説明

発光素子搭載基板

【課題】光反射率が高くかつ腐食による反射率の低下の少ない光反射層を備え、光の取出し効率が向上された発光素子搭載基板を提供する。
【解決手段】表面に反射層としての銀導体層2が形成された無機材料基板1からなり、この銀導体層2の上に発光素子6が搭載される発光素子搭載基板であって、銀導体層2が、ペースト体の焼成により形成されており、銀導体層2を覆うように無機材料基板2に焼き付けて形成した厚み5〜20μmのオーバーコート層3を有しており、このオーバーコート層3が酸化物基準のモル%表示でSiOを62〜84%、Bを10〜25%、Alを0〜5%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0〜5%、含有し、SiOとAlの含有量の合計が62〜84%、MgOを0〜10%、CaO、SrO、BaOのいずれか1以上を含有する場合にその含有量の合計が5%以下のホウケイ酸ガラスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオード(以下、LEDと記すことがある。)デバイス、高輝度光ダイオードバックライト、ディスプレイに関連する光源、自動車照明、装飾照明、標識、広告照明、および情報ディスプレイ用途を含む照明デバイスの形成における発光装置に用いられる実装基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDなど発光装置の高輝度、白色化に伴い、携帯電話や大型液晶TV等のバックライトに、LEDを用いた発光装置が使われるようになってきた。LEDランプを種々の用途に適用するには、白色発光を得ることが重要となる。LEDランプで白色発光を実現する代表的な方式としては、青、緑および赤の各色に発光する3つのLEDチップを使用する方式、青色発光のLEDチップと黄色ないし橙色発光の蛍光体とを組合せる方式、青色発光のLEDとその光によって赤、緑を励起する蛍光体を組み合わせる方法、紫外線発光のLEDチップと青色、緑色および赤色発光の三色混合蛍光体とを組合せる方式、の4つが挙げられる。
【0003】
上記した蛍光体を組み合わせる方式として、蛍光体を混合したエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の透明樹脂を流し込み、これを固化させて蛍光体を含有する樹脂層を形成した砲弾型構造が知られている。また、主面に配線パターンが形成された基板の上にLEDチップを実装し、さらにこの基板上に透明樹脂による封止部を形成した構造が知られている。これらのLEDランプにおいては、実装されたLEDチップの周りの基板上に、銀などの光反射層が形成されている。そして、この光反射層により、基板側に放射されるLEDチップからの発光や、蛍光体から励起発光される蛍光を前方へ反射させ、光の取出し効率を向上させることが行われている。
【0004】
しかし、銀は腐食しやすく、放置するとAgSなど化合物が生成して光反射率が低下しやすい。そのため、銀の上に樹脂封止層を形成して反射率の低下を防止しているが、通常樹脂封止剤として用いられるエポキシ樹脂やシリコーン樹脂では封止性が弱く、長期信頼性を求められる製品に使うことができなかった。そこで、銀導体層の腐食を防止するため、銀の表面をシリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂でコートする方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法でも樹脂中、あるいは銀導体層と樹脂の界面から水分や腐食性の気体が入り、経時的に銀導体層を腐食させてしまうため、長期信頼性を求められる製品に使うことができなかった。一方で、銀導体を用いずに反射率を高くする方法として、高反射率のアルミナ材料等も提案されているが、1000℃を超える高温での焼成が必要である等のため製造工程の負荷が大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−67116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、光反射率が高くかつ腐食による反射率の低下の少ない光反射層を備え、光の取出し効率が向上された発光素子搭載基板の提供を目的とする。また、そのような光反射層の形成において工程の負荷をできるだけ抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面に反射層としての銀導体層が形成された無機材料基板からなり、この銀導体層の上に発光素子が搭載される発光素子搭載基板であって、前記銀導体層が、ペースト体の焼成により形成されており、前記銀導体層を覆うように前記無機材料基板に焼き付けて形成した厚み5〜20μmのオーバーコート層を有しており、このオーバーコート層が酸化物基準のモル%表示でSiOを62〜84%、Bを10〜25%、Alを0〜5%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0〜5%、含有し、SiOとAlの含有量の合計が62〜84%、MgOを0〜10%、CaO、SrO、BaOのいずれか1以上を含有する場合にその含有量の合計が5%以下のホウケイ酸ガラスである発光素子搭載基板を提供する。
【0008】
また、表面に反射層としての銀導体層が形成された無機材料基板からなり、この銀導体層の上に発光素子が搭載される発光素子搭載基板であって、前記銀導体層が、ペースト体の焼成により形成されており、前記銀導体層を覆うように前記無機材料基板に焼き付けて形成した厚み5〜20μmのオーバーコート層を有しており、このオーバーコート層が質量%表示で60%以上のホウケイ酸ガラスと40%以下のセラミックスフィラーを含有し、前記ホウケイ酸ガラスが酸化物基準のモル%表示でSiOを62〜84%、Bを10〜25%、Alを0〜5%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0〜5%、含有し、SiOとAlの含有量の合計が62〜84%、MgOを0〜10%、CaO、SrO、BaOのいずれか1以上を含有する場合にその含有量の合計が5%以下のホウケイ酸ガラスである発光素子搭載基板を提供する。
【0009】
本発明者は、反射膜として導体層を用い、導体層を保護する目的のオーバーコート層としてガラスを使用することで光反射層の反射率を低下させない発光素子搭載基板を実現した。特に導体層として銀導体層を使用することが好ましい。また、ガラス層の組成を調整することにより、反射膜としての銀導体層と銀導体層を被覆するガラス層とを1回の焼成工程で形成することに成功した。
【0010】
ガラス層は熱伝導率が低いためにオーバーコート層を設けることによって発光素子の発する熱が放散されにくくなり、素子の温度が上昇しやすくなるために発光効率が低下する、または発光素子の寿命が低下する等の問題が生じる場合がある。
【発明の効果】
【0011】
発光素子搭載基板の表面に光反射率が高い導体層が形成されていることによって、基板側に放射される発光素子からの発光を、基板と反対側の開口方向へ高い反射率で反射させることができる。また、発光素子搭載基板に凹部があり、その底面に発光素子が搭載される場合には、たとえば図2のように凹部壁面にも導体層を設けることで、発光素子の壁面側の発光を開口方向へ効率よく反射させることができる。これによって光の取出し効率を向上させることが可能となり、発光効率の向上を図ることができる。
【0012】
発光素子からの光により励起されて可視光を発光する蛍光体を含む層(以下、蛍光体層という。)を有している場合には、この蛍光体から発光される蛍光も導体層により基板と反対側の前方へ高い反射率で反射されるので、蛍光体から発光される可視光と発光素子から放射される光との混色による白色光の取出し効率を向上させることができる。本発明の発光素子搭載基板では、前記導体層の上にガラスで作製されたオーバーコート層が設けられており、この層により下層の導体層が化学的に保護されている。したがって、導体層の腐食が防止され光反射率の低下が抑えられる。
【0013】
また、導体層とオーバーコート層が同時焼成によって形成できるようにガラス組成を調整することで、製造工程の負荷を少なくできる。
【0014】
また、オーバーコート層が、前記ホウケイ酸ガラスとセラミックスフィラーとを含有する場合には、オーバーコート層の放熱性または強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の発光素子搭載基板の断面図の一例である。
【図2】本発明の発光素子搭載基板に発光素子を配置した断面図の一例である。
【図3】本発明の発光素子搭載基板に発光素子を配置した発光装置の断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の発光素子搭載基板は表面に反射層としての銀導体層が形成された無機材料基板からなり、この銀導体層の上に発光素子が搭載される発光素子搭載基板であって、前記銀導体層が、ペースト体の焼成により形成されており、前記銀導体層を覆うように前記無機材料基板に焼き付けて形成した厚み5〜20μmのオーバーコート層を有しており、このオーバーコート層が酸化物基準のモル%表示でSiOを62〜84%、Bを10〜25%、Alを0〜5%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0〜5%、含有し、SiOとAlの含有量の合計が62〜84%、MgOを0〜10%、CaO、SrO、BaOのいずれか1以上を含有する場合にその含有量の合計が5%以下のホウケイ酸ガラスである。
【0017】
発光素子搭載基板は発光素子が搭載される平板状の部材である。発光素子搭載基板を構成する材質は特に限定されないが、オーバーコート層に用いるガラスを焼き付けなければならないため無機材料が好ましい。熱伝導率や放熱性、強度、コストの観点からアルミナセラミックス、低温同時焼成セラミック(Low Temperature Co−fired Ceramic、以下、LTCCという。)、窒化アルミニウムなどが挙げられる。LTCCの場合には、発光素子搭載基板と表面導体層と導体を被覆するオーバーコート層と、を同時焼成によって形成することが可能である。
【0018】
反射膜としての導体層には反射率の高さから銀が用いられる。
【0019】
オーバーコート層は下層の銀導体層を腐食などから保護するための層であり、緻密なガラスまたはガラス−セラミックスで形成されるものである。オーバーコート層に含まれるガラスは本発明のホウケイ酸ガラスである。本発明のガラスはオーバーコート層を緻密にするための成分であり、反射率を低下させないように無色であることが好ましい。前記ガラスは銀導体と同時に焼成できるものであることが好ましく、銀導体と同時に焼成したときに発色を生じないものが好ましい。すなわち銀導体とガラスを同時に焼成する場合に焼成温度が900℃より高いと銀導体が変形してしまうのでオーバーコート層のガラスは900℃以下の温度で焼成して緻密化できるものであることを要する。また、銀とガラスの反応によって発色すること(銀発色)のないことが好ましい。なお、銀発色は、オーバーコート層の焼成時に銀導体から銀イオンがガラス中に拡散し、それが、コロイド化して、黄色や赤色に発色するものである。
銀のガラス中への拡散は、ガラスの軟化点が低いほど多くなる傾向がある。一方、焼成によって緻密なオーバーコート層を得るためには軟化点を低くする必要がある。つまり、焼成時にガラスがよく流動して緻密化することと銀発色抑制の両立は困難であった。たとえばガラス中にCuOなどの遷移元素酸化物を添加することにより、銀イオンのコロイド化を抑制し、銀発色を抑制するという方法が知られているが、遷移元素酸化物を添加する方法ではガラスが遷移金属イオンによって青色等に着色するため、本発明の目的には適応することができないのである。
本発明者は、銀の反射層としての機能を損ねる光吸収が非常に小さいオーバーコート層として、ガラス組成を検討した結果、遷移元素などを添加しない、無色で、かつ銀発色しないガラス組成を見いだした。
すなわち、Alを0〜5%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0〜5%、含有し、SiOとAlの含有量の合計が62〜84%、MgOを0〜10%、CaO、SrO、BaOのいずれか1以上を含有する場合にその含有量の合計が5%以下のガラスである。
オーバーコート層はまた、耐酸性や耐候性の高いことが好ましい。
【0020】
発光素子はLED素子である。放射した光で蛍光体を励起して可視光を発光させるものが挙げられる。たとえば、青色発光タイプのLEDチップや紫外発光タイプのLEDチップが例示される。ただし、これらに限定されるものではなく、蛍光体を励起して可視光を発光させることが可能な発光素子であれば、発光装置の用途や目的とする発光色等に応じて種々の発光素子を使用することができる。
【0021】
本発明の発光素子搭載基板には、発光素子を搭載して発光装置とするときに、蛍光体層が設けられることが好ましい。蛍光体は、発光素子から放射された光により励起されて可視光を発光し、この可視光と発光素子から放射される光との混色によって、あるいは蛍光体から発光される可視光または可視光自体の混色によって、発光装置として所望の発光色を得るものである。蛍光体の種類は特に限定されるものではなく、目的とする発光色や発光素子から放射される光等に応じて適宜に選択される。
【0022】
蛍光体層は、蛍光体をシリコーン樹脂やエポキシ樹脂のような透明樹脂に混合・分散させた層として形成される。蛍光体層は、発光素子の外側を覆うように形成することができる(図3参照)が、直接発光素子を覆うように形成された被覆層の上に、別に蛍光体層を設けることも可能である。すなわち、蛍光体層は発光装置の発光素子が形成された側の最上層に形成されることが好ましい。
【0023】
本発明の発光素子搭載基板は典型的には基板の表面にLED素子を電気的に接続する端子部を有し、当該端子部を除く領域がオーバーコート層で覆われているものである。この場合、発光素子の実装は、たとえば、LEDチップを基板上にエポキシ樹脂やシリコーン樹脂で接着(ダイボンド)するとともに、チップ上面の電極を金線等のボンディングワイヤを介して基板のパッド部に接続する方法、あるいは、LEDチップの裏面に設けられた半田バンプ、Auバンプ、Au−Sn共晶バンプ等のバンプ電極を、基板のリード端子やパッド部にフリップチップ接続する方法などにより行われる。
前記発光素子搭載基板は反射膜としての銀導体層とそれを保護するオーバーコート層を設けることができれば特に限定されないが、以下では発光素子搭載基板がLTCC基板である場合について説明する。
【0024】
LTCC基板はガラス粉末とアルミナ粉末等のセラミックスフィラーとの混合物を焼成して製造される基板であり、銀導体層と同時に焼成して製造することが可能な基板である。
【0025】
LTCC基板に使用するガラス粉末とアルミナ粉末等のセラミックスフィラーは通常グリーンシート化して使用される。たとえば、まずガラス粉末とアルミナ粉末等をポリビニルブチラールやアクリル樹脂等の樹脂と、必要に応じてフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル等の可塑剤等も添加して混合する。次に、トルエン、キシレン、ブタノール等の溶剤を添加してスラリーとし、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム上にドクターブレード法等によってこのスラリーをシート状に成形する。最後に、このシート状に成形されたものを乾燥して溶剤を除去しグリーンシートとする。これらグリーンシートには必要に応じて、銀ペーストを用いてスクリーン印刷等によって配線パターンやビアなどが形成される。
【0026】
LTCC基板を構成するガラスの組成は、たとえばモル%表示で、SiOが60.4%、Bが15.6%、Alが6%、CaOが15%、KOが1%、NaOが2%である。
【0027】
LTCC基板の製造に用いられるガラス粉末は、溶融法によって得られたガラスを粉砕して製造される。粉砕の方法は本発明の目的を損なわないものであれば限定されず、乾式粉砕でもよいし湿式粉砕でもよい。湿式粉砕の場合には、溶媒として水を用いることが好ましい。また粉砕にはロールミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を適宜用いることができる。ガラスは粉砕後、必要に応じて乾燥され、分級される。
【0028】
アルミナ粉末の粒度や形状などは特に限定されないが、典型的には平均粒子径D50が1〜5μm程度のものが用いられる。たとえば昭和電工社製のAL−45Hが挙げられる。
ガラス粉末とアルミナ粉末の配合比率は典型的にはガラス粉末40質量%、アルミナ粉末60質量%である。
【0029】
前記グリーンシートは、焼成後必要に応じて所望の形状に加工されて基板とされる。この場合、被焼成体は1枚または複数枚のグリーンシートを重ねたものである。前記焼成は典型的には850〜900℃に20〜60分間保持して行われる。より典型的な焼成温度は860〜880℃である。
【0030】
なお、銀導体層を同時に形成する場合、前記焼成温度は880℃以下であることが好ましい。880℃超では焼成時に銀または銀含有導体が軟化し、導体パターンやビアの形状が保持できなくなるおそれがある。より好ましくは870℃以下である。
発光素子搭載基板表面に形成される反射膜としての銀導体層は、反射率の観点から他の無機成分を含有しないことが好ましい。
【0031】
次に、オーバーコート層について説明する。
オーバーコート層は本発明のガラスの層または本発明のガラスを含むガラス−セラミックス(以下、本発明のガラス−セラミックスという)の層である。
【0032】
オーバーコート層の厚みは典型的には5〜20μmである。5μm未満であると、平坦性が不十分になることがある。すなわち、たとえば発光素子の下部に放熱のためのビアを設ける場合にはビアの先端が突き出しやすく、その上に発光素子を配置する時に傾いて光取り出し効率が悪くなるおそれがあるので、発光素子の傾きを防止するためには被覆層の厚みがビアの突き出し量より大きいことが好ましく、5μm以上であることが好ましい。20μm超では発光素子の放熱性を阻害し発光効率が低下してしまうおそれがある。
【0033】
オーバーコート層が本発明のガラスで形成される場合、オーバーコート層はたとえば本発明のガラスの粉末をペースト化してスクリーン印刷し、焼成して形成される。しかし、典型的には5〜20μmの厚みのものを平坦に形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0034】
オーバーコート層が本発明のガラス−セラミックスで形成される場合、オーバーコート層はたとえば本発明のガラスの粉末とセラミックスフィラーとの混合粉末をペースト化してスクリーン印刷し、焼成して形成される。しかし、典型的には5〜20μmの厚みのものを平坦に形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0035】
本発明のガラス−セラミックスは質量%表示で本発明のガラスを60%以上含有する。60%未満であると、反射率が不十分となるおそれがある。反射率をより高くするためには70%以上含有することがより好ましい。また、セラミックスフィラーを40%以下含有する。セラミックスフィラーの含有量は典型的には5%以上である。セラミックスフィラーを含有することにより、オーバーコート層の強度を高くできる場合がある。また、オーバーコート層の放熱性を高くできる場合がある。
【0036】
前記セラミックスフィラーはアルミナであることが好ましい。
【0037】
次に本発明のガラスの成分について説明する。なお、以下では特に断らない限り組成はモル%表示のものとし、単に%と表記する。
【0038】
SiOはガラスのネットワークフォーマであり、化学的耐久性、とくに耐酸性を高くする成分であり必須である。62%未満では耐酸性が不十分となるおそれがある。84%超ではガラス溶融温度が高くなる、またはガラス転移点(Tg)が高くなりすぎるおそれがある。
【0039】
はガラスのネットワークフォーマであり、必須である。10%未満ではガラス溶融温度が高くなる、またはガラスが不安定になるおそれがある。好ましくは12%以上である。25%超では安定なガラスを得にくくなる、または化学的耐久性が低下するおそれがある。
【0040】
Alは必須ではないが、ガラスの安定性または化学的耐久性を高めるために5%以下の範囲で含有してもよい。5%超ではガラスの透明性が低下するおそれがある。また、銀発色が生じやすくなる。
【0041】
またSiOとAlの含有量の合計は62〜84%である。62%未満であると化学的耐久性が不十分になるおそれがある。84%超であるとガラス溶融温度が高くなる、またはTgが高くなりすぎる。
【0042】
NaOおよびKOは必須ではないがTgを低下させる成分であり、合計で5%まで含有することができる。5%超では化学的耐久性、特に耐酸性が悪化するおそれがある、または、焼成体の電気絶縁性が低下するおそれがある。また、銀発色が生じやすくなる。
【0043】
また、NaO、KOのいずれか1以上を含有する。NaO、KOの含有量の合計は0.9%以上であることが好ましい。
【0044】
MgOは必須ではないが、Tgを低下させる、またはガラスを安定化させるために10%まで含有してもよい。10%超であると銀発色が生じやすくなる。好ましくは8%以下である。
【0045】
CaO、SrO、BaOはいずれも必須ではないが、ガラスの溶融温度を低下させるまたはガラスを安定化させるために合計で5%まで含有してもよい。5%超であると耐酸性が低下するおそれがある。または銀発色が生じやすくなる。
【0046】
本発明のガラスは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は10%以下であることが好ましい。ただし、鉛酸化物は含有しない。
本発明のオーバーコート層は、耐酸性は100μg/cm以下が好ましく、より好ましくは30μg/cm以下であり、更に好ましくは5μg/cm以下であり、特に好ましくは1μg/cm以下である。100μg/cm超ではメッキ溶液中にガラス中の成分が溶出し連続運転ができなくなったり、オーバーコート層が白濁し反射率を低下させたりしまうおそれがある。
オーバーコート層の耐酸性は、その焼結体をpH1.68、温度85℃のシュウ酸塩緩衝液700cmの中に浸漬し1時間経過後の質量減少量を測定することにより評価できる。
【0047】
本発明のガラスは、反射率を特に高くしたい場合にはSiOを78〜84%、Bを16〜18%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0.9〜4%、Alを0〜0.5%、CaOを0〜0.6%含有するガラス(以下、本発明のガラスAという。)または、SiOを72〜78%、Bを13〜18%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0.9〜4%、MgOを2〜10%含有するガラス(以下、本発明のガラスBという。)であることがより好ましい。
【0048】
次に本発明のガラスAの組成について説明する。
SiOはガラスのネットワークフォーマであり、必須である。78%未満では化学的耐久性が低下する。好ましくは80%以上である。84%超ではガラス溶融温度が高くなる、またはガラス転移点(Tg)が高くなりすぎるおそれがあり、好ましくは83%以下、より好ましくは82%以下である。
【0049】
はガラスのネットワークフォーマであり、必須である。16%未満ではガラス溶融温度が高くなる、またはTgが高くなりすぎるおそれがあり、18%超では安定なガラスを得にくくなる、または化学的耐久性が低下するおそれがある。好ましくは17%以下である。
【0050】
Alは必須ではないが、ガラスの安定性または化学的耐久性を高めるために0.5%以下の範囲で含有してもよい。0.5%超ではガラス溶融温度が高くなる、またはTgが高くなりすぎる。また、銀発色が生じやすくなる。
【0051】
NaOおよびKOはTgを低下させる成分であり、少なくともいずれか一方を含有しなければならない。その合計が0.9%未満では、ガラス溶融温度が高くなる、またはTgが高くなりすぎるおそれがあり、好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.5%以上である。4%超では化学的耐久性、特に耐酸性が悪化するおそれがある、または、焼成体の電気絶縁性が低下するおそれがある。また、銀発色が生じやすくなる。好ましく3%以下、より好ましくは2%以下である。
【0052】
CaOは必須ではないが、Tgを低下させるまたはガラスを安定化させるために0.6%以下の範囲で含有してもよい。0.6%超ではガラス溶融温度が低くなりすぎる、または結晶化を促進してしまい透明なガラス層を得ることができない。また、銀発色が生じやすくなる。
【0053】
本発明のガラスAは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は10%以下であることが好ましい。ただし、鉛酸化物は含有しない。
【0054】
次に、本発明のガラスBの組成について説明する。
SiOはガラスのネットワークフォーマであり、必須である。72%未満では化学的耐久性が低下する。好ましくは73%以上である。78%超ではガラス溶融温度が高くなる、またはTgが高くなりすぎるおそれがあり、好ましくは76%以下である。
【0055】
はガラスのネットワークフォーマであり、必須である。13%未満ではガラス溶融温度が高くなる、またはTgが高くなりすぎるおそれがあり、18%超では安定なガラスを得にくくなる、または化学的耐久性が低下するおそれがある。好ましくは17%以下である。
【0056】
MgOはガラスの溶融温度を低下し、ガラスを安定化する成分であり、2〜10%含有することが好ましい。2%未満では効果が不十分となるおそれがある。好ましくは4%以上である。10%超であると銀発色が生じやすくなる。好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下である。
【0057】
NaOおよびKOはTgを低下させる成分であり、少なくともいずれか一方を含有しなければならない。その合計が0.9%未満では、ガラス溶融温度が高くなる、またはTgが高くなりすぎるおそれがあり、好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.5%以上である。4%超では化学的耐久性、特に耐酸性が悪化するおそれがある、または、焼成体の電気絶縁性が低下するおそれがある。また、銀発色が生じやすくなる。好ましく3%以下である。
【0058】
本発明のガラスBは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は10%以下であることが好ましい。ただし、鉛酸化物は含有しない。
【実施例】
【0059】
例1〜20について表1および表2にモル%で示す組成となるようにガラス原料を調合、混合し、この混合された原料を白金ルツボに入れて1550〜1600℃で60分間溶融後、溶融ガラスを流し出し冷却した。得られたガラスをアルミナ製ボールミルでエチルアルコールを溶媒として20〜60時間粉砕してガラス粉末を得た。例1〜5および例12〜20のガラスは本発明のガラスである。例1〜4のガラスは本発明のガラスAである。例12〜14のガラスは本発明のガラスBである。例6〜11のガラスは比較例である。例15〜19は例1と同じガラス粉末にアルミナフィラー(昭和電工社製AL−45H)を加えた本発明のガラス−セラミックスの例であり、例20は本発明のガラス−セラミックスではない例である。ガラスとアルミナの質量比を表中のガラス欄およびアルミナ欄に示している。
【0060】
各ガラス粉末の平均粒径D50(単位:μm)を、島津製作所社製SALD2100を用いて、軟化点Ts(単位:℃)をブルカーAXS社製熱分析装置TG−DTA2000を用いて昇温速度10℃/分の条件で1000℃まで、それぞれ測定した。表中のTsの欄に「−」と記載したものはこれら方法によってはTsを測定できなかったことを示す。また、例1〜11のいずれについてもTs測定時に結晶ピークは認められなかった。
【0061】
ガラス粉末とアルミナ粉末の混合物を金型に入れてプレス成形したものを890℃に60分保持して焼成してから直径5mm、長さ20mmの棒状に加工したものについて10gの加重を加え、ブルカーAXS社製熱膨張測定装置TD5000SAを用いて、昇温速度10℃/分の条件で試料が軟化して収縮を始める温度Td(単位:℃)を測定した。Tdは780℃以下であることが好ましい。例の中でTdの値を測定していないものは「*」とした。
【0062】
例1〜20について質量%表示で各ガラス粉末にアルミナフィラーを加えた混合粉末を60%、樹脂成分を40%としたものについて、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにて3回分散を行ってガラスペーストを作製した。また、樹脂成分はエチルセルロースとαテレピネオールを質量比85:15の割合で調合し分散したものを使用した。
【0063】
銀ペーストは、導電性粉末(大研化学工業社製S400−2)およびエチルセルロースを質量比85:15の割合で調合し、固形分の質量%表示濃度を85%として溶剤(αテレピネオール)に分散した後、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにて3回分散を行って作製した。
【0064】
グリーンシートに銀ペーストを印刷し、乾燥後、ガラスペーストを銀ペースト上に印刷し、これを550℃に5時間保持して樹脂成分を分解除去した後、870℃に30分保持して焼成を行った。得られたLTCC基板の表面の反射率を測定した。反射率の測定にはオーシャンオプティクス社の分光器USB2000と小型積分球ISP−RFを用いて測定し、可視光域の400〜800nmの平均値を反射率(単位:%)として算出した。結果を表1に示す。なお、例11のガラス粉末は焼結しなかったので測定しなかった。
【0065】
反射率はオーバーコート層のない銀導体層表面が95%の反射率であることから、可能な限りそれに近い反射率が望ましい。87%以下では効率的に発光素子からの光を反射することができないのでオーバーコート層としては好ましくない。92%以上であることが特に好ましい。
【0066】
耐酸性試験はガラス粉末4gを金型でプレスし焼成することで直径14mm、高さ15mmほどの焼結体を得たのち、その焼結体をpH1.68、温度85℃のシュウ酸塩緩衝液700cmの中に浸漬し1時間経過後の質量減少量を測定した。なお、浸漬後の質量は100℃で1時間乾燥してから行った。焼成体の単位表面積あたりの質量減少量(単位:μg/cm)を表1の耐酸性の欄に示す。なお、例11のガラス粉末は焼結しなかったので測定しなかった。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0069】
携帯電話や大型液晶TV等のバックライトに利用できる。
なお、2008年8月21日に出願された日本特許出願2008−212591号及び2008年12月25日に出願された日本特許出願2008−329890号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0070】
1:LTCC基板
2:導体層(反射層)
3:オーバーコート層
4:ビア導体
5:封止樹脂(蛍光体層)
6:発光素子
7:ボンディングワイヤ
8:金メッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に反射層としての銀導体層が形成された無機材料基板からなり、この銀導体層の上に発光素子が搭載される発光素子搭載基板であって、
前記銀導体層が、ペースト体の焼成により形成されており、
前記銀導体層を覆うように前記無機材料基板に焼き付けて形成した厚み5〜20μmのオーバーコート層を有しており、
このオーバーコート層が酸化物基準のモル%表示でSiOを62〜84%、Bを10〜25%、Alを0〜5%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0〜5%、含有し、SiOとAlの含有量の合計が62〜84%、MgOを0〜10%、CaO、SrO、BaOのいずれか1以上を含有する場合にその含有量の合計が5%以下のホウケイ酸ガラスであることを特徴とする発光素子搭載基板。
【請求項2】
表面に反射層としての銀導体層が形成された無機材料基板からなり、この銀導体層の上に発光素子が搭載される発光素子搭載基板であって、
前記銀導体層が、ペースト体の焼成により形成されており、
前記銀導体層を覆うように前記無機材料基板に焼き付けて形成した厚み5〜20μmのオーバーコート層を有しており、
このオーバーコート層が質量%表示で60%以上のホウケイ酸ガラスと40%以下のセラミックスフィラーを含有し、前記ホウケイ酸ガラスが酸化物基準のモル%表示でSiOを62〜84%、Bを10〜25%、Alを0〜5%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0〜5%、含有し、SiOとAlの含有量の合計が62〜84%、MgOを0〜10%、CaO、SrO、BaOのいずれか1以上を含有する場合にその含有量の合計が5%以下のホウケイ酸ガラスであることを特徴とする発光素子搭載基板。
【請求項3】
前記セラミックスフィラーがアルミナである請求項2記載の発光素子搭載基板。
【請求項4】
前記無機材料基板が低温同時焼成セラミック(LTCC)である請求項1ないし3のいずれか1項記載の発光素子搭載基板。
【請求項5】
前記無機材料基板にビアを設けた請求項1ないし4のいずれか1項記載の発光素子搭載基板。
【請求項6】
前記無機材料基板から前記ビアが突き出ており、この突き出し量が前記オーバーコート層の厚みよりも小さい請求項5記載の発光素子搭載基板。
【請求項7】
前記無機材料基板の表面に前記発光素子が電気的に接続される端子部を有し、当該端子部を除く領域に前記オーバーコート層を有する請求項1ないし6のいずれか1項記載の発光素子搭載基板。
【請求項8】
前記無機材料基板が凹部を有し、凹部の底面に発光素子が配置される請求項1ないし7のいずれか1項記載の発光素子搭載基板。
【請求項9】
前記ホウケイ酸ガラスが酸化物基準のモル%表示でSiOを78〜82%、Bを16〜18%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0.9〜4%含有するものである請求項1ないし8のいずれか1項記載の発光素子搭載基板。
【請求項10】
前記ホウケイ酸ガラスが酸化物基準のモル%表示でSiOを72〜78%、Bを13〜18%、NaOおよびKOのいずれか1以上を合計で0.9〜4%、MgOを2〜10%含有するものである請求項1ないし8のいずれか1項記載の発光素子搭載基板。
【請求項11】
前記オーバーコート層が、85℃でpH1.68のシュウ酸溶液中に1時間浸漬したときの溶出量が30μg/cm以下である請求項1ないし10のいずれか1項記載の発光素子搭載基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−191218(P2012−191218A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102287(P2012−102287)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2010−525707(P2010−525707)の分割
【原出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】