説明

発電複合プラント及びプラント制御方法

【課題】制御切替部を有する発電複合プラントにおいて、安定性・制御応答性の高い発電複合プラントを提供する。
【解決手段】発電複合プラント100は、切替制御部184と統括制御部190と蒸気バイパス設備160とを具備する。統括制御部190は、要求蒸気量が蒸気発生設備120により発生される発生蒸気量の限界値に達したことを判定する。蒸気バイパス設備制御部200は、要求蒸気量が限界値に達したと判定された場合、蒸気バイパス設備160の制御指令値V4にバイアス値B1を加えた新たな制御指令値V5を生成し、新たな制御指令値V5に基づいて蒸気バイパス設備160を通過する蒸気の蒸気量及び蒸気圧を制御することにより、制御切替部184の制御切り替えが生じないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御切替部を有する発電複合プラントに係り、例えば、安定性・制御応答性の高い造水プラントを備える発電複合プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水不足の地域などにおいて、発電設備の排出蒸気を利用して生産水を生成する造水プラントを備える発電複合プラントが利用されている。
【0003】
このような発電複合プラントは、少なくとも電気と水のどちらか一方が必要とされる場合に利用されるものである。具体的には、部分負荷運転の発電効率を向上させ、年間トータルの燃料消費量を低減できる発電複合プラント等が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
発電複合プラントは、一般的には図12に示す構成を具備している。この発電複合プラント100Pは、蒸気消費設備110P・蒸気発生設備120P・高圧蒸気ヘッダ130P・蒸気タービン発電設備140P・低圧蒸気ヘッダ150P・蒸気バイパス設備160P・蒸気発生設備制御部170P・加減弁制御部180P・蒸気バイパス設備制御部200Pを備えている。
【0005】
蒸気消費設備110Pとは例えば造水設備のことであり、発電設備の排出蒸気などの蒸気を利用して生産水を生成するものである。また、蒸気消費設備110Pとあわせて、余剰蒸気を復水に戻す復水設備111Pを設置してもよい。
【0006】
蒸気発生設備120Pは、蒸気タービン発電設備140Pや蒸気消費設備110Pにて使用される蒸気を発生するものであり、例えばガスタービンの排ガスを熱源として蒸気を発生させる排熱回収ボイラなどが該当し、特に通常の排熱回収ボイラにダクトバーナを負荷した助燃装置付きの排熱回収ボイラとすることも可能である。
【0007】
高圧蒸気ヘッダ130Pには、蒸気発生設備120Pにより発生される蒸気が導入される。
【0008】
蒸気タービン発電設備140Pは、高圧蒸気ヘッダ130Pから供給される蒸気を使用して発電するものである。蒸気タービン発電設備140Pは、流入蒸気量を調節する加減弁141Pを具備している。
【0009】
低圧蒸気ヘッダ150Pには、蒸気タービン発電設備140Pから流出する蒸気が導入される。蒸気消費設備110Pは、この低圧蒸気ヘッダ150Pから供給される蒸気を使用するように構成されている。なお、蒸気消費設備110Pの要求蒸気量が少ない場合、低圧蒸気ヘッダ150P内の余剰蒸気は復水設備111Pに供給され、冷却されて復水となる。
【0010】
蒸気バイパス設備160Pは、高圧蒸気ヘッダ130Pと低圧蒸気ヘッダ150Pとの間を、蒸気タービン発電設備140Pをバイパスするように連結しており、高圧蒸気ヘッダ130P内の蒸気の蒸気量及び蒸気圧を調整して低圧蒸気ヘッダ150Pへ供給するものである。蒸気バイパス設備160Pは、通過蒸気量を調節するバイパス弁161P及びバイパススプレー弁162Pを具備している。なお、この蒸気バイパス設備160Pは、蒸気タービン発電設備140Pを稼動させずに蒸気消費設備110Pを稼動させる場合等に使用される。
【0011】
蒸気発生設備制御部170Pは、高圧蒸気ヘッダ130Pの蒸気圧に基づいて、蒸気発生設備120Pを制御するものである。
【0012】
加減弁制御部180Pは、低圧制御部181P・高圧制御部182P・切替判定部183P・制御切替部184Pを具備しており、蒸気タービン発電設備140Pの加減弁141Pを開閉動作することにより、蒸気タービン発電設備140Pに供給される蒸気量を制御する。
【0013】
低圧制御部181Pは、高圧蒸気ヘッダ130Pから蒸気タービン発電設備140Pに供給される蒸気、すなわち蒸気タービン発電設備140Pの加減弁141Pの開度を、低圧蒸気ヘッダ150Pの蒸気圧に基づいて制御するものである。高圧制御部182Pは、高圧蒸気ヘッダ130Pから蒸気タービン発電設備140Pに供給される蒸気を、高圧蒸気ヘッダ130Pの蒸気圧に基づいて制御する。蒸気タービン発電設備140Pに供給される蒸気、すなわち蒸気タービン発電設備140Pの加減弁141Pの開度は、これらの低圧制御部181Pと高圧制御部182Pのうちのいずれかが選択されて制御されるが、通常は低圧制御部181Pにより制御されている。
【0014】
切替判定部183Pは、蒸気消費設備110Pの要求する蒸気量が蒸気発生設備120Pの最大発生蒸気量を超えたことを、高圧蒸気ヘッダ130Pの蒸気圧から判定するものである。すなわち、切り替え判定部183Pは、高圧蒸気ヘッダ130Pの蒸気圧が予め定めた閾値よりも低くなったとき、蒸気消費設備110Pの要求する蒸気量が蒸気発生設備120Pの最大発生蒸気量を超えたと判定する。
【0015】
制御切替部184Pは、切替判定部183Pにより高圧蒸気ヘッダ150Pの蒸気圧が閾値よりも低くなったと判定された場合、蒸気タービン発電設備140Pの加減弁141Pの開度の制御を、それまでの低圧制御部181Pによる制御から高圧制御部182Pによる制御に切り替えるものである。
【0016】
蒸気バイパス設備制御部200Pは、バイパス弁161Pやバイパススプレー弁162Pの開閉動作により、蒸気バイパス設備160Pを通過する蒸気量を制御するものである。ここで、蒸気バイパス設備制御部200Pには、減温設備163Pが備えられており、バイパススプレー弁162Pが開動作することにより減温設備163Pにスプレー水が供給され、これによって蒸気温度が制御されるように構成されている。
【0017】
ここで、上記構成を具備する発電複合プラント100Pは、通常は、低圧制御部181Pにより制御される。なぜならば、高圧制御部182Pによる制御では、蒸気タービン発電設備140Pや蒸気パイパス設備160Pへの流入蒸気量が大きくなり、発電複合プラント全体の制御が不安定となるからである。一方、高圧制御部182Pを備えず、低圧制御部181Pの制御だけとするわけにもいかない。蒸気消費設備110Pの要求する蒸気量が増加した場合に、高圧蒸気ヘッダ130Pの蒸気圧が加速度的に下がることがあり、発電複合プラント全体の効率が維持できなくなることがあるからである。
【0018】
そこで、上述の発電複合プラント100Pでは、制御切替部184Pを具備し、低圧制御部181Pの制御と高圧制御部182Pの制御とを適宜切り替えている。
【特許文献1】特開2006−266258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、低圧制御部による制御と高圧制御部による制御との切り替えが生じると、蒸気タービン発電設備140Pや蒸気バイパス設備160Pが必要以上に動作してしまい、安定性や制御応答性が悪くなる場合がある。また、制御切替を実施するための制御ロジックが複雑になるという問題も生じる。
【0020】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、制御切替部を有する発電複合プラントにおいて、安定性・制御応答性の高い発電複合プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上記課題を解決するために、蒸気発生設備と、蒸気発生設備で発生される蒸気が導入される高圧蒸気ヘッダと、高圧蒸気ヘッダから供給される蒸気を使用して発電する蒸気発電設備と、蒸気発電設備から流出する蒸気が導入される低圧蒸気ヘッダと、高圧蒸気ヘッダと低圧蒸気ヘッダとを蒸気発電設備をバイパスするように連結しバイパス蒸気量制御指令値に基づいて該高圧蒸気ヘッダ内の蒸気の蒸気量及び蒸気圧を調整して該低圧蒸気ヘッダへ供給する蒸気バイパス設備と、低圧蒸気ヘッダから供給される蒸気を使用する蒸気消費設備と、高圧蒸気ヘッダの蒸気圧が予め定めた閾値より高い場合に蒸気発電設備に供給される蒸気量を低圧蒸気ヘッダの蒸気圧に基づいて制御する低圧制御手段と、高圧蒸気ヘッダの蒸気圧が予め定めた閾値より低い場合に蒸気発電設備に供給される蒸気量を高圧蒸気ヘッダの蒸気圧に基づいて制御する高圧制御手段と、高圧蒸気ヘッダの蒸気圧と閾値とを比較して低圧制御手段による制御と高圧制御手段による制御とを切り替える制御切替手段と、蒸気消費設備の要求蒸気量が蒸気発生設備により発生される発生蒸気量の上限値に達したことを判定する判定手段と、判定手段により前記要求蒸気量が上限値に達したと判定された場合蒸気バイパス設備の前記バイパス蒸気量制御指令値にバイアス値を加えて新たなバイパス蒸気量制御指令値を生成し該新たなバイパス蒸気量制御指令値に基づいて該蒸気バイパス設備を通過する蒸気の蒸気量及び蒸気圧を制御する蒸気バイパス設備制御手段とを備えたことを特徴とする発電複合プラントを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、制御切替部を有する発電複合プラントにおいて、安定性・制御応答性の高い発電複合プラントを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の本発明の実施の形態においては、造水プラントを備える発電複合プラント、すなわち発電造水プラントを例にとって説明を行なうが、本発明の各実施の形態は、造水プラント以外にも、例えばプロセス蒸気などとして蒸気を使用するプラントと発電プラントを組み合わせた複合プラントに適用することが可能である。
【0024】
<第1の実施形態>
(発電造水複合プラント100の構成)
図1は本発明の第1の実施形態に係る発電造水複合プラント100の構成を示す模式図である。また、図2は発電造水複合プラント100の各制御部170〜200の構成を示す模式図である。なお、既に説明した部分と同一部分には略同一符号を付し、重複した説明を省略することがある。同様に、以下の各実施形態においても重複した説明を省略することがある。
【0025】
発電造水複合プラント100は、蒸気消費設備110・蒸気発生設備120・高圧蒸気ヘッダ130・蒸気タービン発電設備140・低圧蒸気ヘッダ150・蒸気バイパス設備160・蒸気発生設備制御部170・加減弁制御部180・統括制御部190・蒸気バイパス設備制御部200を備える。
【0026】
なお、発電造水複合プラント100において、高圧蒸気ヘッダ130の圧力は圧力検出装置210により検出され、低圧蒸気ヘッダ150の圧力は圧力検出装置211により検出される。
【0027】
蒸気消費設備110は例えば造水設備がその一例であり、蒸気タービン発電設備140等の排出蒸気が供給される低圧蒸気ヘッダ150からの蒸気を利用して生産水を生成する。具体的には、造水設備では、低圧蒸気ヘッダ150の蒸気を熱交換器に導入し、海水系統から供給された海水を蒸発させることにより生産水を得る。熱交換に使用した蒸気は復水となる。この蒸気消費設備110により消費される蒸気量の情報は「要求蒸気量」として蒸気発生設備120に送出される。
【0028】
なお、蒸気消費設備110とあわせて、復水設備111を設置してもよい。復水設備111では、蒸気消費設備110で消費される蒸気よりも低圧蒸気ヘッダ150に流入する蒸気が多い場合、この余剰蒸気を復水に戻すものである。蒸気消費設備110や復水設備111からの復水は、蒸気発生設備120などで再利用される。
【0029】
蒸気発生設備120は、蒸気消費設備110により要求される要求蒸気量の蒸気を発生するものであり、例えば図3に示すガスタービン発電設備1201の排熱回収ボイラ1206や図4に示すボイラ設備1251などがその一例として挙げられる。
【0030】
図3に示したガスタービン発電設備1201では、以下のように発電するときに蒸気を発生する。すなわち、図3のガスタービン発電設備1201では、ガスタービン1202の燃焼器1203に燃料調節弁1204を介して燃料が投入されると、燃焼ガスによりガスタービン1202が駆動する。これにより、ガスタービン1202と同一軸上に接続されたガスタービン発電機1205が駆動して電力が得られる。ガスタービン負荷は、燃料調節弁1204の操作により制御される。一方、ガスタービン1202から排出される高温の排ガスは、排熱回収ボイラ1206に導入される。排熱回収ボイラ1206では、蒸気消費設備110や復水設備111からの復水が再利用されて、脱気器1207に供給される。脱気器1207では腹水が脱気される。脱気に際し、ガスタービン1202の排ガスを熱源として蒸発器1208にて発生させられた蒸気が利用される。脱気された水は給水ポンプ1209で昇圧される。昇圧された給水は、節炭器1210でガスタービン1202の排気により昇温される。昇温された給水は、蒸気ドラム1211に供給される。蒸気ドラム1211へ供給された水は、蒸発器1212でガスタービン1202の排ガスにより蒸発して、蒸気となる。蒸気ドラム1211からの蒸気は、過熱器1213でガスタービン1202の排ガスにより過熱される。そして、高圧・高温となった蒸気が、高圧蒸気ヘッダ130に供給される。また、要求される蒸気量がガスタービン1202からの燃焼ガスにより生成される蒸気量よりも多い場合には、蒸気量を補うため、助燃装置であるダクトバーナ1214が使用される。なお、ダクトバーナ1214の発生蒸気量は、燃料調節弁1215の開閉動作により調節される。例えば、燃料調節弁1215が開くと、排熱回収ボイラ1206への入熱が増加するので、蒸気量が補われることになる。
【0031】
ボイラ設備1251は、ボイラ1252にバーナ1261が設置されたものであり、ガスタービン発電設備1201の排熱回収ボイラ1206と同様に蒸気を発生する。このボイラ設備1251では、次のようにして蒸気が発生される。図4に示すように、まず、ボイラ設備1251の脱気器1253に、蒸気消費設備110や復水設備111からの復水が供給される。供給された腹水は脱気器1253により脱気される。脱気された水は給水ポンプ1254で昇圧される。昇圧された給水は、節炭器1255でボイラ1252の燃焼ガスにより昇温される。昇温された給水は、蒸気ドラム1256に供給される。蒸気ドラム1256へ供給された水は、蒸発器1257でボイラ1252の燃焼ガスにより蒸発され、蒸気となる。蒸気ドラム1256からの蒸気は、過熱器1258でボイラ1252の燃焼ガスにより過熱される。そして、過熱された蒸気が、高圧蒸気ヘッダ130に供給される。なお、バーナ1261には燃料調節弁1259を介して燃料が投入され、空気調節弁1260を介して空気が投入される。また、バーナ1261で発生した燃焼ガスの熱エネルギーはボイラ1252が備える各熱交換器へ伝熱される。
【0032】
図1において、高圧蒸気ヘッダ130には、蒸気発生設備120が発生する蒸気が導入される。そして、高圧蒸気ヘッダ130は、高圧蒸気ヘッダ130内の蒸気を蒸気タービン発電設備140や蒸気バイパス設備160に供給する。
【0033】
蒸気タービン発電設備140は、高圧蒸気ヘッダ130から供給される蒸気を使用して発電するものである。具体的には、蒸気タービン発電設備140では、高圧蒸気ヘッダ130からの高圧・高温の蒸気を、加減弁141を介して蒸気タービン142に導入する。そして、蒸気タービン142で発生した駆動力により、同一軸上に接続された蒸気タービン発電機143を駆動して電力を得る。なお、蒸気タービン142の負荷は、加減弁141の開度により変動する。また、蒸気タービン142で仕事をした蒸気は、比較的低圧・低温の蒸気となり、低圧蒸気ヘッダ150へと流出する。
【0034】
低圧蒸気ヘッダ150には、蒸気タービン発電設備140から流出した蒸気が導入される。低圧蒸気ヘッダ150に導入された蒸気は、ここから蒸気消費設備110に供給される。なお、低圧蒸気ヘッダ150へは、蒸気バイパス設備160から流出する蒸気も同様に導入される。
【0035】
蒸気バイパス設備160は、高圧蒸気ヘッダ130と低圧蒸気ヘッダ150との間を、蒸気タービン発電設備140をバイパスするように連結し、高圧蒸気ヘッダ130内の蒸気の蒸気量及び蒸気圧を調整して低圧蒸気ヘッダ150へ導入させる。
【0036】
具体的には、蒸気バイパス設備160は、バイパス弁161・バイパススプレー弁162・減温設備163を備えている。バイパス弁161は、高圧蒸気ヘッダ130から流入する蒸気量を調節するものである。ここで減温設備163は、蒸気バイパス設備160の出口の蒸気温度が、低圧蒸気ヘッダ150内の蒸気に見合ったものとなるように温度制御するための構成である。バイパススプレー弁162は、外部から取り込まれて減温装置163に供給されるスプレー水の流量を調整する。すなわち、バイパススプレー弁162にて流量調節されたスプレー水が減温設備163にてスプレーされることによって、高圧蒸気ヘッダ130内の比較的温度の高い蒸気は、その温度が下げられるとともに供給されたスプレー水の分だけその蒸気量が増加して低圧蒸気ヘッダ150に導かれる。このように蒸気バイパス設備160は、バイパススプレー弁162・減温設備163を備えることによって流出する蒸気量を増加させることができる。
【0037】
なお、蒸気バイパス設備160は、蒸気タービン発電設備140を稼動させずに蒸気消費設備110を稼動させる場合などに使用されるものであり、例えば電気は必要としないが水は必要とするようなときに使用される。換言すれば、蒸気バイパス設備160は、低圧蒸気ヘッダ150の圧力制御のバックアップとして待機している。
【0038】
蒸気発生設備制御部170は、高圧蒸気ヘッダ130の蒸気圧に基づいて、蒸気発生設備120を制御するものである。ここでは、蒸気発生設備制御部170は、高圧蒸気ヘッダ130の蒸気圧が圧力設定値P1になるように蒸気発生設備120の発生する蒸気量に関係する制御指令を出力する。具体的には、蒸気発生設備制御部170は、圧力検出装置210で検出した圧力検出値に応じて、図2に示すように、圧力制御演算部171にて制御指令値V1を生成し、蒸気発生設備120に出力する。圧力制御演算部171では、例えばPID制御による演算が実行される。なお、制御指令値V1は、例えば蒸気発生設備120が図3に示すガスタービン発電設備1201の場合、ダクトバーナ1214に供給される燃料流量指令や、ダクトバーナ1214の燃料調節弁1215の開度指令、燃焼器1203に供給される燃料流量指令、ガスタービン1202の燃料調節弁1204の開度指令、あるいはこれらの組合せに対応する制御量を示す値である。いずれの制御対象であっても排熱回収ボイラ1206への入熱が変化するため、発生蒸気量を変化させることができ、高圧蒸気ヘッダ130の圧力を制御することができる。
【0039】
加減弁制御部180は、蒸気タービン発電設備140の加減弁141を開閉動作させてその開度を調整することにより、蒸気タービン発電設備140に供給される蒸気量を制御するものである。この加減弁制御部180は、図2に示すように低圧制御部181・高圧制御部182・切替判定部183・制御切替部184を具備しており、前圧制御や排圧制御により加減弁141を制御する。
【0040】
低圧制御部181は、高圧蒸気ヘッダ130から蒸気タービン発電設備140に供給される蒸気量、すなわち加減弁141の開度を、低圧蒸気ヘッダ150の蒸気圧に基づいて制御(排圧制御)するものである。具体的には、低圧制御部181は、圧力設定値P2と圧力検出装置211で検出された低圧蒸気ヘッダの圧力信号とに応じて制御指令値V2を生成し、制御切替部184へ出力する。
【0041】
高圧制御部182は、高圧蒸気ヘッダ130から蒸気タービン発電設備140へ供給される蒸気量、すなわち加減弁141の開度を、高圧蒸気ヘッダ130の蒸気圧に基づいて制御(前圧制御)するものである。具体的には、高圧制御部182は、圧力設定値P3と圧力検出装置210で検出された高圧蒸気ヘッダの圧力検出値とに応じて制御指令値V3を生成し、制御切替部184へ出力する。
【0042】
ここで、蒸気タービン発電設備140に供給される蒸気量、すなわち蒸気タービン発電設備140の加減弁141の開度は、これらの低圧制御部181と高圧制御部182のうちのいずれかが選択されて制御されるが、通常は低圧制御部181Pにより制御されている(排圧制御)。
【0043】
切替判定部183は、図1における高圧蒸気ヘッダ130の蒸気圧と予め設定された閾値とを比較し、高圧蒸気ヘッダ130の蒸気圧が予め設定された閾値よりも低くなったか否かを判定するものである。これにより、切替判定部183は、高圧蒸気ヘッダ130の蒸気圧が閾値より低下したときに、要求蒸気量が蒸気発生設備120の最大発生蒸気量を超えたと判定することができる。そして、切替判定部183は、高圧蒸気ヘッダ130の蒸気圧が閾値よりも低くなったと判定した場合、「切替命令」を制御切替部184に送出する。尚、切替判定部183は、図1における高圧蒸気ヘッダ130の圧力を監視する代わりに、高圧蒸気ヘッダの蒸気圧に基づいて定められる蒸気発生設備制御部170の制御指令値V1を監視し、制御指令値V1の値に応じて切替命令を送出してもよい。
【0044】
制御切替部184は、切替判定部183から「切替命令」を受け取った場合、低圧制御部181による制御から高圧制御部182による制御に切り替えるものである。通常、制御切替部184は、低圧制御部181からの制御指令値V2に基づいて加減弁141を調整し、蒸気タービン発電設備140から出力される蒸気量を制御している。ところが、切替判定部183から「切替命令」が送出された場合、制御切替部184は、高圧制御部182からの制御指令値V3に基づいて加減弁141の開度を調整して、蒸気タービン発電設備140へ供給される蒸気量を制御する。
【0045】
そして、本実施の形態においては、蒸気消費設備110における要求蒸気量が蒸気発生設備120により発生される発生蒸気量の上限値に達したか否かを判定するための別の構成要素である統括制御部190をさらに備えている。
【0046】
統括制御部190は、上限検出部191と下限検出部192とを備える。上限検出部191は、蒸気発生設備制御部170の制御指令値V1が、予め設定された上限値以上であることを検出するものである。また、上限検出部191は、蒸気発生設備制御部170の制御指令値V1が、予め設定された上限値以上であることを検出した場合、蒸気バイパス設備160におけるバイパス弁161の開度の制御指令値に開側のバイアス値を加えるための「バイアス制御信号」を蒸気バイパス設備制御部200に送出する。なお、上限検出部191により、制御指令値V1が上限値以上であることが検出された状態とは、蒸気発生設備120の最大発生蒸気量が蒸気消費設備110における要求蒸気量を超えた状態に相当する。
【0047】
下限検出部192は、蒸気発生設備制御部170の制御指令値V1が、予め設定された下限値以下であることを検出するものである。また、下限検出部192は、蒸気発生設備制御部170の制御指令値V1が、予め設定された下限値以下であることを検出した場合、蒸気バイパス設備160におけるバイパス弁161の開度の制御指令値に閉側のバイアス値を加えるための「バイアス制御信号」を蒸気バイパス設備制御部200に送出する。
【0048】
蒸気バイパス設備制御部200は、高圧蒸気ヘッダ130から蒸気バイパス設備160に供給される蒸気の蒸気量及び蒸気圧をバイパス弁161の開度により制御するものである。また、蒸気バイパス設備制御部200は、バイパス弁161のみならずバイパススプレー弁162を開閉動作させることにより、蒸気バイパス設備160を通過する蒸気量を制御する。
【0049】
具体的には、蒸気バイパス設備制御部200は、圧力制御演算部201とバイアス演算部202とを具備している。
【0050】
圧力制御演算部201は、圧力設定値P4と圧力検出装置211で検出された低圧蒸気ヘッダの蒸気圧とに基づいて、バイパス弁161を制御するための制御指令値V4を出力する。
【0051】
バイアス演算部202は、統括制御部190から「バイアス制御信号」を受け取った場合、圧力制御部201からの制御指令値V4にバイアス値B1またはB2を加えて、新たな制御指令値V5を生成する回路である。ここでは、上限検出部191からバイアス制御信号を受け取った場合、開側のバイアス値B1を制御指令値V4に加える。また、下限検出部192からバイアス制御信号を受け取った場合、閉側のバイアス値B2を制御指令値V4に加える、すなわち、バイパス弁161の開度指令値からバイアス値B2を減ずる。なお、バイアス値B1・B2は、制御切替部184による切り替えが直ちに生じないような値に設定される。
【0052】
なお、本実施形態に係る発電造水複合プラント100においては、蒸気発生設備制御部170の圧力設定値P1と、加減弁制御部180の圧力設定値P3とは、どちらも高圧蒸気ヘッダ130に対する圧力設定値である。そのため、両方が同時に制御した場合には制御干渉が発生する。そこで、一般的には、蒸気発生設備制御部170または加減弁制御部180のどちらか一方に制御させるような制御切替方法が採用される。もしくは、圧力設定値P3を圧力設定値P1よりも低めに設定する方法が採用される。本実施形態では、どちらの方法が採用されていてもよいが、ここでは後者の方法を採用している。また、加減弁制御部180の圧力設定値P2と、蒸気バイパス設備制御部200の圧力設定値P4とについても同様であり、圧力設定値P4を圧力設定値P2よりも低めに設定している。
【0053】
また、本実施の形態に係る発電造水複合プラント100においては、統括制御部191の上限検出部191や下限検出部192が、それぞれ蒸気発生設備制御部170の制御指令値V1の値に基づいて蒸気消費設備110における要求蒸気量が上限または下限に達したことを検出しているが、これに限らず、圧力検出装置210にて検出した高圧蒸気ヘッダ130内の蒸気圧に基づいて、蒸気消費設備110における要求蒸気量が上限または下限に達したことを判定するようにしてもよい。
【0054】
(発電造水複合プラント100の制御)
次に、本実施形態に係る発電造水複合プラント100の制御概要を説明する。なお、以下の説明において、蒸気発生設備120はガスタービン発電設備1201の排熱回収ボイラ1206であり、蒸気消費設備110は造水設備であるとする。それゆえ、発電造水複合プラント100には、発電量と造水量との2つの要求値が別々に設定される。発電造水複合プラント100では、例えばガスタービン発電設備1201の燃料調節弁1204や蒸気タービン発電設備140の加減弁141、また蒸気バイパス設備160のバイパス弁161などの開度をそれぞれ調節することにより、これらの要求値を満たすようにしている。
【0055】
(要求蒸気量が発生蒸気量の限界値に達していない場合)
蒸気消費設備110から要求される要求蒸気量が、蒸気発生設備120により発生される発生蒸気量の限界値に達していない場合、発電造水複合プラント100では以下の通常制御が行なわれる。なお、いずれの場合であっても、蒸気タービン発電設備140の加減弁141は、当初、低圧制御部181により制御されている。
【0056】
(0―1)発電量の要求が増加した場合
発電造水複合プラント100では、発電量の要求が増加した場合、蒸気発生設備制御部170がガスタービン1202の燃料調節弁1204を開動作するように制御する。燃料調節弁1204が開くと、燃料流量の供給量が増加するので、発電量の要求が満たされる。しかし、燃料調節弁1204が開くと、排熱回収ボイラ1206の入熱が増加する。そのため、ガスタービン発電設備1201からの発生蒸気量が増加する。このとき、造水量の要求に変化がなければ、蒸気量が過剰となる。そこで、発電造水複合プラント100では、蒸気発生設備制御部170がダクトバーナ1214の燃料調節弁1215を閉じるように制御する。これにより、ダクトバーナ1214への燃料流量の供給量が減り、高圧蒸気ヘッダ130への流入蒸気量を一定にすることができる。
【0057】
(0−2)発電量の要求が減少した場合
発電造水複合プラント100では、発電量の要求が減少した場合、蒸気発生設備制御部170がガスタービン1202の燃料調節弁1204を閉動作するように制御する。燃料調節弁1204が閉じると、燃料流量の供給量が減少するので、要求される発電量に一致するようになる。しかし、燃料調節弁1204が閉じると、排熱回収ボイラ1206の入熱が減少する。そのため、ガスタービン発電設備1201からの発生蒸気量が減少する。このとき、造水量の要求に変化がなければ、蒸気量が不足することになる。そこで、発電造水複合プラント100では、蒸気発生設備制御部170がダクトバーナ1214の燃料調節弁1215を開くように制御する。これにより、ダクトバーナ1214への燃料流量の供給量が増え、高圧蒸気ヘッダ130への流入蒸気量を一定にすることができる。
【0058】
(0−3)造水量の要求が増加した場合
発電造水複合プラント100では、造水量の要求が増加した場合、加減弁制御部181が加減弁141を開動作するように制御する。これにより、低圧蒸気ヘッダ150から流出する蒸気を補うことができ、低圧蒸気ヘッダ150の圧力を一定にすることができる。
【0059】
しかし、加減弁141を開くと、蒸気タービン発電機143の発電量が増加し、発電量が過剰となる。そこで、発電造水複合プラント100では、蒸気発生設備制御部170がガスタービン1202の燃料調節弁1204を閉動作するように制御する。燃料調節弁1204が閉じると、燃料流量の供給量が減少する。それゆえ、蒸気タービン発電機143の発電量増加分がガスタービン発電機1205の発電量減少分に吸収され、発電造水複合プラント全体としては発電量を一定にすることができる。
【0060】
また、加減弁141を開くと、高圧蒸気ヘッダ130からの流出蒸気量が増加する。その上、ガスタービン1202の燃料調節弁1204を閉じると、排熱回収ボイラ1206の入熱が減少するので、高圧蒸気ヘッダ130への流入蒸気量も減少する。この結果、発電造水複合プラント100において、蒸気量が不足することになる。そこで、発電造水複合プラント100では、蒸気発生設備制御部170がダクトバーナ1214の燃料調節弁1215を開動作するように制御する。これにより、蒸気量の不足が補われ、高圧蒸気ヘッダ130の圧力を一定にすることができる。
【0061】
(0−4)造水量の要求が減少した場合
発電造水複合プラント100では、造水量の要求が減少した場合、加減弁制御部180が加減弁141を閉動作するように制御する。これにより、低圧蒸気ヘッダ150の圧力上昇を防ぎ、低圧蒸気ヘッダ150の圧力を一定にすることができる。
【0062】
しかし、加減弁141を閉じると、蒸気タービン発電機143の発電量が減少し、発電量が不足する。そこで、発電造水複合プラント100では、蒸気発生設備制御部170がガスタービン1202の燃料調節弁1204が開動作するように制御する。燃料調節弁1204が開くと、燃料流量の供給量が増加する。それゆえ、蒸気タービン発電機143の発電量減少分がガスタービン発電機1205の発電量増加分に吸収され、発電造水複合プラント全体としては発電量を一定にすることができる。
【0063】
また、加減弁141を閉じると、高圧蒸気ヘッダ130からの流出蒸気量が減少する。その上、ガスタービン1202の燃料調節弁1204を開くと、排熱回収ボイラ1206の入熱が増加するので、高圧蒸気ヘッダ130への流入蒸気量も増加する。この結果、発電造水複合プラント100において、蒸気量が過剰となる。そこで、発電造水複合プラント100では、蒸気発生設備制御部170がダクトバーナ1214の燃料調節弁1215を閉動作するように制御する。これにより、燃料流量の供給量が減り、蒸気量の過剰状態が解消され、高圧蒸気ヘッダ130の圧力を一定にすることができる。
【0064】
(要求蒸気量が発生蒸気量の限界値に達した場合)
発電造水複合プラント100において、発電量と造水量との要求がバランスしている場合は上記の通常制御にて問題は生じない。ところが、蒸気消費設備110から要求される要求蒸気量が、蒸気発生設備120により発生される発生蒸気量の限界値に達する場合がある。このような場合、外部から蒸気を補充したり、外部に蒸気を放出したりする必要が生じる。
【0065】
例えば、水の需要の高い夏場などには、蒸気発生設備120の最大発生蒸気量を上回る蒸気量が、蒸気消費設備110から要求される場合がある。このような場合、蒸気バイパス設備160のバイパススプレー弁162を介して不足分の蒸気が外部から補充される。
【0066】
しかし、バイパススプレー弁162から蒸気が補充されるまでの過渡的な状態においては、ダクトバーナ1214が最大出力であるにも係わらず、要求蒸気量を満たすことができない。このため、高圧蒸気ヘッダ130の圧力が加速度的に減少する場合がある。
【0067】
このような場合、一般的には、制御切替部184により、低圧制御部181の制御から高圧制御部182の制御への切り替えが行なわれる。
【0068】
これに対し、本実施形態に係る発電造水複合プラント100では以下のような制御が実行される。
【0069】
(1−1)造水量の要求が過大に増加した場合
図5は本実施形態に係る発電造水複合プラント100の制御概要を説明するためのフローチャートである。
【0070】
発電造水複合プラント100では造水量の要求のみが増加した場合、低圧蒸気ヘッダ150内の蒸気圧が低下するため、圧力検出装置211で検出されたこの蒸気圧の低下に基づいて加減弁制御部180が加減弁141を開動作するように制御する(ステップS1,S2)。これにより、低圧蒸気ヘッダ150から蒸気消費設備110に流出する蒸気を補うことができる。
【0071】
しかし、加減弁141を開くと、高圧蒸気ヘッダ130の圧力が低下する。結果として、造水するための蒸気量が不足することになる。
【0072】
そこで、発電造水複合プラント100では、圧力検出装置210で検出された高圧蒸気ヘッダ130の圧力低下に基づき、蒸気発生設備制御部170がダクトバーナ1214の燃料調節弁1215を開動作するように制御する(ステップS3)。これにより蒸気量の不足が補われ、高圧蒸気ヘッダ130の圧力を一定にすることができる。
【0073】
この後、さらに造水量の要求が増加すると、蒸気消費設備110により要求される要求蒸気量が、蒸気発生設備120により発生される最大発生蒸気量を上回る場合がある(ステップS4)。このような場合、統括制御部190の上限検出部191において、蒸気発生設備制御部170への制御指令値V1が、予め設定された上限値以上であることが検出される(ステップS5−Yes)。
【0074】
上限検出部191により制御指令値V1が上限値以上となったことが検出されると、上限検出部191から蒸気バイパス設備制御部200に「バイアス制御信号」が送出される(ステップS6)。
【0075】
蒸気バイパス設備制御部200がバイアス制御信号を受け取ると、バイアス演算部202により、圧力演算部201から出力される制御指令値V4に、開側のバイアス値B1を一定レートで加えた新たな制御指令値V5が生成される(ステップS7)。
【0076】
そして、蒸気バイパス設備制御部200が、この新たな制御指令値V5に基づいて、蒸気バイパス設備160のバイパス弁161及びバイパススプレー弁162を開動作するように制御する(ステップS8)。要するに、“低圧制御部181による制御から高圧制御部182による制御への切り替えが生じる前に”、蒸気バイパス設備制御部200により、蒸気バイパス設備160のバイパス弁161及びバイパススプレー弁162が開かれる。
【0077】
バイパス弁161が開くと、低圧蒸気ヘッダ150の圧力が上昇する。そこで、加減弁制御部180が加減弁141を閉動作する(ステップS9)。これにより、低圧蒸気ヘッダ150の圧力上昇が回避される。なお、バイパス弁160を開くと、高温の蒸気が増加するので、バイパススプレー弁162から低温のスプレー水を増加するようにする。
【0078】
このように、バイパス弁161及びバイパススプレー弁162を開動作し、加減弁141を閉動作して、しばらく経過すると、高圧蒸気ヘッダ130において、圧力変動が相殺される(ステップS10)。この結果、低圧制御部181による制御から高圧制御部182による制御への切り替えが生じないことになる。
【0079】
補足すると、発電造水複合プラント100においては、蒸気発生設備120からの発生蒸気量は変わらない。そのため、造水量の要求が変化した場合の蒸気量の変動は、蒸気バイパス設備160に供給されるスプレー水にて吸収される形となる。例えば、造水量がα増加した場合、スプレー水がα増加するまでバイパス弁161及びバイパススプレー弁162が開かれる。そして、バイパス弁161が開かれたことによる通過蒸気量の増加分βの影響が相殺されるまで、加減弁141が閉動作するように制御される。
【0080】
なお、バイパススプレー弁162からスプレー水が加わることにより、加減弁141の通過蒸気量の減少分が、バイパス弁161の通過蒸気量の増加分よりも最終的に上回るようになる。そうすると、高圧蒸気ヘッダ130の圧力が上昇する。そこで、蒸気発生設備制御部170が、ダクトバーナ1214の燃料調節弁1215やガスタービン1202の燃料調節弁1204を閉動作するように制御する。これにより、蒸気発生設備120の発生蒸気量を減少させて、高圧蒸気ヘッダ130の圧力を一定にしている。
【0081】
(1−2)造水量の要求が過小に減少した場合
また、本実施形態に係る発電造水複合プラント100では、図6に示すように、高圧制御部182による制御(前圧制御)から低圧制御部181による制御(排圧制御)への切り替えが生じないようにすることもできる。
【0082】
発電造水複合プラント100では、造水量の要求が減少した場合、低圧蒸気ヘッダ150内の蒸気圧が上昇するため、圧力検出装置211で検出されたこの蒸気圧の上昇に基づいて加減弁制御部180が加減弁141を閉動作するように制御する(ステップT1,T2)。これにより、低圧蒸気ヘッダ150の圧力上昇を回避することができる。
【0083】
しかし、加減弁141を閉じると、高圧蒸気ヘッダ130の圧力が上昇する。
【0084】
そこで、発電造水複合プラント100では、圧力検出装置210で検出された高圧蒸気ヘッダ130の圧力上昇に基づき、蒸気発生設備制御部170がダクトバーナ1214の燃料調節弁1215を閉動作するように制御する(ステップT3)。これにより蒸気量を減らし、高圧蒸気ヘッダ130の圧力を一定にすることができる。
【0085】
この後、さらに造水量の要求が減少すると(ステップT4)、統括制御部190の下限検出部192において、蒸気発生設備制御部170への制御指令値V1が、予め設定された下限値以下であることが検出される(ステップT5−Yes)。
【0086】
下限検出部192により制御指令値V1が下限値以下となったことが検出されると、下限検出部192から蒸気バイパス設備制御部200に「バイアス制御信号」が送出される(ステップT6)。
【0087】
蒸気バイパス設備制御部200がバイアス制御信号を受け取ると、バイアス演算部202により、圧力演算部201から出力される制御指令値V4に、閉側のバイアス値B2を一定レートで加えた新たな制御指令値V5が生成される(ステップT7)。
【0088】
そして、蒸気バイパス設備制御部200が、この新たな制御指令値V5に基づいて、蒸気バイパス設備160のバイパス弁161及びバイパススプレー弁162を閉動作するように制御する(ステップT8)。すなわち、“高圧制御部182による制御から低圧制御部181による制御への切り替えが生じる前に”、蒸気バイパス設備制御部200により、蒸気バイパス設備160のバイパス弁161及びバイパススプレー弁162が閉じられる。
【0089】
バイパス弁161が閉動作すると、低圧蒸気ヘッダ150の圧力は減少する。そこで、加減弁制御部180が加減弁141を開き、低圧蒸気ヘッダ150の圧力を上げるようにする(ステップT9)。なお、バイパス弁161が閉動作すると、高温の蒸気が減少する。そのため、高温の蒸気を冷やさないように、バイパススプレー弁162から供給される低温のスプレー水を減少するようにする。
【0090】
このように、バイパス弁161及びバイパススプレー弁162の閉動作し、加減弁141を開動作して、しばらく経過すると、高圧蒸気ヘッダ130において、圧力変動が相殺される(ステップT10)。この結果、高圧制御部182による制御から低圧制御部181による制御への切り替えが生じないことになる。
【0091】
なお、バイパススプレー弁162からスプレー水が減ることにより、加減弁141の通過蒸気量の増加分が、バイパス弁161の通過蒸気量の減少分よりも最終的に上回ることになる。そうすると、高圧蒸気ヘッダ130の圧力が低下する。そこで、蒸気発生設備制御部170が、ダクトバーナ1214の燃料調節弁1215やガスタービン1202の燃料調節弁を開動作するように制御する。これにより、蒸気発生設備120の発生蒸気量を増加させて、高圧蒸気ヘッダ130の圧力を一定にしている。
【0092】
(発電造水複合プラントの効果)
以上説明したように本実施形態に係る発電造水複合プラント100は、要求蒸気量が蒸気発生設備120により発生される発生蒸気量の限界値に達したことを、高圧蒸気ヘッダ130の蒸気圧から判定する統括制御部190と、統括制御部190により要求蒸気量が限界値に達したと判定された場合、通常の蒸気バイパス設備160への制御指令値V4にバイアス値B1を加えて新たな制御指令値V5を生成し、新たな制御指令値V5に基づいて、蒸気バイパス設備160を通過する蒸気の蒸気量及び蒸気圧を制御する蒸気バイパス設備制御部200とを備えているので、低圧制御部181による制御と高圧制御部182による制御との切り替えを生じないようにすることができ、安定性・制御応答性を高くすることができる。
【0093】
それゆえ、発電造水複合プラント100は、常に同じ制御性を保つことが可能であり、かつ運用範囲を広げられるという効果を有している。
【0094】
また、発電造水複合プラント100では、減温設備163を介してスプレー水を増加させ、発生蒸気量を増加させることにより、蒸気タービン発電設備140やガスタービン発電設備1201等の運用範囲を広げることが可能となる。
【0095】
さらに、発電造水複合プラント100では、バイパス弁161の開動作により、蒸気発生設備120の発生蒸気量を減らすことができ、蒸気発生設備制御部170での高圧蒸気ヘッダ130の圧力制御を継続することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る発電造水複合プラント100において、蒸気発生設備120として、蒸気タービン発電設備1201とボイラ設備1251とを組み合わせて用いてもよい。例えば、ダクトバーナ1214の燃料調節弁1215が最大出力になったときに、ボイラ1252の燃料調節弁1259が、高圧蒸気ヘッダ130の制御を開始するようにして用いてもよい。ただし、ダクトバーナ1214とボイラ1252とでは制御応答性が異なるため、発電量や造水量の変化レートに異なる制限を設ける必要がある。
【0097】
なお、本実施形態に係る発電造水複合プラント100においては、蒸気発生設備120、蒸気タービン発電設備140、蒸気バイパス設備160、蒸気消費設備110、復水設備111の台数を、プラントの規模に合わせて任意に組み合わせることが可能となっている。
【0098】
<第2の実施形態>
(発電造水複合プラント100Sの構成)
図7は本発明の第2の実施形態に係る発電造水複合プラント100Sの構成を示す模式図であり、図8は発電造水複合プラント100Sの制御システム構成図である。以下、図7・8を使用して説明を行う。
【0099】
本実施形態に係る発電造水複合プラント100Sは、第1の実施形態に係る発電造水複合プラント100が複数の蒸気発生設備120A・120Bを備えたものである。この発電造水複合プラント100Sでは、高圧蒸気ヘッダ130に、複数の蒸気発生設備120A・120Bにより発生される蒸気が導入される。そこで、統括制御部190Sにおいて、蒸気バイパス設備160の制御だけではなく、蒸気発生設備120Bによる蒸気量を制御することにより、蒸気発生設備120Aの蒸気量を調整している。
【0100】
統括制御部190Sは、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1が、ある閾値以上であることを検出する上限検出部191Aと、ある閾値以下であることを検出する下限検出部192Aを具備する。
【0101】
蒸気発生設備制御部170Bにはバイアス演算部172Bが追加される。バイアス演算部172Bは、統括制御部190Sの上限検出部191A及び下限検出部192Aの信号が入力されると、その信号の状態により開側のバイアス値B3及び閉側のバイアス値B4を演算に加えて、適切な制御指令値V6を計算する回路である。さらに統括制御部190Sは、蒸気発生設備制御部170Bの制御指令値V6が入力され、その値がある閾値以上であることを検出する上限検出部191Bと、ある閾値以下であることを検出する下限検出部192Bを具備する。
【0102】
蒸気バイパス設備制御部200Sにはバイアス演算部202Sが追加される。バイアス演算部202Sは、統括制御部190Sの上限検出部191B及び下限検出部192Bの信号が入力されると、その信号の状態により開側のバイアス値B1及び閉側のバイアス値B2を演算に加えて、適切な制御指令値V7を計算する。
【0103】
(発電造水複合プラント100Sの制御)
次に、本実施形態に係る発電造水複合プラント100Sの制御概要を説明する。ここでは、蒸気発生設備120Aが図3に示したガスタービン発電設備1201の排熱回収ボイラ1206であり、蒸気発生設備120Bが図4に示したボイラ設備1251であるとする。
【0104】
(2−1)造水量の要求が過大に増加した場合
発電造水複合プラント100Sに造水量の要求が増加した場合、蒸気消費設備110への蒸気量が過大に要求されることになる。この場合、低圧蒸気ヘッダ150の圧力が低下するので、加減弁141を開けて蒸気消費設備110への蒸気量を確保する。このとき高圧蒸気ヘッダ130の圧力も低下するため、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1は上昇する。そこで、ダクトバーナ1214の燃料調節弁1215或いはガスタービン1202の燃料調節弁1204が燃料を増加させ、発生蒸気量を確保する。
【0105】
さらに蒸気量が要求されると、上限検出部191Aが上限値を検出し、統括制御部190Sはバイアス制御信号を蒸気発生設備制御部170Bのバイアス演算部172Bに伝える。バイアス演算部172Bでは、例えば圧力制御演算部171Bの出力に開側のバイアス値B3を一定レートで加えることで、制御指令値を上昇させることができ、蒸気発生設備120Bの発生蒸気量を増加させる。ボイラの発生蒸気が増加すると、高圧蒸気ヘッダ130の圧力が上昇する。そこで、ダクトバーナ1214の燃料調節弁1215或いはガスタービン1202の燃料調節弁1204が燃料を減少させて、蒸気発生設備120Aの発生蒸気量を減らすようにする。
【0106】
さらに蒸気量が要求されると、上限検出部191Bが上限値を検出し、統括制御部190Sはバイアス制御信号を蒸気バイパス設備制御部200Sのバイアス演算部202Sへ伝える。以降の動作は第1の実施形態に係る発電造水複合プラント100と同様である。
【0107】
(2−2)造水量の要求が過小に減少した場合
発電造水複合プラント100Sに造水量の要求が減少した場合、蒸気消費設備110へ要求する蒸気量が減少することになる。この場合、低圧蒸気ヘッダ150の圧力が上昇するので、加減弁141を閉めて蒸気消費設備110への蒸気量を制御する。このとき高圧蒸気ヘッダ130の圧力も上昇するため、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1は減少する。そこで、ダクトバーナ1214の燃料調節弁1215或いはガスタービン1202の燃料調節弁1204が燃料を減少させ、発生蒸気量のバランスを保つ。
【0108】
さらに蒸気量が減少すると、下限検出部192Aが下限値を検出成立し、統括制御部190Sはバイアス制御信号を蒸気発生設備制御部170Bのバイアス演算部172Bに伝える。バイアス演算部172Bでは、例えば圧力制御演算部171Bの出力に閉側のバイアス値B4を一定レートで加えることで、制御指令値を減少させることができ、蒸気発生設備120Bの発生蒸気量を減少させる。ボイラの発生蒸気が減少すると、高圧蒸気ヘッダ130の圧力が降下する。そこで、ダクトバーナ1214の燃料調節弁1215或いはガスタービン1202の燃料調節弁1204が燃料を増加させて、蒸気発生設備120Aの発生蒸気量を増やすようにする。
【0109】
さらに蒸気量が減少すると、下限検出部192Bが下限値を検出し、統括制御部190Sはバイアス制御信号を蒸気バイパス設備制御部200Sのバイアス演算部202Sへ伝える。以降の動作は第1の実施形態に係る発電造水複合プラント100と同様である。
【0110】
(発電造水複合プラント100Sの効果)
以上説明したように、本実施形態に係る発電造水複合プラント100Sは、統括制御部190Sにより要求蒸気量が発生蒸気量の限界値に達したと判定された場合、他の蒸気発生設備120Bへの制御指令値にバイアス値を加えて新たな制御指令値V6を生成し、その新たな制御指令値V6に基づいて、他の蒸気発生設備120Bの発生蒸気量を制御する蒸気発生設備制御部170Bを備えているので、制御切替部180の切り替えが生じないようにすることができる。
【0111】
換言すれば、本実施形態に係る発電造水複合プラント100Sでは、蒸気発生設備制御部170Bの制御指令値が最大負荷に到達した場合は、蒸気発生設備制御部170Bの制御指令値V6にバイアス値B3を加えるので、発生蒸気を増加させ、蒸気発生設備120Aの発生蒸気量を減らすことができる。そのため、蒸気発生設備制御部170Aでの高圧蒸気ヘッダ130の圧力制御を継続することができるようになる。
【0112】
また、本実施形態では、バイパス弁161を開動作させることにより、減温設備163に加わるスプレー水を増加させ、発生蒸気を増加させ、運用範囲を広げることが可能となる。さらにバイパス弁161の開動作により、蒸気発生設備120Aの発生蒸気量を減らすことができるため、制御指令値V1が減少する。つまり蒸気発生設備制御部170Aでの高圧蒸気ヘッダ130の圧力制御を継続することができるようになる。
【0113】
従って、本実施形態に係る発電造水複合プラント100Sでは、複雑な制御切り替えがなく、同じ制御性を保った運転が可能となり、かつ運用範囲を広げられるという効果を有している。
【0114】
<第3の実施形態>
図9は本発明第3の実施形態に係る発電造水複合プラント100Tの制御システム構成図である。
【0115】
本実施形態に係る発電造水複合プラント100Tでは、統括制御部190Tが優先順位選択部193を具備する。統括制御部190Tでは、上限検出部191Aと下限検出部192Aとに、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1の信号に加え、蒸気バイパス設備制御部200の制御指令値V7と優先順位選択部193の優先順位信号とが入力される。「優先順位信号」には、蒸気バイパス設備160の制御と、他の蒸気発生設備120Bの制御とのいずれを優先するかが予め設定されている。ここでは、例えば、オペレータが優先順位を設定することが可能である。
【0116】
また、統括制御部190Tでは、上限検出部191Bと下限検出部192Bとに、蒸気発生設備制御部170Bの制御指令値V6の信号に加え、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1と優先順位選択部手段193の優先順位信号とが入力される。
【0117】
次に、本実施形態に係る発電造水複合プラント100Tの動作を説明する。なお、前提として、「優先順位信号」が“1”の場合、蒸気発生設備120Bの制御が蒸気バイパス設備160の制御に優先される。一方、「優先順位信号」が“2”の場合、蒸気バイパス設備160の制御が蒸気発生設備120Bの制御に優先される。
【0118】
このような前提のもと、上限検出部191Aでは、優先順位選択部193による優先順位が“1”の場合、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1のみが上限値に到達しているかどうかを判定し、上限値以上であれば、蒸気発生設備制御部170Bのバイアス演算部172Bにバイアス制御信号を伝える。また、上限検出部191Aでは、優先順位が“2”の場合、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1の判定に加え、蒸気バイパス設備制御部200の制御指令値V7が上限値に到達しているかどうかを判定し、蒸気バイパス設備制御部200の制御指令値V3と蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1との両方が上限値以上であれば、蒸気発生設備制御部170Bのバイアス演算部172Bにバイアス制御信号を伝える。
【0119】
一方、上限検出部191Bでは、優先順位選択部193による優先順位が“2”の場合、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1のみが上限値に到達しているかどうかを判定し、上限値以上であれば、蒸気バイパス設備制御部200のバイアス演算部202にバイアス制御信号を伝える。また、上限検出部191Bは、優先順位が“1”の場合、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1の判定に加え、蒸気発生設備制御部170Bの制御指令値V6が上限値に到達しているかどうかを判定し、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1と蒸気発生設備制御部170Bの制御指令値V6との両方が上限値以上であれば、蒸気バイパス設備制御部200のバイアス演算部202にバイアス制御信号を伝える。
【0120】
また、下限検出部192Aは、優先順位選択部193による優先順位が“1”の場合、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1のみが下限値以下であるかどうかを判定し、下限値以下であれば、蒸気発生設備制御部170Bのバイアス演算部172Bにバイアス制御信号を伝える。下限検出部192Aは、優先順位が“2”の場合、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1の判定に加え、蒸気バイパス設備制御部200の制御指令値V7が下限値以下であるかどうかを判定し、蒸気バイパス設備制御部200の制御指令値V7と蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1との両方が下限値以下であれば、蒸気発生設備制御部170Bのバイアス演算部172Bにバイアス制御信号を伝える。
【0121】
一方、下限検出部192Bでは、優先順位選択部193による優先順位が“2”の場合、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1のみが下限値に到達しているかどうかを判定し、下限値以下であれば、蒸気バイパス設備制御部200のバイアス演算部202にバイアス制御信号を伝える。また、下限検出部192Bは、優先順位が“1”の場合、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1の判定に加え、蒸気発生設備制御部170Bの制御指令値V6が閾値に到達しているかどうかを判定し、蒸気発生設備制御部170Aの制御指令値V1と蒸気発生設備制御部170Bの制御指令値V6との両方が下限値以下であれば、蒸気バイパス設備制御部200のバイアス演算部202にバイアス制御信号を伝える。
【0122】
以上説明したように、本実施形態に係る発電造水複合プラント100Tにおいて、統括制御部190Tにより要求蒸気量が発生蒸気量の限界値に達したと判定された場合、蒸気発生設備制御部170Bによる制御と蒸気バイパス設備制御部200による制御とのいずれかを、予め設定された優先順位に基づいて選択する優先順位選択部193を備えているので、発電造水複合プラント全体の運転効率を上げることができる。
【0123】
要するに、本実施形態に係る発電造水複合プラント100Tによれば、その時のプラント運転効率などを考慮し、バイアス制御信号を送出する設備を選択することができるので、第2の実施形態に係る発電造水複合プラント100Sの効果に加え、プラント効率の高い運転が可能となる。なお、各設備を制御する優先順位については、予め設定されていてもよいし、オペレータが決定してもよい。
【0124】
<第4の実施形態>
図10は本発明第4の実施形態に係る発電造水複合プラント100Uの制御システム構成図である。
【0125】
本実施形態に係る発電造水複合プラント100Uでは、統括制御部190Uが自動優先順位決定部194を具備する。
【0126】
この自動優先順位決定部194は、オペレータが選択しなくても、自動でプラント効率を計算して、蒸気発生設備120Bの制御と蒸気バイパス設備160の制御とに優先順位を“自動で”設定するものである。ここでは、自動優先順位決定部194は、蒸気発生設備制御部170Bからの制御指令値V6と蒸気バイパス設備制御部200からの制御指令値V7とに基づいて優先順位を設定する。
【0127】
すなわち、本実施形態に係る発電造水複合プラント100Uは自動優先順位決定部194を具備しているので、その時のプラント運転効率を自動で計算しながら、バイアス制御信号を送出する設備を選択することができる。それゆえ、第3の実施形態に係る発電造水複合プラント100Uの効果に加え、常にプラント効率の高い運転が可能となる。
【0128】
<第5の実施形態>
図11は本発明第5の実施形態に係る発電造水複合プラント100Vの制御システム構成図である。
【0129】
本実施形態に係る発電造水複合プラント100Vでは、統括制御部190Vがバイアス値演算部195を具備する。バイアス値演算部195は、高圧蒸気ヘッダ130の圧力検出器210から圧力信号が入力されると、プラント運転に応じた最適なバイアス量を計算し、バイアス演算部202に与える。
【0130】
バイアス値演算部195でのバイアス量の計算は、例えば、高圧蒸気ヘッダ130の内における蒸気圧の時間変化(傾き)によるものとすることができる。この場合、高圧蒸気ヘッダ130の圧力降下が激しく、圧力設定値P1に対して大きく下回る場合には、バイアス値演算部195がより大きなバイアス量を計算し、蒸気バイパス設備制御部200のバイアス演算部202に与える。これにより、バイパス弁161の動作が早くなり、低温のスプレー水が早く加わる。そのため、高圧蒸気ヘッダ130の圧力を早く回復させることができる。また高圧蒸気ヘッダ130の圧力降下が遅く、圧力設定値P1に対してそれほど大きく下回っていない場合は、バイアス値演算部195はバイアス量を小さく計算する。これにより、バイパス弁161の動作を緩やかにして、プラントへの外乱を抑えることができる。
【0131】
以上説明したように、本実施形態に係る発電造水複合プラント100Vでは、統括制御部190Vが、高圧蒸気ヘッダ130の蒸気圧から、バイアス値を演算するバイアス値演算部195を備えているので、常にプラント状態に合致したバイアス量を計算することができ、常に安定なプラント運転が可能となる。
【0132】
<その他>
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発電造水複合プラント100の構成を示す模式図である。
【図2】同実施形態に係る発電造水複合プラント100の各制御部170〜200の構成を示す模式図である。
【図3】同実施形態に係るガスタービン発電設備1201の構成を示す模式図である。
【図4】同実施形態に係るボイラ設備1251の構成を示す模式図である。
【図5】同実施形態に係る発電造水複合プラント100の制御概要を説明するためのフローチャートである。
【図6】同実施形態に係る発電造水複合プラント100の制御概要を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る発電造水複合プラント100Sの構成を示す模式図である。
【図8】同実施形態に係る発電造水複合プラント100Sの制御システム構成図である。
【図9】本発明第2の実施形態に係る発電造水複合プラント100Tの制御システム構成図である。
【図10】本発明第4の実施形態に係る発電造水複合プラント100Uの制御システム構成図である。
【図11】本発明第5の実施形態に係る発電造水複合プラント100Vの制御システム構成図である。
【図12】一般的な発電複合プラントの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0134】
100・・・発電造水複合プラント、110・・・蒸気消費設備、111・・・復水設備、120・・・蒸気発生設備、130・・・高圧蒸気ヘッダ、140・・・蒸気タービン発電設備、141・・・加減弁、142・・・蒸気タービン、143・・・蒸気タービン発電機、150・・・低圧蒸気ヘッダ、160・・・蒸気バイパス設備、161・・・バイパス弁、162・・・バイパススプレー弁、163・・・減温設備、170・・・蒸気発生設備制御部、171B・・・圧力制御演算部、172B・・・バイアス演算部、180・・・加減弁制御部、181・・・低圧制御部、182・・・高圧制御部、183・・・切替判定部、184・・・制御切替部、190・・・統括制御部、191・・・上限検出部、192・・・下限検出部、193・・・優先順位選択部、194・・・自動優先順位決定部、195・・・バイアス値演算部、200・・・蒸気バイパス設備制御部、201・・・圧力制御演算部、202・・・バイアス演算部、1201・・・ガスタービン発電設備、1202・・・ガスタービン、1203・・・燃焼器、1204・・・燃料調節弁、1205・・・ガスタービン発電機、1206・・・排熱回収ボイラ、1207・・・脱気器、1208・・・蒸発器、1209・・・給水ポンプ、1210・・・節炭器、1211・・・蒸気ドラム、1212・・・蒸発器、1213・・・過熱器、1214・・・ダクトバーナ、1215・・・燃料調節弁、1251・・・ボイラ設備、1252・・・ボイラ、1253・・・脱気器、1254・・・給水ポンプ、1255・・・節炭器、1256・・・蒸気ドラム、1257・・・蒸発器、1258・・・過熱器、1259・・・燃料調節弁、1260・・・空気調節弁、1261・・・バーナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生設備と、
前記蒸気発生設備で発生される蒸気が導入される高圧蒸気ヘッダと、
前記高圧蒸気ヘッダから供給される蒸気を使用して発電する蒸気発電設備と、
前記蒸気発電設備から流出する蒸気が導入される低圧蒸気ヘッダと、
前記高圧蒸気ヘッダと前記低圧蒸気ヘッダとを、前記蒸気発電設備をバイパスするように連結し、バイパス蒸気量制御指令値に基づいて該高圧蒸気ヘッダ内の蒸気の蒸気量及び蒸気圧を調整して該低圧蒸気ヘッダへ供給する蒸気バイパス設備と、
前記低圧蒸気ヘッダから供給される蒸気を使用する蒸気消費設備と、
前記高圧蒸気ヘッダの蒸気圧が予め定めた閾値より高い場合に、前記蒸気発電設備に供給される蒸気量を前記低圧蒸気ヘッダの蒸気圧に基づいて制御する低圧制御手段と、
前記高圧蒸気ヘッダの蒸気圧が予め定めた閾値より低い場合に、前記蒸気発電設備に供給される蒸気量を前記高圧蒸気ヘッダの蒸気圧に基づいて制御する高圧制御手段と、
前記高圧蒸気ヘッダの蒸気圧と前記閾値とを比較して前記低圧制御手段による制御と前記高圧制御手段による制御とを切り替える制御切替手段と、
前記蒸気消費設備の要求蒸気量が前記蒸気発生設備により発生される発生蒸気量の上限値に達したことを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記要求蒸気量が前記上限値に達したと判定された場合、前記蒸気バイパス設備の前記バイパス蒸気量制御指令値にバイアス値を加えて新たなバイパス蒸気量制御指令値を生成し、該新たなバイパス蒸気量制御指令値に基づいて、該蒸気バイパス設備を通過する蒸気の蒸気量及び蒸気圧を制御する蒸気バイパス設備制御手段と、
を備えたことを特徴とする発電複合プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の発電複合プラントにおいて、
前記判定手段は、前記上限値を前記高圧蒸気ヘッダの蒸気圧に基づいて判定することを特徴とする発電複合プラント。
【請求項3】
請求項1に記載の発電複合プラントにおいて、
前記判定手段は、前記上限値を前記蒸気発生設備への制御指令値に基づいて判定することを特徴とする発電複合プラント。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発電造水複合プラントにおいて、
前記高圧蒸気ヘッダには、他の蒸気発生設備により発生される蒸気も導入され、
前記判定手段により前記要求蒸気量が前記発生蒸気量の上限値に達したと判定された場合、前記他の蒸気発生設備への蒸気発生量の制御指令値にバイアス値を加えて新たな制御指令値を生成し、該新たな制御指令値に基づいて、前記他の蒸気発生設備の発生蒸気量を制御する蒸気発生設備制御手段
を備えたことを特徴する発電複合プラント。
【請求項5】
請求項4に記載の発電複合プラントにおいて、
前記判定手段により前記蒸気消費設備の要求蒸気量が前記発生蒸気量の上限値に達したと判定された場合、前記蒸気発生設備制御手段による制御と前記蒸気バイパス設備制御手段による制御とのいずれかを、予め設定された優先順位に基づいて選択する優先順位選択手段
を備えたことを特徴とする発電複合プラント。
【請求項6】
請求項5に記載の発電複合プラントにおいて、
前記優先順位選択手段は、発電複合プラント全体の発電効率に基づいて優先順位を決定する手段
を備えたことを特徴とする発電複合プラント。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の発電複合プラントにおいて、
前記高圧蒸気ヘッダの蒸気圧から、前記バイアス値を演算するバイアス値演算手段
を備えたことを特徴とする発電複合プラント。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の発電複合プラントにおいて、
前記蒸気消費設備は、前記低圧蒸気ヘッダから供給される蒸気を消費して生産水を生成する造水設備である
ことを特徴とする発電複合プラント。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の発電複合プラントにおいて、
前記蒸気発生設備は、ダクトバーナを備えるとともに、ガスタービンの排ガスを熱源として蒸気を発生する排熱回収ボイラである
ことを特徴とする発電複合プラント。
【請求項10】
蒸気発生設備と、
前記蒸気発生設備で発生される蒸気が導入される高圧蒸気ヘッダと、
前記高圧蒸気ヘッダから供給される蒸気を使用して発電する蒸気発電設備と、
前記蒸気発電設備から流出する蒸気が導入される低圧蒸気ヘッダと、
前記高圧蒸気ヘッダと前記低圧蒸気ヘッダとを、前記蒸気発電設備をバイパスするように連結し、バイパス蒸気量制御指令値に基づいて該高圧蒸気ヘッダ内の蒸気の蒸気量及び蒸気圧を調整して該低圧蒸気ヘッダへ供給する蒸気バイパス設備と、
前記低圧蒸気ヘッダから供給される蒸気を使用する蒸気消費設備と、
前記高圧蒸気ヘッダの蒸気圧が予め定めた閾値より高い場合に前記蒸気発電設備に供給される蒸気量を前記低圧蒸気ヘッダの蒸気圧に基づいて制御する低圧制御手段と、
前記高圧蒸気ヘッダの蒸気圧が予め定めた閾値より低い場合に、前記蒸気発電設備に供給される蒸気量を前記高圧蒸気ヘッダの蒸気圧に基づいて制御する高圧制御手段と、
前記高圧蒸気ヘッダの蒸気圧と前記閾値とを比較して前記低圧制御手段による制御と前記高圧制御手段による制御とを切り替える制御切替手段と、
を備えた発電複合プラントに用いられるプラント制御方法であって、
前記蒸気消費設備の要求蒸気量が前記蒸気発生設備により発生される発生蒸気量の上限値に達したことを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより前記要求蒸気量が前記上限値に達したと判定された場合、前記蒸気バイパス設備の前記バイパス蒸気量制御指令値にバイアス値を加えて新たなパイパス蒸気量制御指令値を生成し、該新たなバイパス蒸気量制御指令値に基づいて、該蒸気バイパス設備を通過する蒸気の蒸気量及び蒸気圧を制御する蒸気バイパス設備制御ステップと、
を備えたことを特徴とするプラント制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載のプラント制御方法において、
前記判定ステップにより前記要求蒸気量が前記発生蒸気量の上限値に達したと判定された場合、他の蒸気発生設備への制御指令値にバイアス値を加えて新たな制御指令値を生成し、該新たな制御指令値に基づいて、前記他の蒸気発生設備の発生蒸気量を制御する蒸気発生設備制御ステップ
を備えたことを特徴するプラント制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載のプラント制御方法において、
前記判定ステップにより前記要求蒸気量が前記上限値に達したと判定された場合、前記蒸気発生設備制御ステップの制御と前記蒸気バイパス設備制御ステップの制御とのいずれかを、予め設定された優先順位に基づいて選択する優先順位選択ステップ
を備えたことを特徴とするプラント制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−197610(P2009−197610A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37894(P2008−37894)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】