説明

発光装置および蛍光体

【課題】
色ずれ、色むらが少なく、高い発光効率の発光装置、およびそれに用いられる蛍光体を提供する。
【解決手段】
発光装置は、励起光源と、励起光源の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換する蛍光体とを備える発光装置であって、蛍光体は、(a)アルミニウムと、(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、(c)必要に応じてガリウムと、(d)希土類元素とを有する希土類アルミネート蛍光体であり、蛍光体の内部に充填部と、空洞部とを有し、蛍光体について断面出しを行ったときの、空洞部の、充填部と空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ、バックライト光源、表示器、照光式スイッチおよび各種インジケータなどに利用される発光装置、およびそれに用いられる蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を用いた発光装置は、小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。また半導体素子であるため、球切れなどの心配がない。さらに初期駆動特性が優れ、振動やオン・オフ点灯の繰り返しに強い。
このような優れた特性を有するため、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)などの半導体発光素子を用いる発光装置は、各種の光源として利用されている。
【0003】
蛍光ランプ等の照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等の幅広い分野で、多色系の発光装置が求められている。特に、白色系に発光する発光装置(以下、「白色系発光装置」という。)が求められている。
半導体発光素子を用いた白色系発光装置の発光色は、光の混色の原理によって得られる。発光素子から放出された青色光は、YAl12:Ceの組成式で表されるYAG系蛍光体層の中へ入射した後、層内で何回かの吸収と散乱を繰り返した後、外部へ放出される。一方、YAG系蛍光体に吸収された青色光は励起光源として働き、黄色の蛍光を発する。そして、青色光と黄色光が混ざり合い、人間の目には白色として認識される。
【0004】
特許文献1には、発光物質が添加されている透明なエポキシ注型樹脂を基材とし、紫外線、青色光或いは緑色光を放出する半導体素体を備えたエレクトロルミネセンス素子のための波長変換する注型材料であって、この透明なエポキシ注型樹脂に、一般式A3512:Mを持つ蛍光物質の群からの発光物質顔料を備えた無機の発光物質顔料粉末が分散され、かつこの発光物質顔料が≦20μmの粒子の大きさと平均粒子直径d50≦5μmを持っていることを特徴とする波長変換する注型材料が記載されている。そして、これにより、均質な混合色を放出し、適用可能な技術的コストと充分に再現可能な素子特性でもって大量生産を可能にするエレクトロルミネセンス素子を製造し得る波長変換注型材料を提供できることが記載されている。
しかしながら、この注型材料では、近年の発光装置に要求されている発光効率の向上や、色むらの改善をすることができなかった。また、色ずれにも向上の余地があった。
【0005】
【特許文献1】特表平11−500584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、色ずれ、色むらが少なく、高い発光効率の発光装置、およびそれに用いられる蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(7)を提供する。
【0008】
(1)励起光源と、
前記励起光源の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換する蛍光体とを備える発光装置であって、
前記蛍光体は、(a)アルミニウムと、
(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、
(c)必要に応じてガリウムと、
(d)希土類元素と
を有する希土類アルミネート蛍光体であり、
前記蛍光体は、前記蛍光体の内部に充填部と、空洞部とを有し、
前記蛍光体について断面出しを行ったときの、前記空洞部の、前記充填部と前記空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい、発光装置。
【0009】
(2)前記蛍光体は、粒界を3以上有する上記(1)に記載の発光装置。
【0010】
(3)上記(1)または(2)に記載の発光装置であって、前記蛍光体の一般式が次式で表される、発光装置。
(Ln1−x,R(Al1−n,Ga12
(LnはY,Lu,Sc,La,Gd,Tb,EuおよびSmからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、Rは少なくとも1種以上の希土類元素を表し、xは0.0001≦x≦0.3を満たす数を表し、nは0≦n≦0.5を満たす数を表す。)
【0011】
(4)発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネッセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
(1)前記発光素子は、その発光層が窒化ガリウム系半導体で、その発光スペクトルのピーク波長が410〜490nmの範囲にある青色発光のLEDチップであり、
(2)前記フォトルミネッセンス蛍光体は、(a)アルミニウムと、
(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、
(c)必要に応じてガリウムと、
(d)希土類元素と
を有する希土類アルミネート蛍光体であり、
前記蛍光体は、前記蛍光体の内部に充填部と、空洞部とを有し、
前記蛍光体について断面出しを行ったときの、前記空洞部の、前記充填部と前記空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい蛍光体であり、
(3)前記蛍光体の発光する510〜580nmの範囲にピーク波長を有する発光スペクトルと、前記LEDチップからの前記蛍光体に吸収されない、410〜490nmの範囲にピーク波長を有する発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光を発光する、発光装置。
【0012】
(5)(a)アルミニウムと、
(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、
(c)必要に応じてガリウムと、
(d)希土類元素と
を有する希土類アルミネート蛍光体であり、
前記蛍光体は、前記蛍光体の内部に充填部と、空洞部とを有し、
前記蛍光体について断面出しを行ったときの、前記空洞部の、前記充填部と前記空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい、希土類アルミネート蛍光体。
【0013】
(6)前記蛍光体は、粒界を3以上有する上記(5)に記載の希土類アルミネート蛍光体。
【0014】
(7)上記(5)または(6)に記載の希土類アルミネート蛍光体であって、前記蛍光体の一般式が次式で表される、希土類アルミネート蛍光体。
(Ln1−x,R(Al1−n,Ga12
(LnはY,Lu,Sc,La,Gd,Tb,EuおよびSmからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、Rは少なくとも1種以上の希土類元素を表し、xは0.0001≦x≦0.3を満たす数を表し、nは0≦n≦0.5を満たす数を表す。)
【発明の効果】
【0015】
(1)に記載の発光装置は、励起光源と、励起光源の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換する蛍光体とを備える発光装置であって、蛍光体は、(a)アルミニウムと、(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、(c)必要に応じてガリウムと、(d)希土類元素とを有する希土類アルミネート蛍光体であり、蛍光体は、その内部に充填部と、空洞部とを有し、蛍光体について断面出しを行ったときの、空洞部の、充填部と空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい。
上記のような空洞部を有することで、吸収したエネルギーの損失を減少させて発光することができると考えられ、発光効率が向上する。また空洞部と充填部の間が界面となり、光を拡散するため、色ずれおよび色むらが小さくなる。
また、上記の構成にすることで樹脂中で蛍光体粒子が沈みきらず均一化するので色ずれおよび色むらが小さくなる。
【0016】
(2)に記載の発光装置においては、蛍光体が粒界を3以上有するのが好ましい。3以上の粒界を有することで、光の拡散効果が得られ、高い発光効率を維持したまま色むらを、より少なくすることができる。
【0017】
(3)に記載の発光装置においては、蛍光体の一般式が、(Ln1−x,R(Al1−n,Ga12(LnはY,Lu,Sc,La,Gd,Tb,EuおよびSmからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、Rは少なくとも1種以上の希土類元素を表し、xは0.0001≦x≦0.3を満たす数を表し、nは0≦n≦0.5を満たす数を表す。)で表されるのが好ましい。
【0018】
(4)に記載の発光装置は、発光層が半導体である発光素子と、発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネッセンス蛍光体とを備えた発光装置において、発光素子は、その発光層が窒化ガリウム系半導体で、その発光スペクトルのピーク波長が410〜490nmの範囲にある青色発光のLEDチップであり、フォトルミネッセンス蛍光体は、(a)アルミニウムと、(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、(c)必要に応じてガリウムと、(d)希土類元素とを有する希土類アルミネート蛍光体であり、蛍光体は、その内部に充填部と、空洞部とを有し、蛍光体について断面出しを行ったときの、空洞部の、充填部と空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい蛍光体であり、蛍光体の発光する510〜580nmの範囲にピーク波長を有する発光スペクトルと、前記LEDチップからの前記蛍光体に吸収されない、410〜490nmの範囲にピーク波長を有する発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光を発光する。
上記のような構成にすることで、色ずれ、色むらが小さく、高い発光効率の発光装置が得られる。
【0019】
(5)に記載の希土類アルミネート蛍光体は、(a)アルミニウムと、(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、(c)必要に応じてガリウムと、(d)希土類元素とを有する希土類アルミネート蛍光体であり、蛍光体は、その内部に充填部と、空洞部とを有し、蛍光体について断面出しを行ったときの、空洞部の、充填部と空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい。
上記のような空洞部を有することで、吸収したエネルギーの損失を減少させて発光することができると考えられ、発光効率が向上する。また空洞部と充填部の間が界面となり、光を拡散するため、色ずれおよび色むらが小さくなる。
また、上記の構成にすることで樹脂中で蛍光体粒子が沈みきらず均一化するので色ずれおよび色むらが小さくなる。
【0020】
(6)に記載の希土類アルミネート蛍光体においては、蛍光体が粒界を3以上有するのが好ましい。3以上の粒界を有することで、光の拡散効果が得られ、高い発光効率を維持したまま色むらを、より少なくすることができる。
【0021】
(7)に記載の希土類アルミネート蛍光体においては、蛍光体の一般式が、(Ln1−x,R(Al1−n,Ga12(LnはY,Lu,Sc,La,Gd,Tb,EuおよびSmからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、Rは少なくとも1種以上の希土類元素を表し、xは0.0001≦x≦0.3を満たす数を表し、nは0≦n≦0.5を満たす数を表す。)で表されるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る発光装置および希土類アルミネート蛍光体を具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されない。
【0023】
本発明に係る発光装置は、励起光源と、励起光源の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換する蛍光体とを備える発光装置である。
本発明において、色名と色度座標との関係は、JIS Z8110を参酌している。
【0024】
(励起光源)
励起光源は、紫外から可視光の短波長側に発光ピーク波長を有するものを使用する。この範囲に発光ピーク波長を有する励起光源であれば、半導体発光素子やランプ、電子ビーム、プラズマ、ELなどをエネルギー源とするものでも使用でき、特に限定されない。半導体発光素子を用いることが好ましい。
【0025】
(発光装置)
本発明の実施の形態1の発光装置について図1を用いて説明する。
実施の形態1の発光装置は、サファイア基板1の上部に積層された半導体層2と、この半導体層2に形成された正負の電極3から延びる導電性ワイヤ14で導電接続されたリードフレーム13と、サファイア基板1と半導体層2とから構成される発光素子10の外周を覆うようにリードフレーム13aのカップ内に設けられた蛍光体11とコーティング部材12と、リードフレーム13の外周面を覆うモールド部材15と、から構成されている。
【0026】
サファイア基板1上に半導体層2が形成され、半導体層2の同一平面側に正負の電極3が形成されている。半導体層2には、発光層(図示しない)が設けられており、この発光層から出力される発光ピーク波長は、紫外から青色領域の500nm以下近傍の発光スペクトルを有する。
【0027】
この発光素子10をダイボンダーにセットし、カップが設けられたリードフレーム13aにフェイスアップしてダイボンド(接着)する。ダイボンド後、リードフレーム13をワイヤーボンダーに移送し、発光素子の負電極3をカップの設けられたリードフレーム13aに金線でワイヤーボンドし、正電極3をもう一方のリードフレーム13bにワイヤーボンドする。
【0028】
次に、モールド装置に移送し、モールド装置のディスペンサーでリードフレーム13のカップ内に蛍光体11及びコーティング部材12を注入する。蛍光体11とコーティング部材12とは、あらかじめ所望の割合に均一に混合しておく。蛍光体11は、発光素子10により直接励起される蛍光体を少なくとも1種以上用いている。
次に、蛍光体11注入後、蛍光体11とコーティング部材12とを硬化する。
最後に、あらかじめモールド部材15が注入されたモールド型枠の中にリードフレーム13を浸漬した後、型枠をはずして樹脂を硬化させ、図1に示すような砲弾型の発光装置とする。
【0029】
次に、本発明の実施の形態2の発光装置について図2を用いて説明する。
実施の形態2の発光装置は、表面実装型の発光装置を形成する。発光素子101は、紫外光励起の窒化物半導体発光素子を用いることができる。また、発光素子101は、青色光励起の窒化物半導体発光素子も用いることもできる。
ここでは、紫外光励起の発光素子101を例にとって、説明する。発光素子101は、発光層として発光ピーク波長が約370nmのInGaN半導体を有する窒化物半導体発光素子を用いる。より具体的なLEDの素子構造としてサファイア基板上に、アンドープの窒化物半導体であるn型GaN層、Siドープのn型電極が形成されn型コンタクト層となるGaN層、アンドープの窒化物半導体であるn型GaN層、窒化物半導体であるn型AlGaN層、次に発光層を構成するInGaN層の単一量子井戸構造としてある。発光層上にはMgがドープされたp型クラッド層としてAlGaN層、Mgがドープされたp型コンタクト層であるGaN層を順次積層させた構成としてある。(なお、サファイア基板上には低温でGaN層を形成させバッファ層とさせてある。また、p型半導体は、成膜後400℃以上でアニールさせてある。)。エッチングによりサファイア基板上の窒化物半導体に同一面側で、pn各コンタクト層表面を露出させる。露出されたn型コンタクト層の上にn電極を帯状に形成し、切除されずに残ったp型コンタクト層のほぼ全面に、金属薄膜から成る透光性p電極が形成され、さらに透光性p電極の上にはn電極と平行に台座電極がスパッタリング法を用いて形成されている。
【0030】
次に、中央部に凹部を有し、この凹部の両側にコバール製のリード電極102が気密絶縁的に挿入固定されたベース部とからなるコバール製パッケージ105を用いる。前記パッケージ105及びリード電極102の表面にはNi/Ag層が設けられている。パッケージ105の凹部内に、Ag−Sn合金にて上述の発光素子101をダイボンドする。このように構成することにより、発光装置の構成部材を全て無機物とすることができ、発光素子101から放出される発光が紫外領域或いは可視光の短波長領域であったとしても飛躍的に信頼性の高い発光装置が得られる。
【0031】
次に、ダイボンドされた発光素子101の各電極と、パッケージ凹部底面から露出された各リード電極102とを、それぞれAgワイヤ104によって電気的導通を取る。パッケージの凹部内の水分を十分に排除した後、中央部にガラス窓部107を有するコバール製リッド106にて封止しシーム溶接を行う。ガラス窓部107には、次の色変換部材を構成している。色変換部材は、ニトロセルロース90wt%とγ−アルミナ10wt%からなるスラリーに対して、本発明の蛍光体108を含有させ、リッド106の透光性窓部107の背面に塗布し、220℃にて30分間加熱硬化させることにより製造することができる。こうして形成された発光装置を発光させると白色が高輝度に発光可能な発光ダイオードとすることができる。これによって色度調整が極めて簡単で量産性、信頼性に優れた発光装置とすることできる。
以下、本発明の各構成について詳述する。
【0032】
(蛍光体11、108)
蛍光体11、108は、直接励起される蛍光体を少なくとも1種以上含むものである。直接励起されるとは、主に励起光源からの光によって励起されるものであり、例えば、紫外線領域に主発光ピークを持つ励起光源を用いたときに、発光効率が可視光領域での最大値の60%以上であるものをいう。逆に、直接励起されない場合とは、励起光源からの光によっては、ほとんど励起されず、励起光源からの光により励起された、異なる蛍光体からの1次光が励起光源となり、この1次光により励起される場合をいう。
【0033】
蛍光体11、108は、本発明に係る希土類アルミネート蛍光体である。
本発明に係る希土類アルミネート蛍光体は、(a)アルミニウムと、(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、(c)必要に応じてガリウムと、(d)希土類元素とを有する希土類アルミネート蛍光体であり、この蛍光体は、その内部に充填部と、空洞部とを有し、蛍光体について断面出しを行ったときの、空洞部の、充填部と空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい。
【0034】
本発明の希土類アルミネート蛍光体は、蛍光体の内部に充填部と、空洞部とを有し、蛍光体について断面出しを行ったときの、空洞部の、充填部と空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さいことが必要である。
本発明において、断面出しは次のようにして行う。本発明に係る希土類アルミネート蛍光体の数ある粒子の中から、平均粒子径の希土類アルミネート蛍光体を選択する。
ここで、平均粒子径とは、中央粒径のことを意味する。中央粒径とは、二次粒子の粒度分布の体積累積頻度が50%に達する粒径を意味する。中央粒径の測定方法は、特に限定されない。例えば、レーザー回折散乱法により粒度分布を測定し、体積基準の粒子径の対数を用いた積算分布を求め、蛍光体粉末全体の50%を占めるときの粒子径、即ちオーバーサイズ50%の粒径として測定することができる。
選択した希土類アルミネート蛍光体の粒子断面像が最大粒径となる部分まで断面出しを行う。なお、断面出しを複数回(例えば、10回)行うことによって、そこから求められた面積割合の平均値を用いるのが好ましい。
断面出しの方法は、特に限定されない。例えば、樹脂に埋包してその粒子断面を削り出す方法、FIBにて加工する方法によって行うことができる。粒子断面像は、特に限定されない。例えば、SEM像、SIM像、TEM像、STEM像を用いることができる。
【0035】
希土類アルミネート蛍光体について断面出しを行ったときの、空洞部の、充填部と空洞部の合計に対する面積割合は、1%以上であるのが好ましく、2%以上であるのがより好ましく、また、18%以下であるのが好ましく、15%以下であるのがより好ましい。
空洞部が小さすぎると吸収エネルギーの損失が大きくなり、また粒子が重く沈みやすいため色ずれおよび色むらが生じる。空洞部が大きすぎると吸収したエネルギーを充分に光に変換できず、また粒子が軽すぎて浮いてしまうため色ずれおよび色むらが生じる。
本発明の蛍光体において、空洞部が複数存在する場合には、本発明における空洞部とは、複数存在する空洞部の合計を意味する。
【0036】
本発明の希土類アルミネート蛍光体は、粒界を3以上有するのが好ましい。本発明における粒界とは、材質のマトリックスな部分を構成する微細な粒子の間の境界を意味する。粒界を10以上有するのがさらに好ましく、30以上有するのがより好ましく、かつ、80以下有するのが好ましく、50以下有するのがさらに好ましい。
粒界が多すぎるとエネルギー損失が大きくなり、粒界が少なすぎると粒子の拡散効果が少なくなり色ずれおよび色むらが生じる。
【0037】
本発明の希土類アルミネート蛍光体の好適な態様として、以下の(i)〜(iii)が挙げられる。
【0038】
(i)(a)アルミニウムと、(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、(c)必要に応じてガリウムと、(d)希土類元素とを有し、(d):(a)の組成比が、1:0.5〜1:2である希土類アルミネート蛍光体。
【0039】
(ii)イットリウムの一部あるいは全体を、Lu、Sc、La、Gd、Pr、TbおよびSmからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素に置換され、あるいは、アルミニウムの一部あるいは全体をTl、Ga、Inの何れか又は両方で置換され蛍光作用を有するセリウム付活イットリウムアルミニウム酸化物系蛍光体。
【0040】
(iii)一般式(YGd1−zAl12:Ce(zは0<z≦1を満たす数を表す。)、または、(A1−aSmA’12:Ce(AはY、Lu、Sc、La、Gd、PrおよびTbからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、A’はAl、GaおよびInからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、aは0≦a<1を満たす数を表す。)で表される態様。
【0041】
本発明の希土類アルミネート蛍光体は、その結晶構造がガーネット構造であるのが好ましい。
以下、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)等についてより詳細に説明する。
【0042】
イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)は、Yなどの希土類元素とAlなどのIII族元素を含むガーネット構造の総称であり、希土類元素から選択された少なくとも一種の元素で付活された蛍光体であり、発光素子10から発光される青色光で励起されて発光する。
【0043】
YAG系蛍光体としては、例えば、(Ln1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce(0≦x<1、0≦y≦1、但し、Lnは、Y、Gd、Laからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。)等が挙げられる。
(Ln1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce蛍光体は、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、特に、高輝度で長時間使用する場合に好適である。また、励起スペクトルのピークを470nm付近に設定することができる。発光ピークは530nm付近にあり、720nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルが得られる。
特に、YAG系蛍光体は、Al、Ga、In、Y、La及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Ln1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce蛍光体を混合させることにより、RGBの波長成分を増やすことができる。また、現在のところ半導体発光素子の発光波長には、バラツキが生ずるものがあるが、2種類以上の蛍光体を混合することにより、所望の白色系の混色光等を得ることができる。つまり、発光素子の発光波長に合わせて色度点の異なる蛍光体を組み合わせることにより、それらの蛍光体間と発光素子とで結ばれる色度図上の任意の点の光を発光させることができる。
【0044】
またアルミニウム・ガーネット系蛍光体としては、Alを含み、かつY、Lu、Sc、La、Gd、Tb、Eu及びSmから選択された少なくとも一つの元素と、Ga及びInから選択された一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で賦活された蛍光体が挙げられ、可視光や紫外線で励起されて発光する蛍光体である。
ガーネット構造を有するこの種の蛍光体は、Alの一部をGaで置換することで、発光スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、発光スペクトルが長波長側へシフトする。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。したがって、長波長側の強度がGdの組成比で連続的に変えられるなど、窒化物半導体の青色系発光を利用して白色系発光に変換するための理想条件を備えている。Yの置換が2割未満では、緑色成分が大きく、赤色成分が少なくなり、8割以上では、赤色成分が増えるものの輝度が急激に低下する。
【0045】
また、励起吸収スペクトルについても同様に、ガーネット構造を有するこの種の蛍光体は、Alの一部をGaで置換することで、励起吸収スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、励起吸収スペクトルが長波長側へシフトする。蛍光体の励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長より短波長側にあることが好ましい。このように構成すると、発光素子に投入する電流を増加した場合、励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長にほぼ一致するため、蛍光体の励起効率を低下させることなく、色度ズレの発生を抑えることができる。
【0046】
具体的には、上述したYAG系蛍光体の他、Tb2.95Ce0.05Al512、Y2.90Ce0.05Tb0.05Al512、Y2.94Ce0.05Pr0.01Al512、Y2.90Ce0.05Pr0.05Al512等が挙げられる。なかでも、Yを含み、かつCe又はPrで賦活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体が好ましい。特に、組成の異なる2種類以上の蛍光体を組み合わせて用いることが好ましい。
【0047】
例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体は、緑色系又は赤色系に発光可能である。緑色系に発光可能な蛍光体は、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近であり、発光ピーク波長λpは510nm付近にあり、700nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを有する。また、赤色系に発光可能な蛍光体は、ガーネット構造であり、熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近であり、発光ピーク波長λpは600nm付近にあり、750nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを有する。
【0048】
本発明の希土類アルミネート蛍光体の結晶構造がガーネット構造であると、熱、光および水分に強くなり、励起スペクトルのピークを450nm付近にさせることができる。また、発光ピークも、580nm付近となり700nmまですそを引くブロードな発光スペクトルを持つ蛍光体となる。
また、この蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、460nm以上の長波長域の励起発光効率を高くすることができる。Gdの含有量の増加により、発光ピーク波長が長波長に移動し全体の発光波長も長波長側にシフトする。すなわち、赤みの強い発光色が必要な場合、Gdの置換量を多くすることで達成することができる。一方、Gdの量が増加するとともに、青色光によるこの蛍光物質の発光輝度は低下する傾向にある。さらに、所望に応じてCeに加えTb、Cu、Ag、Au、Fe、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Ti、Euらを含有させるとこもできる。
結晶構造がガーネット構造であるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の組成のうち、Alの一部をGaで置換することで発光波長が短波長側にシフトさせることができる。また、組成のYの一部をGdで置換することで、発光波長が長波長側にシフトさせることができる。
Yの一部をGdで置換する場合、Gdへの置換を1割未満にし、かつ、Ceの含有(置換)を0.03から1.0にすることが好ましい。Gdへの置換が2割未満では緑色成分が大きく赤色成分が少なくなるが、Ceの含有量を増やすことで赤色成分を補え、輝度を低下させることなく所望の色調を得ることができる。このうような組成にすることにより温度特性が向上する。
【0049】
本発明の希土類アルミネート蛍光体は、Y4Al29:Ce、斜方晶系、立方晶系および六方晶系からなる群から選ばれる少なくとも1種のYAlO3:Ceを有していてもよい。
【0050】
本発明の希土類アルミネート蛍光体は、粒子の粒度分布において、体積累積頻度が10%、50%および90%に達する粒径をそれぞれ、D10、D50およびD90としたとき、
0.60≦(D10/D50)<0.80、
1.30<(D90/D50)≦1.50および
1.0μm≦D50≦40μm
のすべてを満足するのが好ましい。
D10、D50およびD90が上記関係式を満足することにより、色調のばらつきを低減することができる。
粒子の粒度分布の測定は、特に限定されない。例えば、レーザー回折散乱法により測定することができる。
【0051】
本発明の希土類アルミネート蛍光体は、アスペクト比が0.78以上、かつ、1.00以下であるのが好ましい。アスペクト比は、0.85以上であるのがさらに好ましい。アスペクト比がこの範囲であることで、励起光の反射が少なくなり、また蛍光体粒子の沈降スピードが均一化される。
本発明において、アスペクト比は、以下のようにして求める。
試料について、倍率4000倍のSEMで粒子像の写真を撮る。図4で示すようにSEM写真からランダムに複数個(例えば、20個、50個、100個など)の粒子像を抽出する。そして、各々の粒子像についてa(粒子像の最長径)およびb(aに垂直な最大径)を求め、bの値をaの値で除して、その値の平均値をアスペクト比とする。
【0052】
本発明の希土類アルミネート蛍光体は、フッ素の含有量が5ppm以上であるのが好ましく、10ppm以上であるのがより好ましく、かつ、50ppm以下であるのが好ましく、20ppm以下であるのがより好ましい。フッ素の含有量が多すぎると、樹脂劣化を引き起こし、発光出力が低下する。フッ素の含有量が少なすぎると、焼成時に粒子が成長せず輝度が低下する。
【0053】
上記蛍光体11の粒径は、1μm〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは2μm〜8μmである。特に、5μm〜8μmが好ましい。2μmより小さい粒径を有する蛍光体は、凝集体を形成しやすい傾向にある。一方、5μm〜8μmの粒径範囲の蛍光体は、光の吸収率及び変換効率が高い。このように、光学的に優れた特徴を有する粒径の大きな蛍光体を含有させることにより、発光装置の量産性が向上する。
ここで粒径は、空気透過法で得られる平均粒径を意味する。具体的には、気温25℃、湿度70%の環境下において、1cm分の試料を計り取り、専用の管状容器にパッキングした後、一定圧力の乾燥空気を流し、差圧から比表面積を読みとり、平均粒径に換算した値である。本発明で用いられる蛍光体の平均粒径は2μm〜8μmの範囲であることが好ましい。
また、この平均粒径値を有する蛍光体が、頻度高く含有されていることが好ましい。また、粒度分布も狭い範囲に分布しているものが好ましく、特に、微粒子2μm以下の少ないものが好ましい。このように粒径、及び粒度分布のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され、良好な色調を有する発光装置が得られる。
【0054】
本発明の希土類アルミネート蛍光体とともにアルカリ土類金属窒化物蛍光体(アルカリ土類金属窒化珪素蛍光体)および/またはアルカリ土類金属酸窒化物蛍光体(アルカリ土類金属酸窒化珪素蛍光体)を使用することにより、色むらおよび色ずれが少なく、高発光効率という特性を損なうことなく、演色性の向上した発光装置を得ることができる。
【0055】
アルカリ土類金属酸窒化物蛍光体としては、少なくともEuで付活された単斜晶、もしくは斜方晶のアルカリ土類金属窒化珪素蛍光体、例えば、CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、(Ca,Sr)Si:Euなどを用いることが好ましい。また、次の(1)〜(4)の蛍光体を用いることもできる。
(1)(M11−aEu)Sで表されるアルカリ土類金属硫化物蛍光体。
ここで、M1は、Mg、Ca、Ba、Sr、Znから選択される少なくとも一種であり、0.0001≦a≦0.5である。
(2)(M11−a−bEuMn)Sで表されるアルカリ土類金属硫化物蛍光体。
ここで、M1は、Mg、Ca、Ba、Sr、Znから選択される少なくとも一種であり、0.0001≦a≦0.5、0.0001≦b≦0.5である。
(3)例えば、LiEuWなどのアルカリ金属タングステン酸塩蛍光体。(4)少なくともEuで付活されたアルカリ金属ホウ酸塩蛍光体。
【0056】
アルカリ土類金属窒化物蛍光体には、MSi:Eu、MSi10:Eu、M1.8Si0.2:Eu、M0.9Si0.110:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などもある。この窒化物蛍光体では、発光輝度を向上させるために、Bが含まれていることが好ましい。また、このB(ホウ素)の含有量は、1ppm以上10000ppm以下であることが好ましく、この範囲のホウ素を含有させることでより効果的に発光輝度を向上させることができる。
【0057】
さらに、少なくともEuもしくはCeで付活されたアルカリ土類金属酸窒化珪素蛍光体としては、例えば、(M11−aEu)Siで表される蛍光体が挙げられる。ここで、M1は、Mg、Ca、Ba、Sr、Znから選択される少なくとも一種であり、0.0001≦a≦0.5である。より具体的には、BaSi:Eu、(Sr,Ca)Si:Euなどである。
【0058】
アルカリ土類金属酸窒化物蛍光体としては、少なくともEuもしくはCeで付活されたアルカリ土類金属酸窒化珪素蛍光体が好ましい。例えば、(M11−aEu)Siで表される蛍光体が挙げられる。ここで、M1は、Mg、Ca、Ba、Sr、Znから選択される少なくとも一種であり、0.0001≦a≦0.5である。より具体的には、BaSi:Eu、(Sr,Ca)Si:Euなどである。
【0059】
アルカリ土類金属酸窒化物蛍光体は、賦活剤に希土類元素を用いており、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である第II族元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である第IV族元素と、を少なくとも含有する。元素の組合せは任意であるが、以下の組成のものを使用することが好ましい。酸窒化物蛍光体は、L((2/3)X+(4/3)Y−(2/3)Z):R、又は、L((2/3)X+(4/3)Y+T−(2/3)Z):R(Lは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である第II族元素である。Mは、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である第IV族元素である。Qは、B、Al、Ga、Inからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である第III族元素である。Oは、酸素元素である。Nは、窒素元素である。Rは、希土類元素である。0.5<X<1.5、1.5<Y<2.5、0<T<0.5、1.5<Z<2.5である。)の一般式で表される。X、YおよびZは、この範囲で高い輝度を示す。そのうち特に、一般式中、X、YおよびZが、X=1、Y=2およびZ=2で表される酸窒化物蛍光体は高い輝度を示すため特に好ましい。但し、上記範囲に限定されず、任意のものも使用できる。
【0060】
(蛍光体の製造方法)
本発明の希土類アルミネート蛍光体は、製造方法を特に限定されないが、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0061】
(1)原料混合物の作製
後述する化合物を各構成元素が所定の組成比となるように混合して、蛍光体の原料混合物を得る。蛍光体の原料混合物に用いられる化合物は、目的とする組成を構成する元素に応じて選択される。
混合の方法は、特に限定されず、例えば、粉末状の化合物をそのまま混合して原料混合物とする方法;水および/または有機溶媒を用いてスラリー状として混合した後、乾燥させて原料混合物とする方法;上述した化合物の水溶液を混合して沈降させ、得られた沈殿物を乾燥させて原料混合物とする方法;これらを併用する方法が挙げられる。
【0062】
以下に、蛍光体の原料混合物に用いられる化合物を例示する。
Y、Lu、Sc、La、Gd、Pr、Tb、Eu、Sm、Al、Tl、Ga、CeおよびInの化合物は、特に限定されないが、例えば、酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物が挙げられる。
原料混合物は、そのアスペクト比が0.75以上、かつ、1.00以下であるものを用いる。
また、原料混合物は、その粒子の粒度分布において、体積累積頻度が10%、50%および90%に達する粒径をそれぞれ、D10、D50およびD90としたとき、D10が2.5〜4.0μm、D50が4.0〜5.5μm、D90が5.5〜8.5μmのものを用いる。
このような粒度分布を有する原料混合物を得るために、らいかい乳鉢、ボールミル、振動ミル、ジェットミル等を使用することができる。また、種々の分級装置を使用することもできる。
【0063】
(2)原料混合物の焼成および粉砕
ついで、原料混合物を焼成する。焼成の温度、時間、雰囲気等は、特に限定されず、目的に応じて適宜決定することができる。
焼成温度は、800℃以上であるのが好ましい。焼成温度が低すぎると、未反応の原料が第二の蛍光物質に残留し、第二の蛍光物質の本来の特徴を生かせない場合がある。また、焼成温度は、2000℃以下であるのが好ましい。焼成温度が高すぎると、第二の蛍光物質の粒径が大きくなり過ぎて特性が低下する場合がある。
焼成時間は、一般に、1〜20時間であるのが好ましい。焼成時間が短すぎると、原料粒子間の拡散反応が進行しない。焼成時間が長すぎると、拡散反応がほぼ完了した後の焼成が無駄となり、また、焼結による粗大粒子が形成されてしまう場合がある。
【0064】
焼成は、複数の焼成工程に分けてもよい。例えば、第一の焼成工程を800〜1000℃で、2〜3時間行い、第二の焼成工程を1300〜1600℃で、2〜3時間行うことができる。
【0065】
焼成の雰囲気は、例えば、大気、酸素ガス、これらと窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスとの混合ガス、酸素濃度(酸素分圧)を制御した雰囲気、弱酸化雰囲気、H,Nなどの還元雰囲気が挙げられる。中でも、H,Nなどの還元雰囲気が好ましい。
ここで還元雰囲気とは、窒素雰囲気、窒素−水素雰囲気、アンモニア雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気等である。
【0066】
焼成後、所望により、らいかい乳鉢、ボールミル、振動ミル、ピンミル、ジェットミル等を用いて粉砕し、目的とする粒度の粉体とすることもできる。篩に通してもよい。
上述した製造方法により、本発明の希土類アルミネート蛍光体を得ることができる。
【0067】
(コーティング部材12、109)
蛍光体11、108は、有機材料である樹脂や無機材料であるガラスなど種々のコーティング部材(バインダー)を用いて、付着させることができる。コーティング部材12、109は、蛍光体11、108を発光素子10、101や窓部107等に固着させるためのバインダーとしての役割を有することもある。コーティング部材(バインダー)として有機物を使用する場合、具体的材料として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーンなどの耐候性に優れた透明樹脂が好適に用いられる。特に、シリコーンを用いると、信頼性に優れ、且つ蛍光体11、108の分散性を向上させることができ好ましい。
【0068】
また、コーティング部材(バインダー)12、109として、窓部107の熱膨張率と近似である無機物を使用すると、蛍光体108を良好に窓部107に密着させることができ好ましい。
蛍光体をコーティング部材を用いて、付着させる具体的方法として、沈降法やゾル−ゲル法、スプレー法等を用いることができる。例えば、蛍光体11、108に、シラノール(Si(OEt)OH)、及びエタノールを混合してスラリーを形成し、スラリーをノズルから吐出させた後、300℃にて3時間加熱してシラノールをSiOとし、蛍光体を所望の場所に固着させることができる。
【0069】
また、無機物である結着剤をコーティング部材(バインダー)12、109として用いることもできる。
結着剤とは、いわゆる低融点ガラスであり、微細な粒子であり、且つ紫外から可視領域の光に対して吸収が少なく、コーティング部材(バインダー)12、109中にて極めて安定であることが好ましい。
【0070】
また、粒径の大きな蛍光体をコーティング部材(バインダー)12、109に付着させる場合、融点が高くても粒子が超微粉体である結着剤、例えば、シリカ、アルミナ、あるいは沈殿法で得られる細かい粒度のアルカリ土類金属のピロリン酸塩、正りん酸塩などを使用することが好ましい。これらの結着剤は、単独、若しくは互いに混合して用いることができる。
【0071】
結着剤は、結着効果を十分に高めるため、ビヒクル中に湿式粉砕して、スラリー状にして、結着剤スラリーとして用いることが好ましい。ビヒクルとは、有機溶媒あるいは脱イオン水に少量の粘結剤を溶解して得られる高粘度溶液である。例えば、有機溶媒である酢酸ブチルに対して粘結剤であるニトロセルロースを1wt%含有させることにより、有機系ビヒクルが得られる。
【0072】
このようにして得られた結着剤スラリーに、蛍光体11、108を含有させて塗布液を作製する。塗布液中のスラリーの添加量は、塗布液中の蛍光体量に対してスラリー中の結着剤の総量が、1〜3%wt程度とすることができる。光束維持率の低下を抑制するため、結着剤の添加量が少ない方が好ましい。
塗布液を窓部107の背面に塗布する。その後、温風あるいは熱風を吹き込み乾燥させる。最後に400℃〜700℃の温度でベーキングを行い、ビヒクルを飛散させる。これにより所望の場所に蛍光体層が結着剤にて付着される。
【0073】
(発光素子10、101)
本発明において発光素子10、101は、蛍光体を効率よく励起可能な発光波長を発光できる発光層を有する半導体発光素子が好ましい。このような半導体発光素子の材料として、BN、SiC、ZnSeやGaN、InGaN、InAlGaN、AlGaN、BAlGaN、BInAlGaNなど種々の半導体を挙げることができる。同様に、これらの元素に不純物元素としてSiやZnなどを含有させ発光中心とすることもできる。蛍光体11、108を効率良く励起できる紫外領域から可視光の短波長を効率よく発光可能な発光層の材料として特に、窒化物半導体(例えば、AlやGaを含む窒化物半導体、InやGaを含む窒化物半導体としてInAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)がより好適に挙げられる。
【0074】
また、半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが好適に挙げられる。半導体層の材料やその混晶比によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることでより出力を向上させることもできる。
【0075】
発光素子10、101に、窒化物半導体を使用した場合、半導体用基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaAs、GaN等の材料が好適に用いられる。
結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を利用することが好ましい。このサファイア基板上にHVPE法やMOCVD法などを用いて窒化物半導体を形成させることができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAIN等の低温で成長させ非単結晶となるバッファ層を形成しその上にpn接合を有する窒化物半導体を形成させる。
【0076】
窒化物半導体を使用したpn接合を有する紫外領域を効率よく発光可能な発光素子例として、バッファ層上に、サファイア基板のオリフラ面と略垂直にSiOをストライプ状に形成する。ストライプ上にHVPE法を用いてGaNをELOG(Epitaxial Lateral Over Grows GaN)成長させる。続いて、MOCVD法により、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・アルミニウム・ガリウムの井戸層と窒化アルミニウム・ガリウムの障壁層を複数積層させた多重量子井戸構造とされる活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などの構成が挙げられる。活性層をリッジストライプ形状としガイド層で挟むと共に共振器端面を設け本発明に利用可能な半導体レーザー素子とすることもできる。
【0077】
窒化物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせることが好ましい。窒化物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。サファイア基板をとらない場合は、第1のコンタクト層の表面までp型側からエッチングさせコンタクト層を露出させる。各コンタクト層上にそれぞれ電極形成後、半導体ウェハーからチップ状にカットさせることで窒化物半導体からなる発光素子を形成させることができる。
【0078】
本発明の発光装置において、量産性よく形成させるためには、蛍光体11、108を発光素子10、101に固着する際に、樹脂を利用して形成することが好ましい。この場合、蛍光体11、108からの発光波長と透光性樹脂の劣化等を考慮して、発光素子10、101は紫外域に発光スペクトルを有し、その発光ピーク波長は、360nm以上420nm以下のものや、450nm以上470nm以下のものを使用することが好ましい。
ここで、本発明で用いられる半導体発光素子10、101は、不純物濃度1017〜1020/cmで形成されるn型コンタクト層のシート抵抗と、透光性p電極のシート抵抗とが、Rp≧Rnの関係となるように調節されていることが好ましい。n型コンタクト層は、例えば膜厚3〜10μm、より好ましくは4〜6μmに形成されると好ましく、そのシート抵抗は10〜15Ω/□と見積もられることから、このときのRpは前記シート抵抗値以上のシート抵抗値を有するように薄膜に形成するとよい。また、透光性p電極は、膜厚が150μm以下の薄膜で形成されていてもよい。
【0079】
また、透光性p電極が、金および白金族元素の群から選択された1種と、少なくとも1種の他の元素とから成る多層膜または合金で形成される場合には、含有されている金または白金族元素の含有量により透光性p電極のシート抵抗の調整をすると安定性および再現性が向上される。金または金属元素は、本発明に使用する半導体発光素子の波長領域における吸収係数が高いので、透光性p電極に含まれる金又は白金族元素の量は少ないほど透過性がよくなる。従来の半導体発光素子はシート抵抗の関係がRp≦Rnであったが、本発明ではRp≧Rnであるので、透光性p電極は従来のものと比較して薄膜に形成されることとなるが、このとき金または白金族元素の含有量を減らすことで薄膜化が容易に行える。
【0080】
上述のように、本発明で用いられる半導体発光素子10、101は、n型コンタクト層のシート抵抗RnΩ/□と、透光性p電極のシート抵抗RpΩ/□とが、Rp≧Rnの関係を成していることが好ましい。半導体発光素子10、101として形成した後にRnを測定するのは難しく、RpとRnとの関係を知るのは実質上不可能であるが、発光時の光強度分布の状態からどのようなRpとRnとの関係になっているのかを知ることができる。
【0081】
透光性p電極とn型コンタクト層とがRp≧Rnの関係であるとき、前記透光性p電極上に接して延長伝導部を有するp側台座電極を設けると、さらなる外部量子効率の向上を図ることができる。延長伝導部の形状及び方向に制限はなく、延長伝導部が衛線上である場合、光を遮る面積が減るので好ましいが、メッシュ状でもよい。また形状は、直線状以外に、曲線状、格子状、枝状、鉤状でもよい。このときp側台座電極の総面積に比例して遮光効果が増大するため、遮光効果が発光増強効果を上回らないように延長導電部の線幅及び長さを設計するのがよい。
【0082】
(発光素子10、101)
発光素子10、101は、上述の紫外発光の発光素子と異なる青色系に発光する発光素子を使用することもできる。青色系に発光する発光素子10、101は、III族窒化物系化合物発光素子であることが好ましい。発光素子10、101は、例えばサファイア基板1上にGaNバッファ層を介して、Siがアンドープのn型GaN層、Siがドープされたn型GaNからなるn型コンタクト層、アンドープGaN層、多重量子井戸構造の発光層(GaN障壁層/InGaN井戸層の量子井戸構造)、Mgがドープされたp型GaNからなるp型GaNからなるpクラッド層、Mgがドープされたp型GaNからなるp型コンタクト層が順次積層された積層構造を有し、以下のように電極が形成されている。但し、この構成と異なる発光素子も使用できる。
【0083】
pオーミック電極は、p型コンタクト層上のほぼ全面に形成され、そのpオーミック電極上の一部にpパッド電極が形成される。
また、n電極は、エッチングによりp型コンタクト層からアンドープGaN層を除去してn型コンタクト層の一部を露出させ、その露出された部分に形成される。
なお、本実施の形態では、多重量子井戸構造の発光層を用いたが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、InGaNを利用した単一量子井戸構造としても良いし、Si、ZnがドープされたGaNを利用しても良い。
【0084】
また、発光素子10、101の発光層は、Inの含有量を変化させることにより、420nmから490nmの範囲において主発光ピーク波長を変更することができる。また、発光ピーク波長は、上記範囲に限定されるものではなく、360nm〜550nmに発光ピーク波長を有しているものを使用することができる。
【0085】
(コーティング部材12、109)
コーティング部材12(光透光性材料)は、リードフレーム13のカップ内に設けられるものであり発光素子10の発光を変換する蛍光体11と混合して用いられる。コーティング部材12の具体的材料としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの温度特性、耐候性に優れた透明樹脂、シリカゾル、ガラス、無機バインダーなどが用いられる。また、蛍光体と共に拡散剤、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどを含有させても良い。また、光安定化剤や着色剤を含有させても良い。
【0086】
(リードフレーム13)
リードフレーム13は、マウントリード13aとインナーリード13bとから構成される。
マウントリード13aは、発光素子10を配置させるものである。マウントリード13aの上部は、カップ形状になっており、カップ内に発光素子10をダイボンドし、発光素子10の外周面すなわち、カップ内を蛍光体11とコーティング部材12とで覆っている。カップ内に発光素子10を複数配置しマウントリード13aを発光素子10の共通電極として利用することもできる。この場合、十分な電気伝導性と導電性ワイヤ14との接続性が求められる。発光素子10とマウントリード13aのカップとのダイボンド(接着)は、熱硬化性樹脂などによって行うことができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂などが挙げられる。また、フェースダウン発光素子10などによりマウントリード13aとダイボンドすると共に電気的接続を行うには、Ag―エースと、カーボンペースト、金属バンプなどを用いることができる。また、無機バインダーを用いることもできる。
【0087】
インナーリード13bは、マウントリード13a上に配置された発光素子10の電極3から延びる導電性ワイヤ14との電気的接続を図るものである。インナーリード13bは、マウントリード13aとの電気的接触によるショートを避けるため、マウントリード13aから離れた位置に配置することが好ましい。マウントリード13a上に複数の発光素子10を設けた場合は、各導電性ワイヤ同士が接触しないように配置できる構成にする必要がある。インナーリード13bは、マウントリード13aと同様の材質を用いることが好ましく、鉄、銅、鉄入り銅、金、白金、銀などを用いることができる。
【0088】
(導電性ワイヤ)
導電性ワイヤ14は、発光素子10の電極3とリードフレーム13とを電気的に接続するものである。導電性ワイヤ14は、電極3とオーミック性、機械的接続性、電気導電性及び熱伝導性が良いものが好ましい。導電性ワイヤ14の具体的材料としては、金、銅、白金、アルミニウムなどの金属及びそれらの合金などが好ましい。
【0089】
(モールド部材)
モールド部材15は、発光素子10、蛍光体11、コーティング部材12、リードフレーム13及び導電性ワイヤ14などを外部から保護するために設けられている。モールド部材15は、外部からの保護目的の他に、視野角を広げたり、発光素子10からの指向性を緩和したり、発光を収束、拡散させたりする目的も併せ持っている。これらの目的を達成するためモールド部材は、所望の形状にすることができる。また、モールド部材15は、凸レンズ形状、凹レンズ形状の他、複数積層する構造であっても良い。モールド部材15の具体的材料としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、シリカゾル、ガラスなどの透光性、耐候性、温度特性に優れた材料を使用することができる。モールド部材15には、拡散剤、着色剤、紫外線吸収剤や蛍光体を含有させることもできる。拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等が好ましい。コーティング部材12との材質の反発性を少なくするため、屈折率を考慮するため、同材質を用いることが好ましい。
【0090】
(他の好ましい形態)
実施の形態3の発光装置は、図3に示されるように、キャップタイプの発光装置である。発光素子10は、365nmの紫外光領域に主発光ピークを有する発光素子を使用する。
【0091】
発光装置は、モールド部材15の表面に、蛍光体(図示しない)を分散させた光透過性樹脂からなるキャップ16を被せることにより構成される。
【0092】
マウントリード13aの上部に、発光素子10を積載するためのカップが設けられており、カップのほぼ中央部の底面に発光素子10がダイボンドされている。発光装置では、カップの上部に発光素子10を覆うように、蛍光体11が設けられているが、特に設けなくてもよい。発光素子10の上部に蛍光体11を設けないことにより、発光素子10から発生する熱の影響を直接受けないからである。
【0093】
キャップ16は、蛍光体を光透過性樹脂に均一に分散させている。この蛍光体を含有する光透過性樹脂を、発光装置のモールド部材15の形状に嵌合する形状に成形している。または、所定の型枠内に蛍光体を含有する光透過性樹脂を入れた後、発光装置を型枠内に押し込み、成型する製造方法も可能である。キャップ16の光透過性樹脂の具体的材料としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの温度特性、耐候性に優れた透明樹脂、シリカゾル、ガラス、無機バインダーなどが用いられる。上記の他、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、セグメント化ポリウレタン等の熱可塑性ゴム等も使用することができる。また、蛍光体と共に拡散剤、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどを含有させても良い。また、光安定化剤や着色剤を含有させても良い。キャップ16に使用される蛍光体は、本発明の希土類アルミネート蛍光体である(Y0.8Gd0.2Al12:Ceと、Ca10(POCl:Eu、BaSi:Eu、(Sr,Ca)Si:Euなどの蛍光体とを使用する。マウントリード13aのカップ内に用いられる蛍光体11は、Ca10(POCl:Euなどの蛍光体を用いる。しかし、キャップ16に蛍光体を用いるため、Ca10(POCl:Euなどをキャップ16に含有し、マウントリード13aのカップ内は、コーティング部材12のみでもよい。
【0094】
このように構成された発光装置は、発光素子10から放出される光が、蛍光体11のCa10(POCl:Euなどを励起する。本発明の希土類アルミネート蛍光体である(Y0.8Gd0.2Al12:Ceは、Ca10(POCl:Euが発する青色光によって励起される。これにより、蛍光体11の混色光により、キャップ16の表面からは、白色系の光が外部へ放出される。
【0095】
以下、本発明に係る希土類アルミネート蛍光体について実施例を挙げて説明するが、この実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0096】
〔実施例1〕
アスペクト比が0.92であり、D10が5.0μm、D50が7.3μmおよびD90が10.4μmである(Y0.90Ce0.05Gd0.0523を29.72g、Al23を21.88g、H3BO3を0.01gおよびAlF3を0.03g混合し、還元雰囲気中にて1400度で4時間焼成した。粉砕して組成式が(Y0.90Ce0.09Gd0.013Al512である希土類アルミネート蛍光体を得た。
【0097】
〔実施例2〕
アスペクト比が0.82であり、D10が4.5μm、D50が6.7μmおよびD90が9.3μmである(Y0.90Ce0.05Gd0.0523を29.72g、Al23を21.88gおよびBaF2を0.52g混合し、還元雰囲気中にて1400度で4時間焼成した。粉砕して組成式が(Y0.90Ce0.05Gd0.053Al512である希土類アルミネート蛍光体を得た。
【0098】
〔比較例1〕
23を669g、CeO2を12g、Al23を538.5g、AlF3を2.44gおよびH3BO3を1.22g混合し、還元雰囲気中にて1400度で4時間焼成した。粉砕して組成式がY2.965Ce0.035Al512である希土類アルミネート蛍光体を得た。
【0099】
1.希土類アルミネート蛍光体の性状
(1)組成分析
実施例で得られた希土類アルミネート蛍光体を硝酸に溶解し、プラズマ発光分光(ICP)分析法により、ハロゲン元素、酸素以外の各構成元素の含有量の定量を行った。また所定量の実施例で得られた希土類アルミネート蛍光体を純水に投入して撹拌し、上澄み水溶液を得た。アニオン選択性電極を指示電極に用いたイオンメーターにより、上澄み水溶液中のハロゲン元素を定量した。
【0100】
(2)アスペクト比の測定
実施例で得られた希土類アルミネート蛍光体について、倍率4000倍のSEMで粒子像の写真を撮った。図4で示すようにSEM写真からランダムに複数個(例えば、20個、50個、100個など)の粒子像を抽出した。そして、各々の粒子像についてa(粒子像の最長径)およびb(aに垂直な最大径)を求め、bの値をaの値で除して、その値の平均値をアスペクト比とした。
【0101】
(3)粒度分布の測定
実施例で得られた希土類アルミネート蛍光体について、レーザー回折散乱法により測定し、D10/D50、D90/D50およびD50を求めた。
【0102】
(4)面積割合の測定
実施例で得られた希土類アルミネート蛍光体の数ある粒子の中から、各々中位径の希土類アルミネート蛍光体を選択した。選択した希土類アルミネート蛍光体の粒子断面像(SIM像)が最大粒径となる部分まで集束イオンビーム加工観察装置により断面出しを行った。この粒子断面像の空間部の、外殻部と空間部の合計に対する面積の割合をSIM像から計算した。
【0103】
結果を表1に示す。
実施例1および2で得られた希土類アルミネート蛍光体は、比較例1で得られた希土類アルミネート蛍光体に比べて、発光装置に使用した場合色ずれ、色むらが少なく、高い発光効率であった。
【0104】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る発光装置は、信号、照明、ディスプレイ、インジケーター、携帯電話のバックライトなどの各種電源に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係る実施の形態1の発光装置の構成を示す断面図である。
【図2】(a)本発明に係る実施の形態2の発光装置の構成を示す平面図である。(b)本発明に係る実施の形態2の発光装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態3の発光装置の構成を示す断面図である。
【図4】SEM写真によるアスペクト比の評価方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0107】
1 基板
2 半導体層
3 電極
4 バンプ
10 発光素子
11 蛍光体
12 コーティング部材
13 リードフレーム
13a マウントリード
13b インナーリード
14 導電性ワイヤ
15 モールド部材
101 発光素子
102 リード電極
103 絶縁封止材
104 導電性ワイヤ
105 パッケージ
106 リッド
107 窓部
108 蛍光体
109 コーティング部材
201 基板
202 下地層
203 n型層
203a 露出面
204 活性層
205 p側キャリア閉込め層
206 第1p型層
207 電流拡散層
208 p側コンタクト層
209 発光部
210 p側電極
210a 電極枝
210b p側パット電極
211a n側電極
211b n側パット電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光源と、
前記励起光源の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換する蛍光体とを備える発光装置であって、
前記蛍光体は、(a)アルミニウムと、
(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、
(c)必要に応じてガリウムと、
(d)希土類元素と
を有する希土類アルミネート蛍光体であり、
前記蛍光体は、前記蛍光体の内部に充填部と、空洞部とを有し、
前記蛍光体について断面出しを行ったときの、前記空洞部の、前記充填部と前記空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい、発光装置。
【請求項2】
前記蛍光体は、粒界を3以上有する請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置であって、前記蛍光体の一般式が次式で表される、発光装置。
(Ln1−x,R(Al1−n,Ga12
(LnはY,Lu,Sc,La,Gd,Tb,EuおよびSmからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、Rは少なくとも1種以上の希土類元素を表し、xは0.0001≦x≦0.3を満たす数を表し、nは0≦n≦0.5を満たす数を表す。)
【請求項4】
発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネッセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
(1)前記発光素子は、その発光層が窒化ガリウム系半導体で、その発光スペクトルのピーク波長が410〜490nmの範囲にある青色発光のLEDチップであり、
(2)前記フォトルミネッセンス蛍光体は、(a)アルミニウムと、
(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、
(c)必要に応じてガリウムと、
(d)希土類元素と
を有する希土類アルミネート蛍光体であり、
前記蛍光体は、前記蛍光体の内部に充填部と、空洞部とを有し、
前記蛍光体について断面出しを行ったときの、前記空洞部の、前記充填部と前記空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい蛍光体であり、
(3)前記蛍光体の発光する510〜580nmの範囲にピーク波長を有する発光スペクトルと、前記LEDチップからの前記蛍光体に吸収されない、410〜490nmの範囲にピーク波長を有する発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光を発光する、発光装置。
【請求項5】
(a)アルミニウムと、
(b)イットリウム、ルテチウム、スカンジウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウム、ユーロピウムおよびサマリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と、
(c)必要に応じてガリウムと、
(d)希土類元素と
を有する希土類アルミネート蛍光体であり、
前記蛍光体は、前記蛍光体の内部に充填部と、空洞部とを有し、
前記蛍光体について断面出しを行ったときの、前記空洞部の、前記充填部と前記空洞部の合計に対する面積割合は、0%より大きく20%より小さい、希土類アルミネート蛍光体。
【請求項6】
前記蛍光体は、粒界を3以上有する請求項5に記載の希土類アルミネート蛍光体。
【請求項7】
請求項5または6に記載の希土類アルミネート蛍光体であって、前記蛍光体の一般式が次式で表される、希土類アルミネート蛍光体。
(Ln1−x,R(Al1−n,Ga12
(LnはY,Lu,Sc,La,Gd,Tb,EuおよびSmからなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、Rは少なくとも1種以上の希土類元素を表し、xは0.0001≦x≦0.3を満たす数を表し、nは0≦n≦0.5を満たす数を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−41096(P2006−41096A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217245(P2004−217245)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】