説明

発泡粒子、発泡性組成物、及び、発泡成形体の製造方法

【課題】高温で加熱しても粒子の破裂及び収縮が生じにくく、高発泡倍率での発泡成形に用いることができる発泡粒子、及び、発泡性組成物を提供する。また、上記発泡粒子又は上記発泡性組成物を用いた発泡成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】共重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤を内包する発泡粒子であって、前記共重合体は、ニトリル系モノマーと、少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーとを含有するモノマー混合物を共重合することにより得られ、前記シェルの表面は、エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理されている発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温で加熱しても粒子の破裂及び収縮が生じにくく、高発泡倍率での発泡成形に用いることができる発泡粒子、及び、発泡性組成物に関する。また、本発明は、上記発泡粒子又は上記発泡性組成物を用いた発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック発泡体は、発泡体の素材と形成された気泡の状態に応じて遮熱性、断熱性、遮音性、吸音性、防振性、軽量化等を発現させることができることから、様々な用途で用いられている。プラスチック発泡体を製造する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂と発泡剤とを含有する樹脂組成物、マスターバッチ等を射出成形、押出成形等の成形方法を用いて成形し、成形時の加熱により発泡剤を発泡させる方法が挙げられる。
【0003】
プラスチック発泡体を製造する際には、例えば、化学発泡剤、熱膨張性の発泡粒子等が発泡剤として用いられる。
例えば、特許文献1には、少なくともエチレン−α−オレフィン共重合体と発泡剤とを、混練、成形して得られた発泡性ペレットが記載されており、発泡剤としてアゾ化合物、ヒドラジン誘導体、重炭酸塩等が挙げられている。特許文献1には、同文献に記載の発泡性ペレットを用いると、樹脂の種類を問わず高発泡倍率で射出発泡成形することができ、多様な硬度で均一な気泡の射出発泡成形体が得られることが記載されている。
【0004】
しかしながら、このような化学発泡剤を用いると、気泡の壁はマトリックス樹脂により形成されることとなり、壁の薄い部分が破裂して連続気泡が生じたり、壁の厚みにばらつきが生じたりすることがあるため、均一な独立気泡を有する発泡体を得ることは難しい。また、化学発泡剤が加熱分解して分解ガスが生じると、同時に発泡残渣が生じ、得られる発泡体の性能に影響を与えることがある。
【0005】
一方、発泡剤として用いられる熱膨張性の発泡粒子としては、例えば、熱可塑性シェルポリマーの中に、シェルポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤を内包して得られる粒子が挙げられる。例えば、特許文献2には、熱膨張性マイクロバルーンを含有するマスターバッチを用いることにより、均一で微細な粒径のセルを有し、物性の均一性や機械的特性に優れた熱可塑性エラストマー発泡体が得られることが記載されている。
【0006】
しかしながら、この方法によって得られる発泡粒子は、80〜130℃程度の比較的低温では揮発性膨張剤がガス状になることによって熱膨張できるものの、高温又は長時間加熱すると、膨張した発泡粒子からガスが抜けることによって発泡倍率が低下してしまう。また、発泡粒子の耐熱性又は強度が不充分であると、いわゆる「へたり」と呼ばれる現象が生じ、高温時に潰れてしまうことがある。そのため、このような発泡粒子を用いると、高温での成形工程を必要とする場合には高発泡倍率で成形を行うことは難しく、適用できる用途が限定されてしまうことが問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−178372号公報
【特許文献2】特開平11−343362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高温で加熱しても粒子の破裂及び収縮が生じにくく、高発泡倍率での発泡成形に用いることができる発泡粒子、及び、発泡性組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記発泡粒子又は上記発泡性組成物を用いた発泡成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、共重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤を内包する発泡粒子であって、前記共重合体は、ニトリル系モノマーと、少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーとを含有するモノマー混合物を共重合することにより得られ、前記シェルの表面は、エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理されている発泡粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、共重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤を内包する発泡粒子において、シェルを構成する共重合体を特定のモノマー混合物から得るとともに、シェルの表面をエポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理することにより、高温で加熱しても粒子の破裂及び収縮を生じにくく、高発泡倍率での発泡成形に用いることができる発泡粒子が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の発泡粒子は、共重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤を内包している。
このような構造を有することにより、本発明の発泡粒子をマトリックス樹脂に配合して成形すると、成形時の加熱により上記コア剤がガス状になるとともに上記シェルが軟化して膨張し、即ち、本発明の発泡粒子が発泡し、発泡成形体を製造することができる。
【0012】
上記シェルを構成する共重合体は、モノマー混合物を共重合することによって得られる。
上記モノマー混合物は、ニトリル系モノマーを含有する。
上記ニトリル系モノマーは特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマルニトリル、又は、これらの混合物等が挙げられる。これらのなかでは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが特に好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
上記モノマー混合物は、少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーを含有する。
上記少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーは、少なくとも1つの重合性不飽和結合とエポキシ基とを分子内に有していれば特に限定されないが、重合性不飽和結合を1つ又は2つ有するエポキシ基含有モノマーが好ましい。
【0014】
上記重合性不飽和結合を1つ有するエポキシ基含有モノマーは特に限定されず、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、フェノール型エポキシアクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、グリシジルメタクリレートが好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記重合性不飽和結合を2つ有するエポキシ基含有モノマーは特に限定されず、アリルアルコール型エポキシジアクリレート、1,6−へキサンジオール型エポキシジアクリレート、ビスフェノール型エポキシジアクリレート、フタル酸型エポキシジアクリレート、ポリプロピレングリコール型エポキシジアクリレート(n=1、3、11)、ポリエチレングリコール型エポキシジメタクリレート(n=1、2、9)等が挙げられる。これらのなかでは、ポリプロピレングリコール型エポキシジアクリレート(n=1、3、11)が好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
上記モノマー混合物中の上記少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーの含有量は特に限定されないが、上記ニトリル系モノマー100重量部に対する好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が30重量部である。上記少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーの含有量が0.5重量部未満であると、得られる発泡粒子をマトリックス樹脂に配合して成形する際、成形時に高温で加熱すると、粒子の破裂及び収縮が生じやすくなることがある。上記少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーの含有量が30重量部を超えると、得られる発泡粒子は、シェルのガスバリア性が低下し、発泡性能が低下することがある。上記少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーの含有量は、上記ニトリル系モノマー100重量部に対するより好ましい下限が1重量部、より好ましい上限が20重量部である。
【0017】
上記モノマー混合物は、上記ニトリル系モノマー、及び、上記少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーと共重合することのできる他のモノマー(以下、単に他のモノマーともいう)を含有してもよい。
上記他のモノマーは特に限定されず、得られる発泡粒子に必要とされる特性に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、分子量が200〜600のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記他のモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル類や、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類や、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン等のビニルモノマー等も挙げられる。
これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらのなかでは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸、イタコン酸が特に好ましい。
【0018】
上記モノマー混合物が上記他のモノマーを含有する場合、上記モノマー混合物中の上記他のモノマーの含有量は特に限定されないが、上記ニトリル系モノマー100重量部に対する好ましい上限が40重量部である。上記他のモノマーの含有量が40重量部を超えると、上記ニトリル系モノマー又は上記少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーの含有量が低下して、得られる発泡粒子を用いると高発泡倍率で発泡成形を行うことができないことがある。
【0019】
上記モノマー混合物は、金属カチオン塩を含有してもよい。
上記金属カチオンを含有することにより、例えば、メタクリル酸等の上記モノマー混合物中のカルボキシル基含有モノマーのカルボキシル基と、上記金属カチオンとがイオン架橋を形成し、得られる発泡粒子は、シェルの架橋効率が上がり、耐熱性が向上する。そのため、このような発泡粒子をマトリックス樹脂に配合して成形する際、成形時に高温で加熱しても粒子の破裂及び収縮が生じにくく、該粒子を用いて高発泡倍率で発泡成形を行うことができる。また、上記イオン架橋を形成することにより、得られる発泡粒子は、高温でもシェルの弾性率が低下しにくい。そのため、このような発泡粒子をマトリックス樹脂に配合して成形すると、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の成形方法を用いる場合でも粒子の破裂及び収縮が生じにくく、該粒子を用いて高発泡倍率で発泡成形を行うことができる。
【0020】
上記金属カチオン塩を形成する金属カチオンは、例えば、メタクリル酸等の上記モノマー混合物中のカルボキシル基含有モノマーのカルボキシル基とイオン架橋を形成することのできる金属カチオンであれば特に限定されず、例えば、Na、K、Li、Zn、Mg、Ca、Ba、Sr、Mn、Al、Ti、Ru、Fe、Ni、Cu、Cs、Sn、Cr、Pb等のイオンが挙げられる。これらのなかでは、2〜3価の金属カチオンであるCa、Zn、Alのイオンが好ましく、Znのイオンが特に好ましい。
また、上記金属カチオン塩は、上記金属カチオンの水酸化物であることが好ましい。これらの金属カチオン塩は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
上記金属カチオン塩を2種以上併用する場合、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンからなる塩と、上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属以外の金属カチオンからなる塩とを組み合わせて用いることが好ましい。上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンは、カルボキシル基等の官能基を活性化することができ、該カルボキシル基等の官能基と、上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属以外の金属カチオンとのイオン架橋形成を促進させることができる。
上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属は特に限定されず、例えば、Na、K、Li、Ca、Ba、Sr等が挙げられる。これらのなかでは、塩基性の強いNa、K等が好ましい。
【0022】
上記モノマー混合物が上記金属カチオン塩を含有する場合、上記モノマー混合物中の上記金属カチオン塩の含有量は特に限定されないが、上記ニトリル系モノマー100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記金属カチオン塩の含有量が0.1重量部未満であると、得られる発泡粒子の耐熱性を向上させる効果が充分に得られないことがある。上記金属カチオン塩の含有量が10重量部を超えると、得られる発泡粒子をマトリックス樹脂に配合して成形すると、得られる発泡成形体は発泡倍率が著しく低下することがある。
【0023】
上記モノマー組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
上記重合開始剤は特に限定されないが、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が挙げられる。
上記過酸化ジアルキルは特に限定されず、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0024】
上記過酸化ジアシルは特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等が挙げられる。
上記パーオキシエステルは特に限定されず、例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α,α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
上記パーオキシジカーボネートは特に限定されず、例えば、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピル−パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
上記アゾ化合物は特に限定されず、例えば、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。
【0025】
上記モノマー混合物は、更に、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シランカップリング剤、色剤等を含有していてもよい。
【0026】
上述のようなモノマー混合物を共重合することにより、本発明の発泡粒子のシェルを構成する共重合体を得ることができる。
上記共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は10万、好ましい上限は200万である。上記重量平均分子量が10万未満であると、得られる発泡粒子は、シェルの強度が低下し、該粒子を用いると高発泡倍率で発泡成形を行うことができないことがある。上記重量平均分子量が200万を超えると、得られる発泡粒子は、シェルの強度が高くなりすぎ、発泡性能が低下することがある。
【0027】
本発明の発泡粒子は、上記シェルの表面がエポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理がなされている。
従来、発泡成形体の製造に用いられる発泡粒子を成形時に高温で加熱すると、膨張した粒子からガスが抜けることによって発泡倍率が低下したり、いわゆる「へたり」と呼ばれる現象が生じて潰れたりすることがあり、高発泡倍率で発泡成形を行うことは難しかった。
【0028】
これに対し、本発明の発泡粒子は、上記シェルの表面が上記エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理がなされていることにより、マトリックス樹脂に配合して成形すると成形時の加熱により発泡し、同時に、上記シェルの表面に存在するエポキシ基と、上記シェルの表面に存在する上記エポキシ基と反応可能な硬化剤とが反応し、上記シェルの表面が硬化して発泡状態が固定される。これにより、本発明の発泡粒子は、成形時に高温で加熱しても粒子の破裂及び収縮が生じにくく、本発明の発泡粒子を用いて高発泡倍率で発泡成形を行うことができる。
なお、上記シェルを構成するモノマーとして上記少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーを用いることにより、上記シェルの表面にエポキシ基を存在させることができる。
【0029】
上記エポキシ基と反応可能な硬化剤は特に限定されず、例えば、アミン化合物、酸無水物、ノボラック系硬化剤等が挙げられる。
上記アミン化合物は特に限定されず、例えば、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン、及び、これらの変性物等が挙げられる。
上記脂肪族アミンは特に限定されず、例えば、エチレンジアミン及びその付加物、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン及びその変性物、N−アミノエチルピペラジン、ビス−アミノプロピルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−ヘキサメチレントリアミン、ジシアンジアミド、ジアセトアクリルアミド、各種変性脂肪族ポリアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等が挙げられる。
【0030】
上記脂環族アミンは特に限定されず、例えば、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0031】
上記芳香族アミンは特に限定されず、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、2,4’−トルイレンジアミン、m−トルイレンジアミン、o−トルイレンジアミン、メタキシリレンジアミン、キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0032】
また、上記アミン化合物として、3級アミン類、イミダゾール類、ヒドラジド類、アミドアミン、ケチミン、アミノポリアミド樹脂等のポリアミドアミン、エポキシ樹脂のアミノ付加物等のアミノ基含有プレポリマー、その他特殊アミン変性物等を用いてもよい。
上記3級アミン類は特に限定されず、例えば、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ−2エチルヘキサン塩、及び、これらの錯化合物等が挙げられる。
【0033】
上記イミダゾール類は特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−s−トリアジン、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロリド、1,3−ジベンジル−2−メチルイミダゾリウムクロリド、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4, 5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(シアノエトキシメチル)イミダゾール、2−メチルイミダゾールとトリアジンとの複合物、2−フェニルイミダゾールとトリアジンとの複合物等が挙げられる。
【0034】
上記ヒドラジド類は特に限定されず、例えば、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0035】
上記酸無水物は特に限定されず、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、クロレンド酸無水物等が挙げられる。
【0036】
上記ノボラック系硬化剤は特に限定されず、例えば、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック等が挙げられる。
【0037】
上記エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理する方法は特に限定されず、一般的な加熱攪拌方式で処理することができる。
【0038】
上記シェルの表面を上記エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理する際、上記エポキシ基と反応可能な硬化剤の添加量は特に限定されないが、上記少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーのエポキシ当量に対する理論硬化剤量に対して、好ましい下限が0.5倍量、好ましい上限が5倍量である。上記エポキシ基と反応可能な硬化剤の添加量が0.5倍量未満であると、得られる発泡粒子をマトリックス樹脂に配合して成形する際、成形時に高温で加熱すると、粒子の破裂及び収縮が生じやすくなることがある。上記エポキシ基と反応可能な硬化剤の添加量が5倍量を超えると、表面処理の段階で上記シェルの表面に存在するエポキシ基と、上記エポキシ基と反応可能な硬化剤との反応が進みすぎて、発泡粒子を発泡させる前に表面処理の段階で硬化してしまうことがある。
【0039】
本発明の発泡粒子は、コア剤として揮発性膨張剤を内包する。
本明細書中、揮発性膨張剤とは、本発明の発泡粒子のシェルを構成する共重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質をいう。
上記揮発性膨張剤は特に限定されないが、低沸点有機溶剤が好ましく、具体的には、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−へキサン、ヘプタン、石油エーテル等の低分子量炭化水素、CClF、CCl、CClF、CClF−CClF等のクロロフルオロカーボン、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシラン等のテトラアルキルシラン等が挙げられる。これらのなかでは、イソブタン、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、石油エーテル、又は、これらの混合物を用いることにより、発泡倍率が高く、速やかに発泡を開始する粒子とすることができる。これらの揮発性膨張剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状になる熱分解型化合物を用いてもよい。
【0040】
本発明の発泡粒子中の上記揮発性膨張剤の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は25重量%である。上記揮発性膨張剤の含有量が10重量%未満であると、得られる発泡粒子は、シェルが厚くなりすぎ、発泡性能が低下することがある。上記揮発性膨張剤の含有量が25重量%を超えると、得られる発泡粒子は、シェルの強度が低下し、該粒子を用いると高発泡倍率で発泡成形を行うことができないことがある。
【0041】
本発明の発泡粒子の最大発泡温度(Tmax)は特に限定されないが、好ましい下限が200℃である。上記最大発泡温度が200℃未満であると、発泡粒子は耐熱性が低くなり、成形時に高温で加熱すると、粒子の破裂及び収縮が生じやすくなることがある。また、上記最大発泡温度が200℃未満であると、発泡粒子を用いてマスターバッチペレットを製造する場合には、ペレット製造時の剪断力により発泡が生じてしまい、未発泡のマスターバッチペレットを安定して製造することができないことがある。上記発泡粒子の最大発泡温度は、より好ましい下限が210℃である。
なお、本明細書中、上記最大発泡温度は、発泡粒子を常温から加熱しながらその径を測定したときに、該粒子が最大変位量となったときの温度を意味する。
【0042】
本発明の発泡粒子の体積平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が10μm、好ましい上限が50μmである。上記体積平均粒子径が10μm未満であると、発泡粒子をマトリックス樹脂に配合して成形すると、得られる発泡成形体の気泡が小さすぎ、軽量化が不充分となることがある。上記体積平均粒子径が50μmを超えると、発泡粒子をマトリックス樹脂に配合して成形すると、得られる発泡成形体の気泡が大きくなりすぎ、強度等の面で問題となることがある。上記体積平均粒子径は、より好ましい下限が15μm、より好ましい上限が40μmである。
【0043】
本発明の発泡粒子を製造する方法は特に限定されず、例えば、水性分散媒体を調製する工程と、該水性分散媒体中に、上記モノマー混合物と上記揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を分散させる工程と、上記モノマー混合物を共重合させる工程とを行うことにより、共重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤を内包する粒子を得た後、該粒子のシェルの表面を上述のようにしてエポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理する工程を行う方法等が挙げられる。
【0044】
上記水性分散媒体を調製する工程では、例えば、重合反応容器に、水、分散安定剤、及び、必要に応じて補助安定剤を加えることにより、分散安定剤を含有する水性分散媒体を調製する。また、上記水性分散媒体には、必要に応じて、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、重クロム酸カリウム等を添加してもよい。
【0045】
上記分散安定剤は特に限定されず、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0046】
上記補助安定剤は特に限定されず、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物、水溶性窒素含有化合物、ポリエチレンオキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等が挙げられる。
上記水溶性窒素含有化合物は特に限定されず、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミン等が挙げられる。これらのなかでは、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0047】
上記分散安定剤と上記補助安定剤との組み合わせは特に限定されず、例えば、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせ、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組み合わせ、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせ等が挙げられる。これらのなかでは、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせが好ましく、該縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、ジエタノールアミンとアジピン酸との縮合生成物、ジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が特に好ましい。
【0048】
上記分散安定剤としてコロイダルシリカを用いる場合、コロイダルシリカの添加量は特に限定されず、目的とする発泡粒子の粒子径により適宜決定することができるが、全モノマー成分100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部、更に好ましい下限が2重量部、更に好ましい上限が10重量部である。
また、上記補助安定剤として上記縮合生成物又は上記水溶性窒素含有化合物を用いる場合、上記縮合生成物又は水溶性窒素含有化合物の添加量は特に限定されず、目的とする発泡粒子の粒子径により適宜決定することができるが、全モノマー成分100重量部に対する好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が2重量部である。
【0049】
上記水性分散媒体には、上記分散安定剤及び上記補助安定剤に加えて、更に、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加してもよい。このような無機塩を添加することで、より均一な粒子形状を有する発泡粒子を得ることができる。
上記無機塩の添加量は特に限定されないが、全モノマー成分100重量部に対する好ましい上限は100重量部である。
【0050】
上記水性分散媒体は、上記分散安定剤及び上記補助安定剤を脱イオン水に配合して調製され、上記脱イオン水のpHは、使用する分散安定剤及び補助安定剤の種類によって適宜決定することができる。例えば、上記分散安定剤としてコロイダルシリカ等のシリカを用いる場合には、必要に応じて塩酸等の酸を加えて系のpHを3〜4に調整し、後述する工程において酸性条件下で重合が行われる。また、上記分散安定剤として水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムを用いる場合には、系をアルカリ性に調整し、後述する工程においてアルカリ性条件下で重合が行われる。
【0051】
本発明の発泡粒子を製造する方法では、次いで、上記水性分散媒体中に、上記モノマー混合物と上記揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を分散させる工程を行う。
上記水性分散媒体中に、上記モノマー混合物と上記揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を分散させる工程では、上記モノマー混合物と上記揮発性膨張剤とを別々に上記水性分散媒体に添加して、該水性分散媒体中で油性混合液を調製してもよいが、通常は、予め両者を混合して油性混合液としてから、上記水性分散媒体に添加する。この際、油性混合液と水性分散媒体とを予め別々の容器で調製しておき、別の容器で攪拌しながら混合することにより油性混合液を水性分散媒体に分散させた後、重合反応容器に添加しても良い。
なお、上記モノマー混合物中のモノマーを重合するために重合開始剤が用いられるが、上記重合開始剤は、予め油性混合液に添加してもよく、水性分散媒体と油性混合液とを重合反応容器内で攪拌混合した後に添加してもよい。
【0052】
上記油性混合液を水性分散媒体中に所定の粒子径で乳化分散させる方法は特に限定されず、例えば、ホモミキサー(例えば、特殊機化工業社製)等により攪拌する方法、ラインミキサー、エレメント式静止型分散器等の静止型分散装置を通過させる方法等が挙げられる。
なお、上記静止型分散装置には上記水性分散媒体と上記油性混合液とを別々に供給してもよく、予め混合、攪拌した分散液を供給してもよい。
【0053】
本発明の発泡粒子を製造する方法では、次いで、上記モノマー混合物を共重合させる工程を行う。上記共重合する方法は特に限定されず、例えば、加熱することにより上記モノマー混合物を共重合させる方法が挙げられる。
このようにして得られた共重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤を内包する粒子は、続いて該粒子のシェルの表面をエポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理する工程を行う前に、脱水する工程、乾燥する工程等を経てもよい。
【0054】
本発明の発泡粒子を製造する方法では、次いで、上記発泡粒子のシェルの表面をエポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理する工程を行う。
上記エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理する方法は特に限定されず、例えば、上述したように、一般的な加熱攪拌方式で処理することができる。
【0055】
本発明の発泡粒子は、上記シェルの表面が上記エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理されているが、上記エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理は行われていない発泡粒子と、上記エポキシ基と反応可能な硬化剤とを含有する発泡性組成物であっても、本発明の発泡粒子と同様の効果を得ることができる。
発泡粒子と、エポキシ基と反応可能な硬化剤とを含有する発泡性組成物であって、前記発泡粒子は、共重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤を内包しており、前記共重合体は、ニトリル系モノマーと、少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーとを含有するモノマー混合物を共重合することにより得られる発泡性組成物もまた、本発明の1つである。
【0056】
本発明の発泡粒子、及び、発泡性組成物の用途は特に限定されず、例えば、マトリックス樹脂に配合して射出成形、押出成形等の成形方法を用いて成形することにより、遮熱性、断熱性、遮音性、吸音性、防振性、軽量化等を備えた発泡成形体を製造するために用いることができる。本発明の発泡粒子、及び、発泡性組成物は、高温で加熱しても粒子の破裂及び収縮が生じにくいことから、製造時に高温での成形工程等を必要とする場合であっても、本発明の発泡粒子、及び、発泡性組成物を用いて、高発泡倍率で発泡成形を行うことができる。
【0057】
本発明の発泡粒子又は本発明の発泡性組成物と、マトリックス樹脂とを含有する発泡成形用樹脂組成物を作製する工程と、前記発泡成形用樹脂組成物を成形する工程とを有する発泡成形体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0058】
上記マトリックス樹脂は特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレン等の一般的な熱可塑性樹脂や、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチックや、エチレン系、塩化ビニル系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
上記発泡成形用樹脂組成物を成形する方法は特に限定されず、例えば、混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等が挙げられる。射出成形の場合、工法は特に限定されず、金型に上記発泡成形用樹脂組成物を一部入れて発泡させるショートショット法や、金型に上記発泡成形用樹脂組成物をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック法等が挙げられる。
【0060】
本発明の発泡成形体の製造方法を用いて得られた発泡成形体の用途は特に限定されず、例えば、ドアトリム、インストルメントパネル(インパネ)等の自動車内装材や、バンパー等の自動車外装材や、木粉プラスチック等の建材用途や、靴底や、人工コルク等が挙げられる。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、高温で加熱しても粒子の破裂及び収縮が生じにくく、高発泡倍率での発泡成形に用いることができる発泡粒子、及び、発泡性組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記発泡粒子又は上記発泡性組成物を用いた発泡成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0063】
(実施例1、比較例1)
重合反応容器に、水8Lと、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製)10重量部と、補助安定剤としてポリビニルピロリドン(BASF社製)0.3重量部と、1N塩酸0.7重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。次いで、表1に示した配合で油性混合液を調製し、この油性混合液を水性分散媒体に添加して、分散液を調製した。
得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合した後、窒素置換した加圧重合器(20L)内へ仕込み、加圧(0.2MPa)しながら、60℃で20時間反応させた。
【0064】
得られた反応生成物について、 用いた油性混合液中の少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーのエポキシ当量に対する理論硬化剤量に対して、エポキシ基と反応可能な硬化剤としてイソホロンジアミン1倍量を用いて、温度50℃で12時間反応させることにより、エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理を行った。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理された発泡粒子を得た。
【0065】
(評価)
実施例及び比較例で得られた発泡粒子について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0066】
(1)発泡倍率評価
発泡粒子を約0.1g秤量し、10mLのメスシリンダーに入れた。このメスシリンダーを160℃、180℃、200℃又は220℃に加熱したオーブンに5分間投入し、膨張した粒子のメスシリンダー内での容積を測定した。
膨張した粒子のメスシリンダー内での容積が2mL未満であった場合を「×」と、2mL以上5mL未満であった場合を「△」と、5mL以上8mL未満であった場合を「○」と、8mL以上であった場合を「◎」として評価した。
【0067】
(2)耐熱性評価
上記(1)の測定を行った後のサンプルを、220℃に加熱したオーブンに更に10分間投入し、膨張した粒子のメスシリンダー内での容積を測定した。
上記(1)の測定を行った直後の膨張した粒子のメスシリンダー内での容積をL、更に220℃で10分間処理した後の膨張した粒子のメスシリンダー内での容積をHとしたとき、H/Lが0.4未満であった場合を「×」と、0.4以上0.6未満であった場合を「△」と、0.6以上0.8未満であった場合を「○」と、0.8以上であった場合を「◎」として評価した。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、高温で加熱しても粒子の破裂及び収縮が生じにくく、高発泡倍率での発泡成形に用いることができる発泡粒子、及び、発泡性組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記発泡粒子又は上記発泡性組成物を用いた発泡成形体の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤を内包する発泡粒子であって、
前記共重合体は、ニトリル系モノマーと、少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーとを含有するモノマー混合物を共重合することにより得られ、
前記シェルの表面は、エポキシ基と反応可能な硬化剤で表面処理されている
ことを特徴とする発泡粒子。
【請求項2】
少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーは、グリシジルメタクリレートであることを特徴とする請求項1記載の発泡粒子。
【請求項3】
エポキシ基と反応可能な硬化剤は、アミン化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の発泡粒子。
【請求項4】
発泡粒子と、エポキシ基と反応可能な硬化剤とを含有する発泡性組成物であって、
前記発泡粒子は、共重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤を内包しており、
前記共重合体は、ニトリル系モノマーと、少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーとを含有するモノマー混合物を共重合することにより得られる
ことを特徴とする発泡性組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの重合性不飽和結合を有するエポキシ基含有モノマーは、グリシジルメタクリレートであることを特徴とする請求項4記載の発泡性組成物。
【請求項6】
エポキシ基と反応可能な硬化剤は、アミン化合物であることを特徴とする請求項4又は5記載の発泡性組成物。
【請求項7】
請求項1、2若しくは3記載の発泡粒子又は請求項4、5若しくは6記載の発泡性組成物と、マトリックス樹脂とを含有する発泡成形用樹脂組成物を作製する工程と、
前記発泡成形用樹脂組成物を成形する工程とを有する
ことを特徴とする発泡成形体の製造方法。

【公開番号】特開2011−63761(P2011−63761A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217309(P2009−217309)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】