説明

発毛性真皮細胞を検出する/富化する方法、毛髪脱落を処置する方法における細胞およびその使用

皮膚内に注射した場合に毛嚢形成を誘導することができる、真皮乳頭細胞および真皮鞘細胞を含めた発毛性真皮細胞を同定する方法が提供される。発毛性真皮細胞、すなわち毛嚢形成を誘導することができるものを、検出、同定、および非発毛性皮膚細胞から識別するために使用することができるバイオマーカーが発見されている。富化された発毛性真皮細胞の集団は、開示したバイオマーカーを発現する真皮細胞について選択および富化することによって、産生することができる。これらの富化された発毛性真皮は、毛嚢形成の誘導に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年7月23日に出願された米国仮特許出願第61/227,964号の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、毛髪移植の分野に関し、より詳細には、真皮乳頭(DP)細胞および真皮鞘(dermal sheath)(DS)細胞などの発毛性真皮細胞を同定および/または単離するためのバイオマーカーおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
毛髪脱落または脱毛症は、その年齢にかかわらず、男性および女性のどちらにも、共通の問題である。男性ホルモン性脱毛症、円形脱毛症、休止期脱毛、全身性の医学的問題、たとえば、甲状腺疾患、有害な薬物作用および栄養障害状態が原因の毛髪脱落、ならびに頭皮または毛髪の外傷、円板状エリテマトーデス、扁平苔癬および構造的毛幹異常が原因の毛髪脱落など、数種類の毛髪脱落が存在する。(非特許文献1)。男性ホルモン性脱毛症が毛髪脱落の最も一般的な原因であり、毛髪脱落の強力な家族歴を有する個体の約50%に影響を与える。男性ホルモン性脱毛症は、3つの相互に依存する要因、すなわち、男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)、遺伝的素因および加齢によって引き起こされる。DHTは、毛嚢が分解され、さらに大きさが縮小されることが生じる結果、弱い毛髪をもたらす。また、DHTは、毛嚢成長サイクルの成長期相を短縮させる。時間と共に、より多くの毛髪が脱落し、毛髪がより薄くなる。
【0004】
脱毛症を処置するための可能な選択肢には、人工毛髪、手術および局所/経口薬物適用が含まれる。(非特許文献2)。ミノキシジル、フィナステリドおよびデュタステリドなどの薬物は、男性型毛髪脱落の管理において顕著な進展を表しているが、その作用が一時的であり、治療を停止した後に毛髪が脱落するという事実が、依然として大きな制限であり続ける(非特許文献3、非特許文献4)。これに鑑みて、型禿頭症(pattern baldness)を処置する恒久的な方法は手術的毛髪修復および組織工学のみであり得る。手術的毛髪移植からの結果は変動する場合があり、初期のパンチ技法は、しばしば、受皮部に非常に不自然な「人形の頭髪の外観」または「水田のような外観」をもたらした。手術的毛髪移植は、たとえば1mmのパンチを用いた単一小胞の植毛を使用することにより、進歩しているが、手順には時間がかかり、高価であり、最も重要なことに、所定の患者上のドナー小胞の数には制限がある。
【0005】
毛髪脱落を処置するための組織工学には、毛嚢形成および続く毛幹形成を誘導するために、ある領域内に細胞を移植することが含まれる。理論的には、この単純であるが有効な組織工学の方法は、様々な疾患、症候群、および傷害が原因の毛髪脱落を処置するために用いてよく、組織および臓器工学への顕著な見識を提供し得る。毛嚢の誘導および成長は、活性かつ連続的な上皮および間葉の相互作用を含む(非特許文献5)。胚中では、最初の毛嚢は、真皮細胞から生じるシグナルによる原始表皮の肥厚から成長する。成体げっ歯類の毛嚢を用いた初期の研究(非特許文献6)により、切開した毛嚢、小胞性または真皮乳頭の深部間葉部分は、成体の表皮の下に移植した場合に、新しい毛嚢を誘導することが示された。この強力な誘導特性は、乳頭中の細胞および小胞の基部周辺、すなわち真皮鞘の独特な特性に基づく(非特許文献7)。したがって、成体の毛嚢からの真皮乳頭(DP)細胞および真皮鞘(DS)細胞は、新しい毛嚢を再生するために使用することができる、すなわち発毛性真皮細胞である。非特許文献8による後の研究により、培養DP細胞も毛嚢形成を誘導することができることが実証されており、培養DP細胞および/または培養DS細胞を、男性ホルモン性脱毛症および他の毛髪脱落障害の美容上または治療上の処置における毛髪の再生または修復に使用することができるという可能性が高まった。
【0006】
しかし、毛髪再生に有効となるためには、培養DP細胞および/または培養DS細胞はその毛髪誘導能力を維持する必要がある。非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10および非特許文献11によって記載されているように、培養中のDP細胞および/またはDS細胞は、特別な培養条件を用いない限りはこの能力を失う。もはや毛髪誘導能力を有さないDP細胞および/またはDS細胞は、毛髪誘導をすることができるDP細胞および/またはDS細胞と見かけ上同一の形態特性および成長特性を有するため、毛髪誘導能力の損失は、培養物の大まかな検査では決定することができない。
【0007】
現在、DP細胞および/またはDS細胞の培養物が毛髪誘導能力を有するかどうかを決定するために利用可能な方法は、in vivo移植方法のみであり、これは、典型的には、細胞をげっ歯類に移植して、毛髪が形成されるかどうかを決定するというものである。これらの方法は多数の細胞を必要とし、実施に数週間かかり、毛髪誘導の効力の定量的な測定を与えない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】HoganおよびChamberlain、South Med J、93巻(7号):657〜62頁(2000年)
【非特許文献2】HoganおよびChamberlain、2000年、Bertolino、J Dermatol、20巻(10号):604〜10頁(1993年)
【非特許文献3】Bouhanna、Dermatol Surg、28巻:136〜42頁(2002年)
【非特許文献4】Avramら、Dermatol Surg、28巻:894〜900頁(2002年)
【非特許文献5】StennおよびPaus、Physiol Reviews、81巻:449〜494頁(2001年)
【非特許文献6】Cohen、J Embryol Exp Morphol、9巻:117〜127頁(1961年)
【非特許文献7】McElweeら、J Invest Dermatol、121巻:1267〜1275頁(2003年)
【非特許文献8】Jahodaら(1984年、Nature、311巻:560〜562頁)
【非特許文献9】Messenger(1984年、Br J Dermatol、110巻:685〜689頁)
【非特許文献10】Matsuzakiら(1996年、Hair Research for the Next Millenium、Van NesteおよびRandall(編)、Elsevier Science、New York、447〜451頁)
【非特許文献11】Kishimotoら(2000年、Genes Dev、14巻:1181〜1185頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の一目的は、毛嚢形成を誘導することができるDP細胞およびDS細胞などの真皮細胞(すなわち発毛性真皮細胞)を同定および富化するためのバイオマーカーを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、発毛性真皮細胞について富化された細胞集団を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、被験体において毛髪脱落を処置するための方法および組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
皮膚内に注射した際に毛嚢形成を誘導することができる真皮細胞を同定する方法が提供される。セルグリシン(SRGN)、Src様アダプター−コードポリペプチド3(SLA)、トロンボモジュリン(THBD)、Runt関連転写因子2(RUNX2)、Runt関連転写因子3(RUNX3)、プロトカドヘリン17(PCDH17)、リンパ球抗原75(LY75)、胎盤増殖因子(PGF)、アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質結合性ファミリーAメンバー2(APBA2)、プロスタグランジンE合成酵素(PTGES)、ミオシンIF(MYO1F)、Gタンパク質共役型受容体84(GPR84)、転写延長因子A(SII)様2(TCEAL2)、コラーゲンXXIII型アルファ1(COL23A1)、ST8アルファ−N−アセチル−ノイラミニドアルファ−2,8−シアリルトランスフェラーゼ4(ST8SIA4)、マトリックスメタロペプチダーゼ8(MMP8)、発生多能性関連4(developmental pluripotency associated 4)(DPPA4)、および内皮細胞特異的分子2(ECSM2)の発現を、発毛性真皮乳頭(DP)細胞および/または真皮鞘(DS)細胞を非発毛性皮膚細胞から検出、同定、および識別するためのバイオマーカーとして使用できることが見出されている。
【0013】
したがって、発毛性DPおよび/またはDS細胞について富化された細胞の集団は、開示したバイオマーカーのうちの1つ以上を発現する皮膚細胞について選択および富化することによって、生成することができる。一部の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、タンパク質として検出される。一部の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーは、核酸として検出される。したがって、開示したバイオマーカーのうちの1つ以上を発現する、DS細胞および/またはDP細胞などの発毛性真皮細胞について富化された細胞の集団も提供される。また、富化された発毛性真皮細胞の集団を毛嚢形成の誘導に使用する表皮細胞と組み合わせて含有する皮膚細胞集団も提供される。
【0014】
また、毛嚢形成を誘導する方法も提供される。これらの方法は、被験体に、SRGN、SLA、THBD、RUNX2、RUNX3、PCDH17、LY75、PGF、APBA2、PTGES、MYO1F、GPR84、TCEAL2、COL23A1、ST8SIA4、MMP8、DPPA4、ECSM2、またはその組合せの発現について富化された発毛性真皮細胞の集団を投与するステップを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、発毛性バイオマーカーに特異的な抗体を用いた、真皮乳頭(DP)細胞の免疫磁気単離の方法論を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.定義
本開示の理解を容易にするために、以下の定義を提供する。
【0017】
用語「発毛性細胞」とは、毛嚢形成を誘導する皮膚細胞をいう。毛嚢の誘導は直接的または間接的であり得る。
【0018】
用語「皮膚」とは、動物の外被層をいう。一般に、皮膚には表皮および真皮が含まれる。皮膚細胞には、線維芽細胞、ケラチノサイト、メラニン形成細胞、真皮乳頭細胞、真皮鞘細胞、および外毛根鞘細胞を含めた、毛嚢中またはその周辺の細胞が含まれ得る。
【0019】
用語「発毛性真皮細胞」とは、毛嚢形成を誘導する、真皮乳頭(DP)細胞および真皮鞘(DS)細胞などの真皮細胞をいう。
【0020】
用語「有効量」とは、毛嚢形成を誘導するために必要な細胞の量をいう。
【0021】
用語「個体」、「宿主」、「被験体」、および「患者」とは、本明細書中で互換性があるように使用され、それだけには限定されないが、ネズミ、サル、ヒト、哺乳動物の家畜、哺乳動物のスポーツ動物、および哺乳動物のペットを含めた、哺乳動物をいう。
【0022】
用語「バイオマーカー」とは、その発現または存在がDP細胞またはDS細胞などの発毛性真皮細胞の指標である、核酸またはタンパク質をいう。代表的なバイオマーカーには、それだけには限定されないが、セルグリシン(SRGN)、Src様アダプター−コードポリペプチド3(SLA)、トロンボモジュリン(THBD)、Runt関連転写因子2(RUNX2)、Runt関連転写因子3(RUNX3)、プロトカドヘリン17(PCDH17)、リンパ球抗原75(LY75)、胎盤増殖因子(PGF)、アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質結合性ファミリーAメンバー2(APBA2)、プロスタグランジンE合成酵素(PTGES)、ミオシンIF(MYO1F)、Gタンパク質共役型受容体84(GPR84)、転写延長因子A(SII)様2(TCEAL2)、コラーゲンXXIII型アルファ1(COL23A1)、ST8アルファ−N−アセチル−ノイラミニドアルファ−2,8−シアリルトランスフェラーゼ4(ST8SIA4)、マトリックスメタロペプチダーゼ8(MMP8)、発生多能性関連4(DPPA4)、および内皮細胞特異的分子2(ECSM2)が含まれる。
【0023】
用語「富化された」とは、参照皮膚細胞集団と比較して所定の細胞の百分率が増加した細胞の集団をいう。たとえば、本明細書中で使用する「富化された発毛性真皮細胞」とは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%の、毛嚢形成を誘導することができるDP細胞および/またはDS細胞を含有する細胞の集団をいう。
【0024】
用語「単離した」とは、真皮細胞を毛嚢から分離することなどによって、細胞が天然に存在する環境とは異なる環境にある、たとえばその天然の環境から分離された細胞をいう。
【0025】
用語「パーセント(%)配列同一性」とは、最大のパーセント配列同一性を達成するために配列をアラインメントし、必要な場合はギャップを導入した後の、参照核酸配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸と同一である候補配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸の百分率として定義される。パーセント配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当分野の技術範囲内にある様々な方法、たとえば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、ALIGN−2またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて、達成することができる。比較する配列の完全長にわたる最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含めた、測定アラインメントの適切なパラメータは、公知の方法によって決定することができる。
【0026】
本明細書中の目的のために、所定の核酸配列Dへの、それとの、またはそれに対する所定のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列Cの%配列同一性(これは、代わりに、所定の配列Dへの、それとの、またはそれに対する特定の%配列同一性を有するまたは含む所定の配列Cとしても述べることができる)は、以下のように計算する:
100×分数W/Z
[式中、Wは、そのプログラムのCとDとのアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムによって同一一致としてスコア付けされたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Zは、D中のヌクレオチドまたはアミノ酸の合計数である]。配列Cの長さが配列Dの長さに等しくない場合は、C対Dの%配列同一性はD対Cの%配列同一性と等しくならないことを理解されたい。
【0027】
本明細書中で使用する用語「核酸」は、単一のヌクレオチドまたは1つのヌクレオチドの3’位のリン酸基によって別のヌクレオチドの5’末端に連結した2つ以上のヌクレオチドを含む、天然または合成の分子をいうために使用し得る。核酸は長さによって制限されず、したがって、核酸にはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)が含まれ得る。
【0028】
本明細書中で使用する「ポリペプチド」とは、任意のペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、遺伝子産物、発現産物、またはタンパク質をいう。ポリペプチドは連続的なアミノ酸からなる。用語「ポリペプチド」には、天然に存在するまたは合成の分子が包含される。
【0029】
用語「オリゴヌクレオチド」とは、相補的配列を含有する第2の一本鎖核酸ポリマーと塩基対合することができる、定義された配列の一本鎖核酸ポリマーをいう。
【0030】
用語「相補的」および「相補性」とは、ワトソン−クリックの塩基対合の規則をいう。たとえば、A(アデニン)はT(チミン)またはU(ウラシル)と結合し、G(グアニン)はC(シトシン)と結合する。たとえば、DNAは、そのセンス鎖に相補的なアンチセンス鎖を含有する。したがって、DNAアンチセンス鎖に95%同一である核酸は、DNAセンス鎖に95%相補的である。
【0031】
本明細書中で使用する用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブと標的配列との間に少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の配列同一性が存在する場合に、ハイブリダイゼーションが一般に起こることを意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50%のホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート溶液、10%の硫酸デキストラン、および20μg/mlのサケ精子DNAなどの変性した剪断したキャリアDNAを含む溶液中で終夜インキュベーションすること、次いで、ハイブリダイゼーション支持体を0.1×SSC中、約65℃で洗浄することである。他のハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989年)、特に第11章に例示されている。
【0032】
用語「ベクター」とは、別のDNAセグメントをそれ内に挿入して、挿入したセグメントの複製をもたらし得る、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどのレプリコンをいう。ベクターは発現ベクターであり得る。
【0033】
用語「発現ベクター」とは、1つ以上の発現制御配列が含まれるベクターをいう。
【0034】
用語「発現制御配列」とは、別のDNA配列の転写および/または翻訳を制御および調節するDNA配列をいう。たとえば、原核生物に適した制御配列には、プロモーター、必要に応じてオペレーター配列、リボソーム結合部位などが含まれる。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが公知である。
【0035】
用語「プロモーター」とは、典型的には遺伝子またはタンパク質コード配列の上流(5’)に位置し、様々なエレメントと併せて、遺伝子またはタンパク質のコード配列の発現の調節を司っている調節核酸配列をいう。
【0036】
用語「作用的に連結した」とは、核酸と別の核酸配列との機能的関係をいう。プロモーター、エンハンサー、転写および翻訳の停止部位、ならびに他のシグナル配列が、他の配列と作用的に連結した核酸配列の例である。たとえば、DNAと転写制御エレメントとの作用的な連結とは、DNAを特異的に認識し、それと結合し、転写するRNAポリメラーゼによって、そのようなDNAの転写がプロモーターから開始されるような、DNAとプロモーターとの物理的および機能的な関係をいう。
【0037】
核酸に関する用語「内因性」とは、宿主中に通常存在する核酸をいう。
【0038】
II.発毛性真皮乳頭細胞および真皮鞘細胞
A.発毛性DP細胞およびDS細胞のバイオマーカー
依然として毛髪形成を誘導する能力を有する培養DP細胞および/またはDS細胞では発現されるが、もはや毛髪形成を誘導することができない培養DP細胞および/またはDS細胞によって発現されない、バイオマーカーが提供される。したがって、DP細胞および/またはDS細胞などの発毛性真皮細胞によって示差的に発現されるバイオマーカーが提供される。皮膚細胞における開示したバイオマーカーの発現は、毛髪誘導能力、すなわち発毛性と相関する。したがって、一部の実施形態では、これらのバイオマーカーは、毛嚢形成を誘導する能力を失った培養DP細胞もしくはDS細胞などの非発毛性真皮細胞に、または線維芽細胞もしくはケラチノサイトなどの他の皮膚細胞によって検出可能でない。他の実施形態では、これらのバイオマーカーは、非発毛性細胞と比較して発毛性真皮細胞での発現が増加している。
【0039】
毛髪誘導と相関するバイオマーカーを使用して、そのような発毛性真皮細胞を、たとえば細胞培養物中で迅速に同定することができる。また、開示した生物学的マーカーを使用して、細胞の試料中の発毛性真皮細胞の数を定量化し得る。また、開示した生物学的マーカーを使用して、培養中の毛髪誘導能力の維持について細胞の試料を監視し得る。また、開示した生物学的マーカーを使用して、毛髪脱落を被っている患者からの試料中の発毛性細胞を検出し得る。また、開示した生物学的マーカーを使用して、検出された発毛性真皮細胞を単離し得る。その後、この単離した細胞を毛髪修復に使用し得る。一部の実施形態では、単離した細胞を培養して、発毛性真皮細胞を含有する細胞の集団を産生する。発毛性細胞は、細胞培養中にその発毛性を失う場合がある。したがって、これらの実施形態では、開示したバイオマーカーを使用して、発毛性細胞および非発毛性細胞をどちらも含有する培養細胞の集団から発毛性真皮細胞をさらに単離することができる。
【0040】
発毛性DP細胞および/またはDS細胞の単離した集団は、開示した1つ以上のバイオマーカーを当業者に公知の様々な単離方法と組み合わせて使用して得られ得る。
【0041】
一部の実施形態では、発毛性DP細胞および/またはDS細胞は、被験体から単離した皮膚細胞の集団から単離する。これらの実施形態では、発毛性真皮細胞は、線維芽細胞またはケラチノサイトなどの他の皮膚細胞から単離することができる。また、発毛性真皮細胞は、非発毛性真皮細胞から単離することもできる。
【0042】
他の実施形態では、発毛性DP細胞および/またはDS細胞は、培養DP細胞および/またはDS細胞の集団から単離する。これらの実施形態では、培養中に発毛性が維持されたDP細胞および/またはDS細胞は、毛嚢形成を誘導する能力を失った細胞から単離する。
【0043】
発毛性を示すバイオマーカーには、セルグリシン(SRGN)、Src様アダプター−コードポリペプチド3(SLA)、トロンボモジュリン(THBD)、Runt関連転写因子2(RUNX2)、Runt関連転写因子3(RUNX3)、プロトカドヘリン17(PCDH17)、リンパ球抗原75(LY75)、胎盤増殖因子(PGF)、アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質結合性ファミリーAメンバー2(APBA2)、プロスタグランジンE合成酵素(PTGES)、ミオシンIF(MYO1F)、Gタンパク質共役型受容体84(GPR84)、転写延長因子A(SII)様2(TCEAL2)、コラーゲンXXIII型アルファ1(COL23A1)、ST8アルファ−N−アセチル−ノイラミニドアルファ−2,8−シアリルトランスフェラーゼ4(ST8SIA4)、マトリックスメタロペプチダーゼ8(MMP8)、発生多能性関連4(DPPA4)、内皮細胞特異的分子2(ECSM2)、またはその組合せが含まれる。
【0044】
開示したバイオマーカーは、オリゴヌクレオチドマーカーまたはポリペプチドマーカーであり得る。したがって、開示した生物学的マーカーは、配列番号1〜21のうちの任意の核酸配列を有するオリゴヌクレオチドマーカー、または核酸マーカーの変異体もしくは断片であり得る。開示した生物学的マーカーは、配列番号22〜46のうちの任意のアミノ酸配列を有するポリペプチドマーカー、またはポリペプチドマーカーの変異体もしくは断片であり得る。
【0045】
セルグリシンとは、ヒトにおいてSRGN遺伝子によってコードされるタンパク質である。セルグリシンは、造血細胞顆粒プロテオグリカンである。多くの造血細胞の分泌顆粒中に保管されているプロテオグリカンは、プロテアーゼ耐性のペプチドコアも含有し、これは加水分解酵素の中和に重要であり得る。このコードされるタンパク質は、顆粒媒介性アポトーシスの媒介物質として役割を果たし得る、グランザイムとパーフォリンとの巨大分子複合体に関連していることが見い出されている。ヒトSRGNは以下の核酸配列を有する:
【0046】
【化1】

【0047】
【化2】

ヒトセルグリシンは以下のアミノ酸配列を有する:
【0048】
【化3】

Src様アダプター(SLA)とは、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達を負に調節するアダプタータンパク質である。SLAは、活性化されたT細胞の核因子の、T細胞抗原受容体誘導性の活性化を阻害する。SLAはT細胞の陽性選択および有糸分裂の負の調節に関与している。SLAは、ZAP70などのシグナル伝達タンパク質をCBLと連結させることによって作用して、シグナル伝達タンパク質のCBL依存性の分解をもたらし得る。ヒトSLAは以下の核酸配列を有する:
【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

ヒトSLAはいくつかのアイソフォームを有する。ヒトSLAの1つのアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0051】
【化6】

ヒトSLAの別のアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0052】
【化7】

ヒトSLAのさらに別のアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

トロンボモジュリン(CD141またはBDCA−3)とは、内皮細胞の表面に発現される内在性膜タンパク質である。ヒトでは、トロンボモジュリンはTHBD遺伝子によってコードされる。トロンボモジュリンは、トロンビンと1:1の化学量論的な複合体を形成することによって、抗凝固経路におけるプロテインCのトロンビン誘導性の活性化の補因子として機能する。これは、プロテインCの活性化の速度を1000倍上げる。トロンボモジュリンと結合したトロンビンは、凝固促進効果を有さない。また、TT複合体は、トロンビンで活性化可能の線維素溶解阻害因子(TAFI)をその活性型へと切断することによって、線維素溶解も阻害する。ヒトTHBDは以下の核酸配列を有する:
【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

ヒトトロンボモジュリンは以下のアミノ酸配列を有する:
【0057】
【化12】

【0058】
【化13】

Runt関連転写因子2(RUNX2)とは、ヒトにおいてRUNX2遺伝子によってコードされるタンパク質である。RUNX2は、転写因子RUNXファミリーのメンバーであり、Runt DNA結合ドメインを有する。それは、骨芽細胞の分化および骨格形態形成に必須であり、骨格遺伝子発現に関与している核酸および調節因子の足場として作用する。このタンパク質は、単量体として、またはより高い親和性を有して、ヘテロ二量体の複合体のサブユニットとしての両方で、DNAと結合することができる。様々なタンパク質アイソフォームをコードしている遺伝子の転写変異体は、選択的プロモーター(alternate promoter)ならびに選択的スプライシングの使用の結果生じる。ヒトRUNX2は以下の核酸配列を有する:
【0059】
【化14】

【0060】
【化15】

【0061】
【化16】

ヒトRUNX2はいくつかのアイソフォームを有する。ヒトRUNX2の1つのアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0062】
【化17】

ヒトRUNX2の別のアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0063】
【化18】

【0064】
【化19】

ヒトRUNX2のさらに別のアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0065】
【化20】

Runt関連転写因子3(RUNX3)とは、ヒトにおいてRUNX3遺伝子によってコードされるタンパク質である。RUNX3は、転写因子のruntドメイン含有ファミリーのメンバーである。このタンパク質とベータサブユニットとのヘテロ二量体は、いくつかのエンハンサーおよびプロモーターに見出されるDNA配列と結合する複合体を形成し、転写を活性化または抑制することができる。また、これは他の転写因子とも相互作用する。これは腫瘍抑制因子として機能し、この遺伝子は、癌においてしばしば欠失または転写サイレンシングされている。様々なアイソフォームをコードしている複数の転写変異体がこの遺伝子で見つかっている。ヒトRUNX3は以下の核酸(amino nucleic)配列を有する:
【0066】
【化21】

【0067】
【化22】

【0068】
【化23】

ヒトRUNX3は少なくとも2つのアイソフォームを有する。ヒトRUNX3の1つのアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0069】
【化24】

ヒトRUNX3の別のアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0070】
【化25】

プロトカドヘリン17(PCDH17)とは、ヒトにおいてPCDH17遺伝子によってコードされるタンパク質である。この遺伝子は、カドヘリンスーパーファミリーのサブファミリーであるプロトカドヘリン遺伝子ファミリーに属する。コードされるタンパク質は、古典的なカドヘリンのものとは異なる、6個の細胞外カドヘリンドメイン、1個の膜貫通ドメイン、および1個の細胞質側尾部を含有する。コードされるタンパク質は、脳における特異的な細胞間連結の確立および機能に役割を果たし得る。ヒトPCDH17は以下の核酸配列を有する:
【0071】
【化26】

【0072】
【化27】

【0073】
【化28】

【0074】
【化29】

ヒトPCDH17は以下のアミノ酸配列を有する:
【0075】
【化30】

【0076】
【化31】

リンパ球抗原75(LY75)は、捕捉された抗原を細胞外空間から特化された抗原処理区画へと向かわせるための、エンドサイトーシス受容体として作用する。LY75はBリンパ球の増殖の減少を引き起こす。ヒトLY75は以下の核酸配列を有する:
【0077】
【化32】

【0078】
【化33】

【0079】
【化34】

【0080】
【化35】

ヒトLY75は以下のアミノ酸配列を有する:
【0081】
【化36】

胎盤増殖因子(PGF)は、VEGF(血管内皮増殖因子)サブファミリーのメンバーである。ヒトアテローム性動脈硬化性の病変内でのPGFの発現は、プラーク炎症および血管新生性成長に関連している。妊娠中のPGFの主な供給源は、胎盤栄養芽層である。また、PGFは、絨毛栄養芽層を含めた多くの他の組織でも発現される。ヒトPGFは以下の核酸配列を有する:
【0082】
【化37】

ヒトPGFは以下のアミノ酸配列を有する:
【0083】
【化38】

アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質結合性ファミリーAメンバー2(APBA2)とは、ヒトにおいてAPBA2遺伝子によってコードされるタンパク質である。APBA2は、X11タンパク質ファミリーのメンバーである。これは、アルツハイマー病のアミロイド前駆タンパク質(APP)と相互作用する神経アダプタータンパク質である。これは、APPを安定化させ、アルツハイマー病患者の脳内に沈積するAベータペプチドを含めたタンパク質分解性のAPP断片の産生を阻害する。APBA2は、シグナル伝達プロセスに関与していると考えられている。また、これは、シナプス小胞の開口分泌を神経細胞接着に結合させる潜在性を有する複合体を形成することができる、脳内の推定上の小胞輸送タンパク質としてもみなされている。ヒトAPBA2は以下の核酸配列を有する:
【0084】
【化39】

【0085】
【化40】

ヒトAPBA2は少なくとも2つのアイソフォームを有する。ヒトAPBA2の1つのアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0086】
【化41】

ヒトAPBA2の別のアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0087】
【化42】

【0088】
【化43】

プロスタグランジンE合成酵素(PTGES)とは、ヒトにおいてPTGES遺伝子によってコードされる酵素である。PTGESは、グルタチオン依存性プロスタグランジンE合成酵素である。この遺伝子の発現は、炎症性サイトカインのインターロイキン1ベータ(IL1B)によって誘導されることが示されている。また、その発現は、腫瘍抑制タンパク質TP53によっても誘導される場合があり、TP53誘導性アポトーシスに関与している可能性がある。マウスにおけるノックアウト研究により、この遺伝子がコラーゲン誘導性関節炎の病因に寄与しており、炎症反応中の急性疼痛を媒介している可能性が示唆されている。ヒトPTGESは以下の核酸配列を有する:
【0089】
【化44】

【0090】
【化45】

ヒトPTGESは以下のアミノ酸配列を有する:
【0091】
【化46】

ミオシンIF(MYO1F)とは、ヒトにおいてMYO1F遺伝子によってコードされるタンパク質である。ヒトMYO1Fは以下の核酸配列を有する:
【0092】
【化47】

【0093】
【化48】

ヒトMYO1Fは以下のアミノ酸配列を有する:
【0094】
【化49】

【0095】
【化50−1】

Gタンパク質共役型受容体84(GPR84)とは、ヒトにおいてGPR84遺伝子によってコードされるタンパク質である。ヒトGPR84は以下の核酸配列を有する:
【0096】
【化50−2】

ヒトGPR84は以下のアミノ酸配列を有する:
【0097】
【化51】

転写延長因子A(SII)様2(TCEAL2)とは、ヒトにおいてTCEAL2遺伝子によってコードされるタンパク質である。TCEAL2は、転写延長因子A(SII)様(TCEAL)遺伝子ファミリーのメンバーである。このファミリーのメンバーはTFAドメインを含有し、プロモーターコンテキストに依存性の様式で転写を調整する核リンタンパク質として機能し得る。複数のファミリーメンバーはX染色体上に位置する。ヒトTCEAL2は以下の核酸配列を有する:
【0098】
【化52】

ヒトTCEAL2は以下のアミノ酸配列を有する:
【0099】
【化53】

コラーゲンXXIII型アルファ1(COL23A1)とは、ヒトにおいてCOL23A1遺伝子によってコードされるタンパク質である。コラーゲンXXIIIは、1個のアミノ末端細胞質ドメイン、1個の膜貫通領域、および短い非コラーゲンドメインが隣接する3個のコラーゲンドメインからなるII型膜タンパク質であると予測されている。コラーゲンXXIIIは、膜貫通コラーゲンファミリーの新しいメンバーであり、膜貫通コラーゲンXIIIおよびXXVとの構造的相同性を示す。ヒトCOL23A1は以下のアミノ酸配列を有する:
【0100】
【化54】

【0101】
【化55】

ヒトCOL23A1は以下のアミノ酸配列を有する:
【0102】
【化56】

ST8アルファ−N−アセチル−ノイラミニドアルファ−2,8−シアリルトランスフェラーゼ4(ST8SIA4)(参照配列番号NM_005668)とは、ヒトにおいてST8SIA4遺伝子によってコードされる酵素である。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、神経細胞接着分子(NCAM1)の接着特性のモジュレーターであるポリシアル酸の合成に必要なアルファ−2,8−連結シアル酸の重縮合を触媒する。グリコシルトランスフェラーゼファミリー29のメンバーである、コードされるタンパク質は、ゴルジ体中に存在し得るII型膜タンパク質である。異なるアイソフォームをコードしている2つの転写変異体がこの遺伝子で見つかっている。
【0103】
ヒトST8SIA4は以下のアミノ酸配列を有する:
【0104】
【化57】

【0105】
【化58】

【0106】
【化59】

ヒトST8SIA4は少なくとも2つのアイソフォームを有する。ヒトST8SIA4の1つのアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0107】
【化60】

ヒトST8SIA4の別のアイソフォームは以下のアミノ酸配列を有する:
【0108】
【化61】

マトリックスメタロペプチダーゼ8(MMP8)とは、MMP8遺伝子によってコードされるタンパク質である。MMP8は、ほとんどの哺乳動物の結合組織中に存在するコラーゲン切断酵素である。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーのタンパク質は、胚発生、生殖、および組織再構築などの正常な生理的プロセス、ならびに関節炎および転移などの疾患プロセスにおいて、細胞外基質の分解に関与している。ほとんどのMMPは、不活性のプロタンパク質として分泌され、細胞外プロテイナーゼによって切断された場合に活性化される。しかし、この遺伝子によってコードされる酵素は、好中球内の二次顆粒中に保管されており、自己分解切断によって活性化される。その機能は、I、IIおよびIII型コラーゲンの分解である。ヒトMMP8は以下のアミノ酸配列を有する:
【0109】
【化62】

【0110】
【化63】

ヒトMMP8は以下のアミノ酸配列を有する:
【0111】
【化64】

発生多能性関連4(DPPA4)とは、DPPA4遺伝子によってコードされるタンパク質である。ヒトDPPA4は以下のアミノ酸配列を有する:
【0112】
【化65】

【0113】
【化66】

ヒトDPPA4は以下のアミノ酸配列を有する:
【0114】
【化67】

内皮細胞特異的分子2(ECSM2)とは、ECSM2遺伝子によってコードされるタンパク質である。ヒトECSM2は以下のアミノ酸配列を有する:
【0115】
【化68】

【0116】
【化69】

ヒトECSM2は以下のアミノ酸配列を有する:
【0117】
【化70】

開示したバイオマーカーは、以下の核酸配列(GenBank受託番号AA393032.1)を有する遺伝子の発現産物であり得る:
【0118】
【化71】

したがって、開示したバイオマーカーは、配列番号13のmRNAまたは配列番号13によってコードされるタンパク質であり得る。
【0119】
開示したバイオマーカーは、以下の核酸配列(GenBank mRNA ID:AK026379)を有する遺伝子であり得る:
【0120】
【化72】

【0121】
【化73】

開示したバイオマーカーは、配列番号14によってコードされるタンパク質であり得る。
【0122】
開示したバイオマーカーは、以下の核酸配列(GenBank mRNA ID:AI271427)を有する遺伝子であり得る:
【0123】
【化74】

開示したバイオマーカーは、配列番号18によってコードされるタンパク質であり得る。
【0124】
1つより多い生物学的マーカー、たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21の核酸(nucleic)マーカー、および/または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25個のポリペプチドマーカーを、検出または決定し得る。
【0125】
B.バイオマーカーのタンパク質検出
一部の実施形態では、DP細胞およびDS細胞などの発毛性真皮細胞は、タンパク質発現を検出するアッセイで検出、同定、および富化することができる。DP細胞およびDS細胞などの発毛性真皮細胞は、それだけには限定されないが、免疫学的アッセイ、分光測光アッセイ、蛍光測定アッセイ、および比色定量(colormetric)アッセイを含めた様々な慣用技術を用いて検出、同定、および富化することができる。
【0126】
一部の実施形態では、DP細胞およびDS細胞などの発毛性真皮細胞を、本明細書中に開示した1つ以上のバイオマーカーと特異的に結合する抗体を用いて検出する。セルグリシン(SRGN)、Src様アダプター−コードポリペプチド3(SLA)、トロンボモジュリン(THBD)、Runt関連転写因子2(RUNX2)、Runt関連転写因子3(RUNX3)、プロトカドヘリン17(PCDH17)、リンパ球抗原75(LY75)、胎盤増殖因子(PGF)、アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質結合性ファミリーAメンバー2(APBA2)、プロスタグランジンE合成酵素(PTGES)、ミオシンIF(MYO1F)、Gタンパク質共役型受容体84(GPR84)、転写延長因子A(SII)様2(TCEAL2)、コラーゲンXXIII型アルファ1(COL23A1)、ST8アルファ−N−アセチル−ノイラミニドアルファ−2,8−シアリルトランスフェラーゼ4(ST8SIA4)、マトリックスメタロペプチダーゼ8(MMP8)、発生多能性関連4(DPPA4)、および内皮細胞特異的分子2(ECSM2)の抗体が、たとえば、Abcam(マサチューセッツ州Cambridge)、R&D Systems(ミネソタ州Minneapolis)、Santa Cruz Biotechnology(カリフォルニア州Santa Cruz)、およびSigma−Aldrich(モンタナ州St.Louis)から市販されている。
【0127】
抗体は、蛍光標識、化学発光標識、発色団、抗体、酵素マーカー、放射性同位元素、親和性タグおよび光反応基などの検出可能な標識で標識することができる。
【0128】
C.バイオマーカーの核酸検出
一部の実施形態では、DP細胞およびDS細胞などの発毛性真皮細胞は、mRNA発現などの核酸発現を検出するアッセイで検出、同定、および富化することができる。全試料またはポリ(A)RNA試料中の特定のmRNAの存在量を検出および決定するための、いくつかの幅広く使用されている手順が存在する。たとえば、ノーザンブロット分析、ヌクレアーゼ保護アッセイ(NPA)、in situハイブリダイゼーション、または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、およびマイクロアレイ分析を用いて、特定のmRNAを検出することができる。
【0129】
理論的には、これらの技法のそれぞれを用いて、特定のRNAを検出し、その発現レベルを正確に決定することができる。一般に、ノーザン分析は、転写物の大きさに関する情報を提供する唯一の方法であり、他方で、NPAは、複数のメッセージを同時に検査するための一方法である。in situハイブリダイゼーションは、特定の遺伝子の発現を組織または細胞型内で局在化させるために使用し、RT−PCRは遺伝子発現を検出および定量する最も高感度な方法である。
【0130】
相対的定量RT−PCRは、内部対照を目的の遺伝子と同時に増幅することを含む。内部対照を用いて試料を正規化する。正規化した後、特定のmRNAの相対的存在量の直接比較を試料にわたって行うことができる。すべての実験試料にわたって一定の発現レベルを有する(すなわち、実験処置によって影響を受けない)内部対照を選択することが重要である。一般的に使用される内部対照(たとえば、GAPDH、β−アクチン、シクロフィリン)はしばしば発現が変動し、したがって、適切な内部対照でない場合がある。さらに、最も一般的な内部対照は、研究中のmRNAよりもはるかに高いレベルで発現される。相対的RT−PCRの結果が有意義であるためには、PCR反応のすべての産物を増幅の直線範囲内で分析しなければならない。これは、広く異なるレベルの存在量の転写物では困難となる。
【0131】
競合的RT−PCRを絶対的定量に用いる。この技法は、大きさまたは配列のわずかな相違によって内因性の標的から識別することができる競合相手のRNAの設計、合成、および正確な定量を含む。公知の量の競合相手のRNAを実験試料に加え、RT−PCRを行う。内因性標的からのシグナルを競合相手からのシグナルと比較して、試料中に存在する標的の量を決定する。
【0132】
RNAなどの核酸を検出する方法は、一般に、標的核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブの使用を含む。したがって、開示した生物学的マーカーのうちの1つ以上を検出するためのプライマーまたはプローブとして使用するための、オリゴヌクレオチドも提供される。開示したオリゴヌクレオチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21に記載のもの、またはその相補体などの、開示した核酸バイオマーカーのうちの1つ以上の断片であり得る。たとえば、オリゴヌクレオチドには、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21に記載の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100個の連続的な核酸、またはその相補体が含まれ得る。さらに、オリゴヌクレオチドには、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21と少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100個の連続的な核酸、またはその相補体が含まれ得る。したがって、オリゴヌクレオチドには、ストリンジェントな条件下で配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする核酸配列の少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100個の連続的な核酸、またはその相補体が含まれ得る。
【0133】
また、開示したオリゴヌクレオチドのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21個を含有する、マイクロアレイなどのアレイも提供される。これらのアレイを使用して、複数のバイオマーカーを同時に検出することができる。
【0134】
D.DP細胞およびDS細胞について富化された細胞集団
また、DP細胞およびDS細胞などの発毛性真皮細胞について富化された皮膚細胞の集団も提供される。皮膚細胞の集団は、本明細書中に開示した1つ以上のバイオマーカーを発現する細胞について、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、または40%富化され得る。最初の皮膚細胞集団は、哺乳動物被験体から、好ましくはヒトから得ることができる。最初の皮膚細胞集団は、DPおよび/またはDS細胞を含有する細胞培養物から得ることができる。最初の皮膚細胞集団は、たとえば、DP細胞、DS細胞、線維芽細胞、メラニン形成細胞、およびケラチノサイトを含有することができるという点で、不均一であり得る。最初の皮膚細胞集団は、たとえば、発毛性および非発毛性の真皮細胞をどちらも含有することができるという点で、不均一であり得る。好ましい実施形態では、富化された発毛性真皮細胞集団は、発毛性DP細胞および/またはDS細胞などの発毛性真皮細胞のみを含有するという点で、均一である。
【0135】
タンパク質発現に基づいて細胞集団を富化する方法は当分野で公知であり、それだけには限定されないが、フローサイトメトリーおよび免疫学的分離技法が含まれる。DP細胞およびDS細胞を富化するための好ましい技法では、InvitrogenのCELLection(商標)ビオチン結合剤キットなどの市販の試薬を使用する。一般に、1つ以上の開示したバイオマーカーに対する、ビオチン標識した抗体を皮膚細胞の懸濁液に加える。次に、ストレプトアビジンをコンジュゲートさせたビーズを懸濁液に加え、1つ以上のバイオマーカーに対して陽性の細胞と結合した、ビオチン標識した抗体と結合させる。その後、磁石を使用してDP細胞および/またはDS細胞を他の皮膚細胞から分離し、それにより2つの細胞集団を形成する。一方の集団はDP細胞および/またはDS細胞が富化されており、他方の集団は顕著に低下した数のDP細胞および/またはDS細胞を有する。
【0136】
また、表皮細胞と組み合わせた、DP細胞および/またはDS細胞などの富化された発毛性真皮細胞の皮膚細胞集団も提供される。表皮:真皮は、約0:1、1:1、1:2および1:10の比で懸濁液中に存在することができる。発毛性真皮細胞および表皮細胞の懸濁液には、メラニン形成細胞などの追加の細胞型がさらに含まれていることができる。
【0137】
また、富化された発毛性真皮細胞および表皮細胞の凝集体も提供される。表皮:真皮は、約0:1、1:1、1:2および1:10の比で凝集体中に存在することができる。発毛性真皮細胞および表皮細胞の凝集体には、メラニン形成細胞などの追加の細胞型がさらに含まれていることができる。細胞は、非粘着組織培養皿中での懸濁液の成長によって、または培養細胞の遠心分離によって凝集させることができる。特定の実施形態では、適切な凝集増強物質を、移植の前、または移植時に細胞に加え得る。適切な凝集増強物質には、それだけには限定されないが、フィブロネクチン(fibronection)またはグリコサミノグリカン、デルマタン硫酸、コンドロイチン(chondroitan)硫酸、プロテオグリカン、ヘパリン硫酸およびコラーゲンなどの糖タンパク質が含まれる。
【0138】
C.キット
また、DP細胞および/またはDS細胞などの発毛性真皮細胞を検出、同定または富化するために使用する、本明細書中に開示した1つ以上のバイオマーカーと選択的に結合する抗体を含有する容器が含まれるキットも提供される。
【0139】
また、DP細胞および/またはDS細胞などの発毛性真皮細胞を検出するための、本明細書中に開示した1つ以上の核酸バイオマーカーとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有する容器が含まれるキットも提供される。
【0140】
また、キットには、核酸バイオマーカーを検出するための試薬も含まれ得る。あるいは、キットは、タンパク質バイオマーカーと結合する抗体を含有することができる。抗体は、好ましくは検出可能な標識で標識されている。
【0141】
III.DPおよび/またはDS細胞を同定および単離する方法
本明細書中に開示した1つ以上のバイオマーカーを使用して、毛嚢形成を誘導する能力を有する、すなわち発毛性である細胞を同定することができる。したがって、本明細書中に開示した1つ以上のバイオマーカーを使用して、DP細胞および/またはDS細胞などの発毛性真皮細胞を同定することができる。一般に、細胞は、動物、たとえばマウスまたはヒトから収集する。細胞は自己または同種異系由来のものであり得る。組織、好ましくは頭皮組織を、ヒトの胎児、小児、または成人などの被験体から得て、当分野で公知の技法を用いて処理して、解離した(dissociated)細胞を得る。細胞は、DPおよび/またはDS細胞ならびに線維芽細胞およびケラチノサイトなどの他の皮膚細胞を含有する、細胞の混合集団であり得る。一部の実施形態では、細胞の混合集団には、真皮細胞および表皮細胞がどちらも含まれる。一部の実施形態では、細胞の混合集団には、発毛性真皮細胞および非発毛性真皮細胞がどちらも含まれる。
【0142】
皮膚細胞の混合集団中のDPおよび/またはDS細胞などの発毛性真皮細胞は、細胞を、本明細書中に開示した1つ以上のバイオマーカーの発現についてアッセイすることによって、同定することができる。たとえば、バイオマーカーは、セルグリシン(SRGN)、Src様アダプター−コードポリペプチド3(SLA)、トロンボモジュリン(THBD)、Runt関連転写因子2(RUNX2)、Runt関連転写因子3(RUNX3)、プロトカドヘリン17(PCDH17)、リンパ球抗原75(LY75)、胎盤増殖因子(PGF)、アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質結合性ファミリーAメンバー2(APBA2)、プロスタグランジンE合成酵素(PTGES)、ミオシンIF(MYO1F)、Gタンパク質共役型受容体84(GPR84)、転写延長因子A(SII)様2(TCEAL2)、コラーゲンXXIII型アルファ1(COL23A1)、ST8アルファ−N−アセチル−ノイラミニドアルファ−2,8−シアリルトランスフェラーゼ4(ST8SIA4)、マトリックスメタロペプチダーゼ8(MMP8)、発生多能性関連4(DPPA4)、内皮細胞特異的分子2(ECSM2)、またはその組合せであり得る。
【0143】
一実施形態では、1つ以上の発毛性バイオマーカーの発現について富化された細胞の集団は、CELLection(商標)ビオチン結合剤キットを用いた細胞分取によって得られる。直接的および間接的な方法をどちらも用いることができる。基本的に、ビオチン標識した抗バイオマーカー抗体を、細胞試料に1μg/100万個の細胞で加える(間接方法)、またはストレプトアビジンでコーティングしたビーズに2μg/25μlのビーズで加え(直接方法)、4℃で終夜インキュベーションする。ストレプトアビジンでコーティングしたビーズは、磁石を用いて動かすことができる。次に、バイオマーカー陽性細胞が、ビオチン標識した抗バイオマーカー抗体を介してストレプトアビジンでコーティングしたビーズに結合するように、ストレプトアビジンでコーティングしたビーズおよび細胞試料を一緒に混合する。その後、ビーズと結合した細胞を磁石によって他の細胞から分離する。その後、バイオマーカー陽性細胞を磁気ビーズから遊離させる。その後、磁石を用いてビーズを除去する。発毛性バイオマーカーに特異的な抗体を用いて細胞を富化する方法の模式図には、図1を参照されたい。
【0144】
別の実施形態では、バイオマーカーの発現はGuava分析器によって検出される。手短に述べると、最初に、細胞を、フィコエリスリンをコンジュゲートさせた抗バイオマーカー抗体と共に、4℃で0.5時間インキュベーションする。その後、細胞を、ウシ血清アルブミン(0.1%のBSA)と抗生物質(クリンダマイシン、アクチノマイシン、ストレプトマイシン)を含むダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)で2回洗浄する。バイオマーカーの発現レベルをGUAVA分析器によって測定する。
【0145】
一部の実施形態では、本方法は、本明細書中に開示した1つ以上の核酸バイオマーカーをコードしている核酸を細胞中で検出することを含むことができる。たとえば、バイオマーカーは、SRGN、SLA、THBD、RUNX2、RUNX3、PCDH17、LY75、PGF、APBA2、PTGES、MYO1F、GPR84、TCEAL2、COL23A1、ST8SIA4、MMP8、DPPA4、ECSM2、またはその組合せであり得る。核酸またはタンパク質バイオマーカーを同定する方法は当分野で公知である。定量的リアルタイムPCR、フローサイトメトリーおよび免疫学的技法が好ましい。
【0146】
IV.富化されたDPおよびDS細胞の使用方法
DP細胞および/またはDS細胞などの発毛性真皮細胞の集団は、毛髪を置き換える、増大させる、または修復するために使用することができる。1つ以上のバイオマーカーの発現について選択または富化された、開示した発毛性真皮細胞は、発毛性について選択も富化もされていない真皮細胞を用いた従来技術の方法を超える改善を表す。したがって、開示した富化された発毛性真皮細胞は、新しい毛嚢の形成を誘導するために皮下または皮内注射することができる。新しい毛嚢は新しい毛幹を生じる。したがって、富化された発毛性真皮細胞は、新しい毛幹を生じる新しいまたは追加の毛嚢の形成を誘導することによって、既存の毛嚢を置き換えるまたは増大させることができる。あるいは、DP細胞および/またはDS細胞などの富化された発毛性真皮細胞の集団は、既存の毛嚢を誘導して新しい終毛を生じるようにするために、皮下または皮内注射することができる。たとえば、富化された発毛性真皮細胞の集団は、軟毛を生成する1つ以上の既存の毛嚢に隣接して注射することができる。その後、富化された発毛性真皮細胞は、軟毛の毛嚢を誘導して終毛を生成するようにする。富化された発毛性真皮細胞集団を使用するこれらの方法は、以下により詳細に記載されている。
【0147】
A.毛嚢の誘導
開示したバイオマーカーのうちの1つ以上を発現する、DP細胞および/またはDS細胞などの富化された発毛性真皮細胞を使用して、被験体において新しい毛嚢を生じさせることができる。典型的には、富化された真皮細胞集団は自己または同種異系由来のものである。
【0148】
富化された発毛性真皮細胞を移植する被験体には、皮膚のある部位または領域で不十分な量の毛髪または不十分な毛髪成長速度を有する任意の被験体が含まれる。富化された発毛性真皮細胞を使用して、男性ホルモン性脱毛症、創傷、外傷、瘢痕、休止期脱毛、遺伝型禿頭症から生じる毛髪脱落、または毛髪成長を減少させるもしくは毛髪の脱落を引き起こすホルモン障害に伴う毛髪脱落を処置することができる。被験体は、遺伝的、行動性もしくは環境的な素因または他の要因に基づいて、これらの状態を有するか、またはこれらの状態を発生する危険性にあり得る。他の適切な被験体には、毛髪成長の減少または毛髪の脱落を引き起こす、化学療法または放射線などの処置を受けた被験体が含まれる。また、富化された発毛性真皮細胞を使用して、毛嚢を必要とする皮膚の領域を生じる、頭皮もしくは毛髪の外傷、構造的毛幹異常、または皮膚移植などの外科的処置も処置することができる。
【0149】
特定の実施形態では、開示したバイオマーカーのうちの1つ以上を発現するDP細胞および/またはDS細胞などの富化された発毛性真皮細胞の集団を、被験体に移植する前に、表皮細胞と組み合わせる。好ましい移植の位置には、それだけには限定されないが、被験体の頭皮または顔面を含めた、身体の皮膚が含まれる。一実施形態では、富化された発毛性真皮細胞を単独で注射する。
【0150】
好ましい実施形態では、富化された発毛性真皮細胞および表皮細胞は、移植前に培養および拡大して、新しい毛嚢を形成させるために宿主の複数の部位に移植するために適した、十分に多数の細胞を得る。細胞は、真皮細胞の発毛活性が維持されるような様式で培養する。解離した真皮細胞および表皮細胞を培養する方法は当分野で公知である。真皮細胞は、表皮細胞とは別々に培養し得るか、または表皮細胞と同時培養し得る。真皮細胞を培養する例示的な方法は、Rohら、Physiol. Genomics、19巻:207〜17頁(2004年)およびMcElweeら、Jour. Invest. Dermatol.、121巻(6号):1267〜75頁(2003年)に提供されている。
【0151】
適切な細胞培養培地には、ダルベッコ変法イーグル培地/栄養素混合物F−12(DMEM/F−12)、RPMI−1640およびハムF10(Sigma)などの市販の培地が含まれる。培地には、適宜、血清(ウシ胎仔血清、仔ウシ血清またはウマ血清など)、ホルモンまたは他の増殖因子(インスリン、上皮増殖因子、Wntポリペプチド、またはトランスフェリンなど)、イオン(ナトリウム、クロライドまたはカルシウムなど)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオシドもしくは微量元素を補充し得る。
【0152】
被験体に移植する細胞は、自己、同種異系または異種(xenogenic)由来のものであり得る。一実施形態では、開示したバイオマーカーのうちの1つ以上を発現する、DP細胞および/またはDS細胞などの富化された発毛性真皮細胞、ならびに表皮細胞は、単一の同種異系ドナーからの皮膚切片から得る。別の実施形態では、発毛性真皮細胞および表皮細胞は、複数のドナーからの皮膚切片から得る。たとえば、富化された発毛性真皮細胞があるドナーに由来し、表皮細胞が別のドナーに由来し得る。好ましい実施形態では、移植する細胞は自己由来のものである。
【0153】
富化された発毛性真皮細胞および表皮細胞は、被験体に移植する前に適切な比で組み合わせることができる。表皮:真皮の比は、0:1、1:1、1:2および1:10の範囲である。真皮細胞および表皮細胞は、移植前に、メラニン形成細胞などの追加の細胞型とさらに組み合わせることができる。移植する富化された発毛性真皮細胞および表皮細胞は、移植部位内での細胞の凝集を誘導および/または維持するために、移植前に物理的および/または生化学的な凝集に供することができる。たとえば、細胞は、非粘着組織培養皿中での懸濁成長によって、または培養細胞の遠心分離によって凝集させることができる。特定の実施形態では、適切な凝集増強物質を、移植の前、または移植時に細胞に加え得る。適切な凝集増強物質には、それだけには限定されないが、フィブロネクチンまたはグリコサミノグリカン、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、プロテオグリカン、ヘパリン硫酸およびコラーゲンなどの糖タンパク質が含まれる。
【0154】
開示したバイオマーカーのうちの1つ以上を発現する、DP細胞および/またはDS細胞などの富化された発毛性真皮細胞は、当分野で公知のルーチン的な方法を用いて被験体に移植し得る。様々な投与経路および様々な部位を使用することができる。たとえば、細胞は、処置部位で真皮と外皮層の表皮との間に直接導入することができる。これは、処置部位の皮膚上に水疱を生じさせ、細胞を水疱の流体内に導入することによって、達成することができる。また、細胞は、表皮を通って下に真皮まで伸びる適切な切開部内に導入してもよい。切開部は、ルーチン的な技法を用いて、たとえばメスまたは皮下注射針を用いて作製することができる。切開部は、一般に、切開の両側で表皮に直接近接するレベルまで、細胞で満たし得る。好ましい実施形態では、細胞は、Pruittらに対する米国特許出願公開第2007/0233038号に記載のデバイスを用いて送達する。
【0155】
注射する細胞の用量は、典型的には、約100万〜約400万個の細胞/cmである。
【0156】
別の実施形態では、複数の小さなレシピエント部位、たとえば、10、50、100、500または1000箇所以上を、細胞を移植する皮膚に形成する。それぞれの穿孔部を複数の細胞で満たすことができる。穿孔部の大きさおよび深さは変更することができる。皮膚における穿孔部はルーチン的な技法によって形成することができ、皮膚切開機器、たとえば、メスまたは皮下注射針またはレーザー(たとえば低出力レーザー)の使用が含まれる。あるいは、複数の間隔があけられた穿孔部を皮膚に同時に形成するために形成および配置された、複数の間隔があけられた切刃を有する、複数穿孔器具を使用することができる。細胞は、皮膚の複数の穿孔部に同時に導入することができる。
【0157】
それぞれの穿孔部に導入される細胞の数は、様々な要因、たとえば、開口部の大きさおよび深さならびに細胞の全体的な生存度および発毛活性に依存して変動する場合がある。一実施形態では、約50,000〜約2,000,000個の細胞を1回の注射あたり送達する。細胞の濃度は、約5,000〜約1,000,000個の細胞/μl、典型的には約50,000個の細胞/μl〜約75,000個の細胞/μlであり得る。1回の注射あたり送達される細胞の代表的な体積は、約1〜約10μl、好ましくは約4μlである。一実施形態では、1〜100回の注射/cm、典型的には1〜30回の注射/cmを、皮膚、好ましくは頭皮に行う。
【0158】
表皮細胞、真皮細胞、またはその組合せは、食塩溶液、リン酸緩衝食塩水、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(「DPBS」)、DMEM、D−MEM−F−12またはBioLifeSolutions(ワシントン州Bothell)のHYPOTHERMOSOL−FRSなどの薬理学的および/または生理学的に適切なキャリア、または、それだけには限定されないが、ラクトビオン酸カリウム、リン酸カリウム、ラフィノース、アデノシン、アロプリノール、ペンタデンプン、プロスタグランジンE1、ニトログリセリン、および/もしくはN−アセチルシステインと混合した蒸留水もしくは脱イオン水が含まれる溶液などの保存溶液と、溶液内で組み合わせ得る。典型的には、注射する細胞は、細胞を培養するために使用する細胞培養培地に懸濁させる。用いる保存溶液は、BioLifeSolutions(ワシントン州Bothell)のHYPOTHERMOSOL−FRSなどの、標準の臓器および生物学的組織の保存用の水性の冷貯蔵溶液に類似であり得る。
【0159】
細胞およびキャリアを組み合わせて、注射に適した懸濁液を形成し得る。それぞれの注射には、典型的には約1.0μl〜約10μlの組成物または懸濁液が含まれる。注射は、任意の適切な針、シリンジまたは他の機器を用いて行い得る。組成物または懸濁液を充填した、25ゲージの針を備えたシリンジを使用し得る。あるいは、無ハブのインスリンシリンジを用いて、組成物を哺乳動物の皮膚内に注射してもよい。また、懸濁液は、皮膚の表面の切開上に組成物または懸濁液を塗布すること、または組成物もしくは懸濁液を人工的に作製した創傷内にピペットで移すことなどの、他の適切な方法によっても送達し得る。
【0160】
同種異系源に由来する真皮細胞および/または表皮細胞の使用は、移植した細胞の拒絶を防止するために、免疫抑制剤の投与、組織適合抗原の改変、または障壁デバイスの使用を必要とし得る。細胞は、単独で、またはレシピエント被験体における移植した細胞に対する免疫応答を阻害もしくは低下させるための障害物(barrier)もしくは薬剤と併せて投与することができる。たとえば、被験体の正常の応答を阻害または妨害するために、免疫抑制剤を被験体に投与することができる。免疫抑制剤は、被験体においてT細胞/またはB細胞の活性を阻害する免疫抑制性薬、またはT細胞に対する抗体であり得る。適切な免疫抑制薬は市販されている。免疫抑制剤は、所望の治療効果(たとえば細胞の拒絶の阻害)を達成するために十分な用量で被験体に投与することができる。
【0161】
一部の実施形態では、毛髪成長を増強するために、細胞を移植する前、それと同時に、および/またはその後に、被験体を、局所的および/または全身的に、毛髪成長促進物質で処置する。適切な毛髪成長促進物質には、たとえば、すべて市販されている、ミノキシジル、シクロスポリン、および天然または合成のステロイドホルモン、ならびにそのエンハンサーおよびアンタゴニスト、たとえば抗アンドロゲンが含まれ得る。
【0162】
B.終毛の誘導
別の実施形態は、軟毛が終毛となるように誘導する方法を提供する。軟毛とは、小児および成人の身体を覆う、細い、色素のない毛髪である(ピーチファズ(peach fuzz))。終毛とは、発達した毛髪であり、より短くより細い軟毛よりも、一般により長く、より粗く、より太く、より色が濃い。軟毛の成長はホルモンによって影響を受けない一方で、終毛の成長はホルモンによって影響を受ける。また、軟毛は男性型禿頭症にも存在する。
【0163】
一実施形態では、開示したバイオマーカーのうちの1つ以上を発現するDP細胞および/またはDS細胞などの、発毛性真皮細胞について富化された皮膚細胞の集団を、上記のように皮膚に注射する。富化された発毛性真皮細胞を上記のように得て、これらは典型的には自己細胞または同種異系細胞である。細胞を、軟毛または軟毛の毛嚢に隣接して注射する。可能な限り多くの軟毛の毛嚢が終毛の毛嚢となるように誘導するために、富化された発毛性真皮細胞の複数回の注射を、軟毛を含有する皮膚の領域に送達することができる。注射の回数および注射する細胞の体積は、当業者によってルーチン的に決定できることが理解される。
【0164】
別の実施形態では、富化された発毛性真皮細胞は、毛嚢の形成を誘導し、軟毛の毛嚢が終毛の毛嚢となるように誘導するのに有効な量で、皮膚に注射する。一実施形態では、注射する細胞の数は、約2週間〜約12週間の期間に毛嚢形成を誘導するのに有効である。別の実施形態では、注射した細胞は、約2週間〜約12週間の期間に軟毛からの終毛の形成を誘導する。
【実施例】
【0165】
(実施例1)
毛髪誘導能力を有するおよび毛髪誘導能力を有さない遺伝子マーカーの同定
毛髪誘導能力を有するおよび毛髪誘導能力を有さない遺伝子マーカーの同定は、2つの部分で行った。第1に、DP/DS細胞で発現され、線維芽細胞またはケラチノサイトでは発現されない遺伝子を同定した。マイクロアレイ分析を用いて遺伝子発現をこれらの細胞型において比較した。第2に、DP/DS細胞中で発現される選択された遺伝子をさらにスクリーニングして、毛髪誘導能力を有するおよび毛髪誘導能力を有さないDP/DS細胞間のRNA発現を比較した。リアルタイム定量的PCR(qPCR)分析を用いて遺伝子発現をこれらの細胞型で比較した。
材料および方法
マーカーの同定に使用した方法論
全RNAを9個の細胞培養試料および3個の新しく単離した組織試料から調製した。12個の試料は以下の群に分けられた:
第1群:3人の独立したドナーからの培養したヒト真皮線維芽細胞(HDF)、
第2群:3人の独立したドナーからの、培養したヒトケラチノサイト(HK)
第3群:3人の独立したドナーからの培養した真皮乳頭細胞(DP細胞)、および
第4群:3つの独立したドナーのプールからの新しく単離した真皮乳頭(DPfr)。
【0166】
RNAの抽出、精製、分析、標識、マイクロアレイ上のプロファイリングおよび一次マイクロアレイデータ分析は、ALMAC Diagnostics(米国ノースカロライナ州Durham)によって、マイクロアレイ実験に関する最小情報(Minimum Information About a Microarray Experiment、MIAME)の標準に従って行った(Brazmaら、2001年、Nature Genetics、29巻:365〜371頁およびMGED Societyのウェブサイトhttp://www.mged.org/Workgroups/MIAME/miame_2.0.htmlを参照)。
【0167】
12個のRNA試料を、分光測光法およびAgilent Bioanalyzer分析によって品質について評価した。高品質のRNA試料を使用して標識した核酸試料を作製し、これらをAffymetrixヒトゲノムU133 Plus2アレイ上でプロファイリングした。核酸調製物を、NuGEN(商標)Ovation(商標)RNA増幅システムV2を用いて増幅した(http://www.nugeninc.com/nugen/index.cfm/products/amplification−systems/ovation−amp−v2/?keywords=3100−12を参照)。その後、増幅したcDNAを、FL−Ovation(商標)cDNAビオチンモジュールV2を用いて標識した(http://www.nugeninc.com/nugen/index.cfm/products/target−prep−modules/fl−ovation−biotin−v21/?keywords=4200−12を参照)。
【0168】
生じた標識されたcDNAをAffymetrix GeneChip(登録商標)アレイ上にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション後、アレイを適切なフルイディクススクリプトを使用したGeneChip(登録商標)フルイディクスステーション450を用いて洗浄および染色した後、Affymetrix自動ローダー回転ラック内に挿入し、GeneChip(登録商標)スキャナー3000を用いて走査した。
【0169】
Rosetta Resolver遺伝子発現分析システムをマイクロアレイのデータ分析に用いた。データの品質管理には、データ配布プロット分析、階層的クラスタリング、およびデータ整理分析が含まれており、主成分分析(PCA)をデータに適用して主成分として公知の1組の発現パターンを生成した。域外値は検出されず、12個すべての試料をデータ分析に使用した。
【0170】
データ分析
複数の試験補正(FDRを調整したP値<0.001および事後p値<0.001)を用いた統計分析(ANOVA)を使用して、バックグラウンド補正および3×標準偏差(>7.94)および比誤差(ratio error)p値<0.01のフィルターを通った、より低いストリンジェンシーの遺伝子に基づいた、3つの事後の比較(それぞれDP細胞対DPfr、HDF、およびHK)のための「ストリンジェントな遺伝子リスト」を作成した。
候補の妥当性確認
ストリンジェントな遺伝子リストからの108個の候補を、以下にプロファイリングされた遺伝子発現の相対的レベルに基づきさらなる妥当性確認のために選択した:
1.DPfr>DP細胞>(HDFおよびHK)
2.DP細胞>DPfr>(HDFおよびHK)。
【0171】
このさらなる妥当性確認は、標準の方法を用いたQPCRによって行った。妥当性確認を増幅したおよび増幅していないRNA試料の両方で行なったところ、結果は非常に類似しており、これは、RNA増幅が試料において顕著な変動性を導入しなかったことを示していた。
【0172】
ストリンジェントな遺伝子リストからの合計80個の候補が、上記1または2における所望の遺伝子発現プロファイルに当てはまる。それぞれの候補転写物は、特異的なヌクレオチド配列(標的配列)に対応する、1つ以上の特異的なAffymetrixプローブIDによって同定する。
QPCRを用いたさらなるスクリーニング
全RNAを、3人の独立したドナーからの毛髪誘導能力を有するDP細胞および3人の独立したドナーからの毛髪誘導能力を有さないDP細胞から調製した。
【0173】
Affymetrix標的ヌクレオチド配列が由来するヌクレオチド配列に基づいて、80個の候補遺伝子のQPCRプライマーを設計した。QPCR分析は、標準の方法を用いたQPCRによって行った。
結果
毛髪誘導性のDP細胞および/またはDS細胞で発現され、非誘導性のDP細胞および/またはDS細胞では発現されなかったいくつかの配列を同定した。表1は、毛髪誘導性DP/DS細胞で優先的に発現されるこれらのオリゴヌクレオチドマーカー配列のリストを、様々な公的データベースによって使用されている関連する配列識別子と共に含有する。
【0174】
【表1−1】

【0175】
【表1−2】

本明細書中で提供する特定のオリゴヌクレオチドマーカーは、本発明によるポリペプチドマーカーとして使用することができる1つ以上のポリペプチドをコードしている。具体的には、これらのポリペプチドマーカーは配列番号22〜46である。表2は、これらのポリペプチドマーカー配列のリストを、様々な公的データベースによって使用されている関連するオリゴヌクレオチド配列の識別子と共に含有する。表2から認めることができるように、様々なオリゴヌクレオチドマーカーは、オリゴヌクレオチドマーカーのmRNAスプライシングの変動が原因で、1つを超えるポリペプチドをコードしている。
【0176】
【表2−1】

【0177】
【表2−2】

別段に定義しない限りは、本明細書中で使用したすべての技術用語および科学用語は、開示した発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で引用した出版物およびそのために引用した材料は、具体的に参考として組み込まれている。
【0178】
当業者は、本明細書中に記載した本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識する、または日常的な範囲の実験を用いて確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚細胞の集団を、セルグリシン(SRGN)、Src様アダプター−コードポリペプチド3(SLA)、トロンボモジュリン(THBD)、Runt関連転写因子2(RUNX2)、Runt関連転写因子3(RUNX3)、プロトカドヘリン17(PCDH17)、リンパ球抗原75(LY75)、胎盤増殖因子(PGF)、アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質結合性ファミリーAメンバー2(APBA2)、プロスタグランジンE合成酵素(PTGES)、ミオシンIF(MYO1F)、Gタンパク質共役型受容体84(GPR84)、転写延長因子A(SII)様2(TCEAL2)、コラーゲンXXIII型アルファ1(COL23A1)、ST8アルファ−N−アセチル−ノイラミニドアルファ−2,8−シアリルトランスフェラーゼ4(ST8SIA4)、マトリックスメタロペプチダーゼ8(MMP8)、発生多能性関連4(DPPA4)、内皮細胞特異的分子2(ECSM2)、またはその組合せに特異的な結合部分と接触させるステップと、
該皮膚細胞上の該結合部分の存在についてアッセイするステップであって、該皮膚細胞上での該結合部分の検出が、該皮膚細胞が発毛性真皮細胞であることの指標であるステップと
を含む、発毛性真皮細胞を検出する方法。
【請求項2】
前記結合部分が抗体またはその抗原結合断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合部分を、検出可能な標識で標識する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出可能な標識が、放射性同位元素、フルオロフォア、または酵素からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記結合部分が、免疫学的検出、分光測光法、蛍光分光法、または質量分析法を用いて検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記発毛性真皮細胞を、細胞分取法を用いて単離する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞分取法が、蛍光標示式細胞分取(FACS)または磁気ビーズ細胞分取(MACS)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記発毛性真皮細胞を、磁気ビーズ単離を用いて単離する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
皮膚細胞の集団からの核酸試料を、ストリンジェントな条件下で配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21の核酸配列、またはその相補体からなるオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブと接触させるステップと、
該オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブと該核酸試料とのハイブリダイゼーションを検出するステップであって、ハイブリダイゼーションの検出が、発毛性真皮細胞が該皮膚細胞集団に存在することの指標であるステップと
を含む、皮膚細胞集団の発毛性真皮細胞を検出する方法。
【請求項10】
前記皮膚細胞の集団が、真皮乳頭(DP)細胞、真皮鞘(DS)細胞、またはその組合せの培養物に由来する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
不均一な皮膚細胞集団を提供するステップと、
該皮膚細胞集団から、セルグリシン(SRGN)、Src様アダプター−コードポリペプチド3(SLA)、トロンボモジュリン(THBD)、Runt関連転写因子2(RUNX2)、Runt関連転写因子3(RUNX3)、プロトカドヘリン17(PCDH17)、リンパ球抗原75(LY75)、胎盤増殖因子(PGF)、アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質結合性ファミリーAメンバー2(APBA2)、プロスタグランジンE合成酵素(PTGES)、ミオシンIF(MYO1F)、Gタンパク質共役型受容体84(GPR84)、転写延長因子A(SII)様2(TCEAL2)、コラーゲンXXIII型アルファ1(COL23A1)、ST8アルファ−N−アセチル−ノイラミニドアルファ−2,8−シアリルトランスフェラーゼ4(ST8SIA4)、マトリックスメタロペプチダーゼ8(MMP8)、発生多能性関連4(DPPA4)、内皮細胞特異的分子2(ECSM2)、またはその組合せを発現する細胞を選択し、それによって、発毛性真皮細胞について富化された第2の細胞の集団を形成するステップと
を含む、富化された発毛性真皮細胞の集団を産生する方法。
【請求項12】
前記発毛性真皮細胞が、真皮乳頭細胞、真皮鞘細胞、またはその組合せである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記発毛性真皮細胞を、SRGN、SLA、THBD、RUNX2、RUNX3、PCDH17、LY75、PGF、APBA2、PTGES、MYO1F、GPR84、TCEAL2、COL23A1、ST8SIA4、MMP8、DPPA4、またはECSM2に対する抗体を用いて、蛍光標示式細胞分取器または磁気ビーズを介して選択する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記不均一な皮膚細胞集団が、真皮乳頭細胞、真皮鞘細胞、またはその組合せの培養物に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法によって産生される発毛性真皮細胞の集団。
【請求項16】
請求項14に記載の発毛性真皮細胞および表皮細胞を含む皮膚細胞集団。
【請求項17】
前記表皮細胞が、被験体に投与した場合に毛嚢形成を誘導するのに有効な、表皮細胞対真皮細胞の比で存在する、請求項16に記載の皮膚細胞集団。
【請求項18】
細胞培養物または輸送容器内にある、請求項16に記載の皮膚細胞集団。
【請求項19】
前記細胞を前記皮膚の開口部に注射するデバイス内にある、請求項16に記載の皮膚細胞集団。
【請求項20】
前記真皮細胞がヒト真皮細胞である、請求項16から19のいずれか一項に記載の皮膚細胞集団。
【請求項21】
前記表皮細胞がヒト表皮細胞である、請求項20に記載の皮膚細胞集団。
【請求項22】
被験体に毛嚢形成を誘導する方法であって、該被験体に、有効量の請求項14から20のいずれか一項に記載の細胞を投与するステップを含む方法。
【請求項23】
前記細胞を、毛髪脱落を経験している前記被験体上の部位に、毛嚢形成を誘導するのに有効な量で投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記毛髪脱落が、男性ホルモン性脱毛症、創傷、外傷、瘢痕、休止期脱毛、遺伝型禿頭症が原因である、または毛髪成長を減少させるもしくは毛髪の脱落を引き起こすホルモン障害に伴う、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記被験体に投与する前記細胞が、自己細胞または同種異系細胞である、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−500474(P2013−500474A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521825(P2012−521825)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/043042
【国際公開番号】WO2011/011677
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(511045534)アデランス リサーチ インスティテュート,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】