説明

発泡成形型および低倍発泡成形体

【課題】低倍発泡成形品を成形する発泡成形型において、簡単な設計変更を施すだけで、発泡力によって生じる恐れのある成形型の変形を、確実に抑止すること。
【解決手段】平坦な蒸気吹き出しプレート2a,2bが、その前面側が一平面となるように、両マスターフレーム1a,1bの前面側にそれぞれ取り付けられており、片方のマスターフレーム1a側に、成形品キャビティ4を区画する成形開口22を備えたアタッチメントプレート20が着脱可能に取り付けられている発泡成形型1において、蒸気吹き出しプレート2a,2bが成形品キャビティ4に対向する領域の背面側に位置する補強サポート40として、蒸気吹き出しプレート2a,2bの背面と接する部分の形状が所定幅の線状をなす板状の補強サポート40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発泡性粒子を型内で発泡させて発泡成形品を成形するための発泡成形型とその発泡成形型で成形される低倍発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性粒子を型内で発泡させて発泡成形品を成形することは知られている。成形される発泡成形品に多種類にわたるが、その一つに、特許文献1に記載されるようなコンクリート推進管用クッション材がある。コンクリート推進管用クッション材は、地中穿孔時に、コンクリート推進管の端面に取り付けられる部材であり、全体形状は扇形をなす板状体であって、発泡倍数が1.5〜20倍の低倍ポリスチレン系樹脂発泡成形体のものがほとんどである。
【0003】
そのような板状体である発泡成形品を成形するのに好適な発泡成形型が、特許文献2に記載されている。その発泡成形型は、平坦な蒸気吹き出しプレートが両マスターフレームの前面側にそれぞれ取り付けられており、前記蒸気吹き出しプレートと前記マスターフレームの間には補強サポートが配置されており、片方のマスターフレーム側に、型締時に両蒸気吹き出しプレート間に挟持されて成形品キャビティの側周を区画する成形開口を備えたアタッチメントプレートが着脱可能に取り付けられる。そして、成形品キャビティは、両蒸気吹き出しプレートのそれぞれ一平面となっている前面側と、前記アタッチメントプレートに形成した成形開口の側周面とによって囲まれた空間として形成される。
【0004】
この発泡成形型では、形成品の形状や厚さに変更があっても、前記アタッチメントプレートを交換するだけでそれに対処することができるので、変更に伴う経費および労力を軽減すると共に、交換部材(アタッチメントプレート)の保管に要する手間およびスペースをも軽減することが可能となる。また、その種の発泡成形型では、前記補強サポートとして、通常円柱状あるいは円筒状のものが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61−8320号公報
【特許文献2】特開平8−25393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した特許文献2に記載される構成の発泡成形型を用いることにより、低倍発泡成形体であって、形状および厚みの異なるコンクリート推進管用クッション材を安定して成形することができる。しかし、低倍発泡成形品を成形する場合、発泡力が強く、成形品キャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填して蒸気で発泡させるときに、発泡時の圧力によって成形型が変形する恐れがある。
【0007】
そのために、従来の発泡成形型では、蒸気吹き出しプレートの成形品キャビティに対向する領域に作用する大きな発泡力によって、蒸気吹き出しプレートに、ひいては発泡成形型に、変形が生じないように、蒸気吹き出しプレートとマスターフレームの間に配置する円柱状あるいは円筒状の補強サポートの配置位置や配置密度に十分な注意を払う必要があり、発泡成形型の設計上のネックとなっていた。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、特許文献2に記載される形態の低倍発泡成形品を成形する発泡成形型において、簡単な設計変更を施すだけで、発泡力によって生じる恐れのある成形型の変形を、確実に抑止することのできる発泡成形型を開示することを第1の課題とする。また、その発泡成形型を用いる低倍発泡成形体の成形方法と低倍発泡成形体を開示することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による発泡成形型は、平坦な蒸気吹き出しプレートが、その前面側が一平面となるように、両マスターフレームの前面側にそれぞれ取り付けられており、前記蒸気吹き出しプレートと前記マスターフレームの間には補強サポートが配置されており、少なくとも片方のマスターフレーム側に、型締時に両蒸気吹き出しプレート間に挟持されて成形品キャビティの側周を区画する成形開口を備えたアタッチメントプレートが着脱可能に取り付けられており、成形品キャビティが、前記両蒸気吹き出しプレートのそれぞれ一平面となっている前面側と、前記アタッチメントプレートに形成した前記成形開口の側周面とによって囲まれた空間として形成される発泡成形型であって、前記蒸気吹き出しプレートの少なくとも前記成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置する前記補強サポートとして、前記蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポートを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明による発泡成形型の一態様では、前記板状の補強サポートの複数枚が、前記成形品キャビティに対向する前記蒸気吹き出しプレートの背面側に間隔をおいて位置していることを特徴とする。
【0011】
本発明による発泡成形型の一態様では、前記板状の補強サポートは前記マスターフレームの全幅にわたるようにして形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明による低倍発泡成形体の成形方法は、未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなる低倍発泡粒子を、本発明による発泡成形型の成形品キャビティ内に充填し、発泡倍数が1.5〜20倍の範囲内の低倍発泡成形体を型内発泡成形することを特徴とする成形方法である。
【0013】
また、本発明による低倍発泡成形体は、未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなる低倍発泡粒子を、本発明による発泡成形型の成形品キャビティ内に充填し、型内発泡成形して得られた、発泡倍数が1.5〜20倍の範囲内のものである低倍発泡成形体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明による発泡成形型では、蒸気吹き出しプレートの少なくとも成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置する補強サポートとして、従来のように、円柱状または円筒状の補強サポートではなく、蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポートを備える。それにより、円柱状または円筒状の補強サポートの場合と比較して、より広い面積で、蒸気吹き出しプレートの成形品キャビティに対向する領域を背面側を支持することができ、発泡圧の分散を図ることができる。それにより、蒸気吹き出しプレートの変形は抑制され、結果として発泡成形型の変形が抑制される。
【0015】
円柱状または円筒状の補強サポートの本数を増やすことによっても、接触面が線状をなす板状の補強サポートの場合と同じ支持面積を得ることができる。しかし、多数本の円柱状または円筒状の補強サポートを蒸気吹き出しプレートとマスターフレームの間に配置することは、型作成上きわめて困難である。本発明による発泡成形型では、板状の補強サポートを配置するようにしており、比較して、型作成は容易である。
【0016】
本発明による発泡成形型において、前記板状の補強サポートの複数枚が、前記成形品キャビティに対向する前記蒸気吹き出しプレートの背面側に間隔をおいて位置している場合には、発泡圧を一層分散した状態で背面から支持することが可能となる。
【0017】
本発明による発泡成形型において、前記板状の補強サポートは、少なくとも蒸気吹き出しプレートが成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置するように設けられれば、所期の目的を達成することができる。蒸気吹き出しプレートの他の領域には、従来と同様の円柱状または円筒状の補強サポートを必要本数だけ配置するようにしてもよい。しかし、前記板状の補強サポートを、前記マスターフレームの全幅にわたるようにして形成することは、設計の容易性から好ましい。
【0018】
本発明による発泡成形型において、前記アタッチメントプレートをマスターフレームに取り付けたときに該マスターフレームから外側に突出する突出領域を有して形状のアタッチメントプレートを用いることもできる。その態様では、前記突出領域にクレーンやジャッキ等のフックを引っ掛けて、アタッチメントプレートを吊り下げた状態とし、その状態で、アタッチメントプレートの運搬やマスターフレームへの取り付けを行うことができる利点がある。
【0019】
本発明による低倍発泡成形体の成形方法およびそれで得られる低倍発泡成形体は、発泡倍数1.5〜10倍の範囲のものなので、発泡粒子同士の融着率と伸びが良好となり、曲げ強度や圧縮強度に優れており、高強度、長期耐久性に特に優れている。従って、高強度、長期耐久性が要求されるコンクリート推進管用クッション材などの土木用の分野、床下地材などの建材用の分野等に適用することができる。
【0020】
また、本発明による低倍発泡成形体の成形方法において、例えば特公平5−87364号公報に記載のように、計量部内に収容された原料粒子が1ショットの成形工程に必要な量に達したことを検出する手段によって検知してから、その原料粒子を、計量槽の加圧圧力および成形型に取り付けた充填器の吸引力によって、発泡成形型の前記成形品キャビティに加圧充填することによって、低倍発泡成形体の成形方法において、製品の部位による倍率のバラツキをなくすことができ。また、型締めの後に、発泡成形が終わるまで型締め圧力を継続することで型の開きをなくすことができ、均一な厚みの製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による発泡成形型の一実施の形態を示す断面図。
【図2】アタッチメントプレートの取り付け部付近の拡大断面図。
【図3】マスターフレームの一例を両蒸気吹き出しプレート取り付け側から見た平面図。
【図4】マスターフレームの他の例を示す図2に相当する図。
【図5】マスターフレームのさらに他の例を示す図1に相当する図。
【図6】アタッチメントプレートの幾つかの例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明による発泡成形型1を実施の形態に基づき説明する。
発泡成形型1は、図1に示すように、固定側および移動側のマスターフレーム1a,1b、原料フィーダー5、背面プレート6a,6b、エジェクターピン7、シール材8、補強サポート9を備える。そして、各マスターフレーム1a,1bの一側面には、蒸気供給口15が設けられ、そこからマスターフレーム1a,1b内の全域にわたり、過熱水蒸気が供給される。
【0023】
マスターフレーム1a,1bの前面側(成形品キャビティ4側)には、それぞれ平坦な蒸気吹き出しプレート2a,2bが取り付けられている。この蒸気吹き出しプレート2a,2bは、従来のキャビティ金型やコア金型と同様に蒸気透過性を有するもので、図2に示されるように、コアベント10が打ち込まれたベント孔11を備えている。
【0024】
上記蒸気吹き出しプレート2a,2bは、各マスターフレーム1a,1bの前面側A,Bを覆うようにして、固定用ネジ12によって、マスターフレーム1a,1bに取り付けられており、これによって両蒸気吹き出しプレート2a,2bの前面側はそれぞれ一平面となっている。
【0025】
固定側のマスターフレーム1aには、アタッチメントプレート20が、固定用ネジ13によって、着脱可能に取り付けられる。このアタッチメントプレート20は、図6(a)に一例を示すように、全体として表裏面が平坦面である矩形状の板状材であり、一部に閉じた側周面21で区画される成形開口22を有している。後記するように、この成形開口22が成形品キャビティ4として機能する。なお、図6(a)において、25はマスターフレーム1aに取り付け時に利用されるネジ穴である。
【0026】
前記アタッチメントプレート20は、図1に示すように、マスターフレーム1aに取り付けられた後、図2に示すように型締めすることによって、両蒸気吹き出しプレート2a,2b間に挟まれた姿勢となる。そして、両蒸気吹き出しプレート2a,2bのそれぞれ一平面となっている前面側A,Bと、アタッチメントプレート20に形成した成形開口22の側周面21とによって区画された空間が、成形品キャビティ4を構成する。
【0027】
各マスターフレーム1a,1bには、前記蒸気吹き出しプレート2a,2bと背面プレート6a,6bとの間に位置するようにして、補強サポート40が設けられる。本発明において、前記補強サポート40は、型締めしたときに、少なくとも、蒸気吹き出しプレート2a,2bが前記成形品キャビティ4に対向することとなる領域の背面側と接する部分の形状が、所定幅である線状をなす板状の補強サポートである。
【0028】
図1および図3に示す例において、前記補強サポート40は、幅20mm程度のアルミ合金等からなる板状部材であり、前記マスターフレーム1a,1bの全幅にわたるようにして、150〜200mm程度の間隔をおいて、複数枚(図示の例では5枚)が配置されている。なお、図3で、アタッチメントプレート20に形成した成形開口22によって形成される成形品キャビティ4を点線で示しており、40aで示す部分が、補強サポート40における、蒸気吹き出しプレート2a,2bの成形品キャビティ4に対向する領域の背面側に位置する部分となる。
【0029】
図4は、前記補強サポート40の他の例を示しており、この例で、補強サポート40はマスターフレーム1a,1bの全幅にはわたってなく、蒸気吹き出しプレート2a,2bが成形品キャビティ1a,1bに対向する領域よりも少し長い長さの板状の補強サポートとされている。そして、蒸気吹き出しプレート2a,2bの他の領域と背面プレート6a,6bとの間には、従来の発泡成形型の場合と同様、円柱状または円筒状の補強サポート41が配置される。
【0030】
図5は、前記補強サポート40のさらに他の例を示しており、ここでは、図3に示した補強サポート40と同様であるが、的数の蒸気通過口42がさらに形成されている。
【0031】
必須の構成ではないが、前記したアタッチメントプレート20は、図1に示すように、マスターフレーム1aに固定した状態で、マスターフレーム1aから上方に突出する突出領域23を有しており、前記突出領域23には、貫通孔24が形成されている。また、マスターフレーム1aの下端部には、前記アタッチメントプレート20の下端部を支持するための支持体13が形成されている。
【0032】
上記の本発明に係る発泡成形型1では、図1に示すように、型を開いて、適宜形状の成形開口22を備えたアタッチメントプレート20をマスターフレーム1aに取り付け、図2に示すように型締めをする。それにより、成形品キャビティ4が形成される。原料フィーダー5から、発泡性樹脂粒子を成形品キャビティ4内に充填し、蒸気供給口15から過熱水蒸気を供給する。供給された過熱水蒸気は、マスターフレーム1a、1bから、蒸気吹き出しプレート2a,2bに形成したベント孔11を通って、成形品キャビティ4内に入り、発泡性樹脂粒子を所要に発泡させる。
【0033】
発泡により発泡圧が発生する。特に、低倍発泡成形品を成形する場合には、大きな発泡圧が成形品キャビティ4内に形成される。しかし、上記したように、本発明による発泡成形型1では、蒸気吹き出しプレート2a,2bの少なくとも前記成形品キャビティ4に対向する領域の背面側と、背面プレート6a,6bとの間に、前記したように、蒸気吹き出しプレート2a,2bの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポート40が設けられている。そのために、成形品キャビティ4内に形成される発泡圧を広い面積で受けることができ、それにより、蒸気吹き出しプレート2a,2bが変形するのを効果的に抑制することができる。結果として発泡成形型1の変形が抑制される。
【0034】
なお、本発明による低倍発泡成形体の成形方法において、例えば特公平5−87364号公報に記載されるような、定量加圧充填方式を採用することは好ましく、それにより、粒子の均一な充填が可能となり、製品の部位による応力バラツキをなくすことができる。さらに、型締めの後に、発泡成形が終わるまで型締め圧力を継続することで型の開きをなくすことができ、均一な厚みの製品を得ることができる。
【0035】
また、本発明による発泡成形型1では、アタッチメントプレート20を交換するだけで、異なる形状または厚みの成形品を成形することができる。すなわち、アタッチメントプレート20を、図6(a)(b)(c)に示すように、その成形開口22の形や形状の異なるもの、あるいは厚みの異なるものと交換することで、形状や厚みの異なる成形品を成形することができる。なお、図6(b)(c)に示すアタッチメントプレート20は、全体形状は図6(a)に示したアタッチメントプレート20と同じであるが、図6(b)に示す例では、比較して小型の成形開口22aが4個形成されており、図6(c)に示す例では比較して幅は狭いがほぼ180度まで広がった扇型の成形開口22bが2個形成されている。
【0036】
また、図示のアタッチメントプレート20のように、マスターフレーム1aに取り付けたときに、マスターフレーム1aから上方に突出する突出領域23をアタッチメントプレート20が有する場合には、そこを利用し、そこに、クレーン(不図示)等の作業機器に接続するフック30を引っ掛けておくことにより、アタッチメントプレート20を移動運搬が容易になり、また、マスターフレーム1aに対する着脱操作も容易となる。
【0037】
なお、上記の例では、アタッチメントプレート20は固定側のマスターフレーム1a側に取り付けられているが、エジェクターピン7が移動側から固定側へ突き出される場合には、移動側のマスターフレーム1bに取り付けることもできる。
【0038】
次に、上記した発泡成形型1を用いて、例えばコンクリート推進用クッション材である低倍発泡成形体を成形する場合の具体例を説明する。より具体的には、未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなる低倍発泡粒子を、上記した発泡成形型1の成形品キャビティ4内に充填し、発泡倍数が1.5〜20倍の範囲内の低倍発泡成形体を型内発泡成形する。
【0039】
一例として、前記低倍発泡粒子として、低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を蒸気加熱し、嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなるものを用いる。
【0040】
前記低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のベースとなるポリスチレン系樹脂は、ポリスチレンを主成分とするものであり、スチレンの単独重合体でもよいし、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体との共重合体でもよい。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体を併用してもよい。好ましいポリスチレン系樹脂は、スチレンの単独重合体である。
【0041】
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させる発泡剤としては、揮発性発泡剤、分解型発泡剤のいずれを使用してもよい。
【0042】
揮発性発泡剤としては、例えば脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトン等が挙げられる。このうち脂肪族炭化水素としては、例えばプロパン、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタンなど)等が挙げられ、脂環族炭化水素としては、例えばシクロペンタン、シクロへキサン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えばトリクロロフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素などの1種または2種以上が挙げられる。さらにエーテルとしては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が挙げられ、ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0043】
また分解型発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウムなどの無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの有機系発泡剤が挙げられる。
【0044】
前記発泡剤は、単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、300μm〜2500μmの範囲内であり、好ましくは650μm〜2500μmの範囲内であり、より好ましくは800μm〜2000μmの範囲内である。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径が前記範囲未満であると、該樹脂粒子を基に作製した低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、或いはそれを低倍予備発泡して得られた低倍発泡粒子を、成形機のキャビティ内に充填し、型内発泡成形して低倍発泡成形体を製造する際に、粒子同士の間隔が狭くなって加熱用水蒸気が均一に行き渡らず、得られる発泡成形体の融着率が不均一となって、十分な強度を有する低倍発泡成形体が得られなくなるおそれがある。一方、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径が前記範囲を超えると、一粒質量が大きくなって、該粒子をキャビティ内に搬送したり、均一に充填することが難しくなる。また、複雑形状の発泡成形体の製造には不向きとなる。
【0045】
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、該樹脂粒子の発泡性や得られる低倍発泡成形品の機械強度に影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて発泡助剤、滑剤、収縮防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、無機気泡核剤、無機充填剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0046】
前記した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、従来周知の各種の発泡樹脂粒子製造方法を用いて製造することができる。それらの方法の中でも、懸濁重合法、押出-水中カット法が好ましい。
【0047】
本発明に係る低倍発泡粒子は、前記低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を蒸気加熱し、嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなるものである。嵩発泡倍数の範囲は2.0〜10倍が好ましく、2.0〜5倍がより好ましい。
【0048】
低倍発泡粒子の嵩発泡倍数が前記範囲未満であると、嵩発泡倍数のばらつきが大きくなり均一な粒子が得られない。一方、低倍発泡粒子の嵩発泡倍数が前記範囲を超えると、十分な強度と長期耐久性に優れた低倍発泡成形体が得られない。
【0049】
本発明に係る低倍発泡粒子は、前記低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱し、嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなるものなので、曲げ強度や圧縮強度に優れた低倍発泡成形体を製造するために用いることができる。
【0050】
本発明に係る低倍発泡成形体は、前記低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(未発泡粒子)または前記低倍発泡粒子(嵩発泡倍数が2.0〜20倍)を、本発明による発泡成形型1によって形成される所望の成形形状に合致した成形品キャビティ4内に充填し、型内発泡成形して得られ、発泡倍数が1.5〜20倍の範囲内のものである。
【0051】
この低倍発泡成形体は、発泡倍数が1.5〜10倍の範囲内であることが好ましく、1.6〜5倍の範囲内であることがより好ましい。発泡倍数が前記範囲内であれば、コンクリート推進管用クッション材などの土木用の分野、床下地材などの建材用の分野等に適用することができる、曲げ強度や圧縮強度に優れた低倍発泡成形体を提供できる。
【0052】
この発泡成形体の「密度」は、JIS K6767:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した。即ち、50cm以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量(g)を測定し、次式により算出する。
密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
【0053】
また、この発泡成形体の「発泡倍数」は、前記密度の逆数(1/密度)であり、密度0.2g/cmの低倍発泡粒子は発泡倍数5倍、密度0.1g/cmの低倍発泡粒子は発泡倍数10倍となる。
【0054】
本発明の低倍発泡成形体は、前記低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子または低倍発泡粒子を型内発泡成形して得られたものなので、発泡粒子同士の融着率と伸びが良好となり、曲げ強度や圧縮強度に優れており、高強度、長期耐久性が要求されるコンクリート推進管用クッション材などの土木用の分野、床下地材などの建材用の分野等に適用することができる。
【0055】
本発明に係るコンクリート推進管用クッション材は、前記低倍発泡成形体が発泡倍数1.5〜10倍の範囲内のものなので、曲げ強度や圧縮強度に優れており、高強度、長期耐久性に優れている。
【0056】
このコンクリート推進管用クッション材は、発泡倍数が1.6〜5倍であることが好ましい。発泡倍数が前記範囲内であれば、高強度、長期耐久性に特に優れるコンクリート推進管用クッション材を提供できる。
【実施例】
【0057】
[実施例1]
100リットルの反応器に純水44kg、第三リン酸カルシウム800g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.7gを入れ撹拌を行いながら、スチレン42kgにベンゾイルパーオキサイド110g、t−ブチルパーオキシベンゾエート8gを溶解して加えた。反応器を密閉し90℃に昇温し、5時間反応を行なった後125℃に1時間かけて昇温し、1時間後に冷却を始め常温まで冷却した。得られたスラリーを脱水乾燥し、篩分けして平均粒子径1400μmのポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0058】
5リットルの反応器に純水1.5kg、前記の方法により得たポリスチレン系樹脂粒子(平均粒子径1400μm、重量平均分子量が約30万、残存モノマーが約2000ppm)2.0kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2g、ピロリン酸マグネシウム7.0gを加えて撹拌し懸濁させた。次いであらかじめ用意した純水0.5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1gにトルエン9.5gをホモミキサーで撹拌して懸濁液を調整し、反応器に仕込んだ。次に、常温で反応器内にペンタン25g、ブタン18gを圧入し、120℃に昇温し、5時間保持した後、常温まで冷却して取り出し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0059】
次に、前記の方法により得られた低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、図1に示した発泡成形型1に、図6(a)に示したアタッチメントプレート20を取り付けた成形品キャビティ(下縁と上縁との間の距離260mm,扇型の開き角度90度、厚み15mm)に充填し、0.08MPaの水蒸気で35秒加熱し、冷却して、密度0.6g/cm、発泡倍数1.7倍の扇形状の低倍発泡成形体を得た。
【0060】
[実施例2]
実施例1と同様にして低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。得られた低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.2g/cm、嵩発泡倍数5倍に予備発泡した。この予備発泡粒子を室温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同じ発泡成形機の成形品キャビティ内に充填し、0.08MPaの水蒸気で35秒加熱し、冷却して、密度0.2g/cm、発泡倍数5倍の扇形状の低倍発泡成形体を得た。
【0061】
[実施例3]
実施例1と同様にして低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。得られた低倍成形用発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.1g/cm、嵩発泡倍数10倍に予備発泡した。この予備発泡粒子を室温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同じ発泡成形機の成形品キャビティ内に充填し、0.08MPaの水蒸気で35秒加熱し、冷却して、密度0.1g/cm、発泡倍数10倍の扇形状の低倍発泡成形体を得た。
【符号の説明】
【0062】
1…発泡成形型、
1a,1b…マスターフレーム、
2a,2b…蒸気吹き出しプレート、
4…成形品キャビティ、
11…ベント、
15…蒸気供給口、
20…アタッチメントプレート、
21…閉じた側周面、
22…成形開口(成形品キャビティ)
23…アタッチメントプレートのマスターフレームから突出する領域、
40…補強サポート、
40a…補強サポートにおける、蒸気吹き出しプレートの成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置する部分、
41…円柱状または円筒状の補強サポート、
42…補強サポートに形成した蒸気通過口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な蒸気吹き出しプレートが、その前面側が一平面となるように、両マスターフレームの前面側にそれぞれ取り付けられており、前記蒸気吹き出しプレートと前記マスターフレームの間には補強サポートが配置されており、少なくとも片方のマスターフレーム側に、型締時に両蒸気吹き出しプレート間に挟持されて成形品キャビティの側周を区画する成形開口を備えたアタッチメントプレートが着脱可能に取り付けられており、成形品キャビティが、前記両蒸気吹き出しプレートのそれぞれ一平面となっている前面側と、前記アタッチメントプレートに形成した前記成形開口の側周面とによって囲まれた空間として形成される発泡成形型であって、
前記発泡成形型は、前記蒸気吹き出しプレートの少なくとも前記成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置する前記補強サポートとして、前記蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポートを備えることを特徴とする発泡成形型。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡成形型であって、前記板状の補強サポートの複数枚が、前記成形品キャビティに対向する前記蒸気吹き出しプレートの背面側に間隔をおいて位置していることを特徴とする発泡成形型。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発泡成形型であって、前記板状の補強サポートは前記マスターフレームの全幅にわたるようにして形成されていることを特徴とする発泡成形型。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の発泡成形型であって、前記アタッチメントプレートを前記マスターフレームに取り付けたときに該マスターフレームから外側に突出する突出領域を有して形状のアタッチメントプレートを用いることを特徴とする発泡成形型。
【請求項5】
未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなる低倍発泡粒子を、請求項1から4のいずれか一項に記載の発泡成形型の成形品キャビティ内に充填し発泡倍数が1.5〜20倍の範囲内の低倍発泡成形体を型内発泡成形することを特徴とする低倍発泡成形体の成形方法。
【請求項6】
未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなる低倍発泡粒子を、請求項1から4のいずれか一項に記載の発泡成形型の成形品キャビティ内に充填し、型内発泡成形して得られた発泡倍数が1.5〜20倍の範囲内のものである低倍発泡成形体。
【請求項7】
コンクリート推進管用クッション材である請求項6に記載の低倍発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228246(P2010−228246A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77521(P2009−77521)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】