説明

発泡成形体の成形方法

【課題】外観および耐衝撃強度に優れた発泡成形体およびその成形方法を提供すること。
【解決手段】繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を溶融させる溶融工程と、溶融状態の前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物に物理発泡剤を溶解させる溶解工程と、固定側金型と、この固定側金型に接して固定側金型との間に金型キャビティを形成する可動側金型と、前記金型キャビティ内に溶融状態の樹脂を供給するランナと、ランナ側開口部と、金型キャビティ側開口部と、を有し、かつ、所定の要件を満足するゲート部と、を有する射出成形用金型の前記金型キャビティに前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を充填する充填工程と、前記射出成形用金型を所定量開いて前記金型キャビティの容積を増大させ、前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させる発泡工程と、を有することを特徴とする自動車部品用の発泡成形体の成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品を軽量化するに当たり、部品の剛性を維持したまま、軽量化する手法として発泡成形は非常に有効な成形方法である。すなわち、スキン層/コア層(発泡層)/スキン層という3層構造の発泡成形体を一体化して形成することにより、比重(密度)を小さくした状態で断面係数を高められるためである。
かかる発泡成形体に関し、特許文献1、2には、ポリオレフィン樹脂を超臨界流体を用いて発泡させることにより得られた発泡成形体が開示されている。
【0003】
特許文献3には、ポリオレフィン中にリン酸カルシウム、板状無機粒子、エラストマーを含む発泡成形体が開示されており、特許文献4には、発泡樹脂中にガラス強化繊維を含み、ガラス強化繊維のスプリングバックを利用した発泡成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−281829号公報
【特許文献2】特開2001−40130号公報
【特許文献3】特開2005−162970号公報
【特許文献4】特開2007−210323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に記載される従来技術は、軽量化のため、比剛性向上、発泡形態の制御、発泡倍率の維持、外観品質を向上させることを目的としたものである。
しかしながら、スキン層/コア層(発泡層)/スキン層という3層構造を有する従来の発泡成形体については、耐衝撃強度についての更なる改良の要求があった。
【0006】
以上の課題に鑑み、本発明は、外観および耐衝撃強度に優れた発泡成形体およびその成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、以下の<1>に記載の手段により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
<1>ポリオレフィン樹脂と、有機繊維とを含有する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を溶融させる溶融工程と、溶融状態の前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物に物理発泡剤を溶解させる溶解工程と、固定側金型と、この固定側金型に接して固定側金型との間にキャビティを形成する可動側金型と、前記固定側金型に形成され、前記キャビティ内に溶融状態の樹脂を供給するランナと、前記固定側金型に形成され、前記ランナに接続されたランナ側開口部と、前記キャビティに接続されたキャビティ側開口部と、を有し、かつ、下記の要件(1)および(2)を満足するゲート部と、を有する射出成形用金型の前記キャビティに前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を充填する充填工程と、前記射出成形用金型を所定量開いて前記キャビティの容積を増大させ、前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させる発泡工程と、を有することを特徴とする自動車部品用の発泡成形体の成形方法。
(1)前記ランナ側開口部と前記キャビティ側開口部との距離は10〜100mmであり、前記ランナ側開口部の開口面積は7〜50mm2であり、前記キャビティ側開口部の開口面積は10〜300mm2であり、かつ、前記ランナ側開口部の開口面積よりも前記キャビティ側開口部の開口面積の方が広い。
(2)前記キャビティ側開口部の短軸方向における開口長さは3.5mm以上であり、前記ランナ側開口部の短軸方向における開口長さは3mm以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外観および耐衝撃強度に優れた発泡成形体およびその成形方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の発泡成形体の成形方法の一実施態様において金型キャビティ内に溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を供給したときの状態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の発泡成形体の成形方法に用いられる射出成形用金型におけるゲート部の形状を例示する概略模式図(その1)である。
【図3】本発明の発泡成形体の成形方法に用いられる射出成形用金型におけるゲート部の形状を例示する概略模式図(その2)である。
【図4】本発明の発泡成形体の成形方法に用いられる射出成形用金型におけるゲート部の形状を例示する概略模式図(その3)である。
【図5】本発明の発泡成形体の成形方法に用いられる射出成形用金型におけるゲート部の形状を例示する概略模式図(その4)である。
【図6】本発明の発泡成形体の成形方法に用いられる射出成形用金型におけるゲート部の形状を例示する概略模式図(その5)である。
【図7】実施例において成形した発泡成形体を示す上面図である。
【図8】比較例において成形した発泡成形体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[発泡成形体の成形方法]
以下、図面を参照して本発明を説明する。図1は本発明の発泡成形体の成形方法の一実施態様において金型キャビティ内に溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を供給したときの状態を示す概略断面図である。図2〜図6は本発明の発泡成形体の成形方法に用いられる射出成形用金型におけるゲート部の形状を例示する概略模式図である。
本発明の発泡成形体の成形方法は、ポリオレフィン樹脂と、有機繊維とを含有する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を溶融させる溶融工程と、溶融状態の前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物に物理発泡剤を溶解させる溶解工程と、固定側金型と、この固定側金型に接して固定側金型との間に金型キャビティを形成する可動側金型と、前記固定側金型に形成され、前記金型キャビティ内に溶融状態の樹脂を供給するランナと、前記固定側金型に形成され、前記ランナに接続されたランナ側開口部と、前記金型キャビティに接続された金型キャビティ側開口部と、を有し、かつ、下記の要件(1)および(2)を満足するゲート部と、を有する射出成形用金型の前記金型キャビティに前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を充填する充填工程と、前記射出成形用金型を所定量開いて前記金型キャビティの容積を増大させ、前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させる発泡工程と、を有することを特徴とする。
(1)前記ランナ側開口部と前記金型キャビティ側開口部との距離は10〜100mmであり、前記ランナ側開口部の開口面積は7〜50mm2であり、前記金型キャビティ側開口部の開口面積は10〜300mm2であり、かつ、前記ランナ側開口部の開口面積よりも前記金型キャビティ側開口部の開口面積の方が広い。
(2)前記金型キャビティ側開口部の短軸方向における開口長さは3.5mm以上であり、前記ランナ側開口部の短軸方向における開口長さは3mm以上である。
【0011】
図1に示すように、本発明の発泡成形体の成形方法に用いる射出成形用金型Mは、雌金型である固定側金型10および雄金型である可動側金型11の雌雄一対からなるものである。固定側金型10に可動側金型11が接することにより、固定側金型10と可動側金型11との間に金型キャビティ13が形成される。
固定側金型10には、金型キャビティ13に供給される溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17が通過するゲート部14およびランナ(溶融樹脂供給通路)15が形成されている。
ゲート部14の金型キャビティ13側開口部であるゲート出口18(図2〜図6参照)は、固定側金型10の金型キャビティ面に接続されている。ゲート部14のランナ15側開口部であるゲート入口19(図2〜図6参照)には、ランナ15の終端が接続されている。ゲート入口19は、シャットオフピン16により開閉されるようになっている。
ゲート部14は、例えば、ゲート入口19側の第1空間部14aと、ゲート出口18側の第2空間部14bとから構成されている。第2空間部14bは、第1空間部14aよりも幅広になっている。また、第1空間部14aおよび第2空間部14bのいずれも、ゲート入口19側からゲート出口18側に向かって徐々に幅が広くなっている。
【0012】
固定側金型10の例えば背面に開口したランナ15の始端には、固定側金型10および可動側金型11により形成される金型キャビティ13に溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17を供給するためのスクリューフィーダ12が接続されている。スクリューフィーダ12は、シリンダ12aおよびスクリュー12bにより構成されている。
溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17は、スクリューフィーダ12により、ランナ15およびゲート部14を介して、固定側金型10および可動側金型11により形成される金型キャビティ13に射出供給される。
【0013】
なお、図1に示す例では、ゲート部14およびランナ15が形成された固定側金型10を雌金型としているが、固定側金型10を雄金型とし、可動側金型11を雌金型としてもよい。また、雌雄両金型は上下方向ないしは左右方向のいずれに開閉可能であってもよく、これらの相違は本発明の本質ではない。また、このようなゲート部14が同一の固定側金型において、製品の大きさや形状に応じて複数設けられてもよい。
【0014】
ここで、ゲート部14はランナ15と金型キャビティ13との間に位置していて、ゲート出口18は金型キャビティ面に開口し、ゲート入口19はランナ15に接続されている。ランナ15からの溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17は該ゲート部14を経由して金型キャビティ13内に供給される。成形終了時には該ゲート部14も繊維強化ポリオレフィン樹脂で充填されており、該充填樹脂は製品となる発泡成形体と一体となっているため、成形後発泡成形体から取り除かれるのが一般的である。
【0015】
図2〜図6に、本発明の発泡成形体の成形方法に用いられる射出成形用金型におけるゲート部14の形状を例示する。各図において、左側、中央および右側の図は、それぞれゲート出口18の開口形状、ゲート部14の側面形状およびゲート入口19の開口形状を示している。
本発明において、図2〜図6に例示するように、ゲート部14において、ゲート出口18の金型キャビティ面における開口形状、およびゲート入口19のランナ15との接続部における開口形状は、いずれも特に限定されるものでもないが、円、楕円等の円形や、正方形、長方形、三角形、六角形等の多角形が挙げられる。特に金型加工面から複雑な形状でない、円、楕円、正方形、長方形が好ましい。
また、ゲート出口18の開口形状とゲート入口19の開口形状との組み合わせは、あらゆる組み合わせであってよい。例えば、図2および図4に示すように、ゲート出口18の開口形状が長方形であるのに対し、ゲート入口19の開口形状が円であってもよい。また、図3および図5に示すように、ゲート出口18の開口形状が楕円であるのに対し、ゲート入口19の開口形状が円であってもよい。また、図6に示すように、ゲート出口18およびゲート入口19のいずれの開口形状も円であってよい。
【0016】
本発明において、ゲート出口18の短軸方向における開口長さ(a1)は3.5mm以上、ゲート入口19の短軸方向における開口長さ(a2)は3mm以上である。ここで、ゲート出口18の短軸方向における開口長さ(a1)とは、ゲート出口18の開口形状が円の場合には直径、楕円の場合には短径であり、正方形の場合には一辺の長さ、長方形の場合には短辺の長さのことであり、また、その他多角形の場合にはその形状の重心を通る線分の最も短い長さのことである。同様に、ゲート入口19の短軸方向における開口長さ(a2)とは、ゲート入口19の開口形状が円の場合には直径、楕円の場合には短径であり、正方形の場合には一辺の長さ、長方形の場合には短辺の長さのことであり、また、その他多角形の場合にはその形状の重心を通る線分の最も短い長さのことである。
ゲート出口18の短軸方向における開口長さ(a1)が3.5mm未満、ゲート入口19の短軸方向における開口長さ(a2)が3mm未満になると、溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17がゲート出口18を通過するときの有機繊維へのせん断により有機繊維の切断が発生しやすくなる。本発明によれば、ゲート出口18の短軸方向における開口長さ(a1)が3.5mm以上、ゲート入口19の短軸方向における開口長さ(a2)が3mm以上にそれぞれ設定されているため、かかる有機繊維の切断の発生を低減することができる。
なお、ゲート出口18およびゲート入口19の短軸方向における開口長さ(a1およびa2)は好ましくは4mm以上である。言うに及ばないが、ゲート出口18およびゲート入口19の短軸方向における開口長さの上限は、それぞれの開口面積により決まり、ゲート出口18の短軸方向における開口長さ(a1)の上限は20mmであり、ゲート入口19の短軸方向における開口長さ(a2)の上限は8mmである。
【0017】
本発明において、ゲート部14のゲート出口18の開口面積(S1)はゲート入口19の開口面積(S2)よりも大きく、更に、ゲート出口18の開口面積(S1)は10〜300mm2である。
ゲート出口18の開口面積(S1)が10mm2未満では、溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17がゲート部14を流動中、有機繊維の切断が発生しやすくなる。他方、300mm2より大きいと発泡成形体のシルバーストリークによる外観が悪化するおそれがあり、更にはゲート部14を溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17が通過するときに冷却されず繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させたときに発泡成形体の発泡状態が均一にならなくなり、場合によってはゲート部14付近にて発泡成形体の発泡層が膨張してしまうこともある。本発明によれば、ゲート出口18の開口面積(S1)が10〜300mm2に設定されているため、かかる有機繊維の切断の発生を低減するとともに、発泡成形体の発泡状態の均一化を実現することができる。更には、ゲート部14付近において発泡成形体の発泡層が膨張するのを回避することができる。
なお、ゲート出口18の開口面積(S1)は好ましくは30〜200mm2であり、より好ましくは50〜150mm2である。
【0018】
本発明において、ゲート部14のゲート入口19の開口面積(S2)は7〜50mm2である。
ゲート入口19の開口面積(S2)が7mm2未満では溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17がゲート入口19において有機繊維が詰まりやすくなり、有機繊維の塊が発生しやすくなる。本発明によれば、ゲート入口19の開口面積(S2)が7mm2以上に設定されているため、ゲート入口19における有機繊維の詰まりを防止するとともに、有機繊維の塊の発生を低減することができる。
なお、ゲート19の開口面積(S2)は好ましくは7〜40mm2、より好ましくは7〜30mm2である。
【0019】
本発明において、ゲート入口19とゲート出口18との距離(h)は10〜100mmである。
ゲート部14においては、金型キャビティ13に充填されるまでに溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17を冷却させる役割がある。そのため、該距離(h)が10mm未満となると、ゲート部14を溶融状態の維強化ポリオレフィン樹脂組成物17が流動中に冷却されなくなる。この結果、発泡させるときの溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17の温度が局所的に高くなってしまい均一な発泡ができなくなる。本発明によれば、ゲート入口19からゲート出口18までの距離(h)が10mm以上に設定されているため、ゲート部14において溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17を十分に冷却し、均一な発泡を実現することができる。
なお、ゲート入口19とゲート出口18との距離(h)は好ましくは10〜50mm、より好ましくは10〜30mmである。
【0020】
本発明において、ゲート部14のゲート出口18からゲート入口19までの構造は特に制限されないが、例示として図2〜図6のような構造が挙げられる。
例えば図2および図3に示すように、ゲート入口19側の第1空間部14aと、ゲート出口18側の第2空間部14bとからゲート部14が構成され、第2空間部14bが第1空間部14aよりも幅広になっていてもよい。この場合、第1空間部14aおよび第2空間部14bのいずれも、ゲート入口19側からゲート出口18側に向かって徐々に幅が広くなっていてもよい。
また、例えば図4〜図6に示すように、ゲート入口19側からゲート出口18側に向かって徐々に幅が広くなるようにゲート部14が構成されていてもよい。
【0021】
繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物の成形方法としては射出発泡成形を用いる。
【0022】
射出発泡成形方法において、溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物に物理発泡剤を溶解させる方法としては、例えば、シリンダ中で溶融されたポリオレフィン樹脂組成物に気体状態または超臨界状態の物理発泡剤を注入する方法、液体状態の物理発泡剤をプランジャーポンプ等で注入する方法等が挙げられる。
【0023】
射出発泡成形において、溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させる方法は、特に限定されるものではない。例えば、所謂コアバック成形法のように、金型キャビティ壁面を後退させて射出成形用金型を所定量開き、金型キャビティの容積を増大させることにより、発泡剤由来のガスを膨張させ金型キャビティ内に充填された溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させる方法が挙げられる。
例えば、図1に示す構成では、金型キャビティ13内に溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17を充填した後、可動側金型11を後退させる等して固定側金型10および可動側金型11を所定量開き、金型キャビティ13の容積を増大させる。こうして、発泡剤由来のガスを膨張させ金型キャビティ13内に充填された溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物17を発泡させる。
なお、金型キャビティへの溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物の注入量は、注入終了直後の時点で金型キャビティ全体が該溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物で充満される量であることが好ましい。
【0024】
射出発泡成形における射出方法は、単軸射出、多軸射出、高圧射出、低圧射出、プランジャーを用いる射出方法等が挙げられる。
【0025】
射出発泡成形は、ガスアシスト成形、メルトコア成形、インサート成形、コアバック成形、2色成形等の成形方法と組み合わせて行ってもよい。本発明の発泡成形体の形状は、如何なる形状でもよい。
【0026】
射出発泡成形において、射出成形機のシリンダ温度は、好ましくは繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂成分の融点以上であって、(有機繊維の融点−30℃)以下、より好ましくは170〜220℃、更に好ましくは180〜200℃である。換言すると、金型キャビティに繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を射出供給する工程において、該樹脂組成物の温度は好ましくはポリオレフィン樹脂成分の融点以上であって、(有機繊維の融点−30℃)以下、より好ましくは170〜220℃、更に好ましくは180〜200℃である。
【0027】
上記のような温度範囲に設定された繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物が射出供給される金型キャビティのキャビティ温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは5〜70℃、更に好ましくは30〜70℃である。
【0028】
成形時の可塑化工程での背圧は、好ましくは1〜30MPa、より好ましくは5〜20MPa、更に好ましくは6〜15MPaである。背圧をこのような範囲とすることにより、溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物がシリンダ内で発泡せずに発泡剤を溶解させることができる。
【0029】
本発明の発泡成形体の成形方法に用いられる発泡剤は物理発泡剤である。
【0030】
物理発泡剤としては、例えば、窒素、二酸化炭素等の不活性ガス、ブタン、ペンタン等の揮発性有機化合物等が挙げられる。2種以上の物理発泡剤を併用してもよい。
本発明で用いられる物理発泡剤は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスは、発泡させる樹脂組成物に対し反応性を示さず、樹脂を劣化させるおそれのない、常温常圧でガス状の無機物質であることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、酸素等が挙げられる。安価、安全性という観点から、二酸化炭素、窒素、これらの混合物が好ましく用いられる。物理発泡剤として超臨界状態の不活性ガスを用いることは、樹脂組成物への溶解性、拡散性という観点からより好ましい。
【0031】
物理発泡剤の添加量は、上記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物100質量部に対し、好ましくは0.3〜10質量部、より好ましくは0.6〜5質量部、更に好ましくは0.6〜4質量部である。
【0032】
なお、発泡剤として、物理発泡剤とともに、化学発泡剤を加えてもよく、適用可能な化学発泡剤としては、無機系化学発泡剤や有機系化学発泡剤等が挙げられる。
【0033】
無機系化学発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、炭酸アンモニウム等が挙げられる。
【0034】
有機系化学発泡剤としては、例えば、ポリカルボン酸、アゾ化合物、スルホンヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、イソシアネート化合物等が挙げられる。
【0035】
ポリカルボン酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸等が挙げられる。
【0036】
[繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物]
本発明に用いられる繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物は、有機繊維と、ポリオレフィン樹脂とを含有している。
【0037】
<有機繊維>
有機繊維としてはポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、綿、麻、絹、竹等の有機繊維が挙げられる。これら有機繊維は2種類以上を併用して用いてもよい。本発明の有機繊維はポリエステル繊維が好ましく、ポリアルキレンテレフタレートおよび/またはポリアルキレンナフタレンジカルボキシレートからなる有機繊維がより好ましい。
【0038】
ポリアルキレンテレフタレートおよび/またはポリアルキレンナフタレンジカルボキシレートからなる有機繊維はポリアルキレンナフタレンジカルボキシレートからなることが好ましい。
【0039】
(ポリアルキレンナフタレンジカルボキシレート)
ポリアルキレンナフタレンジカルボキシレートとは、アルキレンジオールとナフタレンジカルボン酸との縮重合生成物であり、下記式(P)または式(Q)で表されるアルキレンナフタレンジカルボキシレート単位が全繰り返し単位の量の80モル%以上を占めるポリエステルが好ましい。アルキレンナフタレンジカルボキシレート単位の含有量は、好ましくは全繰り返し単位量の90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは96〜100モル%である。
【0040】
【化1】

(式(P)中、nは1以上の整数を表す。)
【0041】
【化2】

(式(Q)中、nは1以上の整数を表す。)
【0042】
ポリアルキレンナフタレンカルボキシレートの主鎖を形成するアルキレン基としては、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。アルキレン基として、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。ポリアルキレンナフタレンジカルボキシレートは、好ましくはポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、より好ましくはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである。
【0043】
(ポリアルキレンテレフタレート)
ポリアルキレンテレフタレートとは、アルキレンジオールとテレフタル酸との縮重合体であり、下記式(R)で表されるアルキレンテレフタレート単位が全繰り返し単位の量の80モル%以上を占めるポリエステルが好ましい。アルキレンテレフタレート単位の含有量は、好ましくは全繰り返し単位量の90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは96〜100モル%である。
【0044】
【化3】

(式(R)中、nは1以上の整数を表す。)
【0045】
ポリアルキレンテレフタレートの主鎖を形成するアルキレン基としては、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。アルキレン基として、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。ポリアルキレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0046】
有機繊維を構成する繰り返し単位中に、他の単位(第三成分)を少量含んでいてもよい。かかる第三成分として、(a)2個のエステル形成性官能基を有する化合物残基が挙げられる。このような2個のエステル形性性官能基を有する化合物残基を与える化合物としては、例えばシュウ酸、コハク酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロプロパンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム等のカルボン酸;グリコール酸、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸;プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、p−キシレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール A、p,p’−ジヒドロキシフェニルスルホン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス(p−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ポリアルキレングリコール等のオキシ化合物;等が挙げられる。またこれらの誘導体が挙げられる。
また前記オキシカルボン酸および/または前記オキシカルボン酸の誘導体からなる高分子化合物も前記第三成分の源の例として挙げられる。
更に、前記カルボン酸および前記カルボン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種類の化合物、前記オキシカルボン酸および前記オキシカルボン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種類の化合物、前記オキシ化合物および前記オキシ化合物の誘導体から選ばれる少なくとも1種類の化合物、のうち2種類以上の化合物からなる高分子化合物Aも前記第三成分の源の例として挙げられる。
【0047】
かかる第三成分として、(b)1個のエステル形成性官能基を有する化合物残基が挙げられる。このような1個のエステル形成性官能基を有する化合物残基を与える化合物としては、例えば安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0048】
(c)3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物残基を与える、例えばグリセリン、ペンタエリストール、トリメチロールプロパン等も、重合体が実質的に線状である範囲内で第三成分源として使用可能である。
有機繊維の全繰り返し単位の量の80モル%以上を占めるポリエステル中には、二酸化チタン等の艶消し剤、リン酸、亜リン酸、それらのエステル等の安定剤が含まれてもよい。
【0049】
このような有機繊維は、機械的な衝撃に対する耐性が高く、また樹脂となじみやすい。一方実際に使用する低温領域においては繊維補強の効果が効率的に発揮される。
【0050】
有機繊維の単糸繊度は、好ましくは1〜30dtex、より好ましくは3〜15dtexである。単糸繊度の上限値は、好ましくは20dtex、より好ましくは16dtexである。単糸繊度の下限値は、好ましくは2dtexである。有機繊維の単糸繊度がこのような範囲にあることにより本発明の目的を達成しやすくなる。単糸繊度が1dtex末満では製糸性に問題が生じる傾向にあり、繊度が大きすぎると繊維/樹脂間の界面強度が低下する傾向にある。また繊維の分散の面からすれば、繊度が1dtex以上であることが好ましく、補強効果の面では繊度が30dtex以下であることが好ましい。
【0051】
有機繊維の表面には、該有機繊維100質量部に対して、収束剤が0.1〜10質量部、好ましくは0.1〜3質量部付着していることが好ましい。収束剤として、後述するポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、澱粉、植物抽、およびこれらとエポキシ化合物の混合物が挙げられる。収束剤は、ポリオレフィン樹脂およびポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含むことが好ましい。なお、収束剤に含まれるポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂組成物に含有される以下に述べるポリオレフィン樹脂と同一であってもよい。
【0052】
<ポリオレフィン樹脂>
ポリオレフィン樹脂は、オレフィンの単独重合体または2種類以上のオレフィンの共重合体からなる樹脂を含むものである。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂として好ましくは、ポリプロピレン樹脂である。ポリオレフィン樹脂は、単一のポリオレフィン樹脂でもよく、2種以上のポリオレフィン樹脂の混合物でもよい。
【0053】
ポリプロピレン樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンを単独重合してプロピレン単独重合体を生成させた後に、該プロピレン単独重合体の存在下にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体等が挙げられる。耐熱性の観点から、ポリプロピレン樹脂として好ましくは、プロピレン単独重合体、プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である。
【0054】
プロピレン−エチレンランダム共重合体のエチレンに由来する構成単位の含有量(ただし、プロピレンとエチレンの合計量を100モル%とする)、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体のα−オレフィンに由来する構成単位の含有量(ただし、プロピレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体のエチレンとα−オレフィンに由来する構成単位の合計含有量(ただし、プロピレンとエチレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)は、いずれも50モル%未満であることが好ましい。前記エチレンの含有量、α−オレフィンの含有量およびエチレンとα−オレフィンの合計含有量は、“新版 高分子分析ハンドブック”(日本化学会、高分子分析研究懇談会編 紀伊国屋書店(1995))に記載されているIR法またはNMR法を用いて測定される。
【0055】
ポリエチレン樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。なお、エチレン−プロピレンランダム共重合体の、プロピレンに由来する構成単位の含有量(ただし、エチレンとプロピレンの合計量を100モル%とする)、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体に含有されるα−オレフィンの含有量(ただし、エチレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)、エチレン−プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体に含有されるプロピレンとα−オレフィンの合計含有量(ただし、エチレンとプロピレンとα−オレフィンの合計量を100モル%とする)は、いずれも50モル%未満であることが好ましい。
【0056】
ポリオレフィン樹脂の構成成分であるα−オレフィンとしては、炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。具体的には、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。好ましくは、炭素数4〜8のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン)である。
【0057】
ポリオレフィン樹脂は、溶液重合法、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等によって製造することができる。また、これらの重合法を単独で用いてもよく、2種以上の重合法を組み合わせてもよい。ポリオレフィン樹脂のより具体的な製造方法の例としては、例えば、“新ポリマー製造プロセス”(佐伯康治編集、工業調査会(1994年発行))、特開平4−323207号公報、特開昭61−287917号公報等に記載されている重合法が挙げられる。
【0058】
ポリオレフィン樹脂の製造に用いられる触媒としては、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒が挙げられる。好ましいマルチサイト触媒として、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられ、また、好ましいシングルサイト触媒として、メタロセン触媒が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としてのポリプロピレン樹脂の製造に用いられる好ましい触媒として、上記のチタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられる。
【0059】
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、発泡成形体中における表面処理繊維(A)の分散性、発泡成形体の外観不良の発生防止や耐衝撃強度の向上という観点から、好ましくは1〜500g/10分、より好ましくは10〜400g/10分、更に好ましくは20〜300g/10分である。なお、MFRは、ASTM D1238に従い、230℃、21.2N荷重で測定した値である。
【0060】
ポリオレフィン樹脂としてのプロピレン単独重合体のアイソタクチックペンタッド分率は、好ましくは0.95〜1.0、より好ましくは0.96〜1.0、更に好ましくは0.97〜1.0である。アイソタクチックペンタッド分率とは、A. ZambelliらによってMacromolecules, 第6巻, 第925頁(1973年)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、NMR吸収ピ−クの帰属は、Macromolecules, 第8巻, 第687頁(1975年)に基づいて行う。
【0061】
ポリオレフィン樹脂は、変性ポリオレフィン樹脂を更に含むことが好ましい。
【0062】
<変性ポリオレフィン樹脂>
変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体で変性して得られた樹脂である。ここで、変性ポリオレフィン樹脂の原料となるポリオレフィン樹脂とは、上記ポリオレフィン樹脂成分のポリオレフィンと同様のポリオレフィン樹脂である。また、変性ポリオレフィン樹脂は、オレフィンの単独重合体または2種類以上のオレフィンの共重合体に不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を反応させて生成した樹脂であって、分子中に不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸誘導体に由来する部分構造を有している樹脂である。変性ポリオレフィン樹脂の例として、下記(d)、(e)および(f)の変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂として、下記(d)、(e)および(f)の変性ポリオレフィン樹脂の中から選択される1種以上を使用することができる。
【0063】
(d)オレフィンの単独重合体に、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂。
(e)2種以上のオレフィンを共重合して得られる共重合体に、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂。
(f)オレフィンを単独重合した後に2種以上のオレフィンを共重合して得られるブロック共重合体に、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂。
【0064】
変性ポリオレフィン樹脂は、溶液法、バルク法、溶融混練法等によって製造することができる。また、2種以上の方法を併用してもよい。溶液法、バルク法、溶融混練法等の具体的な例としては、例えば、“実用ポリマーアロイ設計”(井出文雄著、工業調査会(1996年発行))、Prog. Polym. Sci., 24, 81−142(1999)、特開2002−308947号公報、特開2004−292581号公報、特開2004−217753号公報、特開2004−217754号公報等に記載されている方法が挙げられる。
【0065】
変性ポリオレフィン樹脂としては、市販されている変性ポリオレフィン樹脂を用いてもよく、例えば、商品名モディパー(日油(株)製)、商品名ブレンマーCP(日油(株)製)、商品名ボンドファースト(住友化学(株)製)、商品名ボンダイン(住友化学(株)製)、商品名レクスパール(日本ポリエチレン(株)製)、商品名アドマー(三井化学(株)製)、商品名モディックAP(三菱化学(株)製)、商品名ポリボンド(クロンプトン(株)製)、商品名ユーメックス(三洋化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0066】
変性ポリオレフィン樹脂の製造に用いられる不飽和カルボン酸としては、炭素数3以上の不飽和カルボン酸、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸誘導体としては、不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、金属塩等が挙げられる。不飽和カルボン酸誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸によるポリオレフィンの変性には、該不飽和カルボン酸の源として、クエン酸やリンゴ酸のように、ポリオレフィンにグラフトする工程で脱水して不飽和カルボン酸を生じるものを用いることができる。不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体として、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルである。
【0067】
変性ポリオレフィン樹脂として、次の(g)の樹脂が好ましい。
(g)エチレンおよびプロピレンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来する単位を主な構成単位として含有するポリオレフィン樹脂に、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルをグラフト重合することによって得られる樹脂。
【0068】
変性ポリオレフィン樹脂の、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体に由来する構成単位の含有量は、耐衝撃強度、疲労特性、剛性等の機械的強度の向上という観点から、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.2〜2質量%、特に好ましくは0.4〜1質量%である。なお、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体に由来する構成単位の含有量は、赤外吸収スペクトルまたはNMRスペクトルによって、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体に基づく吸収を定量して算出した値である。
【0069】
本発明の発泡成形体を構成する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物は、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂である変性ポリオレフィン樹脂(B)を樹脂成分として含有することが好ましい。
繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物の樹脂成分中の不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体由来の構成単位の含有量が同じである場合を比較すると、繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物は、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体での変性の程度の少ない変性ポリオレフィン樹脂のみを樹脂成分として含有するよりは、多量の変性されていないポリオレフィン樹脂と、少量の高度に変性された変性ポリオレフィン樹脂とを組み合わせて含有する方が、繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物全体の機械的強度の向上という観点から好ましい。これは、変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸誘導体で変性すると、生成した変性ポリオレフィン樹脂中の重合体は、変性前のポリオレフィン樹脂中の重合体の分子量よりも小さな分子量を有することになる傾向があるためである。そのため、本発明においては、射出成形に付されるポリオレフィン樹脂成分として、変性されていないポリオレフィン樹脂に加えて、変性ポリオレフィン樹脂を含有する態様が好ましい。
【0070】
本発明の発泡成形体を構成する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、樹脂成分の剛性や機械的強度の向上という観点や、樹脂組成物の繊維束への樹脂成分の含浸性の向上という観点から、0.5〜40質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であることがより好ましく、1〜20質量%であることが更に好ましい。
【0071】
本発明の発泡成形体を構成する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物中の有機繊維の含有量およびポリオレフィン樹脂の含有量は、樹脂組成物の剛性や機械的強度の向上という観点や、発泡成形体の外観の観点から、それぞれ1〜70質量%および30〜99質量%であることが好ましく、5〜68質量%および32〜95質量%であることがより好ましく、10〜65質量%および35〜90質量%であることが更に好ましく、15〜60質量%および40〜85質量%であることが特に好ましく、20〜55質量%および45〜80質量%であることが最も好ましい。
【0072】
本発明の発泡成形体を構成する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物には、1種以上のエラストマーを配合してもよい。エラストマーとしては、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、PVC系エラストマー等が挙げられる。
【0073】
本発明の発泡成形体を構成する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物には、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤等の安定剤、気泡防止剤、難燃剤、難燃助剤、分散剤、帯電防止剤、滑剤、シリカ等のアンチブロッキング剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、造核剤や結晶化促進剤等を配合してもよい。
【0074】
ガラスフレーク、マイカ、ガラス粉、ガラスビーズ、タルク、クレー、アルミナ、カーボンブラック、ウォールスナイト等の板状、粉粒状、ウィスカー状の無機化合物等を配合してもよい。
【0075】
<繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法>
本発明の発泡成形体を構成する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法としては、例えば、次の(1)〜(3)の方法等が挙げられる。
(1)各成分の全てを混合して混合物とした後、その混合物を溶融混練する方法。
(2)全成分を逐次添加することにより混合物を得た後、その混合物を溶融混練する方法。
(3)プルトルージョン法。
上記の(1)または(2)の方法において、溶融混練する混合物を得る方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、ブレンダー等によって混合する方法が挙げられる。そして、溶融混練する法としては、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸または二軸押出機等によって溶融混練する方法が挙げられる。
【0076】
本発明の発泡成形体を構成する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物はプルトルージョン法で製造することができる。プルトルージョン法は、繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物の製造の容易さ、得られる成形体の剛性と耐衝撃強度等の機械的強度や制振特性の向上という観点から好ましい。プルトルージョン法とは、基本的には連続した繊維束を引きながら、繊維束に樹脂を含浸させる方法であり、例えば、次の(1)〜(3)の方法等が挙げられる。
(1)ポリオレフィン樹脂と溶媒からなるエマルジョン、サスペンジョンあるいは溶液を入れた含浸槽の中に繊維束を通し、繊維束に該エマルジョン、サスペンジョンまたは溶液を含浸させた後、溶媒を除去する方法、
(2)ポリオレフィン樹脂の粉末を繊維束に吹き付けたのち、または、ポリオレフィン樹脂の粉末を入れた槽の中に繊維束を通し繊維にポリオレフィン樹脂の粉末を付着させたのち、該粉末を溶融して繊維束にポリオレフィン樹脂を含浸させる方法、
(3)クロスヘッドの中に繊維束を通しながら、押出機等からクロスヘッドに溶融ポリオレフィン樹脂成分を供給し、繊維束に該ポリオレフィン樹脂を含浸させる方法。
【0077】
本発明の発泡成形体を構成する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物は、上記(3)のクロスヘッドを用いるプルトルージョン法、より好ましくは、特開平3−272830号公報等に記載されているクロスヘッドを用いるプルトルージョン法で製造することが好ましい。
【0078】
上記のプルトルージョン法において、樹脂成分の含浸操作は1段で行ってもよく、2段以上に分けて行ってもよい。また、プルトルージョン法によって製造された繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットと、溶融混練法によって製造された繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットとをブレンドしてもよい。
【0079】
繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットを射出成形に適用した場合、射出発泡成形における金型キャビティへの充填しやすさ、強度が高い発泡成形体が得られるという観点から、プルトルージョン法で製造された繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットの長さは、2〜50mmであることが好ましい。より好ましい長さは3〜20mmであり、更に好ましい長さは5〜15mmである。繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットの全長が2mm未満の場合、有機繊維を含有していない樹脂組成物と比較して、剛性、耐熱性、耐衝撃強度および制振特性の改良効果が低いことがある。繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットの全長が50mmを超えた場合、成形が困難となることがある。
【0080】
プルトルージョン法で製造された繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットの長さとその繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットに含有される有機繊維の重量平均繊維長は等しい。繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレットの長さとその繊維強化ポリオレフィン樹脂ペレット中に含有される有機繊維の長さとが等しいということは、繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットに含有される有機繊維の重量平均繊維長が、ペレットの全長の90〜110%の範囲内にあることをいう。
【0081】
有機繊維の重量平均繊維長は、特開2002−5924号公報に記載されている方法(ただし、灰化工程は行わない)によって測定する。すなわち、有機繊維の長さは、以下の(ii)〜(iv)の手順で測定する。
(ii) 有機繊維を、その重量の1,000倍以上の重量の液体中に均一分散させ、
(iii)均一分散液から、0.1〜2mgの範囲の量の有機繊維を含有する量だけを取り出し、
(iv) ろ過または乾燥により、取り出した該均一分散液から有機繊維を回収し、回収した全有機繊維の各々について繊維長を測定する。
【0082】
繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレット中の有機繊維の重量平均繊維長は、好ましくは2〜50mm、より好ましくは3〜20mm、更に好ましくは5〜15mmである。また、本発明の発泡成形体の製造に用いられる繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットにおいて、有機繊維は、通常、互いに平行に配列している。
【0083】
なお、発泡成形後の発泡成形体に含まれる有機繊維の重量平均繊維長も、2〜50mmであることが好ましく、3〜20mmであることがより好ましく、5〜15mmであることが更に好ましい。本発明によれば、前述の通りゲート部における有機繊維の切断の発生を低減することができるので、このような重量平均繊維長の有機繊維を含む発泡成形体を容易に得ることができる。
【0084】
<発泡成形体の用途>
本発明の発泡成形体の用途としては、例えば、自動車内装部品および外装部品等の自動車部品用であることが好ましい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0086】
実施例または比較例では、以下に示した樹脂を用いた。
(1)有機繊維(A−1)
下記の特性のPEN繊維
材料:ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート
繊度:1,100dtex/250f
単糸繊度:4dtex
単糸の直径:20μm
引張強度:7.8cN/dtex
引張弾性率:170cN/dtex
有機繊維には3質量%のポリウレタン樹脂で表面処理が施されている。
(2)有機繊維(A−2)
下記の特性のPEN繊維
材料:ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート
繊度:1,670dtex/144f
単糸繊度:13dtex
単糸の直径:33μm
引張強度:7.9cN/dtex
引張弾性率:170cN/dtex
有機繊維には3質量%のポリウレタン樹脂で表面処理が施されている。
【0087】
(3)変性ポリオレフィン樹脂(B)
特開2004−197068公報の実施例1(米国特許出願公開第2004/0002569号明細書に記載された実施例1がこれに対応する)に記載された方法に従って作成した無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂
MFR:60g/10分
無水マレイン酸グラフト量:0.6質量%
(4)ポリオレフィン樹脂(C)
住友化学株式会社製プロピレン単独重合体「ノーブレンU501E1」
MFR:120g/10分
【0088】
[評価方法]
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重21.2Nなる条件で測定した。
【0089】
(2)衝撃値
発泡成形体の衝撃値はHIGH RATE IMPACT TESTER(Reometrics.Inc製)により、測定温度:−30℃、ダート径:1/2インチ、速度:5m/secで、内径が3インチのリングにより固定したサンプルを打ち抜き、変位と荷重の波形を測定した。その後、打ち抜きに要するエネルギー値をジュール単位で算出し、これを「衝撃値」とした。
【0090】
(3)残存繊維長
有機繊維の重量平均繊維長は、特開2002−5924号公報に記載されている方法(ただし、灰化工程は行わない)によって測定した。すなわち、有機繊維の長さは、以下の(ii)〜(iv)の手順で測定した。
(ii) 有機繊維を、その重量の1,000倍以上の重量の液体中に均一分散させ、
(iii)均一分散液から、0.1〜2mgの範囲の量の有機繊維を含有する量だけを取り出し、
(iv) ろ過または乾燥により、取り出した該均一分散液から有機繊維を回収し、回収した全有機繊維の各々について繊維長を測定した。
【0091】
[実施例1]
発泡成形体を次の方法で製造した。
特開平3−121146号公報に記載されている方法に準じて、表1に記載した組成で、ペレット長が11mmの繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物ペレットを作成した。
得られたペレットを用い、射出成形機として、エンゲル社製射出成形機 ES2550/400HL−MuCell(型締力400トン)、射出成形用金型として、図7に示される発泡成形体6を成形するための成形品部寸法が350mm×450mm、高さ105mm、厚み1.5mmtの箱型形状を有し、3つのゲート部A〜C(ゲート部A〜Cの構造:バルブゲート、ゲート部A〜Cの配置:図7参照)を有するものを用いて発泡成形を実施した。射出成形用金型におけるゲート部のゲート出口の開口形状は長方形、開口面積(S1)は114mm2、短軸方向における開口長さ(a1)は4.4mm、ゲート入口の開口形状は円、開口面積(S2)は13mm2、短軸方向における開口長さ(a2)は4mm、ゲート出口からゲート入口までの距離(h)は11mmであった。
発泡成形は、次のようにして実施した。物理発泡剤である炭酸ガスを前記射出成形機のシリンダ内に8MPaに加圧して供給した。物理発泡剤の注入量は、充填する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物の質量100質量部に対し1質量部とした。シリンダ温度180℃、金型キャビティ温度50℃で、金型キャビティ内にフル充填するように溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を射出し、射出完了後から3秒が経過した後、一方の金型の金型キャビティ壁面を2mm後退させて金型キャビティの容積を増大させて前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させた。次いで、繊維強化ポリオレフィン樹脂を冷却し、固化して発泡成形体を得た。
こうして得られた発泡成形体について、有機繊維の残存繊維長を測定した。また、射出成形機で計量された溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を金型キャビティ内に充填させずに取り出して有機繊維の残存繊維長を測定した。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例2]
表1の実施例2の欄に記載した組成であること以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を成形し、評価した。結果を表1に示す。
【0093】
[実施例3]
表1の実施例3の欄に記載した組成、射出成形用金型のゲート部の寸法であること以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を成形し、評価した。結果を表1に示す。
【0094】
[比較例1]
表1の比較例1の欄に記載した組成、射出成形用金型のゲート部の寸法であること以外は実施例1と同様にして発泡成形体を成形し、評価した。なお、比較例1の組成は、実施例3の組成と同様である。結果を表1に示す。
【0095】
[比較例2]
射出成形用金型として、図8に示される発泡成形体9を成形するための成形品部寸法が290mm×370mm、高さ45mm、厚み1.5mmtの箱型形状を有し、1つのゲート部A(ゲート部Aの構造:バルブゲート、ゲート部Aの配置:発泡成形体の中央部分)を有するものを用い、表1の比較例2の欄に記載した組成、射出成形用金型のゲート部の寸法であること以外は実施例1と同様の方法で発泡成形体を成形し、評価した。なお、比較例2の組成は、実施例1の組成と同様である。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【符号の説明】
【0097】
1:ゲート部A接触部分
2:ゲート部B接触部分
3:ゲート部C接触部分
4:開口部
5:ゲート部から150mm離れた部位(発泡成形体の残存繊維長の測定をした部位)
6:発泡成形体
7:ゲート部A接触部分
8:ゲート部から150mm離れた部位(発泡成形体の残存繊維長の測定をした部位)
9:発泡成形体
M:射出成形用金型
10:固定側金型
11:可動側金型
12:スクリューフィーダ
12a:シリンダ
12b:スクリュー
13:金型キャビティ
14:ゲート部
14a:第1空間部
14b:第2空間部
15:ランナ
16:シャットオフピン
17:溶融状態の繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物
18:ゲート出口
19:ゲート入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂と、有機繊維とを含有する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を溶融させる溶融工程と、
溶融状態の前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物に物理発泡剤を溶解させる溶解工程と、
固定側金型と、この固定側金型に接して固定側金型との間に金型キャビティを形成する可動側金型と、前記固定側金型に形成され、前記金型キャビティ内に溶融状態の樹脂を供給するランナと、前記固定側金型に形成され、前記ランナに接続されたランナ側開口部と、前記金型キャビティに接続された金型キャビティ側開口部と、を有し、かつ、下記の要件(1)及び(2)を満足するゲート部と、を有する射出成形用金型の前記金型キャビティに前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を充填する充填工程と、
前記射出成形用金型を所定量開いて前記金型キャビティの容積を増大させ、前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を発泡させる発泡工程と、を有することを特徴とする自動車部品用の発泡成形体の成形方法。
(1)前記ランナ側開口部と前記金型キャビティ側開口部との距離は10〜100mmであり、前記ランナ側開口部の開口面積は7〜50mm2であり、前記金型キャビティ側開口部の開口面積は10〜300mm2であり、かつ、前記ランナ側開口部の開口面積よりも前記金型キャビティ側開口部の開口面積の方が広い。
(2)前記金型キャビティ側開口部の短軸方向における開口長さは3.5mm以上であり、前記ランナ側開口部の短軸方向における開口長さは3mm以上である。
【請求項2】
前記有機繊維がポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンナフタレンジカルボキシレートである、請求項1に記載の発泡成形体の成形方法。
【請求項3】
前記充填工程において、前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物の温度が前記ポリオレフィン樹脂の融点以上であって、(前記有機繊維の融点−30℃)以下である、請求項1又は2に記載の発泡成形体の成形方法。
【請求項4】
前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物中の前記有機繊維の含有量が1〜70質量%である、請求項1〜3いずれか1つに記載の発泡成形体の成形方法。
【請求項5】
前記有機繊維の重量平均繊維長が2〜50mmである、請求項1〜4いずれか1つに記載の発泡成形体の成形方法。
【請求項6】
前記金型キャビティ側開口部の開口形状が長方形であり、前記ランナ側開口部の開口形状が円形である、請求項1〜5いずれか1つに記載の発泡成形体の成形方法。
【請求項7】
ポリオレフィン樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1〜6いずれか1つに記載の発泡成形体の成形方法。
【請求項8】
前記繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物中の前記有機繊維の含有量及び前記ポリオレフィン樹脂の含有量が、それぞれ1〜70質量%及び30〜99質量%であり、
前記ポリオレフィン樹脂が変性ポリオレフィン樹脂を含有し、前記ポリオレフィン樹脂中の変性ポリオレフィン樹脂の含有量が0.5〜40質量%である、請求項1〜7いずれか1つに記載の発泡成形体の成形方法。
【請求項9】
前記ゲート部の前記ランナ側開口部がシャットオフピンにより開閉される、請求項1〜8いずれか1つに記載の発泡成形体の成形方法。
【請求項10】
超臨界状態にある前記物理発泡剤を使用する、請求項1〜9いずれか1つに記載の発泡成形体の成形方法。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1つに記載の成形方法によって成形された発泡成形体からなる自動車部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−189557(P2011−189557A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55891(P2010−55891)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】