説明

発光制御装置

【課題】位置検出器や受光素子を用いずに対象物の運動周期に閃光発光周期を合わせ込む。
【解決手段】閃光の周期最小値と、周期最大値と、周期更新時間とを記憶する手段と、加算を行うか減算を行うかを示す周期演算モードを有し、周期更新時間に達した周期の終わりにおいて、周期演算モードが加算の場合は周期加減算量を現在の周期時間に加算し、周期演算モードが減算の場合は周期加減算量を現在の周期時間から減算する演算手段と、加算結果を周期最大値と比較し、加算結果が周期最大値以下の場合には加算結果を新たな周期に更新し、減算結果が周期最小値を以上の場合には減算結果を新たな周期に更新する更新手段と、加算結果が周期最大値を超えた場合には周期の更新を行わずに周期演算モードを減算に変更し、減算結果を周期最小値と比較し、減算結果が周期最小値を下回った場合には周期の更新を行わずに周期演算モードを加算に変更する前記周期演算モードの変更手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストロボ効果を用いた発光制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一瞬だけ点灯する光源を一定間隔で繰り返し発光させ、発光周期と同一速度で動作する移動体や回転体を静止状態で観察・撮像することができるストロボ効果は、様々な分野で使われている。観察・撮像の対象物として、一定周期で高速回転する内燃機関・モータや、プリンタ・燃料噴出装置等、一定時間間隔で射出され一定速度で飛翔運動を行う液滴がこれに該当する。更には、チップ部品・半導体・飲料缶・印刷輪転機・錠剤・注射剤等が一定速度にて移動または回転するワーク上にて形状欠陥・周期運動ぶれ・異物混入等の検査を行う場合にも静止状態での観察・撮像が必要となる。
【0003】
高速で移動する対象物の撮像する方法として、ハイスピードカメラを用いる手法が知られている。ハイスピードカメラでは、通常のカメラより多くの画像フレームを撮像する。そのためには、多くの回数のシャッターを切る必要が生じる。シャッター機構と発光タイミングの制御が複雑となるばかりではなく、高輝度の照明が必要となる。LED照明では照度不足で、キセノンランプ等が使われる。照明が高価になるばかりではなく、LED照明と比較して寿命が短い為、メンテナンス性の低下を招く要因となる。
【0004】
ストロボ効果を応用し、一定周期にて回転運動あるいは飛翔運動を行う対象物を静止状態と同じ状態で観察・撮像するためには、閃光発光の周期と観察対象物の回転・動作周期を合致させることが課題となっている。
【0005】
特許文献1では、ストロボ発光タイミングと対象物の回転数を設定する設定器の存在を示している。静止画像位置をずらすために、発光速度に増減を行うことを示している。
特許文献2において、被搬送物駆動体に撮像マークを置き、撮像マークの位置検出装置に基づいてストロボ発光制御する手法が開示されている。
【0006】
内燃機関の燃料噴射測定装置に関して、エンジンとストロボ発光タイミング合致方法については、特許文献3に開示されている。エンジンの振動を測定する光学式振動測定器の出力をストロボ発光装置に伝達する手法が示されている。
【0007】
特許文献4で開示されるストロボ装置では、高速で動く物体に対し同期検出信号を得るための同期検出器を備えて、カメラシャッターとストロボ発光タイミングを制御する方式が示されている。同期検出装置として、特許文献4ではプロペラシャフトに検出片を取り付ける手法が示されている。
【0008】
特許文献5において、内部でストロボ発光タイミング生成を行う手法を開示されている。設定された発光条件に基づいて発光周期を演算する発光周期演算手段と、演算結果に基づいて発光タイミングパルスを生成する手段を具備したものである。
【0009】
特許文献6は、ストロボ効果を用いた検査装置におけるシャッター開閉とストロボ発光の制御手法を開示している。ストロボ発光を検出する受光素子を備えてストロボ発光を捕らえ、発光タイミングを起点としてシャッターを閉とする制御を行うことによって、露光時間の短縮を行っている。
【0010】
特許文献7は、動的形状測定に関して、干渉縞のピーク検出波検出と被測定物動作−光源発光のタイミング調整と、干渉縞撮像とを連動させる手法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−196628号
【特許文献2】特許4292979号
【特許文献3】特開平11−62788号
【特許文献4】特許3889479号
【特許文献5】特開2001−96725号
【特許文献6】特開2008−217303号
【特許文献7】特開2005−331349号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1では、増減量が一定であり、増減が1周期を越えて連続的に行われた場合の処理や、増減状態から通常状態の復帰状態を示してはいない。
【0013】
特許文献2から特許文献4までは、いずれも対象物の移動・回転とストロボ発光のタイミングを合致させるために、外部から同期信号を供給する手法を採用している。撮像対象物の搬送体・駆動体や位置検出のマークを付加あるいは対象物の移動・回転と相関のある振動情報等を利用して、タイミング合致を計っている。外部にフォトセンサー等の位置検出器が必要となるばかりではなく、位置検出タイミングと発光タイミングの遅延調整処理が必要となる。
【0014】
引用文献5は、予め与える発光条件に基づいて発光周期の演算を行う方式であって、対象物の移動速度・回転数が未知である場合、温度等周囲条件や機種変更に伴う移動速度・回転ブレを検出したい場合に、その方法を示したものではない。
【0015】
引用文献6は、露光時間が短時間に制限し、ブレの少ない画像を得ることができるものの、高輝度照明が必要となる。
【0016】
引用文献7は、ピーク波数が所定の範囲内あるか否かの判定方法も開示しているが、閃光発光周期を規則的な往復変化として、対象物の運動周期に発光周期を合わせ込む方法を示していない。また、特許文献7の方法によれば受光素子を必要とし、受光素子の出力結果に基づいて演算を行うものである為、特許文献2から特許文献4までの手法と同様に、受光素子と発光タイミングで遅延調整処理が必要となる。本発明は、周期運動を行う対象物に対して閃光を一定間隔で発光させ、対象物を静止状態で観察あるいは画像を撮像する装置において、位置検出器や受光素子を用いずに対象物の運動周期に閃光発光周期を合わせ込むことができる発光制御装置を提供することを目的とする。
【0017】
またさらに本発明は、観察・撮像対象を所望位置に移動させるとともに、複数周期に跨る長時間の観察・撮像対象を移動させる発光制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、光源から所定周期ごとに閃光を発光させて、周期運動する対象物を静止状態で観察あるいは画像を撮像するための発光制御装置において、前記閃光の周期最小値と、周期最大値と、周期更新時間と、を記憶する手段と、加算を行うか減算を行うかを示す周期演算モードを有し、前記周期更新時間に達した周期の終わりにおいて、前記周期演算モードが加算の場合は周期加減算量を現在の周期時間に加算し、前記周期演算モードが減算の場合は周期加減算量を現在の周期時間から減算する演算手段と、加算結果を前記周期最大値と比較し、加算結果が前記周期最大値以下の場合には加算結果を新たな周期に更新し、減算結果が周期最小値を以上の場合には減算結果を新たな周期に更新する更新手段と、加算結果が周期最大値を超えた場合には周期の更新を行わずに周期演算モードを減算に変更し、減算結果を周期最小値と比較し、減算結果が周期最小値を下回った場合には周期の更新を行わずに周期演算モードを加算に変更する前記周期演算モードの変更手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0019】
上記においてさらに、周期加減算量の記憶手段を備えることが好ましい。
【0020】
または、あるいはさらに加えて、周期初期値の記憶手段を備えることが好ましい。
【0021】
またさらに、発光開始時間と発光時間を前記周期時間の割合で記憶する手段と、前記周期時間内で前記周期時間との乗算を行い該乗算結果を保持する手段と、次の周期時間の開始時点で前記保持値で発光開始時間、発光時間を更新する手段と、を備えることが好ましい。
【0022】
またさらに、前記発光開始時間と発光時間を微調整するため、前記周期時間の割合で微調整加減算量を記憶する手段と、微調整加減算パラメータn(n≧1)を記憶する手段と、n個の周期を検出した時点で発光開始時間に対して微調整量の加減算を行う手段と、微調整加算時は、加算結果が前記周期時間を超えない場合、加算結果を新たな発光開始時間に更新し、超えた場合、加算結果から周期時間を減じた値を新たな発光開始時間に更新し、微調整減算時は、減算結果が負でない場合、減算結果を新たな発光開始時間に更新し、負の場合は周期時間から減算結果の絶対値を減じた値を新たな発光開始時間に更新する手段と、を備えることが好ましい。
【0023】
さらに加えて、前記加算結果が周期時間を超えた場合、及び減算結果に負が発生した直後は発光を1周期分抑制する手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、対象物の周期が未知であった場合でも、位置検出器や受光素子を用いずに、対象物の運動周期に閃光発光周期を容易に合わせ込むことができる。
【0025】
また、本発明では、周期は周期更新時間毎に規則正しく変化し、さらに周期最小値と周期最大値間の規則的な往復変化となる。発光周期の往復変化中、発光周期と対象物の運動周期が一致、即ち対象物が静止したように観測される機会が必ず存在する。往復変化の為、何度も合致機会が規則的な間隔で発生させることにより、発光周期と対象物の運動周期を一致させることができる。
【0026】
さらに、発光開始時間の微調整を連続して時間の制限なく行うことにより、実際の速度よりもゆっくりとした速度での画像観察・撮像を時間制限なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態における周期時間生成処理を説明するフローチャート図である。
【図3】本発明の一実施形態における発光開始時間・発光時間処理を説明するフローチャート図である。
【図4】対象物の運動周期と発光周期の同期が取れていない状態での撮像画像写真である。
【図5】本発明を用いて、対象物の運動周期と発光周期の同期を取って撮像した画像写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態の機能的なブロック構成を示している。破線で囲んだ1が発光制御回路であり、周知のマイクロコンピュータ(CPU,ROM、RAM等を含む)により構成可能である。
【0029】
2はパラメータ入力部であり、入力ボタンとキャラクタディスプレイから構成される操作盤、パソコン、プログラマブルコントローラなどがパラメータ入力部に相当する。パラメータ入力部2から、発光制御回路1の設定部(記憶部)30に周期初期値3、周期加減算量4、周期更新時間5、周期最小値6、周期最大値7等が設定(記憶)可能である。パラメータの設定順は任意の設定順で構わない。上記パラメータ値は周期時間生成部12に送出される。周期時間生成中にパラメータの一部を書き換えても良い。
【0030】
他に後述するが、パラメータ入力部2から発光制御回路1の設定部30に、さらに発光開始時間割合8、発光時間割合9、および微調整加減算値割合10、微調整加減算パラメータn(n≧1)11が設定可能である。なお、周期時間に占める発光時間等の割合が変動すると、照度が異なり観測・撮像の妨げになる。そこで、ここでは、発光開始時間や発光時間、これを微調整するための微調整加減算値を周期時間の割合(%)で設定するようにしている。
【0031】
周期時間生成部12は、周期更新時間に達した事を検出する手段を持っている。一例として、周期更新検出用カウンタを持ち、カウンタ値と周期更新時間値と比較し、一致した場合、更に周期の終わりを待って加減算処理を行う。また、周期時間生成部12は、加算を行うか減算を行うかを示す周期演算モードフラグを持っている。
【0032】
周期演算モードが加算の場合は、周期加減算量を現在の周期時間に加算する。加算結果を最小値/最大値比較部14にて周期最大値と比較し、加算結果が周期最大値以下の場合には加算結果を新たな周期に更新する。加算結果が周期最大値を超えた場合には周期の更新を行わずに周期演算モードを減算に変更する。周期演算モードが減算の場合は周期加減算量を現在の周期時間から減算する。
【0033】
最小値/最大値比較部14にて周期最小値と比較し、減算結果が周期最小値以上の場合には減算結果を新たな周期に更新する。減算結果が周期最小値を下回った場合には周期の更新を行わずに周期演算モードを加算に変更する。
【0034】
このように周期は周期更新時間毎に規則正しく変化する。また周期は周期最小値と周期最大値間で往復して変化する。
【0035】
次に、パラメータ入力部2から発光制御回路1の設定部30に設定する発光開始時間割合8、発光時間割合9、および微調整加減算値割合10、微調整加減算パラメータn(n≧1)11について説明する。
【0036】
発光開始時間割合8は、発光開始時間乗部15にて周期時間生成部12の出力と乗算処理が行われて発光開始時間が求められる。1周期内で乗算結果を得る必要があるので、好ましくは並列乗算にて乗算処理することが望ましい。同様に、発光時間割合9は、発光時間乗算部13にて周期時間生成部12の出力と乗算処理が行われて発光時間が求められる。
【0037】
微調整加減値割合10は、微調整乗算部16にて周期時間生成部12の出力と乗算処理が行われて微調整値が求められる。微調整加減算パラメータn(n≧1)11は発光開始時間加減算部17に送られて、n個の周期が繰り返された毎に、発光開始時間乗算部15の出力と、微調整乗算部16の出力の加減算が行われる。加減算結果は、発光開始時間微調整補正部18に送られる。
【0038】
発光開始時間微調整補正部18の出力と発光時間乗算部13の出力から、発光制御信号生成部19で発光信号が生成される。発光制御信号生成部19の出力は、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号として、LEDドライバ20に入力する。LEDドライバ20の出力がLED照明21をドライブし、対象物22を照射する。図1では、撮像カメラ23で撮像し、表示装置24に表示する構成であるが、目視にて対象物22を観察する構成でも良い。
【0039】
図2は、図1の周期時間生成部12および最小/最大値比較部14による、周期時間生成処理を説明するフローチャートである。
【0040】
ステップS1において、設定部30に、周期初期値3、周期加減算量4、周期更新時間5、周期最小値6、周期最大値7の各周期パラメータが設定(記憶)される。各パラメータは、S2以降のステップで書き換えても良い。ステップS2で周期更新時間に達したかどうかの判定が行われる。達しない場合はステップS2をループする。周期更新時間に達した場合は、ステップS3に進み、周期の終わりを待つ。ステップS3によって、周期の途中での変化を防いでいる。続くステップS4で、周期演算モードに基づく演算が現在の周期時間に対して行われる。周期演算モードが加算モードの場合は加算、減算モードの場合は減算が行われる。
【0041】
ステップS5では、最小値/最大値比較部14において、加算結果が設定された周期最大値7を超えていないか、減算結果が周期最小値6を下回っていないかを判定する。演算結果が最小値と最大値の範囲内の場合は、ステップS6で周期時間を演算結果に更新する。演算結果が最小値と最大値の範囲外の場合は、ステップS7に進み、周期時間の更新を行わずに演算モードの加減算を反転させる。
【0042】
ステップS7によって、周期変化は折り返して以後往復変化となる。ステップS8は周期確定の判定ステップである。周期確定がなされていない場合はステップS9の周期パラメータが更新されているかどうかを判定するステップに進む。パラメータが更新されている場合はステップS1に移行する。更新されていない場合は、ステップS2に移行して周期時間生成処理が繰り返される。
【0043】
図3は、発光時間乗算部13、発光開始時間乗算部15、微調整値乗算部16、発光開始時間加減算部17等による、発光開始時間・発光時間を求める処理を説明するフローチャートである。
【0044】
ステップS9において、設定部30に、発光開始時間割合8、発光時間割合9、微調整加減算割合10、微調整加減算パラメータn11からなる発光開始時間・発光時間パラメータが設定(更新)される。次のステップS10で、周期時間生成部12により周期時間生成が行われたかどうかの判定が行われる。周期時間時間生成が行われている場合は、ステップS11に進む。この時、周期確定を必要としない。図2の周期時間生成処理フローのステップS8まで進み、確定していない場合でもステップS11に進むことができる。ステップS11において周期時間と発光開始時間割合との乗算処理(図1;発光開始時間乗算部15)、ステップS12において周期時間と発光時間割合との乗算処理(図1;発光時間乗算部13)、ステップS13において周期時間と微調整加減算割合との乗算処理(図1;微調整値乗算回路16)が行われる。 ステップS11からステップS13まで処理順序を入れ換えても良いし、並列に同時処理されても良い。
【0045】
上記の発光開始時間乗算部15、微調整値乗算部16の出力は微調整加減算パラメータnとともに発光開始時間加減算部17に入力される。そして、ステップS14で周期が微調整パラメータn回分繰り返されたかが、判定される。例えばn=10の時、周期が10回繰り返されたかを判定する。微調整パラメータnは、対象物を静止状態から実速度よりもゆっくりとした速度で観察する時の速度調整に用いることができる。n=20と設定すると、n=10の設定の半分の速度で動いているように観察される。ステップS14で周期がn回繰り返されたことが判定されると、ステップS15でステップS11による周期時間と発光開始時間割合との乗算結果と、ステップS13による周期時間と微調整加減算割合との乗算結果の加減算処理が行われる。
【0046】
尚、ステップ12における周期時間と発光時間割合との乗算結果(図1;発光時間乗算部13の出力、参照)は、図1の発光制御信号生成部19に入力されて、発光制御PWM信号生成に使われる。ステップS15の加減算結果(図1;発光開始時間加減算部17の出力、図1の発光開始時間微調整補正部18に入力)は、ステップS16にて、加算結果が周期を超えたオーバーフローや減算結果が負の数となるアンダーフローを発生させていないかが判定される。オーバーフローまたはアンダーフローが発生した場合は、ステップS17にて発光開始時間の微調整補正処理が行われる。オーバーフローが発生した場合は、加算結果から周期時間を減じた値を新たな発光開始時間とする。アンダーフローが発生した場合は、周期時間から減算結果の絶対値を減じた値を新たな発光開始時間とする。この補正によって、時間制限のない加減算を可能としている。
【0047】
ところが、この補正によれば隣接した発光が生じる。オーバーフローを例に取ると、オーバーフローが発生する直前の発光開始時間は、周期時間に接近した大きな値である。これに微調整量を加算して周期時間よりも大きくなる現象がオーバーフローで、加算結果から周期時間を減じた値を新たな発光開始時間とする。加算結果から周期時間を減じた値は、十分に小さな値となる。大きな時間値で発光し、次の周期で小さな時間値で発光させると、二つの発光時間が接近し、2倍の輝度となって照明が発光する。オーバーフロー、アンダーフローは周期的に発生するので、周期的な輝度上がりが生じる。これは観察・撮像の妨げとなるので、オーバーフローやアンダーフローが生じた時は、ステップ17ではさらに、発光開始時間の更新は行うものの、1周期分発光を抑制する。抑制方法の一例として、オーバーフロー、アンダーフローが発生した1周期分のマスク信号を生成し、発光制御信号を1周期だけ抑制する。
【0048】
ステップS18において、微調整処理終了判定を行い、微調整処理を継続する場合はS9からの処理を繰り返す。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、周期初期値3を開始周期とし、周期最小値6と周期最大値7間で周期を規則正しく往復変化させる。周期更新時間5を大きく取れば周期変化はゆっくりで、周期更新時間5を小さくすれば周期変化は速くなる。
【0050】
そして、周期の往復変化の途中で対象物22の運動周期と発光周期が合致する機会が1回は発生する。合致判定が行えなかった場合でも、周期が往復変化しているため、合致の機会は繰り返し発生する。繰り返し発生する合致機会を利用して、対象物22の運動周期と発光周期を合致させる。合致した後、対象物22の運動周期が変動する場合もある。この場合も周期の往復変化により、再同期を計ることができる。周期が合致したタイミングで画像取得を行うことができるので、発光タイミングから遅延がない静止画像を得ることができる。撮像カメラのシャッターを開としたまま、画像取得を行うことができるので、複雑なシャッター制御機構を不要とすることができる。また、周期運動を行う対象物22に対して、同一周期の閃光を一定間隔で発光させ、対象物22を静止状態で観察あるいは画像を撮像する装置において、位置検出器や受光素子は不要である。
【0051】
さらに詳細に説明する。周期更新時間5は、周期時間に周期加減算量4を加減算する時間間隔を示しており、このパラメータの設定により、観測する対象物22の運動周期に合致させるための周期変化を任意に選ぶことができる。また、一実施形態のように、周期更新時間5に達しても、直ちに加減算を行わず、周期の終わりを待つようにすることにより、周期の途中での更新で発光時間、間隔が乱れるのを防いでいる。
【0052】
周期初期値3は、発光周期の初期値を与える。周期最小値6と周期最大値7は、対象物22の運動周期を挟み込むように設定する。通常は、凡その対象物の運動周期が予め判っているか、工場・工程での運用では、試作・試験運転で対象物周期データを予め測定しておき、測定したデータを目標値とするケースが多い。実際の工程では、目標値を周期初期値3とし、目標値からの許容誤差を周期最小値6と周期最大値7として設定できる。対象物22の運動周期が未知の場合は、周期最小値6と周期最大値7の差を大きく設定し、徐々に差を狭めた最小値・最大値設定を行って発光周期を対象物運動周期に近付けて行くことができる。このような設定によって、最小値6・最大値8間で閃光周期が往復変化する。周期が合致しない状態で周期合わせを開始したとしても、徐々に合致状態に向かう。合致周期を通り過ぎたあとも往復変化の効果で繰り返し合致機会を得ることができる。
【0053】
図4は、回転する対象物22と閃光発光周期が合致していない状態での撮像画像で、円形状領域に影が出ているように分離して撮像されている。目視で観測すると円形状の領域を判別することができない。図5は対象物22の回転周期と閃光発光周期を合致させた場合の撮像画像で、円形状領域は回転移動しているのにも関わらず、停止したさせた場合と同じ状態での画像が得られている。目視の場合も停止させた場合と同じ状態で円形状領域を観察することができる。
【0054】
また、発光周期の往復変化中、発光周期と対象物22の運動周期が一致、即ち対象物22が静止したように観測される機会が必ず存在する。往復変化の為、何度も合致機会が規則的な間隔で発生させることにより、発光周期と対象物22の運動周期を一致させることができる。
【0055】
周期初期値3は目標値近辺から合致条件を観測できる利便さがあるが、固定値としてもよい。周期初期値を固定する場合は、周期最小値と最大値の範囲内の値が適切であり、開始値として、最小値、最大値あるいは最小・最大値の平均値を選択することができる。
【0056】
また、本発明の一実施形態において、図1、図3に基づいて詳細に説明したように、パラメータ設定において発光開始時間と発光時間を発光開始時間割合8と発光時間割合9で設定するようにしている。周期時間に占める発光時間の割合が変動すると、照度が異なり観測・撮像の妨げになる。一実施形態では、発光開始時間と発光時間を周期時間の割合で設定しており、発光周期が変化した場合でも、照明の輝度を一定に保つようにしている。さらに、周期時間との乗算を周期時間内で完了して乗算結果を保持し、次の周期時間の開始時点で保持値を発光開始時間、発光時間、微調整加減算量に導入、反映させるようにしている。従って、次の周期時間の開始時点で保持値を発光開始時間、発光時間、微調整加減算量に反映させる周期が変化した場合でも、照明の輝度を一定に保つ効果がある。
【0057】
図5において、対象物22の円形状領域の一つが最上部に位置している。対象物22の移動開始と閃光発光装置(LED照明21)の開始は非同期の為、同期合わせを行った際、観察対象は所望位置で停止するとは限らない。本発明の一実施形態では、発光開始時間をずらして、観察・撮像対象の移動を行うようにしている。また、発光開始時間をずらして、観察・撮像対象を所望位置に移動させるばかりではなく、複数周期に跨る長時間の観察・撮像対象を移動させている。これにより、長時間に渡って連続的に対象物22を実際の速度よりもゆっくりとした速度で観察・撮像することができる。例えば、対象物22が図示のように複数の歯車から構成されているような場合、実際の速度では速くて観察できない歯車の噛み合わせをゆっくりとした速度で動いているように、観察・撮像することができる。
【0058】
ビデオカメラで撮像し、後からスロー再生する方法と違って、リアルタイムで目視による観察が行える。記録媒体を使えば、容量に基づく時間制限が生じるが、本実施の形態では、時間制限なく実速度よりもゆっくりとした速度での観察ができる。図5で円形状領域が識別できる状態で、右回り方向・左回り方向にゆっくりとした一定速度で回転させることができる。対象物を静止状態から実速度よりもゆっくりとした速度で観察する時の速度調整に用いることができる。
【0059】
図1、図3で説明したように、パラメータ入力部2から設定されたは発光開始時間加減算部17において、n個の周期が繰り返されたことを検出する。微調整加減算パラメータnは大きく設定するほど、ゆっくりした速度で動いているように観察される。検出された時点は周期の終わりなので、直ちに微調整量の加減算を行う。微調整加算時は、加算結果が前記周期時間を超えない場合は、加算結果を新たな発光開始時間に更新する。超えた場合、加算結果から周期時間を減じた値を新たな発光開始時間に更新する。微調整減算時は、減算結果が負でない場合、減算結果を新たな発光開始時間に更新する。負の場合は周期時間から減算結果の絶対値を減じた値を新たな発光開始時間に更新する。以上により、微調整を連続して時間の制限なく行うことを可能として、実際の速度よりもゆっくりとした速度での画像観察・撮像を時間制限なく可能とする。
【0060】
なお、発光開始時間の微調整は、次のように使うことができる。運動周期と発光周期を合致させ、対象物を静止した状態で観察できるようにした後、微調整加減算の処理を開始させ、対象物がゆっくりと運動を開始したように観察することができる。更には、静止・微調整を繰り返して行うことができるので、対象物22は運動を継続しているのにも関わらず、静止状態・運動状態のように対象物を観察することができる。
【0061】
また、発光開始時間に、微調整量を連続して加減算を繰り返すと、周期を超えるオーバーフローや、負の数になるアンダーフローが発生する。一実施形態では、発光開始時間微調整補正部18において、オーバーフロー、またはアンダーフローが発生した場合は新たな発光開始時間となるよう補正を行うので、時間制限なく微調整加減算を行え、さらには補正を行った周期のみ1周期分のマスク信号を生成して発光を抑制することができる。
【0062】
以上、一実施形態では、マイクロコンピュータ(CPU,ROM、RAM等を含む)により構成したが、本発明は、レジスタやカウンタ、さらには加算回路、減算回路、乗算回路など個別回路素子を組み合わせて構成してもよい。また、ゆっくりとした速度での画像観察・撮像は必要に応じて組み合わせればよく、周期最小値と周期最大値間の規則的な往復変化中、発光周期と対象物の運動周期が一致、即ち対象物が静止したように観測される装置のみでもよい。さらに、ゆっくりとした速度での画像観察・撮像を可能とした場合、微調整加減算パラメータnをn≧1の範囲で設定するようにしたが、0「ゼロ」を含めてもよい。0「ゼロ」の設定を可能とすることで微調整動作を停止させる機能を持つ構成とすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 発光制御回路
2 パラメータ入力部
3 周期初期値
4 周期加減算量
5 周期更新時間
6 周期最小値
7 周期最大値
8 発光開始時間割合
9 発光時間割合
10 微調整加減算値割合
11 微調整加減算パラメータn
12 周期時間生成部
13 発光時間乗算部
14 最小値/最大値比較部
15 発光開始時間乗算部
16 微調整値乗算回路
17 発光開始時間加減算部
18 発光開始時間微調整補正部
19 発光制御信号生成部
20 LEDドライバ
21 LED照明
22 観察・撮像対象物
23 撮像カメラ
24 表示装置
30 設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から所定周期ごとに閃光を発光させて、周期運動する対象物を静止状態で観察又は画像を撮像するための発光制御装置において、
前記閃光の周期最小値と、周期最大値と、周期更新時間と、を記憶する手段と、
加算を行うか減算を行うかを示す周期演算モードを有し、前記周期更新時間に達した周期の終わりにおいて、前記周期演算モードが加算の場合は周期加減算量を現在の周期時間に加算し、前記周期演算モードが減算の場合は周期加減算量を現在の周期時間から減算する演算手段と、
加算結果を前記周期最大値と比較し、加算結果が前記周期最大値以下の場合には加算結果を新たな周期に更新し、減算結果が周期最小値を以上の場合には減算結果を新たな周期に更新する更新手段と、
加算結果が周期最大値を超えた場合には周期の更新を行わずに周期演算モードを減算に変更し、減算結果を周期最小値と比較し、減算結果が周期最小値を下回った場合には周期の更新を行わずに周期演算モードを加算に変更する前記周期演算モードの変更手段と、
を備えてなることを特徴とする発光制御装置。
【請求項2】
周期加減算量の記憶手段を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の発光制御装置。
【請求項3】
周期初期値の記憶手段を備えてなることを特徴とする請求項1または2に記載の発光制御装置。
【請求項4】
発光開始時間と発光時間を前記周期時間の割合で記憶する手段と、
前記周期時間内で前記周期時間との乗算を行い該乗算結果を保持する手段と、
次の周期時間の開始時点で前記保持値で発光開始時間、発光時間を更新する手段と、
を備えてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光制御装置。
【請求項5】
前記発光開始時間と発光時間を微調整するため、前記周期時間の割合で微調整加減算量を記憶する手段と、
微調整加減算パラメータn(n≧1)を記憶する手段と、
n個の周期を検出した時点で発光開始時間に対して微調整量の加減算を行う手段と、
微調整加算時は、加算結果が前記周期時間を超えない場合、加算結果を新たな発光開始時間に更新し、超えた場合、加算結果から周期時間を減じた値を新たな発光開始時間に更新し、微調整減算時は、減算結果が負でない場合、減算結果を新たな発光開始時間に更新し、負の場合は周期時間から減算結果の絶対値を減じた値を新たな発光開始時間に更新する手段と、を備えてなることを特徴とする請求項4に記載の発光制御装置。
【請求項6】
前記加算結果が周期時間を超えた場合、及び減算結果に負が発生した直後は発光を1周期分抑制する手段を備えてなることを特徴とする請求項5に記載の発光制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−61378(P2013−61378A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197959(P2011−197959)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(593122789)ユーテック株式会社 (118)
【Fターム(参考)】