説明

発泡ゴム組成物

【課題】加硫発泡後における衝撃吸収性および吸音性に優れる発泡ゴム組成物を提供する。
【解決手段】架橋可能なゴム成分100質量部と、充填剤10〜150質量部と、ポリ乳酸系樹脂1〜30質量部と、発泡剤と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架橋可能なゴム成分と発泡剤とを含有する発泡ゴム組成物が知られている。加硫発泡後の発泡ゴム組成物は、緩衝材や吸音材、具体的には、自動車部品等の工業用部品として広く用いられている。
【0003】
また、例えば特許文献1には、ゴム成分と発泡剤とに対してスチレン系樹脂等を配合した発泡ゴム組成物が開示されている。このような発泡ゴム組成物は、スコーチタイムに優れることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−204539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、加硫発泡後の発泡ゴム組成物は緩衝材や吸音材に用いられることから、加硫発泡後における衝撃吸収性および吸音性がより優れる発泡ゴム組成物の開発が望まれている。例えば、特許文献1に開示された発泡ゴム組成物は、発泡倍率が低く、十分な衝撃吸収性および吸音性が得られていない。
そこで、本発明は、加硫発泡後における衝撃吸収性および吸音性に優れる発泡ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、架橋可能なゴム成分、発泡剤、および充填剤に対して特定量のポリ乳酸を配合することにより、加硫発泡後の発泡ゴム組成物の衝撃吸収性および吸音性が優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供する。
【0007】
(1)架橋可能なゴム成分100質量部と、充填剤10〜150質量部と、ポリ乳酸系樹脂1〜30質量部と、発泡剤と、を含有する発泡ゴム組成物。
【0008】
(2)上記充填剤が、シラノール基を有する充填剤である上記(1)に記載の発泡ゴム組成物。
【0009】
(3)上記発泡ゴム組成物の発泡倍率が、50%以上である上記(1)または(2)に記載の発泡ゴム組成物。
【0010】
(4)上記架橋可能なゴム成分が、ジエン系ゴムである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の発泡ゴム組成物。
【0011】
(5)上記架橋可能なゴム成分が、オレフィン系ゴムである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の発泡ゴム組成物。
【0012】
(6)上記発泡剤が、熱分解によってガスが発生する化学発泡剤である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の発泡ゴム組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加硫発泡後における衝撃吸収性および吸音性が優れる発泡ゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の発泡ゴム組成物は、架橋可能なゴム成分100質量部と、充填剤10〜150質量部と、ポリ乳酸系樹脂1〜30質量部と、発泡剤と、を含有する発泡ゴム組成物である。以下に、本発明の発泡ゴム組成物に含有される各成分について説明する。
【0015】
<架橋可能なゴム成分>
本発明のゴム組成物に含有されるゴム成分は、加硫剤による架橋が可能なゴム成分であれば特に限定されず、その具体例としては、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等が挙げられ、中でも、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、ブチルゴムが好ましい。ジエン系ゴムは、架橋性と弾性とに優れ、衝撃吸収性および吸音性も良好であるという観点から好ましい。また、オレフィン系ゴムは、ゴムの耐候性に優れ、安定して衝撃吸収性、良好性が持続する特性を持つという観点から好ましい。また、ブチルゴムは、衝撃吸収性および吸音性により優れるという観点から好ましい。ブチルゴムが衝撃吸収性等に優れるのは、嵩高いゴム分子内部での摩擦が起こりやすいために分子運動性が低いことによる。
より具体的には、ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられ、中でも、SBRが好ましい。
オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等が挙げられ、中でも、EPDMが好ましい。
ブチルゴムとしては、例えば、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)等が挙げられる。
これらのゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
<充填剤>
本発明の発泡ゴム組成物に含有される充填剤としては、特に限定されず従来公知のものを使用できるが、後述するポリ乳酸系樹脂との親和性および相互作用という観点から、表面の少なくとも一部にシラノール基(Si−OH)を有する充填剤であることが好ましい。
シラノール基を有する充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、タルク等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等を挙げることができる。シリカは、平均凝集粒径が、5〜50μmのものが好ましく、5〜30μmのものがより好ましい。
クレーとしては、具体的には、例えば、T−クレー、カオリンクレー、ろう石クレー、セリサイトクレー、焼成クレー、シラン改質クレー等が挙げられる。
【0017】
上記充填剤の含有量は、上記架橋可能なゴム成分100質量部に対して10〜150質量部であり、20〜100質量部であるのがより好ましい。上記充填剤の含有量が10質量部よりも少ない場合、発泡ゴム組成物の機械的強度が小さく、加硫発泡後における衝撃吸収性および吸音性も小さくなってしまう。一方、上記充填剤の含有量が150質量部よりも多い場合、発泡ゴム組成物の粘度が上がりすぎて成型が困難になってしまう。よって、上記充填剤の含有量がこの範囲であれば、加硫発泡後における衝撃吸収性および吸音性が良好になり、成型加工性も良好となる。
【0018】
<ポリ乳酸系樹脂>
本発明の発泡ゴム組成物に含有されるポリ乳酸系樹脂は、乳酸の単独重合体および/または乳酸の共重合体である。
【0019】
(乳酸の単独重合体)
乳酸の単独重合体は、ポリ乳酸であり、例えば、L体のみの共重合体(L体比率100%)、D体のみの共重合体(D体比率100%)、L体とD体との共重合体等が挙げられる。
L体とD体との共重合比(L体/D体)は、モル比で1/99〜99/1が好ましく、45/55〜97/3であることがより好ましい。
また、L体とD体との共重合体としては、L体比率の大きいポリ乳酸(第1の共重合体)とD体比率の大きいポリ乳酸(第2の共重合体)とのブレンド体であってもよい。
ブレンド体においては、第1の共重合体のL体比率は、95モル%以上が好ましく、97モル%以上がより好ましい。また、第2の共重合体の共重合比(L体/D体)は、モル比で1/99以上95/5未満が好ましく、1/99以上85/15未満がより好ましい。なお、第1の共重合体のL体比率が100%である場合は、第1の共重合体であるポリ乳酸は、L体の単独重合体である。
ブレンド体においては、第1の共重合体と第2の重合体との質量比(第1の重合体/第2の重合体)は、10/90〜50/50であることが好ましく、15/85〜50/50であることがより好ましい。
【0020】
(乳酸の共重合体)
乳酸の共重合体は、乳酸以外のヒドロキシ酸、ラクトンおよび乳酸と共重合可能なジエン系化合物からなる群から選択される1種のモノマーと、乳酸との共重合体である。
乳酸以外のヒドロキシ酸としては、具体的には、例えば、ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、クエン酸、リシノール酸、シキミ酸、サリチル酸、クマル酸等が挙げられる。
ラクトンとしては、具体的には、例えば、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン等が挙げられる。
乳酸と共重合可能なジエン系化合物としては、具体的には、例えば、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
また、乳酸以外の成分と乳酸との共重合体は、乳酸が主成分であれば、ブロック共重合体、ランダムブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト重合体のいずれでもよいが、ブロック共重合体であるのが好ましい。
【0021】
上記ポリ乳酸系樹脂の融点は、融点が150℃以下であるのが好ましく、135℃以下であるのがより好ましい。なお、L体とD体との共重合体において、共重合比(L体/D体)が90/10〜10/90である場合は、明確な融点はないため、便宜上、上記融点は軟化点のことをいう。
また、同様の理由から、数平均分子量が1000〜10000であるのが好ましく、2000〜8000であるのがより好ましい。
ここで、融点は、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により、昇温速度10℃/minで測定した値である。
また、数平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した数平均分子量(ポリスチレン換算)であり、測定にはテトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルムを溶媒として用いるのが好ましい。
【0022】
上記ポリ乳酸系樹脂の含有量は、上記架橋可能なゴム成分100質量部に対して1〜30質量部であり、1〜20質量部であるのがより好ましく、3〜15質量部であるのがさらに好ましい。本発明の発泡ゴム組成物は、この含有量で上記ポリ乳酸系樹脂を含有することにより、上記ポリ乳酸系樹脂を含有しない発泡ゴム組成物と比較して、加硫発泡後の衝撃吸収性および吸音性が良好になる。
これは、詳細なメカニズムは不明であるが、充填剤(特に、シラノール基を有する充填剤)とポリ乳酸系樹脂とが相互作用によってネットワークを組み、発泡ゴム組成物に歪みが加わった際に、このネットワークが破壊されてエネルギーロスが生じるからであると考えられる。
【0023】
本発明の発泡ゴム組成物は、上記架橋可能なゴム成分100質量部に対して上記ポリ乳酸系樹脂を10質量部程度以上含有する場合であって、かつ、上記充填剤(特に、シラノール基を有する充填剤)を含有する場合には、上記充填剤および上記ポリ乳酸系樹脂を、これらを予め混合して得られるマスターバッチとして含有するのが好ましい。
ここで、マスターバッチの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、上記充填剤と上記ポリ乳酸系樹脂とを混合した後にペレタイザーでペレット化する方法等が挙げられる。
また、上記充填剤および上記ポリ乳酸系樹脂は、これらを予め溶媒(例えば、トルエン、アセトン、クロロホルム等)中で混合した後に、溶媒を除去し、乾燥して得られるポリ乳酸表面処理充填剤として含有させるのが好ましい。
【0024】
<発泡剤>
本発明の発泡ゴム組成物は、発泡剤を含有することにより気泡が形成される。上記発泡剤としては、例えば、熱分解によってガスが発生する化学発泡剤を好ましく用いることができる。このような化学発泡剤としては、熱分解によってガスが発生する無機発泡剤、熱分解によってガスが発生する有機発泡剤等が挙げられる。
【0025】
熱分解によってガスが発生する無機発泡剤としては、具体的には、例えば、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩;重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウムなどの重炭酸塩;亜硝酸アンモニウムなどの亜硝酸塩;ホウ水素化ナトリウムなどの水素化物;等が挙げられる。
【0026】
熱分解によってガスが発生する有機発泡剤としては、例えば、ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルホニルヒドラジド系化合物等が挙げられる。ニトロソ化合物としては、具体的には、例えば、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミド等が挙げられる。アゾ化合物としては、具体的には、例えば、アゾジカルボソアミド、アゾビスイソブチルニトリル、ジアゾアミノベンゼン等が挙げられる。スルホニルヒドラジド系化合物としては、具体的には、例えば、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。また、その他に、有機発泡剤として、具体的には、例えば、p−トルエンスルホニルアジド、4,4′−ジフェニルスルホニルアジド、4,4′−オキシビスベンゾソスルホニルヒドラジド等を用いることもできる。
このような有機発泡剤としては、ニトロソ化合物が好ましく、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミンであることがより好ましい。この理由としては、熱分解温度が加硫温度に適した領域であること、単位量当たりのガス発生量が多いこと、分解残渣に加硫の促進効果があること等が挙げられる。
なお、このような有機発泡剤を用いる場合には、適宜、発泡促進助剤(例えば、尿素)を併用することができる。
【0027】
また、上記発泡剤として、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を殻とする微細な中空体であるマイクロバルーンを用いることもできる。
【0028】
上記発泡剤の含有量は、上記架橋可能なゴム成分100質量部に対して、1〜20質量部であるのが好ましく、1〜15質量部であるのがより好ましい。上記発泡剤の含有量がこの範囲であれば、得られる発泡ゴム組成物の発泡倍率が適切になるからである。
【0029】
<カーボンブラック>
本発明の発泡ゴム組成物には、カーボンブラックを含有させることができる。上記カーボンブラックとしては、具体的には、例えば、SAF、ISAF、HAF等を挙げることができる。
カーボンブラックの含有量は、上記架橋可能なゴム成分100質量部に対して、1〜50質量部であるのが好ましく、5〜20質量部であるのがより好ましい。
【0030】
<金属化合物>
本発明の発泡ゴム組成物は、上記ポリ乳酸系樹脂の分解を促進し、上記充填剤(シラノール基を有する充填剤)と上記ポリ乳酸系樹脂とが相互作用する部位を増加させるという観点から、金属化合物を含有するのが好ましい。
上記金属化合物としては、具体的には、例えば、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、銅化合物等が挙げられ、なかでも亜鉛化合物であるのが好ましい。上記亜鉛化合物としては、具体的には、例えば、酸化亜鉛、有機リン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛が挙げられ、なかでも酸化亜鉛であるのが好ましい。
上記金属化合物の含有量は、上記架橋可能なゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜5質量部であるのがより好ましい。
【0031】
<シランカップリング剤>
本発明の発泡ゴム組成物には、シランカップリング剤を含有させることができる。
上記シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基等の官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
このような官能基を有するシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランなどのエポキシ基を有するシランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するシランカップリング剤;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基を有するシランカップリング剤;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記シランカップリング剤の含有量は、上記架橋可能なゴム成分100質量部に対して0.5〜10質量部であるのが好ましく、1〜8質量部であるのがより好ましく、2〜6質量部であるのがさらに好ましい。
【0033】
<その他の添加剤>
本発明の発泡ゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤を含有することができる。
上記添加剤としては、具体的には、例えば、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、難燃剤、耐候剤、耐熱剤等が挙げられる。
【0034】
加工助剤としては、具体的には、例えば、リノール酸、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸の塩;上記高級脂肪酸のエステル類;等が挙げられる。
【0035】
加硫剤としては、具体的には、例えば、硫黄;TMTDなどの有機含硫黄化合物;ジクミルペルオキシドなどの有機過酸化物;等が挙げられる。
【0036】
加硫促進剤としては、具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)などのスルフェンアミド類;1,3−ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)、1−o−トリルビグアニド(OTBG)などのグアニジン類;等が挙げられる。
【0037】
本発明の発泡ゴム組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述した各成分を配合した加硫発泡前の発泡ゴム組成物を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練等することにより調製できる。
【0038】
次に、得られた加硫発泡前の発泡ゴム組成物について発泡および加硫を行う。
発泡条件は、使用する発泡剤の種類により異なるため特に限定されないが、熱分解によってガスが発生する化学発泡剤を用いる場合の温度条件としては、100〜180℃が好ましく、130〜160℃がより好ましい。
また、加硫条件も特に限定されないが、熱分解によってガスが発生する化学発泡剤を用いる場合には、加硫を発泡と同時に行うことができる。
なお、発泡ゴム組成物に対して、加硫後に加熱処理を施すことが好ましい。これにより、加硫後の衝撃吸収性等がより優れる。
【0039】
加硫発泡後の本発明の発泡ゴム組成物は、衝撃吸収性および吸音性に優れることから、例えば、緩衝材、吸音材等として用いられることが好ましく、具体的には、自動車部品、家屋の内装材、建材、家電機器部品などの工業用部品等として好適に用いられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に従ってより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
第1表に示す組成(単位は質量部)になるように、各成分を配合してバンバリーミキサーにて5分間混練し、加硫発泡前の発泡ゴム組成物を調製した。次に、調製した加硫発泡前の発泡ゴム組成物を、150℃、45分間の条件で、加硫発泡した。
【0042】
<発泡倍率>
各例に係る発泡ゴム組成物について、JIS K6268:1998に準拠して加硫発泡前後の密度を測定し、測定した比重から体積を算出した。そして、
{(加硫発泡後の体積/加硫発泡前の体積)×100}−100
という式によって得られた値を、発泡倍率(体積増加率)[%]として求めた。結果を第1表に示す。なお、発泡剤を含有しない比較例1および3の発泡倍率については、発泡しないため「−」で示す。
【0043】
<衝撃吸収性>
JIS K6255−1996に準拠して、各例に係る加硫発泡後の発泡ゴム組成物について、20℃下で、振り子状に細いワイヤーで吊り下げられた金属棒を29φ×13tmmの大きさの試料にぶつけ跳ね返ってくるときの高さから反発弾性率[%]を求め、衝撃吸収性を評価した。結果を第1表に示す。
【0044】
<吸音性>
JIS A1405に準拠して、各例に係る加硫発泡後の発泡ゴム組成物について、室温下で、垂直入射吸音率[%]を測定することにより、吸音性を評価した。結果を第1表に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・SBR:スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(商品名:Nipol 1502、日本ゼオン社製)
・EPDM:エチレン−プロピレン−ジエンゴム(商品名:エスプレン 606、住友化学社製)
・IIR:臭素化ブチルゴム(商品名:EXXON Bromobutyl 2255、EXXON Mobile社製)
・シリカ:沈降シリカ(商品名:Zeosil 165GR、Rhodia Silica Korea社製)
・クレー:カオリンクレー(商品名:カオリンクレー、竹原化学社製)
・ポリ乳酸1:D体比率4.0モル%(商品名:LACEA H−440、三井化学社製、融点155℃、重量平均分子量150000)
・ポリ乳酸2:D体比率12.7モル%(商品名:NatureWorks 4060D、NatureWorks社製、軟化点81℃、重量平均分子量180000)
・カーボンブラック:HAF−HS(ショウブラックN339、昭和キャボット社製)
・加工助剤:ステアリン酸(商品名:ビーズステアリン酸、日本油脂社製)
・金属化合物:酸化亜鉛(商品名:亜鉛華 3号、正同化学社製)
・シランカップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE−403、信越化学社製)
・加硫剤:硫黄(商品名:金華印微粉硫黄,鶴見化学社製)
・加硫促進剤1:CBS(商品名:ノクセラー CZ−G、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤2:DPG(商品名:サンセラーD−G、三新化学社製)
・発泡剤:N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン+尿素(商品名:セルラーCK#54、永和化成工業社製)
【0047】
第1表に示す結果から、実施例1〜8は、加硫発泡後の衝撃吸収性および吸音性に優れることが分かった。
特に、実施例2と比較例2とを比較することによって、ポリ乳酸系樹脂を含有することで加硫発泡後の衝撃吸収性および吸音性がより優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋可能なゴム成分100質量部と、
充填剤10〜150質量部と、
ポリ乳酸系樹脂1〜30質量部と、
発泡剤と、
を含有する発泡ゴム組成物。
【請求項2】
前記充填剤が、シラノール基を有する充填剤である請求項1に記載の発泡ゴム組成物。
【請求項3】
前記発泡ゴム組成物の発泡倍率が、50%以上である請求項1または2に記載の発泡ゴム組成物。
【請求項4】
前記架橋可能なゴム成分が、ジエン系ゴムである請求項1〜3のいずれかに記載の発泡ゴム組成物。
【請求項5】
前記架橋可能なゴム成分が、オレフィン系ゴムである請求項1〜3のいずれかに記載の発泡ゴム組成物。
【請求項6】
前記発泡剤が、熱分解によってガスが発生する化学発泡剤である請求項1〜5のいずれかに記載の発泡ゴム組成物。

【公開番号】特開2011−79955(P2011−79955A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233117(P2009−233117)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】