説明

発泡体の充填方法

【課題】パネルを介して隣り合う中空部において、一方の中空部への発泡体の充填を利用して他方の中空部においても発泡体を充填することのできる発泡体の充填方法を提供する。
【解決手段】車両用ピラー51の中空部Sの一部は、リンフォースパネル54を介して隣り合う主充填部S1及び副充填部S2に区画される。流路用部材22は、リンフォースパネル54と間隙Gを有した状態とされている。流路用部材22は、主充填部S1側からリンフォースパネル54を越えて副充填部S2側へ延出されている。流動規制部材23は、主充填部S1に配置されている。流動規制部材23は、発泡性材料11の流動を規制することで、発泡性材料11の流動を流路用部材22へ指向する。流路用部材22と流動規制部材23の間で加熱された発泡性材料11の一部は、流路用部材22とリンフォースパネル54との間隙Gを流路として副充填部S2へ流入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱されることで発泡体を形成する発泡性材料を用いて中空構造体に発泡体を充填する発泡体の充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のピラー等の中空構造体における中空部に発泡体を充填させる際に、加熱されることで発泡体を形成する発泡性材料を用いる手法が提案されている。こうした手法において、中空構造体の中空部が区画されている場合には、区画部を介して隣接する各中空部のそれぞれに発泡性材料を配置することで、各中空部に発泡体が充填されるようになる。例えば、特許文献1では、インナパネルとアウタパネルとの間にリンフォースパネルが設けられた中空構造体において、インナパネルとリンフォースパネルとの間と、アウタパネルとリンフォースパネルとの間との各空間に発泡性材料を配置させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−053156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、中間パネルを有する中空構造体では、インナパネル側又はアウタパネル側のいずれかの箇所について、剛性等の性能を高めることが重要とされる場合がある。こうした場合では、性能を高めることを要求されているパネルと、中間パネルとの間に形成される中空部に発泡体を充填することが重要である。ここで、発泡体の充填による効果を、さらに高めるためには、前記パネルと中間パネルとの間に形成される中空部に加えて、中間パネルを介して隣接する中空部においても発泡体を充填することが有効である。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パネルを介して隣り合う中空部において、一方の中空部への発泡体の充填を利用して他方の中空部においても発泡体を充填することのできる発泡体の充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、第1パネル及び第2パネルにより形成される中空部を有し、前記中空部に中間パネルが設けられることで、前記中空部の一部が前記中間パネルを介して隣り合う第1中空部及び第2中空部に区画される中空構造体の前記第1中空部及び前記第2中空部に発泡体を充填するに際して、加熱により流動を伴って発泡体を形成する発泡性材料を前記中空部に配置して前記発泡体を形成させる発泡体の充填方法であって、前記中間パネルの少なくとも一部と間隙を有した状態で、前記第1中空部側から前記中間パネルを越えて前記第2中空部側へ延出する流路用部材と、前記第1中空部において前記流動を前記流路用部材へ指向させる流動規制部材とを配置し、前記流路用部材と前記流動規制部材との間において前記発泡性材料を加熱することで、前記間隙を流路として前記第2中空部へ前記発泡性材料の一部を流入させることを要旨とする。
【0007】
この方法によれば、流路用部材及び流動規制部材の配置により、第2中空部に発泡性材料を流入させているため、第2中空部に発泡体が充填されるようになる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡体の充填方法において、前記流路用部材及び前記流動規制部材は、これらを連結する連結部材により一体化された充填用具として構成され、前記発泡性材料を取り付けた前記充填用具を用いることを要旨とする。
【0008】
この方法によれば、充填用具を中空部の所定の位置に配置することで、流路用部材、流動規制部材、及び発泡性材料が位置決めされるため、流路用部材、流動規制部材、及び発泡性材料を配置する作業が容易となる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発泡体の充填方法において、前記中間パネルが切り欠き部を有し、前記切り欠き部と前記流路用部材との間隙を前記発泡性材料の流路とすることを要旨とする。
【0010】
この方法によれば、切り欠き部の位置や寸法により、第2中空部において発泡性材料を流入させる位置や、第2中空部へ流入する発泡性材料の量を調整することができる。
請求項4に記載の発明は、第1パネル及び第2パネルにより形成される中空部を有し、前記中空部に中間パネルが設けられることで、前記中空部の一部が前記中間パネルを介して隣り合う第1中空部及び第2中空部に区画される中空構造体の前記第1中空部及び前記第2中空部に発泡体を充填するに際して、加熱により流動を伴って発泡体を形成する発泡性材料を前記中空部に配置して前記発泡体を形成させる発泡体の充填方法であって、前記中間パネルの第1端縁の少なくとも一部と間隙を有した状態で前記第1中空部側から前記中間パネルを越えて前記第2中空部側へ延出する第1流路用部材と、前記中間パネルの第2端縁の少なくとも一部と間隙を有した状態で前記第1中空部側から前記中間パネルを越えて前記第2中空部側へ延出する第2流路用部材とを配置し、これら流路用部材の間において前記発泡性材料を加熱することで、前記間隙を流路として前記第2中空部へ前記発泡性材料の一部を流入させることを要旨とする。
【0011】
この方法によれば、第1及び第2流路用部材の配置により、第2中空部に発泡性材料を流入させているため、第2中空部に発泡体が充填されるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発泡体の充填方法において、前記第1流路用部材及び第2流路用部材は、これらを連結する連結部材により一体化された充填用具として構成され、前記発泡性材料を取り付けた前記充填用具を用いることを要旨とする。
【0012】
この方法によれば、充填用具を中空部の所定の位置に配置することで、第1及び第2流路用部材、並びに発泡性材料が位置決めされるため、第1及び第2の流路用部材、並びに発泡性材料を中空構造部材の中空部に配置する作業が容易となる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の発泡体の充填方法において、前記第1端縁及び前記第2端縁の少なくとも一方が、切り欠き部を有し、前記切り欠き部と、前記第1流路用部材及び前記第2流路用部材の少なくとも一方との間隙を前記発泡性材料の流路とすることを要旨とする。
【0014】
この方法によれば、切り欠き部の位置や寸法により、第2中空部において発泡性材料を流入させる位置や、第2中空部へ流入する発泡性材料の量を調整することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発泡体の充填方法において、前記第1中空部と前記第2中空部とを連通する連通孔を前記中間パネルに形成することで、前記連通孔を前記発泡性材料の流路として前記第2中空部へ前記発泡性材料を流入させることを要旨とする。
【0015】
この方法によれば、第2中空部への発泡性材料の流入量を高めることが容易となる。また、連通孔を形成する位置や連通孔の数を変更することで、第2中空部の所望の位置に発泡体を充填することができる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の発泡体の充填方法において、前記発泡体が前記第2パネルに連結されるように、前記第2中空部へ発泡性材料を流入させることを要旨とする。
【0017】
この方法によれば、発泡体が第2パネルに連結されることで、中空構造体の断面構造が強化され、中空構造体が好適に補強されるようになる。また、第1パネル又は第2パネルに伝播する振動や衝撃が発泡体を通じて分散されることで、振動や衝撃が吸収され易くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パネルを介して隣り合う中空部において、一方の中空部への発泡体の充填を利用して他方の中空部においても発泡体を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態の車両用ピラーを構成する各パネル、及び発泡性材料の取り付けられた充填用具を示す斜視図。
【図2】(a)は、発泡性材料の取り付けられた充填用具を車両用ピラーに配置した状態を示す部分断面図、(b)は、その状態を下方から見たときの平面図、(c)は、発泡体が充填された状態を示す模式断面図、(d)は、その状態を下方から見たときの模式平面図。
【図3】第2の実施形態の車両用ピラーを構成する各パネル、及び、発泡性材料の取り付けられた充填用具を示す斜視図。
【図4】(a)は、発泡性材料の取り付けられた充填用具を車両用ピラーに配置した状態を示す部分断面図、(b)は、その状態を下方から見たときの平面図、(c)は、発泡体が充填された状態を示す模式断面図、(d)は、その状態を下方から見たときの模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本発明を中空構造体としての車両用ピラーに発泡体を充填する方法に具体化した第1の実施形態について図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1、図2(a)及び図2(b)に示されるように、車両用ピラー51は、インナパネル52(第1パネル)及びアウタパネル53(第2パネル)により形成される中空部Sを有している。中空部Sには、リンフォースパネル54(中間パネル)が設けられることで、中空部Sの一部は、リンフォースパネル54を介して隣り合う主充填部S1(第1中空部)及び副充填部S2(第2中空部)に区画される。こうした車両用ピラー51に発泡体を充填するに際して、加熱により流動を伴って発泡体を形成する発泡性材料11を中空部Sに配置して発泡体を形成させる。
【0022】
本実施形態の発泡体の充填方法では、発泡性材料11を取り付けた充填用具21を用いている。充填用具21は、発泡性材料11の流路を形成する流路用部材22と、発泡性材料11の流動を規制する流動規制部材23と、それら流路用部材22及び流動規制部材23を連結する連結部材24とが一体化されたものである。本実施形態の流路用部材22、流動規制部材23、及び連結部材24の各部材は板状をなし、流路用部材22及び流動規制部材23は、連結部材24の両端部から立設されている。このように流路用部材22、流動規制部材23、及び連結部材24の各部材が板状をなして形成されていることで、充填用具21の軽量化が図られるとともに、発泡性材料11の配置スペースが確保されやすくなっている。なお、充填用具21は、発泡性材料11から発泡体が形成される温度に対して耐熱性を有する樹脂材料(例えば、ポリアミド系樹脂)や金属材料から形成される。充填用具21に発泡性材料11を取り付け方法は、特に限定されず、例えば発泡性材料11と連結部材24との間に粘着層や接着層を設けたり、連結部材24に係止部を設けて、その係止部に発泡性材料11を係止させたりすることで取り付けることができる。本実施形態の発泡性材料11は、連結部材24に支持させているが、流路用部材22又は流動規制部材23に支持させることもできる。
【0023】
こうして発泡性材料11が取り付けられた充填用具21は、中空部Sに配置される。充填用具21を車両用ピラー51に支持させる方法は、特に限定されず、例えば充填用具21と車両用ピラー51との間に粘着層や接着層を設けたり、充填用具21にクリップを設けて、そのクリップを車両用ピラー51に形成した孔に係止させたりすることで支持させることができる。
【0024】
続いて、インナパネル52、アウタパネル53及びリンフォースパネル54を一体化させる。これらパネル52,53,54は金属材料から形成され、例えばスポット溶接により一体化される。インナパネル52の両側部とアウタパネル53の両側部とが接合されることで、中空部Sは閉断面構造となっている。本実施形態においては、リンフォースパネル54はインナパネル52に接合され、図2(a)及び図2(b)に示されるように、インナパネル52とリンフォースパネル54との間に主充填部S1が形成される。この主充填部S1の少なくとも一部に発泡体を充填することで、インナパネル52側をさらに補強したり、振動や衝撃の吸収を促進したりすることができる。副充填部S2は、主充填部S1を取り囲むように形成されている。副充填部S2の少なくとも一部においても、発泡体を充填することで、車両用ピラー51をさらに補強したり、振動や衝撃の吸収をさらに促進したりすることができるようになる。
【0025】
流路用部材22は、リンフォースパネル54の下端縁54aと間隙Gを有した状態とされている。さらに、流路用部材22は、主充填部S1側からリンフォースパネル54を越えて副充填部S2側へ延出されている。流動規制部材23は、インナパネル52とリンフォースパネル54との間、すなわち主充填部S1に配置されている。このように、充填用具21及び発泡性材料11の配置された車両用ピラー51は、車両の乾燥工程を通じて、所定の温度で所定の時間加熱される。こうした加熱により、流路用部材22と流動規制部材23の間では、発泡性材料11が加熱される。加熱された発泡性材料11は軟化することで流動性を有した状態となる。このとき、発泡性材料11は、発泡による膨張を伴って流動することになる。このため、発泡性材料11は、下方への流動に加えて上方へも流動する。ここで、流動規制部材23を設けずに発泡性材料11を加熱した場合、下方に流路用部材22が設けられているため、下方への流動よりも上方への流動が促進されやすくなる。この点、流動規制部材23により、発泡性材料11の上方への流動を規制することで、発泡性材料11の流動を流路用部材22へ指向する。このように流路用部材22へ指向された発泡性材料11は、流路用部材22とリンフォースパネル54との間隙Gを流路として副充填部S2へ流入される。
【0026】
このように発泡性材料11の一部が副充填部S2へ流入され、発泡性材料11が加熱時間に応じて硬化することで、流動性を失った発泡体12が形成される。そして、図2(c)及び図2(d)に示されるように、主充填部S1の少なくとも一部、及び副充填部S2の少なくとも一部は発泡体12で充填される。本実施形態の発泡体12の充填においては、発泡体12がアウタパネル53に連結されるように、副充填部S2へ発泡性材料11を流入させている。これにより、例えば車両用ピラー51の断面構造が強化される。また例えば、インナパネル52又はアウタパネル53に伝播する振動や衝撃が発泡体12を通じて分散されるようになる。なお、インナパネル52、アウタパネル53及びリンフォースパネル54のいずれに対しても連結するように発泡体12を形成させることで、断面構造がさらに強化されている。
【0027】
こうした発泡体の充填方法では、加熱時の発泡性材料11の流動性に応じて、流路用部材22とリンフォースパネル54との距離、流動規制部材23の寸法等を適宜変更することで、発泡性材料11を副充填部S2へ容易に流入させることができる。
【0028】
発泡性材料11は、基材、発泡剤、及び架橋剤が含有される他に、充填剤、可塑剤等が適宜含有される。発泡性材料11に含まれる各成分は、求める機能性に応じて選択することができる。基材としては、合成樹脂、エラストマー及びゴムが挙げられる。合成樹脂としては、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、EVA(エチレン/ビニルアセテートコポリマー)等が挙げられる。エラストマーとしては、RB(ポリブタジエンエラストマー)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー)、SIS(スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。ゴムとしては、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)、UR(ウレタンゴム)、ENR(エポキシ化天然ゴム)、EPM(エチレン/プロピレンゴム)等が挙げられる。発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン等、架橋剤としては、周知のジメチルウレア、ジシアンジアミド、充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フェライト、シリカ等が挙げられる。
【0029】
このようにして発泡体12の充填された車両用ピラー51では、発泡体12の物性や充填量に応じて、強度、剛性、制振性等が高められる。
本実施形態によって発揮される効果について以下に記載する。
【0030】
(1)リンフォースパネル54と間隙Gを有した状態で、主充填部S1側からリンフォースパネル54を越えて副充填部S2側へ延出する流路用部材22と、主充填部S1において発泡性材料11の流動を流路用部材22へ指向させる流動規制部材23とを配置している。このように配置された流路用部材22と流動規制部材23との間において発泡性材料11を加熱することで、リンフォースパネル54と流路用部材22との間隙Gを流路として副充填部S2へ発泡性材料11の一部を流入させている。この方法によれば、主充填部S1を主体として発泡体12を充填するような場合であっても、副充填部S2に流入した発泡性材料11によって副充填部S2に発泡体12が充填される。このように、リンフォースパネル54を介して隣り合う主充填部S1及び副充填部S2において、主充填部S1への発泡体12の充填を利用して副充填部S2においても発泡体12を充填することができる。このため、車両用ピラー51の剛性等の性能を副充填部S2に充填された発泡体12により補助的に高めることができる。
【0031】
(2)本実施形態の発泡体の充填方法では、副充填部S2に発泡性材料を配置しなくても、副充填部S2に発泡体12を充填することができる。このため、例えば寸法的な制約、作業効率の面における制約等、何らかの制約で副充填部S2に発泡性材料を配置することが困難なときに、本実施形態の充填方法は極めて有効である。また、副充填部の形状に合わせて発泡性材料の形状を設計することを回避することができるため、特に、副充填部の形状が複雑なときに、本実施形態の充填方法は極めて有効である。
【0032】
(3)流路用部材22及び流動規制部材23は、これらを連結する連結部材24により一体化された充填用具21として構成されている。本実施形態の発泡体12の充填方法では、発泡性材料11を取り付けた充填用具21を用いている。こうした充填用具21を中空部Sの所定の位置に配置することで、流路用部材22、流動規制部材23、及び発泡性材料11が位置決めされるため、流路用部材22、流動規制部材23、及び発泡性材料11を配置する作業が容易となる。従って、上述した発泡体12の充填方法を効率よく実施することができるようになる。
【0033】
(4)発泡体12がアウタパネル53に連結されるように、副充填部S2へ発泡性材料11を流入させることで、車両用ピラー51の断面構造が強化され、車両用ピラー51が好適に補強されるようになる。また、インナパネル52又はアウタパネル53に伝播する振動や衝撃が発泡体12を通じて分散されることで、振動や衝撃が吸収され易くなる。
【0034】
(第2の実施形態)
本発明を具体化した第2の実施形態について図3及び図4を参照して第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。第2の実施形態では、主に、リンフォースパネルの構成、及び充填用具の構成が第1の実施形態と異なっている。
【0035】
図3、図4(a)及び図4(b)に示されるように、本実施形態の車両用ピラー61に設けられるリンフォースパネル62は、第1端縁としての上端縁62aに上端切り欠き部63(第1切り欠き部)が形成され、第2端縁としての下端縁62bに、下端切り欠き部64(第2切り欠き部)が形成されている。また、リンフォースパネル62には、主充填部S1と副充填部S2とを連通する連通孔65が貫設されている。
【0036】
充填用具31は、発泡性材料11の流路を形成する上部流路用部材32a(第1流路用部材)、及び下部流路用部材32b(第2流路用部材)と、それら上部及び下部流路用部材32a,32bを連結する連結部材33とが一体化されたものである。発泡性材料11は、上部流路用部材32aと下部流路用部材32bとの間に取り付けられる。図4(a)に示されるように、上部流路用部材32aは、リンフォースパネル62の上端縁62aに形成された上端切り欠き部63と間隙Gを有した状態で、主充填部S1側からリンフォースパネル62を越えて副充填部S2側へ延出される。図4(a)及び図4(b)に示されるように、下部流路用部材32bは、リンフォースパネル62の下端縁62bに形成された下端切り欠き部64と間隙Gを有した状態で、主充填部S1側からリンフォースパネル62を越えて副充填部S2側へ延出される。
【0037】
上部及び下部流路用部材32a,32bの間に配置された発泡性材料11が加熱されると、上部流路用部材32aと上端切り欠き部63との間隙Gと、下部流路用部材32bと下端切り欠き部64との間隙Gとを流路として副充填部S2へ発泡性材料11の一部が流入される。さらに、連通孔65を流路として副充填部S2へ発泡性材料11の一部が流入される。
【0038】
副充填部S2へ発泡性材料11の一部を流入されることで、図4(c)及び図4(d)に示されるように、主充填部S1に加えて副充填部S2においても発泡体12が形成される。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、発泡体12がアウタパネル53に連結されるように、副充填部S2へ発泡性材料11を流入させている。また、インナパネル52、アウタパネル53及びリンフォースパネル62のいずれに対しても連結するように発泡体12を形成させることで、断面構造がさらに強化されている。
【0039】
本実施形態によって発揮される効果について以下に記載する。
(5)上端切り欠き部63と間隙Gを有した状態で、主充填部S1側からリンフォースパネル62を越えて副充填部S2側へ延出する上部流路用部材32aを配置している。また、下端切り欠き部64と間隙Gを有した状態で主充填部S1側からリンフォースパネル62を越えて副充填部S2側へ延出する下部流路用部材32bとを配置している。これら上部及び下部流路用部材32a,32bの間において発泡性材料11を加熱することで、リンフォースパネル62と上部流路用部材32aとの間隙G、及びリンフォースパネル62と下部流路用部材32bとの間隙Gを流路として副充填部S2へ発泡性材料11の一部を流入させている。この方法によれば、上記(1)欄及び(2)欄で述べた作用効果を得ることができる。
【0040】
(6)上部及び下部流路用部材32a,32bは、これらを連結する連結部材33により一体化された充填用具31として構成されている。本実施形態の発泡体12の充填方法では、発泡性材料11を取り付けた充填用具31を用いている。こうした充填用具31を中空部の所定の位置に配置することで、上部及び下部流路用部材32a,32b、並びに発泡性材料11が位置決めされるため、上部及び下部流路用部材32a,32b、並びに発泡性材料11を配置する作業が容易となる。従って、上述した発泡体12の充填方法を効率よく実施することができるようになる。
【0041】
(7)本実施形態では、リンフォースパネル62は上端及び下端切り欠き部63,64を有し、上端及び下端切り欠き部63,64と、上部及び下部流路用部材32a,32bとの間隙Gを発泡性材料11の流路としている。この方法によれば、上端及び下端切り欠き部63,64の位置や寸法により、副充填部S2において発泡性材料11を流入させる位置や、副充填部S2へ流入する発泡性材料11の量を調整することができる。こうした調整により、例えば本実施形態のように副充填部S2の所定の部位においてリンフォースパネル62とアウタパネル53とを連結するように発泡体12を充填することができるようになる。
【0042】
(8)リンフォースパネル62には主充填部S1と副充填部S2を連通する連通孔65が形成され、連通孔65を前記発泡性材料11の流路として副充填部S2へ発泡性材料11を流入させている。この方法によれば、副充填部S2への発泡性材料11の流入量を高めることが容易となる。また、連通孔65を形成する位置や連通孔65の数を変更することで、副充填部S2の所望の位置に発泡体12を充填することができる。
【0043】
(9)発泡体12がアウタパネル53に連結されるように、副充填部S2へ発泡性材料11を流入させているため、上記(4)欄で述べた作用効果を得ることができる。
(変更例)
なお、上記第1及び第2の実施形態を次のように変更して構成してもよい。
【0044】
・第1の実施形態のリンフォースパネル54の下端縁に切り欠き部を形成し、その切り欠き部と流路用部材22との間隙を発泡性材料11の流路としてもよい。このように切り欠き部を形成することで、第2の実施形態の(7)欄で述べた作用効果を得ることができる。なお、流路用部材22は、リンフォースパネル54から完全に離間して設ける必要はなく、切り欠き部以外の下端縁は、流路用部材22と接触させて配置してもよい。
【0045】
・第2の実施形態のリンフォースパネル62において、上端及び下端切り欠き部63,64のいずれか一方を形成せずに構成することもできる。例えば、上端切り欠き部63を有しないリンフォースパネルを一例として説明すると、その上端縁に対して、上部流路用部材32aの距離を調整することで、上端縁と上部流路用部材32aとの間隙を発泡性材料11の流路とすることができる。また、上端及び下端切り欠き部63,64のいずれについても形成せずにリンフォースパネルを構成することもできる。
【0046】
・第1の実施形態のリンフォースパネル54に主充填部S1と副充填部S2を連通する連通孔を形成することで、連通孔を流路として副充填部S2へ発泡性材料11を流入させてもよい。この場合、第2の実施形態の(8)欄で述べた作用効果を得ることができる。なお、第2の実施形態のリンフォースパネル62において、連通孔65を設けずに構成してもよい。
【0047】
・第1及び第2の実施形態の発泡体12は、アウタパネル53に連結されているが、アウタパネル53に連結させずに発泡体12を充填させることもできる。例えば、第1の実施形態の流路用部材22の先端部分を、リンフォースパネル54を回り込むように延出させることで、流路をリンフォースパネル54に沿って延長させる。これにより、リンフォースパネル54を回り込むように発泡性材料11を流動させることで、中空部Sはリンフォースパネル54の端縁を挟持した発泡体12により充填される。このように充填された発泡体12であっても、インナパネル52とリンフォースパネル54との断面構造が強化されるようになる。
【0048】
・前記各充填用具21,31は、インナパネル52に支持させているが、充填用具21,31にリンフォースパネル54,62に支持するための支持部を設けて、充填用具21,31をリンフォースパネル54,62に支持させてもよい。なお、第1及び第2の実施形態において、充填用具21,31を用いずに発泡体12を充填することもできる。すなわち、第1の実施形態においては、流路用部材22、流動規制部材23、及び発泡性材料11を車両用ピラー51の中空部Sに各別に配置し、第2の実施形態においては、上部及び下部流路用部材32a,32b、並びに発泡性材料11を車両用ピラー61の中空部Sに各別に配置してもよい。
【0049】
・前記発泡性材料11の形状及び数は、特に限定されず、例えば複数の発泡性材料11を充填用具21,31やインナパネル52に支持させることもできる。
・第1及び第2の実施形態においては、インナパネル52とリンフォースパネル54,62との間に形成される中空部を主充填部S1として発泡体12を充填している。この点、インナパネル52側ではなく、アウタパネル53側において発泡体12の効果を発揮させることが重要である場合には、副充填部S2(第2中空部)を主充填部S1(第1中空部)に変更して、発泡体の充填方法を実施してもよい。
【0050】
・前記リンフォースパネル54,62はインナパネル52に接合されているが、リンフォースパネル54,62のフランジ部をインナパネル52とアウタパネル53との間に介在させて溶接により接合してもよい。また、リンフォースパネル54,62は、主として補強を目的としているが、補強目的に限らず、他の機能を目的とする中間パネルが配置された車両用ピラーに対して上記の発泡体の充填方法を適用してもよい。
【0051】
・第1及び第2の実施形態においては、車両用ピラー51,61に発泡体12を充填しているが、車両用ピラー51,61以外の中空構造体を発泡体の充填の対象物としてもよい。すなわち、流路用部材22、流動規制部材23、上部及び下部流路用部材32a、32bの形状や寸法を、中空部の形状に応じて変更することで、一方の中空部への発泡体の充填を利用して他方の中空部においても発泡体を充填することができる。また、発泡性材料が流動する方向は、上下方向に限らず、例えば水平方向に流動する場合であっても、上述した充填方法を適用することが可能である。なお、中空構造体としては、例えば車両のドア、バンパ等を構成する車両用中空構造体、及び、鉄道用、船舶用、航空機用、建築用等に用いられる中空構造体が挙げられる。
【符号の説明】
【0052】
G…間隙、S…中空部、S1…主充填部(第1中空部)、S2…副充填部(第2中空部)、11…発泡性材料、12…発泡体、21,31…充填用具、22…流路用部材、23…流動規制部材、24,33…連結部材、32a…上部流路用部材(第1流路用部材)、32b…下部流路用部材(第2流路用部材)、51,61…車両用ピラー(中空構造体)、52…インナパネル(第1パネル)、53…アウタパネル(第2パネル)、54,62…リンフォースパネル(中間パネル)、54a,62b…下端縁、62a…上端縁、63…上端切り欠き部(第1切り欠き部)、64…下端切り欠き部(第2切り欠き部)、65…連通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パネル及び第2パネルにより形成される中空部を有し、前記中空部に中間パネルが設けられることで、前記中空部の一部が前記中間パネルを介して隣り合う第1中空部及び第2中空部に区画される中空構造体の前記第1中空部及び前記第2中空部に発泡体を充填するに際して、加熱により流動を伴って発泡体を形成する発泡性材料を前記中空部に配置して前記発泡体を形成させる発泡体の充填方法であって、
前記中間パネルの少なくとも一部と間隙を有した状態で、前記第1中空部側から前記中間パネルを越えて前記第2中空部側へ延出する流路用部材と、前記第1中空部において前記流動を前記流路用部材へ指向させる流動規制部材とを配置し、前記流路用部材と前記流動規制部材との間において前記発泡性材料を加熱することで、前記間隙を流路として前記第2中空部へ前記発泡性材料の一部を流入させることを特徴とする発泡体の充填方法。
【請求項2】
前記流路用部材及び前記流動規制部材は、これらを連結する連結部材により一体化された充填用具として構成され、前記発泡性材料を取り付けた前記充填用具を用いることを特徴とする請求項1に記載の発泡体の充填方法。
【請求項3】
前記中間パネルが切り欠き部を有し、前記切り欠き部と前記流路用部材との間隙を前記発泡性材料の流路とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡体の充填方法。
【請求項4】
第1パネル及び第2パネルにより形成される中空部を有し、前記中空部に中間パネルが設けられることで、前記中空部の一部が前記中間パネルを介して隣り合う第1中空部及び第2中空部に区画される中空構造体の前記第1中空部及び前記第2中空部に発泡体を充填するに際して、加熱により流動を伴って発泡体を形成する発泡性材料を前記中空部に配置して前記発泡体を形成させる発泡体の充填方法であって、
前記中間パネルの第1端縁の少なくとも一部と間隙を有した状態で前記第1中空部側から前記中間パネルを越えて前記第2中空部側へ延出する第1流路用部材と、前記中間パネルの第2端縁の少なくとも一部と間隙を有した状態で前記第1中空部側から前記中間パネルを越えて前記第2中空部側へ延出する第2流路用部材とを配置し、これら流路用部材の間において前記発泡性材料を加熱することで、前記間隙を流路として前記第2中空部へ前記発泡性材料の一部を流入させることを特徴とする発泡体の充填方法。
【請求項5】
前記第1流路用部材及び第2流路用部材は、これらを連結する連結部材により一体化された充填用具として構成され、前記発泡性材料を取り付けた前記充填用具を用いることを特徴とする請求項4に記載の発泡体の充填方法。
【請求項6】
前記第1端縁及び前記第2端縁の少なくとも一方が、切り欠き部を有し、
前記切り欠き部と、前記第1流路用部材及び前記第2流路用部材の少なくとも一方との間隙を前記発泡性材料の流路とすることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の発泡体の充填方法。
【請求項7】
前記第1中空部と前記第2中空部とを連通する連通孔を前記中間パネルに形成することで、前記連通孔を前記発泡性材料の流路として前記第2中空部へ前記発泡性材料を流入させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発泡体の充填方法。
【請求項8】
前記発泡体が前記第2パネルに連結されるように、前記第2中空部へ発泡性材料を流入させることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の発泡体の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−131469(P2011−131469A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292236(P2009−292236)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000101905)イイダ産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】