説明

発電設備の運転柔軟性を高めるための方法と装置

本発明は、タービンとこれに連結された発電機を含むターボセット(30)を備えた発電設備の運転柔軟性を高める方法であって、出力目標値(P1)が設定され、ターボセットが出力目標値を達成すべき将来の目標時点(t1)が設定され、出力目標値と目標時点とにより出力曲線(22)が算定され、ターボセットが実際時間(t0)での実際出力(P0)から出発して出力曲線に沿って作動され、こうして設定された出力目標値が設定された目標時点に達成されるものに関する。更にターボセットを備えた発電設備の運転柔軟性を高める装置であって、出力目標値用入力ユニット(12)と目標時点用入力ユニット(14)と実際出力用読取ユニット(10)と実際時間用読取ユニット(16)を備え、読取ユニットと入力ユニットが、出力曲線を計算すべく計算ユニット(18)と結合されたものに関する。本発明は更に、ガスタービンおよび蒸気タービンにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンとこのタービンに連結された発電機とを含むターボセットを備えた発電設備の運転柔軟性を高めるための方法に関する。本発明は更に、特に本方法の実施を可能とする装置に関する。更に本発明はガスタービンおよび蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
電力市場は、調節エネルギーの他に、使用者に起因したピーク負荷によって特に影響を受ける。これは一部ではしばしば予測不能である。季節に起因した予測可能な変動、例えば特定の祝祭日、事業所等の大口顧客等は、電力を消費する機械類が何時稼動し又は停止するのかがしばしば既知であるので、ここではむしろ例外事例である。それにも係らずエリア網羅的電力消費を保障するために、ガス発電所又は蒸気発電所等の発電設備は大口顧客から希望する目標時点における所要の電力量について情報を受ける。契約上の目標時点にガス発電所又は蒸気発電所が希望する出力を発生すべく、発電所のターボセットは操作員によって早期に始動されなければならない。それ故に、希望する出力は大抵の場合はるかに早く達成される。これにより発電所事業者には過度に早い始動によって不必要な費用が発生し、これらの費用は事業所等の大口顧客や個々の家庭等の小口顧客によって負担されねばならない。このことは正に自由化された電力市場における欠点である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明の課題は、ターボセットを備えた発電設備の運転柔軟性を高める方法を提供することにある。他の課題は、特に本方法の実施が可能な装置を提供することである。本方法も、本装置も、蒸気タービンでもガスタービンでも利用可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
方法に関係したこの課題は、本発明によれば、タービンと該タービンに連結された発電機とを含むターボセットを備えた発電設備の運転柔軟性を高める方法において、出力目標値を設定し、ターボセットが出力目標値を有すべきである将来の目標時点を設定し、出力目標値と目標時点とによって出力曲線を算定し、ターボセットを実際時間での実際出力から出発して出力曲線に沿って作動させ、こうして、設定した出力目標値を設定した目標時点に達成させることにより解決できる。
【0005】
本発明は、過度に早く達成される出力目標値と、それと結び付いた運転費とがシステムの手動操作に起因するとの認識から出発する。ターボセットはこの手動操作の故に、過度に早く、或いは間違った加速度で、動作促進される。本発明は、出力目標値も、ターボセットが出力目標値を有するべき将来の目標時点も、設定されるとの考えから出発する。これは、例えば制御盤を介して操作員がいつでも入力可能である。更に、運転データによって実際出力も実際時点も既知である。これらの値により、いまや出力曲線が算定できる。これら出力曲線に含まれた始動点でターボセットは動作促進を開始し、又は一定の目標時点に出力を下げる際動作低下される。更にこの出力曲線は加速度も含み、該加速度でターボセットは実際時間値から出発して目標時間値に至るまで動作促進又は動作低下される。即ちターボセットは、設定された目標時点に設定された出力目標値を達成すべく、実際時間での実際出力から出発して出力曲線に沿って作動される。その結果、出力を実質的にごく的確に発生できるので、有効エネルギーの節約が可能となる。手動動作促進と動作低下により、出力目標値の早期達成を回避し、費用を節約できる。更に、一層正確な負荷分布が作成可能である。一層正確な負荷分布によって電力消費量を一層良好に測定して大口顧客と小口顧客に振り分けることができ、その結果、やはり小口顧客の負担を軽減できる。他の利点は、操作員の負担軽減による操作し易さにある。
【0006】
好ましい構成では、出力曲線は、発電機とタービンの寿命を延長可能なように選択される。この結果、更に保守費と整備費を低減できる。
【0007】
出力曲線の計算は自動的に行うとよい。付加的に全自動システムは操作員の負担を軽減する。それに加えて、操作ミスが避けられる。
【0008】
他の好ましい構成では、出力曲線は最大出力曲線と最小出力曲線とを考慮して計算される。こうして動作促進時又は動作低下時のターボセットの損傷を防止できる。
【0009】
ターボセットがガスタービン内に設けられている場合、出力曲線はNOx排出を極力低く抑えられるように選択するとよい。このことはターボセットの効率に依存している。不適切な動作促進又は動作低下による不必要な排出は避けられる。
【0010】
装置に関係した課題は、本発明によれば、タービンと該タービンに連結された発電機とを含むターボセットを備えた発電設備の運転柔軟性を高めるための装置であって、出力目標値用入力ユニットと目標時点用入力ユニットと実際出力用読取ユニットと実際時間用読取ユニットとを備え、読取ユニットと入力ユニットが、出力曲線を計算するための計算ユニットと結合されている装置によって解決される。この装置は、特に上記方法を実施するのに適している。それ故に本方法の諸利点は装置についても生じる。
【0011】
本発明のその他の特徴、特性および利点を、一実施例の説明と他の従属請求項で明らかにする。
【0012】
以下、図面に基づいて本発明を例示的に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
同じ部品にはいずれの図でも同じ符号が付けてある。
【0014】
図1は先行技術の曲線20を示しており、発電機とタービンとを含むターボセット30がこの曲線に基づいて操作員によって手動で動作促進される。曲線は時間tと出力Pとに対してプロットしている。図の簡略化と見易さとのため、図1には直線的出力曲線のみを示してある。実際時間は時間t0、実際出力は出力P0で示してある。目標時点t1で出力目標値P1を用意する必要がある。ターボセットの手動動作促進は曲線20によって表している。この曲線は、目標時点t1に出力目標値P1が用意されているように始動される。しかしターボセットの早い動作促進により、出力目標値P1は既に時点t2で達成されている。それ故に、時点t2と目標時点t1との間の差を表す時間24の内部で望ましくない出力目標値P1となり、これにより高い費用が生じる。これに対し本発明では、一層遅い時点である時点t3で初めてターボセット30を始動させる。こうして、過度に高い出力目標値P1を達成した、不必要な時間周期24が避けられる。ターボセット30は自動的に計算された出力曲線22に基づいて動作促進される。この出力曲線22は、ターボセット30が損傷を受けることのないように、即ちこの出力曲線22が寿命の維持に有効に作用するよう選択される。ガスタービンの場合、出力曲線22はNOx排出に肯定的に作用するよう選択される。出力曲線22は、それに基づきターボセット30を動作促進又は動作低下させ得る許容出力曲線の内部に前記曲線22があるように選択される。この許容範囲42は、最大出力曲線40と最小出力曲線44とによって表される。
【0015】
図2はターボセットを備えた発電設備の運転柔軟性を高めるための装置を略示する。該装置は、特に本方法の実施を可能とする。この装置は出力目標値用入力ユニット12と目標時点用入力ユニット14とを含む。更にこの装置は実際出力用読取ユニット10と実際時間用読取ユニット16を含む。読取ユニット10、16と入力ユニット12、14は、データ交換のため計算ユニット18と結合され、該ユニット18内でこれらのデータと、例えば最小出力曲線44と最大出力曲線40とを含む運転データとによって、出力曲線22が自動的に計算される。出力曲線22は計算ユニット18によって、ターボセット30を損傷しないよう、即ち寿命延長が可能なように計算される。こうして計算された出力曲線22は自動的動作促進又は動作低下のためターボセット30に送られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】出力曲線に基づく方法を説明する縮尺に従わない略図である。
【図2】装置を説明する縮尺に従わない略図である。
【符号の説明】
【0017】
10、16 読取ユニット、12、14 入力ユニット、18 計算ユニット、22 出力曲線、30 ターボセット、40 最大出力曲線、44 最小出力曲線、P0 実際出力、P1 出力目標値、t0 実際時間、t1 目標時点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンとこのタービンに連結された発電機とを含むターボセット(30)を備えた発電設備の運転柔軟性を高めるための方法において、
出力目標値(P1)を設定し、
ターボセット(30)が出力目標値(P1)を有すべきである将来の目標時点(t1)を設定し、
出力目標値(P1)と目標時点(t1)とによって出力曲線(22)を算定し、
ターボセット(30)を実際時間(t0)での実際出力(P0)から出発して出力曲線(22)に沿って作動させ、
こうして、設定した出力目標値(P1)を、設定した目標時点(t1)で達成することを特徴とする方法。
【請求項2】
出力曲線(22)を、発電機およびタービンの寿命を延長するように選択することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
出力曲線(22)の計算を自動的に行うことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
最大許容出力勾配を特徴とする最大出力曲線(40)と最小出力勾配を特徴とする最小出力曲線(44)とを考慮して出力曲線(22)を計算することを特徴とする請求項1から3の1つに記載の方法。
【請求項5】
蒸気タービンのターボセット(30)において本方法を使用することを特徴とする請求項1から4の1つに記載の方法。
【請求項6】
ガスタービンのターボセット(30)において本方法を使用することを特徴とする請求項1から5の1つに記載の方法。
【請求項7】
出力曲線(22)を、ガスタービンのNOx排出を極力低く抑えられるように選択することを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
タービンと該タービンに連結された発電機とを含むターボセット(30)を備えた発電設備の運転柔軟性を高めるための装置であって、出力目標値(P1)用入力ユニット(12)と目標時点(t1)用入力ユニット(14)と実際出力(P0)用読取ユニット(10)と実際時間(t0)用読取ユニット(16)とを備えており、読取ユニット(10、16)と入力ユニット(12、14)が、出力曲線(22)を計算するための計算ユニット(18)と結合されている装置。
【請求項9】
特性曲線内の運転データが計算ユニット(18)に格納されていることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
計算ユニット(18)が運転データを考慮して出力曲線(22)を自動的に計算するように設計されていることを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項11】
ガスタービンと、請求項8から10の1つに記載の装置とを備えたターボセット。
【請求項12】
蒸気タービンと、請求項8から10の1つに記載の装置とを備えたターボセット。
【請求項13】
請求項11又は12記載の少なくとも1つのターボセット(30)を備えた発電設備。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−506260(P2009−506260A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528449(P2008−528449)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064918
【国際公開番号】WO2007/025827
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】