説明

発光装置

【課題】従来の発光装置では、配線基板に設けられた凹部に発光素子を実装し、透明なエポキシ樹脂が発光素子を覆うように盛り上がった状態で封止されており、このような状態では、発光素子を覆うエポキシ樹脂の厚みの分、薄型化が阻まれるという課題があった。
【解決手段】従来の課題を解決するために、本発明の発光装置は、基板と発光素子を備えた発光装置であって、基板は、凹部と、配線とを備え、凹部は、底面と底面に接続された側面とからなり、配線の一部は、ボンドエリアであり、配線の他の一部は、外部接続電極であり、凹部内には発光素子が配置され、発光素子の下面と前記ボンドエリアはバンプにより電気的に接続されており、凹部の底面と発光素子の下面との間、及び凹部の側面と発光素子の側面との間には充填材が充填されており、発光素子の上面は充填材から露出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED:Light emitting diode)等の発光素子から出射された光を外部に取り出す発光装置に関するものであり、特に、電子ディスプレイ用のバックライト電源や、蛍光ランプに好適に用いられる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光装置はより小型化・薄型化が望まれている。このような要望を満たすため、特許文献1には、配線基板102に設けられた凹部に発光素子101を実装した発光装置が記載されている(図11)。発光素子101が凹部にボンディングされる分、発光装置の厚さは薄くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−186590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の発光装置では、透明なエポキシ樹脂106が発光素子101を覆うように盛り上がった状態で封止されている。このような状態では、発光素子101を覆うエポキシ樹脂の厚みの分、薄型化が阻まれるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の課題を解決するために、本発明の発光装置は、基板と発光素子を備えた発光装置であって、基板は、凹部と、配線とを備え、凹部は、底面と底面に接続された側面とからなり、配線の一部は、ボンドエリアであり、配線の他の一部は、外部接続電極であり、凹部内には発光素子が配置され、発光素子の下面と前記ボンドエリアはバンプにより電気的に接続されており、凹部の底面と発光素子の下面との間、及び凹部の側面と発光素子の側面との間には充填材が充填されており、発光素子の上面は充填材から露出することを特徴とする。
【0006】
また、凹部の側面と接続された基板の上面、充填材の上面及び発光素子の上面は面一となっていてもよい。
【0007】
また、充填材は、発光素子の下面と凹部の底面との間に配置された第1の充填層と、発光素子の側面と凹部の側面との間に配置された第2の充填層からなってもよい。
【0008】
また、第1の充填層は、波長変換層であってもよい。
【0009】
また、波長変換層には、半導体蛍光微粒子が含まれてもよい。
【0010】
また、第2の充填層は、樹脂であってもよい。
【0011】
また、第2の充填層は、発光素子よりも光透過率が高くてもよい。
【0012】
また、第2の充填層は、発光素子側面から凹部の側面に至るにつれ、光透過率が高くなっていてもよい。
【0013】
また、基板は、発光素子の下方に放熱板を備え、放熱板は充填材と接していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の発光装置によると、発光素子の上面は充填材から露出した構成となっているため、充填材が発光素子を覆うように盛り上がることが無く、従来の発光素子と比較し、さらに薄型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は実施例1の発光装置を示す概略断面図、(b)は実施例1の発光装置を示す概略上面図
【図2】実施例1の発光装置の変形例を示す概略断面図
【図3】実施例1の発光装置の変形例を示す概略断面図
【図4】実施例1の発光装置の変形例を示す概略断面図
【図5】(a)は実施例1の発光装置を示す概略断面図、(b)は実施例1の発光装 置の一部断面拡大図、(c)は実施例1の発光装置の各位置での光透過率を示すグラフ
【図6】(a)は実施例2の発光装置を示す概略断面図、(b)は実施例2の発光装置の一部断面拡大図、(c)は実施例2の発光装置の各位置での光透過率を示すグラフ
【図7】(a)は実施例3の発光装置を示す概略断面図、(b)は実施例3の発光装置の一部断面拡大図、(c)は実施例3の発光装置の各位置での光透過率を示すグラフ
【図8】(a)は実施例4の発光装置を示す概略断面図、(b)は実施例4の発光装置を示す概略上面図
【図9】(a)は実施例5の発光装置を示す概略断面図、(b)は実施例5の発光装置を示す概略上面図
【図10】(a)〜(e)は、実施例6の発光装置の製造方法を示す概略断面図
【図11】従来技術の発光装置の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例における発光装置について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施例1)
本発明の実施例1における発光装置の構成について、図1を用いて説明する。図1(b)は本実施例の発光装置の上面図である。図1(a)は図1(b)におけるAA’線の概略断面図である。なお、図1(b)では簡略化のために、一部の構成を省略している。
【0018】
図1に示すように、本実施例の発光装置は、基板2を備え、基板2は凹部2aを有する。凹部2aは凹部底面2b及び凹部底面2bと接続された凹部側面2cとから構成される。基板2はさらに凹部側面2cと接続された上面2dを有する。基板2はさらに配線3を備える。配線3の上面の一部は基板2の凹部底面2bから露出し、ボンドエリア3aとして機能している。配線3の下面の一部は基板2の下面から露出し、外部接続電極3bとして機能している。発光素子1は基板2の凹部2a内に配置され、発光素子1の下面と配線3のボンドエリア3aはバンプ5により電気的に接続されている。いわゆるフリップチップ実装である。また基板2の凹部側面2cは、発光素子1を囲うように設けられている。また図1(b)に示すように、基板凹部2aの平面内形状は略四角形である。また、基板2の凹部底面2b及び凹部側面2cと、発光素子1との間には充填材6が充填されている。ここで、発光素子1の上面(基板2に対して反対側の面)は充填材6から露出した構成となっている。
【0019】
発光素子1としては、例えば、GaN系の青色LEDを用いることができるが、これに限られず、他の材料からなる青色LEDや他の色の発光をするLEDや有機EL等のLED以外の発光素子を用いてもよい。
【0020】
本発明の発光装置によると、発光素子1の上面は充填材6から露出した構成となっているため、従来の発光装置と比較し、さらに薄型化できるという効果を発揮する。
【0021】
また、基板2の凹部側面2cは上方に広角となるリフレクターであることが好ましい。凹部側面2cをリフレクターとすることで、発光装置の指向性をより高めることができる。
【0022】
また、図1に示すように、発光素子1上面と充填材6上面と基板2の上面2dが面一となることが好ましい。発光装置の上面方向に表記した矢印は光の進行方向を示している。発光素子1からの光の一部は上方(基板2に対して反対方向)に進行し、一部は下方に進行する。下方に進行した光は、基板2で反射し、上方に進行する。基板2で反射した光の一部は充填材6を透過して充填材6上面から発光装置外部へ進行する。充填材6上面が面一となることにより、後述の充填材6上面が山形形状であったり、谷形形状であったりする場合と比較し、発光素子1上面からの出射光と充填材6上面からの出射光の方向性のばらつきを抑えることができる。また、発光装置運搬時や使用時での欠け等を防ぐことができる。
【0023】
なお、発光素子1と基板2の電気的接続のためには、配線3は少なくとも2本備わっていれば良い。また、図1(b)に示すように、配線3は発光素子1の外周を囲うように複数本形成されていてもよい。この際、少なくとも2本の配線3以外は、電気的接続に用いないダミー配線でもよい。このような構成とすれば、発光素子1を基板2により物理的に安定して搭載することができる。
【0024】
尚、図2に示すように、充填材6上面を発光素子1上面位置より高い位置で山形に盛り上った形状としてもよい。このような構成とすれば、充填材6上面からの出射光を拡散させることができる。
【0025】
尚、図3に示すように、充填材6上面を発光素子1上面位置より低い位置で谷形形状としてもよい。このような構成とすれば、充填材6上面からの出射光を集光させることができる。
【0026】
また、充填材6は、発光素子1の底面と基板2の凹部底面2bとの間に配置された第1の充填層7と、発光素子1の側面と基板2の凹部側面2cとの間に配置された第2の充填層8からなることが好ましい。
【0027】
また、第1の充填層7は、波長変換層であることが好ましい。
【0028】
従来、発光装置の分野では、発光素子から発光される光そのものの色とは異なる色を得たいという要望があった。これらの要望を満たすために、従来は発光素子の上面に発光素子からの光を波長変換するための層を設けるという構成をとっていた。これに対し、本実施例に示すように発光素子1の底面と基板2との間に配置された第1の充填層7を波長変換層とすることで、本願発明においても、発光素子から発光される光そのものの色とは異なる色を得ることができる。すなわち、発光素子1は、図1に示すように、発光素子1の中心点Pから上方向(発光素子1上面方向)及び下方向(基板2方向)に向かって発光する。この下方向に向かって発光する光を波長変換層7に通すことで、波長変換を行う。そして、波長変換層7を通した光を反射によって上方向(発光素子1上面方向)に取り出す。このように、波長変換された光と波長変換されない光とを混合して放出することにより、発光素子1そのものの光とは異なる色の光を出す発光装置を提供することができる。ここで、基板2は反射率の高い材質からなることが好ましい。もしくは、後述のように放熱板4を波長変換層7に接する構成とするならば、放熱板4自体が反射率の高い材質を用いることが好ましい。もしくは、図4に示すように、基板2の凹部2a上に反射層10を設けることが好ましい。
【0029】
また、波長変換層7には、バンド端光吸収・発光を直接利用することで高い量子効率を実現する半導体蛍光微粒子を含むことが好ましい。特に、直径が数nmから数十nmの微粒子からなるいわゆる量子ドット蛍光体を含むことが好ましい。量子ドット蛍光体は、量子サイズ効果によって同一材料の微粒子でも粒子径を制御することで可視光線領域において所望の波長帯の蛍光スペクトルを得ることが出来る。また、バンド端による光吸収・蛍光であるため、90%程度の高い外部量子効率を示すことから、高効率・高演色性を有する発光装置を提供することができる。
【0030】
量子ドット蛍光体の材料としては、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeのようなII−VI族化合物半導体ナノ結晶、GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAsのようなIII−V族化合物半導体ナノ結晶、およびこれらの混合物よりなる群から選択されることが好ましい。また、前記混合物は、例えばCdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTeおよびHgZnSTeよりなる群から選択されるか、またはGaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAsおよびInAlPAsよりなる群から選択されることが好ましい。
【0031】
例として、発光素子1としてGaN系の青色LEDを、波長変換層7に含まれる半導体蛍光微粒子としてCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTeのようなII−VI族化合物半導体ナノ結晶、GaN、GaP、AlN、AlP、AlAs、InN、InPのようなIII−V族化合物半導体ナノ結晶を用いた場合には、高輝度な白色光を得られる発光装置を実現できる。
【0032】
ここで、量子ドット蛍光体は粒子径が小さいため、微粒子の表面を占める原子の割合が多くなることから、化学的安定性の低いものが多く、特に大気開放・高温環境下での励起蛍光においては、量子ドット蛍光体表面の酸化反応が進行し、急激な発光効率の低下を引き起こすという課題を有する。
【0033】
よって、波長変換層7に量子ドット蛍光体が含まれる場合は、発光素子1の下方であって、波長変換層7の下層に放熱板4を設け、放熱板4下面が基板2から外部に露出することが好ましい。発光装置の動作時、発光素子1から発する熱は波長変換層7へ放熱されるが、放熱板4下面が外部に露出しているため、積極的に外部へ放熱し波長変換層7に含有される量子ドット蛍光体の温度上昇を防止することができる。
【0034】
また、発光素子1の側面と基板2の凹部側面2cとの間に配置された第2の充填層8は、樹脂であることが好ましい。特に酸素を透過しにくいガスバリア樹脂であることが好ましい。具体的には、ナイロン(Ny)類、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を用いても良い。このような構成とすることで、波長変換層7に耐酸化性の低い半導体微粒子蛍光体を用いる場合であっても、波長変換層7は、基板2の凹部底面2b及び発光素子1の底面及び基板2の凹部側面2c及びガスバリア樹脂8によって外気から密閉されるので、波長変換層7の酸化を効率的に抑えることができる。
【0035】
次に、図5を用いて本願発明における発光素子1の側面周辺での光の進行原理を説明する。
【0036】
図5(a)は本願発明の発光装置の概略断面図である。各構成については図1と同じであるため説明を省略する。図5(a)の破線部を拡大した図が図5(b)である。
【0037】
図5(b)で表記した矢印は光の進行方向と光量の大小を模式的に示し、矢印が大きい場合は光量が大きく、矢印が小さい場合は光量が小さいことを示す。
【0038】
ここで、発光素子1の主たる素材としては、赤色LEDならGaAs、緑色LEDならGaP、青色LEDならサファイアかGaNが想定され、第2の充填層8は発光素子1より透過性の高い樹脂が用いられている。
【0039】
図中に表記したH1は第1の充填層7上面のZ軸方向(基板2から発光素子1に向かう方向)の位置を示し、H2は発光素子1上面及び第2の充填層8上面及び基板2の上面2dのZ軸方向の位置を示す。また、Aは発光素子1が存在するX軸方向(発光素子1の平面中心から基板2の凹部側面2cに向かう方向)の位置を示し、Bは発光素子1と第2の充填層8の境界に当たるX軸方向の位置を示し、Cは基板2の凹部側面2cと第1の充填層7上面と第2の充填層8下面の境界に当たるX軸方向の位置を示し、Dは基板2の上面2dと第2の充填層8上面に当たるX軸方向の位置を示す。
【0040】
図5(c)は、図5(b)に示す各X軸方向の位置での、発光素子1または第2の充填層8における光透過率を示すグラフである。図5(c)で示すように、光透過率は発光素子1の配置部位では小さく、第2の充填層8の配置部位では大きい。よって、図5(b)に示すように、第1の充填層7上面のZ軸方向(基板2から発光素子1に向かう方向)の位置H1において、仮にX軸方向のどの位置でも上方への光量が一定であるとすると、発光素子1上面及び第2の充填層8上面及び基板2の上面2dのZ軸方向の位置H2において、X軸方向のB〜CではA〜Bよりも多くの光量を発することとなる。
【0041】
(実施例2)
本発明の実施例2における発光装置の構成について、図6を用いて説明する。
【0042】
図6(a)は実施例2における発光装置の概略断面図である。図5(a)に示す実施例1とは、第2の充填層8の材料が異なることが特徴である。その他の構成については図5(a)と同じであるため説明を省略する。
【0043】
図6(b)は図6(a)における破線部の断面拡大図である。図中に表記した矢印は光の進行方向と光量の大小を示し、矢印が大きい場合は光量が大きく、矢印が小さい場合は光量が小さいことを示す。
【0044】
また、図中に表記したH1は蛍光体を含有した第1の充填層7上面のZ軸方向(基板2から発光素子1に向かう方向)の位置を示し、H2は発光素子1上面または第2の充填層8上面及び基板2の上面2dのZ軸方向の位置を示す。また、Aは発光素子1が存在するX軸方向(発光素子1の平面中心から基板2の凹部側面2cに向かう方向)の位置を示し、Bは発光素子1と第2の充填層8の境界に当たるX軸方向の位置を示し、Cは基板2の凹部側面2cと第1の充填層7上面と第2の充填層8下面の境界に当たるX軸方向の位置を示し、Dは基板2の上面2dと第2の充填層8上面に当たるX軸方向の位置を示す。
【0045】
本実施例においては、発光素子1の主たる素材としては、赤色LEDならGaAs、緑色LEDならGaP、青色LEDならサファイアかGaNが想定され、第2の充填層8は発光素子1と同等の透過性を有する樹脂が用いられていることが特徴である。
【0046】
図6(c)は図6(b)に示すX軸方向の位置での、発光素子1または第2の充填層8の光透過率を示すグラフである。図6(c)で示すように、光透過率はX軸方向のA〜Dにかけて均等である。よって、図6(b)に示すように、第1の充填層7上面のZ軸方向(基板2から発光素子1に向かう方向)の位置H1において、仮にX軸方向のどの位置でも上方への光量が一定であるとすると、発光素子1上面及び第2の充填層8上面及び基板2の上面2dのZ軸方向の位置H2において、X軸方向のB〜CとA〜Bは同等の光量を発することとなる。
【0047】
ゆえに、本実施例では、実施例1と比較し、X軸方向のBの位置で(すなわち発光素子1と第2の充填層8の界面で)光量の差がほとんどなく、発光装置上面に発する光量において斑を失くすことができるという効果を発揮する。
【0048】
(実施例3)
本発明の実施例3における発光装置の構成について、図7を用いて説明する。
【0049】
図7(a)は実施例3における発光装置の概略断面図である。
【0050】
図6(a)に示す実施例とは、第2の充填層8が異なることが特徴である。その他の構成については図6(a)と同じであるため説明を省略する。
【0051】
図7(b)は図7(a)における破線部の断面拡大図である。図中に表記した矢印は光の進行方向と光量の大小を示し、矢印が大きい場合は光量が大きく、矢印が小さい場合は光量が小さいことを示す。
【0052】
また、図中に表記したH1は蛍光体を含有した第1の充填層7上面のZ軸方向(基板2から発光素子1に向かう方向)の位置を示し、H2は発光素子1上面または第2の充填層8上面及び基板2の上面2dのZ軸方向の位置を示す。また、Aは発光素子1が存在するX軸方向(発光素子1の平面中心から基板2の凹部側面2cに向かう方向)の位置を示し、Bは発光素子1と第2の充填層8の境界に当たるX軸方向の位置を示し、Cは基板2の凹部側面2cと第1の充填層7上面と第2の充填層8下面の境界に当たるX軸方向の位置を示し、Dは基板2の上面2dと第2の充填層8上面に当たるX軸方向の位置を示す。
【0053】
本実施例においては、発光素子1の主たる素材としては、赤色LEDならGaAs、緑色LEDならGaP、青色LEDならサファイアかGaNが想定され、第2の充填層8は発光素子1と比較し、X軸方向のB〜Dにかけて光透過性が低くなるような樹脂構成としていることが特徴である。
【0054】
図7(c)は図7(b)に示す各X軸方向の位置での、発光素子1または第2の充填層8の光透過率を示すグラフである。第2の充填層8は樹脂8a及び樹脂8a上に設けられた樹脂8bからなる。樹脂8bの膜厚の調整は、樹脂8aの形状に依存し、樹脂8a硬化時に基板2の凹部側面2cの各辺に追従して傾斜させることにより、樹脂8aと樹脂8bの界面に勾配を形成することが可能である。図7(c)で示すように、光透過率は発光素子1の配置部位(X軸方向のA〜B)では大きく、第2の充填層8の配置部位(X軸方向のB〜D)では発光素子1側面近傍から基板2の凹部側面2cに至るにつれ次第に増加する傾向である。よって、図7(b)に示すように、第1の充填層7上面のZ軸方向(基板2から発光素子1に向かう方向)の位置H1において、仮にX軸方向のどの位置でも上方への光量が一定であるとすると、発光素子1上面及び第2の充填層8上面及び基板2の上面2dのZ軸方向の位置H2において、X軸方向のBからCに向けて徐々に多くの光量を発することとなる。
【0055】
なお、実施例2及び3において、第2の充填層8の光透過率の調整は比重の差異による、硬化時の沈降作用により可能である。よって、第2の充填層8としてのガスバリア樹脂には、上述の通り、ナイロン(Ny)類、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を用いることが想定されるが、これらに不純物を含有させることにより光透過性を調整することができる。
【0056】
(実施例4)
本発明の実施例4における発光装置の構成について、図8を用いて説明する。図1に示す実施例1とは、基板凹部2aの平面内形状が異なることが特徴である。その他の構成については図1に示す実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0057】
図8(b)は本実施例の発光装置の上面図である。
【0058】
図8(a)は図8(b)におけるAA’線の発光装置の概略断面図である。
【0059】
図8(b)で示すように、基板凹部2aの平面内形状が略円形である。本実施例の発光装置によれば、実施例1〜3の発光装置と比較し、基板凹部2aの平面内形状から角部をなくすことができ、角部における充填材6の未充填などをより確実に防ぐことができる。
【0060】
なお、実施例2〜3についても、同様に基板凹部2aの平面内形状を略円形にしてもよい。
【0061】
(実施例5)
本発明の実施例5における発光装置の構成について、図9を用いて説明する。図1に示す実施例1とは、基板凹部2aの平面内形状及び基板2の平面外形状が異なることが特徴である。その他の構成については図1に示す実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0062】
図9(b)は本実施例の発光装置の上面図である。
【0063】
図9(a)は図9(b)におけるAA’線の発光装置の概略断面図である。
【0064】
図9(b)で示すように、本実施例では、基板凹部2aの平面内形状が略円形であり、基板2の平面外形状も円形である。本実施例の発光装置によれば、例えば実施例1〜4よりも発光装置外形を小さくし、更に高密度実装が可能となる。
【0065】
なお、実施例2〜3についても、同様に基板凹部2aの平面内形状を略円形にしてもよい。
【0066】
(実施例6)
本発明の実施例は、具体的には実施例1で説明した発光装置を製造する方法であり、図10を用いて説明する。
【0067】
まず図10(a)に示すように、凹部2aを有する基板2を用意する。凹部2aは凹部底面2b及び凹部底面2bと接続された凹部側面2cとから構成される。基板2はさらに凹部側面2cと接続された上面2dを有する。基板2はさらに配線3を備える。配線3の上面の一部は基板2の凹部底面2bから露出し、ボンドエリア3aとして機能している。配線3の下面の一部は基板2の下面から露出し、外部接続電極3bとして機能している。
【0068】
また、基板2の凹部側面2cは上方に広角となるリフレクターであることが好ましい。側面2cをリフレクターとすることで、発光装置の指向性をより高めることができる。
【0069】
また、基板2は放熱板4を備えることが好ましい。また、放熱板4の上面は、基板2の凹部底面2bから露出することが好ましい。また、放熱板4の底面は、基板2の下面から露出することが好ましい。また、放熱板4自体が反射率の高い材質を用いることが好ましい。もしくは基板2の凹部2a上に反射層10を設けることが好ましい。
【0070】
次に図10(b)に示すように、発光素子1は基板2の凹部2a内に配置し、発光素子1と配線3のボンドエリア3aをバンプ5により電気的に接続する。いわゆるフリップチップ実装である。また、基板2の凹部側面2cは、発光素子1を囲うように設けられていることが好ましい。また、発光素子1と基板2の凹部底面2bの間に第1の充填層7を充填することが好ましい。第1の充填層7は、波長変換層であることが好ましい。第1の充填層7を波長変換層とすることで、発光素子から発光される光そのものの色とは異なる色を発光させることができる。また、波長変換層7には、バンド端光吸収・発光を直接利用することで高い量子効率を実現する半導体蛍光微粒子を含むことが好ましい。特に、直径が数nmから数十nmの微粒子からなるいわゆる量子ドット蛍光体を含むことが好ましい。量子ドット蛍光体は、量子サイズ効果によって同一材料の微粒子でも粒子径を制御することで可視光線領域において所望の波長帯の蛍光スペクトルを得ることが出来る。また、バンド端による光吸収・蛍光であるため、90%程度の高い外部量子効率を示すことから、高効率・高演色性を有する発光装置を提供することができる。
【0071】
量子ドット蛍光体の材料としては、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeのようなII−VI族化合物半導体ナノ結晶、GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAsのようなIII−V族化合物半導体ナノ結晶、およびこれらの混合物よりなる群から選択されることが好ましい。また、前記混合物は、例えばCdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTeおよびHgZnSTeよりなる群から選択されるか、またはGaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAsおよびInAlPAsよりなる群から選択されることが好ましい。
【0072】
例として、発光素子1としてGaN系の青色LEDを、波長変換層7に含まれる半導体蛍光微粒子としてCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTeのようなII−VI族化合物半導体ナノ結晶、GaN、GaP、AlN、AlP、AlAs、InN、InPのようなIII−V族化合物半導体ナノ結晶を用いた場合には、高輝度な白色光を得られる発光装置を実現できる。
【0073】
また、放熱板4を波長変換層7に接することが好ましい。量子ドット蛍光体は粒子径が小さいため、微粒子の表面を占める原子の割合が多くなることから、化学的安定性の低いものが多く、特に高温環境下での励起蛍光においては、量子ドット蛍光体表面の酸化反応が進行し、急激な発光効率の低下を引き起こすという課題を有する。よって、波長変換層7に量子ドット蛍光体が含まれる場合は、波長変換層7の下層に放熱板4を設け、放熱板4下面が基板2から外部に露出することが好ましい。発光装置の動作時、発光素子1から発する熱は波長変換層7へ放熱されるが、放熱板4下面が外部に露出しているため、積極的に外部へ放熱し波長変換層7に含有される量子ドット蛍光体の温度上昇を防止することができる。
【0074】
次に図10(c)に示すように、発光素子1の側面と基板2の凹部側面2cとの間に第2の充填層8を充填する。ここで、第2の充填層8は、樹脂であることが好ましい。特に酸素を透過しにくいガスバリア樹脂であることが好ましい。具体的には、ナイロン(Ny)類、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を用いても良い。このような構成とすることで、波長変換層7に耐酸化性の低い半導体微粒子蛍光体を用いる場合であっても、波長変換層7は、基板2の凹部底面2b及び発光素子1の底面及び基板2の凹部側面2c及びガスバリア樹脂8によって外気から密閉されるので、波長変換層7の酸化を効率的に抑えることができる。なお第2の充填層8は注入時には液体である為、表面張力により、その上面は発光素子1上面位置より高い位置で山形に盛り上った形状となり、硬化により形状を維持することとなる。また確実に第2の充填層8を発光素子1の側面と基板2の凹部側面2cとの間に充填させるために、基板2の上面2dは発光素子1の上面よりも上方に配置することが好ましい。
【0075】
次に図10(d)に示すように、発光素子1上面と第2の充填層8上面と基板2の上面2dを上方から砥石9で一括して研磨する。研磨により、発光素子1の上面は第2の充填層8から露出する。このようにして図10(e)に示す発光装置を製造する。本発明の発光装置の製造方法によると、従来の発光装置の製造方法と比較し、さらに発光装置の薄型化ができるという効果を発揮する。なお、発光素子1上面と第2の充填層8上面と基板2の上面2dを面一にすることによって、発光装置運搬時や使用時での欠け等を防ぐことができる。また発光素子1と第2の充填層8上面が面一となることにより、発光素子1上面からの出射光と充填材6上面からの出射光の方向性のばらつきを抑えることができる。また研磨という製造方法を取ることによって、発光素子1単体では製造時に取り扱いが困難だった厚み(例えば発光素子厚:150μm以下)への加工が可能となる。
【0076】
なお、実施例2〜5で説明した発光装置についても、同様の方法で製造することができる。
【0077】
また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、複数の実施例における各構成要素を任意に組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、発光素子などを用いた発光装置、特に、PC、照明、薄型テレビ、モバイル携帯機器、携帯電話などに用いられる光や映像の受信、光発信などに用いられる発光装置に関するものである。
【符号の説明】
【0079】
1 発光素子
2 基板
2a 基板凹部
2b 凹部底面
2c 凹部側面
2d 基板上面
3 配線
3a ボンドエリア
3b 外部接続電極
4 放熱板
5 バンプ
6 充填材
7 第1の充填層(波長変換層)
8 第2の充填層(ガスバリア樹脂)
8a 樹脂
8b 樹脂
9 砥石
10 反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と発光素子を備えた発光装置であって、
前記基板は、凹部と、配線とを備え、
前記凹部は、底面と前記底面に接続された側面とからなり、
前記配線の一部は、ボンドエリアであり、
前記配線の他の一部は、外部接続電極であり、
前記凹部内には前記発光素子が配置され、
前記発光素子の下面と前記ボンドエリアはバンプにより電気的に接続されており、
前記凹部の底面と前記発光素子の下面との間、及び前記凹部の側面と前記発光素子の側面との間には充填材が充填されており、
前記発光素子の上面は前記充填材から露出することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記凹部の側面と接続された前記基板の上面、前記充填材の上面及び前記発光素子の上面は面一となっていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記充填材は、前記発光素子の下面と前記凹部の底面との間に配置された第1の充填層と、前記発光素子の側面と前記凹部の側面との間に配置された第2の充填層からなることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1の充填層は、波長変換層であることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記波長変換層には、半導体蛍光微粒子が含まれることを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第2の充填層は、樹脂であることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2の充填層は、前記発光素子よりも光透過率が高いことを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第2の充填層は、前記発光素子側面から前記凹部の側面に至るにつれ、光透過率が高くなることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記基板は、前記発光素子の下方に放熱板を備え、
前記放熱板は前記充填材と接していることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−98278(P2013−98278A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238357(P2011−238357)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】