説明

発電制御システム

【課題】
発電と電力貯蔵とを行い、地域的にエネルギーを効率的に利用できるようにする発電制御システムを提供する。
【解決手段】
複数の発電手段1,2と電力を消費する複数の負荷手段12,13,14とを含む特定地域の電力供給網11aにおいて発電を制御する発電制御システムであって、各負荷手段12,13,14における電力消費量を監視する監視手段30と、複数の発電手段1,2を制御する制御手段40と、電力を貯蔵する電力貯蔵手段15,4とを備え、制御手段40は、監視手段30から送られてくる各負荷手段12,13,14の電力消費量の情報を受けて、発電手段1,2の発電量の制御を行い、各負荷手段12,13,14にて消費しきれない電力を電力貯蔵手段15,4に一時的に貯蔵する発電制御システムとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定地域の電力供給網において発電を制御する発電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自然エネルギーを利用した発電は天候に左右されがちである。例えば、風力発電の場合には風の強弱によって発電量が左右され、太陽光発電の場合には日照の強弱あるいは日照時間の長短によって発電量が左右される。このため、これらの自然エネルギーで得られた電力を安定的に利用するためには、バッテリーなどの電力貯蔵装置が必要になる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−176696号公報(特許請求の範囲、要約書等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来技術には、次のような問題がある。それは、大量のエネルギーを貯蔵したり、遠隔地にエネルギーを送る場合には、バッテリーを用いたエネルギーの貯蔵では限界があるということである。このような課題に鑑みて、本発明者は、不飽和炭化水素に水素を付加した有機ハイドライドの形態で、エネルギーの貯蔵および輸送を行うことを考えた。
【0004】
このようなエネルギーの貯蔵および輸送を効率的に実施するには、電力を消費する場所における電力消費量を考慮してできるだけ余剰の電力を生じないようにすると共に、発生した余剰の電力については、これを電力あるいは他の形態に変換したもので消費させることが望まれている。特に、エネルギーのよりよい形態を含め、地域的にエネルギーを過不足無く利用するようにすることが望まれている。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、発電と電力貯蔵とを行い、地域的にエネルギーを効率的に利用できるようにする発電制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の発電手段と電力を消費する複数の負荷手段とを含む特定地域の電力供給網において発電を制御する発電制御システムであって、各負荷手段における電力消費量を監視する監視手段と、複数の上記発電手段を制御する制御手段と、電力を貯蔵する電力貯蔵手段とを備え、制御手段は、監視手段から送られてくる各負荷手段の電力消費量の情報を受けて、発電手段の発電量の制御を行い、各負荷手段にて消費しきれない電力を電力貯蔵手段に一時的に貯蔵する発電制御システムとしている。
【0007】
このため、特定地域の電力供給網において、電力消費量に応じた発電量の制御を行うことができ、無駄な発電を防止することができる。加えて余った電力が生じた場合には、水素、有機ハイドライド、その他の形態にて当該電力を貯蔵し、必要に応じてこれらを使用することができる。
【0008】
また、別の本発明は、先の発明における発電手段として、風力発電、ディーゼル発電、バイオマス発電、太陽光発電、原子力発電、水力発電、ガス発電、火力発電、地熱発電の内少なくとも1つを含む発電制御システムとしている。このため、各種発電所における発電量を制御し、電力消費量に応じた発電をすることができる。特に、自然エネルギーを利用した風力発電、太陽光発電若しくは地熱発電、廃棄物を利用したバイオマス発電にも適用可能であるため、化石燃料の枯渇、自然破壊、環境汚染等のリスクの少ないエネルギー循環システムの構築に有益である。
【0009】
また、別の本発明は、先の各発明における負荷手段において消費しきれない電力を用いて水を分解して水素と酸素とを生成させる水電解手段と、芳香族化合物と水電解手段によって得られた水素とを反応させて有機ハイドライドとして水素を貯蔵する水素貯蔵手段と、有機ハイドライドの脱水素反応を利用して水素を取り出して外部に供給する水素供給手段と、水素供給手段からの水素を利用して、電力あるいは熱の形態でエネルギーに変換するエネルギー変換手段とをさらに備え、水素貯蔵手段は、負荷手段にて消費しきれない電力を利用して生成した水素を有機ハイドライドの形で貯蔵し、水素供給手段は、その有機ハイドライドから水素を取り出し、エネルギー変換手段は、水素を電力あるいは熱として負荷手段に供給する発電制御システムとしている。
【0010】
このため、電力供給網に存する各負荷手段において余剰の電力が生じた場合、その電力を有機ハイドライドの形態にて容易に貯蔵でき、かつトラック等の輸送手段によって遠隔地に容易に輸送することができる。また、有機ハイドライドを脱水素して水素を自動車用の動力源として供給することもできる。脱水素によって生じた芳香族炭化水素は、回収して水素貯蔵手段に戻しておくと、水素との付加反応によって有機ハイドライドを得ることもできる。このように、芳香族炭化水素と有機ハイドライドとの間における可逆的な水素との反応を利用して、エネルギー循環システムを構築できる。
【0011】
また、別の本発明は、先の各発明において、水電解手段で得られた酸素を貯蔵若しくは搬送する酸素貯蔵・搬送手段と、酸素貯蔵・搬送手段からの酸素を消費する水産系養殖場、好気性植物の栽培場若しくは地域内のゴミ焼却場に代表される酸素消費手段と、電力あるいは熱を酸素消費手段に供給するエネルギー供給手段とを備える発電制御システムとしている。このため、水電解手段によって生じた酸素を、酸素を必要とする酸素消費手段において有効活用することができる。さらに、酸素消費手段において電力若しくは熱が必要な場合には、水素と酸素との反応から水を得る際に生じた熱エネルギー等を利用して、これを酸素消費手段に送ることができる。
【0012】
また、別の本発明は、先の各発明において、電力貯蔵手段は、蓄電池、フライホール、その電力を用いた水分解により生成した水素と芳香族化合物との反応から有機ハイドライドを生成する水素貯蔵手段、水素貯蔵合金あるいは水素タンクの内少なくとも1つである発電制御システムとしている。このため、余剰の電力を利用しやすい形態で貯蔵することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発電と電力貯蔵とを行い、地域的にエネルギーを効率的に利用できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る発電制御システムの実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明で採用している水素付加反応について簡単に説明する。次に示す3種類の反応式は、不飽和炭化水素(芳香族炭化水素など)の水素付加反応を示す式である。これらの反応式に示すように、不飽和炭化水素への水素付加によって、飽和炭化水素が生成される。
【0016】
10+5H→C1018(ナフタレンの水素付加反応)
+3H →C12 (ベンゼンの水素付加反応)
+3H→C14(トルエンの水素付加反応)
【0017】
不飽和炭化水素のように炭素同士の結合に二重結合あるいは三重結合を含む炭化水素系の原料の水素付加反応を利用することによって、外部からの水素を貯蔵することができる。以後、この実施の形態では、デカリン、シクロヘキサンあるいはメチルシクロヘキサンのように、それ自体に存在する水素を外部に放出できる炭化水素系の原料を総称して「有機ハイドライド」と称し、ナフタレン、ベンゼンあるいはトルエンのように、外部からの水素と結合して水素を貯蔵できる炭化水素系の原料を総称して「芳香族炭化水素」と称する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る発電制御システムを含む地域エネルギー循環システムの概略を示す概略図である。この実施の形態では、芳香族炭化水素として、ベンゼンを用い、有機ハイドライドとして、ベンゼンの水素付加により生成するとシクロヘキサンを用いている例を示している。
【0019】
この地域エネルギー循環システムには、自然エネルギーの一形態である風力を利用して発電を行う風力発電所(発電手段の一形態)1、原子力発電所(発電手段の一形態)2、水分解装置(水電解手段の一形態)3、水素とベンゼンとからシクロヘキサンを合成する水素貯蔵装置(水素貯蔵手段および電力貯蔵手段の一形態)4およびシクロヘキサンを貯蔵するタンク5がある。風力発電所1および原子力発電所2において発電された電気の一部は、水分解装置3に送られ、水分解装置3において水を水素と酸素に分解するエネルギーとして利用される。水分解装置3で生成した水素は、水素貯蔵装置4に送られる。水素貯蔵装置4にはベンゼンが貯蔵されており、水素貯蔵装置4では、水素とベンゼンとの水素付加反応によりシクロヘキサンが生成される。そのシクロヘキサンは、タンク5内に貯蔵可能である。また、水分解装置3で生成した酸素の一部または全部は、酸素消費手段の一形態であるゴミ焼却場6あるいは水産系養殖場7に送られ、ゴミの燃焼効率の向上あるいは水産物の成長に寄与する。
【0020】
タンク5内のシクロヘキサンは、海上では、タンカー8によって、また、陸上では、トラック9によって、それぞれ遠隔地に運ぶようにすることもできる。なお、水素貯蔵装置4から、タンク5を経ることなく、直接にシクロヘキサンをタンカー8あるいはトラック9に積むようにしても良い。
【0021】
風力発電所1で発電された電気は、高電圧にて鉄塔10を経由して、地域の電力供給網11aに送られる。当該電力供給網11aには、多くの住宅12、工場13、オフイス14が電力供給可能な状態でつながっている。住宅12、工場13、オフイス14のように、電力を消費する場所を「負荷手段」という。また、電力供給網11aには、電力貯蔵手段としてのバッテリー15(蓄電池の一形態)が接続されており、電力供給網11aの電気を蓄電可能となっている。
【0022】
また、地域エネルギー循環システムにおける所定の場所には、水素供給手段の一形態である水素スタンド16が設置されている。水素スタンド16では、シクロヘキサンの脱水素反応によってベンゼンと水素とが生成する。自動車17は、水素スタンド16において生成する水素を、自動車17内部の燃料電池に取り込むと共に、当該水素と外気経由の酸素とから水を合成し、当該合成反応により発生したエネルギーを利用して動力を得る。
【0023】
水素スタンド16では、シクロヘキサンの分解によってベンゼンが生成する。当該ベンゼンは、定期的に、トラック18に積載されて、水素貯蔵装置4に運ばれる。水素貯蔵装置4内に入れられたベンゼンは、水分解装置3から送られてくる水素との水素付加反応に利用される。さらに、電力供給網11aには、大型の燃料電池(エネルギー変換手段およびエネルギー供給手段の一形態)19が接続されている。燃料電池19には、シクロヘキサンの脱水素反応により水素を生成し外部に供給する水素供給装置(水素供給手段およびエネルギー供給手段の一形態)20が接続されている。トラック9を介して水素供給装置20にシクロヘキサンを供給すると、脱水素反応により水素とベンゼンが生成する。水素は、燃料電池19に運ばれて、外気経由の酸素との反応に利用される。その結果、水が合成され、当該合成により発生したエネルギーが電力供給網11aにつながる住宅12等に利用される。一方、水素供給装置20内のベンゼンは、トラック18に積載されて、水素貯蔵装置4に運ばれる。
【0024】
また、地域エネルギー循環システムには、住宅12等で構成されるコミュニティ11bも存在する。コミュニティ11bには、大型の燃料電池19が接続されている。さらに、燃料電池19には、水素供給装置20が接続されている。トラック9を介して水素供給装置20にシクロヘキサンを供給すると、脱水素反応により水素とベンゼンが生成する。水素は、燃料電池19に運ばれて、外気経由の酸素との反応に利用される。その結果、水が合成され、当該合成により発生したエネルギーがコミュニティ11bを構成する住宅12等に利用される。一方、水素供給装置20内のベンゼンは、トラック18に積載されて、水素貯蔵装置4に運ばれる。
【0025】
また、電力供給網11aは、温水配管21と接しており、温水配管21において電力を利用して温水がつくられる。当該温水の一部は、水分解装置3にも供給され、その他は住宅12等の暖房にも利用される。
【0026】
電力供給網11aは、各住宅12、工場13、オフイス14等の負荷手段における電力消費量を監視する監視手段としての電力監視装置30に電気的に接続されている。また、風力発電所1および原子力発電所2は、これら発電所1,2における発電量を制御する制御手段としての発電制御装置40に電気的に接続されている。電力監視装置30と、発電制御装置40と、バッテリー15および水素貯蔵装置4の内少なくとも1つを含む電力貯蔵手段とは、この実施の形態に係る発電制御システムを構成する構成体である。発電制御装置40は、後述するように、電力監視装置30から送られてくる各負荷手段12,13,14の電力消費量の情報を受けて、有機ハイドライドとして貯蔵されている水素を使用し、燃料電池19により電力として取り出し、若しくはバッテリー15を使用して電力を取り出したり、風力発電所1および原子力発電所2の発電量の制御を行う。また、発電制御装置40は、各負荷手段12,13,14にて消費しきれない電力をバッテリー15および水素貯蔵装置4に一時的に貯蔵させるようにする。
【0027】
図2は、実施の形態に係る発電制御システムにおける制御を説明するための概略図である。
【0028】
電力監視装置30は、主に中央演算処理装置(Central Processing Unit: CPU)から構成される制御部31と、各種データを読み書き可能に記憶するメモリ(Random Access Memory: RAM)32と、制御部31の制御プログラム等を一方的に読むように格納しておくメモリ(Read Only Memory: ROM)33と、外部とのデータ通信を司るインターフェイス34,35とを備えている。
【0029】
発電制御装置40は、主にCPUから構成される制御部41とRAM42と、制御部41の制御プログラム等を一方的に読むように格納しておくROM43と、外部とのデータ通信を司るインターフェイス44,45とを備えている。
【0030】
電力監視装置30の制御部31は、インターフェイス34を通じて、常にあるいは一定時間おきに、電力供給網11aにおける各負荷手段(住宅12、工場13、オフイス14等の電力を消費する場所)の電力消費量を監視し、当該電力消費量のデータをRAM32に記憶する。また、制御部31は、電力消費量のデータを、インターフェイス35を通じて、発電制御装置40へと送信する。ここで、電力消費量の監視は、各負荷手段単位の電力消費量および電力供給網11aに繋がる全負荷手段の総電力消費量の内、少なくともいずれか一方の電力消費量の監視である。
【0031】
また、制御部31は、風力発電所1および原子力発電所2から電力供給網11aに供給されている電力供給量のデータを、インターフェイス34を通じて受信し、そのデータをRAM32に記憶すると共に、インターフェイス35を通じて、発電制御装置40へと送信する。
【0032】
発電制御装置40の制御部41は、インターフェイス44を通じて、電力監視装置30側から、電力供給量、電力消費量、バッテリー15に貯蔵される電力貯蔵量の各データを受信し、これらのデータをRAM42に記憶する。制御部41は、電力供給量が電力供給網11a内の電力消費量およびバッテリー15および水素貯蔵装置4の電力貯蔵能力に比べて過剰であると判断した場合には、インターフェイス45を通じて、風力発電所1および原子力発電所2の発電制御システムに対して、発電を抑えるようにコマンドを送る。なお、制御部41は、予めROM43に格納されている各発電手段(風力発電所1、原子力発電所2等)の発電調整範囲のデータを参照して、各発電手段毎に、出力の低減量を決定する。また、制御部41は、各発電手段の運転状況をモニタし、その結果をも考慮して、発電を抑えるようにコマンドを送る。
【0033】
制御部41は、電力供給網11aに供給されている電力供給量のデータと、電力消費量のデータとを比較し、電力供給量が電力消費量を上回っていると判断すると、その差分の電力量若しくはその差分から所定量を差し引いた分の電力量をバッテリー15に貯蔵するように、電力供給網11a側にコマンドを送る。また、制御部41は、バッテリー15のみならず、水分解装置3を通じて余剰の電力を使用して水素を製造して、その水素を水素貯蔵装置4にて有機ハイドライドの形態で貯蔵するようにできる。電力供給網11aは、図示されていない電力分岐システムを備えており、当該電力分岐システムは、制御部41から送られてきたコマンドに基づいて、バッテリー15への電力貯蔵を行う。制御部41は、バッテリー15に貯蔵されている電力量のデータをRAM42に記憶する。なお、電力制御装置40が、直接、バッテリー15を制御するようにしても良い。
【0034】
一方、制御部41は、電力供給量が電力供給網11a内の電力消費量に比べて不足している場合には、有機ハイドライドとして貯蔵されている水素を使用し、燃料電池19により電力として取り出し、若しくはバッテリー15を使用して電力を取り出し、これらを優先的に利用するように、電力供給網11a側にコマンドを送る。制御部41は、このような処理によっても、まだ電力が不足していると判断した場合には、インターフェイス45を通じて、風力発電所1および原子力発電所2の発電制御システムに対して、発電量を増大するようにコマンドを送る。この場合でも、制御部41は、予めROM43に格納されている各発電手段(風力発電所1、原子力発電所2等)の発電量調整範囲のデータを参照して、各発電手段毎に、発電量を決定する。また、制御部41は、各発電手段の運転状況をモニタし、その結果をも考慮して、発電量を増大するようにコマンドを送る。
【0035】
電力監視装置30は、電力供給網11aのみならず、コミュニティ11bの電力供給量と各負荷手段の電力消費量とを含めて監視するようにしても良い。すなわち、電力監視装置30は、風力発電所1および原子力発電所2等の発電手段から電力の供給をうけるすべての単位を監視できる。また、電力貯蔵手段として、バッテリー15および水素貯蔵装置4以外に、水素貯蔵合金、フライホイール等の他の電力貯蔵手段を利用したり、これらを適宜組み合わせて利用しても良い。
【0036】
以上、本発明に係る発電制御システムの好適な実施の形態について説明したが、本発明は当該実施の形態に限定されることなく、以下のように、種々変形を施して実施することもできる。
【0037】
上述の実施の形態では、発電手段の例として、風力発電所1と原子力発電所2とを挙げて説明したが、発電手段は、これら2種類に限定されず、ディーゼル発電、バイオマス発電、太陽光発電、水力発電、ガス発電、火力発電、地熱発電等の各種発電方法を採る発電所の1つ若しくはこれらの内の2つ以上を任意に組み合わせたものとすることができる。
【0038】
また、芳香族化合物としてベンゼン以外の化合物(例えば、ナフタレン)を用い、有機ハイドライドとしてシクロヘキサン以外の化合物(例えば、芳香族化合物としてナフタレンを用いた場合にはデカリン)を用いても良い。
【0039】
上述の実施の形態における水素貯蔵装置4および水素供給装置20は、それぞれ、ベンゼンに水素を付加してシクロヘキサンの形態で水素を貯蔵する装置およびシクロヘキサンの脱水素により水素とベンゼンとを生成して水素を外部に供給する装置であるが、ベンゼンの代わりにナフタレンを、シクロヘキサンの代わりにデカリンを用いた場合には、ナフタレンに水素を付加してデカリンとして水素を貯蔵する水素貯蔵手段と、デカリンの脱水素によりナフタレンと水素を生成し当該水素を外部に供給する水素供給手段とを採用しても良い。
【0040】
また、上述の実施の形態では、エネルギー変換手段の一形態として燃料電池19を採用したが、他の好適な例として、水素エンジンを採用しても良い。水素供給装置20からの水素を水素エンジンに送り、電力・熱の形態にてコミュニティ11bにつながる住宅12等に当該形態のエネルギーを供給することができる。
【0041】
また、水分解装置3で得られた酸素を貯蔵するために、タンク5を用いても良い。さらに、酸素をゴミ焼却場6に搬送するために、トラック9、タンカー9を用いても良い。かかる意味で、タンク5、トラック9およびタンカー9は、酸素貯蔵・搬送手段の一形態である。
【0042】
また、酸素を消費するごみ焼却場6および水産系養殖場7以外に、酸素消費手段として、好気性植物の栽培場を採用しても良い。さらに、これらの酸素消費手段に電力あるいは熱を供給するエネルギー供給手段として、燃料電池19およびこれに水素を供給する水素供給装置20を採用しても良い。また、燃料電池19以外のエネルギー供給手段として、水素エンジンを採用しても良い。また、電力貯蔵手段として、蓄電池に代表されるバッテリー15、水素貯蔵装置4の他に、水素タンクを採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、地域エネルギー循環システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係る発電制御システムを含む地域エネルギー循環システムの概略を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る発電制御システムにおける制御を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1 風力発電所(発電手段)
2 原子力発電所(発電手段)
3 水分解装置(水電解手段)
4 水素貯蔵装置(水素貯蔵手段および電力貯蔵手段)
5 タンク(酸素貯蔵・搬送手段)
6 ゴミ焼却場(酸素消費手段)
7 水産系養殖場(酸素消費手段)
8 タンカー(酸素貯蔵・搬送手段)
9 トラック(酸素貯蔵・搬送手段)
10 鉄塔
11a 電力供給網
11b コミュニティ
12 住宅(負荷手段)
13 工場(負荷手段)
14 オフイス(負荷手段)
15 バッテリー(電力貯蔵手段)
16 水素スタンド(水素供給手段)
17 自動車
18 トラック
19 燃料電池(エネルギー変換手段、エネルギー供給手段)
20 水素供給装置(水素供給手段、エネルギー供給手段)
21 温水配管
30 電力監視装置(監視手段)
31 制御部(監視手段の一部)
32 RAM
33 ROM
34 インターフェイス
35 インターフェイス
40 発電制御装置(制御手段)
41 制御部(制御手段の一部)
42 RAM
43 ROM
44 インターフェイス
45 インターフェイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電手段と電力を消費する複数の負荷手段とを含む特定地域の電力供給網において発電を制御する発電制御システムであって、
各負荷手段における電力消費量を監視する監視手段と、
複数の上記発電手段を制御する制御手段と、
電力を貯蔵する電力貯蔵手段と、
を備え、
上記制御手段は、上記監視手段から送られてくる各負荷手段の電力消費量の情報を受けて、上記発電手段の発電量の制御を行い、各負荷手段にて消費しきれない電力を上記電力貯蔵手段に一時的に貯蔵することを特徴とする発電制御システム。
【請求項2】
前記発電手段は、風力発電、ディーゼル発電、バイオマス発電、太陽光発電、原子力発電、水力発電、ガス発電、火力発電、地熱発電の内、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の発電制御システム。
【請求項3】
前記負荷手段において消費しきれない電力を用いて水を分解して水素と酸素とを生成させる水電解手段と、
芳香族化合物と上記水電解手段によって得られた水素とを反応させて有機ハイドライドとして水素を貯蔵する水素貯蔵手段と、
上記有機ハイドライドの脱水素反応を利用して水素を取り出して外部に供給する水素供給手段と、
上記水素供給手段からの水素を利用して、電力あるいは熱の形態でエネルギーに変換するエネルギー変換手段と、
をさらに備え、
上記水素貯蔵手段は、前記負荷手段にて消費しきれない電力を利用して生成した水素を有機ハイドライドの形で貯蔵し、
上記水素供給手段は、その有機ハイドライドから水素を取り出し、
上記エネルギー変換手段は、水素を電力あるいは熱として前記負荷手段に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の発電制御システム。
【請求項4】
前記水電解手段で得られた酸素を貯蔵若しくは搬送する酸素貯蔵・搬送手段と、
上記酸素貯蔵・搬送手段からの酸素を消費する水産系養殖場、好気性植物の栽培場若しくは地域内のゴミ焼却場に代表される酸素消費手段と、
電力あるいは熱を上記酸素消費手段に供給するエネルギー供給手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の発電制御システム。
【請求項5】
前記電力貯蔵手段は、蓄電池、フライホール、その電力を用いた水分解により生成した水素と芳香族化合物との反応から有機ハイドライドを生成する水素貯蔵手段、水素貯蔵合金あるいは水素タンクの内少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発電制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−129850(P2007−129850A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321075(P2005−321075)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(301035851)株式会社フレイン・エナジー (11)
【Fターム(参考)】