説明

発光材料、発光素子、発光装置並びに電子機器

【課題】新規発光材料を提供することを目的とする。また、低電圧駆動が可能な発光素子を提供することを課題とする。また、消費電力の低減された発光装置および電子機器を提供することを課題とする。また、低コストで作製可能な発光装置および電子機器を提供することを課題とする。
【解決手段】母体材料と、第1の不純物と、第2の不純物と、第3の不純物とを含み、第1の不純物は、母体材料に対し浅いドナー準位を形成し、第2の不純物は、母体材料に対し浅いアクセプター準位を形成し、第3の不純物は、母体材料に対し浅いトラップ準位を形成し、母体材料は、周期表第2族の元素と周期表第16族の元素を含む化合物を有し、浅いドナー準位の電子と深いトラップ準位の正孔とが再結合することにより、発光する発光材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料に関する。また、エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子に関する。また、発光素子を有する発光装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence)を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の物質を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光性の物質からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光素子は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。また、非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
また、これらの発光素子は膜状に形成することが可能であるため、大面積の素子を形成することにより、面状の発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、発光性の物質が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって大きく分けられる。
【0006】
発光性の物質として無機化合物を用いた発光素子は、高い電界で加速された電子による発光中心の衝突励起によって発光が得られるものと考えられている。そのため、発光を得るためには高い電界が必要であり、発光素子に数百Vの電圧を印加する必要があった。よって、消費電力が大きく、環境に与える負荷も大きかった。
【0007】
また、発光素子に高い電圧を印加するためには、高耐電圧の駆動回路が必要である。高耐電圧の駆動回路を形成するためには、高いコストがかかり、発光素子を用いた製品自体の価格も高くなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題に鑑み、本発明は、新規発光材料を提供することを目的とする。また、低電圧駆動が可能な発光素子を提供することを課題とする。また、消費電力の低減された発光装置および電子機器を提供することを課題とする。また、低コストで作製可能な発光装置および電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、発光材料中に、浅いドナー準位と、浅いアクセプター準位と、深いトラップ準位を形成することにより、課題を解決することができることを見いだした。
【0010】
よって、本発明の一は、母体材料と、第1の不純物と、第2の不純物と、第3の不純物とを含み、第1の不純物は、母体材料に対し浅いドナー準位を形成し、第2の不純物は、母体材料に対し浅いアクセプター準位を形成し、第3の不純物は、母体材料に対し深いトラップ準位を形成し、母体材料は、周期表第2族の元素と周期表第16族の元素を含む化合物を有し、浅いドナー準位の電子と深いトラップ準位の正孔とが再結合することにより、発光することを特徴とした発光材料である。
【0011】
また、本発明の一は、母体材料と、第1の物不純物と、第2の不純物と、第3の不純物とを含み、第1の不純物は、母体材料に対し浅いドナー準位を形成し、第2の不純物は、母体材料に対し浅いアクセプター準位を形成し、第3の不純物は、母体材料に対し深いトラップ準位を形成し、母体材料は、周期表第2族の元素と周期表第16族の元素を含む化合物を有し、深いトラップ準位の電子と浅いアクセプター準位の正孔とが再結合することにより、発光することを特徴とした発光材料である。
【0012】
また、本発明の一は、母体材料と、第1の不純物と、第2の不純物と、第3の不純物とを含み、第1の不純物は、母体材料に対し浅いドナー準位を形成し、第2の不純物は、母体材料に対し浅いアクセプター準位を形成し、第3の不純物は、母体材料に対し深いトラップ準位を形成し、母体材料は、周期表第12族の元素と周期表第16族の元素を含む化合物を有し、浅いドナー準位の電子と深いトラップ準位への正孔とが再結合することにより、発光することを特徴とした発光材料である。
【0013】
また、本発明の一は、母体材料と、第1の不純物と、第2の不純物と、第3の不純物とを含み、第1の物不純物は、母体材料に対し浅いドナー準位を形成し、第2の不純物は、母体材料に対し浅いアクセプター準位を形成し、第3の不純物は、母体材料に対し深いトラップ準位を形成し、母体材料は、周期表第12族の元素と周期表第16族の元素を含む化合物を有し、深いトラップ準位の電子と浅いアクセプター準位の正孔とが再結合することにより、発光することを特徴とした発光材料である。
【0014】
上記構成において、浅いドナー準位とは、母体材料の伝導帯からのエネルギー差が0.01以上0.3eV以下であることを特徴とする。
【0015】
上記構成において、浅いアクセプター準位とは、母体材料の価電子帯からのエネルギー差が0.01以上0.3eV以下であることを特徴とする。
【0016】
上記構成において、深いトラップ準位とは、母体材料の伝導帯又は価電子帯からのエネルギー差が0.3eV以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一は、一対の電極間に、上記の発光材料を有することを特徴とする発光素子である。
【0018】
上記構成において、発光材料を含む発光層と電極との間には、絶縁層が設けられていることが好ましい。絶縁層の厚さは、1nm以上500nm以下であることが好ましい。より好ましくは、1nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0019】
上記構成において、絶縁層は、酸化イットリウム(Y)、酸化アルミニウム(Al)、酸化タンタル(Ta)、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)のいずれかを含むことを特徴とする。
【0020】
また、上記構成において、絶縁層は、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)のいずれかを含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上述した発光素子を有する発光装置も範疇に含めるものである。本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を範疇に含む。また、発光素子が形成されたパネルにコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光装置にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0022】
また、本発明の発光素子を表示部に用いた電子機器も本発明の範疇に含めるものとする。したがって、本発明の電子機器は、表示部を有し、表示部は、上述した発光素子と発光素子の発光を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の発光材料は、電気伝導性の高い発光材料である。そのため、本発明の発光材料を用いた発光素子は、低電圧駆動が可能である。
【0024】
また、本発明の発光装置は、低電圧駆動が可能な発光素子を有しているため、消費電力が低減することができる。また、高耐電圧の駆動回路が不要であるため、低コストで発光装置を作製することができる。
【0025】
また、本発明の電子機器は、低電圧駆動が可能な発光素子を有しているため、消費電力を低減することができる。また、高耐電圧の駆動回路が不要であるため、電子機器の作製コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明に係る発光材料について説明する。本発明に係る発光材料は、母体材料及び少なくとも3種類以上の不純物元素で構成される。発光材料に含まれる不純物元素は、母材の禁制帯の中に局在準位を形成する。なお、局在準位には、浅い局在準位と深い局在準位とが存在する。本明細書中において、浅い局在準位とは、許容帯からエネルギー差の小さい準位をいい、深い局在準位とは、伝導帯又は価電子帯などの許容帯からエネルギー差の大きい準位をいう。
【0028】
具体的には、浅い局在準位を構成する不純物元素とは、母体材料の許容帯から0.01〜0.3eVのエネルギー差を有する材料をいい、深い局在準位を形成する不純物元素とは、母体材料の許容帯から0.3eV以上のエネルギー差を有する材料をいう。また、浅い局在準位には、ドナー準位とアクセプター準位とが存在し、ドナー準位は伝導帯からのエネルギー差が小さく、アクセプター準位は価電子帯からのエネルギー差が小さい。
【0029】
図1は、本実施の形態で示す発光材料のバンドのエネルギー準位を示した模式図である。図1(A)において、価電子帯1001と伝導帯1002の間に、浅いアクセプター準位1023、浅いドナー準位1021、深いトラップ準位1022が存在する。図1(A)に示す発光材料において、浅いドナー準位1021にある電子と、深いトラップ準位1022にある正孔とが再結合し、発光する。
【0030】
発光材料中に、浅いアクセプター準位1023と深いトラップ準位1022を形成することにより、正孔が浅いアクセプター準位1023から深いトラップ準位1022に移動する。深いトラップ準位1022に移動した正孔は、浅いアクセプター準位1023に存在していたときよりも隣接サイトに移動するためのエネルギーをより必要とするため、深いトラップ準位1022に局在化するようになる。よって、移動度の高い電子との再結合確率が向上し、発光効率が向上する。
【0031】
また、本発明に係る発光材料は、図1(B)に示すようなエネルギーバンドを有する構成であってもよい。図1(B)において、価電子帯1101と伝導帯1102の間に、浅いアクセプター準位1123、浅いドナー準位1121、深いトラップ準位1122が存在する。図1(B)に示すエネルギーバンドを有する発光材料において、深いトラップ準位1122にある電子と、浅いアクセプター準位1123にある正孔とが再結合し、発光する。
【0032】
発光材料中に、浅いドナー準位1121と深いトラップ準位1122を形成することにより、電子が浅いドナー準位1121から深いトラップ準位1122に移動する。深いトラップ準位1122に移動した電子は、浅いドナー準位1121に存在していたときよりも隣接サイトに移動するためのエネルギーをより必要とするため、深いトラップ準位1122に局在化するようになる。よって、移動度の高い正孔との再結合確率が向上し、発光効率が向上する。
【0033】
本実施の形態で示す発光材料の母体材料としては、周期表において第2族元素と第16族元素とを含む化合物(以下、2−16族化合物という)、または第12族元素と第16族の元素とを含む化合物(以下、12−16族化合物という)を用いることができる。
【0034】
2−16族化合物としては、具体的には、硫化カルシウム(CaS)、硫化ストロンチウム(SrS)、硫化バリウム(BaS)等が挙げられる。また、12−16族化合物としては、具体的には、硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられる。
【0035】
2−16族化合物又は12−16族化合物を母体材料として浅いドナー準位を形成する不純物(第1の不純物)としては、周期表第17族元素を挙げることができる。具体的には、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が挙げられる。また、周期表第13族元素を用いることができ、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が挙げられる。
【0036】
一方、2−16族化合物又は12−16族化合物を母体材料として浅いアクセプター準位を形成する不純物(第2の不純物)としては、周期表第15族元素を挙げることができる。具体的には、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等が挙げられる。また、周期表第1族元素を挙げることができ、具体的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が挙げられる。
【0037】
また、発光に関与する深いトラップ準位を形成する不純物(第3の不純物)としては、具体的には、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)等を挙げられる。また、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、ツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm)等の希土類元素を用いることができる。
【0038】
つまり、2−16族化合物または12−16族化合物に対して、第1の不純物として第17族元素もしくは第13族元素、第2の不純物として第15族元素もしくは第1族元素、第3の不純物として発光に関与する深いトラップ準位を形成する不純物を添加することにより、本実施の形態の発光材料を形成することができる。
【0039】
なお、母体材料に対して添加する不純物元素の濃度は、母体材料に対してそれぞれ0.01〜10atom%であればよく、より好ましくはそれぞれ0.1〜5atom%の範囲であることが好ましい。
【0040】
本実施の形態の発光材料は、種々の方法を用いて形成することができる。例えば、固相反応を利用することができる。具体的には、発光材料を構成する物質をそれぞれ秤量し、乳鉢で混合した後、電気炉で加熱、焼成を行う。焼成温度は、700〜1500℃が好ましい。なお、粉末状態で焼成を行ってもよいが、ペレット状態で焼成を行うことが好ましい。
【0041】
また、固相反応を利用する場合、第1の不純物と第2の不純物、あるいは第1の不純物と第3の不純物で構成される化合物を組み合わせて用いてもよい。この場合、第1の不純物および第2の不純物、あるいは第1の不純物および第3の不純物が拡散されやすく、固相反応が進みやすくなるため、均一な発光材料を得ることができる。さらに、余分な不純物元素が入らないため、純度の高い発光材料が得ることができる。第1の不純物と第2の不純物で構成される化合物としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、ヨウ化リチウム(LiI)、臭化銅(LiBr)、塩化ナトリウム(NaCl)等のハロゲン化アルカリ、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等を用いることができる。また、第1の不純物と第3の不純物で構成される化合物としては、例えば、フッ化銅(CuF)、塩化銅(CuCl)、ヨウ化銅(CuI)、臭化銅(CuBr)、窒化銅(CuN)、リン化銅(CuP)、フッ化銀(AgF)、塩化銀(AgCl)、ヨウ化銀(AgI)、臭化銀(AgBr)、塩化金(AuCl)、臭化金(AuBr)、塩化白金(PtCl)等を用いることができる。
【0042】
本実施の形態の発光材料は、深い局在準位を形成する不純物元素と浅いドナー準位又は浅いアクセプター準位を形成する不純物元素に起因するドナー−アクセプターペアの再結合による発光が得られ、発光に寄与しないもう一方の不純物元素がドナー準位又はアクセプター準位を形成しているため、電気伝導性の高い発光材料となる。
【0043】
なお、アクセプター準位を形成する不純物よりもドナー準位を形成する不純物を多く母体材料に添加した場合には、電子のキャリア濃度が高くn型の発光材料を得ることができる。また、ドナー準位を形成する不純物よりもアクセプター準位を形成する不純物を多く母体材料に添加した場合には、正孔のキャリア濃度が高くp型の発光材料を得ることができる。
【0044】
また、一つの局在準位を形成する不純物は複数用いてもよい。例えば、ドナー準位を形成するために、第15族元素と第17族元素を用いてもよい。また、例えば、第17族元素を複数用いてもよい。同様に、アクセプター準位を形成するために、第1族元素と第13族元素を用いてもよい。また、例えば、第1族元素を複数用いてもよい。
【0045】
本実施の形態の発光材料は、発光に高電界で加速されたホットエレクトロンを必要としないため、低電圧で発光可能である。
【0046】
また、本実施の形態の発光材料は、正孔と電子との再結合確率が高いため、発光効率が高い。
【0047】
(実施の形態2)
本発明の発光素子の一態様について図2を用いて説明する。
【0048】
本実施の形態において、発光素子は、第1の電極101と、第2の電極102と、第1の電極101と第2の電極102との間に、第1の層111を有する。本実施の形態で示す発光素子は、直流駆動により動作する。本実施の形態では第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極102は陰極として機能するものとして以下説明をする。
【0049】
基板100は発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えばガラス、またはプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子を作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0050】
第1の電極101としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン:TiN)等用いることができる。なお、第1の電極101を透光性を有する電極とする場合、可視光の透過率の低い材料であっても、1nm〜50nm、好ましくは5nm〜20nm程度の厚さで成膜することで、透光性の電極として用いることができる。
【0051】
第1の層111は、発光層である。具体的には実施の形態1に示した発光材料を含む層である。第1の層111は、実施の形態1に示した発光材料を薄膜状に形成したものを用いることが好ましい。ただし、第1の層111は、実施の形態1に示した発光材料を含んでいればよく、構成は特に限定されない。
【0052】
第2の電極102を形成する物質としては、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の1族または2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li)が挙げられる。なお、第2の電極102を透光性を有する電極とする場合、可視光の透過率の低い材料であっても、1nm〜50nm、好ましくは5nm〜20nm程度の厚さで成膜することで、透光性の電極として用いることができる。
【0053】
図2(A)に示す発光素子において、第1の電極101もしくは第2の電極102を通って外部に取り出される。よって、第1の電極101および第2の電極102のうち、少なくとも一方は透光性を有する電極である必要がある。
【0054】
例えば、第1の電極が透光性を有する材料で形成されている場合には、発光は、第1の電極101を通って外部に取り出される。つまり、発光は第1の電極101を通って基板100側から取り出される。
【0055】
また、図2(A)に示した構成とは逆の順番で積層した構成としてもよい。図2(B)に示す発光素子は、陰極として機能する第2の電極102の上に、第1の層111、陽極として機能する第1の電極101とが順に積層された構成となっている。
【0056】
また、図3(A)に示すように、第2の電極102と第1の層111との間に、絶縁層である第2の層112を設けてもよい。また、図3(B)に示すように、第2の電極102と第1の層111との間に、絶縁層である第2の層112を設け、第1の電極101と第1の層111の間に絶縁層である第3の層113を設けてもよい。絶縁層は、絶縁耐性が高く、緻密な膜質であることが好ましい。また、誘電率が高いことが好ましい。具体的には、酸化イットリウム(Y)、酸化アルミニウム(Al)、酸化タンタル(Ta)、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)等の非晶質酸化物もしくは非晶質窒化物を用いることができる。その他、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化チタン鉛(PbTiO)等の誘電体材料を用いることができる。本実施の形態の発光素子は、ホットエレクトロンを必要としないため、高電界を必要としない。よって、絶縁層は薄膜であることが好ましい。好ましくは、500nm以下の膜厚、より好ましくは100nm以下の膜厚であることが好ましい。
【0057】
第1の層111と電極との間に絶縁層を設けることにより、発光効率を向上させることができる。また、発光素子の絶縁破壊を防止することができる。
【0058】
なお、第1の電極101、第1の層111、第2の層112、第3の層113、第2の電極102の形成方法としては、種々の方法を用いることができる。具体的には、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着(EB蒸着)法等の真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子層エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、インクジェット法、スピンコート法等を用いることができる。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0059】
本実施の形態においては、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に発光素子を作製している。一基板上にこのような発光素子を複数作製することで、パッシブ型の発光装置を作製することができる。また、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、TFTと電気的に接続された電極上に発光素子を作製してもよい。これにより、TFTによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置を作製できる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし、逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、n型およびp型のTFTからなるものでもよいし、若しくはn型またはp型のいずれか一方からのみなるものであってもよい。また、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。非晶質半導体膜を用いてもよいし、結晶性半導体膜を用いてもよい。
【0060】
本発明の発光素子は、高電界により加速されたホットエレクトロンを必要とすることなく、発光層からの発光を得ることができる。つまり、発光素子に高電圧を印加する必要がなくなるため、低駆動電圧で動作可能な発光素子を得ることができる。
【0061】
また、従来、ホットエレクトロンを生成させるために用いられてきた絶縁層の厚さを薄くする、もしくは絶縁層を設けないことができるため、発光素子全体に印加される電圧のうち、発光層に印加される電圧の割合が大きくなる。よって、より低電圧で発光可能な発光素子を得ることができる。
【0062】
また、低駆動電圧で発光可能なため、消費電力の低減された発光素子を得ることができる。
【0063】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0064】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2に示した構成とは異なる構成を有する発光素子について、図4及び図5を用いて説明する。
【0065】
本実施の形態において、発光素子は、第1の電極201と、第1の電極上に形成された第1の層211、第2の層212、第3の層213、第2の電極202とを有する。本実施の形態で示す発光素子は、交流駆動により動作する。
【0066】
基板200は発光素子の支持体として用いられる。基板200としては、例えばガラス、またはプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子を作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0067】
第1の電極201および第2の電極202としては、さまざまな金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−シリコン(Al−Si)、アルミニウム−チタン(Al−Ti)、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)または金属材料の窒化物(TiN)等、を用いることができる。
【0068】
なお、第2の層212で生じた発光を外部に取り出すため、第1の電極201および第2の電極202のうち、少なくとも一方は透光性を有する電極である必要がある。
【0069】
例えば、第1の電極が透光性を有する材料で形成されている場合には、発光は、第1の電極201を通って外部に取り出される。つまり、発光は第1の電極201を通って基板200側から取り出される。
【0070】
第1の層211は、発光層である。具体的には実施の形態1に示した発光材料を含む層である。第1の層211は、実施の形態1に示した発光材料を薄膜状に形成したものを用いることが好ましい。ただし、第1の層211は、実施の形態1に示した発光材料を含んでいればよく、構成は特に限定されない。
【0071】
また、図4(A)に示した構成とは逆の順番で積層した構成としてもよい。図4(B)に示す発光素子は、第2の電極202の上に、第1の層211、第1の電極201が順に積層された構成となっている。
【0072】
また、図5(A)に示すように、第2の電極202と第1の層211との間に、絶縁層である第2の層212を設けてもよい。また、図5(B)に示すように、第2の電極202と第1の層211との間に、絶縁層である第2の層212を設け、第1の電極201と第1の層211の間に絶縁層である第3の層213を設けてもよい。絶縁層は、絶縁耐性が高く、緻密な膜質であることが好ましい。また、誘電率が高いことが好ましい。具体的には、酸化イットリウム(Y)、酸化アルミニウム(Al)、酸化タンタル(Ta)、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)等の非晶質酸化物もしくは非晶質窒化物を用いることができる。その他、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)等の誘電体材料を用いることができる。本実施の形態の発光素子は、ホットエレクトロンを必要としないため、高電界を必要としない。よって、絶縁層は薄膜であることが好ましい。好ましくは、500nm以下の膜厚、より好ましくは100nm以下の膜厚であることが好ましい。
【0073】
第1の層211と電極との間に絶縁層を設けることにより、発光効率を向上させることができる。また、発光素子の絶縁破壊を防止することができる。
【0074】
なお、第1の電極201、第1の層211、第2の層212、第3の層213、第2の電極202の形成方法としては、種々の方法を用いることができる。具体的には、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着(EB蒸着)法等の真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子層エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、インクジェット法、スピンコート法等を用いることができる。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0075】
本発明の発光素子は、高電界により加速されたホットエレクトロンを必要とすることなく、発光層からの発光を得ることができる。つまり、発光素子に高電圧を印加する必要がなくなるため、低駆動電圧で動作可能な発光素子を得ることができる。
【0076】
また、従来、ホットエレクトロンを生成させるために用いられてきた絶縁層の厚さを薄くすることができるため、発光素子全体に印加される電圧のうち、発光層に印加される電圧の割合が大きくなる。よって、より低電圧で発光可能な発光素子を得ることができる。
【0077】
また、低駆動電圧で発光可能なため、消費電力の低減された発光素子を得ることができる。
【0078】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0079】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の発光素子を有する発光装置について説明する。
【0080】
本実施の形態で示す発光装置は、トランジスタ等の駆動用の素子を特に設けずに発光素子を駆動させるパッシブ型の発光装置である。図7には本発明を適用して作製したパッシブ型の発光装置の斜視図を示す。
【0081】
図7において、基板951上には、電極952と電極956との間には発光材料を含む層955が設けられている。発光材料を含む層955は実施の形態1で示した発光材料を含んでいる。
【0082】
電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブ型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する本発明の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
【0083】
また、本発明の発光装置は、高耐電圧の駆動回路が不要であるため、発光装置の作製コストを低減することができる。また、発光装置の軽量化、駆動回路部分の小型化が可能である。
【0084】
なお、本実施の形態で示す発光装置は、実施の形態2に示した発光素子の構成を適用することも可能であるし、実施の形態3に示した発光素子の構成を適用することも可能である。つまり、直流駆動で動作する発光装置を作製することも可能であるし、交流駆動で動作する発光装置を作製することも可能である。
【0085】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の発光素子を有する発光装置について説明する。
【0086】
本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の発光装置について説明する。本実施の形態では、画素部に本発明の発光素子を有する発光装置について図6を用いて説明する。なお、図6(A)は、発光装置を示す上面図、図6(B)は図6(A)をA−A’およびB−B’で切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0087】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0088】
次に、断面構造について図6(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0089】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0090】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0091】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0092】
第1の電極613上には、発光材料を含む層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。第1の電極613および第2の電極617の少なくとも一方は透光性を有しており、発光材料を含む層616からの発光を外部へ取り出すことが可能である。
【0093】
発光材料を含む層616は、実施の形態1で示した発光材料を含んでいる。
【0094】
なお、第1の電極613、発光材料を含む層616、第2の電極617の形成方法としては、種々の方法を用いることができる。具体的には、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着(EB蒸着)法等の真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子層エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、インクジェット法、スピンコート法等を用いることができる。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0095】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0096】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0097】
以上のようにして、本発明の発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【0098】
本発明の発光装置は、実施の形態2または実施の形態3で示した発光素子を有する。実施の形態2または実施の形態3で示した発光素子は、低駆動電圧で動作が可能である。また、高い発光効率を実現することができる。よって、消費電力を低減された発光装置を得ることができる。
【0099】
また、本発明の発光装置は、高耐電圧の駆動回路が不要であるため、発光装置の作製コストを低減することができる。また、発光装置の軽量化、駆動回路部分の小型化が可能である。
【0100】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態5に示す発光装置をその一部に含む本発明の電子機器について説明する。本発明の電子機器は、実施の形態2または実施の形態3で示した発光素子を有する。よって、駆動電圧の低減された発光素子を有するため、消費電力の低減された電子機器を提供することが可能である。
【0101】
本発明の発光装置を用いて作製された電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図8に示す。
【0102】
図8(A)は本発明に係るテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置において、表示部9103は、実施の形態2〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特徴を有している。また、外部からの衝撃等による短絡を防止することも可能である。その発光素子で構成される表示部9103も同様の特徴を有するため、このテレビ装置は画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、テレビ装置において、劣化補償回路や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、筐体9101や支持台9102の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るテレビ装置は、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、それにより住環境に適合した製品を提供することができる。
【0103】
図8(B)は本発明に係るコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングマウス9206等を含む。このコンピュータにおいて、表示部9203は、実施の形態2〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特徴を有している。また、外部からの衝撃等による短絡を防止することも可能である。その発光素子で構成される表示部9203も同様の特徴を有するため、このコンピュータは画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、コンピュータにおいて、劣化補償回路や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9201や筐体9202の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るコンピュータは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、環境に適合した製品を提供することができる。また、持ち運ぶことも可能となり、持ち運ぶときの外部からの衝撃にも強い表示部を有しているコンピュータを提供することができる。
【0104】
図8(C)は本発明に係る携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部9403、音声入力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9407、アンテナ9408等を含む。この携帯電話において、表示部9403は、実施の形態2〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特徴を有している。また、外部からの衝撃等による短絡を防止することも可能である。その発光素子で構成される表示部9403も同様の特徴を有するため、この携帯電話は画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、携帯電話において、劣化補償回路や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9401や筐体9402の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係る携帯電話は、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。また、携帯したときの外部からの衝撃にも強い表示部を有している製品を提供することができる。
【0105】
図8(D)は本発明の係るカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラにおいて、表示部9502は、実施の形態2〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低く、外部からの衝撃等による短絡を防止することができるという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9502も同様の特徴を有するため、このカメラは画質の劣化がなく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、カメラにおいて、劣化補償回路や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9501の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るカメラは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。また、携帯したときの外部からの衝撃にも強い表示部を有している製品を提供することができる。
【0106】
以上の様に、本発明の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。本発明の発光装置を用いることにより、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有する電子機器を提供することが可能となる。
【0107】
また、本発明の発光装置は、発光効率の高い発光素子を有しており、照明装置として用いることもできる。本発明の発光装置を照明装置として用いる一態様を、図9を用いて説明する。
【0108】
図9は、本発明の発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図9に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バックライト903、筐体904を有し、液晶層902は、ドライバIC905と接続されている。また、バックライト903は、本発明の発光装置が用いられおり、端子906により、電流が供給されている。
【0109】
本発明の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、消費電力の低減されたバックライトが得られる。また、本発明の発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、発光装置は薄型で低消費電力であるため、表示装置の薄型化、低消費電力化も可能となる。
【実施例1】
【0110】
本実施例では、本発明の発光材料について説明する。
【0111】
ZnSを10gと、ZnSに対して1mol%に相当するCuCl及びZnSに対して1mol%に相当するLiClをメノウ乳鉢に入れ、10分間撹拌混合した。次に、その混合物をアルミナの坩堝に入れ、窒素雰囲気下において、1000℃で4時間の焼成を行った。得られた発光材料は黒色であった。356nmの波長で励起したところ、青緑色の発光を確認することができた。その発光スペクトルを図10に示す。この発光は、ドナー準位を形成しているClと深いトラップ準位を形成しているCuとのドナー−アクセプターペアの再結合に起因した発光であることがわかった。
【0112】
本実施例の発光材料の合成に用いた材料のメーカー及び純度を表1に示す。ZnSは(株)高純度化学研究所製、CuClは和光純薬工業(株)製、LiClは(株)高純度化学研究所製である。
【0113】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の発光材料を説明する図。
【図2】本発明の発光素子を説明する図。
【図3】本発明の発光素子を説明する図。
【図4】本発明の発光素子を説明する図。
【図5】本発明の発光素子を説明する図。
【図6】本発明の発光装置を説明する図。
【図7】本発明の発光装置を説明する図。
【図8】本発明の電子機器を説明する図。
【図9】本発明の電子機器を説明する図。
【図10】実施例1の発光材料の発光スペクトルを示す図。
【符号の説明】
【0115】
1001 価電子帯
1002 伝導帯
1021 ドナー準位
1022 トラップ準位
1023 アクセプター準位
1101 価電子帯
1102 伝導帯
1121 ドナー準位
1122 トラップ準位
1123 アクセプター準位
100 基板
101 第1の電極
102 第2の電極
111 第1の層
112 第2の層
113 第3の層
200 基板
201 第1の電極
202 第2の電極
211 第1の層
212 第2の層
213 第3の層
601 ソース側駆動回路
602 画素部
603 ゲート側駆動回路
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 発光材料を含む層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
901 筐体
902 液晶層
903 バックライト
904 筐体
905 ドライバIC
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 発光材料を含む層
956 電極
9101 筐体
9102 支持台
9103 表示部
9104 スピーカー部
9105 ビデオ入力端子
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングマウス
9401 本体
9402 筐体
9403 表示部
9404 音声入力部
9405 音声出力部
9406 操作キー
9407 外部接続ポート
9408 アンテナ
9501 本体
9502 表示部
9503 筐体
9504 外部接続ポート
9505 リモコン受信部
9506 受像部
9507 バッテリー
9508 音声入力部
9509 操作キー
9510 接眼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母体材料と、
前記母体材料に対し浅いドナー準位を形成する第1の不純物と、
前記母体材料に対し浅いアクセプター準位を形成する第2の不純物と、
前記浅いドナー準位と前記浅いアクセプター準位との間に、深いトラップ準位を形成する第3の不純物とを有し、
前記母体材料は、周期表第16族の元素と、周期表第2族または第12族から選ばれる少なくとも1つの元素とを含むことを特徴とする発光材料。
【請求項2】
請求項1において、
前記浅いドナー準位の電子と前記深いトラップ準位の正孔とが再結合することにより、発光することを特徴とする発光材料。
【請求項3】
請求項1において、
前記深いトラップ準位の電子と前記浅いアクセプター準位の正孔とが再結合することにより、発光することを特徴とする発光材料。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記浅いドナー準位とは、前記母体材料の伝導帯からのエネルギー差が0.01以上0.3eV以下であることを特徴とする発光材料。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記浅いアクセプター準位は、前記母体材料の価電子帯からのエネルギー差が0.01以上0.3eV以下であることを特徴とする発光材料。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記深いトラップ準位は、前記母体材料の伝導帯又は価電子帯からのエネルギー差が0.3eV以上であることを特徴とする発光材料。
【請求項7】
一対の電極間に、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光材料を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項7において、
前記発光材料を含む発光層と前記電極との間には、絶縁層が設けられていることを特徴とする発光素子。
【請求項9】
請求項8において、
前記絶縁層の厚さは、1nm以上500nm以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項10】
請求項8において、
前記絶縁層の厚さは、1nm以上100nm以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれか一項において、
前記絶縁層は、酸化イットリウム(Y)、酸化アルミニウム(Al)、酸化タンタル(Ta)、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)のいずれかを含むことを特徴とする発光素子。
【請求項12】
請求項8乃至請求項10のいずれか一項において、
前記絶縁層は、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)のいずれかを含むことを特徴とする発光素子。
【請求項13】
請求項7乃至請求項12のいずれか一項において、
前記発光材料を含む発光層は、前記発光材料を薄膜状に形成したものであることを特徴とする発光素子。
【請求項14】
請求項7乃至請求項13のいずれか一項に記載の発光素子と、前記発光素子の発光を制御する制御手段とを有する発光装置。
【請求項15】
表示部を有し、
前記表示部は、請求項7乃至請求項13のいずれか一項に記載の発光素子と前記発光素子の発光を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−224291(P2007−224291A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14503(P2007−14503)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】