発光型表示装置
【課題】安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能な発光型表示装置を提供することを主目的とする。
【解決手段】パターン状に画素部が形成された発光型ディスプレイと、上記発光型ディスプレイ上に配置された偏光板と、上記偏光板上に配置され、透明フィルム基材、上記透明フィルム基材上に形成された配向層、および上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層を有するパターン位相差板と、を有する発光型表示装置であって、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であり、さらに上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とする、発光型表示装置を提供することにより上記課題を解決する。
【解決手段】パターン状に画素部が形成された発光型ディスプレイと、上記発光型ディスプレイ上に配置された偏光板と、上記偏光板上に配置され、透明フィルム基材、上記透明フィルム基材上に形成された配向層、および上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層を有するパターン位相差板と、を有する発光型表示装置であって、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であり、さらに上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とする、発光型表示装置を提供することにより上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能な発光型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイとしては、従来、2次元表示のものが主流であったが、近年においては3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集め始めており、一部市販されているものも存在しつつある。そして、今後のフラットパネルディスプレイにおいては3次元表示可能であることが、その性能として当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
【0003】
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、視聴者に対して何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示することが必要とされる。右目用の映像と左目用の映像とを別個に表示する方法としては、例えば、パッシブ方式というものが知られている。このようなパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図24はパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。図24に示すようにこの方式では、まず、フラットパネルディスプレイを構成する画素を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。また、直線偏光板と当該画素の分割パターンに対応したパターン状の位相差層が形成されたパターン位相差フィルムとを用い、右目用の映像と、左目用の映像とを互いに直交関係にある円偏光に変換する。さらに、視聴者には右目用レンズと左目用レンズとに互いに直交する円偏光レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用のレンズのみを通過するようにする。このようにして右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることによって3次元表示を可能とするものがパッシブ方式である。
【0004】
このようなパッシブ方式では、上記パターン位相差フィルムと、対応する円偏光メガネとを用いることにより容易に3次元表示が可能なものにできるという利点がある。
【0005】
ところで、上述したようにパッシブ方式においてはパターン位相差フィルムを用いることが必須になるところ、このようなパターン位相差フィルムについてはまだ広く研究・開発が行われておらず、標準的な技術としても確立されているものがないのが現状である。この点、特許文献1にはパターン位相差フィルムとして、ガラス基板上に配向規制力がパターン状に制御された光配向膜と、当該光配向膜上に形成され、液晶化合物の配列が上記光配向膜のパターンに対応するようにパターニングされた位相差層とを有するパターン位相差板が開示されている。ここで、光配向膜のパターンは互いに配向方向が直交するように配向規制力が制御された領域がパターン状に配置されている。しかしながら、このような特許文献1に開示されたパターン位相差板は、光配向膜のような特殊な材料を使用しなければ作製することができず、かつガラス板を用いることが必須となっていることから、高価であり、また大面積のものを大量に製造できるというものではなく、その実用性に難点があった。
【0006】
このようなことから、実用性を有するパターン位相差フィルムに関しては未だ研究開発段階にあり、一般的なものとして知られるに至っているものはほとんどなく、その結果、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能な発光型表示装置を得るには至っていないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−49865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能な発光型表示装置を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、パターン状に画素部が形成された発光型ディスプレイと、上記発光型ディスプレイ上に配置された偏光板と、上記偏光板上に配置され、透明フィルム基材、上記透明フィルム基材上に形成された配向層、および上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層を有するパターン位相差板と、を有する発光型表示装置であって、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であり、さらに上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とする、発光型表示装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンとが上記偏光板を介して対応関係にあり、さらに、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であることにより、3次元表示可能な表示装置(以下、「3D表示装置」と称する場合がある。)とすることができる。
また、本発明に用いられる上記棒状化合物は、従来から液晶表示装置の視野角補償フィルム等として汎用されてきた位相差フィルム用に用いられる棒状化合物として一般的なものを用いることができるため、安価にパターン位相差板を得ることができる。
さらに、上記パターン位相差板は、上記透明フィルム基材が用いられていることにより、簡易的な方法で大量生産することが可能であり、さらに軽量であることから実用性の高いものとなる。
このようなことから、本発明によれば、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能な発光型表示装置とすることができる。
【0011】
本発明においては、上記パターン位相差板が、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、上記配向層が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、上記棒状化合物を上記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であり、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記第1配向領域上に形成された位相差層または上記第2配向領域上に形成された位相差層であることが好ましい。
上記配向層に上記第1配向領域および上記第2配向領域がパターン状に形成されていることにより、当該パターンに従って上記位相差層においても第1配向領域上に形成された位相差層(以下、「第1位相差領域」と称する場合がある。)と、上記第2配向領域上に形成された位相差層(以下、「第2位相差領域」と称する場合がある。)とがパターン状に配置されることになる。ここで、上記第1配向領域と上記第2配向領域とでは上記棒状化合物を配列させる方向が互いに直交する方向になることから、上記第1位相差領域と上記第2位相差領域とでは屈折率の最も大きくなる方向(遅相軸方向)が互いに直交する関係になる。このため、本発明においては上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンに対応して、上記位相差層において遅相軸方向が異なる第1位相差領域、および第2位相差領域がパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを有するものとすることができる。したがって、このような第1位相差領域および第2位相差領域を上記第1円偏光化領域及び第2円偏光化領域として用いることにより、容易に3次元映像を得ることができるからである。
これに加えて、本発明においては上記棒状化合物に対する配向規制力を付与することを目的として、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に微細凹凸形状が形成されているが、上記第1配向領域または上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状の少なくとも一方がストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、上記位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界を明確にすることができるという利点がある。これにより、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い液晶の配向欠陥を抑制することができるので、境界近傍からの光漏れを抑制でき、コントラストの低下を抑制することができるからである。
【0012】
本発明においては、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に形成された上記微細凹凸形状が、いずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることが好ましい。これにより位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界をさらに明瞭にすることができるからである。
【0013】
本発明においては、上記位相差層の面内レターデーション値が、λ/4分に相当することが好ましい。本発明においては上記第1位相差領域と第2位相差領域とを通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、上記位相差層の面内レターデーション値がλ/4分に相当することにより、より精度の高い3次元表示を可能なものにできるからである。
【0014】
本発明においては、上記パターン位相差板が、上記透明フィルム基材上に形成され、表面に厚みが大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域がパターン状に形成された配向層と、上記配向層の上記表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、上記厚膜領域および上記薄膜領域が、同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されており、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記厚膜領域上に形成された位相差層または上記薄膜領域上に形成された位相差層であることが好ましい。
上記配向層が、上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されたものであり、かつ上記厚膜領域の表面に形成された微細凹凸形状と、上記薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状とが同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるようなものであることにより、上記厚膜領域上に形成された位相差層(以下、「低位相差領域」と称する場合がある)と上記薄膜領域上に形成された位相差層(以下、「高位相差領域」と称する場合がある。)とは、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差に相当する分だけ異なった位相差値(面内レターデーション)を示すことになる。このため、本発明においては位相差層において位相差値の大きい高位相差領域と、上記高位相差領域よりも位相差値が小さい低位相差領域とが、上記薄膜領域および上記厚膜領域が形成されたパターンと同一のパターンで形成されることになる。したがって、本発明によれば位相差層において高位相差領域と低位相差領域とがパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを有するものとすることができる。したがって、このような高位相差領域および低位相差領域を上記第1円偏光化領域及び第2円偏光化領域として用いることにより、容易に3次元映像を得ることができるからである。
【0015】
本発明においては、上記厚膜領域上に形成される位相差層の面内レターデーション値と、上記薄膜領域上に形成される位相差層の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当するものであり、かつ上記厚膜領域上に形成される上記位相差層の面内レターデーション値が、λ/4分に相当することにより、上記厚膜領域上に形成される上記位相差層の面内レターデーション値がλ/4分に相当し、かつ上記薄膜領域上に形成される上記位相差層の面内レターデーション値がλ/4+λ/2分に相当することが好ましい。これにより、上記低位相差領域および上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、より精度の高い3次元表示を可能なものにできるからである。
【0016】
本発明においては、上記厚膜領域または上記薄膜領域の表面に形成された上記微細凹凸形状の少なくとも一方が、ストライプ状のライン状凹凸構造であることが好ましく、さらには上記厚膜領域および上記薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状が、ストライプ状のライン状凹凸構造であることが好ましい。これにより位相差層における低位相差領域と高位相差領域との境界を明瞭にすることができるからである。
【0017】
本発明においては、上記パターン位相差板が、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルム、および上記パターン位相差フィルム上に配置され、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層を有するものであり、上記パターン位相差板が、上記偏光板、位相差層および第2位相差層がこの順となるように配置されており、上記位相差層が、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域がパターン状に配置されたものであり、上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とが直交または平行関係にあり、上記第1円偏光化領域が、上記第1位相差領域および上記第1位相差領域上の第2位相差層を含むものであることが好ましい。
上記第1円偏光化領域が、上記第1位相差領域および上記第1位相差領域上の第2位相差層を含むものであることにより、容易に3次元映像を得ることができるからである。
【0018】
本発明においては、上記位相差層が、上記第1位相差領域と、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有し、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第2位相差領域と、を有するものであり、上記第2位相差領域に含有される上記棒状化合物の配向方向が、上記第1位相差領域に含有される上記棒状化合物の配向方向に対して45°の方向であり、かつ上記第1位相差領域と、上記第2位相差領域とがパターン状に配置されたものであることが好ましい。これにより、上記第1位相差領域および第2位相差領域を透過する光量を同程度とすることができ、また第1位相差領域および第2位相差領域の境界を目立たなくすることができるため、表示品質に優れた3D表示装置を得ることができるからである。
【0019】
本発明においては、上記パターン位相差板が、上記パターン位相差フィルムの位相差層上に、上記第2位相差層が積層された積層型パターン位相差フィルムであっても良い。上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とを直交または平行関係とすることが容易だからである。
【0020】
本発明においては、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。これにより、上記第1位相差領域が形成されたパターンと、表示装置に用いられるカラーフィルタ等において画素が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になるからである。
【0021】
本発明においては、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に反射防止層および/またはアンチグレア層が形成されていることが好ましい。表示品質の良いものとすることができるからである。
【0022】
本発明においては、上記配向層が硬化された紫外線硬化性樹脂からなることが好ましい。これにより、上記配向層を転写法によって容易に形成することが可能なものにできる結果、本発明のパターン位相差フィルムをさらに生産性の高いものにできるからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の発光型表示装置は、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能なものとすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の発光型表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの一例を示す概略図である。
【図3】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略図である。
【図4】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図6】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図7】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図8】図9のA−A線断面図である。
【図9】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図10】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図11】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図12】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図13】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図14】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図15】図16のB−B線断面図である。
【図16】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図17】本発明の発光型表示装置について説明する概略図である。
【図18】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図19】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図20】図21のC−C線断面図である。
【図21】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図22】本発明に用いられる偏光板を説明する説明図である。
【図23】本発明の発光型表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【図24】パッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、発光型表示装置に関するものである。
本発明の発光型表示装置は、パターン状に画素部が形成された発光型ディスプレイと、上記発光型ディスプレイ上に配置された偏光板と、上記偏光板上に配置され、透明フィルム基材、上記透明フィルム基材上に形成された配向層、および上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層を有するパターン位相差板と、を有する発光型表示装置であって、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であり、さらに上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とするものである。
【0026】
このような本発明の発光型表示装置について図を参照しながら説明する。図1は、本発明の発光型表示装置の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように本発明の発光型表示装置50は、パターン状に画素部31aが形成された発光型ディスプレイ40と、上記発光型ディスプレイ40上に配置された偏光板30と、上記偏光板30上に配置され、透明フィルム基材11、上記透明フィルム基材11上に形成された配向層12、および上記配向層12上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層13を有するパターン位相差板20と、を有するものであって、上記円偏光化層13が第1円偏光化領域13Aおよび第2円偏光化領域13Bを有し、上記偏光板30の偏光軸方向と、上記パターン位相差板20に含まれる第1円偏光化領域13Aおよび第2円偏光化領域13Bの進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であり、さらに上記発光型ディスプレイ40において上記画素部31aが形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域13Aおよび第2円偏光化領域13Bが形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とするものである。
【0027】
ここで、図2(a)および(b)に例示するように、上記パターン位相差板20としては、透明フィルム基材1と、上記透明フィルム基材1上に形成された配向層2と、上記配向層2上に形成された位相差層3と、を有するパターン位相差フィルム10からなるものであって、上記配向層2が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域2Aと、上記棒状化合物を上記第1配向領域2Aにおける配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域2Bとが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域2Aの表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であるものとすることができる。この例においては、その結果、図2(b)に例示するように本発明のパターン位相差フィルムにおいては位相差層3において遅相軸方向が互いに直交する第1位相差領域3Aおよび第2位相差領域3Bが、上記第1配向領域2Aおよび第2配向領域2Bが形成されたパターンと同一パターンで形成されている。
また、この例においては、上記円偏光化層が上記位相差層3であり、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記第1配向領域2A上に形成された位相差層3Aまたは上記第2配向領域2B上に形成された位相差層3Bである。
【0028】
なお、図2においては第1配向領域に形成された微細凹凸形状のみがストライプ状のライン状凹凸構造である場合の一例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、第2配向領域に形成された微細凹凸形状のみがストライプ状のライン状凹凸構造であってもよく、または第1配向領域および第2配向領域に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン凹凸形状であってもよい。
【0029】
また、図3(a)および(b)に例示するように、上記パターン位相差板20としては、透明フィルム基材1と、上記透明フィルム基材1上に形成された配向層2と、上記配向層2上に形成された位相差層3と、を有するパターン位相差フィルム10からなるものであって、上記配向層2は、表面に厚みが大きい厚膜領域2Cおよび上記厚膜領域2Cよりも厚みが小さい薄膜領域2Dがパターン状に形成されており、これにより厚膜領域2C上に形成される位相差層3Cと、薄膜領域2D上に形成される位相差層3Dとは厚みが異なるようになるものを用いることができる。この例においては、上記厚膜領域2Cおよび上記薄膜領域2Dの表面に、それぞれ同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されている。さらに、図3(b)に例示するように、上記位相差層3に上記厚膜領域2C上に形成された低位相差領域3Cと、上記薄膜領域2D上に形成された高位相差領域3Dとが、上記厚膜領域2Cおよび薄膜領域2Dが形成されたパターンと同一のパターンで存在するものになる。
また、この例においては、上記円偏光化層が、上記位相差層3であり、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記厚膜領域2C上に形成された位相差層3Cまたは上記薄膜領域2D上に形成された位相差層3Dである。
【0030】
さらに、図4に例示するように、上記パターン位相差板20としては、透明フィルム基材1と、上記透明フィルム基材1上に形成された配向層2と、上記配向層2上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層3と、を有するパターン位相差フィルム10および上記パターン位相差フィルム10上に配置され、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層4を有するものであり、上記位相差層3が、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域3Eが、パターン状に配置されたものであり、上記第1位相差領域3Eの遅相軸方向と、上記第2位相差層4の遅相軸方向とが直交または平行関係にあるものを用いることができる。
なお、この例においては、上記円偏光化層が上記位相差層3中の第1位相差領域3Eおよび第2位相差層4を含むものであり、上記第1円偏光化領域が、上記第1位相差領域3Eおよび上記第1位相差領域3E上の第2位相差層4Eを含むものであり、上記第2円偏光化領域が上記第1位相差領域3E以外の領域上の第2位相差層4Fを含むものである。
【0031】
本発明によれば、上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンとが上記偏光板を介して対応関係にあり、さらに、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であることにより、3次元表示可能な表示装置(以下、「3D表示装置」と称する場合がある。)とすることができる。
また、本発明に用いられる上記棒状化合物は、従来から液晶表示装置の視野角補償フィルム等として汎用されてきた位相差フィルム用に用いられる棒状化合物として一般的なものを用いることができるため、安価にパターン位相差フィルムを得ることができる。
さらに、本発明のパターン位相差フィルムは、上記透明フィルム基材が用いられていることにより、簡易的な方法で大量生産することが可能であり、さらに軽量であることから実用性の高いものとなる。
このようなことから、本発明によれば、3D表示装置を容易に製造することができ、かつ安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能となる。
【0032】
本発明の発光型表示装置は、少なくとも発光型ディスプレイ、偏光板、およびパターン位相差板を有するものであり、必要に応じて、例えばカラーフィルタ等の他の任意の構成を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各構成について順に説明する。
【0033】
1.パターン位相差板
本発明に用いられるパターン位相差板は、透明フィルム基材、上記透明フィルム基材上に形成された配向層、および上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層を有するものであり、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であるものである。
【0034】
ここで、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であるとは、所望の精度の3次元映像を表示することができるものであれば良く、具体的には、上記角度が45°±3°の範囲内であることをいうものであり、なかでも本発明においては、45°±2°の範囲内であることが好ましく、特に、45°±1°であることが好ましい。上記角度が上述の範囲内であることにより精度の高い3次元表示を可能なものにできるからである。
【0035】
このようなパターン位相差板としては、3次元映像を表示することを可能とするものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、上記配向層が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、上記棒状化合物を上記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であり、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記第1配向領域上に形成された位相差層または上記第2配向領域上に形成された位相差層である態様(第1態様)、上記パターン位相差板が、上記透明フィルム基材上に形成され、表面に厚みが大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域がパターン状に形成された配向層と、上記配向層の上記表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されており、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記厚膜領域上に形成された位相差層または上記薄膜領域上に形成された位相差層である態様(第2態様)、上記パターン位相差板が、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルム、および上記パターン位相差フィルム上に配置され、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層を有するものであり、上記パターン位相差板が、上記偏光板、位相差層および第2位相差層がこの順となるように配置されており、上記位相差層が、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域が、パターン状に配置されたものであり、上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とが直交または平行関係にあり、上記第1円偏光化領域が、上記第1位相差領域および上記第1位相差領域上の第2位相差層を含むものである態様(第3態様)の3つの実施態様とすることができる。以下、本発明に用いられるパターン位相差板の第1態様〜第3態様について、各態様に分けて説明する。
【0036】
(1)第1態様
まず、本発明に用いられるパターン位相差板の第1態様について説明する。本態様のパターン位相差板は、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであって、上記配向層が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、上記棒状化合物を上記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であり、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記第1配向領域上に形成された位相差層または上記第2配向領域上に形成された位相差層であることを特徴とするものである。
【0037】
このような本態様のパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムとしては、既に説明した図2を挙げることができる。
【0038】
本態様においては、上記配向層に上記第1配向領域および上記第2配向領域がパターン状に形成されていることにより、当該パターンに従って上記位相差層においても第1配向領域上に形成された位相差層と、上記第2配向領域上に形成された位相差層と、がパターン状に配置されることになる。ここで、上記第1配向領域と上記第2配向領域とでは上記棒状化合物を配列させる方向が互いに直交する方向になることから、上記第1位相差領域と上記第2位相差領域とでは屈折率の最も大きくなる方向(遅相軸方向)が互いに直交する関係になる。このため、本態様においては上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンに対応して、上記位相差層において遅相軸方向が異なる第1位相差領域、および第2位相差領域がパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを有するものとすることができる。したがって、このような第1位相差領域および第2位相差領域を上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域として用いることにより、容易に3次元映像を得ることができる。
これに加えて、本態様においては上記棒状化合物に対する配向規制力を付与することを目的として、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に微細凹凸形状が形成されているが、上記第1配向領域または上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状の少なくとも一方がストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、上記位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界を明確にすることができるという利点がある。これにより、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い液晶の配向欠陥を抑制することができるので、境界近傍からの光漏れが抑制でき、コントラストの低下を抑制することができる。
【0039】
本態様のパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムは、少なくとも透明フィルム基材、配向層および位相差層を有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。
以下、このようなパターン位相差フィルムの各構成について詳細に説明する。
【0040】
(a)配向層
まず、本態様に用いられる配向層について説明する。本態様に用いられる配向層は後述する透明フィルム基材上に形成されるものであり、位相差層に含まれる棒状化合物を一方向に配列させる機能を有するものである。そして、本態様に用いられる配向層は、表面に上記第1配向領域および第2配向領域がパターン状に形成されていることにより、当該パターンに従って上記位相差層においても互いに遅相軸方向が直交関係にある第1位相差領域と、上記第2位相差領域とがパターン状に配置されることになる。これに加えて、本態様に用いられる配向層は、後述する位相差層に含まれる棒状化合物への配向規制力を付与することを目的として、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に微細凹凸形状が形成されており、かつ上記第1配向領域または上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状の少なくとも一方がストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、上記位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界を明確にすることができるという利点がある。従って、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い液晶の配向欠陥を抑制することができるので、境界近傍からの光漏れが抑制でき、その結果、ディスプレイに使用した際のコントラストの低下を抑制することができる。
【0041】
(i)第1配向領域および第2配向領域
本態様における配向層に形成された第1配向領域および第2配向領域は、いずれも位相差層に含有される棒状化合物を一方向に配列させる機能を有する領域であるが、棒状化合物を配列させる方向が互いに直交関係にあるものである。本態様においては当該第1配向領域および第2配向領域はパターン状に形成されており、かつ表面には棒状化合物を配列させるための微細凹凸形状が形成されている。
【0042】
本態様における配向層において第1配向領域および第2配向領域が形成されるパターンは、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば、本発明の用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば帯状パターン、モザイク状パターン、千鳥配置状パターン等を挙げることができる。中でも本態様においては上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていること、すなわち、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および上記第2円偏光化領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域を容易に互いに平行な帯状のパターンとすることができることにより、上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、を偏光板を介して対応関係にすることが容易になるからである。
【0043】
図5(a)および(b)は、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の一例を示す説明図である。ここで、図5(a)は、概略平面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるX−X’線矢視断面図である。図5(a)、(b)に示すように、配向層2においては上記第1配向領域2Aおよび上記第2配向領域2Bが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。ここで、図5(a)、(b)におけるW1、W2はそれぞれ第1配向領域および第2配向領域の帯幅を示す。
【0044】
上記第1配向領域および第2配向領域が帯状のパターンに形成されている場合、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば、第1配向領域および第2配向領域の幅は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。しかしながら、本態様においては第1配向領域の幅と第2配向領域の幅は同一であることが好ましい。上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、上記画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、その結果、容易に製造可能なものとすることができるようになるからである。尚、発光型表示装置の色純度やコントラストを向上させる目的で、上記発光型ディスプレイと本態様のパターン位相差フィルムの間にカラーフィルターを配置しても良いが、その場合は、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、上記カラーフィルタにおいて画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが好ましい。
【0045】
上記第1配向領域および上記第2配向領域の具体的な幅としては、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば特に限定されるものではなく、上記発光型ディスプレイにおいて画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように上記第1配向領域および第2配向領域の幅は特に限定されるものではないが、通常、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜600μmの範囲内であることがより好ましい。
【0046】
また、本態様において上記第1配向領域および上記第2配向領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、上記第1配向領域および上記第2配向領域の間に、光を吸収するブラックラインを設けてもよい。この場合、ブラックラインの幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0047】
さらに、本態様において上記第1配向領域および上記第2配向領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、本態様のパターン位相差フィルムが長尺状に形成されたものから所定のサイズに切りだしてなるものである場合、上記帯状のパターンは帯状の長手方向がパターン位相差フィルムの長尺方向と平行方向であってもよく、あるいは直交方向であってもよく、さらには斜めに交差する方向であってもよい。中でも本態様においては、上記帯状のパターンは帯状の長手方向がパターン位相差フィルムの長尺方向と平行方向であることが好ましい。このような方向に帯状のパターンが形成されていることにより、例えば、ロール状に巻き取られた長尺状の透明フィルム基材を用い、当該ロール状の透明基材フィルムを巻きほぐしながら搬送しつつ、上記帯状のパターンを形成することが容易になるからである。
【0048】
(ii)微細凹凸形状
次に上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状について説明する。本態様のパターン位相差フィルムは、上記配向層上に後述する位相差層が積層された構成を有するものであるところ、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状は、上記位相差層中に含まれる棒状化合物を一定方向に配列させるために形成されるものである。本態様においては上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とするものである。
【0049】
ここで、ストライプ状のライン状凹凸構造とは、壁状に形成された凸部が一定の間隔でストライプ状に形成された態様を意味するものであり、例えば表面にラビング処理がなされた場合に形成されるような微小な傷のような凹凸形状はこれに含まれないものである。
【0050】
本態様において上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造である態様としては、第1配向領域または第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状のみが、ストライプ状のライン状凹凸構造であってもよく、または第1配向領域および第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状がいずれもストライプ状のライン状凹凸構造であってもよい。中でも本態様においては、第1配向領域および第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状がいずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることが好ましい。ストライプ状のライン状凹凸構造は棒状化合物に対する配向規制力が強いことから、第1配向領域および第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状がいずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界をさらに明瞭にすることができるからである。
【0051】
ストライプ状のライン状凹凸構造が形成される場合、ライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期は棒状化合物を配列させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。中でも本態様においてはストライプ状のライン状凹凸構造の幅は、1nm〜100000nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜10000nmの範囲内であることがより好ましく、100nm〜1000nmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、ストライプ状のライン状凹凸構造の高さは1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、20nm〜50nmの範囲内であることがさらに好ましい。
さらに、ストライプ状のライン状凹凸構造の周期は、2nm〜200000nmの範囲内であることが好ましく、20nm〜20000nmの範囲内であることがより好ましく、200nm〜2000nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0052】
ここで、線状凹凸形状の高さ、幅、および周期はそれぞれ図6におけるl、m、nで示される距離を意味する。
【0053】
一方、第1配向領域または第2配向領域の一方の表面に形成された微細凹凸形状のみが、ストライプ状のライン状凹凸構造である場合、他方の表面に形成される微細凹凸形状としては棒状化合物を一定方向に配列させることができるものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、棒状化合物はライン状凹凸構造が形成された表面においては、当該ライン状凹凸構造の長手方向に平行に配列する性質を有するため、本態様における微細凹凸形状は、ライン状凹凸構造からなるものであることが好ましい。このようなライン状凹凸構造としては、例えば、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに不連続な状態で形成された態様を例示することができる。
【0054】
ここで、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに不連続な状態で形成された態様とは、例えば、表面にラビング処理がなされた場合等に形成されるような微小な傷のようなライン状凹凸構造が、略一定方向に不連続な状態で形成された態様を意味するものである。
【0055】
本態様において第1配向領域および第2配向領域にライン状凹凸構造が形成される場合、第1配向領域に形成されたライン状凹凸構造の方向と、第2配向領域に形成されたライン状凹凸構造の方向とが互いに直交する関係になる。これは、本態様における第1配向領域および第2配向領域は、棒状化合物を互いに直交する方向に配列させる機能を有するものであるところ、ライン状凹凸構造はその長手方向に対して平行方向に棒状化合物を配列させる機能を有するからである。
【0056】
(iii)構成材料
本態様における配向層を形成するために用いられる構成材料としては、表面に所定の微細凹凸形状が形成された第1配向領域および第2配向領域を、所望のパターン状に形成できるものであれば特に限定されるものではない。このような構成材料としては、たとえば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を挙げることができる。本態様においてはこれらの何れの構成材料であっても好適に用いることができるが、なかでも紫外線硬化性樹脂が用いられることが好ましい。紫外線硬化性樹脂が用いられることにより、本態様に用いられる配向層を転写法によって容易に形成することが可能なものにできる結果、本態様のパターン位相差フィルムをさらに生産性の高いものにできるからである。なお、構成材料として紫外線硬化性樹脂が用いられた場合、本態様における配向層は硬化された紫外線硬化性樹脂からなることになる。
【0057】
本態様に用いられる紫外線硬化性樹脂の具体例としては、例えば、ウレタンアクリレート,エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート,ポリエーテルアクリレート,メラミンアクリレート等のアクリロイル基をもつ重合性オリゴマー,モノマーと、アクリル酸,アクリルアミド,アクリロニトリル,スチレン等重合性ビニル基をもつ重合性オリゴマー,モノマー等の単体あるいは配合したものに、必要に応じて増感剤等の添加剤を加えたものに光重合開始剤を加えたもの等を挙げることができる。
【0058】
(b)位相差層
次に、本態様における位相差層について説明する。本態様における第1円偏光化領域および第2円偏光化領域を含む円偏光化層であり、上述した配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより本態様のパターン位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本態様においては上述したような特徴を有する配向層が形成されていることにより、本態様における位相差層は第1位相差領域と第2位相差領域とが、すなわち、上記第1円偏光化領域と第2円偏光化領域とが、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと同一のパターン状に形成されたものになる。
【0059】
本態様に用いられる位相差層は後述する棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差層の厚みに依存して決定されるものである。したがって、本態様に用いられる位相差層の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定されるものである。また、本態様における位相差層では第1位相差領域および第2位相差領域の厚みはほぼ同一となる。中でも本態様における位相差層の厚みは、位相差層の面内レターデーションがλ/4分に相当するような範囲内であることが好ましい。これにより、本態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記第1位相差領域および上記第2位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、より精度良く3次元映像を表示できるものとすることができるからである。
【0060】
本態様において、位相差層の厚みを位相差層の面内レターデーションがλ/4分に相当するような範囲内の距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、後述する棒状化合物の種類により適宜決定されることになる。もっとも、当該距離は本態様において一般的に用いられる棒状化合物であれば、通常、0.5μm〜2μmの範囲内となるがこれに限られるものではない。
【0061】
次に、位相差層に含有される棒状化合物について説明する。本態様に用いられる棒状化合物は屈折率異方性を有するものである。本態様における位相差層中に含有される棒状化合物としては、規則的に配列することにより本態様における位相差層に所望の位相差性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本態様に用いられる棒状化合物は、液晶性を示す液晶性材料であることが好ましい。液晶性材料は屈折率異方性が大きいため、本態様のパターン位相差フィルムに所望の位相差性を付与することが容易になるからである。
【0062】
本態様に用いられる上記液晶性材料としては、例えば、ネマチック相、スメクチック相等の液晶相を示す材料を挙げることができる。本態様においては、これらのいずれの液晶相を示す材料であっても好適に用いることができるが、なかでもネマチック相を示す液晶性材料を用いることが好ましい。ネマチック相を示す液晶性材料は、他の液晶相を示す液晶性材料と比較して規則的に配列させることが容易であるからである。
【0063】
また、本態様においては上記ネマチック相を示す液晶性材料として、メソゲン両端にスペーサを有する材料を用いることが好ましい。メソゲン両端にスペーサを有する液晶性材料は柔軟性に優れるため、このような液晶性材料を用いることにより、本態様のパターン位相差フィルムを透明性に優れたものにできるからである。
【0064】
さらに、本態様に用いられる棒状化合物は、分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられ、なかでも3次元架橋可能な重合性官能基を有するものがより好適に用いられる。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能になるため、配列安定性に優れ、位相差性の経時変化が生じにくい位相差層を得ることができるからである。なお、重合性官能基を有する棒状化合物を用いた場合、本態様における位相差層には、重合性官能基によって架橋された棒状化合物が含有されることになる。
【0065】
なお、上記「3次元架橋」とは、液晶性分子を互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることを意味する。
【0066】
上記重合性官能基としては、例えば、紫外線、電子線等の電離放射線、或いは熱の作用によって重合する重合性官能基を挙げることができる。これら重合性官能基の代表例としては、ラジカル重合性官能基、或いはカチオン重合性官能基等が挙げられる。さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が挙げられ、具体例としては、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。また、上記カチオン重合性官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。その他、重合性官能基としては、例えば、イソシアネート基、不飽和3重結合等が挙げられる。これらの中でもプロセス上の点から、エチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が好適に用いられる。
【0067】
さらにまた、本態様における棒状化合物は液晶性を示す液晶性材料であって、末端に上記重合性官能基を有するものが特に好ましい。このような液晶性材料を用いることにより、例えば、互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることができるため、配列安定性を備え、かつ、光学特性の発現性に優れた上記位相差層を形成することができるからである。
なお、本態様においては片末端に重合性官能基を有する液晶性材料を用いた場合であっても、他の分子と架橋して配列安定化することができる。
【0068】
本態様に用いられる棒状化合物の具体例としては、下記式(1)〜(17)で表される化合物を例示することができる。
【0069】
【化1】
【0070】
なお、本態様において上記棒状化合物は、1種類のみを用いてもよく、または、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、上記棒状化合物として、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料と、片末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料とを混合して用いると、両者の配合比の調整により重合密度(架橋密度)及び光学特性を任意に調整できる点から好ましい。また、信頼性確保の観点からは、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料が好ましいが、液晶配向の観点からは両末端の重合性官能基が1つであることが好ましい。
【0071】
(c)透明フィルム基材
次に、本態様に用いられる透明フィルム基材について説明する。本態様に用いられる透明フィルム基材としては、樹脂材料からなり所定の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。中でも本態様に用いられる透明フィルム基材は、位相差性が低いものであることが好ましい。より具体的には、本態様に用いられる透明フィルム基材は、面内レターデーション値(Re値)が、0nm〜10nmの範囲内であることが好ましく、
0nm〜5nmの範囲内であることがより好ましく、0nm〜3nmの範囲内であることがさらに好ましい。透明基材の面内レターデーション値が上記範囲よりも大きいと、得られる3D表示装置の表示品質が悪くなってしまう場合があるからである。
【0072】
本態様に用いられる透明フィルム基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明フィルム基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0073】
また、本態様に用いられる透明フィルム基材としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂からなるものを挙げることができるが、透明フィルム基材の面内レターデーションをゼロに近付けやすいことからアセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0074】
透明フィルム基材の厚みについては、本発明の用途および透明フィルム基材を構成する材料等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではないが、通常は、20μm〜188μmの範囲内であることが好ましく、30μm〜90μmの範囲内であることがより好ましい。
【0075】
なお、上記配向層が紫外性硬化性樹脂からなる場合は、透明フィルム基材と紫外線硬化性樹脂との接着性を向上させるためのプライマ層を透明フィルム基材上に形成してもよい。このプライマ層は、透明フィルム基材および紫外線硬化性樹脂の双方に接着性を有し、可視光学的に透明であり、紫外線を通過させるものであればよく、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系、ウレタン系のものを使用することができる。
【0076】
(d)パターン位相差フィルム
(i)他の構成
本態様のパターン位相差フィルムは少なくとも上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる他の構成としては、所望の3次元映像を表示することができるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて所望の機能を有するものを適宜選択して用いることができる。このような他の構成の例としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成される反射防止層またはアンチグレア層を挙げることができる。このような反射防止層が形成されていることにより、表示品質の良い発光型表示装置を得ることができるという利点がある。なお、上記反射防止層、およびアンチグレア層は一方のみが用いられてもよく、または両方が用いられてもよい。
【0077】
図7は、本態様のパターン位相差フィルムに反射防止層が用いられる場合の一例を示す概略断面図である。図7に例示するように本態様のパターン位相差フィルム10、すなわち、パターン位相差板20には、上記透明フィルム基材1の上記配向層2が形成された面とは反対面上にアンチグレア層または反射防止層14が形成されていてもよい。
【0078】
上記アンチグレア層は、太陽や蛍光灯などからの外光が、表示装置の表示画面に入射して反射することから生じる画面の映り込みを低減させる機能を有する層である。一方、上記反射防止層は、表面の正反射率を抑えることで画像のコントラストがよくなり、その結果、画像の視認性を向上させる機能を有するものである。本態様に用いられるアンチグレア層、反射防止層としては、所望のアンチグレア機能、または反射防止機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、表示画質向上を目的として表示装置に用いられるものとして一般的に公知のものを用いることができる。上記アンチグレア層としては、例えば、微粒子を分散させた樹脂層を挙げることができ、上記反射防止層としては、例えば、屈折率の異なる複数の層が積層された構成を有するものを挙げることができる。尚、アンチグレア層の最表面に反射防止層を設ければ、明室における画像の視認性を更に向上することができる。
【0079】
(ii)パターン位相差フィルム
本態様のパターン位相差フィルムは、上述した第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターンに対応するように、位相差層に第1位相差領域と第2位相差領域とがパターン状に形成された構成を有するもの、すなわち、上記第1円偏光化領域と第2円偏光化領域とがパターン状に形成された構成を有するものとなる。ここで、上記第1位相差領域および第2位相差領域が有する位相差性の程度については、所望の3次元映像を表示できるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、第1位相差領域および第2位相差領域が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、本発明の用途に応じて適宜調整すればよい。なかでも、本態様においては、位相差層の面内レターデーション値がλ/4分に相当する程度であることが好ましい。より具体的には上記位相差層の面内レターデーション値は、100nm〜160nmの範囲内であることが好ましく、110nm〜150nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜140nmの範囲内であることがさらに好ましい。なお、本態様における位相差層において第1位相差領域および第2位相差領域が示す面内レターデーション値は、遅相軸の方向が異なる以外はほぼ同一となる。
【0080】
ここで、面内レターデーション値とは、屈折率異方体の面内方向における複屈折性の程度を示す指標であり、面内方向において屈折率が最も大きい遅相軸方向の屈折率をNx、遅相軸方向に直交する進相軸方向の屈折率をNy、屈折率異方体の面内方向に垂直な方向の厚みをdとした場合に、
Re[nm]=(Nx−Ny)×d[nm]
で表わされる値である。面内レターデーション値(Re値)は、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができるし、微小領域の面内レタデーション値はAXOMETRICS社(米国)製のAxoScanでミューラーマトリクスを使って測定することも出来る。また、本願明細書においては特に別段の記載をしない限り、Re値は波長589nmにおける値を意味するものとする。
【0081】
また、本態様における位相差層において第1位相差領域および第2位相差領域が形成されるパターン、すなわち、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンは、上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定することができる。なお、第1位相差領域および第2位相差領域が形成されるパターンは配向層において第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターンに一致するものになるため、第1配向領域および第2配向領域を形成するパターンを選択することによって、同時に第1位相差領域および第2位相差領域が形成されるパターンを決定することになる。
【0082】
なお、本態様のパターン位相差フィルムにおいて位相差層に第1位相差領域および第2位相差領域からなるパターンが形成されていることは、例えば、偏光板クロスニコルの中にサンプルを入れて、サンプルを回転させた場合に明線と暗線が反転することを確認することにより評価することができる。このとき、第1位相差領域および第2位相差領域からなるパターンが細かい場合は偏光顕微鏡で観察するとよい。また、上述したAxoScanで各パターン内の遅相軸の方向(角度)を測定しても良い。
【0083】
(iii)配向部および位相差部
本態様のパターン位相差板、すなわち、本態様のパターン位相差フィルムは、上述のように透明フィルム基材、配向層および位相差層を含むものであるが、上記配向層が、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるもの、すなわち、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むものであることが好ましい。
発光型表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した、すなわち、各色の波長に対応した適切な位相差性を発揮するものとすることができるからである。具体的には、上記各配向部に形成され、波長の長い色に対応する位相差部が波長の短い色に対応する位相差部よりも面内レターデーション値が高い逆分散型とすることができ、各色により適した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、より表示品質に優れた3D表示装置とすることができるからである。
また、厚みの異なる位相差層が、発光型表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向層上に形成されていることにより、発光型表示装置の種類に限定されず適応可能なものとすることができるからである。また、金型等を用いることにより容易に厚みの異なる配向層を形成することができることから、このような配向層上に上記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布し、上記配向層の配向規制力に沿って配向させて位相差層を形成することで容易に製造できかつ大量生産が可能なものとすることができるからである。
【0084】
ここで、このような配向部および位相差部を含む本態様のパターン位相差フィルムを図を参照して説明する。図8は、図9のA−A線断面図であり、図9は、本態様のパターン位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。図8および図9に例示するように、本態様のパターン位相差フィルム10(20)は、配向層2が、屈折率異方性を有する棒状化合物を一定の方向に配列させる第1配向領域2Aおよび第1配向領域2Aとは異なる方向に配列させる第2配向領域2Bを含むものである。
また、第1配向領域2Aに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)には、一定方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成され、第2配向領域2B(2b´−1、2b´−2、2b´−3)には、第1配向領域2Aとは異なる方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成されている。また、位相差層3は、上記第1配向領域2Aおよび第2配向領域2Bの棒状化合物の配列方向に配列された棒状化合物を含む第1位相差領域3Aおよび第2位相差領域3Bを有し、さらに、第1位相差領域3Aが、第1配向領域2Aに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a´−1、3a´−2、3a´−3)を含み、第2位相差領域3Bが、第2配向領域2Bに含まれる配向部(2b´−1、2b´−2、2b´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3b´−1、3b´−2、3b´−3)を含むものである。
なお、この例においては、第1位相差領域および第2位相差領域がそれぞれ本態様のパターン位相差フィルムの長尺方向に対して45°および135°の方向に棒状化合物が配列され、両領域の遅相軸が直交するものである。また、両位相差領域に含まれる位相差部の面内レターデーション値は対応する各色のλ/4分に相当するような範囲である。
また、図9中の矢印は、各配向領域での棒状化合物を配列させる方向である。
【0085】
また、図10は、本態様のパターン位相差フィルムを用いた発光型表示装置の一例を示す説明図である。図10に例示するように、発光型表示装置が、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の画素を有する発光型ディスプレイ40と、上記発光型ディスプレイ40上に配置された偏光板30と、上記偏光板30上に配置されたパターン位相差フィルム10(20)と、を有するものであり、上記パターン位相差フィルム10(20)に含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3、2b´−1、2b´−2、2b´−3)、および上記配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3、2b´−1、2b´−2、2b´−3)に対応して厚みが異なる位相差部(3a´−1、3a´−2、3a´−3、3b´−1、3b´−2、3b´−3)が、上記発光型ディスプレイ40の3色の画素(R,G,B)に対応するものである。
なお、図10中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0086】
a.配向部
本態様における配向部は、上記配向層に含まれるものであり、表面に微細凹凸形状を有し、かつ、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるものである。
【0087】
本態様における配向部の厚みは、発光型表示装置の各色のパターンに対応して異なるものである。
ここで、本態様のパターン位相差フィルムは、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと上記画素部が形成されているパターンとが対応関係にあるものであるが、ここでいう、「画素部が形成されているパターン」とは、右目用映像または左目用映像を表示するパターンを意味するものである。一方、上記配向部が対応する発光型表示装置の各色のパターンとは、特定の色を表示する画素の配置をいうものであり、本発明の発光型表示装置の各色のパターンに対応する配向部とは、平面視上、特定の色のパターンとパターンが重なるものである。すなわち、上記配向層は、右目用映像および左目用映像のそれぞれに対応する第1配向領域および第2配向領域を有し、さらに、両領域内に発光型表示装置の各色に対応して厚みが異なる配向部を有するものである。
また、本態様における配向部の厚みは発光型表示装置の各色のパターンに対応して異なるものであるところ、隣接する配向部が、異なる色のパターンに対応するものである場合には、隣接する配向部は厚みが異なることになる。
具体的には、赤、緑、青を表示する発光型表示装置に用いる場合には、赤を表示するパターンに対応する配向部、緑を表示するパターンに対応する配向部、および青を表示するパターンに対応する配向部の厚みは互いに異なるものとなる。
【0088】
このような厚みについては、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、波長の長い色に対応する配向部が波長の短い色に対応する配向部よりも、厚みが薄いことが好ましい。このような厚みとすることにより、上記各配向部上に形成され、波長の長い色に対応する位相差部を、波長の短い色に対応する位相差部よりも面内レターデーション値が高い、逆分散型とすることが容易であり、各色により適した位相差性を発揮するものとすることができるからである。
具体的には、既に説明した図10に例示するように、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の色を表示する発光型表示装置に用いられる場合には、赤、緑、青に対応する配向部の厚みは、この順で厚くなることが好ましく、対応する位相差部の厚みは、この順で薄くなることが好ましい。
【0089】
本態様における配向部の隣接する配向部との厚みの差としては、本発明の発光型表示装置の用途等に応じて適宜設定されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、位相差層の面内レターデーション値(Re)をλ/4とする場合には、隣接して表示される色の波長をλ1およびλ2(λ1>λ2)、上記配向層(各配向部)上に形成される位相差層(各位相差部)の面内方向の屈折率異方性をΔnとすると、厚みの差としては、(λ1−λ2)×(1/4)×(1/Δn)で示される値程度とすることが好ましい。
また、例えば、位相差層(各位相差部)の面内レターデーション値(Re)をλ/2とする場合には、厚みの差を(λ1−λ2)×(1/2)×(1/Δn)で示される値程度とすることが好ましい。
より具体的には、本態様において面内レターデーション値(Re)をλ/4またはλ/2とする場合には、厚みの差は、(λ1−λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±200nm(λ/4の場合)または400nm(λ/2の場合)程度であることが好ましく、なかでも、(λ1−λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±100nm(λ/4の場合)または200nm(λ/2の場合)程度であることが好ましく、特に、(λ1−λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±50nm(λ/4の場合)または100nm(λ/2の場合)程度であることが好ましい。より視認性に優れたものとすることができるからである。
【0090】
なお、上記屈折率異方性Δnは、上述の屈折率異方体の面内方向において屈折率が最も大きい遅相軸方向の屈折率Nxおよび遅相軸方向に直交する進相軸方向の屈折率Nyにより、Nx−Nyで表される値であり、通常は0.05〜0.3の範囲内、より一般的には0.1〜0.15の範囲内であることが多い。
【0091】
本態様における隣接する配向部間の具体的な厚みの差としては、上述の位相差層に用いられる棒状化合物の種類および位相差層に求められる面内レターデーション値により適宜決定されることになる。
もっとも、当該距離は本態様において一般的に用いられる棒状化合物であれば、隣接する色が赤(610〜750nm)、緑(500〜560nm)、青(435〜480nm)であり、位相差層の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4とする場合には、通常、赤に対応する配向部と、緑に対応する配向部との間で、0.01μm〜0.03μmの範囲内となり、緑に対応する配向部と青に対応する配向部との間で、0.01μm〜0.03μmの範囲内となる。
【0092】
なお、上記配向部の隣接する配向部の厚みの差は、それぞれ図11中のDaで示す距離を意味するものとする。また、図中では、Daは、最も厚みの厚い配向部と2番目に厚みの厚い配向部との厚みの差を示すものである。
また、図11に示すように配向部の厚みおよび隣接する配向部の厚みの差は、表面の微細凹凸形状を含む厚みをいうものとする。
【0093】
本態様における配向部のパターン、すなわち、平面視上のパターンとしては、発光型表示装置の各色のパターンに対応するものであれば特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば帯状パターン、モザイク状パターン、および千鳥配置状パターン等を挙げることができる。なかでも本態様においては上記各配向部のパターンが互いに平行な帯状であること、すなわち、各色のパターンが、互いに平行な帯状であることが好ましい。発光型表示装置において形成されている各色のパターンと対応関係にすることが容易になるからである。また、各配向部をパターン精度良く形成することが容易だからである。
【0094】
既に説明した図8および図9は、上記配向部が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の一例を示す概略図である。図8および図9に示すように、本態様に用いられる配向層2においては上記配向部が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。
【0095】
上記配向部が帯状のパターンに形成されている場合、各配向部の幅としては、上記各色のパターンに対応するものであれば特に限定されるものではなく、各配向部の幅は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
しかしながら、本態様においては各配向部の幅は同一であることが好ましい。上記各色のパターンと対応関係にすることが容易になり、その結果、容易に製造可能なものとすることができるようになるからである。
【0096】
上記配向部の具体的な幅としては、上記各色のパターンと対応関係にあるものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、上記発光型表示装置において各色の画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように上記配向部の幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、50μm〜500μmの範囲内であることがより好ましい。
【0097】
さらに、本態様において上記配向部が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、本態様のパターン位相差フィルムが長尺状である場合、上記帯状のパターンは帯状の長手方向がパターン位相差フィルムの長尺方向と平行方向であっても良く、あるいは直交方向であってもよく、さらには斜めに交差する方向であってもよい。なかでも本態様においては、上記帯状のパターンは帯状の長手方向がパターン位相差フィルムの長尺方向と平行方向であることが好ましい。このような方向に帯状のパターンが形成されていることにより、容易かつ大量に形成することが可能となるからである。
【0098】
本態様に用いられる配向部は、各配向部が別体となるように形成されたものであっても良いが、全ての配向部が一体で形成されたものであることが好ましい。
【0099】
b.位相差部
本態様における位相差部は、上記位相差層を構成するものであり、上記配向部に対応して厚みが異なるものである。
本態様に用いられる位相差部は、後述する棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差部の厚みに依存して決定されるものである。
したがって、本態様に用いられる位相差部の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本態様のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定されるものである。
【0100】
本態様における位相差部の厚みとしては、各色の波長に対応して所望の位相差性を発現することができるものであれば特に限定されるものではなく、本態様のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜設定されるものである。具体的には、位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内や、λ/2分に相当するような範囲内、さらには、λ/4+λ/2分に相当するような範囲内等とすることができる。
【0101】
本態様において、位相差部の厚みを面内レターデーションが対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内の距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、上記棒状化合物の種類および対応する色により適宜決定されることになる。
【0102】
本態様における位相差部の配向部と接触する面と反対側の面の上記透明フィルム基材からの距離としては、隣接する位相差部同士で同様であることが好ましい。本態様のパターン位相差フィルムの表面形状を平坦なものとすることができ、他の部材との貼り合わせ性に優れたものとすることができるからである。また、本態様においては、配向層が厚みの異なる配向部を有することにより、厚みの異なる位相差部間の厚みの差を吸収させることができるからである。
【0103】
(e)パターン位相差フィルムの製造方法
本態様のパターン位相差フィルムを製造する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に、第1配向領域および第2配向領域を有する配向層を形成した後、当該配向層上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を塗工し、必要に応じて硬化処理を行って位相差層を形成することによって製造することができる。
【0104】
上記透明フィルム基材上に配向層を形成する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に上述した構成材料を含有する配向層形成用塗工液を塗布し、乾燥することによって配向層形成用塗工液からなる膜を形成し、必要に応じて硬化処理を行った後、当該膜の表面に微細凹凸形状を形成して第1配向領域および第2配向領域を形成する方法や、透明フィルム基材上に予め別個に形成した配向層を転写する方法等を挙げることができる。配向層を形成する具体的な方法としては、例えば、ストライプ状のライン状凹凸や微細なライン状凹凸を金型に切削し、その上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、更にその上に透明フィルム基材を密着させ、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次に、金型から剥離する等の方法を挙げることができる。
【0105】
上記位相差層形成用塗工液は、通常、棒状化合物と、溶媒とからなり、必要に応じて重合開始剤等を含むものであってもよい。上記位相差層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記棒状化合物を所望の濃度に溶解できるものであり、かつ、透明フィルム基材を侵蝕しないものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、シクロヘキサン等のアノン系溶媒、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶媒を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、本態様に用いられる溶媒は、1種類でもよく、2種類以上の溶媒の混合溶媒でもよい。
【0106】
上記位相差層形成用塗工液中における上記棒状化合物の含有量は、上記位相差層形成用塗工液を透明フィルム基材上に塗布する塗工方式等に応じて、上記位相差層形成用塗工液の粘度を所望の値にできる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本態様においては、上記棒状化合物の含有量が、上記位相差層形成用塗工液中、5質量%〜30質量%の範囲内が好ましく、特に10質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0107】
上記位相差層形成用塗工液中には、必要に応じて光重合開始剤を含んでも良い。特に紫外線照射により位相差層を硬化させる処理を実施する場合には、光重合開始剤を含むことが好ましい。本態様に用いられる光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系化合物等の一般的に公知のものを用いることができる。また、光重合開始剤を使用する場合には、光重合開始助剤を併用することができる。このような光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン類や、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体を例示することができるが、これらに限られるものではない。
【0108】
上記位相差層形成用塗工液を上記透明フィルム基材上に塗工する塗布方式としては、所望の平面性を達成できる方法であれば、特に限定されるものではない。具体的には、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などを例示することができるが、これに限られるものではない。上記位相差層形成用塗工液の塗膜の乾燥方法は、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、上記棒状化合物として重合性材料を用いる場合、上記重合性材料を重合する方法は、特に限定されるものではなく、上記重合性材料が有する重合性官能基の種類に応じて適宜決定すればよい。
【0109】
(2)第2態様
次に、本態様に用いられるパターン位相差板の第2態様について説明する。本態様のパターン位相差板は、上記透明フィルム基材上に形成され、表面に厚みが大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域がパターン状に形成された配向層と、上記配向層の上記表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層とを有するパターン位相差フィルムであって、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されており、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記厚膜領域上に形成された位相差層または上記薄膜領域上に形成された位相差層であることを特徴とするものである。
【0110】
このような本態様に用いられるパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムとしては、具体的には、既に説明した図3に示すものを挙げることができる。
【0111】
本態様においては、上記配向層が上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されたものであり、かつ上記厚膜領域の表面に形成された微細凹凸形状と、上記薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状とが同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるようなものであることにより、上記厚膜領域上に形成された位相差層と上記薄膜領域上に形成された位相差層とは、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差に相当する分だけ異なった位相差値(面内レターデーション)を示すことになる。このため、本態様においては位相差層において位相差値の大きい高位相差領域と、上記高位相差領域よりも位相差値が小さい低位相差領域とが、上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されたパターンと同一のパターンで形成されることになる。したがって、本態様によれば位相差層において高位相差領域と低位相差領域とがパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを有するものとすることができる。したがって、このような高位相差領域および低位相差領域を上記第1円偏光化領域及び第2円偏光化領域として用いることにより、容易に3次元映像を得ることができる。
【0112】
本態様のパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムは、少なくとも透明フィルム基材、配向層および位相差層を有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。
以下、このようなパターン位相差フィルムの各構成について詳細に説明する。
なお、上記透明フィルム基材については、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0113】
(a)配向層
まず、本態様に用いられる配向層について説明する。本態様に用いられる配向層は上記透明フィルム基材上に形成されるものであり、位相差層に含まれる棒状化合物を配列させる機能を有するものである。そして、本態様に用いられる配向層は、表面に厚みが大きい厚膜領域と、上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域とがパターン状に形成されており、かつ上記厚膜領域および上記薄膜領域の表面に、それぞれ同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように微細凹凸形状が形成されていることを特徴とするものである。本態様においてはこのような配向層が用いられることにより、当該配向層上に形成される位相差層において棒状化合物の配列方向は位相差層全体において同一方向になるが、上記厚膜領域上に形成された位相差層(低位相差領域)と、上記薄膜領域上に形成された位相差層(高位相差領域)とは厚みが異なるため、この厚みの差に相当する分だけ高位相差領域は、低位相差領域よりも位相差値が高くなることになる。したがって、本態様においてはこのような配向層が用いられることにより、厚膜領域と薄膜領域とが形成されたパターンに対応して、位相差層において低位相差領域および高位相差領域がパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを得ることができる。
【0114】
(i)厚膜領域および薄膜領域
本態様における配向層に形成された厚膜領域と薄膜領域とは、配向層の表面において互いに厚みが異なる部位である。上述したように本態様のパターン位相差フィルムにおいては、位相差層において厚膜領域と薄膜領域との厚みの差に相当する分だけ位相差値が異なるパターンが形成されることになる。このため、本態様における厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、低位相差領域と高位相差領域との位相差値の差をどの程度にするかによって適宜決定されるものである。したがって、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、本発明の用途、および後述する位相差層に用いられる棒状化合物の種類等に応じて適宜決定されるものであり特に限定されるものではない。中でも本態様においては上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差が、位相差層の高位相差領域の面内レターデーション値と、位相差層の低位相差領域の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当する距離であることが好ましい。これにより、例えば、配向層上に位相差層を形成する際に、低位相差領域の面内レターデーションがλ/4分に相当するようにすることにより、得られるパターン位相差フィルムは、低位相差領域の面内レターデーション値がλ/4分に相当し、かつ高位相差領域の面内レターデーション値がλ/4+λ/2分に相当することになるが、このような態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記低位相差領域、上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、精度良く3次元映像を表示できるからである。
【0115】
本態様において、上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差を、高位相差領域の面内レターデーション値と、低位相差領域の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当するようになる距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、後述する位相差層に用いられる棒状化合物の種類により適宜決定されることになる。もっとも、当該距離は本態様において一般的に用いられる棒状化合物であれば、通常、1.5μm〜3.0μmの範囲内となる。
【0116】
上記厚膜領域および上記薄膜領域の厚みとしては、厚膜領域と薄膜領域の差を所定の範囲にすることができる範囲内であれば、厚膜領域の厚みと薄膜領域の厚みは特に限定されるものではない。例えば、厚膜領域の厚みが3.0μmで薄膜領域の厚みが1.0μmの場合、その差は2.0μmとなるが、厚膜領域の厚みが13.0μmで薄膜領域の厚みが11.0μmで、その差が2.0μmとなる様にしてもよい。中でも本態様においては、上記厚膜領域の厚みは1.6μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、2.5μm〜10μmの範囲内であることがより好ましく、1.5μm〜5μmの範囲内であることがさらに好ましい。また、上記薄膜領域の厚みは0.1μm〜17μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜7μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜4μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0117】
なお、上記厚膜領域の厚み、上記薄膜領域の厚み、および上記厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、それぞれ図12中のD1,D2、およびD3で示す距離を意味するものとする。
また、図12に示すように上記厚膜領域および上記薄膜領域の厚みは、表面に形成された微細凹凸形状を含む厚みをいうものとする。
【0118】
上記厚膜領域および上記薄膜領域は配向層の表面にパターン状に形成されたものである。ここで、上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されるパターンは、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば、本発明の用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば帯状パターン、モザイク状パターン、および千鳥配置状パターン等を挙げることができる。中でも本態様においては上記厚膜領域および上記薄膜領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていること、すなわち、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。上記厚膜領域および上記薄膜領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることにより、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域を容易に互いに平行な帯状のパターンとすることができ、上述のとおり、上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、を偏光板を介して対応関係にすることが容易になるからである。
【0119】
図13は、上記厚膜領域および上記薄膜領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の一例を示す説明図である。ここで、図13(b)は、図13(a)におけるX−X’線矢視断面図である。図13(a)、(b)に示すように、本態様に用いられる配向層2においては上記厚膜領域2Cおよび上記薄膜領域2Dが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。ここで、図13(a)、(b)におけるW1、W2はそれぞれ厚膜領域の帯幅および薄膜領域の帯幅を示す。
【0120】
上記厚膜領域および薄膜領域が帯状のパターンに形成されている場合、厚膜領域および薄膜領域の幅としては、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば特に限定されるものではなく、上記「(1)第1態様」における第1配向領域および第2配向領域と同様とすることができる。
【0121】
また、本態様において上記厚膜領域および上記薄膜領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、上記厚膜領域および上記薄膜領域の間に、光を吸収するブラックラインを設けてもよい。この場合、ブラックラインの幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0122】
また、本態様において上記厚膜領域および上記薄膜領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0123】
(ii)微細凹凸形状
次に、上記厚膜領域および上記薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状について説明する。本態様のパターン位相差フィルムは、上記配向層上に後述する位相差層が積層された構成を有するものであるところ、上記厚膜領域および薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状は、上記位相差層中に含まれる棒状化合物を一定方向に配列させるために形成されるものである。
【0124】
本態様における微細凹凸形状は、棒状化合物を一定方向に配列させることができるものであれば特に限定されるものではない。ここで、棒状化合物はライン状凹凸構造が形成された表面においては、当該ライン状凹凸構造の長手方向に平行に配列性質を有するため、本態様における微細凹凸形状は、ライン状凹凸構造からなるものであることが好ましい。このようなライン状凹凸構造によれば上記棒状化合物を配列される方向を予め決定することができるからである。
【0125】
上記厚膜領域および薄膜領域の表面にライン状凹凸構造が形成される態様としては、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様であってもよく、あるいはライン状凹凸構造がストライプ状に形成された態様であってもよい。これらの態様について図を参照しながら説明する。図14は上記微細凹凸形状が形成された態様の一例を示す概略図である。図14に例示するように、上記微細凹凸形状としてライン状凹凸構造が形成される態様としては、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様であってもよく(図14(a)、あるいはライン状凹凸構造がストライプ状に形成された態様であってもよい(図14(b))。またさらに、両者が組み合わされた態様であってもよい(図14(c))。
【0126】
ここで、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様とは、例えば、表面にラビング処理がなされた場合等に形成されるような微小な傷のようなライン状凹凸構造が、略一定方向に形成された態様を意味するものである。一方、ライン状凹凸構造がストライプ状に形成された態様とは、壁状に形成された凸部が一定の間隔でストライプ状に形成された態様を意味するものである。ライン状凹凸構造の大きさは上述のランダムの態様よりも比較的大きく、例えば表面にラビング処理がなされた場合に形成されるような微小な傷のような凹凸形状はこれに含まれないものである。
【0127】
本態様においては上記厚膜領域の表面に形成される微細凹凸形状と、上記薄膜領域の表面に形成される微細凹凸形状とが同一態様であってもよく、あるいは異なる態様であってもよい。中でも本態様においては少なくとも厚膜領域または薄膜領域の一方の表面に形成された微細凹凸形状が上記ストライプ状のライン状凹凸形状であることが好ましい(図14(c)参照)。微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様と、ストライプ状のライン状凹凸構造に形成された態様とでは、後者の方が棒状化合物に対する配向規制力を強く発現することができるため、少なくとも厚膜領域または薄膜領域の一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸形状であることにより、位相差層における高位相差領域と低位相差領域との境界を明確にすることができるからである。また、このような観点から、本態様においては厚膜領域または薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状が共に上記ストライプ状のライン状凹凸形状であることが好ましい(図14(b)参照)。
【0128】
ストライプ状のライン状凹凸構造が形成される場合、ライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期は棒状化合物を配列させることができる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上記「(1)第1態様」に記載の内容と同様とすることができる。
【0129】
(iii)構成材料
本態様における配向層を形成するために用いられる構成材料としては、上述した厚膜領域および薄膜領域とを所定の形状で形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0130】
(b)位相差層
次に、本態様における位相差層について説明する。本態様における位相差層は、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域を含む円偏光化層であり、上述した配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより本態様のパターン位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本態様においては上述したような特徴を有する配向層が形成されていることにより、本態様における位相差層は高位相差領域と低位相差領域とが、すなわち、上記第1円偏光化領域と第2円偏光化領域とが、上記薄膜領域および上記厚膜領域が形成されたパターンと同一のパターン状に形成されたものになる。
なお、上記屈折率異方性を有する棒状化合物としては、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0131】
本態様に用いられる位相差層は、上記棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差層の厚みに依存して決定されるものである。したがって、本態様に用いられる位相差層の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定されるものである。また、本態様における位相差層は、低位相差領域と、高位相差領域とでは厚みが異なることになる。中でも本態様においては、低位相差領域の厚みは低位相差領域の面内レターデーションがλ/4分に相当するような範囲内であることが好ましい。これにより、上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差を低位相差領域の面内レターデーション値と、高位相差領域の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当する距離とすることにより、低位相差領域の面内レターデーション値がλ/4分に相当し、かつ位相差層における高位相差領域の面内レターデーション値がλ/4+λ/2分に相当することになるが、このような態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記低位相差領域、上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、より精度良く3次元映像を表示できるからである。
【0132】
本態様において、上記低位相差領域の厚みを当該低位相差領域の面内レターデーションがλ/4分に相当するような範囲内の距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、位相差層に用いられる棒状化合物の種類により適宜決定されることになる。もっとも、当該距離は本態様において一般的に用いられる棒状化合物であれば、通常、0.1μm〜1.9μmの範囲内であることが好ましく、0.25μm〜1.75μmの範囲内であることがより好ましく、0.5μm〜1.5μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0133】
(c)パターン位相差フィルム
(i)他の構成
本態様のパターン位相差フィルムは少なくとも上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる他の構成としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成されるアンチグレア層または反射防止層を挙げることができる。このようなアンチグレア層または反射防止層としては、具体的には、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0134】
(ii)パターン位相差フィルム
本態様のパターン位相差フィルムは、上述した厚膜領域および薄膜領域が形成されたパターンに対応するように、位相差層に高位相差領域と低位相差領域とがパターン状に形成された構成を有するものとなる。ここで、上記高位相差領域および低位相差領域が有する位相差性の程度については、所望の3次元映像を表示できるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、高位相差領域および低位相差領域が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、本発明の用途に応じて適宜調整すればよい。そして、本態様においては厚膜領域と薄膜領域との厚みの差を調整することにより、高位相差領域および低位相差領域に任意の値の面内レターデーションを付与することができる。なかでも、本態様のパターン位相差フィルムを上記高位相差領域の面内レターデーション値がλ/4+λ/2分に相当する程度であり、かつ上記低位相差領域の面内レターデーション値がλ/4分に相当する程度であることが好ましい。より具体的には上記高位相差領域の面内レターデーション値は、300nm〜480nmの範囲内であることが好ましく、330nm〜450nmの範囲内であることがより好ましく、360nm〜420nmの範囲内であることがさらに好ましい。また低位相差領域の面内レターデーション値は100nm〜160nmの範囲内であることが好ましく、110nm〜150nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜140nmの範囲内であることがさらに好ましい。なお、本態様における位相差層において、高位相差領域の面内レターデーション値と低位相差領域の面内レターデーション値とは異なるが、遅相軸の方向はほぼ同一の方向となる。
【0135】
また、本態様における位相差層において高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンについても特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定することができる。なお、高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンは配向層において厚膜領域および薄膜領域が形成されたパターンに一致するものになるため、厚膜領域および薄膜領域を形成するパターンを選択することによって、同時に高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンを決定することになる。
【0136】
なお、本態様のパターン位相差フィルムにおいて位相差層に高位相差領域および低位相差領域からなるパターンが形成されていることは、例えば、面内レターデーション値を測定し比較することにより評価することができる。
【0137】
(iii)配向部および位相差部
本態様のパターン位相差板、すなわち、本態様のパターン位相差フィルムは、上述のように透明フィルム基材、配向層および位相差層を含むものであるが、上記配向層が、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるもの、すなわち、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むものであることが好ましい。表示品質に優れた3D表示装置とすることができるからである。また、容易に製造できかつ大量生産が可能なものとすることができるからである。
【0138】
このような本態様のパターン位相差フィルムを図を参照して説明する。図15は、図16のB−B線断面図であり、図16は、本態様のパターン位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。図15および図16に例示するように、本態様のパターン位相差フィルム20(10)は、厚みの大きい厚膜領域2Cおよび上記厚膜領域2Cよりも厚みが小さい薄膜領域2Dを含み、上記厚膜領域2Cおよび上記薄膜領域2Dに含まれる配向部が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されている。
また、薄膜領域2Dに含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)には、一定方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成され、厚膜領域2C(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)には、薄膜領域2Dと同一方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成されている。また、薄膜領域2Dに含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)と、厚膜領域2Cに含まれる配向部(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)とは、それぞれ、表示装置の同じ色に対応するものである。すなわち、配向部2a´´−1および配向部2b´´−1、配向部2a´´−2および配向部2b´´−2、配向部2a´´−3および配向部2b´´−3は、それぞれ、表示装置の同じ色のパターンに対応するものである。
また、位相差層3は、高位相差領域3Dが、薄膜領域2Dに含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a´´−1、3a´´−2、3a´´−3)を含み、低位相差領域3Cが、厚膜領域2Cに含まれる配向部(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3b´´−1、3b´´−2、3b´´−3)を含むものである。
なお、この例においては、高位相差領域3Dおよび低位相差領域3Cは、それぞれ長尺方向に対して0°の方向に棒状化合物が配列され、両領域の遅相軸が平行なものである。また、厚膜領域および薄膜領域に含まれる同一の色に対応する配向部の厚みの差が、上記対応する位相差部の面内レターデーション値の差を対応する各色のλ/4分に相当する距離であり、低位相差領域に含まれる各位相差部の面内レターデーション値が、各色のλ/4分に相当するものであり、高位相差領域に含まれる各位相差部の面内レターデーション値が、各色のλ/4+λ/2分に相当するものである。
また、図16中の矢印は、棒状化合物の配列方向を示すものである。
【0139】
なお、上記配向部および位相差部については、上記「1.第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0140】
(d)パターン位相差フィルムの製造方法
本態様のパターン位相差フィルムを製造する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に、厚膜領域および薄膜領域を有する配向層を形成した後、当該配向層上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を塗工し、必要に応じて硬化処理を行って位相差層を形成することによって製造することができる。
なお、上記配向層を形成する方法、位相差層形成用塗工液および上記透明フィルム基材上に塗工する塗布方式としては、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0141】
(3)第3態様
次に、本態様に用いられるパターン位相差板の第3態様について説明する。本態様のパターン位相差板は、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムおよび上記パターン位相差フィルム上に配置され、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層を有するものであり、上記位相差層が、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域が、パターン状に配置されたものであり、上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とが直交または平行関係にあり、上記第1円偏光化領域が、上記第1位相差領域および上記第1位相差領域上の第2位相差層を含むことを特徴とするものである。
また、上記第2円偏光化領域が、上記第1位相差領域以外の領域上の第2位相差層を少なくとも含むものである。
なお、本態様のパターン位相差板は、上記偏光板、位相差層および第2位相差層がこの順となるように配置されるものである。
【0142】
このような本態様に用いられるパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムおよび第2位相差層を有するものとしては、具体的には、既に説明した図4に示すものを挙げることができる。
【0143】
本態様においては、上記第1円偏光化領域が、上記位相差層中の第1位相差領域および上記第1位相差領域上の第2位相差層を含むものであることにより、容易に3次元映像を得ることができる。
【0144】
ここで、本態様のパターン位相差板が、パターン位相差フィルムと、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層(以下、「λ/4板」と称する場合がある。)とを組み合わせたものであることにより、容易に3D表示装置を製造することができる点について、より詳細に説明する。図17は、本態様に用いられるパターン位相差フィルムと、λ/4板とを組み合わせたパターン位相差板を用いた、3次元表示可能な発光型表示装置の一例を示す概略図である。図17に例示するように、本態様のパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムと、λ/4板とを組み合わせて用いる発光型表示装置は、パッシブ方式により3D表示が可能なものとなる。その原理は次の通りである。
まず、発光型ディスプレイの画素部を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。次に、本態様に用いられるパターン位相差フィルムとして、位相差層の第1位相差領域が左目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成され、かつ第1位相差領域以外の領域(図17では、当該領域には何も形成されていないものとする。)が右目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成されたものを用意する。そして、このような本態様に用いられるパターン位相差フィルムを、偏光板の表示面側に配置し、さらにλ/4板をパターン位相差フィルムの表示面側に配置する。このとき、第1位相差領域の遅相軸の方向と、偏光板の偏光軸の方向とが45°で交差するようにし、さらに第1位相差領域の遅相軸方向とλ/4板の遅相軸方向とが平行または直交の関係になるようにする。このようにパターン位相差フィルムとλ/4板とを配置することによって、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された映像(以下、それぞれ「右目用映像」、「左目用映像」と称する場合がある。)は、次のような経路で観察者に視認されることになる。
すなわち、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された各映像は、まず、偏光板を透過することから、それぞれが直線偏光に変換されることになる。ここで、図17においては、偏光板の偏光軸は0°方向となっているため、第2偏光板を透過した各映像も、0°方向の直線偏光となる。次に、このように直線偏光に(0°)変換された各映像は、本態様に用いられるパターン位相差フィルムに入射することになるが、左目用映像は第1位相差領域を通過し、右目用映像は位相差層が形成されていない領域を通過するため、左目用映像は偏光軸が90°の直線偏光(L1)として、パターン位相差フィルムを透過するが、右目用映像には変化はなく、偏光軸が0°の直線偏光(L2)のままパターン位相差フィルムを透過することになる。次に、L1およびL2がλ/4板に入射することにより、左目用映像は右旋回の円偏光(C1)に、右目用映像は左旋回の円偏光(C2)に、それぞれ変換されることになる。
このように、本態様に用いられるパターン位相差フィルムおよびλ/4板を通過した右目用映像および左目用映像は、互いに直交する円偏光に変換されることになるため、視聴者に右目用レンズと左目用レンズとに互いに直交する円偏光レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用のレンズのみを通過するようにすることによって、右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることができ、3次元表示が可能となるのである。
なお、図17においては、本態様に用いられるパターン位相差フィルムにおける位相差層において、第1位相差領域以外の領域には何も形成されていない例を説明したが、例えば、上記第1位相差領域以外の領域に、面内レターデーション値がλ/2分に相当し、かつ遅相軸方向が上記第1位相差領域の遅相軸方向と45°で交差する関係にあり、さらに遅相軸方向が、偏光板の偏光軸方向と平行又は直交の関係にある第2位相差領域が形成されている場合であっても、上記と同様に3次元表示可能な発光型表示装置を得ることができる。
【0145】
本態様のパターン位相差板は、少なくともパターン位相差フィルムおよび第2位相差層を有するものである。
以下、このようなパターン位相差板の各構成について詳細に説明する。
【0146】
(a)パターン位相差フィルム
本態様に用いられるパターン位相差フィルムは、少なくとも透明フィルム基材と、配向層と、位相差層とを有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。以下、本態様に用いられるパターン位相差フィルムに用いられる各構成について順に説明する。
なお、上記透明フィルム基材については、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0147】
(i)位相差層
まず、本態様に用いられる位相差層について説明する。本態様に用いられる位相差層は、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有し、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域がパターン状に配置されたものである。
【0148】
ここで、「第1位相差領域がパターン状に配置された」とは、位相差層が第1位相差領域のみからなる態様であってもよく、あるいは位相差層の一部に第1位相差領域がパターン状に配置されている態様であってもよいことを意味するものである。このような位相差層の各態様については後述する。
【0149】
上記第1位相差領域に含有される棒状化合物について説明する。本態様に用いられる棒状化合物は屈折率異方性を有するものである。ここで、上記第1位相差領域は面内レターデーションがλ/2分に相当する程度の位相差性を示すものであるため、通常、上記棒状化合物は第1位相差領域内において一方向に配列して存在することになる。
【0150】
このような棒状化合物としては、第1位相差領域に面内レターデーション値がλ/2分に相当する程度の位相差性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、上記「(1)第1態様」の項に記載されたものと同様とすることができる。
【0151】
本態様に用いられる位相差層は、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域を有するものであるが、第1位相差領域の面内レターデーションの具体的な値は、通常、200nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、220nm〜280nmの範囲内であることがより好ましく、230nm〜270nmの範囲内であることが特に好ましい。
【0152】
本態様に用いられる位相差層に第1位相差領域が配置されている態様としては、位相差層が第1位相差領域のみからなる態様(A態様)であってもよく、または位相差層内の一部に第1位相差領域が配置されている態様(B態様)であってもよい。このような位相差層の態様について図を参照しながら説明する。図18は、位相差層において第1位相差領域が配置されている態様について説明する説明図である。図18に例示するように、本態様に用いられる位相差層3は、第1位相差領域3Eのみからなる態様であってもよく(図18(a))、または位相差層3内の一部に第1位相差領域3Eが形成されている態様であってもよい(図18(b))。
【0153】
本態様に用いられる位相差層としては、上記A態様および上記B態様の何れの態様であってもよいが、上記B態様であることが好ましい。B態様の位相差層は、位相差層自体の形状をパターン状にすることを要しないため、位相差層を形成することが容易だからである。
【0154】
上記B態様の位相差層を用いる場合、位相差層には面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域と、それ以外の領域とが包含されることになる。また、第1位相差領域が位相差層内でパターン状に配置されることから、第1位相差領域以外の領域も位相差層内にパターン状に配置されることになる。ここで、本態様に用いられる位相差層が上記B態様のものである場合、上記第1位相差領域以外の領域は、位相差性を示すものであってもよく、あるいは位相差性を示さないものであってもよいが、位相差性を有するものである場合には、遅相軸の方向が、上記第1位相差領域の遅層軸の方向と、45°に交差する方向であることを要する。そうでなければ、3次元映像を表示することが困難になるからである(なお、第1位相差領域以外の領域が位相差性を有する場合、当該第1位相差領域以外の領域を「第2位相差領域」と称する。)。中でも本態様に用いられる位相差層として上記B態様のものが用いられる場合は、上記第1位相差領域と、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する第2位相差領域と、を有するものであり、上記第2位相差領域に含有される上記棒状化合物の配向方向が、上記第1位相差領域に含有される棒状化合物の配向方向に対して45°の方向であることが好ましい。さらに、上記第2位相差領域は、面内レターデーション値がλ/2分に相当することが好ましい。これにより、上記位相差層における第1位相差領域および第2位相差領域を透過する光量を同程度とすることができ、また第1位相差領域および第2位相差領域の境界を目立たなくすることができるため、表示品質に優れたものを得ることができるからである。すなわち、偏光板の偏光軸と第2位相差領域の遅層軸が平行又は直交の関係にあれば、第2位相差層が偏光状態を変換する作用効果はゼロになるので、第2位相差領域の面内レターデーション値はいくつであっても良いが、第1位相差領域と第2位相差領域を透過する光の透過率が変わると第1位相差領域と第2位相差領域の境界が見えてしまうので、第1位相差領域と第2位相差領域は同一の物質で構成され膜厚が等しいことがより好ましいからである。
【0155】
このような位相差層について図を参照しながら説明する。図19は、本態様に用いられる位相差層が、上記第1位相差領域および第2位相差領域からなる場合の一例を示す説明図である。図19に例示するように、本態様に用いられる位相差層3は、上記第1位相差領域3Eと、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する第2位相差領域3Fと、を有するものであり、上記第2位相差領域3Fに含有される上記棒状化合物の配向方向が、上記第1位相差領域3Eに含有される棒状化合物の配向方向に対して45°の方向であり、上記第1位相差領域3Eと、上記第2位相差領域3Fとがパターン状に配置されたものであることが好ましい。また、この場合、上記第2位相差領域3Fは、面内レターデーション値がλ/2分に相当することが好ましい。
【0156】
なお、本態様に用いられる位相差層が、このように第1位相差領域および第2位相差領域を有するものである場合、上記第1位相差領域および第2位相差領域は、遅相軸方向が45°で交差する関係になる。また上述した通り、上記第1位相差領域および第2位相差領域は共に面内レターデーション値がλ/2分に相当することがさらに好ましい。
【0157】
本態様に用いられる位相差層の厚みとしては、上記第1位相差領域の面内レターデーション値をλ/2分に相当する程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上記棒状化合物の種類等に応じて適宜決定することができるものであるが、通常、0.5μm〜4μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜3μmの範囲内であることがより好ましく、1.5μm〜2.5μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0158】
上記位相差層において、第1位相差領域が配置されているパターンは、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば、本発明の用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば帯状パターン、モザイク状パターン、千鳥配置状パターン等を挙げることができる。中でも本態様においては第1位相差領域が帯状のパターンに形成されていること、すなわち、上記第1位相差領域および上記第1位相差領域以外の領域が帯状のパターンに形成されており、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。このようなパターンで第1位相差領域が配置されていることにより、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域を容易に互いに平行な帯状のパターンとすることができ、上述のとおり、上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、を偏光板を介して対応関係にすることが容易になるからである。
【0159】
また、本態様に用いられる位相差層が、上記第1位相差領域および上記第2位相差領域がパターン状に配置された態様のものである場合、上記第1位相差領域および第2位相差領域は、互いに平行な帯状のパターンに配置されていることが好ましい。この場合、第1位相差領域と第2位相差領域とは交互に配置されることになるが、このようなパターンで第1位相差領域と第2位相差領域とが配置されていることにより、上記と同様の理由から、3D発光型表示装置とすることが容易になるからである。
【0160】
上記第1位相差領域が帯状のパターンに配置されている場合、第1位相差領域および上記第1位相差領域以外の領域の幅は、本発明の用途に応じて適宜決定される。具体的には、上記「(1)第1態様」の項に記載の第1配向領域および第2配向領域の幅と同様とすることができる。
さらに、本態様に用いられる位相差層が、帯状のパターンに形成された第1位相差領域および第2位相差領域が交互に配置された態様である場合、第1位相差領域と第2位相差領域との幅は同一であることが好ましい。
【0161】
(ii)配向層
次に、本態様に用いられる配向層について説明する。本態様に用いられる配向層は透明フィルム基材上に形成されるものであり、位相差層に含まれる棒状化合物を配列させる機能を有するものである。
【0162】
本態様に用いられる配向層としては、上記位相差層に含有される棒状化合物を配列させることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に棒状化合物を配列させることが可能な配向層として公知のものを用いることができる。このような配向層としては、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等からなるものを挙げることができる。
【0163】
また、本態様に用いられる配向層は上記棒状化合物を配列させる機能を有するものであるが、このような機能は、例えば、配向層の表面をラビング処理したり、あるいは配向層の表面に微細な凹凸形状を形成することよって付与することができる。
【0164】
なお、本態様に用いられる位相差層が、上記第1位相差領域および第2位相差領域からなる態様である場合、本態様に用いられる配向層は、上記第1位相差領域に対応する領域と、第2位相差領域に対応する領域とにおいて、棒状化合物を配列させることができる方向が、45°交差するように配向処理がなされることが好ましい。
【0165】
(iii)パターン位相差フィルム
本態様のパターン位相差フィルムは少なくとも上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる他の構成としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成されるアンチグレア層または反射防止層を挙げることができる。このようなアンチグレア層または反射防止層としては、具体的には、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0166】
(iv)配向部および位相差部
本態様のパターン位相差フィルムは、上述のように透明フィルム基材、配向層および位相差層を含むものであるが、上記配向層が、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるもの、すなわち、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むものであることが好ましい。表示品質に優れた3D表示装置とすることができるからである。また、容易に製造できかつ大量生産が可能なものとすることができるからである。
【0167】
ここで、このような配向部および位相差部を含む本態様のパターン位相差フィルムを図を参照して説明する。図20は、図21のC−C線断面図であり、図21は、本態様のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。図20および図21に例示するように、本態様のパターン位相差フィルム10は、配向層2が、屈折率異方性を有する棒状化合物を一定の方向に配列させる第1配向領域2Eおよび第1配向領域2Eとは異なる方向に配列させる第2配向領域2Fを含むものである。
また、第1配向領域2Eに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)には、一定方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成され、第2配向領域2F(2b´−1、2b´−2、2b´−3)には、第1配向領域2Eとは異なる方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成されている。
また、位相差層3は、上記第1配向領域2Eおよび第2配向領域2Fの棒状化合物の配列方向に配列された棒状化合物を含む第1位相差領域3Eおよび第2位相差領域3Fを有し、さらに、第1位相差領域3Eが、第1配向領域2Eに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a´−1、3a´−2、3a´−3)を含み、第2位相差領域3Fが、第2配向領域2Fに含まれる配向部(2b´−1、2b´−2、2b´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3b´−1、3b´−2、3b´−3)を含むものである。
なお、この例においては、第1位相差領域および第2位相差領域がそれぞれ本態様のパターン位相差フィルムの長尺方向に対して0°および45°の方向に棒状化合物が配列され、両領域の遅相軸が45°で交差するものである。また、第1位相差領域および第2位相差領域に含まれる各位相差部のレターデーション値が各色のλ/2分に相当するものである。また、図21中の矢印は、各配向領域での棒状化合物を配列させる方向である。
【0168】
なお、上記配向部および位相差部については、上記「1.第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0169】
(v)パターン位相差フィルムの製造方法
本態様のパターン位相差フィルムを製造する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に、配向層を形成した後、当該配向層上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を塗工し、必要に応じて硬化処理を行って位相差層を形成することによって製造することができる。
なお、上記配向層を形成する方法、位相差層形成用塗工液および上記透明フィルム基材上に塗工する塗布方式としては、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0170】
(b)第2位相差層
本態様に用いられる第2位相差層は、面内レターデーション値がλ/4分に相当する程度の位相差性を示すものである。なお、本態様に用いられる第2位相差層は、全面において遅相軸の方向が一定方向であるものであり、パターン状に形成されたものではない。
また、本態様に用いられる第2位相差層は、上記位相差層の第1位相差領域上に位置するものが上記第1位相差領域とともに上記第1円偏光化領域を構成し、上記位相差層の第1位相差領域以外の領域上に位置するものが上記第2円偏光化領域を構成するものである。
【0171】
本態様に用いられる第2位相差層は、面内レターデーション値がλ/4分に相当する程度の位相差性を示すものであれば特に限定されるものではない。このような第2位相差層としては、屈折率異方性を有する棒状化合物が規則的に配列してなるものや、屈折率異方性を有する高分子材料からなるフィルムを延伸してなるもの等を挙げることができる。
【0172】
本態様に用いられる第2位相差層が屈折率異方性を有する棒状化合物が規則的に配列してなるものである場合、上記棒状化合物としては、第2位相差層にλ/4分に相当する程度の位相差性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。このような棒状化合物については、上記位相差層に用いられるものと同様のものを用いることができる。なお、第2位相差層が屈折率異方性を有する棒状化合物が規則的に配列してなるものである場合、当該第2位相差層は、通常、上記棒状化合物を規則的に配列させることができる配向層と共に用いられることになる。
【0173】
一方、本態様に用いられる第2位相差層が、屈折率異方性を有する高分子材料からなるフィルムを延伸してなるものである場合、上記高分子材料の例としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂を挙げることができる。上記シクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。このような上記環状オレフィンからなるモノマーとしては、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等を挙げることができる。また、本態様に用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであっても好適に用いることができる。また、上記シクロオレフィン系樹脂は上記環状オレフィンからなるモノマーの単独重合体であってもよく、または、共重合体であってもよい。具体例としては、例えば、Ticona社製 Topas(登録商標)、ジェイエスアール社製 ARTON(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONEX(登録商標)、三井化学社製 アペル(登録商標)等を延伸したものを挙げることができる。
【0174】
本態様に用いられる第2位相差層は、面内レターデーション値がλ/4分に相当するものである。具体的な面内レターデーション値は特に限定されるものではないが、通常、100nm〜160nmの範囲内であることが好ましく、110nm〜150nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜140nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0175】
本態様に用いられる第2位相差層は、上記位相差層と積層されたもの、すなわち、上記パターン位相差板が、上記パターン位相差フィルムの位相差層上に上記第2位相差層が積層され、固定された積層型パターン位相差フィルムであっても良い。上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とが直行または平行関係とすることが容易だからである。上記位相差層と上記第2位相差層とが積層された態様としては、上記位相差層における上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とが、直交または平行関係となるように積層される態様であれば特に限定されるものではなく、上記位相差層と上記第2位相差層とが直に接するように積層された態様であってもよく、または、他の層を介して積層された態様であってもよい。
【0176】
ここで、積層型パターン位相差フィルムが、位相差層と第2位相差層とが他の層を介して積層された態様の具体例としては、例えば、上述したパターン位相差フィルムに、第2位相差層が積層された構成や、上記パターン位相差フィルムにおける透明基材フィルムとして上記第2位相差層が用いられた構成を例示することができるがこの限りではない。
【0177】
2.偏光板
本発明に用いられる偏光板は、発光型ディスプレイと、パターン位相差板との間に配置されるものである。本発明に用いられる偏光板としては、透過光を直線偏光とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置に用いられる偏光板を用いることができる。
【0178】
このような偏光板としては、少なくとも偏光子を含むものであれば特に限定されるものではなく、例えば、偏光子と、当該偏光子の両面に配置された偏光板保護フィルムとからなるものが一般的である。
また、上記偏光板としては、上記偏光子が上記パターン位相差板に積層されもの、すなわち、上記パターン位相差板上に積層・固定された偏光子を含むものであっても良い。このような偏光子が積層された態様について、図を参照しながら説明する。図22は上記偏光子が積層されたパターン位相差板(以下、偏光子付パターン位相差板と称する場合がある。)の一例を示す説明図である。図22に例示するように、上記偏光子付きパターン位相差板20は、パターン位相差板20と、上記パターン位相差板20上に積層された偏光子21とを有することを特徴とするものである。ここで、図22(a)、(a)’においては、偏光子21の両面に偏光板保護フィルム22が配置された偏光板30として偏光子21がパターン位相差板20上に積層された構成について図示したが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、図22(b)、(b)’に示すようにパターン位相差板20の透明フィルム基材11上に偏光子21のみが積層される態様であってもよい。尚、3D画像を広い視野角で見れるようにするためには、偏光子21と円偏光化層13との距離は出来る限り短くした方が良いので、図22中、層構成(a)’よりは(a)の方が好ましく、(b)よりは(b)’の方が好ましい。なお、図22において24は接着層を表わすものである。
【0179】
本発明に用いられる偏光子としては、透過光を直線偏光とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置用の偏光板に用いられる偏光子として公知のものを用いることができる。このような偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールからなるフィルムにヨウ素を含浸させ、これを一軸延伸することによってポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させたものを挙げることができる。
【0180】
本発明に用いられる偏光板保護フィルムとしては、上記偏光子を保護することができ、かつ、所望の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、可視光領域における透過率が80%以上であるものが好ましく、90%以上であるものがより好ましい。
ここで、上記偏光板保護フィルムの透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0181】
上記偏光板保護フィルムを構成する材料としては、例えば、セルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類等を挙げることができる。なかでも本発明においては、上記樹脂材料としてセルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、またはアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
【0182】
上記セルロース誘導体としては、偏光板において偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能と、偏光子の寸法変化を防止する機能とを有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記セルロース誘導体としてセルロースエステル類を用いることが好ましく、さらにセルロースエステル類の中でもセルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
【0183】
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであってもよい。
【0184】
また本発明においては、上記低級脂肪酸エステルの中でもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。このようなトリアセチルセルロールは光学的等方性に優れるからである。
ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。なお、トリアセチルセルロースフィルムを構成するトリアセチルセルロースの酢化度は、フィルム中に含まれる可塑剤等の不純物を除去した後、上記の方法により求めることができる。
【0185】
なお、従来、セルロース誘導体からなるフィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、表面をけん化処理することによってポリビニルアルコールからなる偏光子との接着性を向上することができる。
【0186】
一方、上記シクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。このような上記環状オレフィンからなるモノマーとしては、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等を挙げることができる。また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであっても好適に用いることができる。また、上記シクロオレフィン系樹脂は上記環状オレフィンからなるモノマーの単独重合体であってもよく、または、共重合体であってもよい。
【0187】
また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂は、23℃における飽和吸水率が1質量%以下であるものが好ましく、なかでも0.1質量%〜0.7質量%の範囲内であるものが好ましい。このようなシクロオレフィン系樹脂を用いることにより、偏光板を吸水による光学特性の変化や寸法の変化がより生じにくいものとすることができるからである。
ここで、上記飽和吸水率は、上記吸水率は、ASTMD570に準拠し23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる。
【0188】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、Ticona社製 Topas(登録商標)、ジェイエスアール社製 アートン(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONEX(登録商標)、三井化学社製 アペル(登録商標)等を挙げることができる。
【0189】
また、上記アクリル系樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)などが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特に好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0190】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、日本触媒社製アクリビュア(登録商標)を挙げることができる。
【0191】
また、本発明に用いられる偏光板保護フィルムの厚みは特に限定されないが、通常、5μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、特に15μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、さらに30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0192】
3.発光型ディスプレイ
本発明に用いられる発光型ディスプレイは、パターン状に画素部が形成されたものである。本発明に用いられる発光型ディスプレイとしては、特に限定されるものではなく、一般的に表示装置用のディスプレイとして公知のものを適宜選択して用いることができる。本発明に用いられる発光型ディスプレイの具体例としては、例えば、PDP(プラズマディスプレイ)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)、有機EL等を挙げることができる。尚、これらの発光型ディスプレイは、必要に応じて、カラーフィルターを有するものであっても良い。
【0193】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0194】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0195】
[実施例1]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、研磨剤(カネヨ石鹸株式会社製カネヨンTM)で左右方向に研磨し、洗浄した。その後、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで上下方向に、ストライプの間隔が500μmになる様に切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック)を銅版上に塗布し、その上に透明フィルム基材として、透明なフィルム(日本ゼオン株式会社製ゼオノア(登録商標))を乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
次に、上記透明フィルム基材を銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルム基材上に賦形することにより、上記透明フィルム基材上に配向層を形成した。SEMで配向層の断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸と不定形の微細な凹凸とが交互に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式(A)で表わされる液晶性材料の溶液に、光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記配向層が形成された透明フィルム基材上にスピンコーターで塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化することにより、パターン位相差フィルム(パターン位相差板)を作製した。
作製したパターン位相差板を偏光板クロスニコルの中に入れて回転させたところ、幅500μmのストライプが明・暗・明・暗の繰り返し模様で見え、90度回転する毎に、明と暗が反転した。
上記パターン位相差板を偏光板を介して3次元表示可能な発光型ディスプレイの画素部の左右方向のラインに対応して貼合し、左右円偏光メガネをかけて見たところ、3次元画像が見えた。
尚、今回のラビングには研磨剤を用いたが、LCD製造に使われているラビング用の布を使ってもよい。
【0196】
[実施例2]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで左右方向に、全面を切削した。その後、更に、ストライプの間隔が500μmになる様に、500μm毎に深さが2μmになる様に同じ左右方向に切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック)を銅版上に塗布し、その上に透明なフィルム(日本ゼオン株式会社製ゼオノア(登録商標))を乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
次に、透明フィルムを銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルムに賦形した。SEMで断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸からなる幅500μmのストライプ形状が平行な状態で、段差2μmの凹凸が交互に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式(A)で表わされる液晶性材料溶液に光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記賦形した透明フィルムにスピンコーターで乾燥硬化時の膜厚がストライプ凸部で1μm、ストライプ凹部で3μmになる様に塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化させた。このようにして、パターン位相差板を得た。
偏光板クロスニコルの中にサンプルを入れて回転させたところ、幅500μmのストライプが明・暗・明・暗の繰り返し模様で見え、90度回転する毎に、明と暗が反転した。
上記パターン位相差板を偏光板を介して3次元表示可能な発光型ディスプレイの画素部の左右方向のラインに対応して貼合し、左右円偏光メガネをかけて見たところ、3次元画像が見えた。
【0197】
[実施例3]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで左右方向に、全面を切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック RC23−207)を銅版上に塗布し、その上に密着性を改善するためのプライマー(DIC株式会社製ユニディックRC20−075)を塗布した透明なフィルム(富士フィルム株式会社製フジタック)を乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
次に、透明フィルムを銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルムに賦形した。SEMで断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸が左右方向に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式(A)で表わされる液晶性材料溶液に光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記賦形した透明フィルムにスピンコーターで乾燥硬化時の膜厚が2μmになる様に塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化させた。更に、紫外線レーザーを用いて左右方向に硬化させた液晶層を幅500μmのラインが交互に出来る様に蒸発させた。偏光板クロスニコルの中にサンプルを入れて観察したところ、幅500μmのストライプが明・暗・明・暗の繰り返し模様で見えた。上記パターン位相差板を図23の構成になる様に偏光板を介して3次元表示可能な発光型ディスプレイの画素部の左右方向のラインに対応して貼合し、左右円偏光メガネをかけて見たところ、3次元画像が見えた。
【0198】
[実施例4]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、研磨剤(カネヨ石鹸株式会社製カネヨンTM)で斜め45度方向に研磨し、洗浄した。その後、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで左右方向に、ストライプの間隔が500μmになる様に切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック RC23−207)を銅版上に塗布し、その上に密着性を改善するためのプライマー(DIC株式会社製ユニディックRC20−075)を塗布した透明フィルム基材として、透明なフィルム(富士フィルム株式会社製フジタック)を乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
次に、上記透明フィルム基材を銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルム基材上に賦形することにより、上記透明フィルム基材上に配向層を形成した。SEMで配向層の断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸と不定形の微細な凹凸が交互に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式(A)で表わされる液晶性材料の溶液に、光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記配向層が形成された透明フィルム基材上にスピンコーターで乾燥時の膜厚が2μmになる様に塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化することにより、パターン位相差フィルムを作製した。位相差層のレターデーションは260nmでλ/2相当だった。
作製したパターン位相差フィルムを偏光板クロスニコルの中に入れて回転させたところ、幅500μmのストライプが繰り返し模様で見え、90度回転する毎に、明と暗が反転した。上記パターン位相差板を図23の構成になる様に偏光板を介して3次元表示可能な発光型ディスプレイの画素部の左右方向のラインに対応して貼合し、左右円偏光メガネをかけて見たところ、3次元画像が見えた。
尚、本実施例におけるラビングには研磨剤を用いたが、LCD製造に使われているラビング用の布を使ってもよい。
【0199】
【化2】
【符号の説明】
【0200】
1,11 … 透明フィルム基材
2,12 … 配向層
3 … 位相差層
4 … 第2位相差層
10 … パターン位相差フィルム
13 … 円偏光化層
13A … 第1円偏光化領域
13B … 第2円偏光化領域
14 … 反射防止層またはアンチグレア層
20 … パターン位相差板
21 … 偏光子
22 … 偏光板保護フィルム
24 … 接着層
30 … 偏光板
31a … 画素部
40 … 発光型ディスプレイ
50 … 発光型表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能な発光型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイとしては、従来、2次元表示のものが主流であったが、近年においては3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集め始めており、一部市販されているものも存在しつつある。そして、今後のフラットパネルディスプレイにおいては3次元表示可能であることが、その性能として当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
【0003】
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、視聴者に対して何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示することが必要とされる。右目用の映像と左目用の映像とを別個に表示する方法としては、例えば、パッシブ方式というものが知られている。このようなパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図24はパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。図24に示すようにこの方式では、まず、フラットパネルディスプレイを構成する画素を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。また、直線偏光板と当該画素の分割パターンに対応したパターン状の位相差層が形成されたパターン位相差フィルムとを用い、右目用の映像と、左目用の映像とを互いに直交関係にある円偏光に変換する。さらに、視聴者には右目用レンズと左目用レンズとに互いに直交する円偏光レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用のレンズのみを通過するようにする。このようにして右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることによって3次元表示を可能とするものがパッシブ方式である。
【0004】
このようなパッシブ方式では、上記パターン位相差フィルムと、対応する円偏光メガネとを用いることにより容易に3次元表示が可能なものにできるという利点がある。
【0005】
ところで、上述したようにパッシブ方式においてはパターン位相差フィルムを用いることが必須になるところ、このようなパターン位相差フィルムについてはまだ広く研究・開発が行われておらず、標準的な技術としても確立されているものがないのが現状である。この点、特許文献1にはパターン位相差フィルムとして、ガラス基板上に配向規制力がパターン状に制御された光配向膜と、当該光配向膜上に形成され、液晶化合物の配列が上記光配向膜のパターンに対応するようにパターニングされた位相差層とを有するパターン位相差板が開示されている。ここで、光配向膜のパターンは互いに配向方向が直交するように配向規制力が制御された領域がパターン状に配置されている。しかしながら、このような特許文献1に開示されたパターン位相差板は、光配向膜のような特殊な材料を使用しなければ作製することができず、かつガラス板を用いることが必須となっていることから、高価であり、また大面積のものを大量に製造できるというものではなく、その実用性に難点があった。
【0006】
このようなことから、実用性を有するパターン位相差フィルムに関しては未だ研究開発段階にあり、一般的なものとして知られるに至っているものはほとんどなく、その結果、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能な発光型表示装置を得るには至っていないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−49865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能な発光型表示装置を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、パターン状に画素部が形成された発光型ディスプレイと、上記発光型ディスプレイ上に配置された偏光板と、上記偏光板上に配置され、透明フィルム基材、上記透明フィルム基材上に形成された配向層、および上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層を有するパターン位相差板と、を有する発光型表示装置であって、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であり、さらに上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とする、発光型表示装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンとが上記偏光板を介して対応関係にあり、さらに、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であることにより、3次元表示可能な表示装置(以下、「3D表示装置」と称する場合がある。)とすることができる。
また、本発明に用いられる上記棒状化合物は、従来から液晶表示装置の視野角補償フィルム等として汎用されてきた位相差フィルム用に用いられる棒状化合物として一般的なものを用いることができるため、安価にパターン位相差板を得ることができる。
さらに、上記パターン位相差板は、上記透明フィルム基材が用いられていることにより、簡易的な方法で大量生産することが可能であり、さらに軽量であることから実用性の高いものとなる。
このようなことから、本発明によれば、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能な発光型表示装置とすることができる。
【0011】
本発明においては、上記パターン位相差板が、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、上記配向層が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、上記棒状化合物を上記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であり、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記第1配向領域上に形成された位相差層または上記第2配向領域上に形成された位相差層であることが好ましい。
上記配向層に上記第1配向領域および上記第2配向領域がパターン状に形成されていることにより、当該パターンに従って上記位相差層においても第1配向領域上に形成された位相差層(以下、「第1位相差領域」と称する場合がある。)と、上記第2配向領域上に形成された位相差層(以下、「第2位相差領域」と称する場合がある。)とがパターン状に配置されることになる。ここで、上記第1配向領域と上記第2配向領域とでは上記棒状化合物を配列させる方向が互いに直交する方向になることから、上記第1位相差領域と上記第2位相差領域とでは屈折率の最も大きくなる方向(遅相軸方向)が互いに直交する関係になる。このため、本発明においては上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンに対応して、上記位相差層において遅相軸方向が異なる第1位相差領域、および第2位相差領域がパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを有するものとすることができる。したがって、このような第1位相差領域および第2位相差領域を上記第1円偏光化領域及び第2円偏光化領域として用いることにより、容易に3次元映像を得ることができるからである。
これに加えて、本発明においては上記棒状化合物に対する配向規制力を付与することを目的として、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に微細凹凸形状が形成されているが、上記第1配向領域または上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状の少なくとも一方がストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、上記位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界を明確にすることができるという利点がある。これにより、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い液晶の配向欠陥を抑制することができるので、境界近傍からの光漏れを抑制でき、コントラストの低下を抑制することができるからである。
【0012】
本発明においては、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に形成された上記微細凹凸形状が、いずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることが好ましい。これにより位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界をさらに明瞭にすることができるからである。
【0013】
本発明においては、上記位相差層の面内レターデーション値が、λ/4分に相当することが好ましい。本発明においては上記第1位相差領域と第2位相差領域とを通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、上記位相差層の面内レターデーション値がλ/4分に相当することにより、より精度の高い3次元表示を可能なものにできるからである。
【0014】
本発明においては、上記パターン位相差板が、上記透明フィルム基材上に形成され、表面に厚みが大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域がパターン状に形成された配向層と、上記配向層の上記表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、上記厚膜領域および上記薄膜領域が、同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されており、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記厚膜領域上に形成された位相差層または上記薄膜領域上に形成された位相差層であることが好ましい。
上記配向層が、上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されたものであり、かつ上記厚膜領域の表面に形成された微細凹凸形状と、上記薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状とが同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるようなものであることにより、上記厚膜領域上に形成された位相差層(以下、「低位相差領域」と称する場合がある)と上記薄膜領域上に形成された位相差層(以下、「高位相差領域」と称する場合がある。)とは、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差に相当する分だけ異なった位相差値(面内レターデーション)を示すことになる。このため、本発明においては位相差層において位相差値の大きい高位相差領域と、上記高位相差領域よりも位相差値が小さい低位相差領域とが、上記薄膜領域および上記厚膜領域が形成されたパターンと同一のパターンで形成されることになる。したがって、本発明によれば位相差層において高位相差領域と低位相差領域とがパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを有するものとすることができる。したがって、このような高位相差領域および低位相差領域を上記第1円偏光化領域及び第2円偏光化領域として用いることにより、容易に3次元映像を得ることができるからである。
【0015】
本発明においては、上記厚膜領域上に形成される位相差層の面内レターデーション値と、上記薄膜領域上に形成される位相差層の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当するものであり、かつ上記厚膜領域上に形成される上記位相差層の面内レターデーション値が、λ/4分に相当することにより、上記厚膜領域上に形成される上記位相差層の面内レターデーション値がλ/4分に相当し、かつ上記薄膜領域上に形成される上記位相差層の面内レターデーション値がλ/4+λ/2分に相当することが好ましい。これにより、上記低位相差領域および上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、より精度の高い3次元表示を可能なものにできるからである。
【0016】
本発明においては、上記厚膜領域または上記薄膜領域の表面に形成された上記微細凹凸形状の少なくとも一方が、ストライプ状のライン状凹凸構造であることが好ましく、さらには上記厚膜領域および上記薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状が、ストライプ状のライン状凹凸構造であることが好ましい。これにより位相差層における低位相差領域と高位相差領域との境界を明瞭にすることができるからである。
【0017】
本発明においては、上記パターン位相差板が、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルム、および上記パターン位相差フィルム上に配置され、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層を有するものであり、上記パターン位相差板が、上記偏光板、位相差層および第2位相差層がこの順となるように配置されており、上記位相差層が、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域がパターン状に配置されたものであり、上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とが直交または平行関係にあり、上記第1円偏光化領域が、上記第1位相差領域および上記第1位相差領域上の第2位相差層を含むものであることが好ましい。
上記第1円偏光化領域が、上記第1位相差領域および上記第1位相差領域上の第2位相差層を含むものであることにより、容易に3次元映像を得ることができるからである。
【0018】
本発明においては、上記位相差層が、上記第1位相差領域と、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有し、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第2位相差領域と、を有するものであり、上記第2位相差領域に含有される上記棒状化合物の配向方向が、上記第1位相差領域に含有される上記棒状化合物の配向方向に対して45°の方向であり、かつ上記第1位相差領域と、上記第2位相差領域とがパターン状に配置されたものであることが好ましい。これにより、上記第1位相差領域および第2位相差領域を透過する光量を同程度とすることができ、また第1位相差領域および第2位相差領域の境界を目立たなくすることができるため、表示品質に優れた3D表示装置を得ることができるからである。
【0019】
本発明においては、上記パターン位相差板が、上記パターン位相差フィルムの位相差層上に、上記第2位相差層が積層された積層型パターン位相差フィルムであっても良い。上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とを直交または平行関係とすることが容易だからである。
【0020】
本発明においては、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。これにより、上記第1位相差領域が形成されたパターンと、表示装置に用いられるカラーフィルタ等において画素が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になるからである。
【0021】
本発明においては、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に反射防止層および/またはアンチグレア層が形成されていることが好ましい。表示品質の良いものとすることができるからである。
【0022】
本発明においては、上記配向層が硬化された紫外線硬化性樹脂からなることが好ましい。これにより、上記配向層を転写法によって容易に形成することが可能なものにできる結果、本発明のパターン位相差フィルムをさらに生産性の高いものにできるからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の発光型表示装置は、安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能であり、3次元映像を表示することが可能なものとすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の発光型表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの一例を示す概略図である。
【図3】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略図である。
【図4】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図6】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図7】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略断面図である。
【図8】図9のA−A線断面図である。
【図9】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図10】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図11】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図12】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図13】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図14】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図15】図16のB−B線断面図である。
【図16】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図17】本発明の発光型表示装置について説明する概略図である。
【図18】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図19】本発明に用いられるパターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図20】図21のC−C線断面図である。
【図21】本発明に用いられるパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。
【図22】本発明に用いられる偏光板を説明する説明図である。
【図23】本発明の発光型表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【図24】パッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、発光型表示装置に関するものである。
本発明の発光型表示装置は、パターン状に画素部が形成された発光型ディスプレイと、上記発光型ディスプレイ上に配置された偏光板と、上記偏光板上に配置され、透明フィルム基材、上記透明フィルム基材上に形成された配向層、および上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層を有するパターン位相差板と、を有する発光型表示装置であって、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であり、さらに上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とするものである。
【0026】
このような本発明の発光型表示装置について図を参照しながら説明する。図1は、本発明の発光型表示装置の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように本発明の発光型表示装置50は、パターン状に画素部31aが形成された発光型ディスプレイ40と、上記発光型ディスプレイ40上に配置された偏光板30と、上記偏光板30上に配置され、透明フィルム基材11、上記透明フィルム基材11上に形成された配向層12、および上記配向層12上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層13を有するパターン位相差板20と、を有するものであって、上記円偏光化層13が第1円偏光化領域13Aおよび第2円偏光化領域13Bを有し、上記偏光板30の偏光軸方向と、上記パターン位相差板20に含まれる第1円偏光化領域13Aおよび第2円偏光化領域13Bの進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であり、さらに上記発光型ディスプレイ40において上記画素部31aが形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域13Aおよび第2円偏光化領域13Bが形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とするものである。
【0027】
ここで、図2(a)および(b)に例示するように、上記パターン位相差板20としては、透明フィルム基材1と、上記透明フィルム基材1上に形成された配向層2と、上記配向層2上に形成された位相差層3と、を有するパターン位相差フィルム10からなるものであって、上記配向層2が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域2Aと、上記棒状化合物を上記第1配向領域2Aにおける配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域2Bとが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域2Aの表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であるものとすることができる。この例においては、その結果、図2(b)に例示するように本発明のパターン位相差フィルムにおいては位相差層3において遅相軸方向が互いに直交する第1位相差領域3Aおよび第2位相差領域3Bが、上記第1配向領域2Aおよび第2配向領域2Bが形成されたパターンと同一パターンで形成されている。
また、この例においては、上記円偏光化層が上記位相差層3であり、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記第1配向領域2A上に形成された位相差層3Aまたは上記第2配向領域2B上に形成された位相差層3Bである。
【0028】
なお、図2においては第1配向領域に形成された微細凹凸形状のみがストライプ状のライン状凹凸構造である場合の一例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、第2配向領域に形成された微細凹凸形状のみがストライプ状のライン状凹凸構造であってもよく、または第1配向領域および第2配向領域に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン凹凸形状であってもよい。
【0029】
また、図3(a)および(b)に例示するように、上記パターン位相差板20としては、透明フィルム基材1と、上記透明フィルム基材1上に形成された配向層2と、上記配向層2上に形成された位相差層3と、を有するパターン位相差フィルム10からなるものであって、上記配向層2は、表面に厚みが大きい厚膜領域2Cおよび上記厚膜領域2Cよりも厚みが小さい薄膜領域2Dがパターン状に形成されており、これにより厚膜領域2C上に形成される位相差層3Cと、薄膜領域2D上に形成される位相差層3Dとは厚みが異なるようになるものを用いることができる。この例においては、上記厚膜領域2Cおよび上記薄膜領域2Dの表面に、それぞれ同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されている。さらに、図3(b)に例示するように、上記位相差層3に上記厚膜領域2C上に形成された低位相差領域3Cと、上記薄膜領域2D上に形成された高位相差領域3Dとが、上記厚膜領域2Cおよび薄膜領域2Dが形成されたパターンと同一のパターンで存在するものになる。
また、この例においては、上記円偏光化層が、上記位相差層3であり、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記厚膜領域2C上に形成された位相差層3Cまたは上記薄膜領域2D上に形成された位相差層3Dである。
【0030】
さらに、図4に例示するように、上記パターン位相差板20としては、透明フィルム基材1と、上記透明フィルム基材1上に形成された配向層2と、上記配向層2上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層3と、を有するパターン位相差フィルム10および上記パターン位相差フィルム10上に配置され、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層4を有するものであり、上記位相差層3が、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域3Eが、パターン状に配置されたものであり、上記第1位相差領域3Eの遅相軸方向と、上記第2位相差層4の遅相軸方向とが直交または平行関係にあるものを用いることができる。
なお、この例においては、上記円偏光化層が上記位相差層3中の第1位相差領域3Eおよび第2位相差層4を含むものであり、上記第1円偏光化領域が、上記第1位相差領域3Eおよび上記第1位相差領域3E上の第2位相差層4Eを含むものであり、上記第2円偏光化領域が上記第1位相差領域3E以外の領域上の第2位相差層4Fを含むものである。
【0031】
本発明によれば、上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンとが上記偏光板を介して対応関係にあり、さらに、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であることにより、3次元表示可能な表示装置(以下、「3D表示装置」と称する場合がある。)とすることができる。
また、本発明に用いられる上記棒状化合物は、従来から液晶表示装置の視野角補償フィルム等として汎用されてきた位相差フィルム用に用いられる棒状化合物として一般的なものを用いることができるため、安価にパターン位相差フィルムを得ることができる。
さらに、本発明のパターン位相差フィルムは、上記透明フィルム基材が用いられていることにより、簡易的な方法で大量生産することが可能であり、さらに軽量であることから実用性の高いものとなる。
このようなことから、本発明によれば、3D表示装置を容易に製造することができ、かつ安価で簡易的な方法で大量に製造することが可能となる。
【0032】
本発明の発光型表示装置は、少なくとも発光型ディスプレイ、偏光板、およびパターン位相差板を有するものであり、必要に応じて、例えばカラーフィルタ等の他の任意の構成を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各構成について順に説明する。
【0033】
1.パターン位相差板
本発明に用いられるパターン位相差板は、透明フィルム基材、上記透明フィルム基材上に形成された配向層、および上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層を有するものであり、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であるものである。
【0034】
ここで、上記偏光板の偏光軸方向と、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であるとは、所望の精度の3次元映像を表示することができるものであれば良く、具体的には、上記角度が45°±3°の範囲内であることをいうものであり、なかでも本発明においては、45°±2°の範囲内であることが好ましく、特に、45°±1°であることが好ましい。上記角度が上述の範囲内であることにより精度の高い3次元表示を可能なものにできるからである。
【0035】
このようなパターン位相差板としては、3次元映像を表示することを可能とするものであれば特に限定されるものではなく、例えば、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、上記配向層が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、上記棒状化合物を上記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であり、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記第1配向領域上に形成された位相差層または上記第2配向領域上に形成された位相差層である態様(第1態様)、上記パターン位相差板が、上記透明フィルム基材上に形成され、表面に厚みが大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域がパターン状に形成された配向層と、上記配向層の上記表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されており、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記厚膜領域上に形成された位相差層または上記薄膜領域上に形成された位相差層である態様(第2態様)、上記パターン位相差板が、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルム、および上記パターン位相差フィルム上に配置され、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層を有するものであり、上記パターン位相差板が、上記偏光板、位相差層および第2位相差層がこの順となるように配置されており、上記位相差層が、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域が、パターン状に配置されたものであり、上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とが直交または平行関係にあり、上記第1円偏光化領域が、上記第1位相差領域および上記第1位相差領域上の第2位相差層を含むものである態様(第3態様)の3つの実施態様とすることができる。以下、本発明に用いられるパターン位相差板の第1態様〜第3態様について、各態様に分けて説明する。
【0036】
(1)第1態様
まず、本発明に用いられるパターン位相差板の第1態様について説明する。本態様のパターン位相差板は、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであって、上記配向層が、上記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、上記棒状化合物を上記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であり、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記第1配向領域上に形成された位相差層または上記第2配向領域上に形成された位相差層であることを特徴とするものである。
【0037】
このような本態様のパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムとしては、既に説明した図2を挙げることができる。
【0038】
本態様においては、上記配向層に上記第1配向領域および上記第2配向領域がパターン状に形成されていることにより、当該パターンに従って上記位相差層においても第1配向領域上に形成された位相差層と、上記第2配向領域上に形成された位相差層と、がパターン状に配置されることになる。ここで、上記第1配向領域と上記第2配向領域とでは上記棒状化合物を配列させる方向が互いに直交する方向になることから、上記第1位相差領域と上記第2位相差領域とでは屈折率の最も大きくなる方向(遅相軸方向)が互いに直交する関係になる。このため、本態様においては上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンに対応して、上記位相差層において遅相軸方向が異なる第1位相差領域、および第2位相差領域がパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを有するものとすることができる。したがって、このような第1位相差領域および第2位相差領域を上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域として用いることにより、容易に3次元映像を得ることができる。
これに加えて、本態様においては上記棒状化合物に対する配向規制力を付与することを目的として、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に微細凹凸形状が形成されているが、上記第1配向領域または上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状の少なくとも一方がストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、上記位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界を明確にすることができるという利点がある。これにより、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い液晶の配向欠陥を抑制することができるので、境界近傍からの光漏れが抑制でき、コントラストの低下を抑制することができる。
【0039】
本態様のパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムは、少なくとも透明フィルム基材、配向層および位相差層を有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。
以下、このようなパターン位相差フィルムの各構成について詳細に説明する。
【0040】
(a)配向層
まず、本態様に用いられる配向層について説明する。本態様に用いられる配向層は後述する透明フィルム基材上に形成されるものであり、位相差層に含まれる棒状化合物を一方向に配列させる機能を有するものである。そして、本態様に用いられる配向層は、表面に上記第1配向領域および第2配向領域がパターン状に形成されていることにより、当該パターンに従って上記位相差層においても互いに遅相軸方向が直交関係にある第1位相差領域と、上記第2位相差領域とがパターン状に配置されることになる。これに加えて、本態様に用いられる配向層は、後述する位相差層に含まれる棒状化合物への配向規制力を付与することを目的として、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に微細凹凸形状が形成されており、かつ上記第1配向領域または上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状の少なくとも一方がストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、上記位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界を明確にすることができるという利点がある。従って、隣り合ったパターンの境界近傍に生じ易い液晶の配向欠陥を抑制することができるので、境界近傍からの光漏れが抑制でき、その結果、ディスプレイに使用した際のコントラストの低下を抑制することができる。
【0041】
(i)第1配向領域および第2配向領域
本態様における配向層に形成された第1配向領域および第2配向領域は、いずれも位相差層に含有される棒状化合物を一方向に配列させる機能を有する領域であるが、棒状化合物を配列させる方向が互いに直交関係にあるものである。本態様においては当該第1配向領域および第2配向領域はパターン状に形成されており、かつ表面には棒状化合物を配列させるための微細凹凸形状が形成されている。
【0042】
本態様における配向層において第1配向領域および第2配向領域が形成されるパターンは、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば、本発明の用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば帯状パターン、モザイク状パターン、千鳥配置状パターン等を挙げることができる。中でも本態様においては上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていること、すなわち、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および上記第2円偏光化領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域を容易に互いに平行な帯状のパターンとすることができることにより、上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、を偏光板を介して対応関係にすることが容易になるからである。
【0043】
図5(a)および(b)は、上記第1配向領域および上記第2配向領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の一例を示す説明図である。ここで、図5(a)は、概略平面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるX−X’線矢視断面図である。図5(a)、(b)に示すように、配向層2においては上記第1配向領域2Aおよび上記第2配向領域2Bが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。ここで、図5(a)、(b)におけるW1、W2はそれぞれ第1配向領域および第2配向領域の帯幅を示す。
【0044】
上記第1配向領域および第2配向領域が帯状のパターンに形成されている場合、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば、第1配向領域および第2配向領域の幅は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。しかしながら、本態様においては第1配向領域の幅と第2配向領域の幅は同一であることが好ましい。上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、上記画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、その結果、容易に製造可能なものとすることができるようになるからである。尚、発光型表示装置の色純度やコントラストを向上させる目的で、上記発光型ディスプレイと本態様のパターン位相差フィルムの間にカラーフィルターを配置しても良いが、その場合は、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、上記カラーフィルタにおいて画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが好ましい。
【0045】
上記第1配向領域および上記第2配向領域の具体的な幅としては、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば特に限定されるものではなく、上記発光型ディスプレイにおいて画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように上記第1配向領域および第2配向領域の幅は特に限定されるものではないが、通常、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜600μmの範囲内であることがより好ましい。
【0046】
また、本態様において上記第1配向領域および上記第2配向領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、上記第1配向領域および上記第2配向領域の間に、光を吸収するブラックラインを設けてもよい。この場合、ブラックラインの幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0047】
さらに、本態様において上記第1配向領域および上記第2配向領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、本態様のパターン位相差フィルムが長尺状に形成されたものから所定のサイズに切りだしてなるものである場合、上記帯状のパターンは帯状の長手方向がパターン位相差フィルムの長尺方向と平行方向であってもよく、あるいは直交方向であってもよく、さらには斜めに交差する方向であってもよい。中でも本態様においては、上記帯状のパターンは帯状の長手方向がパターン位相差フィルムの長尺方向と平行方向であることが好ましい。このような方向に帯状のパターンが形成されていることにより、例えば、ロール状に巻き取られた長尺状の透明フィルム基材を用い、当該ロール状の透明基材フィルムを巻きほぐしながら搬送しつつ、上記帯状のパターンを形成することが容易になるからである。
【0048】
(ii)微細凹凸形状
次に上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状について説明する。本態様のパターン位相差フィルムは、上記配向層上に後述する位相差層が積層された構成を有するものであるところ、上記第1配向領域および上記第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状は、上記位相差層中に含まれる棒状化合物を一定方向に配列させるために形成されるものである。本態様においては上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とするものである。
【0049】
ここで、ストライプ状のライン状凹凸構造とは、壁状に形成された凸部が一定の間隔でストライプ状に形成された態様を意味するものであり、例えば表面にラビング処理がなされた場合に形成されるような微小な傷のような凹凸形状はこれに含まれないものである。
【0050】
本態様において上記第1配向領域または上記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造である態様としては、第1配向領域または第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状のみが、ストライプ状のライン状凹凸構造であってもよく、または第1配向領域および第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状がいずれもストライプ状のライン状凹凸構造であってもよい。中でも本態様においては、第1配向領域および第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状がいずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることが好ましい。ストライプ状のライン状凹凸構造は棒状化合物に対する配向規制力が強いことから、第1配向領域および第2配向領域の表面に形成された微細凹凸形状がいずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることにより、位相差層における第1位相差領域と第2位相差領域との境界をさらに明瞭にすることができるからである。
【0051】
ストライプ状のライン状凹凸構造が形成される場合、ライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期は棒状化合物を配列させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。中でも本態様においてはストライプ状のライン状凹凸構造の幅は、1nm〜100000nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜10000nmの範囲内であることがより好ましく、100nm〜1000nmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、ストライプ状のライン状凹凸構造の高さは1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、20nm〜50nmの範囲内であることがさらに好ましい。
さらに、ストライプ状のライン状凹凸構造の周期は、2nm〜200000nmの範囲内であることが好ましく、20nm〜20000nmの範囲内であることがより好ましく、200nm〜2000nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0052】
ここで、線状凹凸形状の高さ、幅、および周期はそれぞれ図6におけるl、m、nで示される距離を意味する。
【0053】
一方、第1配向領域または第2配向領域の一方の表面に形成された微細凹凸形状のみが、ストライプ状のライン状凹凸構造である場合、他方の表面に形成される微細凹凸形状としては棒状化合物を一定方向に配列させることができるものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、棒状化合物はライン状凹凸構造が形成された表面においては、当該ライン状凹凸構造の長手方向に平行に配列する性質を有するため、本態様における微細凹凸形状は、ライン状凹凸構造からなるものであることが好ましい。このようなライン状凹凸構造としては、例えば、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに不連続な状態で形成された態様を例示することができる。
【0054】
ここで、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに不連続な状態で形成された態様とは、例えば、表面にラビング処理がなされた場合等に形成されるような微小な傷のようなライン状凹凸構造が、略一定方向に不連続な状態で形成された態様を意味するものである。
【0055】
本態様において第1配向領域および第2配向領域にライン状凹凸構造が形成される場合、第1配向領域に形成されたライン状凹凸構造の方向と、第2配向領域に形成されたライン状凹凸構造の方向とが互いに直交する関係になる。これは、本態様における第1配向領域および第2配向領域は、棒状化合物を互いに直交する方向に配列させる機能を有するものであるところ、ライン状凹凸構造はその長手方向に対して平行方向に棒状化合物を配列させる機能を有するからである。
【0056】
(iii)構成材料
本態様における配向層を形成するために用いられる構成材料としては、表面に所定の微細凹凸形状が形成された第1配向領域および第2配向領域を、所望のパターン状に形成できるものであれば特に限定されるものではない。このような構成材料としては、たとえば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を挙げることができる。本態様においてはこれらの何れの構成材料であっても好適に用いることができるが、なかでも紫外線硬化性樹脂が用いられることが好ましい。紫外線硬化性樹脂が用いられることにより、本態様に用いられる配向層を転写法によって容易に形成することが可能なものにできる結果、本態様のパターン位相差フィルムをさらに生産性の高いものにできるからである。なお、構成材料として紫外線硬化性樹脂が用いられた場合、本態様における配向層は硬化された紫外線硬化性樹脂からなることになる。
【0057】
本態様に用いられる紫外線硬化性樹脂の具体例としては、例えば、ウレタンアクリレート,エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート,ポリエーテルアクリレート,メラミンアクリレート等のアクリロイル基をもつ重合性オリゴマー,モノマーと、アクリル酸,アクリルアミド,アクリロニトリル,スチレン等重合性ビニル基をもつ重合性オリゴマー,モノマー等の単体あるいは配合したものに、必要に応じて増感剤等の添加剤を加えたものに光重合開始剤を加えたもの等を挙げることができる。
【0058】
(b)位相差層
次に、本態様における位相差層について説明する。本態様における第1円偏光化領域および第2円偏光化領域を含む円偏光化層であり、上述した配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより本態様のパターン位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本態様においては上述したような特徴を有する配向層が形成されていることにより、本態様における位相差層は第1位相差領域と第2位相差領域とが、すなわち、上記第1円偏光化領域と第2円偏光化領域とが、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと同一のパターン状に形成されたものになる。
【0059】
本態様に用いられる位相差層は後述する棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差層の厚みに依存して決定されるものである。したがって、本態様に用いられる位相差層の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定されるものである。また、本態様における位相差層では第1位相差領域および第2位相差領域の厚みはほぼ同一となる。中でも本態様における位相差層の厚みは、位相差層の面内レターデーションがλ/4分に相当するような範囲内であることが好ましい。これにより、本態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記第1位相差領域および上記第2位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、より精度良く3次元映像を表示できるものとすることができるからである。
【0060】
本態様において、位相差層の厚みを位相差層の面内レターデーションがλ/4分に相当するような範囲内の距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、後述する棒状化合物の種類により適宜決定されることになる。もっとも、当該距離は本態様において一般的に用いられる棒状化合物であれば、通常、0.5μm〜2μmの範囲内となるがこれに限られるものではない。
【0061】
次に、位相差層に含有される棒状化合物について説明する。本態様に用いられる棒状化合物は屈折率異方性を有するものである。本態様における位相差層中に含有される棒状化合物としては、規則的に配列することにより本態様における位相差層に所望の位相差性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本態様に用いられる棒状化合物は、液晶性を示す液晶性材料であることが好ましい。液晶性材料は屈折率異方性が大きいため、本態様のパターン位相差フィルムに所望の位相差性を付与することが容易になるからである。
【0062】
本態様に用いられる上記液晶性材料としては、例えば、ネマチック相、スメクチック相等の液晶相を示す材料を挙げることができる。本態様においては、これらのいずれの液晶相を示す材料であっても好適に用いることができるが、なかでもネマチック相を示す液晶性材料を用いることが好ましい。ネマチック相を示す液晶性材料は、他の液晶相を示す液晶性材料と比較して規則的に配列させることが容易であるからである。
【0063】
また、本態様においては上記ネマチック相を示す液晶性材料として、メソゲン両端にスペーサを有する材料を用いることが好ましい。メソゲン両端にスペーサを有する液晶性材料は柔軟性に優れるため、このような液晶性材料を用いることにより、本態様のパターン位相差フィルムを透明性に優れたものにできるからである。
【0064】
さらに、本態様に用いられる棒状化合物は、分子内に重合性官能基を有するものが好適に用いられ、なかでも3次元架橋可能な重合性官能基を有するものがより好適に用いられる。上記棒状化合物が重合性官能基を有することにより、上記棒状化合物を重合して固定することが可能になるため、配列安定性に優れ、位相差性の経時変化が生じにくい位相差層を得ることができるからである。なお、重合性官能基を有する棒状化合物を用いた場合、本態様における位相差層には、重合性官能基によって架橋された棒状化合物が含有されることになる。
【0065】
なお、上記「3次元架橋」とは、液晶性分子を互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることを意味する。
【0066】
上記重合性官能基としては、例えば、紫外線、電子線等の電離放射線、或いは熱の作用によって重合する重合性官能基を挙げることができる。これら重合性官能基の代表例としては、ラジカル重合性官能基、或いはカチオン重合性官能基等が挙げられる。さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が挙げられ、具体例としては、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等が挙げられる。また、上記カチオン重合性官能基の具体例としては、エポキシ基等が挙げられる。その他、重合性官能基としては、例えば、イソシアネート基、不飽和3重結合等が挙げられる。これらの中でもプロセス上の点から、エチレン性不飽和二重結合を持つ官能基が好適に用いられる。
【0067】
さらにまた、本態様における棒状化合物は液晶性を示す液晶性材料であって、末端に上記重合性官能基を有するものが特に好ましい。このような液晶性材料を用いることにより、例えば、互いに3次元に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることができるため、配列安定性を備え、かつ、光学特性の発現性に優れた上記位相差層を形成することができるからである。
なお、本態様においては片末端に重合性官能基を有する液晶性材料を用いた場合であっても、他の分子と架橋して配列安定化することができる。
【0068】
本態様に用いられる棒状化合物の具体例としては、下記式(1)〜(17)で表される化合物を例示することができる。
【0069】
【化1】
【0070】
なお、本態様において上記棒状化合物は、1種類のみを用いてもよく、または、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、上記棒状化合物として、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料と、片末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料とを混合して用いると、両者の配合比の調整により重合密度(架橋密度)及び光学特性を任意に調整できる点から好ましい。また、信頼性確保の観点からは、両末端に重合性官能基を1つ以上有する液晶性材料が好ましいが、液晶配向の観点からは両末端の重合性官能基が1つであることが好ましい。
【0071】
(c)透明フィルム基材
次に、本態様に用いられる透明フィルム基材について説明する。本態様に用いられる透明フィルム基材としては、樹脂材料からなり所定の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。中でも本態様に用いられる透明フィルム基材は、位相差性が低いものであることが好ましい。より具体的には、本態様に用いられる透明フィルム基材は、面内レターデーション値(Re値)が、0nm〜10nmの範囲内であることが好ましく、
0nm〜5nmの範囲内であることがより好ましく、0nm〜3nmの範囲内であることがさらに好ましい。透明基材の面内レターデーション値が上記範囲よりも大きいと、得られる3D表示装置の表示品質が悪くなってしまう場合があるからである。
【0072】
本態様に用いられる透明フィルム基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明フィルム基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0073】
また、本態様に用いられる透明フィルム基材としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂からなるものを挙げることができるが、透明フィルム基材の面内レターデーションをゼロに近付けやすいことからアセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0074】
透明フィルム基材の厚みについては、本発明の用途および透明フィルム基材を構成する材料等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではないが、通常は、20μm〜188μmの範囲内であることが好ましく、30μm〜90μmの範囲内であることがより好ましい。
【0075】
なお、上記配向層が紫外性硬化性樹脂からなる場合は、透明フィルム基材と紫外線硬化性樹脂との接着性を向上させるためのプライマ層を透明フィルム基材上に形成してもよい。このプライマ層は、透明フィルム基材および紫外線硬化性樹脂の双方に接着性を有し、可視光学的に透明であり、紫外線を通過させるものであればよく、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系、ウレタン系のものを使用することができる。
【0076】
(d)パターン位相差フィルム
(i)他の構成
本態様のパターン位相差フィルムは少なくとも上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる他の構成としては、所望の3次元映像を表示することができるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて所望の機能を有するものを適宜選択して用いることができる。このような他の構成の例としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成される反射防止層またはアンチグレア層を挙げることができる。このような反射防止層が形成されていることにより、表示品質の良い発光型表示装置を得ることができるという利点がある。なお、上記反射防止層、およびアンチグレア層は一方のみが用いられてもよく、または両方が用いられてもよい。
【0077】
図7は、本態様のパターン位相差フィルムに反射防止層が用いられる場合の一例を示す概略断面図である。図7に例示するように本態様のパターン位相差フィルム10、すなわち、パターン位相差板20には、上記透明フィルム基材1の上記配向層2が形成された面とは反対面上にアンチグレア層または反射防止層14が形成されていてもよい。
【0078】
上記アンチグレア層は、太陽や蛍光灯などからの外光が、表示装置の表示画面に入射して反射することから生じる画面の映り込みを低減させる機能を有する層である。一方、上記反射防止層は、表面の正反射率を抑えることで画像のコントラストがよくなり、その結果、画像の視認性を向上させる機能を有するものである。本態様に用いられるアンチグレア層、反射防止層としては、所望のアンチグレア機能、または反射防止機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、表示画質向上を目的として表示装置に用いられるものとして一般的に公知のものを用いることができる。上記アンチグレア層としては、例えば、微粒子を分散させた樹脂層を挙げることができ、上記反射防止層としては、例えば、屈折率の異なる複数の層が積層された構成を有するものを挙げることができる。尚、アンチグレア層の最表面に反射防止層を設ければ、明室における画像の視認性を更に向上することができる。
【0079】
(ii)パターン位相差フィルム
本態様のパターン位相差フィルムは、上述した第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターンに対応するように、位相差層に第1位相差領域と第2位相差領域とがパターン状に形成された構成を有するもの、すなわち、上記第1円偏光化領域と第2円偏光化領域とがパターン状に形成された構成を有するものとなる。ここで、上記第1位相差領域および第2位相差領域が有する位相差性の程度については、所望の3次元映像を表示できるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、第1位相差領域および第2位相差領域が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、本発明の用途に応じて適宜調整すればよい。なかでも、本態様においては、位相差層の面内レターデーション値がλ/4分に相当する程度であることが好ましい。より具体的には上記位相差層の面内レターデーション値は、100nm〜160nmの範囲内であることが好ましく、110nm〜150nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜140nmの範囲内であることがさらに好ましい。なお、本態様における位相差層において第1位相差領域および第2位相差領域が示す面内レターデーション値は、遅相軸の方向が異なる以外はほぼ同一となる。
【0080】
ここで、面内レターデーション値とは、屈折率異方体の面内方向における複屈折性の程度を示す指標であり、面内方向において屈折率が最も大きい遅相軸方向の屈折率をNx、遅相軸方向に直交する進相軸方向の屈折率をNy、屈折率異方体の面内方向に垂直な方向の厚みをdとした場合に、
Re[nm]=(Nx−Ny)×d[nm]
で表わされる値である。面内レターデーション値(Re値)は、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができるし、微小領域の面内レタデーション値はAXOMETRICS社(米国)製のAxoScanでミューラーマトリクスを使って測定することも出来る。また、本願明細書においては特に別段の記載をしない限り、Re値は波長589nmにおける値を意味するものとする。
【0081】
また、本態様における位相差層において第1位相差領域および第2位相差領域が形成されるパターン、すなわち、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンは、上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定することができる。なお、第1位相差領域および第2位相差領域が形成されるパターンは配向層において第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターンに一致するものになるため、第1配向領域および第2配向領域を形成するパターンを選択することによって、同時に第1位相差領域および第2位相差領域が形成されるパターンを決定することになる。
【0082】
なお、本態様のパターン位相差フィルムにおいて位相差層に第1位相差領域および第2位相差領域からなるパターンが形成されていることは、例えば、偏光板クロスニコルの中にサンプルを入れて、サンプルを回転させた場合に明線と暗線が反転することを確認することにより評価することができる。このとき、第1位相差領域および第2位相差領域からなるパターンが細かい場合は偏光顕微鏡で観察するとよい。また、上述したAxoScanで各パターン内の遅相軸の方向(角度)を測定しても良い。
【0083】
(iii)配向部および位相差部
本態様のパターン位相差板、すなわち、本態様のパターン位相差フィルムは、上述のように透明フィルム基材、配向層および位相差層を含むものであるが、上記配向層が、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるもの、すなわち、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むものであることが好ましい。
発光型表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる位相差層を有することにより、各色に対応した、すなわち、各色の波長に対応した適切な位相差性を発揮するものとすることができるからである。具体的には、上記各配向部に形成され、波長の長い色に対応する位相差部が波長の短い色に対応する位相差部よりも面内レターデーション値が高い逆分散型とすることができ、各色により適した位相差性を発揮するものとすることができる。このため、より表示品質に優れた3D表示装置とすることができるからである。
また、厚みの異なる位相差層が、発光型表示装置で表示される各色に対応して厚みの異なる配向層上に形成されていることにより、発光型表示装置の種類に限定されず適応可能なものとすることができるからである。また、金型等を用いることにより容易に厚みの異なる配向層を形成することができることから、このような配向層上に上記棒状化合物を含む位相差層形成用塗工液を塗布し、上記配向層の配向規制力に沿って配向させて位相差層を形成することで容易に製造できかつ大量生産が可能なものとすることができるからである。
【0084】
ここで、このような配向部および位相差部を含む本態様のパターン位相差フィルムを図を参照して説明する。図8は、図9のA−A線断面図であり、図9は、本態様のパターン位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。図8および図9に例示するように、本態様のパターン位相差フィルム10(20)は、配向層2が、屈折率異方性を有する棒状化合物を一定の方向に配列させる第1配向領域2Aおよび第1配向領域2Aとは異なる方向に配列させる第2配向領域2Bを含むものである。
また、第1配向領域2Aに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)には、一定方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成され、第2配向領域2B(2b´−1、2b´−2、2b´−3)には、第1配向領域2Aとは異なる方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成されている。また、位相差層3は、上記第1配向領域2Aおよび第2配向領域2Bの棒状化合物の配列方向に配列された棒状化合物を含む第1位相差領域3Aおよび第2位相差領域3Bを有し、さらに、第1位相差領域3Aが、第1配向領域2Aに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a´−1、3a´−2、3a´−3)を含み、第2位相差領域3Bが、第2配向領域2Bに含まれる配向部(2b´−1、2b´−2、2b´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3b´−1、3b´−2、3b´−3)を含むものである。
なお、この例においては、第1位相差領域および第2位相差領域がそれぞれ本態様のパターン位相差フィルムの長尺方向に対して45°および135°の方向に棒状化合物が配列され、両領域の遅相軸が直交するものである。また、両位相差領域に含まれる位相差部の面内レターデーション値は対応する各色のλ/4分に相当するような範囲である。
また、図9中の矢印は、各配向領域での棒状化合物を配列させる方向である。
【0085】
また、図10は、本態様のパターン位相差フィルムを用いた発光型表示装置の一例を示す説明図である。図10に例示するように、発光型表示装置が、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の画素を有する発光型ディスプレイ40と、上記発光型ディスプレイ40上に配置された偏光板30と、上記偏光板30上に配置されたパターン位相差フィルム10(20)と、を有するものであり、上記パターン位相差フィルム10(20)に含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3、2b´−1、2b´−2、2b´−3)、および上記配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3、2b´−1、2b´−2、2b´−3)に対応して厚みが異なる位相差部(3a´−1、3a´−2、3a´−3、3b´−1、3b´−2、3b´−3)が、上記発光型ディスプレイ40の3色の画素(R,G,B)に対応するものである。
なお、図10中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0086】
a.配向部
本態様における配向部は、上記配向層に含まれるものであり、表面に微細凹凸形状を有し、かつ、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるものである。
【0087】
本態様における配向部の厚みは、発光型表示装置の各色のパターンに対応して異なるものである。
ここで、本態様のパターン位相差フィルムは、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと上記画素部が形成されているパターンとが対応関係にあるものであるが、ここでいう、「画素部が形成されているパターン」とは、右目用映像または左目用映像を表示するパターンを意味するものである。一方、上記配向部が対応する発光型表示装置の各色のパターンとは、特定の色を表示する画素の配置をいうものであり、本発明の発光型表示装置の各色のパターンに対応する配向部とは、平面視上、特定の色のパターンとパターンが重なるものである。すなわち、上記配向層は、右目用映像および左目用映像のそれぞれに対応する第1配向領域および第2配向領域を有し、さらに、両領域内に発光型表示装置の各色に対応して厚みが異なる配向部を有するものである。
また、本態様における配向部の厚みは発光型表示装置の各色のパターンに対応して異なるものであるところ、隣接する配向部が、異なる色のパターンに対応するものである場合には、隣接する配向部は厚みが異なることになる。
具体的には、赤、緑、青を表示する発光型表示装置に用いる場合には、赤を表示するパターンに対応する配向部、緑を表示するパターンに対応する配向部、および青を表示するパターンに対応する配向部の厚みは互いに異なるものとなる。
【0088】
このような厚みについては、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、波長の長い色に対応する配向部が波長の短い色に対応する配向部よりも、厚みが薄いことが好ましい。このような厚みとすることにより、上記各配向部上に形成され、波長の長い色に対応する位相差部を、波長の短い色に対応する位相差部よりも面内レターデーション値が高い、逆分散型とすることが容易であり、各色により適した位相差性を発揮するものとすることができるからである。
具体的には、既に説明した図10に例示するように、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の色を表示する発光型表示装置に用いられる場合には、赤、緑、青に対応する配向部の厚みは、この順で厚くなることが好ましく、対応する位相差部の厚みは、この順で薄くなることが好ましい。
【0089】
本態様における配向部の隣接する配向部との厚みの差としては、本発明の発光型表示装置の用途等に応じて適宜設定されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、位相差層の面内レターデーション値(Re)をλ/4とする場合には、隣接して表示される色の波長をλ1およびλ2(λ1>λ2)、上記配向層(各配向部)上に形成される位相差層(各位相差部)の面内方向の屈折率異方性をΔnとすると、厚みの差としては、(λ1−λ2)×(1/4)×(1/Δn)で示される値程度とすることが好ましい。
また、例えば、位相差層(各位相差部)の面内レターデーション値(Re)をλ/2とする場合には、厚みの差を(λ1−λ2)×(1/2)×(1/Δn)で示される値程度とすることが好ましい。
より具体的には、本態様において面内レターデーション値(Re)をλ/4またはλ/2とする場合には、厚みの差は、(λ1−λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±200nm(λ/4の場合)または400nm(λ/2の場合)程度であることが好ましく、なかでも、(λ1−λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±100nm(λ/4の場合)または200nm(λ/2の場合)程度であることが好ましく、特に、(λ1−λ2)×(1/4(または1/2))×(1/Δn)±50nm(λ/4の場合)または100nm(λ/2の場合)程度であることが好ましい。より視認性に優れたものとすることができるからである。
【0090】
なお、上記屈折率異方性Δnは、上述の屈折率異方体の面内方向において屈折率が最も大きい遅相軸方向の屈折率Nxおよび遅相軸方向に直交する進相軸方向の屈折率Nyにより、Nx−Nyで表される値であり、通常は0.05〜0.3の範囲内、より一般的には0.1〜0.15の範囲内であることが多い。
【0091】
本態様における隣接する配向部間の具体的な厚みの差としては、上述の位相差層に用いられる棒状化合物の種類および位相差層に求められる面内レターデーション値により適宜決定されることになる。
もっとも、当該距離は本態様において一般的に用いられる棒状化合物であれば、隣接する色が赤(610〜750nm)、緑(500〜560nm)、青(435〜480nm)であり、位相差層の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4とする場合には、通常、赤に対応する配向部と、緑に対応する配向部との間で、0.01μm〜0.03μmの範囲内となり、緑に対応する配向部と青に対応する配向部との間で、0.01μm〜0.03μmの範囲内となる。
【0092】
なお、上記配向部の隣接する配向部の厚みの差は、それぞれ図11中のDaで示す距離を意味するものとする。また、図中では、Daは、最も厚みの厚い配向部と2番目に厚みの厚い配向部との厚みの差を示すものである。
また、図11に示すように配向部の厚みおよび隣接する配向部の厚みの差は、表面の微細凹凸形状を含む厚みをいうものとする。
【0093】
本態様における配向部のパターン、すなわち、平面視上のパターンとしては、発光型表示装置の各色のパターンに対応するものであれば特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば帯状パターン、モザイク状パターン、および千鳥配置状パターン等を挙げることができる。なかでも本態様においては上記各配向部のパターンが互いに平行な帯状であること、すなわち、各色のパターンが、互いに平行な帯状であることが好ましい。発光型表示装置において形成されている各色のパターンと対応関係にすることが容易になるからである。また、各配向部をパターン精度良く形成することが容易だからである。
【0094】
既に説明した図8および図9は、上記配向部が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の一例を示す概略図である。図8および図9に示すように、本態様に用いられる配向層2においては上記配向部が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。
【0095】
上記配向部が帯状のパターンに形成されている場合、各配向部の幅としては、上記各色のパターンに対応するものであれば特に限定されるものではなく、各配向部の幅は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
しかしながら、本態様においては各配向部の幅は同一であることが好ましい。上記各色のパターンと対応関係にすることが容易になり、その結果、容易に製造可能なものとすることができるようになるからである。
【0096】
上記配向部の具体的な幅としては、上記各色のパターンと対応関係にあるものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、上記発光型表示装置において各色の画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように上記配向部の幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、50μm〜500μmの範囲内であることがより好ましい。
【0097】
さらに、本態様において上記配向部が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、本態様のパターン位相差フィルムが長尺状である場合、上記帯状のパターンは帯状の長手方向がパターン位相差フィルムの長尺方向と平行方向であっても良く、あるいは直交方向であってもよく、さらには斜めに交差する方向であってもよい。なかでも本態様においては、上記帯状のパターンは帯状の長手方向がパターン位相差フィルムの長尺方向と平行方向であることが好ましい。このような方向に帯状のパターンが形成されていることにより、容易かつ大量に形成することが可能となるからである。
【0098】
本態様に用いられる配向部は、各配向部が別体となるように形成されたものであっても良いが、全ての配向部が一体で形成されたものであることが好ましい。
【0099】
b.位相差部
本態様における位相差部は、上記位相差層を構成するものであり、上記配向部に対応して厚みが異なるものである。
本態様に用いられる位相差部は、後述する棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差部の厚みに依存して決定されるものである。
したがって、本態様に用いられる位相差部の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本態様のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜決定されるものである。
【0100】
本態様における位相差部の厚みとしては、各色の波長に対応して所望の位相差性を発現することができるものであれば特に限定されるものではなく、本態様のパターン位相差フィルムの用途等に応じて適宜設定されるものである。具体的には、位相差部の面内レターデーション値を対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内や、λ/2分に相当するような範囲内、さらには、λ/4+λ/2分に相当するような範囲内等とすることができる。
【0101】
本態様において、位相差部の厚みを面内レターデーションが対応する各色のλ/4分に相当するような範囲内の距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、上記棒状化合物の種類および対応する色により適宜決定されることになる。
【0102】
本態様における位相差部の配向部と接触する面と反対側の面の上記透明フィルム基材からの距離としては、隣接する位相差部同士で同様であることが好ましい。本態様のパターン位相差フィルムの表面形状を平坦なものとすることができ、他の部材との貼り合わせ性に優れたものとすることができるからである。また、本態様においては、配向層が厚みの異なる配向部を有することにより、厚みの異なる位相差部間の厚みの差を吸収させることができるからである。
【0103】
(e)パターン位相差フィルムの製造方法
本態様のパターン位相差フィルムを製造する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に、第1配向領域および第2配向領域を有する配向層を形成した後、当該配向層上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を塗工し、必要に応じて硬化処理を行って位相差層を形成することによって製造することができる。
【0104】
上記透明フィルム基材上に配向層を形成する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に上述した構成材料を含有する配向層形成用塗工液を塗布し、乾燥することによって配向層形成用塗工液からなる膜を形成し、必要に応じて硬化処理を行った後、当該膜の表面に微細凹凸形状を形成して第1配向領域および第2配向領域を形成する方法や、透明フィルム基材上に予め別個に形成した配向層を転写する方法等を挙げることができる。配向層を形成する具体的な方法としては、例えば、ストライプ状のライン状凹凸や微細なライン状凹凸を金型に切削し、その上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、更にその上に透明フィルム基材を密着させ、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次に、金型から剥離する等の方法を挙げることができる。
【0105】
上記位相差層形成用塗工液は、通常、棒状化合物と、溶媒とからなり、必要に応じて重合開始剤等を含むものであってもよい。上記位相差層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記棒状化合物を所望の濃度に溶解できるものであり、かつ、透明フィルム基材を侵蝕しないものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、シクロヘキサン等のアノン系溶媒、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶媒を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、本態様に用いられる溶媒は、1種類でもよく、2種類以上の溶媒の混合溶媒でもよい。
【0106】
上記位相差層形成用塗工液中における上記棒状化合物の含有量は、上記位相差層形成用塗工液を透明フィルム基材上に塗布する塗工方式等に応じて、上記位相差層形成用塗工液の粘度を所望の値にできる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本態様においては、上記棒状化合物の含有量が、上記位相差層形成用塗工液中、5質量%〜30質量%の範囲内が好ましく、特に10質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0107】
上記位相差層形成用塗工液中には、必要に応じて光重合開始剤を含んでも良い。特に紫外線照射により位相差層を硬化させる処理を実施する場合には、光重合開始剤を含むことが好ましい。本態様に用いられる光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系化合物等の一般的に公知のものを用いることができる。また、光重合開始剤を使用する場合には、光重合開始助剤を併用することができる。このような光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン類や、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体を例示することができるが、これらに限られるものではない。
【0108】
上記位相差層形成用塗工液を上記透明フィルム基材上に塗工する塗布方式としては、所望の平面性を達成できる方法であれば、特に限定されるものではない。具体的には、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などを例示することができるが、これに限られるものではない。上記位相差層形成用塗工液の塗膜の乾燥方法は、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、上記棒状化合物として重合性材料を用いる場合、上記重合性材料を重合する方法は、特に限定されるものではなく、上記重合性材料が有する重合性官能基の種類に応じて適宜決定すればよい。
【0109】
(2)第2態様
次に、本態様に用いられるパターン位相差板の第2態様について説明する。本態様のパターン位相差板は、上記透明フィルム基材上に形成され、表面に厚みが大きい厚膜領域および上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域がパターン状に形成された配向層と、上記配向層の上記表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層とを有するパターン位相差フィルムであって、上記厚膜領域および上記薄膜領域が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されており、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、上記厚膜領域上に形成された位相差層または上記薄膜領域上に形成された位相差層であることを特徴とするものである。
【0110】
このような本態様に用いられるパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムとしては、具体的には、既に説明した図3に示すものを挙げることができる。
【0111】
本態様においては、上記配向層が上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されたものであり、かつ上記厚膜領域の表面に形成された微細凹凸形状と、上記薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状とが同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるようなものであることにより、上記厚膜領域上に形成された位相差層と上記薄膜領域上に形成された位相差層とは、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差に相当する分だけ異なった位相差値(面内レターデーション)を示すことになる。このため、本態様においては位相差層において位相差値の大きい高位相差領域と、上記高位相差領域よりも位相差値が小さい低位相差領域とが、上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されたパターンと同一のパターンで形成されることになる。したがって、本態様によれば位相差層において高位相差領域と低位相差領域とがパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを有するものとすることができる。したがって、このような高位相差領域および低位相差領域を上記第1円偏光化領域及び第2円偏光化領域として用いることにより、容易に3次元映像を得ることができる。
【0112】
本態様のパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムは、少なくとも透明フィルム基材、配向層および位相差層を有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。
以下、このようなパターン位相差フィルムの各構成について詳細に説明する。
なお、上記透明フィルム基材については、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0113】
(a)配向層
まず、本態様に用いられる配向層について説明する。本態様に用いられる配向層は上記透明フィルム基材上に形成されるものであり、位相差層に含まれる棒状化合物を配列させる機能を有するものである。そして、本態様に用いられる配向層は、表面に厚みが大きい厚膜領域と、上記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域とがパターン状に形成されており、かつ上記厚膜領域および上記薄膜領域の表面に、それぞれ同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように微細凹凸形状が形成されていることを特徴とするものである。本態様においてはこのような配向層が用いられることにより、当該配向層上に形成される位相差層において棒状化合物の配列方向は位相差層全体において同一方向になるが、上記厚膜領域上に形成された位相差層(低位相差領域)と、上記薄膜領域上に形成された位相差層(高位相差領域)とは厚みが異なるため、この厚みの差に相当する分だけ高位相差領域は、低位相差領域よりも位相差値が高くなることになる。したがって、本態様においてはこのような配向層が用いられることにより、厚膜領域と薄膜領域とが形成されたパターンに対応して、位相差層において低位相差領域および高位相差領域がパターン状に配置されたパターン位相差フィルムを得ることができる。
【0114】
(i)厚膜領域および薄膜領域
本態様における配向層に形成された厚膜領域と薄膜領域とは、配向層の表面において互いに厚みが異なる部位である。上述したように本態様のパターン位相差フィルムにおいては、位相差層において厚膜領域と薄膜領域との厚みの差に相当する分だけ位相差値が異なるパターンが形成されることになる。このため、本態様における厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、低位相差領域と高位相差領域との位相差値の差をどの程度にするかによって適宜決定されるものである。したがって、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、本発明の用途、および後述する位相差層に用いられる棒状化合物の種類等に応じて適宜決定されるものであり特に限定されるものではない。中でも本態様においては上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差が、位相差層の高位相差領域の面内レターデーション値と、位相差層の低位相差領域の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当する距離であることが好ましい。これにより、例えば、配向層上に位相差層を形成する際に、低位相差領域の面内レターデーションがλ/4分に相当するようにすることにより、得られるパターン位相差フィルムは、低位相差領域の面内レターデーション値がλ/4分に相当し、かつ高位相差領域の面内レターデーション値がλ/4+λ/2分に相当することになるが、このような態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記低位相差領域、上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、精度良く3次元映像を表示できるからである。
【0115】
本態様において、上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差を、高位相差領域の面内レターデーション値と、低位相差領域の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当するようになる距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、後述する位相差層に用いられる棒状化合物の種類により適宜決定されることになる。もっとも、当該距離は本態様において一般的に用いられる棒状化合物であれば、通常、1.5μm〜3.0μmの範囲内となる。
【0116】
上記厚膜領域および上記薄膜領域の厚みとしては、厚膜領域と薄膜領域の差を所定の範囲にすることができる範囲内であれば、厚膜領域の厚みと薄膜領域の厚みは特に限定されるものではない。例えば、厚膜領域の厚みが3.0μmで薄膜領域の厚みが1.0μmの場合、その差は2.0μmとなるが、厚膜領域の厚みが13.0μmで薄膜領域の厚みが11.0μmで、その差が2.0μmとなる様にしてもよい。中でも本態様においては、上記厚膜領域の厚みは1.6μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、2.5μm〜10μmの範囲内であることがより好ましく、1.5μm〜5μmの範囲内であることがさらに好ましい。また、上記薄膜領域の厚みは0.1μm〜17μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜7μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜4μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0117】
なお、上記厚膜領域の厚み、上記薄膜領域の厚み、および上記厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、それぞれ図12中のD1,D2、およびD3で示す距離を意味するものとする。
また、図12に示すように上記厚膜領域および上記薄膜領域の厚みは、表面に形成された微細凹凸形状を含む厚みをいうものとする。
【0118】
上記厚膜領域および上記薄膜領域は配向層の表面にパターン状に形成されたものである。ここで、上記厚膜領域および上記薄膜領域が形成されるパターンは、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば、本発明の用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば帯状パターン、モザイク状パターン、および千鳥配置状パターン等を挙げることができる。中でも本態様においては上記厚膜領域および上記薄膜領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていること、すなわち、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。上記厚膜領域および上記薄膜領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることにより、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域を容易に互いに平行な帯状のパターンとすることができ、上述のとおり、上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、を偏光板を介して対応関係にすることが容易になるからである。
【0119】
図13は、上記厚膜領域および上記薄膜領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されている場合の一例を示す説明図である。ここで、図13(b)は、図13(a)におけるX−X’線矢視断面図である。図13(a)、(b)に示すように、本態様に用いられる配向層2においては上記厚膜領域2Cおよび上記薄膜領域2Dが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。ここで、図13(a)、(b)におけるW1、W2はそれぞれ厚膜領域の帯幅および薄膜領域の帯幅を示す。
【0120】
上記厚膜領域および薄膜領域が帯状のパターンに形成されている場合、厚膜領域および薄膜領域の幅としては、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば特に限定されるものではなく、上記「(1)第1態様」における第1配向領域および第2配向領域と同様とすることができる。
【0121】
また、本態様において上記厚膜領域および上記薄膜領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、上記厚膜領域および上記薄膜領域の間に、光を吸収するブラックラインを設けてもよい。この場合、ブラックラインの幅は特に限定されるものではないが、通常、10μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0122】
また、本態様において上記厚膜領域および上記薄膜領域が上記帯状のパターンに形成されている場合、帯状のパターンが形成される方向としては特に限定されるものではない。例えば、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0123】
(ii)微細凹凸形状
次に、上記厚膜領域および上記薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状について説明する。本態様のパターン位相差フィルムは、上記配向層上に後述する位相差層が積層された構成を有するものであるところ、上記厚膜領域および薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状は、上記位相差層中に含まれる棒状化合物を一定方向に配列させるために形成されるものである。
【0124】
本態様における微細凹凸形状は、棒状化合物を一定方向に配列させることができるものであれば特に限定されるものではない。ここで、棒状化合物はライン状凹凸構造が形成された表面においては、当該ライン状凹凸構造の長手方向に平行に配列性質を有するため、本態様における微細凹凸形状は、ライン状凹凸構造からなるものであることが好ましい。このようなライン状凹凸構造によれば上記棒状化合物を配列される方向を予め決定することができるからである。
【0125】
上記厚膜領域および薄膜領域の表面にライン状凹凸構造が形成される態様としては、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様であってもよく、あるいはライン状凹凸構造がストライプ状に形成された態様であってもよい。これらの態様について図を参照しながら説明する。図14は上記微細凹凸形状が形成された態様の一例を示す概略図である。図14に例示するように、上記微細凹凸形状としてライン状凹凸構造が形成される態様としては、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様であってもよく(図14(a)、あるいはライン状凹凸構造がストライプ状に形成された態様であってもよい(図14(b))。またさらに、両者が組み合わされた態様であってもよい(図14(c))。
【0126】
ここで、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様とは、例えば、表面にラビング処理がなされた場合等に形成されるような微小な傷のようなライン状凹凸構造が、略一定方向に形成された態様を意味するものである。一方、ライン状凹凸構造がストライプ状に形成された態様とは、壁状に形成された凸部が一定の間隔でストライプ状に形成された態様を意味するものである。ライン状凹凸構造の大きさは上述のランダムの態様よりも比較的大きく、例えば表面にラビング処理がなされた場合に形成されるような微小な傷のような凹凸形状はこれに含まれないものである。
【0127】
本態様においては上記厚膜領域の表面に形成される微細凹凸形状と、上記薄膜領域の表面に形成される微細凹凸形状とが同一態様であってもよく、あるいは異なる態様であってもよい。中でも本態様においては少なくとも厚膜領域または薄膜領域の一方の表面に形成された微細凹凸形状が上記ストライプ状のライン状凹凸形状であることが好ましい(図14(c)参照)。微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様と、ストライプ状のライン状凹凸構造に形成された態様とでは、後者の方が棒状化合物に対する配向規制力を強く発現することができるため、少なくとも厚膜領域または薄膜領域の一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸形状であることにより、位相差層における高位相差領域と低位相差領域との境界を明確にすることができるからである。また、このような観点から、本態様においては厚膜領域または薄膜領域の表面に形成された微細凹凸形状が共に上記ストライプ状のライン状凹凸形状であることが好ましい(図14(b)参照)。
【0128】
ストライプ状のライン状凹凸構造が形成される場合、ライン状凹凸構造の高さ、幅、および周期は棒状化合物を配列させることができる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上記「(1)第1態様」に記載の内容と同様とすることができる。
【0129】
(iii)構成材料
本態様における配向層を形成するために用いられる構成材料としては、上述した厚膜領域および薄膜領域とを所定の形状で形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0130】
(b)位相差層
次に、本態様における位相差層について説明する。本態様における位相差層は、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域を含む円偏光化層であり、上述した配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有することにより本態様のパターン位相差フィルムに位相差性を付与するものである。また、本態様においては上述したような特徴を有する配向層が形成されていることにより、本態様における位相差層は高位相差領域と低位相差領域とが、すなわち、上記第1円偏光化領域と第2円偏光化領域とが、上記薄膜領域および上記厚膜領域が形成されたパターンと同一のパターン状に形成されたものになる。
なお、上記屈折率異方性を有する棒状化合物としては、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0131】
本態様に用いられる位相差層は、上記棒状化合物が含有されることにより、位相差性を発現するものになっているところ、当該位相差性の程度は棒状化合物の種類および位相差層の厚みに依存して決定されるものである。したがって、本態様に用いられる位相差層の厚みは所定の位相差性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定されるものである。また、本態様における位相差層は、低位相差領域と、高位相差領域とでは厚みが異なることになる。中でも本態様においては、低位相差領域の厚みは低位相差領域の面内レターデーションがλ/4分に相当するような範囲内であることが好ましい。これにより、上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差を低位相差領域の面内レターデーション値と、高位相差領域の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当する距離とすることにより、低位相差領域の面内レターデーション値がλ/4分に相当し、かつ位相差層における高位相差領域の面内レターデーション値がλ/4+λ/2分に相当することになるが、このような態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記低位相差領域、上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、より精度良く3次元映像を表示できるからである。
【0132】
本態様において、上記低位相差領域の厚みを当該低位相差領域の面内レターデーションがλ/4分に相当するような範囲内の距離にする場合、具体的にどの程度の距離にするかは、位相差層に用いられる棒状化合物の種類により適宜決定されることになる。もっとも、当該距離は本態様において一般的に用いられる棒状化合物であれば、通常、0.1μm〜1.9μmの範囲内であることが好ましく、0.25μm〜1.75μmの範囲内であることがより好ましく、0.5μm〜1.5μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0133】
(c)パターン位相差フィルム
(i)他の構成
本態様のパターン位相差フィルムは少なくとも上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる他の構成としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成されるアンチグレア層または反射防止層を挙げることができる。このようなアンチグレア層または反射防止層としては、具体的には、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0134】
(ii)パターン位相差フィルム
本態様のパターン位相差フィルムは、上述した厚膜領域および薄膜領域が形成されたパターンに対応するように、位相差層に高位相差領域と低位相差領域とがパターン状に形成された構成を有するものとなる。ここで、上記高位相差領域および低位相差領域が有する位相差性の程度については、所望の3次元映像を表示できるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定することができる。したがって、高位相差領域および低位相差領域が示す具体的な面内レターデーションの数値範囲についても特に限定されるものではなく、本発明の用途に応じて適宜調整すればよい。そして、本態様においては厚膜領域と薄膜領域との厚みの差を調整することにより、高位相差領域および低位相差領域に任意の値の面内レターデーションを付与することができる。なかでも、本態様のパターン位相差フィルムを上記高位相差領域の面内レターデーション値がλ/4+λ/2分に相当する程度であり、かつ上記低位相差領域の面内レターデーション値がλ/4分に相当する程度であることが好ましい。より具体的には上記高位相差領域の面内レターデーション値は、300nm〜480nmの範囲内であることが好ましく、330nm〜450nmの範囲内であることがより好ましく、360nm〜420nmの範囲内であることがさらに好ましい。また低位相差領域の面内レターデーション値は100nm〜160nmの範囲内であることが好ましく、110nm〜150nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜140nmの範囲内であることがさらに好ましい。なお、本態様における位相差層において、高位相差領域の面内レターデーション値と低位相差領域の面内レターデーション値とは異なるが、遅相軸の方向はほぼ同一の方向となる。
【0135】
また、本態様における位相差層において高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンについても特に限定されるものではなく、本発明の用途等に応じて適宜決定することができる。なお、高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンは配向層において厚膜領域および薄膜領域が形成されたパターンに一致するものになるため、厚膜領域および薄膜領域を形成するパターンを選択することによって、同時に高位相差領域および低位相差領域が形成されるパターンを決定することになる。
【0136】
なお、本態様のパターン位相差フィルムにおいて位相差層に高位相差領域および低位相差領域からなるパターンが形成されていることは、例えば、面内レターデーション値を測定し比較することにより評価することができる。
【0137】
(iii)配向部および位相差部
本態様のパターン位相差板、すなわち、本態様のパターン位相差フィルムは、上述のように透明フィルム基材、配向層および位相差層を含むものであるが、上記配向層が、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるもの、すなわち、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むものであることが好ましい。表示品質に優れた3D表示装置とすることができるからである。また、容易に製造できかつ大量生産が可能なものとすることができるからである。
【0138】
このような本態様のパターン位相差フィルムを図を参照して説明する。図15は、図16のB−B線断面図であり、図16は、本態様のパターン位相差フィルムの一例を示す概略平面図である。図15および図16に例示するように、本態様のパターン位相差フィルム20(10)は、厚みの大きい厚膜領域2Cおよび上記厚膜領域2Cよりも厚みが小さい薄膜領域2Dを含み、上記厚膜領域2Cおよび上記薄膜領域2Dに含まれる配向部が同一方向に上記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されている。
また、薄膜領域2Dに含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)には、一定方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成され、厚膜領域2C(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)には、薄膜領域2Dと同一方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成されている。また、薄膜領域2Dに含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)と、厚膜領域2Cに含まれる配向部(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)とは、それぞれ、表示装置の同じ色に対応するものである。すなわち、配向部2a´´−1および配向部2b´´−1、配向部2a´´−2および配向部2b´´−2、配向部2a´´−3および配向部2b´´−3は、それぞれ、表示装置の同じ色のパターンに対応するものである。
また、位相差層3は、高位相差領域3Dが、薄膜領域2Dに含まれる配向部(2a´´−1、2a´´−2、2a´´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a´´−1、3a´´−2、3a´´−3)を含み、低位相差領域3Cが、厚膜領域2Cに含まれる配向部(2b´´−1、2b´´−2、2b´´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3b´´−1、3b´´−2、3b´´−3)を含むものである。
なお、この例においては、高位相差領域3Dおよび低位相差領域3Cは、それぞれ長尺方向に対して0°の方向に棒状化合物が配列され、両領域の遅相軸が平行なものである。また、厚膜領域および薄膜領域に含まれる同一の色に対応する配向部の厚みの差が、上記対応する位相差部の面内レターデーション値の差を対応する各色のλ/4分に相当する距離であり、低位相差領域に含まれる各位相差部の面内レターデーション値が、各色のλ/4分に相当するものであり、高位相差領域に含まれる各位相差部の面内レターデーション値が、各色のλ/4+λ/2分に相当するものである。
また、図16中の矢印は、棒状化合物の配列方向を示すものである。
【0139】
なお、上記配向部および位相差部については、上記「1.第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0140】
(d)パターン位相差フィルムの製造方法
本態様のパターン位相差フィルムを製造する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に、厚膜領域および薄膜領域を有する配向層を形成した後、当該配向層上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を塗工し、必要に応じて硬化処理を行って位相差層を形成することによって製造することができる。
なお、上記配向層を形成する方法、位相差層形成用塗工液および上記透明フィルム基材上に塗工する塗布方式としては、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0141】
(3)第3態様
次に、本態様に用いられるパターン位相差板の第3態様について説明する。本態様のパターン位相差板は、上記透明フィルム基材と、上記透明フィルム基材上に形成された配向層と、上記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムおよび上記パターン位相差フィルム上に配置され、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層を有するものであり、上記位相差層が、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域が、パターン状に配置されたものであり、上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とが直交または平行関係にあり、上記第1円偏光化領域が、上記第1位相差領域および上記第1位相差領域上の第2位相差層を含むことを特徴とするものである。
また、上記第2円偏光化領域が、上記第1位相差領域以外の領域上の第2位相差層を少なくとも含むものである。
なお、本態様のパターン位相差板は、上記偏光板、位相差層および第2位相差層がこの順となるように配置されるものである。
【0142】
このような本態様に用いられるパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムおよび第2位相差層を有するものとしては、具体的には、既に説明した図4に示すものを挙げることができる。
【0143】
本態様においては、上記第1円偏光化領域が、上記位相差層中の第1位相差領域および上記第1位相差領域上の第2位相差層を含むものであることにより、容易に3次元映像を得ることができる。
【0144】
ここで、本態様のパターン位相差板が、パターン位相差フィルムと、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層(以下、「λ/4板」と称する場合がある。)とを組み合わせたものであることにより、容易に3D表示装置を製造することができる点について、より詳細に説明する。図17は、本態様に用いられるパターン位相差フィルムと、λ/4板とを組み合わせたパターン位相差板を用いた、3次元表示可能な発光型表示装置の一例を示す概略図である。図17に例示するように、本態様のパターン位相差板、すなわち、パターン位相差フィルムと、λ/4板とを組み合わせて用いる発光型表示装置は、パッシブ方式により3D表示が可能なものとなる。その原理は次の通りである。
まず、発光型ディスプレイの画素部を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。次に、本態様に用いられるパターン位相差フィルムとして、位相差層の第1位相差領域が左目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成され、かつ第1位相差領域以外の領域(図17では、当該領域には何も形成されていないものとする。)が右目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成されたものを用意する。そして、このような本態様に用いられるパターン位相差フィルムを、偏光板の表示面側に配置し、さらにλ/4板をパターン位相差フィルムの表示面側に配置する。このとき、第1位相差領域の遅相軸の方向と、偏光板の偏光軸の方向とが45°で交差するようにし、さらに第1位相差領域の遅相軸方向とλ/4板の遅相軸方向とが平行または直交の関係になるようにする。このようにパターン位相差フィルムとλ/4板とを配置することによって、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された映像(以下、それぞれ「右目用映像」、「左目用映像」と称する場合がある。)は、次のような経路で観察者に視認されることになる。
すなわち、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された各映像は、まず、偏光板を透過することから、それぞれが直線偏光に変換されることになる。ここで、図17においては、偏光板の偏光軸は0°方向となっているため、第2偏光板を透過した各映像も、0°方向の直線偏光となる。次に、このように直線偏光に(0°)変換された各映像は、本態様に用いられるパターン位相差フィルムに入射することになるが、左目用映像は第1位相差領域を通過し、右目用映像は位相差層が形成されていない領域を通過するため、左目用映像は偏光軸が90°の直線偏光(L1)として、パターン位相差フィルムを透過するが、右目用映像には変化はなく、偏光軸が0°の直線偏光(L2)のままパターン位相差フィルムを透過することになる。次に、L1およびL2がλ/4板に入射することにより、左目用映像は右旋回の円偏光(C1)に、右目用映像は左旋回の円偏光(C2)に、それぞれ変換されることになる。
このように、本態様に用いられるパターン位相差フィルムおよびλ/4板を通過した右目用映像および左目用映像は、互いに直交する円偏光に変換されることになるため、視聴者に右目用レンズと左目用レンズとに互いに直交する円偏光レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用の映像が左目用のレンズのみを通過するようにすることによって、右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることができ、3次元表示が可能となるのである。
なお、図17においては、本態様に用いられるパターン位相差フィルムにおける位相差層において、第1位相差領域以外の領域には何も形成されていない例を説明したが、例えば、上記第1位相差領域以外の領域に、面内レターデーション値がλ/2分に相当し、かつ遅相軸方向が上記第1位相差領域の遅相軸方向と45°で交差する関係にあり、さらに遅相軸方向が、偏光板の偏光軸方向と平行又は直交の関係にある第2位相差領域が形成されている場合であっても、上記と同様に3次元表示可能な発光型表示装置を得ることができる。
【0145】
本態様のパターン位相差板は、少なくともパターン位相差フィルムおよび第2位相差層を有するものである。
以下、このようなパターン位相差板の各構成について詳細に説明する。
【0146】
(a)パターン位相差フィルム
本態様に用いられるパターン位相差フィルムは、少なくとも透明フィルム基材と、配向層と、位相差層とを有するものであり、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。以下、本態様に用いられるパターン位相差フィルムに用いられる各構成について順に説明する。
なお、上記透明フィルム基材については、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0147】
(i)位相差層
まず、本態様に用いられる位相差層について説明する。本態様に用いられる位相差層は、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有し、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域がパターン状に配置されたものである。
【0148】
ここで、「第1位相差領域がパターン状に配置された」とは、位相差層が第1位相差領域のみからなる態様であってもよく、あるいは位相差層の一部に第1位相差領域がパターン状に配置されている態様であってもよいことを意味するものである。このような位相差層の各態様については後述する。
【0149】
上記第1位相差領域に含有される棒状化合物について説明する。本態様に用いられる棒状化合物は屈折率異方性を有するものである。ここで、上記第1位相差領域は面内レターデーションがλ/2分に相当する程度の位相差性を示すものであるため、通常、上記棒状化合物は第1位相差領域内において一方向に配列して存在することになる。
【0150】
このような棒状化合物としては、第1位相差領域に面内レターデーション値がλ/2分に相当する程度の位相差性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、上記「(1)第1態様」の項に記載されたものと同様とすることができる。
【0151】
本態様に用いられる位相差層は、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域を有するものであるが、第1位相差領域の面内レターデーションの具体的な値は、通常、200nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、220nm〜280nmの範囲内であることがより好ましく、230nm〜270nmの範囲内であることが特に好ましい。
【0152】
本態様に用いられる位相差層に第1位相差領域が配置されている態様としては、位相差層が第1位相差領域のみからなる態様(A態様)であってもよく、または位相差層内の一部に第1位相差領域が配置されている態様(B態様)であってもよい。このような位相差層の態様について図を参照しながら説明する。図18は、位相差層において第1位相差領域が配置されている態様について説明する説明図である。図18に例示するように、本態様に用いられる位相差層3は、第1位相差領域3Eのみからなる態様であってもよく(図18(a))、または位相差層3内の一部に第1位相差領域3Eが形成されている態様であってもよい(図18(b))。
【0153】
本態様に用いられる位相差層としては、上記A態様および上記B態様の何れの態様であってもよいが、上記B態様であることが好ましい。B態様の位相差層は、位相差層自体の形状をパターン状にすることを要しないため、位相差層を形成することが容易だからである。
【0154】
上記B態様の位相差層を用いる場合、位相差層には面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域と、それ以外の領域とが包含されることになる。また、第1位相差領域が位相差層内でパターン状に配置されることから、第1位相差領域以外の領域も位相差層内にパターン状に配置されることになる。ここで、本態様に用いられる位相差層が上記B態様のものである場合、上記第1位相差領域以外の領域は、位相差性を示すものであってもよく、あるいは位相差性を示さないものであってもよいが、位相差性を有するものである場合には、遅相軸の方向が、上記第1位相差領域の遅層軸の方向と、45°に交差する方向であることを要する。そうでなければ、3次元映像を表示することが困難になるからである(なお、第1位相差領域以外の領域が位相差性を有する場合、当該第1位相差領域以外の領域を「第2位相差領域」と称する。)。中でも本態様に用いられる位相差層として上記B態様のものが用いられる場合は、上記第1位相差領域と、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する第2位相差領域と、を有するものであり、上記第2位相差領域に含有される上記棒状化合物の配向方向が、上記第1位相差領域に含有される棒状化合物の配向方向に対して45°の方向であることが好ましい。さらに、上記第2位相差領域は、面内レターデーション値がλ/2分に相当することが好ましい。これにより、上記位相差層における第1位相差領域および第2位相差領域を透過する光量を同程度とすることができ、また第1位相差領域および第2位相差領域の境界を目立たなくすることができるため、表示品質に優れたものを得ることができるからである。すなわち、偏光板の偏光軸と第2位相差領域の遅層軸が平行又は直交の関係にあれば、第2位相差層が偏光状態を変換する作用効果はゼロになるので、第2位相差領域の面内レターデーション値はいくつであっても良いが、第1位相差領域と第2位相差領域を透過する光の透過率が変わると第1位相差領域と第2位相差領域の境界が見えてしまうので、第1位相差領域と第2位相差領域は同一の物質で構成され膜厚が等しいことがより好ましいからである。
【0155】
このような位相差層について図を参照しながら説明する。図19は、本態様に用いられる位相差層が、上記第1位相差領域および第2位相差領域からなる場合の一例を示す説明図である。図19に例示するように、本態様に用いられる位相差層3は、上記第1位相差領域3Eと、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する第2位相差領域3Fと、を有するものであり、上記第2位相差領域3Fに含有される上記棒状化合物の配向方向が、上記第1位相差領域3Eに含有される棒状化合物の配向方向に対して45°の方向であり、上記第1位相差領域3Eと、上記第2位相差領域3Fとがパターン状に配置されたものであることが好ましい。また、この場合、上記第2位相差領域3Fは、面内レターデーション値がλ/2分に相当することが好ましい。
【0156】
なお、本態様に用いられる位相差層が、このように第1位相差領域および第2位相差領域を有するものである場合、上記第1位相差領域および第2位相差領域は、遅相軸方向が45°で交差する関係になる。また上述した通り、上記第1位相差領域および第2位相差領域は共に面内レターデーション値がλ/2分に相当することがさらに好ましい。
【0157】
本態様に用いられる位相差層の厚みとしては、上記第1位相差領域の面内レターデーション値をλ/2分に相当する程度にできる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上記棒状化合物の種類等に応じて適宜決定することができるものであるが、通常、0.5μm〜4μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜3μmの範囲内であることがより好ましく、1.5μm〜2.5μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0158】
上記位相差層において、第1位相差領域が配置されているパターンは、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンを上記画素部が形成されているパターンと対応関係にあるものとすることができるものであり、所望の3次元映像を表示することができるものであれば、本発明の用途等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。このようなパターンとしては、例えば帯状パターン、モザイク状パターン、千鳥配置状パターン等を挙げることができる。中でも本態様においては第1位相差領域が帯状のパターンに形成されていること、すなわち、上記第1位相差領域および上記第1位相差領域以外の領域が帯状のパターンに形成されており、上記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が互いに平行な帯状のパターンに形成されていることが好ましい。このようなパターンで第1位相差領域が配置されていることにより、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域を容易に互いに平行な帯状のパターンとすることができ、上述のとおり、上記発光型ディスプレイにおいて上記画素部が形成されているパターンと、上記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、を偏光板を介して対応関係にすることが容易になるからである。
【0159】
また、本態様に用いられる位相差層が、上記第1位相差領域および上記第2位相差領域がパターン状に配置された態様のものである場合、上記第1位相差領域および第2位相差領域は、互いに平行な帯状のパターンに配置されていることが好ましい。この場合、第1位相差領域と第2位相差領域とは交互に配置されることになるが、このようなパターンで第1位相差領域と第2位相差領域とが配置されていることにより、上記と同様の理由から、3D発光型表示装置とすることが容易になるからである。
【0160】
上記第1位相差領域が帯状のパターンに配置されている場合、第1位相差領域および上記第1位相差領域以外の領域の幅は、本発明の用途に応じて適宜決定される。具体的には、上記「(1)第1態様」の項に記載の第1配向領域および第2配向領域の幅と同様とすることができる。
さらに、本態様に用いられる位相差層が、帯状のパターンに形成された第1位相差領域および第2位相差領域が交互に配置された態様である場合、第1位相差領域と第2位相差領域との幅は同一であることが好ましい。
【0161】
(ii)配向層
次に、本態様に用いられる配向層について説明する。本態様に用いられる配向層は透明フィルム基材上に形成されるものであり、位相差層に含まれる棒状化合物を配列させる機能を有するものである。
【0162】
本態様に用いられる配向層としては、上記位相差層に含有される棒状化合物を配列させることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に棒状化合物を配列させることが可能な配向層として公知のものを用いることができる。このような配向層としては、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等からなるものを挙げることができる。
【0163】
また、本態様に用いられる配向層は上記棒状化合物を配列させる機能を有するものであるが、このような機能は、例えば、配向層の表面をラビング処理したり、あるいは配向層の表面に微細な凹凸形状を形成することよって付与することができる。
【0164】
なお、本態様に用いられる位相差層が、上記第1位相差領域および第2位相差領域からなる態様である場合、本態様に用いられる配向層は、上記第1位相差領域に対応する領域と、第2位相差領域に対応する領域とにおいて、棒状化合物を配列させることができる方向が、45°交差するように配向処理がなされることが好ましい。
【0165】
(iii)パターン位相差フィルム
本態様のパターン位相差フィルムは少なくとも上記透明フィルム基材、配向層、および位相差層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有してもよいものである。本態様に用いられる他の構成としては、例えば、上記透明フィルム基材の上記配向層が形成された面とは反対面上に形成されるアンチグレア層または反射防止層を挙げることができる。このようなアンチグレア層または反射防止層としては、具体的には、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0166】
(iv)配向部および位相差部
本態様のパターン位相差フィルムは、上述のように透明フィルム基材、配向層および位相差層を含むものであるが、上記配向層が、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なるもの、すなわち、発光型表示装置の各色のパターンに対応して厚みが異なる配向部を含むものであり、上記位相差層が、上記配向部に対応して厚みが異なる位相差部を含むものであることが好ましい。表示品質に優れた3D表示装置とすることができるからである。また、容易に製造できかつ大量生産が可能なものとすることができるからである。
【0167】
ここで、このような配向部および位相差部を含む本態様のパターン位相差フィルムを図を参照して説明する。図20は、図21のC−C線断面図であり、図21は、本態様のパターン位相差フィルムの他の例を示す概略平面図である。図20および図21に例示するように、本態様のパターン位相差フィルム10は、配向層2が、屈折率異方性を有する棒状化合物を一定の方向に配列させる第1配向領域2Eおよび第1配向領域2Eとは異なる方向に配列させる第2配向領域2Fを含むものである。
また、第1配向領域2Eに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)には、一定方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成され、第2配向領域2F(2b´−1、2b´−2、2b´−3)には、第1配向領域2Eとは異なる方向に棒状化合物を配列させる微細凹凸形状が形成されている。
また、位相差層3は、上記第1配向領域2Eおよび第2配向領域2Fの棒状化合物の配列方向に配列された棒状化合物を含む第1位相差領域3Eおよび第2位相差領域3Fを有し、さらに、第1位相差領域3Eが、第1配向領域2Eに含まれる配向部(2a´−1、2a´−2、2a´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3a´−1、3a´−2、3a´−3)を含み、第2位相差領域3Fが、第2配向領域2Fに含まれる配向部(2b´−1、2b´−2、2b´−3)に対応して厚みの異なる位相差部(3b´−1、3b´−2、3b´−3)を含むものである。
なお、この例においては、第1位相差領域および第2位相差領域がそれぞれ本態様のパターン位相差フィルムの長尺方向に対して0°および45°の方向に棒状化合物が配列され、両領域の遅相軸が45°で交差するものである。また、第1位相差領域および第2位相差領域に含まれる各位相差部のレターデーション値が各色のλ/2分に相当するものである。また、図21中の矢印は、各配向領域での棒状化合物を配列させる方向である。
【0168】
なお、上記配向部および位相差部については、上記「1.第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0169】
(v)パターン位相差フィルムの製造方法
本態様のパターン位相差フィルムを製造する方法としては、例えば、透明フィルム基材上に、配向層を形成した後、当該配向層上に棒状化合物を含有する位相差層形成用塗工液を塗工し、必要に応じて硬化処理を行って位相差層を形成することによって製造することができる。
なお、上記配向層を形成する方法、位相差層形成用塗工液および上記透明フィルム基材上に塗工する塗布方式としては、上記「(1)第1態様」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0170】
(b)第2位相差層
本態様に用いられる第2位相差層は、面内レターデーション値がλ/4分に相当する程度の位相差性を示すものである。なお、本態様に用いられる第2位相差層は、全面において遅相軸の方向が一定方向であるものであり、パターン状に形成されたものではない。
また、本態様に用いられる第2位相差層は、上記位相差層の第1位相差領域上に位置するものが上記第1位相差領域とともに上記第1円偏光化領域を構成し、上記位相差層の第1位相差領域以外の領域上に位置するものが上記第2円偏光化領域を構成するものである。
【0171】
本態様に用いられる第2位相差層は、面内レターデーション値がλ/4分に相当する程度の位相差性を示すものであれば特に限定されるものではない。このような第2位相差層としては、屈折率異方性を有する棒状化合物が規則的に配列してなるものや、屈折率異方性を有する高分子材料からなるフィルムを延伸してなるもの等を挙げることができる。
【0172】
本態様に用いられる第2位相差層が屈折率異方性を有する棒状化合物が規則的に配列してなるものである場合、上記棒状化合物としては、第2位相差層にλ/4分に相当する程度の位相差性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。このような棒状化合物については、上記位相差層に用いられるものと同様のものを用いることができる。なお、第2位相差層が屈折率異方性を有する棒状化合物が規則的に配列してなるものである場合、当該第2位相差層は、通常、上記棒状化合物を規則的に配列させることができる配向層と共に用いられることになる。
【0173】
一方、本態様に用いられる第2位相差層が、屈折率異方性を有する高分子材料からなるフィルムを延伸してなるものである場合、上記高分子材料の例としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂を挙げることができる。上記シクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。このような上記環状オレフィンからなるモノマーとしては、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等を挙げることができる。また、本態様に用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであっても好適に用いることができる。また、上記シクロオレフィン系樹脂は上記環状オレフィンからなるモノマーの単独重合体であってもよく、または、共重合体であってもよい。具体例としては、例えば、Ticona社製 Topas(登録商標)、ジェイエスアール社製 ARTON(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONEX(登録商標)、三井化学社製 アペル(登録商標)等を延伸したものを挙げることができる。
【0174】
本態様に用いられる第2位相差層は、面内レターデーション値がλ/4分に相当するものである。具体的な面内レターデーション値は特に限定されるものではないが、通常、100nm〜160nmの範囲内であることが好ましく、110nm〜150nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜140nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0175】
本態様に用いられる第2位相差層は、上記位相差層と積層されたもの、すなわち、上記パターン位相差板が、上記パターン位相差フィルムの位相差層上に上記第2位相差層が積層され、固定された積層型パターン位相差フィルムであっても良い。上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とが直行または平行関係とすることが容易だからである。上記位相差層と上記第2位相差層とが積層された態様としては、上記位相差層における上記第1位相差領域の遅相軸方向と、上記第2位相差層の遅相軸方向とが、直交または平行関係となるように積層される態様であれば特に限定されるものではなく、上記位相差層と上記第2位相差層とが直に接するように積層された態様であってもよく、または、他の層を介して積層された態様であってもよい。
【0176】
ここで、積層型パターン位相差フィルムが、位相差層と第2位相差層とが他の層を介して積層された態様の具体例としては、例えば、上述したパターン位相差フィルムに、第2位相差層が積層された構成や、上記パターン位相差フィルムにおける透明基材フィルムとして上記第2位相差層が用いられた構成を例示することができるがこの限りではない。
【0177】
2.偏光板
本発明に用いられる偏光板は、発光型ディスプレイと、パターン位相差板との間に配置されるものである。本発明に用いられる偏光板としては、透過光を直線偏光とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置に用いられる偏光板を用いることができる。
【0178】
このような偏光板としては、少なくとも偏光子を含むものであれば特に限定されるものではなく、例えば、偏光子と、当該偏光子の両面に配置された偏光板保護フィルムとからなるものが一般的である。
また、上記偏光板としては、上記偏光子が上記パターン位相差板に積層されもの、すなわち、上記パターン位相差板上に積層・固定された偏光子を含むものであっても良い。このような偏光子が積層された態様について、図を参照しながら説明する。図22は上記偏光子が積層されたパターン位相差板(以下、偏光子付パターン位相差板と称する場合がある。)の一例を示す説明図である。図22に例示するように、上記偏光子付きパターン位相差板20は、パターン位相差板20と、上記パターン位相差板20上に積層された偏光子21とを有することを特徴とするものである。ここで、図22(a)、(a)’においては、偏光子21の両面に偏光板保護フィルム22が配置された偏光板30として偏光子21がパターン位相差板20上に積層された構成について図示したが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、図22(b)、(b)’に示すようにパターン位相差板20の透明フィルム基材11上に偏光子21のみが積層される態様であってもよい。尚、3D画像を広い視野角で見れるようにするためには、偏光子21と円偏光化層13との距離は出来る限り短くした方が良いので、図22中、層構成(a)’よりは(a)の方が好ましく、(b)よりは(b)’の方が好ましい。なお、図22において24は接着層を表わすものである。
【0179】
本発明に用いられる偏光子としては、透過光を直線偏光とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に液晶表示装置用の偏光板に用いられる偏光子として公知のものを用いることができる。このような偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールからなるフィルムにヨウ素を含浸させ、これを一軸延伸することによってポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させたものを挙げることができる。
【0180】
本発明に用いられる偏光板保護フィルムとしては、上記偏光子を保護することができ、かつ、所望の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる偏光板保護フィルムは、可視光領域における透過率が80%以上であるものが好ましく、90%以上であるものがより好ましい。
ここで、上記偏光板保護フィルムの透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0181】
上記偏光板保護フィルムを構成する材料としては、例えば、セルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類等を挙げることができる。なかでも本発明においては、上記樹脂材料としてセルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、またはアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
【0182】
上記セルロース誘導体としては、偏光板において偏光子が空気中の水分等に曝されることを防止する機能と、偏光子の寸法変化を防止する機能とを有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記セルロース誘導体としてセルロースエステル類を用いることが好ましく、さらにセルロースエステル類の中でもセルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
【0183】
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであってもよい。
【0184】
また本発明においては、上記低級脂肪酸エステルの中でもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。このようなトリアセチルセルロールは光学的等方性に優れるからである。
ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。なお、トリアセチルセルロースフィルムを構成するトリアセチルセルロースの酢化度は、フィルム中に含まれる可塑剤等の不純物を除去した後、上記の方法により求めることができる。
【0185】
なお、従来、セルロース誘導体からなるフィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、表面をけん化処理することによってポリビニルアルコールからなる偏光子との接着性を向上することができる。
【0186】
一方、上記シクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。このような上記環状オレフィンからなるモノマーとしては、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等を挙げることができる。また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであっても好適に用いることができる。また、上記シクロオレフィン系樹脂は上記環状オレフィンからなるモノマーの単独重合体であってもよく、または、共重合体であってもよい。
【0187】
また、本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂は、23℃における飽和吸水率が1質量%以下であるものが好ましく、なかでも0.1質量%〜0.7質量%の範囲内であるものが好ましい。このようなシクロオレフィン系樹脂を用いることにより、偏光板を吸水による光学特性の変化や寸法の変化がより生じにくいものとすることができるからである。
ここで、上記飽和吸水率は、上記吸水率は、ASTMD570に準拠し23℃の水中で1週間浸漬して増加重量を測定することにより求められる。
【0188】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、Ticona社製 Topas(登録商標)、ジェイエスアール社製 アートン(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン社製 ZEONEX(登録商標)、三井化学社製 アペル(登録商標)等を挙げることができる。
【0189】
また、上記アクリル系樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)などが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特に好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0190】
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂からなる偏光板保護フィルムの具体例としては、例えば、日本触媒社製アクリビュア(登録商標)を挙げることができる。
【0191】
また、本発明に用いられる偏光板保護フィルムの厚みは特に限定されないが、通常、5μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、特に15μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、さらに30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0192】
3.発光型ディスプレイ
本発明に用いられる発光型ディスプレイは、パターン状に画素部が形成されたものである。本発明に用いられる発光型ディスプレイとしては、特に限定されるものではなく、一般的に表示装置用のディスプレイとして公知のものを適宜選択して用いることができる。本発明に用いられる発光型ディスプレイの具体例としては、例えば、PDP(プラズマディスプレイ)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)、有機EL等を挙げることができる。尚、これらの発光型ディスプレイは、必要に応じて、カラーフィルターを有するものであっても良い。
【0193】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0194】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0195】
[実施例1]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、研磨剤(カネヨ石鹸株式会社製カネヨンTM)で左右方向に研磨し、洗浄した。その後、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで上下方向に、ストライプの間隔が500μmになる様に切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック)を銅版上に塗布し、その上に透明フィルム基材として、透明なフィルム(日本ゼオン株式会社製ゼオノア(登録商標))を乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
次に、上記透明フィルム基材を銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルム基材上に賦形することにより、上記透明フィルム基材上に配向層を形成した。SEMで配向層の断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸と不定形の微細な凹凸とが交互に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式(A)で表わされる液晶性材料の溶液に、光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記配向層が形成された透明フィルム基材上にスピンコーターで塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化することにより、パターン位相差フィルム(パターン位相差板)を作製した。
作製したパターン位相差板を偏光板クロスニコルの中に入れて回転させたところ、幅500μmのストライプが明・暗・明・暗の繰り返し模様で見え、90度回転する毎に、明と暗が反転した。
上記パターン位相差板を偏光板を介して3次元表示可能な発光型ディスプレイの画素部の左右方向のラインに対応して貼合し、左右円偏光メガネをかけて見たところ、3次元画像が見えた。
尚、今回のラビングには研磨剤を用いたが、LCD製造に使われているラビング用の布を使ってもよい。
【0196】
[実施例2]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで左右方向に、全面を切削した。その後、更に、ストライプの間隔が500μmになる様に、500μm毎に深さが2μmになる様に同じ左右方向に切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック)を銅版上に塗布し、その上に透明なフィルム(日本ゼオン株式会社製ゼオノア(登録商標))を乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
次に、透明フィルムを銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルムに賦形した。SEMで断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸からなる幅500μmのストライプ形状が平行な状態で、段差2μmの凹凸が交互に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式(A)で表わされる液晶性材料溶液に光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記賦形した透明フィルムにスピンコーターで乾燥硬化時の膜厚がストライプ凸部で1μm、ストライプ凹部で3μmになる様に塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化させた。このようにして、パターン位相差板を得た。
偏光板クロスニコルの中にサンプルを入れて回転させたところ、幅500μmのストライプが明・暗・明・暗の繰り返し模様で見え、90度回転する毎に、明と暗が反転した。
上記パターン位相差板を偏光板を介して3次元表示可能な発光型ディスプレイの画素部の左右方向のラインに対応して貼合し、左右円偏光メガネをかけて見たところ、3次元画像が見えた。
【0197】
[実施例3]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで左右方向に、全面を切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック RC23−207)を銅版上に塗布し、その上に密着性を改善するためのプライマー(DIC株式会社製ユニディックRC20−075)を塗布した透明なフィルム(富士フィルム株式会社製フジタック)を乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
次に、透明フィルムを銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルムに賦形した。SEMで断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸が左右方向に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式(A)で表わされる液晶性材料溶液に光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記賦形した透明フィルムにスピンコーターで乾燥硬化時の膜厚が2μmになる様に塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化させた。更に、紫外線レーザーを用いて左右方向に硬化させた液晶層を幅500μmのラインが交互に出来る様に蒸発させた。偏光板クロスニコルの中にサンプルを入れて観察したところ、幅500μmのストライプが明・暗・明・暗の繰り返し模様で見えた。上記パターン位相差板を図23の構成になる様に偏光板を介して3次元表示可能な発光型ディスプレイの画素部の左右方向のラインに対応して貼合し、左右円偏光メガネをかけて見たところ、3次元画像が見えた。
【0198】
[実施例4]
10cm×10cmの大きさの銅版を準備し、研磨剤(カネヨ石鹸株式会社製カネヨンTM)で斜め45度方向に研磨し、洗浄した。その後、FIB加工で作製したピッチが200nmの凹凸を有するダイヤモンドバイトで左右方向に、ストライプの間隔が500μmになる様に切削した。その後、UV硬化性樹脂(DIC株式会社製ユニディック RC23−207)を銅版上に塗布し、その上に密着性を改善するためのプライマー(DIC株式会社製ユニディックRC20−075)を塗布した透明フィルム基材として、透明なフィルム(富士フィルム株式会社製フジタック)を乗せて密着させ、紫外線を照射して硬化させた。
次に、上記透明フィルム基材を銅版から剥離し、凹凸形状を透明フィルム基材上に賦形することにより、上記透明フィルム基材上に配向層を形成した。SEMで配向層の断面形状を観察したところ、200nmピッチの凹凸と不定形の微細な凹凸が交互に観測された。
次に、シクロヘキサノンに固形分15%で溶解した下記構造式(A)で表わされる液晶性材料の溶液に、光重合開始剤(BASF株式会社製イルガキュア184)を5重量%を加えた溶液を、上記配向層が形成された透明フィルム基材上にスピンコーターで乾燥時の膜厚が2μmになる様に塗布、80℃で10分乾燥し、紫外線を照射して硬化することにより、パターン位相差フィルムを作製した。位相差層のレターデーションは260nmでλ/2相当だった。
作製したパターン位相差フィルムを偏光板クロスニコルの中に入れて回転させたところ、幅500μmのストライプが繰り返し模様で見え、90度回転する毎に、明と暗が反転した。上記パターン位相差板を図23の構成になる様に偏光板を介して3次元表示可能な発光型ディスプレイの画素部の左右方向のラインに対応して貼合し、左右円偏光メガネをかけて見たところ、3次元画像が見えた。
尚、本実施例におけるラビングには研磨剤を用いたが、LCD製造に使われているラビング用の布を使ってもよい。
【0199】
【化2】
【符号の説明】
【0200】
1,11 … 透明フィルム基材
2,12 … 配向層
3 … 位相差層
4 … 第2位相差層
10 … パターン位相差フィルム
13 … 円偏光化層
13A … 第1円偏光化領域
13B … 第2円偏光化領域
14 … 反射防止層またはアンチグレア層
20 … パターン位相差板
21 … 偏光子
22 … 偏光板保護フィルム
24 … 接着層
30 … 偏光板
31a … 画素部
40 … 発光型ディスプレイ
50 … 発光型表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン状に画素部が形成された発光型ディスプレイと、
前記発光型ディスプレイ上に配置された偏光板と、
前記偏光板上に配置され、透明フィルム基材、前記透明フィルム基材上に形成された配向層、および前記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層を有するパターン位相差板と、
を有する発光型表示装置であって、
前記偏光板の偏光軸方向と、前記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であり、
さらに前記発光型ディスプレイにおいて前記画素部が形成されているパターンと、前記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とする、発光型表示装置。
【請求項2】
前記パターン位相差板が、前記透明フィルム基材と、前記透明フィルム基材上に形成された配向層と、前記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、
前記配向層が、前記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、前記棒状化合物を前記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、前記第1配向領域または前記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であり、
前記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、前記第1配向領域上に形成された位相差層または前記第2配向領域上に形成された位相差層であることを特徴とする、請求項1に記載の発光型表示装置。
【請求項3】
前記第1配向領域および前記第2配向領域の表面に形成された前記微細凹凸形状が、いずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とする、請求項2に記載の発光型表示装置。
【請求項4】
前記位相差層の面内レターデーション値が、λ/4分に相当することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の発光型表示装置。
【請求項5】
前記パターン位相差板が、前記透明フィルム基材上に形成され、表面に厚みが大きい厚膜領域および前記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域がパターン状に形成された配向層と、前記配向層の前記表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、
前記厚膜領域および前記薄膜領域が同一方向に前記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されており、
前記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、前記厚膜領域上に形成された位相差層または前記薄膜領域上に形成された位相差層であることを特徴とする、請求項1に記載の発光型表示装置。
【請求項6】
前記厚膜領域上に形成される位相差層の面内レターデーション値と、前記薄膜領域上に形成される位相差層の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当するものであり、かつ前記厚膜領域上に形成される前記位相差層の面内レターデーション値が、λ/4分に相当することにより、前記厚膜領域上に形成される前記位相差層の面内レターデーション値がλ/4分に相当し、かつ前記薄膜領域上に形成される前記位相差層の面内レターデーション値がλ/4+λ/2分に相当することを特徴とする、請求項5に記載の発光型表示装置。
【請求項7】
前記厚膜領域または前記薄膜領域の表面に形成された前記微細凹凸形状の少なくとも一方が、ストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の発光型表示装置。
【請求項8】
前記厚膜領域および前記薄膜領域の表面に形成された前記微細凹凸形状が、ストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とする、請求項7に記載の発光型表示装置。
【請求項9】
前記パターン位相差板が、前記透明フィルム基材と、前記透明フィルム基材上に形成された配向層と、前記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルム、および前記パターン位相差フィルム上に配置され、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層を有するものであり、
前記パターン位相差板が、前記偏光板、位相差層および第2位相差層がこの順となるように配置されており、
前記位相差層が、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域が、パターン状に配置されたものであり、
前記第1位相差領域の遅相軸方向と、前記第2位相差層の遅相軸方向とが直交または平行関係にあり、
前記第1円偏光化領域が、前記第1位相差領域および前記第1位相差領域上の第2位相差層を含むものであることを特徴とする、請求項1に記載の発光型表示装置。
【請求項10】
前記位相差層が、前記第1位相差領域と、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有し、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第2位相差領域と、を有するものであり、前記第2位相差領域に含有される前記棒状化合物の配向方向が、前記第1位相差領域に含有される前記棒状化合物の配向方向に対して45°の方向であり、かつ前記第1位相差領域と、前記第2位相差領域とがパターン状に配置されたものであることを特徴とする、請求項9に記載の発光型表示装置。
【請求項11】
前記パターン位相差板が、前記パターン位相差フィルムの位相差層上に、前記第2位相差層が積層された積層型パターン位相差フィルムであることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の発光型表示装置。
【請求項12】
前記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載の発光型表示装置。
【請求項13】
前記透明フィルム基材の前記配向層が形成された面とは反対面上に反射防止層および/またはアンチグレア層が形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項12までのいずれかの請求項に記載の発光型表示装置。
【請求項14】
前記配向層が硬化された紫外線硬化性樹脂からなることを特徴とする、請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に記載の発光型表示装置。
【請求項1】
パターン状に画素部が形成された発光型ディスプレイと、
前記発光型ディスプレイ上に配置された偏光板と、
前記偏光板上に配置され、透明フィルム基材、前記透明フィルム基材上に形成された配向層、および前記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する円偏光化層を有するパターン位相差板と、
を有する発光型表示装置であって、
前記偏光板の偏光軸方向と、前記円偏光化層に含まれる第1円偏光化領域および第2円偏光化領域の進相軸または遅相軸方向とがなす角度が45°であり、
さらに前記発光型ディスプレイにおいて前記画素部が形成されているパターンと、前記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンと、が対応関係にあることを特徴とする、発光型表示装置。
【請求項2】
前記パターン位相差板が、前記透明フィルム基材と、前記透明フィルム基材上に形成された配向層と、前記配向層の表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、
前記配向層が、前記棒状化合物を一方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第1配向領域と、前記棒状化合物を前記第1配向領域における配列方向と直交する方向に配列させることができるように微細凹凸形状が形成されている第2配向領域とが表面にパターン状に配置されており、かつ、前記第1配向領域または前記第2配向領域の少なくとも一方の表面に形成された微細凹凸形状がストライプ状のライン状凹凸構造であり、
前記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、前記第1配向領域上に形成された位相差層または前記第2配向領域上に形成された位相差層であることを特徴とする、請求項1に記載の発光型表示装置。
【請求項3】
前記第1配向領域および前記第2配向領域の表面に形成された前記微細凹凸形状が、いずれもストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とする、請求項2に記載の発光型表示装置。
【請求項4】
前記位相差層の面内レターデーション値が、λ/4分に相当することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の発光型表示装置。
【請求項5】
前記パターン位相差板が、前記透明フィルム基材上に形成され、表面に厚みが大きい厚膜領域および前記厚膜領域よりも厚みが小さい薄膜領域がパターン状に形成された配向層と、前記配向層の前記表面上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルムからなるものであり、
前記厚膜領域および前記薄膜領域が同一方向に前記棒状化合物を配列させることができるように表面に微細凹凸形状が形成されており、
前記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が、前記厚膜領域上に形成された位相差層または前記薄膜領域上に形成された位相差層であることを特徴とする、請求項1に記載の発光型表示装置。
【請求項6】
前記厚膜領域上に形成される位相差層の面内レターデーション値と、前記薄膜領域上に形成される位相差層の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当するものであり、かつ前記厚膜領域上に形成される前記位相差層の面内レターデーション値が、λ/4分に相当することにより、前記厚膜領域上に形成される前記位相差層の面内レターデーション値がλ/4分に相当し、かつ前記薄膜領域上に形成される前記位相差層の面内レターデーション値がλ/4+λ/2分に相当することを特徴とする、請求項5に記載の発光型表示装置。
【請求項7】
前記厚膜領域または前記薄膜領域の表面に形成された前記微細凹凸形状の少なくとも一方が、ストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の発光型表示装置。
【請求項8】
前記厚膜領域および前記薄膜領域の表面に形成された前記微細凹凸形状が、ストライプ状のライン状凹凸構造であることを特徴とする、請求項7に記載の発光型表示装置。
【請求項9】
前記パターン位相差板が、前記透明フィルム基材と、前記透明フィルム基材上に形成された配向層と、前記配向層上に形成され、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有する位相差層と、を有するパターン位相差フィルム、および前記パターン位相差フィルム上に配置され、面内レターデーション値がλ/4分に相当する第2位相差層を有するものであり、
前記パターン位相差板が、前記偏光板、位相差層および第2位相差層がこの順となるように配置されており、
前記位相差層が、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第1位相差領域が、パターン状に配置されたものであり、
前記第1位相差領域の遅相軸方向と、前記第2位相差層の遅相軸方向とが直交または平行関係にあり、
前記第1円偏光化領域が、前記第1位相差領域および前記第1位相差領域上の第2位相差層を含むものであることを特徴とする、請求項1に記載の発光型表示装置。
【請求項10】
前記位相差層が、前記第1位相差領域と、屈折率異方性を有する棒状化合物を含有し、面内レターデーション値がλ/2分に相当する第2位相差領域と、を有するものであり、前記第2位相差領域に含有される前記棒状化合物の配向方向が、前記第1位相差領域に含有される前記棒状化合物の配向方向に対して45°の方向であり、かつ前記第1位相差領域と、前記第2位相差領域とがパターン状に配置されたものであることを特徴とする、請求項9に記載の発光型表示装置。
【請求項11】
前記パターン位相差板が、前記パターン位相差フィルムの位相差層上に、前記第2位相差層が積層された積層型パターン位相差フィルムであることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の発光型表示装置。
【請求項12】
前記第1円偏光化領域および第2円偏光化領域が形成されているパターンが互いに平行な帯状のパターンに形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載の発光型表示装置。
【請求項13】
前記透明フィルム基材の前記配向層が形成された面とは反対面上に反射防止層および/またはアンチグレア層が形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項12までのいずれかの請求項に記載の発光型表示装置。
【請求項14】
前記配向層が硬化された紫外線硬化性樹脂からなることを特徴とする、請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に記載の発光型表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図16】
【図17】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図16】
【図17】
【図24】
【公開番号】特開2012−137725(P2012−137725A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98708(P2011−98708)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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