説明

発泡樹脂成形品の成形方法

【課題】可動側金型と固定側金型とを型締めした後、エアを注入し、更に、発泡樹脂材料を射出充填した後、可動側金型を型開きさせて発泡反応を開始して所要形状に成形してなる発泡樹脂成形品の成形方法であって、製品表面のエア残りを低減し、外観性能を高める。
【解決手段】成形金型40の型締め後、冷却工程前迄製品キャビティC内に第1のエア注入管71を通じてエアを注入し続ける。そして、発泡樹脂材料Mの射出充填後、製品キャビティC内のエア圧を0.3〜1.0MPaにキープした状態で可動側金型50を型開操作し、金型外周シール部80から外部にエアを排出する一方、第2のエア注入管72を通じて可動側金型50の型面と発泡樹脂成形品20の製品面との間に薄膜のエア層Aを強制的に作り出し、外観性能を表面全面に亘り均一に保つことで外観不良をなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製品キャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填した後、可動側金型を型開方向に動作させて、発泡スペースを確保した状態で発泡反応させて発泡樹脂成形品を所要形状に成形してなる発泡樹脂成形品の成形方法に係り、特に、製品内のエア残りを低減でき、外観性能を高めた発泡樹脂成形品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8はドアパネル(図示せず)の室内面側に装着される自動車用ドアトリム1を示すもので、このドアトリム1は、軽量で耐衝撃性に優れ、かつコストも廉価なことから、ポリプロピレン(PP)樹脂内部に発泡剤を混入した発泡樹脂材料を所要形状に成形してなる発泡樹脂成形品が多く使用されている。
【0003】
そして、この種発泡樹脂成形品を素材としたドアトリム1を所要形状に成形する従来の成形方法について、図9乃至図12を基に説明する。図9に示すように、ドアトリム1の成形方法に使用する成形金型2は、可動側金型3と固定側金型4が相互に型締め、型開き可能に配置されており、可動側金型3と固定側金型4との型締時、ドアトリム1の製品形状に対応するように両金型間で製品キャビティCが画成されている。また、固定側金型4には、製品キャビティCに発泡樹脂材料Mを供給するための樹脂供給通路4aが設定されているとともに、固定側金型4には、外部からのエア供給機構、あるいはエア排出機構と接続するエア注入管5及びエア排出管6が設けられ、エア注入管5から製品キャビティC内にエアが注入され、エア排出管6を通じて製品キャビティC内からエアが外部に排出されることにより、製品キャビティC内のエア圧を適正に制御することができる。また、製品キャビティCの外周には、シール部7が設けられている。
【0004】
そして、上記成形金型2を使用して発泡樹脂成形品であるドアトリム1を成形する従来例について、図10乃至図12の工程説明図を基に説明する。まず、図10に示すように、可動側金型3と固定側金型4が型締めされた状態で外部のエア供給機構からエア注入管5を通じて製品キャビティC内にエアが注入される。そして、エアを注入した状態で樹脂供給通路4aから発泡樹脂材料Mが製品キャビティC内に射出充填される。この時、製品キャビティC内のエア圧はエア注入管5からエアが注入されているため、発泡反応を抑制した状態で発泡樹脂材料Mが製品キャビティCの隅々まで供給される。
【0005】
次いで、製品キャビティC内に発泡樹脂材料Mを射出充填した後、余剰のエアを外部に排出することが必要であるため、図11に示すように、エア排出管6を通じて製品キャビティC内の残留エアを外部に排出し、その後、図12に示すように、可動側金型3を型開方向に所定ストローク動作させて、製品キャビティC内のエア圧を下げることで発泡樹脂材料Mを有効に発泡反応させて、所定厚みのドアトリム1を精度良く成形している。上記発泡樹脂成形品であるドアトリム1における成形金型2の構造、並びに成形金型2を使用したドアトリム1の成形方法の従来例については、特許文献1に詳細に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−7818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の発泡樹脂成形品であるドアトリム1の成形方法は、可動側金型3と固定側金型4との型締めにより画成される製品キャビティC内に、発泡樹脂材料Mを射出充填するが、その前にエア注入管5を介してエアを注入することにより、発泡反応を抑えた状態で発泡樹脂材料Mを射出充填することができる。その後、型内に留まったエアをエア排出管6を通じて型外に排出し、可動側金型3を型開操作して、発泡樹脂材料Mを発泡させるという工程を採用している。
【0008】
しかしながら、従来方法では、製品キャビティC内のエアを排出する手段としてエア排出管6を使用するため、エアの排出効率が悪く、図12に示すように、エア排出管6の設定部位から遠隔した部分でエア残りが発生し易く、また、可動側金型3を型開操作する前段階で製品キャビティC内のエアはエジェクタピン周り等から漏れ易く、エア圧が自然に低下する傾向があった。従って、従来方法では製品キャビティC内のエア圧にバラツキが生じるため、外観不良が発生し易く、見栄えの低下を招くという欠点が指摘されている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、型内にエアを注入した後、発泡樹脂材料を製品キャビティ内に射出充填し、その後、型内のエアを外部に排出するとともに、可動側金型を型開方向に移動させて所定厚みの発泡樹脂成形品を成形する発泡樹脂成形品の成形方法であって、製品内のエア残りを確実に防止することで、外観性能を高めた発泡樹脂成形品の成形方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者等は鋭意研究の結果、成形金型を型締めした後、製品キャビティ内へのエア注入を開始し、発泡樹脂材料の射出充填工程及び可動側金型の型開操作工程が完了して、冷却工程に移行する前迄エア注入を継続することで、製品キャビティ内のエア圧を適正に制御するとともに、従来の排出管を廃止して、金型外周シール部よりエアを外部に排出する一方、製品中央部にある開口または入子等からエアを瞬間的にキャビティ内の可動側金型の型面に沿って注入し、可動側金型の型面と発泡樹脂成形品との間に薄膜のエア層を強制的に形成することで、局部的に発生するエア残りを解消できることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、可動側金型と固定側金型との間に画成される製品キャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填した後、この発泡樹脂材料を発泡させて所要形状に成形してなる発泡樹脂成形品の成形方法において、前記可動側金型と固定側金型を型締めした後、外部のエア供給機構から第1のエア注入管を通じて製品キャビティ内にエアを注入し、製品キャビティ内にエア圧を加えた状態で製品キャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填する発泡樹脂材料の射出充填工程と、発泡樹脂材料を製品キャビティ内に射出充填した後、製品キャビティ内には、第1のエア注入管を通じてエアが継続して注入され、製品キャビティ内のエア圧を0.3〜1.0MPaにキープするエア圧調整工程と、可動側金型を微小ストローク型開操作するとともに、製品キャビティの外周からエアを型外に排出して製品キャビティ内のエア圧を下げた状態で発泡反応を行なわせる一方、固定側金型に設けた孔形成用ブロックまたは入子の開口部を通じて第2のエア注入管から可動側金型の型面と発泡樹脂成形品の製品面との間に強制的にエアを注入し、発泡樹脂成形品の製品面と可動側金型との間には全面に亘り薄膜のエア層を強制的に設けることで発泡樹脂成形品の外観を均一に制御するように発泡樹脂成形品を成形する発泡樹脂成形品の発泡成形工程とからなることを特徴とする。
【0012】
ここで、本発明方法に使用される成形金型は、型締め、型開き方向に所定ストローク移動可能な可動側金型と、この可動側金型との間で所要形状の製品キャビティが形成できる固定側金型とから大略構成されている。そして、製品キャビティ内に発泡樹脂材料を射出機側から供給する樹脂供給通路が固定側金型に設けられている。更に、成形金型に設けられるエア注入機構として、製品キャビティ内にエアを注入する第1のエア注入管と第2のエア注入管が固定側金型に設けられている。第1のエア注入管は、製品キャビティ外周から製品キャビティ内に供給されるもので、発泡樹脂材料の注入前から製品キャビティ内に第1のエア注入管からエアが製品キャビティ内に注入され、可動側金型が微小ストローク後退動作する前まで第1のエア注入管から製品キャビティ内に所定圧のエアが注入される。一方、第2のエア注入管は、製品に孔部を形成する孔形成用ブロックや入子等にエア注入口を設け、このエア注入口を通じて可動側金型の型面と発泡樹脂成形品の製品面との間にエアを注入するが、この第2のエア注入管からのエアの注入タイミングは、可動側金型を微小ストローク後退操作する際に行なう。
【0013】
更に、製品キャビティの外周に沿ってシール部が設定され、このシール部は、昇圧された状態(エア圧:1.0MPa)でエア漏れがなく、0.5mm以上可動側金型が型開放された際、製品キャビティ内のエアが型外に排出され、製品キャビティ内のエア圧が0kgf/cm2 になるシール構造が採用されている。
【0014】
そして、本発明方法は、可動側金型と固定側金型とを型締めした後、両金型間で形成される製品キャビティ内に第1のエア注入管を通じてエアを注入し、製品キャビティ内にエア圧を加えた状態で樹脂供給通路を経て発泡樹脂材料を射出充填する発泡樹脂材料の射出充填工程と、製品キャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填した後も第1のエア注入管からエアを製品キャビティ内に注入し続け、製品キャビティ内のエア圧を0.3〜1.0MPaでキープするエア圧調整工程と、その後、可動側金型を型開方向に0.5mm以上型開操作させて、発泡スペースを確保しながら製品キャビティ外周に設けたシール部よりエアを外部に排出する一方、第2のエア注入管から可動側金型の型面と発泡樹脂成形品との間に瞬間的にエアを注入し、発泡樹脂成形品の製品面と可動側金型の型面との間に薄膜のエア層を意識的に形成することにより、外観性能を均一に維持した発泡樹脂成形品を所要形状に成形する発泡成形工程とから構成されている。
【0015】
以上の構成から明らかなように、本発明方法においては、製品キャビティ内に発泡樹脂材料を射出充填した後、製品キャビティ内のエア圧を0.3〜1.0MPaでキープするとともに、その後、可動側金型を型開操作しながら製品キャビティ外周のシール部からエアを外部に排出する一方、第2のエア注入管から可動側金型の型面と発泡樹脂成形品の製品面との間に薄膜のエア層を形成することで、局部的なエア残りを確実に解消し、外観性能を均一に制御することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した通り、本発明に係る発泡樹脂成形品の成形方法は、可動側金型と固定側金型とで画成される製品キャビティ内に第1のエア注入管を通じてエアを注入した後、発泡樹脂材料を射出充填し、充填後についても、第1のエア注入管を通じてエアの注入を継続し、エア圧を0.3〜1.0MPaでキープし、次いで、可動側金型を型開方向に可動させながら製品キャビティ外周に沿って設けたシール部よりエアを外部に排出する一方、第2のエア注入管から可動側金型の型面と発泡樹脂成形品の製品面との間にエアを注入することで薄膜のエア層を意識的に形成し、製品外観を均一に制御しながら発泡樹脂材料の発泡反応を行なわせるというものであるから、発泡前の製品キャビティ内のエア圧のバラツキをなくし、しかも、従来の排出管を廃止することで、排出管に対する遠隔部分でのエア残りを解消できる。従って、エア溜まりによる外観不良を有効に解決することができ、外観性能を向上させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明方法を適用して成形したドアトリムロアを備えた自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】本発明方法に使用する成形金型の一実施例の構成を示す全体図である。
【図4】本発明方法における製品キャビティ内へのエア注入時の状態を示す説明図である。
【図5】本発明方法における製品キャビティ内への発泡樹脂材料の射出充填工程を示す説明図である。
【図6】本発明方法におけるエア圧調整工程を示す説明図である。
【図7】本発明方法における可動側金型の型開操作による発泡反応工程を示す説明図である。
【図8】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図9】従来のドアトリムを成形する成形方法に使用する成形金型を示す全体図である。
【図10】従来のドアトリムの成形方法における発泡樹脂材料の射出充填工程を示す説明図である。
【図11】従来のドアトリムの成形方法におけるエアの排出工程を示す説明図である。
【図12】従来のドアトリムの成形方法における発泡反応工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る発泡樹脂成形品の成形方法の具体的な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0019】
図1乃至図7は本発明の一実施例を示すもので、図1,図2は本発明方法により成形したドアトリムを示す正面図並びに断面図、図3は本発明方法に使用する成形金型の概略構成を示す説明図、図4乃至図7は本発明方法の各工程を示す説明図である。
【0020】
図1,図2において、自動車用ドアトリム10は、ドアトリムアッパー(発泡樹脂成形品)20とドアトリムロア30の上下二分割体から構成されている。上記ドアトリムアッパー20にはインサイドハンドルユニット11、また、乗員が肘を載せるアームレスト部にはプルハンドル12やパワーウインドウスイッチフィニッシャー13が取り付けられている。一方、ドアトリムロア30には備品を収容できるポケット開口14が開設されているとともに、そのフロント側にスピーカグリル15がドアトリムロア30と一体、または別体に設けられている。
【0021】
更に、詳しくは、上記ドアトリムアッパー20及びドアトリムロア30の構成について説明すると、ドアトリムアッパー20は本発明では所要形状に射出成形された発泡樹脂成形品が使用されており、合成樹脂中に発泡剤が混入された発泡樹脂材料を素材としている。使用できる合成樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等があり、この合成樹脂に対して、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤あるいは重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤を混入したものを使用している。
【0022】
一方、ドアトリムロア30は、射出成形工法、モールドプレス成形工法により量産できる合成樹脂成形品が使用されており、素材としての合成樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等から適宜選択されて良く、また、所望により合成樹脂にタルク、クレイ、木粉等のフィラーを混入しても良い。
【0023】
そして、図1,図2に示すドアトリム10は、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との外観上のアクセント効果により、良好な製品外観が得られ、成形金型のコンパクト化を図るとともに、特に、ドアトリムアッパー20を発泡樹脂成形品から構成することで軽量化にも大きく貢献できる。
【0024】
ところで、上記ドアトリムアッパー20は、軽量化に貢献できることに加えて、良好な外観性能が確保されている。以下、ドアトリムアッパー20の成形方法に使用する成形金型40の構成について図3を基に説明する。
【0025】
本発明方法に使用する成形金型40は、可動側金型50と固定側金型60とから大略構成されている。上記可動側金型50は、プレス機51により所定ストローク上下動作を行ない、固定側金型60に対する型締め、型開きが行なわれる。一方、固定側金型60には、発泡樹脂材料を供給するための樹脂供給通路61が設けられており、図示しない射出機に接続されて、製品キャビティC内に発泡樹脂材料Mが供給される。更に、可動側金型50と固定側金型60とが型締めされてドアトリムアッパー20の製品形状に合致する製品キャビティCが画成されるが、この製品キャビティC内にエアを注入するためのエア注入機構70として2系統のエア注入が行なわれることが本発明方法の特徴である。そのために、エア注入機構70は、第1のエア注入管71が製品キャビティCの外周部から製品キャビティC内に供給されるように設定されているとともに、第2のエア注入管72は以下のように配管されている。すなわち、第2のエア注入管72は、固定側金型60に内装される一方、ドアトリムアッパー20にインサイドハンドルユニット11を取り付けるための孔部を形成する孔形成用ブロック62が固定側金型60の型面から相手側に向けて製品キャビティC内に臨むように突設され、第2のエア注入管72は、この孔形成用ブロック62の上面に注入口72aが設定されている。そして、第1のエア注入管71及び第2のエア注入管72は外部のエアタンク73にそれぞれ分岐管74,75を通じて接続しており、各分岐管74,75には、それぞれ開閉バルブ76,77が設けられている。
【0026】
また、製品キャビティCの外周に沿うシール部80は、可動側金型50に外周溝81、固定側金型60には外周凸条82が対応するように設けられ、外周溝81内に中空ゴム等のシール部材83が介挿されており、シール部80の構成としては、可動側金型50が下死点に到達した際の型締め状態においては良好なシール機能が達成でき、エアタイト状態が維持されるとともに、ドアトリムアッパー20の発泡反応時においては、可動側金型50が型開方向に5mm以上型開操作されれば、エアが型外に排出され、キャビティ内のエア圧が0kgf/cm2 になるように調整されている。
【0027】
次いで、上記成形金型40を使用してドアトリムアッパー20を成形する各工程について詳細に説明する。その前に、成形金型40の動作について簡単に説明する。まず、可動側金型50が下死点まで下降して、可動側金型50と固定側金型60との型締めが行なわれ、次いで、発泡樹脂材料Mが射出充填される。その後、可動側金型50が型開操作され、発泡スペースが確保されて発泡成形が行なわれる。そして、本発明方法では、成形金型40の型締めとほぼ同時に製品キャビティC内に第1のエア注入管71を通じて製品キャビティC内にエアの注入が開始され、この第1のエア注入管71を使用したエアの注入は、発泡樹脂材料Mの冷却工程前まで継続される。従って、製品キャビティC内は常にエア圧が加わった状態に維持されるとともに、常時エアが注入され続けているため、エアの流れが常にあり、外周へのエアの流れもスムーズになるという利点がある。
【0028】
また、可動側金型50は、発泡樹脂材料Mを射出充填した後、所定ストローク型開操作が行なわれるが、その際、第2のエア注入管72を通じて可動側金型50の型面とドアトリムアッパー20の製品面との間に瞬間的にエアが注入され、ドアトリムアッパー20の製品表面側に薄膜のエア層Aが形成される状態で成形が行なわれるため、外観性能が製品表面全面に亘りほぼ均一に制御される。
【0029】
このように、本発明方法によれば、第1のエア注入管71を通じてエアの流れを常に発生させ、外周へのエア流れを円滑にさせるとともに、第2のエア注入管72を通じて外観見栄えを均一に制御できるため、外観意匠性を良好に維持できる。
【0030】
次に、ドアトリムアッパー20を成形する各工程について順次説明する。まず、図4に示すように、可動側金型50は、プレス機51の駆動により、下死点まで下降して、固定側金型60に対して型締め状態となり、この状態でエア注入機構70は、外部のエアタンク73から分岐管74を通じて第1のエア注入管71から製品キャビティCの外周部を通じて製品キャビティC内にエアが注入され、製品キャビティC内のエア圧が適正値に調整される。尚、可動側金型50と固定側金型60とが型締め状態にある時、製品キャビティCの外周に設けられているシール部80のシール機能により、製品キャビティCから外部にエアが漏れることはない。
【0031】
そして、製品キャビティC内のエア圧を適正に保った状態で、図5に示すように、図示しない射出機から樹脂供給通路61を通じて発泡樹脂材料Mが製品キャビティC内に射出充填される。この実施例では、発泡樹脂材料Mとして、ポリプロピレン系樹脂にアゾジカルボンアミドからなる有機発泡剤を混入してなる発泡樹脂材料Mを使用している。ここで、製品キャビティC内へのエア注入は、継続的に行なわれているため、製品キャビティC内のエア圧が適正値に保たれており、発泡樹脂材料Mが製品キャビティC内に流動する際、カウンタープレッシャー作用により発泡反応を抑制した状態で発泡樹脂材料Mが製品キャビティCの隅々にまで隈なく充填される。
【0032】
次いで、図6に示すように、発泡樹脂材料Mが製品キャビティC内に射出充填された後においても、第1のエア注入管71を通じて、製品キャビティC内へのエア注入が継続されており、製品キャビティC内のエア圧は0.3〜1.0MPaをキープする。この時、エア圧が0.3MPa未満の場合にはエア残りが改善されず、逆に、エア圧が1.0MPaを超えた場合には圧が高過ぎるため発泡樹脂材料Mの流動性が悪化することが懸念される。従って、製品キャビティC内に発泡樹脂材料Mの射出充填を完了した直後においては、製品キャビティC内のエア圧を0.3〜1.0MPaで維持することにより、発泡ムラの発生を未然に防止できる。
【0033】
そして、図7に示すように、可動側金型50を本実施例では5mm以上上昇させるとともに、シール部80を通じてエアを外部に排出させる。この時、可動側金型50が型開操作を完了するまで製品キャビティC内へのエア注入が第1のエア注入管71を通じて継続して行なわれているため、常時エアの流れが確保され、シール部80を通じてエアが外部に排出される流れもスムーズなものとなる。
【0034】
加えて、この可動側金型50の型開操作に連動して、エア注入機構70においては、エアタンク73から分岐管75を通じて第2のエア注入管72からエアが製品キャビティC内に供給される。具体的には、第2のエア注入管72の注入口72aは、可動側金型50の型面とドアトリムアッパー20の製品面との間に注入され、図7は模式的に示しているが、可動側金型50とドアトリムアッパー20の製品面との間に薄膜のエア層Aが強制的に形成され、ドアトリムアッパー20の製品外観としては、表面全面に亘り均一な外観面が得られることになる。尚、本実施例では、第2のエア注入管72からエアを瞬間的に注入する際のエア圧は、0.1〜3.0MPaに調整されている。
【0035】
このように、本発明方法においては、可動側金型50を型開操作する前に製品キャビティC内のエア圧を0.3〜1.0MPaでキープすることと、可動側金型50を型開操作する際、金型外周に設けたシール部80を通じてエアを外部に排出する一方、第2のエア注入管72を通じて可動側金型50の型面とドアトリムアッパー20の製品面との間に薄膜のエア層Aを強制的に形成することで、エア溜まりを可及的に解消でき、外観性能を向上させることができる。尚、エア残りが改善される理由としては、図6に示すエア圧調整工程で製品キャビティC内のエア圧を0.3〜1.0MPaにキープすることで、エア圧のバラツキをなくすとともに、従来の排出管を廃止して、金型外周のシール部80を通じてエアを排出することで、排出管から遠隔する部分でのエア残りをなくすことにより常時エアの流れを形成できる一方、図8に示すように、第2のエア注入管72からエアを瞬間的に注入することで発泡樹脂成形品の製品外観の全面をほぼ均一に維持するためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明した実施例は、上下二分割構造のドアトリム10におけるドアトリムアッパー20の成形に本発明方法を適用したが、適用対象は、ドアトリムアッパー20に限定されることなく、発泡樹脂成形品全般に適用できる。また、本発明方法に使用するエア注入機構70として、固定側金型60に第1のエア注入管71、第2のエア注入管72を並設し、同一のエアタンク73から各エア注入管71,72を分岐接合する構成を採用したが、第2のエア注入管72を可動側金型50側に設けることもできる。
【符号の説明】
【0037】
10 自動車用ドアトリム
20 ドアトリムアッパー(発泡樹脂成形品)
30 ドアトリムロア(樹脂成形品)
40 成形金型
50 可動側金型
51 プレス機
60 固定側金型
61 樹脂供給通路
62 孔形成用ブロック
70 エア注入機構
71 第1のエア注入管
72 第2のエア注入管
73 エアタンク
74,75 分岐管
76,77 開閉バルブ
80 シール部
81 外周溝
82 外周凸条
83 シール部材
C 製品キャビティ
M 発泡樹脂材料
A 薄膜のエア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動側金型(50)と固定側金型(60)との間に画成される製品キャビティ(C)内に発泡樹脂材料(M)を射出充填した後、この発泡樹脂材料(M)を発泡させて所要形状に成形してなる発泡樹脂成形品(20)の成形方法において、
前記可動側金型(50)と固定側金型(60)を型締めした後、外部のエア供給機構から第1のエア注入管(71)を通じて製品キャビティ(C)内にエアを注入し、製品キャビティ(C)内にエア圧を加えた状態で製品キャビティ(C)内に発泡樹脂材料(M)を射出充填する発泡樹脂材料(M)の射出充填工程と、
発泡樹脂材料(M)を製品キャビティ(C)内に射出充填した後、製品キャビティ(C)内には、第1のエア注入管(71)を通じてエアが継続して注入され、製品キャビティ(C)内のエア圧を0.3〜1.0MPaにキープするエア圧調整工程と、
可動側金型(50)を微小ストローク型開操作するとともに、製品キャビティ(C)の外周からエアを型外に排出して製品キャビティ(C)内のエア圧を下げた状態で発泡反応を行なわせる一方、固定側金型(60)に設けた孔形成用ブロック(62)または入子の開口部(72a)を通じて第2のエア注入管(72)から可動側金型(50)の型面と発泡樹脂成形品(20)の製品面との間に強制的にエアを注入し、発泡樹脂成形品(20)の製品面と可動側金型(50)との間には全面に亘り薄膜のエア層(A)を強制的に設けることで発泡樹脂成形品(20)の外観を均一に制御するように発泡樹脂成形品(20)を成形する発泡樹脂成形品(20)の発泡成形工程と、
からなることを特徴とする発泡樹脂成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−274557(P2010−274557A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130195(P2009−130195)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】