説明

発泡体形成具及びその製造方法

【課題】金属製支持体の特定部位における錆の発生を好適に抑制することのできる発泡体形成具及びその製造方法を提供する。
【解決手段】発泡体形成具11は、加熱により発泡及び硬化した発泡体を形成する熱発泡性基体12と、熱発泡性基体12が支持されるとともに金属部材に固定される金属製支持体13とを備えて構成されている。金属製支持体13は、車両の金属部材に固定される固定部14と、熱発泡性基体12を支持する支持部15とを備えて構成されている。支持部の片面である接触面15aには、熱発泡性基体12が支持され、この接触面15aには防錆処理が施されている。発泡体形成具11の製造方法は、金属製支持体13を形成する支持体形成工程と、その金属製支持体13に防錆処理を施す防錆処理工程と、防錆処理の施された金属製支持体13に熱発泡性基体12を支持させる支持工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の金属部材の所定の位置において発泡体を形成する発泡体形成具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のピラー等はインナパネルとアウタパネルとが一体となって構成されることで、中空構造を有している。このような中空構造体の内部空間に、発泡体を配置することによって、中空構造体の振動が抑制されるため、そうした振動に基づく異音の発生が抑制される。また、配置された発泡体によって、中空構造体の内部空間における空気の流通が抑制されるため、空気の流通に基づく異音の発生が抑制される。そして、例えば車両において、中空構造体に起因する異音の発生が抑制される結果、車内の静粛性を確保することができる。従来、中空構造体の内部空間への発泡体の配置には、加熱により発泡体を形成する熱発泡性基体が支持体に支持された発泡体形成具が用いられている(特許文献1参照)。こうした発泡体形成具において、金属製の支持体を備えた発泡体形成具では、その支持体を例えばインナパネルに溶接により固定される。このように中空構造体の内部に配置された後、その中空構造体を加熱することにより、熱発泡性基体から発泡体を形成させる。
【特許文献1】実開昭63−123370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両に施される各種塗装には、車両を構成する金属部分の防錆を目的とした防錆処理が含まれる。防錆処理は、車両を構成する金属部材に発泡体形成具が固定された後に、その車両を処理液に浸漬することにより施される。こうした車両の防錆処理は、車両において露出した金属部分の全体に施されることが好ましい。ここで、発泡体形成具においては、金属製の支持体における熱発泡性基体との接触部分は、防錆処理における処理液の侵入が阻害される結果、その接触部分には防錆処理が施され難い。そして、防錆処理後に熱発泡性基体から発泡体が形成されると、その接触部分には多数の気泡を有する発泡体が接触することになる。こうした発泡体は、樹脂材料から形成されるため、接触部分について錆の発生を抑制する効果を奏すると考えられる。ところが、その発泡体では、気泡内に高湿の空気が一旦侵入してしまうと、その気泡内に湿気が滞留し易い傾向にある。このような湿気は上記接触部分における防錆の観点からは、好ましくないと考えられる。
【0004】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属製支持体の特定部位における錆の発生を好適に抑制することのできる発泡体形成具及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、加熱により発泡及び硬化した発泡体を形成する熱発泡性基体と同熱発泡性基体が支持されるとともに金属部材に固定される金属製支持体とを備えてなり、前記金属部材の所定の位置に前記発泡体を形成するための発泡体形成具であって、前記熱発泡性基体と接触している前記金属製支持体の部位に防錆処理が施されていることを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、金属製支持体において熱発泡性基体と接触している部位は、防錆処理によって錆の発生が抑制される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡体形成具において、前記防錆処理が、防錆塗装であることを要旨とする。
【0007】
防錆塗装の防錆効果は、例えば、リン酸亜鉛塩等の溶解した処理液に浸漬して皮膜を形成する化成処理よりも、長期にわたって発揮され易い。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発泡体形成具の製造方法であって、前記金属製支持体を形成する支持体形成工程と、その金属製支持体に防錆処理を施す防錆処理工程と、前記防錆処理の施された前記金属製支持体に前記熱発泡性基体を支持させる支持工程とを含むことを要旨とする。
【0008】
鋼板から金属製支持体を形成するに際して、例えばプレス成形等を通じて金属の表面に微細な傷が生じることがある。すなわち、予め防錆処理を施した鋼板から金属製支持体を形成する場合、防錆処理を施した金属面は、プレス成形等の影響を受けることになる。上記方法によれば、金属製支持体に防錆処理を施しているため、防錆処理の施された金属面がプレス成形等の影響を受けることを回避することができる。このため、防錆処理による作用効果が十分に発揮され易い。
【0009】
請求項4に記載の発明は、加熱により発泡及び硬化した発泡体を形成する熱発泡性基体と、同熱発泡性基体が支持されるとともに金属部材に固定される金属製支持体とを備えてなり、前記金属部材の所定の位置に前記発泡体を形成するための発泡体形成具であって、前記金属製支持体は、その本体部を前記金属部材に固定する固定部と、前記本体部に設けられ、同本体部に対する前記熱発泡性基体の移動範囲を規制する突起部と、前記突起部に設けられ、前記熱発泡性基体を前記本体部に保持する保持部とを備え、前記熱発泡性基体は、前記本体部及び前記突起部に対して変位するように前記金属製支持体に支持されることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、熱発泡性基体と本体部との間、及び熱発泡性基体と突起部との間に対する防錆処理液の侵入は、熱発泡性基体の変位によって促進される。このため、本体部及び突起部においても防錆処理が好適に施されるようになる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発泡体形成具において、前記突起部は、前記熱発泡性基体を囲繞するように配置され、前記本体部と前記保持部との距離寸法を、前記本体部と前記保持部との間に配置される前記熱発泡性基体の部位の厚み寸法よりも大きく構成したことを要旨とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発泡体形成具において、前前記熱発泡性基体には、前記突起部を挿入する挿入孔が形成され、前記突起部は、前記挿入孔に緩挿されるように構成され、前記本体部と前記保持部との距離寸法を、前記本体部と前記保持部との間に配置される前記熱発泡性基体の部位の厚み寸法よりも大きく構成したことを要旨とする。
【0013】
例えば請求項5又は請求項6に記載の構成のように、熱発泡性基体が、本体部及び突起部に対して変位する構成にすることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の発泡体形成具において、前記本体部と前記熱発泡性基体との間にスペーサ突起を配置したことを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、本体部と熱発泡性基体との離間は、スペーサ突起によって促進される。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発泡体形成具において、前記スペーサ突起は、前記本体部、前記熱発泡性基体、及び前記突起部のうち、少なくとも一箇所に一体形成されていることを要旨とする。
【0015】
スペーサ突起は、請求項8に記載のように本体部と熱発泡性基体との間に配置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属製支持体の特定部位における錆の発生を好適に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
本発明を車両用の中空構造体に適用される発泡体形成具に具体化した第1の実施形態について図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1(a)に示すように、発泡体形成具11は、加熱により発泡及び硬化した発泡体を形成する熱発泡性基体12と、熱発泡性基体12が支持されるとともに金属部材に固定される金属製支持体13とを備えて構成されている。
【0019】
熱発泡性基体12は、樹脂系材料、ゴム系材料、又は、樹脂系及びゴム系材料の混合物を基材として、その基材に発泡剤、硬化剤、充填剤等を適宜配合した原材料を成形して得られる。樹脂系材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、エチレン/プロピレン/ジエン三元共重合体、エチレンビニルアセテート、エチレンメチルアクリレート等のオレフィン系樹脂材料、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体等のスチレン系樹脂材料、エポキシ系樹脂材料、各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。ゴム系材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム等が挙げられる。発泡材は、無機系発泡剤及び有機系発泡剤に分類される。無機系発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム等、有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、p−トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物等が挙げられる。硬化剤は、無機系硬化剤、有機系硬化剤及びその他の硬化剤に分類される。無機系硬化剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物、硫黄等が挙げられる。有機系硬化剤としては、4,4’−ジチオジモルホリン、テトラメチルチラウムジスルフィド等のチラウム系化合物、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物等が挙げられる。その他の硬化剤としては、エチレンジアミン等の脂肪族アミン、メタフェニレンジアミン等の芳香族アミン、無水フタル酸等の芳香族酸無水物等が挙げられる。更に、熱発泡性基体12の原材料には、必要に応じて尿素等の発泡助剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ等の充填剤、アルデヒドアミン類、グアニジン類、チアゾール類等の硬化促進剤、芳香族アミン類、リン酸類等の老化防止剤、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の油等を配合することもできる。熱発泡性基体12は、押出成形、プレス成形、射出成形等の周知の成形法により成形することができる。
【0020】
図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施形態の熱発泡性基体12は、外形を四角形状とする板状をなし、その片面を支持面12aとして、金属製支持体13に支持されている。金属製支持体13は、車両の金属部材に固定される固定部14と、熱発泡性基体12を支持する支持部15とを備えて構成されている。支持部15は、外形を四角形状とする板状をなし、支持部15の片面には熱発泡性基体12が支持されている。すなわち、支持部15の片面は、熱発泡性基体12の支持面12aが接触している接触面15aとして構成されている。この接触面15aには防錆処理が施され、接触面15aにおける錆の発生が抑制されている。防錆処理としては、防錆塗装、化成処理、めっき処理等が挙げられる。これらの防錆処理のうち、十分な防錆効果が得られ易いという観点から防錆塗装が好ましい。更に、防錆塗装の中でも、車両の金属部材と同等の防錆効果が得られ易いことから、電着塗装が好ましい。なお、熱発泡性基体12は、支持部15又は固定部14に熱発泡性基体12を係止する係止部を形成することで、支持部15に支持させることができる。また、支持部15の片面において部分的に接着剤を塗布し、支持部15の片面に熱発泡性基体12を接着させることもできる。この場合、支持部15の片面において接着剤を塗布した部位は、その接着剤によって覆われるため、少なくとも接着剤を塗布していない部分に防錆処理を施せばよい。
【0021】
発泡体形成具11の製造方法は、金属製支持体13を形成する支持体形成工程と、その金属製支持体13に防錆処理を施す防錆処理工程と、防錆処理の施された金属製支持体13に熱発泡性基体12を支持させる支持工程とを含む。支持体形成工程では、鋼板をプレス成形することで金属製支持体13が形成される。防錆処理工程では、上述した防錆処理が金属製支持体13の接触面15aに施される。支持工程において支持される。次に、この金属製支持体13に熱発泡性基体12を支持させる。
【0022】
次に、発泡体形成具11を用いて中空構造体に発泡体を形成する方法について説明する。
図2(a)には、中空構造体51の断面構造が示されている。この中空構造体51は、金属製のインナパネル52と同じく金属製のアウタパネル53とを備えている。本実施形態の発泡体形成具11は、インナパネル52に固定されている。具体的には、中空構造体51の内面となるインナパネル52の面に、固定部14を溶接することで、発泡体形成具11は固定される。次に、インナパネル52とアウタパネル53とを溶接により接合することで、中空構造体51が形成され、こうした中空構造体51は、車両の一部を構成する。そして、組み立てられた車両は、各種塗装工程に供される。各種塗装工程には、車両を構成する金属部分の防錆を目的とした防錆処理が含まれる。こうした防錆処理において、中空構造体51ではその内面及び外面のいずれの面も防錆処理が施される。このとき、発泡体形成具11を構成する金属製支持体13においても、露出している面には防錆処理が施されるものの、接触面15aには熱発泡性基体12の支持面12aが接触しているため、その接触面15aには防錆処理が施されない。
【0023】
続いて、発泡体形成具11が配置された中空構造体51は、例えば車両の乾燥工程において車両が乾燥炉を通じることで加熱される。この加熱により熱発泡性基体12が発泡及び硬化することで、図2(b)に示される発泡体16が形成される。このように中空構造体51の所定の部位には、発泡体16が充填される。このとき、発泡体16は、接触面15aに接触した状態で配置される。そして発泡体16には、多数の気泡が含まれており、その気泡内には、湿気が含まれていることがある。発泡体形成具11において、接触面15aに施した防錆処理は、そうした湿気を要因とした錆の発生を抑制する。
【0024】
発泡体16が充填された中空構造体51では、中空構造体51の振動、中空構造体51の内部における空気の流通等が抑制される。このため、その中空構造体51が装着された車両においては車内の静粛性等が確保される。
【0025】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)車両に防錆処理が施される際に、金属製支持体13においても露出している面には防錆処理が施されるものの、接触面15aには熱発泡性基体12の支持面12aが接触しているため、その接触面15aには防錆処理が施されない。ここで、熱発泡性基体12から形成した発泡体16は、接触面15aに接触した状態で配置される。そして発泡体16には、多数の気泡が含まれており、その気泡内には、湿気が含まれていることがある。本実施形態の発泡体形成具11の接触面15aには、防錆処理が施されている。このため、気泡内の湿気を要因として接触面15aに錆が発生するといった現象は好適に抑制される。なお、支持体を非金属から形成することで、支持体における錆の発生は回避することは可能である。しかしながら、非金属の支持体は、インナパネル52に溶接することができないため、通常、支持体に係合部を設けるとともにインナパネル52に係合孔を設けて、係合孔に係合部を係合させることで固定される。こうした固定においては、係合孔に防錆処理液が侵入し難い。そして発泡体が形成されると、そうした係合孔が発泡体で覆われることがある。すなわち、非金属の支持体を採用した場合であっても、インナパネル52の係合孔部位における防錆について未だ改善の余地を残している。本実施形態の発泡体形成具11によれば、金属製支持体13の特定部位における錆の発生を好適に抑制することができる。
【0026】
(2)接触面15aには、防錆処理の中でも、防錆塗装が施されることが好ましい。防錆塗装の防錆効果は、例えば、リン酸亜鉛塩等の溶解した処理液に浸漬して皮膜を形成する化成処理よりも、長期にわたって発揮され易いため、上記(1)欄に述べた作用効果を高めることができる。
【0027】
(3)鋼板から金属製支持体13を形成するに際して、例えばプレス成形等を通じて金属の表面に微細な傷が生じることがある。すなわち、予め防錆処理を施した鋼板から金属製支持体13を形成する場合、防錆処理を施した金属面は、プレス成形等の影響を受けることになる。本実施形態の発泡体形成具11の製造方法は、金属製支持体13に防錆処理を施しているため、防錆処理の施された金属面がプレス成形等の影響を受けることを回避することができる。このため、防錆処理による作用効果が十分に発揮され易い。
【0028】
なお、第1の実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・熱発泡性基体12の外形は、四角形状に限定されず、円形等に変更してもよい。また、熱発泡性基体12の全体形状は、板状に限定されず、ブロック状等に変更してもよい。
【0029】
・金属製支持体13の形状は、例えば熱発泡性基体12の形状、中空構造体51の内部形状等に応じて変更してもよい。
・金属部材としては、インナパネル52等の車両用の金属部材以外に、建築物を構成する金属パネル等が挙げられる。その金属パネルとしては、例えば屋根を構成するパネル、壁材を構成する吸音パネル等が挙げられる。すなわち、金属部材は、防錆処理が施された後に、発泡体16を形成する工程が実施されるものであれば、接触面15aにおける錆の発生を抑制することができるため、そうした金属部材を備えた製品の商品価値を高めることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
本発明を車両用の中空構造体に適用される発泡体形成具に具体化した第2の実施形態について図3及び図4に基づいて詳細に説明する。なお、第2の実施形態では、主に金属製支持体の構成が第1の実施形態と異なるため、金属製支持体の構成を中心に説明する。
【0031】
図3(a)に示すように、発泡体形成具21は、加熱により発泡及び硬化した発泡体を形成する熱発泡性基体22と、熱発泡性基体22が支持されるとともに金属部材に固定される金属製支持体23とを備えて構成されている。
【0032】
金属製支持体23は、その本体部24を金属部材に固定する固定部25と、本体部24に設けられ、本体部24に対する熱発泡性基体22の移動範囲を規制する突起部26と、突起部26に設けられ、熱発泡性基体22を本体部24に保持する保持部27とを備えている。熱発泡性基体22は、本体部24及び突起部26に対して変位するように金属製支持体23に支持される。
【0033】
熱発泡性基体22は、本体部24の片面である本体面24aに支持される。図3(a)及び図3(b)に示すように、突起部26は熱発泡性基体22を囲繞するように配置されている。図4(a)及び図4(b)に示すように、それら突起部26によって、本体面24aに沿った方向に対する熱発泡性基体22の移動範囲が規制される。すなわち、本体面24aに沿った方向に対する熱発泡性基体22の移動は所定の範囲で許容される。なお、本実施形態の突起部26は、四角形状をなす熱発泡性基体22の四側部に対応して四つ設けられている。
【0034】
図3(a)及び図3(b)に示すように、突起部26は、鋼板の切り起こしにより本体部24と一体に形成されている。こうした突起部26の形成により、本体部24には凹部24b及び貫通孔24cが突起部26に隣接して形成されている。こうした凹部24b及び貫通孔24cは、防錆処理液の流路として機能させることができる。
【0035】
図4(c)に示すように、突起部26の先端部には、爪状をなす保持部27が折り曲げ形成されている。本体部24と保持部27との距離寸法は、本体部24と保持部27との間に配置される熱発泡性基体22の部位の厚み寸法よりも大きく構成されている。こうした保持部27により、熱発泡性基体22は、本体部24に保持されるとともに、本体面24aに直交する方向に対する熱発泡性基体22の移動が規制される。すなわち、本体面24aに直交する方向に対する熱発泡性基体22の移動は、所定の範囲で許容される。
【0036】
図3(a)に示すように、本体部24の略中央部にはスペーサ突起28が設けられている。このスペーサ突起28は、図4(c)に示すように本体面24aと熱発泡性基体22との離間を促進する役割を果たす。なお、本実施形態のスペーサ突起28は、鋼板を切り起こすことで本体部24と一体に形成されている。これにより、このスペーサ突起28に隣接して貫通孔24cが形成され、この貫通孔24cは防錆処理液の流路として機能させることができる。
【0037】
本実施形態の金属製支持体23は、鋼板のプレス加工により容易に製造することができる。金属製支持体23に熱発泡性基体22を支持させるには、例えば突起部26、保持部27又は熱発泡性基体22の弾性変形を利用して本体面24aと保持部27との間に熱発泡性基体22を配置させる。この発泡体形成具21は、固定部25をインナパネルに溶接することで中空構造体の内部の所定の位置に配置される。
【0038】
次に、本実施形態の発泡体形成具21の作用について説明する。
車両の各種塗装工程において、発泡体形成具21が配置された中空構造体には、防錆処理が施される。この防錆処理において、車両を防錆処理液に浸漬すると、中空構造体の内部には、防錆処理液が流入する。このとき、熱発泡性基体22は、本体面24a及び突起部26に対して変位するように金属製支持体23に支持されているため、車両の振動、車両の傾斜、防錆処理液の流動等を通じて、熱発泡性基体22は図4(a)〜(c)に二点鎖線で示すように変位する。このため、熱発泡性基体22と本体面24aとの間への防錆処理液の侵入、及び熱発泡性基体22と突起部26との間への防錆処理液の侵入は、熱発泡性基体22の変位によって促進される。このため、本体面24a及び突起部26においても車両の防錆処理を通じた防錆処理が好適に施されるようになる。また、スペーサ突起28により、本体面24aと熱発泡性基体22との離間が促進されるため、上記防錆処理液の侵入は更に促進されるようになる。加えて、突起部26に隣接して凹部24b及び貫通孔24cが形成されているため、凹部24b及び貫通孔24cを通じて防錆処理液の流動が好適に行われる。このため、本体部24及び突起部26の防錆処理が更に促進される。
【0039】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(4)熱発泡性基体22は、本体面24a及び突起部26に対して変位するように金属製支持体23に支持されることで、熱発泡性基体22と本体面24aとの間、及び熱発泡性基体22と突起部26との間に対する防錆処理液の侵入が促進される。このため、本体部24及び突起部26においても防錆処理が好適に施されるようになる。このように本実施形態の発泡体形成具21によれば、金属製支持体23の特定部位における錆の発生を好適に抑制することができる。
【0040】
(5)本体面24aと熱発泡性基体22との間には、スペーサ突起28が配置されているため、上述した防錆処理液の侵入は更に促進される。このため、上記(4)欄に記載の作用効果を高めることができる。
【0041】
なお、第2の実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・前記突起部26による熱発泡性基体22の支持構造を次のように変更することもできる。図5(a)及び図5(b)に示される発泡体形成具31の熱発泡性基体32には、金属製支持体33に設けられる突起部36を挿入する挿入孔32aが形成されている。突起部36は、挿入孔32aに緩挿されるように構成されている。このように構成した場合であっても、図6(a)に示すように、それら突起部36によって、本体面34aに沿った方向に対する熱発泡性基体32の移動範囲が規制される。なお、この発泡体形成具31において、本体部34、本体面34a、貫通孔34c、固定部35、及び保持部37の構成は、前記第2の実施形態と同様である。また、図6(b)に示すように、こうした突起部36に設けた保持部37によっても、本体面34aに直交する方向に対する熱発泡性基体32の移動が規制される。
【0042】
・突起部26の数は、特に限定されない。例えば、図5(a)及び図5(b)に示される突起部36と挿入孔32aによる支持構造では、一つの突起部36から構成することもできる。
【0043】
・前記スペーサ突起28を省略してもよい。
・図5(a)に示すように、突起部36の基端にスペーサ突起38を一体形成することもできる。また例えば、熱発泡性基体22にスペーサ突起38を一体形成してもよい。
【0044】
・熱発泡性基体22の外形は、四角形状に限定されず、円形等に変更してもよい。また、熱発泡性基体22の全体形状は、板状に限定されず、ブロック状等に変更してもよい。
・突起部26及び保持部27の形状は、特に限定されず、三角形状、円柱状等に変更してもよい。
【0045】
・前記第2の実施形態の突起部26は、鋼板の切り起こしにより設けられている。例えば突起部26を本体部24に溶接等で接合することにより設けてもよい。
・前記第2の実施形態の保持部27は、折り曲げ形成されている。例えば保持部27を突起部26に溶接等で接合することにより設けてもよい。
【0046】
・金属製支持体23の形状は、例えば熱発泡性基体22の形状、中空構造体の内部形状等に応じて変更してもよい。
・金属部材としては、インナパネル等の車両用の金属部材以外に、建築物を構成する金属パネル等が挙げられる。すなわち、金属部材は、防錆処理が施された後に、発泡体を形成する工程が実施されるものであれば、本体部24,34及び突起部26,36における錆の発生を抑制することができるため、そうした金属部材を備えた物品の商品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】(a)は、第1の実施形態の発泡体形成具を示す分解斜視図、(b)は、発泡体形成具を示す斜視図。
【図2】(a)は、中空構造体に配置された発泡体形成具を示す断面図、(b)は、発泡体が形成された状態を示す断面図。
【図3】(a)は、第2の実施形態の発泡体形成具を示す分解斜視図、(b)は、発泡体形成具を示す斜視図。
【図4】(a)及び(b)は、突起部に対する熱発泡性基体の変位を示す正面図、(c)は、本体部に対する熱発泡性基体の変位を示す断面図。
【図5】(a)は、第2の実施形態の発泡体形成具における変形例を示す分解斜視図、(b)は、発泡体形成具を示す斜視図。
【図6】(a)は、突起部に対する熱発泡性基体の変位を示す正面図、(b)は、本体部に対する熱発泡性基体の変位を示す側面図。
【符号の説明】
【0048】
11,21,31…発泡体形成具、12,22,32…熱発泡性基体、12a…支持面、13,23,33…金属製支持体、14,25,35…固定部、15…支持部、15a…接触面、16…発泡体、24,34…本体部、24a,34a…本体面、24b…凹部、24c,34c…貫通孔、26,36…突起部、27,37…保持部、28,38…スペーサ突起、32a…挿入孔、51…中空構造体、52…インナパネル、53…アウタパネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により発泡及び硬化した発泡体を形成する熱発泡性基体と同熱発泡性基体が支持されるとともに金属部材に固定される金属製支持体とを備えてなり、前記金属部材の所定の位置に前記発泡体を形成するための発泡体形成具であって、
前記熱発泡性基体と接触している前記金属製支持体の部位に防錆処理が施されていることを特徴とする発泡体形成具。
【請求項2】
前記防錆処理が、防錆塗装であることを特徴とする請求項1に記載の発泡体形成具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の発泡体形成具の製造方法であって、前記金属製支持体を形成する支持体形成工程と、その金属製支持体に防錆処理を施す防錆処理工程と、前記防錆処理の施された前記金属製支持体に前記熱発泡性基体を支持させる支持工程とを含むことを特徴とする発泡体形成具の製造方法。
【請求項4】
加熱により発泡及び硬化した発泡体を形成する熱発泡性基体と、同熱発泡性基体が支持されるとともに金属部材に固定される金属製支持体とを備えてなり、前記金属部材の所定の位置に前記発泡体を形成するための発泡体形成具であって、
前記金属製支持体は、その本体部を前記金属部材に固定する固定部と、
前記本体部に設けられ、同本体部に対する前記熱発泡性基体の移動範囲を規制する突起部と、
前記突起部に設けられ、前記熱発泡性基体を前記本体部に保持する保持部とを備え、
前記熱発泡性基体は、前記本体部及び前記突起部に対して変位するように前記金属製支持体に支持されることを特徴とする発泡体形成具。
【請求項5】
前記突起部は、前記熱発泡性基体を囲繞するように配置され、
前記本体部と前記保持部との距離寸法を、前記本体部と前記保持部との間に配置される前記熱発泡性基体の部位の厚み寸法よりも大きく構成したことを特徴とする請求項4に記載の発泡体形成具。
【請求項6】
前記熱発泡性基体には、前記突起部を挿入する挿入孔が形成され、
前記突起部は、前記挿入孔に緩挿されるように構成され、
前記本体部と前記保持部との距離寸法を、前記本体部と前記保持部との間に配置される前記熱発泡性基体の部位の厚み寸法よりも大きく構成したことを特徴とする請求項4に記載の発泡体形成具。
【請求項7】
前記本体部と前記熱発泡性基体との間にスペーサ突起を配置したことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の発泡体形成具。
【請求項8】
前記スペーサ突起は、前記本体部、前記熱発泡性基体、及び前記突起部のうち、少なくとも一箇所に一体形成されていることを特徴とする請求項7に記載の発泡体形成具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−273035(P2008−273035A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119675(P2007−119675)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000101905)イイダ産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】