発熱素子の冷却装置
【課題】冷媒の漏出を有効に防止できる発熱素子の冷却装置を提供する。
【解決手段】発熱素子2が配置される主面と、放熱部41および該放熱部を周囲する第1嵌合部43が形成された他の主面とを有する第1放熱体4と、第1放熱体と組み合わせることで、放熱部41を受容して冷媒流路を形成する受容部51と、受容部を周囲する第2嵌合部53とを有する第2放熱体5と、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に介装され、冷媒流路をシールするシール部材6と、を備える発熱素子の冷却装置であって、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間には、冷媒流路と異なる側に、シール部材6により、冷媒流路から隔てられた間隙100が形成されており、間隙100には、少なくとも一部に、シール部材6の配置位置における第1嵌合部43と第2嵌合部53との間の幅よりも、幅の狭い部分である幅狭部が形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【解決手段】発熱素子2が配置される主面と、放熱部41および該放熱部を周囲する第1嵌合部43が形成された他の主面とを有する第1放熱体4と、第1放熱体と組み合わせることで、放熱部41を受容して冷媒流路を形成する受容部51と、受容部を周囲する第2嵌合部53とを有する第2放熱体5と、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に介装され、冷媒流路をシールするシール部材6と、を備える発熱素子の冷却装置であって、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間には、冷媒流路と異なる側に、シール部材6により、冷媒流路から隔てられた間隙100が形成されており、間隙100には、少なくとも一部に、シール部材6の配置位置における第1嵌合部43と第2嵌合部53との間の幅よりも、幅の狭い部分である幅狭部が形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱素子の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱素子を冷却する冷却装置として、一対の放熱体を各放熱体に備えられた嵌合部で組み合わせてなるものが知られている。このような発熱素子の冷却装置として、一対の放熱体の嵌合部間から冷媒が漏出することを防止するために、一対の放熱体の嵌合部間に、O−リングなどのシール部材が介装された発熱素子の冷却装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−19477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、シール部材が劣化し、シール部材のシール性能が低下した場合に、冷媒が漏出してしまう場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、シール部材が劣化した場合でも、冷媒の漏出を有効に防止できる発熱素子の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1嵌合部を有する第1放熱体と、第2嵌合部を有する第2放熱体と、第1嵌合部と第2嵌合部との間に介装されるシール部材と、を備える発熱素子の冷却装置において、第1嵌合部と第2嵌合部との間に形成された間隙に、シール部材の配置位置における第1嵌合部と第2嵌合部との間の幅よりも、幅の狭い部分である幅狭部を形成することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1嵌合部と第2嵌合部との間の間隙に、幅狭部が形成されているため、シール部材が劣化した場合であっても、劣化したシール部材が、該幅狭部において、冷媒流路を適切にシールすることができ、これにより、冷媒流路からの冷媒の漏出を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る半導体装置を示す正面図である。
【図2】図1に示す半導体装置の側面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】半導体素子と放熱フィンとの位置関係を説明するための図である。
【図6】図4のVI部分における要部断面図である。
【図7】第1実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための図である。
【図8】第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図9】第2実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための図である。
【図10】第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図11】第4実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図12】第4実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の本実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
≪第1実施形態≫
本実施形態に係る半導体装置は、スイッチング素子やダイオードを含む半導体モジュールと、半導体モジュールを冷却するための冷却器とからなるものである。このような半導体装置は、スイッチング素子の導通/非導通を制御することにより、直流電源からの直流電流を三相交流電流に変換することが可能となっており、例えば、ハイブリッド車や燃料電池車等の電動車両用駆動モーターへ電力を供給するインバータ装置に用いることができる。
【0011】
図1は第1実施形態に係る半導体装置を示す正面図、図2は図1に示す半導体装置の側面図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、3つの半導体モジュール2と、2つの冷却器3,7(第1冷却器3および第2冷却器7)とから構成されており、各半導体モジュール2を2つの冷却器3,7で挟み込むことにより、半導体装置1においては、半導体モジュール2を両面から冷却する両面冷却構造が採られている。
【0012】
冷却器3,7による冷却対象物である半導体モジュール2は、三相インバータブリッジ回路を個別に構成するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのトランジスタやダイオードからなる半導体素子21,22を有している。これら半導体素子21,22の両主面には、はんだ付けにより形成されたはんだ層23,24を介して、一対の電極25,26が接続されている。また、半導体装置1を構成する各半導体モジュール2は、端子電極27,28に電気的に接続されており、端子電極27,28を介して、電力の入力/出力が可能となっている。なお、半導体モジュール2は、通電により発熱することから、以下に説明する冷却器3,7により、除熱が行われることとなる。また、半導体素子21,22は、IGBTなどのトランジスタやダイオードに限定されるものではなく、他の発熱素子であってもよい。
【0013】
第1冷却器3および第2冷却器7は、半導体モジュール2を冷却するための冷却器であり、図1に示すように、第1冷却器3は、各半導体モジュール2の下側に配置されており、第2冷却器7は、各半導体モジュール2の上側に配置されている。ここで、図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
【0014】
第1冷却器3は、図3に示すように、各半導体モジュール2に対応して設けられた3つの第1放熱体4に、単一の第2放熱体5を組み合わせて構成されており、これら第1放熱体4と第2放熱体5とが組み合わさることにより、内部に冷媒が流れるための流路(以下、冷媒流路。)が形成されている。そして、導入パイプ31から、第1冷却器3内に形成された冷媒流路内に冷媒が連続的に導入され、導入された冷媒が、X方向に沿って、この冷媒流路を流れることにより、各半導体モジュール2により発生した熱を放熱できるようになっている。なお、第1冷却器3内に導入された冷媒は、排出パイプ32から連続的に排出されることとなる。また、第1冷却器3を構成する各第1放熱体4および第2放熱体5は、例えば、熱伝導性の優れたアルミニウムやアルミニウム合金などを原材料として、ダイカストや押出し成型などにより、それぞれ個別に成型されてなるものである。
【0015】
図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。この図4中においては、第1冷却器3を構成する3つの第1放熱体4のうち、冷媒流路の最も上流側に配置された第1放熱体4を通る断面を示している。以下、3つの第1放熱体4のうち、冷媒流路の最も上流側に配置された第1放熱体4を例示して説明を行なうが、他の第1放熱体4も同様の構成を有するものである。第1放熱体4は、図4に示すように、一方の主面に、半導体モジュール2が配置され、半導体モジュール2から伝達された熱を受熱するような構成となっている。また、第1放熱体4は、他方の主面に、受熱した熱を放熱するための放熱部41と、放熱部41を周囲する第1嵌合部43とを有している。なお、第1嵌合部43は、後述する第2放熱体5の第2嵌合部52に嵌合するための部分である。
【0016】
図5は、半導体素子21,22と放熱部41との位置関係を説明するための図であり、第1放熱体4をZ軸方向に沿って半導体モジュール2側から見た図である。なお、図5においては、半導体素子21,22を実線で、放熱フィン42a〜42eを破線で、放熱部41を一点鎖線で、それぞれ示している。図4、図5に示すように、放熱部41は、第2放熱体5側に向かって突出した複数の放熱フィン42a〜42eを有しており、これら複数の放熱フィン42a〜42eは、図4、図5に示すように、半導体素子21,22を中心として、Y方向に所定の間隔で配列されている。また、これら複数の放熱フィン42a〜42eは、図5に示すように、X方向(すなわち、冷媒の流れ方向)に沿って、連続的に延伸してなるものである。
【0017】
第1嵌合部43は、図4、図5に示すように、放熱部41を周囲している。第1嵌合部43は、シール部材6を介して、第2放熱体5の第2嵌合部53と嵌合されており、第1嵌合部43および第2嵌合部53を互いに嵌合することで、第1放熱体4と第2放熱体5とが組み合わされている。
【0018】
一方、第2放熱体5は、図4に示すように、第1放熱体4の放熱部41を受容する受容部51と、この受容部51を周囲する第2嵌合部53とを有している。図4に示すように、第2嵌合部53は、第1放熱体4の第1嵌合部43と、シール部材6を介して嵌合しており、これにより、受容部51は、図4に示すように、第1放熱体4の放熱部41(放熱フィン42a〜42eを含む)を受容しつつ、第1放熱体4の放熱部41とともに、冷媒流路を形成することとなる。
【0019】
そして、第1放熱体と第2放熱体とを組み合わせて形成された冷媒流路内に、冷媒を流通させることで、冷媒流路内を流通する冷媒により、第1放熱体4が冷却され、これにより、半導体モジュール2が冷却されるようになっている。具体的には、半導体モジュール2で発生した熱は、半導体モジュール2が配置されている第1放熱体4により受熱され、第1放熱体4の放熱フィン42a〜42eに熱拡散し、拡散した熱が、冷媒流路内を流れる冷媒により、第1放熱体4の放熱フィン42a〜42eが冷却されることで、第1放熱体4に配置された半導体モジュール2が冷却されることとなる。
【0020】
また、第1放熱体4と第2放熱体5との間には、図4に示すように、シール部材6が介装されている。このシール部材6は、各嵌合部43,53により両側から押圧された状態で介装されており、これにより、各嵌合部43,53にそれぞれ密着し、冷媒流路をシールしている。なお、シール部材6としては、特に限定されないが、例えば、ゴム材料などの弾性体からなるシールリングなどを用いることができる。
【0021】
図6は、図4のVI部分における要部断面図であり、図4に示す第1放熱体4の第1嵌合部43と第2放熱体5の第2嵌合部53との嵌合部分を示している。第1嵌合部43と第2嵌合部53との間には、図6に示すように、シール部材6が介装されており、シール部材6を介して、第1嵌合部43と第2嵌合部53とが嵌合されている。
【0022】
図6に示すように、第1嵌合部43には、高さh1の段差形状が設けられており、また、第2嵌合部53には、高さh2の段差形状が設けられている。そして、このように段差形状をそれぞれ有する第1嵌合部43および第2嵌合部53は、シール部材6を介して、嵌合されており、これにより、図6に示すように、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に、間隙100が形成されている。
【0023】
この間隙100は、図6に示すように、シール部材6により冷媒流路から隔てられており、シール部材6を間にして、冷媒流路が形成されている側と異なる側に形成されている。また、この間隙100は、図6に示すように、第1冷却器3の外部に連通して形成されているため、シール部材6は、冷媒流路側の部分において、冷媒と接する一方で、冷媒流路とは異なる間隙100側の部分において、該間隙100を介して、外気と接することとなる。
【0024】
この間隙100は、図6に示すように、幅がw1である第1部分101と、幅がw2である第2部分102とを有している。第1部分101は、第1嵌合部43の対向面44と、第2嵌合部53の対向面54とが、幅w1で対向することにより形成されている。また、図6に示すように、第1部分101は、第1嵌合部43の対向面44と第2嵌合部53の対向面54とにより、シール部材6を押圧することにより、幅w1で形成されてなるものである。そのため、シール部材6の配置位置における第1嵌合部43と第2嵌合部53との間の幅も、幅w1となっている。
【0025】
一方、第2部分102は、第1嵌合部43の対向面45と、第2嵌合部53の対向面55とが、幅w2で対向することにより、形成されている。本実施形態においては、この第2部分102の幅w2は、第1部分101の幅w1よりも、幅が狭く形成されている。すなわち、図6中において、間隙100の幅は、w1>w2の関係となるように形成されている。
【0026】
以上のように、第1冷却器3は構成される。
【0027】
また、半導体装置1は、図3、図4に示すように、上述した第1冷却器3以外に、第2冷却器7を備えており、第2冷却器7は、複数の放熱フィン71a〜71eと、導入パイプ72と、排出パイプ73とを有している。第2冷却器7においても、第1冷却器3と同様に、冷媒が、連続的に、導入パイプ72から第2冷却器7の冷媒流路内へと導入され、これにより、半導体モジュール2を冷却するようになっている。
【0028】
以上のように、本実施形態では、半導体モジュール2を冷却するための冷却器として、第1放熱体4と第2放熱体5とが組み合わされてなる第1冷却器3を有している。そして、この第1冷却器3においては、第1放熱体4の第1嵌合部43と第2放熱体5の第2嵌合部53との間には、間隙100が形成されており、この間隙100は、幅がw1である第1部分101と、幅がw2である第2部分102とを有し、この第2部分102の幅w2が、第1部分101の幅w1よりも、幅が狭く形成されている。これにより、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、劣化したシール部材6が、幅の狭い第2部分102において、冷媒流路を適切にシールすることができるため、冷媒の漏れを有効に防止することができる。具体的には、図6に示すように、シール部材6は、劣化していない初期状態においては、図6に示す位置において、第1嵌合部43と第2嵌合部53とにより挟持され、冷媒流路をシールしている。そして、図7に示すように、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、図7に示す位置において、冷媒流路をシールすることができる。すなわち、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、第1部分101よりも狭い幅を有する第2部分102において、冷媒流路を適切にシールすることができる。すなわち、シール部材6の自封効果により、冷媒流路を適切にシールすることができる。ここで、図7は、第1実施形態に係る半導体装置1の作用効果を説明するための図であり、図7に示す断面は、図6に示す断面に相当するものである。
【0029】
すなわち、図6に示す初期状態においては、シール部材6は、第1嵌合部43の対向面44と第2嵌合部53の対向面54とにより両側から押圧されており、第1嵌合部43および第2嵌合部53に密着している。そのため、シール部材6は、図6に示す位置で、第1嵌合部43と第2嵌合部53とにより挟持され、冷媒流路をシールしている。
【0030】
一方、シール部材6が劣化し、シール部材6の弾性力の低下や、シール部材6の変形などにより、シール部材6のシール性能が低下した場合、シール部材6と第1嵌合部43との間、および、シール部材6と第2嵌合部53との間の密着力は小さくなる。ここで、シール部材6は、上述したように、冷媒流路側において、冷媒流路内を流れる冷媒と接しており、冷媒の圧力により、間隙100側へと押圧されている一方、シール部材6は、間隙100側において、間隙を介して、外気と接しており、外気からの圧力により、冷媒流路側へと押圧されている。通常、冷媒の圧力は外気の圧力よりも大きく、シール部材6には、間隙側に押し上げる押圧力がより大きく掛かることとなる。そのため、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合、シール部材6は、冷媒の押圧力に耐え切れず、図7に示すように、間隙100側に向かって、図7に示す位置まで、押し上げられることとなる。
【0031】
ここで、上述したように、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に形成された間隙100は、幅がw1である第1部分101と、幅がw2である第2部分102とを有しており、第2部分の幅w2は、第1部分の幅w1よりも、幅が狭く形成されている。そのため、本実施形態によれば、冷媒の圧力により間隙100側に押し上げられたシール部材6は、図7に示す位置に移動し、図7に示す位置において、冷媒流路を適切にシールすることができ、これにより、冷媒流路からの冷媒の漏出を有効に防止することができる。
【0032】
≪第2実施形態≫
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係る第1冷却器3aの断面図であり、図4のIV部分に相当する部分における要部断面図である。第2実施形態においては、第1冷却器3aが、以下に説明する点において、第1実施形態の第1冷却器3と異なる以外は、上述の第1実施形態と同様の構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
【0033】
図8に示すように、第1冷却器3aは、第1放熱体4aの第1嵌合部43aに、第2放熱体5の対向面54に対向するテーパー面44aが形成されており、この点において、第1実施形態に係る第1冷却器3と異なる。なお、このテーパー面44aは、例えば、個別成型した第1放熱体の嵌合部を、切削加工することにより設けることができる。
【0034】
そして、テーパー面44aが設けられた第1嵌合部43aと、段差形状が設けられた第2嵌合部53とは、シール部材6を介して、嵌合されており、これにより、図8に示すように、第1嵌合部43aと第2嵌合部53との間に、間隙100aが形成されている。
【0035】
この間隙100aは、図8に示すように、シール部材6の配置位置から遠いほど、幅が連続的に狭くなる第1部分101aと、幅がw2である第2部分102aとを有している。
【0036】
第1部分101aは、第1嵌合部43aのテーパー面44aと、第2嵌合部53の対向面54との間に形成される間隙であり、第1部分101aは、図8に示すように、テーパー面44aが対向面54に対して傾いて形成されているため、第1部分101aの幅は、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、連続的に狭くなっている。すなわち、図8に示すように、第1部分101aは、シール部材6の配置位置付近において、その幅が最も広くなるように形成されている。
【0037】
一方、第2部分102aは、第1嵌合部43aの対向面45aと、第2嵌合部53の対向面55とが、幅w2で対向することにより、形成されている。本実施形態においては、この第2部分102aの幅w2は、第1部分101aの幅よりも、幅が狭く形成されている。
【0038】
以上のように、第2実施形態では、第1嵌合部43aにテーパー面44aが設けられており、テーパー面44aを有する第1嵌合部と、段差形状を有する第2嵌合部53との間に、間隙100aが形成されている。そして、この間隙100aは、第1部分101aと、第2部分102aとを有しており、この第1部分101aは、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、幅が連続的に狭く形成されている。これにより、第1冷却器3aでは、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、劣化したシール部材6が、第1部分中のシール部材6の劣化度合いに応じた位置において、冷媒流路を連続的にシールすることができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。すなわち、シール部材6の自封効果を持続することができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。
【0039】
具体的には、シール部材6は、劣化していない初期状態においては、図8に示す位置で、第1嵌合部43aと第2嵌合部53とにより挟持され、冷媒流路をシールしている。そして、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合、冷媒の圧力により、間隙100a側に向かって、徐々に押し上げられていくこととなる。
【0040】
ここで、上述したように、第1嵌合部43aと第2嵌合部53との間に形成された間隙100aは、テーパー面44aと対向面54との間に形成された第1部分101aを有しており、この第1部分101aは、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、連続的に幅が狭く形成されている。そのため、シール部材6が劣化すると、シール部材6は、劣化度合いに応じて、徐々に間隙100a側に移動し、例えば、図9(A)に示す位置で、第1嵌合部43aと第2嵌合部53とに挟持され、冷媒流路をシールする。
【0041】
そして、同様に、シール部材6がさらに劣化していくと、シール部材6は、劣化度合いに応じて、徐々に間隙100a側に移動し、例えば、図9(A)に示す位置よりさらに幅の狭い図9(B)に示す位置で冷媒流路をシールし、その後、さらにシール部材6が劣化した場合には、例えば、図9(B)に示す位置よりさらに幅の狭い図9(C)に示す位置で、冷媒流路をシールする。このように、第2実施形態に係る第1冷却器3aでは、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、シール部材6は、シール部材6の劣化度合いに応じて、冷媒流路を連続的にシールすることができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。なお、図9は、第2実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための図であり、図9は、図8に示す断面に相当する断面における断面図である。
【0042】
≪第3実施形態≫
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。図10は、第3実施形態に係る第1冷却器3bの断面図であり、図4のIV部分に相当する要部断面図である。第3実施形態においては、第1冷却器3bが、以下に説明する点において、第1実施形態の第1冷却器3と異なる以外は、上述の第1実施形態と同様の構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
【0043】
図10に示すように、第1冷却器3bは、第1放熱体4bの第1嵌合部43bにテーパー面44bが、第2放熱体5bの第2嵌合部53bに、テーパー面44bに対向するテーパー面54bが、それぞれ形成されており、これらの点において、第1実施形態に係る第1冷却器3と異なる。なお、テーパー面43bおよびテーパー面54bは、例えば、個別成型した各放熱体の嵌合部を、切削加工することにより設けることができる。
【0044】
そして、テーパー面44bが設けられた第1嵌合部43bと、テーパー面54bが設けられた第2嵌合部53bとは、シール部材6を介して、嵌合されており、図10に示すように、第1嵌合部43bと第2嵌合部53bとの間に、間隙100bが形成されている。
【0045】
この間隙100bは、図10に示すように、シール部材6の配置位置から遠いほど、幅が連続的に狭くなる第1部分101bと、幅がw2である第2部分102bとを有している。
【0046】
第1部分101bは、第1嵌合部43bのテーパー面44bと、第2嵌合部54bのテーパー面54bとの間に形成される間隙であり、第1部分101bは、図10に示すように、テーパー面44bの傾斜角度とテーパー面54bの傾斜角度とが互いに異なるため、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、その幅が連続的に狭くなっている。すなわち、図10に示すように、第1部分101bは、シール部材6の配置位置付近において、その幅が最も広くなるように形成されている。
【0047】
一方、第2部分102bは、第1嵌合部43bの対向面45bと、第2嵌合部53bの対向面55bとが、幅w2で対向することにより、形成されている。本実施形態においては、この第2部分102bの幅w2は、第1部分101bの幅よりも、幅が狭く形成されている。
【0048】
以上のように、第3実施形態では、第1嵌合部43bにテーパー面44bが、第2嵌合部53bにテーパー面54bがそれぞれ設けられており、テーパー面44bを有する第1嵌合部43bとテーパー面54bを有する第2嵌合部53bとの間に、間隙100bが形成されている。そして、この間隙100bは、第1部分101bと、第2部分102bとを有しており、この第1部分101bは、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、幅が連続的に狭く形成されている。これにより、第3実施形態に係る第1冷却器3bでは、第2実施形態に係る第1冷却器3aと同様に、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、シール部材6が、シール部材6の劣化度合いに応じた位置において、冷媒流路をより適切にシールすることができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。すなわち、シール部材6の自封効果を持続することができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。
【0049】
≪第4実施形態≫
続いて、本発明の第4実施形態について説明する。図11は、第4実施形態に係る第1冷却器3cの断面図であり、図4のIV部分に相当する要部断面図である。第4実施形態においては、第1冷却器3cが、以下に説明する点において、第1実施形態の第1冷却器3と異なる以外は、上述の第1実施形態と同様の構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
【0050】
図11に示すように、第1冷却器3cにおいては、第1放熱体4cの第1嵌合部43cに凹曲面44cが、第2放熱体5cの第2嵌合部53cに凸曲面54cが、それぞれ形成されており、第1冷却器3cは、この点において、第1実施形態の第1冷却器3と異なる。なお、この凹曲面44cと凸曲面54cとは、図11に示すように、互いに異なる曲面形状に形成されている。
【0051】
そして、凹曲面44cが設けられた第1嵌合部43cと、凸曲面54cが設けられた第2嵌合部53cとは、シール部材6を介して、嵌合されており、これにより、図11に示すように、第1嵌合部43cと第2嵌合部53cとの間に、間隙100cが形成されている。
【0052】
この間隙100cは、図11に示すように、シール部材6から遠いほど、幅が連続的に狭くなる第1部分101cと、幅がw2である第2部分101cとを有している。
【0053】
第1部分101cは、第1嵌合部43cの凹曲面44cと、第2嵌合部53cの凸曲面54cとの間に形成される間隙であり、第1部分101cの幅は、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、連続的に狭くなっている。すなわち、図11に示すように、第1部分101cは、シール部材6の配置位置付近において、その幅が最も広くなるように形成されている。
【0054】
一方、第2部分102cは、第1嵌合部43cの対向面45cと、第2嵌合部53cの対向面55cとが、幅w2で対向することにより、形成されている。本実施形態においては、この第2部分102cの幅w2は、第1部分101cの幅よりも、幅が狭く形成されている。
【0055】
以上のように、第4実施形態では、第1嵌合部43cに凹曲面44cが、第2嵌合部53cに凸曲面54cがそれぞれ設けられており、凹曲面44cが形成された第1嵌合部43cと、凸曲面54cが形成された第2嵌合部53cとの間に、間隙100cが形成されている。そして、この間隙100cは、第1部分101cと、第2部分102cとを有しており、これらのうち、第1部分101cは、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、幅が連続的に狭く形成されている。これにより、第4実施形態においては、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、シール部材6が、第1部分101c中のシール部材6の劣化度合いに応じた位置において、冷媒流路を連続的にシールすることができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。すなわち、シール部材6の自封効果を持続することができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。
【0056】
具体的には、シール部材6は、劣化していない初期状態においては、図11に示す位置で、第1嵌合部43cと第2嵌合部53cとにより挟持され、冷媒流路をシールしている。そして、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合には、シール部材6は、冷媒の圧力により、間隙100c側に向かって、徐々に押し上げられていくこととなる。
【0057】
ここで、上述したように、第1部分101cは、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、連続的に幅が狭く形成されている。そのため、シール部材6が劣化すると、シール部材6は、劣化度合いに応じて、徐々に間隙100a側に移動し、例えば、図12(A)に示す位置で、第1嵌合部43cと第2嵌合部53cとにより挟持され、冷媒流路をシールする。
【0058】
そして、同様に、シール部材6がさらに劣化していくと、シール部材6は、劣化度合いに応じて、徐々に間隙100a側に移動し、例えば、図12(A)に示す位置よりもさらに幅の狭い図12(B)に示す位置で冷媒流路をシールし、その後、さらにシール部材6が劣化した場合には、例えば、図12(B)よりもさらに幅が狭い図12(C)に示す位置で冷媒流路をシールし、さらにシール部材が劣化した場合には、例えば、図12(C)よりもさらに幅が狭い図12(D)に示す位置で、冷媒流路をシールする。このように、第4実施形態に係る第1冷却器3cでは、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、シール部材6は、シール部材6の劣化度合いに応じた位置において、冷媒流路を連続的にシールすることができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。なお、図12は、第4実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための図であり、図12は、図11に示す断面に相当する断面における断面図である。
【0059】
さらに、本実施形態では、シール部材6と接する第1嵌合部43cの凹曲面44c、およびシール部材6と接する第2嵌合部53cの凸曲面54cは、いずれも曲面形状となっているため、シール部材6の凹曲面44cとの接点、およびシール部材6の凸曲面54cとの接点は、第1部分101c中のシール部材6の位置に応じて、徐々に変化していくこととなる。
【0060】
例えば、図11および図12に示すシール部材6を例示して説明すると、図11に示す初期状態では、シール部材6は、凹曲面44cおよび凸曲面54cと、それぞれ接点61,62で接している。一方、シール部材6は、図12(A)に示す位置では、図11に示す接点61,62とは異なる接点61a,62aで、それぞれ凹曲面44cおよび凸曲面54cと接することとなる。同様に、シール部材6は、図12(B)〜(D)に示す位置では、それぞれ異なる接点、すなわち、接点61b,62b(図12(B))、接点61c,62c(図12(C))、接点61d,62d(図12(D))にて、凹曲面44cおよび凸曲面54cと接することとなる。
【0061】
このように、シール部材と凹曲面44cとの接点、シール部材6と凸曲面54cとの接点は、第1部分101c中のシール部材6の位置に応じて、連続的に変化している。そのため、例えば、図11においては、シール部材6と凹曲面44cとの接点61、およびシール部材6と凸曲面54cとの接点62は、略Y方向に沿った線上に位置しているのに対し、シール部材6が間隙100c側に徐々に押し上げられていくと、シール部材6と凹曲面44cとの接点、およびシール部材6と凸曲面54cとの接点は、反時計回りに、徐々に変化していき、図12(D)においては、シール部材6と凹曲面44cとの接点61d、およびシール部材6と凸曲面54cとの接点62dは、略Z方向に沿った線上に位置することとなる。
【0062】
このように、シール部材6が劣化し、シール部材6が間隙100c側に押し上げられていくと、シール部材6の凹曲面44cとの接点、およびシール部材6の凸曲面54cとの接点は、第1部分101c中のシール部材6の位置に応じて、連続的に変化していくこととなるため、シール部材6の劣化を有効に抑制することができ、シール部材6のシール性能をより持続させることができる。
【0063】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0064】
例えば、上述した実施形態においては、3つの半導体モジュール2を、2つの冷却器3,7で冷却する半導体装置1を例示したが、半導体装置1が備える半導体モジュールの数は特に限定されず、例えば、インバータ装置に用いられる半導体装置においては、6つの半導体モジュールを備える構成としてもよい。あるいは、単一の半導体モジュールを冷却器3,7で冷却する構成としてもよく、その場合には、第1冷却器3を、単一の第1放熱体と単一の第2放熱体とを組み合わせてなるものとすることができる。
【0065】
また、上述した実施形態では、第1冷却器3と第2冷却器7とを半導体モジュール2の両主面に配置し、半導体モジュール2を両側から冷却する半導体装置1を例示したが、半導体装置1の構成はこれに限定されず、例えば、第2冷却器7を第1冷却器3と同様の構成としてもよいし、または、半導体モジュール2の片面のみを単一の第1冷却器3で冷却する構成としてもよい。
【0066】
なお、上述した実施形態の半導体素子21,22は本発明の発熱素子に、第1放熱体4,4a,4b,4cは本発明の第1放熱体に、第1嵌合部43,43a,43b,43cは本発明の第1嵌合部に、第2放熱体5,5b,5cは本発明の第2放熱体に、第2嵌合部53,53b,53cは本発明の第2嵌合部に、シール部材6は本発明のシール部材に、それぞれ相当する。
【符号の説明】
【0067】
1…半導体装置
2…半導体モジュール
21,22…半導体素子
23,24…はんだ層
25,26…電極
27,28…電極端子
3,3a,3b,3c…第1冷却器
4,4a,4b,4c…第1放熱体
41…放熱部
42a〜42e…放熱フィン
43,43a,43b,43c…第1嵌合部
44,45,45a,45b,45c…対向面
44a,44b…テーパー面
44c…凹曲面
5,5b,5c…第2放熱体
53,53b,53c…第2嵌合部
54,55,55b,55c…対向面
54b…テーパー面
54c…凸曲面
6…シール部材
7…第2冷却器
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱素子の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱素子を冷却する冷却装置として、一対の放熱体を各放熱体に備えられた嵌合部で組み合わせてなるものが知られている。このような発熱素子の冷却装置として、一対の放熱体の嵌合部間から冷媒が漏出することを防止するために、一対の放熱体の嵌合部間に、O−リングなどのシール部材が介装された発熱素子の冷却装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−19477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、シール部材が劣化し、シール部材のシール性能が低下した場合に、冷媒が漏出してしまう場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、シール部材が劣化した場合でも、冷媒の漏出を有効に防止できる発熱素子の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1嵌合部を有する第1放熱体と、第2嵌合部を有する第2放熱体と、第1嵌合部と第2嵌合部との間に介装されるシール部材と、を備える発熱素子の冷却装置において、第1嵌合部と第2嵌合部との間に形成された間隙に、シール部材の配置位置における第1嵌合部と第2嵌合部との間の幅よりも、幅の狭い部分である幅狭部を形成することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1嵌合部と第2嵌合部との間の間隙に、幅狭部が形成されているため、シール部材が劣化した場合であっても、劣化したシール部材が、該幅狭部において、冷媒流路を適切にシールすることができ、これにより、冷媒流路からの冷媒の漏出を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る半導体装置を示す正面図である。
【図2】図1に示す半導体装置の側面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】半導体素子と放熱フィンとの位置関係を説明するための図である。
【図6】図4のVI部分における要部断面図である。
【図7】第1実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための図である。
【図8】第2実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図9】第2実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための図である。
【図10】第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図11】第4実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図12】第4実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の本実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
≪第1実施形態≫
本実施形態に係る半導体装置は、スイッチング素子やダイオードを含む半導体モジュールと、半導体モジュールを冷却するための冷却器とからなるものである。このような半導体装置は、スイッチング素子の導通/非導通を制御することにより、直流電源からの直流電流を三相交流電流に変換することが可能となっており、例えば、ハイブリッド車や燃料電池車等の電動車両用駆動モーターへ電力を供給するインバータ装置に用いることができる。
【0011】
図1は第1実施形態に係る半導体装置を示す正面図、図2は図1に示す半導体装置の側面図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、3つの半導体モジュール2と、2つの冷却器3,7(第1冷却器3および第2冷却器7)とから構成されており、各半導体モジュール2を2つの冷却器3,7で挟み込むことにより、半導体装置1においては、半導体モジュール2を両面から冷却する両面冷却構造が採られている。
【0012】
冷却器3,7による冷却対象物である半導体モジュール2は、三相インバータブリッジ回路を個別に構成するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのトランジスタやダイオードからなる半導体素子21,22を有している。これら半導体素子21,22の両主面には、はんだ付けにより形成されたはんだ層23,24を介して、一対の電極25,26が接続されている。また、半導体装置1を構成する各半導体モジュール2は、端子電極27,28に電気的に接続されており、端子電極27,28を介して、電力の入力/出力が可能となっている。なお、半導体モジュール2は、通電により発熱することから、以下に説明する冷却器3,7により、除熱が行われることとなる。また、半導体素子21,22は、IGBTなどのトランジスタやダイオードに限定されるものではなく、他の発熱素子であってもよい。
【0013】
第1冷却器3および第2冷却器7は、半導体モジュール2を冷却するための冷却器であり、図1に示すように、第1冷却器3は、各半導体モジュール2の下側に配置されており、第2冷却器7は、各半導体モジュール2の上側に配置されている。ここで、図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
【0014】
第1冷却器3は、図3に示すように、各半導体モジュール2に対応して設けられた3つの第1放熱体4に、単一の第2放熱体5を組み合わせて構成されており、これら第1放熱体4と第2放熱体5とが組み合わさることにより、内部に冷媒が流れるための流路(以下、冷媒流路。)が形成されている。そして、導入パイプ31から、第1冷却器3内に形成された冷媒流路内に冷媒が連続的に導入され、導入された冷媒が、X方向に沿って、この冷媒流路を流れることにより、各半導体モジュール2により発生した熱を放熱できるようになっている。なお、第1冷却器3内に導入された冷媒は、排出パイプ32から連続的に排出されることとなる。また、第1冷却器3を構成する各第1放熱体4および第2放熱体5は、例えば、熱伝導性の優れたアルミニウムやアルミニウム合金などを原材料として、ダイカストや押出し成型などにより、それぞれ個別に成型されてなるものである。
【0015】
図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。この図4中においては、第1冷却器3を構成する3つの第1放熱体4のうち、冷媒流路の最も上流側に配置された第1放熱体4を通る断面を示している。以下、3つの第1放熱体4のうち、冷媒流路の最も上流側に配置された第1放熱体4を例示して説明を行なうが、他の第1放熱体4も同様の構成を有するものである。第1放熱体4は、図4に示すように、一方の主面に、半導体モジュール2が配置され、半導体モジュール2から伝達された熱を受熱するような構成となっている。また、第1放熱体4は、他方の主面に、受熱した熱を放熱するための放熱部41と、放熱部41を周囲する第1嵌合部43とを有している。なお、第1嵌合部43は、後述する第2放熱体5の第2嵌合部52に嵌合するための部分である。
【0016】
図5は、半導体素子21,22と放熱部41との位置関係を説明するための図であり、第1放熱体4をZ軸方向に沿って半導体モジュール2側から見た図である。なお、図5においては、半導体素子21,22を実線で、放熱フィン42a〜42eを破線で、放熱部41を一点鎖線で、それぞれ示している。図4、図5に示すように、放熱部41は、第2放熱体5側に向かって突出した複数の放熱フィン42a〜42eを有しており、これら複数の放熱フィン42a〜42eは、図4、図5に示すように、半導体素子21,22を中心として、Y方向に所定の間隔で配列されている。また、これら複数の放熱フィン42a〜42eは、図5に示すように、X方向(すなわち、冷媒の流れ方向)に沿って、連続的に延伸してなるものである。
【0017】
第1嵌合部43は、図4、図5に示すように、放熱部41を周囲している。第1嵌合部43は、シール部材6を介して、第2放熱体5の第2嵌合部53と嵌合されており、第1嵌合部43および第2嵌合部53を互いに嵌合することで、第1放熱体4と第2放熱体5とが組み合わされている。
【0018】
一方、第2放熱体5は、図4に示すように、第1放熱体4の放熱部41を受容する受容部51と、この受容部51を周囲する第2嵌合部53とを有している。図4に示すように、第2嵌合部53は、第1放熱体4の第1嵌合部43と、シール部材6を介して嵌合しており、これにより、受容部51は、図4に示すように、第1放熱体4の放熱部41(放熱フィン42a〜42eを含む)を受容しつつ、第1放熱体4の放熱部41とともに、冷媒流路を形成することとなる。
【0019】
そして、第1放熱体と第2放熱体とを組み合わせて形成された冷媒流路内に、冷媒を流通させることで、冷媒流路内を流通する冷媒により、第1放熱体4が冷却され、これにより、半導体モジュール2が冷却されるようになっている。具体的には、半導体モジュール2で発生した熱は、半導体モジュール2が配置されている第1放熱体4により受熱され、第1放熱体4の放熱フィン42a〜42eに熱拡散し、拡散した熱が、冷媒流路内を流れる冷媒により、第1放熱体4の放熱フィン42a〜42eが冷却されることで、第1放熱体4に配置された半導体モジュール2が冷却されることとなる。
【0020】
また、第1放熱体4と第2放熱体5との間には、図4に示すように、シール部材6が介装されている。このシール部材6は、各嵌合部43,53により両側から押圧された状態で介装されており、これにより、各嵌合部43,53にそれぞれ密着し、冷媒流路をシールしている。なお、シール部材6としては、特に限定されないが、例えば、ゴム材料などの弾性体からなるシールリングなどを用いることができる。
【0021】
図6は、図4のVI部分における要部断面図であり、図4に示す第1放熱体4の第1嵌合部43と第2放熱体5の第2嵌合部53との嵌合部分を示している。第1嵌合部43と第2嵌合部53との間には、図6に示すように、シール部材6が介装されており、シール部材6を介して、第1嵌合部43と第2嵌合部53とが嵌合されている。
【0022】
図6に示すように、第1嵌合部43には、高さh1の段差形状が設けられており、また、第2嵌合部53には、高さh2の段差形状が設けられている。そして、このように段差形状をそれぞれ有する第1嵌合部43および第2嵌合部53は、シール部材6を介して、嵌合されており、これにより、図6に示すように、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に、間隙100が形成されている。
【0023】
この間隙100は、図6に示すように、シール部材6により冷媒流路から隔てられており、シール部材6を間にして、冷媒流路が形成されている側と異なる側に形成されている。また、この間隙100は、図6に示すように、第1冷却器3の外部に連通して形成されているため、シール部材6は、冷媒流路側の部分において、冷媒と接する一方で、冷媒流路とは異なる間隙100側の部分において、該間隙100を介して、外気と接することとなる。
【0024】
この間隙100は、図6に示すように、幅がw1である第1部分101と、幅がw2である第2部分102とを有している。第1部分101は、第1嵌合部43の対向面44と、第2嵌合部53の対向面54とが、幅w1で対向することにより形成されている。また、図6に示すように、第1部分101は、第1嵌合部43の対向面44と第2嵌合部53の対向面54とにより、シール部材6を押圧することにより、幅w1で形成されてなるものである。そのため、シール部材6の配置位置における第1嵌合部43と第2嵌合部53との間の幅も、幅w1となっている。
【0025】
一方、第2部分102は、第1嵌合部43の対向面45と、第2嵌合部53の対向面55とが、幅w2で対向することにより、形成されている。本実施形態においては、この第2部分102の幅w2は、第1部分101の幅w1よりも、幅が狭く形成されている。すなわち、図6中において、間隙100の幅は、w1>w2の関係となるように形成されている。
【0026】
以上のように、第1冷却器3は構成される。
【0027】
また、半導体装置1は、図3、図4に示すように、上述した第1冷却器3以外に、第2冷却器7を備えており、第2冷却器7は、複数の放熱フィン71a〜71eと、導入パイプ72と、排出パイプ73とを有している。第2冷却器7においても、第1冷却器3と同様に、冷媒が、連続的に、導入パイプ72から第2冷却器7の冷媒流路内へと導入され、これにより、半導体モジュール2を冷却するようになっている。
【0028】
以上のように、本実施形態では、半導体モジュール2を冷却するための冷却器として、第1放熱体4と第2放熱体5とが組み合わされてなる第1冷却器3を有している。そして、この第1冷却器3においては、第1放熱体4の第1嵌合部43と第2放熱体5の第2嵌合部53との間には、間隙100が形成されており、この間隙100は、幅がw1である第1部分101と、幅がw2である第2部分102とを有し、この第2部分102の幅w2が、第1部分101の幅w1よりも、幅が狭く形成されている。これにより、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、劣化したシール部材6が、幅の狭い第2部分102において、冷媒流路を適切にシールすることができるため、冷媒の漏れを有効に防止することができる。具体的には、図6に示すように、シール部材6は、劣化していない初期状態においては、図6に示す位置において、第1嵌合部43と第2嵌合部53とにより挟持され、冷媒流路をシールしている。そして、図7に示すように、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、図7に示す位置において、冷媒流路をシールすることができる。すなわち、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、第1部分101よりも狭い幅を有する第2部分102において、冷媒流路を適切にシールすることができる。すなわち、シール部材6の自封効果により、冷媒流路を適切にシールすることができる。ここで、図7は、第1実施形態に係る半導体装置1の作用効果を説明するための図であり、図7に示す断面は、図6に示す断面に相当するものである。
【0029】
すなわち、図6に示す初期状態においては、シール部材6は、第1嵌合部43の対向面44と第2嵌合部53の対向面54とにより両側から押圧されており、第1嵌合部43および第2嵌合部53に密着している。そのため、シール部材6は、図6に示す位置で、第1嵌合部43と第2嵌合部53とにより挟持され、冷媒流路をシールしている。
【0030】
一方、シール部材6が劣化し、シール部材6の弾性力の低下や、シール部材6の変形などにより、シール部材6のシール性能が低下した場合、シール部材6と第1嵌合部43との間、および、シール部材6と第2嵌合部53との間の密着力は小さくなる。ここで、シール部材6は、上述したように、冷媒流路側において、冷媒流路内を流れる冷媒と接しており、冷媒の圧力により、間隙100側へと押圧されている一方、シール部材6は、間隙100側において、間隙を介して、外気と接しており、外気からの圧力により、冷媒流路側へと押圧されている。通常、冷媒の圧力は外気の圧力よりも大きく、シール部材6には、間隙側に押し上げる押圧力がより大きく掛かることとなる。そのため、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合、シール部材6は、冷媒の押圧力に耐え切れず、図7に示すように、間隙100側に向かって、図7に示す位置まで、押し上げられることとなる。
【0031】
ここで、上述したように、第1嵌合部43と第2嵌合部53との間に形成された間隙100は、幅がw1である第1部分101と、幅がw2である第2部分102とを有しており、第2部分の幅w2は、第1部分の幅w1よりも、幅が狭く形成されている。そのため、本実施形態によれば、冷媒の圧力により間隙100側に押し上げられたシール部材6は、図7に示す位置に移動し、図7に示す位置において、冷媒流路を適切にシールすることができ、これにより、冷媒流路からの冷媒の漏出を有効に防止することができる。
【0032】
≪第2実施形態≫
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係る第1冷却器3aの断面図であり、図4のIV部分に相当する部分における要部断面図である。第2実施形態においては、第1冷却器3aが、以下に説明する点において、第1実施形態の第1冷却器3と異なる以外は、上述の第1実施形態と同様の構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
【0033】
図8に示すように、第1冷却器3aは、第1放熱体4aの第1嵌合部43aに、第2放熱体5の対向面54に対向するテーパー面44aが形成されており、この点において、第1実施形態に係る第1冷却器3と異なる。なお、このテーパー面44aは、例えば、個別成型した第1放熱体の嵌合部を、切削加工することにより設けることができる。
【0034】
そして、テーパー面44aが設けられた第1嵌合部43aと、段差形状が設けられた第2嵌合部53とは、シール部材6を介して、嵌合されており、これにより、図8に示すように、第1嵌合部43aと第2嵌合部53との間に、間隙100aが形成されている。
【0035】
この間隙100aは、図8に示すように、シール部材6の配置位置から遠いほど、幅が連続的に狭くなる第1部分101aと、幅がw2である第2部分102aとを有している。
【0036】
第1部分101aは、第1嵌合部43aのテーパー面44aと、第2嵌合部53の対向面54との間に形成される間隙であり、第1部分101aは、図8に示すように、テーパー面44aが対向面54に対して傾いて形成されているため、第1部分101aの幅は、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、連続的に狭くなっている。すなわち、図8に示すように、第1部分101aは、シール部材6の配置位置付近において、その幅が最も広くなるように形成されている。
【0037】
一方、第2部分102aは、第1嵌合部43aの対向面45aと、第2嵌合部53の対向面55とが、幅w2で対向することにより、形成されている。本実施形態においては、この第2部分102aの幅w2は、第1部分101aの幅よりも、幅が狭く形成されている。
【0038】
以上のように、第2実施形態では、第1嵌合部43aにテーパー面44aが設けられており、テーパー面44aを有する第1嵌合部と、段差形状を有する第2嵌合部53との間に、間隙100aが形成されている。そして、この間隙100aは、第1部分101aと、第2部分102aとを有しており、この第1部分101aは、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、幅が連続的に狭く形成されている。これにより、第1冷却器3aでは、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、劣化したシール部材6が、第1部分中のシール部材6の劣化度合いに応じた位置において、冷媒流路を連続的にシールすることができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。すなわち、シール部材6の自封効果を持続することができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。
【0039】
具体的には、シール部材6は、劣化していない初期状態においては、図8に示す位置で、第1嵌合部43aと第2嵌合部53とにより挟持され、冷媒流路をシールしている。そして、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合、冷媒の圧力により、間隙100a側に向かって、徐々に押し上げられていくこととなる。
【0040】
ここで、上述したように、第1嵌合部43aと第2嵌合部53との間に形成された間隙100aは、テーパー面44aと対向面54との間に形成された第1部分101aを有しており、この第1部分101aは、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、連続的に幅が狭く形成されている。そのため、シール部材6が劣化すると、シール部材6は、劣化度合いに応じて、徐々に間隙100a側に移動し、例えば、図9(A)に示す位置で、第1嵌合部43aと第2嵌合部53とに挟持され、冷媒流路をシールする。
【0041】
そして、同様に、シール部材6がさらに劣化していくと、シール部材6は、劣化度合いに応じて、徐々に間隙100a側に移動し、例えば、図9(A)に示す位置よりさらに幅の狭い図9(B)に示す位置で冷媒流路をシールし、その後、さらにシール部材6が劣化した場合には、例えば、図9(B)に示す位置よりさらに幅の狭い図9(C)に示す位置で、冷媒流路をシールする。このように、第2実施形態に係る第1冷却器3aでは、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、シール部材6は、シール部材6の劣化度合いに応じて、冷媒流路を連続的にシールすることができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。なお、図9は、第2実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための図であり、図9は、図8に示す断面に相当する断面における断面図である。
【0042】
≪第3実施形態≫
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。図10は、第3実施形態に係る第1冷却器3bの断面図であり、図4のIV部分に相当する要部断面図である。第3実施形態においては、第1冷却器3bが、以下に説明する点において、第1実施形態の第1冷却器3と異なる以外は、上述の第1実施形態と同様の構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
【0043】
図10に示すように、第1冷却器3bは、第1放熱体4bの第1嵌合部43bにテーパー面44bが、第2放熱体5bの第2嵌合部53bに、テーパー面44bに対向するテーパー面54bが、それぞれ形成されており、これらの点において、第1実施形態に係る第1冷却器3と異なる。なお、テーパー面43bおよびテーパー面54bは、例えば、個別成型した各放熱体の嵌合部を、切削加工することにより設けることができる。
【0044】
そして、テーパー面44bが設けられた第1嵌合部43bと、テーパー面54bが設けられた第2嵌合部53bとは、シール部材6を介して、嵌合されており、図10に示すように、第1嵌合部43bと第2嵌合部53bとの間に、間隙100bが形成されている。
【0045】
この間隙100bは、図10に示すように、シール部材6の配置位置から遠いほど、幅が連続的に狭くなる第1部分101bと、幅がw2である第2部分102bとを有している。
【0046】
第1部分101bは、第1嵌合部43bのテーパー面44bと、第2嵌合部54bのテーパー面54bとの間に形成される間隙であり、第1部分101bは、図10に示すように、テーパー面44bの傾斜角度とテーパー面54bの傾斜角度とが互いに異なるため、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、その幅が連続的に狭くなっている。すなわち、図10に示すように、第1部分101bは、シール部材6の配置位置付近において、その幅が最も広くなるように形成されている。
【0047】
一方、第2部分102bは、第1嵌合部43bの対向面45bと、第2嵌合部53bの対向面55bとが、幅w2で対向することにより、形成されている。本実施形態においては、この第2部分102bの幅w2は、第1部分101bの幅よりも、幅が狭く形成されている。
【0048】
以上のように、第3実施形態では、第1嵌合部43bにテーパー面44bが、第2嵌合部53bにテーパー面54bがそれぞれ設けられており、テーパー面44bを有する第1嵌合部43bとテーパー面54bを有する第2嵌合部53bとの間に、間隙100bが形成されている。そして、この間隙100bは、第1部分101bと、第2部分102bとを有しており、この第1部分101bは、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、幅が連続的に狭く形成されている。これにより、第3実施形態に係る第1冷却器3bでは、第2実施形態に係る第1冷却器3aと同様に、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、シール部材6が、シール部材6の劣化度合いに応じた位置において、冷媒流路をより適切にシールすることができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。すなわち、シール部材6の自封効果を持続することができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。
【0049】
≪第4実施形態≫
続いて、本発明の第4実施形態について説明する。図11は、第4実施形態に係る第1冷却器3cの断面図であり、図4のIV部分に相当する要部断面図である。第4実施形態においては、第1冷却器3cが、以下に説明する点において、第1実施形態の第1冷却器3と異なる以外は、上述の第1実施形態と同様の構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。
【0050】
図11に示すように、第1冷却器3cにおいては、第1放熱体4cの第1嵌合部43cに凹曲面44cが、第2放熱体5cの第2嵌合部53cに凸曲面54cが、それぞれ形成されており、第1冷却器3cは、この点において、第1実施形態の第1冷却器3と異なる。なお、この凹曲面44cと凸曲面54cとは、図11に示すように、互いに異なる曲面形状に形成されている。
【0051】
そして、凹曲面44cが設けられた第1嵌合部43cと、凸曲面54cが設けられた第2嵌合部53cとは、シール部材6を介して、嵌合されており、これにより、図11に示すように、第1嵌合部43cと第2嵌合部53cとの間に、間隙100cが形成されている。
【0052】
この間隙100cは、図11に示すように、シール部材6から遠いほど、幅が連続的に狭くなる第1部分101cと、幅がw2である第2部分101cとを有している。
【0053】
第1部分101cは、第1嵌合部43cの凹曲面44cと、第2嵌合部53cの凸曲面54cとの間に形成される間隙であり、第1部分101cの幅は、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、連続的に狭くなっている。すなわち、図11に示すように、第1部分101cは、シール部材6の配置位置付近において、その幅が最も広くなるように形成されている。
【0054】
一方、第2部分102cは、第1嵌合部43cの対向面45cと、第2嵌合部53cの対向面55cとが、幅w2で対向することにより、形成されている。本実施形態においては、この第2部分102cの幅w2は、第1部分101cの幅よりも、幅が狭く形成されている。
【0055】
以上のように、第4実施形態では、第1嵌合部43cに凹曲面44cが、第2嵌合部53cに凸曲面54cがそれぞれ設けられており、凹曲面44cが形成された第1嵌合部43cと、凸曲面54cが形成された第2嵌合部53cとの間に、間隙100cが形成されている。そして、この間隙100cは、第1部分101cと、第2部分102cとを有しており、これらのうち、第1部分101cは、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、幅が連続的に狭く形成されている。これにより、第4実施形態においては、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、シール部材6が、第1部分101c中のシール部材6の劣化度合いに応じた位置において、冷媒流路を連続的にシールすることができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。すなわち、シール部材6の自封効果を持続することができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。
【0056】
具体的には、シール部材6は、劣化していない初期状態においては、図11に示す位置で、第1嵌合部43cと第2嵌合部53cとにより挟持され、冷媒流路をシールしている。そして、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合には、シール部材6は、冷媒の圧力により、間隙100c側に向かって、徐々に押し上げられていくこととなる。
【0057】
ここで、上述したように、第1部分101cは、シール部材6の配置位置から遠くなるほど、連続的に幅が狭く形成されている。そのため、シール部材6が劣化すると、シール部材6は、劣化度合いに応じて、徐々に間隙100a側に移動し、例えば、図12(A)に示す位置で、第1嵌合部43cと第2嵌合部53cとにより挟持され、冷媒流路をシールする。
【0058】
そして、同様に、シール部材6がさらに劣化していくと、シール部材6は、劣化度合いに応じて、徐々に間隙100a側に移動し、例えば、図12(A)に示す位置よりもさらに幅の狭い図12(B)に示す位置で冷媒流路をシールし、その後、さらにシール部材6が劣化した場合には、例えば、図12(B)よりもさらに幅が狭い図12(C)に示す位置で冷媒流路をシールし、さらにシール部材が劣化した場合には、例えば、図12(C)よりもさらに幅が狭い図12(D)に示す位置で、冷媒流路をシールする。このように、第4実施形態に係る第1冷却器3cでは、シール部材6が劣化し、シール部材6のシール性能が低下した場合でも、シール部材6は、シール部材6の劣化度合いに応じた位置において、冷媒流路を連続的にシールすることができるため、冷媒流路からの冷媒の漏出をより有効に防止することができる。なお、図12は、第4実施形態に係る半導体装置の作用効果を説明するための図であり、図12は、図11に示す断面に相当する断面における断面図である。
【0059】
さらに、本実施形態では、シール部材6と接する第1嵌合部43cの凹曲面44c、およびシール部材6と接する第2嵌合部53cの凸曲面54cは、いずれも曲面形状となっているため、シール部材6の凹曲面44cとの接点、およびシール部材6の凸曲面54cとの接点は、第1部分101c中のシール部材6の位置に応じて、徐々に変化していくこととなる。
【0060】
例えば、図11および図12に示すシール部材6を例示して説明すると、図11に示す初期状態では、シール部材6は、凹曲面44cおよび凸曲面54cと、それぞれ接点61,62で接している。一方、シール部材6は、図12(A)に示す位置では、図11に示す接点61,62とは異なる接点61a,62aで、それぞれ凹曲面44cおよび凸曲面54cと接することとなる。同様に、シール部材6は、図12(B)〜(D)に示す位置では、それぞれ異なる接点、すなわち、接点61b,62b(図12(B))、接点61c,62c(図12(C))、接点61d,62d(図12(D))にて、凹曲面44cおよび凸曲面54cと接することとなる。
【0061】
このように、シール部材と凹曲面44cとの接点、シール部材6と凸曲面54cとの接点は、第1部分101c中のシール部材6の位置に応じて、連続的に変化している。そのため、例えば、図11においては、シール部材6と凹曲面44cとの接点61、およびシール部材6と凸曲面54cとの接点62は、略Y方向に沿った線上に位置しているのに対し、シール部材6が間隙100c側に徐々に押し上げられていくと、シール部材6と凹曲面44cとの接点、およびシール部材6と凸曲面54cとの接点は、反時計回りに、徐々に変化していき、図12(D)においては、シール部材6と凹曲面44cとの接点61d、およびシール部材6と凸曲面54cとの接点62dは、略Z方向に沿った線上に位置することとなる。
【0062】
このように、シール部材6が劣化し、シール部材6が間隙100c側に押し上げられていくと、シール部材6の凹曲面44cとの接点、およびシール部材6の凸曲面54cとの接点は、第1部分101c中のシール部材6の位置に応じて、連続的に変化していくこととなるため、シール部材6の劣化を有効に抑制することができ、シール部材6のシール性能をより持続させることができる。
【0063】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0064】
例えば、上述した実施形態においては、3つの半導体モジュール2を、2つの冷却器3,7で冷却する半導体装置1を例示したが、半導体装置1が備える半導体モジュールの数は特に限定されず、例えば、インバータ装置に用いられる半導体装置においては、6つの半導体モジュールを備える構成としてもよい。あるいは、単一の半導体モジュールを冷却器3,7で冷却する構成としてもよく、その場合には、第1冷却器3を、単一の第1放熱体と単一の第2放熱体とを組み合わせてなるものとすることができる。
【0065】
また、上述した実施形態では、第1冷却器3と第2冷却器7とを半導体モジュール2の両主面に配置し、半導体モジュール2を両側から冷却する半導体装置1を例示したが、半導体装置1の構成はこれに限定されず、例えば、第2冷却器7を第1冷却器3と同様の構成としてもよいし、または、半導体モジュール2の片面のみを単一の第1冷却器3で冷却する構成としてもよい。
【0066】
なお、上述した実施形態の半導体素子21,22は本発明の発熱素子に、第1放熱体4,4a,4b,4cは本発明の第1放熱体に、第1嵌合部43,43a,43b,43cは本発明の第1嵌合部に、第2放熱体5,5b,5cは本発明の第2放熱体に、第2嵌合部53,53b,53cは本発明の第2嵌合部に、シール部材6は本発明のシール部材に、それぞれ相当する。
【符号の説明】
【0067】
1…半導体装置
2…半導体モジュール
21,22…半導体素子
23,24…はんだ層
25,26…電極
27,28…電極端子
3,3a,3b,3c…第1冷却器
4,4a,4b,4c…第1放熱体
41…放熱部
42a〜42e…放熱フィン
43,43a,43b,43c…第1嵌合部
44,45,45a,45b,45c…対向面
44a,44b…テーパー面
44c…凹曲面
5,5b,5c…第2放熱体
53,53b,53c…第2嵌合部
54,55,55b,55c…対向面
54b…テーパー面
54c…凸曲面
6…シール部材
7…第2冷却器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子が配置される主面と、放熱部および該放熱部を周囲する第1嵌合部が形成された他の主面と、を有する第1放熱体と、
前記第1放熱体と組み合わせることで、前記放熱部を受容して冷媒流路を形成する受容部と、前記受容部を周囲する第2嵌合部とを有する第2放熱体と、
前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間に介装され、前記冷媒流路をシールするシール部材と、を備える発熱素子の冷却装置であって、
前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間には、前記冷媒流路と異なる側に、前記シール部材により、前記冷媒流路から隔てられた間隙が形成されており、
前記間隙には、少なくとも一部に、前記シール部材の配置位置における前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間の幅よりも、幅の狭い部分である幅狭部が形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記幅狭部は、前記第1嵌合部および/または前記第2嵌合部に段差形状を設けることにより形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記幅狭部は、前記シール部材の配置位置からの距離が遠くなるほど、連続的に幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記幅狭部は、前記第1嵌合部および前記第2嵌合部のいずれか一方にテーパー面を設けることにより、連続的に幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項5】
請求項3に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記幅狭部は、前記第1嵌合部および前記第2嵌合部の両方にテーパー面を設けることにより、連続的に幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項6】
請求項3に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記幅狭部は、前記第1嵌合部および前記第2嵌合部に、互いに異なる曲面形状を設けることにより、連続的に幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記シール部材は、前記冷媒流路を流れる冷媒により押圧された場合に、前記間隙側からの押圧力よりも強い押圧力で押圧されるようになっていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記シール部材は、弾性体であることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項1】
発熱素子が配置される主面と、放熱部および該放熱部を周囲する第1嵌合部が形成された他の主面と、を有する第1放熱体と、
前記第1放熱体と組み合わせることで、前記放熱部を受容して冷媒流路を形成する受容部と、前記受容部を周囲する第2嵌合部とを有する第2放熱体と、
前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間に介装され、前記冷媒流路をシールするシール部材と、を備える発熱素子の冷却装置であって、
前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間には、前記冷媒流路と異なる側に、前記シール部材により、前記冷媒流路から隔てられた間隙が形成されており、
前記間隙には、少なくとも一部に、前記シール部材の配置位置における前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間の幅よりも、幅の狭い部分である幅狭部が形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記幅狭部は、前記第1嵌合部および/または前記第2嵌合部に段差形状を設けることにより形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記幅狭部は、前記シール部材の配置位置からの距離が遠くなるほど、連続的に幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記幅狭部は、前記第1嵌合部および前記第2嵌合部のいずれか一方にテーパー面を設けることにより、連続的に幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項5】
請求項3に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記幅狭部は、前記第1嵌合部および前記第2嵌合部の両方にテーパー面を設けることにより、連続的に幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項6】
請求項3に記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記幅狭部は、前記第1嵌合部および前記第2嵌合部に、互いに異なる曲面形状を設けることにより、連続的に幅が狭くなるように形成されていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記シール部材は、前記冷媒流路を流れる冷媒により押圧された場合に、前記間隙側からの押圧力よりも強い押圧力で押圧されるようになっていることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の発熱素子の冷却装置であって、
前記シール部材は、弾性体であることを特徴とする発熱素子の冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−198822(P2011−198822A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61159(P2010−61159)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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