において、SV2Aは、GSTタグを伴って、PC12細胞中で過剰発現され、そして、その結合パートナーとともに、タグに対する抗体によって免疫沈降される。関連する実施形態において、SV2Aは、GST又はポリヒスチジンタグを使用して、アガロースビーズ上に固定化される。好ましい実施形態において、シナプスベシクル抽出物、細胞抽出物、又は脳抽出物はビーズとともにインキュベートされ、SV2Aが切断され、そして溶出したタンパク質が1D又は2Dゲルによって分離され、かつ分析される。さらなる実施形態において、これらのタンパク質の同定は、新規な推定の相互作用パートナーについてデータベースを検索するために使用される。別の実施形態において、酵母ツーハイブリッド(Y2H)系又は哺乳動物細胞に基づくタンパク質−タンパク質アッセイが、生きている生物体におけるタンパク質−タンパク質相互作用の同定のために使用されて、アフィニティーに基づく方法によって見い出されたSV2結合パートナーを確認し、及び公知のcDNAを使用する特異的タンパク質ドメイン相互作用を規定する。
【0089】
SV2タンパク質に特異的な抗体は、ポリペプチド又は抗原断片の適切な動物への接種によって産生され得る。LBSに特異的な抗体は、全長SV2タンパク質又はLBSを含む断片を用いる接種によって産生され得る。抗体は、それがそのポリペプチドのエピトープに対して産生され、かつその天然又は組換えタンパク質の少なくとも一部に結合するならば、特定のSV2に特異的である。SV2又はLBSに特異的なモノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体は、抗体産生のための当該分野において周知の多数の方法のいずれかによって産生され得、これは例えば、Harlow及びLane(Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York.(1988))によって教示されている。抗体誘導のためのSV2ペプチドは生物学的活性を必要としないが、ペプチドは免疫原性でなくてはならない。特異的抗体を誘導するために使用されるペプチドは、少なくとも5アミノ酸、好ましくは少なくとも10アミノ酸からなるアミノ酸配列を有し得る。これらは、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部を模倣するはずであり、小さな、天然に存在する分子の完全アミノ酸配列を含み得る。SV2アミノ酸の短鎖は別のタンパク質(例えばキーホールリンペットヘモシアニン及びキメラ分子に対して産生された抗体など)のものと融合され得る。抗体産生は、動物への注射による免疫応答の刺激のみならず、合成抗体又は他の特異的結合分子の製造における類似の工程(例えば、組換え免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(例えば、Orlandiら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:3833−3837.(1989);Huseら、Science 256:1275−1281.(1989))を参照のこと)又はリンパ球集団のin vitro刺激)もまた含む。現在の技術(Winter G.及びMilstein C.(1991)Nature 349:293−299)は、抗体形成の原理に基づく多数の高度に特異的な結合試薬を提供する。これらの技術は、SV2又はLBSに特異的に結合する分子を産生するために適用することができる。
【0090】
特定の実施形態において、本発明は、配列番号6のヒトSV2Cタンパク質及びそれをコードする核酸分子(配列番号5)、並びにその対立遺伝子改変体及び機能的等価物を含む。本発明はさらに、SV2Cタンパク質のin vivo分布の同定を含み、これには、中枢神経系、末梢神経系、並びに内分泌細胞及び組織が含まれるがこれらに限定されない。本発明はさらに、SV2Cタンパク質のリガンド及び/又は結合パートナーの同定を含む。本発明はさらに、SV2Cタンパク質の機能の解明を含む。
【0091】
V.疾患におけるSV2発現
本発明は、特定の神経学的疾患に関連するSV2タンパク質の発現を解明することを含む。特定の実施形態において、SV2Aに特異的な抗体が、対照動物、並びに、てんかん、てんかん発作、パーキンソン病及び認知欠損、他のCNS障害(上記を参照のこと)及び内分泌障害及び副腎髄質関連疾患を模倣する動物の、脳、脊髄、及び神経内分泌組織又は細胞(例えばクロム親和細胞)中で領域特異的な様式で脳組織をプローブするために使用される。別の実施形態において、本発明は、上記の病理に対するすべてのSV2タンパク質アイソフォームの関連性の解明を含み、これにはアイソフォームの変化又はスイッチングが含まれる。好ましい実施形態において、DNAマイクロアレイが、異なる神経学的疾患に関連する、SV2タンパク質コード配列の発現、及びその変化について調査される。特定の核酸配列の発現を決定するためにDNAマイクロアレイを使用する例は、米国特許第5,900,882号において見い出すことができる。別の好ましい実施形態において、シナプス小胞機能に付随する神経学的障害と関連する局所的又は全体的なSV2タンパク質発現の変化が定量的PCR(qPCR)によって確証される。
【0092】
別の実施形態において、ノックアウトマウスがLBSの存在について分析される。好ましい実施形態において、致死性SV2Aノックアウト表現型、SV2B又は二重KO SV2A/Bを有するマウスからの精製されたシナプス小胞が精製され、LBSの存在について並びに基質及び/又はイオンの取り込みについて、野生型マウスからのシナプス小胞と比較して分析される。
【0093】
特定の実施形態において、例えば、疾患関連タンパク質の検出のためのシナプス小胞のタンパク質マッピングのために、健常動物及び疾患(上記に記載された病理を含むがそれらに限定されない)を有する動物から精製されたシナプス小胞におけるタンパク質発現レベルの比較がなされる。特定の実施形態において、健常状態及び疾患状態に由来するシナプス小胞の1Dゲル及び/又は2Dゲルの比較が、疾患特異的様式でアップレギュレート又はダウンレギュレートされるタンパク質を同定するために使用される。別の実施形態において、標的は、野生型からのシナプス小胞のプロテオームと、SV2ノックアウトマウス又は二本鎖RNA誘導性干渉(RNAi;Krichevskyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(18):11926−11929.(2002))培養神経細胞のプロテオームの比較によって同定される。別の実施形態において、本発明は初代神経細胞培養、培養された神経細胞又はPC12細胞で、RNAi又はアンチセンスヌクレオチドを実行して、SV2発現を阻害又は除去することを含む。
【0094】
VI.SV2タンパク質LBSの位置の決定
多数の方法が、LBSの位置の決定において利用される。LBSはアミノ酸残基の連続するセグメントから構成されるか、又は、1つ又は複数の細胞外又は細胞内のループ又はドメイン上に存在するアミノ酸配列から構成される3次元構造であり得る。さらに、LBSは、SV2タンパク質のグリコシル化に依存するかもしれないし、又はSV2タンパク質のグリコシル化を必要としないかも知れない。
【0095】
特定の実施形態において、放射性リガンドを使用して、LBSを特異的に光親和性標識する。特定の実施形態において、放射性リガンドの共有結合の部位は、光親和性標識されたシナプス小胞からのタンパク質分解断片を、SV2A抗体アフィニティークロマトグラフィー又は免疫沈降及び質量分析法を用いて、精製及び配列決定することによって決定される。
【0096】
LBSリガンドとSV2Aタンパク質との間の相互作用に関与するタンパク質ドメインの同定のための特定の実施形態において、SV2タンパク質の断片、又はアミノ酸の欠損、付加、若しくは置換を有するSV2タンパク質が結合に対する効果について分析される。好ましい実施形態において、選択された残基はcDNAの部位特異的変異誘発によって改変される。別の実施形態において、ドメインはSV2アイソフォーム間で交換され、リガンド認識のために重要であるアイソフォームの構造的特徴が同定される。この実施形態の例において、SV2AのN末端ドメインをSV2Bのより短い等価な領域と置換して、LBSリガンド結合に関する効果を決定する。この実施形態の別の例において、SV2Aの領域とSVOPの領域の間で一連の交替をして、リガンド結合に対する効果を決定する。このような交替は各タンパク質の大きな領域を含み得、例えば、複数の膜貫通領域、並びにタンパク質の小さな領域(例えば個々の膜貫通領域を含む)を含む。
【0097】
別の実施形態において、SV2タンパク質(又は選択された結合ドメイン)の3次元構造が、NMRスペクトル分析又はx線結晶解析又は円二色性偏光又は赤外スペクトル分析を使用して、LBS部位の位相(トポロジー)を解明するために少なくとも維持された結合活性を有する純粋なSV2A、及びそのレセプターに適合するような新規な薬物の設計を利用して分析される。研究中の結合ドメインが疎水性環境を必要とするならば、そのタンパク質は、ドデシルマルトシド又は誘導体のような界面活性剤中で可溶化しなくてはならない(実施例を参照されたい)。精製されたタンパク質は、当該分野において公知の方法によって、例えば、A.McPherson「タンパク質血漿の調製及び分析(Preparation and analysis of Protein Crystals)」(John Wiley and Sons,New York,(1982))によって開示される方法によって結晶化され得る。代替的には、本発明のSV2タンパク質は、当該分野において使用される蒸気拡散及び蒸気拡散装置によって結晶化され得、本発明のプロセスにおいて容易に利用され得る。このような装置は、例えば、米国特許第4,886,646号;同第5,096,676号;同第5,130,105号;同第5,221,410号及び同第5,400,741号(これらの開示は本明細書において参照として援用される)において開示されている。SV2タンパク質構造のx線結晶解析による決定並びにリガンド及び/又は結合パートナーとのその結合は、例えば、米国特許第5,978,444号において開示されるような方法及び画像解析システムを使用して実行され得る。
【0098】
ある実施形態において、SV2タンパク質(アイソフォームSV2A、SV2B、及びSV2Cを含む)は宿主細胞系において組換え的に発現され、各アイソフォームについての結合アッセイにおいて、多様なセットの化合物又は薬剤をスクリーニングする。SV2Aアイソフォームと相互作用する化合物又は薬剤は、他のSV2アイソフォームとの相互作用について分析される。別の実施形態において、結合実験が、いくつかの参照薬物、AED、ステロイドを試験するために、及びネイティブなLBS、ヒト及びラットの組換えSV2Aの間の結合の反応動力学を比較するために実行される。
【0099】
VII.本発明の薬剤のための使用
本発明は、SV2タンパク質の調節のための本発明の方法によって同定される化合物又は薬剤の使用を含む。本発明の化合物又は薬剤は、シナプス小胞機能を調節するために;特にシナプス小胞機能に関連する障害、若しくはシナプス小胞機能のある面に影響を与えることによって改善され得る障害を調節するため、又は、シナプス小胞機能を調節して、シナプス前機能の障害、若しくはシナプス小胞機能の補償的変化によって修復され得る神経細胞シグナル伝達の障害を修正するためにもまた、使用され得る。本明細書中で使用される場合、化合物又は薬剤が、シナプス小胞機能を調節するとは、それがシナプス小胞又はシナプス前系(シナプス小胞がこれと相互作用する)の少なくとも1つの成分の少なくとも1つの機能をアップレギュレート又はダウンレギュレートすることができる場合を言うものとする。
【0100】
好ましい実施形態において、薬剤又は化合物はLEV又はその類似体若しくは誘導体である。別の好ましい実施形態において、化合物又は薬剤はSV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合する。さらに別の好ましい実施形態において、化合物又は薬剤は、レベチラセタム結合部位への結合について、レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する。なお別の好ましい実施形態において、神経学的障害の処置のための本発明の薬剤には、上記のようなN−アルキル化2−オキソ−ピロリドン誘導体、N−アルキル化2−オキソ−ピペリジニル誘導体、及びN−アルキル化2−オキソ−アゼパニル誘導体が含まれる。
【0101】
好ましい実施形態において、化合物又は薬剤は抗SV2抗体又はその断片であり、SV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合するものが含まれ、これは、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。関連する好ましい実施形態において、抗体断片はFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、又はscFv断片であり、一方モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0102】
好ましい実施形態において、本発明は、例えば、SV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露することによって、細胞中でSV2タンパク質の少なくとも1つの機能又は活性を調節することを含む。特定の実施形態において、細胞中でのSV2タンパク質の少なくとも1つの機能又は活性の調節は、in vitro、in vivo、in situ、及びex vivoでの化合物又は薬剤への細胞の曝露を含む。本明細書中で使用される場合、SV2の機能の調節は、シナプス小胞の膜を横切るイオン又は他の天然の物質の輸送の調節、SV2タンパク質の、その天然のリガンドへの結合の調節、SV2タンパク質の、上記のような結合パートナーへの結合の調節、及びシナプス小胞の形成、融合、制御、又は機能の再調節を含むがこれらに限定されない。
【0103】
好ましい実施形態において、細胞におけるSV2タンパク質の調節には、細胞中でのシナプス小胞機能の調節が含まれる。本明細書中で使用される場合、本発明の方法によって同定される化合物又は薬剤によって調節され得るシナプス小胞機能は、シナプス前神経細胞におけるシナプス小胞の形成、他のシナプス小胞又はシナプス膜とのシナプス小胞の融合、シナプス小胞の再循環又は回転、シナプス前グリッド(presynaptic grid)とのシナプス小胞の結合、及び神経伝達物質の放出、細胞外マトリックスからのタンパク質(例えば、ラミニン−1など)との結合、及びシナプス後密度(post−synaptic densities)を含むがこれらに限定されない。
【0104】
特定の実施形態において、細胞中でSV2タンパク質の少なくとも1つの機能又は活性を調節する本発明の化合物又は薬剤への細胞の曝露は、細胞の環境中の一価カチオン及び/又は2価カチオンの濃度が制御される条件下で実行される。好ましい実施形態において、2価カチオンは、Ca2+、Zn2+、Pb2+、Mg2+、Mn2+、Fe2+、及びCu2+の少なくとも1つである。好ましい実施形態において、一価カチオンはK+である。特定の実施形態において、レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露することは、低い一価カチオン及び/又は2価カチオンの濃度、すなわち、約1μM未満の条件下で実行される。別の特定の実施形態において、レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露することは、生理学的な一価カチオン及び/又は2価カチオンの濃度、すなわち、約1μM〜約1000μMの間の条件下で実行される。なお別の特定の実施形態において、レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露することは、高い一価カチオン及び/又は2価カチオンの濃度、すなわち、少なくとも約1000μMより上の条件下で実行される。
【0105】
VIII.神経学的障害の治療
本発明の方法によって同定される化合物又は薬剤を、シナプス小胞機能に関連する神経学的障害を処置するために有効な量で使用することができる。特定の実施形態において、化合物又は薬剤を用いる治療は、神経学的障害をする。好ましい実施形態において、神経学的障害は、痙攣障害である。別の好ましい実施形態において、神経学的障害は、パーキンソン病、パーキンソン運動障害、片頭痛、アルツハイマー病、神経障害性疼痛、本態性震顫、及び認知障害からなる群より選択される。高度に好ましい実施形態において、神経学的障害はてんかんである。別の高度に好ましい実施形態において、化合物又は薬剤を用いる治療は、認知機能を増強する。
【0106】
好ましい実施形態において、薬剤又は化合物はLEV又はその類似体若しくは誘導体である。別の好ましい実施形態において、化合物又は薬剤はSV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合する。さらに別の好ましい実施形態において、化合物又は薬剤は、レベチラセタム結合部位への結合について、レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する。なお別の好ましい実施形態において、神経学的障害を治療するための本発明の薬剤には、上記のように、N−アルキル化2−オキソ−ピロリドン誘導体、N−アルキル化2−オキソ−ピペリジニル誘導体、及びN−アルキル化2−オキソ−アゼパニル誘導体が含まれる。
【0107】
好ましい実施形態において、化合物又は薬剤は抗SV2抗体又はその断片であり、SV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合するものが含まれ、これらは、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。関連する好ましい実施形態において、抗体断片はFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、又はscFv断片であり、一方、モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0108】
本明細書中で使用される場合、哺乳動物が本発明の方法によって同定可能な化合物又は薬剤によって媒介されるSV2タンパク質の機能又は活性の調節の必要がある限り、対象は任意の哺乳動物であり得る。哺乳動物という用語は、哺乳綱に属する個体として定義される。本発明は、ヒト対象の処置において特に有用である。
【0109】
本明細書中で使用される場合、「有効な量」は、疾患、状態、又は他の投与された物質、化合物、若しくは薬剤の少なくとも1つの徴候又は効果を、in vivo、ex vivo、又はin vitroで、阻害、減少、緩和、調節、又は制御するのに有効な、物質、化合物、又は薬剤の量である。さらに本明細書中で使用される場合、「有効な量」は、in vivoで少なくとも1つの認知機能を増強するのに有効である物質、化合物、又は薬剤の量である。
【0110】
本明細書中で使用される場合、薬剤は、その薬剤が神経学的障害の少なくとも1つの徴候の程度又は重症度を減少させる場合に、神経学的障害を調節する(modulate)と言われる。例えば、てんかんにおける痙攣が予防され得る;本発明のSV2タンパク質の発現又は少なくとも1つの活性を、何らかの方法で、アップ若しくはダウンレギュレート又は調節する、化合物又は薬剤の投与によって、痙攣の振幅、大きさ、又は重症度が減少され得るか、又は痙攣の発生の頻度が減少され得る。
【0111】
本発明の方法によって同定される化合物又は薬剤は、単独で提供されるか、又は特定の病理学的プロセスを調節する他の化合物又は薬剤と組み合わせて提供され得る。例えば、本発明の化合物又は薬剤は、他の公知の薬物と組み合わせて投与され得る。本明細書中で使用される場合、2つの薬剤は、それらの薬剤が同時に作用するような様式で、同時に投与されるか、又は独立して投与される場合に、組み合わせて投与されると言われる。本発明の特定の実施形態において、本発明の方法によって同定される化合物又は薬剤は、脳においてGABA作動性経路を調節する化合物又は薬剤と組み合わせて提供され得る。別の実施形態において、本発明の化合物は、L−DOPAの組み合わせ治療及び遅発性ジスキネジーのためにアマンタジンと一緒に投与される。
【0112】
本発明の化合物又は薬剤は、非経口的、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、硬膜外、経皮的、局所的、又は経粘膜、又はこれらの組み合わせを介して投与され得る。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康状態、及び体重、もしあれば、同時処置の種類、処置の頻度、及び所望される効果の性質に依存する。薬物の溶解性及び吸収の部位は、治療剤の投与の経路を選択するときに考慮されるべき要因である。
【0113】
本発明はさらに、SV2タンパク質の発現又は少なくとも1つの活性を調節する、1種又は複数の本発明の化合物又は薬剤を含む組成物を含む。個々の必要性は変化するが、各成分の有効な量の最適範囲の決定は当業者の範囲内である。代表的な投薬量は、約0.1から約100mg/kg体重を含む。好ましい投薬量は約5から約80mg/kg体重を含む。より好ましい投薬量は約10から約60mg/kg体重を含む。最も好ましい投薬量は約20から約40mg/kg体重を含む。
【0114】
薬理学的に活性な薬剤に加えて、本発明の組成物は、適切な薬学的に許容される担体を含み得る。この担体は、賦形剤及び助剤を含み、これらは、作用の部位への送達のために薬学的に使用され得る調製物への活性化合物の加工を容易にする。
【0115】
化合物又は薬剤は、注射、例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために処方され得る。非経口投与のための適切な処方物には、水溶性型(例えば、水溶性塩)の活性化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液、必要に応じて、油性注射懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、脂肪油(例えばゴマ油)、又は合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリド)が含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質が含まれ得、これには、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランが含まれる。リポソームもまた、細胞への送達のために薬剤をカプセル化するために使用され得る。注射のための処方物は、単位用量形態で、例えば、保存剤を加えた、アンプル又は複数用量コンテナ中で提供され得る。本発明の組成物は、油性又は水性ビヒクル中での、懸濁液、溶液、又はエマルジョンのような形態を取り得、そして懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤のような処方剤を含み得る。代替的には、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、滅菌した、発熱物質を含まない水)との使用前の構成のための粉末形態であり得る。
【0116】
投与の粘膜経路には、経口、直腸、及び鼻の投与が含まれるがこれらに限定されない。粘膜投与のための調製物は、種々の処方において適切である。化合物又は薬剤が水溶性であるならば、これは適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水又は他の生理学的に適合可能な溶液、好ましくは生理食塩水)中で処方され得る。代替的には、得られる複合体が水性溶媒中で乏しい溶解性を有するならば、これは非イオン性界面活性剤(例えばTween)又はポリエチレングリコールとともに処方され得る。従って、化合物及びそれらの生理学的に許容される溶媒は、吸入若しくはガス注入による投与(口又は鼻のいずれかを通して)のために、又は経口、口腔、非経口、若しくは直腸投与のために、又は腫瘍の場合には、固形腫瘍への直接注射で処方され得る。吸入による投与のために、本発明に従う使用のための化合物が、エアロゾルスプレー提示物の形態で、加圧されたパック又は噴霧器から、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガス)の使用を伴って、便利に送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計測された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。化合物及び適切な粉末基剤(例えばラクトース又はデンプン)の粉末混合物を含む、吸入器又はガス注入器における使用のための、例えば、ゼラチンのカプセル及びカートリッジが処方され得る。
【0117】
経口投与のために、医薬製剤は、液体形態で、例えば、溶液、シロップ、若しくは懸濁液であり得、又は使用前に水若しくは適切なビヒクルで再構築するための薬物製品として提供され得る。このような液体調製物は、薬学的に許容される添加物(例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、又は水素化食用脂肪)、乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、又は分画植物油);及び保存料(例えば、メチル若しくはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸又はソルビン酸)とともに、従来的な手段によって調製され得る。医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤、例えば、結合剤(例えば、あらかじめゼラチン化したトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)とともに、従来的な手段によって調製した、例えば、錠剤又はカプセルの形態を取り得る。錠剤は、当該分野において周知の方法によってコートし得る。経口投与のための調製物は、活性化合物の制御された放出を与えるために適切に処方され得る。
【0118】
口腔投与のために、組成物は、従来的な様式で処方された錠剤又はロゼンジの形態を取り得る。
【0119】
化合物又は薬剤はまた、例えば、従来的な坐剤基剤(例えばココアバター又は他のグリセリド)を含む、坐剤又は保持浣腸剤のような直腸組成物中に処方され得る。
【0120】
以前に記載した処方物に加えて、化合物又は薬剤はまた、デポー調製物としても処方され得る。このように長時間作用する処方物は、移植によって(例えば、皮下又は筋肉内に)又は筋肉内注射によって投与され得る。従って、例えば、化合物は、適切なポリマー性若しくは疎水性材料(例えば、許容されるオイル中のエマルジョンとして)とともに、若しくはイオン交換樹脂とともに、又はやや溶解しにくい誘導体として(例えば、やや溶解しにくい塩として)処方され得る。リポソーム及びエマルジョンは、親水性薬物のための送達ビヒクル又は担体の周知の例である。
【0121】
本発明の方法を実施する際に、本発明の化合物又は薬剤は単独で又は組み合わせて使用され得、又は他の治療剤若しくは診断剤と組み合わせて使用され得る。特定の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、抗痙攣剤のような一般的に受容される医学的実施に従う、これらの条件のために代表的に処方される他の化合物又は薬剤と一緒に同時投与され得る。本発明の化合物は、in vivoで、通常、哺乳動物(例えば、ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット及びマウスなど)中で、又はin vitroで、利用され得る。
【0122】
IX.遺伝子治療
治療において使用されるSV2タンパク質は、対象で内因性に、しばしば「遺伝子治療」と呼ばれる治療様式において産生され得る。特定の実施形態において、SV2タンパク質又はその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は、遺伝子治療によって、有害なシナプス形成と関連する神経疾患又は障害を処置、阻害、又は予防するために投与される。遺伝子治療とは、対象への、発現される又は発現可能な核酸の投与によって実行される治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、治療的効果を媒介する、それらにコードされたSV2タンパク質を産生する。
【0123】
当該分野において利用可能である遺伝子治療のための方法のいずれかが、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は以下に記載される。
【0124】
遺伝子治療の方法の一般的な概説としては以下を参照のこと:Goldspielら、Clinical Pharmacy 12:488−505.(1993);Wu及びWu、Biotherapy 3:87−95.(1991);Tolstoshev、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596.(1993);Mulligan、Science 260:926−932.(1993);並びにMorgan及びAnderson、Ann.Rev.Biochem.62:191−217.(1993);TIBTECH11(5):155−215.(1993)。使用され得る組換えDNA技術の分野において一般的に公知の方法は、Ausubelら編、「分子生物学における最近のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley&Sons、NY(1993);及びKriegler、「遺伝子の移入及び発現(Gene Transfer and Expression)」、A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)において記載されている。
【0125】
好ましい局面において、化合物は、SV2タンパク質をコードする核酸配列を含み、この核酸配列は、適切な宿主中でSV2タンパク質又はその断片又はキメラタンパク質を発現する発現ベクターの一部となる。特に、このような核酸配列は、SV2タンパク質コード領域に作動可能に連結されたプロモーターを有し、このプロモーターは、誘導性又は構成的であり、任意に組織特異的である。別の特定の実施形態において、SV2タンパク質をコードする配列及び任意の他の配列が、ゲノム中の所望の部位において相同組換えを促進する領域によって隣接されている核酸分子が使用され、抗体核酸の染色体内発現を提供する(Kollerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935.(1989);Zijlstraら、Nature 342:435−438.(1989))。
【0126】
患者への核酸の送達は直接的であるか(この場合、患者は核酸又は核酸を運ぶベクターに直接的に曝露される)又は間接的であるか(この場合、最初に細胞が核酸でin vitroで形質転換され、次いで患者に移植される)のいずれかであり得る。これらの2つのアプローチは、それぞれ、in vivo又はex vivo遺伝子治療として公知である。
【0127】
特定の実施形態において、遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所的投与(米国特許第5,328,470号を参照のこと)又は定位的注射(例えば、Chenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3054−3057.(1994)を参照のこと)によって、対象にin vivoで送達され得る。遺伝子治療ベクターの医薬製剤は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含み得るか、又は遺伝子送達ビヒクルが組み込まれている徐放性マトリックスを含み得る。代替的には、完全な遺伝子送達ベクターが組換え細胞からインタクトで産生され得る場合(例えば、レトロウイルスベクター)、医薬製剤は遺伝子送達系を産生する1つ又は複数の細胞を含み得る。
【0128】
in vivoでのコードされたSV2タンパク質の発現のための核酸配列の直接的投与は、当該分野において公知である多数の方法のいずれかによって、例えば、適切な核酸発現ベクターの一部としてその配列を構築すること、及びその配列が細胞内になるようにその配列を投与することによって、例えば、欠損性若しくは弱毒化されたレトロウイルスベクター又は他のウイルスベクターを使用する感染(米国特許第4,980,286号を参照されたい)によって、或いは裸のDNAの直接的注入によって、或いは微粒子銃(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupont)の使用によって、或いは脂質又は細胞表面レセプター又はトランスフェクト剤でのコーティング、リポソーム、微粒子、又はマイクロカプセル中でのカプセル化、或いは核に入ることが知られているペプチドへの連結においてそれらを投与することによって、レセプター媒介エンドサイトーシス(例えば、Wuら、J.Biol.Chem.262:4429−4432.(1987)を参照のこと)に供されたリガンドへの連結においてそれを投与することによって(これはレセプターを特異的に発現する細胞型を標的化するために使用され得る)、などによって達成され得る。別の実施形態において、核酸−リガンド複合体が形成され得、ここで、リガンドは、エンドソームを破壊する融合誘導ウイルスペプチドを含み、核酸がリソソーム性分解を回避することを可能にする。なお別の実施形態において、核酸は、特異的レセプターを標的化することによって、細胞特異的な取り込み及び発現のためにin vivoで標的化され得る(例えば、以下のPCT公開を参照のこと:WO 92/06180、1992年4月16日(Wuら);WO 92/22635、1992年12月23日(Wilsonら);WO 92/20316、1992年11月26日;(Findeisら);WO 93/14188、1993年7月22日(Clarkeら);及びWO 93/20221、1993年10月14日(Young))。代替的には、核酸は細胞内に導入され得、そして発現のために相同組換えによって宿主細胞DNA中に組み込まれ得る(Kollerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935.(1989);Zijlstraら、Nature 342:435−438.(1989))。
【0129】
特定の実施形態において、本発明のSV2タンパク質をコードする核酸配列を含むウイルスベクターが使用される。例えば、レトロウイルスベクターが使用され得る(Millerら、Meth.Enzymol.217:581−599.(1993)を参照のこと)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージング及び宿主細胞DNAへの組み込みのために必要とされないレトロウイルス配列が除去されている。遺伝子治療において使用される抗体をコードする核酸配列は、その遺伝子の患者への送達を容易にする1種又は複数のベクターにクローニングされる。レトロウイルスベクターに関する詳細は、Boesenら(Biotherapy 6:291−302.(1994))において見い出され得、これは、幹細胞を化学療法に対してより抵抗性にするために造血幹細胞にmdr1遺伝子を送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載する。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を例証する他の参考文献は以下である:Clowesら、J.Clin.Invest.93:644−651.(1994);Kiemら、Blood 83:1467−1473.(1994);Salmonsら、Human Gene Therapy 4:129−141.(1993);及びGrossmanら、Curr.Opin.in Genetics and Devel.3:110−114.(1993)。
【0130】
アデノウイルスは、遺伝子治療において使用され得る他のウイルスベクターである。好ましい実施形態において、アデノウイルスベクターが使用される。アデノウイルスは分裂していない細胞に感染できるという利点を有する。Kozarskyら、Current Opinion in Genetics and Development 3:499−503.(1993)は、アデノウイルスに基づく遺伝子治療の概説を提供する。Boutら、Human Gene Therapy 5:3−10.(1994)は、アカゲザルの気道上皮に遺伝子を移入するためのアデノウイルスベクターの使用を実証する。遺伝子治療におけるアデノウイルスの他の例は、Rosenfeldら、Science 252:431−434.(1991);Rosenfeldら、Cell 68:143−155.(1992);Mastrangeliら、J.Clin.Invest.91:225−234.(1993);PCT公開WO 94/12649;及びWangら、Gene Therapy 2:775−783。(1995)において見い出され得る。
【0131】
アデノ関連ウイルス(AAV)もまた、遺伝子治療における使用のために提案されてきた(Walshら、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204:289−300.(1993)米国特許第5,436,146号)。
【0132】
遺伝子治療に対する別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、又はウイルス感染のような方法によって、組織培養における細胞に遺伝子を移入することを含む。通常、移入の方法は細胞への選択マーカーの移入を含む。次いで、移入された遺伝子を取り込みかつ発現している細胞を単離するために、細胞を選択下に配置する。次いで、これらの細胞を患者に送達する。
【0133】
この実施形態において、得られる組換え細胞のin vivoでの投与の前に、核酸を細胞に導入する。このような導入は、当該分野で公知の任意の方法(トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスベクター又はバクテリオファージベクターを用いる感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入、マイクロセル媒介遺伝子移入、スフェロプラスト融合などを含むがこれらに限定されない)によって実行され得る。外来性遺伝子の細胞への導入のための多数の技術が当該分野において公知であり(例えば、Loeffler及びBehr、Meth.Enzymol.217:599〜618.(1993);Cohenら、Meth.Enzymol.217:618〜644.(1993);Cline、Pharmac.Ther.29:69−92.(1985)を参照のこと)、レシピエント細胞の必要な発生的及び生理学的機能が破壊されないならば、これらは本発明に従って使用され得る。この技術は細胞への核酸の安定な移入を提供し、その結果、核酸が細胞によって発現可能であり、好ましくは、その細胞子孫によって遺伝されかつ発現可能である。
【0134】
得られる組換え細胞は、当該分野において公知の種々の方法によって患者に送達され得る。組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞又は前駆細胞)は好ましくは静脈内投与される。使用のために想定される細胞の量は所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者によって決定され得る。
【0135】
核酸が遺伝子治療の目的のために導入され得る細胞は、任意の所望の利用可能な細胞型を含み、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋肉細胞、内分泌細胞、肝細胞;血液細胞(例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球など);種々の幹細胞若しくは前駆細胞、特に造血幹細胞又は前駆細胞(例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるもの)が含まれるがこれらに限定されない。好ましい実施形態において、遺伝子治療のために使用される細胞は患者に対して自系である。
【0136】
組換え細胞が遺伝子治療において使用される実施形態において、抗体をコードする核酸配列が細胞に導入され、その結果、これらは細胞又はそれらの子孫によって発現可能であり、次いで組換え細胞がin vivoで治療効果のために投与される。特定の実施形態において、幹細胞又は前駆細胞が使用される。in vitroで単離及び維持され得る任意の幹細胞及び/又は前駆細胞が、本発明のこの実施形態に従って潜在的に使用され得る(例えば、PCT公開 WO94/08598、1994年4月28日;Stemple及びAnderson、Cell 71:973−985.(1992);Rheinwald、Meth.Cell Biol.21A:229.(1980);並びにPittelkow及びScott、Mayo Clinic Proc.61:771.(1986)を参照のこと)。
【0137】
特定の実施形態において、遺伝子治療の目的のために導入される核酸は、コード領域に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含み、その結果、核酸の発現が、転写の適切な誘導因子の存在又は非存在を制御することによって制御可能である。
【0138】
X.ビオチン化リガンドの使用
本発明は、ビオチンタグを含む、放射性標識されていないSV2A/LBSリガンドを提供する。このようなビオチン化リガンドは、放射活性廃棄物を伴わずにより高い処理能力を有するスクリーニングアッセイである点で有用である。
【0139】
例えば、SV2A/LBSリガンドのビオチン化誘導体は、より強力な構造の発見のために、天然の脳膜又は細胞系において発現されたSV2を用いるスクリーニングアッセイ(例えば、結合アッセイ)において使用され得る。SV2Aに結合したビオチンの量は、ストレプトアビジン−フルオレセイン又はアビジン誘導体を使用して定量され得る。
【0140】
ビオチン化リガンドはまた、可溶化、免疫アフィニティー精製、及びクロマトグラフィーの後で、SV2のコンホメーション状態を評価するために有用である。
【0141】
さらに、本発明は、生物学的試料中での標識及び検出のためのリガンドの光活性化可能なバージョンを提供する。光活性化可能なビオチン化リガンドはまた、組織、単離された細胞、亜細胞画分、及び膜からSV2を局在化及び精製するために使用され得る。光活性化可能なビオチン化リガンドはまた、SV2の架橋及びLBSリガンドの結合ドメインの同定のために使用され得る。
【0142】
XII.SV2の可溶化及びアフィニティー精製
本発明は、SV2/LBSタンパク質を可溶化するための方法を提供し、この方法は、界面活性剤で膜を処理する工程を包含する。本発明の方法によって可溶化された膜タンパク質は、結合アッセイ及びタンパク質−タンパク質相互作用アッセイによって評価されるように、活性のままである。
【0143】
手短に述べると、この方法は、膜、例えばラット脳膜を、界面活性剤n−ドデシル−β−D−マルトシドを含む可溶化緩衝液中で、約4℃で2時間インキュベートする工程を包含する。続いて、インキュベートした溶液を遠心分離して、上清から可溶性SV2タンパク質、特にSV2Aタンパク質を収集した。上清中での可溶性SV2Aタンパク質の存在は、抗SV2A抗体を使用するウェスタンブロット分析によって確認された。上清における可溶性SV2Aタンパク質の結合活性は、SV2Aに結合することが知られているリガンド(例えば、レベチラセタム及びucb 30889など)を用いる結合実験を通して測定された。
【0144】
n−ドデシル−β−D−マルトシドの類似体などの他の界面活性剤、例えば、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル−β−D−マルトシドもまた使用され得る。実際、予備データによって、これらの界面活性剤を用いて膜を可溶化して得られた可溶性タンパク質がその結合活性を保持していることが確認された。
【0145】
本発明はまた、可溶性SV2タンパク質のアフィニティー精製及び推定のSV2Aパートナーの同定の方法を提供する。手短に述べると、アフィニティー精製は、可溶化された膜からの上清を抗SV2A抗体とともに約4℃で一晩インキュベートする工程を包含する。次いで、混合物を、回転によって、緩衝液中のプロテインA−セファロースビーズとともに約4℃で約1時間インキュベートした。適切な緩衝液で樹脂を数回洗浄し、免疫精製されたSV2Aタンパク質を含む画分を収集した。
【0146】
アフィニティー精製後にSV2Aの結合パートナーの存在を検出するために、免疫精製画分のウェスタンブロット分析を実行して、シナプトタグミンの存在を検出した(図22)。
【0147】
本発明は、膜結合タンパク質を精製する方法であって、タンパク質を含む膜試料を界面活性剤で可溶化して可溶化複合体を形成させる工程、及び機能的形態にある可溶化した複合体を単離する工程を包含する方法を提供する。界面活性剤は、n−ドデシル−β−D−マルトシド又はその誘導体であり得る、次いで、タンパク質が免疫アフィニティー技術を使用して単離され得る。
【0148】
本発明の方法によって精製されたタンパク質は、タンパク質に対する構造研究(例えば、NMR、X線結晶解析、赤外吸収スペクトル、円二色性偏光、及び当該分野において周知である他の方法)を実行するために使用され得る。本発明はまた、SV2タンパク質相互作用研究を実行するため、並びにSV2と推定のパートナーとの間の相互作用を阻害又は促進するペプチド、分子、及び化合物を検出するための方法を提供する。本発明は、SV2結合パートナーを同定するために使用され得る。
【0149】
本発明は、構造研究のため、及び結合パートナーを同定するために、SV2A、SV2B、及びSV2C膜結合タンパク質を可溶化し、及びそれらをアフィニティー精製するために使用され得る。
【0150】
さらなる記載がなくとも、当業者は、前述の記載及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を製造及び利用し得、並びに特許請求された方法を実施し得ると考えられる。それゆえに、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘するものであり、いかなる場合においても、開示の残りの部分を制限するとは解釈されない。
【実施例1】
【0151】
結合試験のためのレベチラセタム類似体の開発
LEVは脳において優先的に在存する特異的結合部位に結合することが示されている(レベチラセタム結合部位、すなわちLBS:Noyerら、Euro.J.Pharmacol.286:137−146.(1995);Gillardら、2003)。しかし、[3H]LEVはこの部位に対してミリモル濃度のアフィニティーのみを示したので、深い特徴付けを行うことには不適切であった。本実施例は、レベチラセタムの類似体である[3H]ucb 30889、(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタナミドの結合特性を記載する。結合実験を、Noyerら(Euro.J.Pharmacol.286:137−146.(1995))に記載されるように、未精製ラット脳膜上で4℃で行った。平衡研究のためのインキュベーション時間は120分間であった。反応速度論的研究及び競合研究のために、[3H]ucb 30889(30Ci/mmol)を、2mM Mg2+を含むTris−HCl(pH7.4)緩衝液0.5ml中で、1.3nMの濃度で使用した。脳の下部構造におけるLBSの局在は、同様の条件下でインキュベートされた25μm厚スライス上でのオートラジオグラフィーによって評価した。次いで、スライドを、0.5%BSAを含む50mM Tris−HCl(pH7.4)中で、4℃で10分間、2回洗浄し、乾燥させ、そして−20℃で3週間、[3H]Hyperfilmに曝露した。非特異的結合(NSB)は、インキュベーション期間の間に1mM LEVを含めることによって決定した。
【0152】
図1は、[3H]ucb 30889がラット脳皮質においてLBSに可逆的に結合することを示す。結合の反応速度論は二相性であり:結合及び解離のための半減時間はそれぞれ、速い成分(部位の25から50%)については3±2分間及び4±1分間、並びに遅い成分については47±13分間及び61±15分間であった。25℃では反応速度論は劇的に増大し、1成分のみが残った。
【0153】
図2は[3H]ucb 30889の飽和結合曲線が結合部位の均一な集団の標識と適合することを示す。KD及びBmaxはそれぞれ、42±10nM及び5054±704fmol/mgタンパク質であった。Bmaxは、同様の膜調製物における放射性リガンドとして、[3H]レベチラセタムを使用して見積もった値と同様であった(4718±413fmol/mgタンパク質)。
【0154】
特異的結合は試験した末梢組織においては検出できなかった(図3)。実験条件下(150μgタンパク質/アッセイ及び1.3nM放射性リガンド)での検出の限界は、200fmol/mgタンパク質のBmaxであった。このことは、末梢と比較して、大脳皮質においては少なくとも25倍多い結合部位が存在することを示唆する。
【0155】
競合結合曲線は、ucb 30889が、LEVよりも約10倍高いアフィニティーでLBSに結合することを示した(図4)。ucb 30889のpKi(7.1±0.2)は、飽和結合曲線によって決定されるような(図2)[3H]ucb 30889のKDとよく一致した。種々のレベチラセタム類似体と、LBSと相互作用することが知られている他の化合物(例えば、ペンチレンテトラゾール又はベメグリドなど)(Noyerら、1995)のpIC50値は、[3H]ucb 30889で得られたか[3H]レベチラセタムで得られたかに関係なく同一であった(図5)。
【0156】
[3H]ucb 30889とインキュベートしたラット脳切片(図6)は、[3H]ucb 30889によって標識されたLBSが脳の全体にわたって分散して在存すること、及びこの結合をin vitro結合において観察されたものと等価な濃度でレベチラセタムによって阻害できることを示す(図4)。
【0157】
本実施例は、競合結合試験及び組織分布を通して、ucb 30889及びLEVが両方とも同じ部位、すなわち中枢神経系全体にわたって局在しているLBSを標識していることを実証する。LEVと比較して、ucb 30889は、10倍高いアフィニティーでLBSに結合し、非特異的結合は非常に低い。4℃における適切な結合反応速度に従うこれらの判断基準は、この放射性リガンドを、脳切片上のオートラジオグラフィー結合研究を実行するために使用すること(図6)、及びラット脳におけるLBSの解剖学的分布を示すために使用することを可能にした。
【実施例2】
【0158】
LBSの細胞分布及び亜細胞分布
in situでLBSを同定及び特徴付けするために、[3H]ucb 30889を使用して、脳内のLBSをマッピングし、その両方を研究した。ラット脳オートラジオグラフィーのために、25μmスライスを、1.3nM[3H]ucb 30889とともに、50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)中で、4℃で120分間インキュベートした。ラット脳膜及び種々の神経細胞系を用いる結合アッセイを、同様の条件下で実行した。非特異的結合は、アッセイに1mMレベチラセタムを含めることによって測定した。光標識化のために、膜を、40nM[3H]ucb 30889とともに、同じ緩衝液中で、4℃で120分間インキュベートし、次いて、30分間、UV光を用いる照射を行った(Fuksら、Eur.J.Pharmacol.478:11〜19(2003))。
【0159】
ラット脳オートラジオグラフィーのために、25μmスライスを、1.3nM[3H]ucb 30889とともに、50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)中で、4℃で120分間インキュベートした。図7は、ucb 30889結合部位がラット脳において不均一に分布していることを示す。白質には明白な結合が存在しないのに対して、歯状回、上丘、いくつかの視床核、及び小脳の分子層において高レベルの結合が存在した。結合は、大脳皮質、視床下部、及び線条体においてはあまり明白ではなかった。略号:cc、脳梁;Aca、前交連;ci、内包;Mtg、乳頭蓋束;Mt、乳頭視床束;ML、分子層;Hi、海馬;DG、歯状回;sc、上丘;CG、中心灰白質;Pu、尾状被殻;Pv、室傍核;MG、膝状体核;Po hy、後視床下部領域;Hb、小帯;Pi、梨状皮質。
【0160】
小脳顆粒ニューロン及びPC12細胞における[3H]ucb 30889結合は、高レベルの特異的結合を示した(表1)。Kdはラット大脳皮質において測定された値と同様であった(42nM;実施例1を参照のこと)。同じ特異的結合部位が、一次星状細胞及び一定の範囲のCNS関連細胞系及び非ニューロン細胞系においては検出することができなかった。略号:nd、検出せず。
【表1】
【0161】
ラット脳膜を示差的遠心分離(differential centrifugation)によって分離した(図8)。LBS(8A)、ムスカリン性レセプター(8B)、NMDAレセプター(8C)、及び末梢ベンゾジアゼピンレセプター(8D)への結合を、それぞれ、[3H]ucb 30889、[3H]NMS、[3H]MK801、又は[3H]PK11195を使用して測定した。この研究は、レベチラセタム結合部位が粗シナプトソーム(P2)、ミクロソーム膜(P3)に存在し、そしてシナプス小胞(LP2)において富化されていることを示す。対照的に、他の研究したレセプターは、P2又はP3と比較して、LP2があまり豊富ではない。P1は核及び大きな細片を含む低速ペレットである。
【0162】
スクロース勾配による分画を使用して、粗シナプトソームから細胞成分を単離した。LBSは精製されたシナプス膜中に見い出されたが、精製されたミトコンドリア画分を含む1.2Mスクロースペレット中には存在しなかった(図9)。亜細胞画分の精製のための対照として、ムスカリン性レセプター及び末梢ベンゾジアゼピンレセプターの分布もまた分析した。データは、全体の特異的結合のパーセンテージを表す。
【0163】
粗シナプトソーム(P2画分)を40nM[3H]ucb 30889とともにプレインキュベートし、次いでUV光を照射し、洗浄した。0分において1mM レベチラセタムを加え、指定した時間に一部を取り出して計数した(図10)。非特異的結合(白記号)を1mM レベチラセタムを使用して測定した。図10Bは、同じ実験であるがUV光照射の非存在で実行した実験を示す。これらの結果は、UV照射の間、放射性リガンドがLBSの結合ドメインに共有結合的に挿入されることを示す。
【0164】
光アフィニティー標識化を、1mM レベチラセタムの非存在下及び存在下で実行した。タンパク質をSDS−PAGEによって、7.5%(w/w)のアクリルアミド濃度を使用して分離し、放射能をゲルの各スライスにおいて評価した。主要な取り込みの部位は分子量93,000で存在した(図11)(Fuksら、2003)。
【0165】
本実施例において、ラット脳における[3H]ucb 30889結合部位が独特な分布のプロフィールを有し、一般的にてんかんと関連するいかなる特異的な神経伝達系とも相関しないようである。この新規な結合部位は、神経細胞型及びいくつかの脳の領域に制限される。この新規な放射性リガンドは、光アフィニティー標識として使用され得、かつシナプス小胞中に主として局在する高分子量膜タンパク質に共有結合的に結合する。
【実施例3】
【0166】
LBSはSV2A上に存在する
本実施例において、ラット脳におけるLBSの生化学的特徴付けが、クローニング及び結合の特徴付けのための潜在的な候補LBSタンパク質を同定する研究をもたらした。タンパク質の膜内在性の性質、脳特異的発現、見かけのサイズ、及びシナプス小胞局在に基づいてSV2タンパク質ファミリーを、LBSの局在の候補として分析した。従って、SV2タンパク質をクローニングし、LBSリガンドの結合についてアッセイした。
【0167】
材料:レベチラセタム及び誘導体はUCB Pharma(Braine−l’Alleud,Belgium)において合成された。[3H]ucb 30889、(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタナミド(32Ci/mmol)を、Amersham Biosciences(Roosendaal,The Netherlands)によってカスタム標識した。Buckley及びKelly(Buckleyら、J.Cell.Biol.,100,1284−94(1985))によって開発されたSV2タンパク質に対するモノクローナル抗体は、NICHDの後援の下で構築され、The University of Iowa,Department of Biological Sciences,Iowa City,IA 52242によって維持されているDevelopmental Studies Hybridoma Bankから入手した。この抗体は、3つすべてのSV2アイソフォーム、SV2A、SV2B、及びSV2Cに対して交差反応性である。
【0168】
野生型及びノックアウトマウスの結合実験
SV2Aノックアウトマウスは以前に報告されている(Crowderら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96,15268−73(1999))。SV2Bノックアウトの生成は別の場所で報告されるであろう。SV2Bノックアウトを、SV2A遺伝子破壊についてヘテロ接合性である動物を用いて繁殖させて、SV2A+/−SV2B−/−繁殖動物を作製した。これはSV2A/Bノックアウトを生成するために使用された。野生型C57−B16及びSV2 KOマウス脳膜を結合アッセイのために調製し、結合反応を、わずかに改変して以前に記載されたように実行した(Gillardら、Eur.J.Pharmacol.印刷中(2003))。凍結した全脳を、250mMのスクロースを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)(緩衝液A)中でホモジナイズした(10% w/v)。ホモジネートを30,000×gで15分間、4℃で遠心分離し、ペレットを同じ緩衝液中に再懸濁した。37℃で15分間のインキュベーション後、同じ遠心分離プロトコールを使用して、膜を2回洗浄した。最終ペレットを緩衝液A中に再懸濁し、液体窒素中に保存した。融解した脳膜タンパク質(0.1mg/アッセイ)を、2mM MgCl2及び[3H]ucb 30889(1.8nM)を含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)0.5ml中で4℃、120分間インキュベートした。インキュベーション時間の最後に、膜結合放射性リガンドを、0.1%ポリエチレンイミンにあらかじめ浸漬したGF/Cガラス繊維フィルターを通す迅速濾過によって回収した。膜を8mlの氷冷Tris緩衝液(pH7.4)で洗浄した。全体の濾過手順は試料あたり10秒を超えなかった。フィルターを乾燥させ、液体シンチレーションによって放射能を測定した。pIC50決定を、コンピュータを使用する非線形曲線フィッティング法(Graphpad Prism(登録商標)ソフトウェア、San Diego,CA)によって実行した。
【0169】
ウェスタンブロット実験のために、野生型及びノックアウト動物からの脳ホモジネートの一部を、室温で、BMEを含むSDS−PAGE試料緩衝液を用いて抽出した。各試料の等価な量を(約10μg全タンパク質)を4−12%Tris−グリシンNOVEX勾配ゲル(Invitrogen Life Sciences)上に載せて、分離した。ニトロセルロース膜への転写及びブロッキングの後、ブロットを、すべてのSV2タンパク質に対して交差反応性であるモノクローナル抗体を用いて探索し(Buckleyら、J.Cell.Biol.,100,1284−94(1985))、HRP−抗マウス二次抗体を使用して一次抗体を標識した。ブロットを、発光性西洋ワサビペルオキシダーゼ試薬を用いて発色させて写真撮影した。
【0170】
異種的に発現されたhSV2Aに対する[3H]ucb 30889を用いる結合実験
コンフルエントな、トランスフェクトした細胞への結合実験(図17)のために、24ウェルプレート中で細胞をゆっくりと4℃まで冷却し、冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1回すすいだ。PBSを吸い出し、結合試薬をPBS中に加えた。結合実験において、異なる量の未標識インヒビターの存在下又は非存在下で[3H]ucb 30889を1.8nMですべてのウェルに加えた。細胞を4℃で2時間インキュベートし、そして細胞を3回氷冷PBSですすぐことによってアッセイを終結させた。最終の吸引後、細胞を溶解するために200μlの0.1N NaOHを加え、試料をシンチレーション液中で、βカウンターで計数した。
【0171】
以前に凍結させたトランスフェクトしたCOS−7細胞に対する結合実験(図18)のために、2から3×104細胞を、[3H]ucb 30889(1.8nM)及び増加濃度の未標識競合薬物を含む25mM RPMI−HEPES溶液0.2ml中で、4℃、120分間インキュベートした。濾過によって結合反応を終結させ、放射活性計数を上記のように実行した。
【0172】
聴原性発作マウスモデル
LEV及び類似体の抗発作活性を、腹腔内前処理後に、マウスを90−db、10から20−kHzの聴覚刺激に30秒間、60分間さらすことによって、音感受性マウスにおいて評価した。報告されたED50値は、異なる用量を投与された4から8群(n=10)の試験から得られ、間代性痙攣を阻害するこの化合物の効力を反映する。
【0173】
ヒトSV2Aを、コード領域及び転写物からの有意な隣接領域を含む3609bp PCR産物としてヒト胎児脳のcDNAライブラリーからクローニングした。SV2Aコード領域及び有意な隣接DNAを含むベクターを供給源として使用して、コード領域を、隣接領域なしでPCR増幅した。この産物を、サブクローニングの容易さのためにGATEWAY(Invitrogen)ドナーベクターにクローニングした。クローニング部位のすぐ上流に強力な転写終結部位を有するクローニングベクターの使用のみがSV2A cDNAのみのコード領域の首尾よいクローニングを生じた。これは、このような産物が、たとえ少量であってもE coliに対して毒性であり得ることを示唆する。最終のpDONR GATEWAY SV2Aクローンの配列決定は、これが2つの変異(1つはサイレント、そして1つはLeuからProへの変異)を有することを示した。このサイレントでない変異は訂正され、正しいことを確認するため配列決定され、全長ヒトSV2Aコード配列がクローニングされた。
【0174】
ヒトSV2Aコード領域を、pDONR GATEWAYクローニングベクターからpDEST 12.2Gateway発現ベクターに移した。このベクターは導入された遺伝子を駆動するCMVプロモーター、及びSV40 oriを有し、これは、ラージT抗原を含むCOS−7細胞系において非常に高レベルの複製を可能にする。さらに、ヒトSV2Aコード領域は、pDEST 40 Gateway発現ベクターに移動された。このベクターは、上記の12.2ベクターに非常に類似しており、hSV2Aの発現を駆動するCMVプロモーター、及びSV40 ori、及びネオマイシン耐性遺伝子を有する。
【0175】
pDEST12.2ベクターを使用するSV2A発現の最初の試験は、COS−7細胞系において実行され、これは、既にSV2タンパク質の首尾よい発現が実証されている。COS−7細胞系は3H−30889結合について試験され、バックグラウンドより上の結合は観察されず、従って、有意な測定可能なレベチラセタム結合部位(LBS)の存在は観察されなかった。さらに、PC12細胞系サブクローンPC12a(これはLBSが少ない)が使用されて、安定な抗生物質選択下でhSV2Aを発現するPC12細胞のプールを確立した。
【0176】
Lipofectamine2000(Invitrogen)トランスフェクション試薬を使用して、DNAを90%コンフルエントCOS−7細胞にトランスフェクトした。また、同じ試薬を使用して、hSV2A含有ベクターをPC12a細胞系にトランスフェクトして、抗生物質耐性について選択した。抗SV2Aポリクローナル抗体(CalBiochem)を使用して、トランスフェクトされたCOS−7細胞、又はトランスフェクトされたPC12a細胞のいずれかにおける、SV2A産物の発現について試験した。COS−7細胞の溶解物をトランスフェクションの18時間後にSDS−PAGEゲル上で収集し、膜に転写し、そしてSV2Aに対するポリクローナル抗体を用いて探索し、粗ラット脳膜と比較した(図12A)。トランスフェクトしていないCOS−7細胞、トランスフェクトしていないPC12a細胞(低LBS)、PC12bs細胞(高LBS)、又はhSV2AでトランスフェクトしたPC12a細胞からの溶解物もまた示される(図12B)。標識されていないタンパク質バンドがトランスフェクトしていないCOS−7対照において観察されるのに対して、トランスフェクトしたCOS−7細胞は複数のバンドを示し、80から120kDの範囲で最も高密度であり、これはおそらく、発現されたタンパク質の複数のグリコシル化状態に起因する。さらに、SV2A免疫反応性はPC12bs及びPC12a/hSV2A試料において存在するが、低LBS PC12a細胞においては大部分非存在であった(図12B)。
【0177】
結合実験において、COS−7細胞への[3H]ucb 30889の特異的結合が測定された。この細胞は、SV2A−12.2、若しくは対照として、β−gal発現ベクターのいずれかでトランスフェクトされた細胞、又はトランスフェクトされていない細胞であった(図13)。1nM[3H]ucb 30889(「ホット」標識)、又は[3H]ucb 30889及び過剰量の冷レベチラセタム(50μM)(「ホット+コールド」標識)のいずれかを有する、24ウェルプレートの3連のウェルをインキュベートした。細胞を4℃で2時間インキュベートし、次いで氷冷PBSで迅速に洗浄した。細胞をプレート上で溶解し、シンチレーション液を有するシンチレーションバイアルに移し、そして3H崩壊発光を計数した。これらの結果は、SV2AでトランスフェクトされたCOS−7細胞が[3H]ucb 30889を特異的に結合する能力を獲得したことを示す。LBSを発現することが知られている、PC12bs細胞を使用する同一のインタクト細胞結合実験で、「ホット」試料と「ホット+コールド」試料との間で、本実験で見られる5倍の違いと比較すると、1.5から2倍のCPMの違いが見られる。
【0178】
さらなる研究は、COS−7細胞中で発現されたSV2Aへの[3H]ucb 30889の結合をより詳細に特徴付けた。COS−7細胞を24ウェルプレート中でトランスフェクトし、上記のように結合についてアッセイした。一連の濃度のレベチラセタム又は冷30889のいずれかを、COS−7細胞中で発現されたSV2Aに対するこれらの化合物についてIC50を生成するために加えた(図14)。これらの結果は、SV2Aが、ラット脳及びPC12サブクローンにおいて観察されたレベチラセタムについての結合部位と機能的に等価であることを示す。先の観察と総合すると、LBS結合アフィニティーと、レベチラセタム及びその類似体の抗痙攣特性との間の相関は、シナプス小胞タンパク質SV2Aが、抗てんかん化合物レベチラセタムのネイティブな結合部位であるということだけでなく、レベチラセタムによるシナプス小胞の機能及び調節とその抗痙攣特性の間の連関を示唆する。
【0179】
別々の実験において、異種発現実験が実行され、SV2A単独がLEVの脳結合の唯一の原因であることを確証した。ヒトSV2Aは、ウェスタン分析によって確認されるように(データ示さず)、COS−7細胞系において一過性に発現され、過剰のLEVによって置換される[3H]ucb 30889への結合が観察された(図17A)。同一の条件下で、トランスフェクトされていないCOS−7細胞、又はβ−ガラクトシダーゼをコードするベクターを用いてトランスフェクトされたCOS−7細胞のいずれかに対しては結合が見られなかった。COS−7細胞中で発現されたhSV2Aに対し[3H]ucb 30889を置き換える、未標識化合物の能力を試験する実験において、ucb 30889、LEV、及びLEVのエナンチオマー、ucb L060のアフィニティーは、ラット脳を用いる研究において以前に報告されたものに対して(Noyerら、Eur.J.Pharmacol.286,137−146(1995);Gillardら、2003)、同じ順位、及び類似の値を示す(図17B)。決定的に、ucb L060は、LEVよりも有意に低いアフィニティーでhSV2Aに結合し、これは脳における結合部位の鍵となる特徴である(Noyerら、Eur.J.Pharmacol.286,137−146(1995);Gillardら、2003)。さらに、一過性COS−7系において発現されるhSV2B及びhSV2Cの両方に対する[3H]ucb 30889の結合が試験された。結果は、バックグラウンドよりも上の結合を示さず(データ示さず)、これは、ノックアウトマウス結合研究からの結果と一致する。
【0180】
COS−7において発現されるhSV2AへのLEV及びいくつかの類似体の結合を試験することにより、pIC50が、マウス脳抽出物(図18A)及びラット脳抽出物(データ示さず)において得られた値と高度に相関することが明らかとされた(r2=0.98)。また、COS−7におけるhSV2Aについてのこれらの化合物のアフィニティーと、てんかんのマウス聴原性モデルにおけるそれらの抗痙攣保護の効力との間の明確な相関も認められた(r2=0.84)(図18B)。このデータは、ラット脳におけるLEV類似体の結合と、同じモデルにおける効力との間の相関の以前の報告と一致する(Noyerら、Eur.J.Pharmacol.286,137−146(1995))。他のAED(バルプロエート、カルバマゼピン、フェニトイン、エトスクシミド、フェルバメート、ギャバペンチン、チアガビン、ビガバトリン、及びゾニサミドを含む)の結合もまた調べられた。いずれのAEDも、100μMまでの濃度では、SV2Aへの結合について、[3H]ucb 30889と競合しなかった(データ示さず)。これは、ラット脳におけるLEV結合部位に対するAEDの以前の結合研究を確認する(Noyerら、Eur.J.Pharmacol.286,137〜146(1995);Gillardら、Eur.J.Pharmacol.2003)。
【実施例4】
【0181】
神経学的障害、内分泌障害、及びホルモン疾患を調節する化合物のアッセイ
シナプス機能及び内分泌学的障害と関連する神経学的障害を調節する化合物又は薬剤を同定するために、SV2タンパク質のLBSに対する結合についてLEV及びucb 30889と競合するさらなる化合物を同定するための研究が行われた。
【0182】
実施例3において開示されるようなSV2AトランスフェクトされたCOS−7細胞を潜在的な結合パートナー又は薬剤に曝露させる。対照細胞は、ビヒクルのみに曝露させるか、又は未標識のucb 30889又はLEVに曝露させる。この曝露後、次いで細胞を、実施例3と同様に[3H]ucb 30889とともにインキュベートし、細胞を4℃で2時間インキュベートし、次いで氷冷PBSで迅速に洗浄する。細胞を溶解し、シンチレーション液を有するシンチレーションバイアルに移し、そして3H崩壊発光を計数する。
【0183】
LBSに対する結合についてucb 30889と競合することが見い出されている化合物を、聴原性感受性マウスにおいて発作を調節する能力についてのさらなる研究に供する。聴原性感受性マウスに、有効な量のLEVと比較し得る量の化合物を投与する。対照として、同一の聴原性感受性マウスに有効な量のLEVを投与するか、又は発作を調節しない化合物(例えば、ピラセタム)を投与する。
【実施例5】
【0184】
化学ライブラリーをスクリーニングするため、及びSV2タンパク質を特徴付けするためのツールとしてのビオチン化リガンド
本発明は、化学ライブラリーをスクリーニングするため、及びSV2タンパク質を特徴付けするためのツールとして新規なビオチン化リガンドを使用する方法を開示する。本発明は、放射活性廃棄物を伴わずにより高い処理能力を有するスクリーニングのための、ビオチンタグを含む放射活性標識されていないSV2A/LBSリガンドを提供する。本発明はまた、生物学的試料中での標識化及びSV2A/LBS検出のための光活性化バージョンを提供する。
【0185】
本実施例において、SV2A/LBSへのucb−101282−1の結合がラット脳膜において特徴付けられた。この分子は、ucb 30889のビオチン化誘導体である(図19)。このリガンドは、ラット脳膜において6.3のpKiを有し(n=2)、これは、L059について報告されたアフィニティーと等価であった(図20)。このリガンドはまた、UV光照射すると、タンパク質と共有結合複合体を形成することができるアジドフェニルモチーフを用いて、ビオチンタグをLBS/SV2Aに架橋するように設計された。
【実施例6】
【0186】
SV2Aの可溶化及びアフィニティー精製のための方法
本発明は、SV2Aの可溶化及びアフィニティー精製の方法を開示する。この方法は、SV2A/LBSタンパク質を可溶化する工程を包含し、これは膜を界面活性剤で処理することを含む。この方法は、結合アッセイ及びタンパク質−タンパク質相互作用研究において評価されるような可溶化後に膜タンパク質の活性を維持している。
【0187】
可溶性SV2Aの調製及び結合アッセイによる定量
ラット脳膜を、15mM n−ドデシル−β−D−マルトシドを含む可溶化緩衝液(20mM Tris−HCl pH7.4、0.25Mスクロース、プロテアーゼインヒビターComplete Roche)中で希釈し、4℃で2時間インキュベートした。次いで、溶液を4℃で、100,000g、1時間、遠心分離した。可溶性SV2Aは、抗SV2A抗体を使用するウェスタンブロットによって検出され、上清に見い出された(図21A)。この上清を、記載されるように、[3H]ucb 30889とともにインキュベートした。結合実験は、特異的結合が可溶型のSV2Aに起因することを示した。SV2A結合の特異性を検出するために、レベチラセタム及びucb 30889が可溶性SV2Aに特異的に結合する能力を試験した。これらの分子のアフィニティーは、天然の膜に対してリガンドによって示されたものと等価であった(図21B)。スキャッチャード分析は、ネイティブな膜中のSV2Aに対する[3H]ucb 30889のKDは30nMであり、可溶性タンパク質に対しては82nMであることを示す(図21C)。従って、可溶性SV2Aの結合特性は膜結合天然型と同様であり、可溶性タンパク質がn−ドデシル−β−D−マルトシド中でその天然の構造的なコンホメーションを維持していることを示す。
【0188】
可溶性SV2Aのアフィニティー精製及び推定のSV2Aパートナーの同定
可溶化された膜からの上清を抗SV2A抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。混合物をプロテインA−セファロースビーズとともに、20mM Tris−HCl pH7.4、0.25Mスクロース、プロテアーゼインヒビターComplete(Roche)中で、4℃で1時間、回転させた。樹脂を数回洗浄し、収集した画分は免疫精製されたSV2Aタンパク質を含んでいた(図22)。上記に説明したように、SV2Aは、n−ドデシル−β−D−マルトシド中に可溶化後その本来の構造的コンホメーションが維持されている。従って、シナプトタグミンが周知のSV2Aのパートナーであるので、免疫精製された画分を、シナプトタグミンが精製手順後になおSV2Aに結合するか否かを決定するために試験した。免疫精製画分のウェスタン分析は、可溶性SV2Aに結合したシナプトタグミンの存在を確認したが、アイソフォームSV2Bは検出されなかった。従って、可溶化及び精製手順はSV2A−タンパク質相互作用研究を実行するために使用され得る。
【0189】
本発明は上記の実施例を参照して詳細に記載されてきたが、種々の改変が本発明の精神から逸脱することなくなされ得ることが理解される。従って、本発明は、上記の特許請求の範囲のみによって制限される。本願において言及されるすべての引用される特許、特許出願、及び刊行物は、その全体が参照として本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】ラット大脳皮質中のLBSに対するLEV類似体ucb 30889の可逆的結合を示す図である。
【図2】ucb 30889の飽和結合曲線を示す図である。
【図3】特異的結合が末梢組織では検出できないことを示す図である。
【図4】LEVに比べてucb 30889が約10倍高い親和性でLBSに対して結合することを表している競合結合曲線を示す図である。
【図5】ucb 30889対レベチラセタムに関するpIC50値を示す図である。
【図6】ラット脳のオートラジオグラフィーにおける[3H]ucb 30889結合の未標識レベチラセタムによる濃度依存性阻害を示す図である。
【図7】ラット脳の冠状断面に結合している[3H]ucb 30889のオートラジオグラフィーを示す図である。
【図8】ラット脳内で結合している[3H]ucb 30889の細胞内分布を示す図である。
【図9】ショ糖勾配の遠心分離によるシナプトソーム画分のサブ分別を示す図である。
【図10】[3H]ucb 30889によるLBSの光標識化と複合体の不可逆性を示す図である。
【図11】[3H]ucb 30889により標識化した膜タンパク質のゲル電気泳動法を示す図である。
【図12】A及びBは、SV2AでトランスフェクトしたCOS−7細胞の免疫染色溶解物、粗製ラット脳膜、及び異なる濃度のLBSを含む数種類の異なるPC12溶解物を示す図である。
【図13】SV2A−12.2でトランスフェクトしたCOS−7への[3H]ucb 30889の特異的結合、対照β−gal発現ベクターでトランスフェクトしたCOS−7への[3H]ucb 30889の特異的結合、又はトランスフェクトしていない細胞への[3H]ucb 30889の特異的結合を示す図である。
【図14】3H−30889の存在下でSV2Aに結合している3種類の異なるリガンドを比較するIC50プロットを示す図である。
【図15】(A)レベチラセタム及び(B)ucb 30889の構造を示す図である。
【図16】A及びBは、脳膜への[3H]ucb 30889の結合を示す図である。A.SV2A、SV2B及びSV2A/SV2Bノックアウトマウス由来の脳膜への[3H]ucb 30889の結合。[3H]ucb 30889単独は□であり、[3H]ucb 30889+1mMのLEVは■である。誤差棒は、5種類の野生型脳と4種類KO脳で実施した実験のSDである。各実験は三連で行なった。B.抗SV2モノクローナル抗体(すべてのアイソフォーム、SV2A、SV2B及びSV2Cに交差反応し得る)で探索した野生型及びホモ接合型ノックアウトマウス由来の脳膜のウェスタンブロット。レーン1:wt;レーン2:SV2Aノックアウト;レーン3:SV2Bノックアウト;レーン4:SV2A/Bダブルノックアウト。
【図17】A及びBは、hSV2A発現COS−7細胞への[3H]ucb 30889の結合を示す図である。A.COS−7細胞で一時的に発現されるhSV2Aへの[3H]ucb 30889の結合。[3H]ucb 30889は、非トランスフェクトCOS−7細胞、又は一時的に□−gal若しくはhSV2Aのいずれかを発現するCOS−7細胞への結合について試験する。[3H]ucb 30889単独(□)、[3H]ucb 30889+1mMのLEV(■)。B.[3H]ucb 30889の存在下、hSV2A一時的発現COS−7に対する、LEV、ucb L060、ucb 30889のIC50曲線。LEV(Δ)、ucb 30889(■)、ucb L060(●)。誤差棒はSEM、n=3である。
【図18】A及びBは、競合薬剤の存在下における[3H]ucb 30889の結合を示す図である。A.マウス脳に対する一連のLEV化合物の結合とhSV2Aに対する一連のLEV化合物の結合の相関関係。pIC50は[3H]ucb 30889に対して測定した。pIC50値は2つの独立した実験の平均値であり、この場合、各検出は平均値の0.2対数ユニット内に位置する。B.一時的なトランスフェクトCOS−7細胞でアッセイしたhSV2Aに対する一連のLEVファミリー化合物の結合(pIC50は[3H]ucb 30889に対して測定した)と、マウス聴原性モデルにおける抗発作効力の相関関係。
【図19】ucb−101282−1の構造を示す図である。このリガンドはucb 30889のビオチン化誘導体である。
【図20】ラット脳膜におけるucb−101282−1のpKiが6.3(n=2)である(LEVについて報告されている親和性に等しい)ことを示す図である。
【図21】A、B及びCは、可溶性SV2Aの調製と結合アッセイによる定量を示す図である。A.可溶化ラット脳膜の上清における可溶性SV2Aの抗SV2A抗体を用いたウェスタンブロットによる検出。B.可溶性SV2Aへの特異的結合に関するレベチラセタム及びucb 30889の能力の分析。C.スキャチャード解析は、本来のラット脳膜におけるSV2Aに対する[3H]ucb 30889の結合のKDは30nMであるが、可溶性タンパク質に対するKDは82nMであることを示す。
【図22a】SV2Aパートナーの同定を示す図である。ウェスタンブロット解析は、可溶化ラット脳膜由来上清の免疫精製画分中の可溶性SV2Aに関連するシナプトタグミンを示す。アイソフォームのSV2Bは未検出であった。
【図22b】SV2Aパートナーの同定を示す図である。ウェスタンブロット解析は、可溶化ラット脳膜由来上清の免疫精製画分中の可溶性SV2Aに関連するシナプトタグミンを示す。アイソフォームのSV2Bは未検出であった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シナプス小胞機能に関連する神経障害、内分泌障害又はホルモン疾患を治療する方法であって、SV2タンパク質の機能又は活性を調節する化合物又は薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記神経障害が、発作、てんかん、パーキンソン病、パーキンソン病ジスキネジー、片頭痛、アルツハイマー病、神経障害性疼痛、本態性震顫、認知障害、及び運動障害からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物又は薬剤が、SV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
細胞のSV2タンパク質の少なくとも1つの機能又は活性を調節する方法であって、前記SV2タンパク質の前記レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に前記細胞を曝露することを含む、方法。
【請求項5】
前記化合物又は薬剤が、前記レベチラセタム結合部位へのレベチラセタムの前記結合を調節する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
SV2タンパク質と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤との間の相互作用を発見又はモデル化する方法であって、
a)前記SV2タンパク質と前記化合物又は薬剤とを接触させるステップと、
b)前記SV2タンパク質と前記化合物又は薬剤の相互作用を測定及び分析するステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記分析が、前記SV2タンパク質にタンパク分解処理を行い、タンパク分解時にリガンドの結合の示差的作用を観察することによるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分析が、3次元モデル化又は他の純粋なコンピュータ技術によるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記3次元モデル化が、核磁気共鳴法又はX線結晶学によるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分析が結合試験によるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記SV2タンパク質が天然起源由来の精製されたものである、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記SV2タンパク質が、発現ベクター、真核生物宿主又は原核生物宿主に挿入されたクローン化ヌクレオチド由来の異種発現タンパク質から精製したものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
SV2タンパク質内のレベチラセタム結合部位を同定する方法であって、
a)前記SV2タンパク質又はその断片と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤とを接触させるステップと、
b)前記化合物又は薬剤の前記SV2タンパク質又はその断片との結合を測定するステップとを含む、方法。
【請求項14】
前記SV2タンパク質又はその断片が少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失又は付加を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アミノ酸残基の付加、欠失又は置換が、少なくとも1つのグリコシル化部位を除去する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記グリコシル化部位の除去が部位特異的変異形成による、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記SV2タンパク質が、少なくとも1つのSV2タンパク質又はその断片と融合パートナーとを含む融合タンパク質である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記融合パートナーが融合タグである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記融合タグがポリHisタグ又はグルタチオンS転移酵素である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
SV2タンパク質と第2のタンパク質との間の相互作用をアッセイする方法であって、
a)細胞内でSV2タンパク質及び目的のタンパク質を発現させるステップと、
b)レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露させるステップと、
c)前記SV2タンパク質と前記目的のタンパク質の間の相互作用を測定するステップとを含む、方法。
【請求項21】
前記第2のタンパク質が、細胞膜タンパク質、小胞膜タンパク質、細胞質タンパク質、細胞骨格タンパク質、及び細胞内マトリックスタンパク質からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記目的のタンパク質がシナプトタグミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記目的のタンパク質がSNARE複合体のメンバーである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記SNARE複合体のメンバーが、シナプス小胞関連のVAMP/シナプトブレビン、シンタキシン又はSNAP−25である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記SV2タンパク質が少なくとも1つのグリコシル化部位を欠損している、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
シナプス機能に関連する神経障害、内分泌障害又はホルモン疾患を調節する化合物又は薬剤を同定する方法であって、
a)SV2タンパク質を化合物又は薬剤に曝露するステップと、
b)前記化合物又は薬剤が前記SV2タンパク質の活性を調節するか否かを測定するステップとを含む、方法。
【請求項27】
前記化合物又は薬剤が、レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体、或いは抗SV2抗体又はその断片である、請求項3、4、5、6、20又は26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物又は薬剤が、前記レベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する、請求項13又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物又は薬剤が、抗SV2抗体又はその断片である、請求項13又は27に記載の方法。
【請求項30】
前記抗SV2抗体又はその断片が、SV2タンパク質の前記レベチラセタム結合部位に結合する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗SV2抗体又はその断片が、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体断片が、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びscFv断片からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記モノクローナル抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤に対する細胞応答を同定する方法であって、
a)SV2タンパク質を発現する細胞を前記化合物又は薬剤に曝露するステップと、
b)前記曝露細胞における核酸又はタンパク質の発現の変化を分析するステップとを含む、方法。
【請求項35】
前記レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露する前記ステップを、約1μM未満、約1μM〜約1000μMの間、及び少なくとも約1000μMからなる群から選択される2価陽イオン濃度を伴う条件下で実施する、請求項20又は34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
配列番号5の核酸配列又はその相補体を含む、単離された核酸分子。
【請求項37】
請求項123に記載の前記単離された核酸分子によってコードされているアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項38】
配列番号6の核酸配列を含む、請求項124に記載の単離された核酸分子。
【請求項39】
前記化合物又は薬剤が前記SV2タンパク質の活性を調節するか否かを測定する前記ステップが、
a)膜を横断する少なくとも1つの1価陽イオン又は2価陽イオンの輸送を測定するステップ、
b)SNARE複合体形成を測定するステップ、
c)Ca2+チャンネル形成又は活性を測定するステップ、
d)少なくとも1つの他のタンパク質とのSV2相互作用を測定するステップ、
e)膜を横断する少なくとも1つの基質の輸送を測定するステップ、及び
f)シナプス小胞融合、細胞外放出、又はシナプス小胞再循環を測定するステップからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項40】
前記1価陽イオンがH+、Cl−、Na+及びK+からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記2価陽イオンがCa2+、Zn2+、Pb2+、Mg2+、Mn2+、Fe2+、及びCu2+からなる群から選択される、請求項35又は39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの2価陽イオンがCa2+である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの他のタンパク質がシナプトタグミンである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つの他のタンパク質がラミニン−1である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つの基質が、アミン、アセチルコリン、刺激性神経伝達物質、GABA、セロトニン、グリシン又は他のアミノ酸、糖及び有機イオンからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
SV2タンパク質の結合パートナーを同定する方法であって、
a)SV2タンパク質又は断片を潜在な結合パートナーに曝露させるステップと、
b)前記タンパク質又は断片及び潜在な結合パートナーを、(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドと一緒にインキュベートするステップと、
c)(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドの前記タンパク質への結合が、潜在な結合パートナーにより阻害されるか否かを測定し、それによって、前記タンパク質の結合パートナーを同定するステップとを含む、方法。
【請求項47】
神経障害又は内分泌障害の治療に有用な化合物又は薬剤を同定する方法であって、
a)SV2タンパク質又は断片を、前記薬剤及びレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体に曝露するステップと、
b)レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体の前記タンパク質への結合が、前記薬剤によって調節されるか否かを測定し、それによって、神経障害の治療に有用な薬剤を同定するステップとを含む、方法。
【請求項48】
前記レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体が直接的又は間接的に標識化されている、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記SV2タンパク質又は断片を、前記薬剤の添加前、前記薬剤の添加後、又は前記薬剤と同時に、レベチラセタム又は類似体若しくは誘導体と一緒にインキュベートする、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記SV2タンパク質又は断片をレベチラセタムと一緒にインキュベートする、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記神経障害が、てんかん;てんかん発作;発作疾患;震動;離脱性痙攣;神経障害;双極性障害;躁病;うつ病;不安;片頭痛;神経痛;三叉神経痛;慢性的疼痛症状;神経障害性疼痛;麻酔関連性過興奮;脳虚血;頭部外傷;筋緊張症;薬剤又はアルコール中毒によって刺激された恍惚状態(exitatory state)、依存症状又は禁断症状;卒中;ミオクローヌス;本態性震顫;チック(tics);トゥーレット症状群;ジスキネジー;痙性;運動障害;新生児脳出血;筋萎縮性側索硬化症;パーキンソン病;アルツハイマー病;神経変性障害;及び痴呆からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
請求項26又は47に記載の方法で同定される化合物又は薬剤を含む医薬組成物であって、前記化合物が図15に記載されている化合物とは異なる、医薬組成物。
【請求項53】
神経障害又は内分泌障害治療を必要とする個体に、請求項26又は47に記載の方法で同定される化合物又は薬剤を投与することを含む、神経障害又は内分泌障害を治療する方法であって、前記化合物が図15に記載されている化合物とは異なる、方法。
【請求項54】
前記神経障害が、てんかん;てんかん発作;発作疾患;震動;離脱性痙攣;神経障害;双極性障害;躁病;うつ病;不安;片頭痛;神経痛;三叉神経痛;慢性的疼痛症状;神経障害性疼痛;麻酔関連過興奮性;脳虚血;頭部外傷;筋緊張症;薬剤又はアルコール中毒によって刺激された恍惚状態(exitatory state)、依存症状又は禁断症状;卒中;ミオクローヌス;本態性震顫;チック;トゥーレット症状群;ジスキネジー;痙性;運動障害;新生児脳出血;筋萎縮性側索硬化症;パーキンソン病;アルツハイマー病;神経変性障害;及び痴呆からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記内分泌障害が、少なくとも1つのホルモンの分泌過多又は分泌不全が関与する内分泌障害;巨人症;小人症;副腎髄質関連疾患;低血糖症;及び循環ショックからなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記SV2タンパク質がSV2Aである、請求項1、20、26、34又は47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記SV2Aタンパク質が配列番号2を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記レベチラセタムの類似体又は誘導体が(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドである、請求項13、27又は47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記レベチラセタムの類似体又は誘導体が、N−アルキル化2−オキソ−ピロリジン誘導体、N−アルキル化2−オキソ−ピペリジニル誘導体、及びN−アルキル化2−オキソ−アゼパニル誘導体からなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
神経障害又は内分泌障害の治療に有用な薬剤を同定する方法であって、
a)SV2タンパク質又は断片を前記薬剤に曝露するステップと、
b)前記タンパク質又は断片及び薬剤を(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドと一緒にインキュベートするステップと、
c)前記タンパク質への(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドの結合が前記薬剤によって阻害されるか否かを測定し、それによって、前記タンパク質に関する結合パートナーを同定するステップとを含む、方法。
【請求項61】
SV2タンパク質又はその断片若しくは誘導体と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体又は誘導体、レベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤との相互作用を発見又はモデル化する方法であって、
a)生化学的技術、生物物理学的技術、純粋なコンピュータ技術、又はこれらのいくつかの組合せによって、前記SV2タンパク質又はその断片の3次元モデルを作製するステップと、
b)前記SV2タンパク質に結合する可能性のある有望なリガンドの1つ又は集合の3次元モデルを作製するステップとを含む、方法。
【請求項62】
純粋なコンピュータ技術を用いて、SV2タンパク質の前記3次元モデルを有望なリガンドの前記3次元モデルとドッキングさせることをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
SV2タンパク質と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤との相互作用を発見又はモデル化する方法であって、
a)遺伝学的に野生型の動物、又は該動物由来の分子、細胞若しくは組織において潜在的なCNS活性分子の生化学的作用、薬理学的作用、生物学的作用、細胞学的作用、又は分子学的作用を測定するステップと、
b)SV2タンパク質をノックアウト又はノックダウウンした系での同等の試験において測定したその化合物の作用を比較するステップを含む、方法。
【請求項64】
機能的に活性な膜に付随するSV2タンパク質複合体を単離する方法であって、
a)前記SV2タンパク質を含む組織を界面活性剤で可溶化するステップと、
b)前記SV2タンパク質複合体を単離させるステップとを含む、方法。
【請求項65】
免疫親和性によって前記SV2タンパク質複合体を精製するステップをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記SV2タンパク質複合体をさらに精製して前記SV2タンパク質を得る、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記界面活性剤がn−ドデシル−β−D−マルトシド又はその誘導体若しくは類似体である、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記組織が脳膜である、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記SV2タンパク質に複合化されている1つ又は複数の分子を同定するステップをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記SV2タンパク質が、SV2Aタンパク質、SV2Bタンパク質又はSV2Cタンパク質である、請求項64から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
請求項64に記載の方法によって得られる精製SV2タンパク質複合体。
【請求項72】
前記SV2タンパク質が、SV2Aタンパク質、SV2Bタンパク質又はSV2Cタンパク質である、請求項71に記載の精製SV2タンパク質複合体。
【請求項1】
シナプス小胞機能に関連する神経障害、内分泌障害又はホルモン疾患を治療する方法であって、SV2タンパク質の機能又は活性を調節する化合物又は薬剤を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記神経障害が、発作、てんかん、パーキンソン病、パーキンソン病ジスキネジー、片頭痛、アルツハイマー病、神経障害性疼痛、本態性震顫、認知障害、及び運動障害からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物又は薬剤が、SV2タンパク質のレベチラセタム結合部位に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
細胞のSV2タンパク質の少なくとも1つの機能又は活性を調節する方法であって、前記SV2タンパク質の前記レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に前記細胞を曝露することを含む、方法。
【請求項5】
前記化合物又は薬剤が、前記レベチラセタム結合部位へのレベチラセタムの前記結合を調節する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
SV2タンパク質と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤との間の相互作用を発見又はモデル化する方法であって、
a)前記SV2タンパク質と前記化合物又は薬剤とを接触させるステップと、
b)前記SV2タンパク質と前記化合物又は薬剤の相互作用を測定及び分析するステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記分析が、前記SV2タンパク質にタンパク分解処理を行い、タンパク分解時にリガンドの結合の示差的作用を観察することによるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分析が、3次元モデル化又は他の純粋なコンピュータ技術によるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記3次元モデル化が、核磁気共鳴法又はX線結晶学によるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分析が結合試験によるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記SV2タンパク質が天然起源由来の精製されたものである、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記SV2タンパク質が、発現ベクター、真核生物宿主又は原核生物宿主に挿入されたクローン化ヌクレオチド由来の異種発現タンパク質から精製したものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
SV2タンパク質内のレベチラセタム結合部位を同定する方法であって、
a)前記SV2タンパク質又はその断片と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤とを接触させるステップと、
b)前記化合物又は薬剤の前記SV2タンパク質又はその断片との結合を測定するステップとを含む、方法。
【請求項14】
前記SV2タンパク質又はその断片が少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失又は付加を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アミノ酸残基の付加、欠失又は置換が、少なくとも1つのグリコシル化部位を除去する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記グリコシル化部位の除去が部位特異的変異形成による、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記SV2タンパク質が、少なくとも1つのSV2タンパク質又はその断片と融合パートナーとを含む融合タンパク質である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記融合パートナーが融合タグである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記融合タグがポリHisタグ又はグルタチオンS転移酵素である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
SV2タンパク質と第2のタンパク質との間の相互作用をアッセイする方法であって、
a)細胞内でSV2タンパク質及び目的のタンパク質を発現させるステップと、
b)レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露させるステップと、
c)前記SV2タンパク質と前記目的のタンパク質の間の相互作用を測定するステップとを含む、方法。
【請求項21】
前記第2のタンパク質が、細胞膜タンパク質、小胞膜タンパク質、細胞質タンパク質、細胞骨格タンパク質、及び細胞内マトリックスタンパク質からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記目的のタンパク質がシナプトタグミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記目的のタンパク質がSNARE複合体のメンバーである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記SNARE複合体のメンバーが、シナプス小胞関連のVAMP/シナプトブレビン、シンタキシン又はSNAP−25である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記SV2タンパク質が少なくとも1つのグリコシル化部位を欠損している、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
シナプス機能に関連する神経障害、内分泌障害又はホルモン疾患を調節する化合物又は薬剤を同定する方法であって、
a)SV2タンパク質を化合物又は薬剤に曝露するステップと、
b)前記化合物又は薬剤が前記SV2タンパク質の活性を調節するか否かを測定するステップとを含む、方法。
【請求項27】
前記化合物又は薬剤が、レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体、或いは抗SV2抗体又はその断片である、請求項3、4、5、6、20又は26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物又は薬剤が、前記レベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する、請求項13又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物又は薬剤が、抗SV2抗体又はその断片である、請求項13又は27に記載の方法。
【請求項30】
前記抗SV2抗体又はその断片が、SV2タンパク質の前記レベチラセタム結合部位に結合する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗SV2抗体又はその断片が、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体断片が、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、及びscFv断片からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記モノクローナル抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤に対する細胞応答を同定する方法であって、
a)SV2タンパク質を発現する細胞を前記化合物又は薬剤に曝露するステップと、
b)前記曝露細胞における核酸又はタンパク質の発現の変化を分析するステップとを含む、方法。
【請求項35】
前記レベチラセタム結合部位に結合する化合物又は薬剤に細胞を曝露する前記ステップを、約1μM未満、約1μM〜約1000μMの間、及び少なくとも約1000μMからなる群から選択される2価陽イオン濃度を伴う条件下で実施する、請求項20又は34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
配列番号5の核酸配列又はその相補体を含む、単離された核酸分子。
【請求項37】
請求項123に記載の前記単離された核酸分子によってコードされているアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項38】
配列番号6の核酸配列を含む、請求項124に記載の単離された核酸分子。
【請求項39】
前記化合物又は薬剤が前記SV2タンパク質の活性を調節するか否かを測定する前記ステップが、
a)膜を横断する少なくとも1つの1価陽イオン又は2価陽イオンの輸送を測定するステップ、
b)SNARE複合体形成を測定するステップ、
c)Ca2+チャンネル形成又は活性を測定するステップ、
d)少なくとも1つの他のタンパク質とのSV2相互作用を測定するステップ、
e)膜を横断する少なくとも1つの基質の輸送を測定するステップ、及び
f)シナプス小胞融合、細胞外放出、又はシナプス小胞再循環を測定するステップからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項40】
前記1価陽イオンがH+、Cl−、Na+及びK+からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記2価陽イオンがCa2+、Zn2+、Pb2+、Mg2+、Mn2+、Fe2+、及びCu2+からなる群から選択される、請求項35又は39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの2価陽イオンがCa2+である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの他のタンパク質がシナプトタグミンである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つの他のタンパク質がラミニン−1である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つの基質が、アミン、アセチルコリン、刺激性神経伝達物質、GABA、セロトニン、グリシン又は他のアミノ酸、糖及び有機イオンからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
SV2タンパク質の結合パートナーを同定する方法であって、
a)SV2タンパク質又は断片を潜在な結合パートナーに曝露させるステップと、
b)前記タンパク質又は断片及び潜在な結合パートナーを、(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドと一緒にインキュベートするステップと、
c)(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドの前記タンパク質への結合が、潜在な結合パートナーにより阻害されるか否かを測定し、それによって、前記タンパク質の結合パートナーを同定するステップとを含む、方法。
【請求項47】
神経障害又は内分泌障害の治療に有用な化合物又は薬剤を同定する方法であって、
a)SV2タンパク質又は断片を、前記薬剤及びレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体に曝露するステップと、
b)レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体の前記タンパク質への結合が、前記薬剤によって調節されるか否かを測定し、それによって、神経障害の治療に有用な薬剤を同定するステップとを含む、方法。
【請求項48】
前記レベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体が直接的又は間接的に標識化されている、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記SV2タンパク質又は断片を、前記薬剤の添加前、前記薬剤の添加後、又は前記薬剤と同時に、レベチラセタム又は類似体若しくは誘導体と一緒にインキュベートする、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記SV2タンパク質又は断片をレベチラセタムと一緒にインキュベートする、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記神経障害が、てんかん;てんかん発作;発作疾患;震動;離脱性痙攣;神経障害;双極性障害;躁病;うつ病;不安;片頭痛;神経痛;三叉神経痛;慢性的疼痛症状;神経障害性疼痛;麻酔関連性過興奮;脳虚血;頭部外傷;筋緊張症;薬剤又はアルコール中毒によって刺激された恍惚状態(exitatory state)、依存症状又は禁断症状;卒中;ミオクローヌス;本態性震顫;チック(tics);トゥーレット症状群;ジスキネジー;痙性;運動障害;新生児脳出血;筋萎縮性側索硬化症;パーキンソン病;アルツハイマー病;神経変性障害;及び痴呆からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
請求項26又は47に記載の方法で同定される化合物又は薬剤を含む医薬組成物であって、前記化合物が図15に記載されている化合物とは異なる、医薬組成物。
【請求項53】
神経障害又は内分泌障害治療を必要とする個体に、請求項26又は47に記載の方法で同定される化合物又は薬剤を投与することを含む、神経障害又は内分泌障害を治療する方法であって、前記化合物が図15に記載されている化合物とは異なる、方法。
【請求項54】
前記神経障害が、てんかん;てんかん発作;発作疾患;震動;離脱性痙攣;神経障害;双極性障害;躁病;うつ病;不安;片頭痛;神経痛;三叉神経痛;慢性的疼痛症状;神経障害性疼痛;麻酔関連過興奮性;脳虚血;頭部外傷;筋緊張症;薬剤又はアルコール中毒によって刺激された恍惚状態(exitatory state)、依存症状又は禁断症状;卒中;ミオクローヌス;本態性震顫;チック;トゥーレット症状群;ジスキネジー;痙性;運動障害;新生児脳出血;筋萎縮性側索硬化症;パーキンソン病;アルツハイマー病;神経変性障害;及び痴呆からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記内分泌障害が、少なくとも1つのホルモンの分泌過多又は分泌不全が関与する内分泌障害;巨人症;小人症;副腎髄質関連疾患;低血糖症;及び循環ショックからなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記SV2タンパク質がSV2Aである、請求項1、20、26、34又は47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記SV2Aタンパク質が配列番号2を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記レベチラセタムの類似体又は誘導体が(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドである、請求項13、27又は47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記レベチラセタムの類似体又は誘導体が、N−アルキル化2−オキソ−ピロリジン誘導体、N−アルキル化2−オキソ−ピペリジニル誘導体、及びN−アルキル化2−オキソ−アゼパニル誘導体からなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
神経障害又は内分泌障害の治療に有用な薬剤を同定する方法であって、
a)SV2タンパク質又は断片を前記薬剤に曝露するステップと、
b)前記タンパク質又は断片及び薬剤を(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドと一緒にインキュベートするステップと、
c)前記タンパク質への(2S)−2−[4−(3−アジドフェニル)−2−オキソピロリジン−1−イル]ブタンアミドの結合が前記薬剤によって阻害されるか否かを測定し、それによって、前記タンパク質に関する結合パートナーを同定するステップとを含む、方法。
【請求項61】
SV2タンパク質又はその断片若しくは誘導体と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体又は誘導体、レベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤との相互作用を発見又はモデル化する方法であって、
a)生化学的技術、生物物理学的技術、純粋なコンピュータ技術、又はこれらのいくつかの組合せによって、前記SV2タンパク質又はその断片の3次元モデルを作製するステップと、
b)前記SV2タンパク質に結合する可能性のある有望なリガンドの1つ又は集合の3次元モデルを作製するステップとを含む、方法。
【請求項62】
純粋なコンピュータ技術を用いて、SV2タンパク質の前記3次元モデルを有望なリガンドの前記3次元モデルとドッキングさせることをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
SV2タンパク質と、レベチラセタム、レベチラセタムの類似体若しくは誘導体、或いはレベチラセタム結合部位への結合においてレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体と競合する化合物又は薬剤からなる群から選択される化合物又は薬剤との相互作用を発見又はモデル化する方法であって、
a)遺伝学的に野生型の動物、又は該動物由来の分子、細胞若しくは組織において潜在的なCNS活性分子の生化学的作用、薬理学的作用、生物学的作用、細胞学的作用、又は分子学的作用を測定するステップと、
b)SV2タンパク質をノックアウト又はノックダウウンした系での同等の試験において測定したその化合物の作用を比較するステップを含む、方法。
【請求項64】
機能的に活性な膜に付随するSV2タンパク質複合体を単離する方法であって、
a)前記SV2タンパク質を含む組織を界面活性剤で可溶化するステップと、
b)前記SV2タンパク質複合体を単離させるステップとを含む、方法。
【請求項65】
免疫親和性によって前記SV2タンパク質複合体を精製するステップをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記SV2タンパク質複合体をさらに精製して前記SV2タンパク質を得る、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記界面活性剤がn−ドデシル−β−D−マルトシド又はその誘導体若しくは類似体である、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記組織が脳膜である、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記SV2タンパク質に複合化されている1つ又は複数の分子を同定するステップをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記SV2タンパク質が、SV2Aタンパク質、SV2Bタンパク質又はSV2Cタンパク質である、請求項64から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
請求項64に記載の方法によって得られる精製SV2タンパク質複合体。
【請求項72】
前記SV2タンパク質が、SV2Aタンパク質、SV2Bタンパク質又はSV2Cタンパク質である、請求項71に記載の精製SV2タンパク質複合体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21a】
【図21b】
【図21c】
【図22a】
【図22b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21a】
【図21b】
【図21c】
【図22a】
【図22b】
【公表番号】特表2006−516390(P2006−516390A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570980(P2004−570980)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/038122
【国際公開番号】WO2004/051222
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(502358717)ユ セ ベ ソシエテ アノニム (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/038122
【国際公開番号】WO2004/051222
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(502358717)ユ セ ベ ソシエテ アノニム (13)
【Fターム(参考)】
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