説明

発泡ビーズ成形体及びその製造方法

【課題】軽量化と同時に優れた難燃性を維持し、成形加工性に優れ、かつ帯電防止性能に優れた発泡ビーズ成形体を提供すること。
【解決手段】ポリフェニレンエーテル系樹脂及び難燃剤を含有する基材樹脂と、帯電防止剤と、を含み、かつ、UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−0又はV−1である、発泡ビーズ成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ビーズ成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や電子機器の内部部品の材料として、従来プラスチックや金属が採用されてきた。プラスチックは金属等と比較して軽量であるため、電子機器、雑貨及び自動車用部品等に使用用途が拡大しているが、省エネルギー等の観点から、より軽量で、かつ強度や耐衝撃性等の物性により優れた材料が求められている。そのような材料の1つに、樹脂発泡成形体がある。
【0003】
樹脂発泡成形体は一般に電気絶縁性であるため、例えば、静電気による機器の故障を嫌う用途に使用する場合、帯電防止性能付与が必要になる。特に電子機器や自動車部材用途に使用する場合には、難燃性と帯電防止性能ともに必要である。
【0004】
難燃剤の添加によって、難燃性を付与した難燃性発泡ビーズが知られている(特許文献1、2)。また、帯電防止性能を付与した発泡体が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−95892号公報
【特許文献2】再表2003−004552号公報
【特許文献3】特開2003−238727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜2のように樹脂発泡成形体を用いることにより、軽量化は満足するものの、空気を多く含む発泡体は燃えやすく、難燃性を必要とする電子機器や自動車用部品には適用が不可能であった。
【0007】
軽量化と難燃性向上を両立するために難燃剤を使用すると、未発泡の樹脂では優れた難燃性を示すものの、発泡体に使用すると難燃性が著しく低下する。これは、同じサイズのサンプルで比較した場合、樹脂に比べ発泡体は単位体積あたりの樹脂量が少ないため、炭化層を形成しにくく、燃焼時間が長くなってしまうからである。また、未発泡の樹脂と比較して発泡体は樹脂量が少ない分、燃焼熱により軟化しやすくなり、結果として燃焼時の樹脂だれが発生しやすくなる。
【0008】
一方、難燃性向上のために発泡体への難燃剤の添加量を増加させると、難燃性は改善されるものの、機械物性が低下したり、樹脂を可塑化させる効果のあるものについては樹脂の耐熱性が低下したり、伸張粘度低下により発泡性を阻害する等の弊害が発生する。そのため、成形体への成形加工性だけでなく、複雑で微細な形状への加工を容易にし、かつ、軽量化と難燃性向上を同時に満足することは非常に困難であった。
【0009】
また、特許文献3のように帯電防止性能を付与することができても、低発泡倍率であり、軽量化という面でも不十分であった。
【0010】
さらに、UL94規格のV規格に適合する難燃性を有し、かつ帯電防止性能を付与させた樹脂発泡成形体を得ることは、技術的に非常に困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、軽量化と同時に優れた難燃性を維持し、成形加工性に優れ、かつ帯電防止性能に優れた発泡ビーズ成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記[1]〜[13]である。
[1]ポリフェニレンエーテル系樹脂及び難燃剤を含有する基材樹脂と、帯電防止剤と、を含み、かつ、UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−0又はV−1である、発泡ビーズ成形体。
[2]脂肪族炭化水素系ガスの濃度が1000体積ppm以下である、[1]に記載の発泡ビーズ成形体。
[3]前記基材樹脂が、更にポリスチレン系樹脂を含有する、[1]又は[2]に記載の発泡ビーズ成形体。
[4]前記基材樹脂が、更にゴム成分を含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の発泡ビーズ成形体。
[5]前記基材樹脂が、ポリフェニレンエーテル系樹脂40〜94質量%、難燃剤5〜20質量%、及びゴム成分0.3〜10質量%を含有し、残部がポリスチレン系樹脂からなる、[1]〜[4]のいずれかに記載の発泡ビーズ成形体。
[6]前記難燃剤が非ハロゲン系難燃剤である、[1]〜[5]のいずれかに記載の発泡ビーズ成形体。
[7]前記帯電防止剤の含有量が、前記基材樹脂100質量部に対して、1〜20質量部である、[1]〜[6]のいずれかに記載の発泡ビーズ成形体。
[8]前記帯電防止剤により表面の少なくとも一部が被覆されている、[1]〜[6]のいずれかに記載の発泡ビーズ成形体。
[9]前記帯電防止剤が、無機系導電剤、高分子型帯電防止剤及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[8]のいずれかに記載の発泡ビーズ成形体。
[10]独立気泡率が50%以上である、[1]〜[9]のいずれかに記載の発泡ビーズ成形体。
[11][1]〜[10]のいずれかに記載の発泡ビーズ成形体からなる電磁波吸収体。
[12]ポリフェニレンエーテル系樹脂及び難燃剤を含有する基材樹脂と、該基材樹脂100質量部に対して1〜20質量部の帯電防止剤とを混合し、押し出し発泡により発泡ビーズを形成する工程と、該発泡ビーズを成形型内に充填し、発泡させることにより発泡ビーズ成形体を得る工程と、を備える、[1]〜[10]のいずれかに記載の発泡ビーズ成形体の製造方法。
[13]ポリフェニレンエーテル系樹脂及び難燃剤を含有する基材樹脂を押し出し発泡することにより発泡ビーズを形成する工程と、該発泡ビーズを成形型内に充填し、発泡させることにより発泡体を得る工程と、濃度0.1〜15質量%の帯電防止剤溶液を前記発泡体に塗布するか、又は濃度0.1〜15質量%の帯電防止剤溶液に前記発泡体を浸漬する工程と、を備える、[1]〜[10]のいずれかに記載の発泡ビーズ成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、軽量化と同時に、未発泡樹脂の燃焼規格であるUL−94にも適合する優れた難燃性を有し、成形体への優れた成形加工性を示すとともに、微細で複雑な形状への加工も容易であり、かつ優れた帯電防止性能を有する発泡ビーズ成形体を提供することができる。
【0014】
本発明の発泡ビーズ成形体は、優れた耐熱性、難燃性、及び帯電防止性能を有しているため、これまで金属や未発泡樹脂では簡単になしえない複雑な形状の製品や部材、例えば大幅に単純化されたアセンブリを可能にする電子装置といった装置用のシャーシや自動車部材、OA機器の構造材、電磁波吸収体などを、高温環境下でも寸法精度良く提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について、以下具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0016】
本発明の発泡ビーズ成形体は、ポリフェニレンエーテル系樹脂及び難燃剤を含有する基材樹脂と、帯電防止剤と、を含み、かつ、UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−0又はV−1である。なお、発泡ビーズ成形体とは、発泡ビーズを成形して得られる成形体を意味する。
【0017】
本発明の発泡ビーズ成形体に用いる発泡ビーズは、基材樹脂(又は後述の基材樹脂と帯電防止剤との混合物)をビーズ状に発泡させたものである。発泡ビーズは、平均粒子径が0.5〜10mmであることが好ましく、0.7〜5mmであることがより好ましい。発泡ビーズの平均粒子径が、0.5〜10mmであると、複雑で微細な形状を有する発泡ビーズ成形体の成形が容易になる。
【0018】
発泡ビーズの密度は、0.033〜0.80g/ccであることが好ましく、0.04〜0.67g/ccであることがより好ましく、0.05〜0.5g/ccであることがさらに好ましい。発泡ビーズの密度が、0.033〜0.80g/ccであると、軽量化を満足しつつ、所望の難燃性を満足することが容易になる。
【0019】
発泡ビーズの発泡倍率は特には限定されないが、1.5〜30cc/gが好ましく、2〜20cc/gがより好ましい。発泡倍率が1.5〜30cc/gの範囲であると、軽量化のメリットを活かしつつ、優れた難燃性を維持しやすくなる傾向にある。多段階で所望の発泡倍率に調整する際には、一次発泡倍率は1.4〜10cc/gが好ましい。この範囲であると、セルサイズが均一になりやすく、二次発泡能も付与しやすくなる。
【0020】
発泡ビーズの独立気泡率は高い程よく、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。独立気泡率が50%以上であると、発泡ビーズ成形体への成形加工性がより優れる発泡ビーズとなる傾向にある。
【0021】
一般的に、発泡倍率が高くなるほど空気を多く含むために難燃性を達成しにくくなるが、本発明の発泡ビーズ成形体は、発泡倍率が高い場合でも、UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−1以上を満足する。UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)は、通常樹脂発泡体よりも難燃性を付与しやすい、未発泡の樹脂における難燃性の指標に用いられる測定方法である。具体的には、特定の大きさの試験片をクランプに垂直に取付け、20mm炎による10秒間接炎を行い、その有炎燃焼持続時間、固定用クランプの位置まで燃焼の有無、燃焼落下物による綿着火の有無などによりV−0、V−1、V−2、不適合と判断するものである。
【0022】
本発明の発泡ビーズ成形体は、上記UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−1以上を満足することにより、従来未発泡の樹脂や金属が主に用いられてきたような高い難燃性が要求される部材において、代替材料として用いること可能となり、難燃性と同時に軽量化・成形体への優れた成形加工性が得られる。
【0023】
発泡ビーズ成形体の独立気泡率は高い程よく、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。独立気泡率が50%以上であると、発泡ビーズ成形体の圧縮強度や残留歪等への悪影響が少なく、優れた物性を持つ発泡ビーズ成形体となる傾向にある。
【0024】
本発明の発泡ビーズ成形体における基材樹脂は、ポリフェニレンエーテル系樹脂と難燃剤を含有する。
【0025】
本明細書において、ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、下記一般式(1)で表される重合体のことをいう。ここで一般式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、又はハロゲンと一般式(1)中のベンゼン環との間に少なくとも2個の炭素原子を有するハロアルキル基若しくはハロアルコキシ基で第3α−炭素を含まないもの、を示す。また、nは重合度を表す整数である。
【化1】

【0026】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、重量平均分子量が20,000〜60,000であるものが好ましい。
【0027】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジラウリル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−ジフェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メトキシ−6−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−ステアリルオキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジベンジル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−クロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。この中でも特に、R及びRが炭素数1〜4のアルキル基であり、R及びRが水素若しくは炭素数1〜4のアルキル基のものが好ましい。これらは一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、他の1種類以上の樹脂と混合が可能であり、その例として、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリアミドに代表されるエンプラ系樹脂、ポリフェニレンスルファイドに代表されるスーパーエンプラ系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性向上の点から、ポリスチレン系樹脂と混合することが好ましい。
【0029】
本明細書において、ポリスチレン系樹脂とは、スチレン及びスチレン誘導体のホモポリマーに加え、スチレン及びスチレン誘導体を主成分とする共重合体のことをいう。スチレン誘導体として、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジフェニルエチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
ホモポリマーのポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリクロロスチレン等が挙げられ、共重合体のポリスチレン系樹脂としては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体、スチレン−N−アルキルマレイミド共重合体、スチレン−N−アルキル置換フェニルマレイミド共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−n−アルキルアクリレート共重合体、スチレン−n−アルキルメタクリレート共重合体、エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体のほか、ABS、ブタジエン−アクリロニトリル−α−メチルベンゼン共重合体等の三元共重合体も挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0031】
また、グラフト共重合体、例えば、スチレングラフトポリエチレン、スチレングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体、(スチレン−アクリル酸)グラフトポリエチレン、スチレングラフトポリアミド等も含まれる。これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ポリスチレン系樹脂としては、重量平均分子量が180,000〜500,000であるものが好ましい。なお、本明細書中において、重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
【0033】
基材樹脂中のポリスチレン系樹脂の含有量は特には限定されず、他成分が所望の含有量になるように適宜調整して使用される。
【0034】
難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤があり、有機系難燃剤としては、臭素化合物に代表されるハロゲン系化合物や、リン系化合物シリコーン系化合物に代表される非ハロゲン系化合物がある。無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムに代表される金属水酸化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンに代表されるアンチモン系化合物などが挙げられる。
【0035】
上記難燃剤の中でも、環境の観点から、非ハロゲン系難燃剤が好ましく、リン系、シリコーン系の難燃剤がより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0036】
リン系の難燃剤には、リン又はリン化合物を含むものを用いることができる。リンとしては赤リンが挙げられる。また、リン化合物として、リン酸エステルやリン原子と窒素原子の結合を主鎖に有するホスファゼン化合物群等が挙げられる。リン酸エステルとして、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート等が挙げられ、また、これらを各種置換基で変性した化合物や、各種の縮合タイプのリン酸エステル化合物も含まれる。この中でも、耐熱性、難燃性、発泡性の観点からトリフェニルホスフェートや一般式(2)で表されるリン酸エステル化合物が好ましい。
【0037】
【化2】


ここで、一般式(2)中、Q〜Qは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基を示す。一般式(2)におけるQ〜Qで好ましいのは水素又はメチル基である。一般式(2)におけるQ、Qで好ましいのは水素であり、Q、Qで好ましいのはメチル基である。一般式(2)におけるmは1以上の整数である。該リン酸エステル化合物はm量体の混合物であっても構わない。一般式(2)におけるn1〜n4は、それぞれ独立に1〜5の整数であり、n5及びn6は、それぞれ独立に1〜4の整数である。
【0038】
また、シリコーン系難燃剤には、(モノ又はポリ)オルガノシロキサン類を用いることができる。(モノ又はポリ)オルガノシロキサン類としては、例えば、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のモノオルガノシロキサン類、及びこれらを重合して得られるポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、これらの共重合体などのオルガノポリシロキサン類などが挙げられる。オルガノポリシロキサンの場合、主鎖や分岐した側鎖の結合基は、水素又はアルキル基、フェニル基であり、好ましくはフェニル基、メチル基、エチル基、及びプロピル基であるが、これに限定されない。末端結合基は、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、フェニル基、いずれも使用される。シリコーン類の形状にも特に制限はなく、オイル状、ガム状、ワニス状、粉体状、ペレット状などの任意のものが利用可能である。
【0039】
また、従来より知られた各種難燃剤及び難燃助剤、例えば、環状窒素化合物、その具体例としてはメラミン、アンメリド、アンメリン、ベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、メラミンシアヌレート、メラム、メレム、メトン、メロン等のトリアジン骨格を有する化合物及びそれらの硫酸塩、結晶水を含有する水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、ホウ酸亜鉛化合物、スズ酸亜鉛化合物等も用いてもよい。また1種だけでなく、複数組み合わせて含んでいてもよい。
【0040】
基材樹脂中には、発泡性向上の点からゴム成分が含まれているものがより好ましい。
【0041】
ゴム成分としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらは、ポリスチレン系樹脂からなる連続相中に粒子状に分散しているものが好ましい。これらゴム成分を添加する方法として、ゴム成分そのものを加えてもよく、スチレン系エラストマーやスチレン−ブタジエン共重合体等の樹脂をゴム成分供給源として用いてもよい。後者の場合、ゴム成分の比率(R)は下記式で計算できる。
R=C×Rs/100
C:ゴム成分供給源中のゴム濃度(質量%)
Rs:基材樹脂中のゴム供給源含有量(質量%)
【0042】
なお、基材樹脂中には、上記以外にも、他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、顔料、染料、耐候性改良剤、耐衝撃改質剤、ガラスビーズ、無機充填材、タルク等の核剤等を、発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0043】
特に、基材樹脂中にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を添加することが好ましい。PTFEは、燃焼試験時の液ダレ防止のために好適であり、難燃性改善に効果的である。
【0044】
基材樹脂は、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、難燃剤及びゴム成分を含むことが最も好ましい。この場合の各成分の含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂40〜94質量%、難燃剤5〜20質量%及びゴム成分0.3〜10質量%であり、残部がポリスチレン系樹脂からなることが好ましい。
【0045】
基材樹脂中のポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が40質量%以上であれば、耐熱性に優れ、さらに難燃性、特に燃焼時の樹脂だれ防止性能が著しく向上する。燃焼時の樹脂だれを防ぐには、(1)燃焼時間を短くし、(2)樹脂の耐熱性を上げる(軟化しにくくする)ことが重要となるが、難燃剤の添加量を増やすだけでは(2)には逆効果であり、より薄肉のサンプルでの樹脂だれを防止するには、ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量を40質量%以上にすることが好ましい。
【0046】
一方、ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が94質量%を超えると、発泡、成形等の加工に必要な温度が急激に高くなり、用役費がかさむだけでなく、特別な設備が必要になるなど、実生産性に欠ける。
【0047】
基材樹脂中のポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、より好ましくは45〜90質量%、さらにより好ましくは50〜85質量%である。含有量を45〜90質量%とすることにより、耐熱性を維持しつつ、発泡温度、成形温度がより低くなり、より加工しやすくなる。
【0048】
基材樹脂中の難燃剤の含有量は5〜20質量%が好ましい。難燃剤の含有量が5質量%以上であると、所望の難燃性が発現しやすくなる傾向にある。逆に、20質量%以下だと、難燃剤による基材樹脂の可塑化効果が適度となり、耐熱性が向上する傾向にある。さらに、発泡時の樹脂の伸張粘度が向上し、発泡倍率が上げられるようになり、発泡ビーズの独立気泡率が向上し、発泡ビーズ成形体への成形加工性に優れるようになる。このように、難燃性と発泡性のバランスを調整することは非常に重要である。
【0049】
基材樹脂中のゴム成分の含有量は0.3〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。0.3質量%以上であると所望の難燃性が発現しやすくなる。さらに、0.5質量%以上であると樹脂の柔軟性、伸びに優れ、発泡時に発泡セル膜が破膜しにくく、発泡倍率が上がり、発泡後も成形加工性に優れる発泡ビーズが得られ易くなる。難燃性を重視すると、ポリフェニレンエーテル系樹脂や難燃剤は、より多く添加する方が好ましいが、これらはどちらも添加量が増えると発泡性には悪影響を与える。そのような組成において、発泡性を付与させるのにゴム成分は好適である。これは特に、常温から徐々に温度を上げ、非溶融状態で樹脂を発泡させるビーズ発泡において重要であり、溶融状態の樹脂を発泡させる押出発泡とは大きく異なる点である。成形加工品の形状の自由度の観点では、板状に押出す押出発泡品より、所望の金型に充填し成形可能なビーズ発泡品の方が有利であり、発泡ビーズで難燃性と高発泡を両立したことは非常に有用である。
【0050】
一方、ゴム成分の含有量は10質量%以下であれば所望の難燃性が発現しやすくなる。さらに、8質量%以下であると、十分な耐熱性が得られる。ゴム粒子の形状は特には限定されず、ゴム成分を外殻とする粒子の内部に複数のポリスチレン系樹脂微粒子を内包した、いわゆるサラミ構造を形成していてもよく、ゴム成分を外殻とする粒子の内部に単数のスチレン系樹脂微粒子を内包した、いわゆるコアシェル構造であってもよい。ゴム成分のゴム粒径は特には限定されないが、サラミ構造の場合は0.5〜5.0μm、コアシェル構造の場合は0.1〜1.0μmが好ましい。この範囲であると、より優れた発泡性を発揮しやすい。
【0051】
なお、ポリスチレン系樹脂は、上記他成分が所望の含有量になるように適宜調整して使用されることが好ましい。
【0052】
本発明の発泡ビーズ成形体は、上述した基材樹脂と帯電防止剤とを含む。帯電防止剤は、発泡ビーズを形成する前に予め基材樹脂と混合してもよいし、発泡ビーズ成形体を成形した後にその表面を被覆するように用いてもよい。
【0053】
基材樹脂と帯電防止剤との混合物を用いる場合、帯電防止剤は、基材樹脂100質量部に対して、1〜20質量部の割合で含まれることが好ましい。基材樹脂と帯電防止剤を混合させる方法としては、基材樹脂100質量部に対し、帯電防止剤を1〜20質量部ドライブレンドした後、押し出し発泡する方法、押出機の途中にて液体の帯電防止剤を添加する方法等が挙げられる。
【0054】
発泡ビーズ成形体を成形した後、帯電防止剤を発泡ビーズ成形体の表面を被覆するように用いる場合、帯電防止剤は、発泡ビーズ成形体の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。発泡ビーズ成形体の表面の少なくとも一部を被覆する方法としては、帯電防止剤溶液を発泡ビーズ成形体に塗布する方法、帯電防止剤溶液に発泡ビーズ成形体を浸漬する方法等が挙げられる。この場合の好ましい帯電防止剤溶液の濃度は0.1〜10質量%である。
【0055】
帯電防止剤としては、例えば、無機系導電剤、高分子型帯電防止剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
無機系導電剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエーテルエステルアミド系、エチレンオキシド−エピクロルヒドリン系、ポリエーテルエステル系、ポリスチレンスルホン酸系、四級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体系等の帯電防止剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0058】
界面活性剤としては、例えばノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0059】
ノニオン性界面活性剤の例としては、(1)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエルスリット、ソルビット等の多価アルコール及び/又はその脂肪酸エステル、(2)ポリエチレングリコール及び/又はその脂肪酸エステル、(3)高級アルコール、多価アルコール、アルキルフェノールのポリエチレングリコール付加物、又はポリプロピレングリコール付加物等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0060】
アニオン性界面活性剤の例としては、(1)脂肪酸塩類、(2)高級アルコール硫酸エステル塩類、(3)液体脂肪油硫酸エステル塩類、(4)脂肪族アミン及び脂肪族アミドの硫酸塩類、(5)脂肪族アルコールリン酸エステル塩類、(6)二塩基性脂肪酸エステル塩類、(7)脂肪酸アミドスルホン酸塩類、(8)アルキルアリールスルホン酸塩類、(9)ホルマリン縮合のナフタレンスルホン酸塩類等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0061】
カチオン性界面活性剤の例としては、(1)脂肪族アミン塩類、(2)四級アンモニウム塩類、(3)アルキルピリジニウム塩類等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0062】
両性界面活性剤としては、(1)イミダゾリン誘導体類、(2)カルボン酸アンモニウム類、(3)硫酸エステルアンモニウム類、(4)リン酸エステルアンモニウム類、(5)スルホン酸アンモニウム類等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0063】
基材樹脂の形状及び基材樹脂と帯電防止剤との混合物の形状は特に限定されないが、例としてビーズ状、ペレット状、球体、不定型の粉砕品等が挙げられる。その大きさは、好ましくは0.2〜5.0mm、さらに好ましくは0.2〜3.0mmである。大きさがこの範囲にあると、発泡後の発泡ビーズが適度な大きさになり、取り扱い易く、また、成形時の充填がより密になりやすくなる。
【0064】
本発明の発泡ビーズ成形体に残存する脂肪族炭化水素系ガスの濃度は、1000体積ppm以下が好ましい。なお、本明細書において、脂肪族炭化水素系ガスの濃度とは、発泡ビーズ成形体中に含まれる脂肪族炭化水素系ガスの体積を発泡ビーズ成形体の体積で除して求めた値(体積ppm)であり、1体積ppm(以下、単に「ppm」ともいう。)は0.0001体積%に相当する。また、発泡ビーズに残存する脂肪族炭化水素系ガスの濃度についても同様である。
【0065】
脂肪族炭化水素系ガスとしては、プロパン、n−ブタン、i―ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。脂肪族炭化水素系ガスの濃度が1000ppm以下であると、燃焼時に種火が長時間くすぶったり(グローイングという)することがない。UL−94等の燃焼試験においては、燃焼時間に加えグローイング時間が規定されており、上記残存ガス量が少ないと、燃焼試験、特にV−0という規格をクリアすることが可能となる。
【0066】
次に、本発明の発泡ビーズ成形体の製造方法について説明する。
【0067】
本発明の発泡ビーズ成形体は、(i)基材樹脂と帯電防止剤との混合物に発泡剤を含有(含浸)させ(含浸工程)、基材樹脂と帯電防止剤との混合物を発泡させることにより発泡ビーズを形成し(発泡工程)、得られた発泡ビーズを成形型内に充填し、発泡させること(成形工程)により得ることができる。また、本発明の発泡ビーズ成形体は、(ii)基材樹脂に発泡剤を含有(含浸)させ(含浸工程)、基材樹脂を発泡させることにより発泡ビーズを形成し(発泡工程)、得られた発泡ビーズを成形型内に充填し、発泡させることにより発泡体を得(成形工程)、発泡体に帯電防止剤溶液を塗布するか(塗布工程)、又は帯電防止剤溶液に発泡体を浸漬する(浸漬工程)ことにより得ることができる。塗布工程及び浸漬工程における帯電防止剤溶液の濃度は0.1〜15質量%である。
【0068】
含浸工程において、基材樹脂又は基材樹脂と帯電防止剤との混合物に発泡剤を含有させる方法は特には限定されず、一般的に行われている方法が適用できる。発泡剤を含有させる方法として、水等の懸濁系を利用して水性媒体で行う方法(懸濁含浸)や、重炭素水素ナトリウム等の熱分解型発泡剤を用いる方法(発泡剤分解法)、ガスを臨界圧力以上の雰囲気にし、液相状態にして基材樹脂又は基材樹脂と帯電防止剤との混合物に接触させる方法(液相含浸)、臨界圧力未満の高圧雰囲気下で気相状態で基材樹脂又は基材樹脂と帯電防止剤との混合物に接触させる方法(気相含浸)等が挙げられる。この中でも特に、臨界圧力未満の高圧雰囲気下で気相含浸させる方法が好ましい。気相含浸させる方法は、高温条件下で実施される懸濁含浸に比べてガスの樹脂への溶解度がより良好で、発泡剤の含有量を高くしやすくなる。そのため、高発泡倍率を達成しやすく、基材樹脂又は基材樹脂と帯電防止剤との混合物内の気泡サイズも均一になりやすくなるからである。発泡剤分解法も同様に高温条件下で実施されるだけでなく、加えた熱分解型発泡剤全てがガスになる訳ではないため、ガス発生量が相対的に少なくなりやすい。そのため気相含浸の方がより発泡剤含有量を高くしやすい利点がある。また、液相含浸と比べると、耐圧装置や冷却装置等の設備がよりコンパクトになりやすく、設備費が低く抑えやすくなる。
【0069】
気相含浸条件は特には限定されないが、雰囲気圧力として0.5〜6.0MPaが好ましい。また、雰囲気温度は5〜30℃が好ましく、7〜15℃がより好ましい。雰囲気圧力、雰囲気温度が上記範囲であると、より効率的に基材樹脂又は基材樹脂と帯電防止剤との混合物へのガス溶解が進行しやすくなる。特に、雰囲気温度は低ければ含浸量が増えるが含浸速度は遅くなり、雰囲気温度が高ければ含浸量は減るが含浸速度は速くなる傾向であり、その兼ね合いから効率的に基材樹脂又は基材樹脂と帯電防止剤との混合物へのガス溶解を進行するために上記の雰囲気温度を設定するのが好ましい。
【0070】
発泡剤は特には限定されず、一般的に用いられているガスを使用することができる。その例として、空気、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等の無機ガス、トリクロロフルオロメタン(R11)、ジクロロジフルオロメタン(R12)、クロロジフルオロメタン(R22)、テトラクロロジフルオロエタン(R112)ジクロロフルオロエタン(R141b)クロロジフルオロエタン(R142b)、ジフルオロエタン(R152a)、HFC−245fa、HFC−236ea、HFC−245ca、HFC−225ca等のフルオロカーボンや、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン等の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn―ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステル等のカルボン酸エステル類、塩化メチル、塩化エチル等の塩素化炭化水素類等が挙げられる。
【0071】
難燃性の観点から、発泡剤は可燃性や支燃性がないことが好ましく、ガスの安全性の観点から無機ガスがより好ましい。また、無機ガスは炭化水素等の有機ガスに比べ樹脂に溶けにくく、発泡工程や成形工程の後、樹脂からガスが抜けやすいので、成形品の経時での寸法安定性がより優れる利点もある。さらに、残存ガスによる樹脂の可塑化も起こりにくく、成形後、より早い段階から優れた耐熱性を発現しやすいメリットもある。無機ガスの中でも、樹脂への溶解性、取り扱いの容易さの観点から、炭酸ガスが好ましく、その含浸量は樹脂に対して3〜13質量%あることが好ましい。より好ましくは3.5〜10質量%である。
【0072】
炭酸ガスの含浸量が3質量%以下であると、より高い発泡倍率を達成しにくくなるうえ、気泡サイズがばらつきやすく、発泡ビーズ間での発泡倍率のばらつきが大きくなる傾向にある。13質量%以上であると、気泡サイズが小さくなり、過発泡気味になるため独立気泡率が維持されにくくなる傾向にある。
【0073】
発泡工程における、発泡方法は特に限定されないが、例えば、高圧条件下から一気に低圧雰囲気下に開放し、基材樹脂又は基材樹脂と帯電防止剤との混合物内に溶解しているガスを膨張させる方法や、加圧水蒸気等により加熱し、基材樹脂又は基材樹脂と帯電防止剤との混合物内に溶解したガスを膨張させる方法等が挙げられる。この中でも特に、加熱発泡させる方法が好ましい。これは、高圧条件下から一気に低圧雰囲気下に開放する方法に比べると、発泡ビーズ内部の気泡サイズが均一になりやすいからである。また、発泡倍率の制御、特に低発泡倍率品の制御が行いやすい利点がある。
【0074】
加圧水蒸気は、例えば、発泡炉の下部から多数の蒸気孔より導入し、樹脂を攪拌羽により攪拌することで、より均一かつ効率的に発泡させることができる。攪拌羽の回転数は、20〜120rpmが好ましく、50〜90rpmがより好ましい。回転数が20rpm以下であると均一に加圧水蒸気が当たらず発泡制御が困難であったりブロッキング等の不具合が起こったりする傾向であり、120rpm以上であると発泡時のビーズが攪拌羽によりダメージを受け、独立気泡率が低下したり、所望の発泡倍率が得られない傾向にある。
【0075】
発泡ビーズを所望の発泡倍率まで発泡させる際、発泡工程において、一段階で所望の発泡倍率まで発泡させてもよく、二次発泡、三次発泡と、多段階で発泡させてもよい。多段階で発泡させる場合、各段階での発泡前に予備ビーズ(最終段階の発泡を行っていないビーズ等をいう)に無機ガスで加圧処理を行うことが好ましい。加圧処理に用いるガスは特には限定されないが、難燃性やガスの安全性の観点から無機ガスが好ましい。無機ガスの例として、空気、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等が挙げられ、取り扱いの容易さと経済性の観点から、炭酸ガスや空気が好ましいが、それに限定されるものではない。加圧処理の方法も特には限定されないが、加圧タンク内に予備ビーズを充填し、該タンク内に無機ガスを供給して加圧する方法等が挙げられる。
【0076】
発泡ビーズに残存する脂肪族炭化水素系ガスの濃度を1000ppm以下とするには、例えば、発泡剤として無機ガスを用いることや、発泡ビーズを高温(例えば、40℃〜80℃の間で任意に設定することができる)条件下に長時間置き残存するガスを放出させる「熟成工程」を経ることにより行うことができる。
【0077】
成形工程では、発泡ビーズを一般的な成形加工方法により成形することができる。
【0078】
成形加工方法の例として、成形型内に発泡ビーズを充填し、加熱することにより発泡させると同時にビーズ同士を融着させた後、冷却により固化させ、成形する方法が挙げられるがこれに限定されない。発泡ビーズの充填方法は特には限定されないが、例として充填時に金型を多少開いた状態で充填するクラッキング法や、金型を閉じたままの状態で加圧して圧縮したビーズを充填する圧縮法、圧縮ビーズを充填後にクラッキングを行う圧縮クラッキング法等が挙げられる。
【0079】
発泡ビーズを充填する前に無機ガス雰囲気下で加圧処理を施す加圧工程を行うことが好ましい。加圧処理を施すことにより、発泡ビーズ内の気泡に一定のガス圧力を付与でき、より均一に発泡成形しやすくなるためである。加圧処理を実施する場合の圧力源は特には限定されないが、前述した難燃性や耐熱性、寸法安定性の観点から無機ガスを用いるのが好ましい。無機ガスの例として、空気、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等が挙げられ、取り扱いの容易さと経済性の観点から、炭酸ガスや空気が好ましいが、それに限定されるものではない。加圧処理の方法も特には限定されないが、加圧タンク内に発泡ビーズを充填し、該タンク内に無機ガスを供給して加圧する方法等が挙げられる。
【0080】
成形工程で発泡ビーズを使用することにより、公知の型内成形方法により微細な形状や複雑な形状の成形体も製造することが可能であり、使用できる用途の幅が広がることも特徴である。
【0081】
例えば、従来の発泡ビーズを型内成形する一対の成形型を用い、加圧大気圧下又は減圧下に発泡ビーズを成形型キャビティー内に充填し、型閉めし成形型キャビティー体積を0〜70%減少するように圧縮し、次いで型内にスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡ビーズを加熱融着させる減圧成形法による方法(例えば、特公昭46−38359号公報)、発泡ビーズを加圧気体により、予め加圧処理して発泡ビーズ内の圧力を高めて、発泡ビーズの二次発泡性を高め、二次発泡性を維持しつつ大気圧下又は減圧下に発泡ビーズを成形型キャビティー内に充填し型閉めし、次いで型内にスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡ビーズを加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51−22951号公報)などにより成形する。
【0082】
また、圧縮ガスにより大気圧以上に加圧したキャビティー内に、当該圧力以上に加圧した発泡ビーズを充填した後、キャビティー内にスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡ビーズを加熱融着させる圧縮充填成形法(特公平4−46217号公報)により成形することもできる。その他に、特殊な条件にて得られる二次発泡力の高い発泡ビーズを、大気圧下又は減圧下の一対の成形型のキャビティー内に充填した後、次いでスチーム等の熱媒を供給して加熱を行い、発泡ビーズを加熱融着させる常圧充填成形法(特公平6−49795号公報)又は上記の方法を組み合わせた方法(特公平6−22919号公報)などによっても成形することができる。
【0083】
塗布工程又は浸漬工程における帯電防止剤溶液には、水などの溶媒に帯電防止剤を添加し、攪拌することにより十分に溶解させたものを用いることができる。溶媒全体に対する帯電防止剤の溶解量は、0.1〜15質量%となるようにするのが好ましく、0.5〜10質量%となるようにするのがより好ましい。0.1質量%以上であると、十分な帯電防止性能が得られる。また15質量%以下であると、帯電防止剤溶液がべとつかず、作業効率が向上する。また、この範囲にあれば優れた難燃性を同時に維持することができる。塗布工程又は浸漬工程後の帯電防止性能を十分発揮するために、成形品への帯電防止剤の定着を目的にポリビニルアルコールなどの定着剤を使用してもよい。
【0084】
本発明の発泡ビーズ成形体の発泡倍率は特には限定されないが、1.5〜40cc/gが好ましく、2〜25cc/gがより好ましい。発泡倍率が1.5〜40cc/gの範囲であると、軽量化のメリットを活かしつつ、優れた難燃性を維持しやすくなる傾向にある。
【0085】
発泡ビーズ成形体の加熱寸法変化率は特に限定されないが、100℃において、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。加熱寸法変化率が10%以下であると、耐熱性に優れるため、高温の環境下で使用する部材にも適用が可能であり、さらには夏場の高温環境下に長期間保存しておくことも可能である。
【0086】
発泡ビーズ成形体の荷重たわみ温度(HDT)は特に限定されないが、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。荷重たわみ温度が60℃以上であると、耐熱性に優れ、上記と同様の効果が得られる。
【0087】
発泡ビーズ成形体の表面抵抗率は特に限定されないが、1013Ω以下が好ましく、1012Ω以下がより好ましい。表面抵抗率が1012Ω以下であると、帯電防止性能を十分に発揮する。
【0088】
本発明の発泡ビーズ成形体は、上記のような特徴を有するため、電磁波吸収体として特に有用である。また、自動車の部材や各種タンク等の高温環境下で使用し、難燃性や断熱性を必要とする部材にも利用可能であり、パソコンやOA機器等の難燃性だけでなく、高温環境下での寸法精度が求められる微細、かつ複雑な部材にも利用可能となり、同時に軽量化も満足するために、非常に有用である。
【実施例】
【0089】
次に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0090】
実施例及び比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
(1)密度
発泡体(発泡ビーズ及び成形体)の重量W(g)を測定した後、水没法で体積V(cc)を測定し、その重量を体積で除した値W/V(g/cc)を密度とした。
(2)発泡倍率
発泡体(発泡ビーズ及び成形体)の重量W(g)を測定した後、水没法で体積V(cc)を測定し、その体積を重量で除した値V/W(cc/g)を発泡倍率とした。
(3)独立気泡率
発泡倍率(cc/g)が既知の発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体の真の容積(Vx)を、ベックマン(株)製の空気比較式比重計を用いて測定し、下記式により独立気泡率:S(%)を算出した。
【数1】


Vx:発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体の真の容積(cm
Va:発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体の容積(発泡倍率×重量)(cm
W :発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体の重量(g)
ρ :発泡ビーズ又は発泡ビーズ成形体の基材樹脂の密度(g/cm
(4)脂肪族炭化水素系ガスの濃度
発泡ビーズ試料を適量ヘッドスペースボトルに仕込み、試料軟化点以上の温度で約1時間加熱した。その後、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC14B)により、ヘッドスペースボトル内のガスを定量した。キャリアガスとしてHeを用い、定流量モード(約30ml/mim)で制御した。また、カラム(PorapakQ、80/100mesh、3.2mmφ×2.1m)を50〜150℃で昇温、保持を行い、熱伝導度型検出器(TCD)により検出を行った。検出したエリア面積と標準ガス試料で作成した検量線とから脂肪族炭化水素系ガスの体積を算出し、発泡ビーズ試料の体積で除して、脂肪族炭化水素系ガスの濃度(ppm)を算出した。なお、表1及び表2においては、「脂肪族炭化水素系ガスの濃度」を単に「ガス濃度」と表記する。
(5)難燃性
米国UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠した試験を行い、難燃性の評価を行った。以下測定方法を示す。
得られた発泡ビーズを、長さ125mm、幅13mm、厚さ3mmの試験片に成形し、該成形品を5本用いて判定した。試験片をクランプに垂直に取付け、20mm炎による10秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動によりV−0、V−1、V−2、不適合の判定を行った。下記に該当しないものは不適合(×)とした。
V−0:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は10秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が30秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が50秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない、燃焼落下物による綿着火なし。
V−1:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は30秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が60秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が250秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない、燃焼落下物による綿着火なし。
V−2:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は30秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が60秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が250秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない、燃焼落下物による綿着火有り。
(6)加熱寸法変化率
成形直後の成形体(成形品)を、JIS K6767の寸法安定性評価・B法に準拠した試験を行い、加熱寸法変化率を評価した。評価温度は100℃とした。
(7)成形加工性
クルツ社製成形機K−68にて300mm×300mm×17mmの平板成形を行った。表面に隙間がなく、発泡ビーズ同士がしっかり融着し、板状のサンプルが得られたものを○、表面に隙間があったり、板状に成形不可能であったものを×とした。
(8)荷重たわみ温度(HDT)
成形品をJIS K7191フラットワイズB法に準拠し、サンプルサイズ12.7mm×127mm×6.4mmを作製し、支点間距離64mm、荷重0.45MPaをかけながら30℃から昇温速度2℃/minにて昇温し、たわみ0.34mmに達したときの温度をHDTとして評価した。
(9)平均粒子径
発泡ビーズの平均粒子径は次のようにして求めた。発泡ビーズの光学顕微鏡写真から各発泡ビーズの長径と短径を求め、長径と短径の平均値を各発泡ビーズの粒子径(mm)とした。ランダムに選択した5〜10個の発泡ビーズについて上記粒子径を求め、その平均値を平均粒子径(mm)とした。
(10)表面抵抗率
温度23℃、相対湿度50%に制御されている室内に24時間放置して状態調整された成形体の表面を、JIS K6911の試験法5.13項に規定する電極間にセットし、成形スキン面の表面抵抗を抵抗計(商品名:SME−8220、東亜電波工業株式会社製、印加電圧500V)で測定し、JISに規定する計算式から表面抵抗率を算出し評価した。表面抵抗率が低いほど導電性又は静電気の拡散性に優れるため、良好な帯電防止性能を発揮することができる。表面抵抗率1013Ω以下であれば良好な帯電防止性能を有する。
【0091】
[実施例1]
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)としてS201A(旭化成ケミカルズ(株)製)を60質量%、非ハロゲン系難燃剤としてビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)(BBP)を18質量%、ゴム濃度が6質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)10質量%(基材樹脂中のゴム成分含有量は0.6質量%)及び汎用ポリスチレン樹脂(PS)としてGP685(PSジャパン(株)製)を12質量%含む基材樹脂100質量部に対し、帯電防止剤としてケッチェンブラックEC300J(ライオン(株)製)(以下、「CB1」という。)12質量部を加え、押出機にて加熱溶融混練の後に押し出し、基材樹脂ペレットを作製した。特開平4−372630の実施例1に記載の方法に準じ、基材樹脂ペレットを耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤として二酸化炭素(気体)を注入し、圧力3.2MPa、温度11℃の条件下で3時間かけて基材樹脂ペレットに対して二酸化炭素を7質量%含浸させ、基材樹脂ペレットを発泡炉内で攪拌羽を77rpmにて回転させながら加圧水蒸気により発泡させた。得られた発泡ビーズの発泡倍率及び独立気泡率を表1に示す。この発泡ビーズの脂肪族炭化水素系ガスの濃度を発泡直後に測定したが、検出限界(50ppm)以下であった。この発泡ビーズを0.5MPaまで1時間かけて昇圧し、その後0.5MPaで8時間保持し、加圧処理を施した。これを、水蒸気孔を有する型内成形金型内に充填し、加圧水蒸気で加熱して発泡ビーズ相互を膨張・融着させた後、冷却し、成形金型より取り出した。この成形品の脂肪族炭化水素系ガスの濃度を測定したが、検出限界(50ppm)以下であった。この成形品の難燃性はV―0であり、表面抵抗率も良好であった(表1)。
【0092】
[実施例2〜5]
難燃剤をトリフェニルホスフェート(TPP)に、HIPSをゴム濃度が19質量%のものに変更し、各成分の組成、又は発泡倍率を表1に示したとおり変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。実施例5についてはBBPとTPPを併用した。実施例1と同様に優れた難燃性、表面抵抗率を示した(表1)。
【0093】
[実施例6]
発泡剤として炭酸ガスに変えてn−ブタンを用い、各成分の組成、又は発泡倍率を表1に示したとおり変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。ただし、脂肪族炭化水素系ガスの濃度については、発泡後、発泡ビーズを80℃で6ヶ月間熟成をさせてから測定を行い、その結果は、800ppmであった。この発泡ビーズを用いた成形体の性能評価を実施したところ、燃焼時間は他の実施例に比べ長くなるものの、V−1の基準を満たす難燃性に優れたものであった。また、他の実施例と同様に、優れた耐熱性を示した。
【0094】
[実施例7〜8]
帯電防止剤をケッチェンブラックEC600JD(ライオン(株)製)(以下、「CB2」という。)に変更し、各成分の組成、又は発泡倍率を表1に示したとおり変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。帯電防止剤を変更しても優れた発泡性を維持しつつ、より良好な難燃性、表面抵抗率を示した。
【0095】
[実施例9〜10]
帯電防止剤を高分子型帯伝防止剤ペレクトロンH(三洋化成(株)製)(以下、「高分子型」ともいう。)に変更し、各成分の組成、又は発泡倍率を表1に示したとおり変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。帯電防止剤を変更しても優れた発泡性を維持しつつ、より良好な難燃性、表面抵抗率を示した。
【0096】
[実施例11〜13]
各成分の組成、又は発泡倍率を表1に示したとおり成形体を作成し、界面活性剤水溶液(ゴーセノール(日本合成化学工業(株)製)/スタホームF(日油(株)製)=1.5/1)を表1の「ディッピング」欄に示した濃度(質量%水溶液)となるように調製し、これに成形体をディッピングすることにより帯電防止性能を付与した以外は、実施例1と同様に評価を行った。帯電防止剤を変更しても優れた発泡性を維持しつつ、より良好な難燃性、表面抵抗率を示した。
【0097】
[比較例1〜5]
表2に示す各成分の組成、又は発泡倍率で実施例1と同様に評価を行った。なお、HIPSはゴム濃度19質量%のものを用いた。比較例1では、ポリフェニレン系樹脂比率が低いため、低発泡倍率においても難燃性はV−2にも満たず、また、帯電防止剤無添加のため表面抵抗率も良好範囲外であり、熱寸法安定性(加熱寸法変化率)も著しく劣った。比較例2では、ポリフェニレンエーテル系樹脂比率が高すぎるため、基材樹脂ペレット作成時の押出において熱劣化による異物が多発し、評価に値する成形体が得られなかった。比較例3では、難燃剤の量が少なすぎるため、難燃性が殆ど発現せず、また、帯電防止剤無添加のため表面抵抗率も良好範囲外であった。比較例4では、難燃剤が多すぎるため、発泡ビーズの独立気泡率が大幅に低下し、成形品が得られなかった。比較例5では、ゴム成分を全く用いていないため、樹脂の柔軟性、伸び不足によるセル膜の破膜が発生し、成形加工性が低下してしまい、良好な成形品が得られなかった。
【0098】
[比較例6]
各成分の組成、又は発泡倍率を表2に示したとおり変更した以外は実施例1と同様に評価を行った。難燃性は良好であったが、帯電防止剤無添加のため表面抵抗率は良好範囲外であった。
【0099】
[比較例7]
各成分の組成、又は発泡倍率を表2に示したとおり変更し、発泡後、脂肪族炭化水素系ガスの濃度の評価を行うまでの熟成期間(熟成温度40℃、熟成期間を3ヶ月)を設けたほかは、実施例1と同様に評価を行った。比較例7では、表面抵抗率は1012Ωと良好な値を示したが、脂肪族炭化水素系ガスの濃度は15380ppmであり、この発泡ビーズを用いた成形品の難燃性評価を実施したところ、サンプルは炎を上げ燃え尽きた。また、熱寸法安定性にも劣る結果となった。
【0100】
[比較例8]
各成分の組成、又は発泡倍率を表2に示したとおり変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。ポリフェニレン系樹脂比率が低い場合、低発泡倍率においても難燃性はV−2にも満たないが、表面抵抗率は良好な値を示した。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の発泡ビーズ、その発泡ビーズを用いて得られる成形体は、軽量化と同時に高い難燃性を維持し、特に自動車部材やOA機器の構造材として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル系樹脂及び難燃剤を含有する基材樹脂と、帯電防止剤と、を含み、かつ、UL規格のUL−94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して測定される難燃性がV−0又はV−1である、発泡ビーズ成形体。
【請求項2】
脂肪族炭化水素系ガスの濃度が1000体積ppm以下である、請求項1に記載の発泡ビーズ成形体。
【請求項3】
前記基材樹脂が、更にポリスチレン系樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の発泡ビーズ成形体。
【請求項4】
前記基材樹脂が、更にゴム成分を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡ビーズ成形体。
【請求項5】
前記基材樹脂が、ポリフェニレンエーテル系樹脂40〜94質量%、難燃剤5〜20質量%、及びゴム成分0.3〜10質量%を含有し、残部がポリスチレン系樹脂からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡ビーズ成形体。
【請求項6】
前記難燃剤が非ハロゲン系難燃剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発泡ビーズ成形体。
【請求項7】
前記帯電防止剤の含有量が、前記基材樹脂100質量部に対して、1〜20質量部である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発泡ビーズ成形体。
【請求項8】
前記帯電防止剤により表面の少なくとも一部が被覆されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発泡ビーズ成形体。
【請求項9】
前記帯電防止剤が、無機系導電剤、高分子型帯電防止剤及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の発泡ビーズ成形体。
【請求項10】
独立気泡率が50%以上である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発泡ビーズ成形体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の発泡ビーズ成形体からなる電磁波吸収体。
【請求項12】
ポリフェニレンエーテル系樹脂及び難燃剤を含有する基材樹脂と、該基材樹脂100質量部に対して1〜20質量部の帯電防止剤とを混合し、押し出し発泡により発泡ビーズを形成する工程と、該発泡ビーズを成形型内に充填し、発泡させることにより発泡ビーズ成形体を得る工程と、を備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の発泡ビーズ成形体の製造方法。
【請求項13】
ポリフェニレンエーテル系樹脂及び難燃剤を含有する基材樹脂を押し出し発泡することにより発泡ビーズを形成する工程と、該発泡ビーズを成形型内に充填し、発泡させることにより発泡体を得る工程と、濃度0.1〜15質量%の帯電防止剤溶液を前記発泡体に塗布するか、又は濃度0.1〜15質量%の帯電防止剤溶液に前記発泡体を浸漬する工程と、を備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の発泡ビーズ成形体の製造方法。

【公開番号】特開2012−116968(P2012−116968A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268621(P2010−268621)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】