説明

発振回路

【課題】 発振トランジスタ側の負性抵抗を周波数が離れた2つの周波数帯でも十分に得られるようにして、何れの周波数帯でも安定して発振させる
【解決手段】 発振トランジスタ20のベース−コレクタ間に介挿される共振回路26は周波数が異なる2つの周波数帯に対応して共振周波数が切り替えられるように構成され、ベース−エミッタ間に介挿される第1の帰還手段24又はエミッタ−コレクタ間に介挿される第2の帰還手段25の少なくとも一方を3個のリアクタンス素子を直並列に接続して2つの周波数帯で共に誘導性又は容量性を呈するように構成すると共に、帰還手段の他方を2つの周波数帯で一方の帰還手段と同じく誘導性又は容量性とし、2つの周波数帯で発振させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる周波数帯で安定に発振する発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
FM・TV音声受信機やデュアルバンド対応携帯電話の局部発振器等に使用される従来の発振回路を図9を参照して説明する。トリマコンデンサ1はスイッチ2により断続され、スイッチ2にて接地されたとき発振コイル3とコイル4の直列回路に並列に接続され、スイッチ2はコイル4をショートするように共用される。発振コイル3とコイル4の直列回路はパディング用コンデンサ8とバリコン5の直列回路に並列に接続されており、パディング用コンデンサ8がスイッチ6にてショートされるようになっている。
【0003】
発振用トランジスタ10のベースはコンデンサ9を介してパディングコンデンサ8の一端に接続されている。発振用トランジスタ10のベース−エミッタ間にはコンデンサ14が接続されており、コンデンサ14に並列にスイッチ13によってコンデンサ12が断続されるようになっている。発振用トランジスタ10のエミッタは抵抗18とコンデンサ17にて接地されている。コレクタはベースとの間に抵抗11を有し、コンデンサ15で接地されると共に抵抗16を通して電源が供給される。ベースは抵抗19で接地される。発振出力はコンデンサ7を介して混合器に注入される。
【0004】
この局部発振器は、発振用トランジスタ10のベース・エミッタ間コンデンサ14にFMバンド時にコンデンサ12をスイッチ13で並列に接続して発振周波数の確保及び安定度を両立させている。TV4〜12ch時にはスイッチ2がTV側にONし、接地される。スイッチ6はOFFとなり、パディングコンデンサ8により下限周波数が制限される。FMバンドにスイッチ2はFM側にONし、トリマコンデンサ1が接地される。また、スイッチ6とスイッチ13はONの状態する。スイッチ6がONすることにより、コンデンサ12がトランジスタ10のベース・エミッタ間に接続され、安定した発振が得られる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−264924号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の発振回路では、発振周波数が低いバンドでは発振トランジスタ側の負性抵抗値が不足して発振の安定度が低下するので、発振周波数が低いバンド時に発振トランジスタのベース・エミッタ間の容量値を大きくして発振の安定度を確保している。しかし、そのためにスイッチと、スイッチを制御するための回路が必要となり、回路が複雑になる。
【0007】
本発明は、発振トランジスタ側の負性抵抗を周波数が離れた2つの周波数帯でも十分に得られるようにして、何れの周波数帯でも安定して発振させるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する第1の手段として、発振トランジスタと、前記発振トランジスタのコレクタとベースとの間に介挿された共振回路と、前記発振トランジスタのベースとエミッタとの間に介挿された第1の帰還手段と、前記発振トランジスタのコレクタとエミッタとの間に介挿された第2の帰還手段とを備え、前記共振回路は周波数が異なる2つの周波数帯に対応して共振周波数が切り替えられるように構成され、前記第1の帰還手段又は前記第2の帰還手段の少なくとも一方を3個のリアクタンス素子を直並列に接続して前記2つの周波数帯で共に誘導性又は容量性を呈するように構成すると共に、前記帰還手段の他方を前記2つの周波数帯で前記一方の帰還手段と同じく誘導性又は容量性とした。
【0009】
また、第2の解決手段として、前記第1の帰還手段又は前記第2の帰還手段の何れか一方を第1の容量素子で構成し、他方を、互いに並列接続された第2の容量素子と第1のインダクタンス素子とからなる並列共振回路と、前記並列共振回路に直列接続された第3の容量素子とから構成した。
【0010】
また、第3の解決手段として、前記第1の帰還手段及び前記第2の帰還手段のそれぞれを、互いに並列接続された第2の容量素子と第1のインダクタンス素子とからなる並列共振回路と、前記並列共振回路に直列接続された第3の容量素子とから構成した。
【0011】
また、第4の解決手段として、前記第1の帰還手段又は前記第2の帰還手段の何れか一方を第1の容量素子で構成し、他方を、互いに直列接続された第4の容量素子と第2のインダクタンス素子からなる直列共振回路と、前記直列共振回路に並列接続された第5の容量素子とから構成した。
【0012】
また、第5の解決手段として、前記第1の帰還手段及び前記第2の帰還手段のそれぞれを、互いに直列接続された第4の容量素子と第2のインダクタンス素子とからなる直列共振回路と、前記直列共振回路に並列接続された第5の容量素子とから構成した。
【0013】
また、第6の解決手段として、前記共振回路はインダクタと前記インダクタに並列に結合された容量手段とを有し、前記インダクタのインダクタンス値を前記2つの周波数帯で異なるように切り替えた。
【0014】
また、第7の解決手段として、前記容量手段をバラクタダイオードで構成し、前記バラクタダイオードに発振周波数可変用の制御電圧を印加した。
【発明の効果】
【0015】
第1の手段によれば、共振回路は周波数が異なる2つの周波数帯に対応して共振周波数が切り替えられるように構成され、第1の帰還手段又は第2の帰還手段の少なくとも一方を3個のリアクタンス素子を直並列に接続して2つの周波数帯で共に誘導性又は容量性を呈するように構成すると共に、帰還手段の他方を2つの周波数帯で一方の帰還手段と同じく誘導性又は容量性としたので、帰還手段の容量値又はインダクタンス値を切り替えることなく2つの周波数帯で発振トランジスタ側を負性抵抗とすることができ、2つの周波数帯で安定して発振させることができる。
【0016】
また、第2の解決手段によれば、第1の帰還手段又は第2の帰還手段の何れか一方を第1の容量素子で構成し、他方を、互いに並列接続された第2の容量素子と第1のインダクタンス素子とからなる並列共振回路と、この並列共振回路に直列接続された第3の容量素子とから構成したので、最少の回路部品数で帰還手段の等価的な容量値を切り替えられるコルピッツ発振回路を構成できる。
【0017】
また、第3の解決手段によれば、第1の帰還手段及び第2の帰還手段のそれぞれを、互いに並列接続された第2の容量素子と第1のインダクタンス素子とからなる並列共振回路と、並列共振回路に直列接続された第3の容量素子とから構成したので、2つの帰還手段の等価的な容量値が共に切り替えられ、一層安定度に優れたコルピッツ発振回路を構成できる。
【0018】
また、第4の解決手段によれば、第1の帰還手段又は第2の帰還手段の何れか一方を第1の容量素子で構成し、他方を、互いに直列接続された第4の容量素子と第2のインダクタンス素子とからなる直列共振回路と、この直列共振回路に並列接続された第5の容量素子とから構成したので、最少の回路部品数で帰還手段の等価的な容量値を切り替えられるコルピッツ発振回路を構成できる。
【0019】
また、第5の解決手段によれば、第1の帰還手段及び第2の帰還手段のそれぞれを、互いに直列接続された第4の容量素子と第2のインダクタンス素子とからなる直列共振回路と、この直列共振回路に並列接続された第5の容量素子とから構成したので、2つの帰還手段の等価的な容量値が共に切り替えられ、一層安定度に優れたコルピッツ発振回路を構成できる。
【0020】
また、第6の解決手段によれば、共振回路はインダクタとインダクタに並列に結合された容量手段とを有し、インダクタのインダクタンス値を2つの周波数帯で異なるように切り替えたので、2つの周波数帯での発振の切替ができる。
【0021】
また、第7の解決手段によれば、容量手段をバラクタダイオードで構成し、バラクタダイオードに発振周波数可変用の制御電圧を印加したので、電圧制御発振回路を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1以下に従って本発明の発振回路を説明する。図1は第1の実施形態を示す。図1において、発振トランジスタ20のコレクタは電源Bに接続されると共にバイパスコンデンサ21によって高周波的に接地される。ベースには抵抗22、23によって分圧されたバイアス電圧が印加される。また、エミッタは抵抗24を介して接地される。
【0023】
発振トランジスタ20のベース−エミッタ間には第1の帰還手段25が介挿される。第1の帰還手段24は第1の容量素子C1で構成される。また、コレクタ(接地)−エミッタ間には第2の帰還手段26と容量値が固定の帰還手段Cとが介挿される。第2の帰還手段26は、互いに並列接続された第2の容量素子C2と第1のインダクタンス素子L1とからなる並列共振回路と、この並列共振回路に直列接続された第3の容量素子C3とによって直並列の接続回路に構成される。
【0024】
発振トランジスタ20のベース−コレクタ(接地)間には共振回路27が介挿される。共振回路27は一端が接地され、他端がクラップコンデンサ28によってベースに結合される。共振回路27を構成する2つのインダクタ27a、27bは異なるインダクタンス値を有し、一端が共に接地され、他端はスイッチ手段27cの切替によって何れかがクラップコンデンサ28に接続される。また、共振回路27を構成するバラクタダイオード27dはアノードが接地され、カソードはクラップコンデンサ28に結合される。そして、バラクタダイオード27dのカソードに制御端子Vtからの制御電圧がチョークインダクタ29を介して印加される。
【0025】
以上の接続によって、コレクタ接地型のコルピッツ発振回路(電圧制御発振回路)が構成される。
【0026】
ここで、第2の帰還手段26のリアクタンス特性について考察する。この回路は、図4に示すように、並列共振周波数fpとそれよりも低い直列共振周波数fsとを有するので、直列共振周波数fs以下の周波数帯域と並列共振周波数fp以上の周波数帯域では容量性となり、容量値の異なる等価的な容量素子を切り替えてエミッタとコレクタとの間に接続したことと同じと見なすことができる。そして、この回路の定数の設定によって異なる2つの周波数帯でそれぞれ適宜の容量値とすることができる。
【0027】
従って、第1及び第2の帰還手段25、26を含む発振トランジスタ20側を発振動作に必要な負性抵抗とすることができ、これらの周波数帯域ではコルピッツ発振回路を構成することができる。また、共振回路27のインダクタ27a、27bを切り替えることで発振周波数をこれらの周波数帯に設定できる。
【0028】
図2は第2の実施形態を示す、図2において、第1の帰還手段25を、互いに並列接続された第2の容量素子C2及び第1のインダクタンス素子L1からなる並列共振回路と、この並列共振回路に直列接続された第3の容量素子C3とから構成し、第2の帰還手段26を第1の容量素子C1で構成したものである。従って、図2では第1の帰還手段25の構成と第2の帰還手段26の構成とが図1とは逆になる。その他の構成は図1と同じである。
【0029】
また、図3は第3の実施形態を示す。図3においては、第1の帰還手段25と第2の帰還手段26との何れも、互いに並列接続された第2の容量素子C2及び第1のインダクタンス素子L1からなる並列共振回路と、この並列共振回路に直列接続された第3の容量素子C3とから構成している。その他の構成は図1と同じである。なお、第1の帰還手段25の回路定数と第2の帰還手段26の回路定数とは必ずしも同一ではない。
【0030】
また、第2の容量素子C2、第1のインダクタンス素子L1、第3の容量素子C3からなる直並列接続回路の代わりに、図5に示すように、互いに直列接続された第4の容量素子C4と第2のインダクタンス素子L2とからなる直列共振回路と、この直列共振回路に並列接続された第5の容量素子C5とから構成してもよい。
【0031】
なお、図1乃至図3においては、クラップコンデンサ28を含めた共振回路27側は発振周波数帯では誘導性となる。帰還手段Cは必ずしも必要ではない。
【0032】
図6は第4の実施形態を示す。図6においては、第1の帰還手段25は第3のインダクタンス素子L3で構成される。第3のインダクタンス素子L3には直流カット用のコンデンサC0が直列に接続される。第2の帰還手段26は、互いに並列接続された第6の容量素子C6と第4のインダクタンス素子L4とからなる並列共振回路と、この並列共振回路に直列接続された第5のインダクタンス素子L5とから構成される。第2の帰還手段26にも直流カット用のコンデンサC0が直列に接続される。その他の構成は図1と同じである。そして、共振回路27側は容量性として働く。
【0033】
ここで、図6における第2の帰還手段26は図7に示すリアクタンス特性を有し、並列共振周波数fpとそれよりも高い周波数に直列共振周波数fsを持つので、並列共振周波数fp以下と直列共振周波数fs以上では誘導性となる。従って、図6の実施形態ではハートレー発振回路を構成でき、図1乃至図3の構成と同様に、2つの周波数帯で安定に発振させることが可能である。
【0034】
なお、第6の容量素子C6と第4のインダクタンス素子L4と第5のインダクタンス素子L5からなる直並列接続回路の代わりに、図8に示すような、互いに直列接続された第7の容量素子C7と第6のインダクタンス素子L6とからなる直列共振回路と、この直列共振回路に直列接続された第7のインダクタンス素子L7とから構成してもよい。また、これらの直並列接続回路を第1の帰還手段25に使用し、第2の帰還手段26に第3のインダクタンス素子L3を使用してもよい。さらに、これらの直並列接続回路を第1及び第2の帰還手段25、26に使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の発振回路の第1の実施形態を示す回路図である。
【図2】本発明の発振回路の第2の実施形態を示す回路図である
【図3】本発明の発振回路の第3の実施形態を示す回路図である
【図4】本発明の発振回路における帰還手段のリアクタンス特性図である。
【図5】本発明の発振回路における帰還手段の他の構成を示す回路図である。
【図6】本発明の発振回路の第4の実施形態を示す回路図である
【図7】本発明の発振回路における他の帰還手段のリアクタンス特性図である。
【図8】本発明の発振回路における他の帰還手段の他の構成を示す回路図である。
【図9】従来の発振回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0036】
20:発振トランジスタ
25:第1の帰還手段
26:第2の帰還手段
27:共振回路
27a、27b:インダクタ
27c:スイッチ手段
27d:バラクタダイオード
C1:第1の容量素子
C2:第2の容量素子
C3:第3の容量素子
C4:第4の容量素子
C5:第5の容量素子
C6:第6の容量素子
C7:第7の容量素子
L1:第1のインダクタンス素子
L2:第2のインダクタンス素子
L3:第3のインダクタンス素子
L4:第4のインダクタンス素子
L5:第5のインダクタンス素子
L6:第6のインダクタンス素子
L7:第7のインダクタンス素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振トランジスタと、前記発振トランジスタのコレクタとベースとの間に介挿された共振回路と、前記発振トランジスタのベースとエミッタとの間に介挿された第1の帰還手段と、前記発振トランジスタのコレクタとエミッタとの間に介挿された第2の帰還手段とを備え、前記共振回路は周波数が異なる2つの周波数帯に対応して共振周波数が切り替えられるように構成され、前記第1の帰還手段又は前記第2の帰還手段の少なくとも一方を3個のリアクタンス素子を直並列に接続して前記2つの周波数帯で共に誘導性又は容量性を呈するように構成すると共に、前記帰還手段の他方を前記2つの周波数帯で前記一方の帰還手段と同じく誘導性又は容量性としたことを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記第1の帰還手段又は前記第2の帰還手段の何れか一方を第1の容量素子で構成し、他方を、互いに並列接続された第2の容量素子と第1のインダクタンス素子とからなる並列共振回路と、前記並列共振回路に直列接続された第3の容量素子とから構成したことを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記第1の帰還手段及び前記第2の帰還手段のそれぞれを、互いに並列接続された第2の容量素子と第1のインダクタンス素子とからなる並列共振回路と、前記並列共振回路に直列接続された第3の容量素子とから構成したことを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項4】
前記第1の帰還手段又は前記第2の帰還手段の何れか一方を第1の容量素子で構成し、他方を、互いに直列接続された第4の容量素子と第2のインダクタンス素子とからなる直列共振回路と、前記直列共振回路に並列接続された第5の容量素子とから構成したことを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項5】
前記第1の帰還手段及び前記第2の帰還手段のそれぞれを、互いに直列接続された第4の容量素子と第2のインダクタンス素子とからなる直列共振回路と、前記直列共振回路に並列接続された第5の容量素子とから構成したことを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項6】
前記共振回路はインダクタと前記インダクタに並列に結合された容量手段とを有し、前記インダクタのインダクタンス値を前記2つの周波数帯で異なるように切り替えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の発振回路。
【請求項7】
前記容量手段をバラクタダイオードで構成し、前記バラクタダイオードに発振周波数可変用の制御電圧を印加したことを特徴とする請求項6に記載の発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−238034(P2006−238034A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49395(P2005−49395)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】