説明

発熱定着ベルトとそれを用いた画像形成装置

【課題】長期に使用しても表面抵抗値、体積抵抗値の変動が少なく、発熱層の亀裂、破断を防止した発熱定着ベルト及びこの発熱定着ベルトを用いた画像形成装置の提供。
【解決手段】少なくとも発熱層と、弾性層と、離形層とが積層された発熱定着ベルトであって、前記発熱層の両端には一対の給電用電極を有し、前記発熱層は、ポリイミド樹脂で被覆されたカーボン繊維糸を使用した布から構成されていることを特徴とする発熱定着ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真等の静電潜像現像方式によって形成された乾式トナー像を、画像支持体上に熱定着するための発熱定着ベルトとそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やレーザービームプリンター等の画像形成装置では、トナー現像後、普通紙等の画像支持体上に転写された未定着トナー像を、熱ローラ方式で接触加熱定着する方法が多く用いられてきた。
【0003】
しかし、熱ローラ方式は定着可能な温度まで熱するのに時間がかかり、かつ多量の熱エネルギーを要する。電源投入からコピースタートまでの時間(ウォーミングアップタイム)短縮と、省エネルギーの観点から、近年は熱フィルム定着方式が主流になってきている。
【0004】
この熱フィルム定着方式の定着装置(定着器)では、ポリイミド等の耐熱性フィルムの外面にフッ素樹脂等の離型性層が積層されたシームレスの定着ベルトが用いられている。
【0005】
しかしながら、このような熱フィルム定着方式の定着装置では、例えばセラミックヒーターを介してフィルムが加熱され、そのフィルム表面でトナー像が定着されるため、フィルムの熱伝導性が重要である。しかし、定着ベルトフィルムを薄膜化して熱伝導性を改善しようとすると機械的強度が低下し、高速で回動させることが難しくなり高速で高画質画像を形成するには問題が生じ、かつ、セラミックヒーター等が破損しやすいという問題も出てくる。
【0006】
このような問題を解決するために、近年、定着ベルトそのものに発熱体を設けた定着ベルト(以下、発熱定着ベルトと言う)が検討されており、この発熱体に給電することにより定着ベルトを直接加熱し、トナー像を定着させる方式が提案されている。発熱定着ベルトを使用した画像形成装置は、ウォーミングアップ時間が短く、消費電力も熱フィルム定着方式より小さく、熱定着装置として、省エネルギー化と高速化などの面から優れており、これまでに検討されてきた。
【0007】
例えば、鉄、SUS、銅、コバルト、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、白金、銀、スズ、パラジウム等からなるフッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂で被覆された芯材を用いた3次元網目状構造体の発熱層を有する定着ベルトが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
カーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子が分散されるポリイミド樹脂からなる発熱層と、絶縁層と、離形層とを備える発熱定着ベルトが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
ポリイミド樹脂からなる絶縁層と、ポリイミド樹脂からなるマトリックス樹脂中にカーボンナノ材料とフィラメント状金属微粒子とが実質的に均一に分散されて存在している抵抗発熱体層と、離形層と、電極層とを有する発熱定着ベルトが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−343538号公報
【特許文献2】特開2007−272223号公報
【特許文献3】特開2009−109997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の発熱定着ベルトは、長時間の使用で、酸化が進み、抵抗が増大する。このため、所定の発熱量が得られなくなる問題点を有していることが判った。
【0012】
特許文献2に記載の発熱定着ベルトは、ポリイミド樹脂の加熱、冷却に伴い、樹脂の伸縮が起こり、抵抗が変化する。また、フィラーと樹脂の界面で亀裂や割れ発生し、当該部分は、定着が十分にできない問題点を有していることが判った。
【0013】
特許文献3に記載の発熱定着ベルトは、ポリイミド樹脂の加熱、冷却に伴い、樹脂の伸縮が起こり、抵抗が変化する。また、フィラーと樹脂の界面で亀裂や割れ発生し、当該部分は、定着が十分にできない問題点を有していることが判った。
【0014】
この様な状況から、長期に使用しても表面抵抗値、体積抵抗値の変動が少なく、発熱層の破断、亀裂を防止した発熱定着ベルト及びこの発熱定着ベルトを用いた画像形成装置の開発が望まれている。
【0015】
本発明は上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は長期に使用しても表面抵抗値、体積抵抗値の変動が少なく、発熱層の亀裂、破断を防止した発熱定着ベルト及びこの発熱定着ベルトを用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、下記の技術態様により達成される。
【0017】
1.発熱層、弾性層および離形層を内側からこの順に含む円筒形の発熱定着ベルトであって、
前記発熱層は、カーボン繊維糸を使用したカーボン繊維糸布およびポリイミド樹脂を含み、
前記発熱層の両端に、前記カーボン繊維糸布に接する状態に、発熱層に給電する一対の電極を有することを特徴とする発熱定着ベルト。
【0018】
2.前記発熱層における弾性層側が前記ポリイミド樹脂によって覆われていることを特徴とする前記1に記載の発熱定着ベルト。
【0019】
3.前記発熱層の両側が、前記ポリイミド樹脂によって覆われていることを特徴とする前記1または2に記載の発熱定着ベルト。
【0020】
4.前記カーボン繊維糸の太さが、66texから800texであることを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の発熱定着ベルト。
【0021】
5.前記カーボン繊維糸布が、たて糸密度及びよこ糸密度が、7.5本/25mmから22.5本/25mm、の織物であることを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の発熱定着ベルト。
【0022】
6.前記1から5の何れか1項に記載の発熱定着ベルトを用いていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0023】
長期に使用しても表面抵抗値、体積抵抗値の変動が少なく、発熱層の亀裂、破断を防止した発熱定着ベルト及びこの発熱定着ベルトを用いた画像形成装置を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置に使用している定着装置の拡大概略図である。
【図3】図1に示す発熱定着ベルトの拡大概略図である。
【図4】図3に示される構成を有する発熱定着ベルトの概略製造フロー図である。
【図5】円柱状の芯金に装着されたカーボン繊維糸を使用して作製された布の周面にポリイミド樹脂前駆体を塗布し、ポリイミド樹脂で被覆した布を製造する製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者は、長期に使用したときに、表面抵抗値、体積抵抗値の変動や、亀裂、破断が何故、経時で発生するのか検討した結果、次のことが判った。
【0026】
長期に使用し、定着ムラの発生したベルトを解析すると、発熱層の亀裂、破断が観察された。当該亀裂、破断部分は電流が流れず、発熱しないため、定着ムラになると推定した。すなわち不連続なフィラーの存在が、亀裂、破断を引き起こしているといえる。
【0027】
そこで、その不連続なフィラーを連続させるために耐酸化性が高く、連続した状態を実現するために、発熱素子の検討を行った。その結果、発熱素子としてカーボン繊維糸を使用した布を用いると課題が解決できることを見出した。
【0028】
本発明の実施の形態を図を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
図1は、電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。本図はフルカラー画像形成装置の場合を示している。
【0030】
図中、1はフルカラー画像形成装置を示す。フルカラー画像形成装置1は、複数組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体形成ユニット7と、記録媒体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としてのベルト式定着装置24とを有する。フルカラー画像形成装置1の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0031】
各感光体1Y、1M、1C、1Kに形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Y、感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像剤担持体4Y1を有する現像手段4Y、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、クリーニング手段6Yを有する。
【0032】
又、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像剤担持体4M1を有する現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラー5M、クリーニング手段6Mを有する。
【0033】
又、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像剤担持体4C1を有する現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラー5C、クリーニング手段6Cを有する。
【0034】
又、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成ユニット10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像剤担持体4K1を有する現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラー5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0035】
無端ベルト状中間転写体形成ユニット7は、複数のローラーにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体として無端の中間転写ベルト70を有する。
【0036】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端の中間転写ベルト70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体として用紙等の記録媒体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5Aに搬送され、記録媒体P上にカラー画像が一括転写される。
【0037】
カラー画像が転写された記録媒体Pは、環状の発熱定着ベルト24aが装着された定着装置24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0038】
一方、二次転写ローラー5Aにより記録媒体Pにカラー画像を転写した後、記録媒体Pを曲率分離した無端の中間転写ベルト70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0039】
画像形成処理中、一次転写ローラー5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラー5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0040】
二次転写ローラー5Aは、ここを記録媒体Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端の中間転写ベルト70に圧接する。
【0041】
又、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。筐体8は、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とを有する。
【0042】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体形成ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体形成ユニット7は、ローラー71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端の中間転写ベルト70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとを有している。
【0043】
筐体8の引き出し操作により、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
【0044】
この様に感光体1Y、1M、1C、1Kの外周面上を帯電、露光し外周面上に潜像を形成した後、現像によりトナー像(顕像)を形成し、無端の中間転写ベルト70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録媒体Pに転写し、ベルト式定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。本発明で像形成時とは潜像形成、トナー像(顕像)を記録媒体Pに転写し最終画像を形成することを含む。
【0045】
トナー像を記録媒体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、各感光体1Y、1M、1C、1Kに配設されたクリーニング手段6Y、6M、6C、6Kで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
【0046】
上記カラー画像形成装置では、中間転写体をクリーニングするクリーニング手段6Aのクリーニング部材として、弾性ブレードを用いる。又、各感光体に脂肪酸金属塩を塗布する手段(11Y、11M、11C、11K)を設けている。脂肪酸金属塩としては、トナーで用いたと同じものを用いることが出来る。
【0047】
本発明は、本図に示される定着装置24に使用されている環状の発熱定着ベルト24aに関するものである。
【0048】
図2は図1に示す画像形成装置に使用している定着装置の拡大概略図である。図2(a)は図1に示す画像形成装置に使用している定着装置の拡大概略斜視図である。図2(b)は図2(a)に示すA−A′に沿った概略断面図である。
【0049】
図中、24は定着装置を示す。定着装置24は環状の発熱定着ベルト24aと、定着ローラー24bと、環状の発熱定着ベルト24aを圧接しながら回動する加圧ローラー24cとを有している。
【0050】
定着ローラー24bが駆動ローラーとなっており、定着ローラー24bの回転(図中の矢印方向)に伴い、環状の発熱定着ベルト24aは矢印方向に巻回する様になっている。
【0051】
環状の発熱定着ベルト24aを介して定着ローラー24bと加圧ローラー24cとの間に定着ニップ部Nを形成する様になっている。定着ニップ部Nで、トナー像(顕像)が転写された記録媒体P(図1参照)を挟み込み、環状の発熱定着ベルト24aによりトナー像(顕像)を溶融定着し最終画像を形成する様になっている。
【0052】
環状の発熱定着ベルト24aの定着ローラー24bと接触する側が発熱層24a3(図3参照)、加圧ローラー24cと接触する側が離形層24a7(図3参照)となっている。
【0053】
24a1は発熱定着ベルト24aの端に設けられた給電用電極を示し、24a2は発熱定着ベルト24aの他の端に設けられた給電用電極を示し、給電用電極24a1と給電用電極24a2とで一対となっている。
【0054】
24d1は給電用電極24a1に接触し、発熱定着ベルト24aに給電する給電部材を示す。24d2は給電用電極24a2に接触し、発熱定着ベルト24aに給電する給電部材を示す。給電部材を配設する位置は、環状の発熱定着ベルト24aの温度、定着安定性等を考慮し、給電用電極24a1と給電部材24d1との接触を安定にするため、給電用電極24a1が定着ローラー24bと接触している位置で、且つ定着ニップ部Nの近傍が好ましい。
【0055】
給電部材は給電用電極に均一に接触させるため、給電用電極に押圧手段(例えばバネ)で押圧して接触させることが好ましい。
【0056】
図3は図1に示す発熱定着ベルトの拡大概略図である。図3(a)は図1に示す発熱定着ベルトの拡大概略平面図である。図3(b)は図3(a)のB−B′に沿った概略拡大断面図である。図3(c)は図3(b)のYで示される部分の拡大概略図である。
【0057】
図中、24aは環状の発熱定着ベルトを示す。環状の発熱定着ベルト24aは両端部に給電用電極24a1、24a2を有する発熱層24a3と、給電用電極24a1、24a2を除きプライマー層24a4を介して弾性層24a5と、プライマー層24a6を介して離形層24a7とを有する構成を有している。弾性層24a5、プライマー層24a4、24a6は、必要に応じて設けることが可能である。
【0058】
本図では、発熱層24a3の弾性層24a5が積層されている側と反対側の面が定着ローラー24b(図2参照)と接触し、離形層24a7の弾性層24a5と接触している面と反対側の面が加圧ローラー24c(図2参照)と接触する様になっている。
【0059】
発熱層24a3は、図3(c)に示されるように、カーボン繊維糸の布24a31と、布(カーボン繊維糸布)24a31を被覆するポリイミド樹脂24a32とを有している。
【0060】
発熱層24a3の給電極間24a1、24a2の抵抗は、7Ωから50Ωが望ましい。
【0061】
発熱層24a3を構成している布24a31は、カーボン繊維糸よりできており、カーボン繊維糸布24a31としては織物、編物の何れでもよいが、伸縮の少ない点から織物の方が好ましい。
【0062】
給電用電極24a1、24a2の形成方法は特に限定されず、例えば導電性テープを貼合する方法でもよい。
【0063】
Eは発熱層の厚さを示す。厚さEは、柔軟性、熱容量等を考慮し、50μmから600μmが好ましい。厚さEは、断面を反射型光学顕微鏡で測定した値を示す。
【0064】
E1、E2は布24a31を被覆するポリイミド樹脂24a32の被覆部分の厚さを示す。厚さE1、E2は、強度を考慮し、50μmから300μmが好ましい。厚さE1、E2は、断面を反射型光学顕微鏡で測定した値を示す。
【0065】
Fは弾性層24a5の厚さを示す。厚さFは画質、熱容量等を考慮し、50μmから500μmが好ましい。厚さFは、断面を反射型光学顕微鏡で測定した値を示す。
【0066】
Gは離形層24a7の厚さを示す。厚さGは、熱伝達性、可撓性、耐久性等を考慮し、1μmから10μmが好ましく、1μmから5μmがより好ましい。厚さは、渦電流式膜厚計((株)フィッシャー・インストルメンツ製)により測定した値を示す。
【0067】
プライマー層24a4、24a6の厚みは2μmから5μmであることが好ましい。
【0068】
発熱定着ベルト24aの幅、直径は画像形成装置の仕様に応じて適宜決めることが可能である。
【0069】
次ぎに図1から図3に示される発熱定着ベルトの製造方法に付き説明する。
【0070】
図4は図3に示される構成を有する発熱定着ベルトの概略製造フロー図である。
【0071】
発熱定着ベルト24aは、発熱層形成工程、弾性層形成工程、離形層形成工程を経て製造することが可能である。
【0072】
発熱層形成工程
発熱層形成工程は、布準備工程と、ポリイミド樹脂被覆工程と、給電用電極形成工程とを有する。
【0073】
布準備工程
布準備工程では織機又は編み機を使用し、発熱層を構成しているカーボン繊維糸を使用した環状の布が準備される。環状の布は、織物又は編物であってもよく、必要に応じて選択することが可能である。
【0074】
環状の織物は一般に使用されている環状織機で直接に製造してもよいし、一般的に使用されている織機で平らな織布を作製した後、接合し環状にしてもよい。環状の編物は一般に使用されている円編み機で製造することが可能である。
【0075】
ポリイミド樹脂被覆工程
ポリイミド樹脂被覆工程では、布準備工程で準備された布を環状の布の直径に合わせた芯金に装着した状態で、塗布機を使用しポリイミド樹脂被覆用塗布液(以下、ポリイミド樹脂前駆体塗布液とも言う)を布の周面に塗布し、加熱処理することで、布がポリイミド樹脂で被覆された発熱層が形成される。ポリイミド樹脂被覆工程に関しては図5で説明する。
【0076】
給電用電極形成工程
給電用電極形成工程では、テープ貼合機を使用し、ポリイミド樹脂被覆工程で準備された発熱層の両端に導電性テープを貼合することで給電用電極が形成される。
【0077】
弾性層形成工程
弾性層形成工程では、塗布工程と乾燥工程とを有し、塗布工程で塗布機を使用し給電用電極形成工程で形成された給電用電極部分を除いて、発熱層の上に弾性層形成用塗布液を塗布した後、乾燥工程で乾燥することで発熱層の上に弾性層が形成される。弾性層形成用塗布液の塗布は、ポリイミド樹脂前駆体塗布液の塗布と同じ方法で可能である。弾性層形成用塗布液を塗布する前に発熱層との接着性を上げるためプライマー層を形成してもよい。
【0078】
離形層形成工程
離形層形成工程では、塗布工程と乾燥工程とを有し、塗布工程で塗布機を使用し弾性層形成工程で形成された弾性層の上に離形層形成用塗布液を塗布した後、乾燥工程で乾燥した後、芯金を抜き取ることで発熱層/弾性層/離形層が形成され環状の発熱定着ベルトが製造される。離形層形成用塗布液の塗布は、ポリイミド樹脂前駆体塗布液の塗布と同じ方法で可能である。離形層形成用塗布液を塗布する前に弾性層との接着性を上げるためプライマー層を形成してもよい。
【0079】
図5は、円柱状の芯金に装着されたカーボン繊維糸を使用して作製された織布の周面にポリイミド樹脂前駆体を塗布し、ポリイミド樹脂で被覆した織布を製造する製造装置の概略図である。図5(a)は円柱状の芯金に装着されたカーボン繊維糸を使用して作製された織布の周面にポリイミド樹脂前駆体を塗布し、ポリイミド樹脂で被覆した織布を製造する製造装置の概略斜視図である。図5(b)は図5(a)に示される製造装置の概略正面図である。
【0080】
図中、9は製造装置を示す。製造装置9は保持装置9aと塗布装置9bと加熱装置9cとを有している。保持装置9aは第1保持台9a1と、第2保持台9a2と、駆動用モーター9a3とを有している。駆動用モーター9a3は第1保持台9a1上に配設されており、円柱状の芯金9dの保持部材9d1と接続部材を介して駆動用モーター9a3の回転軸に接続されている。第2保持台9a2には円柱状の芯金9dの他方の保持部材9d2を受ける受け部9a21が配設されており、これにより、駆動用モーター9a3の回転により円柱状の芯金9dを回転及び停止が可能に保持することが可能となっている。
【0081】
塗布装置9bは、塗布手段9b1と、駆動部9b2とを有している。9b11は塗布手段9b1にポリイミド樹脂前駆体塗布液を供給する塗布液供給管を示す。塗布手段9b1は取り付け部材9b12によりガイドレール9b4に円柱状の芯金9dの回転軸に沿って平行に移動可能に取り付けられている。塗布手段9b1としては、ノズルが挙げられる。ノズルのポリイミド樹脂前駆体塗布液の吐出口の形状は特に限定はなく、例えば、円形、長方形等が挙げられる。ノズルのポリイミド樹脂前駆体塗布液の吐出口と円柱状の芯金9dの周面までの距離は、塗布液の粘度、膜厚等を考慮し、1mmから100mmが好ましい。本図では塗布手段9b1へのポリイミド樹脂前駆体塗布液供給部、制御部は省略してある。
【0082】
駆動部9b2はモーター9b21とガイドレール取り付け板9b3とを有している。ガイドレール取り付け板9b3には、取り付け部材9b12を取り付け、保持装置9aに保持された円柱状の芯金9dの回転軸と平行に塗布手段9b1を往復移動させるための2本のガイドレール9b4が配設されている。
【0083】
モーター9b21は、取り付け部材9b12の上に取り付けられたスライド用ネジ9b13と螺合し、取り付け部材9b12を保持装置9aに保持された円柱状の芯金9dの幅よりも長く移動させる長さの雌ネジ9b22を有している。
【0084】
モーター9b21を駆動させることで、スライド用ネジ9b13の回転に伴い、取り付け部材9b12に取り付けられた塗布手段9b1が円柱状の芯金9dの回転軸と平行に往復移動することが可能となっている。
【0085】
加熱装置9cは、円柱状の芯金9dに装着された織布に塗布されたポリイミド樹脂前駆体塗膜を加熱しポリイミド樹脂にさせるために円柱状の芯金9dの下に配設されている。加熱装置9cの熱源としては、例えば赤外線ランプ、ニクロム線、熱風等の熱源が挙げられる。
【0086】
本図に示す製造装置では、円筒状の芯金に装着された織布に塗布されたポリイミド樹脂前駆体塗膜のイミド化を1つの製造装置に組み込んだ場合を示したが、保持装置9aを可動式として別工程で加熱処理を行う方式であってもよい。円筒状の芯金を内部から加熱する方式も可能である。
【0087】
本図は円柱状の芯金を使用した場合を示しているが円筒状の芯金であってもよく、適宜選択することが可能である。
【0088】
本図に示す製造装置9を使用し、芯金に装着された織布をポリイミド樹脂で被覆し、環状の発熱定着ベルト24a(図2参照)を構成する発熱層24a3(図3参照)を製造するステップの概要を以下に示す。
【0089】
ステップ1.
カーボン繊維糸の織布の直径に合わせて準備した円柱状の芯金に、織布を装着する。
【0090】
ステップ2.
保持装置9aに織布を装着した芯金9dを保持し、芯金9dを回転させた状態で、塗布手段9b1としてのノズルを芯金9dの回転軸に平行に、回転軸方向に移動させながら、芯金9dに装着した織布の端部から端部の周面上にポリイミド樹脂前駆体塗布液をノズルより吐出し、織布の周面に塗布し塗膜を形成する。
【0091】
塗布は必要に応じてノズルを芯金9dの回転軸に平行に、回転軸方向に往復に移動させて繰り返し塗布することも可能である。
【0092】
ステップ3.
必要とする厚さとなるポリイミド樹脂前駆体塗布液を織布の周面に塗布した後、芯金9dを回転させながら加熱処理を行い、イミド化することでポリイミド樹脂で被覆した発熱定着ベルトを構成している発熱層が形成される。この後、発熱層の両端の周面に導電性テープが貼合され給電用電極が形成される。
【0093】
この後、製造装置9を使用しポリイミド樹脂前駆体塗布液の塗布と同じ方法で弾性層形成用塗布液を塗布し乾燥した後、引き続き離形層形成用塗布液を塗布し乾燥し、芯金を抜き取ることで発熱層/弾性層/表面層の構成を有する環状の発熱定着ベルトが製造される。
【0094】
本発明で使用するポリイミド樹脂前駆体塗布液の粘度は、織布への浸透性、織布への被覆性、レベリング性、脱泡等のハンドリング性等を考慮し、3Pa・sから100Pa・sが好ましい。
【0095】
粘度は、ビスコテック(株)デジタル回転式粘度計で、温度25℃で測定した値を示す。
【0096】
ポリイミド樹脂前駆体塗布液に使用する溶媒の沸点は、乾燥速度を考慮し、180℃から220℃が好ましい。
【0097】
発熱層にポリイミド樹脂とカーボン繊維糸布を含む発熱層と、弾性層と、離形層とを含む発熱定着ベルトにより次の効果が挙げられる。長期に使用しても抵抗値の変動が少なく安定した画像が得られることが可能となった。また、長期に使用しても発熱層の破断、亀裂がなく安定した稼動が可能となった。
【0098】
本発明の発熱定着ベルトを構成している各層に使用する材料に付き説明する。
【0099】
(カーボン繊維糸布)
カーボン繊維糸布は、市販されているカーボン繊維糸布を必要な幅に切断し、市販されているカーボン繊維糸で縫い合わせることによって環状に形成することができる。また、カーボン繊維糸を環状に織るあるいは編むことによっても得ることができる。カーボン繊維糸およびカーボン繊維糸布は、「トレカ(TOREYCA)」、「トレカクロス(TOREYCA Cloth)(以上、東レ社製)」あるいは「TENAX」(東邦テナックス社製)の商品名で市販されている。
【0100】
(ポリイミド樹脂)
ポリイミド樹脂は、通常、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機極性溶媒中で重合してなるポリイミド前駆体がイミド転化されてポリイミド樹脂を形成する。
【0101】
芳香族ジアミンの代表例としては、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4、4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4′−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4′−ジアミノジフェニルシラン、4,4′−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等を挙げることができる。中でも好ましいジアミンは、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)である。
【0102】
又、芳香族テトラカルボン酸二無水物の代表例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物及び9,9−ビス[4−(3,4′−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等を挙げることができる。中でも好ましいテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット二無水物(PMDA)、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)を挙げることができる。なお、これらをメタノール、エタノール等のアルコール類と反応させてエステル化合物としてもよい。
【0103】
これらの芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物は単独で又は混合して用いることができる。また、複数種類のポリイミド前駆体溶液を調製し、それらのポリイミド前駆体溶液を混合して用いることも出来る。
【0104】
ポリイミド前駆体塗布液の調製に使用する溶媒
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を使用することが可能である。
【0105】
弾性層
弾性層としては、特に限定されるものではなく、任意のゴム材料、熱可塑性エラストマーを用いることが出来る。例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレンゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロロヒドリンゴム及びノルボルネンゴム等から選ぶことが出来る。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
一方、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリウレタン系、スチレン−ブタジエントリブロック系、ポリオレフィン系などを用いることが出来る。
【0107】
又、弾性体層には、発熱定着ベルトの使用目的、設計目的などに応じて、充填剤、増量充填剤、加硫剤、着色剤、耐熱剤、顔料等の種々の配合剤を添加することが出来る。又、配合剤の添加量などにより合成樹脂の可塑度は変化するが、硬化前の合成樹脂の可塑度としては、120以下のものが好適に用いられる。
【0108】
〔離形層〕
離形層形成用樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)より成る群から選択される少なくとも1つの樹脂あることが好ましい。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0110】
実施例1
以下に示す方法で図3に示す構成の発熱定着ベルトを作製し試料No.101から109とした。
【0111】
(環状の織布の準備)
表1に示すカーボン繊維糸を使用した織布をカーボン繊維糸で縫い合わせて環状の織布を得た。
【0112】
【表1】

【0113】
カーボン繊維糸布No.1−1およびNo.1−2は、布を環状に縫い合わせて作製した。カーボン繊維糸布No.1−3からNo.1−7は、炭素繊維を織って円筒状の布を作製した。表1において、「厚さ」とは、図3(c)において布24a31に相当する部分の厚さを表す。
【0114】
カーボン繊維糸の太さは、JIS L0101−1978に準じて測定した価を示す。
【0115】
織布の糸密度は25mm×25mmの範囲の糸の本数を目視で測定した値を示す。織布の厚さは、断面を反射型光学顕微鏡で測定した値を示す。
【0116】
(ポリイミド樹脂による織布の被覆)
(ポリイミド前駆体被覆用塗布液の調製)
塗布液は宇部興産(株)製のポリアミド酸「U−ワニスS301」20gを、溶媒20mlに溶解しポリイミド前駆体被覆用塗布液とした。
【0117】
粘度は、ビスコテック(株)製 ラボ用デジタル回転式粘度計「ビスコスター+H」高粘度用を使用し、温度23℃で測定し、40Pa・sであった。
【0118】
(ポリイミド前駆体被覆用塗布液の織布への塗布)
準備した環状の織布No.1−1をステンレス製の芯金に装着し、図5に示す製造装置を使用し、調製したポリイミド前駆体被覆用塗布液を被覆厚さ(図3(c)においてE1とE2の和に相当する厚さ)が300μmとなる様に以下に示す条件で塗布した後、回転速度(周速度)0.1m/secで回転させながら、200℃で30分間加熱乾燥させた。その後、400℃で30分間加熱乾燥しポリイミド樹脂で被覆した発熱定着ベルトの発熱層となる織布を製造した。引き続き芯金を抜き取らないで給電用電極、弾性層、離形層を形成した。
【0119】
被覆厚さは総厚より織布の厚さを差し引いて求めた値を示す。
【0120】
塗布条件
ポリイミド前駆体被覆用塗布液の温度:25℃
ノズルのポリイミド前駆体被覆用塗布液吐出口の形状:円錐状ノズル
ノズルのポリイミド前駆体被覆用塗布液吐出口の口径:2mm
ノズルのポリイミド前駆体被覆用塗布液吐出口と芯金の周面までの距離:5mm
ノズルからのポリイミド前駆体被覆用塗布液の吐出量:300ml/min
ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:500mm/min
芯金の回転速度(周速度):0.1m/sec
芯金の回転速度(周速度)は、(株)小野測器製HT−4200製で測定した値を示す。
【0121】
(給電用電極の形成)
ポリイミド樹脂で被覆した織布の両端周面に幅25mm、厚さ35μmの導電性テープ(住友スリーエム(株)製 CU−35C)を1巻き貼着し給電用電極を形成した。
【0122】
(弾性層の形成)
(弾性層形成用塗布液の調製)
シリコーンゴムKE1379(信越化学製商品名)の液状ゴム及びシリコーンゴムDY356013(商品名;東レダウコーニングシリコーン社製)の2液を予め2:1の割合で混合した組成物100gを弾性層形成用塗布液とした。
【0123】
(弾性層形成用塗布液の塗布)
図5に示す製造装置を使用し、ポリイミド前駆体被覆用塗布液に換えて、弾性層形成用塗布液を給電用電極の上を除いて発熱層の上に、以下に示す条件でポリイミド樹脂前駆体塗布液の塗布と同じ方法で弾性層形成用塗布液を塗布し、乾燥後の膜厚200μmの弾性層形成用塗膜を形成する。この後、芯金を回転速度(周速度)0.1m/secで回転させながら、150℃で30分間一次加硫し、さらに200℃で4時間ポスト加硫を行い、発熱層の上に弾性層を形成した。
【0124】
塗布条件
弾性層形成用塗布液の温度:25℃
ノズルの弾性層形成用塗布液吐出口の形状:円錐状ノズル
ノズルの弾性層形成用塗布液吐出口の口径:2mm
ノズルの弾性層形成用塗布液吐出口と発熱層の周面までの距離:5mm
ノズルからの弾性層形成用塗布液の吐出量:300ml/min
ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:500mm/min
芯金の回転速度(周速度):0.1m/sec
芯金の回転速度(周速度)は、(株)小野測器製HT−4200製で測定した値を示す。
【0125】
(離形層の形成)
(離形層形成用塗布液の準備)
PTFE樹脂とPFA樹脂を7:3の割合で混合し、固形分濃度45%、粘度:110mPa・sに調製したフッ素樹脂ディスパーション(デュポン社製商品名“855−510”)を離形層形成用塗布液として準備した。
【0126】
(離形層形成用塗布液の塗布)
図5に示す製造装置を使用し、弾性層形成用塗布液に換えて、離形層形成用塗布液を給電用電極の上を除いて弾性層の上に、以下に示す条件で弾性層形成用塗布液の塗布と同じ方法で離形層形成用塗布液を塗布し、乾燥後の膜厚30μmの離形層形成用塗膜を形成する。この後、室温で30分間乾燥した後、芯金を回転速度(周速度)0.1m/secで回転させながら、230℃で30分間加熱し、さらに270℃で10分間加熱し、弾性層の上に離形層を形成した。
【0127】
塗布条件
離形層形成用塗布液の温度:25℃
ノズルの離形層形成用塗布液吐出口の形状:円錐状ノズル
ノズルの離形層形成用塗布液吐出口の口径:2mm
ノズルの離形層形成用塗布液吐出口と発熱層の周面までの距離:5mm
ノズルからの離形層形成用塗布液の吐出量:300ml/min
ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:500mm/min
芯金の回転速度(周速度):0.1m/sec
芯金の回転速度(周速度)は、(株)小野測器製HT−4200製で測定した値を示す。
【0128】
(芯金の抜き取り)
離形層を形成した後、芯金を冷却し抜き取ることで発熱層/弾性層/離形層を有する発熱定着ベルトを作製し試料No.101とした。
【0129】
熱定着ベルトの作製(試料No.102から107)
表1に示すカーボン繊維糸太さ、たて糸、よこ糸密度を変えて準備した環状の織布No.1−2から1−7を使用した他は全て試料No.101と同じ方法で熱定着ベルトを作製し試料No.102から107とした。
【0130】
(比較発熱定着ベルト(試料No.108)の作製)
発熱層を以下に示す方法で作製した他は、給電用電極、電弾性層、離形層は試料No.101と同じ方法で形成し比較発熱定着ベルトを作製し、試料No.108とした。
【0131】
発熱層の形成
〔発熱層形成用塗布液の調製〕
ポリアミド酸(宇部興産社製:U−ワニスS301)100gと黒鉛繊維18gを遊星方式の混合機で十分に混合した。黒鉛繊維は日本グラファイトファイバー社製XN−100を使用した。遊星方式の混合機としてプライミクス(株)製 T・Kハイビスディパーミックス(R)を使用した。
【0132】
(発熱層の作製)
直径30mm、幅400mmのステンレス製の芯金を準備し、図5に示す製造装置の保持装置に装着した後、以下に示す条件で芯金の周面に準備した発熱層形成用塗布液を、乾燥膜厚250μmになる様に塗布した後、150℃で3時間乾燥後、窒素雰囲気下320℃で120分乾燥し発熱層とした。
【0133】
塗布条件
発熱層形成用塗布液の温度:25℃
ノズルの発熱層形成用塗布液吐出口の形状:円錐状ノズル
ノズルの発熱層形成用塗布液吐出口の口径:2mm
ノズルの発熱層形成用塗布液吐出口と芯金の周面までの距離:5mm
ノズルからの発熱層形成用塗布液の吐出量:300ml/min
ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:500mm/min
芯金の回転速度(周速度):0.1m/sec
芯金の回転速度(周速度)は、(株)小野測器製HT−4200製で測定した値を示す。
【0134】
(比較発熱定着ベルト(試料No.109)の作製)
発熱層を以下に示す方法で作製した他は、給電用電極、電弾性層、離形層は試料No.101と同じ方法で形成し比較発熱定着ベルトを作製し、試料No.109とした。
【0135】
発熱層の形成
〔発熱層形成用塗布液の調製〕
ポリアミド酸(宇部興産社製:U−ワニスS301)100gとステンレス繊維18gを遊星方式の混合機で十分に混合した。
【0136】
ステンレス繊維は日本精線社製NASLONを使用した。遊星方式の混合機として比較発熱定着ベルト(試料No.108)に使用した遊星方式の混合機と同じ遊星方式の混合機を使用した。
【0137】
(発熱層の作製)
直径30mm、幅400mmのステンレス製の芯金を準備し、図5に示す製造装置の保持装置に装着した後、以下に示す条件で芯金の周面に準備した発熱層形成用塗布液を、乾燥膜厚150μmになる様に塗布した後、150℃で3時間乾燥後、窒素雰囲気下320℃で120分乾燥し発熱層とした。
【0138】
塗布条件
発熱層形成用塗布液の温度:25℃
ノズルの発熱層形成用塗布液吐出口の形状:円錐状ノズル
ノズルの発熱層形成用塗布液吐出口の口径:2mm
ノズルの発熱層形成用塗布液吐出口と芯金の周面までの距離:5mm
ノズルからの発熱層形成用塗布液の吐出量:300ml/min
ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:500mm/min
芯金の回転速度(周速度):0.1m/sec
芯金の回転速度(周速度)は、(株)小野測器製HT−4200製で測定した値を示す。
【0139】
評価
作製した試料No.101から109をコニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製bizhub C360に装着し、電圧100Vの電源を発熱ベルトの温度が170℃になるように制御して印加した。画素率が10%の画像(文字画像が7%、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像)をA4版上質紙(64g/m2 )に連続で50万枚プリントし、以下に示す方法で表面抵抗値、体積抵抗値の変動(抵抗変化率)を測定した結果及び、以下に示す方法で発熱層の亀裂、破断の有無を観察し以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
【0140】
表面抵抗値の測定方法
抵抗は50万枚プリント前後の給電電極間の抵抗値を三菱化学アナリテック製ロレスタAX MCP−T370型で測定して、抵抗値及び以下の式で抵抗変化率を算出した。
【0141】
抵抗変化率(%)=〔(50万枚プリント後の抵抗値−プリント前の抵抗値)/プリント前の抵抗値〕×100
抵抗変化率の評価ランク
◎:抵抗変化率の絶対値 ±1%未満
○:抵抗変化率の絶対値 ±1%以上、±3%未満
△:抵抗変化率の絶対値 ±3%以上±10%未満
×:抵抗変化率の絶対値 ±10%以上
発熱層の亀裂、破断の評価
○:40万枚以上から50万枚目でベタ黒画像部分に未定着部分がない
△:30万枚以上から40万枚未満でベタ黒画像部分に未定着部分発生する
×:20万枚以上から30万枚未満でベタ黒画像部分に未定着部分発生する
【0142】
【表2】

【0143】
発熱層をポリイミド樹脂で被覆されたカーボン繊維糸を使用した布から構成した発熱定着ベルト試料No.101から107は破断、亀裂の発生もなく、長期に使用した時の表面抵抗値、体積抵抗値の変動(抵抗変化率)も優れた結果を示した。
【0144】
発熱層をポリイミド樹脂で被覆された黒鉛繊維を混合して使用した発熱定着ベルト試料No.108は破断、亀裂が発生、長期に使用した時の表面抵抗値、体積抵抗値の変動(抵抗変化率)も大きく、本発明の試料No.101から107に比べ劣る結果を示した。
【0145】
発熱層をポリイミド樹脂で被覆されたステンレス繊維を混合して使用した発熱定着ベルト試料No.109は破断、亀裂が発生、長期に使用した時の表面抵抗値、体積抵抗値の変動(抵抗変化率)も大きく、本発明の試料No.101から107に比べ劣る結果を示した。
【符号の説明】
【0146】
1 フルカラー画像形成装置
24 定着装置
24a 発熱定着ベルト
24a1、24a2 給電用電極
24a3 発熱層
24a31 布(カーボン繊維糸布)
24a32 ポリイミド樹脂
24a4、24a6 プライマー層
24a5 弾性層
24b 定着ローラー
24c 加圧ローラー
9 製造装置
9b 塗布装置
9b1 塗布手段
9b2 駆動部
9c 加熱装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱層、弾性層および離形層を内側からこの順に含む円筒形の発熱定着ベルトであって、
前記発熱層は、カーボン繊維糸を使用したカーボン繊維糸布およびポリイミド樹脂を含み、
前記発熱層の両端に、前記カーボン繊維糸布に接する状態に、発熱層に給電する一対の電極を有することを特徴とする発熱定着ベルト。
【請求項2】
前記発熱層における弾性層側が前記ポリイミド樹脂によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の発熱定着ベルト。
【請求項3】
前記発熱層の両側が、前記ポリイミド樹脂によって覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の発熱定着ベルト。
【請求項4】
前記カーボン繊維糸の太さが、66texから800texであることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の発熱定着ベルト。
【請求項5】
前記カーボン繊維糸布が、たて糸密度及びよこ糸密度が、7.5本/25mmから22.5本/25mm、の織物であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の発熱定着ベルト。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の発熱定着ベルトを用いていることを特徴とする画像形成装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−57934(P2013−57934A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180452(P2012−180452)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】