説明

発光部及び印刷装置

【課題】印刷装置等における露光に充分な光量を得ることができる発光部を提供すること。
【解決手段】所定の間隔でアレイ状に配置され且つ基板21及び封止基板28によって気密に封止された複数の有機EL素子20Aを具備するEL発光部であって、前記有機EL素子20Aは、光を発する有機EL素子20Aと、前記有機EL素子20Aが発した光を反射集光する為の集光導光部56と、前記集光導光部56が反射集光した光を、所定の方向に放射する為の下向き放射反射部55と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を具備し、露光等に用いられる発光部及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機EL素子を具備するEL発光部を露光に利用する印刷装置が知られている。これに関連する技術として、例えば特許文献1には、有機EL素子を具備する露光装置及び画像形成装置が開示されている。前記特許文献1に開示されている技術では、有機EL素子と感光体とがレンズを介して一定の距離をおいて設置され、前記有機EL素子からのフォーカスされた光によって前記感光体上に静電潜像が形成される。
【特許文献1】特開2004−327217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、有機EL素子を具備するEL発光部を露光に利用する印刷装置等は、有機EL素子に特有の問題を抱えている。すなわち、印刷装置等における感光体にとって必要な光量を得る為には、発光強度が本来弱い有機EL素子を用いる場合には露光の時間を長くしなければならず、結果として印刷時間が遅くなってしまう。ここで、印刷時間を短縮する為に有機EL素子の瞬間発光強度を強くすると、印刷時間を短縮することはできるが、過電流制御によって当該有機EL素子の寿命が短くなってしまう。なお、前記特許文献1に開示されている技術は、このような問題を解決するものではない。
【0004】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、単純な導波路構造を有する有機EL素子を用いたEL発光部でありながら、印刷装置等における露光に充分な光量を得ることができるEL発光部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による発光部は、
基板上に形成され、上方に光を発する複数の発光素子と、
前記発光素子が発した光を集光する為の集光導光部と、
前記集光導光部から集光された光を、前記基板を介して出射するように反射する放射反射部と、
を有することを特徴とする。
【0006】
前記発光部は、
前記複数の発光素子における前記放射反射部が全て直線上に並ぶように、前記複数の発光素子は前記直線を軸として互い違いに2列に配置されるようにしてもよい。
【0007】
前記集光導光部は、前記発光素子の発光面に対して傾斜している楔形状部を有するようにしてもよい。
【0008】
前記集光導光部は、複数の反射面を備えていることが好ましく、特に側面及び上面を反射面とすることが好ましい。
【0009】
また、印刷装置であって上記発光部を有することを特徴とする。
前記の目的を達成するために、本発明の第2の態様による発光部は、
基板上に形成され、上方に光を発する複数の発光素子と、
前記発光素子が発した光を集光する為の集光導光部と、
前記集光導光部から集光された光を、前記基板を介して出射するように反射する放射反射部と、
をそれぞれ備えた第一発光アレイ及び第二発光アレイを有し、
前記第一発光アレイの放射反射部及び前記第二発光アレイの放射反射部が互いに対向して一つの光出射領域に光を出射することを特徴とする。
【0010】
前記発光部は、
前記複数の発光素子における前記放射反射部が全て直線上に並ぶように、前記複数の発光素子は前記直線を軸として互い違いに2列に配置されるようにしてもよい。
【0011】
前記集光導光部は、前記発光素子の発光面に対して傾斜している楔形状部を有するようにしてもよい。
【0012】
前記集光導光部は、複数の反射面を備えていることが好ましく、特に側面及び上面を反射面とすることが好ましい。
【0013】
また、印刷装置であって上記発光部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、印刷装置等における露光に充分な光量を得ることができる発光部を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るEL発光部及び印刷装置を説明する。
【0016】
図1は、本第1実施形態に係るEL発光部を用いた印刷装置の構成の一例を示す図である。まず、図1に示すように、本第1実施形態に係るEL発光部を用いた印刷装置は、感光体ドラム1と、本第1実施形態に係るEL発光部2Aとロッドレンズアレイ2Bとから成る露光部2と、帯電ローラ3と、イレーサ光源感光体4と、クリーニング部材5と、現像ローラ6aを含む現像器6と、転写ローラ8と、定着ローラ9と、搬送ベルト11とを具備している。なお、参照符号7が付されているのは印刷用紙である。
【0017】
前記感光体ドラム1は負帯電型OPC(Organic Photo Conductor)感光体(有機感光体)である。このことに鑑みて、前記帯電ローラ3は負帯電器とされている。また、前記現像器6は負帯電トナーで現像を行う現像器である。また、前記EL発光部2Aは、詳しくは後述するが、複数の有機EL素子がアレイ状に配列されて構成されている。
【0018】
ところで、図1に示す印刷装置では、おおまかには以下のような工程により印刷が行われる。まず、前記帯電ローラ3が回転する感光体ドラム1の表面に接触することによって、前記感光体ドラム1の接触した表面が一様に負電位となるように帯電される。続いて、前記EL発光部2Aによって、前記ロッドレンズアレイ2Bを介して前記感光体ドラム1に対して光照射が為され、前記感光体ドラム1上には静電潜像が形成される。その後、前記現像器6によって、前記静電潜像にトナーが付着される。そして、前記転写ローラ8によって、前記静電潜像に付着しているトナーが前記印刷用紙7に転写される。以下、このような印刷工程を詳細に説明する。
【0019】
まず、前記感光体ドラム1は、帯電用電源(不図示)から供給される負電位であって且つ後述する現像器6で出力される現像電圧に比較的近似している或いは等しい電位の初期化帯電電圧を、前記帯電ローラ3によって印加される。これにより、前記感光体ドラム1における周表面は一様に負帯電され、電位的に初期化される(初期化帯電状態となる)。
【0020】
そして、周表面が初期化帯電状態となった前記感光体ドラム1には、前記EL発光部2Aによって、印字情報に従った光書き込み(露光)が行われる。これにより、露光が行われないために初期化帯電状態のままの前記初期化帯電部と、前記露光によって初期化帯電部より相対的に高い負電位である−50(V)程度の露光帯電電圧が印加されて帯電された露光帯電部とから成る静電潜像が、前記感光体ドラム1の周表面上に形成される。
【0021】
ここで、前記現像器6内に収容されている弱いマイナス電位に帯電したトナーが、前記現像ローラ6aによって、前記現像ローラ6aと前記感光体ドラム1との対向部に回転搬送される。このとき、前記現像ローラ6aは、不図示の電源から、前記露光帯電部よりもさらに低い−250(V)程度の現像電圧を印加される。したがって、前記感光体ドラム1における前記静電潜像の−50(V)程度の露光帯電部では、現像電圧よりも200(V)程度高電位となり、初期化帯電部では、現像電圧との差が200(V)よりも絶対値が十分小さい電圧になる。
【0022】
これらの静電潜像における現像電圧との電位差の違いにより、前記現像ローラ6aに対して相対的にプラス極性の電位となった前記静電潜像における前記露光帯電部には、マイナス極性に帯電しているトナーが付着してトナー像が形成されるのに対し、前記初期化帯電部には、トナーを静電的に吸引する程の電界が生じないのでトナーが付着しない。このトナー像は、前記感光体ドラム1の回転によって、前記感光体ドラム1と前記転写ローラ8とが対向している転写部へと搬送される。
【0023】
なお、上述したようにして形成されたトナー像におけるトナー付着量(現像された画像の濃度)は、前記EL発光部2Aによる前記感光体ドラム1への露光量に応じて生じる前記感光体ドラム1の周表面上における電位、つまり現像電圧との電位差によって決定される。
【0024】
ところで、上述したように前記トナー像が前記転写部へ搬送されると、前記搬送ベルト11によって、前記印刷用紙7が前記転写部へ搬送される。そして、前記転写部においては、前記トナー像が前記印刷用紙7上に、前記転写ローラ8によって転写される。このようにして前記トナー像を転写された前記印刷用紙7は更に下流に搬送され、前記トナー像が前記定着ローラ9によって熱定着された後、前記印刷用紙7は当該印刷装置の外部へ排出される。
【0025】
以下、EL発光部2Aの基本的な構造について、図2〜4を参照して説明する。ここで、EL発光部2Aは、主として発光を放射する有機EL素子20Aと、主として前記有機EL素子20Aが発した光の進行方向を所定の方向に設定し、出射させる導光部50と、主として前記有機EL素子20Aの発光制御を電気的に行う駆動回路部40とから成る。
【0026】
有機EL素子20Aは、図2に示すようにガラス等の基板21上に形成され、ガラス等の封止基板28によって封止されている。具体的には、基板21上に有機EL素子20Aとして、光反射性のアノード電極23、正孔輸送層(HTL)24、発光層25、電子輸送層(ETL)26、及び光透過性のカソード電極27がこの順にて形成されている。ここで、正孔輸送層24、発光層25、電子輸送層(ETL)26が有機化合物からなる有機EL層となる。この有機EL層は、上記に限らず、例えば、正孔輸送層及び電子輸送性発光層でもよく、正孔輸送兼電子輸送性発光層のみでもよく、正孔輸送性発光層及び電子輸送層でもよく、また、間に適宜担体輸送層が介在してもよく、その他の担体輸送層の組合せであってもよい。
【0027】
また前記アノード電極23は、下層側に設けられたアルミニウム合金等の反射金属層と、上層側に設けられた錫ドープ酸化インジウム(Indium Thin Oxide;ITO)や亜鉛ドープ酸化インジウム等の透明電極材料からなる透明な導電性酸化金属層と、の積層構造であってもよく、アルミニウム合金等の反射金属層の単層であってもよい。
【0028】
前記カソード電極27は、下層側に設けられたバリウム、マグネシウム、リチウム等の仕事関数の低い電子注入層と、上層側に設けられた上記と同様の透明な導電性酸化金属層と、の積層構造であってもよい。
【0029】
そして、前記アノード電極23と前記カソード電極27との間に、所定の電圧が掛けられることで、前記アノード電極23から正孔が、前記カソード電極27から電子が、前記発光層25に注入され、前記発光層25にて正孔と電子とが再結合して発光する。この発光によって生じた光hν100は、光透過性の前記カソード電極27を通過して上方向に向けて完全拡散放射する。
【0030】
ところで、このように前記有機EL素子20Aが図3、4に示すように、一対の基板(前記基板21と封止基板28と)に挟まれている場合、当然ながら基板間での発光となるので、光取り出し効率を高める為に以下のような工夫が為されている。
【0031】
例えば、前記基板21上に形成された複数の有機EL素子毎に光ファイバ機能を持たせることで、前記基板21の表面に擬似発光体を形成する。このようにファイバ機能を持たせる為には、例えばフォトニック結晶ファイバを適用することができる。このフォトニック結晶ファイバは、中心のコアの周囲に、コアと同一の材質空気孔を結晶のように整然と並べることで屈折率がコアと異なるクラッドが設けられており、光を反射させている。
【0032】
また、フェムト秒レーザーの集光照射によって誘起される屈折率変化を利用することで、前記基板21内部にファイバを直接形成してもよい。さらには、ファイバオプティクプレート(浜松ホトニクス(株)製)を用いても勿論よい。
【0033】
ところで、本第1実施形態においては、前記EL発光部2Aと前記ロッドレンズアレイ2Bとから成る露光部2によって、該露光部2からミリオーダーの距離を隔てた前記感光体ドラム1上に小径の光スポットを形成し、各ドットを解像する光ビームを作る。以下、前記露光部2の詳細な構成を、前記露光部2の外観を示す図である図3を参照して説明する。
【0034】
前記EL発光部2Aには、複数の前記有機EL素子20Aがアレイ状に配列されている。ここで、前記有機EL素子20Aは、前記基板21と前記封止基板28との間に挟まれて存在しており、導光部50によって進行方向を制御された光が、基板21の光出射領域33から基板21外へ放射する。したがって、図3においては不図示となっているが、前記有機EL素子20Aと光出射領域33とは一対一対応の関係であるので、前記有機EL素子20Aの配列は同図から容易に推測できる。
【0035】
すなわち、前記EL発光部2Aには、図1に示す前記感光体ドラム1への露光走査の主走査方向(前記感光体ドラム1の幅方向つまり前記印刷用紙7の幅方向)に並ぶように複数の有機EL素子20Aが配設され、有機ELアレイを形成している。この有機ELアレイは、当該印刷装置が、例えばA4サイズの印刷用紙を縦方向に用いてその幅一杯に印字密度1200dpi(ドット/インチ)で印字可能な印刷装置の場合であれば、およそ14000個の有機EL素子を備えている。そして、これらの個々の有機EL素子20Aには、ホスト機器(不図示)から出力される印字情報に従ったパルス電圧が印加される。すなわち、個々の有機EL素子20Aは、選択的に発光制御される。
【0036】
このように、前記光出射領域33は、前記有機EL素子20Aの発する光を前記基板21の外部へ出射させる為に、前記基板21に設けられた領域である。
【0037】
また、各有機EL素子20Aは、図3に示す制御ケーブル31A,31Bによって、前記ホスト機器(不図示)と電気的に接続されている。ここで、前記制御ケーブル31A,31Bと、前記有機EL素子20Aとの接続方法に関しては、前記有機EL素子20Aを駆動させることができる接続方法であればどのような接続方法であってもよい。
【0038】
ところで、前記基板21と前記封止基板28との間に設けられている前記有機EL素子20Aは、図3に示すようにシール材29によって周囲を封止されている。
【0039】
以下、図4を参照して、本第1実施形態に係るEL発光部2Aの詳細な構造を説明する。
【0040】
図4に示すように、前記有機EL素子20Aは、前記基板21上に形成され、前記封止基板28によって封止されている。ここで、前記封止基板28には、同図に示すように樹脂コーティングによって導波路加工層70が形成されている。そして、この導波路加工層70には、各有機EL素子20Aに対応するように複数の導光部50が形成されている。また、前記基板21と前記導光部50との間には、有機EL素子20Aが形成されている。さらに、前記有機EL素子20Aには、駆動回路部40が電気的に接続して設けられている。以下、前記有機EL素子20Aと前記導光部50と前記駆動回路部40とを有するEL発光部2Aの構造を詳細に説明する。
【0041】
前記導光部50は、前記導波路加工層70の下面に形成された楔形の凹部の表面に被膜された反射膜59と、コア光学樹脂から成る楔形導波路57とを備え、これら部材は、有機EL素子20Aからの光を集光する集光導光部56と、集光導光部56で集光された光を光出射領域33側に反射する下向き放射反射部55とに分割される。
【0042】
前記駆動回路部40は、ソース電極42と、ドレイン電極41と、ゲート電極43と、半導体44と、ゲート絶縁層45と、層間絶縁層46とから成る。
【0043】
なお、前記駆動回路部40に関しては本発明の特徴部ではないので詳細な説明は省略するが、本第1実施形態においては、前記駆動回路部40におけるソース電極42と、ドレイン電極41と、ゲート電極43を備えるTFTトランジスタに画像信号を出力することで、前記EL発光部2Aが適宜ライン状に適宜発光し、この動作を繰り返すことによって回転する前記感光ドラム1の表面に2次元的な静電潜像を形成する。
【0044】
つまり、TFTトランジスタが前記有機EL素子20Aに流す電流の電流値を制御することによって、前記EL発光部2Aの発光輝度を制御する。ここで、例えば、前記カソード電極27は零ボルトに固定され、前記アノード電極23は前記TFTトランジスタに電気的に接続される。
【0045】
前記有機EL素子20Aの下面には反射層22が設けられており、前記有機EL素子20Aの発光による光線51は、図4に示すように前記有機EL素子20Aの上方に位置する前記集光導光部56において、前記集光導光部56の上面及び側面の前記反射膜59及び前記反射層22を反射面とし、これらの反射面の間で反射を繰り返していく間に、前記下向き放射反射部55に向かうように光の指向性が制御されている。なお、前記反射層22は、ゲートメタルを用いて前記ゲート電極43と一括パターニングして形成してもよいし、別途形成することなく、前記アノード電極23に光反射性をもたせることによって代替とすることができる。そして、前記集光導光部56によって反射集光された光は、前記下向き放射反射部55によって、前記基板21の所定位置に設けられた光出射領域33に向けて反射される。すなわち、前記集光導光部56によって反射集光された光は、前記下向き放射反射部55によって、前記基板21の前記光出射領域33が形成されている面方向に対して、例えば図4に示すように略垂直に入射するように照射される。
【0046】
ところで、一般的に有機EL素子のカソード電極は酸素、水分によって酸化されやすい。したがって、前記有機EL素子20Aの前記カソード電極27の酸化を防ぐ為に、例えば以下のような封止処理を行うことで、有機EL素子が、水分を含む外気に直接触れることが無いようにする。
【0047】
すなわち、前記有機EL素子20A及び前記駆動回路部40上には、図4に示すように透明の封止膜34が形成されている。換言すれば、前記有機EL素子20A及び前記駆動回路部40は前記封止膜34によって封止されている。さらに、前記封止膜34上には、図4に示すようにUV硬化性エポキシ系樹脂(屈折率1.5)によって透明の平坦化層35が形成されている。すなわち、前記平坦化層35によって前記有機EL素子20A及び前記駆動回路部40の平坦化処理が為されている。前記封止膜34及び前記平坦化層35は、前記導光部50からの光を前記光出射領域33に伝搬する光路としての機能も兼ね備えている。
【0048】
ところで、本第1実施形態によれば、このような構造は、酸素や水分の影響を受けやすい前記有機EL素子20Aを、酸素や水分を含み得る外気に触れることの無いよう気密に封止することができるという利点も有する。
【0049】
以下、前記有機EL素子20A及び前記導光部50を構築する際の留意点について説明する。
【0050】
まず、前記基板21上に、複数の前記有機EL素子20Aをアレイ状に構築する際には、前記有機EL素子20Aの有機EL発光面61の前記封止基板28側から見たときの形状が、副走査方向(紙搬送方向)を長手方向とし、長手方向と直交する方向を短手方向とする長方形となるようにする。これにより、隣接する前記有機EL素子20Aの間隔を短くして高精細なピッチとするとともに前記有機EL素子20Aにおける発光面積を大きくすることができる。なお、図5及び図6に示す前記有機EL発光面61とは、前記有機EL素子20Aにおける上面(前記楔形導波路57に対向する面)であって前記有機EL素子20Aから光が放出される面を意味する。
【0051】
また、前記導光部50を形成する際には、まず図5及び図6に示す前記楔型導波路57と同型の楔型形状金型を、前記封止基板28に堆積された未硬化の導波路加工層70となる樹脂に押しつけた後、樹脂を硬化して、前記導波路加工層70に対してアレイ状にインプリントした凹部を形成する。なお、このインプリントにおいては、アレイ状に構築された複数の前記有機EL素子20Aに対して、前記楔形導波路57が一対一で対応するように、前記導波路加工層70に対して前記楔形導波路57をアレイ状にインプリントする。
【0052】
そして、前記導波路加工層70にインプリントされた凹部の内壁に、図4に示すように反射膜59を形成する。その後、コア光学系樹脂(例えばポリカーボネイト:屈折率1.6)を充填して、前記有機EL素子20Aとの境界面を平坦化した前記楔形導波路57を形成する。その後、前記導光部50と前記有機EL素子20Aとを貼り合わせることによって、前記有機EL素子20Aが形成される。
【0053】
以上説明したような形成工程によって、前記有機EL素子20Aのアレイを形成していく。なお、上述したように前記有機EL素子20Aのアレイと前記導光部50とを別工程にて作成した後に貼り合わせる方法以外にも、前記有機EL素子20Aのアレイを形成した後、前記有機EL素子20Aに前記導光部50を積層する方法を採っても勿論よい。
【0054】
ところで、当該印刷装置における印字密度を例えば1200dpiとする場合、前記有機EL素子20Aの素子ピッチは約21μm、素子幅は約10μmとなる。したがって、前記有機EL素子20A及び前記導波路部50を製造する上で、高精細に製造する必要となる。
【0055】
ここで、前記有機EL素子20Aのアレイは、当然ながら主走査方向(紙搬送方向)に関して等間隔に配置されることが必要である。逆に言えば、各有機EL素子20Aの主走査方向における間隔さえ等間隔とすれば、必ずしも前記有機EL素子20Aを一列に配列しなくても良い。このことに鑑みて、本第1実施形態においては前記有機EL素子20Aを以下のように配列する。
【0056】
すなわち、図7に示すように前記下向き放射反射部55が、前記光出射領域33が主走査方向に沿って配列するときの配列軸58上に前記光出射領域33が一列に配列するとともに、前記配列軸58の左右に互い違いに前記有機EL素子20Aのアレイを配列する。このとき、前記光出射領域33のピッチをXとすると、前記光出射領域33の前記配列軸58方向に隣接する前記有機EL素子20Aの前記有機EL発光面61のピッチを2Xとすることができる。換言すれば、前記光出射領域33を2Y(例えば1200)dpiとする場合、前記光出射領域33の前記配列軸58方向に隣接する前記有機EL素子20Aの前記有機EL発光面61を、Y(例えば600dpi)となるような幅にすることができる。
【0057】
より具体的には、図7に示すように、主走査方向における前記有機EL発光面61の寸法を30μmとし、主走査方向における前記楔形導波路57の寸法を10μmとし、主走査方向における隣接する有機EL素子20A間の寸法を10μmとする。そして、前記有機EL素子20Aを上述したように互い違いに配置する。これにより、前記有機EL素子20Aを構築する際に、通常必要とする主走査方向の密度の半分の密度で前記有機EL素子20Aをアライメントすればよくなる。したがって、前記有機EL素子20Aのアライメント精度、すなわち前記有機EL素子20A及び前記導光部50のアライメント精度に余裕をもたせることができる。また、例えば前記有機EL素子20Aと前記導光部50とを貼り合わせる構造を形成する際に、主走査方向においては約±10μmの誤差を吸収することができる。
【0058】
以下、シミュレーションソフト(光線追跡)による、10μm×10μmの発光面積を有する発光体が基板間にて発光した場合にガラス外部へ取り出される光量と、本第1実施形態に係るEL発光部2Aにおける1つの前記有機EL素子20Aからの光量(光の出射端面は10μm×10μmとする)との比較結果を記す。
【0059】
なお、各ロッドレンズは、その中心部から周辺部にかけて放物線状の屈折率分布を有する。通常、前記ロッドレンズアレイ2Bは、ロッドレンズが1列または2列に規則正しく精密に配列され、2枚のフレーム板にて挟み込まれて利用される。また、ロッドレンズは各光学パラメータ(作動距離lo,入射角θo,共役長TC等)により各種存在するが、通常のロッドレンズは、レンズ径は0.5〜1mm、入射角θoは約20°、作動距離loは2〜5mm程度である。
【0060】
ここで、本シミュレーションにおいては、代表的光学パラメータが下記の値であるロッドレンズを想定した。すなわち、図8に示すように、前記ロッドレンズアレイ2Bはロッドレンズが2列で構成され、レンズ径は0.5mm、入射角はθo=20°、作動距離lo=2.5mmとする。そして、前記ロッドレンズアレイ2Bが取り込める光量は、直径2mmの円形の受光体に入射する光の光量であるとする。
【0061】
本シミュレーションの結果、本第1実施形態に係るEL発光部2Aにおける1つの前記有機EL素子20Aからの光量(光の出射端面は10μm×10μmとする)は、10μm×10μmの発光面積を有する発光体が基板間にて発光した場合にガラス外部へ取り出される光量の約10倍となった。この結果から、本第1実施形態に係るEL発光部2Aの具備する前記有機EL素子20Aに特有の構造は、光取り出し効率を非常に高めることが分かる。
【0062】
なお、図4に示す前記有機EL素子20Aにおける主要な各部の寸法は、図9に示す通りである。すなわち、前記集光導光部56の副走査方向(紙搬送方向)における長さは200μmであり、前記下向き放射反射部55の副走査方向(紙搬送方向)における長さは15μmである。また、前記楔形導波路57の高さ(主走査方向と副走査方向とに垂直な方向における長さ)は15μmである。さらに、前記封止基板28の高さは700μmであり、前記導波路加工層70の高さは20μmであり、前記基板21の高さは700μmであり、前記平坦化層35における最も高い箇所における高さは3μmである。なお、前記HTL24、前記発光層25、及び前記ETL26に関しては、紙面の大きさの都合上、図9においては有機EL発光層200としてまとめて1つの層として表現されている。
【0063】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、単純な導波路構造にて露光部として必要十分な光量を得ることができ、さらに製造時における有機EL素子のアライメント精度にある程度の余裕を持つEL発光部を提供することができる。
【0064】
具体的には、本第1実施形態に係るEL発光部によれば、前記有機EL発光面61からの光を前記集光導光部56にて反射集光し、前記下向き放射反射部55によって放射する構造とすることで出射光の進行方向を制御でき、且つ単純な導波路構造によって露光部として十分な光量を得ることができる。
【0065】
また、当該EL発光部における前記有機EL素子20Aの配置を、図7に示すように2列配置且つ千鳥配置とすることによって、主走査方向における前記有機EL素子20Aの密度を半分にすることができる。これにより、前記有機EL素子20Aのアライメント精度に余裕をもたせることができる。
【0066】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係るEL発光部を説明する。なお、前記第1実施形態に係るEL発光部との相違点のみを説明する。
【0067】
前記第1実施形態に係るEL発光部では、図7を参照して説明したように、印字密度を600dpiとする場合の素子ピッチ及び素子幅である前記有機EL素子20Aのアレイを2列、前記下向き放射反射部55に関しては1200dpiとする場合の素子ピッチとなるように、千鳥配置した。
【0068】
一方、本第2実施形態に係るEL発光部では、2つの前記導光部50を、図10に示すように副走査方向に関して前記下向き放射反射部55が互いに対向して隣接するように配置する。そして、図10に示すように前記有機EL発光面61(Top viewにおける斜線部)は、2つの前記楔形導波路57の双方に架かるように設ける。つまり、本第2実施形態においては、1つの前記有機EL発光面61に対して2つの導光部50を、副走査方向に関して前記下向き放射反射部55が互いに隣接するように設ける。このため2つの前記放射反射部55からの光が1つの前記光出射領域33から出射する。つまり、1つの前記光出射領域33に対して二つの前記有機EL素子20Aが設けられている。
【0069】
前記のような構造を採らせることで、本第2実施形態に係るEL発光部では、前記有機EL発光面61の面積を、前記第1実施形態におけるそれに比べて約2倍の面積とすることができる。したがって、得られる光量も当然に2倍となる。
【0070】
また、前記第1実施形態において行ったシミュレーションと同様のシミュレーションを行った結果、本第2実施形態に係るEL発光部2Aにおける1つの有機EL素子からの光量(光の出射端面は10μm×10μmとする)は、10μm×10μmの発光面積を有する発光体が基板間にて発光した場合にガラス外部へ取り出される光量の約20倍となった。
【0071】
なお、上述したような本第2実施形態に特有の構造を採らずに、単純に前記有機EL発光面61の面積を2倍にした場合、前記楔型導波路57の前記集光導光部56におけるスロープ角度が緩くなってしまう。この場合、前記有機EL発光面61から見ると、前記集光導光部56における光の反射角が大きくなってしまう。つまり、前記集光導光部56における集光効率が悪くなるので、前記有機EL発光面61の面積を2倍にしたにも関わらず、結果として前記光出射領域33を出射する光量はほとんど変化しない。
【0072】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、単純な導波路構造にて露光部として十分な光量を得ることができ、さらに前記第1実施形態に係るEL発光部に比べて2倍の光量を得ることができるEL発光部を提供することができる。
【0073】
以上、第1実施形態及び第2実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0074】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態に係るEL発光部を用いた印刷装置の一構成例を示す図。
【図2】有機EL発光体の基本構造を説明する図。
【図3】本発明の第1実施形態に係るEL発光部を用いた印刷装置の露光部の外観を概略的に示す図。
【図4】本発明の第1実施形態に係るEL発光部における有機EL素子の構造を示す図。
【図5】本発明の第1実施形態に係るEL発光部の有する有機EL素子の導光部における楔型導波路の形状を示す図。
【図6】本発明の第1実施形態に係るEL発光部の有する有機EL素子の導光部における楔型導波路の形状を示す図。
【図7】本発明の第1実施形態に係るEL発光部における有機EL素子の配置例を示す図。
【図8】シミュレーションにおいて想定したロッドレンズの代表的光学パラメータを示す図。
【図9】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子における主要な各部の寸法を示す図。
【図10】本発明の第2実施形態に係るEL発光部における有機EL素子の配置例を示す図。
【符号の説明】
【0077】
1…感光体ドラム、 2A…EL発光部、 2B…ロッドレンズアレイ、 3…帯電ローラ、 4…イレーサ光源感光体、 5…クリーニング部材、 6…現像器、 6a…現像ローラ、 7…印刷用紙、 8…転写ローラ、 9…定着ローラ、 11…搬送ベルト、 20A…有機EL素子、 21…基板、 22…反射層、 23…アノード電極、 24…正孔輸送層、 25…発光層、 26…電子輸送層、 27…カソード電極、 28…封止基板、 29…シール材、 20A…有機EL素子、 31A,31B…制御ケーブル、 33…光出射領域、 34…封止膜、 35…平坦化層、 40…駆動回路部、 41…ドレイン電極、 42…ソース電極、 43…ゲート電極、 44…半導体、 45…ゲート絶縁層、 46…絶縁層、 50…導光部、 53…反射膜、 55…下向き放射反射部、 56…集光導光部、 57…楔型導波路、 58…配列軸、 59…反射膜、 61…EL発光面、 70…導波路加工層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成され、上方に光を発する複数の発光素子と、
前記発光素子が発した光を集光する為の集光導光部と、
前記集光導光部から集光された光を、前記基板を介して出射するように反射する放射反射部と、
を有することを特徴とする発光部。
【請求項2】
前記複数の発光素子における前記放射反射部が全て直線上に並ぶように、前記複数の発光素子は前記直線を軸として互い違いに2列に配置されることを特徴とする請求項1に記載の発光部。
【請求項3】
前記集光導光部は、前記発光素子の発光面に対して傾斜している楔形状部を有することを特徴とする請求項1に記載の発光部。
【請求項4】
前記集光導光部は、複数の反射面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の発光部。
【請求項5】
請求項1に記載の発光部を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
基板上に形成され、上方に光を発する複数の発光素子と、
前記発光素子が発した光を集光する為の集光導光部と、
前記集光導光部から集光された光を、前記基板を介して出射するように反射する放射反射部と、
をそれぞれ備えた第一発光アレイ及び第二発光アレイを有し、
前記第一発光アレイの放射反射部及び前記第二発光アレイの放射反射部が互いに対向して一つの光出射領域に光を出射することを特徴とする発光部。
【請求項7】
前記集光導光部は、前記発光素子の発光面に対して傾斜している楔形状部を有することを特徴とする請求項6に記載の発光部。
【請求項8】
前記集光導光部は、複数の反射面を備えていることを特徴とする請求項6に記載の発光部。
【請求項9】
請求項6に記載の発光部を有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−87304(P2008−87304A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269915(P2006−269915)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】