説明

発光素子アレイ、及びこれを備える光プリントヘッド

【課題】 光の利用効率が高い発光素子アレイ、及びこれを備える光プリントヘッドを提供する。
【解決手段】 本発明の実施形態の一例である発光素子アレイ11は、素子基板20と、素子基板20の上に配列されている複数の発光素子40と、を有しており、発光素子40は、n型クラッド層41と、n型クラッド層41の上に設けられているp型クラッド層43と、n型クラッド層41及びp型クラッド層43の間に設けられている発光層としての活性層42と、p型クラッド層43の上に設けられている電流拡散層44と、を有しており、活性層42の周縁と、電流拡散層44の周縁とを結んでなる仮想線Lの該電流拡散層44の側面に対する法線角度θが臨界角θlimを下回る領域を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子アレイ、及びこれを備える光プリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機やプリンタなどの画像形成装置には、円筒状の基体の外周面の上に光導電性を有している感光層が形成された感光体と、該感光体を露光するための露光の光を照射する光プリントヘッドと、を含んで構成されるものがある。このような画像形成装置の光プリントヘッドは、複数の発光素子が配列されている発光素子アレイを有しており、発光素子の発した光を感光体に照射して、当該感光体に露光像を形成することで光プリントヘッドとして機能している。
【0003】
この発光素子アレイは、発光素子の間の距離を近づけると、1つの発光素子の光が隣の発光素子の光で露光する領域に照射されてしまい、隣の発光素子の光で露光する領域を露光してしまう場合があった。特に、発光素子の発光領域よりも上の層を厚くすると、発光素子の側面からの光の漏れが大きくなってしまう。そこで、発光素子と発光素子との間に遮光膜を設ける技術が開発され、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−339103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたLEDアレイでは、発光する光を遮光膜で遮光しているので、光の利用効率が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は上述の事情のもとで考え出されたものであって、光の利用効率が高い発光素子アレイ、及びこれを備える光プリントヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光素子アレイは、基体と、該基体の上に配列されている複数の発光素子と、を有しており、前記発光素子は、第1のクラッド層と、該第1のクラッド層の上に設けられている第2のクラッド層と、前記第1のクラッド層及び前記第2のクラッド層の間に設けられている発光層と、前記第2のクラッド層の上に設けられている電流拡散層と、を有しており、前記発光層の周縁と、前記電流拡散層の周縁とを結んでなる線の該電流拡散層の側面に対する法線角度が臨界角を下回る領域を含んでいる、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る光プリントヘッドは、本発明に係る発光素子アレイと、発光層で発する光を集光するレンズアレイと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光の利用効率が高い発光素子アレイ、及びこれを備える光プリントヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る発光素子アレイの実施形態の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示した発光素子アレイのII−II線断面図である。
【図3】図1に示した発光素子アレイのIII−III線断面図である。
【図4】図3に示した発光素子アレイの要部を拡大した断面図である。
【図5】図1に示した発光素子アレイの製造工程を示す要部断面図である。
【図6】図1に示した発光素子アレイの製造工程を示す要部断面図である。
【図7】図1に示した発光素子アレイの製造方法を説明するための平面図である。
【図8】本発明に係る光プリントヘッドの実施形態の一例を示す概略断面図である。
【図9】図8に示した光プリントヘッドを備える画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<発光素子アレイ>
以下、本発明に係る発光素子アレイの一実施形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1〜図4に示したように、本実施形態に係る発光素子アレイ11は、素子基板20,DBR層30,発光素子40,被覆層としての保護層50,表面電極60,裏面電極70を備えている。このDBR層30は、素子基板20の上に設けられている。この発光素子40は、DBR層30の上に複数設けられている。この表面電極60は、各発光素子40に接続されている。なお、この「DBR」は、Distributed Bragg. Reflector(分布ブラッグ反射体)の略称である。
【0013】
素子基板20は、他の構成部材を支持する支持基体として機能している。この素子基板20は、GaAs基板で形成されている。本実施形態の素子基板20には、n型不純物がドープされている。このn型不純物としては、例えばSi(シリコン),Ge(ゲルマニウム),Sn(錫),S(硫黄),O(酸素),Ti(チタン),Zr(ジルコニウム)などのIV族、VI族の元素が挙げられる。本実施形態の素子基板20は、n型不純物であるSiが例えば0.7×1018〜1.9×1018〔atoms/cc〕の範囲程度の濃度でドーピングされ、n型の導電性を有している。この素子基板20の厚さは、例えば350〔μm〕の厚みとされる。なお、このGaAsにドープされる不純物はn型のものに限られず、p型のものであってもよい。
【0014】
この素子基板20は、一方の主面の面方位が(100)となるように形成されている。この素子基板20は、[110]方向,又は[1−10]方向に沿って4辺が切断されており、矩形状に形成されている。なお、本実施形態においては、結晶格子における
【0015】
【数1】

【0016】
方向を、便宜上、[1−10]方向と記載している。
【0017】
DBR層30は、発光素子40から発する光を反射させる機能を担うものである。このDBR層30は、基板3の一方の主面の上に設けられており、全体を覆っている。このDBR層30は、複数の発光素子40の下側に共通して延びている。
【0018】
このDBR層30は、互いに屈折率の異なる2つの層が交互に積層されて形成されている。本実施形態のDBR層30は、AlGaAsからなる第1層と、第1層とAlの含有率の異なるAlGaAsからなる第2層と、を1組として、5〜20組を交互に積層することで形成されている。このDBR層30の厚さは、例えば0.5〜2〔μm〕の範囲の厚みとなっている。
【0019】
また、このDBR層30には、素子基板20にドープされている不純物と同型のものがドープされている。つまり、本実施形態のDBR層30には、n型不純物がドープされている。本実施形態では、DBR層30にこのn型不純物としてSiがドーピングされている。このSiのドーピング濃度は、例えば2×1018〔atoms/cc〕の濃さ程度とする。
【0020】
発光素子40は、発光素子アレイ11が示す画素に対応する画素素子として機能する。図1に示したように、各発光素子40は、[1−10]方向に沿って配列されており、互いに離間して設けられている。各発光素子40はそれぞれ、平面視において矩形状に形成されている。この発光素子40は、一方の組の側面40a(図2の左右の側面)が[1−10]方向に沿っており、他方の組の側面40b(図3の左右の側面)が[110]方向に沿っている。1つの発光素子40の[1−10]方向に沿った幅W40としては、例えば5〜15〔μm〕の範囲程度の大きさが挙げられる。この発光素子40は、[1−10]方向に沿った幅W40が5〔μm〕となるように設けられている。また、一つの発光素子40の中心と、該発光素子40に隣接する他の発光素子40の中心との離間距離の値としては、例えば5.2〜84.7〔μm〕の範囲程度の値が挙げられる。本実施形態の発光素子40は、中心間の離間距離が21.15〔μm〕に設定されている。
【0021】
この各発光素子40の一方の組の側面40aは、図2に示したように逆メサ形状をしている。この各発光素子40の他方の組の側面40bは、図3に示したように順メサ形状をしている。なお、図2では、[1−10]方向が紙面の奥から手前に向かう方向であり、図3では、[110]方向が紙面の奥から手前に向かう方向である。なお、本実施形態において、「逆メサ形状」とは、発光素子40の幅が底面で最も狭く且つ上面で最も広くなった形状のみならず、発光素子40の幅が底面と上面との間の位置で最も狭くなった形状を含むものとする。一方、「順メサ形状」とは、発光素子40の幅が底面で最も広く且つ上面で最も狭くなった形状をいう。
【0022】
また、図2及び図3に示したように各発光素子40は、n型クラッド層41,活性層42,p型クラッド層43,電流拡散層44を有している。この各発光素子40は、DBR層30の上に、n型クラッド層41,活性層42,p型クラッド層43,及び電流拡散層44、を順次エピタキシャル成長させて積層することで形成されている。そのため、各発光素子40は、DBR層30に接するように設けられている。そのため、この発光素子40は、n型クラッド層41,活性層42,p型クラッド層43,及び電流拡散層44が積層されて構成されている。
【0023】
なお、本実施形態では、n型クラッド層41が発光素子40におけるn型半導体領域を構成しており、p型クラッド層43及び電流拡散層44が発光素子40におけるp型半導体領域を構成している。つまり、この発光素子40は、n型半導体領域であるn型クラッド層41と、活性層42と、p型半導体領域であるp型クラッド層43及び電流拡散層44と、でダブルへテロ接合をしている。この発光素子40は、電圧を印加して、電子と正孔とを再結合させることによって発光するように構成されている。
【0024】
n型クラッド層41は、DBR層30の上に接して設けられている。このn型クラッド層41には、n型不純物がドープされている。本実施形態のn型クラッド層41は、AlInPにn型不純物としてSiがドーピングされている。Siのドーピング濃度は、例えば、8×1017〔atoms/cc〕程度の濃さとされる。このn型クラッド層41の厚さは、例えば0.5〔μm〕程度の厚みとされる。また、このn型クラッド層41は、屈折率が3.2となるように形成されている。
【0025】
活性層42は、電子と正孔との再結合が主として生じる領域とするものであり、発光層として機能するものである。この活性層42は、n型クラッド層41の上に接して設けられている。この活性層42には、n型クラッド層41及びp型クラッド層43に比べてバンドギャップが小さくなっている。本実施形態の活性層42は、AlGaInPからなり、不純物がドーピングされていない。この活性層42の厚さは、例えば0.3〔μm〕程度の厚みとされる。また、この活性層42は、屈折率が3.2となるように形成されている。
【0026】
p型クラッド層43は、活性層42の上に接して設けられている。このp型クラッド層43には、p型不純物がドープされている。このp型不純物としては、例えばBe(ベリリウム),Zn(亜鉛),Mn(マンガン),Cr(クロム),Mg(マグネシウム),Ca(カルシウム)などの元素が挙げられる。本実施形態のp型クラッド層43は、AlInPにp型不純物としてMgがドーピングされている。Mgのドーピング濃度は、例えば、7×1017〔atoms/cc〕程度の濃さとされる。このp型クラッド層43の厚さは、例えば0.4〔μm〕程度の厚みとされる。また、このp型クラッド層43は、屈折率が3.2となるように形成されている。このp型クラッド層43は、電荷の閉じ込め効果を高めるため、0.2〔μm〕以上の厚みとすることが好ましい。
【0027】
電流拡散層44は、p型クラッド層43の上に接して設けられている。この電流拡散層44は、表面電極60から発光素子40に流れる電流を拡散して、p型クラッド層43の広い領域に電流を流すのに寄与している。この電流拡散層44には、p型不純物がドープされている。本実施形態の電流拡散層44は、GaPにp型不純物としてMgがドーピングされている。Mgのドーピング濃度は、例えば、1.5×1018〔atoms/cc〕程度の濃さとされる。この電流拡散層44の厚さは、例えば1.1〔μm〕程度の厚みとされる。この電流拡散層44は、p型クラッド層43の上に表面電極60を設ける際に当該表面電極60がp型クラッド層43に拡散するのを低減するために、0.05〔μm〕以上の厚みとすることが好ましい。また、この電流拡散層44は、屈折率が3.2となるように形成されている。さらに、この電流拡散層44は、活性層42から発する光の波長に対する減衰量が小さいものが好ましい。GaPが545.77〔nm〕以下の波長の光を吸収することから、活性層42から発する光の波長は、545.77〔nm〕より大きいことが好ましい。
【0028】
また、この電流拡散層44は、厚みを厚くすることによって、表面電極60から供給される電力を活性層42の広い領域に供給したり、側面を全反射させて光強度を高めたりすることができる。そのため、電流拡散層44は、照明などの光強度を大きくする用途の場合、厚くすることが求められており、一般的に8〔μm〕以上の厚みが用いられている。しかしながら、活性層42を広い領域で発光させると、隣り合う発光素子40の間で光の漏れが生じてしまい、結果として、各発光素子40が発する光の分離性が低下してしまい、高密度化が困難になる場合がある。
【0029】
図2及び図3に示したように、DBR層30及び発光素子40の露出する表面は、保護層50によって全体的に覆われている。この保護層50は、第1保護層51と、第2保護層52と、を含んで構成されている。このような保護層50は、例えば蒸着法,CVD法,スパッタ法,フォトリソグラフィ技術,印刷技術などを用いる種々の周知の製造方法によって形成できる。
【0030】
第1保護層51は、発光素子40を保護する機能を有するものである。この第1保護層51は、発光素子40を覆うように形成されており、被覆層として設けられている。この第1保護層51を形成する材料としては、例えばSiN系材料,SiO系材料などが挙げられる。本実施形態の第1保護層51は、電気絶縁性及び透光性を有するSiOによって形成されている。この第1保護層51は、発光素子40の電流拡散層44の上面の上に積層方向に貫通している貫通孔51aを有している。なお、図1では、説明の便宜上、第1保護層51を図示していない。また、この第1保護層51は、屈折率が1.41となるように形成されている。本実施形態では、この第1保護層51と、電流拡散層44との境界条件によって、活性層43の中央領域で発する光が電流拡散層44の上面の外周領域で全反射が生じるように設けられている。そのため、本実施形態では、活性層42の中央領域で発する光の強度を高めることができる。
【0031】
さらに、電流拡散層44の屈折率nが3.2であり、第1保護層51の屈折率nが1.41であることから、臨界角θlimは、“sinθlim=n/n”を基に算出され、25.9°となる。本実施形態では、活性層42の周縁と、電流拡散層44の周縁とを結んでなる仮想線Lの当該電流拡散層44の側面に対する法線角度θが臨界角θlimを下回る領域を含んでいる。よって、p型クラッド層43及び電流拡散層44の積層厚みの最大厚さTMAXは、“tanθlim≧TMAX/W40”を基に算出され、2.43〔μm〕以下の厚みとなる。よって、p型クラッド層43及び電流拡散層44の積層厚みの最小厚さは、2.43〔μm〕以下の厚みとなる。このように、活性層42の周縁と、電流拡散層44の周縁とを結んでなる仮想線Lの当該電流拡散層44の側面に対する法線角度θが臨界角θlimを下回る領域を含んでいるようにすると、活性層42の周縁から電流拡散層44の側面に向かうエスケープコーンが電流拡散層44の上面を横切ることとなる。つまり、電流拡散層44の側面方向に発する光の一部が上面方向に照射されることとなる。これによって、側面方向に活性層42の発する光が照射されるのを低減するとともに、上面方向に活性層42の発する光を増やすことができる。したがって、本実施形態の構成では、隣り合う発光素子40の発する光の分離性を高めることができる。
【0032】
なお、p型クラッド層43及び電流拡散層44の積層厚みの最小厚さの範囲は、発光素子40及び第1保護層51の材料によって変動するのは勿論のこと、電流拡散層44の側面の傾きによっても変動する。例えば電流拡散層44がメサ構造である場合と逆メサ構造である場合とでは異なっている。
【0033】
第2保護層52は、図2に示したように、発光素子40の[1−10]方向に沿う側面40aの逆メサ形状によって形成される凹部10aを埋めるように第1保護層51の上に形成されている。また、この第2保護層52は、図1に示したように、発光素子40の[1−10]方向に沿う側面40aの全体に接しておらず、部分的に接するように設けられている。なお、図1では、この第2保護層52の形成領域を斑点模様で示している。この第2保護層52は、逆メサ形状によって、表面電極60が断線するのを低減している。第2保護層52の材料としては、例えばポリイミド樹脂,エポキシ樹脂,アクリル樹脂,フェノール樹脂などが挙げられる。
【0034】
表面電極60は、発光素子40の発光に寄与する電圧を印加するものである。この表面電極40は、図1及び図2に示したように、パッド部60aと、リード部60bと、を有している。この表面電極60の形成材料としては、例えばAuSb合金,AuGe合金,Ni系合金,CrとAuとの積層体などが挙げられる。また、この表面電極60の厚さとしては、例えば0.5〜5〔μm〕の範囲の厚みが挙げられる。
【0035】
パッド部60aは、保護層50の上に千鳥状に配置されており、他の部位に比べて面積が大きく設けられている。リード部60bは、保護層50の上に設けられており、発光素子40と、パッド部60aとを電気的に接続している。
【0036】
このリード部60bは、第1保護層51の貫通孔52を通じて発光素子40の電流拡散層44に電気的に接続されている。また、このリード部60bは、第2保護層52の上を跨いで設けられている。このように、リード部60bが第2保護層52を跨いで設けられていることによって、リード部60bを蒸着などの技術で形成する際に、リード部60bに断線が生じるのを低減している。
【0037】
図2に示すように、基板3における発光素子40が形成された面とは反対側の面(他方の主面)の上には、当該反対側の面の全体に亘って裏面電極70(第二電極)が形成されている。この裏面電極70は、例えば、厚さが3000〜4000〔Å〕のAuとGeとの合金層と、厚さが250〔Å〕程度のCr層と、厚さが1〔μm〕程度のAu層との積層体で形成することができる。
【0038】
次に、本実施例の発光素子アレイ11の使用方法について説明する。この発光素子アレイ11は、表面電極60と裏面電極70とを駆動回路(図示せず)に電気的に接続して使用される。この発光素子アレイ11では、複数の表面電極60のうちの1つと、裏面電極70に順方向の電圧を印加することで、選択的に電圧を印加した表面電極60に電気的に接続されている1つの発光素子40の活性層42を発光させることができる。本実施例の発光素子アレイ11は、このようにして複数の発光素子40を選択的に発光させることができる。その他、選択的に発光させる発光素子40の制御には、周知の制御方法が用いられる。
【0039】
この発光素子アレイ11は、素子基板20と、素子基板20の上に配列されている複数の発光素子40と、を有しており、発光素子40は、n型クラッド層41と、n型クラッド層41の上に設けられているp型クラッド層43と、n型クラッド層41及びp型クラッド層43の間に設けられている発光層としての活性層42と、p型クラッド層43の上に設けられている電流拡散層44と、を有しており、活性層42の周縁と、電流拡散層44の周縁とを結んでなる仮想線Lの該電流拡散層44の側面に対する法線角度θが臨界角θlimを下回る領域を含んでいる。そのため、この発光素子アレイ11では、発光素子40の側面からの光の漏れを低減して、上面から光を照射することができるので、光の利用効率を高めることができる。
【0040】
また、この発光素子アレイ11は、発光素子40の側面からの光の漏れを低減できるので、各発光素子40の集光性を高めることができ、例えば発光素子アレイ11を画像記録装置に用いた際に、記録する画像の精細度を高めることができる。
【0041】
発光素子アレイ11は、は、配線としての表面電極60に接している、電流拡散層44を含んでおり、電流拡散層44の光を吸収する帯域は、活性層42で発する光の波長と異なっている。そのため、この発光素子アレイ11は、電流拡散層44の厚みの設計性を高めることができる。
【0042】
次に、発光素子アレイ11の製造方法の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図5及び図6は、発光素子アレイ11の製造工程を説明するための要部断面図である。なお、図5(a)〜(c)及び図6(d)〜(f)において、左図は、発光素子アレイ11のII−II線に沿った断面における製造工程を示す。右図は、発光素子アレイ11のIII−III線に沿った断面における製造工程を示す。また、ここでは、円盤状の一枚のウエハ基板20X(半導体ウエハ)に、連結した状態の複数の発光素子アレイ11を同時に作り込む場合について説明する。
【0043】
まず、図5(a)に示したように、DBR層30、n型クラッド膜41X、活性膜42X、p型クラッド膜43X、及び電流拡散膜44Xが一方の表面に連続してエピタキシャル成長された、円盤状の一枚のウエハ基板20Xを準備する。この円盤状のウエハ基板20Xは、後述のダイシングによって切断して、矩形状の素子基板20となるものである。また、DBR層30、n型クラッド膜41X、活性膜42X、p型クラッド膜43X、及び電流拡散膜44Xは、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成することができる。なお、このウエハ基板20Xには、[110]方向を示すオリフラ10Xaを有している。
【0044】
そして、図5(a)に示したように、公知のフォトリソグラフィ法などを用いて、電流拡散層44の上にフォトレジストからなるエッチングマスク45を形成する。このエッチングマスク45は、後述するように、n型クラッド膜41X、活性膜42X、p型クラッド膜43X、及び電流拡散膜44X(以下、これらの膜41X〜44Xをまとめて化合物半導体膜40Xという)をエッチングして、複数の発光素子40を形成する際に用いるものである。このエッチングマスク45は、直交する辺が[110]方向と、[1−10]方向と、に沿う矩形状に形成するとともに、[1−10]方向に列状に並べて設けている。
【0045】
次に、図5(b)に示したように、化合物半導体膜40Xを表面反応律速でエッチングして、n型クラッド層41、活性層42、p型クラッド層43、及び電流拡散層44を形成し、複数の発光素子40を[1−10]方向に沿って列をなして形成する。また、このとき、化合物半導体膜40Xの結晶方位に依存して、図5(b)の左図に示すように発光素子40の[1−10]方向に沿う側面が逆メサ形状に形成され、図5(b)の右図に示すように発光素子40の[110]方向に沿う側面が順メサ形状に形成される。なお、表面反応律速のエッチング液としては、例えばHSOとHとHOとを所定の割合で混合したものが挙げられる。このHSOとHとHOとの混合比としては、例えばHSO:H:HO=1:12:37が挙げられる。そして、エッチング終了後に、エッチングマスク45を除去する。
【0046】
続いて、図5(c)に示したように、発光素子40が形成されているDBR層30の上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの薄膜形成技術を用いて、第1保護膜(図示せず)を形成した後に、フォトリソグラフィ法などを用いて貫通孔を形成して、第1保護層51を形成する。なお、このとき、図5(c)の左図に示したように、発光素子40の逆メサ形状の側面にも第1保護膜が形成されているが、これは、CVD法などによって化学反応を用いて堆積させているためである。
【0047】
次いで、図6(d)の左図に示したように、形成された第1保護層51の上に、スピンコート法などを用いてポリイミド樹脂の前駆体などを塗布し、フォトリソグラフィ法等を用いて第2保護膜(図示せず)を所定の形状に形成して、第2保護層52を形成する。この第2保護膜52は、先に化合物半導体膜40Xをエッチングした際の窪みに設けられることとなる。
【0048】
次に、第1保護層51及び第2保護層52の上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法により所望のパターンを露光して、現像した後に、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などを用いて、表面電極60に加工する金属膜(図示せず)を形成する。そして、リフトオフ法によって、フォトレジストを除去し、図6(e)に示すように表面電極60を所定の形状に形成する。
【0049】
そして、図6(f)に示したように、円盤状のウエハ基板20Xにおける発光素子40が形成された面と反対側の面に、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などを用いて裏面電極70を形成する。
【0050】
以上の工程により、図7に示したように、円盤状の一枚のウエハ基板20Xに複数の発光素子アレイ11が連結された発光素子アレイの連結基板11Xが形成される。
【0051】
最後に、このウエハ基板20Xをダイシングによって切断し、図1に示したように矩形状の個々の発光素子アレイ11に分離する。このとき、直交する辺がそれぞれ[110]方向と[1−10]方向とに沿うように図7のウエハ基板20Xを切断する。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態では、図2及び図3に示すように、発光素子40のp型半導体領域(p型クラッド層43及び電流拡散層44)と、n型半導体領域(n型クラッド層13)との間に順方向電圧を印加するために、電流拡散層44上に表面電極60を接続し、素子基板20の上に裏面電極70を接続しているが、これに限定されるものではない。例えば、図示しないが、素子基板20の上に裏面電極70を設けず、n型クラッド層41の上面を露出させて、この露出部分に裏面電極70を接続するように設けてもよい。
【0054】
また、上記実施形態おける発光素子40は、DBR層30側からn型半導体領域及びp型半導体領域を順に形成しているが、これに限定されるものではない。例えば、逆に、DBR層30側からp型半導体領域及びn型半導体領域を順に形成してもよい。この場合、DBR層30及び素子基板20にp型不純物をドーピングし、p型の導電性を有するようにする。
【0055】
また、発光素子40は、p型半導体領域とn型半導体領域とによってpn接合領域が形成される限り、上記実施形態のようにn型半導体領域とp型半導体領域との間に活性層42などの他の層を設けた構成や、逆に活性層42を省略した構成にしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態に係る発光素子アレイ11は素子基板20を備えているが、例えば、上記実施形態の製造方法における図6(e)までの工程を実施した後に、レーザーリフトオフ法などを用いて素子基板20とDBR層30とを分離し、素子基板20を備えない発光素子アレイ11を形成してもよい。この場合、裏面電極70は、DBR層30の下面に形成するとよい。
【0057】
また、発光素子40を構成する半導体材料は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、所望の発光波長を有するように適宜選択すればよい。また、DBR層30を構成する半導体材料は、例えば、発光素子40から発せられる光に対して高い反射性を有するように適宜選択すればよい。また、上記実施形態では、素子基板20としてGaAs基板を用いているが、DBR層30及び発光素子40の各半導体層を結晶成長可能なものである限り、特に限定されるものではない。
【0058】
<光プリントヘッド>
以下、本発明に係る光プリントヘッドの一実施形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。
【0059】
図8に示した光プリントヘッド10は、発光素子アレイ11,筐体12,レンズアレイ13,制御回路(図示せず)を備えている。
【0060】
筐体12は、発光素子アレイ11,レンズアレイ13,制御回路の保持部材として機能するものである。筐体12は、支持面12aと、貫通孔12bとを有している。この支持面12aの上には、発光素子アレイ11が載置されている。また、貫通孔12bは、支持面12aと外部とに連通しており、中にレンズアレイ13が嵌合されている。このレンズアレイ13は、筐体12に接着剤で固定されている。この筐体311の構成材料としては、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属や、ポリフェニレンスルファイド(PPS)やポリカーボネートなどの樹脂材料が挙げられる。
【0061】
レンズアレイ13は、複数のレンズ13aを含んでなり、発行素子アレイ11の発する光を集光する機能を担うものである。レンズアレイ13は、発光素子アレイ11の上方向に配置されており、各レンズ13aは、発光素子40に対応して配列されている。つまり、発光素子40のそれぞれの上方にレンズ13aがそれぞれ設けられている。本実施形態においてレンズアレイ13は、各レンズ13aが二つの焦点を有しており、一方の焦点位置に発光素子40が位置し、他方の焦点位置に被照射物が位置している。このレンズアレイ13は、所定の角度以下の入射角で入射された光が結像するように構成されており、対応する発光素子40の光のみが所定の角度以下で入射されるように配置されている。
【0062】
制御回路は、外部からの画像データに基づいて発光素子アレイ11の駆動を個別制御するためのものである。
【0063】
本実施形態の光プリントヘッド10は、発光素子アレイ11を備えているので、光の利用効率を高めることができる。
【0064】
<画像形成装置>
以下、光プリントヘッド10を備える画像形成装置の一例について、図面を参照しつつ説明する。
【0065】
図9示した画像形成装置1は、光プリントヘッド10,感光体2,駆動装置(図示せず),帯電装置3,現像装置4,転写装置5,定着装置6,クリーニング装置7,除電装置8を備えている。
【0066】
光プリントヘッド10は、画像形成装置1において、感光体2の表面に静電潜像を形成するためのものであり、レーザ光を出射可能とされている。この光プリントヘッド10では、画像信号に応じてレーザ光を感光体10の表面に照射することにより、光照射部分の電位を減衰させて静電潜像が形成される。
【0067】
感光体2は、画像信号に基づいた静電潜像及びトナー像が形成されるものであり、図9に示す矢印A方向に回転可能となるように構成されている。また、本実施形態では、円筒状に形成されているものが採用されている。
【0068】
駆動機構3は、感光体2を矢印A方向に回転させる機能を担うものである。
【0069】
帯電装置3は、感光体2の表面を、感光体2の光導電層の種類に応じて、正極性又は負極性に帯電させる機能を担うものである。
【0070】
現像装置4は、感光体2の静電潜像を現像してトナー像を形成する機能を担うものである。この現像装置4は、磁性キャリアと絶縁性トナーとから成る二成分系現像剤、又は磁性トナーから成る一成分系現像剤など現像剤を保持している。静電潜像は、このトナーによって現像されて、トナー像となる。トナー像の帯電極性は、正規現像により画像形成が行われる場合には、感光体2の表面の帯電極性と逆極性とされ、反転現像により画像形成が行われる場合には、感光体2の表面の帯電極性と同極性とされる。
【0071】
転写装置5は、感光体2と転写装置5との間の転写領域に給紙された記録紙Pにトナー像を転写するためのものである。この転写装置5は、転写用チャージャ及び分離用チャージャを備えている。この転写装置5では、転写用チャージャにおいて記録紙Pの背面(非記録面)がトナー像とは逆極性に帯電され、この帯電電荷とトナー像との静電引力によって、記録紙Pの上にトナー像が転写される。転写装置5ではさらに、トナー像の転写と同時的に、分離用チャージャにおいて記録紙Pの背面が交流帯電させられ、記録紙Pが感光体2の表面から速やかに分離させられる。
【0072】
定着装置6は、記録紙Pに転写されたトナー像を定着させる機能を担うものである。この定着装置6は、一対の定着ローラ6a,6bを備えている。この定着装置6では、一対の定着ローラ6a,6bの間に記録紙Pを通過させることにより、熱、圧力などによって記録紙Pに対してトナー像が定着させられる。
【0073】
クリーニング装置7は、感光体2の表面に残存するトナーを除去する機能を担うものである。
【0074】
除電装置8は、感光体2の表面の電荷を除去するためのものである。この除電装置8は、たとえば光照射により、感光体2の表面の電荷を除去するように構成される。
【0075】
この画像形成装置1は、発光素子アレイ11を備えているので、光の利用効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・画像形成装置
2・・・感光体
3・・・制御装置
10・・・光プリントヘッド
11・・・発光素子アレイ
11X・・・発光素子アレイの連結基体
12・・・筐体
13・・・レンズアレイ
20・・・素子基板
20X・・・ウエハ基板
20Xa・・・オリフラ
30・・・DBR層
40・・・発光素子
40X・・・化合物半導体膜
41・・・n型クラッド層
41X・・・n型クラッド膜
42・・・活性層
42X・・・活性膜
43・・・p型クラッド層
43X・・・p型クラッド膜
44・・・電流拡散層
44X・・電流拡散膜
45・・・エッチングマスク
50・・・保護層
51・・・第1保護層
52・・・第2保護層
60・・・表面電極
70・・・裏面電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体の上に配列されている複数の発光素子と、を有しており、
前記発光素子は、第1のクラッド層と、該第1のクラッド層の上に設けられている第2のクラッド層と、前記第1のクラッド層及び前記第2のクラッド層の間に設けられている発光層と、前記第2のクラッド層の上に設けられている電流拡散層と、を有しており、
前記発光層の周縁と、前記電流拡散層の周縁とを結んでなる線の該電流拡散層の側面に対する法線角度が臨界角を下回る領域を含んでいる、ことを特徴とする発光素子アレイ。
【請求項2】
前記電流拡散層の光を吸収する帯域は、前記発光層で発する光の波長と異なっていることを特徴とする、請求項1に記載の発光素子アレイ。
【請求項3】
前記電流拡散層は、GaPからなり、
前記発光層で発光する光の波長は、545.77nmより長い、ことを特徴とする請求項2に記載の発光素子アレイ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の発光素子アレイと、前記発光層で発する光を集光するレンズアレイと、を備えている、ことを特徴とする光プリントヘッド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−77242(P2011−77242A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226249(P2009−226249)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】