説明

発光素子ヘッド、画像形成装置、発光素子ヘッドの光量補正方法およびプログラム

【課題】各発光サイリスタの光量補正をより正確に行なうことができる発光素子ヘッド等を提供する。
【解決手段】複数のグループに分割されグループ毎に点灯を行なう複数の発光サイリスタが主走査方向に列状に配された発光素子アレイと、発光素子アレイの光出力を結像させる光学素子と、グループ毎に供給されグループを構成する発光サイリスタの点灯パターンに対応した電流をバッファを介して発生させる電流制御部158−1と点灯パターンおよびバッファの電流増幅率に基づき決定された点灯時間補正データを取得して発光サイリスタの点灯時間を補正してパルス巾信号として電流制御部158−1に出力する点灯時間補正部156−1とを有する点灯時間制御・駆動部118−1と、を備えることを特徴とする発光素子ヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子ヘッド、画像形成装置、発光素子ヘッドの光量補正方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した、プリンタや複写機、ファクシミリ等の画像形成装置では、一様に帯電された感光体上に、画像情報を光記録手段によって照射することにより静電潜像を得た後、この静電潜像にトナーを付加して可視化し、記録紙上に転写して定着することによって画像形成が行なわれる。かかる光記録手段として、レーザを用いて主走査方向にレーザ光を走査させて露光する光走査方式の他、近年では、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)アレイ光源を主走査方向に多数、配列してなるLEDヘッドを用いた光記録手段が採用されている。
【0003】
特許文献1には、補正回路がプリント制御部から画像信号及び感光体感度の送信を受けて、光量補正値記憶部に記憶されたLED発光素子の光量補正値と、チップ間隔記憶部に記憶されたチップ間隔とを用いて光量補正を行うLEDアレイ露光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−205682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えばpnpn構造やnpnp構造の発光サイリスタを用いた自己走査型の発光素子アレイチップを列状に多数配列した発光素子ヘッドでは、各発光サイリスタの光量についてばらつきが生じる場合がある。そしてその場合は各発光サイリスタの光量をできるだけ均一化させる光量補正が必要となる。ところが、例えば、複数の発光サイリスタを発光させる発光素子ヘッドでは、光量補正が十分に行なわれず、形成される画像に乱れが生じる場合があった。
本発明は、各発光素子の光量補正をより正確に行なうことができ、発光光量のばらつきが少ない発光素子ヘッド等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、複数の群に分割され、当該群毎に点灯を行なう複数の発光素子が主走査方向に列状に配された発光素子アレイと、前記発光素子アレイの光出力を結像させる光学素子と、前記群毎に供給され当該群を構成する前記発光素子の点灯組み合わせに対応した電流をバッファを介して発生させる電流制御部と、当該点灯組み合わせおよび当該バッファの電流増幅率に基づき決定された点灯時間補正情報を取得し当該点灯時間補正情報により当該発光素子の点灯時間を補正して当該電流制御部に出力する点灯時間補正部と、を有する駆動部と、を備えることを特徴とする発光素子ヘッドである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記群に属する前記発光素子は、当該群毎に個数が同数であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子ヘッドである。
請求項3に記載の発明は、前記補正された発光素子の点灯時間は、当該発光素子の点灯を制御するためのパルス信号のパルス巾を変調させることで調整することを特徴とする請求項1または2に記載の発光素子ヘッドである。
請求項4に記載の発明は、前記バッファは、スリーステート・バッファであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の発光素子ヘッドである。
請求項5に記載の発明は、前記発光素子アレイは、前記発光素子が複数列状に配された発光素子アレイチップを複数並べる構成を採ることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の発光素子ヘッドである。
請求項6に記載の発明は、前記発光素子アレイチップは、自己走査型発光素子アレイチップであることを特徴とする請求項5に記載の発光素子ヘッドである。
【0008】
請求項7に記載の発明は、複数の群に分割され、当該群毎に点灯を行なう複数の発光素子が主走査方向に列状に配された発光素子アレイと、当該発光素子アレイの光出力を結像させる光学素子と、当該群を構成する前記発光素子の点灯組み合わせに対応して点灯時間を補正する点灯時間補正部と、を備える発光素子ヘッドを備え、トナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記トナー像を記録媒体に定着する定着手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項8に記載の発明は、前記トナー像形成手段の発光素子ヘッドは、前記群毎に供給され当該群を構成する前記発光素子の点灯組み合わせに対応した駆動電流をバッファを介して発生させる電流制御部を更に有し、前記点灯時間補正部は、当該点灯組み合わせおよび前記バッファの電流増幅率に基づき決定された点灯時間補正情報を取得し、当該点灯時間補正情報により当該発光素子の点灯時間を補正して前記電流制御部に出力することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置である。
【0009】
請求項9に記載の発明は、複数の群に分割され当該群毎に点灯を行なう複数の発光素子の当該群毎の点灯組み合わせを取得し、前記点灯組み合わせに対応した点灯時間補正情報を取得し、前記点灯時間補正情報に基づき前記発光素子の点灯時間を補正することで前記発光素子の光量補正を行なうことを特徴とする発光素子ヘッドの光量補正方法である。
請求項10に記載の発明は、前記点灯時間補正情報は、前記群毎に供給され当該群を構成する前記発光素子の点灯組み合わせに対応した駆動電流をバッファを介して発生させる際の当該点灯組み合わせおよび当該バッファの電流増幅率に基づき決定することを特徴とする請求項10に記載の発光素子ヘッドの光量補正方法である。
【0010】
請求項11に記載の発明は、コンピュータに、複数の群に分割され当該群毎に点灯を行なう複数の発光素子の当該群毎の点灯組み合わせを取得する機能と、前記点灯組み合わせに対応した点灯時間補正情報を取得する機能と、前記点灯時間補正情報に基づき前記発光素子の点灯時間を補正することで前記発光素子の光量補正を行ない出力する機能と、を実現するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、発光素子の光量補正をより正確に行なうことができ、発光光量のばらつきが少ない発光素子ヘッドを提供できる。
請求項2の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、より高速に発光素子を駆動させることができる。
請求項3の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、より高精度に発光光量のばらつきを補正することができる。
請求項4の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、簡単な構成で電流駆動可能な発光素子アレイが製造できる。
請求項5の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、発光素子ヘッドを製造する際に歩留まりを高くすることができる。
請求項6の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、よりその大きさが小さい発光素子アレイチップを製造することができる。
請求項7の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、より画像の乱れが少ない画像形成装置が提供できる。
請求項8の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、よりばらつきが少ない光量補正を行なうことができる。
請求項9の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、より簡易な方法で発光素子ヘッドの光量補正を行なうことができる。
請求項10の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、よりばらつきが少ない光量補正を行なうことができる。
請求項11の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、発光素子の光量補正を行なわせることができる機能をコンピュータにより実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置の全体構成の一例を示した図である。
【図2】本実施の形態が適用される発光素子ヘッドの構成を示した図である。
【図3】発光素子ヘッドにおける回路基板および発光素子アレイの上面図である。
【図4】回路基板に搭載される信号発生回路の構成および回路基板の配線構成を示した図である。
【図5】(a)〜(b)は、本実施の形態が適用される発光チップの構造を説明した図である。
【図6】自己走査型発光素子アレイ(SLED)チップである発光チップの回路構成を説明するための図である。
【図7】発光チップの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】信号発生回路の構成を示すブロック図である。
【図9】基準クロック発生部の構成を説明するブロック図である。
【図10】点灯時間制御・駆動部について更に詳しく説明したブロック図である。
【図11】電流制御部について説明した図である。
【図12】点灯時間制御・駆動部での発光サイリスタの点灯時間を補正する動作について説明を行なったフローチャートである。
【図13】(a)〜(c)は、表1に示したスリーステート・バッファを使用した場合に、電流制御部が出力するφh1信号の電流値について説明をした図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<画像形成装置の説明>
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置1の全体構成の一例を示した図である。図1に示す画像形成装置1は、一般にタンデム型と呼ばれる画像形成装置である。この画像形成装置1は、各色の画像データに対応して画像形成を行なう画像形成プロセス部10、画像形成プロセス部10を制御する画像出力制御部30、例えばパーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3に接続され、これらから受信された画像データに対して予め定められた画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0014】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔を置いて並列的に配置される複数のエンジンからなる画像形成ユニット11を備えている。この画像形成ユニット11は、トナー像形成手段の一例である4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kから構成されている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、それぞれ、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体の一例としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定められた電位で一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光する発光素子ヘッド14、発光素子ヘッド14によって得られた静電潜像を現像する現像手段の一例としての現像器15を備えている。ここで、各画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、現像器15に収納されたトナーを除いて、略同様に構成されている。そして、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
また、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像を記録媒体の一例としての記録用紙に多重転写させるために、この記録用紙を搬送する用紙搬送ベルト21と、用紙搬送ベルト21を駆動させるロールである駆動ロール22と、感光体ドラム12のトナー像を記録用紙に転写させる転写手段の一例としての転写ロール23と、記録用紙にトナー像を定着させる定着手段の一例としての定着器24とを備えている。
【0015】
この画像形成装置1において、画像形成プロセス部10は、画像出力制御部30から供給される各種の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。そして、画像出力制御部30による制御の下で、パーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3から受信された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、画像形成ユニット11に供給される。そして、例えば黒(K)色の画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら、帯電器13により予め定められた電位に帯電され、画像処理部40から供給された画像データに基づいて発光する発光素子ヘッド14により露光される。これにより、感光体ドラム12上には、黒(K)色画像に関する静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム12上に形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上には黒(K)色のトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11Y、11M、11Cにおいても、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
【0016】
各画像形成ユニット11で形成された感光体ドラム12上の各色トナー像は、矢印B方向に移動する用紙搬送ベルト21の移動に伴って供給された記録用紙に、転写ロール23に印加された転写電界により、順次静電転写され、記録用紙上に各色トナーが重畳された合成トナー像が形成される。
その後、合成トナー像が静電転写された記録用紙は、定着器24まで搬送される。定着器24に搬送された記録用紙上の合成トナー像は、定着器24によって熱および圧力による定着処理を受けて記録用紙上に定着され、画像形成装置1から排出される。
【0017】
<発光素子ヘッドの説明>
図2は、本実施の形態が適用される発光素子ヘッド14の構成を示した図である。この発光素子ヘッド14は、ハウジング61、発光素子として複数のLEDを備えた発光素子アレイ63、発光素子アレイ63や発光素子アレイ63を駆動する信号発生回路100(後述の図3参照)等を搭載する回路基板62、発光素子アレイ63から出射された光出力を感光体ドラム12表面に結像させる光学素子の一例としてのロッドレンズアレイ64を備えている。
【0018】
ハウジング61は、例えば金属で形成され、回路基板62およびロッドレンズアレイ64を支持し、発光素子アレイ63の発光点とロッドレンズアレイ64の焦点面とが一致するように設定されている。また、ロッドレンズアレイ64は、感光体ドラム12の軸方向(主走査方向)に沿って配置されている。
【0019】
<発光素子アレイの説明>
図3は、発光素子ヘッド14における回路基板62および発光素子アレイ63の上面図である。
図3に示すように、発光素子アレイ63は、回路基板62上に、60個の発光素子アレイチップの一例としての発光チップC(C1〜C60)を、主走査方向に二列に向かい合わせて千鳥状に配置して構成されている。さらに、前述したように、回路基板62は、発光素子アレイ63を駆動する信号発生回路100を搭載している。
【0020】
図4は、回路基板62(図2参照)に搭載される信号発生回路100の構成および回路基板62の配線構成を示した図である。
信号発生回路100には、図示しないが、画像出力制御部30および画像処理部40(図1参照)より、画像処理された画像データおよび各種の制御信号が入力される。そして、信号発生回路100は、これらの画像データおよび各種の制御信号に基づいて、画像データの並び替えや発光強度の補正等を行い、各発光チップC(C1〜C60)に対して点灯信号φI(φI1〜φI60)を出力する。
【0021】
また、信号発生回路100は、各種の制御信号に基づき、各発光チップC1〜C60に対して、第1の転送信号φ1(第1転送信号φ1)、第2の転送信号φ2(第2転送信号φ2)および画像データに基づいて点灯させる発光点を記憶する記憶信号φmを出力する。
【0022】
回路基板62には、各発光チップC(C1〜C60)のVsub端子(後述の図6参照)に接続され、基準電位Vsub(例えば0V)を与える電源ライン104が設けられている。そして、各発光チップC(C1〜C60)のVga端子(後述の図6参照)に接続され、電力供給のための電源電位Vga(例えば−3.3V)を与える電源ライン105が設けられている。
また、回路基板62には、信号発生回路100から発光素子アレイ63に、第1転送信号φ1、第2転送信号φ2および記憶信号φmを、それぞれ送信する第1転送信号ライン106、第2転送信号ライン107および記憶信号ライン108も設けられている。第1転送信号ライン106、第2転送信号ライン107および記憶信号ライン108は、それぞれが各発光チップC(C1〜C60)のφ1端子、φ2端子およびφm端子(後述の図6参照)に並列に接続されている。
さらに、回路基板62には、信号発生回路100から各発光チップC1〜C60に点灯信号φI(φI1〜φI60)を送信する60本の点灯信号ライン109(109−1〜109−60)も設けられている。
【0023】
<発光素子アレイチップの説明>
図5(a)〜(b)は、本実施の形態が適用される発光チップCの構造を説明した図である。
図5(a)は、発光チップCをLEDの光が出射する方向から見た図である。また図5(b)は、図5(a)のA−A断面図である。
発光チップCには、基板80の両側にボンディングパッド81が配され、また両側のボンディングパッド81に挟まれる領域には、LED82が直線状に等間隔で列状に配されている。そして、それぞれのLED82には光が出射する側にマイクロレンズ83が形成されている。このマイクロレンズ83は、LED82から出射した光を集光し、感光体ドラム12(図2参照)に対して、効率よく光を入射させることができる。
このマイクロレンズ83は、光硬化性樹脂等の透明樹脂からなり、より効率よく光を集光するためその表面は非球面形状をとることが好ましい。また、マイクロレンズ83の大きさ、厚さ、焦点距離等は、使用されるLED82の波長、使用される光硬化性樹脂の屈折率等により決定される。
【0024】
<自己走査型発光素子アレイチップの説明>
なお、本実施の形態では、発光チップCとして例示した発光素子アレイチップとして自己走査型発光素子アレイ(SLED:Self-Scanning Light Emitting Device)チップを使用するのが好ましい。自己走査型発光素子アレイチップは、発光素子アレイチップの構成要素としてpnpn構造を持つ発光サイリスタを用い、発光素子の自己走査が実現できるように構成したものである。
【0025】
図6は、自己走査型発光素子アレイ(SLED)チップである発光チップCの回路構成を説明するための図である。なお、ここでは、発光チップC1を例として説明を行うが、他の発光チップC2〜C60も発光チップC1と同じ構成を有している。
【0026】
発光チップC1は、基板80上に列状に配列されたスイッチ素子の一例としての転送サイリスタT1、T2、T3、…からなる転送サイリスタ列(スイッチ素子列)、同様に列状に配列された記憶素子の一例としての記憶サイリスタM1、M2、M3、…からなる記憶サイリスタ列、同様に列状に配列された発光素子の一例としての発光サイリスタL1、L2、L3、…からなる発光サイリスタ列(発光素子列)を備えている。即ち、発光サイリスタL1、L2、L3、…は、図6で説明したLED82の役割を担う。
ここでは、転送サイリスタT1、T2、T3、…をそれぞれ区別しないときは、転送サイリスタTと呼ぶ。同様に、記憶サイリスタM1、M2、M3、…をそれぞれ区別しないときは記憶サイリスタM、発光サイリスタL1、L2、L3、…をそれぞれ区別しないときは発光サイリスタLと呼ぶ。
なお、上記のサイリスタ(転送サイリスタT、記憶サイリスタM、発光サイリスタL)とは、アノード端子、カソード端子、ゲート端子の3端子を有する半導体素子である。
【0027】
また、発光チップC1は、転送サイリスタT1、T2、T3、…をそれぞれ番号順に2つをペアにしてそれぞれの間を接続する結合ダイオードDc1、Dc2、Dc3、…を備えている。さらに、接続ダイオードDm1、Dm2、Dm3、…を備えている。
そして、電源線抵抗Rt1、Rt2、Rt3、…、電源線抵抗Rm1、Rm2、Rm3、…、抵抗Rn1、Rn2、Rn3、…備えている。
ここで、転送サイリスタTなどと同様に、結合ダイオードDc1、Dc2、Dc3、…、接続ダイオードDm1、Dm2、Dm3、…、電源線抵抗Rt1、Rt2、Rt3、…、電源線抵抗Rm1、Rm2、Rm3、…、抵抗Rn1、Rn2、Rn3、…をそれぞれ区別しないときは、結合ダイオードDc、接続ダイオードDm、電源線抵抗Rt、電源線抵抗Rm、抵抗Rnと呼ぶ。
ここで、転送サイリスタ列における転送サイリスタTの数を例えば128個とすると、記憶サイリスタM、発光サイリスタLのそれぞれの数も128個である。同様に、接続ダイオードDm、電源線抵抗Rt、Rm、抵抗Rnの数も128個である。しかし、結合ダイオードDcの数は、転送サイリスタTの数より1少ない127個である。
【0028】
さらに、発光チップC1は、1個のスタートダイオードDsを備えている。そして、第1転送信号φ1と第2転送信号φ2とに過剰な電流が流れるのを防止するため、電流制限抵抗R1とR2とを備えている。
【0029】
なお、転送サイリスタT1、T2、T3、…は、図6中において、左側からT1、T2、T3、…のように番号順で配列されている。また、記憶サイリスタM1、M2、M3、…および発光サイリスタL1、L2、L3、…も、同様に、図中左側から番号順で配列されている。さらに、結合ダイオードDc1、Dc2、Dc3、…、接続ダイオードDm1、Dm2、Dm3、…、電源線抵抗Rt1、Rt2、Rt3、…、電源線抵抗Rm1、Rm2、Rm3、…、抵抗Rn1、Rn2、Rn3、…も、同様に、図中左側から番号順で配列されている。
【0030】
では次に、発光チップC1における各素子の電気的な接続について説明する。
各転送サイリスタT1、T2、T3、…のアノード端子、各記憶サイリスタM1、M2、M3、…のアノード端子、各発光サイリスタL1、L2、L3、…のアノード端子は、発光チップC1の基板80に接続されている(アノードコモン)。そして、これらのアノード端子は、基板80に設けられたVsub端子を介して電源ライン104(図4参照)に接続されている。この電源ライン104には、基準電位Vsubが供給される。
そして、各転送サイリスタT1、T2、T3、…のゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…は、各転送サイリスタT1、T2、T3、…に対応して設けられた電源線抵抗Rt1、Rt2、Rt3、…をそれぞれ介して電源線71に接続されている。そして、電源線71はVga端子に接続されている。Vga端子は電源ライン105(図4参照)に接続されて、電源電位Vgaが供給される。
【0031】
転送サイリスタT1から始まって、転送サイリスタTの配列に沿って、奇数番目の転送サイリスタT1、T3、T5、…のカソード端子は、第1転送信号線72に接続されている。そして、第1転送信号線72は、電流制限抵抗R1を介して、第1転送信号φ1の入力端子であるφ1端子に接続されている。このφ1端子には、第1転送信号ライン106(図4参照)が接続され、第1転送信号φ1が供給される。
一方、転送サイリスタTの配列に沿って、偶数番目の転送サイリスタT2、T4、T6、…のカソード端子は、第2転送信号線73に接続されている。そして、第2転送信号線73は、電流制限抵抗R2を介して第2転送信号φ2の入力端子であるφ2端子に接続されている。このφ2端子には、第2転送信号ライン107(図4参照)が接続され、第2転送信号φ2が供給される。
各記憶サイリスタM1、M2、M3、…のカソード端子は、それぞれに対応して設けられた抵抗Rn1、Rn2、R3n、…を介して、記憶信号線74に接続されている。そして、記憶信号線74は、記憶信号φmの入力端子であるφm端子に接続されている。このφm端子には、記憶信号ライン108(図4参照)が接続され、記憶信号φmが供給される。
【0032】
そして、各転送サイリスタT1、T2、T3、…のゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…は、同じ番号の記憶サイリスタM1、M2、M3、…のゲート端子Gm1、Gm2、Gm3、…に、1対1で、それぞれ接続ダイオードDm1、Dm2、Dm3、…を介して接続されている。すなわち、接続ダイオードDm1、Dm2、Dm3、…のアノード端子は、各転送サイリスタT1、T2、T3、…のゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…に接続され、接続ダイオードDm1、Dm2、Dm3、…のカソード端子は、記憶サイリスタM1、M2、M3、…のゲート端子Gm1、Gm2、Gm3、…に接続されている。
ここでも、ゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…およびゲート端子Gm1、Gm2、Gm3、…を区別しないときは、それぞれゲート端子Gt、ゲート端子Gmと呼ぶ。
接続ダイオードDmは、転送サイリスタTのゲート電極Gtから、記憶サイリスタMのゲート電極Gmに電流が流れる方向で接続されている。
【0033】
また、各記憶サイリスタM1、M2、M3、…のゲート端子Gm1、Gm2、Gm3、…は、各記憶サイリスタM1、M2、M3、…に対応して設けられた電源線抵抗Rm1、Rm2、Rm3、…をそれぞれ介して電源線71に接続されている。
【0034】
転送サイリスタT1、T2、T3、…のそれぞれのゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…を番号順に2個ずつペアとしたゲート端子Gt間に、結合ダイオードDc1、Dc2、Dc3、…がそれぞれ接続されている。すなわち、各結合ダイオードDc1、Dc2、Dc3、…はそれぞれがゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…を順に挟むように直列接続されている。そして、結合ダイオードDc1の向きは、ゲート端子Gt1からゲート端子Gt2に向かって電流が流れる方向に接続されている。他の結合ダイオードDc2、Dc3、Dc4、…についても同様である。
【0035】
また、発光サイリスタL1、L2、L3、…のカソード端子は、それぞれが点灯信号線75に接続され、φI端子に接続されている。このφI端子には、点灯信号ライン109(図4参照:発光チップC1の場合は点灯信号ライン109−1)が接続され、点灯信号φI(図4参照:発光チップC1の場合は点灯信号φI1)が供給される。なお、他の発光チップC2〜C60のφI端子には、それぞれ点灯信号φI2〜φI60が供給される。
【0036】
そして、転送サイリスタ列の一端側の転送サイリスタT1のゲート端子Gt1は、スタートダイオードDsのカソード端子と接続されている。一方、スタートダイオードDsのアノード端子は、第2転送信号線73に接続されている。
【0037】
次に、発光素子アレイ63の動作について説明する。発光素子アレイ63を構成する各発光チップC(C1〜C60)には、図4に示したように、一組の第1転送信号φ1、第2転送信号φ2および記憶信号φmが共通に供給される。よって、これらの信号に基づいて、各発光チップC(C1〜C60)は、同時に並行して点灯制御されている。一方、各発光チップC(C1〜C60)には、画像データに基づいた各点灯信号φI(φI1〜φI60)がそれぞれ個別に供給される。これにより、各発光チップC(C1〜C60)の点灯は、画像データに基づいて、個別に点灯制御される。ここでは、発光点の点灯/消灯させる一連の操作を点灯制御と呼ぶ。
以上のことから、発光素子アレイ63の動作は、発光チップC1の動作を説明すれば足りる。そこで、発光チップC1を例に取って、発光チップCの動作を説明する。
【0038】
図7は、発光チップC1(C)の動作を説明するためのタイミングチャートである。そして、図7では、発光サイリスタLを4個ずつ組にして点灯制御する場合を示している。なお、発光サイリスタLの最初の4個の組と、次の4個の組の点灯制御する部分のみを示している。
図7の期間T(A)では、最初の4個の発光サイリスタL1〜L4をすべて点灯させるとした。また期間T(B)では、次の4個の発光サイリスタL5〜L8のうち、発光サイリスタL5、L7、L8を点灯させるとした。
【0039】
図7において、時刻aから時刻rへとアルファベット順に時刻が経過するとする。そして発光サイリスタL1〜L4は、時刻cから時刻qの期間T(A)において点灯制御される。また次の発光サイリスタL5〜L8は、時刻qから時刻rの期間T(B)で点灯制御される。なお、図示しないが、期間T(B)に引き続き、発光サイリスタL9〜L12が転送制御される期間T(C)が引き続いている。そして、発光チップC1(C)が128個の発光サイリスタLを有する場合には、発光サイリスタL128まで、発光サイリスタLを4個ずつ組として点灯制御される。
【0040】
期間T(A)、期間T(B)、…における信号波形は、画像データによって変化する記憶信号φmを除いて、同じ波形の繰り返しである。したがって、以下では、時刻cから時刻qまでの期間T(A)のみを説明する。なお、時刻aから時刻cまでの期間は、発光チップC1(C)が動作を開始する期間である。この期間の信号については、動作の説明において説明する。
【0041】
第1転送信号φ1、第2転送信号φ2、記憶信号φm、点灯信号φI1(φI)の、期間T(A)における信号波形について説明する。
第1転送信号φ1は、時刻cでローレベルの電位(以下、「L」と記す。)であって、時刻eで「L」からハイレベルの電位(以下、「H」と記す。)に移行し、時刻gで「H」から「L」に移行する。さらに、第1転送信号φ1は、時刻kで「L」から「H」に移行し、時刻nで「H」から「L」に移行する。そして、時刻qまで「L」を維持する。
第2転送信号φ2は、時刻cで「H」であって、時刻dで「H」から「L」に移行し、時刻hで「L」から「H」に移行する。さらに、第2転送信号φ2は、時刻jで「H」から「L」に移行し、時刻oで「L」から「H」に移行する。そして、時刻qまで「H」を維持する。
ここで、第1転送信号φ1と第2転送信号φ2とを比較すると、時刻cから時刻oの期間においては、共に「L」となる期間(例えば時刻dから時刻e、時刻gから時刻h)を挟んで、交互に「H」と「L」とを繰り返している。そして、第1転送信号φ1と第2転送信号φ2とは、同時に「H」となる期間を有さない。
【0042】
記憶信号φmは、時刻cにおいて「H」から「L」に移行し、時刻dで「L」から記憶レベルの電位(以下、「S」と記す。)に移行する。なお、詳細は後述するが、記憶レベル「S」は、「H」と「L」の間のレベル(電位)で、ターンオンした記憶サイリスタMのオン状態を維持できる電位レベルをいう。
そして、時刻fで「S」から「L」に、時刻gで「L」から「S」に移行する。さらに、時刻iで「S」から「L」に、時刻jで「L」から「S」に、時刻lで「S」から「L」に、時刻nで「L」から「H」に移行する。そして、時刻qまで「H」を維持する。
ここで、記憶信号φmと、第1転送信号φ1および第2転送信号φ2との関係を見ると、記憶信号φmは、第1転送信号φ1または第2転送信号φ2のいずれかが「L」のとき、「L」になっている。例えば、第1転送信号φ1が「L」である時刻cから時刻d、第2転送信号φ2が「L」である時刻fから時刻gにおいて、記憶信号φmは「L」である。
【0043】
一方、点灯信号φIは、本実施の形態では、後述するように発光サイリスタLに発光(点灯)のための電流を供給する信号である。
点灯信号φIは、時刻cで「H」であって、時刻mにおいて「Le」に移行する。時刻pにおいて「Le」から「H」に移行する。そして、時刻qで「H」を維持する。
ここで、「Le」は、動作の説明において後述するが、点灯可能に設定された発光サイリスタLを点灯させることができる電位レベル(点灯レベル)をいい、「H」と「L」の間の電位である。
【0044】
発光チップC1(C)の動作を説明する前に、サイリスタ(転送サイリスタT、記憶サイリスタM、発光サイリスタL)の基本的な動作を説明する。サイリスタは、アノード端子、カソード端子、ゲート端子の3端子を有する半導体素子である。
以下では、例として、図6に示した基板80に設定したサイリスタのアノード端子(Vsub端子)に供給される基準電位Vsubを0V(「H」)、Vga端子に供給される電源電位Vgaを−3.3V(「L」)とする。そして、サイリスタは、図7に示したように、GaAs等のp型層、n型層を積層して構成されているとし、pn接合の拡散電位(順方向電位)Vdを1.5Vとする。
【0045】
サイリスタは、カソード端子にしきい電圧Vより低い電位(負側に大きい電位)が印加されるとターンオンする。サイリスタは、ターンオンすると、アノード端子とカソード端子との間に電流が流れた状態(オン状態)になる。ここで、サイリスタのしきい電圧は、ゲート端子の電位から拡散電位Vdを引いた値である。よって、サイリスタのゲート端子の電位が−1.5Vであると、しきい電圧は−3.0Vとなる。すなわち、−3.0Vより低い電圧がカソード端子に印加されると、サイリスタがターンオンすることになる。
そして、ターンオンすると、サイリスタのゲート端子は、サイリスタのアノード端子の電位となる。ここでは、アノード端子は0Vに設定しているので、ゲート端子の電位は0Vである。また、サイリスタのカソード端子は拡散電位Vdになる。ここでは、−1.5Vとなる。
【0046】
サイリスタは一度ターンオンすると、カソード端子の電位が、サイリスタがオン状態を維持するために必要な電位より高い電位(負側に小さい電位)になるまで、オン状態が維持される。ここでは、オン状態のサイリスタのカソード端子の電位は−1.5Vであるので、カソード端子に−1.5Vより低い電位が印加され、サイリスタのオン状態を維持しうる電流が供給されることで、オン状態が維持される。
なお、カソード端子が「H」(0V)になって、アノード端子と同電位になれば、サイリスタはオン状態を維持できずターンオフ(オフ)する。サイリスタは、ターンオフすると、アノード端子とカソード端子との間に電流が流れていない状態(オフ状態)になる。つまり、サイリスタは一旦オン状態になると、電流が流れた状態が維持され、ゲート端子の電位によってはターンオフできない。
よって、サイリスタはオン状態を維持(記憶、保持)する機能を有している。そして、サイリスタでは、ターンオンさせるための電位に比べ、オン状態を維持する電位は低くてよい。
なお、発光サイリスタLは、オンになると点灯(発光)し、オフになると消灯(非発光)する。
【0047】
では、図6を参照しつつ、図7に示したタイミングチャートにしたがって、発光素子アレイ63および発光チップCの動作を説明する。
(初期状態)
図7に示したタイミングチャートの時刻aにおいて、発光素子アレイ63の発光チップC(C1〜C60)のそれぞれのVsub端子は基準電位Vsub(0V)に設定される。一方、それぞれのVga端子は電源電位Vga(−3.3V)に設定される(図4参照)。
そして、信号発生回路100は第1転送信号φ1、第2転送信号φ2および記憶信号φmをそれぞれ「H」に、点灯信号φI(φI1〜φI60)を「H」に設定する(図4参照)。これにより、第1転送信号ライン106が「H」になり、発光素子アレイ63の各発光チップCのφ1端子を介して、各発光チップCの第1転送信号線72が「H」になる。同様に、第2転送信号ライン107が「H」になり、各発光チップCのφ2端子を介して、各発光チップCの第2転送信号線73が「H」になる。記憶信号ライン108が「H」になり、各発光チップCのφm端子を介して、各発光チップCの記憶信号線74が「H」になる。さらに、点灯信号ライン109(109−1〜109−60)が「H」になり、各発光チップCのφI端子を介して、各発光チップCの点灯信号線75が「H」になる。
では、発光チップC1を例として、発光チップCの動作を説明する。他の発光チップC2〜C60も、発光チップC1と同様に、同時に並行して動作する。
【0048】
発光チップC1の転送サイリスタT1、T2、T3、…、記憶サイリスタM1、M2、M3、…および発光サイリスタL1、L2、L3、…のアノード端子はVsub端子に接続されているので、「H」(0V)が供給される。
一方、奇数番号の転送サイリスタT1、T3、T5、…の各カソード端子は、「H」に設定された第1転送信号線72に、偶数番号の転送サイリスタT2、T4、T6、…の各カソード端子は、「H」に設定された第2転送信号線73に接続されている。各転送サイリスタTのアノード端子およびカソード端子はともに「H」であるので、各転送サイリスタTはオフ状態にある。
同様に、記憶サイリスタM1、M2、M3、…の各カソード端子は、「H」に設定された記憶信号線74に接続されている。各記憶サイリスタMのアノード端子およびカソード端子はともに「H」となり、各記憶サイリスタMはオフ状態にある。
さらに、発光サイリスタL1、L2、L3、…の各カソード端子は、「H」に設定された点灯信号φI(発光チップC1では点号信号φI1)に接続されている。各発光サイリスタLのアノード端子およびカソード端子はともに「H」であるので、各発光サイリスタLはオフ状態にある。
【0049】
さて、転送サイリスタTのゲート端子Gtは、抵抗Rtを介して電源電位Vga(「L」:−3.3V)に設定されている。よって、ゲート端子Gtの電位は「L」になっている。
同様に、記憶サイリスタMのゲート端子Gmは、抵抗Rmを介して電源電位Vga(「L」:−3.3V)に設定されている。よって、ゲート端子Gmの電位は「L」になっている。また、発光サイリスタLのゲート端子Glは記憶サイリスタMのゲート端子Gmに接続されているので、発光サイリスタLのゲート端子Glの電位も「L」になっている。
【0050】
そして、図6中の転送サイリスタ列の一端側のゲート端子Gt1は、前述したように、スタートダイオードDsのカソード端子に接続されている。そして、スタートダイオードDsのアノード端子は、「H」の第2転送信号線73に接続されている。すると、スタートダイオードDsは、カソード端子が「L」(−3.3V)でアノード端子が「H」(0V)であるので、順方向に電圧が印加(順バイアス)されていることになる。よって、スタートダイオードDsのカソード端子が接続されたゲート端子Gt1は、アノード端子の「H」(0V)からスタートダイオードDsの拡散電位Vd(1.5V)を引いた値になる。よって、本実施の形態では、ゲート端子Gt1の電位は−1.5Vになる。
すると、前に説明したように、転送サイリスタT1のしきい電圧は、ゲート端子Gt1の電位(−1.5V)から拡散電位Vd(1.5V)を引いた−3Vとなる。
なお、転送サイリスタT1に隣接する転送サイリスタT2のゲート端子Gt2は、ゲート端子Gt1に結合ダイオードDc1を介して接続されているため、転送サイリスタT2のゲート端子Gt2の電位は、ゲート端子Gt1の電位(−1.5V)から結合ダイオードDc1の拡散電位Vd(1.5V)を引いた−3Vになる。よって、転送サイリスタT2のしきい電圧は−4.5Vになる。
同様に、記憶サイリスタM1のゲート端子Gm1(発光サイリスタL1のゲート端子Gl1も同じ)はゲート端子Gt1に接続ダイオードDm1を介して接続されているため、記憶サイリスタM1のゲート端子Gm1(ゲート端子Gl1)の電位は、ゲート端子Gt1の電位(−1.5V)から接続ダイオードDm1の拡散電位Vd(1.5V)を引いた−3Vになる。よって、記憶サイリスタM1(発光サイリスタL1)のしきい電圧は−4.5Vになる。
これらのゲート端子Gt1、Gt2、Gm1、Gl1を除く、他のゲート端子Gt、Gm、Glの電位は、電源電位Vga(−3.3V)であるので、転送サイリスタT1、T2、記憶サイリスタM1、発光サイリスタL1を除く、他の転送サイリスタT、記憶サイリスタM、発光サイリスタLのしきい電圧は−4.8Vである。
【0051】
(動作開始)
時刻bにおいて、第1転送信号φ1が、「H」(0V)から「L」(−3.3V)に移行する。すると、「L」よりしきい電圧が−3Vと高い転送サイリスタT1がターンオンする。転送サイリスタT2は、しきい電圧が−4.5Vで「L」の値より低いので、ターンオンできない。さらに、転送サイリスタT3以降の番号の大きい転送サイリスタTは、しきい電圧が−4.8Vであるので、ターンオンできない。
すなわち、時刻bにおいて、ターンオンできるのは転送サイリスタT1に限られる。
【0052】
転送サイリスタT1がターンオンすると、前述したように、ゲート端子Gt1の電位は、アノード端子の電位である「H」(0V)になる。そして、カソード端子(第1転送信号線72)の電位は、アノード端子の電位「H」(0V)から拡散電位Vd(1.5V)を引いた−1.5Vになる。
すると、結合ダイオードDc1は、ゲート端子Gt1の電位が「H」、ゲート端子Gt2の電位が−3Vとなるので、順バイアス状態になる。すると、ゲート端子Gt2の電位は、ゲート端子Gt1の電位(0V)から結合ダイオードDc1の拡散電位Vd(1.5V)を引いた−1.5Vになる。これにより、転送サイリスタT2のしきい電圧は−3Vになる。
転送サイリスタT2のゲート端子Gt2に結合ダイオードDc2を介して接続されたゲート端子Gt3の電位は、前述したと同様に計算できて、−3Vになる。これにより、転送サイリスタT3のしきい電圧は−4.5Vになる。これに引き続く番号が4以上の転送サイリスタTのゲート端子Gtの電位は電源電位Vgaの−3.3Vであるので、しきい電圧は−4.8Vが維持される。
【0053】
一方、転送サイリスタT1がターンオンすると、ゲート端子Gt1の電位は「H」(0V)になる。すると、接続ダイオードDm1は、ゲート端子Gt1の電位が「H」(0V)で、ゲート端子Gm1の電位が−3Vの順バイアスになる。すると、ゲート端子Gm1およびゲート端子Gl1の電位は、ゲート端子Gt1の電位である「H」(0V)から接続ダイオードDm1の拡散電位Vd(1.5V)を引いた−1.5Vになる。すると、記憶サイリスタM1および発光サイリスタL1のしきい電圧は−3Vになる。
なお、隣接する記憶サイリスタM2(発光サイリスタL2も同じ)のゲート端子Gm2(ゲート端子Gl2も同じ)の電位は、「H」(0V)となったゲート端子Gt1から結合ダイオードDc1と接続ダイオードDm2とを介しているので、−3Vとなる。よって、記憶サイリスタM2(発光サイリスタL2も同じ)のしきい電圧は−4.5Vとなる。
そして、記憶サイリスタM2(発光サイリスタL2)に引き続く番号が3以上の記憶サイリスタM(発光サイリスタL)のゲート端子Gm(ゲート端子Gl)の電位は、「H」(0V)となったゲート端子Gt1の電位の影響が及ばず、電源電位Vgaの−3.3Vである。よって、番号が3以上の記憶サイリスタM(発光サイリスタL)のしきい電圧は−4.8Vである。
なお、時刻bにおいては、第2転送信号φ2は「H」であるので、転送サイリスタT2および4以上の偶数番号の転送サイリスタTもターンオンしない。また、記憶信号φmは「H」であり、点灯信号φI1(φI)も「H」であるので、いずれの記憶サイリスタMおよび発光サイリスタLもターンオンしない。
よって、時刻bの直後(ここでは、時刻bにおける信号の電位の変化によってサイリスタなどの変化が生じた後をいう)においては、転送サイリスタT1がオン状態にある。
【0054】
(動作状態)
時刻cにおいて、記憶信号φmが、「H」(0V)から「L」(−3.3V)に移行する。すると、記憶サイリスタM1は、前述したようにしきい電圧が−3Vであるので、ターンオンする。しかし、2以上の番号の記憶サイリスタMは、しきい電圧が「L」(−3.3V)より低いので、ターンオンしない。
すなわち、ターンオンできるのは記憶サイリスタM1に限られる。
記憶サイリスタM1がターンオンすると、転送サイリスタT1の場合と同様に、ゲート端子Gm1の電位が「H」(0V)になる。すると、ゲート端子Gm1に接続された発光サイリスタL1のゲート端子Gl1の電位が「H」(0V)となるので、発光サイリスタL1のしきい電圧が−1.5Vになる。
しかし、点灯信号φI1(φI)は「H」であるので、いずれの発光サイリスタLもターンオンしない。
よって、時刻cの直後においては、転送サイリスタT1および記憶サイリスタM1がオン状態を維持している。
【0055】
このとき、記憶サイリスタM1のカソード端子の電位は、「H」(0V)から拡散電位Vd(1.5V)を引いた値である−1.5Vになる。しかし、記憶サイリスタMは抵抗Rnを介して記憶信号線74に接続されている。このため、記憶信号線74の電位は「L」(−3.3V)が維持されている。逆に、抵抗Rnの値は、記憶信号線74の電位は「L」が維持されるように選ばれている。
【0056】
ここまで、発光チップC1(C)のサイリスタ(転送サイリスタT、記憶サイリスタM、発光サイリスタL)およびダイオード(結合ダイオードDc、接続ダイオードDm)の動作を個別に説明した。しかし、サイリスタおよびダイオードの動作は、次のように説明することができる。
すなわち、サイリスタがターンオンすると、そのゲート端子(ゲート端子Gt、ゲート端子Gm、ゲート端子Gl)の電位が「H」(0V)になり、そのサイリスタのしきい電圧が−1.5Vになる。そして、電位が「H」(0V)になったゲート端子に順バイアスのダイオード1段(1個)で接続されたゲート端子の電位は、「H」(0V)から拡散電位Vd(1.5V)を引いた−1.5Vになる。そして、このゲート端子を有するサイリスタのしきい電圧が−3Vになる。さらに、電位が「H」(0V)になったゲート端子に順バイアスのダイオード2段(直列接続した2個)で接続されたゲート端子の電位は、2拡散電位Vd(1.5V)の2倍の値を引いた−3Vになる。そして、このゲート端子を有するサイリスタのしきい電圧が−4.5Vになる。そして、電位が「H」(0V)になったゲート端子にダイオード3段以上で接続されたゲート端子には、電位が「H」(0V)になった影響が及ばす、ダイオード3段以上で接続されたゲート端子を有するサイリスタのしきい電圧は−4.8Vが維持される。
【0057】
そして、電位が「H」(0V)になったゲート端子とダイオード1段で接続されたゲート端子を有するサイリスタは、「L」(−3.3V)の電位でターンオンする。ダイオード2段以上で接続されたゲート端子を有するサイリスタは、「L」(−3.3V)の電位でターンオンしない。
すなわち、ターンオンすることができる、電位が「H」(0V)になったゲート端子とダイオード1段で接続されたゲート端子を有するサイリスタのみに着目すればよい。
以下では、電位が「H」(0V)になったゲート端子とダイオード1段で接続されたゲート端子を有するサイリスタのみについて説明し、ターンオンしないサイリスタのゲート端子の電位やしきい電圧の変化についての説明を省略する。
【0058】
さて、図7に戻って発光チップC1(C)の動作の続きを説明する。
時刻dにおいて、記憶信号φmを「L」から「S」に、第2転送信号φ2を「H」から「L」に移行する。
「S」は、記憶サイリスタMが、オン状態を維持することができる電位のレベルである。「S」では、オン状態にある記憶サイリスタMはオン状態を維持するが、オフ状態にある記憶サイリスタMはターンオンできない電位である。
前述したように、ターンオンさせようとする記憶サイリスタMのしきい電圧は−3Vである。オン状態にある記憶サイリスタMのカソード端子の電位は、拡散電位Vdを引いた値である−1.5Vである。よって、「S」は、ターンオンさせようとする記憶サイリスタMのしきい電圧である−3Vより高く、オン状態のカソード端子の電位(−1.5V)より低い電位に設定される。なお、「S」では、オン状態となっている記憶サイリスタMのオン状態が維持される電流が供給できることを要する。
上述したように、記憶信号φmを「L」から「S」に移行しても、オン状態にある記憶サイリスタM1はオン状態を維持する。
【0059】
一方、第2転送信号φ2を「H」から「L」に移行すると、しきい電圧が−3Vになっている転送サイリスタT2がターンオンする。
転送サイリスタT2がターンオンすると、ゲート端子Gt2の電位が「H」(0V)まで上昇する。そして、ゲート端子Gt2に順バイアスのダイオード1段(結合ダイオードDc2)で接続された転送サイリスタT3のしきい電圧が−3Vになる。同様に、ゲート端子Gt2にダイオード1段(接続ダイオードDm2)で接続された記憶サイリスタM2および発光サイリスタL2のそれぞれのしきい電圧が−3Vになる。
このとき、転送サイリスタT1はオン状態を維持している。よって、転送サイリスタT3のカソード端子が接続された第1転送信号線72の電位は、オン状態の転送サイリスタT1により拡散電位Vd(−1.5V)に維持されている。このため、転送サイリスタT3はターンオンしない。
また、記憶信号φmは「S」であるので、記憶サイリスタM2はターンオンしない。同様に、点灯信号φI1(φI)は「H」であるので、発光サイリスタL2はターンオンしない。
【0060】
なお、ここでは、時刻dにおいて、記憶信号φmの「L」から「S」への移行と、第2転送信号φ2の「H」から「L」への移行とを同時に行っている。
しかし、第2点灯信号φ2の「L」への移行により、転送サイリスタT2がターンオンすることで、前述したように、記憶サイリスタMのしきい電圧が−3Vになって、「H」の記憶信号φmにより記憶サイリスタMがターンオンすることを抑制するため、記憶信号φmの「L」から「S」への移行を、第2転送信号φ2の「H」から「L」への移行より前に行うことが好ましい。
【0061】
時刻dの直後においては、転送サイリスタT1およびT2がともにオン状態になっているとともに、記憶サイリスタM1もオン状態を維持している。
【0062】
さて、時刻eにおいて、第1転送信号φ1を「L」から「H」に移行する。すると、転送サイリスタT1は、カソード端子とアノード端子との電位がともに「H」になるため、ターンオフする。
このとき、転送サイリスタT1のゲート端子Gt1は、抵抗Rt1を介して電源線71に接続されているので、電源電位Vgaの−3.3Vになる。ゲート端子Gt1(−3.3V)とGt2(0V)との間の結合ダイオードDc1は逆バイアスとなるため、ゲート端子Gt2が「H」(0V)である影響は、ゲート端子Gt1には及ばない。
同様に、記憶サイリスタM1がオン状態にあることにより、ゲート端子Gm1は「H」(0V)になっている。しかし、ゲート端子Gt1(−3.3V)とゲート端子Gm1(0V)との間の接続ダイオードDm1は逆バイアスとなるため、ゲート端子Gm1が「H」(0V)である影響は、ゲート端子Gt1には及ばない。
すなわち、電位が「H」(0V)になったゲート端子に逆バイアスのダイオードで接続されたゲート端子の電位は、「H」(0V)になったゲート端子からの影響を受けない。なお、逆バイアスのダイオードを挟んだゲート端子間の電位の関係は、他のダイオードにおいても同様に生じる。以下では説明を省略する。
時刻eの直後においては、記憶サイリスタM1および転送サイリスタT2がオン状態を維持している。
【0063】
次に、時刻fにおいて、記憶信号φmを「S」から「L」(−3.3V)にすると、しきい電圧が−3Vの記憶サイリスタM2がターンオンする。すると、ゲート端子Gm2(Gl2)の電位が「H」(0V)になるので、発光サイリスタL2のしきい電圧が−1.5Vになる。しかし、点灯信号φIは「H」であるので、発光サイリスタL2はターンオンしない。
よって、時刻fの直後においては、記憶サイリスタM1およびM2の両方がオン状態にある。そして、転送サイリスタT2もオン状態を維持している。
【0064】
時刻gにおいて、記憶信号φmを「L」から「S」に、第1転送信号φ1を「H」から「L」に移行する。
記憶信号φmを「L」から「S」にしても、オン状態にある記憶サイリスタM1、M2はオン状態を維持している。
一方、第1転送信号φ1を「H」から「L」に移行すると、しきい電圧が−3Vとなっている転送サイリスタT3がターンオンする。そして、ゲート端子Gt3の電位が「H」(0V)になって、ゲート端子Gt3に順バイアスのダイオード1段(結合ダイオードDc3)で接続された転送サイリスタT4のしきい電圧が−3Vになる。同様に、ゲート端子Gt3に順バイアスのダイオード1段(接続ダイオードDm3)で接続された記憶サイリスタM3および発光サイリスタL3のしきい電圧が−3Vになる。
このとき、転送サイリスタT2はオン状態を維持している。よって、転送サイリスタT2のカソード端子が接続された第2転送信号線73の電位は、オン状態の転送サイリスタT2により−1.5Vに維持されているので、転送サイリスタT4はターンオンしない。
また、記憶信号φmは「S」であるので、記憶サイリスタM3はターンオンしない。同様に、点灯信号φI1(φI)は「H」であるので、発光サイリスタL3もターンオンしない。
なお、時刻gにおいては、記憶信号φmの「L」から「S」への移行と、第1転送信号φ1の「H」から「L」への移行とを同時に行っているが、時刻dでと同様に、記憶信号φmの「L」から「S」への移行を、第1転送信号φ1の「H」から「L」への移行より前に行うことが好ましい。
時刻gの直後においては、記憶サイリスタM1、M2がオン状態を維持している。そして、転送サイリスタT2およびT3がともにオン状態になっている。
【0065】
次に、時刻hにおいて、第2転送信号φ2を「L」から「H」にする。すると、時刻eでと同様に、転送サイリスタT2がターンオフする。そして、転送サイリスタT2のゲート端子Gt2は、抵抗Rt2を介して、Vgaの−3.3Vになる。
よって、時刻hの直後においては、記憶サイリスタM1、M2および転送サイリスタT3がオン状態を維持している。
【0066】
そして、時刻iにおいて、記憶信号φmを「S」から「L」(−3.3V)にすると、時刻fでと同様に、しきい電圧が−3Vの記憶サイリスタM3がターンオンする。すると、ゲート端子Gm3(Gl3)の電位が「H」(0V)になり、発光サイリスタL3のしきい電圧が−1.5Vになる。しかし、点灯信号φI1(φI)は「H」であるので、発光サイリスタL3はターンオンしない。
よって、時刻iの直後においては、記憶サイリスタM1、M2、M3がオン状態にある。そして、転送サイリスタT3もオン状態を維持している。
【0067】
時刻jにおいて、記憶信号φmを「L」から「S」に、第2転送信号φ2を「H」から「L」に移行する。
すると、時刻gと同様に、記憶信号φmを「L」から「S」にしても、オン状態にある記憶サイリスタM1、M2、M3はオン状態を維持している。
一方、第2転送信号φ2を「H」から「L」に移行すると、しきい電圧が−3Vとなっている転送サイリスタT4がターンオンする。そして、ゲート端子Gt4の電位が「H」(0V)になって、ゲート端子Gt4に順バイアスのダイオード1段(結合ダイオードDc4)で接続された転送サイリスタT5のしきい電圧が−3Vになる。同様に、ゲート端子Gt4に順バイアスのダイオード1段(接続ダイオードDm4)で接続された記憶サイリスタM4および発光サイリスタL4のしきい電圧が−3Vになる。
このとき、転送サイリスタT3はオン状態を維持している。よって、転送サイリスタT5のカソード端子が接続された第1転送信号線72の電位は、オン状態の転送サイリスタT3により−1.5Vに維持されているので、転送サイリスタT5はターンオンしない。
また、記憶信号φmは「S」であるので、記憶サイリスタM4はターンオンしない。同様に、点灯信号φI1は「H」であるので、発光サイリスタL4もターンオンしない。
【0068】
なお、時刻jにおいては、記憶信号φmの「L」から「S」への移行と、第2転送信号φ2の「H」から「L」への移行とを同時に行っているが、時刻dでと同様に、記憶信号φmの「L」から「S」への移行を、第2転送信号φ2の「H」から「L」への移行より前に行うことが好ましい。
よって、時刻jの直後においては、記憶サイリスタM1、M2、M3がオン状態を維持している。そして、転送サイリスタT3およびT4がともにオン状態になっている。
【0069】
そして、時刻kにおいて、第1転送信号φ1を「L」から「H」にする。すると、時刻hでと同様に、転送サイリスタT3がターンオフする。そして、転送サイリスタT3のゲート端子Gt3は、抵抗Rt3を介して、電源電位Vgaの−3.3Vになる。
よって、時刻kの直後においては、記憶サイリスタM1、M2、M3および転送サイリスタT4がオン状態を維持している。
【0070】
時刻lにおいて、記憶信号φmを「S」から「L」にすると、時刻iでと同様に、しきい電圧が−3Vの記憶サイリスタM4がターンオンする。すると、ゲート端子Gm4(Gl4)の電位が「H」(0V)になるので、発光サイリスタL4のしきい電圧が−1.5Vになる。しかし、点灯信号φIは「H」であるので、発光サイリスタL4はターンオンしない。
【0071】
さて、時刻lの直後において、記憶サイリスタM1、M2、M3、M4がオン状態にあり、転送サイリスタT4もオン状態を維持している。
すると、記憶サイリスタM1、M2、M3、M4がオン状態にあって、それぞれのゲート端子Gm1(Gl1)、Gm2(Gl2)、Gm3(Gl3)、Gm4(Gl4)がすべて「H」(0V)となっている。このため、発光サイリスタL1、L2、L3、L4のしきい電圧はすべて−1.5Vになっている。なお、発光サイリスタL4に隣接する発光サイリスタL5のゲート端子Gl5は、「H」(0V)になったゲート端子Gt4から順バイアスのダイオード2段(結合ダイオードDc4および接続ダイオードDm5)で接続されているので、しきい電圧は−4.5Vになっている。そして、さらに、番号が6以上の発光サイリスタLは、しきい電圧が−4.8Vになっている。
【0072】
時刻mにおいて、点灯信号φI1(φI)の電位を上述した発光サイリスタL1、L2、L3、L4のしきい電圧(−1.5V)より低く、且つ後述する時刻nにおける発光サイリスタL5のしきい電圧(3V)より高い電位である「Le」とする。
すると、発光サイリスタL1、L2、L3、L4のしきい電圧(−1.5V)は、「Le」より高いので、発光サイリスタL1、L2、L3、L4がターンオンして、点灯(発光)する。
一方、発光サイリスタL5および6以上の番号の発光サイリスタLは、しきい電圧が「Le」より低いので、ターンオンしない。
すなわち、本実施の形態では、複数(ここでは4個)の発光サイリスタLを同時に点灯させている。
そして、時刻mの直後においては、発光サイリスタL1、L2、L3、L4、記憶サイリスタM1、M2、M3、M4、転送サイリスタT4がオン状態になっている。
【0073】
時刻nにおいて、記憶信号φmを「L」から「H」に、第1転送信号φ1を「H」から「L」に移行する。
記憶信号φmを「L」から「H」にすることで、オン状態を維持していた記憶サイリスタM1、M2、M3、M4のカソード端子の電位が、アノード端子の「H」(0V)と同じになるので、記憶サイリスタM1、M2、M3、M4はターンオフする。
一方、第1転送信号φ1を「H」から「L」に移行すると、しきい電圧が−3Vとなっている転送サイリスタT5がターンオンする。そして、ゲート端子Gt5の電位が「H」(0V)になって、ゲート端子Gt5に順バイアスのダイオード1段(結合ダイオードDc5)で接続された転送サイリスタT6のしきい電圧が−3Vになる。同様に、ゲート端子Gt5に順バイアスのダイオード1段(接続ダイオードDm5)で接続された記憶サイリスタM5および発光サイリスタL5のしきい電圧が−3Vになる。
このとき、転送サイリスタT4はオン状態を維持している。よって、転送サイリスタT6のカソード端子が接続された第2転送信号線73の電位は、オン状態の転送サイリスタT4により−1.5Vに維持されているので、転送サイリスタT6はターンオンしない。
また、記憶信号φmは、「H」であるので、記憶サイリスタM5はターンオンしない。一方、点灯信号φI1は、−1.5Vより低く且つ3Vより高い電位の「Le」であるので、発光サイリスタL5はターンオンせず、非点灯のままである。
【0074】
なお、時刻nにおいて、記憶信号φmの「L」から「H」への移行と、第1転送信号φ1の「H」から「L」への移行を同時に行っているが、第1転送信号φ1を「L」にすることにより、転送サイリスタT5がターンオンし、記憶信号φmが「L」において記憶サイリスタM5がターンオンするのを抑制するため、記憶信号φmを「L」から「H」への移行を第1転送信号φ1の「H」から「L」への移行より前に行うことが好ましい。
時刻nの直後においては、発光サイリスタL1、L2、L3、L4が点灯(オン)状態を維持している。そして、転送サイリスタT4およびT5がともにオン状態である。
【0075】
時刻oにおいて、第2転送信号φ2を「L」から「H」にする。すると、転送サイリスタT4がターンオフする。そして、転送サイリスタT4のゲート端子Gt4は、抵抗Rt4を介して、Vgaの−3.3Vになる。
よって、時刻oの直後においては、発光サイリスタL1、L2、L3、L4が点灯(オン)状態を維持している。そして、転送サイリスタT5がオン状態を維持している。
【0076】
そして、時刻pにおいて、点灯信号φI1(φI)を「Le」から「H」にすると、発光サイリスタL1、L2、L3、L4のカソード端子の電位がアノード端子の「H」(0V)と同じになる。このため、発光サイリスタL1、L2、L3、L4は点灯(オン)状態を維持できず、消灯(ターンオフ)する。
すなわち、時刻mから時刻pまでが、発光サイリスタL1、L2、L3、L4の点灯期間となる。点灯期間は発光サイリスタL1、L2、L3、L4において同じである。
なお、時刻oと時刻pの間に、記憶信号φmを「H」から「L」にして、記憶サイリスタM5をターンオンさせると、ゲート端子Gm5(ゲート端子Gl5と同じ)が「H」(0V)になって、発光サイリスタL5のしきい電圧が−1.5Vに上昇する。この期間では、点灯信号φI1(φI)が「Le」であるので、発光サイリスタL5が点灯してしまう。
したがって、本実施の形態では、発光サイリスタL1、L2、L3、L4が消灯する時刻pが経過するまで、記憶信号φmを「L」に移行させない。
よって、時刻pの直後においては、転送サイリスタT5のみがオン状態を維持している。
【0077】
そして、時刻qにおいて、記憶信号φmが「H」から「L」に移行する。記憶信号φmを「S」から「L」にすると、時刻cでと同様に、しきい電圧が−3Vになっている記憶サイリスタM5がターンオンする。これ以降は、時刻cからの繰り返しとなって、期間T(B)において、期間T(A)でと同様にして、発光サイリスタL5〜L8の点灯制御が行われる。これ以降の説明は省略する。
【0078】
前述したように、発光素子アレイ63の発光チップC2〜C60は発光チップC1と同時に並行して動作しているので、発光素子アレイ63の他の発光チップC2〜C60においても、それぞれの発光サイリスタL1〜L4が、発光チップC1の発光サイリスタL1〜L4の点灯制御の期間T(A)において、同時に並行して点灯制御されている。
同様に、発光素子アレイ63の他の発光チップC2〜C60においても、それぞれの発光サイリスタL5〜L8が、発光チップC1の発光サイリスタL5〜L8の点灯制御の期間T(B)において、同時に並行して点灯制御されている。他の発光サイリスタLについても同様である。
よって、発光サイリスタL1〜L4(L5〜L8)の点灯期間はすべての発光チップCで同じとなる。しかし、発光サイリスタL1〜L4の点灯期間と発光サイリスタL5〜L8の点灯期間とを別々に設定してもよい。すなわち、同じ組の発光サイリスタLについては点灯期間が同じであるが、異なる組の発光サイリスタLの点灯期間は互いに異なるように設定してもよい。
【0079】
なお、期間T(A)においては、発光サイリスタL1、L2、L3、L4をすべて点灯させるとして説明した。しかし、画像データによって、発光サイリスタLを点灯させないときは、記憶信号を「S」のままとすればよい。すなわち、図7の期間T(B)におけるM6として示す時刻(タイミング)において、記憶信号φmを「S」に維持すればよい。「S」は−1.5Vより低く且つ−3Vより高い電位であるため、しきい電圧が−3Vの記憶サイリスタM6はターンオンすることができない。したがって、記憶サイリスタM6はオン状態になることができず、オフのままとなる。これにより、点灯信号φI1(φI)が「Le」となっても、記憶サイリスタM6のゲート端子Gm6にゲート端子Gl6が接続された発光サイリスタL6は、しきい電圧が−4.8Vに維持されているので、点灯(発光)しない。この一方、点灯信号φI1(φI)が「Le」になると、記憶サイリスタM5、M7、M8は、しきい電圧が−1.5Vであるので、点灯(発光)する。
【0080】
以上説明したことは以下のように説明できる。
すなわち、本実施の形態においては、転送サイリスタTは、第1転送信号φ1および第2転送信号φ2によって、隣り合う2つの転送サイリスタTがともにオン状態になる期間(例えば時刻dから時刻eの間)を設けつつ、番号の順に、オフ状態からオン状態に、オン状態からオフ状態に設定される。すなわち、転送サイリスタ列の番号の順にオン状態がシフトしていく。
そして、第1転送信号φ1または第2転送信号φ2のいずれか一方のみが「L」である期間は、1個の転送サイリスタTのみがオン状態になっている。例えば、時刻cから時刻dでは転送サイリスタT1のみがオン状態にある。
【0081】
転送サイリスタTがオン状態になると、そのゲート端子Gtにゲート端子Gmが接続された記憶サイリスタMのしきい電圧が高くなる。
そこで、1個の転送サイリスタTのみがオン状態にあるタイミング(例えば、図7の時刻c、f、i、l)において、記憶信号φmを「L」にすることで、オン状態の転送サイリスタTによりしきい電圧が高くなった記憶サイリスタMをターンオンさせる。すなわち、複数の発光サイリスタLを同時に点灯させるため、点灯させる発光サイリスタLの位置(番号)を同じ番号の(対応する)記憶サイリスタMをオン状態にすることで記憶させている。
そして、記憶信号φmを「H」に戻すことなく、「S」と「L」との間で変化させ、予め定められた個数の発光サイリスタLについて、点灯させる発光サイリスタLと同じ番号の記憶サイリスタMをオン状態に、点灯させない発光サイリスタLと同じ番号の記憶サイリスタMをオフ状態にして維持する。
そののち、点灯信号φIを供給することで、点灯させる複数の発光サイリスタLを同時に点灯させる。
【0082】
すなわち、オン状態の記憶サイリスタMはゲート端子Gmの電位がアノード端子の電位(「H」(0V))となるので、同じ番号の発光サイリスタLのしきい電圧を高くするので、点灯信号φIによって、オン状態の記憶サイリスタMと同じ番号の発光サイリスタLのみを点灯(発光)させうる。
ここで、記憶サイリスタMは、画像データに応じて、点灯させる発光サイリスタLの位置(番号)を記憶する機能(ラッチ機能)を有している。
【0083】
そして、転送サイリスタTは、シフト機能により、発光サイリスタLの位置を順に指定するように働いている。一方、記憶信号φmは、画像データに基づいて、「L」と「S」とに設定され、指定された発光サイリスタLを点灯させるか否かを設定するように働いている。そして、記憶サイリスタMは、同時に点灯させる発光サイリスタLと同じ番号の複数の記憶サイリスタMのオン状態を維持して、点灯させる発光サイリスタLの位置(番号)を記憶するように働いている。
なお、発光サイリスタLが点灯すると、記憶信号φmを「H」にして、記憶サイリスタMをすべてターンオンして、点灯させる発光サイリスタLの位置(番号)の記憶を消去する。
つまり、記憶信号φmの「L」は、発光サイリスタLを点灯させる指示であり、記憶信号φmの「S」は、発光サイリスタLを点灯させない指示であり、記憶信号φmの「H」は、記憶した指示をクリア(リセット)する指示として働いている。
【0084】
そして、本実施の形態では、記憶サイリスタMのカソード端子は抵抗Rnを介して、記憶信号φmが供給される記憶信号線74に接続されている。これにより、記憶サイリスタMがオン状態になっても、記憶信号線74は、記憶サイリスタMのカソード端子の電位に引き込まれない。これにより、ある記憶サイリスタMがオン状態にあっても、他の記憶サイリスタMのしきい電圧が「L」より高くなると、この記憶サイリスタMもターンオンさせることができる。
このように、記憶サイリスタMは、同時に点灯させる複数の発光サイリスタLと同じ番号の複数の記憶サイリスタMをオン状態にし、そのままオン状態を維持し記憶する。これにより、点灯信号φIの供給とともに、複数の発光サイリスタLを同時に点灯させている。
なお、記憶サイリスタMがオン状態を維持する電流は、発光サイリスタLの発光のための電流に比べ少なくてよい。このため、抵抗Rnの発光チップCの基板80上に占める面積も小さく設定しうる。
【0085】
このことにより、複数の発光点(発光サイリスタL)を同時に点灯させうる。すなわち、複数の発光点の点灯を一つの期間(例えば、時刻lからpまで)で同時に行っているので、発光サイリスタLを1個ずつ点灯制御する場合に比べ、点灯期間を短くしうる。すなわち、発光素子ヘッド14として見たとき、感光体ドラム12への書込時間を短縮しうる。
【0086】
なお、図6の回路において、点灯信号φIは、電流駆動するのが好ましい。そして、発光点毎の発光量のばらつきを抑制するため、同時に点灯させる発光点(発光サイリスタL)の個数に応じて、供給する電流の値を変化させることが好ましい。
これに対し、点灯信号φIを一定電圧で駆動する場合には、それぞれの発光サイリスタLのカソード端子と点灯信号線75との間に、抵抗Rnのように抵抗を設ける必要がある。この場合、点灯(発光)している発光サイリスタLに流れる電流は一定となる。
しかし、発光サイリスタLを点灯(発光)させるための電流は、オン状態を維持するための電流に比べて大きいため、設けた抵抗による電力消費が大きくなる。また、これに伴い抵抗による発熱によって発光チップCの温度が変化し、発光特性が変動する。また、大きな電流を流すために抵抗の面積が大きくなり、抵抗の部分の面積により発光チップCの面積が大きくなってしまう。
一方、点灯信号φIを電流駆動すれば、それぞれの発光サイリスタLのカソード端子と点灯信号線75との間に抵抗を設ける必要がない。このとき、発光チップCに流れる電流Iは、電源の電位V、拡散電位Vdおよび外付け抵抗Rとから、I=(V−Vd)/Rとなる。よって、同時に点灯(発光)している複数の発光サイリスタLのそれぞれに流れる電流は、Iを同時に点灯(発光)している発光サイリスタLの数で割った値となる。すなわち、同時に点灯(発光)させる発光サイリスタLの数によって、それぞれの発光サイリスタLに流れる電流が異なってしまう。そこで、点灯させる発光サイリスタLの数に応じて、供給する電流値を変化させることが好ましい。
同時に点灯させる発光サイリスタLの数は、発光チップCに与えられる画像データによって決められるため、同時に点灯する数に応じた電流値は容易に設定しうる。
【0087】
<信号発生回路の説明>
次に、信号発生回路100について詳細に説明を行なう。
図8は、信号発生回路100の構成を示すブロック図である。信号発生回路100は、画像データ展開部110、濃度ムラ補正データ部112、タイミング信号発生部114、基準クロック発生部116、発光チップC(C1〜C60)に対応して設けられた駆動部の一例としての点灯時間制御・駆動部118−1〜118−60、および定電流増幅部119−1〜119−60により主要部が構成されている。
画像データ展開部110には、画像処理部(IPS)40から画像データがシリアルに送信されてくる。画像データ展開部110は、送信された画像データを1〜128ドット目、129〜256ドット目、…、7553〜7680ドット目と発光チップC(C1〜C60)毎の画像データに分割する。画像データ展開部110は点灯時間制御・駆動部118−1〜118−60と接続されており、分割した画像データを各々対応する点灯時間制御・駆動部118−1〜118−60に出力する。またこの画像データは、タイミング信号発生部114にも出力される
【0088】
濃度ムラ補正データ部112は、発光チップC(C1〜C60)内の各発光サイリスタL(図6参照)毎の光量のばらつき等に起因する画像形成時の画像濃度ムラを修正するためのムラ補正データを一時的に記憶し、必要に応じ点灯時間制御・駆動部118−1〜118−60に出力する。このムラ補正データは、例えば、同時点灯を行なう発光サイリスタLのグループ(群)毎に、各発光サイリスタLによる光量のばらつき等に応じて設定されたパルス数として形成される。
EEPROM102には、このムラ補正データが記憶されており、例えば、画像形成装置1(図1参照)の電源ONシーケンス時に濃度ムラ補正データ部112にムラ補正データがロードされる。
【0089】
基準クロック発生部116は、本体の画像出力制御部30、タイミング信号発生部114、および点灯時間制御・駆動部118−1〜118−60と接続されている。
図9(基準クロック発生部116の構成を説明するブロック図)に示したように、基準クロック発生部116は、水晶発振器140、分周器1/M142、分周器1/N144、位相比較器146、および電圧制御発振器148からなるPLL回路134と、ルックアップテーブル(LUT)132とを含んで構成されている。LUT132には画像出力制御部30からの光量調節データに基づいて分周比M、Nを決定するためのテーブルが記憶されている。水晶発振器140は分周器1/N144と接続されており、予め定めた周波数で発振し、発振した信号を分周器1/N144へと出力する。分周器1/N144はLUT132および位相比較器146と接続されており、LUT132からの光量調節データにより決定された分周比Nに基づいて水晶発振器140で発振された信号を分周する。位相比較器146は、分周器1/M142、分周器1/N144、および電圧制御発振器148と接続されており、分周器1/M142からの出力信号と、分周器1/N144からの出力信号とを比較する。この位相比較器146による比較結果(位相差)に応じて、電圧制御発振器148に供給するコントロール電圧が制御される。電圧制御発振器148はコントロール電圧に基づく周波数で、クロック信号を出力する。本実施の形態では、点灯可能期間を256に分割する周波数に相当するコントロール電圧が供給され、この周波数のクロック信号を生成して、すべての点灯時間制御・駆動部118−1〜118−60へ出力する。また、電圧制御発振器148は分周器1/M142とも接続されており、電圧制御発振器148から出力されたクロック信号は、分周器1/M142にも分岐されて入力される。分周器1/M142は、LUT132からの光量調節データにより決定された分周比Mに基づいて、電圧制御発振器148からフィードバックされたクロック信号を分周する。
【0090】
図8に戻り、タイミング信号発生部114は、画像出力制御部30および基準クロック発生部116と接続されており、基準クロック発生部116からの発振信号を基に、画像出力制御部30からの水平同期信号(Hsync)と同期して、第1転送信号φ1、第2転送信号φ2、記憶信号φmを生成する。ここで、記憶信号φmは、例えば、タイミング信号発生部114において生成されるリセットタイミング信号(rst_d)および画像データから作成することができる。
また、タイミング信号発生部114は、濃度ムラ補正データ部112および画像データ展開部110と接続されており、基準クロック発生部116からの発振信号を基に、制御部30からのHsync信号と同期して、画像データ展開部110から各画素に対応した画像データを読み出すためのデータ読出し信号、および濃度ムラ補正データ部112から同時点灯する各発光サイリスタLのグループに対応したムラ補正データを読み出すためのデータ読出し信号を各々に対して出力している。さらに、タイミング信号発生部114は、点灯時間制御・駆動部118−1〜118−60とも接続されており、基準クロック発生部116からの発振信号を基に、画像出力制御部30からのHsync信号と同期して、発光素子アレイ(SLED)63の点灯開始のトリガ信号(TRG)を出力している。
【0091】
点灯時間制御・駆動部118−1〜118−60は、詳しくは後述するが各発光サイリスタLの点灯時間をムラ補正データ、点灯時間補正データ(点灯時間補正情報)に基づいて補正し、発光素子アレイ(SLED)63の各発光サイリスタLを点灯するための点灯信号φI1〜〜φI60の基となる制御信号であるφh1〜φh60信号を生成する。
また、定電流増幅部119−1〜119−60は、点灯時間制御・駆動部118−1〜118−60から出力されたφh1〜φh60信号を増幅し、点灯信号φI1〜φI60とする。
【0092】
図10は、点灯時間制御・駆動部118−1について更に詳しく説明したブロック図である。なお、ここでは、点灯時間制御・駆動部118−1を例に採り説明を行なうが、他の点灯時間制御・駆動部118−2〜118−60についても同様である。
【0093】
図10に示したように、点灯時間制御・駆動部118−1は、画像データ展開部110(図8参照)から出力された画像データを取得し、シリアルデータである画像データをパラレルデータである点灯パターン信号に変換して出力するシリアル−パラレル変換部152−1と、この点灯パターンに対応した点灯時間補正データを記憶しておりシリアル−パラレル変換部152−1により変換された点灯パターン信号に基づき点灯時間補正データを出力する点灯時間補正データ記憶部154−1と、濃度ムラ補正データ部112(図8参照)から出力されたムラ補正データ、および点灯時間補正データ記憶部154−1から出力された点灯時間補正データ(点灯時間補正情報)を取得してこれらの信号から同時に点灯する発光サイリスタL毎の点灯時間を補正し補正後の点灯時間をパルス巾信号として出力する点灯時間補正部156−1と、シリアル−パラレル変換部152−1により出力された点灯パターン信号に対応した値の電流を生成して点灯時間補正部156−1から出力されたパルス巾信号に対応した時間分φh1信号として出力する電流制御部158−1とを備える。
【0094】
なお、点灯時間補正部156−1は、タイミング信号発生部114(図8参照)から出力されたトリガ信号(TRG)、および基準クロック発生部116(図8参照)から出力された基準クロックも取得し、これらにより予め定められたタイミングでパルス巾信号を出力する。また点灯時間補正データ記憶部154−1は、後述するスリーステート・バッファ164−1のばらつきを補正する点灯時間補正データを発光サイリスタLの点灯パターン(点灯組み合わせ)に対応してルックアップテーブル(LUT)等の形式で記憶しているメモリである。
【0095】
ここで、電流制御部158−1についてまず説明を行なう。
図11は、電流制御部158−1について説明した図である。
図11に示した電流制御部158−1は、4個の論理回路162−1と、バッファの一例としての4個のスリーステート・バッファ164−1とからなる。本実施の形態の場合、論理回路162−1はAND回路であり、バルス巾信号と点灯パターン信号が入力信号として入力される。そして論理回路162−1の出力信号は、スリーステート・バッファ164−1の制御入力に接続されている。
【0096】
つまり、電流制御部158−1の動作としては、まずパルス巾信号および点灯パターン信号の双方が「ON」のときに出力信号が「ON」となり、その他の場合は、出力信号が「OFF」となる。そして出力信号が「OFF」の場合、この出力信号は、スリーステート・バッファ164−1の制御入力に接続されているため、スリーステート・バッファ164−1の出力信号は、ハイインピーダンス状態となり入力側とは切り離される。このときスリーステート・バッファ164−1の出力信号であるφh1信号は出力されず、「L」および「H」のどちらを採ることもない。ただし、定電流増幅部119−1(図8参照)により、点灯信号であるφI1信号は、「H」に設定される。また出力信号が「ON」の場合は、この出力信号は、スリーステート・バッファ164−1の入力信号がそのまま出力信号として出力される。このときスリーステート・バッファ164−1の出力信号であるφh1信号は「L」の状態となる。そして本実施の形態の電流制御部158−1では、点灯パターン信号の点灯パターンに応じた電流がφh1として出力される。具体的には、点灯する発光サイリスタLの数に比例した値の電流が出力される。そしてφh1信号は、定電流増幅部119−1により増幅されて点灯信号であるφI1信号となる。よってこのような電流制御部158−1を使用することで、図6で説明した回路において電流駆動させることができる。
【0097】
ここで、スリーステート・バッファ164−1は、制御入力が「ON」の際には、入力信号をそのまま出力信号として出力するので、入力信号の電流値と出力信号の電流値は理論的には変化しない。このことは入力信号に対する出力信号の電流増幅率は1であると言い換えることができる。しかしながら実際には、スリーステート・バッファ164−1には特性にばらつきがあるため、この電流増幅率は1とならない場合が多い。この場合、このばらつきに起因して、出力されるφh1信号の電流値にばらつきが生じる。その結果、電流駆動される発光サイリスタLの発光光量にばらつきが生じることになる。
【0098】
そこで本実施の形態では、図10における点灯時間補正部156−1において、このばらつきを補正することで、発光サイリスタLの発光光量にばらつきが生じるのを抑制している。
具体的には、点灯時間補正部156−1は、発光サイリスタLの点灯パターンおよびスリーステート・バッファ164−1の電流増幅率に基づき決定された点灯時間補正データを取得し、この点灯時間補正データにより発光サイリスタLの点灯時間を補正して電流制御部158−1に出力している。
これにより点灯パターンに対応してスリーステート・バッファ164−1の出力信号のばらつきを補正することが可能となり、発光サイリスタLの発光光量にばらつきが生じるのを抑制することができる。また、発光サイリスタLの発光光量にばらつきが生じるのを抑制することができるため、同時に点灯させる発光サイリスタLの数を増加させやすい。
【0099】
<発光素子ヘッドの光量補正方法の説明>
続いて、本実施の発光素子ヘッドの光量補正方法を、点灯時間制御・駆動部118−1の発光サイリスタLの点灯時間を補正する動作を説明することで行なう。
図12は、点灯時間制御・駆動部118−1での発光サイリスタLの点灯時間を補正する動作について説明を行なったフローチャートである。
まず点灯時間補正データ記憶部154−1が、シリアル−パラレル変換部152−1から出力された発光サイリスタLのグループ(群)毎の点灯パターン(点灯組み合わせ)を取得する(ステップ101)。この点灯パターンは、同時点灯を行なうグループ毎にそれぞれ出力される。そして、点灯時間補正データ記憶部154−1は、この点灯パターンに対応した点灯時間補正データを点灯時間補正部156−1に出力する(ステップ102)。点灯時間補正データを取得した点灯時間補正部156−1は、この点灯時間補正データ(点灯時間補正情報)に基づき発光サイリスタLの点灯時間を算出し、補正する(ステップ103)。そして、点灯時間補正部156−1は、発光サイリスタLの点灯時間をパルス信号のパルス巾を変調させることで調整されたパルス巾信号として電流制御部158−1に出力する(ステップ104)。
電流制御部158−1は、上述したようにパルス巾信号および点灯パターン信号からφh1信号を生成し、出力する。
【0100】
なお以上説明した発光素子ヘッドの光量補正方法をコンピュータにより実行させる場合、本実施の形態は、コンピュータに、複数のグループ(群)に分割されグループ毎に点灯を行なう発光サイリスタLのグループ毎の点灯パターン(点灯組み合わせ)を取得する機能と、点灯パターンに対応した点灯時間補正データ(点灯時間補正情報)を取得する機能と、点灯時間補正データに基づき発光サイリスタLの点灯時間を補正することで発光サイリスタLの光量補正を行ない出力する機能と、を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。
【0101】
なお発光サイリスタLを4点同時に点灯させる場合、点灯パターンは、2=16通り存在する。よって、上述したルックアップテーブル(LUT)として、この16通りの点灯時間補正データを記憶させておくことが考えられる。また、点灯時間制御・駆動部118−1〜118−60毎にこれら16通りのデータを用意する場合は、点灯時間補正データの数は、全部で、2×60=960個となる。
【0102】
また、上述した例では、4点の発光サイリスタLを同時に点灯させる場合について説明を行なったが、同時点灯する個数については特に制限はなく、例えば8個同時点灯する場合においても本実施の形態の光量補正方法は、適用可能である。この場合は、発光サイリスタLは、発光サイリスタL1〜L8、発光サイリスタL9〜L16、…、のように8個を1つのグループとしてグループ毎に順に点灯を行い動作する。
そして、図11において説明を行なった電流制御部158−1の論理回路162−1とスリーステート・バッファ164−1を8個ずつとし、また点灯時間補正部156−1に記憶させる点灯時間補正データについてもこれに対応したものを用意することで本実施の形態の光量補正方法が適用可能となる。なお同時点灯させる発光サイリスタLは、同時点灯を行なうグループ(群)毎に個数が同数であることが好ましい。
【実施例】
【0103】
(実施例1)
図6で説明を行なった自己走査型発光素子アレイチップである発光チップCを、図8で説明を行なった信号発生回路100を使用して、8点の発光サイリスタLを同時に点灯させるようにして動作させ、図1で説明した画像形成装置1により画像形成を行なった。
ここで、電流制御部158−1(図10参照)内部に設けられるスリーステート・バッファ164−1(図11参照)の個数は、上述の通り8個となる。表1にこの8個のスリーステート・バッファ164−1の電流増幅率の値を示す。
【0104】
【表1】

【0105】
また図13(a)〜(c)は、表1に示したスリーステート・バッファ164−1を使用した場合に、電流制御部158−1が出力するφh1信号の電流値について説明をした図である。
ここで、図13(a)は、スリーステート・バッファ164−1にばらつきがないとした状態、即ち、電流増幅率が全て1である理想的な場合のφh1信号の電流値を点灯パターン毎にグラフ化したものである。また図13(b)は、スリーステート・バッファ164−1が表1に示すようなばらつきがある場合のφh1信号の電流値を点灯パターン毎にグラフ化したものである。更に、図13(c)は、点灯パターン毎にこれらの電流値の差分をグラフ化したものである。即ち、図13(c)は、発光サイリスタLの点灯パターン毎の出力電流の理想的な値からの誤差を表している。
【0106】
なお図13(a)〜(c)において、横軸は2=256通りある発光サイリスタLの点灯パターンを0〜255の番号を用いて示しており、縦軸は電流値を単位を「mA」として示している。またここで点灯パターンの番号は、次のようにして決定する。即ち、まずバッファNo.1〜No.8の各スリーステート・バッファ164−1をこの番号順に並べる。そして、各スリーステート・バッファ164−1の入力信号が出力信号として出力される状態のときを「1」、ハイインピーダンス状態の時を「0」として、2進数を構成した場合に、これにより表現される8ビットの数を考える。そしてこの数を点灯パターンの番号とする。例えば、バッファNo.1のスリーステート・バッファ164−1が「1」の状態であり、他は「0」の状態であるとすると、これにより構成される2進数は、「10000000」となる。即ち10進数では、2=128であるため、番号が「128」の点灯パターンとなる。
【0107】
そして図13(c)で示したようなデータを基にして、点灯時間補正データを作成し、点灯時間補正データ記憶部154−1(図8参照)にルックアップテーブル(LUT)として記憶させた。そしてこの点灯時間補正データを使用することで、点灯時間補正部158−1においてスリーステート・バッファ164−1の出力電流のばらつきを補正することができた。その結果、画像形成装置1により形成された画像にも乱れは特に見られなかった。
【0108】
(比較例1)
図8で説明を行なった信号発生回路100の点灯時間補正部(図10参照)において点灯時間補正データを考慮せずにパルス巾信号を出力させた他は、実施例1と同様の条件で画像形成を行なった。その結果、スリーステート・バッファ164−1の出力電流のばらつきに起因して発光チップCの発光光量にばらつきが生じたため、画像形成装置1により形成された画像にムラ等の乱れが認められた。
【符号の説明】
【0109】
1…画像形成装置、10…画像形成プロセス部、11…画像形成ユニット、12…感光体ドラム、14…プリントヘッド、30…画像出力制御部、40…画像処理部、62…回路基板、63…発光素子アレイ、64…ロッドレンズアレイ、100…信号発生回路、114…タイミング信号発生部、118−1〜118−60…点灯時間制御・駆動部、156−1…点灯時間補正部、158−1…電流制御部、164−1…スリーステート・バッファ、φ1…第1転送信号、φ2…第2転送信号、φm…記憶信号、φI1〜φI60…点灯信号、C1〜C60…発光チップ、T1,T2,T3…転送サイリスタ、M1,M2,M3…記憶サイリスタ、L1、L2、L3…発光サイリスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の群に分割され、当該群毎に点灯を行なう複数の発光素子が主走査方向に列状に配された発光素子アレイと、
前記発光素子アレイの光出力を結像させる光学素子と、
前記群毎に供給され当該群を構成する前記発光素子の点灯組み合わせに対応した電流をバッファを介して発生させる電流制御部と、当該点灯組み合わせおよび当該バッファの電流増幅率に基づき決定された点灯時間補正情報を取得し当該点灯時間補正情報により当該発光素子の点灯時間を補正して当該電流制御部に出力する点灯時間補正部と、を有する駆動部と、
を備えることを特徴とする発光素子ヘッド。
【請求項2】
前記群に属する前記発光素子は、当該群毎に個数が同数であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子ヘッド。
【請求項3】
前記補正された発光素子の点灯時間は、当該発光素子の点灯を制御するためのパルス信号のパルス巾を変調させることで調整することを特徴とする請求項1または2に記載の発光素子ヘッド。
【請求項4】
前記バッファは、スリーステート・バッファであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の発光素子ヘッド。
【請求項5】
前記発光素子アレイは、前記発光素子が複数列状に配された発光素子アレイチップを複数並べる構成を採ることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の発光素子ヘッド。
【請求項6】
前記発光素子アレイチップは、自己走査型発光素子アレイチップであることを特徴とする請求項5に記載の発光素子ヘッド。
【請求項7】
複数の群に分割され、当該群毎に点灯を行なう複数の発光素子が主走査方向に列状に配された発光素子アレイと、当該発光素子アレイの光出力を結像させる光学素子と、当該群を構成する前記発光素子の点灯組み合わせに対応して点灯時間を補正する点灯時間補正部と、を備える発光素子ヘッドを備え、トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像を記録媒体に定着する定着手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記トナー像形成手段の発光素子ヘッドは、前記群毎に供給され当該群を構成する前記発光素子の点灯組み合わせに対応した駆動電流をバッファを介して発生させる電流制御部を更に有し、
前記点灯時間補正部は、当該点灯組み合わせおよび前記バッファの電流増幅率に基づき決定された点灯時間補正情報を取得し、当該点灯時間補正情報により当該発光素子の点灯時間を補正して前記電流制御部に出力することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
複数の群に分割され当該群毎に点灯を行なう複数の発光素子の当該群毎の点灯組み合わせを取得し、
前記点灯組み合わせに対応した点灯時間補正情報を取得し、
前記点灯時間補正情報に基づき前記発光素子の点灯時間を補正することで前記発光素子の光量補正を行なうことを特徴とする発光素子ヘッドの光量補正方法。
【請求項10】
前記点灯時間補正情報は、前記群毎に供給され当該群を構成する前記発光素子の点灯組み合わせに対応した駆動電流をバッファを介して発生させる際の当該点灯組み合わせおよび当該バッファの電流増幅率に基づき決定することを特徴とする請求項10に記載の発光素子ヘッドの光量補正方法。
【請求項11】
コンピュータに、
複数の群に分割され当該群毎に点灯を行なう複数の発光素子の当該群毎の点灯組み合わせを取得する機能と、
前記点灯組み合わせに対応した点灯時間補正情報を取得する機能と、
前記点灯時間補正情報に基づき前記発光素子の点灯時間を補正することで前記発光素子の光量補正を行ない出力する機能と、
を実現するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−5784(P2011−5784A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152949(P2009−152949)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】