説明

発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法、熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法及び熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法

【課題】水中ホットカット法による発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造において、小粒で粒径の揃った発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することが可能な技術の提供。
【解決手段】樹脂吐出面を有するダイス本体を少なくとも有する造粒用ダイス1を取り付けた樹脂供給装置2に熱可塑性樹脂を供給して溶融混練させる工程と、熱可塑性樹脂を造粒用ダイスに向けて移動させながら熱可塑性樹脂に発泡剤を注入して発泡剤含有樹脂を形成する工程と、ダイス本体の樹脂吐出面に開孔したノズルから吐出される発泡剤含有樹脂をカッター3により冷却媒体中で切断して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程とを有し、ダイス本体の温度が発泡剤含有樹脂の溶融樹脂温度より115℃〜200℃高い範囲となるように温度制御しつつ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中ホットカット法により発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法、熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法及び熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中ホットカット法により発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法として、例えば特許文献1〜3に開示された技術が提案されている。
特許文献1には、分子量Mwが170000g/モルを超える発泡スチレンポリマーを製造する方法であって、少なくとも120℃の温度を有する発泡剤含有スチレンポリマー溶融物を、ダイ出口の孔径が1.5mm以下の孔を有するダイプレートを介して搬送し、次いで押出物を顆粒化することを特徴とする方法が開示されている。
【0003】
また特許文献2には、水流に接触して設けられた樹脂吐出面と、押出機のシリンダに連通して前記樹脂吐出面に開口する複数のノズルとを備え、前記ノズルが、前記樹脂吐出面上における仮想円の円周に沿って配置され、前記ノズルを配置した円周の内側の樹脂吐出面に断熱材が設けられ、前記円周の中心部を通って外側に延びるようにして複数のカートリッジヒーターが樹脂吐出面近傍に設けられている造粒用ダイス、造粒装置及びそれを用いた発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法が開示されている。
【0004】
また特許文献3には、押出機内で溶融された熱可塑性樹脂に発泡剤を圧入し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの多数の小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性粒子を得る熱可塑性樹脂発泡性粒子の製造方法であって、前記ダイの小孔ランド部を通過する際の発泡剤含有溶融樹脂の剪断速度が12000〜35000sec−1、且つ樹脂の見掛け溶融粘度が100〜700ポイズとなるように押し出す製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−534733号公報
【特許文献2】WO2008/102874
【特許文献3】WO2005/028173
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水中ホットカット法により発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する場合、発泡剤を添加した溶融樹脂を多数のノズルから水中に押し出し、その直後にカットして樹脂粒子としているが、ダイス先端面は循環水と接触しているため、熱が奪われ、ノズルから吐出する樹脂が固化し、ノズルが塞がって樹脂粒子の生産効率が低下し易い。そのため、従来技術ではダイス内部の温度を適正に制御してノズル目詰まりを防ぎつつ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造している。
【0007】
特許文献1では、段落0021に「ダイプレートの温度は、発泡剤含有ポリスチレン溶融物の温度より20〜100℃高い範囲にあることが好ましい。」と記載され、また段落0036の表2には、発泡性ポリスチレン顆粒を製造する実施例2において、溶融温度200℃に対して、ダイプレート温度を180〜240℃(溶融温度に対して−20℃〜+40℃)に設定した製造例が記載されている。
しかし、特許文献1に記載されているように、ダイプレート温度が溶融樹脂温度より20〜100℃高くなるように設定した場合、水中ホットカット法により発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産しようとしても、ダイスの小孔が閉塞してしまい、小粒で粒径の揃った発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することはできなかった。
【0008】
また、特許文献2では、段落0053の表1中に、押出樹脂温度が170℃である場合に、ダイス保持温度を270〜280℃(押出樹脂温度に対して+100〜+110℃)に設定した製造例が記載されている。
特許文献2に記載されているように、ダイス保持温度を押出樹脂温度に対して+100〜+110℃設定した場合、水中ホットカット法により発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することは可能であるが、得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子に大きめの粒子が混ざっており、小粒で粒径の揃った発泡性熱可塑性樹脂粒子が得られにくい問題がある。
また、前記製造例で得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子は、粒子内部にボイドが多く存在し、これによって該発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡後に型内発泡成形して製造された発泡成形体の強度が低下してしまうという問題がある。
【0009】
また、特許文献3では、ダイの小孔ランド部を通過する際の発泡剤含有溶融樹脂の剪断速度が12000〜35000sec−1、且つ樹脂の見掛け溶融粘度が100〜700ポイズで押し出すように設定している。また、その段落0027には、ダイ導入部における発泡性樹脂の樹脂温度は、樹脂の融点より50〜100℃高めに調整することが記載されている。
しかし、特許文献3に記載された前記条件で水中ホットカット法により発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産しようとしても、ダイスの小孔が閉塞してしまい、小粒で粒径の揃った発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することはできなかった。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、水中ホットカット法による発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造において、小粒で粒径の揃った発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、樹脂吐出面を有するダイス本体を少なくとも有する造粒用ダイスを取り付けた樹脂供給装置に熱可塑性樹脂を供給して溶融混練させる工程と、
前記熱可塑性樹脂を前記造粒用ダイスに向けて移動させながら前記熱可塑性樹脂に発泡剤を注入して発泡剤含有樹脂を形成する工程と、
前記ダイス本体の樹脂吐出面に開孔したノズルから吐出される前記発泡剤含有樹脂をカッターにより冷却媒体中で切断して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程とを有する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法であって、
前記ダイス本体の温度が発泡剤含有樹脂の溶融樹脂温度より115℃〜200℃高い範囲となるように温度制御しつつ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0012】
また本発明は、樹脂吐出面を有するダイス本体を少なくとも有する造粒用ダイスを取り付けた樹脂供給装置に熱可塑性樹脂を供給して溶融混練させる工程と、
前記熱可塑性樹脂を前記造粒用ダイスに向けて移動させながら前記熱可塑性樹脂に発泡剤を注入して発泡剤含有樹脂を形成する工程と、
前記ダイス本体の樹脂吐出面に開孔したノズルから吐出される前記発泡剤含有樹脂をカッターにより冷却媒体中で切断して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程と、
前記発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡して熱可塑性樹脂発泡粒子を得る工程とを有する熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法であって、
前記ダイス本体の温度が発泡剤含有樹脂の溶融樹脂温度より115℃〜200℃高い範囲となるように温度制御しつつ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法を提供する。
【0013】
また本発明は、樹脂吐出面を有するダイス本体を少なくとも有する造粒用ダイスを取り付けた樹脂供給装置に熱可塑性樹脂を供給して溶融混練させる工程と、
前記熱可塑性樹脂を前記造粒用ダイスに向けて移動させながら前記熱可塑性樹脂に発泡剤を注入して発泡剤含有樹脂を形成する工程と、
前記ダイス本体の樹脂吐出面に開孔したノズルから吐出される前記発泡剤含有樹脂をカッターにより冷却媒体中で切断して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程と、
前記発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡して熱可塑性樹脂発泡粒子を得る工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子を型内発泡成形して熱可塑性樹脂発泡成形体を得る工程とを有する熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法であって、
前記ダイス本体の温度が発泡剤含有樹脂の溶融樹脂温度より115℃〜200℃高い範囲となるように温度制御しつつ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、水中ホットカット法による発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造において、前記ダイス本体の温度が発泡剤含有樹脂の溶融樹脂温度より115℃〜200℃高い範囲となるように温度制御しつつ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得るようにしたので、小粒で粒径の揃った発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することができる。
また、本発明により得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子は、粒子内部のボイドが少ないために、得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を型内発泡成形して製造した発泡成形体の機械強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による造粒装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態による造粒用ダイスの概略構成を示す側断面図である。
【図3】図2のダイス本体の樹脂吐出面を示す側面図である。
【図4】ノズルの配置状態の一例を示す図である。
【図5】本実施の形態の変形例によるノズルの配置状態の一例を示す図であって、図4に対応する図である。
【図6】本発明に係る実施例1で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の断面の拡大画像である。
【図7】比較例2で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の断面の拡大画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の製造方法において使用される造粒装置の一例を示す構成図、図2はその造粒用ダイスの一例を示す側断面図、図3は図2のダイス本体の樹脂吐出面を示す側面図、図4はノズルの配置状態を示す図である。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施の形態による造粒装置Tは、水中ホットカット方式によって発泡性熱可塑性樹脂粒子を造粒するための造粒装置である。
本造粒装置Tは、造粒用ダイス1が先端に取り付けられた押出機2(樹脂供給装置)と、造粒用ダイス1のノズル15から吐出される樹脂(本実施の形態では発泡剤含有樹脂20)を切断するカッター3が収容されるとともに、造粒用ダイス1の樹脂吐出面13に水流を接触させるためのチャンバー4とを備えている。チャンバー4には、循環する水などの冷却媒体(以下、水と記す)を流すための管路5が接続され、この管路5の一端(チャンバー4より上流側)が、送水ポンプ6を介して水槽7に接続されている。また、管路5の他端(チャンバー4より下流側)には、循環水から発泡性熱可塑性樹脂粒子を分離し、脱水・乾燥する脱水処理部8が設けられている。この脱水処理部8で分離され、脱水・乾燥した発泡性熱可塑性樹脂粒子は、容器9に送られるようになっている。そして、符号21はホッパー、22は発泡剤供給口、23は高圧ポンプである。
なお、造粒装置Tおよび造粒用ダイス1において、樹脂が吐出される側を「先方」、「先端」とし、その反対側を「後方」、「後端」として以下の説明では統一して用いる。
【0018】
図2および図3に示すように、造粒用ダイス1は、ダイス本体10(ダイプレートとも呼称される)と、押出機2の先端側(図中右側)に固定されたダイホルダ11(ダイバータとも呼称される)とからなり、ダイス本体10がダイホルダ11の先端側に複数のボルト12、12、…によって固定されている。
ダイホルダ11は、押出機2のシリンダに連通して設けられ、後端側から先端側に向けて後端側流路11a、先端側流路11bがその順で形成されている。ダイス本体10は、後端面中央部において、後方側に突出してなる円錐状凸部10aが形成され、ダイス本体10とダイホルダ11とが接続した状態で、ダイホルダ11の先端側流路11b内に、所定隙間をもって円錐状凸部10aが挿入されている。すなわち、ダイホルダ11の後端側流路11aを通過した発泡剤含有樹脂20は先端側流路11aにおいて円錐状凸部10aの周面に沿って流れ、ダイス本体10の後端面に開口する複数の樹脂流路14、14、…(後述する)に連通する構成となっている。
【0019】
ダイス本体10は、その先端面で水流に接触する樹脂吐出面13と、押出機2から押出された発泡剤含有樹脂20を樹脂吐出面13に向けて移送するための複数の樹脂流路14、14、…と、複数の樹脂流路14、14、…の先端に設けられると共に樹脂吐出面13に開口する複数のノズル15、15、…と、樹脂吐出面13の中心位置に設けられた断熱材16と、樹脂吐出面13よりも押出機2側の位置で樹脂吐出面13や樹脂流路14を温めるためのカートリッジヒーター17、ダイス本体10を温めるための短ヒーター18とを備えて概略構成されている。
カートリッジヒーター17および短ヒーター18は、従来周知のカートリッジヒーターの中からダイス本体10の大きさや形状に応じて適宜選択して使用できる。つまり、カートリッジヒーター17および短ヒーター18としては、例えば棒状のセラミックに巻き付けた発熱線(ニクロム線)をパイプ(耐熱ステンレス鋼)の中に挿入し、発熱線とパイプの隙間を高熱伝導性と高絶縁性に優れた材料(MgO)で封じ込めた、電力密度の高い棒状ヒーターを用いることができる。カートリッジヒーター17及び短ヒーター18は、片側にリード線が2本付いたカートリッジヒーターでも、両側にリード線が1本づつ付いたカートリッジヒーター(シーズヒーター)でもよいが、片側にリード線が2本付いたカートリッジヒーターの方が電力密度がより高いので好ましい。
【0020】
ダイス本体10の樹脂吐出面13は、中心部に円形断面の断熱材16を配置し、その断熱材16の径方向外側に複数のノズル15、15、…の吐出口を同心円に沿って設けている。そして、断熱材16及びノズル15、15、…が配置された樹脂吐出面13の中央部分は、チャンバー4内部で水と接触するようになっている。
【0021】
樹脂流路14、14、…は、円形断面をなし、樹脂吐出面13に対して直交する方向に延在されるとともに、ダイス本体10の中心軸線を中心とした円周(樹脂吐出面13上に描かれた円周)に沿って一定の間隔をもって配置されている。本実施の形態では、樹脂流路14、14、…は、8箇所設けられており、前記円周の周方向に隣り合う樹脂流路14、14どうしの中心角が45°になっている。そして、前述したように各樹脂流路14は、ダイホルダ11の先端側流路11bに連通している。
【0022】
ノズル15、15、…は、樹脂吐出面13上に描かれた円周に沿って所定間隔をもって配置されている。図4に示すように、具体的に1箇所のノズル15は、樹脂流路14の断面形状の範囲内に複数の単体ノズル15a、15b、15c、…が任意に配置されたノズルユニット(本発明では、これを称して「ノズル」と呼ぶ)をなしている。各単体ノズル15a、15b、15c、…の配置方法は、例えば複数の小円周上に多数を並べたものなどを採用することができるが、このような配置形態に限定されることはない。
【0023】
そして、断熱材16は、複数のノズル15、15、…を配置した円周の内側の樹脂吐出面13に設けられ、チャンバー4内の水にダイス本体10の熱が逃げないようにしてダイス本体10の温度低下を抑制するためのものである。この断熱材16としては、耐水性があり、表面硬度の高い構造の断熱材を用いることが好ましいとされる。例えば、高温のダイス本体10と接触しても変形等を起こさない耐熱性能と断熱性能に優れた断熱材を配し、これを断熱性能に優れたフッ素樹脂等の防水性樹脂で被覆し、さらに樹脂吐出面13側には、ステンレス鋼、セラミックスなどの表面硬度の高い材料を順に積層した積層タイプの断熱材16を用いることができる。
【0024】
カートリッジヒーター17および短ヒーター18は、それぞれ棒状ヒーターをなし、カートリッジヒーター17が短ヒーター18よりも造粒用ダイス1の先端後端方向で樹脂吐出面13側に位置している。
カートリッジヒーター17、17、…は、樹脂流路14の前記円周の周方向両側に配置されるとともに、長手方向を円周の径方向に向けてその円周を横切った状態で配置され、樹脂吐出面13の近傍において、樹脂吐出面13、ノズル15、及び樹脂流路14を加熱する機能を有している。本実施の形態のカートリッジヒーター17、17、…は、それぞれが円周方向に所定の中心角(ここでは、45°の角度)をもって8本設けられている。つまり、個々のノズル15は、2本のカートリッジヒーター17、17によって前記円周の周方向から挟み込まれるようにして配置されている。
【0025】
また、カートリッジヒーター17は、樹脂吐出面13の近傍、すなわち樹脂吐出面13から押出機2側に向かって所定のヒーター深さの範囲内に設けられている。ここで、ヒーター深さとは、樹脂吐出面13から表面加熱用のカートリッジヒーター17の中心部までの距離であり、ダイスの加工面や耐久性に支障がでない範囲で、その距離が小さい方がノズルの閉塞抑制効果が大きくなり好ましい。つまり、ヒーター深さとしては、10〜50mmの範囲が好ましい。10mm未満ではダイスの加工面や耐久性に支障がでるおそれがあり、50mmを超えるとノズルの閉塞抑制効果が低下するおそれがある。より好ましい範囲は、15〜30mmである。
【0026】
さらに、カートリッジヒーター17の直径は、発熱容量が確保できる範囲で小さい方が樹脂流路の断面積が大きくとれるとともに、ノズル数が多くなるため好ましい。つまり、カートリッジヒーター17の直径としては、15mm以下が好ましいが、10mm未満では必要な発熱容量が確保できにくくヒーターも高価となるため、10mm〜15mmが好ましく、10mm〜12mmがより好ましい。
そして、カートリッジヒーター17の長さ寸法は、ダイス本体10の半径方向で、配置されるノズル15より中心側に延びる位置(すなわち、少なくともカートリッジヒーター17の先端部がノズル15より中心側となる位置)からダイス本体10の略外周までの位置とされる。
【0027】
短ヒーター18、18、…は、各カートリッジヒーター17に対して所定間隔をもって後方側に配置され、カートリッジヒーター17の本数と同数(8本)が配置され、樹脂流路14の後端側を加熱する機能を有している。短ヒーター18の長さ寸法は、カートリッジヒーター17より短いものとなっている。
【0028】
また、造粒用ダイスには、ダイス本体の温度や溶融樹脂温度を測定するための測温体19A,19Bが設けられている。第1の測温体19Aは、ダイス本体10の中央部の温度(ダイス本体の温度:ダイス保持温度)を測定する。第2の測温体19Bは、ダイホルダ11内を流れる発泡剤含有樹脂の溶融樹脂温度(及び樹脂圧力)を測定する。
【0029】
前述した造粒装置Tを用いた発泡性熱可塑性樹脂粒子、熱可塑性樹脂発泡粒子、および熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法について説明する。
図1に示す造粒装置Tに用いる押出機2(樹脂供給装置)は、従来周知の各種押出機の中から造粒する樹脂の種類等に応じて適宜選択して使用でき、例えばスクリュを用いる押出機またはスクリュを用いない押出機のいずれも用いることができる。スクリュを用いる押出機としては、例えば、単軸式押出機、多軸式押出機、ベント式押出機、タンデム式押出機などが挙げられる。スクリュを用いない押出機としては、例えば、プランジャ式押出機、ギアポンプ式押出機などが挙げられる。また、いずれの押出機もスタティックミキサーを用いることができる。これらの押出機のうち、生産性の面からスクリュを用いた押出機が好ましい。また、カッター3を収容したチャンバー4も、ホットカット法において用いられている従来周知のものを用いることができる。
【0030】
本発明において、熱可塑性樹脂の種類は限定されないが、例えばポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等を単独もしくは2種類以上混合して使用することができる。さらに樹脂製品として一旦使用されてから回収して得られた熱可塑性樹脂の回収樹脂を使用することもできる。特に非晶性であるポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)などのポリスチレン系樹脂が好適に用いられる。
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられ、スチレンを50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレンモノマーを主成分とする、前記スチレン系モノマーとこのスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよく、このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
また、ポリスチレン系樹脂が主成分であれば、他の樹脂を添加してもよく、添加する樹脂としては、例えば、発泡成形体の耐衝撃性を向上させるために、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性ポリスチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンが挙げられる。あるいは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂を用いた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販されている通常のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法などの方法で新たに作製したポリスチレン系樹脂などの、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂(以下、バージンポリスチレンと記す。)を使用できる他、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。このリサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレーなどを回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料を用いることができる。また、使用することができるリサイクル原料は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたもの以外にも、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンターなど)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレットしたものを用いることができる。
【0031】
図1および図2に示すように、前述した造粒装置Tを用いて、発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する場合には、造粒用ダイス1を先端に取り付けた押出機2に熱可塑性樹脂をホッパー21から供給し、それを溶融して混練する。次に、造粒用ダイス1に向けて熱可塑性樹脂を移動させながら、この熱可塑性樹脂に発泡剤供給口22から高圧ポンプ23によって発泡剤を圧入し、発泡剤と熱可塑性樹脂とを混合して発泡剤含有樹脂20を形成する。発泡剤含有樹脂20は、押出機2の先端からダイホルダ11を経て、ダイス本体10の樹脂流路14に送られる。樹脂流路14を通って送られた発泡剤含有樹脂20は、ダイス本体10の樹脂吐出面13に開孔した各ノズル15から吐出され、カッター3の回転刃によりチャンバー4の水流中(冷却媒体中)で直ちに切断される。
【0032】
この発泡剤含有樹脂20の造粒時、ダイス本体10の温度が発泡剤含有樹脂20の溶融樹脂温度より115℃〜200℃高い範囲となるように、各ヒータをオンオフ制御することによってダイス本体10の温度制御を行いつつ、水中ホットカット法によって造粒を行う。また、冷却媒体である循環水の温度は、10〜60℃に調節しておく。
ここで、「溶融樹脂温度」とは、押出機2の先端からダイホルダ11に流入してきた発泡剤含有樹脂20の温度を言う。本実施の形態にあっては、第2の測温体19Bにより温度測定されている。
【0033】
このように、ダイス本体10の温度が溶融樹脂温度より115℃〜200℃高くなるように、好ましくは120℃〜180℃高くなるように、より好ましくは120℃〜180℃高くなるように温度制御することによって、水中ホットカット法による発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造において、小粒で粒径の揃った発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することができる。また、前記条件で造粒を行うと、得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子内部のボイドが少なくなり、その発泡性熱可塑性樹脂粒子を型内発泡成形して製造した発泡成形体の機械強度を向上させることができる。
ダイス本体の温度が溶融樹脂温度+115℃未満であると、発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産する際に、ノズル15が閉塞してダイス本体内の樹脂圧力が変動し、小粒で粒径の揃った発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することができなくなるおそれがある。また、得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子断面のボイドが多くなり、その発泡性熱可塑性樹脂粒子を型内発泡成形して製造した発泡成形体の機械強度が低下してしまう。
ダイス本体10の温度が溶融樹脂温度+200℃を超えると、得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子が微発泡し、小粒で粒径の揃った粒子を連続生産することができなくなるおそれがある。
【0034】
また、冷却媒体である循環水の温度が10℃未満であると、循環水による樹脂吐出面13からの奪熱が大きくなり、造粒用ダイス1の温度保持が難しくなる。一方、循環水の温度が60℃を超えると、カットされた樹脂の冷却が不十分となり、樹脂粒子の微発泡の抑制が難しくなる。循環水の温度は、好ましくは20℃〜40℃の範囲であり、より好ましくは25℃〜35℃の範囲である。
【0035】
チャンバー4内で粒状に切断された発泡剤含有樹脂20は、ほぼ球形の発泡性熱可塑性樹脂粒子となる。この発泡性熱可塑性樹脂粒子は、水流に従って管路5内を搬送され、脱水処理部8に達し、ここで循環水から発泡性熱可塑性樹脂粒子を分離し、脱水・乾燥すると共に、分離した水は水槽7に送られる。この脱水処理部8で分離され、脱水・乾燥した発泡性熱可塑性樹脂粒子は、容器9に送られ、この容器内に収容される。
【0036】
なお、前記発泡剤は限定されないが、例えばノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン等を単独もしくは2種類以上混合して使用することができる。また、前記ペンタン類を主成分として、ノルマルブタン、イソブタン、プロパン等を混合して使用することもできる。特にペンタン類は、ノズルから水流中に吐出される際の粒子の発泡を抑制しやすいので好適に用いられる。
【0037】
また、発泡性熱可塑性樹脂粒子とは、熱可塑性樹脂に発泡剤を含有させて粒状、好ましくは小球状に成形された樹脂粒子を言う。この発泡性熱可塑性樹脂粒子は、自由空間内で加熱して予備発泡し、この予備発泡粒子を所望の形状のキャビティを有する成形型のキャビティ内に入れ、蒸気加熱して予備発泡粒子同士を融着させた後、離型して所望形状の発泡樹脂成形体を製造するのに用いることができる。
【0038】
前述した通り、本発明は、水中ホットカット法による発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造において、前記ダイス本体の温度が発泡剤含有樹脂の溶融樹脂温度より115℃〜200℃高い範囲となるように温度制御しつつ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得るようにしたので、小粒で粒径の揃った発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することができる。
また、本発明により得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子は、粒子内部のボイドが少ないために、得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を型内発泡成形して製造した発泡成形体の機械強度を向上させることができる。
【0039】
本発明の製造方法において、詳細な製造条件は、使用する樹脂の種類などに応じて適宜設定できるが、好ましい製造条件として次の項目が挙げられる。
(1)ダイス本体10nノズル15の孔径は、0.2mm〜2.0mmの範囲が好ましく、0.3mm〜1.0mmの範囲がより好ましく、0.4mm〜0.7mmの範囲がさらに好ましい。
(2)得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒径は、0.3mm〜2.0mmの範囲が好ましく、0.5mm〜1.4mmの範囲がより好ましく、0.7mm〜1.2mmの範囲がさらに好ましい。
(3)発泡性熱可塑性樹脂粒子が発泡性ポリスチレン系樹脂粒子である場合、ポリスチレン系樹脂粒子の重量平均分子量Mwは12万〜40万の範囲が好ましく、12万〜27万の範囲がより好ましい。
(4)発泡性熱可塑性樹脂粒子中の発泡剤含有量は、1〜10質量%の範囲が好ましく、3〜8質量%の範囲がより好ましく、4〜6質量%の範囲がさらに好ましい。
(5)発泡剤は、ノルマルペンタン、イソペンタン、或いはこれらの任意の割合の混合した混合ペンタンが好ましい。混合ペンタンの場合、その組成は質量比でイソペンタン:ノルマルペンタン=10:90〜80:20の範囲が好ましく、イソペンタン:ノルマルペンタン=80:80〜60:40の範囲がより好ましい。
(6)発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡して得られた熱可塑性樹脂発泡粒子の平均気泡径は、30μm〜500μmの範囲が好ましく、50μm〜300μmの範囲がより好ましく、100μm〜250μmの範囲がさらに好ましい。
【0040】
前述した通り、ダイス本体10の温度が溶融樹脂温度より115℃〜200℃高くなるように、好ましくは120℃〜180℃高くなるように温度制御することによって、水中ホットカット法による発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造において、小粒で粒径の揃った発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することができる。ここで「連続生産」とは、造粒開始から少なくとも12時間以上、好ましくは24時間以上連続して発泡性熱可塑性樹脂粒子を生産することを言う。本発明の製造方法によれば、48時間以上の連続生産において、ノズル開孔率の減少が50%以下、得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒径変化率が20%以下で発泡性熱可塑性樹脂粒子を連続生産することができる。
また、前述した好ましい製造条件(1)〜(6)を採用することで、次のような効果を得ることができる。
(a)同じ発泡倍数を得るのに、発泡剤量を削減できる。
(b)経日による発泡性低下が小さく、ビーズライフが長い。
(c)低圧成形性に優れる。発泡成形体を得るための加熱エネルギーが小さく、省エネルギーになる。
(d)十分な機会的強度を有する。
(e)発泡成形倍数5〜67倍が得られる。
【0041】
次に、本発明の実施の形態の変形例について、図面に基づいて説明するが、前述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図5は本実施の形態の変形例によるノズルの配置状態を示す図であって、図4に対応する図である。
図5に示す変形例による樹脂流路14Aは、その断面形状が台形状をなし、その台形状の範囲内に複数の単体ノズル15a、15b、15c、…が任意に配置されたノズル15が設けられている。そして、樹脂流路14Aの外郭をなす斜面14a、14b(直線部)がカートリッジヒーター17の長手方向と略平行に配置された構成となっている。本変形例では、台形状をなす断面の樹脂流路14Aの斜面14a、14bがカートリッジヒーター17に対して等距離となっているので、カートリッジヒーター17によって均等に加熱される面積が増え、円形断面の樹脂流路と比べて均等に加熱され、ノズルの詰まりをより低減させることができる。
【実施例】
【0042】
[実施例1]
実施例1では、図1に示した造粒装置Tに、図2および図3に示した造粒用ダイス1を取り付けて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造した。
口径90mm(L/D=35)の単軸押出機に造粒用ダイス、すなわち、直径0.6mm、ランド長さ3.0mmのノズルを25個もつ目皿(ノズルユニット)が8個樹脂吐出面の円周上に配置され、樹脂吐出面側にノズルユニットに通じる各樹脂流路を両側から挟むように8本のカートリッジヒーター(直径12mm)がヒーター深さ(樹脂吐出面からの距離)15mmの位置に前記円周を横切って放射状に配置され、表面中央部に断熱材を装着した造粒用ダイスを取り付け、図2に示すように複数の測温体を配置し、ダイス本体の循環水流入側のヒーター4本と循環水流出側のヒーター4本とにエリアを2分割して制御して、ダイス本体を300℃に保持した(ダイス保持温度300℃)。
【0043】
ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名「HRM10N」、ビカット軟化点温度102℃)100質量部に微粉末タルク0.3質量部を予めタンブラーミキサーにて均一に混合したものを、毎時130kgの割合で押出機内へ供給した。押出機内の最高温度を220℃に設定し、樹脂を溶融させた後、発泡剤として樹脂100質量部に対して6質量部のペンタン(イソペンタン/ノルマルペンタン=20/80混合物)を押出機途中より圧入した。そして、押出機内で樹脂と発泡剤を混練しつつ、発泡剤含有溶融樹脂をダイホルダ(押出機とダイス本体の連結部)に通して、300℃に保持した前記ダイス本体に輸送し、30℃の冷却水が循環するチャンバー内に押し出すと同時に、円周方向に10枚の刃を有する高速回転カッターをダイスに密着させて、毎分3300回転で切断し、脱水乾燥して球形の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。この時のダイホルダでの溶融樹脂温度は180℃であり、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の吐出量は138kg/hであった。
押出開始1時間目の造粒用ダイスへの樹脂導入部の圧力は、10.0MPa、乾燥後の樹脂粒子100粒の質量は0.0417g、ダイスの開孔率は92.0%と良好であった。
押出開始48時間目、造粒用ダイスへの樹脂導入部の圧力は、10.5MPa、乾燥後の樹脂粒子100粒の質量は0.0426g、ダイスの開孔率は90.0%と良好であり、この実施例1では48時間以上安定して造粒可能であることが確認できた。
【0044】
[比較例1]
ダイス本体の温度(ダイス保持温度)を220℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、吐出量138kg/hでほぼ球状の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。この時のダイホルダでの溶融樹脂温度は180℃であった。
この比較例1では押出開始1時間以内にダイスへの樹脂導入部の圧力がダイスの耐圧上限(25MPa)に到達したため、押出を打ち切った。1時間押出できなかったため評価不能であった。
【0045】
[比較例2]
ダイス本体の温度を290℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、吐出量138kg/hでほぼ球状の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。この時のダイホルダでの溶融樹脂温度は180℃であった。
押出開始1時間目の造粒用ダイスへの樹脂導入部の圧力は、12.0MPa、乾燥後の樹脂粒子100粒の質量は0.0446g、ダイスの開孔率は86.0%と良好であった。
押出開始48時間目、造粒用ダイスへの樹脂導入部の圧力は、13.0MPa、乾燥後の樹脂粒子100粒の質量は0.0451g、ダイスの開孔率は85.0%と良好であり、48時間以上安定して造粒可能であることが確認できた。
【0046】
実施例1及び比較例1〜2での発泡性ポリスチレン樹脂粒子の製造時、及び得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子について、以下の各項目の測定・評価を実施した。その結果を表1にまとめて記す。
【0047】
<ダイスの開孔率>
開孔率(ダイス表面の吐出ノズルの押出時開孔率)=開孔数/ダイス全ノズル数×100(%)
吐出量(kg/h)=1hあたり、カッターで切り出される全発泡性粒子の総質量
=開孔数×切り出し個数×1粒質量
=開孔数×カッター刃数×カッター回転数×1粒質量
よって開孔数は、
開孔数=吐出量(kg/h)/〔カッター刃数×カッター回転数(rph) ×1粒質量(kg/個)〕となるため、開孔率は次式で算出できる。
開孔率(E)= 開孔数/全吐出ノズル数×100(%)
=〔Q/(N×R×60×(M/100)/1000)〕/H×100(%)
(式中、Qは吐出量(kg/h)、Nはカッター刃の枚数、Rはカッター回転数(rpm)、Mは100粒質量(g)(発泡性粒子から任意の100粒を選び、最小目盛0.0001gの電子天秤で計量した値を100粒質量とした)、Hはダイスの全ノズル数をそれぞれ表す。)
【0048】
<開孔率の評価基準>
開孔率(E)は、以下の基準で評価した。
◎:50%≦E
○:40%≦E<50%
△:30%≦E<40%
×:E<30%
【0049】
<発泡性粒子のボイドの観察>
実施例1及び比較例2にて得た発泡性粒子を剃刀刃で切断し、その切断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S−3000N)で70倍に拡大して撮影し、粒子内のボイドを観察した。
図6は、本発明に係る実施例1で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の断面の拡大画像である。図7は、比較例2で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の断面の拡大画像である。
【0050】
<発泡成形体の製造>
前述の様にして押出48時間目に得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子を20℃で1日放置した後、発泡性ポリスチレン樹脂粒子100質量部に対して、ステアリン酸亜鉛0.1質量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.05質量部、ステアリン酸モノグリセライド0.05質量部を添加、混合して樹脂粒子表面に被覆した後、小型バッチ式予備発泡機(内容積40L)に投入して、撹拌しながら、吹込み圧0.05MPa(ゲージ圧)の水蒸気により加熱して、嵩発泡倍数50倍(嵩密度0.02g/cm)の予備発泡粒子を作製した。
続いて、得られた予備発泡粒子を23℃で1日熟成させた後、外形寸法300×400×100mm(肉厚30mm)で内部に肉厚5mm、10mm、25mmの中仕切部を有する金型を取り付けた自動成形機(積水工機製作所製、ACE−3SP型)を用いて、下記成形条件で成形して発泡倍数50倍(密度0.02g/cm)の発泡成形体を得た。
成形条件(ACE−3SP QS成形モード)
成形蒸気圧 0.08MPa(ゲージ圧)
金型加熱 3秒
一方加熱(圧力設定) 0.03MPa(ゲージ圧)
逆一方加熱 2秒
両面加熱 12秒
水冷 10秒
設定取出し面圧 0.02MPa
【0051】
<予備発泡粒子の金型充填性の評価基準>
上記発泡成形体を目視により観察し、下記により金型充填性を評価した。
◎:肉厚5mm中仕切部分まできっちり充填されている。
○:肉厚5mm中仕切部分の充填が甘く過大発泡粒が認められるが、 中仕切部は形成されている。
△:肉厚5mm中仕切部分に、充填不良による粒子欠損が見られ、中仕切部が完全には形成されていない。
×:肉厚5mm中仕切部分は充填不良であり、中仕切部が全く形成されていない。
【0052】
<粒子100粒の合計質量>
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子においては、任意に選んだ粒子100粒の合計質量が0.02〜0.09gの範囲であることが好ましい。0.09gを超えると、成形金型細部への充填が困難となり、成形可能な金型が単純形状のものに限定されるおそれがある。また、0.02g未満では粒子の生産性が劣るおそれがある。より好ましい範囲は0.04〜0.06gである。なお、ポリスチレン系樹脂以外の樹脂では、上記範囲に樹脂の比重を乗じた値が好ましい粒子100粒の合計質量の範囲となる。
【0053】
<予備発泡粒子の嵩発泡倍数の測定方法>
十分乾燥した予備発泡粒子をメスシリンダー(例えば、500mL容量)内に、漏斗を用いて自然落下させた後、予備発泡粒子の容積が一定となるまで、メスシリンダーの底をたたいて予備発泡粒子を充填する。そのときの予備発泡粒子の容積と質量を測定し次式により算出した。なお容積は1mL単位で読みとり、質量は最小目盛0.01gの電子天秤にて測定した。スチレン系樹脂の樹脂比重は1.0として計算し、嵩発泡倍数は小数点以下1桁目を四捨五入した。
嵩発泡倍数(倍)=予備発泡粒子の容積(mL)/予備発泡粒子の質量(g)×樹脂比重
【0054】
<発泡成形体の発泡倍数の測定方法>
十分に乾燥させた発泡成形体から、測定用試験片(例300×400×30mm)を切出し、この試験片の寸法と質量を測定し、測定した寸法を基に試験片の体積を算出し、次式により算出した。なお、スチレン系樹脂の樹脂比重は1.0とした。
発泡倍数(倍)=試験片体積(cm)/試験片質量(g)×樹脂比重
【0055】
<ビカット軟化点の測定方法>
東芝機械社製射出成形機(IS−80CNV)を用いて、シリンダー温度220℃で12.7mm×64mm×6.4mm寸法の試験片を成形した。この試験片を用い、JIS K7206に準拠して、荷重50Nの条件で測定した(単位:℃)。
【0056】
<強度の評価>
JISA9511:2006「発泡プラスチック保温材」記載の方法にて曲げ強度を測定した。すなわち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)を用いて、試験帯サイズは75mm×300mm×30mmで圧縮速度を10mm/min、先端治具は加圧楔10R、支持台10Rで、支点間距離200mmとして測定し、次式にて算出した。試験片の数は3個とし、その平均値を求めた。
曲げ強度(MPa)=3FL/2bh
[ここで、Fは曲げ最大荷重(N)を表し、Lは支点間距離(mm)を表し、bは試験片の幅(mm)を表し、hは試験片の厚み(mm)を表す。]
曲げ強度の値が、0.28MPa以上を○、0.28MPa未満を×とした。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果から、本発明に係る実施例1では、ダイス本体の温度(ダイス保持温度)を溶融樹脂温度よりも120℃高い300℃に保持して運転したことによって、造粒開始から48時間経過時点でも、ダイス圧力の上昇が少なく、ノズルの開孔率が高いままであり、48時間以上の連続運転が十分に可能であった。
また、本発明に係る実施例1では、造粒開始1時間後の製造物100粒の質量が0.0417gに対し、48時間後の製造物100粒の質量が0.0426gであり、連続運転における製造物の質量増加率が2%程度と小さかった。
また、実施例1で得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子は、図6に示すように、粒子内部のボイド(図6中で粒子内に見える空隙)が図7に示す比較例2のものよりも少なかった。
さらに、実施例1で得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子を予備発泡後、型内発泡成形して得られた発泡成形体は、比較例2で得られたものと比べ、高い強度を示した。
【0059】
これに対して、ダイス本体の温度(ダイス保持温度)を溶融樹脂温度よりも20℃高い200℃に保持して雲底下比較例1では、ノズルが速やかに閉塞し、造粒開始から1時間以内でダイス耐圧上限まで圧力上昇してしまい、以降の運転ができなかった。
【0060】
また、ダイス本体の温度(ダイス保持温度)を溶融樹脂温度よりも110℃高い290℃に保持して運転した比較例2では、造粒開始から48時間後もダイス圧力の上昇は穏やかであり、ノズルの開孔率も高く、連続運転が可能であった。
しかし、造粒開始から48時間経過後に得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子の性状を、実施例1で得られた樹脂粒子と比べると、100粒の質量が0.0451gと重くなり、また嵩密度が低下するなど、やや大粒なものとなった。さらに、比較例2では、粒径1.4mm以上の大粒子の割合が0.5%(実施例1では0.1%)と高くなり、粒径にバラツキが大きくなった。
また、比較例2で得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子は、図7に示すように、実施例1で得られた樹脂粒子(図6参照)と比べ、粒子内のボイドが多くなった。
さらに、比較例2で得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子を予備発泡後、型内発泡成形して得られた発泡成形体は、実施例1で得られたものと比べ、強度が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、水中ホットカット法による発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造において、押出時間の経過に伴うダイス小孔の閉塞を抑制でき、安定して小粒で均一な発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造することができる。本発明で得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子は、型内発泡成形法により各種形状に発泡成形され、緩衝材や保温材などとして利用される発泡成形体の製造に利用される。
【符号の説明】
【0062】
1 造粒用ダイス
2 押出機(樹脂供給装置)
3 カッター
4 チャンバー
6 発泡剤含有樹脂
10 ダイス本体
11 ダイホルダ
13 樹脂吐出面
14、14A 樹脂流路
14a、14b 斜面(直線部)
15 ノズル
16 断熱材
17 カートリッジヒーター
18 短ヒーター
19A,19B 測温体
T 造粒装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂吐出面を有するダイス本体を少なくとも有する造粒用ダイスを取り付けた樹脂供給装置に熱可塑性樹脂を供給して溶融混練させる工程と、
前記熱可塑性樹脂を前記造粒用ダイスに向けて移動させながら前記熱可塑性樹脂に発泡剤を注入して発泡剤含有樹脂を形成する工程と、
前記ダイス本体の樹脂吐出面に開孔したノズルから吐出される前記発泡剤含有樹脂をカッターにより冷却媒体中で切断して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程とを有する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法であって、
前記ダイス本体の温度が発泡剤含有樹脂の溶融樹脂温度より115℃〜200℃高い範囲となるように温度制御しつつ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
樹脂吐出面を有するダイス本体を少なくとも有する造粒用ダイスを取り付けた樹脂供給装置に熱可塑性樹脂を供給して溶融混練させる工程と、
前記熱可塑性樹脂を前記造粒用ダイスに向けて移動させながら前記熱可塑性樹脂に発泡剤を注入して発泡剤含有樹脂を形成する工程と、
前記ダイス本体の樹脂吐出面に開孔したノズルから吐出される前記発泡剤含有樹脂をカッターにより冷却媒体中で切断して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程と、
前記発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡して熱可塑性樹脂発泡粒子を得る工程とを有する熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法であって、
前記ダイス本体の温度が発泡剤含有樹脂の溶融樹脂温度より115℃〜200℃高い範囲となるように温度制御しつつ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
樹脂吐出面を有するダイス本体を少なくとも有する造粒用ダイスを取り付けた樹脂供給装置に熱可塑性樹脂を供給して溶融混練させる工程と、
前記熱可塑性樹脂を前記造粒用ダイスに向けて移動させながら前記熱可塑性樹脂に発泡剤を注入して発泡剤含有樹脂を形成する工程と、
前記ダイス本体の樹脂吐出面に開孔したノズルから吐出される前記発泡剤含有樹脂をカッターにより冷却媒体中で切断して発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る工程と、
前記発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡して熱可塑性樹脂発泡粒子を得る工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子を型内発泡成形して熱可塑性樹脂発泡成形体を得る工程とを有する熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法であって、
前記ダイス本体の温度が発泡剤含有樹脂の溶融樹脂温度より115℃〜200℃高い範囲となるように温度制御しつつ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−179627(P2010−179627A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27299(P2009−27299)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】